(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】光ファイバ切断機、および光ファイバ切断方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/25 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
G02B6/25
(21)【出願番号】P 2019559657
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2018045492
(87)【国際公開番号】W WO2019117139
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2017237521
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231936
【氏名又は名称】日本通信電材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 元佳
(72)【発明者】
【氏名】西岡 大造
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 悠介
(72)【発明者】
【氏名】三輪 和之
(72)【発明者】
【氏名】今泉 剛
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-514860(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0169594(US,A1)
【文献】特開2013-218233(JP,A)
【文献】特開平09-311226(JP,A)
【文献】特表2004-527781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0262101(US,A1)
【文献】国際公開第2012/108242(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0187276(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/245-6/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って延在された光ファイバが載置される本体部と、
前記本体部に回動自在に接続され、前記本体部に対して開閉可能な蓋部と、
前記第1方向に沿って互いに離間して配列され、前記本体部に対して前記蓋部が閉じられた時に、互いの間で前記光ファイバを保持する一対の保持部と、
前記一対の保持部の間において、前記第1方向に交差する第2方向の一方向側から前記光ファイバに接触して前記光ファイバに傷をつける刃部材と、
前記刃部材を移動させるための移動部であって、前記刃部材を前記第2方向の前記一方向側から前記光ファイバに当接させてから前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向の一方向側に向けて移動させる移動部と、
前記光ファイバにつけられた前記傷を進展させて前記光ファイバを切断する切断機構と、を備
え、
前記移動部は、前記本体部および前記蓋部のいずれか一方に対して移動自在に設けられ、
前記本体部および前記蓋部のいずれか一方と前記移動部とのいずれか一方の前記第2方向および前記第3方向を含む面には、少なくとも一つのアライメント溝が形成され、
前記本体部および前記蓋部のいずれか一方と前記移動部とのいずれか他方の前記前記第2方向および前記第3方向を含む面には、前記少なくとも一つのアライメント溝に係合可能な少なくとも一つの突起部が設けられ、
前記移動部は、ユーザ操作により、前記少なくとも一つのアライメント溝の形状に沿って前記第2方向の他方向側へ移動させられた後で前記第3方向の前記一方向側へ移動可能である、光ファイバ切断機。
【請求項2】
前記少なくとも一つのアライメント溝は、前記刃部材の前記第3方向の前記一方向側への移動量が所定値を超えたときに、前記刃部材を前記第2方向の前記一方向側へ退避させるような形状で形成されている、請求項
1に記載の光ファイバ切断機。
【請求項3】
前記少なくとも一つのアライメント溝は、前記少なくとも一つの突起部の移動範囲における中央部が両端部よりも前記第2方向において前記光ファイバから離れた位置となるように形成されている、請求項
2に記載の光ファイバ切断機。
【請求項4】
前記少なくとも一つのアライメント溝内には、前記少なくとも一つの突起部を前記第2方向および前記第3方向へガイドするためのガイド凸部が形成されている、請求項
2に記載の光ファイバ切断機。
【請求項5】
前記移動部は、前記本体部および前記蓋部の一方に設けられた弾性部により前記第3方向の他方向側に付勢されている、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の光ファイバ切断機。
【請求項6】
前記弾性部は、前記第3方向に対して傾いた状態で配置され、前記移動部を前記第2方向の前記一方向側向き成分と前記第3方向の前記他方向側向き成分を含む向きに付勢する、請求項
5に記載の光ファイバ切断機。
【請求項7】
前記少なくとも一つのアライメント溝は、第1アライメント溝と、前記第1アライメント溝とは前記第2方向および前記第3方向の少なくとも一方において異なる位置に設けられた第2アライメント溝とを含み、
前記少なくとも一つの突起部は、前記第1アライメント溝に対応する位置に設けられた第1突起部と、前記第2アライメント溝に対応する位置に設けられた第2突起部とを含む、請求項
1から請求項
4のいずれか一項に記載の光ファイバ切断機。
【請求項8】
前記刃部材による前記光ファイバの切断回数を計数するカウンタと、
前記切断回数が所定回数以上になった場合に前記移動部の移動を制限して、前記光ファイバの切断を停止する切断停止部と、
をさらに備えている、請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の光ファイバ切断機。
【請求項9】
前記移動部は、前記本体部に対して移動自在に設けられ、
前記移動部は、少なくとも前記第1方向に突出するラッチ部を有し、
前記切断停止部は、前記本体部内に設けられるとともに、
前記移動部の移動に応じて前記ラッチ部と係合することにより一方向に回転する歯車部と、
前記歯車部の回転に応じて前記切断停止部を前記第2方向の一方向へ移動させる回転移動部と、
を有し、
前記切断回数が前記所定回数以上になった場合には、前記歯車部の回転が停止することにより、前記移動部の移動が制限される、請求項
8に記載の光ファイバ切断機。
【請求項10】
前記本体部には、前記光ファイバの切断回数を段階的に示すための前記カウンタが形成されており、
前記切断停止部の前記第2方向の前記一方向への移動に応じて前記カウンタと前記切断停止部の先端部との位置関係が変化することにより、前記切断回数が表示可能である、請求項
9に記載の光ファイバ切断機。
【請求項11】
前記刃部材の切断縁は、直線状である、請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載の光ファイバ切断機。
【請求項12】
前記切断機構は、前記刃部材と対向する位置に設けられて、前記第2方向の他方向側から前記光ファイバを押圧して、前記刃部材により前記傷が付けられた前記光ファイバを曲げることによって切断させる押圧部を含む、請求項1から請求項
11のいずれか一項に記載の光ファイバ切断機。
【請求項13】
前記本体部の前記第1方向における一端部には、切断後の前記光ファイバの屑を収容可能な屑収容部が設けられている、請求項1から請求項
12のいずれか一項に記載の光ファイバ切断機。
【請求項14】
請求項1から請求項
11のいずれか一項に記載の光ファイバ切断機を用いて前記光ファイバに前記傷を付ける第1工程と、
前記第1工程の後に、請求項13に記載の押圧部を用いて前記光ファイバを曲げることによって前記傷を進展させて前記光ファイバを切断する第2工程と、を含む、光ファイバ切断方法。
【請求項15】
請求項1から請求項
11のいずれか一項に記載の光ファイバ切断機を用いて前記光ファイバに前記傷を付ける第1工程と、
前記第1工程の後に、前記光ファイバを引っ張ることによって前記傷を進展させて前記光ファイバを切断する第3工程と、を含む、光ファイバ切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバ切断機、および光ファイバ切断方法に関する。
【0002】
本出願は、2017年12月12日出願の日本出願第2017-237521号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
円板状の刃部材を、光ファイバのガラスファイバ部分に押し付けた状態で移動させて、該ガラスファイバ部分の表面を創傷する光ファイバ切断装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の目的を達成するために、本開示の光ファイバ切断機は、
第1方向に沿って延在された光ファイバが載置される本体部と、
前記本体部に回動自在に接続され、前記本体部に対して開閉可能な蓋部と、
前記第1方向に沿って互いに離間して配列され、前記本体部に対して前記蓋部が閉じられた時に、互いの間で前記光ファイバを保持する一対の保持部と、
前記一対の保持部の間において、前記第1方向に交差する第2方向の一方向側から前記光ファイバに接触して前記光ファイバに傷をつける刃部材と、
前記刃部材を移動させるための移動部であって、前記刃部材を前記第2方向の前記一方向側から前記光ファイバに当接させてから前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向の一方向側に向けて移動させる移動部と、を備えている。
【0006】
また、本開示の目的を達成するために、本開示の光ファイバ切断方法は、
上記に記載の光ファイバ切断機を用いて前記光ファイバに前記傷を付ける第1工程と、
前記第1工程の後に、前記光ファイバ切断機がさらに備える押圧部を用いて前記光ファイバを曲げることによって前記傷を進展させて前記光ファイバを切断する第2工程と、を含む。
【0007】
また、本開示の目的を達成するために、本開示の光ファイバ切断方法は、
上記に記載の光ファイバ切断機を用いて前記光ファイバに前記傷を付ける第1工程と、
前記第1工程の後に、前記光ファイバを引っ張ることによって前記傷を進展させて前記光ファイバを切断する第3工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本願の実施形態に係る光ファイバ切断機が用いられる光ファイバの一例を示す図である。
【
図2】第一実施形態に係る光ファイバ切断機の正面側斜視図である。
【
図3】
図2の光ファイバ切断機の蓋部を開いた状態の正面側斜視図である。
【
図4】
図3の状態の光ファイバ切断機の背面側斜視図である。
【
図7】ホルダに保持された光ファイバを切断する際の光ファイバ切断機の動作を示す図である。
【
図8】
図7の動作後の光ファイバ切断機の動作を示す図である。
【
図11】(a)~(e)は、スライダの移動可能方向を示す模式図である。
【
図12】
図8の動作後の光ファイバ切断機の動作を示す図である。
【
図15】
図12の動作後の光ファイバ切断機の動作を示す図である。
【
図16】
図15の光ファイバを保持した状態での光ファイバ切断機の縦断面図である。
【
図17】
図15の動作後の光ファイバ切断機の動作を示す図である。
【
図18】スライダに形成されたアライメント溝の変形例を示す図である。
【
図19】第二実施形態に係る光ファイバ切断機の正面側斜視図である。
【
図20】
図19の光ファイバ切断機の蓋部を開いた状態の正面側斜視図である。
【
図21】
図20の状態の光ファイバ切断機の背面側斜視図である。
【
図26A】ホルダに保持された光ファイバを切断する際の
図19に示す光ファイバ切断機の動作を説明するための図である。
【
図26B】ホルダに保持された光ファイバを切断する際の
図19に示す光ファイバ切断機の動作を説明するための図である。
【
図28】光ファイバの切断に応じてネジ部材が上方移動した状態を示す断面図である。
【
図29】
図19の光ファイバ切断機が備えるカウンタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に記載の光ファイバ切断装置は、光ファイバの被覆を剥いだガラスファイバ部分を把持する上下一対のクランプ部材と、当該クランプ部材により固定されたガラスファイバ部分の下方を移動してガラスファイバ部分の外周面に傷を付ける円板状の刃部材と、当該刃部材を回転可能に支持する支持枠と、ガラスファイバ部分の上方に昇降可能に装備されてガラスファイバ部分の上面に曲げ荷重を負荷する枕部材とを備えている。そして、クランプ部材により固定されたガラスファイバ部分に刃部材によって傷を付けた後、枕部材によりガラスファイバ部分に曲げ荷重をかけることで、光ファイバの劈開による破断面を得るように構成されている。
ところで、FTTH(Fiber To The Home)の普及に伴い、光ファイバに光ファイバ切断装置を同梱して、客先に送付することを可能にするため、光ファイバ切断装置のさらなる低コスト化および小型化が求められている。
【0010】
本開示は、低コストで作製可能であり、且つ小型化を実現可能な光ファイバ切断機を提供することを目的とする。また、本開示は、簡便な構成で光ファイバを加傷および破断させることができる光ファイバ切断方法を提供することを目的とする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示によれば、低コストで作製可能であり、且つ小型化を実現可能な光ファイバ切断機を提供することができる。また、本開示によれば、簡便な構成で光ファイバを加傷および破断させることができる光ファイバ切断方法を提供することができる。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の実施形態に係る光ファイバ切断機は、
(1)第1方向に沿って延在された光ファイバが載置される本体部と、
前記本体部に回動自在に接続され、前記本体部に対して開閉可能な蓋部と、
前記第1方向に沿って互いに離間して配列され、前記本体部に対して前記蓋部が閉じられた時に、互いの間で前記光ファイバを保持する一対の保持部と、
前記一対の保持部の間において、前記第1方向に交差する第2方向の一方向側から前記光ファイバに接触して前記光ファイバに傷をつける刃部材と、
前記刃部材を移動させるための移動部であって、前記刃部材を前記第2方向の前記一方向側から前記光ファイバに当接させてから前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向の一方向側に向けて移動させる移動部と、を備えている。
この構成によれば、移動部によって刃部材を第2方向から第3方向に移動させることにより、簡便な構成で光ファイバに傷を付与することができる。そのため、低コストで作製可能であり、且つ、小型化を実現可能な光ファイバ切断機を提供することができる。
【0013】
(2)上記(1)に記載の光ファイバ切断機においては、
前記移動部は、前記本体部および前記蓋部のいずれか一方に対して移動自在に設けられ、
前記本体部および前記蓋部のいずれか一方と前記移動部とのいずれか一方の前記第2方向および前記第3方向を含む面には、少なくとも一つのアライメント溝が形成され、
前記本体部および前記蓋部のいずれか一方と前記移動部とのいずれか他方の前記前記第2方向および前記第3方向を含む面には、前記少なくとも一つのアライメント溝に係合可能な少なくとも一つの突起部が設けられ、
前記移動部は、ユーザ操作により、前記少なくとも一つのアライメント溝の形状に沿って前記第2方向の他方向側へ移動させられた後で前記第3方向の前記一方向側へ移動可能であってもよい。
この構成によれば、光ファイバが一対の保持部に保持された状態でユーザが移動部を操作することで、刃部材を光ファイバに対して適切な方向で当接および加傷させることができる。
【0014】
(3)上記(2)に記載の光ファイバ切断機においては、
前記少なくとも一つのアライメント溝は、前記刃部材の前記第3方向の前記一方向側への移動量が所定値を超えたときに、前記刃部材を前記第2方向の前記一方向側へ退避させるような形状で形成されていてもよい。
この構成によれば、光ファイバへの加傷後に刃部材が光ファイバと干渉してしまうことを防止することができる。
【0015】
(4)上記(3)に記載の光ファイバ切断機においては、
前記少なくとも一つのアライメント溝は、前記少なくとも一つの突起部の移動範囲における中央部が両端部よりも前記第2方向において前記光ファイバから離れた位置となるように形成されていてもよい。
この構成によれば、後述の弾性部等により移動部を付勢する必要がなく、容易な構成で、光ファイバへの加傷後に刃部材が光ファイバと干渉してしまうことを防止することができる。
【0016】
(5)上記(3)に記載の光ファイバ切断機においては、
前記少なくとも一つのアライメント溝内には、前記少なくとも一つの突起部を前記第2方向および前記第3方向へガイドするためのガイド凸部が形成されていてもよい。
この構成によれば、ガイド凸部により突起部を案内することで、刃部材を所望の方向に適切に移動させることができる。
【0017】
(6)上記(1)から(5)のいずれかに記載の光ファイバ切断機においては、
前記移動部は、前記本体部および前記蓋部の一方に設けられた弾性部により前記第3方向の他方向側へ付勢されていてもよい。
この構成によれば、ユーザが移動部から手を離したときに、弾性部の付勢力によって移動部および刃部材を初期位置に戻すことができる。
【0018】
(7)上記(6)に記載の光ファイバ切断機においては、
前記弾性部は、前記第3方向に対して傾いた状態で配置され、前記移動部を前記第2方向の前記一方向側向き成分と前記第3方向の前記他方向側向き成分を含む向きに付勢してもよい。
この構成によれば、光ファイバへの加傷後に刃部材が光ファイバに干渉しないように、刃部材を光ファイバから離れる方向へ確実に退避させることができる。
【0019】
(8)上記(2)から(5)のいずれかに記載の光ファイバ切断機においては、
前記少なくとも一つのアライメント溝は、第1アライメント溝と、前記第1アライメント溝とは前記第2方向および前記第3方向の少なくとも一方において異なる位置に設けられた第2アライメント溝とを含み、
前記少なくとも一つの突起部は、前記第1アライメント溝に対応する位置に設けられた第1突起部と、前記第2アライメント溝に対応する位置に設けられた第2突起部とを含んでもよい。
この構成によれば、アライメント溝および突起部が複数設けられていることで、初期状態における移動部の方向を保つことができるとともに、刃部材の所定方向への移動を確実に行うことができる。
【0020】
(9)上記(1)から(8)のいずれかに記載の光ファイバ切断機においては、
前記刃部材による前記光ファイバの切断回数を計数するカウンタと、
前記切断回数が所定回数以上になった場合に前記移動部の移動を制限して、前記光ファイバの切断を停止する切断停止部と、
をさらに備えていてもよい。
この構成によれば、光ファイバの切断回数が一定以上となった場合には光ファイバの切断を停止することで、刃部材の消耗による光ファイバの切断品質の劣化を防止することができる。
【0021】
(10)上記(9)に記載の光ファイバ切断機においては、
前記移動部は、前記本体部に対して移動自在に設けられ、
前記移動部は、少なくとも前記第1方向に突出するラッチ部を有し、
前記切断停止部は、前記本体部内に設けられるとともに、
前記移動部の移動に応じて前記ラッチ部と係合することにより一方向に回転する歯車部と、
前記歯車部の回転に応じて前記切断停止部を前記第2方向の一方向へ移動させる回転移動部と、
を有し、
前記切断回数が前記所定回数以上になった場合には、前記歯車部の回転が停止することにより、前記切断回数が前記所定回数以上になった場合には、前記歯車部の回転が停止することにより、前記移動部の移動が制限されてもよい。
この構成によれば、光ファイバの切断回数が一定以上となった場合に歯車部の回転を停止するという簡便な構成で、移動部の移動を制限することができる。
【0022】
(11)上記(10)に記載の光ファイバ切断機においては、
前記本体部には、前記光ファイバの切断回数を段階的に示すための前記カウンタが形成されており、
前記切断停止部の前記第2方向の前記一方向への移動に応じて前記カウンタと前記切断停止部の先端部との位置関係が変化することにより、前記切断回数が表示可能であってもよい。
この構成によれば、当該光ファイバ切断機の現在の使用回数や寿命をユーザが容易に把握することができる。
【0023】
(12)上記(1)から(11)のいずれかに記載の光ファイバ切断機においては、
前記刃部材の切断縁は、直線状であってもよい。
この構成によれば、光ファイバへ付けられる傷の深さを一定に保つことができる。
【0024】
(13)上記(1)から(12)のいずれかに記載の光ファイバ切断機においては、
前記切断機構は、前記刃部材と対向する位置に設けられて、前記第2方向の他方向側から前記光ファイバを押圧して、前記刃部材により前記傷が付けられた前記光ファイバを曲げることによって切断させる押圧部を含んでもよい。
この構成によれば、刃部材により光ファイバに傷を付けた後で、押圧部により光ファイバを刃部材とは反対側から押圧することで、光ファイバを簡便に破断させることができる。
【0025】
(14)上記(1)から(13)のいずれかに記載の光ファイバ切断機においては、
前記本体部の前記第1方向における一端部には、切断後の前記光ファイバの屑を収容可能な屑収容部が設けられていてもよい。
この構成によれば、切断後の光ファイバ屑を確実に回収することができる。
【0026】
本開示の実施形態に係る光ファイバの切断方法は、
(15)上記(1)から(12)のいずれかに記載の光ファイバ切断機を用いて前記光ファイバに前記傷を付ける第1工程と、
前記第1工程の後に、上記(13)に記載の押圧部を用いて前記光ファイバを曲げることによって前記傷を進展させて前記光ファイバを切断する第2工程と、を含む。
この方法によれば、簡便な構成で光ファイバを加傷および破断させることができる。
【0027】
本開示の実施形態に係る光ファイバの切断方法は、
(16)上記(1)から(12)のいずれかに記載の光ファイバ切断機を用いて前記光ファイバに前記傷を付ける第1工程と、
前記第1工程の後に、前記光ファイバを引っ張ることによって前記傷を進展させて前記光ファイバを切断する第3工程と、を含む。
この方法によれば、簡便な構成で光ファイバを加傷および破断させることができる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照して、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0029】
まず、本願の実施形態に係る光ファイバ切断機が用いられる光ファイバについて説明する。
図1は、本願の実施形態に係る光ファイバ切断機が用いられる光ファイバの一例を示す図である。
【0030】
光ファイバ1は、コアと当該コアを覆うクラッドとから構成されるガラスファイバ2と、ガラスファイバ2を覆う絶縁層3と、絶縁層3の周囲を覆う外被4とを備えている。光ファイバ1は、先端部aにおいて、外被4および絶縁層3が段階的に除去され、ガラスファイバ2が露出している。光ファイバ1は、ガラスファイバ2が露出している先端部aにおいて、後述の光ファイバ切断機100を用いて切断される。
【0031】
(第一実施形態)
次に、第一実施形態に係る光ファイバ切断機100について、
図2~
図6等を参照して説明する。
図2は、第一実施形態に係る光ファイバ切断機100の正面側斜視図であり、
図3は、光ファイバ切断機100の蓋部30を開いた状態の正面側斜視図であり、
図4は、
図3の状態の光ファイバ切断機100の背面側斜視図である。
図5は、蓋部30の分解斜視図である。
【0032】
以下の説明においては、
図2に示す状態において、光ファイバ切断機100(本体部10)の長手方向を第1方向D1とし、光ファイバ切断機100の短手方向を第2方向D2とし、光ファイバ切断機100の厚さ方向を第3方向D3とする。なお、第2方向D2の一方向側(矢印側)を上側、第2方向D2の他方向側を下側という場合がある。
【0033】
図2~
図4に示すように、光ファイバ切断機100は、本体部10と、本体部10に開閉自在に接続された蓋部30とを備えている。
【0034】
本体部10は、支持台12と、レール14と、一対の本体部側保持部20,22と、押圧部24(切断機構の一例)とを備えている。
【0035】
レール14は、支持台12の第2方向D2と第3方向D3を含む面の一方側から第1方向D1に沿って延出している。レール14上には、光ファイバ1が保持されたホルダ160が載置される(
図7参照)。
【0036】
支持台12は、第1方向D1と第2方向D2を含む面の一方側に、外側に向けて突出する2つの係合突起部16を備えている。係合突起部16は、後述の蓋部30の係合孔部38と係合して、蓋部30が本体部10に対して閉じられた状態を維持するために用いられる。支持台12の中央部には、第2方向D2に沿って支持台12を貫通する開口部18が形成されている。
【0037】
一対の本体部側保持部20,22は、支持台12の第1方向D1と第3方向D3を含む面のうち蓋部30と対向する面12A上に設けられている。一対の本体部側保持部20,22は、第1方向D1に沿って互いに離間して配列されている。本体部側保持部20,22は、例えば、平板状のゴム板、フッ素系樹脂板、アクリル板等から構成されており、面12A上に貼着されている。
【0038】
押圧部24は、一対の本体部側保持部20,22の間に形成された開口部18内に収容されている。押圧部24は、
図9および
図10等に示すように、基部24Aと、接触部24Bと、押圧ボタン24Cとから構成されている。接触部24Bは、基部24Aの蓋部30と対向する側(面12A側)の端部に配置されている。接触部24Bは、本体部側保持部20,22と同様に、平板状のゴム板、フッ素系樹脂板、アクリル板等から構成されており、基部24Aに貼着されている。押圧ボタン24Cは、接触部24Bが貼着された側とは反対側において、基部24Aと一体的に設けられている。
図4に示すように、押圧ボタン24Cは、開口部18から支持台12の外部に臨むように配置されている。
図10に示すように、押圧ボタン24Cの第1方向D1における両端部には、第2方向D2に沿って接触部24B側に屈曲された屈曲部24C1が形成されている。屈曲部24C1の先端には、爪部24C2が形成され、爪部24C2が開口部18内の段差18Aと係合することで、押圧ボタン24Cの第2方向D2に沿った移動が規制されている。また、押圧ボタン24Cは、バネ28(
図9参照)によって第2方向D2の他方向側(下側)に付勢されている。これにより、押圧ボタン24Cは、ユーザの操作により、バネ28の付勢力に抗して、第2方向D2の一方向側(上側)に移動可能に構成されている。
【0039】
図3~
図5に示すように、蓋部30は、蓋部本体32と、バネ34と、カッタ58を支持するスライダ50とから構成されている。
【0040】
蓋部本体32は、接続部36と、係合孔部38と、一対の蓋部側保持部40,42とを備えている。接続部36は、蓋部本体32の第3方向D3に沿った一端部に設けられている。蓋部本体32は、接続部36によって、支持台12に対して回動自在に接続されている。係合孔部38は、蓋部本体32の第3方向D3に沿った他端部に形成されている。この係合孔部38と、支持台12に形成された係合突起部16とが係合することにより、蓋部本体32が支持台12に対して閉じられた状態で維持可能となる。一対の蓋部側保持部40,42は、蓋部本体32の第1方向D1と第3方向D3を含む面のうち本体部10と対向する面32A上に設けられている。一対の蓋部側保持部40,42は、第1方向D1に沿って互いに離間しつつ一対の本体部側保持部20,22に対応する位置に配列されている。蓋部側保持部40,42は、本体部側保持部20,22と同様に、例えば、平板状のゴム板、フッ素系樹脂板、アクリル板等から構成されており、面32A上に貼着されている。
【0041】
蓋部本体32の中央部には、第2方向D2に沿って蓋部本体32を貫通する横長矩形状の開口部44が形成されている。開口部44を形成する面のうち第2方向D2と第3方向D3を含む面には、第1方向D1に沿って開口部44内に突出する突起部46が形成されている(
図5参照)。なお、
図5においては、1つの突起部46のみが図示されているが、当該突起部46と対向する側にも同様に第1方向D1に沿って開口部44内に突出する突起部が形成されている。
【0042】
スライダ50は、後述のカッタ58を第3方向D3の一方向側(矢印側)に向けて移動させるための部材である。開口部44内に収容されたスライダ50は、バネ34により第3方向D3の他方向側に付勢される。スライダ50の詳細な構造は後述する。
【0043】
本体部10に設けられた一対の本体部側保持部20,22と蓋部30に設けられた一対の蓋部側保持部40,42とから一対の保持部70,72が構成されている。一対の保持部70,72は、本体部10の係合突起部16が蓋部30の係合孔部38と係合した状態において、互いの間に光ファイバ1のガラスファイバ2が露出している部分が延在するように、光ファイバ1を保持する。具体的には、保持部70(本体部側保持部20および蓋部側保持部40)が光ファイバ1の外被4から絶縁層3が露出した部分を保持し、保持部72(本体部側保持部22および蓋部側保持部42)が光ファイバ1の絶縁層3からガラスファイバ2が露出した部分(
図1に示す先端部a)を保持する。
【0044】
【0045】
図6Aに示すように、スライダ50は、長手方向が第3方向D3に沿って延在する直方体状に形成されている。スライダ50の第1方向D1と第2方向D2とを含む面の一方側には、バネ受け部52が形成されている。蓋部本体32の開口部44に収容されたスライダ50は、バネ受け部52においてバネ34により第3方向D3の他方向側に付勢される。スライダ50の第1方向D1と第3方向D3とを含む面の一方側(本体部10と対向する面とは反対側の面)には、凹凸状のスライド操作部54が形成されている。ユーザが手指をスライド操作部54に当接させてスライダ50を操作することにより、スライダ50は第3方向D3の一方向側に向かって移動可能である。
【0046】
スライダ50の第1方向D1と第3方向D3とを含む面の他方側(本体部10と対向する面)には、第3方向D3に沿って延びるスリット56が形成されている。このスリット56の内部には、
図6Bに示すようにカッタ58(刃部材の一例)が収容されている。カッタ58は、例えば、金属(鋼など)によって形成されている。カッタ58の先端の切断縁は、直線状に形成されており、スリット56から第2方向D2に向かって外部に突出している。このように、スライダ50は、カッタ58を第3方向D3に沿って移動可能な状態で支持している。
【0047】
スライダ50の第2方向D2と第3方向D3を含む面50A,50Bには、アライメント溝60が形成されている。なお、アライメント溝60は、スライダ50の面50A,50Bの両方に形成されているが、以下では、
図6Aにおいて示されている面50Aに形成されたアライメント溝60について代表して説明する。アライメント溝60は、例えば、略三角形状に形成されている。具体的には、アライメント溝60は、三角形状の3つの頂点のうち、第2方向D2の一方向側の頂点と、第3方向D3の他方向側の頂点が切り欠かれた形状を有している。スライダ50が蓋部本体32の開口部44内に収容された状態において、アライメント溝60には、開口部44から突出した突起部46が係合される。アライメント溝60内には、突起部46を所定の方向へガイドするための略平行四辺形状のガイド凸部62が形成されている。
【0048】
次に、光ファイバ切断機100の動作について説明する。
図7~
図17は、
図2等に示す光ファイバ切断機100の動作を説明するための図である。なお、
図11(a)~(e)は、スライダ50の移動可能方向を示す模式図である。
【0049】
まず、
図7に示すように、ユーザは、光ファイバ切断機100の蓋部30を本体部10に対して開いた状態にしてから、光ファイバ1を保持したホルダ160をレール14上に載置する。ホルダ160の長手方向(
図7における第1方向D1)の一端部にはV溝162が形成されており、このV溝162内に外被4から露出された部分の絶縁層3付きガラスファイバ2が挿入されている。ホルダ160のV溝162側の端部をレール14と支持台12との境界に当接させることで、光ファイバ1が光ファイバ切断機100に対して位置決めされる。この状態においては、光ファイバ1のホルダ160から突出している部分(絶縁層3から露出されたガラスファイバ2の先端部分)が一対の本体部側保持部20,22の間に延在する。
【0050】
次に、
図8に示すように、ユーザは、光ファイバ切断機100の蓋部30を本体部10に対して開じ、支持台12に形成された係合突起部16を蓋部本体32に形成された係合孔部38に係合させる。これにより、
図9に示すように、光ファイバ1のガラスファイバ2が、一対の保持部70,72(一対の本体部側保持部20,22および一対の蓋部側保持部40,42)によって保持される。なお、この状態においては、
図10に示すように、バネ34は、第3方向D3に対して傾いた状態で配置されている。すなわち、バネ34は、スライダ50を第2方向D2の一方向側向き成分と第3方向D3の他方向側向き成分を含む向きに付勢している。このように、
図8の状態では、スライダ50に支持されたカッタ58は、第2方向D2および第3方向D3においてガラスファイバ2とは離隔された位置にある(
図11(a)参照)。
【0051】
次に、
図12に示すように、ユーザは、スライダ50を、バネ34の付勢力に抗して、第3方向D3の一方向側に移動させる。このとき、
図11(b)および
図11(c)に示すように、アライメント溝60に係合している突起部46がアライメント溝60およびガイド凸部62により形成される通路に沿って移動することで、スライダ50は所定の方向へ移動する(すなわち、所定の方向以外の移動が規制される)。具体的には、まず、ユーザによりスライダ50を第3方向D3の一方向側へ移動させようとする力がスライダ50に加わると、
図11(b)に示すように、突起部46がアライメント溝60内を方向A1へ移動するように、スライダ50が移動される。これにより、
図13および
図14に示すように、スライダ50に支持されたカッタ58がガラスファイバ2に対して第2方向D2の一方向側から当接する。
【0052】
続いて、さらにユーザによりスライダ50を第3方向D3の一方向側へ移動させようとする力がスライダ50に加わると、
図11(c)に示すように、突起部46がアライメント溝60内を方向A2側へ移動するように、スライダ50が移動される。これにより、ガラスファイバ2に対して第2方向D2の一方向側から当接したカッタ58が、ガラスファイバ2に当接した状態で第3方向D3の一方向側に向かって移動される。本例においては、アライメント溝60の三角形状の3つの頂点のうち、第2方向D2の一方向側の頂点が第3方向D3に沿った辺L1で切り欠かれていることにより、ガラスファイバ2にカッタ58が当接した状態で、スライダ50が辺L1の長さ分だけ第3方向D3に沿って移動する。これにより、カッタ58によりガラスファイバ2に傷が付けられる(第1工程の一例)。
【0053】
続いて、さらにユーザによりスライダ50を第3方向D3の一方向側へ移動させようとする力がスライダ50に加わると、
図11(d)に示すように、突起部46がアライメント溝60内を方向A3へ向けて移動するように、スライダ50が移動される。すなわち、突起部46が辺L1の一端部に突き当たると、スライダ50は、辺L1の当該一端部から第2方向D2の一方向側に屈曲するように形成された辺L2に突起部46が沿うようにして移動される。これにより、スライダ50により支持されたカッタ58は、第2方向D2の一方向側に向かって移動される。すなわち、カッタ58は、ガラスファイバ2に対して第2方向D2の一方向側へ退避される。このように、アライメント溝60は、カッタ58の第3方向D3の一方向側への移動量が所定値(辺L1の長さ)を超えたときに、カッタ58を第2方向D2の一方向側へ退避させるような形状で形成されていることが好ましい。
【0054】
続いて、ユーザによりスライダ50が開口部44の第3方向D3の一方向側の端部まで移動されて、ユーザがスライダ50から手指を離すと、
図11(e)に示すように、突起部46がアライメント溝60内を方向A4へ移動するように、スライダ50が移動される。これは、バネ34により、スライダ50が第2方向D2の一方向側向き成分と第3方向D3の他方向側向き成分を含む向きに付勢されているためである。これにより、スライダ50およびカッタ58は、
図11(a)に示す初期位置に戻る。
【0055】
次に、
図15に示すように、ユーザは、本体部10の支持台12の下側に設けられた押圧ボタン24Cを第2方向D2の他方向側から押圧する。なお、
図15では、光ファイバ1を保持するホルダ160の図示を省略している。
これにより、
図16に示すように、押圧部24の接触部24Bが、カッタ58により傷が付けられた部分のガラスファイバ2を第2方向D2の一方向側へ押圧する。このようにして、ガラスファイバ2が曲げられることで、ガラスファイバ2に付けられた傷が進展し、ガラスファイバ2が切断される(第2工程の一例)。
【0056】
最後に、
図17に示すように、ユーザは、蓋部30を開いて、ガラスファイバ2の先端が切断された光ファイバ1が保持されたホルダ160を光ファイバ切断機100のレール14から取り出す。また、ガラスファイバ2の切断面よりも先端部側の部分(一対の保持部72で保持された部分)は、光ファイバ1の使用されない部分であるため、破棄される。
以上で、光ファイバ切断機100を用いて光ファイバ1のガラスファイバ2を切断する動作が終了する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る光ファイバ切断機100は、第1方向D1に沿って延在された光ファイバ1が載置される本体部10と、本体部10に回動自在に接続され、本体部に対して開閉可能な蓋部30と、第1方向D1に沿って互いに離間して配列され、本体部10に対して蓋部30が閉じられた時に、互いの間で光ファイバ1を保持する一対の保持部70,72と、を備えている。さらに、光ファイバ切断機100は、一対の保持部70,72の間において、第2方向D2の一方向側から光ファイバ1に接触して光ファイバ1に傷をつけるカッタ58と、カッタ58を第2方向D2の一方向側から光ファイバ1に当接させてから第3方向D2の一方向に向かって移動させるスライダ50と、光ファイバ1につけられた傷を進展させて光ファイバ1を切断する押圧部24と、を備えている。この構成によれば、スライダ50に支持されたカッタ58を第2方向D2から第3方向D3に移動させることにより、簡便な構成で光ファイバ1に傷を付与して、光ファイバ1を切断することができる。そのため、低コストで作製可能であり、且つ、小型化を実現可能な光ファイバ切断機100を提供することができる。
【0058】
なお、スライダ50は、カッタ58を第2方向D2の一方向側から光ファイバ1に当接させてから第3方向D2の一方向に向かって移動させるが、カッタ58の光ファイバ1への当接方向は第2方向D2に沿った方向(第2方向D2に平行な方向)に限られるものではない。
図11(b)に示すように、第2方向D2に対して傾いた方向A1に沿ってスライダ50およびカッタ58を移動させることも含まれ得る。
【0059】
また、本実施形態の光ファイバ切断機100においては、スライダ50は、蓋部30に対して移動自在に接続されており、スライダ50の第2方向D2および第3方向D3を含む面には、アライメント溝60が形成され、蓋部30の第2方向D2および第3方向D3を含む面には、アライメント溝60に係合可能な突起部46が設けられている。そして、スライダ50は、ユーザの操作により、アライメント溝60の形状に沿って第2方向D2の他方向側へ移動させられた後で第3方向D3の一方向側へ移動可能である。この構成によれば、光ファイバ1が一対の保持部70,72に保持された状態でユーザがスライダ50を操作することで、カッタ58を光ファイバ1に対して適切な方向で当接および加傷させることができる。
【0060】
また、本実施形態の光ファイバ切断機100においては、アライメント溝60は、カッタ58の第3方向D3の一方向側への移動量が所定値を超えたときに、カッタ58を第2方向D2の一方向側へ退避させるような形状で形成されている。この構成によれば、光ファイバ1への加傷後にカッタ58が光ファイバ1と干渉してしまうことを防止することができる。
【0061】
また、本実施形態の光ファイバ切断機100においては、アライメント溝60内には、突起部46を第2方向D2および第3方向D3へガイドするためのガイド凸部62が形成されている。この構成によれば、ガイド凸部62により突起部46をガイドすることで、スライダ50に支持されたカッタ58を所望の方向に適切に移動させることができる。
【0062】
また、本実施形態の光ファイバ切断機100においては、スライダ50は、蓋部30に設けられたバネ34により第3方向D3の他方向側へ付勢されている。この構成によれば、ユーザがスライダ50から手を離したときに、バネ34の付勢力によってスライダ50およびカッタ58を初期位置に戻すことができる。
【0063】
また、本実施形態の光ファイバ切断機100においては、バネ34は、第3方向D3に対して傾いた状態で配置され、スライダ50を第2方向D2の一方向側向き成分と第3方向D3の他方向側向き成分を含む向きに付勢している。この構成によれば、光ファイバ1への加傷後にカッタ58が光ファイバ1に干渉しないように、カッタ58を光ファイバ1から離れる方向へ確実に退避させることができる。
【0064】
また、本実施形態の光ファイバ切断機100においては、カッタ58の切断縁は、直線状である。この構成によれば、光ファイバ1へ付けられる傷の深さを一定に保つことができる。
【0065】
また、本実施形態の光ファイバ切断機100においては、押圧部24は、カッタ58と対向する位置に設けられて、第2方向D2の他方向側から光ファイバ1を押圧して、カッタ58により傷が付けられた光ファイバ1を曲げることによって光ファイバ1を切断させる。この構成によれば、カッタ58により光ファイバ1に傷を付けた後で、押圧部24により光ファイバ1をカッタ58とは反対側から押圧することで、光ファイバ1を簡便に破断させることができる。
【0066】
(変形例)
図18に示すように、スライダ150は、アライメント溝60(第1アライメント溝の一例)に加えて、アライメント溝60とは少なくとも第2方向D2において異なる位置に設けられたアライメント溝60A(第2アライメント溝の一例)を有していてもよい。この場合、蓋部30の開口部44内には、アライメント溝60に対応する位置に設けられた突起部46に加えて、アライメント溝60Aに対応する位置に設けられた突起部が形成され得る。このように、アライメント溝および突起部が1つの面において複数設けられていることで、初期状態においてスライダ150の長手方向が第3方向D3に対して傾かないように保つことができる。また、カッタ58の所定方向(例えば、
図11(a)~(e)に示す方向A1~A4)への移動を確実に行うことができる。
【0067】
上記の実施形態においては、スライダ50にアライメント溝60が形成され、蓋部本体32に突起部46が形成されているが、この例に限られない。スライダに突起部が形成され、蓋部本体にアライメント溝が形成される構成としてもよい。また、スライダ50の第2方向D2と第3方向D3を含む面50A,50Bのうち片面のみにアライメント溝60が形成され、当該1つのアライメント溝60に対応する位置に1つの突起部46が形成される構成としてもよい。
【0068】
また、上記の実施形態においては、アライメント溝60内には、突起部46を所定の方向へガイドするための略平行四辺形状のガイド凸部62が形成されているが、ガイド凸部62が形成されていなくてもよい。この場合は、スライダ50の方向A1および方向A2への移動は、ユーザの手指による押圧により保証され、スライダ50の方向A3および方向A4への移動は、バネ34の第3方向D3に対する傾きにより保証される。このようにガイド凸部62を設けないことで、スライダ50の摺動性や耐久性を向上させることができる。
【0069】
また、上記の実施形態においては、蓋部30にカッタ58を支持するスライダ50が設けられ、本体部10にカッタ58により加傷された光ファイバ1を押圧して曲げる押圧部24が設けられているが、この例に限られない。本体部10側にカッタ58およびスライダ50に相当する構成を設け、蓋部30側に押圧部24に相当する構成を設けてもよい。
【0070】
また、上記の実施形態においては、
図9および
図10に示すように、押圧部24の接触部24Bは、非押圧状態においては、ガラスファイバ2から第2方向D2において離隔した位置に配置されているが、この例に限られない。接触部24Bの上面が、非押圧状態において、一対の本体部側保持部20,22の上面と面一となっていてもよい。この場合、ガラスファイバ2が一対の保持部70,72に保持された状態で、接触部24Bが、第2方向D2における他方向側からガラスファイバ2に接触する。これにより、接触部24Bは、ガラスファイバ2がカッタ58により第2方向D2における一方向側から力を受けた際、当該ガラスファイバ2が第2方向の他方向側へ逃げることを抑制することができる。
【0071】
また、上記の実施形態においては、バネ34は、第3方向D3に対して傾いた状態で配置されているが、第3方向D3に平行な状態で配置されていても良い。
【0072】
また、上記の実施形態においては、第1工程の後に、押圧部24によりガラスファイバ2を曲げることによって、ガラスファイバ2に付けられた傷を進展させて、ガラスファイバ2を切断しているが、この例に限られない。例えば、第1工程の後に、光ファイバ1を引っ張ることによって傷を進展させて光ファイバ1を切断することも可能である(第3工程の一例)。
【0073】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係る光ファイバ切断機200について、
図19~
図29等を参照して説明する。
図19は、第二実施形態に係る光ファイバ切断機200の正面側斜視図であり、
図20は、光ファイバ切断機200の蓋部230を開いた状態の正面側斜視図であり、
図21は、
図20の状態の光ファイバ切断機200の背面側斜視図である。
図22は、
図19のF-F線断面図であり、
図23は、
図19のG-G線断面図である。
第二実施形態に係る光ファイバ切断機200は、本体部210側にカッタ258を支持するスライダ250が設けられ、蓋部230側に押圧部240が設けられている点で、第一実施形態に係る光ファイバ切断機100と異なっている。なお、光ファイバ切断機200の各部において第一実施形態の光ファイバ切断機100と同一の構成および機能については詳細な説明を省略する。
【0074】
第一実施形態と同様に、
図19に示す状態において、光ファイバ切断機200(本体部210)の長手方向を第1方向D1とし、光ファイバ切断機200の短手方向を第2方向D2とし、光ファイバ切断機200の厚さ方向を第3方向D3とする。なお、第2方向D2の一方向側(矢印側)を上側、第2方向D2の他方向側を下側という場合がある。
【0075】
図19~
図22に示すように、第二実施形態に係る光ファイバ切断機200は、本体部210と、本体部210に開閉自在に接続された蓋部230とを備えている。
【0076】
本体部210は、支持台212と、レール214と、一対の本体部側保持部220,222と、カッタ258を支持するスライダ250と、屑収容部280とを備えている。
【0077】
支持台212は、第1方向D1と第2方向D2を含む面の一方側に、外側に向けて突出する1つの係合突起部216を備えている。係合突起部216は、蓋部230の係合孔部239と係合して、蓋部230が本体部210に対して閉じられた状態を維持するために用いられる。支持台212の中央部には、第2方向D2に沿って支持台212を貫通する開口部218が形成されている。また、支持台212の一方の本体部側保持部222に隣接するように、カッタ258による光ファイバの切断回数を計数するカウンタ300が設けられている。カウンタ300の詳細については後述する。
【0078】
開口部218の内部には、カッタ258を支持した状態のスライダ250が収容されている。開口部218内に収容されたスライダ250は、第3方向D3に沿って移動可能である。スライダ250の詳細な構造は後述する。
【0079】
屑収容部280は、本体部210のレール214とは支持台212を挟んで反対側の端部に設けられている。屑収容部280の上部には、例えばエラストマー等の樹脂部材で形成された収容カバー282が設けられている。収容カバー282の支持台212側の端部には、開口部284が形成されている。収容カバー282の開口部284とは反対側の端部には、長尺状の連結部288を介して塞栓286が形成されている。連結部288を屈曲させることで、塞栓286により開口部284を塞ぐことができる。
【0080】
蓋部230は、蓋部本体232と、一対の蓋部側保持部234,236と、押圧部240から構成されている。
【0081】
蓋部本体232は、接続部238によって、支持台212に対して回動自在に接続されている。また、蓋部本体232に設けられた係合孔部239と、支持台212に形成された係合突起部216とが係合することにより、蓋部本体232が支持台212に対して閉じられた状態で維持可能となる。一対の蓋部側保持部234,236は、第1方向D1に沿って互いに離間しつつ一対の本体部側保持部220,222に対応する位置に配列されている。
【0082】
押圧部240は、一対の蓋部側保持部234,236の間に形成された開口部242内に収容されている。押圧部240は、
図22等に示すように、接触部240Aと、押圧ボタン240Bとから構成されている。接触部240Aは、本体部210の開口部218に収容されたスライダ250と対向する位置に配置されている。押圧ボタン240Bは、開口部242から蓋部230の外部に臨むように配置されている。押圧ボタン240Bの第3方向D3における両端部には、外側に屈曲された爪部240Cが形成されている。爪部240Cが開口部242内の段差242Aと係合することで、押圧ボタン240Bの第2方向D2に沿った移動が規制されている。
【0083】
次に、
図22および
図23を参照して、スライダ250の構造を説明する。
図22および
図23に示すように、スライダ250は、第3方向D3に沿って延伸する操作部254と、操作部254から上方(第2方向D2)側に立設する刃保持部256とを備えている。ユーザが手指を操作部254に当接させてスライダ250を操作することにより、スライダ250は第3方向D3に沿って移動可能である。スライダ250の刃保持部256には、カッタ258が収容されている。
【0084】
図23に示すように、スライダ250の第2方向D2と第3方向D3を含む外面の少なくとも一方には、アライメント溝260が形成されている。アライメント溝260は、略W字型に形成されている。すなわち、U字型の溝が第3方向D3に沿って2つ並んだ状態となるように形成されている。なお、アライメント溝260として、U字溝が1つのみ形成されていてもよく、複数のU字溝が第2方向D2に沿って並列されていてもよい。スライダ250が本体部210の開口部218内に収容された状態において、アライメント溝260には、開口部218から突出した2つの突起部246が係合される。2つの突起部246は、2つのU字型の溝のそれぞれに係合可能となるように、一定間隔をあけて配置されている。なお、なお、アライメント溝260として、U字溝が1つのみ形成されている場合には、アライメント溝260に係合される突起部246も1つのみでよい。このように、アライメント溝260は、第2方向D2において、アライメント溝260内での1つの突起部246の移動範囲における中央部262が両端部264よりも下方の位置(ガラスファイバ2から離れた位置)となるように形成されている。
【0085】
次に、
図24および
図25を参照して、本体部210の支持台212内に形成される光ファイバの切断回数カウンタと切断停止機構について説明する。
図24は、
図19のH-H線一部断面図であり、
図25は、
図20のI-I線一部断面図である。
図24に示すように、支持台212に形成された開口部218内において、スライダ250と屑収容部280とに挟まれた位置には、切断停止機構の一部を構成するネジ部材290が収容されている。ネジ部材290は、その下端部に形成された雄ネジ部292と、中央部に形成された歯車部294と、歯車部294の上端から上方に延伸する延伸部296とを備えている。
【0086】
雄ネジ部292は、支持台212に形成された雌ネジ部219に螺合されている。これにより、ネジ部材290の下端は、光ファイバ切断機200の初期状態において、支持台212の雌ネジ部219の最下部に位置している。
【0087】
図25に示すように、スライダ250には、第1方向D1に向かって斜めに突出するラッチ部259が形成されている。歯車部294には、歯車部294の放射方向からやや斜めに突出するように複数の歯294Aが形成されている。複数の歯294Aは、回転状態において、ラッチ部259とそれぞれ接触可能となるような位置に形成されている。また、開口部218内において、ラッチ部259が設けられている箇所と歯車部294を挟んで反対側には、ストッパ218Aが設けられている。ストッパ218Aの一部は、ラッチ部259と略平行となるように延在されており、その先端が、歯車部294の回転状態において、複数の歯294Aとそれぞれ接触可能となるような位置に形成されている。
【0088】
図25に示す位置(右端)から第3方向D3に沿ってスライダ250が左側に移動された場合、ラッチ部259が複数の歯294Aのうち1つの歯294Aの鋭角側の側面に接触して歯294Aを押圧することにより、歯車部294は、第4方向D4に一定量だけ回転する。このとき、ストッパ218Aは、別の歯294Aの鈍角側の側面に接触するため、ストッパ218Aが歯車部294の回転の妨げになることはない。一方、
図25とは逆に、スライダ250が左端から第3方向D3に沿って右側に移動した場合、ラッチ部259が1つの歯294Aの鈍角側の側面に接触し、ストッパ218Aが別の歯294Aの鋭角側の側面に接触する。この状態では、歯車部294の第4方向D4への回転が制限される。このようにして、スライダ250の第3方向D3に沿った往復移動に応じて、歯車部294は一方向(第4方向D4)へ回転される。
【0089】
次に、光ファイバ切断機200の動作について説明する。
図26A~
図29は、
図19等に示す光ファイバ切断機200の動作を説明するための図である。
【0090】
第一実施形態と同様に、まず、
図20に示すように、ユーザは、光ファイバ切断機200の蓋部230を本体部210に対して開いた状態にしてから、光ファイバを保持したホルダをレール214上に載置する。光ファイバおよびホルダの図示は省略する。
【0091】
次に、
図19に示すように、ユーザは、光ファイバ切断機200の蓋部230を本体部210に対して開じる。これにより、光ファイバのガラスファイバが光ファイバ切断機200に保持される。なお、この状態では、スライダ250に支持されたカッタ258は、第2方向D2および第3方向D3においてガラスファイバ2とは離隔された位置にある(
図22参照)。
【0092】
次に、
図26Aおよび
図26Bに示すように、ユーザは、スライダ250を、第3方向D3の一方向側(左側)に移動させる。このとき、アライメント溝260に係合している突起部246がアライメント溝260に沿って移動することで、スライダ250は所定の方向へ移動する(すなわち、所定の方向以外の移動が規制される)。上述の通り、アライメント溝260は、第2方向D2において、アライメント溝260内での1つの突起部246の移動範囲における中央部262が両端部264よりも下方の位置となるように形成されている。そのため、ユーザによりスライダ250を左側へ移動させようとする力がスライダ250に加わると、突起部246がアライメント溝260の両端部264から中央部262へ向かう下り傾斜に沿って移動するように、スライダ250が移動される。これにより、
図26Bに示すように、スライダ250が左斜め上方へ移動し、スライダ250に支持されたカッタ258がガラスファイバ2に対して下方側(第2方向D2の一方向側)から当接する。
【0093】
続いて、さらにユーザによりスライダ250を左側へ移動させようとする力がスライダ250に加わると、
図27Aに示すように、突起部246がアライメント溝260内を中央部262に沿って移動した後に中央部262から両端部264へ向かう上り傾斜に沿って移動するように、スライダ250が移動される。これにより、
図27Bに示すように、スライダ250が平行移動した後に左斜め下方へ移動し、スライダ250により支持されたカッタ258は、ガラスファイバ2に対して当接した状態で一定量移動された後に左斜め下方に移動される。すなわち、カッタ258は、ガラスファイバ2に対して下方へ退避される。
【0094】
次に、ユーザが蓋部230に設けられた押圧ボタン240Bを上方側から押圧することで、押圧部240の接触部240Aが、カッタ258により傷が付けられた部分のガラスファイバ2を下方側へ押圧し、ガラスファイバ2が曲げられて切断される。そして、ユーザは、蓋部230を開いて、ガラスファイバ2の先端が切断された光ファイバが保持されたホルダ(不図示)を光ファイバ切断機200のレール214から取り出す。また、ガラスファイバ2の切断面よりも先端部側の部分は、屑収容部280の収容カバー282に設けられた開口部284からユーザが手指で押し込むことにより、屑収容部280内に収容される。
【0095】
以上で、光ファイバ切断機200を用いて光ファイバ1のガラスファイバ2を切断する動作が終了する。なお、ユーザが、第3方向D3の一方向側に移動されたスライダ250を他方向側に移動することで、次の光ファイバ1を切断することができる。すなわち、第二実施形態に係る光ファイバ切断機200では、スライダ250の第3方向D3に沿った往復移動により、2回の切断が可能となる。
【0096】
このように、ユーザがスライダ250を往復移動させることにより光ファイバの切断回数が重ねられていくと、ネジ部材290の歯車部294が第4方向D4(
図25参照)に回転され、
図28に示すように、ネジ部材290が徐々に上方移動する。すると、
図29に示すように、ネジ部材290の上端面298がせり上がっていく。支持台212上の本体部側保持部222に隣接する位置には、複数の段差310が設けられている。この複数の段差310とネジ部材290の上端面298とによりカウンタ300を構成している。各段差310の横には、光ファイバの残り切断可能回数(あと何回光ファイバを切断することができるかを示す回数)を示す数字が設けられている。これにより、スライダ250の往復移動に応じて徐々にせり上がるネジ部材290の上端面298と複数の段差310との位置関係を見て、ユーザは残り切断可能回数を把握することができる。例えば、
図29においては、ネジ部材290の上端面298は、「0」の数字が設けられた箇所の段差310と略面一な位置にせり上がってきているため、ユーザは光ファイバの残り切断可能回数がほぼ「0」であると認識することができる。
【0097】
このように、スライダ250の移動回数、すなわち光ファイバの切断回数が所定回数以上になった場合には、
図28に示すように、上方移動したネジ部材290の歯車部294の上端面294Bが、開口部218の上壁突起218Bに当接する。ネジ部材290の下端側は雄ネジ部292により、支持台212に形成された雌ネジ部219に螺合している。そのため、この状態で、スライダ250を第3方向D3に移動させようとしても、ネジ部材290の歯車部294が回転できないため、スライダ250も動かすことはできない。したがって、歯車部294の上端面294Bが開口部218の上壁突起218Bに当接した段階で、光ファイバ切断機200はその機能(光ファイバの切断)が停止される。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係る光ファイバ切断機200の構成によれば、スライダ250に支持されたカッタ258を第2方向D2から第3方向D3に移動させることにより、簡便な構成で光ファイバに傷を付与して、光ファイバを切断することができる。そのため、第一実施形態の光ファイバ切断機100と同様に、低コストで作製可能であり、且つ、小型化を実現可能な光ファイバ切断機200を提供することができる。
【0099】
なお、本実施形態の光ファイバ切断機200におけるアライメント溝260は、第2方向D2において、1つの突起部246の移動範囲における中央部262が両端部264よりも下方の位置(すなわち、光ファイバから離れた位置)となるように形成されている。これにより、第一実施形態の光ファイバ切断機100が備えるバネ34のような弾性部材によりスライダ250を付勢する必要がなく、容易な構成で、光ファイバへの加傷後にカッタ258が光ファイバと干渉してしまうことを防止することができる。
【0100】
また、本実施形態に係る光ファイバ切断機200は、カッタ258による光ファイバの切断回数を計数するカウンタ300と、光ファイバの切断回数が所定回数以上になった場合にスライダ250の移動を制限して、光ファイバの切断を停止するネジ部材290(切断停止部の一例)とを備えている。これにより、光ファイバの切断回数が一定以上となった場合には光ファイバの切断を停止することで、カッタ258の消耗による光ファイバの切断品質の劣化を防止することができる。具体的には、光ファイバの切断回数が一定以上となった場合に、ネジ部材290に設けられた歯車部294の回転が停止するという簡便な構成により、スライダ250の第3方向D3への移動が制限される。
【0101】
また、本実施形態に係る光ファイバ切断機200によれば、ネジ部材290の上方移動に応じてカウンタ300とネジ部材290の上端面298との位置関係が変化することにより、光ファイバの切断回数が表示可能となっている。これにより、光ファイバ切断機200の現在の使用回数や寿命をユーザが容易に把握することができる。
【0102】
また、本実施形態の光ファイバ切断機200においては、本体部210の一端部に、切断後の光ファイバの屑を収容可能な屑収容部280が設けられている。これにより、切断後の光ファイバの破棄部分(屑)を確実に回収することができる。
【0103】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0104】
1:光ファイバ
2:ガラスファイバ
3:絶縁層
4:外被
10,210:本体部
12,212:支持台
14,214:レール
16,216:係合突起部
18,218:開口部
20,22:一対の本体部側保持部
24:押圧部(切断機構の一例)
24A:基部
24B:接触部
24C:押圧ボタン
28:バネ
30,230:蓋部
32,232:蓋部本体
34:バネ
36:接続部
38:係合孔部
40,42:一対の蓋部側保持部
44:開口部
46:突起部
50,250:スライダ(移動部の一例)
52:バネ受け部
54:スライド操作部
56:スリット
58,258:カッタ(刃部材の一例)
60,260:アライメント溝
62:ガイド凸部
70,72:一対の保持部
100,200:光ファイバ切断機
160:ホルダ
218A:ストッパ
218B:上壁突起
219:雌ネジ部
240:押圧部
240A:接触部
240B:押圧ボタン
254:操作部
256:刃保持部
259:ラッチ部
280:屑収容部
282:収容カバー
290:ネジ部材
294:歯車部
300:カウンタ