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特許7122334パルスショット式流量調整装置、パルスショット式流量調整方法、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】パルスショット式流量調整装置、パルスショット式流量調整方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020061099
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021162906
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 康典
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特許第4197648(JP,B2)
【文献】特開2011-64707(JP,A)
【文献】特開2009-54094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス源に接続された第1遮断弁と、前記第1遮断弁に接続された第2遮断弁と、前記第1遮断弁と前記第2遮断弁の間のガス充填容積と、前記ガス充填容積の圧力を計測する圧力センサと、を有するパルスショット式流量調整装置において、
ガスを目標流量に制御するプロセスを複数回行い、
前記第1遮断弁と前記第2遮断弁と前記圧力センサとが、前記パルスショット式流量調整装置の動作を制御するコントローラに通信可能に接続され、
前記コントローラは、各プロセスにて、
前記第1遮断弁に開閉動作を行わせた後に、前記第2遮断弁に開閉動作を行わせるパルスショットを繰り返すとともに、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積にガスを充填した後に、前記圧力センサを用いて計測された充填後圧力と、前記第2遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積からガスを吐出した後に、前記圧力センサを用いて計測された吐出後圧力とに基づいて、前記ガス充填容積から排出されるガスの体積流量を算出する一方、前記パルスショットを繰り返して行う態様を変化させることにより、前記体積流量を目標流量に調整する流量制御処理を実行し、
さらに、前記コントローラは、
前記流量制御処理にて、前記体積流量を前記目標流量に調整したパルスショットを行ったときに、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積に前記ガスを充填した充填時間を最適充填時間として記憶する最適充填時間記憶処理と、
前記最適充填時間記億処理を実行したプロセスの次に行うプロセスにおける前記流量制御処理にて、最初のパルスショットを行う場合、前記最適充填時間記憶処理にて記憶した前記最適充填時間を用いて前記第1遮断弁に開閉動作を行わせる充填時間制御処理と、
を実行すること、
を特徴とするパルスショット式流量調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載するパルスショット式流量調整装置において、
前記最適充填時間記憶処理では、最後のパルスショットの前記充填時間を前記最適充填時間として記憶すること、
を特徴とするパルスショット式流量調整装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するパルスショット式流量調整装置において、
前記コントローラは、前記第1遮断弁と前記第2遮断弁に開動作を同時に行わせることにより前記ガス充填容積に残存するガスを置換する置換処理を実行すること、
を特徴とするパルスショット式流量調整装置。
【請求項4】
請求項2に記載するパルスショット式流量調整装置において、
前記コントローラは、前記置換処理の後、前記ガス充填容積の圧力を前記流量制御処理を実行する場合の前記ガス充填容積の目標圧力に調整するように、開動作をしている前記第1遮断弁と前記遮断弁に閉動作を行わせる圧力調整処理を実行すること、
を特徴とするパルスショット式流量調整装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1つに記載するパルスショット式流量調整装置において、
前記コントローラは、
前記第2遮断弁の開閉動作を行って前記ガス充填容積から前記ガスを吐出する吐出時間を一定にした状態で、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせて前記ガス充填容積に前記ガスを充填する前記充填時間を可変させてパルスショットを繰り返し行うとともに、前記第2遮断弁から排出されるガスの体積流量を前記充填時間毎に算出し、前記充填時間と前記体積流量との関係を学習するラーニング処理を実行し、
前記流量制御処理にて、
前記目標流量が直前のプロセスで使用した目標流量から変更された場合、あるいは、前記流量制御処理の実行途中で前記目標流量が変更された場合に、前記ラーニング処理にて学習した前記充填時間と前記体積流量との関係に基づいて、目標流量と変更後の目標流量との差分に応じて前記最適充填時間を補正する補正処理を実行すること、
を特徴とするパルスショット式流量調整装置。
【請求項6】
請求項5に記載するパルスショット式流量調整装置において、
前記コントローラは、
前記流量制御処理を実行する流量制御モードと、前記ガス置換処理を実行するガス置換モードと、前記ラーニング処理を実行するラーニングモードと、を設定するモード設定処理を実行し、
前記モード設定処理にて設定されたモードに応じた処理を実行すること、
を特徴とするパルスショット式流量調整装置。
【請求項7】
ガス源に接続された第1遮断弁と、前記第1遮断弁に接続された第2遮断弁と、前記第1遮断弁と前記第2遮断弁の間のガス充填容積と、前記ガス充填容積の圧力を計測する圧力センサと、を有し、前記第1遮断弁と前記第2遮断弁と前記圧力センサとに通信可能に接続されたコントローラを用いて動作を制御されるパルスショット式流量調整装置に、
ガスを目標流量に制御するプロセスを複数回行わせ、
各プロセスにて、
前記第1遮断弁に開閉動作を行わせた後に、前記第2遮断弁に開閉動作を行わせるパルスショットを繰り返すとともに、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積にガスを充填した後に、前記圧力センサを用いて計測された充填後圧力と、前記第2遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積からガスを吐出した後に、前記圧力センサを用いて計測された吐出後圧力とに基づいて、前記ガス充填容積から排出されるガスの体積流量を算出する一方、前記パルスショットを繰り返して行う態様を変化させることにより、前記体積流量を目標流量に調整する流量制御工程を行わせ、
さらに、
前記流量制御処理にて、前記体積流量を前記目標流量に調整したパルスショットを行ったときに、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積に前記ガスを充填した充填時間を最適充填時間として記憶する最適充填時間記憶工程と、
前記最適充填時間記億工程を行ったプロセスの次に行うプロセスにおける前記流量制御工程にて、最初のパルスショットを行う場合、前記最適充填時間記憶工程にて記憶した前記最適充填時間を用いて前記第1遮断弁に開閉動作を行わせる充填時間制御工程と、
を行わせること、
を特徴とするパルスショット式流量調整方法。
【請求項8】
ガス源に接続された第1遮断弁と、前記第1遮断弁に接続された第2遮断弁と、前記第1遮断弁と前記第2遮断弁の間のガス充填容積と、前記ガス充填容積の圧力を計測する圧力センサと、を有するパルスショット式流量調整装置の動作を制御するコントローラに組み込まれるプログラムであって、
前記流量調整装置が、ガスを目標流量に制御するプロセスを複数回行う場合、前記コントローラに、各プロセスにて、
前記第1遮断弁に開閉動作を行わせた後に、前記第2遮断弁に開閉動作を行わせるパルスショットを繰り返すとともに、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積にガスを充填した後に、前記圧力センサを用いて計測された充填後圧力と、前記第2遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積からガスを吐出した後に、前記圧力センサを用いて計測された吐出後圧力とに基づいて、前記ガス充填容積から排出されるガスの体積流量を算出する一方、前記パルスショットを繰り返して行う態様を変化させることにより、前記体積流量を目標流量に調整する流量制御処理を実行させ、
さらに、前記コントローラに、
前記流量制御処理にて、前記体積流量を前記目標流量に調整したパルスショットを行ったときに、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積に前記ガスを充填した充填時間を最適充填時間として記憶する最適充填時間記憶処理と、
前記最適充填時間記億処理を実行したプロセスの次に行うプロセスにおける前記流量制御処理にて、最初のパルスショットを行う場合、前記最適充填時間記憶処理にて記憶した前記最適充填時間を用いて前記第1遮断弁に開閉動作を行わせる充填時間制御処理と、
を実行させること、
を特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの体積流量を調整するためのパルスショット式流量調整装置、パルスショット式流量調整方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置等のガス供給システムにおいては、ガスの流量を正確に制御するために、例えば、熱式マスフローコントローラを使用していた。しかし、近年、100℃以上の高温ガスが制御対象になることがある。熱式マスフローコントローラは、このような高温ガスの制御が困難であった。
【0003】
例えば特許文献1には、高温ガスの流量を制御できるパルスショット式流量調整装置が開示されている。パルスショット式流量調整装置は、ガス源に接続される第1遮断弁と、第1遮断弁に接続される第2遮断弁と、第1遮断弁と第2遮断弁との間に設けられたガス充填容積と、ガス充填容積の圧力を測定する圧力センサと、コントローラと、を備える。
【0004】
パルスショット式流量調整装置のコントローラは、図9に示すように、第1遮断弁に開閉動作を行わせた後、第2遮断弁に開閉動作を行わせるパルスショットを繰り返す。これとともに、コントローラは、圧力センサを用いて、第1遮断弁に開閉動作を行わせた後にガスが充填されたガス充填容積の圧力(充填後圧力)P1と、第2遮断弁に開閉動作を行わせた後にガスが吐出された後のガス充填容積の圧力(吐出後圧力)P2との差圧D1に基づいて、次のパルスショットで第1遮断弁の開動作を維持してガスの充填を行う充填時間を変更することで、パルスショットの態様を変化させ、ガスの流量を目標流量に調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4197648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には問題があった。すなわち、従来のパルスショット式流量調整装置は、例えば、パルスショットを繰り返してガスを供給するプロセスを繰り返す場合、ガスの使用条件がプロセス毎に異なることがあった。一方、従来のパルスショット式流量調整装置は、各プロセスにおける最初のパルスショットの態様を同じにして、図10に示すように、パルスショットにおける差圧D1に応じて徐々にパルスショットの態様を変化させていた。そのため、従来のパルスショット式流量調整装置は、プロセスを開始してから、ガスの流量を目標流量に調整するまでの応答時間が長くなることがあった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、パルスショットを繰り返してガスの流量を目標流量に制御するパルスショット式流量調整装置について、応答性を改善できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、次のような構成を有している。(1)ガス源に接続された第1遮断弁と、前記第1遮断弁に接続された第2遮断弁と、前記第1遮断弁と前記第2遮断弁の間のガス充填容積と、前記ガス充填容積の圧力を計測する圧力センサと、を有するパルスショット式流量調整装置において、ガスを目標流量に制御するプロセスを複数回行い、前記第1遮断弁と前記第2遮断弁と前記圧力センサとが、前記パルスショット式流量調整装置の動作を制御するコントローラに通信可能に接続され、前記コントローラは、各プロセスにて、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせた後に、前記第2遮断弁に開閉動作を行わせるパルスショットを繰り返すとともに、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積にガスを充填した後に、前記圧力センサを用いて計測された充填後圧力と、前記第2遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積からガスを吐出した後に、前記圧力センサを用いて計測された吐出後圧力とに基づいて、前記ガス充填容積から排出されるガスの体積流量を算出する一方、前記パルスショットを繰り返して行う態様を変化させることにより、前記体積流量を目標流量に調整する流量制御処理を実行し、さらに、前記コントローラは、前記流量制御処理にて、前記体積流量を前記目標流量に調整したパルスショットを行ったときに、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積に前記ガスを充填した充填時間を最適充填時間として記憶する最適充填時間記憶処理と、前記最適充填時間記億処理を実行したプロセスの次に行うプロセスにおける前記流量制御処理にて、最初のパルスショットを行う場合、前記最適充填時間記憶処理にて記憶した前記最適充填時間を用いて前記第1遮断弁に開閉動作を行わせる充填時間制御処理と、を実行すること、を特徴とする。
【0009】
上記構成を有するパルスショット式流量調整装置は、プロセスを実行する場合の最初のパルスショットで、前回のプロセスで記憶した最適充填時間を用いて第1遮断弁に開閉動作を行わせる。これにより、最初のパルスショットでは、第2遮断弁13から排出するガスの体積流量を目標流量に調整するのに適したガスがガス充填容積に充填され、第2遮断弁から吐出されるガスの体積流量が目標流量、あるいは、目標流量に近い値に調整される可能性が高くなる。よって、上記構成を有するパルスショット式流量調整装置によれば、プロセスを開始してからガスを目標流量に安定させるまでの応答時間が短くなり、応答性を改善することができる。
【0010】
(2)(1)に記載するパルスショット式流量調整装置において、前記最適充填時間記憶処理では、最後のパルスショットの前記充填時間を前記最適充填時間として記憶すること、が好ましい。
【0011】
上記構成を有するパルスショット式流量調整装置は、体積流量を目標流量に調整している可能性が高い最後のパルスショットで計測した充填時間を、最適充填時間として記憶することで、最適充填時間を記憶する際の処理負荷やメモリ負荷を軽減できる。
【0012】
(3)(1)または(2)に記載するパルスショット式流量調整装置において、前記コントローラは、前記第1遮断弁と前記第2遮断弁に開動作を同時に行わせることにより前記ガス充填容積に残存するガスを置換する置換処理を実行すること、が好ましい。
【0013】
上記構成を有するパルスショット式流量調整装置は、ガス置換を行う場合、第1遮断弁と第2遮断弁とを同時に開動作させることで、ガス源から供給されるガスがガス充填容積に流通し、ガス充填容積に残存するガスと置換されやすくなる。これによれば、第1遮断弁と第2遮断弁を交互に開閉してガス置換を行う場合より、ガスを早く置換することができる。
【0014】
(4)(3)に記載するパルスショット式流量調整装置において、前記コントローラは、前記置換処理の後、前記ガス充填容積の圧力を前記流量制御処理を実行する場合の前記ガス充填容積の目標圧力に調整するように、開動作をしている前記第1遮断弁と前記遮断弁に閉動作を行わせる圧力調整処理を実行すること、が好ましい。
【0015】
上記構成を有するパルスショット式流量調整装置は、第1遮断弁と第2遮断弁に開動作を同時に行わせ、ガス充填容積のガスを置換した後、第1遮断弁と第2遮断弁に閉動作を行わせるタイミングによってガス充填容積の圧力を、流量制御処理を実行する場合のガス充填容積の目標圧力に調整する。これにより、ガスを置換した後のプロセスでは、最初のパルスショットからガス充填容積の圧力が目標圧力に制御されているので、ガス充填容積の圧力のばらつきによる応答時間の遅れを抑制できる。
【0016】
(5)(1)から(4)の何れか1つに記載するパルスショット式流量調整装置において、前記コントローラは、前記第2遮断弁の開閉動作を行って前記ガス充填容積から前記ガスを吐出する吐出時間を一定にした状態で、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせて前記ガス充填容積に前記ガスを充填する前記充填時間を可変させてパルスショットを繰り返し行うとともに、前記第2遮断弁から排出されるガスの体積流量を前記充填時間毎に算出し、前記充填時間と前記体積流量との関係を学習するラーニング処理を実行し、前記流量制御処理にて、前記目標流量が直前のプロセスで使用した目標流量から変更された場合、あるいは、前記流量制御処理の実行途中で前記目標流量が変更された場合に、前記ラーニング処理にて学習した前記充填時間と前記体積流量との関係に基づいて、目標流量と変更後の目標流量との差分に応じて前記最適充填時間を補正する補正処理を実行すること、が好ましい。
【0017】
上記構成を有するパルスショット式流量調整装置は、目標流量が直前のプロセスで使用した目標流量から変更されたり、流量制御処理の途中で変更された場合に、予め学習しておいた充填時間と体積流量との関係に基づいて、目標流量と変更後の目標流量との差分に応じて最適充填時間を補正することで、ガスの流量を変更後の目標流量に迅速に調整することが可能になる。
【0018】
(6)(5)に記載するパルスショット式流量調整装置において、前記コントローラは、前記流量制御処理を実行する流量制御モードと、前記ガス置換処理を実行するガス置換モードと、前記ラーニング処理を実行するラーニングモードと、を設定するモード設定処理を実行し、前記モード設定処理にて設定されたモードに応じた処理を実行すること、が好ましい。
【0019】
上記構成を有するパルスショット式流量調整装置は、流量制御モードとガス置換モードとラーニングモードの設定に応じて流量制御処理、ガス置換処理、ラーニング処理を実行することで、任意のタイミングで各処理を実行でき、使い勝手が良い。
【0020】
本発明の別態様は、(7)ガス源に接続された第1遮断弁と、前記第1遮断弁に接続された第2遮断弁と、前記第1遮断弁と前記第2遮断弁の間のガス充填容積と、前記ガス充填容積の圧力を計測する圧力センサと、を有し、前記第1遮断弁と前記第2遮断弁と前記圧力センサとに通信可能に接続されたコントローラを用いて動作を制御されるパルスショット式流量調整装置に、ガスを目標流量に制御するプロセスを複数回行わせ、各プロセスにて、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせた後に、前記第2遮断弁に開閉動作を行わせるパルスショットを繰り返すとともに、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積にガスを充填した後に、前記圧力センサを用いて計測された充填後圧力と、前記第2遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積からガスを吐出した後に、前記圧力センサを用いて計測された吐出後圧力とに基づいて、前記ガス充填容積から排出されるガスの体積流量を算出する一方、前記パルスショットを繰り返して行う態様を変化させることにより、前記体積流量を目標流量に調整する流量制御工程を行わせ、さらに、前記流量制御処理にて、前記体積流量を前記目標流量に調整したパルスショットを行ったときに、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積に前記ガスを充填した充填時間を最適充填時間として記憶する最適充填時間記憶工程と、前記最適充填時間記億工程を行ったプロセスの次に行うプロセスにおける前記流量制御工程にて、最初のパルスショットを行う場合、前記最適充填時間記憶工程にて記憶した前記最適充填時間を用いて前記第1遮断弁に開閉動作を行わせる充填時間制御工程と、を行わせること、を特徴とするパルスショット式流量調整方法である。
【0021】
さらに、本発明の別態様は、(8)ガス源に接続された第1遮断弁と、前記第1遮断弁に接続された第2遮断弁と、前記第1遮断弁と前記第2遮断弁の間のガス充填容積と、前記ガス充填容積の圧力を計測する圧力センサと、を有するパルスショット式流量調整装置の動作を制御するコントローラに組み込まれるプログラムであって、前記流量調整装置が、ガスを目標流量に制御するプロセスを複数回行う場合、前記コントローラに、各プロセスにて、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせた後に、前記第2遮断弁に開閉動作を行わせるパルスショットを繰り返すとともに、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積にガスを充填した後に、前記圧力センサを用いて計測された充填後圧力と、前記第2遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積からガスを吐出した後に、前記圧力センサを用いて計測された吐出後圧力とに基づいて、前記ガス充填容積から排出されるガスの体積流量を算出する一方、前記パルスショットを繰り返して行う態様を変化させることにより、前記体積流量を目標流量に調整する流量制御処理を実行させ、さらに、前記コントローラに、前記流量制御処理にて、前記体積流量を前記目標流量に調整したパルスショットを行ったときに、前記第1遮断弁に開閉動作を行わせ、前記ガス充填容積に前記ガスを充填した充填時間を最適充填時間として記憶する最適充填時間記憶処理と、前記最適充填時間記億処理を実行したプロセスの次に行うプロセスにおける前記流量制御処理にて、最初のパルスショットを行う場合、前記最適充填時間記憶処理にて記憶した前記最適充填時間を用いて前記第1遮断弁に開閉動作を行わせる充填時間制御処理と、を実行させること、を特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0022】
よって、本発明によれば、パルスショットを繰り返してガスの流量を目標流量に制御するパルスショット式流量調整装置について、応答性を改善できる技術を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るパルスショット式流量調整装置の概略構成図である。
図2】制御処理の手順を説明するフローチャートである。
図3】ガス置換処理の手順を説明するフローチャートである。
図4】制御モードの一例である。
図5】流量制御処理の手順を説明するフローチャートである。
図6】コントローラの機能ブロック図である。
図7】補正の手順を説明するイメージ図である。
図8】ラーニング処理の手順を説明するフローチャートである。
図9】従来のパルスショット式流量調整装置のシーケンス図である。
図10】従来のパルスショット式流量調整装置の流量制御例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係るパルスショット式流量調整装置、パルスショット式流量調整方法、および、プログラムの実施形態について図面に基づいて説明する。
【0025】
<パルスショット制御装置の概略構成>
図1に示すように、本形態では、チャンバ230に供給するガスの流量を制御するパルスショット式流量調整装置(以下「流量調整装置」と略す)に、本発明を適用している。
【0026】
チャンバ230は、例えば、真空ポンプ240により真空雰囲気とされ、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition、以下「ALD」と略す)を用いてウエハに所定の膜を成膜する。ALDでは、(a)原料ガスの投入、(b)不活性ガスによるパージ、(c)反応ガスの投入、(d)不活性ガスによるパージを行うサイクルを繰り返すことにより、ウエハに成膜する膜の膜厚を0.1μm単位で調整できる。
【0027】
ALDでは、種類が異なるガスが混じると固まることがある。そのため、原料ガスのガス源211に接続する配管200と、反応ガスのガス源311に接続する配管300と、不活性ガスのガス源411に接続する配管400とが、別々にチャンバ230に接続されている。
【0028】
なお、原料ガスは、例えばTMA(トリメチルアルミニウム)である。反応ガスは、例えばH2O(水蒸気)である。不活性ガスは、例えばN2ガスである。TMAは、常温では固形の材料であり、チャンバ230に供給される場合に気化されて120℃以上の高温ガスとなる。
【0029】
ALDを用いて成膜する場合、各種ガスは供給時間により供給量を管理される。また、ALDでは、上述した(a)~(d)を行うサイクルを、ウエハ1枚あたり数百回繰り返す。この場合、例えば、(a)(c)においてTMAとH2Oをチャンバ230に供給する供給時間はそれぞれ数十msecであり、(b)(d)においてN2ガスをチャンバ230に供給する供給時間(パージ時間)はそれぞれ数sec~数十secである。よって、チャンバ230に供給するガスは、高精度、高頻度、高速で制御する必要がある。そこで、配管200,300,400には、第1遮断弁11と第2遮断弁13を交互に開閉して流量を制御する流量調整装置1A,1B,1Cが配設されている。
【0030】
流量調整装置1の構成を図1を参照しつつ具体的に説明する。流量調整装置1A~1Cは同様に構成されているので、以下の説明では、配管200に配設された流量調整装置1Aについて説明する。また、特に区別する必要がない場合、「流量調整装置1」と総称する。
【0031】
流量調整装置1は、第1遮断弁11と、タンク12と、第2遮断弁13と、圧力センサ14と、を備える。第1遮断弁11は、タンク12の上流側に配設され、加圧されたガス源211に接続されている。第2遮断弁13は、タンク12の下流側に配設され、真空雰囲気とされたチャンバ230に接続されている。タンク12は、第1遮断弁11と第2遮断弁13とが閉鎖されることにより密閉空間となる。本形態のタンク12は、例えば、5~1000ccの容積を有する。タンク12は「ガス充填容積」の一例である。なお、タンク12の代わりに、配管によりガス充填容積を構成してもよい。圧力センサ14は、高温用の真空圧力計である。フィルタ16は、第1遮断弁11の上流側に配設され、流量調整装置1に流入するガスから異物を除去する。
【0032】
第1遮断弁11と第2遮断弁13は、エアオペレイト式の開閉弁である。そして、第1遮断弁11と第2遮断弁13は、120℃以上の高温ガスでも制御可能な弁である。また、第1遮断弁11と第2遮断弁13には、数msec周期で開閉動作することができる高速弁が使用されている。さらに、配管に使用するバルブの口径は、一般的に配管径の4分の1インチである。しかし、第1遮断弁11と第2遮断弁13は、例えば口径が配管径の8分の3インチであるものが選定され、Cv値が大きくされている。第1遮断弁11と第2遮断弁13のCv値は例えば0.6である。このように、Cv値が大きく、高速かつ高頻度で動作できる第1遮断弁11と第2遮断弁13とを、タンク12の上流側と下流側に配置することで、流量調整装置1は、第1遮断弁11と第2遮断弁13の開閉動作に伴う脈動が抑制される。また、流量調整装置1は、絞り部を有する熱式マスフローコントローラよりガスが流れやすく、ガスをチャンバ230に迅速に供給することが可能になる。
【0033】
流量調整装置1は、プロセス中、第1遮断弁11に開閉動作を行わせた後、第2遮断弁13に開閉動作を行わせるパルスショットを高速で繰り返しながら、ガスを目標流量に制御する。本明細書において、「目標流量」は、単位時間あたりの、第2遮断弁13から排出されるガスの体積流量と定義する。そのため、流量調整装置1は、チャンバ230の近傍に配設されている。例えば、第2遮断弁13とチャンバ230は、直接、あるいは、2m以下の配管を介して接続されている。なお、第1遮断弁11と第2遮断弁13は、エアオペレイト式の開閉弁に限らず、例えば電磁式開閉弁でもよい。
【0034】
本形態の流量調整装置1は、コントローラ15により動作を制御される。コントローラ15は、第1遮断弁11と第2遮断弁13と圧力センサ14とに通信可能に接続されている。コントローラ15は「コントローラ」の一例である。
【0035】
コントローラ15は、周知のマイクロコンピュータであり、CPU21と、メモリ22と、を備える。メモリ22は、不揮発性メモリと揮発性メモリを含む。メモリ22は、各種のプログラムやデータを記憶している。CPU21は、メモリ22にデータを一時的に記憶させながら、メモリ22に記憶されているプログラムを実行し、各種処理を実行する。
【0036】
例えば、メモリ22には、流量調整装置1の動作を制御するための制御プログラム31が記憶されている。制御プログラム31は、例えば、タンク12に残留するガスをガス源211から供給されるガスに置換するガス置換処理を行う。また、制御プログラム31は、ガスの流量を制御する流量制御処理を行う。また、制御プログラム31は、ガスをタンク12に充填する充填時間と第2遮断弁13から吐出されるガスの体積流量との関係を学習するラーニング処理を行う。ガス置換処理、流量制御処理、ラーニング処理については後述する。なお、制御プログラム31は「プログラム」の一例である。
【0037】
また、メモリ22の不揮発性メモリには、制御プログラム31に用いられるデータが記憶されている。例えば、メモリ22は、流量制御処理における最初のパルスショットで使用される最適充填時間が記憶されている。最適充填時間は、例えば、制御プログラム31をインストールした時に初期値が記憶され、流量制御処理が繰り返されることで随時更新される。また例えば、メモリ22には、過去のプロセスの流量制御処理で用いた目標流量が記憶されている。また例えば、メモリ22には、ラーニング処理にて学習した充填時間と体積流量との関係を示す補正グラフが記憶されている。
【0038】
コントローラ15は、さらに、時間を計測する計時部23と、外部との通信を制御する通信インタフェース24(以下「通信IF24」と略す)とを備える。コントローラ15は、通信IF24を介して、半導体製造装置の動作を制御する上位コントローラ500に通信可能に接続されている。コントローラ15は上位コントローラ500に有線で接続されてもよいし、無線通信可能に接続されてもよい。
【0039】
このような流量調整装置1では、フィルタ16と第1遮断弁11と第2遮断弁13と圧力センサ14とコントローラ15とが互いに接続された状態で図示しないケースに内設されることで、ユニット化することもできる。その場合、流量調整装置1は、取り扱い易く、通信IF24を上位コントローラ500に接続する以外の配線作業を行う必要がない。
【0040】
ただし、コントローラ15は、例えば上位コントローラ500などの外部コントローラに組み込まれ、図示しないケースの外部にあってもよい。また、例えば制御プログラム31を上位コントローラ500に組み込むことで、上位コントローラ500にコントローラ15の機能を持たせ、上位コントローラ500を「流量調整装置の動作を制御するコントローラ」としてもよい。
【0041】
<パルスショット制御装置の動作説明:制御処理>
続いて、流量調整装置1の動作について説明する。図2は、制御処理の手順を示すフローチャートである。流量調整装置1は、電源が投入されたことを契機に、CPU21が制御プログラム31を起動させ、図2に示す制御処理を実行する。本形態では、流量調整装置1は、上位コントローラ500からの指示に応じてモードを受け付け、モードに対応する処理を実行する。なお、流量調整装置1が情報を入力するための操作部を有する場合には、操作部を用いてモードを受け付けてもよい。
【0042】
CPU21は、まず、指示を受け付けたか否かを判断する(S10)。例えば、制御プログラム31は、起動後、流量調整装置1の制御が可能になったことを示す制御可通知を上位コントローラ500に送信する。制御可通知には、流量調整装置1を識別する識別情報が付されている。制御可通知を受信した上位コントローラ500は、通知可通知に付された識別番号に対応する流量調整装置1に、ガスの流量制御に必要な指示を適宜送信する。CPU21は、上位コントローラ500から送信された指示を通信IF24を用いて受信しない場合、指示を受け付けていないと判断して(S10:NO)、待機する。
【0043】
これに対して、CPU21は、上位コントローラ500から送信された指示を通信IF24を用いて受信した場合、指示を受け付けたと判断する(S10:YES)。この場合、CPU21は、受け付けた指示を解析して、モードを判断する(S20)。S20の処理は「モード設定処理」の一例である。本形態のモードには、ガス置換モードと、流量制御モードと、ラーニングモードと、がある。なお、モードは、これら全てを含む必要がなく、例えば、流量制御モードのみを有していてもよい。また、これらのモードと別のモードがあってもよい。
【0044】
ガス置換モードは、ガス置換処理を実行するモードである。例えば、電源投入された流量調整装置1は、タンク12に空気が混入している可能性がある。空気が混入したガスは、正常時とガス成分の分子量が異なり、成膜品質を低下させる虞がある。そこで、上位コントローラ500は、制御可通知を送信した流量調整装置1にガス置換処理の実行を指示するガス置換指示を送信する。
【0045】
CPU21は、通信IF24を用いて、上位コントローラ500から送信されたガス置換指示を受信すると、ガス置換モードが設定されたと判断し(S20:ガス置換モード)、ガス置換処理を実行する(S30)。CPU21は、ガス置換処理が終了すると、S10の処理に戻る。ガス置換処理については後述する。
【0046】
流量制御モードは、流量制御処理を実行するモードである。例えば、上位コントローラ500は、TMAをチャンバ230に所定時間(例えば数十msec)供給するプロセスを実行する場合、流量制御の開始を指示する流量制御開始指示を流量調整装置1に送信する。なお、上位コントローラ500は、1枚のウエハの1層分の成膜が完了すると、流量制御の終了を指示する流量制御終了指示を流量調整装置1に送信し、当該プロセスを終了する。
【0047】
CPU21は、通信IF24を用いて、上位コントローラ500から送信された流量制御開始指示を受信すると、流量制御モードが設定されたと判断し(S20:流量制御モード)、流量制御処理を実行する(S50)。CPU21は、流量制御処理が終了すると、S10の処理に戻る。流量制御処理については後述する。
【0048】
ラーニングモードは、ラーニング処理を実行するモードである。例えば、ALDで使用するTMAは、固形材料を気化させたものであるが、固形材料が減ると、蒸発量が減る。つまり、固形材料の残量によって、ガスの使用条件が変わることがある。そのため、上位コントローラ500は、ガスの使用条件によって、目標流量を変えることがある。このような場合、目標流量の変化に追従してパルスショットの態様を応答性良く変化させることが望ましい。
【0049】
そこで、上位コントローラ500は、ラーニング処理の実行を指示するラーニング指示を、制御可通知を送信した流量調整装置1に送信する。CPU21は、通信IF24を用いて、上位コントローラ500から送信されラーニング指示を受信すると、ラーニングモードが設定されたと判断し(S20:ラーニングモード)、ラーニング処理を実行する(S40)。CPU21は、ラーニング処理が終了すると、S10の処理に戻る。ラーニング処理については後述する。
【0050】
なお、上位コントローラ500は、例えば、制御可信号を受信した後にラーニング指示を1回だけ送信してもよいし、ガスの流量を制御するプロセスの前に、毎回、ラーニング指示を送信してもよい。また例えば、上位コントローラ500は、プロセスを所定回数(例えば20回)行う毎に、ラーニング指示を送信してもよい。
【0051】
CPU21は、流量調整装置1の電源が切られると、制御プログラム31を終了させる。制御プログラム31は、終了する前に、流量調整装置1の制御が不可能であることを示す制御不可通知を上位コントローラ500に送信する。制御不可通知には、流量調整装置1の識別情報が付されている。制御不可通知を受信した上位コントローラ500は、制御不可通知に付された識別情報に対応する流量調整装置1へ指示を送信しなくなり、無駄な通信を行わなくなる。
【0052】
なお、流量調整装置1は、上位コントローラ500からの指示、あるいは、上位コントローラ500の電源の投入または切断に応じて、電源が投入されたり、切断されたりしてもよい。この場合、CPU21は制御可通知や制御不可通知の送信を省略してもよい。
【0053】
<ガス置換処理>
次に、上述したガス置換処理について説明する。図3は、ガス置換処理の手順を説明するフローチャートである。ガス置換処理を実行するCPU21は、まず、制御モードを判断する(S301)。上位コントローラ500は、ガス置換指示に、流量制御時の制御モードを付している。また、ガス置換指示には、流量制御時におけるタンク12の目標圧力が付されている。
【0054】
図4は、制御モードの一例である。制御モードには、例えば、第1~第3制御モードがある。図4(a)に示す第1制御モードは、プロセスの最初(1回目)のパルスショットからガスの流量を目標流量Qに到達させるモードである。図4(b)に示す第2制御モードは、N1回目のパルスショットまでガスの流量を徐々に増加させ、目標流量Qに到達させるモードである。図4(c)に示す第2制御モードは、N2回目のパルスショットまでガスの流量を徐々に減少させ、目標流量Qに到達させるモードである。N1、N2は、2以上の自然数である。N1,N2は、予め固定された固定値でもよいし、任意に設定可能な変動値でもよいし、任意に変更可能な可変値でもよい。
【0055】
図3に戻り、CPU21は、制御モードが第1制御モードであると判断した場合(S301:第1制御モード)、弁を閉じている第1遮断弁11と第2遮断弁13に開動作を同時に行わせる(S303)。上位コントローラ500は、ガス置換指示を流量調整装置1に送信する場合、真空ポンプ240を駆動している。そのため、ガス源211側とチャンバ230側とで差圧が生じ、配管200、タンク12、チャンバ230に残存するガスが真空ポンプ240へ流れ、排出される。これにより、例えば、配管200やタンク12やチャンバ230に残留する空気の混入したガスが、ガス源211から供給されたガスに置換される。このとき、第1遮断弁11と第2遮断弁13のCv値が大きいので、ガスの置換時間が短くて済む。
【0056】
その後、CPU21は、第2遮断弁13の開動作を維持したまま、第1遮断弁11に閉動作を行わせる(S305)。これにより、タンク12の圧力が徐々に低下する。第1遮断弁11を閉じたCPU21は、圧力センサ14を用いてタンク12の圧力を測定する(S307)。CPU21は、圧力センサ14を用いて測定する圧力が、ガス置換指示に付された第1制御モードの目標圧力P101に到達したか否かを判断する(S309)。
【0057】
CPU21は、到達しないと判断する場合(S309:NO)、目標圧力P101に到達するのを待つ。一方、CPU21は、到達したと判断する場合(S309:YES)、第1遮断弁11の閉動作を維持したまま、第2遮断弁13に閉動作を行わせる(S311)。その後、CPU21は、処理を終了する。
【0058】
これに対して、CPU21は、制御モードが第2制御モードであると判断した場合(S301:第2制御モード)、S313~S321の処理を実行する。S313~S321の処理は、上述のS303~S311と同様なので、説明を省略する。なお、目標圧力P102は、ガス置換指示に付された第2制御モードの目標圧力であり、第1制御モードの目標圧力P101と同じ値でも、異なる値でもよい。
【0059】
一方、CPU21は、制御モードが第3制御モードであると判断した場合(S301:第3制御モード)、上述したS303と同様に、第1遮断弁11と第2遮断弁13に開動作を同時に行わせる(S323)。その後、CPU21は、第1遮断弁11の開動作を維持したまま、第2遮断弁13に閉動作を行わせる(S325)。これにより、タンク12の圧力が徐々に上昇する。第2遮断弁13を閉じたCPU21は、圧力センサ14を用いてタンク12の圧力を測定する(S327)。CPU21は、圧力センサ14を用いて測定する圧力が、ガス置換指示に付された第3制御モードの目標圧力P103に到達したか否かを判断する(S329)。
【0060】
CPU21は、到達しないと判断する場合(S329:NO)、目標圧力P103に到達するのを待つ。一方、CPU21は、到達したと判断する場合(S329:YES)、第2遮断弁13の閉動作を維持したまま、第1遮断弁11に閉動作を行わせる(S331)。その後、CPU21は、処理を終了する。
【0061】
従来、第1遮断弁11と第2遮断弁13との何れか一方を常時閉状態する方法でガス置換を行っていた。しかし、この方法では、、ガスの置換に要する時間であるガス置換時間が長くかかる。これに対して、本形態の流量調整装置1は、ガス置換を行う場合、第1遮断弁11と第2遮断弁13とに開動作を同時に行わせることで、配管200やタンク12のガスを置換する。すなわち、本形態の流量調整装置1は、ガス源211に接続された第1遮断弁11と、前記第1遮断弁11に接続された第2遮断弁13と、前記第1遮断弁11と前記第2遮断弁13の間のタンク12(ガス充填容積)と、前記タンク12の圧力を計測する圧力センサ14と、CPU21(コントローラ)と、を備え、前記CPU12は、前記第1遮断弁11と前記第2遮断弁13に開閉動作を行わせるパルスショットを繰り返すとともに、前記圧力センサ14で計測された前記タンク12の充填後圧力と排出後圧力に基づいて、前記タンク12から排出されるガスの体積流量を算出する一方、前記パルスショットを繰り返して行う態様を変化させることにより、前記第2遮断弁13から排出される前記ガスの前記体積流量を目標流量に調整するパルスショット式流量調整装置において、前記CPU21は、前記第1遮断弁11と前記第2遮断弁13とに弁開動作を同時に行わせ、前記タンク12内のガスを前記ガス源211から供給される前記ガスに置換するガス置換処理を実行する。このような流量調整装置1では、ガス置換時に流量制御時のようにガス充填容積の内圧を設定圧力に調整する必要がない。そのため、第1遮断弁11と第2遮断弁13を同時に開動作を行わせ、ガス源211から供給されるガスをガス充填容積に流し続けてガス置換を行うことで、第1遮断弁11と第2遮断弁13の何れか一方を常時閉状態する方法でガス置換を行う場合より、ガス置換時間を短縮できる。特に、流量調整装置1の第1遮断弁11と第2遮断弁13は、配管に使用する通常の弁よりCv値が大きくされている。そのため、タンク12のガス置換時間を短くできる。
【0062】
また、流量調整装置1は、ガス源211の元圧が変化しても、ガスを置換した後、タンク12の圧力を、第1~第3制御モードに対応する目標圧力P101~P103に調整する。そのため、第1~第3制御モードでプロセスを行う際にタンク12の圧力のバラツキが低減し、流量制御の応答性を向上させることが期待できる。
【0063】
なお、S303,S313,S323の処理は「置換処理」の一例である。また、S309~S311、S319~S321、S329~S331の処理は「圧力調整処理」の一例である。第1~第3制御モードの目標圧力P101~P103は、ガス置換指示に付されるものに限らない。例えば、流量調整装置1が操作部を備える場合には、操作部を介して目標圧力P101~P103を受け付けてもよい。
【0064】
<流量制御処理>
次に、上述した流量制御処理について説明する。図5は、流量制御処理の手順を説明するフローチャートである。なお、図5は、第1制御モードにおける応答性を改善する手順を示す。
【0065】
CPU21は、上位コントローラ500から流量制御開始指示を受信し、流量制御処理を開始すると、先ず図5に示すように、目標流量Qを受け付ける(S501)。上位コントローラ500は、流量制御開始指示と共に、チャンバ230にガスを供給する際の目標流量Qを付している。CPU21は、上位コントローラ500が送信した流量制御開始指示を通信IF24を用いて受信すると、その流量制御開始指示に付された目標流量Qをメモリ22に記憶する。なお、流量調整装置1が操作部を備える場合、CPU21は、操作部を用いて入力された目標流量Qをメモリ22に記憶してもよい。
【0066】
目標流量Qを受け付けたCPU21は、最初のパルスショットか否かを判断する(S503)。本明細書において、「最初のパルスショット」は、流量制御開始指示を受け付けた後、最初に行うパルスショットと定義する。
【0067】
CPU21は、最初のパルスショットであると判断する場合(S503:YES)、メモリ22に記憶されている最適充填時間txを、充填時間t1に代入する(S505)。充填時間t1は、現在のパルスショットにて、第1遮断弁11の開動作を維持し、タンク12にガスを充填する時間である。それから、CPU21は、メモリ22に記憶されている前回の目標時間Qoldを取得する(S507)。なお、S505、S507の処理は逆順でもよい。
【0068】
その後、CPU21は、S501にて受け付けた目標流量Qと、S507にて取得した前回の目標流量Qoldとが、同じか否かを判断する(S509)。CPU21は、同じであると判断する場合(S509:YES)、充填時間t1の間、タンク12にガスを充填する(S511)。すなわち、第1遮断弁11と第2遮断弁13は、流量制御処理を開始するとき、閉じている。そこで、CPU21は、第1遮断弁11に開動作を行わせ、タンク12にガスを充填し始める。CPU21は、計時部23を用いて、第1遮断弁11の開動作を維持する時間である第1開動作維持時間を計測する。CPU21は、第1開動作維持時間がS503にて取得した充填時間t1になるまで、第1遮断弁11の開動作を維持する。CPU21は、計時部23を用いて充填時間t1が経過したことを検知すると、第1遮断弁11に閉動作を行わせ、ガスの充填を終了する。ガスの充填終了と同時に、CPU21は計時部23をリセットする。
【0069】
ガスの充填を完了したCPU21は、第1制定時間t2が経過したか否かを判断する(S513)。ガスを充填した直後のタンク12の圧力は、断熱圧縮により不安定である。また、第1遮断弁11の応答遅れも考えられる。そこで、第1遮断弁11に閉動作を行わせた後、第2遮断弁13に開動作を行わせるまでの間に、第1制定時間t2を設けている。本形態では、第2遮断弁13からガスを吐出する吐出時間と、第2遮断弁13に閉動作を行わせてから、第1遮断弁11に開動作を行わせるまでの時間と、を一定にしている。また、第1遮断弁11に開動作を行わせてから、次に第1遮断弁11に開動作を行わせる周期を一定にしている。よって、充填時間t1が決められることにより、第1制定時間t2が自動的に決められる。CPU21は、第1遮断弁11に閉動作を行わせた後、計時部23を用いて、時間を計測し始める。CPU21は、計時部23を用いて計測する時間が第1制定時間t2に達しない場合、第1制定時間t2が経過していないと判断し(S513:NO)、待機する。
【0070】
一方、CPU21は、計時部23を用いて計測する時間が第1制定時間t2に達すると、第1制定時間t2が経過したと判断する(S513:YES)。すると、CPU21は、充填後圧力P1を取得する(S515)。すなわち、CPU21は、圧力センサ14を用いて第1制定時間t2が経過したときのタンク12の圧力を計測し、計測した圧力を充填後圧力P1としてメモリ22に一時的に記憶する。
【0071】
充填後圧力P1を取得したCPU21は、吐出時間t3の間、ガスを第2遮断弁13から吐出する(S517)。吐出時間t3は、上述したように予め定められている。CPU21は、第1遮断弁11に閉動作を行わせた後、充填後圧力P1を取得すると直ぐに、第2遮断弁13に開動作を行わせる。CPU21は、計時部23を用いて、第2遮断弁13の開動作を維持する時間である第2開動作維持時間を計測する。CPU21は、第2開動作維持時間が吐出時間t3になるまで、第2遮断弁13の開動作を維持する。CPU21は、吐出時間t3が経過すると、第2遮断弁13に閉動作を行わせ、ガスの吐出を終了する。ガスの吐出終了と同時に、CPU21は計時部23をリセットする。
【0072】
ガスの吐出を終了したCPU21は、第2制定時間t4が経過したか否かを判断する(S519)。ガスを吐出した直後のタンク12の圧力は、断熱膨張により不安定である。また、第2遮断弁13の閉動作に応答遅れがあるとも考えられる。そこで、第2遮断弁に閉動作を行わせた後、第1遮断弁11に開動作を行わせるまでの間に、第2制定時間t4を設けている。第2制定時間t4は上述したように予め定められている。CPU21は、第2遮断弁13を閉じた後、計時部23を用いて、時間を計測し始める。CPU21は、計時部23を用いて計測する時間が第2制定時間t4に達しない場合、第2制定時間t4が経過していないと判断し、待機する(S519:NO)。
【0073】
一方、CPU21は、計時部23を用いて計測する時間が第2制定時間t4に達すると、第2制定時間t4が経過したと判断する(S519:YES)。すると、CPU21は、吐出後圧力P2を取得する(S521)。すなわち、CPU21は、圧力センサ14を用いて第2制定時間t4が経過したときのタンク12の圧力を計測し、計測した圧力を吐出後圧力P2としてメモリ22に一時的に記憶する。
【0074】
CPU21は、当該パルスショットにより第2遮断弁13から吐出される体積流量QAを算出する(S523)。すなわち、流量調整装置1は、下記数式1を用いて、現在の、単位時間あたりの、第2遮断弁13から吐出されるガスの体積流量QAを求める。
【0075】
【数1】
【0076】
パルスショットの回数は、プロセスの時間とパルスショットの周期とにより決定される。吐出量は、下記数式2により求められる。ΔPは、差圧である。Pは、大気圧(101.3kPa)である。Vは、タンク12の容積(cc)ある。Tは、流体温度(℃)である。Tは、チャンバ230に供給するガスの温度である。
【0077】
【数2】
【0078】
流体制御装置1において、P,Vは既定値である。また、例えばTを20℃とした場合、吐出量を20℃換算で求めるものとする。差圧ΔPは、S515にて取得した充填後圧力P1と。S521にて取得した吐出後圧力P2との差である。よって、吐出量は、充填後圧力P1と吐出後圧力P2との差圧に応じて変動する。
【0079】
CPU21は、S515,S521にてメモリ22に一時的に記憶した充填後圧力P1と吐出後圧力P2を、上述した数式2に代入し、吐出量を求める。CPU21は、数式1のパルスショットの回数に、当該プロセスにおけるパルスショットの回数を代入し、数式2で求めた吐出量に掛け合わせることで、体積流量QAを算出する。
【0080】
その後、CPU21は、S521にて算出した体積流量QAを用いて、PID演算にて次の充填時間t1newを算出する(S525)。
【0081】
PID演算処理について図6を参照して説明する。図6は、コントローラ15の機能ブロック図である。コントローラ15は、充填後圧力P1と吐出後圧力P2とを用いて体積流量QAを算出する体積流量算出回路53を備える。体積流量算出回路53は、算出した体積流量QAを偏差算出部51に出力する。偏差算出部51は、S501にて受け付けた目標流量Qを入力して、体積流量算出回路53から入力した体積流量QAと比較し、目標流量Qと体積流量QAとの差からなる制御偏差を求める。偏差算出部51は、求めた制御偏差をPID演算回路52に出力する。PID演算回路52は、偏差算出部51から入力した制御偏差を用いて、下記の数式3にて次の充填時間t1newを算出する。Kpは比例乗数である。Kiは積分乗数である。Kdは微分乗数である。e(t)は今回の偏差である。e(t-1)は前回の偏差である。
【0082】
【数3】
【0083】
タンク12は、第1遮断弁11の開閉動作により、タンク12にガスを充填する充填量が調整される。そのため、吐出時間t3と第2制定時間t4を一定とした場合、充填時間t1を変化させることで、第2遮断弁13から排出するガスの体積流量QAを調整できる。よって、次の充填時間t1newを算出することで、次のパルスショットの態様が現在のパルスショットの態様と変えられ、体積流量QAを目標流量Qにより近づけることが可能になる。
【0084】
図5に戻り、S525にて次の充填時間t1newを算出したCPU21は、パルスショットで使用した目標流量Qを、前回の目標流量Qoldに上書きし、メモリ22に記憶する(S527)。そして、CPU21は、目標流量Qが変更されたか否かを判断する(S529)。CPU21は、目標流量Qが変更されていないと判断する場合(S529:NO)、流量制御終了指示を受け付けたか否かを判断する(S531)。すなわち、CPU21は、上位コントローラ500が送信した流量制御終了指示を通信IF24を用いて受信した場合、流量制御終了指示を受け付けたと判断し、受信しない場合、流量制御終了指示を受け付けないと判断する。なお、流量調整装置1が操作部を備える場合、CPU21は、操作部を介して流量制御終了指示を受け付けてもよい。また、制御プログラム31は、プロセス時間の登録を受け付け、流量制御開始指示を受け付けた後、プロセス時間が経過したときに、自動的に流量制御終了指示を受け付けたと判断してもよい。
【0085】
CPU21は、流量制御指示を受け付けないと判断する場合(S531:NO)、S503の処理に戻り、最初のパルスショットか否かを判断する。この時点では、最初のパルスショットではないので(S503:NO)、CPU21は、S525で算出した次の充填時間t1newを充填時間t1に代入する(S537)。これにより、今回のパルスショットでの充填時間t1が、前回のパルスショットの充填時間t1から変更され、パルスショットの態様が変更される。その後、CPU21は、S507に進む。S507以降の処理は上記と同様なので説明を省略する。
【0086】
CPU21は、S503~S531、S537の処理を実行するパルスショットを繰り返すことで、体積流量を目標流量に調整する精度が向上する。
【0087】
CPU21は、流量制御終了指示を受け付けたと判断した場合(S531:YES)、最後のパルスショットで使用した充填時間t1を、メモリ22の不揮発性メモリに最適充填時間txとして記憶する(S533)。つまり、前回のプロセスで記憶した最適充填時間txを、今回のプロセスでの最後のパルスショットで使用した充填時間t1に書き換える。そして、CPU21は、処理を終了する。
【0088】
これにより、CPU21は、次回のプロセスについて流量制御指示を受け付け、流量制御処理を実行する場合に、前回のプロセスにて最後のパルスショットで使用した充填時間t1を用いて、次回のプロセスの最初のパルスショットを行う。そのため、次回のパルスショットでは、最初のパルスショットから第2遮断弁13から排出されるガスの流量を目標流量Qに調整する可能性が高くなる。よって、流量調整装置1は、流量制御開始指示を受信してから、ガスの流量を目標流量Qに調整するまでの応答時間を短くできる。
【0089】
なお、図2のS500に示す流量制御処理、図5に示す処理は、「流量制御処理」の一例である。図5のS533の処理は「最適充填時間記憶処理」の一例である。S505の処理は「充填時間制御処理」の一例である。
【0090】
ところで、上述したように、TMAのような固形材料を気化させて使用するガスの場合、固形材料の減り具合によって、固形材料の蒸発量が変化することがある。また、ガス源211の元圧が変化することがある。つまり、ガスの使用条件がプロセス毎に変わったり、プロセスの途中で変わったりすることがある。この場合、上位コントローラ500は、チャンバ230に供給するガスの分子量を安定させるため、ガスの使用条件の変化に応じて目標流量Qを変更する。
【0091】
CPU21は、目標流量Qが変更された場合に、変更前に行ったパルスショットで算出した充填時間t1を使用すると、ガスを変更後の目標流量に調整できない虞がある。そこで、CPU21は、目標流量Qの変更に応じて、充填時間t1を変更する補正を行う。この場合、CPU21は、後述するラーニング処理にてメモリ22に記憶した補正グラフを用いて充填時間t1を調整し、補正時間を短くしている。
【0092】
すなわち、CPU21は、例えば、流量制御指示を受け付けた場合に、今回のプロセスにおける目標流量Qが前回のプロセスにおける目標流量Qoldと異なるとき(S509:NO)、充填時間t1を補正する(S539)。
【0093】
また例えば、CPU21は、今回のプロセスの途中で目標流量Qが目標流量Qnewに変更された場合(S529:YES)、目標流量Qに変更後の目標流量Qnewを代入する(S535)。その後、CPU21は、上述したS503~S509、S537の処理を行う。CPU21は、S505の処理にて、目標流量Qが前回の目標流量Qoldと異なると判断するので(S505:NO)、充填時間t1を補正する(S539)。
【0094】
充填時間t1の補正について図7を参照して説明する。メモリ22には、後述するラーニング処理にて生成した補正グラフが記憶されている。CPU21は、充填時間t1を補正する場合、例えば図7(a)に示すような補正グラフG1をメモリ22から読み出す。補正グラフG1は、体積流量と充填時間との関係を示すグラフである。CPU21は、読み出した補正グラフG1にて、目標流量Qに対応する体積流量に関連付けられた充填時間を求め、充填時間t1を求めた充填時間に変更する。これにより、目標流量Qが前回の目標流量Qoldより少ない場合には、充填時間t1がその偏差に応じて短くされる。一方、目標流量Qが前回の目標流量Qoldより多い場合には、充填時間t1がその偏差に応じて長くされる。
【0095】
このように充填時間t1を補正することで、ガスの流量を変更前の目標流量Qから変更後の目標流量Qnewに変更するのに要するパルスショットの回数が、図7(b)に示すように補正しない場合より、図7(c)に示すように補正した方が、少なくなる。つまり、CPU21は、目標流量Qの変更に応じて、第2遮断弁13から排出するガスの体積流量を応答性良く変更できる。なお、S539の処理は「補正処理」の一例である。
【0096】
<ラーニング処理>
次に、上述したラーニング処理について説明する。図8は、ラーニング処理の手順を説明するフローチャートである。なお、図8に示す処理は「ラーニング処理」の一例である。
【0097】
CPU21は、まず、仮の充填時間tyを充填時間t1に代入する(S401)。仮の充填時間tyは、例えば、メモリ22に記憶されている最適充填時間txでもよい。また、仮の充填時間tyは、上位コントローラ500が送信するラーニング指示に付されたものでもよい。あるいは、仮の充填時間tyは、制御プログラム31にて規定されていてもよい。
【0098】
CPU21は、S401にて取得した充填時間t1に基づいて、S403~S415の処理を、上述した図5の流量制御処理に示すS511~S523の処理と同様にして実行する。S403~S415の処理の説明は割愛する。
【0099】
図8に示すS415の処理にて体積流量QAを算出したCPU21は、体積流量QAが安定したか否かを判断する(S417)。すなわち、CPU21は、S415の処理にて算出した体積流量QAと、当該ラーニング処理にて先に算出した体積流量QAとから、体積流量が安定したか否かを判断する。CPU21は、例えば、今回算出した体積流量QAが先に算出した体積流量QAに対して変化した変化率が所定の閾値を超える場合、体積流量QAが安定していないと判断する(S417:NO)。この場合、CPU21は、S403以降の処理を繰り返す。これにより、当該ラーニング処理にて、充填時間t1に対応する体積流量QAがメモリ22に蓄積して記憶される。
【0100】
CPU21は、例えば、今回算出した体積流量QAが先に算出した体積流量QAに対して変化した変化率が所定の閾値以下である場合、体積流量QAが安定したと判断する(S417:YES)。この場合、CPU21は、完了信号を出力する(S419)。すなわち、CPU21は、パターンの取得が完了したことを示す完了信号をメモリ22に出力する。メモリ22には、当該ラーニング処理にて取得すべきパターンの数(本形態では「3」)が記憶されている。完了信号を入力したメモリ22は、パターンの数を1つ減らす。これにより、CPU21は、あと何回、上記処理を繰り返せばよいか、判断できるようになる。なお、パターンの数は複数であれば、「3」に限定されない。
【0101】
CPU21は、充填時間t1と体積流量QAとを、メモリ22に記憶する(S421)。つまり、CPU21は、当該パターンの取得時に使用した充填時間t1と、完了信号を送信する直前に算出した体積流量QAとを関連付け、例えば、図7(a)に示すようにパターンA1としてメモリ22に記憶する。
【0102】
図8に戻り、CPU21は、3パターンを所定数記憶したか否かを判断する(S423)。すなわち、CPU21は、メモリ22に記憶している、当該ラーニング処理にて取得すべきパターンの数が、「0」になったか否かを判断する。
【0103】
CPU21は、当該ラーニング処理にて取得すべきパターンの数が「0」でない場合、3パターンを記憶していないと判断する(S423:NO)。この場合、CPU21は、充填時間t1の変更を受け付ける(S427)。充填時間t1の変更は、制御プログラム31に予め定められた変更条件に応じて行ってもよいし、上位コントローラ500からの指示に応じて行ってもよい。流量調整装置1が操作部を備えるのであれば、利用者が操作部を介して入力した変更指示に応じて充填時間t1を変更してもよい。
【0104】
その後、CPU21は、S403の処理に戻る。CPU21は、変更後の充填時間t1に従い、上述したS403の以降の処理を行う。これにより、CPU21は、例えば図7(b)に示すように、パターンA1と異なるパターンA2がメモリ22に記憶される。
【0105】
図8に戻り、上記処理を繰り返し、当該ラーニング処理にて取得すべきパターンの数が「0」になった場合、CPU21は、3パターンを記憶したと判断する(S423:YES)。この場合、CPU21は、補正グラフを生成してメモリ22に記憶する(S425)。すなわち、CPU21は、図7(a)に示すように、メモリ22に記憶した3つのパターンA1~A3に基づいて、充填時間と体積流量との関係を示す補正グラフG1を作成し、メモリ22に記憶する。その後、CPU21は、ラーニング処理を終了する。
【0106】
これにより、流量調整装置1は、自装置の特性に適した補正グラフG1を取得し、図5に示す流量制御処理のS539にて利用できるようになる。
【0107】
以上説明したように、本形態の流量調整装置1は、プロセスを実行する場合の最初のパルスショットで、前回のプロセスで記憶した最適充填時間txを用いて第1遮断弁11に開閉動作を行わせる。これにより、最初のパルスショットでは、第2遮断弁13から排出するガスの体積流量QAを目標流量Qに調整するのに適したガスがタンク12に充填され、第2遮断弁13から吐出されるガスの体積流量QAが目標流量Q、あるいは、目標流量Qに近い値に調整される可能性が高くなる。よって、本形態の流量調整装置1によれば、プロセスを開始してからガスを目標流量に安定させるまでの応答時間が短くなり、応答性を改善することができる。
【0108】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。チャンバ230では、ALD以外の方法でウエハに膜を成膜してもよい。また、流量調整装置1は、半導体製造装置に限らず、他の装置に適用してもよい。
【0109】
例えば、図5のS533にて記憶する最適充填時間txは、前回のプロセスでの最後のパルスショットにおける充填時間t1でなくてもよい。例えば、前回のプロセスでパルスショット毎に、充填時間t1と体積流量とタンク12の圧力とを関連付けて記憶し、次のプロセスの目標圧力に最も近いタンク12の圧力に関連付けられた充填時間t1を最適充填時間txとしてもよい。ただし、最後のパルスショットは、次のプロセスでの最初のパルスショットとガスの使用条件が最も近いと考えられる。そこで、上記形態のように、体積流量QAを目標流量Qに調整している可能性が高い最後のパルスショットで計測した充填時間t1を、最適充填時間txとして記憶することで、最適充填時間txを記憶する際の処理負荷やメモリ負荷を軽減できる。
【0110】
例えば、図8に示すラーニング処理と図5のS539に示す処理を省略してもよい。但し、上記形態のように、目標流量Qが直前のプロセスで使用した目標流量Qoldから変更されたり、流量制御処理の途中で変更された場合に、予め学習しておいた充填時間と体積流量との関係を示す補正グラフG1に基づいて、目標流量と変更後の目標流量との差分に応じて最適充填時間を補正することで、ガスの流量を変更後の目標流量に迅速に調整することが可能になる。
【0111】
例えば、図3のS303,S313,S323の処理に代えて、第1遮断弁11と第2遮断弁13に開閉動作を交互に行わせてガスを置換してもよい。ただし、本形態のように、ガス置換を行う場合、第1遮断弁11と第2遮断弁13とを同時に開動作させることで、ガス源211から供給されるガスがタンク12に流通し、タンク12に残存するガスと置換されやすくなる。これによれば、第1遮断弁11と第2遮断弁13とを交互に開閉してガス置換を行う場合より、ガスを早く置換することができる。
【0112】
例えば、図3のS305~S311,S315~S321,S325~S331の処理を省略してもよい。例えば、開動作している第1遮断弁11と第2遮断弁13に閉動作を同時に行わせ、圧力調整せずにガス置換を終了させてもよい。ただし、上記形態のように、第1遮断弁11と第2遮断弁13に開動作を同時に行わせ、タンク12のガスを置換した後、第1遮断弁11と第2遮断弁13に閉動作を行わせるタイミングによってタンク12の圧力を、流量制御処理を実行する場合のタンク12の目標圧力に調整することで、ガスを置換した後のプロセスでは、最初のパルスショットからタンク12の圧力が目標圧力に制御されているので、タンク12の圧力のばらつきによる応答時間の遅れを抑制できる。
【0113】
例えば、図2に示すように、モードの設定に応じて処理を実行しなくてもよい。例えば、コントローラ15は、ガス置換処理と、流量制御処理と、ラーニング処理とを個別に行ってもよい。ただし、上記形態のように、流量制御モードとガス置換モードとラーニングモードの設定に応じて流量制御処理、ガス置換処理、ラーニング処理を実行することで、任意のタイミングで各処理を実行でき、使い勝手が良い。
【0114】
なお、上記形態で説明した各フローチャートの処理は、矛盾のない範囲で処理の順番を変更してもよい。なお、制御プログラム31を記憶する記憶媒体も、新規で有用な発明である。
【符号の説明】
【0115】
1 パルスショット式流量調整装置
11 第1遮断弁
12 タンク
13 第2遮断弁
14 圧力センサ
15 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10