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特許7122336自己癌抗原特異的CD8+T細胞の分離及び増殖方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】自己癌抗原特異的CD8+T細胞の分離及び増殖方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20220812BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220812BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
C12N5/0783
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020079674
(22)【出願日】2020-04-28
(62)【分割の表示】P 2018225159の分割
【原出願日】2015-03-11
(65)【公開番号】P2020124214
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】10-2014-0029198
(32)【優先日】2014-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514039912
【氏名又は名称】ナショナル キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】クォン, ビョン セ
(72)【発明者】
【氏名】カン, ヒョンクィ
(72)【発明者】
【氏名】キム, クァンヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨンホ
(72)【発明者】
【氏名】パク, ビョンキュ
(72)【発明者】
【氏名】パク, サンユン
(72)【発明者】
【氏名】パク, サンジェ
(72)【発明者】
【氏名】オム, ヒョンソク
(72)【発明者】
【氏名】オー, ホシク
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ホン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ドンギル
(72)【発明者】
【氏名】イ, スンフン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ヨンジュ
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジンス
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ボムギュ
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-507627(JP,A)
【文献】特表2009-536036(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0261307(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0011821(KR,A)
【文献】Mizukoshi et al,Hepatology,2006年,Vol. 43, No. 6,p. 1284-1294
【文献】Jager, E., et al.,Simultaneous Humoral and Cellular Immune Response against Cancer-Testis Antigen NY-ESO-1: Definition,Journal of Experimental Medicine,1998年,Vol.187,pp.265-270
【文献】Tsuboi, A., et al.,Enhanced induction of human WT1-specific cytotoxic T lymphocytes with a 9-mer WT1 peptide modified a,Cancer lmmunology lmmunotherapy,2002年,Vol.51,pp.614-620
【文献】W. Y. Ho et al,Journal of Immunological Methods,2006年,Vol. 310,p. 40-52
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N
CAPLUS/REG/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌患者の血液内に存在する自己癌抗原のCD8T細胞エピトープをスクリーニングする方法であって、
前記自己癌抗原が、hTERT (GenBank: BAC1010.1)、WT1 (GenBank: AAO61088.1)、NY-ESO1 (GenBank: CAA05908.1)、及びMAGE-A3(NCBI Reference Sequence: NP_005353.1)で構成された群から選ばれるものであり、
a)前記癌患者のHLA-Aタイプを決定する工程と、
b)アルゴリズムを用いて、hTERT、WT1、NY-ESO1またはMAGE-A3のいずれかのCD8T細胞エピトープのペプチドを第一選別する工程と、
c)前記癌患者の血液から分離されたPBMC(peripheral blood mononuclear cell)を、工程b)の前記エピトープのペプチド及びIL-2と共に培地で培養する工程と、
d)工程c)で培養された細胞に工程b)のペプチドを添加する工程を含むPBMCの再活性化工程と、
e)工程b)で事前選別されたペプチドの中から、工程d)で培養された細胞において4-1BBの発現を誘導し、CD8T細胞の比率が平均比と比べて1.0倍以上となるものを、自己癌抗原CD8T細胞エピトープのペプチドとして第二選別するとともに、第二選別された前記ペプチドにおける、工程a)の前記HLA-Aタイプの情報を取得する工程と、
を含
前記癌が、胃癌、肺癌、または膵臓癌であり、
前記工程(e)において、自己癌抗原CD8 T細胞エピトープの選別は、自己癌抗原のCD8 T細胞エピトープを3つまたは4つ以上第二選別する工程を含む、
自己癌抗原CD8T細胞エピトープのスクリーニング方法。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリーニング方法であって、
前記e)のペプチドを選択する工程は、PMBC中で培養した後において、CD8T細胞に4-1BBが発現する割合が11%よりも高くなるように誘導するペプチドを第二選別する工程を含む、スクリーニング方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスクリーニング方法であって、
前記HLA-Aタイプは、HLA-A*02又はHLA-A*24である、スクリーニング方法。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載のスクリーニング方法であって、
前記工程(e)において、HLA-Aタイプと、第二選別された前記自己癌抗原CD8T細胞エピトープのペプチドのアミノ酸配列との関係を提示する、スクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己癌抗原特異的CD8T細胞の分離及び増殖方法に関し、詳しくは、癌患者個々人の血液内に存在する自己癌抗原からCD8T細胞により認識されるエピトープを選別し、選別されたエピトープのペプチドを用いて、自己癌抗原に特異的なCD8T細胞を分離する方法、及びこれを用いたCD8T細胞の大量増殖方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CD8T細胞は、樹枝状細胞、CD4T、NK細胞のような他の細胞に比べて、比較的単純な機能を有しているため、抗癌免疫治療時期待しなかった副作用が現れる可能性が少ない。一般に、MHC class I/ペプチドマルチマーを用いて、抗原特異的なCD8T細胞を分離しているが、この方法の場合、細胞分離後、細胞自殺による死滅率が高く、十分な量の抗原特異的CD8T細胞を生産するために、長期間培養をしなければならない短所があった。従って、TCR(T cell receptor)を刺激するMHC multimerを代替して、抗原特異的CD8T細胞を分離することができるサロゲートマーカー(surrogate marker)が必要とされており、これに対し、本発明者らは、長期間、免疫調節タンパク質である4-1BB(CD137)と関連した研究を行ってきた。
4-1BBは、誘導性共同刺激分子であり、活性化されたT細胞で発現されている。特に、CD8T細胞の活性を増進させるだけでなく、Bcl-2、Bcl-XL、Bfl-1等のような抗-アポトーシス分子(anti-apoptotic molecules)の発現を増加し、活性後、細胞死(AICD; activation-induced cell death)を抑制する機能を示すものとして知られている。このような4-1BB刺激の特性は、癌治療に適した特性などであり、これをベースに、抗-4-1BB mAbを用いた癌治療効果に対して、動物モデルを利用して検証した。これに対し、本発明者らは、従来の研究から抗原特異的に活性化されたCD8T細胞の4-1BBの発現を用いて、抗-4-1BB抗体を用いた抗原特異的CD8T細胞の分離及び増殖方法(特許文献1)を確立したが、抗体の場合、in vitro及びin vivo半減期が長く、Fc受容体を通したシグナル伝達結果と抗体が認識する標的タンパク質を通したシグナル伝達の効果が統合され、全体結果が示されるようになる。また、同じ抗原に対して、多様な抗体が存在する場合が多く、これらが互いに少しずつ違う効果が示されるようになる。このような限界点を克服するために、五量体であるCOMP-4-1BBLタンパク質を用いて、成功的に抗原特異的CD8T細胞を分離及び増殖する方法を開発した(特許文献2)。
この特許文献1、2は、外来抗原であるウイルス抗原(EBV/LMP2A、CMV/pp65)特異的CD8T細胞を分離/大量培養する技術であり、体内でこれら細胞の比率が高く、比較的簡単に実現が可能である。しかし、多くの癌細胞は、体を構成する細胞から形成されるので、体を構成するタンパク質であるが、正常細胞では、低い比率で存在し、癌細胞では過発現されている自己癌抗原(self tumor Ag)を認識するCD8T細胞の選択的分離及び大量培養が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】韓国特許第10-0882445号
【文献】韓国特許第10-1103603号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、体内に極めて低い比率で存在する自己癌抗原に特異的なCD8T細胞を31日内に選択的に分離し、大量培養することができる、自己癌抗原特異的CD8T細胞の分離及び増殖方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は、
a)癌患者血液内に存在する自己癌抗原CD8T細胞エピトープを選別する工程;b)癌患者の血液から分離されたPBMC(peripheral blood mononuclear cell)を前記エピトープのペプチド及びIL-2と共に培地で培養する工程;c)前記培養された細胞を工程b)と同じペプチドを添加して、4-1BB発現を誘導する工程;及びd)4-1BB発現が誘導された細胞を抗-4-1BB抗体がコートされた培養プレートで培養した後、付着しなかった細胞を除去する工程;を含む自己癌抗原特異的CD8T細胞の分離方法を提供する。
本発明の分離方法において、前記工程a)の自己癌抗原は、hTERT、WT1、NY-ESO1及びMAGE-A3で構成された群から選ばれる。
本発明の分離方法において、前記工程b)で、エピトープは、配列番号1~15で構成された群から選ばれたアミノ酸配列からなるペプチドである。
本発明の分離方法において、前記工程c)の発現誘導は、12~36時間培養することを特徴とする。
本発明の分離方法において、前記工程d)の培養は、1~20分間行われる。
また、本発明は、前記方法で分離された自己癌抗原特異的CD8T細胞と放射線照射された同種異系(allogeneic)PBMCとをIL-2、抗-CD3抗体及び自己血漿が含まれた培地で懸濁した後、培養バッグに注入し、前記培地を更に注入して、培養することを含む自己癌抗原特異的CD8T細胞の大量培養方法を提供する。
本発明の大量培養方法において、前記PBMCは、正常供与者から分離されたものである。
本発明の大量培養方法において、前記培養は、4~15日間行われる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、外来抗原でない癌患者の個々人の血液に存在する自己癌抗原CD8T細胞エピトープのペプチドを用いて、自己癌抗原に特異的なCD8T細胞を分離することができる。従って、本発明の方法で分離された、健常人において極めて低い比率で存在する自己癌抗原を認識するT細胞を用いれば、癌患者自身の細胞から由来した癌細胞を効果的に選択して、除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る自己癌抗原特異的CD8T細胞の選択的分離及び大量培養過程を説明する図である。
図2】本発明に係るエピトープスクリーニング過程の工程の流れを示した図である。
図3】健常人(healthy doner)から得た PBMCを用いたhTERTエピトープスクリーニング結果を示す図である。
図4】健常人から得たPBMCを用いたWT1エピトープスクリーニング結果を示す図である。
図5】胃癌(gastric cancer)患者から得たPBMCを用いたhTERTエピトープスクリーニング結果を示す図である。
図6】肺癌(lung cancer)患者から得たPBMCを用いたhTERTエピトープスクリーニング結果を示す図である。
図7】膵臓癌(pancreatic cancer)患者から得たPBMCを用いたhTERTエピトープスクリーニング結果を示す図である。
図8】脳腫瘍(glioblastoma)患者から得たPBMCを用いたWT1エピトープスクリーニング結果を示す図である。
図9】肺癌患者から得たPBMCを用いたWT1エピトープスクリーニング結果を示す図である。
図10】卵巣癌(ovarian cancer)患者から得たPBMCを用いたNY-ESO1エピトープスクリーニング結果を示す図である。
図11】肉腫(sarcoma)患者から得たPBMCを用いたNY-ESO1エピトープスクリーニング結果を示す図である。
図12】肺癌患者から得たPBMCを用いたMAGE-A3エピトープスクリーニング結果を示す図である。
図13】肺癌患者から得たPBMCを用いたMAGE-A3エピトープスクリーニング結果を示す図である。
図14】hTERT T細胞治療剤のパイロット生産過程を説明する図である。
図15】WT1 T細胞治療剤のパイロット生産過程を説明する図である。
図16】NY-ES01 T細胞治療剤のパイロット生産過程を説明する図である。
図17】MAGE-A3 T細胞治療剤のパイロット生産過程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
癌細胞は、体を構成する細胞から由来するので、癌細胞を選択的に除去するためには、癌細胞で過発現される自己癌抗原(self tumor Ag)特異的CD8T細胞の選択的分離及び大量培養が必要である。しかし、自己癌抗原を認識するT細胞は、健常人の場合、比率が極めて低く存在するだけでなく、免疫寛容(immune tolerance)により活性が抑制された状態で存在する。従って、癌患者の血液から自己癌抗原特異的CD8T細胞を選択的に分離し、大量培養する規格化された工程は未だに開発されていない。これに対し、本発明者らは、抗-4-1BB抗体を用い、体内に極めて低い比率で存在するhTERT、WT1、NY-ESO1、及びMAGE-A3のような自己癌抗原特異的CD8T細胞を31日内に選択的に分離及び大量培養することができる規格化された工程技術を開発した。
【0009】
従って、本発明は、自己癌抗原特異的CD8T細胞の分離方法を提供する。具体的に、本発明の自己癌抗原特異的CD8T細胞の分離方法は、a)癌患者血液内に存在する自己癌抗原CD8T細胞エピトープを選別する工程;b)癌患者の血液から分離されたPBMC(peripheral blood mononuclear cell)を前記エピトープのペプチド及びIL-2と共に培地で培養する工程;c)前記培養された細胞を工程b)と同じペプチドを添加して、4-1BB発現を誘導する工程;及びd)4-1BB発現が誘導された細胞を抗-4-1BB抗体がコートされた培養プレートで培養した後、付着しなかった細胞を除去する工程;を含む。
【0010】
本発明の分離方法において、前記工程a)の自己癌抗原は、癌患者自身の体内に存在するいかなる癌抗原であってもよく、癌腫に応じて適した自己癌抗原を選択して使うことができる。好ましくは、抗癌免疫治療に用いられている代表的な自己癌抗原としては、hTERT (GenBank: BAC11010.1)、WT1 (GenBank: AAO61088.1)、NY-ESO1 (GenBank: CAA05908.1)、MAGE-A3 (NCBI Reference Sequence: NP_005353.1)等が挙げられる。前記hTERTは、染色体末端でテロメアDNA(telomeric DNA)を合成する酵素であり、癌細胞は、この酵素を過度に活性化させ、テロメア依存的細胞死滅を回避することができるように機能し、肺癌、胃癌、膵臓癌を含む多様な固形癌の標的抗原として知られている(Kim NW, et al. Science. 1994; 266: 2011-2015)。前記WT1は、Wilms tumorと関連した遺伝子であり、亜鉛フィンガー転写因子を暗号化し、細胞の増殖と分化、アポトーシス、器官の発生に関与をするタンパク質であり、脳脊髄癌、肺癌などの標的抗原として知られている(Call KM, et al., Cell. 1990. 60:509-520; Nakahara Y, et al., Brain Tumor Pathol. 2004. 21:113-6)。 また、前記NY-ESO1は、癌精巣抗原n (CTA)に属するタンパク質中の一つであり、主に生殖細胞(germ cell)と肉腫(sarcoma)、乳癌を含む多様な癌細胞に発現するものとして知られているが、これら細胞で、どのような機能をするのかについてはよく知られていない(Gnjatic S, et al., Adv Cancer Res. 2006; 95:1-30)。 前記MAGE-A3は、メラノーマ関連抗原ファミリーに属するタンパク質であり、正常細胞でどのような機能を行うかついては知らされたのがないが、肺癌、肉腫及び黒色腫を含む多様な癌細胞に過発現するものとして知られており、癌の免疫治療に適した標的抗原と評価されている(Decoster L, et al., Ann Oncol. 2012 Jun;23(6):1387-93)。
【0011】
本発明の分離方法において、前記工程b)において、エピトープは、配列番号1~15で構成された群から選ばれたアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする。
【0012】
本発明の分離方法において、前記工程b)の培地は、自己血漿が含まれた培地であることを特徴とし、また、前記工程b)の培養は、12~16日間行われることを特徴とする。
【0013】
本発明の分離方法において、前記工程c)の発現誘導は、12~36時間培養することを特徴とし、前記工程d)の培養は、1~20分間行われることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前述した分離方法で分離された自己癌抗原特異的CD8T細胞と放射線照射された同種異系(allogeneic)PBMCとをIL-2、抗-CD3抗体及び自己血漿が含まれた培地で懸濁した後、培養バッグに注入し、前記培地を更に注入し、培養することを含む自己癌抗原特異的CD8T細胞の大量培養方法を提供する。
【0015】
本発明の大量培養方法において、前記PBMCは、正常供与者から分離されたことを特徴とし、前記培養は4~15日間行われることを特徴とする。特に、前記培養期間中、培養4日、7日、9日、11日及び14日目に培地を更に注入することができる。
【0016】
以下、本発明の自己癌抗原特異的CD8T細胞の分離及び増殖方法を工程別に説明する。
【0017】
(1)エピトープスクリーニング(事前選別検査)
本発明は、ペプチドを用いて自己由来癌抗原特異的CD8T細胞を選択的に増殖及び分離された。CD8T細胞により認識される自己癌抗原のエピトープ(epitope)は、患者個々人のHLA-Aタイプ及び状態によりそれぞれ違うので、エピトープスクリーニングを通して癌患者個々人の血液内に存在する自己癌抗原CD8T細胞エピトープを選別し、T細胞治療剤製造用ペプチド3-4種類を選別した。
【0018】
(2)自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖
自己癌抗原特異的CD8T細胞は、血液内0.1%以下で存在するので、血液から分離されたPBMCに製造用ペプチド3-4種及びIL-2を添加し、14日間、培養することで、自己癌抗原から由来したペプチドに特異的なCD8T細胞の増殖を誘導した。培養14日目に全細胞を回収し、同じペプチドで24時間、再活性化することでペプチド-特異的CD8T細胞が、同時に4-1BBを発現するように誘導した。
【0019】
(3)自己癌抗原特異的CD8T細胞の選択的分離
抗-4-1BB抗体がコートされた培養プレートに、ペプチドで再活性化させた細胞を分注し、10分間培養することで、4-1BBを発現するCD8T細胞が付着するようにし、付着されていない細胞は全部洗浄して除去した。以後、IL-2が含まれた培地を添加し、2日間、培養することで、分離されたT細胞が増殖すると共に培養プレートに落ちるようにした。
【0020】
(4)自己癌抗原特異的CD8T細胞の大量培養
1L培養バッグ(culture bag)に、分離されたCD8T細胞5×10細胞、放射線照射された(irradiated allogeneic)PBMCs 1×10細胞、1000U/mLIL-2、40ng抗-CD3 mAbを混合し、14日間、定期的に培地を添加して、~10細胞/L水準に細胞を大量培養し、癌患者に投与可能な水準に増殖させた。
【0021】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。しかし、これら実施例は、本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 下記工程を含む自己癌抗原特異的CD8 T細胞の分離方法:
a)癌患者血液内に存在する自己癌抗原CD8 T細胞エピトープを選別する工程;
b)癌患者の血液から分離されたPBMC(peripheral blood mononuclear cell)を前記エピトープのペプチド及びIL-2と共に培地で培養する工程;
c)前記培養された細胞を工程b)と同じペプチドを添加して、4-1BB発現を誘導する工程;及び
d)4-1BB発現が誘導された細胞を抗-4-1BB抗体がコートされた培養プレートで培養した後、付着しなかった細胞を除去する工程。
2. 前記工程a)の自己癌抗原は、hTERT (GenBank: BAC1010.1)、WT1 (GenBank: AAO61088.1)、NY-ESO1 (GenBank: CAA05908.1)、及びMAGE-A3(NCBI Reference Sequence: NP_005353.1)で構成された群から選ばれたことを特徴とする1.に記載の方法。
3. 前記工程b)で、エピトープは、配列番号1~15で構成された群から選ばれたアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする1.に記載の方法。
4. 前記工程b)の培地は、自己血漿が含まれた培地であることを特徴とする1.に記載の方法。
5. 前記工程b)の培養は、12~16日間行われることを特徴とする1.に記載の方法。
6. 工程の発現誘導は、12~36時間培養することを特徴とする1.に記載の方法。
7. 前記工程d)の培養は、1~20分間行われることを特徴とする1.に記載の方法。
8. 1.に記載の方法で分離された自己癌抗原特異的CD8 T細胞と放射線照射された同種異系(allogeneic)PBMCとをIL-2、抗-CD3抗体及び自己血漿が含まれた培地で懸濁した後、培養バッグに注入し、前記培地を更に注入して、培養することを含む自己癌抗原特異的CD8 T細胞の大量培養方法。
9. 前記PBMCは、正常供与者から分離されたものであることを特徴とする8.に記載の方法。
10. 前記培養は、4~15日間行われることを特徴とする8.に記載の方法。
11. 前記培養は、培養4日、7日、9日、11日及び14日目に培地を更に注入することを特徴とする10.に記載の方法。
【実施例
【0022】
実験例.エピトープスクリーニング工程
【0023】
アルゴリズムを通じて自己癌抗原のCD8T細胞エピトープ(epitope)を選別した。癌患者の血液内に存在するT細胞がどのCD8T細胞のエピトープに反応するかを確認するために、癌患者の血液からPBMC(peripheral blood mononuclear cell)を分離し、洗浄した後、CTL培地(RPMI1640培地+4mM L-グルタミン+12.5mM HEPES+50μM 2-メルカプトエタノール+3%自己血漿)に、1×10細胞/mLで懸濁し、14 mLチューブ(round tube)に1 mLずつ分注した。アルゴリズムを通じて分析し、選別された各エピトープのペプチドを各チューブに1μg/mL濃度で添加し、COインキュベーターで培養を開始した。培養2日目に、50U/mLのIL-2が含まれたCTL培地を各チューブに1mLずつ添加した。培養7、9、11、及び13日目に、1mL培地を除去した後、50U/mLのIL-2が含まれたCTL培地を添加した。培養14日目に、各チューブにRPMI1640培地を添加し、1400rpmで5分間遠心分離し、細胞を3回洗浄した。洗浄された細胞に1mLのCTL培地を懸濁した後、同じペプチドを5μg/mL濃度で添加して、培養した。24時間後、各チューブの細胞を回収し、抗-CD8-PE-Cy5及び抗-4-1BB-PE抗体で染色し、乳細胞分析し、4-1BBを発現するCD8T細胞の比率を分析することで、どのペプチドに反応して、CD8T細胞が活性化されたかを分析した。図2は、本発明に係るエピトープスクリーニング過程の工程流れを示した図である。
【0024】
実験に用いられた抗-CD8-PE-Cy5、抗-4-1BB-PEは、eバイオサイエンス(eBioscience, San Diego, CA)から購入した。RPMI1640、L-グルタミン、HEPES、2-メルカプトエタノールは、インビトロジエン社(Invitrogen, San Diego, CA)から購入した。
【0025】
実施例1. 自己癌抗原選別及びCD8T細胞エピトープ選別
【0026】
各癌腫別に、どの癌抗原が癌の免疫治療に適しているかを評価した論文(Scanlan MJ, et al., Immunol Rev. 2002 Oct. 188:22-32;Ramakrishnan S, et al., Cancer research. 1998. 58:622-625;Nakahara Y, et al., Brain Tumor Pathol. 2004. 21(3): 113-6)をもとに、韓国人発癌及び難治性癌(胃癌、肺癌、膵臓癌など)の免疫治療に適した自己癌抗原を選別した。hTERT(GenBank: BAC11010.1)、WT1(GenBank:AAO61088.1)、NY-ESO1(GenBank: CAA05908.1)、MAGE-A3(NCBI Reference Sequence: NP_005353.1)は、多様な方式で抗癌免疫治療に利用されている代表的な自己癌抗原であり、これら4種類の癌抗原の適用が可能な癌腫を選別し、下記表1に示した。
【0027】
【表1】
【0028】
選別された自己癌抗原のアミノ酸配列を、アルゴリズムを通じて分析し、CD8T細胞エピトープと推定されるアミノ酸配列を決定した(CTLPred: http://www.imtech.res.in/raghava/ctlpred/, NetCTL: http://www.cbs.dtu.dk/services/NetCTL/, SYFPEITHI: http://www.syfpeithi.de/)、選別されたエピトープを対象に、ペプチドを化学合成(Peptron Inc; www.peptron.com)して、エピトープスクリーニングに用いた。各自己癌抗原から選別されたCD8T細胞エピトープは、下記表2~5に示した。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【0033】
実施例2. 臨床癌患者を対象としたエピトープスクリーニング
【0034】
実施例1で選別されたhTERT、WT1、NY-ESO1、MAGE-A3自己癌抗原のCD8T細胞エピトープが実際の臨床癌患者の血液に存在するCD8T細胞増殖を誘導することができるか否かを検証するために、図2に示されたエピトープスクリーニングを行った。hTERTエピトープスクリーニングは、胃癌、肺癌、膵臓癌を主対象として行っており、WT1エピトープスクリーニングは、脳脊髄癌及び肺癌、NY-ESO1エピトープスクリーニングは卵巣癌及び肉腫、また、MAGE-A3エピトープスクリーニングは、肉腫及び肺癌を主対象として行った。
【0035】
図3は、健常人から得たPBMCを用いたhTERTエピトープスクリーニング結果を示す図である。
【0036】
図4は、健常人から得たPBMCを用いたWT1エピトープスクリーニング結果を示す図である。
【0037】
図3と4に示されるように、hTERT及びWT1のCD8T細胞エピトープは、健常人の血液から分離されたPBMCからT細胞反応を誘導することができなかった。従って、本発明の選別されたエピトープは、健常人のT細胞が認識できないものと確認された。
【0038】
図5~7は、それぞれ、胃癌(gastric cancer)、肺癌(lung cancer)及び膵臓癌(pancreatic cancer)患者から得たPBMCを用いたhTERTエピトープスクリーニング結果を示す図である。
【0039】
図8及び9は、それぞれ、脳腫瘍(glioblastoma)及び肺癌患者から得たPBMCを用いたWT1エピトープスクリーニング結果を示す図である。
【0040】
図10及び11は、それぞれ、卵巣癌(ovarian cancer)及び肉腫(sarcoma)患者から得たPBMCを用いたNY-ESO1エピトープスクリーニング結果を示す図である。
【0041】
図12及び13は、それぞれ、肉腫及び肺癌患者から得たPBMCを用いたMAGE-A3エピトープスクリーニング結果を示す図である。
【0042】
図5~13に示されるように、臨床癌患者の血液から分離されたPBMCを対象にエピトープスクリーニングを行い、hTERT、WT1、NY-ESO1、及びMAGE-A3に対するCD8T細胞反応性を調べた結果、健常人とは違って、選択された自己癌抗原に対するT細胞反応が高く現れることが確認された。従って、胃癌、肺癌、膵臓癌、肉腫、卵巣癌などを対象に、それぞれの自己癌抗原に対する反応性を、エピトープスクリーニングを繰り返し行って確認した。
【0043】
また、前記エピトープスクリーニング結果を客観的に分析するために、スコアリングシステム(scoring system)を下記表6に示す通りに作製した。
【0044】
【表6】
【0045】
前記表6の基準に従って、エピトープスクリーニング結果を分析した。その結果は下記表7~15に示した。
【0046】
下記表7は、胃癌患者から得たPBMCを用いたhTERTエピトープスクリーニングを分析した結果である。
【0047】
【表7】
【0048】
下記表8は、肺癌患者から得たPBMCを用いたhTERTエピトープスクリーニングを分析した結果である。
【0049】
【表8】
【0050】
下記表9は、膵臓癌患者から得たPBMCを用いたhTERTエピトープスクリーニングを分析した結果である。
【0051】
【表9】
【0052】
下記表10は、脳腫瘍患者から得たPBMCを用いたWT1エピトープスクリーニングを分析した結果である。
【0053】
【表10】
【0054】
下記表11は、肺癌患者から得たPBMCを用いたWT1エピトープスクリーニングを分析した結果である。
【0055】
【表11】
【0056】
下記表12は、卵巣癌患者から得たPBMCを用いたNY-ESO1エピトープスクリーニングを分析した結果である。
【0057】
【表12】
【0058】
下記表13は、肉腫患者から得たPBMCを用いたWT1エピトープスクリーニングを分析した結果である。
【0059】
【表13】
【0060】
下記表14は、肉腫患者から得たPBMCを用いたMAGE-A3エピトープスクリーニングを分析した結果である。
【0061】
【表14】
【0062】
下記表15は、肺癌患者から得たPBMCを用いたMAGE-A3エピトープスクリーニングを分析した結果である。
【0063】
【表15】
【0064】
前記表7~13に示されるように、スコア3以上でCD8T細胞がペプチド刺激により4-1BBを発現する場合、抗-4-1BB抗体を用い、効果的にこれら細胞を分離することができた。各癌腫で、スコア3以上で自己癌抗原にT細胞が反応する比率40-50%水準であったので、選別された自己癌抗原のエピトープを用いて、T細胞治療剤を製造することができると判断した。選別されたペプチドは、hTERTペプチド:CLKELVARV(配列番号1)、PLFLELL (配列番号2)、AAVTPAA(配列番号3);WT1ペプチド:SLGEQQVSV(配列番号4)、RMFPNAPVL(配列番号5)、CMTWNQMNL(配列番号6)、VLDFAPPGA(配列番号7);NY-ESO1ペプチド:SISSCLQQL(配列番号8)、RLLEFYLAM(配列番号9)、GVLLKEFTV(配列番号10)、ILTIRLTAA(配列番号11);及びMAGE-A3ペプチド:LLIIVLAII(配列番号12)、KIWEELSVL(配列番号13)、LVFGIELMEV(配列番号14)、SLPTTMNYPL(配列番号15)である。
【0065】
実施例3. 自己癌抗原特異的T細胞治療剤の試験製造
【0066】
エピトープスクリーニングを通してT細胞治療剤製造に適した各自己癌抗原に対する3-4種のエピトープのペプチドを選別した後、これらペプチドを用いて、hTERT、WT1、NY-ESO1、及びMAGE-A3特異的T細胞治療剤の試験生産を行った。T細胞治療剤の生産は、自己由来抗癌T細胞の1次増殖、分離、大量培養の3工程で構成されている。
【0067】
(1)自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖
エピトープスクリーニングを通してスコア3以上のエピトープが一つ以上存在することを確認した癌患者から50mLの血液を分離された。
1)患者の血液からPBMC分離:7mLフィコール-ハイパック(Ficoll-hypaque)が満たされた15mLチューブ(コニカルチューブ)に、7mLの血液をゆっくり流し、フィコールを溶液上層にオーバーレイした。チューブを室温、2000rpmで20分間遠心分離し、フィコールと血漿と間に位置した白色の細胞層だけを回収し、洗浄し、PBMCとして用いた。
2)分離されたPBMCをCTL培地(RPMI1640 medium + 4mM L-glutamine + 12.5 mM HEPES + 50 μM 2-mercaptoethanol + 3% autoplasma)に1×10細胞/mLで懸濁し、エピトープスクリーニングを通して本発明で選別された3-4種のペプチドがそれぞれ1μg/mL濃度になるように添加した。これら細胞懸濁液を14mLチューブ(round tube)に1mLずつ分注し、COインキュベーターで培養した。
3)培養2日目に50U/mLのIL-2(Proleukin,Novatis)が含まれたCTL培地を各チューブに1mLずつ添加した。
4)培養7、9、11、及び13日目に、1mL上層培地を除去した後、50U/mLのIL-2が含まれたCTL培地を添加した。
5)培養14日目に、各チューブの細胞を50mLコティコルチューブに回収した後、RPMI1640培地を添加し、1400rpmで5分間遠心分離し、細胞を洗浄した。この過程を2回さらに繰り返した。
6)洗浄された細胞を2×10細胞/mLの濃度でCTL培地を懸濁した後、同じペプチド3-4種それぞれを5μg/mL濃度で添加し、培養した。
【0068】
(2)自己癌抗原特異的CD8T細胞の選別
1)培養24時間目に、1日間再活性化させたPBMCを回収し、RPMI1640培地で2回洗浄した後、5×10細胞/mLの濃度でCTL培地を懸濁し、50U/mLのIL-2を添加した。
2)抗-4-1BB抗体を50μg/mLの濃度で1日間コーティングした6ウェル又は12ウェル プレート(culture plate)に、これら細胞を1mLずつ添加し、10分間、COインキュベーターで培養した。
3)培養10分後、プレートに付着しなかった細胞を全部洗浄し、除去した後、1000U/mLのIL-2が含まれたCTL培地2-4mLを各ウェルに添加し、COインキュベーターで2日間、培養した。
【0069】
(3)自己癌抗原特異的CD8T細胞の大量培養
1)抗-4-1BB抗体に分離し、2日間培養した細胞を全部回収し、RPMI1640培地で2回洗浄して、計数した。
2)正常供与者からPBMCを分離し、1×10細胞/mLで懸濁した後、3000radで放射線照射し、細胞の死滅を誘導した後、T細胞の増殖誘導に必要な同時刺激(costimulation)を提供可能な培養添加物として用いた。
3)50mLの円錐チューブに分離されたCD8T細胞5×10細胞と照射された同種異系のPBMCs1×10細胞を添加した後、1,000U/mLのIL-2、40ng/mL抗-CD3 mAb(BD Bioscience)及び3%自己血漿(autoplasma)が含まれたALyS505N培地(CELL SCIENCE & TECHNOLOGY INST., INC. (CSTI))を50mLまで添加した。
4)50mL細胞懸濁液を1L培養バッグ(culture bag)に注入した後、COインキュベーターで培養した。
5)培養4日目に、1,000U/mLのIL-2、3%自己血漿が含まれたALyS505N培地50mLを1L培養バッグにさらに注入した。
6)培養7日目に、1,000U/mLのIL-2、3%自己血漿が含まれたALyS505N培地100mLを1L培養バッグにさらに注入した。
7)培養9日目に、1,000U/mLのIL-2、3%自己血漿が含まれたALyS505N培地300mLを1L培養バッグにさらに注入した。
8)培養11日目に、1,000 U/mLのIL-2、3%自己血漿が含まれたALyS505N培地500mLを1L培養バッグにさらに注入した。
9)培養14日目に、1L培養バッグのすべての細胞を回収し、注射用生理食塩水で3回洗浄し、5%アルブミンが含まれた注射用生理食塩水に細胞を懸濁し、完成品T細胞治療剤を充填した。
【0070】
前記の通りに、臨床癌患者から本発明のエピトープスクリーニングを通してT細胞反応を誘導しうるスコア3以上のペプチド3-4種を選別した後、50cc血液を用いて、hTERT、WT1、NY-ESO1、MAGE-A3 T細胞治療剤の試験生産を行った。その結果を図6~9に示した。
【0071】
図14は、hTERT T細胞治療剤のパイロット生産過程を説明する図である。
【0072】
図14は、HLA-A*24 alleleを有する胃癌患者の50cc血液からPBMCを分離し、3種類のhTERTペプチド[CLKELVARV(配列番号1)、PLFLELL(配列番号2)、AAVTPAA(配列番号3)]を、それぞれ1μg/mL濃度で添加した後、前記実施例3の「(1)自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖」に記述された過程に従って培養した。培養14日目に、すべての細胞を回収し、「(2)自己癌抗原特異的CD8T細胞の選別」過程に従ってhTERTペプチドに反応し、増殖したT細胞を分離/増殖した。分離されたT細胞は、「(3)自己癌抗原特異的CD8T細胞の大量培養」過程を通じて癌患者に投与可能な水準に大量培養しており、最終培養された細胞は低い老化度と作用機能を有している特定TCRVbタイプのT細胞であるものと乳細胞分析された。
【0073】
図15は、WT1 T細胞治療剤のパイロット生産過程を説明する図である。
【0074】
図15は、HLA-A*02 alleleを有する悪性神経膠腫患者の50cc血液からPBMCを分離し、4種類のWT1ペプチド[SLGEQQVSV(配列番号4)、RMFPNAPVL(配列番号5)、CMTWNQMNL(配列番号6)、VLDFAPPGA(配列番号7)]を、それぞれ1μg/mL濃度で添加した後、前記実施例3の「(1)自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖」に記述された過程に従って培養した。培養14日目に、すべての細胞を回収し、「(2)自己癌抗原特異的CD8T細胞の選別」過程に従ってWT1ペプチドに反応し、増殖したT細胞を分離/増殖した。分離されたT細胞は、「(3)自己癌抗原特異的CD8T細胞の大量培養」過程を通じて癌患者に投与可能な水準に大量培養しており、最終培養された細胞は低い老化度と作用機能を有している特定TCRVbタイプのT細胞であるものと乳細胞分析された。
【0075】
図16は、NY-ES01 T細胞治療剤のパイロット生産過程を説明する図である。
【0076】
図16は、HLA-A*02 alleleを有する卵巣癌患者の50cc血液からPBMCを分離し、4種類のNY-ESO1ペプチド[SISSCLQQL(配列番号8)、RLLEFYLAM(配列番号9)、GVLLKEFTV(配列番号10)、ILTIRLTAA(配列番号11)]を、それぞれ1μg/mL濃度で添加した後、前記実施例3の「(1)自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖」に記述された過程に従って培養した。培養14日目に、すべての細胞を回収し、「(2)自己癌抗原特異的CD8T細胞の選別」過程に従って、NY-ESO-1ペプチドに反応し、増殖したT細胞を分離/増殖した。分離されたT細胞は、「(3)自己癌抗原特異的CD8T細胞の大量培養」過程を通じて癌患者に投与可能な水準に大量培養しており、最終培養された細胞は低い老化度と作用機能を有している特定TCRVbタイプのT細胞であるものと乳細胞分析された。
【0077】
図17は、MAGE-A3 T細胞治療剤のパイロット生産過程を説明する図である。
【0078】
図17は、HLA-A*02 alleleを有する肉腫患者の50cc血液からPBMCを分離し、4種類のMAGE-A3ペプチド[LLIIVLAII(配列番号12)、KIWEELSVL(配列番号13)、LVFGIELMEV(配列番号14)、SLPTTMNYPL(配列番号15)]を、それぞれ1μg/mL濃度で添加した後、前記実施例3の「(1)自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖」に記述された過程に従って培養した。培養14日目に、すべての細胞を回収し、「(2)自己癌抗原特異的CD8T細胞の選別」過程に従ってMAGE-A3ペプチドに反応し、増殖したT細胞を分離/増殖した。分離されたT細胞は、「(3)自己癌抗原特異的CD8T細胞の大量培養」過程を通じて癌患者に投与可能な水準に大量培養しており、最終培養された細胞は低い老化度と作用機能を有している特定TCRVbタイプのT細胞であるものと乳細胞分析された。
【0079】
以上で、本発明について、その好ましい実施例を中心に説明した。本発明が属する技術分野における通常の知識を有した者は、本発明が本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で変形された形態で具現され得ることを理解することができる。従って、開示された実施例は、限定的な観点ではなく説明的な観点で考慮されなければならない。本発明の範囲は前述した説明でなく特許請求mp範囲に示されており、それと同等な範囲内にある全ての差は本発明に含まれるものとして解釈しなければならない。
図1
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【配列表】
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