(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】フォトレジスト組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20220812BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20220812BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20220812BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
C09K3/00 K
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2020162116
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2020-09-28
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 満
(72)【発明者】
【氏名】貝沼 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】串田 修学
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-003861(JP,A)
【文献】国際公開第2018/029142(WO,A1)
【文献】特開2018-109767(JP,A)
【文献】特開2015-232607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光酸発生剤;
式(1)
【化1】
[式中、R
3~R
6は、同じ若しくは異なるものであることができ、2~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルであり、及び式中、Rは、ラジカル又は1~1
0個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルであり、式中、R
7は、式(2):
【化2】
(ここで、Xは
水素原子であるか、またはカルボニル基、エステル基、カーボネート基、アミン基、アミド基、尿素基、スルフェート基、スルホン基、スルホキシド基、N-オキシド基、スルホネート基、スルホンアミド基、若しくはそれらの組み合わせ、置換若しくは非置換C
6~C
14アリール基、又はC
3~C
12ヘテロアリール基
を含み、ここで、前記置換は、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、C
1~C
12アルキル基、C
1~C
12ハロアルキル基、C
1~C
12アルコキシ基、C
3~C
12シクロアルキル基、アミノ、C
2~C
6アルカノイル、カルボキサミド、置換若しくは非置換C
6~C
14アリール基、又はC
3~C
12ヘテロアリール基である)
の構造を有する基であり;式中、nは、1又は2である]
の構造を有するクエンチャー;
ビニル芳香族モノマーと酸分解性基を含むモノマーとを含むモノマー
であって、前記酸分解性基が第三級アルキルエステル基であるモノマーから形成される酸不安定ポリマー;並びに
溶媒
を含む放射線感受性組成物。
【請求項2】
前記光酸発生剤が、式(7)
【化3】
(式中、R
7は、水素原子、置換若しくは非置換の線状若しくは分岐C
1~C
14アルキル基、置換複素環基、又はハロゲン原子であり;及び式中、R
8は、1~18個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基
、ハロゲン原子、又は6~20個の非置換炭素原子を有するアリール基である)
の構造を有する、請求項1に記載の放射線感受性組成物。
【請求項3】
高分子接着促進剤を更に含む、請求項
1に記載の放射線感受性組成物であって、前記高分子接着促進剤が、式(13)
【化4】
(式中、R
21は、1~18個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基である
。)
の構造の重合化合物である組成物。
【請求項4】
前記
ビニル芳香族モノマーが、ヒドロキシスチレン
であり、及び前記酸分解性基を含む前記モノマーが酸不安定化学種として第三級炭素を含む(メタ)アクリルモノマ
ーであり、及びここで、前記
酸不安定ポリマーが10,000~30,000グラム/モルの重量平均分子量を有する、請求項
1に記載の放射線感受性組成物。
【請求項5】
芳香族アゾール化合物を更に含む、請求項
1に記載の放射線感受性組成物であって、前記芳香族アゾール化合物が、式(14):
【化5】
(式中、R
22は、1~14個の炭素原子を有するアルキル基又はアミン基である)
の構造を有するベンゾトリアゾール誘導体である組成物
。
【請求項6】
前記光酸発生剤が、前記酸
分解性基を含むモノマーの総量の2重量%未満の量で存在する、請求項
1に記載の放射線感受性組成物。
【請求項7】
前記酸不安定ポリマーが
第2ビニル芳香族モノマーを更に含む、請求項
1に記載の放射線感受性組成物。
【請求項8】
前記クエンチャーが塩基クエンチャーであり、前記塩基クエンチャーが、前記光酸発生剤の全モル数を基準として0.1~50モルパーセントの量で存在する、請求項
1に記載の放射線感受性組成物。
【請求項9】
放射線感受性フィルムを基材上に形成する工程であって、前記放射線感受性フィルムが、請求項1~8のいずれか一項に記載の放射線感受性組成物を含む工程と;
前記放射線感受性フィルムを活性化放射線にパターン様露光する工程と;
前記放射線感受性フィルムをアルカリ性現像液と接触させてレジストパターンを形成する工程と
を含む
レジストパターンを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フォトレジスト組成物及びそれらの製造方法が本明細書で開示される。フォトレジスト組成物は、パターン形成のために及びチップのパッケージングのために使用される。
【背景技術】
【0002】
身に着けられるエレクトロニクスなどの携帯機器は、数年前に製造されていた類似の機器よりもますます小さく、軽く及び薄くなっている。これらの機器に使用されるマイクロプロセッサ及びメモリチップは、パフォーマンス・ケイパビリティを増加させながらサイズが継続的に小さくなっている。これらの電子デバイスの製造及びパッケージングは、サイズ縮小に重要な役割を果たす。例えば、フリップ-チップパッケージ方法は、とりわけマイクロプロセッシングユニット(MPU)及びダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)半導体チップ用に、デバイス間のI/O(インプット/アウトプット)コネクションの密度を増加させるために用いられてきた。
【0003】
例えば、銅ピラーバンプなどの金属ピラーバンプは、多くの場合、CPU及びGPU集積回路(チップ)、レーザーダイオード、並びに半導体光増幅器(SOA)のフリップチップパッケージングなどの、エレクトロニクス及び光電子工学パッケージングで使用するためのフリップチップインターコネクトとして使用されている。金属ピラーバンプは、有益な接続抵抗、高密度接続、金属移行抵抗、及び熱散逸特性を提供する。
【0004】
電気めっきが、多くの場合、銅ピラーバンプアレイの製造のために用いられてきた。ドライフィルムレジスト(DFR)が、薄いスパッタ銅フィルム表面に取り付けられ、コンタクトホールアレイを有するマスクパターンが、次に、フォトリソグラフィーを用いて製造される。ピラーが、次に、電気めっきによって銅表面上にコンタクトホールパターンで形成される。フォトレジストが次に除去され、レジストによって以前に覆われていた薄いスパッタ銅層がエッチングによって除去される。i線(365nm)又は広帯域リソグラフィーが、めっきマスクパターンを撮像するために用いられてきた。
【0005】
めっきマスクパターンの調製への別のアプローチは、I/O密度の更なる増加のためのより厚い及びより狭いピラーサイズのニーズに対応するための厚いフォトレジスト層の使用である。化学的に増幅されたフォトレジストは、より高い解像度パターンのために望まれるより速い感度及び改善された透明性を達成するための好適な選択肢であり得る。そのようなレジスト組成物は、酸不安定基を有するポリマー、光酸発生剤(PAG)、及び溶媒を含む。しかしながら、化学的に増幅されたレジストが、銅層などの、金属層上に形成される場合、金属表面とレジストとの間の界面に存在する光酸のためにフーティングプロフィール(footing profile)問題が観察されている。
【0006】
フーティング問題を防ぐためにベンゾトリアゾール(BTA)、ベンズイミダゾール及びトリアゾールを含むレジスト組成物は公知である((特許文献1)、(特許文献2)及び(特許文献3)を参照されたい)。しかしながら、マイクロマスクパターンを金属層上に提供することができる新しい方法及びレジスト組成物が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-198944号公報
【文献】国際公開第2006059392A号パンフレット
【文献】特開2001-249451号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
光酸発生剤;式(1)
【化1】
[式中、R
3~R
6は、同じ若しくは異なるものであることができ、2~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルであり、及び式中、Rは、ラジカル又は1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルであり、式中、R
7は、式(2):
【化2】
(ここで、Xは、カルボニル基、エステル基、カーボネート基、アミン基、アミド基、尿素基、スルフェート基、スルホン基、スルホキシド基、N-オキシド基、スルホネート基、スルホンアミド基、若しくはそれらの組み合わせ、置換若しくは非置換C
6~C
14アリール基、又はC
3~C
12ヘテロアリール基であり、ここで、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、C
1~C
12アルキル基、C
1~C
12ハロアルキル基、C
1~C
12アルコキシ基、C
3~C
12シクロアルキル基、アミノ、C
2~C
6アルカノイル、カルボキサミド、置換若しくは非置換C
6~C
14アリール基、又はC
3~C
12ヘテロアリール基である)
の構造を有する基であり;式中、nは、1又は2である]
の構造を有するクエンチャー;ビニル芳香族モノマーと酸分解性基を含むモノマーとを含むモノマーから形成される酸不安定ポリマー;並びに溶媒を含む放射線感受性組成物が本明細書で開示される。
【0009】
光酸発生剤;式(1)
【化3】
[式中、R
3~R
6は、同じ若しくは異なるものであることができ、2~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルであり、及び式中、Rは、ラジカル又は1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルであり、式中、R
7は、式(2):
【化4】
(ここで、Xは、カルボニル基、エステル基、カーボネート基、アミン基、アミド基、尿素基、スルフェート基、スルホン基、スルホキシド基、N-オキシド基、スルホネート基、スルホンアミド基、若しくはそれらの組み合わせ、置換若しくは非置換C
6~C
14アリール基、又は
3~C
12ヘテロアリール基であり、ここで、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、C
1~C
12アルキル基、C
1~C
12ハロアルキル基、C
1~C
12アルコキシ基、C
3~C
12シクロアルキル基、アミノ、C
2~C
6アルカノイル、カルボキサミド、置換若しくは非置換C
6~C
14アリール基、又はC
3~C
12ヘテロアリール基である)
の構造を有する基であり;式中、nは、1又は2である]
の構造を有するクエンチャー;ビニル芳香族モノマーと酸分解性基を含むモノマーとを含むモノマーから形成される酸不安定ポリマー;並びに溶媒を含む放射線感受性組成物を形成する工程と;放射線感受性フィルムを活性化放射線にパターン様露光する工程と;放射線感受性フィルムをアルカリ性現像液と接触させてレジストパターンを形成する工程とを含む方法が、本明細書でまた開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】様々なクエンチャーの熱重量分析/示差熱分析についての結果を描く。
【
図2】フッ素化ナフタルイミド光酸発生剤について酸発生のノリッシュ-I型開裂モデルを採用することによるオーバーハングプロフィールの提案メカニズムについての反応スキームを描く。
【
図3】TEMPOを捕捉剤として使用するトップラウンディングプロフィールの提案メカニズムについての反応スキームを描く。
【
図4】PEB温度変動に対してE
op及びCDシフトを描く。
【
図5】PEB温度が上昇する場合に高分子可塑剤がより良好なPED安定性を生み出したことを示す。
【
図6】高分子可塑剤とヒンダードアミン(ノリッシュ型開裂構造を有する)との組み合わせが、PEDの前後に有利なパターンプロフィールを生成したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示において、「化学線」又は「放射線」は、例えば、水銀ランプの輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子ビーム及びイオンビームなどの粒子線等を意味する。更に、本発明において、「光」は、化学線又は放射線を意味する。
【0012】
更に、本明細書における「露光」には、特に明記しない限り、水銀ランプ、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、極紫外線(EUV光)等による露光のみならず、電子ビーム及びイオンビームなどの粒子線による書き込みも含まれる。
【0013】
本明細書において、「(値)~(値)」は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
2つの文字又は記号の間にないダッシュ(「-」)は、置換基についての結合点を示すために用いられる。例えば、-(CH2)C3~C8シクロアルキルは、メチレン(CH2)基の炭素を介して結合している。
【0015】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1つ」を表す。更に、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1つ」を意味する。
【0016】
「アルカノイル」は、ケト(-(C=O)-)橋によって置換される基に共有結合している、本明細書で定義されるようなアルキル基である。アルカノイル基は、示された数の炭素原子を有し、ケト基の炭素は、数えられる炭素原子に含まれる。例えば、C2アルカノイル基は、式CH3(C=O)-を有するアセチル基である。
【0017】
用語「アルキル」は、本明細書で用いられる場合、指定数の炭素原子、一般的に1~約12個の炭素原子を有する分岐若しくは直鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。本明細書で用いられるような用語C1~C6アルキルは、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を有するアルキル基を示す。他の実施形態には、1~8個の炭素原子、1~4個の炭素原子又は1若しくは2個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、C1~C6アルキル、C1~C4アルキル、及びC1~C2アルキルが含まれる。C0~Cnアルキルが別の基と併せて本明細書で用いられる場合、例えば、(シクロアルキル)C0~C4アルキルでは、示された基、この場合にはシクロアルキルは、シングル共有結合(C0)によって直接結合しているか、指定数の炭素原子、この場合には1、2、3、又は4個の炭素原子を有するアルキル鎖によって結合しているかのどちらかである。アルキルの例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、3-メチルブチル、t-ブチル、n-ペンチル、及びsec-ペンチルが含まれるが、それらに限定されない。
【0018】
用語「シクロアルキル」は、本明細書で用いられる場合、炭素環原子のみを有する及び指定数の炭素原子、通常は3~約8個の環炭素原子、又は3~約7個の炭素原子を有する、飽和炭化水素環基を示す。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシル並びにノルボルナン若しくはアダマンタンなどの橋架け若しくはケージ化飽和環基が含まれる。
【0019】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、本明細書で用いられる場合、N、O、及びSから選択される1~約3つのヘテロ原子を含有し、残りの環原子が炭素である飽和環式基を示す。ヘテロシクロアルキル基は、3~約8個の環原子を有し、より典型的には5~7個の環原子を有する。ヘテロシクロアルキル基の例には、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、及びピロリジニル基が含まれる。ヘテロシクロアルキル基中の窒素は、任意選択的に四級化され得る。
【0020】
本明細書での基及び原子基の引用において、置換されているか非置換であるかどうかを明記することなしに基が表示される場合には、その基には、置換基を有さない基及び原子基、並びに置換基を有する基及び原子基の両方が含まれる。例えば、置換されているか非置換であるかどうかについて表示されない「アルキル基」には、置換基を有さないアルキル基(非置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)も含まれる。
【0021】
用語「アルケニル」は、本明細書で用いられる場合、鎖に沿った任意の安定点で存在し得る、1つ以上の不飽和炭素-炭素結合を含む直鎖及び分岐の炭化水素鎖を意味する。本明細書で記載されるアルケニル基は、典型的には、2~約12個の炭素原子を有する。例示的なアルケニル基は、それらのアルケニル基が2~約8個の炭素原子を有する、低級アルケニル基、例えば、C2~C8、C2~C6、及びC2~C4アルケニル基である。アルケニル基の例には、エテニル、プロペニル、及びブテニル基が含まれる。
【0022】
用語「アルキニル」は、鎖に沿った任意の安定点で存在し得る、1つ以上のC≡C炭素-炭素三重結合を含む直鎖及び分岐の炭化水素鎖を意味する。本明細書で記載されるアルキニル基は、典型的には、2~約12個の炭素原子を有する。例示的なアルキニル基は、それらのアルキニル基が2~約8個の炭素原子を有する、低級アルキニル基、例えば、C2~C8、C2~C6、及びC2~C4アルキニル基である。アルキニル基の例には、エチニル、プロピニル、及びブチニル基が含まれる。
【0023】
用語「シクロアルケニル」は、本明細書で用いられる場合、環の任意の安定点で存在し得る、1つ以上の不飽和炭素-炭素結合を含む、及び指定数の炭素原子を有する、飽和炭化水素環基を意味する。単環式シクロアルケニル基は、典型的には、3~約8個の炭素環原子又は3~7(3、4、5、6、又は7)個の炭素環原子を有する。シクロアルケニル置換基は、置換された窒素若しくは炭素原子からのペンダントであり得るか、又は2つの置換基を有し得る置換炭素原子は、スピロ基として結合している、シクロアルケニル基を有し得る。シクロアルケニル基の例には、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、又はシクロヘキセニル、並びにノルボルネンなどの橋架け又はケージ化飽和環基が含まれる。
【0024】
用語「(シクロアルキル)C0~Cnアルキル」は、本明細書で用いられる場合、シクロアルキル及びアルキルが本明細書で定義されているとおりである置換基を意味し、それが置換する分子への(シクロアルキル)アルキル基の結合点は、シングル共有結合、(C0アルキル)又はアルキル基上のいずれかである。(シクロアルキル)アルキルは、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、及びシクロヘキシルメチルを包含するが、それらに限定されない。
【0025】
用語「(ヘテロシクロアルキル)C0~Cnアルキル」は、本明細書で用いられる場合、ヘテロシクロアルキル及びアルキルが本明細書で定義されているとおりである置換基を意味し、それが置換する分子への(ヘテロシクロアルキル)アルキル基の結合点は、シングル共有結合、(C0アルキル)、又はアルキル基上のいずれかである。(ヘテロシクロアルキル)アルキルは、モルホリニルメチル、ピペラジニルメチル、ピペリジニルメチル、及びピロリジニルメチル基を包含するが、それらに限定されない。
【0026】
用語「アリール」は、本明細書で用いられる場合、1つの芳香環若しくは複数の芳香環中に炭素のみを含有する芳香族基を意味する。典型的なアリール基は、1~3つの別個の、縮合した、又はペンダントの環及び環員としてのヘテロ原子なしの、6~約18個の環原子を含有する。示される場合、そのようなアリール基は、炭素又は非炭素原子又は基で更に置換され得る。二環式アリール基は、炭素又は非炭素原子又は基で更に置換され得る。二環式アリール基は、2つの縮合芳香環(ナフチル)、又はN、O、及びSから独立して選択される1又は2つのヘテロ原子を任意選択的に含有する5~7員の非芳香族環式基に縮合した芳香族環、例えば、3,4-メチレンジオキシ-フェニル基を含有し得る。アリール基には、例えば、フェニル、1-ナフチル及び2-ナフチルを含む、ナフチル、並びにビフェニルが含まれる。
【0027】
用語「単環式又は二環式ヘテロアリール」は、本明細書で用いられる場合、N、O、及びSから選択される1~4つ、又は特に1~3つのヘテロ原子を含有し、残りの環原子が炭素である少なくとも1つの芳香環を含有する安定した5~7員の単環式又は7~10員の二環式複素環を示す。ヘテロアリール基中のS及びO原子の総数が1を超える場合、これらのヘテロ原子は互いに隣接しない。特に、ヘテロアリール基中のS及びO原子の総数は2以下であり、より特に、ヘテロアリール基中のS及びO原子の総数は1以下である。ヘテロアリール基中の窒素原子は、任意選択的に四級化され得る。示される場合、そのようなヘテロアリール基は、炭素又は非炭素原子又は基で更に置換され得る。そのような置換には、例えば、[1,3]ジオキソロ[4,5-c]ピリジル基を形成するための、N、O、及びSから独立して選択される1又は2つのヘテロ原子を任意選択的に含有する5~7員の飽和環式基への融合が含まれ得る。特定の実施形態において、5~6員ヘテロアリール基が使用される。ヘテロアリール基の例には、ピリジル、インドリル、ピリミジニル、ピリジジニル、ピラジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、キノリニル、ピロリル、ピラゾリル、ベンズ[b]チオフェニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、チエニル、イソインドリル、及び5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
「ハロアルキル」には、ハロゲン原子の最大許容数まで、1つ以上のハロゲン原子で置換された、指定数の炭素原子を有する分岐及び直鎖の両方のアルキル基が含まれる。ハロアルキルの例には、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2-フルオロエチル、及びペンタフルオロエチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
「ハロアルコキシ」は、酸素橋(アルコールラジカルの酸素)を介して結合した、本明細書で定義されるようなハロアルキル基である。
【0030】
「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードのいずれかである。
【0031】
「モノ-及び/又はジ-アルキルアミノ」は、第二級又は第三級アルキルアミノ基であり、ここで、アルキル基は、示された数の炭素原子を有する、本明細書で定義されるような、アルキル基から独立して選択される。アルキルアミノ基の結合点は窒素上にある。モノ-及びジ-アルキルアミノ基の例には、エチルアミノ、ジメチルアミノ、及びメチル-プロピル-アミノが含まれる。アミノは、-NH2を意味する。
【0032】
用語「置換された」は、本明細書で用いられる場合、指定された原子の通常の原子価を超えないという条件で、指定された原子又は基上の任意の1個以上の水素が、示された基からの選択で置き換えられていることを意味する。置換基がオキソ(すなわち、=O)である場合、原子上の2個の水素が置き換えられる。オキソ基が芳香族部分を置換する場合、対応する部分不飽和の環が芳香環に取って代わっている。例えば、オキソで置換されたピリジル基は、ピリドンである。置換基及び/又は変数の組み合わせは、そのような組み合わせが安定した化合物又は有用な合成中間体をもたらす場合にのみ許容される。安定した化合物又は安定した構造は、反応混合物からの単離、及び有効な治療薬へのその後の配合を切り抜けるのに十分に頑丈である化合物を暗示することを意味する。
【0033】
特に明記しない限り、置換基は、コア構造へ名前を付けられる。例えば、(シクロアルキル)アルキルが可能な置換基としてリストアップされている場合、この置換基のコア構造への結合点はアルキル部分にある、又はアリールアルキルが可能な置換基としてリストアップされている場合、コア構造への結合点は、アルキル部分であることが理解されるべきである。
【0034】
「置換された」又は「任意選択的に置換された」位置に存在し得る好適な基には、ハロゲン;シアノ;ヒドロキシル;ニトロ;アジド;アルカノイル(アシルなどのC2~C6アルカノイル基などの);カルボキサミド;1~約8個の炭素原子、又は1~約6個の炭素原子を有するアルキル基(シクロアルキル基を含む);1つ以上の不飽和結合及び2~約8個、又は2~約6個の炭素原子を有する基を含むアルケニル及びアルキニル基;1つ以上の酸素結合及び1~約8個、又は1~約6個の炭素原子を有するアルコキシ基;フェノキシなどのアリールオキシ;1つ以上のチオエーテル結合及び1~約8個の炭素原子、又は1~約6個の炭素原子を有するものを含むアルキルチオ基;1つ以上のスルフィニル結合及び1~約8個の炭素原子、又は1~約6個の炭素原子を有するものを含むアルキルスルフィニル基;1つ以上のスルホニル結合及び1~約8個の炭素原子、又は1~約6個の炭素原子を有するものを含むアルキルスルホニル基;1個以上のN原子及び1~約8個、又は1~約6個の炭素原子を有する基を含むアミノアルキル基;6個以上の炭素及び1つ以上の環を有するアリール(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル等、それぞれの環は置換又は非置換芳香族);ベンジルが例示的なアリールアルキル基である、1~3つの別個の若しくは縮合した環及び6~約18個の環炭素原子を有するアリールアルキル;ベンジルオキシが例示的なアリールアルコキシ基である、1~3つの別個の若しくは縮合した環及び6~約18個の環炭素原子を有するアリールアルコキシ;又は1環当たり3~約8員の1~3つの別個の若しくは縮合した環及び1つ以上のN、O若しくはS原子を有する飽和、不飽和、又は芳香族複素環基、例えば、クマリニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、フラニル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、トリアジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、及びピロリジニルが含まれるが、それらに限定されない。そのような複素環基は、例えば、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロゲン及びアミノで更に置換され得る。
【0035】
クエンチャー;光酸発生剤;酸不安定ポリマー;任意選択の接着促進剤;任意選択の芳香族アゾール化合物;及び溶媒を含む放射線感受性組成物が本明細書で開示される。放射線感受性組成物は、放射線感受性フィルムを製造するために使用することができるから有利である。放射線感受性フィルムは、フィルム中の溶媒含有量を最小限にするためにソフトベークし、それによって不粘着性コーティングを形成し、基材へのフィルムの接着性を改善することができる。放射線感受性フィルムは、次に、紫外光(200~500ナノメートル(nm)の波長を有する)又は可視光などの放射線を用いてマスク(所定のパターンをその上に配置された)を通して露光される。好ましくは、露光は、365nmの波長を有する放射線(i線)で行われる。
【0036】
ある実施形態において、クエンチャーは、式(1)
【化5】
[式中、R
3~R
6は、同じ若しくは異なるものであることができ、2~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルであり、及び式中、Rは、ラジカル又は1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルであり、式中、R
7は、水素又は式(2):
【化6】
(ここで、Xは、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子、カルボニル基、エステル基、カーボネート基、アミン基、アミド基、尿素基、スルフェート基、スルホン基、スルホキシド基、N-オキシド基、スルホネート基、スルホンアミド基、置換若しくは非置換C
6~C
14アリール基、又はC
3~C
12ヘテロアリール基であり、ここで、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、C
1~C
12アルキル基、C
1~C
12ハロアルキル基、C
1~C
12アルコキシ基、C
3~C
12シクロアルキル基、アミノ、C
2~C
6アルカノイル、カルボキサミド、置換若しくは非置換C
6~C
14アリール基、又はC
3~C
12ヘテロアリール基である)
の構造を有する基であり;nは、1又は2である]
の構造を有する。好適なハロゲン原子はフッ素である。ある実施形態において、構造(1)におけるRは、水素ではない。別の実施形態において、R
3~R
7は、アミンでもアミノ基でもない。
【0037】
好ましい実施形態において、構造(2)のクエンチャーは、式(3):
【化7】
(式中、R
8は、6~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アリール基、縮合アリール基、又は1~12個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の一価若しくは二価アルキルである)
の構造を有する。式(3)の構造において、nは、1又は2である。
【0038】
別の好ましい実施形態において、クエンチャーは、構造(4)~(6):
【化8】
を有し得る。
【0039】
放射線感受性組成物中のクエンチャーの量は、光酸発生剤のモル数に基づいて設計される。例えば、クエンチャーローディングは、4H-TEMPOがクエンチャーとして選択され、及び放射線感受性組成物が、ポリマーの重量を基準として1重量%未満の低い光酸発生剤ローディングで低い固形分(例えば、20重量%未満の固形分)を有する場合、0.0001重量%以下に維持される。クエンチャーローディングは、TINUVIN(チヌビン)-123が大きい固形分(例えば、50重量%固形分以上)及び、放射線感受性組成物の総重量を基準として、3重量%以上の高い光酸発生剤(例えば、NHNI-PFBS)ローディングで選択される場合に1.2重量%以下であることができる。
【0040】
ある実施形態において、クエンチャー対光酸発生剤のモル比百分率(百分率として表される)は、5~50%、好ましくは8~30%、最も好ましくは10~15%である。
【0041】
構造(1)~(6)のクエンチャーは、放射線感受性組成物の総重量を基準として、0.0001重量%~1.2重量%の量で放射線感受性組成物中に使用され得る。好ましい実施形態において、構造(1)~(6)のクエンチャーは、放射線感受性組成物の総重量を基準として、0.001重量%~0.8重量%の量で放射線感受性組成物中に使用され得る。
【0042】
放射線感受性組成物は、光酸発生剤(PAG)を含む。ノリッシュ-I型開裂によって光酸を発生させる光酸発生剤を使用することが望ましい。ノリッシュ-I型反応は、2つのフリーラジカル中間体へのアルデヒド及びケトンの光化学開裂又はホモリシスである。カルボニル基は、光子を受け取り、光化学一重項状態に励起される。ある実施形態において、光酸発生剤は、式(7)
【化9】
(ここで、式(7)中、R
7は、水素原子、置換若しくは非置換の、線状若しくは分岐C
1~C
14アルキル基、置換複素環基、又はハロゲン原子であり;及び式中、R
8は、1~18個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基;ハロゲン原子、又は6~20個の非置換炭素原子を有するアリール基である)
に示される構造を有する。
【0043】
好適な光酸発生剤の例は、N-ヒドロキシナフタルイミド トリフルオロメタンスルホネート、N-ヒドロキシナフタルイミド パーフルオロ-1-ブタンスルホネート、N-ヒドロキシナフタルイミド カンファー-10-スルホネート、N-ヒドロキシナフタルイミド 2-トリフルオロメチルフェニルスルホネート、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシミド パーフルオロ-1-ブタンスルホネート、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド又はN-ヒドロキシスクシンイミド パーフルオロブタンスルホネートである。好ましい実施形態において、光酸発生剤は、フルオロアルケンスルホニルオキシ-1,8-ナフタルイミドである。
【0044】
光酸発生剤は、また、フォトレジストを調製するという目的に好適なものを含むことができる。そのような光酸発生剤は、例えば、非イオン性オキシムを含むことができる。
【0045】
光酸発生剤は、酸不安定ポリマーの100重量部当たり0.25重量部以上、0.5重量部以上、好ましくは0.75重量部以上、10重量部の最大量以下の量で放射線感受性組成物中に存在する。
【0046】
ある実施形態において、光酸発生剤は、放射線感受性組成物の総重量を基準として、0.3重量%以上、好ましくは0.4重量%以上、5重量%の最大量以下の量で放射線感受性組成物中に存在し得る。
【0047】
放射線感受性組成物は、また、酸分解性基を含有する第1繰り返し単位及びビニル芳香族モノマーを含有する第2繰り返し単位から形成されたコポリマーを含む。このコポリマーは、酸不安定ポリマーとも言われる。ある実施形態において、酸不安定基を有する第1繰り返し単位は、式(8):
【化10】
[ここで、R
9は、水素又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、及びここで、Lは、カルボニル基(例えば、アルデヒド;ケトン;カルボン酸及びカルボン酸エステル、例えば、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリレートなどを含む化学種)、単結合(例えば、ビニルエーテル)、又は芳香族単位(例えば、スチレン若しくはその誘導体)を含む]
で表される構造を有する。ある実施形態において、カルボン酸エステルは、第三級アルキルエステルである。
【0048】
ある実施形態において、Lがカルボニル基を含む場合、酸不安定基を含有する繰り返し単位は、下式(9):
【化11】
(式中、R
10は、水素又は1~10個の炭素原子を有するアルキル若しくはハロアルキル基であり、及び式中、R
11は、1~10の炭素原子を有する線状若しくは分岐の、置換若しくは非置換アルキル基、3~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、単環式若しくは多環式シクロアルキル基又は第三級アルキルエステルである)
で表される構造を有する。シクロアルキル基は、酸素、硫黄、窒素、又はリンなどの1つ以上のヘテロ原子を含有し得る。ヘテロ原子の組み合わせも使用され得る。例えば、シクロアルキル基は、酸素及び窒素ヘテロ原子を含有し得る。酸不安定基を有さない式(9)の構造を有する繰り返し単位も、レジストポリマーが酸不安定基を有する少なくとも1つの繰り返し単位を有する限り、レジストポリマーに使用され得る。
【0049】
酸不安定基(例えば、カルボニル基)を含有する他のモノマーの例は、以下に式(10):
【化12】
(式中、R
12は、水素又は1~10の炭素原子を有するアルキル若しくはハロアルキル基であり、R
13、R
14及びR
15は、同じものでも異なってもよく、1~10個の炭素原子を有する線状若しくは分岐の、置換若しくは非置換アルキル基、3~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、単環式若しくは多環式シクロアルキル基、アリール又はヘテロアリールから選択される)
で示される。シクロアルキル基は、酸素、硫黄、窒素、又はリンなどの1つ以上のヘテロ原子を含有し得る。ヘテロ原子の組み合わせも使用され得る。例えば、シクロアルキル基は、酸素及び窒素ヘテロ原子を含有し得る。ある実施形態において、R
13、R
14又はR
15のいずれかが環状部分を含み得る。
【0050】
ある実施形態において、式(10)のR13、R14及びR15は、同じものでも異なってもよく、水素、線状若しくは分岐であり得る2~8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基、又は分岐を含有し得る4、5若しくは6個の炭素原子を有する置換若しくは非置換シクロアルキル基を含む。
【0051】
カルボニル酸不安定基を含有するモノマーの例には、下記:
【化13】
【化14】
、又はそれらの組み合わせ(式中、R
1は、水素又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基、ハロゲン、若しくは1~10個の炭素原子を有するハロアルキル基であり、及び式中、R
16は、1~10個の炭素原子を有する分岐構造を含み得るアルキル基、又は3~14個の炭素原子を有する単環式若しくは多環式シクロアルキル基であり;R
17は、1~10個の炭素原子を有する分岐構造を含み得るアルキル基、又は3~14個の炭素原子を有する単環式若しくは多環式シクロアルキル基である)
が含まれる。好ましいハロゲン原子は、フッ素原子であり、好ましいハロアルキル基は、フルオロアルキル基を含む。
【0052】
ある実施形態において、式(8)中のLが2個以上の炭素原子を含む場合、酸不安定基を含有する繰り返し単位は、下式(11)
【化15】
(式中、Zは、少なくとも1個の炭素原子及び少なくとも1つのヘテロ原子を含む連結単位であり、式中、R
18は、水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;及び式中、R
19は、1~10個の炭素原子を有する分岐構造を含み得るアルキル基、3~14個の炭素原子を有する単環式若しくは多環式シクロアルキル基又は第三級アルキルエステルである)
で表される構造を有する。ある実施形態において、Zは、2~10個の炭素原子を有することができる。別の実施形態において、Zは、CH
2-C(=O)-O-であることができる。
【0053】
式(11)の構造を有する繰り返し単位の具体的な例は、下記:
【化16】
である。
【0054】
例示的な酸不安定アセタール及びケタール置換モノマーにはまた:
【化17】
【化18】
及びそれらの組み合わせ(式中、R
aは、-H、-F、-CH
3、又は-CF
3であり、及び式中、R
1は、水素又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基、ハロゲン、又は1~10個の炭素原子を有するハロアルキル基である)
が含まれる。
【0055】
別の実施形態において、L(上に示された式(8)中の)が芳香族単位である場合、酸不安定繰り返し単位は、式(12):
【化19】
(式中、R
20は、水素、アルキル又はハロゲンであり;Z
1は、ヒドロキシル又は任意選択的に水素、ハロゲン、アルキル、アリール、若しくは縮合アリールであり;pは、1~約5である)
の構造を有するビニル芳香族単位であり得る。ある実施形態において、Z
1は好ましくはヒドロキシルである。
【0056】
反応してレジストポリマーを生成することができるビニル芳香族モノマーには、スチレン、アルキルスチレン、ヒドロキシスチレン、又はハロゲンで置換されたスチレンが含まれる。好適なアルキルスチレンの例は、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、α-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン等、又はそれらの組み合わせである。ハロゲンで置換されたスチレンの例には、クロロスチレン、フルオロスチレン、ヒドロキシフルオロスチレン、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0057】
好ましい実施形態において、酸不安定繰り返し単位は、酸不安定基として第三級炭素を有する(例えば、第三級ブチルアクリレート又は第三級ブチルメタクリレート)。別の好ましい実施形態において、ビニル芳香族モノマーは、4-ヒドロキシスチレンである。言い換えれば、酸不安定ポリマーは、ヒドロキシスチレンと第三級炭素を酸不安定化学種として含む(メタ)アクリルモノマーとのコポリマーを含み、ここで、このコポリマーは10,000~30,000グラム/モルの重量平均分子量を有する。分子量は、ポリスチレン標準を使用して測定される。
【0058】
その上別の実施形態において、酸不安定ポリマーは、第1ビニル芳香族モノマー(例えば、4-ヒドロキシスチレン)を含有する繰り返し単位及び酸不安定基を含有する繰り返し単位に加えて、第2ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)などの第3繰り返し単位を含有し得る。1つの好ましい実施形態において、ビニル芳香族モノマーは、ポリヒドロキシスチレンモノマーを含む。別の好ましい実施形態において、ビニル芳香族モノマーは、スチレン及びポリヒドロキシスチレンモノマーの両方を含む。
【0059】
ビニル芳香族ポリマーは、酸不安定ポリマーの全モル数を基準として、40~90モル%、好ましくは60~87モル%の量で酸不安定ポリマー中に存在し得る。
【0060】
酸不安定繰り返し単位は、酸不安定ポリマー(すなわち、コポリマー)の全モル数を基準として、5~70モル%、好ましくは10~50モル%、より好ましくは15~40モル%の量で存在し得る。酸不安定ポリマーは、放射線感受性組成物の総重量を基準として10~98重量%の量で放射線感受性組成物中に存在する。好ましい実施形態において、酸不安定ポリマーは、放射線感受性組成物の総重量を基準として、30~55重量%の量で放射線感受性組成物に使用され得る。
【0061】
ある実施形態において、酸不安定ポリマーがポリヒドロキシスチレン及び第三級ブチルアクリレートの繰り返し単位を含有する場合、ポリヒドロキシスチレンは、酸不安定ポリマーの全モル数を基準として、60~66モル%の量で存在する。ある実施形態において、第三級ブチルアクリレートは、酸不安定ポリマーの全モル数を基準として、34~40モル%の量で存在する。
【0062】
別の実施形態において、酸不安定ポリマーが、ポリヒドロキシスチレン、スチレン及び第三級ブチルアクリレートの繰り返し単位を含有する場合、ポリヒドロキシスチレンは、酸不安定ポリマーの全モル数を基準として、60~66モル%、好ましくは62~65モル%の量で存在する。別の実施形態において、スチレンは、酸不安定ポリマーの全モル数を基準として、15~22モル%、好ましくは18~20モル%の量で存在する。別の実施形態において、第三級ブチルアクリレートは、酸不安定ポリマーの全モル数を基準として、12~20モル%、好ましくは13~17モル%の量で存在する。
【0063】
上述のように、放射線感受性組成物は、溶媒を含有する。溶媒は、組成物に使用されるポリマーを溶媒和するために及び組成物に使用される様々な原料の混和性を促進するために使用される。いくつかの実施形態において、溶液における放射線感受性組成物は、全固形分の重量を基準として、40~90重量%、特に50~85重量%、より特に55~80重量%の量でポリマーを含む。レジストにおける構成要素のこの文脈で用いられる「ポリマー」は、本明細書で開示されるコポリマーのみ、又はコポリマーとフォトレジストに有用な別のポリマーとの組み合わせを意味し得ることが理解されるであろう。全固形分には、溶媒を除いて、ポリマー、光分解性塩基、クエンチャー、界面活性剤、任意の添加PAG、及びあらゆる任意選択の添加剤が含まれることが理解されるであろう。
【0064】
溶解させる、分散させる及びコートするのに一般に好適な溶媒には、アニソール;1-メトキシ-2-プロパノール(プロピレングリコールメチルエーテル、PGMEとも言われる)、及び1-エトキシ-2-プロパノールなどのアルコール、n-ブチルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、PGMEAとも言われる)、メトキシエチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネート、及びガンマ-ブチロラクトンなどのエステル、シクロヘキサノン、2,6-ジメチル-4-ヘプタノン、2-ヘプタノンなどのケトン;乳酸エチル(EL)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチルエステル(HBM)、ガンマ-ブチロラクトン(GBL)、3-メトキシプロパン酸メチルエステル、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0065】
溶媒量は、放射線感受性組成物の総重量を基準として、例えば、40~90重量%、好ましくは45~65重量%、より好ましくは48~58重量%であることができる。
【0066】
放射線感受性組成物は、1種以上の表面レベリング剤(SLA)、高分子接着促進剤及び/又は可塑剤などの、他の任意選択の原料を含むことができる。
【0067】
使用される場合、SLAは、組成物の全固形分を基準として0.001~0.1重量%の量で好ましくは存在し、接着促進剤及び/又は可塑剤は、それぞれ、組成物の全固形分を基準として0.1~10重量%の量で存在する。
【0068】
ある実施形態において、高分子接着促進剤は、式(13)
【化20】
(式中、R
21は、1~18個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基である)
の構造を有するモノマーの重合によって得られる。好ましい実施形態において、式(13)中のR
21は、メチル又はエチルである。ある実施形態において、高分子接着促進剤は、30,000グラム/モル以上、好ましくは50,000g/モル以上、より好ましくは70,000g/モル以上の重量平均分子量を有し得る。高分子接着促進剤は、100,000g/モル以下、好ましくは90,000g/モル以下の上方重量平均分子量を有し得る。
【0069】
高分子接着促進剤は、酸不安定ポリマーの100重量部を基準として、0.5重量部以上、0.75重量部以上、より好ましくは0.85重量部以上、20重量部の最大量以下の量で使用され得る。好ましい実施形態において、高分子接着促進剤は、酸不安定ポリマーの100重量部を基準として、0.5重量部以上~1.5重量部以下の量で使用され得る。
【0070】
ある実施形態において、高分子接着促進剤は、放射線感受性組成物の総重量を基準として0.25重量%以上、0.4重量%以上、10重量%以下の量までの量で使用され得る。
【0071】
ある実施形態において、放射線感受性組成物は、キレート化官能基を有する化学種を含有し得る。ある実施形態において、放射線感受性組成物は、下に示される式(14)の構造を有するベンゾトリアゾール誘導体などの芳香族アゾール化合物を含有し得る。
【化21】
(式中、R
22は、1~14個の炭素原子を有するアルキル基又はアミン基である。)
【0072】
芳香族アゾール化合物は、放射線感受性組成物中の酸不安定コポリマーの100重量部を基準として、0.01~10重量部、好ましくは0.015~1重量部の量で放射線感受性組成物中に存在し得る。
【0073】
ある実施形態において、アゾール化合物は、放射線感受性組成物の総重量を基準として、0.001~0.5重量%の量で使用され得る。好ましい実施形態において、アゾール化合物は、放射線感受性組成物の総重量を基準として、0.01~0.25重量%の量で使用され得る。
【0074】
放射線感受性組成物を使用する方法がこれから記載される。パターン化方法に従って、放射線感受性フィルムが、本明細書に記載されるような放射線感受性組成物から基材上に形成される。組成物は、スピンコーティング、ディッピング、ローラーコーティング又は他の従来のコーティング技術によって基材に塗布することができる。スピンコーティングが好ましい。スピンコーティングに関して、コーティング溶液の固形分を調整して、利用される特定のコーティング装置、溶液の粘度、コーティングツールの速度及び回転許容時間量に基づいて所望のフィルム厚さをもたらすことができる。
【0075】
放射線感受性フィルムは、次に、フィルム中の溶媒含有量を最小限にするためにソフトベークし、それによって不粘着性コーティングを形成し、基材へのフィルムの接着性を改善することができる。ソフトベークは、ホットプレート上で又はオーブン中で行うことができ、ホットプレートが典型的である。
【0076】
放射線感受性フィルムは、次に、露光領域と非露光領域との間で溶解性の相違を生み出すためにフォトマスクを通して活性化放射線にパターン様露光される。フィルムを活性化する放射線に放射線感受性フィルムを露光することへの本明細書での言及は、放射線がフィルムに潜像を形成することができることを示す。フォトマスクは、活性化放射線によって、それぞれ、露光される及び露光されないレジスト層の領域に対応する光学的に透明な領域及び光学的に不透明な領域を有する。露光波長は、典型的には、200~500nm又は可視光などの、500nmより下である。好ましくは、露光は、365nm波長の放射線(i線)で行われる。
【0077】
放射線感受性フィルムの露光後に、露光段階中にPAGから発生した酸によって酸不安定基を分解するために、露光後ベーク(PEB)が典型的には行われる。PEBは、例えば、ホットプレート上で又はオーブン中で行うことができる。それによって、極性が切り替えられた領域と切り替えられていない領域(それぞれ、露光領域及び非露光領域に対応する)の間の境界によって規定される潜像が形成される。
【0078】
放射線感受性フィルムは、次に、フィルムの露光部分を除去するためにアルカリ性現像液と接触させられ、レジストパターンを形成する非露光領域を残す。現像液は、典型的には、水性アルカリ性現像液、例えば、水酸化第四級アンモニウム溶液、例えば、0.26規定度(N)(2.38重量%)水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などの水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液である。
【0079】
本発明の更なる態様は、金属層上への金属の堆積方法である。本方法は、(i)放射線感受性フィルムを金属層上に形成する工程と;(ii)放射線感受性フィルムを活性化放射線にパターン様露光する工程と;(iii)酸不安定基を分解するための露光後ベーク工程と;(iv)放射線感受性フィルムをアルカリ性現像液と接触させて放射線感受性フィルムの露光部分を除去する工程と;(v)金属層を金属めっき液に浸漬し、放射線感受性フィルムの露光部分の金属層上に金属を電着させる工程とを含む。金属層は、典型的には、基材上に形成される。
【0080】
金属層は、例えば、銅、銀、アルミニウム、金又はそれらの合金製であることができる。金属層は、本明細書では第1金属層とも言われ得る。金属層が基材上に形成される場合、金属層は、公知の方法を用いて、例えば、化学蒸着(CVD)又は物理蒸着(PVD)技術によって形成することができ、スパッタリング及びめっきが典型的である。金属層の厚さは、典型的には、10nm~1000nmである。基材の例には、シリコンウェーハ、ガラス基材及びプラスチック基材が含まれるが、それらに限定されず、そのような基材は、任意選択的に、1つ以上の層又はそれらの上に形成された特徴を含む。
【0081】
放射線感受性フィルムは、クエンチャー;光酸発生剤;酸不安定ポリマー;任意選択の接着促進剤;任意選択の芳香族アゾール化合物;及び溶媒を含む、本明細書で記載されるような放射線感受性組成物から形成される。放射線感受性組成物は、スピンコーティング、ロールコーティング又はスクリーン印刷などの、公知の方法によって金属層上に塗布される。厚い放射線感受性フィルムを形成するために、高固形分及び/又は高粘度放射線感受性組成物が典型的には望まれる。組成物の固形分は、放射線感受性組成物の総重量を基準として、典型的には10~60重量%、好ましくは20~50重量%である。そのような組成物を使用することによって、例えば、10マイクロメートル以上、好ましくは20~120マイクロメートルの、厚い層を形成することができる。
【0082】
放射線感受性組成物を塗布した後に、層中の溶媒含有量を最小限にするために、及び基材への層の接着性を改善するためにソフトベーキングを行うことができる。放射線感受性フィルムは、次に、200~500ナノメートル(nm)の波長を有する紫外光又は可視光などの放射線を使用して、所定のパターン有するマスクを通して露光される。好ましくは、露光は、365nm波長の放射線(i線)で行われる。
【0083】
放射線感受性フィルムは、放射線感受性フィルムの露光部分を現像するためにアルカリ性現像液と接触させられる。アルカリ性現像液の例には、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの水溶液が含まれる。露光部分は、孔(例えば、接触、ビア若しくはバンプパターン)又は溝(例えば、ライン-スペース)パターンなどのパターンを形成することができる。そのようなパターンは、好ましくは、高いアスペクト比を有する。本明細書で用いられる場合、アスペクト比(AR)は、AR=h/dと定義され、ここで、hは、フォトレジスト高さ(すなわち、厚さ)であり、dは、パターンにおける間隔、例えば、穴径(例えば、接触、ビア若しくはバンプパターンについて)又は隣接ライン間のスペースの長さ(例えば、溝パターンについて)である。典型的には、穴径は、2~200マイクロメートル、好ましくは10~50マイクロメートルであることができる。アスペクト比は、典型的には、0.1以上、0.5以上、0.1~10.0、又は0.5~7.0である。
【0084】
基材は、次に、放射線感受性フィルムが現像除去されているそれらの領域の露出第1金属層上に金属をめっきするために金属めっき液中に浸漬され得る。放射線感受性フィルムの現像領域は、金属めっき用の鋳型の役目を果たす。金属は、例えば、電気めっきによってめっきすることができる。当技術分野において公知の様々なタイプの金属めっき液を使用することができる。また、金属の2つ以上の異なる層を形成することができ、層は、同じ若しくは異なる金属のものであることができる。好ましいめっき金属には、銅、ニッケル、スズ、銀、金並びにそれらの混合物及び合金が含まれるが、それらに限定されない。そのような金属の形成での使用に好適な金属めっき液は、当技術分野において公知であり、Dow Electronic Materialsから商業的に入手可能である。めっき金属層の厚さは、典型的には1~100マイクロメートル、好ましくは20~50マイクロメートルである。めっき金属層厚さは、フォトレジスト層の厚さ未満又はそれ超であることができる。
【0085】
金属めっき後に、残っている放射線感受性フィルムは、基材から除去する(剥離する)ことができる。好適なフォトレジスト剥離剤は、商業的に入手可能であり、例えば、Shipley BPRTM Photostripper(Dow Electronic Materials)である。
【0086】
めっき金属構造物間の露出第1金属層は、めっき金属構造物のそれぞれを電気的に絶縁するために、例えば、エッチ-バックプロセスによって除去することができる。得られた金属構造物は、例えば、電気的接続を2つの構成要素間に提供するためのメタルバンプ用に有用であることができる、ピラー形状を有することができる。有利には、小さい直径及び真っ直ぐな(垂直の)側壁を有する金属ピラーは、本明細書で開示される組成物及び方法によって形成することができる。そのような構造物は、例えば、小さい、軽量の及び薄いデバイスにおける電気的接続に用途を見いだす。ピラーの幅(直径)は、例えば、5~200マイクロメートル、好ましくは10~50マイクロメートルであることができる。ピラーの高さは、例えば、放射線感受性樹脂の厚さに依存するであろうが、20マイクロメートル以上のピラー高さを形成することができる。
【0087】
本発明は、これから、以下の非限定的な実施例によって例示される。
【実施例】
【0088】
実施例1
この実施例は、高温に加熱された場合に最も少ない減量を生み出すクエンチャーを決定するために行った。
【0089】
ヒンダードアミン光安定剤(HALS)などのクエンチャーが、フッ素化ナフタルイミド光酸発生剤における光酸発生を制御するために、多くの場合使用される。反応スキームIは、過フッ素化ナフタルイミドにおける酸光発生の提案メカニズムを示す。
【化22】
【0090】
HALSのラジカルクエンチングのメカニズムは、下記の反応スキームIIに見られるように従来のアミン塩基クエンチャーと比較して異なる効果を生み出す。
【化23】
【0091】
反応スキームIIは、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)のラジカルクエンチングメカニズムを描く。ヒンダードアミン光安定剤(HALS)は、多くの場合、プラスチック又はコーティングにおける酸化防止剤として使用される。プラスチックにおける又はコーティング二次加工プロセスにおける加熱プロセス中に、有効量のHALSが、その意図される機能を果たすためにマトリックス中に保持される必要がある。より低い分子量化合物は、一般に、より高温で分解し、それは、より高温での物理的浸出を減少させる。このアプリケーションにおいて、フォトレジストは、コーティングに適用され、1~6分間135℃でソフトベーク硬化プロセスを受ける。この温度で、組成物中のHALSの一部は、蒸発し得るか又は昇華し得る。
【0092】
(加熱された場合の)フォトレジスト又は反射防止コーティングからのヒンダードアミン光安定剤の昇華又は蒸発は、蒸発又は昇華によって引き起こされる粒子状物質の生成のために、電子デバイスの製造においていくつかの品質管理問題をこれまで引き起こしてきた。昇華によって引き起こされるこの損傷の厳しさは、フィルム厚さが原因でより強くなり、ここで、より厚いフィルム(すなわち、10~50マイクロメートル)は、フィルム厚さのために、より多くの物質を取り込むことができる。このセクションにおいて、熱減量及び分解又は融点を、不動態化化合物の選択のために測定した。熱減量は、熱重量分析/示差熱分析(TGA/DTA)によって測定した。Al2O3を対照として使用した。窒素流付きアルミニウム開放パンを適用した。加熱速度は5℃/分であった。表1は、熱重量分析/示差熱分析のための試験条件を詳述する。
【0093】
【0094】
熱重量分析/示差熱分析試験にかけられるクエンチャーは、4-メトキシ-TMP-1-オキシフリーラジカル、4-ヒドロキシ-TMP及び4-ヒドロキシ-TMP-1-オキシフリーラジカル、4-ベンゾエート-TMP-1-オキシフリーラジカル、4-アセタミド-TMP-1-オキシフリーラジカル並びにTINUVIN(登録商標)123である。TINUVIN(登録商標)123は、アミノ-エーテル官能性に基づく液体ヒンダードアミン光安定剤(HALS)である。
【0095】
熱重量分析/示差熱分析についての結果を
図1に示す。4-メトキシ-TMP-1-オキシフリーラジカル、4-ヒドロキシTMP及び4-ヒドロキシ-TMP-1-オキシフリーラジカルは、TD-DTA試験において135℃で3重量%超の減量を示した。TMP-1-オキシは、テトラメチル-1-ピペリジニルオキシを表す。TMPはテトラメチルピペリジンを表す。
【0096】
実施例2
この実施例は、パターンプロフィールへのHALS化合物の影響を測定するために行った。前述のクエンチャー(すなわち、HALS化合物)4-メトキシ-TMP-1-オキシフリーラジカル、4-ヒドロキシ-TMP及び4-ヒドロキシ-TMP-1-オキシフリーラジカル、4-ベンゾエート-TMP-1-オキシフリーラジカル、4-アセタミド-TMP-1-オキシフリーラジカル並びにTinuvin(登録商標)123を、iCARフォトレジストにおける塩基クエンチャーとして使用した。
【0097】
この実施例についての専門語を表1aに示す。
【0098】
【0099】
表2は、i線化学増幅型フォトレジスト(iCAR)試料のための処方(組成)を示す。HALS類似体を塩基クエンチャーとして使用した。クエンチャーの量は、クエンチャー/PAGモル比が0.139であるように選択した。TINUVIN-123(式6を参照されたい)は、2つの部分のピペリジン構造(式1を参照されたい)を含有する。それ故、(TINUVIN-123からの)式-1の化合物の効果は、他の化合物のそれの2倍であると予期される。TINUVIN-123は、それ故、他の塩基クエンチャーの量の半分で試験した(TINUVAN-1123のクエンチャーローディングは、0.069のクエンチャー/PAGモル比を有するように調整した)。
【0100】
試料#1の調製
90グラム(g)のポリマー-A(丸善石油化学株式会社から入手される、64/36モル比、重量平均分子量Mw=23,000g/モルのp-ヒドロキシスチレン(PHS)/tert-ブチルアクリレート(TBA)のコポリマー)及び10gのポリマー-B(DuPont Electronic Polymerから入手される、66/19/15モル比、(重量平均分子量Mw=11,000g/モルのPHS/スチレン(STY)/TBAのコポリマー)を、500ミリリットル(ml)プラスチックボトルに採取した。ポリマーの100部に対して、1部(1g)のNHNI-PFBS(東洋合成工業株式会社から入手される、Mw=495.27)、0.048部(0.048g)の4H-TEMPO(重量平均分子量Mw:172.25g/モル)及び1部(1g)のPIONIN ME-400(竹本油脂から入手される)を添加した。合計102.048gの原材料に対して、117gの、95%のPMGEA(111.2g)及び5%のGBL(5.8g)からなる溶媒混合物を添加して固形分を46.5重量%に調整した。
【0101】
試料#1を製造するために使用される原料をローラー振盪機上で混合した。クエンチャー(4H-TEMPO)及びPAG(NHNI-PFBS)モル比は、次のとおり計算される:
(0.0489g/172.25)/(1g/495.27)=0.139
【0102】
試料#2~#5の調製
試料#2~#5を試料#1と同じやり方で調製し、同じクエンチャー/光酸発生剤モル比を用いる。唯一の相違は、(下表2に見られ得るように)使用されるクエンチャーのタイプである。クエンチャーローディングを、実施例2に示されたものと同じクエンチャー/PAGモル比(0.139)を有するように調整した。
【0103】
試料#6
試料#6を、クエンチャーのタイプ及びクエンチャー/PAGモル比を除けば、試料#1と同じやり方で調製した。クエンチャーはTINUVIN-123であった。この試料については、クエンチャーローディングを、0.069のクエンチャー/PAGモル比を有するように調整した。
【0104】
【0105】
表2中の全ての重量は、重量パーセント単位で表される固形分を除けば、ポリマーA及びポリマーBの100部を基準とする100部当たりの単位である。
【0106】
得られたデータから、試料#2及び#4がオーバーハングプロフィールを生成することが分かった。オーバーハングプロフィールは、側壁角度が90°(度)よりも大きいものである。言い換えれば、幅が、走査電子顕微鏡横断面画像を用いてフォトレジストパターンの表面及び底面で比較される場合に、表面での幅が底部でのそれよりも狭い。
【0107】
他の試料は、有利な入口プロフィールを与えた。4H-TEMPOの熱減量は、4H-TEMP及び4-メトキシ-TEMPOよりも良好であった。TINUVIN-123はまた、190℃以下で減量を全く示さなかったが、試料#6は、角のある側壁を示した。これらの試験結果から、有利なパターンプロフィールは、塩基クエンチャーの揮発性に依存しないと結論することができる。例えば、ピペリジン 1-オキシル構造を有するクエンチャーは、4-アセトアミド-TEMPOを除けば、4位の置換にかかわらず、有利なプロフィールを与えた。表3は、1:1コンタクトホールについての25μm(マイクロメートル)のパターンプロフィールに関するHALS類似体の比較を示す。
【0108】
【0109】
【0110】
理論に制約されることなく、初期段階中に、フッ素化ナフタルイミド光酸発生剤が入射UV光によって開裂させられるので、オーバーハングプロフィールが生成すると考えられる。次に、中間体、発色団中間体-1の発色団部分は、
図2に示されるような開環反応によって発色団中間体-2を形成する。
【0111】
I線露光プロセス及び露光後ベーク(PEB)プロセスは、周囲雰囲気中で行われる。これは、フォトレジストの表面での酸素の存在をもたらす。酸素は、露出表面でフォトレジストへ浸透する。最高酸素濃度は、それ故、フォトレジストの表面で存在する。フォトレジストへの酸素の浸透の深さは、そのポリマーマトリックス組成、使用される溶媒系及び/又は用いられるプロセス条件に依存する。
【0112】
表面で、発色団中間体-2は、酸素によって捕捉される。この効果は、酸素阻害効果として知られている。中間体-2が捕捉された後に、加水分解は進み得ない。したがって、酸中間体、パーフルオロアルキルスルホニルラジカルは、加水分解ラジカルから水素を取り込まない。結果として、表面での光酸の濃度は、フォトレジストの中間又は底部でよりも低い。これは、底部でのものよりも表面で狭い横断面幅(直径)をもたらす。このメカニズムを
図2に示す。
図2は、フッ素化ナフタルイミド光酸発生剤について酸発生のノリッシュ-I型開裂モデルを採用することによるオーバーハングプロフィールの提案メカニズムについての反応スキームを描く。
【0113】
TEMPOフリーラジカルがフォトレジストに使用される場合、発色団中間体-2は、TEMPOフリーラジカルによって捕捉されてニトロキシルアルキル中間体(NOR-TEMPO)を形成する。上で考察されたように、発色団中間体-2は、酸素によっても捕捉される。NOR-TEMPO及び酸化中間体は、プロトンと一緒にTEMPOフリーラジカルを再生する。このモデルにおいて、発生したプロトンは、中間体の酸部分と結合してそのとき光酸を発生させる。この反応は、酸素濃度が高い場合に起こると考えられる。したがって、TEMPOフリーラジカル又はTINUVIN-123(NOR-TEMPO)は有利なプロフィールを示した。
【0114】
この提案メカニズムにおいて、TEMPOのニトロキシル構造は、重要な役割を果たす。したがって、4H-TEMP(4-ヒドロキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン)は、オーバーハングプロフィールを示す。しかしながら、ニトロキシル構造を有する、4-アセトアミド-TEMPO(4-アセタミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシルフリーラジカル)は、オーバーハングプロフィールを改善する。
図3は、TEMPOを捕捉剤として使用するトップラウンディングプロフィールの提案メカニズムについての反応スキームを描く。
【0115】
実施例3
この実施例は、PEB感度及びPED(露光後遅延)安定性へのHALS化合物の影響を測定するために行った。TINUVIN-123を、NOR-TEMPO型HALSの例として選択した。トレーガー塩基とベンゾトリアゾールとの組み合わせを、クエンチャーの塩基対照として使用した。可塑剤の影響もまた研究し、異なる可塑剤入りの試料と又は可塑剤なしの試料と比較した。LUTONAL M40(重量平均分子量Mw=70,000)を、高分子可塑剤として選択した。PIONIN M400を、より低い重量平均分子量(Mw=400)を有する対照として使用した。
【0116】
評価は、15ミクロンフィルム厚さ試料に関して行った。(SB=135℃/60秒、FT=15μm、PEB=90、100及び110℃/60秒、現像時間=60秒 パドル)。15マイクロメートル(μm)隔離溝パターンを、リソグラフィック比較のために使用した。フォトレジストを、広帯域露光ツール(MA-1200)によって露光した。CD-露光曲線を各条件に関して取った。各試料のサイジングエネルギー(Eop)、条件を、CD-露光曲線から決定した。Eopでの24時間のPED後のパターンサイズ(CD)シフトを次に計算した。表4は、処方及びリソグラフィック試験結果を示す。
【0117】
【0118】
表4の全ての重量は、ポリマーAの100部を基準とする100部当たりの単位である。
【0119】
表4において、CDは、臨界寸法を表し、パターンサイズによって測定される。Ethは、規定の現像条件中にフィルムを破過するための最小露光エネルギーを表す。Eopは、所望のパターンサイズを与えるための最適露光エネルギーを表す-15μmのパターンサイズをこの実験については標的とした。
【0120】
表4の結果から、TINUVIN-123がPEB温度変動に対して安定性感度(CD及びE
op)を付与することが理解され得る。LUTONAL M40は、
図4に見られるようにPED CD安定性を提供する。
図4は、PEB温度変動に対してE
op及びCDシフトを描く。
【0121】
PED CD-シフトは、スプリットPEB温度によって評価した。LUTONAL M40がより良好なPED安定性を与えた。TINUVIN M40は、
図5に見られるように、PEB温度が上昇する場合により良好なPED安定性を与える。
【0122】
横断面パターンプロフィールの比較は、
図6に見られるように、LUTONAL M40とTINUVIN-123との組み合わせが、PEDの前後に有利なパターンプロフィールを与えることを示す。
【0123】
本明細書で開示される放射線感受性組成物は、パターン化及び金属化プロセスにおいて有利である。より具体的には、本方法及び組成物は、金属を基材上に堆積させるのに、例えば、ミクロメタルバンプを金属層上に形成するために有用である。本発明は、半導体製造業において、例えば、半導体デバイス及びMEM製造において、並びにパッケージオンパッケージ、チップオンチップ、又はマイクロプロセッサ若しくはメモリデバイスのフリップチップ接合での使用のためのメタルバンプの形成におけるなどのパッケージングアプリケーションにおいて特定の使用を見いだす。