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  • 特許-釣り糸具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】釣り糸具
(51)【国際特許分類】
   A01K 91/047 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
A01K91/047 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020178116
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022069123
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】520415546
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 吉保
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 吉保
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6615400(JP,B1)
【文献】特開2018-019648(JP,A)
【文献】特開2010-166828(JP,A)
【文献】特開昭52-069784(JP,A)
【文献】登録実用新案第3000532(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 91/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部分が釣り竿へ取り付けられる上側糸部材と、
下端部分が釣り鉤へ取り付けられる下側糸部材と、
を備え、
前記上側糸部材の下端部分は、前記下側糸部材の上端部分と比べて下方の部分で前記下側糸部材へスライド可能に固定されており、
前記下側糸部材の前記上端部分は、前記上側糸部材の前記下端部分と比べて上方の部分で前記上側糸部材へスライド可能に固定されており、
前記上側糸部材と前記下側糸部材とは、前記上側糸部材の前記下端部と前記下側糸部材の前記上端部との間の重なり部分で互いに撚り合されていることを特徴とする釣り糸具。
【請求項2】
前記上側糸部材の前記下端部分は、下側編み付け糸部材を利用して前記下側糸部材へスライド可能に固定されており、
前記下側糸部材の前記上端部分は、上側編み付け糸部材を利用して前記上側糸部材へスライド可能に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の釣り糸具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンカラ釣りなどのための釣り糸具に関する。
【背景技術】
【0002】
テーパーラインの先端側に偏った位置にくびれ部を設けたテンカラ釣り用テーパーラインが、知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-281876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者は、上述された従来のテンカラ釣り用テーパーラインなどのような釣り糸具については、仕掛け下端部分の面倒なハリス交換を頻繁に行う必要があることに気付いた。
【0005】
そして、本発明者は、そのような頻繁なハリス交換の必要性が釣り鉤の結び替えによるライン短小化に起因することに想到した。
【0006】
本発明は、上述された従来の課題を考慮し、面倒なハリス交換の頻度を低減することができる釣り糸具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、上端部分が釣り竿へ取り付けられる上側糸部材と、
下端部分が釣り鉤へ取り付けられる下側糸部材と、
を備え、
前記上側糸部材の下端部分は、前記下側糸部材の上端部分と比べて下方の部分で前記下側糸部材へスライド可能に固定されており、
前記下側糸部材の前記上端部分は、前記上側糸部材の前記下端部分と比べて上方の部分で前記上側糸部材へスライド可能に固定されており、
前記上側糸部材と前記下側糸部材とは、前記上側糸部材の前記下端部と前記下側糸部材の前記上端部との間の重なり部分で互いに撚り合されていることを特徴とする釣り糸具である。
第2の本発明は、前記上側糸部材の前記下端部分は、下側編み付け糸部材を利用して前記下側糸部材へスライド可能に固定されており、
前記下側糸部材の前記上端部分は、上側編み付け糸部材を利用して前記上側糸部材へスライド可能に固定されていることを特徴とする第1の本発明の釣り糸具である。
本発明に関連する第1の明は、上端部分が釣り竿へ取り付けられる上側糸部材と、
下端部分が釣り鉤へ取り付けられる下側糸部材と、
を備え、
前記上側糸部材の下端部分は、前記下側糸部材の上端部分と比べて下方の部分で前記下側糸部材へスライド可能に固定されており、
前記下側糸部材の前記上端部分は、前記上側糸部材の前記下端部分と比べて上方の部分で前記上側糸部材へスライド可能に固定されていることを特徴とする釣り糸具である。
【0008】
本発明に関連する第2の明は、前記上側糸部材と前記下側糸部材とは、前記上側糸部材の前記下端部と前記下側糸部材の前記上端部との間の重なり部分で互いに撚り合されていることを特徴とする本発明に関連する第1の明の釣り糸具である。
【0009】
本発明に関連する第3の明は、前記上側糸部材の前記下端部分は、下側編み付け糸部材を利用して前記下側糸部材へスライド可能に固定されており、
前記下側糸部材の前記上端部分は、上側編み付け糸部材を利用して前記上側糸部材へスライド可能に固定されていることを特徴とする本発明に関連する第1の明の釣り糸具である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、面倒なハリス交換の頻度を低減することが可能な釣り糸具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明における実施の形態の釣り糸具、釣り竿および釣り鉤の模式的な斜視図
図2】本発明における実施の形態の釣り糸具の模式的な斜視図
図3】本発明における実施の形態の釣り糸具の上側糸部材と下側糸部材との間の重なり部分近傍の模式的な拡大斜視図
図4】本発明における変形例の実施の形態の釣り糸具の下側編み付け糸部材近傍の模式的な拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
以下同様であるが、いくつかの構成要素は図面において示されていないこともあるし透視的にまたは省略的に示されていることもある。
【0014】
図1から3を参照しながら、本実施の形態の釣り糸具100について具体的に説明する。
【0015】
ここに、図1は本発明における実施の形態の釣り糸具100、釣り竿200および釣り鉤300の模式的な斜視図であり、図2は本発明における実施の形態の釣り糸具100の模式的な斜視図であり、図3は本発明における実施の形態の釣り糸具100の上側糸部材110と下側糸部材120との間の重なり部分近傍の模式的な拡大斜視図である。
【0016】
図1および2においては、上側糸部材110と下側糸部材120とは、上側糸部材110の下端部分112と下側糸部材120の上端部分121との間の重なり部分で互いに撚り合されている。
【0017】
図3においては、上側糸部材110と下側糸部材120とは、上側糸部材110の下端部分112と下側糸部材120の上端部分121との間の重なり部分で互いに撚り合されていない。
【0018】
上側糸部材110と下側糸部材120とが撚り合されている構成は、下側糸部材120を上側糸部材110へ固定し、上側糸部材110と下側糸部材120とを重なり部分で互いに撚り合した後に、上側糸部材110を下側糸部材120へ固定することにより実現される。つまり、初めに上の編み付け固定を行い、つぎに撚り合せて、最後に下の編み付け部を作る。
【0019】
釣り糸具100がテンカラ釣りのための釣り糸具であるのみならず、釣り竿200および釣り鉤300はそれぞれテンカラ釣りのための釣り竿および釣り鉤である。たとえば、釣り鉤300は、フライとも呼ばれる毛鉤である。従来からあるテンカラ毛鉤も存在するので、和式テンカラ毛鉤のみならず、洋式フライ鉤も使用可能である。
【0020】
図1から3を参照しながら、本実施の形態の釣り糸具100についてより具体的に説明する。
【0021】
釣り糸具100は、上側糸部材110と、下側糸部材120と、を有する。
【0022】
上側糸部材110は、上端部分111が釣り竿200へ取り付けられる部材である。
【0023】
下側糸部材120は、下端部分122が釣り鉤300へ取り付けられる部材である。
【0024】
下側糸部材120は、上糸部120aと、下糸部120bと、を有する。上糸部120aの下端部分と、下糸部120bの上端部分と、は、しっかりと結び合わされている。たとえば、硬質のフロロカーボンラインが共通に利用される、または軟質のナイロンラインが共通に利用される場合においては、上側糸部材110の材質と下側糸部材120の材質とは同じであるので、このような結び合わせは不要である。
【0025】
ストレートラインまたはテーパーラインを構成するための上側糸部材110へ近接する下糸部120bの根本は太く、釣り鉤300へ取り付けられる下糸部120bの先端は細いテーパーラインが、構成される。したがって、根本から先端へ向かって細くなる鞭のようなテーパーラインの構成により振りの力を前へ進めることができるので、錘がなくても、正確な投げ込みが実現される。
【0026】
上側糸部材110の下端部分112は、下側糸部材120の上端部分121と比べて下方の部分で下側糸部材120へスライド可能に固定されている。
【0027】
下側糸部材120の上端部分121は、上側糸部材110の下端部分112と比べて上方の部分で上側糸部材110へスライド可能に固定されている。
【0028】
上側糸部材110と下側糸部材120とが上側糸部材110の下端部分112と下側糸部材120の上端部分121との間の重なり部分で互いに撚り合されていることにより、伸縮撚り部が構成される。
【0029】
たとえば、上端部分121を固定し、上側糸部材110と下側糸部材120とを同じ向きにまたは異なる向きに撚り合せることにより、伸縮撚り部を構成することができる。
【0030】
竿の長さには長短のバラエティーがあるが、テンカラ釣りのための釣り竿である釣り竿200はしばしば前後に激しく振られて使用されるので、軽い毛鉤である釣り鉤300を川面の狙いの着水ポイントへ正確に投げ込むことができるように、上側糸部材110と下側糸部材120との一体性がこのような伸縮撚り部により実現されることが望ましい。
【0031】
上側糸部材110および下側糸部材120の素材に関しては、比重、硬さ、伸縮率などを考慮して、糸の種類などの使い分けが行われる。たとえば、ナイロンラインは比較的に柔らかいよく知られたラインであり、フロロカーボンラインは直線性に優れているラインであり、PE(ポリエチレン)ラインは強度が大きいラインであり、つぎのような素材の使い分けが行われる。
【0032】
たとえば、上側糸部材110にはフロロカーボンラインが利用され、テーパーラインを構成するための下側糸部材120の下糸部120bにはナイロンラインが利用される場合においても、伸縮撚り部を構成するための下側糸部材120の上糸部120aにはフロロカーボンラインが利用される。つまり、仕掛けにおいてはさまざまな種類の糸の構成が考えられ、このような糸の種類は画一的ではないが、伸縮撚り部の部材は同質の部材であることが望ましい。
【0033】
フロロカーボンラインの伸縮率はナイロンラインの伸縮率と異なるが、伸縮撚り部を構成するための下側糸部材120の上糸部120aには、下側糸部材120の下糸部120bに利用されるナイロンラインは利用されず、上側糸部材110に利用されるフロロカーボンラインが利用されるので、上側糸部材110と下側糸部材120とは重なり部分で同質の糸の捩じりによりしっかりと互いに撚り合されている。
【0034】
上側糸部材110が下側糸部材120へスライド可能に固定されており、下側糸部材120が上側糸部材110へスライド可能に固定されている。したがって、後述されるように、上側糸部材110と下側糸部材120との間の重なり部分が減少させられて、素早いハリス繰り出しが容易に実現されるので、下側糸部材120は釣り鉤300の結び替えにより少しずつ短くなるが、仕掛け下端部分の面倒なハリス交換を頻繁に行う必要はない。
【0035】
上側糸部材110の下端部分112は、下側編み付け糸部材140を利用して下側糸部材120へスライド可能に固定されている。
【0036】
一端が上側糸部材110の下端部分112へ固定的に編み付けられている下側編み付け糸部材140は、下側糸部材120へスライド可能に編み付けられている、いわゆるノーマル方式編みまたは万力編みなどのような編み付けによる下側の編み付け部を構成する。上側糸部材110の下端部分112には抜け止めの一重結び、または糸を焼くまたはナイロン糸成形時に玉を作成することにより形成された玉部などが形成されており、下側編み付け糸部材140の一端は2から3回の緩みにくい結びで下端部分112へ固定的に取り付けられている。下側編み付け糸部材140の一端は、本発明における変形例の実施の形態の釣り糸具100の下側編み付け糸部材140近傍の模式的な拡大斜視図である図4に示されている態様で、下端部分112へ固定されていてもよい。下側糸部材120へのスライド可能な編み付けは、釣り竿200の振りまたは魚の食いにより意図せずスライドすることがほとんどない、しっかりした複数回の編み付けである。このような編み付けの回数は、下側編み付け糸部材140の太さに応じた回数であり、たとえば、10以上である。
【0037】
もしも仮に上側糸部材110が比較的に細ければ、下側編み付け糸部材140を利用しないで上側糸部材110で編み付けを形成することにより、上側糸部材110の下端部分112を下側糸部材120へスライド可能に固定することができる。上側糸部材110が比較的に太い場合においては、下側編み付け糸部材140を利用することにより、三つ編みなどによる編み付けの大きな嵩張り、および意図しない糸のスライドが発生する恐れなしに、下端部分112を下側糸部材120へスライド可能に固定することができる。
【0038】
下側糸部材120の上端部分121は、上側編み付け糸部材130を利用して上側糸部材110へスライド可能に固定されている。
【0039】
一端が下側糸部材120の上端部分121へ固定的に編み付けられている上側編み付け糸部材130は、上側糸部材110へスライド可能に編み付けられている、いわゆるノーマル方式編みまたは万力編みなどのような編み付けによる上側の編み付け部を構成する。下側糸部材120の上端部分121には抜け止めの一重結び、または糸を焼くまたはナイロン糸成形時に玉を作成することにより形成された玉部などが形成されており、上側編み付け糸部材130の一端は2から3回の緩みにくい結びで上端部分121へ固定的に取り付けられている。上側糸部材110へのスライド可能な編み付けは、釣り竿200の振りまたは魚の食いにより意図せずスライドすることがほとんどない、しっかりした複数回の編み付けである。このような編み付けの回数は、上側編み付け糸部材130の太さに応じた回数であり、たとえば、10以上である。
【0040】
もしも仮に下側糸部材120が比較的に細ければ、上側編み付け糸部材130を利用しないで下側糸部材120で編み付けを形成することにより、下側糸部材120の上端部分121を上側糸部材110へスライド可能に固定することができる。下側糸部材120が比較的に太い場合においては、上側編み付け糸部材130を利用することにより、三つ編みなどによる編み付けの大きな嵩張り、および意図しない糸のスライドが発生する恐れなしに、上端部分121を上側糸部材110へスライド可能に固定することができる。
【0041】
上側糸部材110が上方へ向かって引っ張られ、下側糸部材120が下方へ向かって引っ張られても、意図しない糸のスライドは発生しない。したがって、釣り竿200の振りまたは魚の食いによる意図しない糸のスライドが発生する恐れは、ほとんどない。
【0042】
つぎに、上側糸部材110と下側糸部材120との間の重なり部分が減少させられる、ハリス繰り出しについて詳細に説明する。
【0043】
レベルラインを構成するための上側糸部材110が保持されている状態において、上側糸部材110へスライド可能に編み付けられている上側編み付け糸部材130を、たとえば、人差し指および親指で挟んで矢印Bの向きに押下げることにより、上側編み付け糸部材130の編み付けをやや緩めることができる。
【0044】
そのような編み付けの緩みを利用することにより、上側編み付け糸部材130が矢印Bの向きに下方へ向かってずらされるようにスライドさせられると、上側糸部材110には弛みは生成されないが、下側糸部材120の上糸部120aには弛みが生成される。
【0045】
下側糸部材120が単に下方へ向かって引っ張られても、下側糸部材120を下方へ向かって引っ張る下向きテンションは下側編み付け糸部材140により抑止されるので、上側編み付け糸部材130がかくの如くスライドしないことは言うまでもない。
【0046】
下側糸部材120の上糸部120aに生成されたこのような弛みが解消されるように、下側糸部材120の下糸部120bを矢印Bの向きに下方へ向かって引っ張りながら下側編み付け糸部材140を矢印Aの向きに押上げてスライドさせることにより、下糸部120bは押し出され、上側糸部材110と下側糸部材120との間の重なり部分が減少させられた状態が容易に実現される。
【0047】
もちろん、このような状態において、上側糸部材110が上方へ向かって引っ張られ、下側糸部材120が下方へ向かって引っ張られても、意図しない糸のスライドは発生しない。
【0048】
つぎに、上側糸部材110および下側糸部材120の色の使い分けについて詳細に説明する。
【0049】
上側糸部材110および下側糸部材120の色は全て、たとえば、人間にとっての視認性が低い透明である。
【0050】
上側糸部材110の色は、人間にとっての視認性が高い色であってもよい。
【0051】
下側糸部材120の色が全て、ハリスを与えるテーパーラインにふさわしい、透明であれば、下方の下側糸部材120の部分は、ハリス繰り出しが行われても、魚に視認されにくいままである。しかしながら、魚はピンクのような色をあまり警戒しないので、下側糸部材120の下糸部120bのみが透明であってもよく、たとえば、下側糸部材120の下糸部120bは透明であるが、下側糸部材120の上糸部120aは、人間にとっての視認性が高い色である、ピンクであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明における釣り糸具は、面倒なハリス交換の頻度を低減することができ、テンカラ釣りなどのための釣り糸具に利用する目的に有用である。
【符号の説明】
【0053】
100 釣り糸具
110 上側糸部材
111 上端部分
112 下端部分
120 下側糸部材
120a 上糸部
120b 下糸部
121 上端部分
122 下端部分
130 上側編み付け糸部材
140 下側編み付け糸部材
200 釣り竿
300 釣り鉤
A 矢印
B 矢印
図1
図2
図3
図4