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特許7122368機能性複合粒子を有する繊維布及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】機能性複合粒子を有する繊維布及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 23/08 20060101AFI20220812BHJP
   D06M 11/83 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
D06M23/08
D06M11/83
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020501351
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 CN2018096183
(87)【国際公開番号】W WO2019015621
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/093391
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520007019
【氏名又は名称】納獅新材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAXAU NEW MATERIALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.1661, 2 XINGPING ROAD, PINGHU ECONOMIC-TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, JIAXING, ZHEJIANG 314200, PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】520007020
【氏名又は名称】嘉興奥徳医療技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】AODOZ MEDICAL TECHNOLOGY CORPORATION
【住所又は居所原語表記】ROOM 201, BUILDING 2, NO.1661, 2 XINGPING ROAD, PINGHU ECONOMIC-TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, JIAXING, ZHEJIANG 314200, PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】袁 安 素
(72)【発明者】
【氏名】温 振 偉
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/018899(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0207266(US,A1)
【文献】中国実用新案第205522773(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第101054659(CN,A)
【文献】特表平08-500392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0040659(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104494229(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105861988(CN,A)
【文献】特表2020-531680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00 - 14/58
D06M 10/00 - 11/84
D06M 16/00
D06M 19/00 - 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発・凝縮プロセスにより、機能性金属粒子からなる固体金属ブロックを坩堝に投入し、加熱して物理気相成長(PVD)プロセス用真空炉内へ蒸発させて凝縮させることと、
PVDプロセスにより、凝縮状態での機能性金属粒子の外面にPVDセラミック層を成長させ、前記機能性複合粒子を形成することと、
前記機能性複合粒子を粒子選別機により選別し、加速して繊維布に衝撃を与えることにより、前記機能性複合粒子を前記繊維布に埋め込むすることとを含む
機能性複合粒子を有する繊維布の製造方法。
【請求項2】
前記粒子選別機は、磁界発生装置と、電界発生装置と、バッフルとを備え、磁界方向と電界方向とは、略垂直である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電界発生装置は、パワーが約5Kw~約30Kwの独立バイアス電源である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記磁界の強さは、約5mT~約1000mTである請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記電界の強さは、約5KV~約60KVである請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維布は、前記機能性複合粒子の衝撃方向に略垂直な線速度10m/min~40m/minで移動する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
選別された前記機能性複合粒子の粒子径は、約15nm~約500nmであり、選別された前記機能性複合粒子のエネルギーは、約5KeV~約60KeVの範囲内にある請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記機能性金属粒子は、抗菌性金属粒子であり、前記抗菌性金属粒子は、Ag金属粒子、Zn金属粒子、Cu金属粒子又はこれらの混合物である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記PVDセラミック層は、Zr、Ti、Al、V、Nb、Ta、Y、Fe、Cr、Mo、W又はこれらの組合わせで構成される金属酸化物、金属窒化物又はこれらの混合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記PVDセラミック層は、ZrN、TiN、AlTiN、Al、ZrO、TiO、VN、NbN、TaN、YN、FeN、CrN、MoN、WN、V、Nb、Ta、Y、Fe、Cr、MoO又はWOで構成されるPVDセラミック層である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記繊維布の材料は、綿、麻、シルク、合成繊維又はこれらの組合わせから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
繊維布であって、前記繊維布の繊維の中には、
機能性金属粒子からなり、外面を有するコアと、
物理気相成長(PVD)セラミック層であって、前記コアの外面に付着しているシェル層と、を含む機能性複合粒子を有し、
前記シェル層が結晶構造であることによって、前記コア内の機能性金属粒子が、イオン状態で粒界を介して前記シェル層外に徐放されることが許容される
繊維布。
【請求項13】
前記機能性金属粒子は、抗菌性金属粒子であり、前記抗菌性金属粒子は、Ag金属粒子、Zn金属粒子、Cu金属粒子又はこれらの混合物である請求項12に記載の繊維布。
【請求項14】
前記PVDセラミック層は、Zr、Ti、Al、V、Nb、Ta、Y、Fe、Cr、Mo、W又はこれらの組合わせで構成される金属酸化物、金属窒化物又はこれらの混合物を含む請求項12に記載の繊維布。
【請求項15】
前記PVDセラミック層は、ZrN、TiN、AlTiN、Al、ZrO、TiO、VN、NbN、TaN、YN、FeN、CrN、MoN、WN、V、Nb、Ta、Y、Fe、Cr、MoO又はWOで構成されるPVDセラミック層である請求項14に記載の繊維布。
【請求項16】
前記機能性複合粒子の粒子径は、約15nm~約500nmである請求項12に記載の繊維布。
【請求項17】
前記機能性複合粒子の前記繊維布における分布密度は、約10個/cm~約10個/cmである請求項12に記載の繊維布。
【請求項18】
前記繊維布の材料は、綿、麻、シルク、合成繊維又はこれらの組合わせから選択される請求項12に記載の繊維布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願番号PCT/CN2017/093391のPCT特許出願の優先権を主張し、上記PCT特許出願の全文は、引用の形式で本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、複合材料の技術分野に係り、特に機能性複合粒子を有する繊維布及びその製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0003】
以下の説明及び実施例は、この章節に含まれることから従来技術と見なされるものではない。
【0004】
抗菌ドライワイプ又は生地の製造方法は、通常、2つの技術方案によって行われる。1つ目は、抗菌材料で糸(銀糸や銅糸)を作製して繊維生地に編み込む技術方案であり、二つ目は、抗菌材料で抗菌粒子を作製し、スプレー塗装、捺染又はPVD技術で抗菌粒子を繊維生地の表面に塗布することで、繊維生地に抗菌機能を持たせる技術方案である。
【0005】
しかしながら、1つ目の技術方案は、コストが非常に高く、繊維生地の表面の抗菌性能が不均一であるという欠点がある。二つ目の技術方案は、抗菌粒子を繊維生地の表面に直接塗布することから、抗菌粒子が長時間にわたって空気に直接接触し、表面に酸化層が形成され、持続的な抗菌効果を維持できない。また、繊維生地の表面に塗布された抗菌粒子が洗浄、揉みなどの外力作用を受けたとき、抗菌粒子が落ち、それにより、繊維生地が抗菌効果を失ってしまう。
【0006】
この点に鑑みて、抗菌ドライワイプ又は生地の製造方法には、改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施例は、少なくともある程度に、関連分野に存在する問題を少なくとも1つ解決することを図るために、機能性複合粒子を有する繊維布及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例によれば、本発明は、蒸発・凝縮プロセスにより、機能性金属粒子からなる固体金属ブロックを坩堝に投入し、加熱して物理気相成長(PVD)プロセス用真空炉内へ蒸発させて凝縮させることと、その後、PVDプロセスにより、凝縮状態での機能性金属粒子の外面にPVDセラミック層を成長させ、前記機能性複合粒子を形成することと、最後に、前記機能性複合粒子を粒子選別機により選別し、加速して繊維布に衝撃を与えることにより、前記機能性複合粒子を前記繊維布に埋め込むこととを含む、機能性複合粒子を有する繊維布の製造方法を提供する。
【0009】
幾つかの実施例において、前記粒子選別機は、磁界発生装置と、電界発生装置と、バッフルとを備え、磁界方向と電界方向とは、略垂直である。
【0010】
幾つかの実施例において、前記電界発生装置は、パワーが約5Kw~約30Kwの独立バイアス電源である。
【0011】
幾つかの実施例において、前記磁界の強さは、約5mT~約1000mTである。
幾つかの実施例において、前記電界の強さは、約5KV~約60KVである。
【0012】
幾つかの実施例において、前記繊維布は、前記機能性複合粒子の衝撃方向に略垂直な線速度10m/min~40m/minで移動する。
【0013】
幾つかの実施例において、選別された前記機能性複合粒子の粒子径は、約15nm~約500nmであり、選別された前記機能性複合粒子のエネルギーは、約5KeV~約60KeVの範囲内にある。
【0014】
幾つかの実施例において、前記機能性金属粒子は、抗菌性金属粒子であり、前記抗菌性金属粒子は、Ag金属粒子、Zn金属粒子、Cu金属粒子又はこれらの混合物である。
【0015】
幾つかの実施例において、前記PVDセラミック層は、Zr、Ti、Al、V、Nb、Ta、Y、Fe、Cr、Mo、W又はこれらの組合わせで構成される金属酸化物、金属窒化物又はこれらの混合物を含む。
【0016】
幾つかの実施例において、前記PVDセラミック層は、ZrN、TiN、AlTiN、Al、ZrO、TiO、VN、NbN、TaN、YN、FeN、CrN、MoN、WN、V、Nb、Ta、Y、Fe、Cr、MoO又はWOで構成されるPVDセラミック層である。
【0017】
幾つかの実施例において、前記繊維布の材料は、綿、麻、シルク、合成繊維及びこれらの組合わせから選択される。
【0018】
本発明の別の実施例によれば、本発明は、繊維布であって、前記繊維布の繊維の中には、機能性金属粒子からなり、外面を有するコアと、物理気相成長(PVD)セラミック層であって、前記コアの外面に付着しているシェル層と、を含む機能性複合粒子を有し、前記シェル層が結晶構造であることによって、前記コア内の機能性金属粒子が、イオン状態で粒界を介して前記シェル層外に徐放されることが許容される繊維布を提供する。
【0019】
幾つかの実施例において、前記機能性複合粒子の前記繊維布における分布密度は、約10個/cm~約10個/cmである。
【0020】
本願の実施例の他の面及び利点は、部分的に後続の説明で記述、明示し、又は本願の実施例の実施により詳しく説明する。
【0021】
以下に、本願の実施例の説明に必要な図面を概略的に説明する。以下の説明における図面は、本願における実施例の一部にすぎないことは言うまでもない。当業者にとって、創造的労働を必要としない前提で、これらの図面に例示された構造に基づいて、他の実施例の図面を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施例における機能性複合粒子の構造の模式図を示す。
図2】本発明の一実施例における機能性複合粒子を有する繊維布の模式図を示す。
図3】本発明の一実施例における機能性複合粒子が粒子選別機を通過する際の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の趣旨をより良好に理解するために、以下に、図面及び具体的な実施例を参照して本発明の実施例で提供する機能性複合粒子をさらに詳しく説明する。以下の説明及び特許請求の範囲により、本発明の実施例の利点及び特徴は、より明らかになる。
【0024】
本明細書で使用するように、「ほぼ」、「略」、「実質」及び「約」という用語は、わずかな変化を記述、説明するためのものである。事柄又は状況と併せて使用することにより、上記用語は、事柄又は状況が精確に発生する例、及び事柄又は状況が極めて近似的に発生する例を指し得る。例えば、数値と併せて使用する場合、上記用語は、前記数値の±10%以下の変化範囲、例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下を指すことができる。例えば、2つの数値の差が前記数値の平均値の±10%以下(例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下)であれば、上記2つの数値は「略」同じであると考えられる。
【0025】
説明を要するのは、図1~3における模式図は、本発明の実施例を容易かつ明瞭に補助して説明するため、簡略化した形式を採用し、かつ、精確でない比例を使用していることである。
【0026】
図1は、本発明の一実施例における機能性複合粒子の構造の模式図を示し、機能性複合粒子10は、機能性金属粒子からなり、外面111を有するコア11と、シェル層12とを備える。シェル層12は、コア11の外面111に付着しており、セラミック材料で構成される物理気相成長(PVD)セラミック層である。
【0027】
図2は、本発明の一実施例に提供される機能性複合粒子を有する繊維布の模式図を示し、前記繊維布20は、荷電粒子注入方法により、上記実施例における機能性複合粒子10がその繊維の内部に埋め込まれたものである。図1及び図2から、前記機能性複合粒子10は、繊維布20内の繊維重合高分子で形成される空隙及び孔に位置し、前記機能性複合粒子におけるシェル層12は、粒界121を有する結晶構造であり、当該粒界121は、コア11内の機能性金属粒子がイオン状態であることでシェル層12の外部に通じる通路を提供することが分かる。本発明の一実施例では、当該機能性複合粒子10の使用過程において、シェル層が結晶構造であるので、コア11内の機能性金属粒子は、イオン状態の態様で粒界121を介してシェル層12の外部に徐放されることが可能である。また、コア11の外面111を被覆したシェル層12により、コア11内の機能性金属粒子が外界の酸素ガスに接触することを効果的に阻止し、過度に早く酸化することを回避することができる。イオン状態の態様で前記機能性金属粒子を徐放するとともに前記機能性金属粒子と外界の酸素ガスとの接触を低減させることにより、機能性金属粒子の作用時間を延長し、持続的な抗菌効果を持つ繊維布が得られる。
【0028】
上記した機能性複合粒子を有する繊維布を得るために、本発明の一実施例は、機能性複合粒子を有する繊維布の製造方法を提供し、具体的には、まず、蒸発・凝縮プロセスにより、機能性金属粒子の固体金属ブロックを坩堝に投入し、加熱して物理気相成長(PVD)プロセス用真空炉内へ蒸発させて凝縮させることで、コア11を形成することと、その後、PVDプロセスにより、凝縮状態での機能性金属粒子の外面111にセラミック材料で構成されるシェル層12を成長させ、機能性複合粒子10を形成することと、その後、前記機能性複合粒子を真空炉で粒子選別機により選別し、加速して繊維布に衝撃を与えることにより、前記機能性複合粒子を前記繊維布に埋め込むこととを含む。
【0029】
本発明の一実施例において、機能性金属粒子の凝縮後の粒子径は加熱源の加熱効率に影響される。
【0030】
本発明の一実施例において、電子銃を加熱源として使用して機能性金属粒子からなる固体金属ブロックを加熱し、電子銃の電流強度の範囲は、約60A~300Aである。
【0031】
本発明の一実施例において、PVDプロセスによるPVDセラミック層の形成工程は、物理気相成長(PVD)プロセス用真空炉に純度が約99.999%の窒素ガス又は酸素ガスを導入し、バイアス電圧が約0V~1000Vの条件で、生体適合性セラミック材料を含むターゲットを開放し、アーク電流を約120A~200Aとし、PVDプロセスにより、凝縮状態での機能性金属粒子の外面にPVDセラミック層を成長させることを含む。
【0032】
本発明の実施例は、通常のPVD装置で通常のPVDプロセスによりシェル層12を形成することができる。
【0033】
本発明の一実施例においては、前記機能性複合粒子10の粒子径の範囲は、約15nm~約50000nmである。本発明の一実施例において、前記機能性金属粒子は、抗菌性金属粒子であり、前記抗菌性金属粒子は、Ag金属粒子、Cu金属粒子、Zn金属粒子又はこれらの混合物を含む。本発明の一実施例において、シェル層12は、Zr、Ti、Al、V、Nb、Ta、Y、Fe、Cr、Mo、W又はこれらの組合せからなる金属酸化物、金属窒化物又はこれらの混合物で構成される物理気相成長セラミック層であり、その厚さが約5nm~約20000nmであり、表面硬度が1000HV~4500HVであり、3000HV~4000HVが好ましい。本発明の一実施例において、シェル層12は、ZrN、TiN、AlTiN、Al、ZrO、TiO、VN、NbN、TaN、YN、FeN、CrN、MoN、WN、V、Nb、Ta、Y、Fe、Cr、MoO又はWOで構成される物理気相成長セラミック層である。
【0034】
出願番号PCT/CN2017/093391のPCT特許出願には、複数の機能性複合粒子10の具体的な実施例が例示されており、その全文が、引用形式で本明細書に組み込まれる。
【0035】
本発明の一実施例においては、前記粒子選別機は、磁界発生装置と、電界発生装置と、バッフルとを備え、磁界方向と電界方向とは、略垂直である。
【0036】
図3は、本発明の一実施例における機能性複合粒子が粒子選別機を通過する際の模式図を示す。図3に示すように、本発明の一実施例においては、前記粒子選別機30は、磁界Bを発生する磁界発生装置と、電界Eを発生する電界発生装置と、開口31を有するバッフルとを備える。図3では磁界Bの方向(紙面に垂直に向かう方向)が電界Eの方向に垂直であることが示されているが、当業者であれば、実際の操作において、両者間の夾角にわずかな誤差があることが許容され、必ずしも完璧な90度とは限らないことを明らかに理解できるはずである。また、上記した磁界Bを発生する磁界発生装置は、磁界を発生可能な如何なる装置をも含み、例えば、前記装置は、強力な磁石又は他の電磁装置であってもよいが、これらに限定されるものではない。上記した電界Eを発生する電界発生装置は、電界Eを発生可能な如何なる装置も含む。本発明の一実施例において、前記電界装置は、パワーが約5Kw~約30Kwの独立バイアス電源を含んでもよいが、これに限定されるものではない。本発明の一実施例において、前記磁界Bの強さは、約5mT~約1000mTである。本発明の一実施例において、前記電界の強さは、約5KV~約60KVである。本発明の一実施例においては、前記磁界は、配向が均一な磁界であり、前記電界は、配向が均一な電界である。
【0037】
前記機能性複合粒子は、形成後に少量の電荷を帯びるので、前記粒子選別機30に注入されるとき、電界Eの方向に沿って加速移動することができる。同時に、磁界Bは、前記機能性複合粒子の移動方向に略垂直な向心力(ローレンツ力ともいう)を提供し、前記機能性複合粒子の運動軌跡を変化させる(図3に点線Tで示すとおり)。
【0038】
向心力Fの大きさは、F=BQV=MV/Rという公式(1)により算出できる。公式(1)から分かるように、電界E及び磁界Bの調整により粒子速度Vも磁界Bも一定とされる場合、粒子の運動半径R(即ち、運動軌跡)は、粒子の質量M(粒子の粒子径)に正比例し、帯びた電荷Qに反比例する。前記バッフルに磁界Bの方向に略平行な開口31を設けることにより、前記開口31により、特定の運動軌跡を有する前記機能性複合粒子を前記粒子選別機30に通過させて他の機能性複合粒子を遮断することができる。したがって、質量M(粒子の粒子径)及び帯びた電荷Q(エネルギー)が適切な範囲内にある前記機能性複合粒子でなければ、前記粒子選別機を通過することができない。
【0039】
本発明の一実施例においては、前記開口31の開口の大きさは、約1cm~約2cmである。本発明の一実施例において、外部磁界B及び電界Eの数値を調整することで、加速器を通過する粒子の粒子径及びエネルギーを調整し、前記機能性複合粒子の選別を行うことができる。
【0040】
本願の実施例で提供する機能性複合粒子を有する繊維布及びその製造方法は、以下の特徴及び利点を有する。
【0041】
一般的な繊維布における繊維の粒子径は、約10um~100umの範囲内にあり、例えば、綿布繊維の粒子径が約38um~51umであり、ウールタイプ繊維の粒子径が約64um~114umであり、また、合成繊維の粒子径が約30um~50umであり、繊維布における繊維は、規則的な結晶構造及び不規則なアモルファス構造で構成される混合物である。アモルファス構造において、繊維布における繊維の高分子は、無秩序に配列し、堆積がゆるく、多くの空隙、孔がある。本発明の一実施例においては、前記粒子選別機における電界E及び磁界Bの強度を調整することにより、前記選別機により選別され、加速された前記機能性複合粒子の粒子径を、約15nm~約500nmとし、そのエネルギーを約5KeV~約60KeVの範囲内とし、さらには、前記粒子選別機を通過する前記機能性複合粒子が前記繊維布に衝撃を与えると、前記機能性複合粒子は、前記繊維布における繊維高分子の表面障壁を通り抜け、前記繊維布内のアモルファス構造の空隙、孔を通り、前記繊維布の内部に埋め込まれ、前記繊維布における繊維高分子との一連の衝突を経た後、前記繊維の中に強固に嵌め込まれることが可能になる。本発明の一実施例において、前記選別機により選別され、加速された前記機能性複合粒子の粒子径は、約15nm~約100nmである。
【0042】
本発明の一実施例においては、衝突を経た後、前記機能性複合粒子のエネルギーは、大部分が繊維の弾性位置エネルギー、小部分が熱エネルギーに変換される。入射される前記機能性複合粒子の粒子径は、前記繊維布の前記繊維の粒子径よりもはるかに小さく、前記機能性複合粒子による弾性変形が前記繊維の弾性限界よりもはるかに小さいので、前記繊維布の物理的性能が変化することはない。
【0043】
本発明の一実施例においては、前記電界発生装置のパワーの大きさを調整することで前記機能性複合粒子の入射粒子束の密度を制御することができ、また、繊維布を、特定の速度で前方へ移動させるように設定することで繊維布に埋め込まれた単位面積における機能性複合粒子の密度を制御することができる。繊維布に埋め込まれた単位面積における機能性複合粒子の密度を合理的な範囲内に制御することにより、繊維布は優れた抗菌効果を有するとともに、機能性複合粒子の過剰による熱エネルギーの蓄積に起因して繊維布の軟化変形が発生することはない。
【0044】
本発明の一実施例においては、前記繊維布は、前記機能性複合粒子の衝撃方向に略垂直な線速度10m/min~40m/minで移動する。本発明の一実施例において、前記機能性複合粒子の前記繊維布における分布密度は、約10個/cm~約10個/cmである。
【0045】
本発明の一実施例においては、前記機能性複合粒子は、任意の材料の繊維布に埋め込め、例えば、前記繊維布の材料は、綿、麻、シルク及び合成繊維のうちの1つ又は複数から選択できるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
以下、本発明の具体的な好ましい実施例を参照し、本発明に係る機能性複合粒子を有する繊維布の製造をさらに説明する。
【0047】
実施例1
まず、Ag(銀)金属ブロックを坩堝に投入し、電子銃により電流強度100AでAg(銀)金属ブロックを加熱して、物理気相成長(PVD)プロセス用炉(真空保持)内へ蒸発させて凝縮させることにより、凝縮状態でのAg(銀)金属粒子を形成した。
【0048】
その後、物理気相成長(PVD)プロセス用真空炉に純度99.999%の窒素ガスを導入し、バイアス電圧が90Vの条件で、Tiを含むターゲットを開放し、アーク電流を150Aとし、PVDプロセスにより前記凝縮状態でのAg(銀)金属粒子の外面にTiNセラミック層を成長させることで、帯電した機能性複合銀粒子を形成した。
【0049】
その後、電荷を帯びた機能性複合銀粒子を、磁界が約700mT、独立バイアス電源のパワーが10Kwの粒子選別機に導入し、約20KVの電界を形成することにより、粒子選別機を通過する機能性複合銀粒子の粒子径を約50nm~約70nmとし、そのエネルギーを約5KeV~約60KeVの範囲内とした。綿質材料の繊維不織布を、繊維不織布の表面が粒子の出射方向に略垂直であるように粒子選別機の開口に配置し、30m/minの線速度で繊維不織布の表面を粒子選別機の開口に通過させ、機能性複合銀粒子を繊維不織布の表面に均一に打ち込むことにより、粒子の分布密度が約10個/cmの機能性複合銀粒子を有する繊維不織布が形成された。
【0050】
実施例2
まず、Cu(銅)金属ブロックを坩堝に投入し、電子銃により電流強度130AでCu(銅)金属ブロックを加熱して、物理気相成長(PVD)プロセス用炉(真空保持)内へ蒸発させて凝縮させることにより、凝縮状態でのCu(銅)金属粒子を形成した。
【0051】
その後、物理気相成長(PVD)プロセス用真空炉に純度99.999%の窒素ガスを導入し、バイアス電圧が120Vの条件で、Tiを含むターゲットを開放し、アーク電流を150Aとし、PVDプロセスにより前記凝縮状態でのCu(銅)金属粒子の外面にTiNセラミック層を成長させることで、帯電した機能性複合銅粒子を形成した。
【0052】
その後、電荷を帯びた機能性複合銅粒子を、磁界が約400mT、独立バイアス電源のパワーが15Kwの粒子選別機に導入し、約13KVの電界を形成することにより、粒子選別機を通過する機能性複合銅粒子の粒子径を約45nm~約80nmとし、そのエネルギーを約5KeV~約60KeVの範囲内とした。綿質材料の繊維不織布を、繊維不織布の表面が粒子の出射方向に略垂直であるように粒子選別機の開口に配置し、30m/minの線速度で繊維不織布の表面を粒子選別機の開口に通過させ、機能性複合銅粒子を繊維不織布の表面に均一に打ち込むことにより、粒子の分布密度が約10個/cmの機能性複合銅粒子を有する繊維不織布が形成された。
【0053】
実施例3
まず、Zn(亜鉛)金属ブロックを坩堝に投入し、電子銃により電流強度80AでZn(亜鉛)金属ブロックを加熱して、物理気相成長(PVD)プロセス用炉(真空保持)内へ蒸発させて凝縮させることにより、凝縮状態でのZn(亜鉛)金属粒子を形成した。
【0054】
その後、物理気相成長(PVD)プロセス用真空炉に純度99.999%の窒素ガスを導入し、バイアス電圧が70Vの条件で、Tiを含むターゲットを開放し、アーク電流を150Aとし、PVDプロセスにより前記凝縮状態でのZn(亜鉛)金属粒子の外面にTiNセラミック層を成長させることで、帯電した機能性複合亜鉛粒子を形成した。
【0055】
その後、電荷を帯びた機能性複合亜鉛粒子を、磁界が約450mT、独立バイアス電源のパワーが12Kwの粒子選別機に導入し、約15KVの電界を形成することにより、粒子選別機を通過する機能性複合亜鉛粒子の粒子径を約65nm~約90nmとし、そのエネルギーを約5KeV~約60KeVの範囲内とした。綿質材料の繊維不織布を、繊維不織布の表面が粒子の出射方向に略垂直であるように粒子選別機の開口に配置し、30m/minの線速度で繊維不織布の表面を粒子選別機の開口に通過させ、機能性複合亜鉛粒子を繊維不織布の表面に均一に打ち込むことにより、粒子の分布密度が約10個/cmの機能性複合亜鉛粒子を有する繊維不織布が形成された。
【0056】
以上の説明で、複数の実施例の特徴をまとめたことにより、当業者は、本願の複数の面をより理解できる。当業者は、本願の実施例と同じ目的を実現し、及び/又は同じ利点を達成するために、本願を基礎として他の組成物を容易に設計又は修正することができる。当業者であれば、これら均等の実施例が本願の趣旨及び範囲から逸脱するものではなく、本願の趣旨及び範囲から逸脱することなく本願に対して様々な変更、置換及び修正を行うことができることも理解できる。本明細書に記載されている方法は、具体的な順序で実行される具体的な操作を参照して説明したが、本願の教示から逸脱することなく、これらの操作を組み合わせ、細分化し、又は改めて順序付けることで等価な方法を形成することができると理解すべきである。したがって、本明細書において特に指示がない限り、操作の順序及び組み分けは本願に対する制限ではない。
図1
図2
図3