(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】ハニカム構造体、排気ガス浄化装置及び排気システム
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20220812BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220812BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20220812BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
B01J35/04 301H
B01D53/94 222
B01D53/94 241
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J35/04 ZAB
B01J35/04 301E
F01N3/20 K
F01N3/24 L
(21)【出願番号】P 2020558102
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019034019
(87)【国際公開番号】W WO2020110395
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2018225820
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019022107
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宮入 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】桝田 昌明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 恭平
(72)【発明者】
【氏名】脇田 倫弘
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/021186(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/111398(WO,A1)
【文献】特開2015-029939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0022868(US,A1)
【文献】特開平11-336534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/73 - 53/96
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となり、流体の流入側の端面である流入端面から流体の流出側の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁、及び、
最外周に位置する外周壁、
を有する柱状のハニカム構造体であって、
前記複数のセルが、
複数の第1のセルと、
断面積が前記第1のセルの断面積より小さい、複数の第2のセルと、
を有し、
前記複数の第1のセルのそれぞれの内部が、磁性体を含む材料で充填されておらず、
前記複数の第2のセルのそれぞれの内部が、磁性体を含む材料で充填されており、
前記複数の第2のセルが、それぞれ前記複数の第1のセルの少なくとも1つと隣接して配置されているハニカム構造体。
【請求項2】
前記複数の第1のセルが、それぞれ前記複数の第2のセルの少なくとも1つと隣接して配置されている請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記複数の第1のセルが、それぞれ多角形の開口を有し、
前記複数の第2のセルが、それぞれ前記複数の第1のセルの多角形の開口の少なくとも1つの角部に隣接して配置されている請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記複数の第1のセル及び前記複数の第2のセルの断面積の合計に対する前記複数の第2のセルの断面積の割合が10%以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記複数の第1のセルと前記複数の第2のセルとが千鳥配置されている請求項1~4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記複数の第1のセルの等価水力直径が、前記複数の第2のセルの等価水力直径の2倍以上である請求項1~5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記複数の第1のセルの等価水力直径が、前記複数の第2のセルの等価水力直径の5倍以上である請求項6に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記磁性体が、線状である請求項1~7のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記磁性体が、粒子状である請求項1~7のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記磁性体を含む材料が、さらにガラスを含む請求項1~9のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記隔壁及び外周壁がセラミックス材料で構成されている請求項1~10のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項12】
前記セラミックス材料がコージェライト、炭化珪素、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、ムライト、及び、アルミナからなる群から選択される少なくとも1つである請求項11に記載のハニカム構造体。
【請求項13】
前記複数の第1のセルは、前記流体の流入側が開口して前記流体の流出側の端面に目封止部を有する複数のセルAと、前記セルAとそれぞれ交互に配置され、前記流体の流出側が開口して前記流体の流入側の端面に目封止部を有する複数のセルBとを含む請求項1~12のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項14】
前記複数の第2のセルの磁性体のキュリー点が700℃以上である請求項1~13のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項15】
前記複数の第1のセルの内壁を形成する前記多孔質の隔壁の表面に、三元触媒、酸化触媒、SCR触媒、及び、LNT触媒からなる群から選択される少なくとも1つの触媒を設けた請求項1~14のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体の外周を螺旋状に周回するコイル配線と、
を有する排気ガス浄化装置。
【請求項17】
排気消音マフラーと、
前記排気消音マフラー内に設けられた、請求項16に記載の排気ガス浄化装置と、
前記排気消音マフラー内に設けられた消音器と、
を備えた排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体、排気ガス浄化装置及び排気システムに関する。とりわけ、圧力損失の増加の抑制とハニカム構造体の良好な加熱効率とを両立することが可能なハニカム構造体、排気ガス浄化装置及び排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排ガスには、通常は不完全燃焼の結果として一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物などの有害成分やカーボンなどの微粒子が含まれる。人体への健康被害低減の観点から、自動車排ガス中の有害ガス成分および微粒子の低減要求が高まっている。現在、自動車動力源の主流であるガソリンエンジンから排出される有害ガス成分および微粒子も限りなく0に近い排出への低減が要求される。また、ディーゼルエンジンの排ガス微粒子についても同様の要求がある。
【0003】
このような要求に応えるためには、触媒活性温度に達する前に触媒で浄化されずに排出されるエミッションを極力低減させることが必要であり、例えば、電気加熱技術を利用した対策が知られている。
【0004】
このような技術として、特許文献1には、電流を導電性のハニカム構造体自体に流し、そのジュール熱でハニカム構造体自体を加熱する方法が提案されている。しかしながら、特許文献1に開示された技術では、ハニカム構造体に電気を通すため、排ガス中に凝縮水が排気管内で生成されると、電気短絡が発生してしまう問題がある。また、カーボン微粒子の堆積により電気的に短絡してしまう問題もある。
【0005】
これに対し、特許文献2には、凝縮水が発生する環境でも使用可能であり、カーボン微粒子が堆積する条件でも使用可能な加熱技術として、ハニカム構造体自身に電流を流さず、非導電性ハニカムセルのいくつかを選択し、選択されたセル内に金属ワイヤを挿入して、ハニカム構造体の外周面を周回するように構成されたコイルにより誘導加熱する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5261256号公報
【文献】米国特許出願公開第2017/0022868号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの検討の結果、特許文献2に開示された技術を触媒担体ハニカムやハニカム構造フィルタに適用すると、金属ワイヤを挿入するセルの数が多いほど加熱効率が上がるが、ガス流路として使用できるセルの数が減り、流体流路面積が減ることにより、圧力損失の大幅な増加を引き起こしてしまうことが分かった。一方、金属ワイヤを挿入するセルの数が少ないほど圧力損失が減少するが、加熱効率が下がってしまう。また、このような観点から特許文献2のハニカムセルの構造について
図4及び
図5の例示を見ると、上記の問題を考慮して、5セル毎又は7セル毎に1つの金属ワイヤを挿入しており、圧力損失の増加の抑制と加熱効率のバランスを考慮した設計がなされているものと考えられる。
【0008】
上述の通り、近年、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンから排出される有害ガス成分および微粒子の排出は、限りなく0に近いレベルで要求されている。このような要求に応えるには、触媒担体ハニカムやハニカム構造フィルタの加熱効率をより向上させる必要があるし、また、同時に圧力損失の増加をより抑制させる必要がある。しかしながら、特許文献2に開示された技術では、触媒の加熱効率の向上と圧力損失の増加の抑制とはトレードオフの関係にあり、近年の高いレベルの排ガス中の有害ガス成分および微粒子の除去に対する要求に応えるために、両方を同時に改善する技術が求められている。
【0009】
本発明は、圧力損失の増加の抑制とハニカム構造体の良好な加熱効率とを両立することが可能なハニカム構造体及び排気ガス浄化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、ハニカム構造体の流体の流路となる第1のセルに対し、断面積を小さくした第2のセルを設け、第2のセルの内部を、磁性体を含む材料で充填し、複数の第1のセルの少なくとも1つと隣接して第2のセルを配置することで、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は以下のように特定される。
(1)流体の流路となり、流体の流入側の端面である流入端面から流体の流出側の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁、及び、
最外周に位置する外周壁、
を有する柱状のハニカム構造体であって、
前記複数のセルが、
複数の第1のセルと、
断面積が前記第1のセルの断面積より小さい、複数の第2のセルと、
を有し、
前記複数の第2のセルのそれぞれの内部が、磁性体を含む材料で充填されており、
前記複数の第2のセルが、それぞれ前記複数の第1のセルの少なくとも1つと隣接して配置されているハニカム構造体。
(2)(1)のハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体の外周を螺旋状に周回するコイル配線と、
を有する排気ガス浄化装置。
(3)排気消音マフラーと、
前記排気消音マフラー内に設けられた、(2)に記載の排気ガス浄化装置と、
前記排気消音マフラー内に設けられた消音器と、
を備えた排気システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧力損失の増加の抑制とハニカム構造体の良好な加熱効率とを両立することが可能なハニカム構造体及び排気ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態のハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すハニカム構造体の第1のセル、第2のセル及び隔壁の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)に垂直な断面を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル、第2のセル、及び、第1のセルの内壁を形成し、表面に触媒が設けられた隔壁の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)に垂直な断面を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル、第2のセル及び隔壁の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)に垂直な断面を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル、第2のセル及び隔壁の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)に垂直な断面を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル、第2のセル及び隔壁の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図である。
【
図7】
図6に示すハニカム構造体の第1のセルが目封止部を有する構造のそれぞれ破線で示された線分L1-L1’及び線分L2-L2’における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るハニカム構造体が組み込まれた排気ガス浄化装置の排気ガス流路の概略図である。
【
図9】本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル、第2のセル及び隔壁の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図である。
【
図10】本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル、第2のセル及び隔壁の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図である。
【
図11】本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル、第2のセル及び隔壁の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図である。
【
図12】本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル、第2のセル及び隔壁の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図である。
【
図13】本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル、第2のセル及び隔壁の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図である。
【
図14】本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル、第2のセル及び隔壁の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図である。
【
図15】本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル、第2のセル及び隔壁の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図である。
【
図16】排気消音マフラー内に本発明の一実施形態のハニカム構造体が設けられた排気システムの模式図である。
【
図17】排気消音マフラー内に設けられた本発明の一実施形態の排気ガス浄化装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明のハニカム構造体の実施形態について説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0014】
(1.ハニカム構造体)
図1には、本発明の一実施形態のハニカム構造体1を模式的に示す斜視図が記載されている。図示のハニカム構造体1は柱状である。ハニカム構造体1は、流体の流路となり、流体の流入側の端面である流入端面13から流体の流出側の端面である流出端面14まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁12、及び、最外周に位置する外周壁11を有する。当該複数のセルは、複数の第1のセル15と、複数の第2のセル16とを有する。
【0015】
図2には、本発明の一実施形態のハニカム構造体1の第1のセル15、第2のセル16及び隔壁12の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)に垂直な断面を模式的に示す断面図が記載されている。第1のセル15は流体の流路を構成する。第1のセル15の断面形状は、4角形におけるそれぞれの角部が欠損して新たにそれぞれ2つの角部が形成されたような、合計で8つの角部を有する8角形に形成されている。複数の第1のセル15はいずれもこのような8角形の形状を有し、ハニカム構造体1の最外周に対し同一方向に沿って規則的に配置されている。
【0016】
第2のセル16は、断面積が第1のセル15の断面積より小さく、内部が磁性体を含む材料17で充填されている。ここで、当該「充填」は、第2のセル16の内部に磁性体を含む材料17が隙間なく詰め込まれている状態であってもよく、第2のセル16の内部に隙間(磁性体を含む材料17が無い空間)がある状態であってもよい。第2のセル16はそれぞれ第1のセル15の少なくとも1つと隣接して配置されている。このような構成によれば、第1のセル15の少なくとも1つと隣接して配置された第2のセル16内に磁性体を含む材料17が充填されているため、ハニカム構造体1は電磁誘導により加熱される。そのため、ハニカム構造体1自体に電気を流す必要がなく、凝縮水が発生する環境でも短絡の発生を抑制することができる。また、第1のセル15より断面積が小さい第2のセル16に磁性体を含む材料17が充填されるため、流体の流路となる第1のセル15に磁性体を含む材料17を充填して当該流路を犠牲にする必要がない。これにより、ハニカム構造体1の圧力損失の増加の抑制と良好な加熱効率とを両立することが可能となる。また、排ガス中の有害ガス成分を触媒により浄化する場合には、ハニカム構造体をこのような構成にすることによって、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの始動時に触媒の温度を電気加熱により早期に触媒活性温度以上に加熱することができる。なお、本明細書においてセルに関する「断面積」は、特に説明しない限り、「ハニカム構造体の中心軸(ハニカム構造体が延びる方向)に直交する断面における面積」を示す。
【0017】
複数の第1のセル15は、それぞれ多角形の開口を有し、複数の第2のセル16が、それぞれ複数の第1のセル15の多角形の開口の少なくとも1つの角部に隣接して配置されていてもよい。このような構成によれば、複数の第1のセル15がハニカム構造体1の断面において最密構造をとるように配置させやすく、また、流体の流路となる第1のセル15を犠牲にすることなく、または、第1のセル15の断面積の低減を最低限にしながら磁性体を含む材料17で充填された第2のセル16を隣接して配置することができる。このため、ハニカム構造体1の圧力損失の増加を抑制することができ、且つ、ハニカム構造体の加熱効率をより向上させることが可能となる。また、第1のセル15の角部は、触媒を担持させる場合において、第1のセル15の内部に設ける触媒成分を薄く含浸させるための触媒ウォッシュコートが偏在しやすい部分でもあるため、当該角部付近に磁性体を含む材料17が充填された第2のセル16を設けることで、触媒加熱による浄化率向上効果が高くなる。
【0018】
図2に示される構造では、隣接する4つの第1のセル15において、各第1のセル15の2つの角部が対向するように配置されており、当該隣接する4つの第1のセル15の各2つの角部(合計8つの角部)に囲まれた領域に1つの第2のセル16が設けられている。すなわち、複数の第1のセル15が、それぞれ複数の第2のセル16の少なくとも1つと隣接して配置されている。このような構成によれば、複数の第2のセル16がそれぞれ第1のセル15の少なくとも1つと隣接して配置されていると同時に、複数の第1のセル15が、それぞれ複数の第2のセル16の少なくとも1つと隣接して配置されているため、ハニカム構造体1の加熱効率をより向上させることが可能となる。
【0019】
第1のセル、第2のセル及び隔壁の配置構成は
図2で開示されたものに限定されず、その他、第1のセル及び第2のセルがそれぞれ縦横に交互に並んだ千鳥配置となっていてもよい。また、
図4及び
図5に示す配置構成であってもよい。
図4に示す配置構成では、第1のセル25の断面形状は、4角形における1つの角部が欠損して新たにそれぞれ2つの角部が形成されたような、合計で5つの角部を有する5角形に形成されている。複数の第1のセル25はいずれもこのような5角形の形状を有し、ハニカム構造体1の最外周に対し同一方向に沿って規則的に配置されている。隣接する4つの第1のセル25は、上述の1つの角部が欠損して新たに形成されたような2つの角部が互いに対向するように配置されており、当該隣接する4つの第1のセル25の各2つの角部(合計8つの角部)に囲まれた領域に磁性体を含む材料27が充填された第2のセル26が1つ設けられている。
【0020】
図5に示す配置構成では、略4角形の第1のセルが縦横3×3の合計9つ並べて配置され、全体として略4角形の第1のセル群を構成している。例えば、
図5では、第1のセル35a~iの9つの第1のセル35で略4角形の第1のセル群を構成している。すなわち、第1のセルは、4角形であるセル35b、35c、35e、35h、35gと、5角形であるセル35a、35d、35f、35iとの2つの異なる断面形状のセルで構成される。そして、第2のセル36は、いずれの第1のセルに対して、断面積が小さい。複数の第1のセル群はいずれも全体としてこのような略4角形の形状を有し、ハニカム構造体1の最外周に対し同一方向に沿って規則的に配置されている。略4角形の第1のセル群の4つの角に配置された第1のセル35a、35d、35f、35iは、それぞれ、1つの角部が欠損して新たに形成されたような2つの角部を有している。すなわち、略4角形の第1のセル群は、詳細には、角に配置された第1のセル35a、35d、35f、35iの1つの角部が欠損して2つの角部を有するため、合計8つの角部を備えており、8角形に形成されているとも云える。隣接する4つの第1のセル群は、上述の1つの角部が欠損して新たに形成されたような2つの角部が互いに対向するように配置されている。例えば、
図5では、4つの略4角形の第1のセル群が記載されており、それぞれの角に位置する第1のセル35i、35x、35y、35zの2つの角部が互いに対向するように配置されている。そして、当該隣接する4つの第1のセルの各2つの角部(合計8つの角部)に囲まれた領域に磁性体を含む材料37が充填された第2のセル36が1つ設けられている。
【0021】
第1のセル、第2のセル及び隔壁の配置構成は
図2、4及び5に例示のものに限られず、第2のセルがそれぞれ第1のセルの少なくとも1つと隣接して配置されていれば特に限定されない。また、第1のセル、第2のセルの形状は特に限定されず、中心軸に直交する断面において、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形、円形、又は楕円形であることが好ましく、その他不定形であってもよい。第1のセル及び第2のセルの数、配置、形状等及び隔壁の厚み等は制限されず、必要に応じて適宜設計することができる。
【0022】
第2のセル16の断面積は第1のセル15の断面積より小さければ特に限定されないが、複数の第1のセル15及び複数の第2のセル16の断面積の合計に対する複数の第2のセル16の断面積の割合が10%以下であるのが好ましい。このような構成によれば、ハニカム構造体1の良好な加熱効率を維持しながら、圧力損失の増加をより抑制することができる。複数の第1のセル15及び複数の第2のセル16の断面積の合計に対する複数の第2のセル16の断面積の割合は、8%以下であるのがより好ましく、5%以下であるのが更により好ましい。複数の第1のセル15及び複数の第2のセル16の断面積の合計に対する複数の第2のセル16の断面積の割合の下限値については、ハニカム構造体1の加熱効率をどの程度にするかにもよるが、典型的には1%以上、又は、2%以上とすることができる。
【0023】
複数の第1のセル15の等価水力直径が、複数の第2のセル16の等価水力直径の2倍以上であるのが好ましい。このような構成によれば、ハニカム構造体1の良好な加熱効率を維持しながら、圧力損失の増加をより抑制することができる。複数の第1のセル15の等価水力直径が、複数の第2のセル16の等価水力直径の5倍以上であるのがより好ましく、8倍以上であるのが更により好ましい。
【0024】
第2のセル16の内部に充填される磁性体を含む材料17は、磁性体と磁性体を含有する母材とで構成されている。母材としては特に限定されないが、例えば金属又はガラスを主成分とする材料であってもよく、シリカ又はアルミナを主成分とする材料であってもよく、これらに有機物又は無機物が更に含まれた材料であってもよい。また、磁性体だけを第2のセル16に充填してもよい。
【0025】
磁性体の形状は特に限定されないが、線状であってもよく、粒子状であってもよい。線状の磁性体を用いる場合は、金属ワイヤ等の1本の線状の磁性体を含む材料17を第2のセル16内に充填させてもよく、複数本の線状の磁性体を含む材料17を第2のセル16内に充填させてもよい。粒子状の磁性体を用いる場合は、磁性体の粒径は第2のセル16の径の大きさ以下の範囲で適宜設定される。具体的には、重量平均粒子径は20μm以下が好ましい。磁性体の重量平均粒子径の下限は特に設けないが、例えば0.5μm以上とすることができる。なお、重量平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定する。また、粒子状の磁性体単独で構成された粉末を第2のセル16内に充填させてもよく、磁性体とガラス等の他の材料との複合粉末として第2のセル16内に充填させてもよい。当該粉末の第2のセル16内への充填は、当該粉末が第2のセル16内の隔壁に被覆された状態であってもよい。磁性体を含む材料17として、このように粉末を利用した場合は、線材の磁性体を含む材料17を用いた場合より、誘導加熱周波数を高く設定(例えば100kHz以上に設定)することにより、線材の磁性体を含む材料17と同等の昇温速度性能を得ることができる。
【0026】
磁性体のキュリー点は特に限定されないが、700℃以上であるのが好ましい。磁性体のキュリー点が700℃以上であると、触媒活性温度以上に触媒温度を上昇させるのに十分なハニカム温度に達することが可能である。また、第1のセル15内に捕集されたPM(粒子状物質)を燃焼除去してハニカム構造フィルタを再生させることが容易となる。700℃以上のキュリー点を有する磁性体としては、FeまたはCoを主成分とする合金が適しており、具体的な組成としては、例えば、残部Co-20質量%Fe、残部Co-25質量%Ni-4質量%Fe、残部Fe-15~35質量%Co、残部Fe-17質量%Co-2質量%Cr-1質量%Mo、残部Fe-49質量%Co-2質量%V、残部Fe-18質量%Co-10質量%Cr-2質量%Mo-1質量%Al、残部Fe-27質量%Co-1質量%Nb、残部Fe-20質量%Co-1質量%Cr-2質量%V、残部Fe-35質量%Co-1質量%Cr、純コバルト、純鉄、電磁軟鉄、残部Fe-0.1~0.5質量%Mn等がある。ここで、磁性体のキュリー点は、強磁性の特性を失う温度をさす。
【0027】
ハニカム構造体1の隔壁12及び外周壁11の材質については特に制限はないが、多数の細孔を有する多孔質体であることが必要であるため、通常は、セラミックス材料で形成される。例えば、コージェライト、炭化珪素、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、ムライト、アルミナ、珪素-炭化珪素系複合材料、炭化珪素-コージェライト系複合材料の、特に珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とする焼結体が挙げられる。本明細書において「炭化珪素系」とは、ハニカム構造体1が炭化珪素を、ハニカム構造体1全体の50質量%以上含有していることを意味する。ハニカム構造体1が珪素-炭化珪素複合材を主成分とするというのは、ハニカム構造体1が珪素-炭化珪素複合材(合計質量)を、ハニカム構造体1全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素-炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。また、ハニカム構造体1が炭化珪素を主成分とするというのは、ハニカム構造体1が炭化珪素(合計質量)を、ハニカム構造体1全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0028】
好ましくは、セラミックス材料は、コージェライト、炭化珪素、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、ムライト、アルミナからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0029】
また、ハニカム構造体1の外形としては、特に限定されないが、端面が円形の柱状(円柱形状)、端面がオーバル形状の柱状、端面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体1の大きさは、特に限定されないが、中心軸方向長さが40~500mmが好ましい。また、例えば、ハニカム構造体1の外形が円筒状の場合、その端面の半径が50~500mmであることが好ましい。
【0030】
ハニカム構造体1の隔壁12の厚さは、0.20~0.50mmであることが好ましく、製造の容易さの点で、0.25~0.45mmであることが更に好ましい。例えば、0.20mm以上であると、ハニカム構造体1の強度がより向上し、0.50mm以下であると、ハニカム構造体1をフィルタとして用いた場合に、圧力損失をより小さくすることができる。なお、この隔壁12の厚さは、中心軸方向断面を顕微鏡観察する方法で測定した平均値である。
【0031】
また、ハニカム構造体1を構成する隔壁12の気孔率は、25~70%であることが好ましい。セルをガスが通過する触媒担体用のハニカム構造体として用いる場合は薄壁での強度維持の観点から25%~40%が好ましい。目封止部を有するハニカム構造体(以下、「ウォールフロー型微粒子フィルタ」とも称する)として用いる場合には、製造の容易さの点で40~65%であることが更に好ましい。ウォールフロー型微粒子フィルタとして用いる場合、30%以上であると、圧力損失が減少しやすく、70%以下であると、ハニカム構造体1の強度を維持できる。
【0032】
また、多孔質の隔壁12の平均細孔径は、セルをガスが通過する触媒担体用のハニカム構造体として用いる場合は隔壁にガスを透過させないので、0.5~10μmであることが好ましい。また、ウォールフロー型微粒子フィルタとして用いる場合には、5~30μmであることが好ましく、10~25μmであることが更に好ましい。5μm以上であると、フィルタとして用いた場合に、圧力損失を小さくすることができ、30μm以下であると、ハニカム構造体1の強度を維持できる。なお、本明細書において、「平均細孔径」、「気孔率」というときには、水銀圧入法により測定した平均細孔径、気孔率を意味するものとする。
【0033】
ハニカム構造体1の第1のセル15のセル密度も特に制限はないが、5~63セル/cm2の範囲であることが好ましく、31~54セル/cm2の範囲であることが更に好ましい。
【0034】
このようなハニカム構造体1は、セラミックス原料を含有する坏土を、一方の端面から他方の端面まで貫通し流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁12を有するハニカム状に成形して、ハニカム成形体を形成し、このハニカム成形体を、乾燥した後に焼成することによって作製される。そして、このようなハニカム構造体1を、本実施形態のハニカム構造体1として用いる場合には、外周壁をハニカム構造部と一体的に押し出してそのまま外周壁として使用してもよいし、成形又は焼成後に、ハニカム成形体(ハニカム構造体1)の外周を研削して所定形状とし、この外周を研削したハニカム構造体1に、コーティング材を塗布して外周コーティングを形成してもよい。なお、本実施形態のハニカム構造体1においては、例えば、ハニカム構造体1の最外周を研削せずに、外周を有したハニカム構造体1を用い、この外周を有するハニカム構造体1の外周面(即ち、ハニカム構造体1の外周の更に外側)に、更に、上記コーティング材を塗布して、外周コーティングを形成してもよい。即ち、前者の場合には、ハニカム構造体1の外周面には、コーティング材からなる外周コーティングのみが最外周に位置する外周壁となる。一方、後者の場合には、ハニカム構造体1の外周面に、更にコーティング材からなる外周コーティングが積層された、最外周に位置する、二層構造の外周壁が形成される。外周壁をハニカム構造部と一体的に押し出してそのまま焼成し、外周の加工無しに、外周壁として使用してもよい。
【0035】
コーティング材の組成は特に限定されるものではなく、種々の公知のコーティング材を適宜使用することができる。コーティング材は、コロイダルシリカ、有機バインダ、粘土等を更に含有させてもよい。なお、有機バインダは、0.05~0.5質量%用いることが好ましく、0.1~0.2質量%用いることが更に好ましい。また、粘土は、0.2~2.0質量%用いることが好ましく、0.4~0.8質量%用いることが更に好ましい。
【0036】
なお、ハニカム構造体1は、隔壁12が一体的に形成された一体型のハニカム構造体に限定されることはなく、例えば、多孔質の隔壁12を有し、隔壁12によって流体の流路となる複数のセルが区画形成された柱状のハニカムセグメントが、接合材層を介して複数個組み合わされた構造を有するハニカム構造体(以下、「接合型ハニカム構造体」ということがある)であってもよい。
【0037】
本実施形態のハニカム構造体1は、複数の第1のセル15の内壁を形成する多孔質の隔壁12の表面に、触媒18を設けたものであってもよい。
図3には、ハニカム構造体1の第1のセル15、第2のセル16、及び、第1のセル15の内壁を形成し、表面に触媒18が設けられた隔壁12の一部における、セルが延びる方向(ガスが流れる方向)に垂直な断面を模式的に示す断面図が記載されている。このように、本実施形態のハニカム構造体1は、触媒を担持した触媒担体や、排ガス中の粒状物質(カーボン微粒子)を浄化するために目封止部を設けたフィルタ(例えば、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、「DPF」ともいう))として構成されたものであってもよい。
【0038】
触媒の種類については特に制限はなく、ハニカム構造体の使用目的や用途に応じて適宜選択することができる。例えば、貴金属系触媒又はこれら以外の触媒が挙げられる。貴金属系触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)といった貴金属をアルミナ細孔表面に担持し、セリア、ジルコニア等の助触媒を含む三元触媒や酸化触媒、又は、アルカリ土類金属と白金を窒素酸化物(NOx)の吸蔵成分として含むNOx吸蔵還元触媒(LNT触媒)が例示される。貴金属を用いない触媒として、銅置換又は鉄置換ゼオライトを含むNOx選択還元触媒(SCR触媒)等が例示される。また、これらの触媒からなる群から選択される2種以上の触媒を用いてもよい。なお、触媒の担持方法についても特に制限はなく、従来、ハニカム構造体に触媒を担持する担持方法に準じて行うことができる。
【0039】
焼成ハニカム構造体のそれぞれをハニカムセグメントとして利用し、複数のハニカムセグメントの側面同士を接合材で接合して一体化し、ハニカムセグメントが接合された状態のハニカム構造体とすることができる。ハニカムセグメントが接合された状態のハニカム構造体は例えば以下のように製造することができる。各ハニカムセグメントの両底面に接合材付着防止用マスクを貼り付けた状態で、接合面(側面)に接合材を塗工する。
【0040】
次に、これらのハニカムセグメントを、ハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように隣接して配置し、隣接するハニカムセグメント同士を圧着した後、加熱乾燥する。このようにして、隣接するハニカムセグメントの側面同士が接合材によって接合されたハニカム構造体を作製する。ハニカム構造体に対しては、外周部を研削加工して所望の形状(例えば円柱状)とし、外周面にコーティング材を塗工した後、加熱乾燥させて外周壁を形成してもよい。
【0041】
接合材付着防止用マスクの材料は、特に制限はないが、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、又はテフロン(登録商標)等の合成樹脂を好適に使用可能である。また、マスクは粘着層を備えていることが好ましく、粘着層の材料は、アクリル系樹脂、ゴム系(例えば、天然ゴム又は合成ゴムを主成分とするゴム)、又はシリコン系樹脂であることが好ましい。
【0042】
接合材付着防止用マスクとしては、例えば厚みが20~50μmの粘着フィルムを好適に使用することができる。
【0043】
接合材としては、例えば、セラミックス粉末、分散媒(例えば、水等)、及び必要に応じて、バインダ、解膠剤、発泡樹脂等の添加剤を混合することによって調製したものを用いることができる。セラミックスとしては、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、及びチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するセラミックスであることが好ましい。さらに、接合材がハニカム構造体と同材質であることがより好ましい。バインダとしては、ポリビニルアルコールやメチルセルロース、CMC(カルボキシメチルセルロース)などを挙げることができる。
【0044】
図6には、本発明の一実施形態のハニカム構造体40の第1のセル45、磁性体を含む材料47が充填された第2のセル46及び隔壁42の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図が記載されている。
図7には、
図6に示すハニカム構造体40の第1のセル45が目封止部49を有する構造のそれぞれ破線で示された線分L1-L1’及び線分L2-L2’における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)に平行な断面を模式的に示す断面図が記載されている。ハニカム構造体40は、
図6及び
図7に示すように、複数の第1のセル45が、流体の流入側が開口して流体の流出側の端面に目封止部49を有する複数のセルAと、セルAとそれぞれ交互に配置され、流体の流出側が開口して流体の流入側の端面に目封止部49を有する複数のセルBとを含む構造であってもよい。このようなハニカム構造体40は、排ガスを浄化するフィルタ(ハニカムフィルタ)として用いることができる。また、排ガス中のカーボン微粒子を燃焼除去する場合には、ハニカム構造体をこのような目封止部を有する構成にすることによって、電気加熱によるカーボン微粒子を燃焼除去することが可能である。なお、このような目封止部49は従来公知のハニカム構造体の目封止部として用いられるものと同様に構成されたものを用いることができる。そして、外周コーティングが形成された後に配設されたものであってもよいし、外周コーティングが形成される前の状態、即ち、ハニカム構造体40を作製する段階で配設されたものであってもよい。
【0045】
図9には、本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル55、磁性体を含む材料57が充填された第2のセル56及び隔壁52の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図が記載されている。当該ハニカム構造体は、
図9に示すように、複数の第1のセル55が、流体の流入側が開口して流体の流出側の端面に目封止部59を有する長方形の断面を有する複数のセルAと、セルAとそれぞれ交互に配置され、流体の流出側が開口して流体の流入側の端面に目封止部59を有する複数の略正方形の断面を有するセルBとを含む構造であってもよい。セルAはセルBより断面積が小さく形成されている。このような構成により、磁性体によるガス流れを塞いでしまう面積を小さくすることができ、圧損を低減できる。
【0046】
図10には、本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル65、磁性体を含む材料67が充填された第2のセル66及び隔壁62の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図が記載されている。当該ハニカム構造体は、
図10に示すように、複数の第1のセル65が、流体の流入側が開口して流体の流出側の端面に目封止部69を有する六角形の断面を有する複数のセルAと、セルAとそれぞれ交互に配置され、流体の流出側が開口して流体の流入側の端面に目封止部69を有し、複数の六角形の断面を有するセルBとを含む構造であってもよい。セルAとセルBとは略同一の大きさの断面積を有するが、セルA及びセルBの一方が縦長の六角形の断面を有し、他方が横長の六角形の断面を有している。セルA及びセルBがそれぞれ六角形の断面を有する構成により、四角形状より水力直径を大きくできるため圧損を低減でき、また強度も向上する。
【0047】
図11には、本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル75、磁性体を含む材料77が充填された第2のセル76及び隔壁72の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図が記載されている。当該ハニカム構造体は、
図11に示すように、複数の第1のセル75が、流体の流入側が開口して流体の流出側の端面に目封止部79を有する六角形の断面を有する複数のセルAと、セルAとそれぞれ交互に配置され、流体の流出側が開口して流体の流入側の端面に目封止部79を有し、複数の六角形の断面を有するセルBとを含む構造であってもよい。セルA及びセルBの一方が略正六角形の断面を有し、他方が横長の六角形の断面を有している。セルA及びセルBがそれぞれ六角形の断面を有する構成により、四角形状より水力直径を大きくできるため圧損を低減でき、また強度も向上する。
また、セルAはセルBより断面積が小さく形成されている。このような構成により、磁性体によるガス流れを塞いでしまう面積を小さくすることができ、圧損を低減できる。
図11に示すハニカム構造体は、略正六角形で面積が大きい断面を有するセルBの6つの辺を共有するように面積の小さい横長の六角形の断面領域が設けられている。すなわち、当該面積の小さい横長の六角形の断面領域はセルBの周囲に合計6つ設けており、そのうちの5つはセルAを構成し、残りの1つが磁性体を含む材料77が充填された第2のセル76を構成している。
【0048】
図12には、本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル85、磁性体を含む材料87が充填された第2のセル86及び隔壁82の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図が記載されている。当該ハニカム構造体は、
図12に示すように、複数の第1のセル85が、流体の流入側が開口して流体の流出側の端面に目封止部89を有する複数のセルAと、セルAとそれぞれ交互に配置され、流体の流出側が開口して流体の流入側の端面に目封止部89を有するセルBとを含む構造であってもよい。セルAとセルBとは略同一の大きさの略三角形の断面を有するが、セルA及びセルBの一方のみが逆三角形となるように形成されている。セルA及びセルBがそれぞれ略三角形の断面を有する構成により、強度が向上する。セルAとセルBとは断面における略三角形の各頂点を互いに共有するように形成され、当該頂点の位置には六角形の断面の、磁性体を含む材料87が充填された第2のセル86が形成されている。
【0049】
図13には、本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル95、磁性体を含む材料97が充填された第2のセル96及び隔壁92の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図が記載されている。当該ハニカム構造体は、
図13に示すように、複数の第1のセル95が、流体の流入側が開口して流体の流出側の端面に目封止部99を有する複数のセルAと、セルAとそれぞれ交互に配置され、流体の流出側が開口して流体の流入側の端面に目封止部99を有するセルBとを含む構造であってもよい。セルAは面積が大きく六角形の断面を有し、セルBはセルAより面積が小さく三角形の断面を有している。セルAとセルAとの間には、2つの三角形の断面を有するセルが互いに頂点が対向するように配置されており、両方がセルBを構成してもよい。また、一方がセルBを構成し他方が磁性体を含む材料97が充填された第2のセル96を構成してもよい。このような構成によれば、セルAを特に大きくすることができ、アッシュ(燃焼により生じる灰成分)の堆積可能な容積を大きくできる。その結果、アッシュ堆積後の圧損を低減できる。
【0050】
図14には、本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル105、磁性体を含む材料107が充填された第2のセル106及び隔壁102の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図が記載されている。当該ハニカム構造体は、
図14に示すように、複数の第1のセル105が、流体の流入側が開口して流体の流出側の端面に目封止部109を有する複数のセルAと、セルAとそれぞれ交互に配置され、流体の流出側が開口して流体の流入側の端面に目封止部109を有するセルBとを含む構造であってもよい。セルBは面積が大きく六角形の断面を有し、セルAはセルBより面積が小さく三角形の断面を有している。セルBとセルBとの間には、2つの三角形の断面を有するセルが互いに頂点が対向するように配置されており、両方がセルAを構成してもよい。また、一方がセルAを構成し他方が磁性体を含む材料107が充填された第2のセル106を構成してもよい。このような構成によれば、セルBを特に大きくすることができ、これをフィルタ出口側にすることにより初期圧損を低減できる。
【0051】
図15には、本発明の一実施形態のハニカム構造体の第1のセル115、磁性体を含む材料117が充填された第2のセル116及び隔壁112の一部における、セルが延びる方向(ガスの流れる方向)における入り口側から見た投影図が記載されている。当該ハニカム構造体は、
図15に示すように、複数の第1のセル115が、流体の流入側が開口して流体の流出側の端面に目封止部119を有する複数のセルAと、セルAとそれぞれ交互に配置され、流体の流出側が開口して流体の流入側の端面に目封止部119を有するセルBとを含む構造であってもよい。セルA及びセルBは略同一の大きさの略三角形の断面を有している。2つのセルAは頂点が対向するように配置され、また、2つのセルBは頂点が対向するように配置されている。そしてこれらの合計4つのセルが、それぞれの頂点を共有するように配置されて、4つのセル全体として略正方形となるように配置されている。また、当該4つのセル全体で構成された略正方形の各頂点の位置には、略正方形の断面を有する、磁性体を含む材料117が充填された第2のセル116が配置されている。このような構成によれば、三角トラス構造となるため、ハニカムの剛性を高めることができる。
【0052】
(2.排気ガス浄化装置)
図8は、ハニカム構造体1が組み込まれた排気ガス浄化装置6の排気ガス流路の概略図である。排気ガス浄化装置6は、ハニカム構造体1とハニカム構造体1の外周を螺旋状に周回するコイル配線4とを有する排気ガスの流路は、金属管2により定められてもよい。金属管2の拡径部2aに排気ガス浄化装置6が配置することができる。コイル配線4は固定部材5によって金属管2内に固定されてもよい。固定部材5は、耐熱性部材であることが好ましい。ハニカム構造体1は触媒を担持してもよい。
【0053】
コイル配線4は、ハニカム構造体1の外周に螺旋状に巻かれる。2以上のコイル配線4が用いられる形態も想定される。スイッチSWのオン(ON)に応じて交流電源CSから供給される交流電流がコイル配線4に流れ、この結果として、コイル配線4の周囲には周期的に変化する磁界が生じる。なお、スイッチSWのオン・オフが制御部3により制御される。制御部3は、エンジンの始動に同期してスイッチSWをオンさせ、コイル配線4に交流電流を流すことができる。なお、エンジンの始動とは無関係に(例えば、運転手により押される加熱スイッチの作動に応じて)制御部3がスイッチSWをオンする形態も想定される。
【0054】
本開示においては、コイル配線4に流れる交流電流に応じた磁界の変化に応じてハニカム構造体1が昇温する。これによりハニカム構造体1により捕集されるカーボン微粒子などが燃焼する。また、ハニカム構造体1が触媒を担持する場合、ハニカム構造体1の昇温は、ハニカム構造体1に含まれる触媒担体より担持された触媒の温度を高め、触媒反応が促進される。端的には、一酸化炭素(CO)、窒化酸化物(NOx)、炭化水素(CH)が、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)、水(H2O)に酸化又は還元される。
【0055】
図16は、排気消音マフラー122と、排気消音マフラー122内に設けられた、排気ガス浄化装置126とを備えた排気システム120の模式図である。排気消音マフラー122には消音器が設けられている。消音器は、メイン消音器及びサブ消音器などの複数の消音器で構成されていてもよい。排気ガス浄化装置126は、ハニカム構造体1が組み込まれており、ハニカム構造体1の外周を螺旋状に周回するコイル配線、コイル配線を排ガス流路内に固定するための固定部材を有する。排気システム120は、排気消音マフラー122へ供給される排ガスの流路、または、排気消音マフラー122から排出される排ガスの流路となる排気管121を備えている。
【0056】
図17に、排気システム120の排気消音マフラー122内に設けられた排気ガス浄化装置126の模式図を示す。また、
図17には、消音機能を説明するための、排気ガス浄化装置126の保持マット125に埋め込まれたコイル配線124近傍の一部の拡大図が記載されている。排気システム120において、ハニカム構造体1内を通過するガス温度が低いほど、ガスの堆積流量が小さくなり、ハニカム構造体1の隔壁を通過するガス速度を小さくすることができる。このため、排気システム120のできるだけ下流側にハニカム構造体1を配置することがスス捕集効率を確保する観点から好ましい。また、排気システム120の最下流にあるメイン消音器やその前段の補助マフラーの内部にハニカム構造体1を設けることが好ましい。従来のハニカム構造体を排気消音マフラー内に搭載すると、水の凝縮によりハニカム構造体の隔壁の小細孔のみが毛細管現象により液体の水で塞がれる。その結果、大細孔に集中して高速のガスが流れることでスス捕集効率が悪化する問題や、排ガス温度が低すぎてススが再生できない問題などがあった。これに対し、ハニカム構造体1は電磁誘導加熱により水を蒸発除去することができるので、スス捕集効率を高く維持することが可能であるとともに、スス再生時のスス再生に必要な温度まで加熱することができる。このため、ススが再生できない問題が生じにくい。ハニカム構造体1はガスの拡流、縮流、ガスの多孔質体通過、セル流路通過等の圧力損失要因を有し、これらは消音効果を有する。このため、消音器内の消音機能の一部代替が可能である。高周波数音の低減効果を強化するため、
図17のように排気消音マフラー122の外周近傍に高周波数音を閉じ込め、その中で減衰させる方法がさらに有効である。
図17に示すとおり、ハニカム構造体外周近傍セルは両端が封止された構造となっており、軸方向に音波は漏れにくい。
図17の拡大図部分に示すように、排気システム120の排気消音マフラー122内のハニカム構造体1内に伝わる音波は、ハニカム構造体1の隔壁12及び隔壁12間の空隙を伝わり、隔壁によって減衰されながら進行し、保持マット125に接する最外周の隔壁12において跳ね返される。このようにして、音波が外部へ伝播することを抑制している。ハニカム構造体としては、
図17に示されているように目封止の無いセルが貫通しているものでも良く、両端を交互に目封止したウォールフロー型フィルタであってもよい。消音効果の観点からは、両端を交互に目封止したウォールフロー型フィルタの方がより好ましい。
【0057】
(3.ハニカム構造体の製造方法)
以下、ハニカム構造体の製造方法を説明する。まず、多孔質の隔壁を有し、隔壁によって複数の第1のセル及び第2のセルが区画形成されたハニカム構造体を作製する。例えば、コージェライトからなるハニカム構造体を作製する場合には、まず、坏土用材料としてコージェライト化原料を用意する。コージェライト化原料は、コージェライト結晶の理論組成となるように各成分を配合するため、シリカ源成分、マグネシア源成分、及びアルミナ源成分等を配合する。このうちシリカ源成分としては、石英、溶融シリカを用いることが好ましく、更に、このシリカ源成分の粒径を100~150μmとすることが好ましい。
【0058】
マグネシア源成分としては、例えば、タルク、マグネサイト等を挙げることができる。これらの中でも、タルクが好ましい。タルクは、コージェライト化原料中37~43質量%含有させることが好ましい。タルクの粒径(平均粒子径)は、5~50μmであることが好ましく、10~40μmであることが更に好ましい。また、マグネシア(MgO)源成分は、不純物としてFe2O3、CaO、Na2O、K2O等を含有していてもよい。
【0059】
アルミナ源成分としては、不純物が少ないという点で、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムの少なくともいずれか一種を含有するものが好ましい。また、コージェライト化原料中、水酸化アルミニウムは10~30質量%含有させることが好ましく、酸化アルミニウムは0~20質量%含有させることが好ましい。
【0060】
次に、コージェライト化原料に添加する坏土用材料(添加剤)を用意する。添加剤として、少なくともバインダと造孔剤を用いる。そして、バインダと造孔剤以外には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。
【0061】
造孔剤としては、コージェライトの焼成温度以下において酸素と反応して酸化除去可能な物質、又は、コージェライトの焼成温度以下の温度に融点を有する低融点反応物質等を用いることができる。酸化除去可能な物質としては、例えば、樹脂(特に、粒子状の樹脂)、黒鉛(特に、粒子状の黒鉛)等を挙げることができる。低融点反応物質としては、鉄、銅、亜鉛、鉛、アルミニウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも一種の金属、これらの金属を主成分とする合金(例えば、鉄の場合には炭素鋼や鋳鉄、ステンレス鋼)、又は、二種以上を主成分とする合金を用いることができる。これらの中でも、低融点反応物質は、粉粒状又は繊維状の鉄合金であることが好ましい。更に、その粒径又は繊維径(平均径)は10~200μmであることが好ましい。低融点反応物質の形状は、球状、巻菱形状、金平糖状等が挙げられ、これらの形状であると、細孔の形状をコントロールすることが容易となるため好ましい。
【0062】
バインダとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。また、分散剤としては、例えば、デキストリン、ポリアルコール等を挙げることができる。また、界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸を挙げることができる。なお、添加剤は、一種単独又は二種以上用いることができる。
【0063】
次に、コージェライト化原料100質量部に対して、バインダを3~8質量部、造孔剤を3~40質量部、分散剤を0.1~2質量部、水を10~40質量部の割合で混合し、これら坏土用材料を混練し、坏土を調製する。
【0064】
次に、調製した坏土を、押出成形法、射出成形法、プレス成形法等でハニカム形状に成形し、生のハニカム成形体を得る。連続成形が容易であり、例えばコージェライト結晶を配向させることができることから、押出成形法を採用することが好ましい。押出成形法は、真空土練機、ラム式押出成形機、2軸スクリュー式連続押出成形機等の装置を用いて行うことができる。
【0065】
次に、ハニカム成形体を乾燥させて所定の寸法に調整してハニカム乾燥体を得る。ハニカム成形体の乾燥は、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等で行うことができる。なお、全体を迅速且つ均一に乾燥することができることから、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥と、を組み合わせて乾燥を行うことが好ましい。
【0066】
得られたハニカム構造体は、その外周面に外周壁が形成された状態で作製される場合には、その外周面を研削し、外周壁を取り除いた状態としてもよい。このようにして外周壁を取り除いたハニカム構造体の外周に、後の工程にて、コーティング材を塗布して外周コーティングを形成する。また、外周面を研削する場合には、外周壁の一部を研削して取り除き、その部分に、コーティング材によって外周コーティングを形成してもよい。
【0067】
コーティング材を調製する場合には、例えば、2軸回転式の縦型ミキサーを用いて調製することができる。
【0068】
また、コーティング材には、コロイダルシリカ、有機バインダ、粘土等を更に含有させてもよい。なお、有機バインダは、0.05~0.5質量%用いることが好ましく、0.1~0.2質量%用いることが更に好ましい。また、粘土は、0.2~2.0質量%用いることが好ましく、0.4~0.8質量%用いることが更に好ましい。
【0069】
先に作製したハニカム構造体の外周面に、コーティング材を塗布し、塗布したコーティング材を乾燥させて、外周コーティングを形成する。このように構成することによって、乾燥・熱処理時の外周コーティングのクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0070】
コーティング材の塗工方法としては、例えば、ハニカム構造体を回転台の上に載せて回転させ、コーティング材をブレード状の塗布ノズルから吐出させながらハニカム構造体の外周部に沿うように塗布ノズルを押し付けて塗布する方法を挙げることができる。このように構成することによって、コーティング材を均一な厚さで塗布することができる。また、形成した外周コーティングの表面粗さが小さくなり、外観に優れ、且つ熱衝撃によって破損し難い外周コーティングを形成することができる。
【0071】
なお、ハニカム構造体の外周面が研削されて、外周壁が取り除かれたものの場合には、ハニカム構造体の外周面全体にコーティング材を塗布して外周コーティングを形成する。一方、ハニカム構造体の外周面に外周壁が存在する、或いは、一部の外周壁が取り除かれている場合には、部分的にコーティング材を塗布して外周コーティングを形成してもよいし、勿論、ハニカム構造体の外周面全域にコーティング材を塗布して外周コーティングを形成してもよい。
【0072】
塗布したコーティング材(即ち、未乾燥の外周コーティング)を乾燥する方法については特に制限はないが、例えば、乾燥クラック防止の観点から、室温にて24時間以上保持することでコーティング材中の水分の25%以上を乾燥させた後、電気炉にて600℃で1時間以上保持することで水分及び有機物を除去する方法を好適に用いることができる。
【0073】
得られたハニカム構造体は、その外周面にレーザーを照射することによって、コーティング材に含まれる炭化珪素粉末が発色するため、得られたハニカム構造体の外周コーティングに、レーザー光を照射して、製品情報等を印字(マーキング)してもよい。
【0074】
レーザーによるマーキングの際に使用するレーザー光としては、例えば、炭酸ガス(CO2)レーザー、YAGレーザー、YVO4レーザーを好適例として挙げることができる。レーザー光を照射するレーザーの条件については、使用するレーザーの種類に応じて適宜選択することができるが、例えば、CO2レーザーを用いた場合には、出力15~25W、スキャンスピード400~600mm/sでマーキングすることが好ましい。このようにマーキングすることによって、照射部分が、黒色から緑色のような暗色を呈するように発色し、非照射部分との発色によるコントラストが極めて良好なものとなる。
【0075】
ハニカム構造体の第1のセル内に触媒を担持する場合には、上記レーザーによる印字を行った後でも、印字部分が劣化することがなく、触媒の担持後でも、上記印字を良好に判読することができる。なお、触媒の担持方法については特に制限はなく、従来のハニカム構造体の製造方法にて行われている触媒担持の方法に準じて行うことができる。
【0076】
ハニカム構造体の複数の第2のセルの内部に、それぞれ磁性体を含む材料を充填する。磁性体を含む材料を充填する方法としては、主には以下の3つの方法がある。
・磁性体と、金属又はガラスを主成分とする結合材とを含むスラリーをハニカム構造体の第2のセル内に流し込み、当該金属の融点、又は、ガラスの軟化点以上の温度で加熱して固める方法。
・磁性体と、シリカ又はアルミナを主成分とする接着材料とを含むスラリーをハニカム構造体の第2のセル内に流し込み、加熱してシリカ又はアルミナを固化する方法。
・ワイヤ状等の線状の磁性体を含む材料をハニカム構造体の第2のセル内に挿入する方法。
【0077】
スラリーをハニカム構造体の第2のセル内に流し込むには、例えば、スラリーをハニカム構造体の第2のセル内に流通させる、又はスラリーをハニカム構造体の第2のセル内に浸漬すればよい。ここで、金属又はガラスを主成分とする結合材を使用する場合は、製造時にハニカム基材の耐熱温度以下で一度溶融又は軟化させる必要があるので、結合材の融点又は軟化点の温度以上で加熱することが好ましい。また、使用環境においては、最高温度が約700℃に到達するため、この温度以上の融点又は軟化点を有する金属又はガラスを用いることがより好ましい。具体的な融点又は軟化点としては、例えば、800~1200℃である。一方、シリカ又はアルミナを主成分とする接着材料を用いる場合は、製造時に加熱乾燥によって接着材料が固化することができるものであることが好ましい。加熱乾燥によって上記接着材料が固化することができるものとしては、例えば、シリカまたはアルミナのコロイド分散体が挙げられ、シリカおよびアルミナを含むコロイド分散体であってもよい。また、使用環境における最高温度が約700℃に到達するため、この温度以上の耐熱温度を有するシリカ又はアルミナを用いることがより好ましい。スラリーをハニカム構造体の第2のセル内に流し込んだ後、ハニカム構造体下流に吸引治具を取り付け、ハニカム構造体下流である他方の開口端部側より吸引し余剰水分を取り除き、磁性体を含む材料を充填する。磁性体を含む材料を加熱処理する条件としては、温度800~1200℃、0.5~3時間で加熱することが好ましい。
アルミナやシリカを主成分とする接着材料を用いる場合においては、スラリーをセル内に流し込む工程はハニカム成形、乾燥体の段階で行っても良い。この場合は、スラリーをハニカム構造体の第2のセル内に流し込んだ後、ハニカム構造体を乾燥した後、ハニカム構造体の焼成工程において、磁性体が接着材料に固定する工程が同時に行われる。シリカ又はアルミナは、乾燥により固化する効果を発現することが好ましい。
また、上記金属やガラスを主成分とする結合材を添加する以外に、磁性体に予め金属又はガラスを主成分とする結合材をコートさせておいてもよい。また、磁性体粒子と結合材を含む複合粒子を形成する工程を設けてもよい。
【0078】
スラリーは、例えば、磁性体と、上記接着材料又は上記結合材と、有機バインダと、水又はアルコールとを混合することで得ることができる。さらに、スラリーに対して、更に、油脂と、界面活性剤と、を加えて、混合し、エマルジョン化してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1、40 ハニカム構造体
2 金属管
3 制御部
4、124 コイル配線
5 固定部材
6、126 排気ガス浄化装置
11 外周壁
12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112 隔壁
13 流入端面
14 流出端面
15、25、35、45、55、65、75、85、95、105、115 第1のセル
16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116 第2のセル
17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117 磁性体を含む材料
18 触媒
49、59、69、79、89、99、109、119 目封止部
120 排気システム
121 排気管
122 排気消音マフラー
125 保持マット