(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】味噌溶き具
(51)【国際特許分類】
A47J 43/28 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
A47J43/28
(21)【出願番号】P 2021089613
(22)【出願日】2021-04-12
【審査請求日】2021-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512118680
【氏名又は名称】吉村 朝和
(72)【発明者】
【氏名】吉村 朝和
【審査官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3212419(JP,U)
【文献】特開2013-233237(JP,A)
【文献】特開2011-188966(JP,A)
【文献】実開平04-000341(JP,U)
【文献】実公昭48-008208(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 42/00 - 44/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
コイルスプリング4の巻き線間ピッチが味噌取り込み量の目安とされ、1ピッチ内に取り込まれた味噌量が、みそ汁一杯分の味噌量の目安となる様にコイルの弾性率・コイル径・コイル線径・巻き線間ピッチが調整されたコイルスプリング4を用いた、請求項1から3いずれか1項に記載の味噌溶き具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味噌溶き具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来味噌汁作りに於いては、味噌溜めよりスプーン・お玉等の用具を用いて目標の適量を掬い出し、椀状の濾し網等に移し替え、湯中にて、椀状の用具の背で押し出すか、或は菜箸等を用いて攪拌することで、味噌を湯中に溶き出す方法が広く用いられていた
【0003】
。
また、特許文献1・文献2に記載の技術では人数分の、また何時もと同じ味の味噌汁にする為、味噌取り込み量の計量が出来る。
【0004】
更に、特許文献3・文献4に記載の技術では、円形筐体内に取り込んだ味噌塊を筐体内を摺動する押し板で圧迫し、筐体の端面或は側面に明いた穴から湯中に糸状に放出する事で、溶け易くし、攪拌する事で溶く事が出来るものもある。
【0005】
更に、特許文献5に記載の技術では、把持部先端に保持された巻き方向と巻きピッチの異なる二つのコイルスプリング内に取り込んだ味噌塊を容器の湯中に直立し、把持部を押し下げる事で、コイルスプリングとコイルスプリングの内側を摺動する押し駒で圧迫し、クロスする巻き線に依り形成され縮小してゆく窓枠から帯状に放出し、味噌を溶解させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献1】
実用新案登録3051953号広報
【文献2】
特許第3438883号
【文献3】
特開2006-026366号広報
【文献4】
特開2011-188966号広報
【文献5】
特許第5928948号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
0002の広く用いられる方法に於いては、椀状具の背で押し出す場合は、一度では押し出しきれず、何回か繰り返さなければならず、また菜箸等による攪拌でも溶き終えるのに時間を要する。
【0008】
文献1・文献2の技術では定量の目標量の味噌を取り込む事が出来るが、いずれも、味噌溶きに対しては、002で用いられる方法で行われるので、少々時間がかかり、もどかしくも有る。また、文献2の技術では、当具を攪拌具(泡立て器・菜箸等)として使える利点は有るが、同様の事が言え、いずれも構造的に安価に提供するのは難しいのではないか。
【0009】
文献3・文献4の技術では、いずれも定量の目標量の味噌取込みが出来、
底面或は側面に穴の明いた円筒状筐体内に取り込んだ味噌塊を押し板で圧縮して、筐体の穴から湯中に放出することで、味噌溶きを行う方式で有るが、構造及び操作が複雑で、簡易的・コスト的に実用的ではないのではないか。
【0010】
更に文献5の技術では、把持部の先端保持部に、巻き方向と巻き数の異なる同じ長さの、二つのコイルスプリングを同軸に内接して配し、更に保持部にコイル内側を摺動する押し駒を形成したもので、味噌を取り込んだ当具を、調理器の湯中に直立させ、把持部を押し込むことで、方向の異なるコイル巻き線のクロスに依りコイル全周面に形成された、縮小してゆく窓枠から湯中に、糸状に味噌を放出して味噌解きを行うもので、簡易的で、素早く味噌解きが出来る効率の良い溶き具である。
しかし乍ら、味噌の取り込みに於いては、味噌塊に当具を押し当て、把持部を押し、味噌塊にコイル開放端を押し込む事で取り込む仕組みで有るが、押し込んだ場合、味噌塊の抵抗に依り、コイルの方が収縮してしまい、入り込む事が出来ない。この場合、コイルがある程度収縮して、コイルの反発力が大きくなり、味噌の抵抗力上回ってから入り込むので、思う様に味噌を取り込めず、ましてや目標の定量を獲り込むのは難しい。更にコイルに押し込んだ味噌を取り出すには、把持部を持ち上げ当具を抜き取る事で採取すると思われるが、コイル先端の開放部に於いては、コイルに依り円筒状に切断されたコイル内の味噌は味噌塊と一体に繋がっており、コイルを引き抜いても戻されてしまい、取り込む事が出来ないと思われる。また、構造的にコイルが二重構造で複雑なので、重量が有り、高コストになるので実用には供さないと思われる。
【0011】
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡単な構成で有り乍ら、いつもと同じ味の人数分味噌汁を作るのに必要な定量の味噌が取り込め、簡易的に、確実に、安価に味噌溶きが出来る味噌溶き具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、味噌溶き具にかかるもので、把持部先端の保持部に、一方端面に一体でパターン形成されたコイルスプリングを、開放の他方端で保持し、更に保持部に一体成型され、コイルが最圧縮された時のコイルの長さからコイルのパターン端面の厚さを引いた長さと同じ高さで、コイル圧縮時にコイル内を摺動する押し駒が構成された構造の味噌溶き具とする事に依り、シンプル構造・軽量・定量取込み可能・安価で、簡単な操作に依り確実な味噌溶きが出来る味噌溶き具を提供するものである。
【0013】
上記手段に依れば、以下の様な作用が得られる。当具の味噌の取り込みに於いては、コイルの巻き数が取り込み量の目安となり、コイルの推進カット部のパターン面を味噌塊に当て、目標定量に達する迄半回転以上の回し押しを繰り返し、目標定量に達したら、そこで回転(半回転以上)のみを行い、連続の回転押し込みに依り円柱状に切断されたコイル内の味噌塊が当具を味噌塊から引く事で、取り込み分が切断・分断され、目標の定量取込みが出来る。この事に関しては、コイルを直進的に突き入れるのではなしに、回転押しする事で、コイルは圧縮されず、コイル先端推進カット部のパターン形状に依り回転方向で且つ侵入方向の斜め方向ベクトルに依り、コイル先端推進カット部のパターン面が直進的に味噌塊に侵入していく事が出来る。
また、コイル線径・コイル径・コイル反発力・巻き線間ピッチ等の選択調整に依り、目安として一回の回転押しで、味噌汁一杯分に相当する一巻き線分の味噌が取り込める様に成っており、目標人数分の味噌汁を作るには、人数分の椀数の湯に対し、人数と同数回の回転押しで、目標の定量取込みが出来、何時もと同程度の味にする目標杯数分の味噌取込みを行う事が出来る。
更に、味噌を取り込んだ当具を、調理具内の湯中でパターン面を底に当てて直立させ、握った把持部を押し駒が底に当る迄一機に突き押しすれば、収縮するコイルの巻き線間から味噌が螺旋の帯状に押し出され、圧縮に従い螺旋が外側に拡大するので、必然的に味噌は分断され、湯中に小塊と成って放出されるので、後は、沸騰に依る対流か、当具に依る攪拌で均一濃度の何時もの味の人数分の味噌汁を短時間で作る事ができる。
また、文献5記載の技術の様に、巻き方向の異なる二重構造の同心上のコイルを用いる事で、コイル側面全体に形成される菱形の窓枠に依り、圧縮当初から味噌を分断して放出せずとも、シングルコイルでも当初からではないが、放出されるにつれ、螺旋が拡大されていき、必然的に分断されていくので、当具の様にシングルコイル構造で十分目的を達成できる。この事は保持部に於いてのコイル保持に対しても、押し駒の接続部に明けた穴に、コイルの開放端を面芯方向に曲げた状態で差し込めばコイルが保持され、軽量化とコスト低減する事が出来る。
更に、シングルコイルのシンプル構造なので、当具に付着した味噌の洗浄は、湯中(別容器中の水・湯でも加)で濯ぐか、水道に依るかけ洗いで簡単に行える。
また、取り込み味噌量は巻き線数を目盛り替わりに計るので、取り込み面は平で無ければならないが、其の為には容器の味噌塊の上面を平らに馴らしておくか、平でない場合は、目標分の回転押し込み終了時に本具を軽く押して、取り込み面を平らにしてから回転・引き抜きをする。更に、回転押しに依る定量取込みは目安であり、時に取り込み量の多少の増減がある場合が有るが、多い場合は、平な面に当て、目標目盛りになるまで押し付けて、はみ出た分を容器端部に当て、回転させてそぎ取る。少ない場合は、目標目盛りになるまで回転押し込みでつぎ足す。多少の味の違いに拘らない場合は目安取込みのままで良い。
好みにより味を変えたい場合は、取り込み量の目盛り数を増減した定量として取込みをすれば良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の味噌溶き具に依れば、当具を味噌塊に押し当て、目標回数の回転押し後、その場での回転・引き抜きするだけで何時もの味になる量の味噌取込みが出来、湯中に押し立て一突きするだけで味噌溶きが出来、コイル先端部のパターンとコイル形状に依り、薄い量の各種ソース作りや、解き卵に適した泡立て器としても使用できる複数用途使いの、シンプル構造で、安価・軽量・簡便・簡単清掃な特色を持つ大変便利な道具を提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る味噌溶き具の全体図と構成部品図。
【
図4】本発明に係る味噌溶き具他用途利用の仕方説明図。
【発明を実施する為の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面を元に説明する。
図1~
図2は、本発明の実施例を示すもので、(a)は全体図を示し、把持部1の先端
の保持部2に、一方端面に一体でパターン
6が面形成されたコイルスプリング
4を他方端面の端部折曲げで保持し、保持部2に一体形成され、コイルに内接摺動する押し駒
3で構成される。(b)は、構成部品を示すものである。
図2の(b)は、断面図示し、(c)は、パターン例を示す。
以下、詳細に説明する。
【0017】
〈把持部1〉
把持部1は本発明に係る本具の使用者が把持する部分であり、これを回転押しし乍ら突き入れる事で、先端の保持部2に保持されたコイルスプリング4と押し駒3作用に依り、味噌取込みや味噌溶き或は攪拌を行う事が出来る。素材・形状は、任意で良い。
【0018】
〈保持部2〉
保持部2は、把持部1の先端に有り、後述するコイルスプリング4の保持のためのフランジとコイル圧縮時にコイル内を摺動し、コイル内に取り込まれた味噌をコイル外へ押し出す押し駒3で形成され、押し駒の付け根に明けた穴に、コイル開放端の折り曲げ部を挿入する事で、コイルスプリング4と押し駒3と把持部1とを同芯で一体化する物である。
【0019】
〈押し駒3〉
押し駒3は、保持部2のフランジ面から成り、把持部1及びコイルスプリング4と同軸上にあり、コイルスプリング4内を摺動する径で、コイル最圧縮時のコイルの長さからパターン6面の推進・カット部5の厚さを引いた寸法に相当する高さを持ち、把持部1と一体形成されたもので、フランジ面との接続部側面に明いた穴に、コイルスプリング4の開放端の円心方向への折り曲げ端を挿入する事で、コイルスプリング4を把持部1と同芯状に保持する事が出来、コイル内に取り込まれた定量の味噌をコイル外へ圧出する機能を持つものである。
【0020】
〈コイルスプリング4〉
コイルスプリング4は弾性を持ったコイルで、一方端面に一体形成されたパターン6面の推進・カット部5を有し。他方端面の先端部を円心方向に折り曲げた構造で、この折り曲げ部を、前述の押し駒付け根の穴に挿入する事で保持部2に保持される。また、コイルの巻き線間ピッチが、取り込まれる味噌量を表す目安目盛りとなり、1ピッチ内に取り込まれた味噌量が、味噌汁一杯分に必要な目安量となる様にコイル径・線径・巻き線ピッチが設定されている。
また、パターン6面の推進・カット部5は、味噌塊に対し回転押し込みされる度にコイルが圧縮されることなく味噌塊に食い込む。この場合、目安として半回転の回転押し込みに依り1ピッチ分の食い込みが行われるので、目標量の味噌を取り込むには、目標杯数と同数回の半回転押し込み(ひねり押し)をし、押し込みをやめ回転のみを行う事で、コイル内の味噌を塊から切り離し、引き抜けば目標量の味噌取込みが行われる。
【0021】
〈推進・カット部5〉
推進・カット部5は、コイルスプリング4と一体の、面心を通るパターン形状で面構成され、コイルが回転押し込みされると、パターン6は斜めの合成ベクトルが得られ、コイルが圧縮されることなくパターン6
面が味噌塊に食い込んで、回転押し込みがされる度、ほぼワンピッチずつ推進させる事ができる。また、回転押し込みに依り目標の定量の食い込みが得られたら、回転のみをさせる事で、コイル内に食い込んだ味噌を味噌塊から切断分離し、引き抜けば、定量の味噌取込みが出来る。
【0022】
〈パターン
6〉
パターン6は
、面の中心を通り、180度以上の回転で、
コイルスプリング4内の味噌を味噌塊から切断分離出来る形状(
図2のc参照)であれば任意である。
【発明を実施する方法】
【0023】
以下に、本発明の実施の方法を添付
図3・4を参照して詳細に説明する。
【0024】
〈味噌の定量取込み〉
添付
図3で示す様に、本発明の当具は、巻き線ピッチ数が制作味噌汁の目標杯数分に必要な味噌量を示す目安目盛りとなっており、コイルの半回転の回転押しで、ワンピッチ分の味噌を取り込む事が出来る。
図3の▲1▼は、5杯分の味噌を取り込む例で、当具の推進・カット部のパターン面を味噌塊に押し当て、5回の回転押し(どちらの方向でも良く、押しながらの一ひねりに相当する)をして、目標杯数分の味噌をコイル内に入れ込む。
次に、
図3の▲2▼に示す様に、そこで回転(180度以上の回転、一ひねりに相当)のみを行い、引き抜く事で、目標分の定量味噌をコイル内に取り込む。
【0025】
〈味噌溶き体制を整える〉
次に、
図3の▲3▼に示す様に、定量味噌を取り込んだ当具を、具が入り沸騰させた目標杯数分の湯が入った鍋底に直立さる。
【0026】
次に
図3の▲4▼の様に
、把持部
1を押し
込み、コイル
スプリング4を押圧し、押し駒
3が推進・カット部5のパターン
6面に当る迄突き入れる事で、味噌がコイル巻き線間から押し出され、細かく分断
された味噌がコイル周辺に堆積する。
【0027】
〈味噌濃度の均一化〉
更に、
図3の▲5▼の様に湯の沸騰を継続させるか、或は当具を湯中で攪拌すれば、味噌が湯中に溶解し、均一濃度の味噌汁を作る事ができる。この場合、攪拌することでコイルに付着した味噌が、洗い落とされ、終了後、水掛けするだけで、当具の洗浄が出来る。
以上の工程に依り、目標杯数分の味噌汁を作る事が出来る。又、5杯以上の味噌汁を作る場合は複数回、この工程を繰り返し、合計で目標杯数分になる様にすれば良い。
例えば、8杯分の味噌汁を作るには、一回目で5杯分の味噌溶きを行い、2回目で3杯分の味噌溶きをし、併せて8杯分の味噌溶きが出来る。
【0028】
〈他用途に使用する〉
次に
図4の▲1▼の様に卵溶きとして使用する。或いは
図4の▲2▼の様に各種ソース作りに使用する。
【産業上の利用可能性】
本発明の味噌溶き具は、味噌や酒粕等の湯に溶け易い半固形物を湯中に調理する際に、効率的に湯中に溶け易い形態にして吐出する調理具を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0029】
1 把持部
2 保持部
3 押し駒
4 コイルスプリング
5 推進・カット部
6 パターン
【要約】 (修正有)
【課題】定量の味噌が取り込め、素早く、簡単に、確実に、味噌を溶く事が出来、洗浄が簡単なシンプル構造で、泡立て器としても利用できる、味噌溶き具を提供する。
【解決手段】把持部1の先端保持部2に、コイル形状の一方端面がコイルと一体形成されたパターンを有するコイルスプリング3が保持され、コイル圧縮時にコイル内面を摺動し、面がコイルのパターン面に到達する高さの押し駒が一体形成された構造の味噌溶き具にする事に依り、味噌塊にコイル先端部の推進・カット部5を押し当て、回転させ乍ら押しみ、コイルが圧縮される事なく味噌塊に食い込んで行き、コイル巻き線数の目標定量まで食い込んだら回転させてから引き上げ、みそ汁調理容器の底に突き立て一突きする事で、コイル内の味噌がコイル巻き線間から分解放出され、定量味噌溶きを行う事が出来る。さらに攪拌、泡立て器としても利用できる。
【選択図】
図1