(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】ポリイミド、ポリイミド積層体及びフレキシブルデバイス基板
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20220812BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220812BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20220812BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
C08L79/08 Z
C08K3/36
C08G73/10
B32B27/34
(21)【出願番号】P 2021096749
(22)【出願日】2021-06-09
(62)【分割の表示】P 2017555017の分割
【原出願日】2016-11-25
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2015240586
(32)【優先日】2015-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】宇野 真理
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-209309(JP,A)
【文献】特表2010-506018(JP,A)
【文献】特開2006-117935(JP,A)
【文献】特開2013-035930(JP,A)
【文献】国際公開第2014/051050(WO,A1)
【文献】特開2009-007531(JP,A)
【文献】特開2011-063678(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103554533(CN,A)
【文献】国際公開第2015/002273(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/153064(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/08
C08K 3/36
C08G 73/10
B32B 27/34
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンとのイミド化物であるポリイミド及びナノシリカを含み、
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物が、下記式(1)で表される構造を有する脂環式テトラカルボン酸二無水物を含み、かつ、前記カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンが、下記式(5)で表される構造を有する芳香族ジアミンを含み、
【化1】
【化2】
前記ナノシリカが、アミノ基を持つアルコキシシラン化合物によって表面処理されていることを特徴とするナノシリカ含有ポリイミド
(但し、前記カルボキシル基が、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で付加反応又は縮合反応されたものを除く)。
【請求項2】
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物が、式(2)~(4)の群から選択される構造を有する脂環式テトラカルボン酸二無水物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項3】
前記カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンが、式(6)で表される構造を有する芳香族ジアミンをさらに含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【化6】
【請求項4】
前記ナノシリカの含有量が前記ポリイミド100重量部に対して5重量部以上、50重量部以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【請求項5】
膜厚が10μmのときの波長400nmの光透過率が60%以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【請求項6】
膜厚が10μmのときのカットオフ波長が310nm以上390nm以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【請求項7】
膜厚が10μmのときの100~250℃における線熱膨張係数が50ppm/K以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【請求項8】
面内の屈折率のうち最大のものをnx、最小のものをnyとし、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、nx-ny<0.0010、且つ、(nx+ny)/2-nz<0.0150の関係を満たすことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【請求項9】
前記ポリイミドに含まれる全ジアミン成分のうち、前記カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンの割合が30mol%以上であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【請求項10】
基材と、請求項1~9のいずれか一項に記載のナノシリカ含有ポリイミドとを備えることを特徴とするナノシリカ含有ポリイミド積層体。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載のナノシリカ含有ポリイミドと、電子素子とを備えることを特徴とするフレキシブルデバイス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミド酸溶液、ポリイミド積層体、フレキシブルデバイス基板、及びそれらの製造方法に関する。さらに、そのポリイミドを用いた電子デバイス材料、TFT基板、透明電極基板、フレキシブルディスプレイ基板、カラーフィルター、印刷物、光学材料、液晶表示装置、有機EL及び電子ペーパー等の画像表示装置、3-Dディスプレイ、太陽電池、タッチパネル、透明導電膜基板、並びに現在ガラスが使用されている部分の代替材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶、有機EL及び電子ペーパー等のディスプレイ、太陽電池、並びにタッチパネル等のエレクトロニクスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化及び軽量化、更には、フレキシブル化が要求されている。そこでガラス基板の代替となる、薄型化、軽量化及びフレキシブル化が可能なプラスチックフィルム基板が検討されている。
【0003】
これらのデバイスには、基板上に様々な電子素子、例えば、薄膜トランジスタ及び透明電極等が形成されているが、これらの電子素子の形成には高温プロセスが必要である。そのため、プラスチックフィルム基板には高温プロセスに適応できるだけの十分な耐熱性が必要とされる。また無機材料からなるこれらの電子素子(無機素子)をフィルム上に形成した場合、無機材料とフィルムとの線熱膨張係数の違いにより、無機素子の形成後にフィルムが反ったり、更には、無機素子が破壊されたりしてしまう恐れがあった。このため、耐熱性を有しながら、無機材料と同等の線熱膨張係数を有する基板材料が望まれていた。
【0004】
さらに、表示素子(液晶、有機ELなど)から発せられる光がプラスチックフィルム基板を通って出射されるような場合(例えば、ボトムエミッション型の有機ELなど)、基板材料には透明性が必要となる。特に、可視光領域である400nm以下の波長領域での光透過率が高いことが要求される。また、位相差フィルム又は偏光板を光が通過する場合は(例えば、液晶ディスプレイ、タッチパネルなど)、基板材料には、透明性に加えて、光学的等方性が高いことが必要とされる。
【0005】
これらデバイス作製プロセスは、バッチタイプとロール・トゥ・ロールタイプとに分けられる。ロール・トゥ・ロールの作製プロセスを用いる場合には、新たな設備が必要となり、さらに回転と接触に起因するいくつかの問題を克服しなければならない。一方、バッチタイプは、ガラス基板上にコーティング樹脂溶液を塗布、乾燥し、基板形成した後、剥がすというプロセスになる。それゆえ、バッチタイプは、現行のTFT等のガラス基板用プロセス設備を利用することができるため、コスト面で優位である。このような背景から、既存のバッチプロセス対応が可能で、耐熱性、低熱膨張性及び透明性にすぐれる基板材料の開発が強く望まれている。
【0006】
上記の要求を持たす基板材料として、耐熱性に優れる基板材料として知られているポリイミド系材料が検討されている。透明性が高く、さらに低熱膨張性を示すポリイミドを得ようとする場合、剛直な構造のモノマー又は脂環式モノマーを用いることが有効であることが知られている(特許文献1)。また、シリカ等のナノ粒子とポリイミドとを複合化させることが低熱膨張化に有効であることが知られている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-166929号公報
【文献】WO2014/051050号公報
【文献】WO2013/179727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり耐熱性、低熱膨張性及び透明性に優れ、さらに低複屈折を示し、機械強度にも優れたナノシリカ含有ポリアミド酸、および当該ナノシリカ含有ポリアミド酸から得られるナノシリカ含有ポリイミドを得ることを目的とする。さらに、当該ナノシリカ含有ポリアミド酸およびナノシリカ含有ポリイミドを用いて、耐熱性及び透明性の要求の高い製品又は部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
脂環式テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリアミド酸及びナノシリカを含むナノシリカ含有ポリアミド酸およびこのナノシリカ含有ポリアミド酸から得られるナノシリカ含有ポリイミドを用いることが上記課題の解決に有効であることを見出した。
【0010】
本願発明は以下の構成を有するものである。
【0011】
脂環式テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンとの重合体であるポリアミド酸及びナノシリカを含むことを特徴とするナノシリカ含有ポリアミド酸。
【0012】
脂環式テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンとのイミド化物であるポリイミド及びナノシリカを含むことを特徴とするナノシリカ含有ポリイミド。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリアミド酸およびナノシリカ含有ポリイミドは、耐熱性、低熱膨張性及び透明性に加えて、低複屈折を有することから、耐熱性が必要とされる公知の全ての部材用のフィルム及び塗膜として好適である。また、本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリアミド酸は種々の有機溶媒に可溶であるため、各種基板へ容易に塗工することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
特許文献1には、耐熱性及び低熱膨張性に優れる脂環式テトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミドについて例示がされているが、複屈折についての記載はなく、また上記用途に適用するためには透明性が不十分である。特許文献2には、フェノール性水酸基含有ジアミンより合成されたポリイミドとシリカ微粒子とを含有する樹脂組成物について述べられており、高い透明性と低熱膨張性とを示す樹脂組成物の例示がされているが、複屈折に関する記載がない。特許文献3には、特殊な構造のテトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミドにシリカ粒子を添加した材料の例示がされているが、複屈折に関する記載がない。また、特許文献3に記載の材料は、機械強度が非常に低く、基板材料として適用するのは困難である。
【0015】
以下に、本発明を詳しく説明する。
【0016】
本発明の一実施形態におけるナノシリカ含有ポリアミド酸は、脂環式テトラカルボン酸二無水物とカルボキシル基を含有する芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリアミド酸(すなわち、脂環式テトラカルボン酸二無水物とカルボキシル基を含有する芳香族ジアミンとの重合体)と、ナノシリカとが複合化されたものである。
【0017】
まず、脂環式テトラカルボン酸二無水物について述べる。本明細書中での脂環式テトラカルボン酸二無水物とは、シクロアルカン構造を有するテトラカルボン酸二無水物を示し、例えば、(1S,2R,4S,5R)-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(シス、シス、シス-1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物)、(1S,2S,4R,5R)-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、(1R,2S,4S,5R)-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、5-(ジオキソテトラヒドロフリル-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-テトラリン-1,2-ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物及び1,4-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。原料の入手のしやすさ、当該脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むナノシリカ含有ポリイミドに耐熱性及び低複屈折を付与する観点から、脂環式テトラカルボン酸二無水物は、式(1)~(4)の群から選択される構造を有することが好ましく、2種以上を用いても構わない。さらに当該脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むナノシリカ含有ポリイミドに低熱膨張性を付与する観点から、脂環式テトラカルボン酸二無水物は、式(1)または(2)で表される構造を有することが好ましい。式(1)は1R,2S,4S,5R-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、式(2)は(1S,2S,4R,5R)-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、式(3)は1,1’-ビシクロ-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、式(4)は1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を表す。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
次にカルボキシル基を含有する芳香族ジアミンについて述べる。本明細書におけるカルボキシル基を含有する芳香族ジアミンは、少なくとも1つのカルボキシル基を含有する芳香族ジアミンを意味する。単独又は2種以上の、カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンを用いても構わない。原料の入手のしやすさ及び耐熱性の観点から、カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンは、式(5)または(6)から選択される構造を有することが好ましく、式(5)で表される構造を有することがより好ましい。式(5)は3,5-ジアミノ安息香酸、式(6)は5,5’-メチレンビス(2-アミノ安息香酸)を表す。
【0023】
【0024】
【0025】
以上のことから、脂環式テトラカルボン酸二無水物が、前記式(1)で表される構造を有し、かつ、カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンが前記式(5)で表される構造を有することがより好ましい。
【0026】
本発明の一実施形態に用いるテトラカルボン酸二無水物およびジアミン成分として、特性に影響のない範囲で脂環式テトラカルボン酸二無水物及びカルボキシル基を含有する芳香族ジアミン以外の成分を含んでいてもよい。その他のテトラカルボン酸二無物成分としては特性に悪影響を与えない限り限定されないが、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9’-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-スルホニルジフタル酸二無水物、パラテルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、メタテルフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物及び3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ナノシリカ含有ポリイミドに高い透明性を付与する観点から、全テトラカルボン酸二無水物成分の内、脂環式テトラカルボン酸二無水物の割合は30mol%以上であることが好ましく、40mol%以上であることがより好ましく、50mol%以上であることがさらに好ましい。
【0027】
その他のジアミン成分としては、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4'-ジアミノベンズアニリド、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、9,9'-(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9'-(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2'-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4'-メチレンビス(シクロへキサンアミン)、3,3-ジアミノ-4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン及び2,2―ビス(3-アミノ4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリアミド酸またはポリイミドとナノシリカとの適切な相互作用を持たせる観点から、全ジアミン成分の内、カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンは5mol%以上であることが好ましく、10mol%以上であることがより好ましい。
【0028】
本発明の一実施形態のポリアミド酸は、公知の一般的な方法にて合成することができ、有機溶媒中でジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより得ることができる。具体的には、アルゴン又は窒素等の不活性ガス中において、ジアミンを有機溶媒中に溶解、又はスラリー状に分散させて、ジアミン溶液とする。一方、テトラカルボン酸二無水物は、有機溶媒に溶解、又はスラリー状に分散させた後、あるいは固体の状態で、上記ジアミン溶液中に添加すればよい。
【0029】
ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを用いてポリアミド酸を合成する場合、単独又は2種以上のジアミン成分全量のモル数と、単独又は2種以上のテトラカルボン酸二無水物成分全量のモル数とを、実質上、等モルに調整することで、ポリアミド酸共重合体を任意に得ることができる。また、2種以上のポリアミド酸をブレンドすることによって、2種以上のテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを含有するポリアミド酸を得ることもできる。上記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との重合反応、即ち、ポリアミド酸の合成反応の温度条件は、特に限定されないが、合成されるポリアミド酸の分子量低下を防ぐという観点から80℃以下であることが好ましく、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との重合反応を適度に進行させるために、0℃以上50℃以下であることがより好ましい。また、反応時間は10分~30時間の範囲で任意に設定すればよい。
【0030】
ポリアミド酸の合成に使用する有機溶媒は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解するものが好ましく、更に、合成されるポリアミド酸を溶解するものが好ましい。例えば、テトラメチル尿素及びN,N-ジメチルエチルウレアのようなウレア系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン及びテトラメチルスルフォンのようなスルホキシドあるいはスルホン系溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;γ―ブチロラクトン等のエステル系溶媒;クロロホルム及び塩化メチレンなどのハロゲン化アルキル系溶媒;ベンゼン及びトルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;フェノール及びクレゾールなどのフェノール系溶媒;シクロペンタノン等のケトン系溶媒;並びにテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル及びp-クレゾールメチルエーテルなどのエーテル系溶媒が挙げられる。通常これらの溶媒を単独で用いるが、必要に応じて2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。ポリアミド酸の溶解性及び反応性を高めるために、有機溶媒は、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒及びエーテル系溶媒より選択されることが好ましく、特にDMF、DMAC又はNMPなどのアミド系溶媒が好ましい。
【0031】
次に、ナノシリカについて述べる。本発明の一実施形態におけるナノシリカとは、平均粒子径が1μm以下のナノサイズの二酸化ケイ素微粒子のことを示し、その形態及び形状は特に制限されない。ナノシリカ含有ポリイミドに高い透明性を付与する観点から、ナノシリカの平均粒子径は500nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
ポリアミド酸とナノシリカとを複合化し、ナノシリカ含有ポリアミド酸を調製する方法については、公知の方法を用いることができ、特に限定されない。一例として、有機溶媒にナノシリカを分散したオルガノシリカゾルを用いた方法について述べる。ポリアミド酸とオルガノシリカゾルとの複合化の方法としては、ポリアミド酸を合成した後、合成したポリアミド酸とオルガノシリカゾルとを混合してもよいが、オルガノシリカゾル中でポリアミド酸を合成する方がより高度にナノシリカがポリアミド酸中に分散できるために好ましい。
【0033】
また、オルガノシリカゾルは、ポリアミド酸との相互作用を高めるために表面処理をすることもできる。表面処理剤としては、シランカップリング剤等公知のものを用いることができる。シランカップリング剤としては、官能基としてアミノ基又はグリシジル基等を持つアルコキシシラン化合物などが広く知られており、適宜選択することができる。相互作用を持たせる観点からアミノ基含有アルコキシシランであることが好ましく、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノフェニルトリメトキシシラン及び3-アミノフェニルトリメトキシシランなどが挙げられるが、原料の安定性の観点から3-アミノプロピルトリエトキシシランを用いることが好ましい。表面処理の方法としては分散液(オルガノシリカゾル)にシランカップリング剤を添加して20~80℃で1~10時間程度撹拌することで反応させることができる。このとき、反応を促進させる触媒等を添加してもよい。
【0034】
ナノシリカ含有ポリアミド酸のナノシリカの含有量は、ポリアミド酸100重量部に対して5重量部以上50重量部以下であることが好ましく、10重量部以上45重量部以下であることがより好ましい。5重量部以上であることで、ナノシリカ含有ポリイミドの熱膨張性及び複屈折を十分に低下させることができ、50重量部以下であれば、ナノシリカ含有ポリイミドの機械特性及び透明性に悪影響を与えない。
【0035】
本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリアミド酸溶液は、前記ナノシリカ含有ポリアミド酸と有機溶媒とを含む。有機溶媒としては、例えば、上述のポリアミド酸溶液の合成に用いられ得る溶媒が挙げられる。
【0036】
また、本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリイミドは、脂環式テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンとのイミド化物であるポリイミド及びナノシリカを含む。ナノシリカ含有ポリイミドのナノシリカの含有量は、ポリイミド100重量部に対して5重量部以上50重量部以下であることが好ましく、10重量部以上45重量部以下であることがより好ましい。5重量部以上であることで、ナノシリカ含有ポリイミドの熱膨張性及び複屈折を十分に低下させることができ、50重量部以下であれば、ナノシリカ含有ポリイミドの機械特性及び透明性に悪影響を与えない。
【0037】
ナノシリカ含有ポリイミドは、公知の方法で合成すればよく、その方法は特に制限されない。原料の入手のしやすさの観点及びナノシリカ含有ポリイミドの合成の簡便さの観点から、上述したナノシリカ含有ポリアミド酸をイミド化することによって得る方法が好ましい。以下、上述したナノシリカ含有ポリアミド酸をイミド化する方法について説明する。
【0038】
ナノシリカ含有ポリアミド酸からナノシリカ含有ポリイミドへのイミド化は、ナノシリカを含有していない場合と同様に行うことができる。つまり、ポリアミド酸を脱水閉環することによって、ポリイミドへとイミド化することができる。この脱水閉環は、共沸溶媒を用いた共沸法、熱的手法または化学的手法によって行うことができる。また、ポリアミド酸からポリイミドへのイミド化の割合は、1~100%の任意の割合をとることができる。つまり、一部がイミド化されたポリアミド酸を合成してもよい。本明細書中ではポリアミド酸と有機溶媒とを含む溶液をポリアミド酸溶液とする。上述した方法でポリアミド酸を得た場合、合成した反応溶液自体をポリアミド酸溶液と表現することもある。
【0039】
ポリアミド酸の脱水閉環は、ポリアミド酸を加熱して行えばよい。ポリアミド酸を加熱する方法は特に制限されないが、例えば、ガラス板、シリコンウエハー、銅板もしくはアルミ板等の金属板又はPET(ポリエチレンテレフタレート)等の基材に、ポリアミド酸溶液を流延または塗布した後、80℃~500℃の範囲内で熱処理を行えばよい。前記基材は、支持体のことを示し、以降、本明細書中での基材は同義として用いることとする。
【0040】
ポリアミド酸溶液の基材への流延方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、グラビアコート法、スピンコート法、シルクスクリーン法、ディップコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法及びダイコート法等の公知の流延方法を挙げることが出来る。
【0041】
ポリアミド酸溶液を加熱してイミド化する(加熱イミド化する)ことによってポリイミドを得る際の加熱温度及び、加熱時間は適宜決めることができ、得られるポリイミドの特性に影響を与えない限り特に制限されない。
【0042】
本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリイミドは、TFT基板及びタッチパネル基板等の基板材料として好適に用いることができる。上記用途に用いる際、基材とナノシリカ含有ポリイミドとの積層体を製造し、その上に電子素子を形成し、最後にナノシリカ含有ポリイミドを剥離する製造方法が用いられるケースが多い。本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリイミド積層体は、基材と、前記ナノシリカ含有ポリイミドとを備える。以下、ナノシリカ含有ポリイミド積層体の製造方法およびナノシリカ含有ポリイミド積層体を経由するナノシリカ含有ポリイミドの製造方法について具体的に述べる。これらはナノシリカ含有ポリイミドの製造方法の一例であり、以下に限定されるものではない。
【0043】
先ず、基板にナノシリカ含有ポリアミド酸溶液を流延し、前記基材と、ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液とを40~200℃の温度で3~120分加熱することが好ましい。また、例えば50℃にて30分、続いて100℃にて30分のように2段階の温度で乾燥してもよい。次に、イミド化を進めるため、前記基材と、ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液とを温度200~400℃で3分~300分加熱することで、ナノシリカ含有ポリイミド積層体を得ることができる。このとき低温から徐々に高温にし、最高温度まで昇温することが好ましい。昇温速度は2℃/分~10℃/分であることが好ましく、4℃/分~10℃/分であることがより好ましい。また、最高温度は250~400℃の温度範囲であることが好ましい。最高温度が250℃以上であれば、十分にイミド化が進行し、最高温度が400℃以下であれば、ナノシリカ含有ポリイミドの熱劣化及び着色を抑制できる。また、最高温度に到達するまでに任意の温度で任意の時間、前記基材と、ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液とを保持してもよい。加熱は空気下、減圧下、又は窒素等の不活性ガス中で行うことができるが、ナノシリカ含有ポリイミドにより高い透明性を付与するためには、減圧下、又は窒素等の不活性ガス中で行うことが好ましい。また、加熱装置としては、熱風オーブン、赤外オーブン、真空オーブン、イナートオーブン、ホットプレート等の公知の装置を用いることができる。また、加熱時間の短縮及び、得られるナノシリカ含有ポリイミド積層体の特性発現のために、イミド化剤又は脱水触媒をナノシリカ含有ポリアミド酸溶液に添加し、この溶液を上記のような方法で加熱してイミド化してもよい。なお、一部がイミド化したナノシリカ含有ポリアミド酸からも、同様の方法でナノシリカ含有ポリイミド積層体を得ることができる。
【0044】
上記イミド化剤としては、特に限定されないが、3級アミンを用いることができる。3級アミンとしては複素環式の3級アミンが好ましい。複素環式の3級アミンの好ましい具体例としてはピリジン、ピコリン、キノリン及びイソキノリンなどをあげることができる。上記脱水触媒としては具体的には無水酢酸、プロピオン酸無水物、n-酪酸無水物、安息香酸無水物及びトリフルオロ酢酸無水物等を挙げることができる。
【0045】
得られたナノシリカ含有ポリイミド積層体からナノシリカ含有ポリイミドを剥離する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、手で引き剥がしても良いし、駆動ロール及びロボット等の機械装置を用いて引き剥がしても良い。更には、基板とナノシリカ含有ポリイミドとの間に剥離層を設ける方法又は多数の溝を有する基板上に酸化シリコン膜を形成し、エッチング液を浸潤させることによってナノシリカ含有ポリイミドを剥離する方法を用いることもできる。また、レーザー光の照射によってナノシリカ含有ポリイミドを分離させる方法を用いることもできる。
【0046】
本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリアミド酸の重量平均分子量は、その用途にもよるが、10,000以上500,000以下の範囲であることが好ましく、20,000~300,000の範囲であることがさらに好ましく、30,000~200,000の範囲であることがさらに好ましい。重量平均分子量が10,000以上であれば、ナノシリカ含有ポリアミド酸およびナノシリカ含有ポリイミドを塗膜又はフィルムとすることが可能となる。一方、重量平均分子量が500,000以下であると、溶媒に対して十分な溶解性を示すため、後述するナノシリカ含有ポリアミド酸溶液およびナノシリカ含有ポリイミドから表面が平滑で膜厚が均一な塗膜又はフィルムが得られる。ここで用いている重量平均分子量とは、ゲルパーミレーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算の値のことをいう。
【0047】
ナノシリカ含有ポリイミドの透明性は、例えば、JIS K7105-1981に従った全光線透過率あるいはヘイズで表される。ナノシリカ含有ポリイミドの全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。また、ナノシリカ含有ポリイミドのヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。本発明の用途においては、全波長領域で光透過率が高いことが要求されるが、一般的にポリイミドは短波長側の光を吸収しやすい傾向があり、ポリイミド自体が黄色に着色することが多い。本発明の用途に使用するためには、膜厚が10μmのとき、波長400nmでの光透過率が60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
【0048】
また、ナノシリカ含有ポリイミド積層体からナノシリカ含有ポリイミドを剥離する際、レーザー照射により基材と、ナノシリカ含有ポリイミドとを剥離する方法が用いられる場合が多い。この剥離の加工性の観点から、ナノシリカ含有ポリイミドにレーザーの波長の光を吸収させる必要があり、カットオフ波長は310nm以上であることが好ましく、320nm以上であることがより好ましく、330nm以上であることがさらに好ましい。
【0049】
上記光透過率を考慮すると、膜厚が10μmのときのカットオフ波長は310nm以上390nm以下であることが好ましく、320nm以上385nm以下であることがより好ましく、330nm以上380nmであることが更に好ましい。
【0050】
ナノシリカ含有ポリイミドの波長400nmでの光透過率は、膜厚が10μmのナノシリカ含有ポリイミドに対して日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計(V-650)を用いて、200~800nmにおける光透過率を測定し、400nmの波長における光透過率のことを意味する。また、光透過率が0.1%以下となる波長をナノシリカ含有ポリイミドのカットオフ波長とした。
【0051】
本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリイミドは、フィルム特性として、低線熱膨張特性と加熱前後の寸法安定性を有する。例えば、線熱膨張係数を熱機械分析(TMA)によりこれらの値を測定する場合、ナノシリカ含有ポリイミドの膜厚を測定した後、ナノシリカ含有ポリイミドを10mm×3mmのサイズにカットして試料とし、この試料に荷重29.4mNをかけ、10℃/minで10℃から300℃まで一旦昇温させた後、40℃/minで降温させたときの、降温時の100~250℃における単位温度あたりの試料の歪の変化量から線熱膨張係数を求めることができる。ガラスと同等の線熱膨張係数を有するという観点から、ナノシリカ含有ポリイミドの線熱膨張係数は、50ppm/K以下であることが好ましく、-20ppm/K以上50ppm/K以下であることがより好ましく、-10ppm/K以上45ppm/K以下であることがさらに好ましく、-5ppm/K以上40ppm/K以下であることが特に好ましい。なお本明細書中、線熱膨張係数は、上記測定方法によって求めた100℃から250℃の範囲での線熱膨張係数を示すこととする。
【0052】
本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリイミドは、フィルム特性として、複屈折が小さい方が好ましい。ナノシリカ含有ポリイミドに含まれるポリイミドは、面内に配向しやすいため、面内方向と厚み方向での屈折率の差(複屈折)が大きく、特に低熱膨張性を示すポリイミドの場合、複屈折が大きくなることが多い。本発明の用途に用いるためには、面内の屈折率のうち最大のものをnx、最小のものをny、厚み方向の屈折率をnzと定義したとき、
nx-ny<0.0010、且つ、(nx+ny)/2-nz<0.0150
を満たすことが好ましく、より光学的等方性が高い方が好ましいために
nx-ny<0.0002、且つ、(nx+ny)/2-nz<0.0100
を満たすことがより好ましい。ここで、(nx+ny)/2-nzは面内方向と厚み方向の屈折率の差、すなわち複屈折を表しており、この値が低いほど光学的等方性が優れ好ましい。
【0053】
本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリアミド酸およびナノシリカ含有ポリイミドは、そのまま製品又は部材を作製するためのコーティング及び成形プロセスに供してもよいが、フィルム状に成形された成形物にさらにコーティング等の処理を行うための積層物として用いることが出来る。コーティングあるいは成形プロセスに供するために、ナノシリカ含有ポリアミド酸およびナノシリカ含有ポリイミドを必要に応じて溶媒に溶解又は分散させ、さらに、光硬化性成分もしくは熱硬化性成分、本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリアミド酸およびナノシリカ含有ポリイミド以外の非重合性バインダー樹脂、又はその他の成分を配合して、ナノシリカ含有ポリアミド酸およびナノシリカ含有ポリイミドを含む組成物を調製してもよい。
【0054】
本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリアミド酸およびナノシリカ含有ポリイミドに加工特性及び各種機能性を付与するために、ナノシリカ以外に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子及び増感剤等を用いることができる。前記微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子;並びに、カーボン及び層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質構造又は中空構造であってもよい。また、前記微粒子の機能としては顔料、又はフィラーが挙げられる。その形態は繊維等であってもよい。
【0055】
本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリイミド積層体を用いることで、優れた特性を有するフレキシブルデバイス基板を得ることができる。すなわち、本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリイミド積層体に含まれるナノシリカ含有ポリイミドの上に、電子素子を形成し、その後、ナノシリカ含有ポリイミドを基板から剥離することでフレキシブルデバイス基板を得ることができる。本発明の一実施形態に係るフレキシブルデバイス基板は、上述のナノシリカ含有ポリイミドと、電子素子とを備える。フレキシブルデバイス基板とは、具体的には、フレキシブルディスプレイ基板;TFT基板及びITOなどの透明導電膜基板;並びに、太陽電池基板などを指す。さらに、本発明の一実施形態に係るフレキシブルデバイス基板(例えば、フレキシブルディスプレイ基板)は、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、電子ペーパー及びタッチパネルなどの電子デバイスに用いることができる。
【0056】
本発明の一実施形態に係るナノシリカ含有ポリイミドは、耐熱性、低熱膨張性及び透明性に優れ、さらに低複屈折を示す機械強度にも優れた特性を示す。これらの特性が有効とされる分野・製品、例えば、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ、光学フィルム、液晶表示装置、有機EL及び電子ペーパー等の画像表示装置、3-Dディスプレイ、タッチパネル、透明導電膜基板あるいは太陽電池に使用されることが好ましく、さらには現在ガラスが使用されている部分の基板材料とすることがさらに好ましい。即ち、本発明の一実施形態に係る脂環式テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリアミド酸及びナノシリカを含むナノシリカ含有ポリアミド酸およびナノシリカ含有ポリイミドは、特に、基板、画像表示装置、光学材料及び電子デバイス材料に好適に用いることができる。この基板とは、TFT基板、ITO基板及びフレキシブルディスプレイ基板などをいう。この画像表示装置とは、有機EL、電子ペーパー及びタッチパネル等をいう。この光学材料とは、カラーフィルターなどをいう。
【0057】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【0058】
なお、本発明は、以下のような構成とすることも可能である。
【0059】
1).脂環式テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンとの重合体であるポリアミド酸及びナノシリカを含むことを特徴とするナノシリカ含有ポリアミド酸。
【0060】
2).前記脂環式テトラカルボン酸二無水物が、式(1)~(4)の群から選択される構造を有することを特徴とする1)に記載のナノシリカ含有ポリアミド酸。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
3).前記カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンのうち、少なくとも一つは、式(5)または(6)で表される構造を有するジアミンであることを特徴とする1)または2)に記載のナノシリカ含有ポリアミド酸。
【0066】
【0067】
【0068】
4).前記脂環式テトラカルボン酸二無水物が、下記式(1)で表される構造を有し、かつ、前記カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンが下記式(5)で表される構造を有することを特徴とする1)~3)のいずれか一つに記載のナノシリカ含有ポリアミド酸。
【0069】
【0070】
【0071】
5).前記ナノシリカの含有量が前記ポリアミド酸100重量部に対して5重量部以上50重量部以下であることを特徴とする1)~4)のいずれか一つに記載のナノシリカ含有ポリアミド酸。
【0072】
6).1)~5)のいずれか一つに記載のナノシリカ含有ポリアミド酸と有機溶媒とを含むことを特徴とするナノシリカ含有ポリアミド酸溶液。
【0073】
7).脂環式テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンとのイミド化物であるポリイミド及びナノシリカを含むことを特徴とするナノシリカ含有ポリイミド。
【0074】
8).前記脂環式テトラカルボン酸二無水物が、式(1)~(4)の群から選択される構造を有することを特徴とする7)に記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
9).前記カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンのうち少なくとも一つは、式(5)または(6)で表される構造を有することを特徴とする7)または8)に記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【0080】
【0081】
【0082】
10).前記脂環式テトラカルボン酸二無水物が、下記式(1)で表される構造を有し、かつ、前記カルボキシル基を含有する芳香族ジアミンが、下記式(5)で表される構造を有することを特徴とする7)~9)のいずれか一つに記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【0083】
【0084】
【0085】
11).前記ナノシリカの含有量が前記ポリイミド100重量部に対して5重量部以上、50重量部以下であることを特徴とする7)~10)のいずれか一つに記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【0086】
12).膜厚が10μmのときの波長400nmの光透過率が60%以上であることを特徴とする7)~11)のいずれか一つに記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【0087】
13).膜厚が10μmのときのカットオフ波長が310nm以上390nm以下であることを特徴とする7)~12)のいずれかに記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【0088】
14).膜厚が10μmのときの100~250℃における線熱膨張係数が50ppm/K以下であることを特徴とする7)~13)のいずれか一つに記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【0089】
15).面内の屈折率のうち最大のものをnx、最小のものをnyとし、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、nx-ny<0.0010、且つ、(nx+ny)/2-nz<0.0150の関係を満たすことを特徴とする7)~14)のいずれか一つに記載のナノシリカ含有ポリイミド。
【0090】
16).基材と、7)~15)のいずれかに記載のナノシリカ含有ポリイミドとを備えることを特徴とするナノシリカ含有ポリイミド積層体。
【0091】
17).1)~5)のいずれかに記載のナノシリカ含有ポリアミド酸を基板上に流延する工程と、
前記ナノシリカ含有ポリアミド酸を加熱イミド化する工程と、
を含むことを特徴とするナノシリカ含有ポリイミド積層体の製造方法。
【0092】
18).6)に記載のナノシリカ含有ポリアミド酸溶液を基板上に流延する工程と、
前記ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液を加熱イミド化する工程と、
加熱イミド化後の工程で得られたナノシリカ含有ポリイミドを前記基板より剥離する工程と、
を含むことを特徴とするナノシリカ含有ポリイミドの製造方法。
【0093】
19).1)~5)のいずれか一つに記載のナノシリカ含有ポリアミド酸から得られるポリイミド上に電子素子を形成する工程を含むことを特徴とするフレキシブルデバイス基板の製造方法。
【0094】
20).1)~5)のいずれか一つに記載のナノシリカ含有ポリアミド酸を基板上に流延する工程と、
前記ナノシリカ含有ポリアミド酸を加熱イミド化する工程と、
加熱イミド化したポリイミド上に電子素子を形成する工程と、
を含むことを特徴とするフレキシブルデバイス基板の製造方法。
【0095】
21).1)~5)のいずれか一つに記載のナノシリカ含有ポリアミド酸を基板上に流延する工程と、
前記ナノシリカ含有ポリアミド酸を加熱イミド化する工程と、
加熱イミド化したポリイミド上に電子素子を形成し、基板より剥離する工程と、
を含むことを特徴とするフレキシブルデバイス基板の製造方法。
【0096】
22).7)~15)のいずれか一つに記載のナノシリカ含有ポリイミドと、電子素子とを備えることを特徴とするフレキシブルデバイス基板。
【実施例】
【0097】
(評価方法)
本明細書中に記載の物性の評価の値等は以下の評価法によって得られたものである。
【0098】
(1)ポリアミド酸の重量平均分子量
表1の条件にて重量平均分子量(Mw)を求めた。評価結果を表2に示す。
【0099】
【0100】
(2)ポリイミド膜の光透過率
日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計(V-650)を用いて、ポリイミド膜の200~800nmにおける光透過率を測定し、400nmの波長における光透過率を、ポリイミドの光透過率の指標として用いた。また、光透過率が0.1%以下となる波長(カットオフ波長)も求めた。
【0101】
(3)ポリイミド膜の線熱膨張係数(CTE)
ポリイミド膜の線熱膨張係数の測定は、日立ハイテクサイエンス社製TMA/SS7100を用いて(試料サイズ 幅3mm、長さ10mm、膜厚を測定し、試料の断面積を算出)、荷重29.4mNとし、10℃/minで10℃から300℃まで一旦昇温させた後、40℃/minで降温させたときの、降温時の100~250℃における単位温度あたりの試料の歪の変化量から線熱膨張係数を求めた。
【0102】
(4)ポリイミド膜の全光線透過率
日本電色工業製積分球式ヘイズメーター300Aにより、JIS K7105-1981記載の方法により測定した。
【0103】
(5)ポリイミド膜のヘイズ
日本電色工業製積分球式ヘイズメーター300Aにより、JIS K7105-1981記載の方法により測定した。
【0104】
(6)位相差測定
シンテック社製位相差計:OPTIPROにて、測定波長590nmにおける正面位相差および厚み位相差の値を測定した。その値を用いて、nx-nyおよび(nx+ny)/2-nzを算出した。ここで、nx、ny、nzは、面内の屈折率のうち最大のものをnx、最小のものをny、厚み方向の屈折率をnzと定義した。
【0105】
(実施例1)
<ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液の合成>
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、及び窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコにオルガノシリカゾル:NMP-ST-R2(日産化学工業社製、分散媒:NMP ナノシリカ含有量:30重量部 平均粒子径:10~15nm)を32.0gとNMP64.0gを仕込み撹拌した。その後、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(以下、γ―APSと称することがある)の1%NMP溶液を9.6g添加し、25℃で1時間撹拌してナノシリカの表面処理を実施した。この溶液に3,5-ジアミノ安息香酸(以下、3,5-DABAと称することもある)9.7gを入れて撹拌し溶解させた後、さらに1R,2S,4S,5R-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(以下、PMDA-HSと称することがある)14.3gを添加し12時間撹拌し、ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液(反応溶液)を得た。各モノマーの仕込み比率は全ジアミン成分を100mol%としたとき、PMDA-HS:100mol%、3,5-DABA:100mol%となっており、ナノシリカの含有量はポリアミド酸100重量部に対して40重量部である。なお、この反応溶液におけるジアミン成分及びテトラカルボン酸二無水物成分の仕込み濃度は、全反応溶液に対して18.5重量%となっていた。
【0106】
<ナノシリカ含有ポリイミド膜の作製>
得られたポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターで乾燥後の厚みが10μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで5℃/分で昇温し、350℃で1時間加熱し、ポリイミドの厚みが10μmのナノシリカ含有ポリイミド膜とガラス板との積層体を得た。ガラス板からナノシリカ含有ポリイミド膜を引き剥がし、ナノシリカ含有ポリイミド膜の物性の評価を実施した。評価結果について表2に示す。
【0107】
【0108】
(実施例2)
<ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液の合成>
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、及び窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコにオルガノシリカゾル:NMP-ST-R2を32.0gとNMP64.0gを仕込み撹拌した。その後、γ―APSの1%NMP溶液を9.6g添加し、25℃で1時間撹拌してナノシリカの表面処理を実施した。この溶液に3,5-DABA4.4gを入れて撹拌し、溶解させた後、4,4’-ジアミノベンズアニリド(以下、DABAと称することがある)6.6gを添加して1時間撹拌した。その後PMDA-HS13.0gを添加して12時間撹拌し、ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液(反応溶液)を得た。各モノマーの仕込み比率は全ジアミン成分を100mol%としたとき、PMDA-HS:100mol%、3,5-DABA:50ml%、DABA:50mol%となっており、ナノシリカの含有量はポリアミド酸100重量部に対して40重量部である。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応溶液に対して18.5重量%となっていた。
【0109】
<ナノシリカ含有ポリイミド膜の作製>
得られたポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターで乾燥後の厚みが10μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで5℃/分で昇温し、350℃で1時間加熱し、ポリイミドの厚みが10μmのナノシリカ含有ポリイミド膜とガラス板との積層体を得た。ガラス板からナノシリカ含有ポリイミド膜を引き剥がし、ナノシリカ含有ポリイミド膜の物性の評価を実施した。評価結果について表2に示す。
【0110】
(実施例3)
<ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液の合成>
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、及び窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコにオルガノシリカゾル:NMP-ST-R2を32.0gとNMP64.0gを仕込み撹拌した。その後、γ―APSの1%NMP溶液を9.6g添加し、25℃で1時間撹拌してナノシリカの表面処理を実施した。この溶液に3,5-DABA1.7gを入れて溶解させた後、DABA10.0gを添加して1時間撹拌した。その後PMDA-HS12.3gを添加して12時間撹拌し、ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液(反応溶液)を得た。各モノマーの仕込み比率は全ジアミン成分を100mol%としたとき、PMDA-HS:100mol%、3,5-DABA:20ml%、DABA:80mol%となっており、ナノシリカの含有量はポリアミド酸100重量部に対して40重量部である。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応溶液に対して18.5重量%となっていた。
【0111】
<ナノシリカ含有ポリイミド膜の作製>
得られたポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターで乾燥後の厚みが10μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで5℃/分で昇温し、350℃で1時間加熱し、ポリイミドの厚みが10μmのナノシリカ含有ポリイミド膜とガラス板との積層体を得た。ガラス板からナノシリカ含有ポリイミド膜を引き剥がし、ナノシリカ含有ポリイミド膜の物性の評価を実施した。評価結果について表2に示す。
【0112】
(実施例4)
<ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液の合成>
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、及び窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコにオルガノシリカゾル:NMP-ST-R2を24.0gとNMP72.0gを仕込み撹拌した。その後、γ―APSの1%NMP溶液を7.2g添加し、25℃で1時間撹拌してナノシリカの表面処理を実施した。この溶液に3,5-DABA1.7gを入れて撹拌し、溶解させた後、DABA10.0gを添加して1時間撹拌した。その後PMDA-HS12.3gを添加して12時間撹拌し、ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液(反応溶液)を得た。各モノマーの仕込み比率は全ジアミン成分を100mol%としたとき、PMDA-HS:100mol%、3,5-DABA:20ml%、DABA:80mol%となっており、ナノシリカの含有量はポリアミド酸100重量部に対して30重量部である。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応溶液に対して19.0重量%となっていた。
【0113】
<ナノシリカ含有ポリイミド膜の作製>
得られたポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターで乾燥後の厚みが10μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで5℃/分で昇温し、350℃で1時間加熱し、ポリイミドの厚みが10μmのナノシリカ含有ポリイミド膜とガラス板との積層体を得た。ガラス板からナノシリカ含有ポリイミド膜を引き剥がし、ナノシリカ含有ポリイミド膜の物性の評価を実施した。評価結果について表2に示す。
【0114】
(実施例5)
<ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液の合成>
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、及び窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコにオルガノシリカゾル:NMP-ST-R2を32.0gとNMP64.0gを仕込み撹拌した。その後、γ―APSの1%NMP溶液を9.6g添加し、25℃で1時間撹拌してナノシリカの表面処理を実施した。この溶液に3,5-DABA1.6gを入れて撹拌し溶解させた後、DABA9.4gを添加して1時間撹拌した。その後1,1’-ビシクロヘキサン-3.3’4.4‘-テトラカルボン酸二無水物(以下、HBPDAと称することがある)5.5gを添加して10分間撹拌した後、PMDA-HS7.5gを添加して12時間撹拌し、ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液(反応溶液)を得た。各モノマーの仕込み比率は全ジアミン成分を100mol%としたとき、PMDA-HS:65mol%、HBPDA:35mol%、3,5-DABA:20mol%、DABA:80mol%となっており、ナノシリカの含有量はポリアミド酸100重量部に対して40重量部である。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応溶液に対して18.5重量%となっていた。
【0115】
<ナノシリカ含有ポリイミド膜の作製>
得られたポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターで乾燥後の厚みが10μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで5℃/分で昇温し、350℃で1時間加熱し、ポリイミドの厚みが10μmのナノシリカ含有ポリイミド膜とガラス板との積層体を得た。ガラス板からナノシリカ含有ポリイミド膜を引き剥がし、ナノシリカ含有ポリイミド膜の物性の評価を実施した。評価結果について表2に示す。
【0116】
(実施例6)
<ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液の合成>
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、及び窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコにオルガノシリカゾル:NMP-ST-R2を24.0gとNMP72.0gを仕込み撹拌した。その後、γ―APSの1%NMP溶液を7.2g添加し、25℃で1時間撹拌してナノシリカの表面処理を実施した。この溶液に3,5-DABA2.4gを入れて撹拌し溶解させた後、DABA8.3gを添加して1時間撹拌した。その後HBPDA5.6gを添加して10分間撹拌した後、PMDA-HS7.6gを添加して12時間撹拌し、ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液(反応溶液)を得た。各モノマーの仕込み比率は全ジアミン成分を100mol%としたとき、PMDA-HS:65mol%、HBPDA:35mol%、3,5-DABA:30ml%、DABA:70mol%となっており、ナノシリカの含有量はポリアミド酸100重量部に対して30重量部である。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応溶液に対して19.0重量%となっていた。
【0117】
<ナノシリカ含有ポリイミド膜の作製>
得られたポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターで乾燥後の厚みが10μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで5℃/分で昇温し、350℃で1時間加熱し、ポリイミドの厚みが10μmのナノシリカ含有ポリイミド膜とガラス板との積層体を得た。ガラス板からナノシリカ含有ポリイミド膜を引き剥がし、ナノシリカ含有ポリイミド膜の物性の評価を実施した。評価結果について表2に示す。
【0118】
(比較例1)
<ポリアミド酸溶液の合成>
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、及び窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコにNMP106.7gを仕込み、3,5-DABA9.7gを入れて撹拌し溶解させた後、さらにPMDA-HS14.3gを添加し12時間撹拌し、ポリアミド酸溶液(反応溶液)を得た。各モノマーの仕込み比率は全ジアミン成分を100mol%としたとき、PMDA-HS:100mol%、3,5-DABA:100mol%となっており、この反応溶液におけるジアミン成分及びテトラカルボン酸二無水物成分の仕込み濃度は、全反応溶液に対して18.5重量%となっていた。
【0119】
<ポリイミド膜の作製>
得られたポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターで乾燥後の厚みが10μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで5℃/分で昇温し、350℃で1時間加熱し、ポリイミドの厚みが10μmのポリイミド膜とガラス板との積層体を得た。ガラス板からポリイミド膜を引き剥がし、ポリイミド膜の物性の評価を実施した。評価結果について表2に示す。
【0120】
(比較例2)
<ポリアミド酸溶液の合成>
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、及び窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコにNMP106.7gを仕込み、3,5-DABA1.7gを入れて撹拌し、溶解させた後、DABA10.0gを添加して1時間撹拌した。その後PMDA-HS12.3gを添加して12時間撹拌し、ポリアミド酸溶液(反応溶液)を得た。各モノマーの仕込み比率は全ジアミン成分を100mol%としたとき、PMDA-HS:100mol%、3,5-DABA:20ml%、DABA:80mol%となっており、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応溶液に対して18.5重量%となっていた。
<ポリイミド膜の作製>
得られたポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターで乾燥後の厚みが10μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで5℃/分で昇温し、350℃で1時間加熱し、ポリイミドの厚みが10μmのポリイミド膜とガラス板との積層体を得た。ガラス板からポリイミド膜を引き剥がし、ポリイミド膜の物性の評価を実施した。評価結果について表2に示す。
【0121】
(比較例3)
<ポリアミド酸溶液の合成>
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、及び窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコにNMP106.7gを仕込み、DABA12.1gを入れて1時間撹拌した後、さらにPMDA-HS12.0gを添加し12時間撹拌し、ポリアミド酸溶液(反応溶液)を得た。各モノマーの仕込み比率は全ジアミン成分を100mol%としたとき、PMDA-HS:100mol%、DABA:100mol%となっており、この反応溶液におけるジアミン成分及びテトラカルボン酸二無水物成分の仕込み濃度は、全反応溶液に対して18.5重量%となっていた。
【0122】
<ポリイミド膜の作製>
得られたポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターで乾燥後の厚みが10μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで5℃/分で昇温し、350℃で1時間加熱し、ポリイミドの厚みが10μmのポリイミド膜とガラス板との積層体を得た。ガラス板からポリイミド膜を引き剥がし、ポリイミド膜の物性の評価を実施した。評価結果について表2に示す。
【0123】
(比較例4)
<ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液の合成>
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、及び窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコにオルガノシリカゾル:NMP-ST-R2を32.0gとNMP64.0gを仕込み撹拌した。その後γ―APSの1%NMP溶液を9.6g添加し、25℃で1時間撹拌してナノシリカの表面処理を実施した。この溶液にDABA12.1gを入れて1時間撹拌した後、さらにPMDA-HS12.0gを添加し12時間撹拌し、ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液(反応溶液)を得た。各モノマーの仕込み比率は全ジアミン成分を100mol%としたとき、PMDA-HS:100mol%、DABA:100mol%となっており、ナノシリカの含有量はポリアミド酸100重量部に対して40重量部である。なお、この反応溶液におけるジアミン成分及びテトラカルボン酸二無水物成分の仕込み濃度は、全反応溶液に対して18.5重量%となっていた。
【0124】
<ナノシリカ含有ポリイミド膜の作製>
得られたポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターで乾燥後の厚みが10μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで5℃/分で昇温し、350℃で1時間加熱し、ポリイミドの厚みが10μmのナノシリカ含有ポリイミド膜とガラス板との積層体を得た。ガラス板からナノシリカ含有ポリイミド膜を引き剥がし、ナノシリカ含有ポリイミド膜の物性の評価を実施した。評価結果について表2に示す。
【0125】
(比較例5)
<ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液の合成>
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、及び窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコにオルガノシリカゾル:DMAC-ST(日産化学工業社製、分散媒:N,N-ジメチルアセトアミド ナノシリカ含有量:20重量部 平均粒子径:10~15nm)を48.0gとNMP48.0gを仕込み撹拌した。その後γ―APSの1%NMP溶液を9.6g添加し、25℃で1時間撹拌してナノシリカの表面処理を実施した。この溶液に4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(以下、4,4’-ODAと称することがある)11.3gを入れて1時間撹拌した後、さらにPMDA-HS12.6gを添加し12時間撹拌し、ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液(反応溶液)を得た。各モノマーの仕込み比率は全ジアミン成分を100mol%としたとき、PMDA-HS:100mol%、4,4’-ODA:100mol%となっており、ナノシリカの含有量はポリアミド酸100重量部に対して40重量部である。なお、この反応溶液におけるジアミン成分及びテトラカルボン酸二無水物成分の仕込み濃度は、全反応溶液に対して18.5重量%となっていた。
【0126】
<ナノシリカ含有ポリイミド膜の作製>
得られたポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターで乾燥後の厚みが10μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで5℃/分で昇温し、350℃で1時間加熱し、ポリイミドの厚みが10μmのナノシリカ含有ポリイミド膜とガラス板との積層体を得た。ガラス板からナノシリカ含有ポリイミド膜を引き剥がし、ナノシリカ含有ポリイミド膜の物性の評価を実施した。評価結果について表2に示す。
【0127】
(比較例6)
<ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液の合成>
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、及び窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコにオルガノシリカゾル:NMP-ST-R2を24.0gとNMP72.0gを仕込み撹拌した。その後、γ―APSの1%NMP溶液を7.2g添加し、25℃で1時間撹拌してナノシリカの表面処理を実施した。この溶液に3,3’-ジヒドロキシベンジジン(以下、HABと称することがある)11.8gを入れて撹拌し溶解させた後、PMDA-HS12.2gを添加して12時間撹拌し、ナノシリカ含有ポリアミド酸溶液(反応溶液)を得た。各モノマーの仕込み比率は全ジアミン成分を100mol%としたとき、PMDA-HS:100mol%、HAB:100ml%となっており、ナノシリカの含有量はポリアミド酸100重量部に対して30重量部である。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応溶液に対して19.0重量%となっていた。
<ナノシリカ含有ポリイミド膜の作製>
得られたポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターで乾燥後の厚みが10μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで5℃/分で昇温し、350℃で1時間加熱し、ポリイミドの厚みが10μmのナノシリカ含有ポリイミド膜とガラス板との積層体を得た。ガラス板からナノシリカ含有ポリイミド膜を引き剥がし、ナノシリカ含有ポリイミド膜の物性の評価を実施した。評価結果について表2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の一実施形態のナノシリカ含有ポリイミドは、例えば、TFT基板材料、ITO基板材料、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ部材、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料及び構造物としての利用が期待される。