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特許7122454ビオチンアッセイを実施するためのキット、マイクロ流体デバイス、および方法
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  • 特許-ビオチンアッセイを実施するためのキット、マイクロ流体デバイス、および方法 図1
  • 特許-ビオチンアッセイを実施するためのキット、マイクロ流体デバイス、および方法 図2
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  • 特許-ビオチンアッセイを実施するためのキット、マイクロ流体デバイス、および方法 図4
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  • 特許-ビオチンアッセイを実施するためのキット、マイクロ流体デバイス、および方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】ビオチンアッセイを実施するためのキット、マイクロ流体デバイス、および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20220812BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20220812BHJP
   G01N 21/76 20060101ALI20220812BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20220812BHJP
【FI】
G01N33/53 U
G01N33/536 E
G01N21/76
C12Q1/02
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2021505215
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019043195
(87)【国際公開番号】W WO2020028110
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】62/711,694
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ティエ・キュー・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヂュー・テン
(72)【発明者】
【氏名】シャオドン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ドリナン
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508971(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0310570(US,A1)
【文献】ULLMAN, E. F. et al.,Luminescent oxygen channeling assay (LOCI): sensitive, broadly applicable homogeneous immunoassay method,Clinical Chemistry,1996年,Vol.42, No.9,p.1518-1526
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
G01N 33/536
G01N 21/76
C12Q 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のビオチンの濃度を決定するための化学発光検出システムを含有するキットであって:
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合しているビオチンまたはその類似体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;
(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができ、増感剤に直接的または間接的に結合しているトラプトアビジンを有することができる増感剤を含む組成物と
を含む、前記キット。
【請求項2】
(a)の組成物は、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物に直接的または間接的に結合しているビオチン類似体を有し、ビオチン類似体は、4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)、イミノビオチン、ビオチンカーボネート、ビオチンカルバメート、ビオチンメチルエステル、デスチオビオチン、ジアミノビオチン、クロロアセチル化ビオチン、ビオチンスルホン、チオビオチン、メトキシカルボニルビオチンメチルエステル、ビス-ビオチン、テトラ-ビオチン、および上記ビオチン類似体のいずれかの任意のエステル、塩、または誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
ビオチン類似体はHABAまたはイミノビオチンである、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質である、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
化学発光化合物を含む組成物は、活性化された化学発光化合物によって励起される少なくとも1つの蛍光分子をさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項6】
増感剤は光増感剤である、請求項1に記載のキット。
【請求項7】
サンプル中のビオチンの濃度を決定するための化学発光検出システムを含有するキットであって:
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合しているビオチン類似体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;
(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができ、増感剤に直接的または間接的に結合しているアビジンまたはその類似体を有することができる増感剤を含む組成物であって、アビジンまたはその類似体はサンプル中のビオチンまたは(a)に結合することができる、該組成物と
を含む、前記キット。
【請求項8】
ビオチン類似体は、4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)、イミノビオチン、ビオチンカーボネート、ビオチンカルバメート、ビオチンメチルエステル、デスチオビオチン、ジアミノビオチン、クロロアセチル化ビオチン、ビオチンスルホン、チオビオチン、メトキシカルボニルビオチンメチルエステル、ビス-ビオチン、テトラ-ビオチン、および上記ビオチン類似体のいずれかの任意のエステル、塩、または誘導体からなる群から選択される、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
ビオチン類似体はHABAまたはイミノビオチンである、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
(b)の組成物は、増感剤に直接的または間接的に結合しているアビジン類似体を有し、アビジン類似体は、アビジン、ストレプトアビジン、トラプトアビジン、中性アビジン、ニュートラライトアビジン、ニュートラアビジン、ライト-アビジン、スクシニル化アビジン、修飾または遺伝子操作されたアビジンの他の形態、および上記アビジン類似体のいずれかの任意のエステル、塩、または誘導体からなる群から選択される、請求項7に記載のキット。
【請求項11】
一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質である、請求項7に記載のキット。
【請求項12】
化学発光化合物を含む組成物は、活性化された化学発光化合物によって励起される少なくとも1つの蛍光分子をさらに含む、請求項7に記載のキット。
【請求項13】
増感剤は光増感剤である、請求項7に記載のキット。
【請求項14】
サンプル中のビオチンの濃度を決定するための化学発光検出システムを含有するキットであって:
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;
(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができ、増感剤に直接的または間接的に結合しているトラプトアビジンを有することができる増感剤を含む組成物と
を含む、前記キット。
【請求項15】
サンプル中のビオチンの濃度を決定するためのマイクロ流体デバイスであって:
(a)サンプルが適用される入口チャネルと;
(b)該入口チャネルと流体連絡することができる少なくとも第1の区画であって、一重項酸素をその励起状態において生成することができ、増感剤に直接的または間接的に結合しているアビジンまたはその類似体を有することができる増感剤を含有する、該第1の区画と;
(c)該第1の区画と流体連絡することができる少なくとも第2の区画であって、化学発光化合物に直接的または間接的に結合しているビオチンまたはその類似体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物を含有する、該第2の区画と
を含む、前記マイクロ流体デバイス。
【請求項16】
(b)の増感剤は、それに直接的または間接的に結合しているアビジン類似体を有し、アビジン類似体は、アビジン、ストレプトアビジン、トラプトアビジン、中性アビジン、ニュートラライトアビジン、ニュートラアビジン、ライト-アビジン、スクシニル化アビジン、修飾または遺伝子操作されたアビジンの他の形態、および上記アビジン類似体のいずれかの任意のエステル、塩、または誘導体からなる群から選択される、請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項17】
(c)の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、それに直接的または間接的に結合しているビオチン類似体を有し、ビオチン類似体は、4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)、イミノビオチン、ビオチンカーボネート、ビオチンカルバメート、ビオチンメチルエステル、デスチオビオチン、ジアミノビオチン、クロロアセチル化ビオチン、ビオチンスルホン、チオビオチン、メトキシカルボニルビオチンメチルエステル、ビス-ビオチン、テトラ-ビオチン、および上記ビオチン類似体のいずれかの任意のエステル、塩、または誘導体からなる群から選択される、請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項18】
(b)の増感剤は、それに直接的または間接的に結合しているトラプトアビジンを有する;および
(c)の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、それに直接的または間接的に結合しているHABAを有する
のうちの少なくとも1つである、請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項19】
(c)の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質である、請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項20】
(c)の化学発光化合物を含む組成物は、活性化された化学発光化合物によって励起される少なくとも1つの蛍光分子をさらに含む、請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項21】
増感剤は光増感剤である、請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項22】
サンプル中のビオチンの存在および/または濃度を検出するための方法であって:
(a)
(1)ビオチンを含有すると疑われるサンプルと;
(2)化学発光化合物に直接的または間接的に結合しているビオチンまたはビオチン類似体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;
(3)一重項酸素をその励起状態において生成することができ、増感剤に直接的または間接的に結合しているアビジンまたはアビジン類似体を有することができる増感剤を含む過剰な組成物と
を同時にまたは全体的もしくは部分的に連続して合わせる工程と;
(b)サンプル中に存在するビオチンまたは(2)への(3)の結合を可能にする工程であって、ビオチンの不在下で、複合体が(2)と(3)との間で形成され、増感剤が化学発光化合物に近接している、該工程と;
(c)増感剤を活性化して一重項酸素を生成する工程であって、複合体に存在する増感
剤の活性化によって、複合体に存在する化学発光化合物の活性化が引き起こされる、該工程と;
(d)活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定する工程と;
(e)場合により、工程(b)~(d)を反復する工程と;
(f)このように生成された化学発光の量を分析することによってビオチンの存在および/または濃度を検出する工程であって、化学発光の量はサンプル中のビオチンの量と反比例する、該工程と
を含む、前記方法。
【請求項23】
工程(a)(2)の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、それに直接的または間接的に結合しているビオチン類似体を有し、ビオチン類似体は、4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)、イミノビオチン、ビオチンカーボネート、ビオチンカルバメート、ビオチンメチルエステル、デスチオビオチン、ジアミノビオチン、クロロアセチル化ビオチン、ビオチンスルホン、チオビオチン、メトキシカルボニルビオチンメチルエステル、ビス-ビオチン、テトラ-ビオチン、および上記ビオチン類似体のいずれかの任意のエステル、塩、または誘導体からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
工程(a)(3)の増感剤は、それに直接的または間接的に結合しているアビジン類似体を有し、アビジン類似体は、アビジン、ストレプトアビジン、トラプトアビジン、中性アビジン、ニュートラライトアビジン、ニュートラアビジン、ライト-アビジン、スクシニル化アビジン、修飾または遺伝子操作されたアビジンの他の形態、および上記アビジン類似体のいずれかの任意のエステル、塩、または誘導体からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
工程(a)(2)の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、それに直接的または間接的に結合しているHABAを有する;および
工程(a)(3)の増感剤は、それに直接的または間接的に結合しているトラプトアビジンを有する
のうちの少なくとも1つである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
増感剤は光増感剤であり、工程(c)における増感剤の活性化は光による照射を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
サンプルは生体サンプルである、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
生体サンプルは、全血またはそのいずれかの部分、尿、唾液、痰、脳脊髄液、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
生体サンプルは、溶解全血細胞および溶解赤血球のうちの少なくとも1つを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
化学発光化合物を含む組成物は、活性化された化学発光化合物によって励起される少なくとも1つの蛍光分子をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
蛍光分子によって発せられた光の量を測定してサンプル中の検体の量を決定する工程をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照/参照による組み入れの記述
対象の出願は、2018年7月30日に出願された米国仮出願第62/711,694号に対し米国特許法第119条(e)の下で利益を主張する。上記の参照特許出願の全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0002】
連邦政府の支援による研究または開発に関する記述
適用なし。
【背景技術】
【0003】
ビオチンは、多くの場合、アッセイ試薬のための抗体または他の小薬物分子とのコンジュゲートに使用される。固体支持体上に被覆される大きなタンパク質分子(例えば、アビジンおよびストレプトアビジン)へのビオチンの強固な結合は、固体支持体上に抗体または薬物を固定化するための簡便な手法を提供する。
【0004】
ビオチンは、栄養補助食品としてのその使用に関して当該技術分野において周知であり;例えば、ビオチンは、健康な毛髪および爪の成長を促進し、種々の疾患状態を処置するために利用される。この使用が与えられると、有意なビオチンレベルが、(限定されないが)血液のような生体サンプルにおいて見出される。ビオチンは多くの診断アッセイ(例えば、固体支持体を被覆するため)に使用されるので、試験サンプル中の高レベルのビオチンは、ビオチン化アッセイ成分が利用される任意のアッセイにおいてアッセイシグナルと干渉することがある。干渉は異なるビオチン濃度で種々のアッセイ方法において観察されるので、患者サンプル中に存在するビオチンのレベルは、サンプルが特定のアッセイにおける使用に適しているかどうかを決定するために定量されなければならない。しかしながら、現在利用可能なビオチンアッセイのほとんどは、実際の患者サンプル中に典型的に見出されるビオチン濃度の広い動的範囲(すなわち、0~1500ng/ml)を検出するのに適していない狭い範囲(すなわち、0~50ng/ml)を有する。
【0005】
現在利用可能なビオチンアッセイについての狭い検出範囲を扱うための唯一の方法は、望ましくは、予想されるアッセイ範囲を達成するために試験サンプルの連続希釈を実施することである;しかしながら、これは試験サンプルならびに試薬を浪費し、また、ターンアラウンド時間を遅延させる煩雑なプロセスである。
【0006】
医療診断の分野は多くの異なる形態のアッセイ技術を利用する。商業的に使用されるアッセイの一例は、発光性酸素チャネリングアッセイ(Luminescent Oxygen Channeling Assay)(LOCI(登録商標))技術である。LOCI(登録商標)による進化した化学発光アッセイは、例えば、特許文献1(Ullmanら)に記載されており、その全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。現在利用可能なLOCI(登録商標)技術は高い感度を有し、いくつかの試薬を使用する。特に、LOCI(登録商標)アッセイは、これらの試薬のうちの2つ(「センシビーズ(sensibead)」および「ケミビーズ(chemibead)」と称される)が、センシビーズおよびケミビーズが互いに近接してシグナルを達成する様式で他の特異的結合パートナーアッセイ試薬によって保持されることを必要とする。ある特定の波長の光に曝露すると、センシビーズは一重項酸素を放出し、2つのビーズが近接している場合、一重項酸素はケミビーズに移動する;これにより化学反応が引き起こされ、その結果、ケミビーズが、異なる波長で測定することができる光を発する。
【0007】
しかしながら、LOCI(登録商標)形式で利用可能なビオチンアッセイは存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第5,340,716号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、従来技術の不利益および欠点を克服するビオチンについての新規かつ改良されたアッセイが当該技術分野において必要とされている。本開示が対象とするのは、このようなアッセイ、ならびにキットおよびそれを含有するマイクロ流体デバイスおよびそれを使用する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示に従って構築されたビオチンLOCI(登録商標)アッセイの1つの非限定的な実施形態を概略的に示す図である。
図2】本開示に従って構築されたビオチンLOCI(登録商標)アッセイの1つの非限定的な実施形態についての標準曲線をグラフで示す図であり、このアッセイはビオチンにより被覆したケミビーズおよびストレプトアビジンにより被覆したセンシビーズを利用する。
図3】本開示に従って構築されたビオチンLOCI(登録商標)アッセイの別の非限定的な実施形態についての標準曲線をグラフで示す図であり、このアッセイはビオチンにより被覆したケミビーズおよびトラプトアビジン(traptavidin)により被覆したセンシビーズを利用する。
図4図2および3からの標準曲線の比較をグラフで示す図である。
図5】本開示に従って構築されたビオチンLOCI(登録商標)アッセイのさらに別の非限定的な実施形態についての標準曲線をグラフで示す図であり、このアッセイは4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)により被覆したケミビーズおよびストレプトアビジンにより被覆したセンシビーズを利用する。
図6】本開示に従って構築されたビオチンLOCI(登録商標)アッセイのさらに別の非限定的な実施形態を概略的に示す図であり、このアッセイはイミノビオチンにより被覆したケミビーズおよびアビジンにより被覆したセンシビーズを利用する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例示的な言語および結果によって本開示の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、その適用において以下の説明に記載される構成の詳細および構成要素の配列に限定されないことは理解されるべきである。本開示は、他の実施形態が可能であるか、または種々の手法で実践もしくは実行することができる。したがって、本明細書に使用される言語は、可能な限り最も広い範囲および意味を与えることを意図し;実施形態は包括的ではなく、例示的であることを意味する。また、本明細書に利用される表現および用語は、説明の目的のためであり、限定的とみなされるべきではないことは理解されるべきである。
【0012】
本明細書で別段に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈によって別段に必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。前述の技術および手順は、一般に、当該技術分野において周知であり、本明細書全体を通して引用され、論じられている種々の一般的およびより具体的な参考文献に記載されている従来の方法に従って実施される。本明細書に記載される分析化学、有機合成化学、ならびに医薬品化学および薬化学と関連して利用される命名法、ならびにそれらの実験手順および技術は、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されているものである。標準的な技術が化学合成および化学分析のために使用される。
【0013】
本明細書において述べられている全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、本開示が関係する当業者の技術レベルを示す。本出願のいずれかの部分に参照されている全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、各個々の特許または刊行物が参照によって組み入れることを具体的かつ個別に示している場合と同じ程度までそれらの全体を参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0014】
本明細書に開示される物品、組成物、キットおよび/または方法の全ては、本開示に照らして過度の実験をすることなく作製され、実行される。物品、組成物、キットおよび/または方法は特定の実施形態に関して記載されているが、本開示の概念、趣旨および範囲から逸脱せずに、物品、組成物、キットおよび/または方法に対して、ならびに本明細書に記載される方法の工程または一連の工程において変更を適用することができることは当業者には明らかであろう。当業者に明らかである全てのこのような同様の置換および修飾は、添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の趣旨、範囲および概念内であるとみなされる。
【0015】
本開示に従って利用される場合、別段に示さない限り、以下の用語は以下の意味を有すると理解されるべきである:
【0016】
特許請求の範囲および/または明細書において「含む(comprising)」という用語と併せて使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語の使用は、「1つ(one)」を意味することがあるが、それはまた、「1つまたはそれ以上」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つより多い」の意味と一致する。したがって、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その」という用語は、文脈が明確に別段を示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物」に対する言及は、1つもしくはそれ以上の化合物、2つもしくはそれ以上の化合物、3つもしくはそれ以上の化合物、4つもしくはそれ以上の化合物、またはより多い数の化合物を指すことがある。「複数」という用語は、「2つまたはそれ以上」を指す。
【0017】
「少なくとも1つ」という用語の使用は、1つおよび限定されないが、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含む1つより多い任意の量を含むと理解されるだろう。「少なくとも1つ」という用語は、それが付されている用語に応じて、100または1000またはそれ以上にまで及ぶことがある;さらに、より高い限界値も満足のいく結果をもたらす可能性があるため、100/1000の量は限定的と考えられるべきではない。さらに、「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」という用語の使用は、X単独、Y単独、およびZ単独、ならびにX、YおよびZの任意の組合せを含むと理解されるだろう。序数の用語(すなわち、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」など)の使用は、2つまたはそれ以上の項目を区別する目的のためのみであり、例えば、任意の順列もしくは順序または1つの項目の別の項目に対する重要性あるいは添加の任意の順序を意味することを意図するものではない。
【0018】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみを指すように明示的に示されない限りまたは選択肢が相互に排他的でない限り、包括的な「および/または」を意味するために使用される。例えば、条件「AまたはB」は、以下のいずれかによって満たされる:Aは真であり(または存在する)、かつBは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在しない)、かつBは真である(または存在する)、およびAとBは両方とも真である(または存在する)。
【0019】
本明細書で使用される場合、「1つの実施形態」、「ある実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つの例」、「例えば」または「ある例」に対するいずれかの言及は、実施形態に関連して記載される特定の要素、機能、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。例えば、明細書の種々の場所における「いくつかの実施形態において」または「1つの例」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているわけではない。さらに、1つまたはそれ以上の実施形態または例に対する言及は、全て、特許請求の範囲を限定するものではないと解釈されるべきである。
【0020】
本出願全体を通して、「約」という用語は、値が組成物/装置/デバイスについての誤差の固有の変動、値を決定するために用いられる方法、または研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。例えば、限定するものではないが、「約」という用語が利用される場合、指定された値は、特定された値から、プラスマイナス20パーセント、または15パーセント、または12パーセント、または11パーセント、または10パーセント、または9パーセント、または8パーセント、または7パーセント、または6パーセント、または5パーセント、または4パーセント、または3パーセント、または2パーセント、または1パーセントだけ変化することがあり、このような変動は、開示された方法を実施するのに適切であり、当業者によって理解されている通りである。
【0021】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」のような含む(comprising)の任意の形)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」のような有する(having)の任意の形)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」のような含む(including)の任意の形)、または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」のような含有する(containing)の任意の形)という単語は、包括的であるかまたは無制限であり、追加の、引用されていない要素または方法ステップを排除しない。
【0022】
本明細書で使用される場合、「またはそれらの組合せ」という用語は、この用語に先立って列挙された項目の全ての順列および組合せを指す。例えば、「A、B、Cまたはそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BCまたはABCの少なくとも1つを含むことを意図し、特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABも、含むことを意図する。この例に引き続いて、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどのような、1つまたはそれ以上の項目または用語の繰り返しを含有する組合せも明示的に含まれる。当業者は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、典型的には、いかなる組合せにおいても項目または用語の数に制限がないことを理解するであろう。
【0023】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、それに引き続いて記載される事象もしくは状況が完全に起きるか、またはそれに引き続いて記載される事象もしくは状況が大いにもしくはかなりの程度起きることを意味する。例えば、特定の事象または状況と関連する場合、「実質的に」という用語は、それに引き続いて記載される事象または状況が時間の少なくとも80%、または時間の少なくとも85%、または時間の少なくとも90%、または時間の少なくとも95%に起きることを意味する。「実質的に隣接している」という用語は、2つの項目が互いに100%隣接していること、または2つの項目が互いに近接している範囲内であるが、互いに100%隣接していないこと、または2つの項目のうちの1つの一部が他の項目に100%隣接していないが、他の項目に近接している範囲内であることを意味することがある。
【0024】
本明細書で使用される場合、「会合する」および「連結する」という語句は、2つの部分の互いに直接的な会合/結合および2つの部分の互いに間接的な会合/結合の両方を含む。会合/連結の非限定的な例には、例えば、直接結合によるもしくはスペーサー基を介した1つの部分の別の部分への共有結合、直接的なもしくは両部分に結合している特異的結合対メンバーによる1つの部分の別の部分への非共有結合、1つの部分の別の部分への溶解もしくは合成によるような1つの部分の別の部分への組み込み、および1つの部分の別の部分への被覆が含まれる。
【0025】
「類似体」および「誘導体」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、その構造において所与の化合物と同じ基本的な炭素骨格および炭素官能基を含むが、それらに対する1つまたはそれ以上の置換も含有することができる物質を指す。本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、化合物上の少なくとも1つの置換基の残基Rによる置き換えを指すと理解されるだろう。ある特定の非限定的な実施形態では、Rは、H、ヒドロキシル、チオール、フッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物から選択されるハロゲン化物、以下:場合により置換されている、直鎖、分枝または環状アルキル、および直鎖、分枝または環状アルケニルのうちの1つから選択されるC1-C4化合物を含んでもよく、任意選択の置換基は、1つまたはそれ以上のアルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、複素環アルキル、場合により置換されているヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキルから選択され、それらの各々は場合により置換されており、任意選択の置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環アルキル、場合により置換されているヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクルアルキル、フェニル、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、-NH(アルキル)、-NH(シクロアルキル)、カルボキシ、および-C(O)-アルキルのうちの1つまたは複数から選択される。
【0026】
本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、本開示に従って利用することができる任意の種類の生体サンプルを含むと理解されるだろう。利用することができる流体生体サンプルの例には、限定されないが、全血またはそのいずれかの部分(すなわち、血漿または血清)、尿、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、それらの組合せなどが含まれる。
【0027】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、ビオチンアッセイ組成物ならびにそれを含有するキットおよびその使用方法を対象とする。一部のアッセイの実施形態では、シグナル生成システム(sps)メンバーは、例えば、光増感剤のような増感剤、および化学発光組成物を含み;これらのアッセイの実施形態では、増感剤の活性化の結果、化学発光組成物を活性化する産生物が生じ、それによって検出される結合および/または非結合ビオチンの量と関連する検出可能なシグナルを生成する。本開示が基づくことができるアッセイプラットフォームの例示的(しかし非限定的)な実施形態は、発光酸素チャネリングアッセイ(Luminescence Oxygen Channeling Assay)(LOCI(登録商標);Siemens Healthcare Diagnostics Inc.、Tarrytown、NY)である。LOCI(登録商標)アッセイは、例えば、米国特許第5,340,716号(Ullmanら)に記載されており、それらの全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0028】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、サンプル中のビオチンの濃度を決定するための化学発光検出システムを含有するキットを対象とする。キットは:(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合しているビオチンまたはその類似体(例えば、限定されないが、4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA))を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができ、増感剤に直接的または間接的に結合しているアビジンまたはその類似体(例えば、限定されないが、ストレプトアビジンまたはトラプトアビジン)を有することができる増感剤を含む組成物であって、アビジン/アビジン類似体はサンプル中のビオチンまたは(a)に結合することができる、組成物とを含む。
【0029】
化学発光化合物(化学発光物質(chemiluminescer))は、化学的に活性化可能であり、そのような活性化の結果として、ある特定の波長で光を発する化合物である。例示を目的とし、限定ではない化学発光物質の例には:一重項酸素または過酸化物と反応してヒドロペルオキシドまたはジオキセタンを形成することができるオレフィン、これはケトンまたはカルボン酸誘導体に分解することができる;光の作用によって分解することができる安定なジオキセタン;一重項酸素と反応してジケトンを形成することができるアセチレン;(限定されないが)ルミノールのようなアゾ化合物またはアゾカルボニルを形成することができるヒドラゾンまたはヒドラジド;および例えば、エンドペルオキシドを形成することができる芳香族化合物が含まれる。活性化反応の結果として、化学発光物質は直接的または間接的に発光を引き起こす。
【0030】
ある特定の実施形態では、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質であり得る。化学発光化合物を含む組成物は活性化された化学発光化合物によって直接励起される;あるいは組成物は活性化された化学発光化合物によって励起される少なくとも1つの蛍光分子をさらに含んでもよい。
【0031】
増感剤は、化学発光化合物の活性化のための、例えば、一重項酸素のような反応中間体を生じる、分子、通常、化合物である。一部の実施形態では、増感剤は光増感剤である。(例えば、酵素および金属塩によって)化学的に活性化される(chemi-activated)他の増感剤には、例を目的とし、限定ではない、外部光源によって活性化されてまたは活性化されずに一重項酸素を生じることができる他の物質および組成物が含まれる。例えば、ある特定の化合物は、過酸化水素の一重項酸素および水への変換を触媒することが示されている。他の増感剤物質および組成物の非限定的な例には:アルカリ土類金属Ca、SrおよびBaの酸化物;d配置の3A、4A、SAおよび6A族の元素の誘導体;アクチニドおよびランタニドの酸化物;ならびに酸化剤ClO、BrO、Au3+、IO およびIO ;ならびに特に、モリブデン酸イオン、ペルオキソモリブデン酸イオン、タングステン酸イオンおよびペルオキソタングステン酸イオン、ならびにアセトニトリルが含まれる。それらの全体を参照によって明示的に本明細書に組み入れる以下の参考文献は、現在開示され、請求されている発明概念の範囲内でもある増感剤物質および組成物に関するさらなる開示を提供する:Aubry、J.Am.Chem.Soc.、107:5844~5849(1985);Aubry、J.Org.Chem.、54:726~728(1989);BohmeおよびBrauer、Inorg.Chem.、31:3468~3471(1992);NiuおよびFoote、Inorg.Chem.、31:3472~3476(1992);Nardelloら、Inorg.Chem.、34:4950~4957(1995);AubryおよびBouttemy、J.Am.Chem.Soc.、119:5286~5294(1997);ならびにAlmeidaら、Anal.Chim.Acta、482:99~104(2003);これらの各々の全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0032】
光増感剤の範囲内には、真の増感剤ではないが、熱、光、電離放射線または化学活性化による励起で一重項酸素の分子を放出する化合物も含まれる。このクラスの化合物のメンバーには、例えば(限定する目的ではないが)、1,4-ビスカルボキシエチル-1,4-ナフタレンエンドペルオキシド;9,10-ジフェニルアントラセン-9,10-エンドペルオキシド;および5,6,11,12-テトラフェニルナフタレン5,12-エンドペルオキシドのようなエンドペルオキシドが含まれる。加熱またはこれらの化合物による光の直接吸収は一重項酸素を放出する。
【0033】
光増感剤は、例えば、光による励起による一重項酸素の生成によって光活性化合物を活性化するための増感剤である。光増感剤は光活性化可能であり、例えば、色素および芳香族化合物を含み、通常、複数の共役二重または三重結合を有する、通常、共有結合原子からなる化合物である。化合物は、励起波長において、500M-1cm-1より大きい、または5,000M-1cm-1より大きい、または50,000M-1cm-1より大きい、その吸収最大における吸光係数で、(限定されないが)約300nm~約1,000nmの範囲または約450nm~950nmの範囲のような約200nm~約1,100nmの波長範囲の光を吸収すべきである。光増感剤は比較的光安定性であるべきであり、一重項酸素と効率的に反応しなくてもよい。例示を目的とし、限定ではない、光増感剤の例には:アセトン;ベンゾフェノン;9-チオキサントン;エオシン;9,10-ジブロモアントラセン;メチレンブルー;(限定されないが)ヘマトポルフィリンのようなメタロ-ポルフィリン;フタロシアニン;クロロフィル;ローズベンガル;およびバックミンスターフラーレン;ならびにこれらの化合物の誘導体が含まれる。
【0034】
したがって、本開示のある特定の非限定的な実施形態は、サンプル中のビオチンの濃度を決定するための化学発光検出システムを含有するキットであって:(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合しているビオチンまたはその類似体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができ、増感剤に直接的または間接的に結合しているトラプトアビジンを有することができる増感剤を含む組成物であって、トラプトアビジンはサンプル中のビオチンまたは(a)に結合することができる、組成物とを含む、キットを対象とする。他の非限定的な実施形態では、キットは:(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合しているビオチン類似体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができ、増感剤に直接的または間接的に結合しているアビジンまたはその類似体を有することができる増感剤を含む組成物であって、アビジンまたはその類似体はサンプル中のビオチンまたは(a)に結合することができる、組成物とを含む。さらに他の非限定的な実施形態では、キットは:(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;(b)一重項酸素をその励起状態において生成することができ、増感剤に直接的または間接的に結合しているトラプトアビジンを有することができる増感剤を含む組成物であって、トラプトアビジンはサンプル中のビオチンまたは(a)に結合することができる、組成物とを含む。
【0035】
特に、本開示に従って利用することができる化学発光化合物を含む組成物および/または増感剤を含む組成物の非限定的な例は、米国特許第5,340,716号;同第5,538,834号;同第5,545,834号;同第5,578,498号;同第5,618,732号;同第5,672,478号;同第5,709,994号;同第5,811,311号;同第5,780,646号;同第5,929,049号;同第5,936,070号;同第6,002,000号;同第6,143,514号;同第6,180,354号;同第6,251,581号;同第6,340,599号;同第6,406,913号;同第6,406,667号;同第6,489,309号;同第6,692,975号;同第6,703,248号;同第6,797,481号;同第6,916,667号;同第6,949,524号;同第7,022,529号;同第7,033,775号;同第7,101,682号;同第7,179,660号;同第7,229,842号;および同第7,709,273号に示されており;それらの各々の全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0036】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、(a)および(b)の組成物は、(限定されないが)ビーズ、球、回転楕円体またはリポソームのような粒子であり、それらは、それらに連結され、および/またはそれらの中に配置された他の列挙された成分を有する。本開示に従って利用することができる特定の(しかし非限定的な)粒子の例は、(限定されないが)ラテックスビーズのようなラテックス粒子である。(a)および(b)の組成物として利用することができる粒子の種類の他の非限定的な例は上記の段落に列挙された特許に開示されている。
【0037】
当該技術分野において公知であるか、またはそうでなければ本明細書で企図される任意のビオチン類似体は、ビオチン類似体が:(1)一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と会合することができ;かつ(2)増感剤と会合するアビジンまたはその類似体に結合することができ、それによってサンプル中に存在する任意のビオチンに対する競合相手として機能することができる限り、本開示に従って利用することができる。本開示に従って利用することができるビオチン類似体の例には、限定されないが、Athappillyら(Protein Science(1997)6:1338~1342)、Torreggianiら(Biospectroscopy(1998)4:197~208)、Levertら(J Biol Chem(2002)277:16347~16350)、Yamamotoら(Chem Asian J、(2015)10:1071~8)に開示されているものが含まれ、それらの各々の全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。ビオチン類似体の特に非限定的な例には、4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)、イミノビオチン(例えば、限定されないが、2-イミノ-ビオチン(IMBio))、ビオチンカーボネート、ビオチンカルバメート、ビオチンメチルエステル(MEBio)、デスチオビオチン(DEBio)(例えば、限定されないが、d-デスチオビオチン、dl-デスチオビオチン、dl-デスチオビオチンメチルエステルおよびdl-デスチオビオチノール)、ジアミノビオチン(DABio)、クロロアセチル化ビオチン、ビオチンスルホン、チオビオチン(thiobiotin)(例えば、限定されないが、2-チオビオチン)、メトキシカルボニルビオチンメチルエステル(1’-N-メトキシカルボニルビオチンメチルエステルおよび3’-N-メトキシカルボニルビオチンメチルエステル)、ビス-ビオチン(例えば、限定されないが、ビス-ビオチンリン酸エステル)、テトラ-ビオチン、上記のいずれかのエステル、塩および/または誘導体などが含まれる。特定の(しかし非限定的な)例では、ビオチン類似体はHABAまたはイミノビオチンである。
【0038】
当該技術分野において公知であるか、またはそうでなければ本明細書で企図される任意のアビジン類似体は、アビジンまたはアビジン類似体が:(1)増感剤と会合することができ;かつ(2)サンプル中に存在する任意のビオチンに結合することができ;かつ(3)また、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と会合するビオチンまたはその類似体に結合することができる限り、本開示に従って利用することができる。本開示に従って利用することができるアビジン類似体の非限定的な例には、Kangら(J Drug Target(1995)3:159~65)に開示されているものが含まれ、その全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。アビジン類似体の特定の非限定的な例には、アビジン、ストレプトアビジン、トラプトアビジン、中性アビジン、ニュートラライトアビジン(Neutralite avidin)、ニュートラアビジン(Neutravidin)、ライト-アビジン(Lite-avidin)、スクシニル化アビジン、修飾もしくは遺伝子操作されたアビジンの他の形態、上記のいずれかのエステル、塩および/または誘導体などが含まれる。
【0039】
組成物/キット/方法の試薬は、本開示に従ってそれらが機能することができる任意の形態で提供される。例えば、限定の目的ではないが、試薬の各々は、液体形態で提供され、キット内にバルクおよび/または単一のアリコート形態で配置される。あるいは、特に(しかし非限定的な)実施形態では、試薬の1つまたはそれ以上は、単一のアリコートの凍結乾燥試薬の形態でキット内に配置される。マイクロ流体デバイスにおける乾燥試薬の使用は米国特許第9,244,085号(Samproni)に詳細に記載されており、それらの全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0040】
本明細書上記で詳細に記載される試薬に加えて、キットは、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される特定のアッセイのいずれかを行うための他の試薬をさらに含有してもよい。これらのさらなる試薬の性質は特定のアッセイ形式に依存し、それらの同定は十分に当業者の技術の範囲内である;したがってそれらのさらなる説明は必要ないと考えられる。また、キットに存在する成分/試薬の各々は別個の容器/区画にあってもよいか、または種々の成分/試薬が、成分/試薬の交差反応および安定性に応じて、1つもしくはそれ以上の容器/区画内に合わせられる。さらに、キットは、成分/試薬が配置されているマイクロ流体デバイスを含んでもよい。
【0041】
キット内の種々の成分/試薬の相対量は、アッセイ方法の間に発生することを必要とする反応を十分に最適化し、さらに、アッセイの感度を十分に最適化する濃度の成分/試薬を提供するために広範に変更することができる。適切な状況下で、キット内の成分/試薬の1つまたはそれ以上は凍結乾燥粉末のような乾燥粉末として提供することができ、キットは乾燥試薬を溶解するための賦形剤をさらに含んでもよい;このように、本開示に従って方法またはアッセイを実施するための適切な濃度を有する試薬溶液はこれらの成分から得ることができる。陽性および/または陰性対照もまた、キット内に含んでもよい。さらに、キットは、キットの使用方法を説明している書面の説明書のセットをさらに含んでもよい。この性質のキットは、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される方法のいずれかにおいて使用することができる。
【0042】
本開示のある特定のさらなる非限定的な実施形態は、本明細書上記に記載されるキットのいずれかの成分を含むマイクロ流体デバイスを対象とする。特に、ある特定の非限定的な実施形態は、サンプル中のビオチンの濃度を決定するためのマイクロ流体デバイスであって:(a)サンプルが適用される入口チャネルと;(b)入口チャネルと流体連絡することができる少なくとも第1の区画であって、一重項酸素をその励起状態において生成することができ、増感剤に直接的または間接的に結合している任意のアビジンまたはその類似体を有することができる増感剤を含有する、第1の区画と;(c)第1の区画と流体連絡することができる少なくとも第2の区画であって、化学発光化合物に直接的または間接的に結合しているビオチンまたはその類似体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物を含有する、第2の区画とを含む、マイクロ流体デバイスを含む。
【0043】
本明細書上記に詳細に記載されるか、またはそうでなければ本明細書に企図される増感剤、アビジンまたはその類似体、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物、およびビオチンまたはその類似体のいずれかは、本開示のマイクロ流体デバイスにおいて利用することができる。
【0044】
ある特定の(しかし非限定的な)実施形態では、(b)の増感剤は、それに直接的または間接的に結合しているアビジン類似体を有する。使用することができるアビジン類似体の特定の非限定的な例には、アビジン、ストレプトアビジン、トラプトアビジン、中性アビジン、ニュートラライトアビジン、ニュートラアビジン、ライト-アビジン、スクシニル化アビジン、および修飾または遺伝子操作されたアビジンの他の形態、ならびに上記類似体のいずれかの任意のエステル、塩、または誘導体が含まれる。
【0045】
ある特定の(しかし非限定的な)実施形態では、(c)の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、それに直接的または間接的に結合しているビオチン類似体を有する。使用することができるビオチン類似体の非限定的な例には、4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)、イミノビオチン、ビオチンカーボネート、ビオチンカルバメート、ビオチンメチルエステル、デスチオビオチン、ジアミノビオチン、クロロアセチル化ビオチン、ビオチンスルホン、チオビオチン、メトキシカルボニルビオチンメチルエステル、ビス-ビオチン、およびテトラ-ビオチン、ならびに上記類似体のいずれかの任意のエステル、塩、または誘導体が含まれる。使用することができるビオチン類似体の特定の非限定的な例は、4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)である。
【0046】
1つの非限定的な実施形態では、(b)の増感剤は、それに直接的または間接的に結合しているトラプトアビジンを有し、および/または(c)の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、それに直接的または間接的に結合しているHABAを有する。
【0047】
デバイスは、本開示に従ってそのデバイスが機能することを可能にする、区画の任意の配列およびそれらの間の2つの成分の分配を提供することができる。
【0048】
マイクロ流体デバイスの区画のいずれかは、試薬を使用するまで、実質的に気密環境でその中に配置される試薬を維持するために封止され;例えば、凍結乾燥試薬を含有する区画は試薬のあらゆる意図的でない再構成を阻止するために封止される。入口チャネルおよび区画、ならびに2つの区画は互いに「流体連絡することができる」と記載され;この語句は、区画の各々を常に封止することができるが、2つの区画はそれらの中またはそれらの間に形成される封止が破壊されるとそれらの間に流体が流れることができることを示す。
【0049】
本開示のマイクロ流体デバイスは、当該技術分野において公知であるか、またはそうでなければ本明細書に企図される任意の他の所望の機能を提供することができる。例えば、限定する目的ではないが、本開示のマイクロ流体デバイスは読み取りチャンバをさらに含んでもよく;読み取りチャンバは本明細書上記に記載される試薬を含有する区画のいずれかであってもよいか、または読み取りチャンバは前記区画と流体連絡することができる。マイクロ流体デバイスは、(限定されないが)洗浄液、希釈液、賦形剤、干渉液、陽性対照、陰性対照、品質対照などのような他の溶液を含有する1つまたはそれ以上のさらなる区画をさらに含んでもよい。これらのさらなる区画は他の区画の1つまたはそれ以上と流体連絡することができる。例えば、マイクロ流体デバイスは洗浄液を含有する1つまたはそれ以上の区画をさらに含んでもよく、これらの区画はデバイスのいずれかの他の区画と流体連絡することができる。別の例では、マイクロ流体デバイスは1つまたはそれ以上の乾燥試薬を溶解するための賦形剤を含有する1つまたはそれ以上の区画をさらに含んでもよく、区画はデバイスのいずれかの他の区画と流体連絡することができる。なおさらなる例では、マイクロ流体デバイスは希釈液を含有する1つまたはそれ以上の区画を含んでもよく、区画はデバイスのいずれかの他の区画と流体連絡することができる。
【0050】
さらに、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図されるキット/マイクロ流体デバイスのいずれかは、単一のキット/デバイスにおいて多重化される複数のアッセイを含んでもよい。複数のアッセイが存在する場合、アッセイの各々は本明細書に記載されるように構成することができ、機能することができる。あるいは、本明細書に記載されるアッセイは、本開示のキット/マイクロ流体デバイス内に含有することができる当該技術分野において公知である任意の他のアッセイと多重化される。本明細書に開示され、請求されるアッセイと多重化される他のアッセイの非限定的な例には、BNP、NT-proBNP、D-Dimer、CKMB、ミオグロビン、ミエロペルオキシダーゼ、ST2、PCT、hCG、LH、FSH、iPTH、TSH、fT、T、PSA、fPSA、およびcPSA、ならびにそれらの組合せが含まれる。
【0051】
複数のアッセイが単一のマイクロ流体デバイスに存在する場合、複数の入口チャネルをサンプル適用チャンバに接続することができる。ある特定の実施形態では、サンプルの一部は、その内容物にかかわらず、サンプル適用チャンバから複数の入口チャネルまで通過することができる。あるいは、ある特定の成分のサンプル全体からの分離および前記成分の異なるアッセイへの送達を可能にする構造が、サンプル適用チャンバ、入口チャネル、および/またはそれらの間の接続部に存在してもよい。本開示に従って利用することができるサンプル分配デバイスの非限定的な例は、米国特許第9,416,776号(Leddenら)に詳細に記載され、それらの全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0052】
ある特定の非限定的な実施形態はまた、サンプル中のビオチンの存在および/または濃度を検出するための方法も対象とする。この方法は:(a)(1)ビオチンを含有すると疑われるサンプルと;(2)化学発光化合物に直接的または間接的に結合しているビオチンまたはビオチン類似体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物と;(3)一重項酸素をその励起状態において生成することができ、増感剤に直接的または間接的に結合しているアビジンまたはアビジン類似体を有することができる増感剤を含む過剰な組成物とを同時にまたは全体的もしくは部分的に連続して合わせる工程と;(b)サンプル中に存在するビオチンまたは(2)への(3)の結合を可能にする工程であって、ビオチンの不在下で、複合体が(2)と(3)との間で形成され、増感剤が化学発光化合物に近接している、工程と;(c)増感剤を活性化して一重項酸素を生成する工程であって、複合体に存在する増感剤の活性化によって、複合体に存在する化学発光化合物の活性化が引き起こされる、工程と;(d)活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定する工程と;(e)場合によって、工程(b)~(d)を反復する工程と;(f)このように生成された化学発光の量を分析することによってビオチンの存在および/または濃度を検出する工程であって、化学発光の量はサンプル中のビオチンの量と反比例する、工程とを含む。
【0053】
ビオチンの存在についてのアッセイが所望される任意のサンプルを、本開示の方法に従ってサンプルとして利用することができる。サンプルの非限定的な例には、限定されないが、全血またはそのいずれかの部分(すなわち、血漿または血清)、尿、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、およびそれらの組合せのような生体サンプルが含まれる。特定の非限定的な例には、溶解全血細胞および溶解赤血球が含まれる。
【0054】
本明細書上記に詳細に記載されるか、またはそうでなければ本明細書に企図される増感剤、アビジンまたはその類似体、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物、およびビオチンまたはその類似体のいずれかは、本開示のマイクロ流体デバイスに利用することができる。
【0055】
ある特定の(しかし非限定的な)実施形態では、工程(a)(2)の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、それに直接的または間接的に結合しているビオチン類似体を有する。使用することができるビオチン類似体の非限定的な例には、4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)、イミノビオチン、ビオチンカーボネート、ビオチンカルバメート、ビオチンメチルエステル、デスチオビオチン、ジアミノビオチン、クロロアセチル化ビオチン、ビオチンスルホン、チオビオチン、メトキシカルボニルビオチンメチルエステル、ビス-ビオチン、およびテトラ-ビオチン、ならびに上記類似体のいずれかの任意のエステル、塩、または誘導体が含まれる。使用することができるビオチン類似体の特定の非限定的な例は、4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)である。
【0056】
ある特定の(しかし非限定的な)実施形態では、工程(a)(3)の増感剤はそれに直接的または間接的に結合しているアビジン類似体を有する。使用することができるアビジン類似体の特定の非限定的な例には、アビジン、ストレプトアビジン、トラプトアビジン、中性アビジン、ニュートラライトアビジン、ニュートラアビジン、ライト-アビジン、スクシニル化アビジン、および修飾もしくは遺伝子操作されたアビジンの他の形態、ならびに上記類似体のいずれかの任意のエステル、塩、または誘導体が含まれる。
【0057】
一つの非限定的な実施形態では、工程(a)(2)の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、それに直接的または間接的に結合しているHABAを有し、および/または工程(a)(3)の増感剤は、それに直接的または間接的に結合しているトラプトアビジンを有する。
【0058】
ビオチンがサンプル中に存在しない場合、増感剤および化学発光化合物の複合体が形成され、シグナルが生成される。対照的に、ビオチンがサンプル中に存在する場合、それは増感剤に結合しているアビジン/アビジン類似体に結合し、複合体の形成を阻止し、それによってシグナルの生成を阻止する。したがって、サンプル中に存在するビオチンの量は生成されるシグナルの量と反比例する。
【0059】
上述のように、方法の種々の成分は、(同時にまたは連続してのいずれかで)組み合わせて提供される。方法の種々の成分が連続して添加される場合、成分の添加の順序を変更させてもよく;当業者は、アッセイへの異なる成分の添加の特定の所望の順序を決定することができる。添加の最も簡単な順序は、もちろん、全ての材料を同時に添加し、それらから生成されたシグナルを決定することである。あるいは、成分の各々、または成分のグループを連続して合わせることができる。ある特定の実施形態では、インキュベーション工程が、上記で論述した各々の添加の後に必要とされる。
【0060】
代替の(しかし非限定的な)実施形態では、方法の工程(a)は、サンプルを、増感剤に結合しているアビジン/アビジン類似体を有する増感剤を含む組成物と最初に合わせる工程と、それをインキュベートし、その後、化学発光化合物に結合しているビオチン/ビオチン類似体を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物を添加する工程とを含む。
【0061】
本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図されるキット、マイクロ流体デバイス、または方法のいずれかの非限定的な実施形態では、増感剤は光増感剤であり得る。したがって、光増感剤の活性化は光による照射を含む。
【0062】
本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図されるキット、マイクロ流体デバイス、または方法のいずれかの非限定的な実施形態では、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質であり得る。
【0063】
さらに、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図されるキット、マイクロ流体デバイス、または方法のいずれかの非限定的な実施形態では、化学発光化合物を含む組成物は、活性化された化学発光化合物によって励起される少なくとも1つの蛍光分子をさらに含んでもよい。この場合、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される方法は、蛍光分子によって発せられた光の量を測定してサンプル中の検体の量を決定する工程をさらに含んでもよい。
【実施例
【0064】
実施例を本明細書以下に提供する。しかしながら、本開示は、その適用において、本明細書に開示される特定の実験、結果、および実験手順に限定されないことは理解されるべきである。むしろ、実施例は種々の実施形態の1つとして単に提供され、包括的ではなく、例示的であることを意図する。
【実施例1】
【0065】
本開示は、広範なアッセイ範囲を有するロバストなビオチンLOCI(登録商標)アッセイを対象とした。この実施例のある特定の非限定的な実施形態に使用したサンプルサイズは約20μlであった;しかしながら、より小さなサンプルサイズ(例えば、限定されないが、約3μl)を使用することによって、より拡張したアッセイ範囲(例えば、1,500ng/mlまでまたはさらに40,000ng/ml)を有するビオチンアッセイを達成することができる。しかしながら、これらのサンプルサイズは本開示を限定すると解釈されるべきではない;アッセイすることができる任意のサンプルサイズの使用は本開示の範囲内である。例えば(しかし限定の目的ではない)、サンプルサイズは、約0.1μl~約1,000μlの範囲内、もしくは約0.5μl~約100μlの範囲内、もしくは約1μl~約50μlの範囲内であってもよいか、または上記の範囲のいずれかの範囲内である任意の整数もしくは非整数のパーセンテージの値であってもよい。
【0066】
ビオチンLOCI(登録商標)アッセイを図1に概略的に示し、本明細書以下に詳細に記載する。
【0067】
ビオチンLOCI(登録商標)アッセイは:(i)ビオチンもしくはビオチン類似体(例えば、限定されないが、4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)、または本明細書に開示されるか、もしくはそうでなければ企図される任意の他のビオチン類似体)により被覆したケミビーズ(CB)と;(ii)アビジンまたはアビジン類似体(例えば、限定されないが、ストレプトアビジン、トラプトアビジン、または本明細書に開示されるか、もしくはそうでなければ企図される任意の他のアビジン類似体)により被覆したセンシビーズ(SB)とを含む。ビオチン/ビオチン類似体により被覆したケミビーズは、アビジン/アビジン類似体により被覆したセンシビーズへの結合に対して患者サンプル中の遊離ビオチンと競合する。患者における遊離ビオチン濃度が高くなるほど、ケミビーズおよびセンシビーズの結合の観察はより少なくなり、その結果、逆曲線を得た。この実施例および後の実施例に記載したように、ビオチン/ビオチン類似体により被覆したケミビーズおよびアビジン/アビジン類似体により被覆したセンシビーズを使用したこのビオチンLOCI(登録商標)アッセイの実行可能性を実証した。
【0068】
上記に基づいて、ビオチンアッセイ(例としてビオチンLOCI(登録商標)アッセイを使用した)を開発した。アッセイの最初のステップは、過剰な量のアビジン/アビジン類似体により被覆したセンシビーズ(例えば、限定されないが、トラプトアビジンにより被覆したセンシビーズ)のサンプルとのインキュベーションを含み、その結果、サンプル中に存在する任意の遊離ビオチンをセンシビーズによって「閉じ込める(locked-in)」ことができた。次いでビオチン/ビオチン類似体により被覆したケミビーズ(例えば、限定されないが、ビオチンにより被覆したまたはHABAにより被覆したケミビーズ)を添加して、ビオチン-アビジン結合から残っていた結合部位を捕捉した。ビオチンがサンプル中に存在しない場合、アビジン/アビジン類似体により被覆したセンシビーズはビオチン/ビオチン類似体により被覆したケミビーズに結合し、シグナルが生成した(図1の上側パネル)。ビオチンがサンプル中に存在する場合、サンプルビオチンはアビジン/アビジン類似体により被覆したセンシビーズに結合し、センシビーズはビオチン/ビオチン類似体により被覆したケミビーズにもはや結合できなくなった(図1の下側パネル)。したがって、患者サンプル中の遊離ビオチン濃度が高くなるほど、ケミビーズおよびセンシビーズの結合の観察はより少なくなり、その結果、逆標準曲線を得た。
【実施例2】
【0069】
この実施例では、実施例1に記載したビオチンLOCI(登録商標)アッセイを、ビオチンにより被覆したケミビーズ(CB)およびストレプトアビジンにより被覆したセンシビーズ(SB)を使用して実施した。利用したサンプルサイズは20μlであった。総反応体積は218μlであり、最初の結果までの時間は16分であった。
【0070】
このビオチンLOCI(登録商標)アッセイから得たデータを図2および表1に示す。見ることができるように、任意の現在利用可能なビオチンアッセイより非常に広範囲のビオチン濃度にわたって標準曲線を得た。
【0071】
【表1】
【実施例3】
【0072】
実施例1および2に記載したビオチンLOCI(登録商標)アッセイの実施形態に加えて、ビオチンLOCI(登録商標)アッセイのある特定のさらなる非限定的な実施形態は、ビオチン類似体および/またはアビジン類似体の使用を含む。例えば(しかし限定の目的ではない)、ビオチンLOCI(登録商標)アッセイにおけるHABAにより被覆したケミビーズおよび/またはトラプトアビジンにより被覆したセンシビーズの使用は従来技術よりも多くの利点を提供する。第1に、HABAは、アビジン(またはストレプトアビジンまたはトラプトアビジン)と弱く結合する色素であり、アビジンまたはその類似体へのHABAの結合はビオチンより弱く;結果として、HABAの使用はビオチンアッセイに対して、より高い感度を提供する。なぜならHABAはセンシビーズに結合しているビオチンに対する捕捉剤(競合相手ではない)として機能するからである。第2に、その特有の性質に起因して、トラプトアビジンは2分の1のオンレートおよび10分の1のオフフレートで遊離ビオチンに結合する。したがって、トラプトアビジンの使用は遊離ビオチンに対する「ロック(locking)」機構を提供する。なぜならビオチンがトラプトアビジンに結合すると、それは結合部位からほとんど解離しないからである。
【0073】
トラプトアビジンにより被覆したセンシビーズを使用した場合、ビオチン-トラプトアビジン結合は最小のビオチン解離でサンプルビオチンを適所に「ロックし」、それによって添加したケミビーズはトラプトアビジン結合に対してサンプルビオチンと競合しない;したがって、トラプトアビジンにより被覆したセンシビーズの使用により、よりロバストな精度を有するハプテンアッセイを創出する。さらに、サンプルビオチンとの競合がないことに起因して、アッセイシグナルは、より広い動的範囲において遊離ビオチン濃度に、より直線的に比例し、その結果、通常の競合アッセイと比較して拡張したアッセイ範囲を得た。
【0074】
したがって、ある特定の非限定的な実施形態では、トラプトアビジン(単独またはHABAもしくは別のビオチン類似体の使用と組み合わせて)の特有の機能を利用して、ロバストな精度および拡張した動的範囲を有するビオチンアッセイを創出した。
【実施例4】
【0075】
この実施例では、実施例3に記載したビオチンLOCI(登録商標)アッセイを、ビオチンにより被覆したケミビーズ(CB)およびトラプトアビジンにより被覆したセンシビーズ(SB)を使用して実施した。このビオチンLOCI(登録商標)アッセイから得たデータを図3および表2に示す。見ることができるように、任意の現在利用可能なビオチンアッセイより非常に広範囲のビオチン濃度にわたって標準曲線を得た。
【0076】
【表2】
【0077】
一般的に、0ng/mLを除いて、トラプトアビジンにより被覆したセンシビーズは、結合したサンプルビオチンをセンシビーズ表面上の適所にロックする(または「トラップする」)トラプトアビジンの10倍遅いオフレートに起因して、ストレプトアビジンにより被覆したセンシビーズより有意な精度の改善を示した(図4ならびに表1および2を参照のこと)。さらに、トラプトアビジン-SB曲線はストレプトアビジン-SBの曲線よりも急勾配である(図4)。
【実施例5】
【0078】
この実施例では、実施例3に記載したビオチンLOCI(登録商標)アッセイを、HABAにより被覆したケミビーズ(CB)およびストレプトアビジンにより被覆したセンシビーズ(SB)を使用して実施した。このビオチンLOCI(登録商標)アッセイから得たデータを図5に示す。見ることができるように、任意の現在利用可能なビオチンアッセイより非常に広範囲のビオチン濃度にわたって標準曲線を得た。
【実施例6】
【0079】
図6は、イミノビオチンにより被覆したケミビーズを利用したビオチンLOCI(登録商標)アッセイの別の非限定的な実施形態を示す。この実施例では、ケミビーズをイミノ-ビオチンにより被覆し、センシビーズをストレプトアビジンまたはトラプトアビジンのいずれかにより被覆した。イミノビオチンはアビジンに対してpH依存性の結合をする;イミノビオチンはより高いpHでアビジンに対して、より高い親和性を有し、pHが低いと、アビジンから解離する。この機能を使用して、イミノビオチンにより被覆したCBを、SBへのビオチン結合を確実にするために、より低いpHでSBおよびサンプルとインキュベートすることができた。SBおよびビオチンの結合が完了した後、CBおよびSB結合を可能にするようにpHを増加させ、それによってLOCIシグナルを生成した。
【0080】
このように、本開示に従って、本明細書上記に示した目的および利点を完全に満たす、組成物、キット、およびデバイス、ならびにそれらを製造し、使用する方法が提供される。本開示は、本明細書上記に示した具体的な図面、実験、結果、および言語と併せて記載してきたが、多くの代替、修飾、および変更が当業者には明らかであることは自明である。したがって、本開示の趣旨および広い範囲内である全てのこのような代替、修飾、および変更を包含することを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6