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特許7122457真空コーティング装置、方法およびフィルターキャビティ膜層の製造方法
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  • 特許-真空コーティング装置、方法およびフィルターキャビティ膜層の製造方法 図1
  • 特許-真空コーティング装置、方法およびフィルターキャビティ膜層の製造方法 図2
  • 特許-真空コーティング装置、方法およびフィルターキャビティ膜層の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】真空コーティング装置、方法およびフィルターキャビティ膜層の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/56 20060101AFI20220812BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20220812BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
C23C14/56 G
C23C14/34 A
C23C14/14 G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021506961
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 CN2019100441
(87)【国際公開番号】W WO2020034967
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】201810917305.7
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510020354
【氏名又は名称】中▲興▼通▲訊▼股▲ふぇん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】ZTE Plaza Keji Road South,Hi-Tech Industrial Park,Nanshan District Shenzhen,Guangdong 518057 China
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】邵聡
(72)【発明者】
【氏名】鄭金橋
(72)【発明者】
【氏名】宋忠孝
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-144841(JP,A)
【文献】中国実用新案第203333755(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0040970(US,A1)
【文献】特開2004-227621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0053784(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0030785(US,A1)
【文献】国際公開第2014/122700(WO,A1)
【文献】特開2016-164287(JP,A)
【文献】特開2011-058048(JP,A)
【文献】特開昭58-014341(JP,A)
【文献】特開平10-255973(JP,A)
【文献】特開2014-007410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口差圧室、コーティングチャンバ、および出口差圧室を備え、
前記入口差圧室には、少なくとも2本の真空ラインが設けられ、真空ライン毎に、少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含まれ、前記少なくとも2本の真空ラインは並列に接続され、かつ、各々の真空ラインの一端は、いずれも前記コーティングチャンバの入口に接続されており、真空ライン毎に、前記コーティングチャンバの入口に接続される真空遷移チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの真空度に達することができ、
前記コーティングチャンバには、コーティング装置が設置されており、
前記出口差圧室には、少なくとも2本の真空ラインが設けられ、真空ライン毎に、少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含まれ、前記少なくとも2本の真空ラインは並列に接続され、かつ、各々の真空ラインの一端は、いずれも前記コーティングチャンバの出口に接続されており、真空ライン毎に、前記コーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの真空度に達することができ、
コーティング用の基板を搬送するための搬送装置をさらに備える、
ことを特徴とする真空コーティング装置。
【請求項2】
前記コーティングチャンバは、ターゲット材を載置するための少なくとも2つの第1部材が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
隣接する2つの第1部材のうちの一方の部材におけるターゲットに対応する放射範囲と、前記隣接する2つの第1部材のうちの他方の部材におけるターゲットに対応する放射範囲とが重なり領域を有するように、隣接する2つの第1部材の間に第1距離が設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記入口差圧室の各真空ラインには、前記基板をプラズマ洗浄するための洗浄真空チャンバがさらに設けられ、
前記洗浄真空チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの入口に接続される真空遷移チャンバの真空度よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
各真空ラインにおける隣接する真空遷移チャンバ同士の間には、第2部材が設けられ、
前記基板が相応の真空遷移チャンバに搬送されたとき、設置された第2部材は、隣接す
る真空遷移チャンバ間の真空隔離を実現し、かつ、前記基板が次の隣接する真空遷移チャンバにまもなく搬送されるとき、前記相応の真空遷移チャンバと前記次の隣接する真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材が開かれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記コーティングチャンバの入口に接続される真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバの間には、前記第2部材が設けられ、
前記コーティングチャンバの出口に接続される前記真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバの間には、前記第2部材が設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記入口差圧室、コーティングチャンバ及び出口差圧室内の搬送装置は、それぞれ独立して設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記入口差圧室の真空ライン毎に1つの搬送装置が対応して設けられており、
前記出口差圧室の真空ライン毎に1つの搬送装置が対応して設けられている、
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
各真空チャンバには、1つの搬送装置が対応して設けられている、
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
真空コーティング装置の入口差圧室の少なくとも2本の真空ラインから1本の真空ライ
ンを選択することと、
そのうち、真空ライン毎に、少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含ま
れ、前記少なくとも2本の真空ラインは、並列に接続されており、
選択された真空ラインの各段の真空遷移チャンバに基板を順次搬送し、真空引きして真
空度を各真空遷移チャンバに対応する予め設定された真空度に到達させることと、
選択された真空ラインの最終段の真空遷移チャンバに前記基板が進入し、進入後の真空
遷移チャンバの真空度がコーティングチャンバの真空度と同じである場合、前記基板を前記真空コーティング装置のコーティングチャンバに搬送し、前記コーティングチャンバのコーティング装置により前記基板上に膜層を堆積させることと、
前記真空コーティング装置の出口差圧室の少なくとも2本の真空ラインから1本の真空
ラインを選択することと、
そのうち、真空ライン毎に、少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含ま
れ、前記少なくとも2本の真空ラインは、並列に接続されており、
膜層が堆積された基板を、選択された真空ラインの各段の真空遷移チャンバに順次搬送
し、真空引きして真空度を各真空遷移チャンバに対応する予め設定された真空度に到達さ
せて、膜層が堆積された基板を送り出すことと、を含み、
そのうち、前記基板は、前記真空コーティング装置の搬送装置によって搬送される、
ことを特徴とする真空コーティング方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の真空コーティング装置により製造されたフィルターキャビティ膜層を用いる、
ことを特徴とするフィルターキャビティ膜層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【クロス・リファレンス】
【0001】
本願は、2018年8月13日に出願された「真空コーティング装置、方法及びフィルターキャビティ膜層の製造方法」という名称の中国特許出願201810917305.7に基づく優先権を主張し、当該出願の開示全体は援用により本願に組み込まれるものとする。
【技術分野】
【0002】
本願は、真空コーティング製造分野に関するが、これに限らない。
【背景技術】
【0003】
真空コーティングとは、一定の真空度がある環境下で堆積技術により基板の表面に一定の機能を有する膜層を堆積させることをいう。
【0004】
PVD(Physical Vapor Deposition:物理蒸着)法により堆積される膜層は、高硬度、低摩擦係数、優れた耐摩耗性、化学的安定性などの利点を有し、かつ、PVD法によりコーティングすることは、環境に優しいため、広く用いられている。
【0005】
同時に、加工効率を向上させるために、連続PVDコーティング装置が出ているが、関連技術では、通常のPVDコーティング装置に比べて、連続PVDコーティング装置によれば、確かに製品の加工効率を向上させることができるが、その加工効率が依然として低く、特に、かさばる部品について、加工効率が依然として非常に低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の関連課題を解決するために、本願は、真空コーティング装置、方法およびフィルターキャビティ膜層の製造方法を提供する。
【0007】
本願の技術案は、このようにして実現される。
【0008】
真空コーティング装置であって、入口差圧室、コーティングチャンバ、および出口差圧室を備え、前記入口差圧室には、少なくとも2本の真空ラインが設けられ、真空ライン毎に、少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含まれ、前記少なくとも2本の真空ラインは並列に接続され、かつ、各々の真空ラインの一端は、いずれも前記コーティングチャンバの入口に接続されており、真空ライン毎に、前記コーティングチャンバの入口に接続される真空遷移チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの真空度に達することができ、前記コーティングチャンバには、コーティング装置が設置されており、前記出口差圧室には、少なくとも2本の真空ラインが設けられ、真空ライン毎に、少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含まれ、前記少なくとも2本の真空ラインは並列に接続され、かつ、各々の真空ラインの一端は、いずれも前記コーティングチャンバの出口に接続されており、真空ライン毎に、前記コーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの真空度に達することができ、コーティング用の基板を搬送するための搬送装置をさらに備える。
【0009】
上記技術案において、前記コーティングチャンバは、ターゲット材を載置するための少なくとも2つの第1部材が設けられている。
【0010】
上記技術案において、隣接する2つの第1部材のうちの一方の部材におけるターゲットに対応する放射範囲と、前記隣接する2つの第1部材のうちの他方の部材におけるターゲットに対応する放射範囲とが重なり領域を有するように、隣接する2つの第1部材の間に第1距離が設けられている。
【0011】
上記技術案において、前記入口差圧室の各真空ラインには、前記基板をプラズマ洗浄するための洗浄真空チャンバがさらに設けられ、前記洗浄真空チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの入口に接続される真空遷移チャンバの真空度よりも小さい。
【0012】
上記技術案において、各真空ラインにおける隣接する真空遷移チャンバ同士の間には、第2部材が設けられ、前記基板が相応の真空遷移チャンバに搬送されたとき、設置された第2部材は、隣接する真空遷移チャンバ間の真空隔離を実現し、かつ、前記基板が次の隣接する真空遷移チャンバに搬送されたとき、前記次の隣接する真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材が開かれる。
【0013】
上記技術案において、前記コーティングチャンバの入口に接続される真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバの間には、前記第2部材が設けられ、前記コーティングチャンバの出口に接続される前記真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバの間には、前記第2部材が設けられている。
【0014】
上記技術案において、前記入口差圧室、コーティングチャンバ及び出口差圧室内の搬送装置は、それぞれ独立して設けられている。
【0015】
上記技術案において、前記入口差圧室の真空ライン毎に1つの搬送装置が対応して設けられており、前記出口差圧室の真空ライン毎に1つの搬送装置が対応して設けられている。
【0016】
上記技術案において、各真空チャンバには、1つの搬送装置が対応して設けられている。
【0017】
上記のいずれかの真空コーティング装置により製造されたフィルターキャビティ膜層を用いるフィルターキャビティ膜層の製造方法。
【0018】
真空コーティング方法であって、真空コーティング装置の入口差圧室の少なくとも2本の真空ラインから1本の真空ラインを選択することと、そのうち、真空ライン毎に、少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含まれ、前記少なくとも2本の真空ラインは、並列に接続されており、選択された真空ラインの各段の真空遷移チャンバに基板を順次搬送し、真空引きして真空度を各真空遷移チャンバに対応する予め設定された真空度に到達させることと、選択された真空ラインの最終段の真空遷移チャンバに前記基板が進入し、進入後の真空遷移チャンバの真空度が前記コーティングチャンバの真空度と同じである場合、前記基板を前記真空コーティング装置のコーティングチャンバに搬送し、前記コーティングチャンバのコーティング装置により前記基板上に膜層を堆積させることと、前記真空コーティング装置の出口差圧室の少なくとも2本の真空ラインから1本の真空ラインを選択することと、そのうち、真空ライン毎に、少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含まれ、前記少なくとも2本の真空ラインは、並列に接続されており、膜層が堆積された基板を、選択された真空ラインの各段の真空遷移チャンバに順次搬送し、真空引きして真空度を各真空遷移チャンバに対応する予め設定された真空度に到達させて、膜層が堆積された基板を送り出すことと、を含み、そのうち、前記基板は、前記真空コーティング装置の搬送装置によって搬送される。
【0019】
上記技術案において、前記の真空コーティング装置の入口差圧室の少なくとも2本の真空ラインから1本の真空ラインを選択することは、真空ライン毎に、相応の真空ラインが真空バッファ状態にあるか否かを検出することと、前記真空バッファ状態で前記相応の真空ラインが、前記コーティングチャンバに前記基板を搬送する条件を満たさないことと、真空バッファ状態ではない少なくとも1本の真空ラインを特定することと、真空バッファ状態ではない少なくとも1本の真空ラインから1本の真空ラインを選択することと、を含む。
【0020】
上記技術案において、選択された真空ラインの各段の真空遷移チャンバに前記基板を順次搬送し、真空引きして真空度を各真空遷移チャンバに対応する予め設定された真空度に到達させることは、真空遷移チャンバ毎に、前記基板を相応の真空遷移チャンバに進入させると、前記相応の真空遷移チャンバと前記基板が現在位置されている真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材が開かれて、前記基板が相応の真空遷移チャンバに搬送されることと、前記基板が前記相応の真空遷移チャンバに進入した後、前記相応の真空遷移チャンバと前記基板が現在位置されている真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材を閉じて真空引きすることと、真空度が前記相応の真空遷移チャンバに対応する予め設定された真空度を満たしたときに、前記相応の真空遷移チャンバと次の隣接する真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材が開かれて、前記基板が前記次の隣接する真空遷移チャンバに搬送されることと、を含む。
【0021】
上記技術案において、前記基板が前記最終段の真空遷移チャンバに搬送され、かつ真空遷移チャンバの真空度が前記コーティングチャンバの真空度と同じてある場合、前記最終段の真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバとの間に設けられた第2部材が開かれて、前記基板が前記コーティングチャンバに搬送されることと、前記基板を前記コーティングチャンバに搬送した後、前記最終段の真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバとの間に設けられた第2部材を閉じることと、をさらに含む。
【0022】
上記技術案において、前記の前記真空コーティング装置の出口差圧室の少なくとも2本の真空ラインから1本の真空ラインを選択することは、真空ライン毎に、相応の真空ラインが真空バッファ状態にあるか否かを検出することと、前記真空バッファ状態で前記相応の真空ラインが送り出し条件を満たさないことと、真空バッファ状態ではない少なくとも1本の真空ラインを特定することと、真空バッファ状態ではない少なくとも1本の真空ラインから1本の真空ラインを選択することと、を含む。
【0023】
上記技術案において、前記の膜層が堆積された基板を、選択された真空ラインの各段の真空遷移チャンバに順次搬送し、真空引きして真空度を各真空遷移チャンバに対応する予め設定された真空度に到達させることは、真空遷移チャンバ毎に、前記膜層が堆積された基板を相応の真空遷移チャンバに進入させると、前記相応の真空遷移チャンバと膜層が堆積された基板が現在位置されている真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材が開かれて、前記膜層が堆積された基板を相応の真空遷移チャンバに搬送することと、前記膜層が堆積された基板が前記相応の真空遷移チャンバに進入した後、前記相応の真空遷移チャンバと前記膜層が堆積された基板が現在位置されている真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材を閉じて、前記膜層が堆積された基板が現在位置されている真空遷移チャンバに対して真空引きを行うことと、前記相応の真空遷移チャンバと次の隣接する真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材が開かれて、前記膜層が堆積された基板を前記次の隣接する真空遷移チャンバに搬送することと、を含む。
【0024】
上記技術案において、前記基板に対する膜層堆積が完了した後、前記コーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバとの間に設けられた第2部材を開いて、前記膜層が堆積された基板を前記コーティングチャンバの出口に接続される前記真空遷移チャンバに搬送することと、前記膜層が堆積された基板を前記コーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバに搬送した後、前記コーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバとの間に設けられた第2部材を閉じることと、をさらに含む。
【0025】
上記技術案において、前記の前記コーティングチャンバのコーティング装置により前記基板上に膜層を堆積させることは、前記コーティングチャンバの第1部材に載置された第1ターゲット材に対応する放射範囲と第2ターゲット材に対応する放射範囲との重なり領域に前記基板が搬送されると、前記第2ターゲット材による放射を受けて、前記基板上に遷移層が形成されることを含み、前記第2ターゲット材は、前記第1ターゲット材が載置された第1部材と第1距離だけ離間した隣接する第1部材に載置される。
【0026】
上記技術案において、前記の選択された真空ラインの各段の真空遷移チャンバに前記基板を順次搬送し、真空引きして真空度を各真空遷移チャンバに対応する予め設定された真空度に到達させるときには、選択された真空ラインの洗浄真空チャンバに前記基板を搬送し、真空引きして真空度を前記洗浄真空チャンバの真空度に到達させ、前記基板をプラズマ洗浄することをさらに含む。
【0027】
上記技術案において、前記フィルターキャビティ膜層を製造するターゲット材は、Crターゲット、Cuターゲット、Agターゲットを含み、膜層が堆積される場合、前記フィルターキャビティにCr層、Cu層、Ag層が順次に堆積される。
【0028】
上記技術案において、前記フィルターキャビティ膜層を製造するターゲット材は、Crターゲット、Cuターゲット、Ag-Taターゲットを含み、膜層が堆積される場合、前記フィルターキャビティにCr層、Cu層、Ag-Ta層が順次に堆積される。
【0029】
上記技術案において、Ag板に塊状のTa材を均一に埋め込むことと、Ta材が埋め込まれたAg板をAg-Taターゲット材とすることと、をさらに含む。
【0030】
上記技術案において、Ag-Taターゲット材におけるAgとTaの表面積比が1:1~10:1である。
【0031】
上記技術案において、堆積したAg-Ta層におけるAgとTaの相対原子比が4:1~50:1である。
【0032】
本願の実施例に提供される真空コーティング装置、方法およびフィルターキャビティ膜の製造方法によれば、入口差圧室には、少なくとも2本の真空ラインが設けられ、真空ライン毎に、少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含まれ、前記少なくとも2本の真空ラインは並列に接続され、かつ、各々の真空ラインの一端は、いずれも前記コーティングチャンバの入口に接続されており、真空ライン毎に、前記コーティングチャンバの入口に接続される真空遷移チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの真空度に達することができ、前記出口差圧室には、少なくとも2本の真空ラインが設けられ、真空ライン毎に、少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含まれ、前記少なくとも2本の真空ラインは並列に接続され、かつ、各々の真空ラインの一端は、いずれも前記コーティングチャンバの出口に接続されており、真空ライン毎に、前記コーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの真空度に達することができる。入口差圧室と出口差圧室は、複数の真空ラインが並列に接続された構成とする装置であるため、入口差圧室において1本の真空ラインが堆積待ち試料を搬送できない場合、他の真空ラインを選択して堆積待ち試料をコーティングチャンバに搬送することができ、これにより、堆積待ち試料を次から次へとコーティングチャンバへ搬送し、出口差圧室において1本の真空ラインがコーティング済みの試料を送出できない場合、他の真空ラインを選択してコーティング済みの試料を送り出すことができ、これにより、コーティングチャンバから送り出されたコーティング済みの試料を絶え間なく続けて受け取ることができる。このようにして、試料の連続バッチ加工を達成することができ、加工効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1は、本願の実施例に係る真空コーティング装置の構成を示す図である。
【0034】
図2は、本願の実施例に係る真空コーティング方法の流れを示すフローチャートである。
【0035】
図3は、本願の適用例に係る真空コーティング装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面および実施例を参照しながら、本願をさらに詳しく説明する。
【0037】
一種の連続PVDコーティング装置は、複数の真空チャンバでバッファリングしてコーティングチャンバの真空度を確保し、バッファリング(真空引きまたは真空調整)中に、製品が停止状態にあるため、この場合、試料はコーティングチャンバ内に間欠的に流れ込まれる。よって、このような連続PVDコーティング装置を採用する場合、製品の加工効率の向上が非常に困難であり、特に、かさばる部品について、加工効率が依然として非常に低い。
【0038】
これに鑑みて、本願の各種の実施例において、真空コーティング装置の第1部分(入口差圧室と称する)は、コーティングチャンバ(すなわち、真空コーティング装置の第2部分)への製品の搬送を担い、第2部分は、種々の異なる膜層の堆積を担い、真空コーティング装置の第3部分(出口差圧室と称する)は、コーティングチャンバから送出されたコーティング済みの製品の受け取りを担う。そのうち、第1部分は複数の真空ラインを含み、複数の真空ラインは並列に接続されて、堆積待ち試料が次から次へと第2部分に搬送され、第3部分は複数の真空ラインを含み、複数の真空ラインが並列に接続されて、第2部分から送出されたコーティング済みの製品を絶え間なく続けて受け取る。
【0039】
本願の実施例による案の場合、入口差圧室と出口差圧室は、複数の真空ラインが並列に接続された構成とする装置であるため、試料の連続バッチ加工を達成することができ、さらに、加工効率を大幅に向上させることができる。
【0040】
本願の実施例による真空コーティング装置は、図1に示すように、入口差圧室11と、コーティングチャンバ12と、出口差圧室13と、を備える。
【0041】
ここで、前記入口差圧室11には、少なくとも2本の真空ラインが設けられ、真空ライン毎に、少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含まれており、前記少なくとも2本の真空ラインは並列に接続され、かつ、各々の真空ラインの一端は、いずれも前記コーティングチャンバの入口に接続されており、真空ライン毎に、前記コーティングチャンバ12の入口に接続される真空遷移チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの真空度に達することができ、前記コーティングチャンバ12には、コーティング装置が設置されており、前記出口差圧室13には、少なくとも2本の真空ラインが設けられ、真空ライン毎に、少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含まれており、前記少なくとも2本の真空ラインは並列に接続され、かつ、各々の真空ラインの一端は、いずれも前記コーティングチャンバの出口に接続されており、真空ライン毎に、前記コーティングチャンバ12の出口に接続される真空遷移チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの真空度に達することができる。
【0042】
また、本実施例において、当該装置は、コーティング用の基板を搬送するための搬送装置をさらに備える。
【0043】
本願の実施例による真空コーティング装置は、前記入口差圧室11の少なくとも2本の真空ラインの中から1本の真空ラインを選択した後、選択された真空ラインの各段の真空遷移チャンバに基板を順次搬送し、真空引きして、基板が前記コーティングチャンバ12に進入した後真空度がコーティングの要求を満たすことを確保し、前記コーティングチャンバにおいてコーティングが行われた後に、前記出口差圧室13の少なくとも2本の真空ラインの中から1本の真空ラインを選択してから、選択された真空ラインの各段の真空遷移チャンバに、膜層が堆積された基板を順次搬送し、最終的には膜層が堆積された基板を送り出す。
【0044】
ここで、前記少なくとも2本の真空ラインが並列に接続されるとは、前記入口差圧室11における各真空ラインの一端がいずれも外気に通じる(連通すると理解してもよい)ことができ、他端がいずれも前記コーティングチャンバ12の入口に接続されており、これに応じて、前記出口差圧室13における各真空ラインの一端がいずれも前記コーティングチャンバ12の出口に接続され、他端がいずれも外気に通じることができることを指す。
【0045】
真空コーティング装置が動作している過程において、入口差圧室11の真空ライン毎に、各真空遷移チャンバの真空度は一様でなく、そして、大気で基板を受け取る真空遷移チャンバから接続順に従って、真空遷移チャンバの真空度はますます高くなり、かつ、前記コーティングチャンバ12の入口に接続される真空遷移チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの真空度とほぼ同じである。これに応じて、前記出口差圧室13の真空ライン毎に、各真空遷移チャンバの真空度は一様でなく、前記コーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバに到達する真空度とほぼ同じであり、そして、前記コーティングチャンバ12の入口に接続される真空遷移チャンバから接続順に従って、真空遷移チャンバの真空度はますます低くなる。これによって、前記コーティングチャンバ12の真空度がコーティングの要求を満すことを確保することができ、さらに、多段で真空引きする方式を採用することによって、真空ライン毎に対応する真空度を、設定された真空度に迅速に到達させることができる
【0046】
また、入口差圧室11と出口差圧室13を設置する必要がある真空遷移チャンバの個数に応じて、例えば、コーティングする時の真空度およびコストに合わせて設けることができる。
【0047】
本実施例において、前記コーティング装置のコーティング技術は、PVD技術であっておもよい。
【0048】
これにより、一つの実施例において、前記コーティングチャンバは、ターゲット材を載置するための第1部材を少なくとも2つ設けることができ、第1部材を少なくとも2つ設けることで、異なるターゲット材を載置することができ、これにより、異なる膜層の堆積を実現することができる。
【0049】
複数のターゲット材を載置した後、各種のターゲット材の間に間隔手段を設置しなく、または特定の距離を空けなくても良く、このようにして、基板に遷移層を堆積することができ、これによって、両膜層間の結合力を高めることができる。
【0050】
これにより、一つの実施例において、隣接する2つの第1部材のうちの一方の部材におけるターゲットに対応する放射範囲と、前記隣接する2つの第1部材のうちの他方の部材におけるターゲットに対応する放射範囲とが重なり領域を有するように、すなわち、前記基板が前記搬送装置により隣接する2つの第1部材のうちの一方の部材におけるターゲットに対応する放射範囲の末端に搬送される際に、前記隣接する2つの第1部材のうちの他方の部材におけるターゲットによる放射を受けることができるように、隣接する2つの第1部材の間に第1距離が設けられてもよい。
【0051】
本実施例において、前記コーティングチャンバ12に進入する前に、堆積した膜層と基板との比較的強い結合力を確保するように、前記基板を十分に清浄にする必要があるため、前記コーティングチャンバ12に進入する前に、前記基板を洗浄できることが望ましい。
【0052】
これにより、一つの実施例において、前記入口差圧室11の各真空ラインは、前記基板をプラズマ洗浄するための洗浄真空チャンバをさらに有しており、前記洗浄真空チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの入口に接続される真空遷移チャンバの真空度よりも小さい。
【0053】
本実施例において、前記基板をプラズマ洗浄するために必要な真空度に応じて、前記洗浄真空チャンバを真空ラインにおける適所に設置することができる。
【0054】
一つの実施例において、各真空ラインにおける隣接する真空遷移チャンバ同士の間には、第2部材が設置されている。前記基板が相応の真空遷移チャンバに搬送されたとき、設置された第2部材は、隣接する真空遷移チャンバ間の真空隔離を実現する。そして、前記基板が次の隣接する真空遷移チャンバに搬送されたとき、前記次の隣接する真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材が開かれる。
【0055】
すなわち、前記コーティングチャンバ12に進入する前に、真空遷移チャンバ毎に、前記基板を相応の真空遷移チャンバに進入させると、前記相応の真空遷移チャンバと前記基板が現在位置されている真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材が開かれて、前記基板が相応の真空遷移チャンバに搬送される。
【0056】
前記基板が前記相応の真空遷移チャンバに進入した後、前記相応の真空遷移チャンバと前記基板が現在位置されている真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材を閉じ、かつ真空引きする。
【0057】
真空度が前記相応の真空遷移チャンバに対応する予め設定された真空度を満たした際に、前記相応の真空遷移チャンバと次の隣接する真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材が開かれて、前記基板が前記次の隣接する真空遷移チャンバに搬送される。
【0058】
そのうち、前記基板が前記最終段の真空遷移チャンバに搬送され、かつ真空遷移チャンバの真空度が前記コーティングチャンバの真空度と同じてある場合、前記最終段の真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバとの間に設けられた第2部材が開かれて、前記基板が前記コーティングチャンバに搬送されており、前記基板を前記コーティングチャンバに搬送した後、前記最終段の真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバとの間に設けられた第2部材を閉じる。
【0059】
ここで、洗浄真空チャンバに対応する第2部材については、処理方式が真空遷移チャンバに対応する第2部材の処理方式と同様であり、ここで再び贅言しない。
【0060】
膜層の堆積が完了した後、真空遷移チャンバ毎に、前記膜層が堆積された基板を相応の真空遷移チャンバに進入させると、前記相応の真空遷移チャンバと膜層が堆積された基板が現在位置されている真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材がが開かれて、前記膜層が堆積された基板が相応の真空遷移チャンバに搬送される。
【0061】
前記膜層が堆積された基板を前記相応の真空遷移チャンバに進入させた後、前記相応の真空遷移チャンバと前記膜層が堆積された基板が現在位置されている真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材を閉じ、前記膜層が堆積された基板が現在位置されている真空遷移チャンバを真空引きする。
【0062】
前記相応の真空遷移チャンバと次の隣接する真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材を開けて、前記膜層が堆積された基板を前記次の隣接する真空遷移チャンバに搬送する。
【0063】
そのうち、前記基板に対する膜層堆積が完了した後、前記コーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバとの間に設けられた第2部材を開いて、前記膜層が堆積された基板を前記コーティングチャンバの出口に接続される前記真空遷移チャンバに搬送し、前記膜層が堆積された基板を前記コーティングチャンバの出口に接続される前記真空遷移チャンバに搬送した後、前記コーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバとの間に設けられた第2部材を閉じる。
【0064】
本実施例において、前記第2部材の形態はバッフルプレートまたはドア等であってもよく、かつ、前記第2部材を開閉するように、別途バルブを設けてもよい。
【0065】
搬送速度の調整を容易にするために、前記入口差圧室11、コーティングチャンバ12、及び出口差圧室13内の搬送装置は、それぞれ独立して設けられてもよい。
【0066】
また、前記入口差圧室11の真空ライン毎に1つの搬送装置が対応して設けられており、前記出口差圧室13の真空ライン毎に1つの搬送装置が対応して設けられている。
【0067】
本実施例において、搬送装置を各真空チャンバに対応して1つずつ備え、各真空チャンバには独立した搬送装置を有しているため、各真空チャンバの真空度を効果的に確保することができる。
【0068】
なお、前記基板とは、膜層の堆積を待つ試料を指す。
【0069】
本実施例において、前記真空コーティング装置は、さらに、入口差圧室11、コーティングチャンバ12、出口差圧室13の稼動を制御するための制御装置を備えてもよい。
【0070】
また、前記制御装置は、搬送装置の稼動を制御することもできる。
【0071】
本願の実施例による真空コーティング装置の場合、入口差圧室には少なくとも2本の真空ラインが設けられ、真空ライン毎に少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバを備え、前記少なくとも2本の真空ラインは並列に接続され、各々の真空ラインの一端はいずれも前記コーティングチャンバの入口に接続されており、真空ライン毎に、前記コーティングチャンバの入口に接続される真空遷移チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの真空度に達することができ、前記コーティングチャンバは、コーティング装置が設けられ、前記出口差圧室には、少なくとも2本の真空ラインが設けられ、真空ライン毎に少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバを備え、前記少なくとも2本の真空ラインは並列に接続され、各々の真空ラインの一端はいずれも前記コーティングチャンバの出口に接続されており、真空ライン毎に、前記コーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバの真空度は、前記コーティングチャンバの真空度に達することができ、前記装置は、コーティング用の基板を搬送するための搬送装置をさらに備える。入口差圧室と出口差圧室は、複数の真空ラインが並列に接続された構成とする装置であるため、入口差圧室において1本の真空ラインが堆積待ち試料を搬送できない場合、他の真空ラインを選択して堆積待ち試料をコーティングチャンバに搬送することができ、これにより、堆積待ち試料を次から次へとコーティングチャンバへ搬送し、出口差圧室において1本の真空ラインがコーティング済みの試料を送出できない場合、他の真空ラインを選択してコーティング済みの試料を送り出すことができ、これにより、コーティングチャンバから送り出されたコーティング済みの試料を絶え間なく続けて受け取ることができる。このようにして、試料の連続バッチ加工を達成することができ、加工効率を大幅に向上させることができる。
【0072】
上記の装置構成に基づいて、本願の実施例はさらに真空コーティング方法を提供する。図2に示すように、当該方法は以下のステップを含む。
【0073】
ステップ201:真空コーティング装置の入口差圧室の少なくとも2本の真空ラインから1本の真空ラインを選択する。
【0074】
ここで、真空ライン毎に少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含まれ、前記少なくとも2本の真空ラインは並列に接続されている。
【0075】
本実施例において、前記基板に対して、先にコーティングする前の前処理を行う必要がある。このような前処理は、大気環境(外界環境と理解できる)で行うことが一般的であり、前記基板の表面を清浄にし、かつ平坦にするために、細砂ブラスト(サンドペーパー研磨に類似する機能)、脱油などの作業を含む得る。
【0076】
そのうち、一つの実施例において、本ステップの具体的な実施には、真空ライン毎に、相応の真空ラインが真空バッファ状態にあるか否かを検出することと、前記真空バッファ状態で前記相応の真空ラインが、前記コーティングチャンバに前記基板を搬送する条件を満たさないことと、真空バッファ状態ではない少なくとも1本の真空ラインを特定することと、真空バッファ状態ではない少なくとも1本の真空ラインから1本の真空ラインを選択することと、が含まれてもよい。
【0077】
そのうち、真空バッファ状態にある真空ラインは、基板の搬送に使用できないため、基板を搬送するように、真空バッファ状態ではない真空ラインしか選択できない。
【0078】
本実施例において、1本の真空ラインについて、当該真空ラインにおける大気に通じる真空遷移チャンバが使われて遊んでいない限り、すなわち、大気に通じる真空遷移チャンバに基板がある限り、当該真空ラインを選択できない。
【0079】
本実施例において、真空バッファ状態ではない真空ラインが少なくとも2本(すなわち複数本)ある場合、例えば1本の真空ラインをランダムに選択するなど、必要に応じて真空ラインを選択してもよい。
【0080】
なお、本実施例では、装置の稼動中に、複数本の真空ラインが並列に接続され、複数本の真空ラインが連続して切り替えられ、これにより、試料を次から次へとコーティングチャンバへ搬送する。
【0081】
ステップ202:選択された真空ラインの各段の真空遷移チャンバに基板を順次搬送し、真空引きして真空度を各真空遷移チャンバに対応する予め設定された真空度に到達させる。
【0082】
具体的には、真空遷移チャンバ毎に、前記基板を相応の真空遷移チャンバに進入させると、前記相応の真空遷移チャンバと前記基板が現在位置されている真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材が開かれて、前記基板を相応の真空遷移チャンバに搬送する。前記基板が前記相応の真空遷移チャンバに進入した後、前記相応の真空遷移チャンバと前記基板が現在位置されている真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材を閉じて真空引きする。真空度が前記相応の真空遷移チャンバに対応する予め設定された真空度を満たしたときに、前記相応の真空遷移チャンバと次の隣接する真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材が開かれて、前記基板が前記次の隣接する真空遷移チャンバに搬送される。
【0083】
そのうち、前記基板が前記最終段の真空遷移チャンバに搬送され、かつ真空遷移チャンバの真空度が前記コーティングチャンバの真空度と同じてある場合、前記最終段の真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバとの間に設けられた第2部材が開かれて、前記基板が前記コーティングチャンバに搬送される。前記基板を前記コーティングチャンバに搬送した後、前記最終段の真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバとの間に設けられた第2部材を閉じる。
【0084】
ここで、本実施例では、装置の稼動中に、前記最終段の真空遷移チャンバの真空度が予め設定された真空度に達した後、コーティングチャンバへ基板を搬送できない状況(例えば、前記コーティングチャンバが別の真空ラインから基板を受け取っているなど)が発生すると、前記最終段の真空遷移チャンバが引き続き真空引きの状態にあり、このとき、当該真空ラインが真空バッファ状態にあるとも言える。
【0085】
一つの実施例において、選択された真空ラインの各段の真空遷移チャンバに前記基板を順次搬送し、真空引きして真空度を各真空遷移チャンバに対応する予め設定された真空度に到達させるときには、さらに以下のステップを含む。
【0086】
選択された真空ラインの洗浄真空チャンバに前記基板を搬送し、真空引きして真空度を前記洗浄真空チャンバの真空度に到達させ、前記基板をプラズマ洗浄する。
【0087】
ここで、洗浄真空チャンバに対応する第2部材については、処理方式が真空遷移チャンバに対応する第2部材の処理方式と同様であり、ここで再び贅言しない。
【0088】
ここで、本実施例において、前記予め設定された真空度は、必要に応じて設定される。
【0089】
ステップ203:選択された真空ラインの最終段の真空遷移チャンバに前記基板が進入し、進入後の真空遷移チャンバの真空度が前記コーティングチャンバの真空度と同じである場合、前記基板を前記真空コーティング装置のコーティングチャンバに搬送し、前記コーティングチャンバのコーティング装置により前記基板上に膜層を堆積させる。
【0090】
ここで、前記の前記コーティングチャンバのコーティング装置により前記基板上に膜層を堆積させることは、前記コーティングチャンバの第1部材に載置された第1ターゲット材に対応する放射範囲の末端に前記基板が搬送されると、第2ターゲット材による放射を受けて、前記基板上に遷移層が形成されることを含み、前記第2ターゲット材は、前記第1ターゲット材が載置された第1部材と第1距離だけ離間した隣接する第1部材に載置される。
【0091】
すなわち、第1ターゲット材と第2ターゲット材との放射範囲は重なり領域があり、重なり領域では、第1ターゲット材からの放射を受けてもよいし、第2ターゲット材からの放射を受けて遷移層を形成してもよい。
【0092】
ステップ204:前記真空コーティング装置の出口差圧室の少なくとも2本の真空ラインから1本の真空ラインを選択する。
【0093】
ここで、真空ライン毎に少なくとも2段の順次接続された真空遷移チャンバが含まれ、前記少なくとも2本の真空ラインは並列に接続されている。
【0094】
そのうち、一つの実施例において、本ステップの具体的な実施には、真空ライン毎に、相応の真空ラインが真空バッファ状態にあるか否かを検出することと、前記真空バッファ状態で前記相応の真空ラインが送り出し条件を満たさないことと、真空バッファ状態ではない少なくとも1本の真空ラインを特定することと、真空バッファ状態ではない少なくとも1本の真空ラインから1本の真空ラインを選択することと、が含まれてもよい。
【0095】
そのうち、真空バッファ状態にある真空ラインは、膜層が堆積された基板の送り出しに使用できないため、膜層が堆積された基板を送り出すように、真空バッファ状態ではない真空ラインしか選択できない。
【0096】
本実施例において、1本の真空ラインについて、当該真空ラインにおけるコーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバの真空度が、予め設定された真空度に達しない限り(すなわち、コーティングチャンバとほぼ同じ真空度に達しない限り)、当該真空ラインを選択できないが、このとき、当該真空ラインにおけるコーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバは、コーティングチャンバから送り出された膜層が堆積された基板を受け取ることができない。
【0097】
本実施例において、真空バッファ状態ではない真空ラインが少なくとも2本(すなわち複数本)ある場合、例えば1本の真空ラインをランダムに選択するなど、必要に応じて真空ラインを選択してもよい。。
【0098】
なお、本実施例では、装置の稼動中に、複数本の真空ラインが並列に接続され、複数本の真空ラインが連続して切り替えられ、これにより、コーティングチャンバから絶え間なく続けて試料を送り出す。
【0099】
ステップ205:膜層が堆積された基板を、選択された真空ラインの各段の真空遷移チャンバに順次搬送し、真空引きして真空度を各真空遷移チャンバに対応する予め設定された真空度に到達させて、膜層が堆積された基板を送り出す。
【0100】
具体的には、真空遷移チャンバ毎に、前記膜層が堆積された基板を相応の真空遷移チャンバに進入させると、前記相応の真空遷移チャンバと膜層が堆積された基板が現在位置されている真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材が開かれて、前記膜層が堆積された基板を相応の真空遷移チャンバに搬送する。前記膜層が堆積された基板が前記相応の真空遷移チャンバに進入した後、前記相応の真空遷移チャンバと前記膜層が堆積された基板が現在位置されている真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材を閉じて、前記膜層が堆積された基板が現在位置されている真空遷移チャンバに対して真空引きを行う。前記相応の真空遷移チャンバと次の隣接する真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材が開かれて、前記膜層が堆積された基板を前記次の隣接する真空遷移チャンバに搬送する。
【0101】
ここで、前記膜層が堆積された基板が一つの真空遷移チャンバに入り、かつ、直前の隣接する真空遷移チャンバとの間に設けられた第2部材を閉じた後、前記膜層が堆積された基板は次の隣接する真空遷移チャンバに入ることができ、直前の隣接する真空遷移チャンバの真空度を気にしなくていい。
【0102】
前記基板に対する膜層堆積が完了した後、前記コーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバとの間に設けられた第2部材を開いて、前記膜層が堆積された基板を前記コーティングチャンバの出口に接続される前記真空遷移チャンバに搬送する。前記膜層が堆積された基板を前記コーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバに搬送した後、前記コーティングチャンバの出口に接続される真空遷移チャンバと前記コーティングチャンバとの間に設けられた第2部材を閉じる。
【0103】
そのうち、前記基板は、前記真空コーティング装置の搬送装置によって搬送される。
【0104】
キャビティフィルタは一種の重要な電子デバイスであり、レーダ、マイクロ波、通信などの分野において幅広く応用されている。現在、工業用キャビティフィルタのキャビティは、一般的にマグネシウム基体またはアルミニウム基体であり、そのキャビティ導電性に対する特殊な要求により、その表面処理方法は、電気銀めっきプロセスによってキャビティを表面処理することが多く、フィルターの電気銀めっきプロセスは劇毒シアン化物電気めっきプロセスであることが多いので、人体の健康および環境への影響が大きい。
【0105】
これに基づき、本願の実施例は、上記真空コーティング装置を用いてフィルターキャビティ膜層を製造するフィルターキャビティ膜層の製造方法をも提供する。
【0106】
そのうち、前記フィルターキャビティは基板であり、基材として捉えてもよい。
【0107】
本実施例において、前記フィルターキャビティは、マグネシウム基体またはアルミニウム基体であってもよい。
【0108】
一つの実施例において、前記フィルターキャビティ膜層を製造するターゲット材は、Crターゲット、Cuターゲット、Agターゲットを含んでもよく、膜層が堆積される場合、前記フィルターキャビティにCr層、Cu層、Ag層が順次に堆積される。
【0109】
そのうち、Cr層は、キャビティとCu層との間の遷移層である。
【0110】
一つの実施例において、前記フィルターキャビティ膜層を製造するターゲット材は、Crターゲット、Cuターゲット、Ag-Taターゲットを含み、膜層が堆積される場合、前記フィルターキャビティにCr層、Cu層、Ag-Ta層が順次に堆積される。
【0111】
以下、適用例を参照しながら本願をさらに詳しく説明する。
【0112】
本適用例において、図3に示すように、入口差圧室11には3本の真空ラインが含まれ、真空ライン毎に真空遷移チャンバ111、真空遷移チャンバ112、真空遷移チャンバ113、洗浄真空チャンバ114および真空遷移チャンバ115を含み、真空遷移チャンバ111、真空遷移チャンバ112、真空遷移チャンバ113、洗浄真空チャンバ114および真空遷移チャンバ115が順次接続されており、真空チャンバ間にバッフルプレート31(上記の第2部材、本実施例では、ドアでもよい)が設けられており、具体的には、バッフルプレート311、バッフルプレート312、バッフルプレート313、バッフルプレート314、バッフルプレート315を含んでいる。そのうち、真空遷移チャンバ111は、外気に連通可能であるとともに、堆積待ち試料の受取および移送を担うので、サンプルイン真空チャンバと呼ばれてもよい。真空遷移チャンバ111は、ドア32を介して外気に連通されている。
【0113】
出口差圧室13にも3本の真空ラインが含まれ、真空ライン毎に真空遷移チャンバ131、真空遷移チャンバ132、真空遷移チャンバ133、および真空遷移チャンバ134を含む。真空遷移チャンバ131、真空遷移チャンバ132、真空遷移チャンバ133、および真空遷移チャンバ134は順次接続されており、真空チャンバ間にはバッフルプレート33(上記の第2部材)が設けられており、具体的には、バッフルプレート331、バッフルプレート332、バッフルプレート333、バッフルプレート334を含んでいる。そのうち、真空遷移チャンバ134は、外気に連通可能であるとともに、試料の送り出しを担うので、サンプルアウト真空チャンバと呼ばれてもよい。真空遷移チャンバ134は、ドア34を介して外気に連通されている。
【0114】
以下、各部の機能について詳細に説明する。
【0115】
前記入口差圧室11について、真空チャンバ間に設けられたバッフルプレート31が開閉可能であり、これにより、真空チャンバ間の連通または真空隔離を実現することができる。装置の稼働中に、各真空チャンバの両端のバッフルプレートは、一端のみの開放が許容され、すなわち、各真空チャンバの一端のバッフルプレートが開く直前または既に開かれた場合、他端のバッフルプレート又はドアが閉状態でなければならない。
【0116】
図3を参照して、装置が動作状態にある場合、真空ライン毎の動作手順は以下の通りである。
【0117】
ステップA:ドア32を開けて、一定数の製品を搬送装置35における載置装置に載せ、ドア32を閉じて、試料が入った後の真空遷移チャンバ111を設定された真空度まで真空引きする。
【0118】
ステップB:バッフルプレート311を開放し(開けると理解してもよい)、試料が真空遷移チャンバ112に入り、バッフルプレート311を閉じて、真空遷移チャンバ112を所定の真空度まで真空引きする。同時に、真空遷移チャンバ111を正常の大気圧まで排気し、ドア32を開けて、外部からの試料の再投入を開始させる。
【0119】
ステップC:バッフルプレート312を開放し、試料が真空遷移チャンバ113に入り、バッフルプレート312を閉じて、真空遷移チャンバ113を設定された真空度まで真空引きする。
【0120】
ステップD:バッフルプレート313を開放し、試料が洗浄真空チャンバ114に入り、バッフルプレート313を閉じて、洗浄真空チャンバ114の真空度を設定された真空度まで調整してから、試料をプラズマ洗浄する。
【0121】
ステップE:バッフルプレート314を開放し、製品が真空遷移チャンバ115に入り、バッフルプレート314を閉じて、真空遷移チャンバ115をコーティングチャンバ12と同じ真空度まで真空引きする。
【0122】
ステップF:バッフルプレート315を開放し、コーティング待ち試料をコーティングチャンバ12に搬送し、バッフルプレート315を閉じて、ここまでコーティング待ち製品の搬送過程を終了する。
【0123】
そのうち、入口差圧室11について、ある真空ラインが真空バッファ状態にあるときに、当該真空ラインでのコーティングチャンバへの製品搬送を一時停止する。これとともに、それと並列に接続されたほかの真空ラインは、この期間内(真空ラインが真空バッファ状態となる期間内)に、コーティングチャンバ12への製品の搬送を担当し、並列に接続された数本の真空ラインが交互に搬送することによって、コーティングチャンバ12は連続的に絶え間なく続けて入口差圧室11からコーティング待ち製品を受け取ることができる。
【0124】
また、ある真空ラインにコーティングチャンバ12へ製品を搬送する条件が備えられているとき(すなわち、当該1本の真空ラインにおける真空遷移チャンバ115に製品が搭載され、且つ真空度が既に設定された真空度要求に達した)、かつ、コーティングチャンバ12は別の1本の真空ラインから製品を受け取っているときには、当該1本の真空ラインにおける製品は、静止状態を維持し、別の1本の真空ラインにおける製品の搬送が完了した後、当該真空ラインのバッフルプレート315を開放し、コーティングチャンバ12への製品の搬送を開始する。上記の過程を制御装置で制御することにより、複数本の搬送真空ラインが密接に協働するとともに、搬送衝突が発生しないことを確保できる。
【0125】
これ以外、実際のニーズに応じて、真空チャンバの数を増やし、真空バッファの時間を短縮し、加工効率を向上させることができ、例えば、図3に示す真空遷移チャンバの個数に加えて、洗浄真空チャンバ114の前に一つまたは複数の真空遷移チャンバをさらに増やし、または、洗浄真空チャンバ114の数を増やし、プラズマ洗浄の効率などを向上してもよい。
【0126】
前記コーティングチャンバ12について、コーティングチャンバ12の上部に、一定数のターゲット36(上記の第1部材)を並べて配置することによって、異なるターゲット材の装着が容易になり、異なるコーティング層を得ることができる。ターゲット材の直下には製品搬送装置37があり、搬送速度が調整可能であり、例えば堆積されるコーティング層の厚みに応じて調整することができる。
【0127】
図3に示すように、コーティングチャンバ12の先端は、複数本の平行な搬送装置をつけ、入口差圧室11の複数本の真空ラインに1対1で対応し、入口差圧室11により搬送されてくる製品を順序に従って搬送装置37に搬送する。コーティングチャンバ12の後端は、複数本の平行な搬送装置をつけ、出口差圧室13の複数本の真空ラインに1対1で対応し、コーティング済みの製品を順序に従って搬送装置37から対応する出口差圧室13の真空ラインに搬送する。
【0128】
本実施例では、必要に応じて、入口差圧室11と出口差圧室13の生産能力に支持される前提で、コーティングチャンバ12の通路の長さを長くし、上部のターゲット材の数を増やして、搬送装置37のチェーン走行速度を上げることができ、これにより、加工効率を大幅に向上することができる。
【0129】
本実施例では、必要に応じてコーティング層の各種ターゲット材をフレキシブルに配置することができ、異なるコーティング層の成膜を実現し、異なる合金コーティング層の成膜を実現する。
【0130】
出口差圧室13について、前記入口差圧室11におけるバッフルプレート31と同じように、真空チャンバ間に設けられたバッフルプレート33が開閉可能であり、これにより、真空チャンバ間の連通または真空隔離を実現することができる。装置の稼働中に、各真空チャンバの両端のバッフルプレートは、一端のみの開放が許容され、すなわち、各真空チャンバの一端のバッフルプレートが開く直前または既に開かれた場合、他端のバッフルプレートが閉状態でなければならない。
【0131】
図3を参照して、装置が連続コーティングの動作状態にある場合、真空ライン毎の動作手順は以下の通りである。
【0132】
ステップA:バッフルプレート331を開け、コーティング済みの製品がコーティングチャンバ12から真空遷移チャンバ131に入り、搬送装置38に載置されることで真空遷移チャンバ131に進入し、バッフルプレート331を閉じる。
【0133】
ステップB:バッフルプレート332を開き、製品が真空遷移チャンバ132に入り、バッフルプレート332を閉じる。同時に、真空遷移チャンバ131を真空引きし、真空度がコーティングチャンバ12と同じ真空度に達した後、コーティングチャンバ12から製品を新たに受け取ることを準備する。
【0134】
ステップC:バッフルプレート333を開き、製品が真空遷移チャンバ133に入り、バッフルプレート333を閉じる。同時に、真空遷移チャンバ132を真空引きし、所定の真空度に達した後、真空遷移チャンバ131から製品を新たに受け取ることを準備する。
【0135】
ステップD:バッフルプレート334を開き、製品が真空遷移チャンバ134に入り、バッフルプレート334を閉じる。同時に、真空遷移チャンバ133を真空引きし、所定の真空度に達した後、真空遷移チャンバ132から製品を新たに受け取ることを準備する。
【0136】
ステップE:真空遷移チャンバ134を正常の大気圧まで放気した後、ドア34を開き、コーティング済みの製品を取り出し、ドア34を閉じて、真空遷移チャンバ134を所定の真空度まで真空引きし、真空遷移チャンバ133から製品を新たに受け取ることを準備する。ここまで、製品の送り出しが完了する。
【0137】
これにより、コーティングプロセス全体が完了する。
【0138】
そのうち、ある真空ラインが真空バッファ状態(真空引きしている時間内)にあるときに、当該真空ラインでの製品搬送を一時停止する。これとともに、それと並列に接続されたほかの真空ラインは、この期間内(真空ラインが真空バッファ状態となる時間帯内)に、コーティングチャンバ12から搬送された製品の受取を担当し(制御装置は、この真空ラインの真空度が要求に合わないことを検知すると、他の真空ラインを選択してコーティングチャンバ12から搬送された製品の受取を担当する)、並列に接続された数本の真空ラインが交互に稼働することによって、コーティングチャンバ12でのコーティング済みの製品を連続的に絶え間なく続けて送り出す。
【0139】
また、ある真空ラインにコーティングチャンバ12から搬送された製品を受け取る条件が備えられているとき(すなわち、当該1本の真空ラインにおける真空遷移チャンバ131に製品が無く、且つ真空度が既に所定の要求に達した)に、コーティングチャンバ12は別の1本の真空ラインへ製品を搬送していると、当該1本の真空ラインにおける製品は、静止状態を維持し、別の1本の真空ラインへの製品の搬送が完了した後、当該真空ラインのバッフルプレート331を開放して、コーティングチャンバ12から搬送された製品の受取を開始する。このような方式により、各真空ラインが密接に協働するとともに、搬送衝突が発生しないことを確保できる。
【0140】
これ以外、実際のニーズに応じて、真空遷移チャンバの数を増やし、真空バッファの時間を短縮し、加工効率を向上させることができ、例えば、真空遷移チャンバ134の前に一つまたは複数の真空遷移チャンバなどをさらに増やす。
【0141】
本適用例において、上述した手順でフィルターキャビティに膜層を堆積する。
【0142】
具体的には、まず、フィルタ製品は、入口差圧室11に入ることでコーティングチャンバ12に搬送される。
【0143】
ここで、搬送の具体的な過程について、上述した入口差圧室11の動作過程を参照して理解できる。
【0144】
次に、コーティングチャンバ12において、フィルタのキャビティに膜層を堆積させる。
【0145】
ここで、フィルターキャビティについて、コーティングチャンバ12の上部に装着されるターゲット材は、順にCrターゲット、Cuターゲット、Agターゲット(またはAg-Ta組合せターゲット、必要に応じて選択することができる)であり、搬送装置37のチェーンに引っ張って動かされたうえで、フィルタ製品にCr、Cu、Ag(またはAg-Ta合金、ターゲット材による)の三層のコーティング層を順次に堆積させ、そのうち、Crコーティング層が最も薄く、基材とコーティング層との移行機能を果たし、Cu層が比較的厚く、フィルタ表面における最も重要な導電層であり、フィルタ製品の最外層に薄いAg(またはAg-Ta合金)層を堆積させ、主に導電することと銅層が酸化されないようにすることを目的とする。
【0146】
そのうち、Ag-Ta組合せターゲットを用いる目的は、Ta含有量の低いAg-Ta合金コーティング層を得ることであり、良好な導電性を確保しつつ、フィルタ最外層のコーティング層の耐酸化性能を向上する。
【0147】
本実施例において、Ag-Ta組合せターゲットの製造方法は、数量が一定しない小塊状のTa材をAg板に均一に埋め込み、Ta材を埋め込んだAg板をターゲット材に加工し、例えば機械加工を行い、裏板を設置することで、最終的にAg-Ta組合せターゲットを得て、良好な導電性と一定の耐酸化性能を確保するために、フィルタ製品に必要なAg-Ta組合せターゲットにおけるAgとTaの表面積比の範囲が1:1~10:1であってもよく、得られたAg-Ta合金膜層におけるAgとTaの相対原子比の範囲が4:1~50:1であってもよい。
【0148】
そのうち、本実施例では、堆積されたフィルムにおける材料の分布が均一になるように、仕様が揃った塊状のTa材を用いることができる。
【0149】
塊状のTaの大きさは、必要に応じて設定されてもよい。
【0150】
前記均一に埋め込むとは、Ag板の単位面積内に、共に一つの塊状Ta材が埋め込まれることをいう。具体的には、一枚のAg板の表面(ターゲット材とした後、堆積過程においてフィルタ製品に向かう一面)をN枚に均一に分け、各枚ごとに一つのTa材を埋め込む。
【0151】
ここで、本実施例では、堆積させたフィルムにおける材料の分布を均一にすることができることを原則として、Nの値を設定している。Nは、2以上の整数である。
【0152】
前記表面積は、有効な動作面積であると理解することができるが、一般的に言えば、ターゲット材の表面が露出している面積と理解することができる。ここで、ターゲット材の表面が露出してるい面積とは、堆積過程においてターゲット材の、フィルタ製品に向かう一面の面積を指す。
【0153】
これ以外、コーティングチャンバ12の上部には、数量が一定しないCrターゲット、Cuターゲット、Agターゲット(またはAg-Ta組合せターゲット)の3種類のターゲットが順次装着されており、各種のターゲット材の間に間隔手段または特定の距離を設置しなく、これにより、フフィルタ製品が一種のターゲット材の放射範囲の末端まで搬送されると、隣接する第2種のターゲット材からの放射を受けて薄い合金層が形成され、例えば、フィルタ製品がGrターゲットの範囲領域から離れる直前に、次の領域のCuターゲットは、Cu原子をフィルタ製品に堆積させることができるので、薄いCr-Cu合金遷移層が形成され、二層のコーティング層間の結合力がより良くなる。
【0154】
本実施例では、組合せターゲットに対して異なる合金およびその合金比率を調整してもよい。
【0155】
上記ステップの前提で、各種類のターゲットのスパッタパワー、搬送装置37のチェーン走行速度を調整することにより、フィルターキャビティの表面に異なる厚さの複合導電膜層を得ており、Ag-Ta組合せターゲットにおけるAgとTaがスパッタする面積比を調整することにより、フィルタ表面における複合導電膜層の最外層にAgとTaの異なる原子割合のAg-Ta合金コーティング層を得る。具体的には、以下の通りである。
【0156】
(具体的な実施例1)
【0157】
上記紹介されたフィルタ製品の前処理案及びPVD連続コーティング手順に従って動作し、コーティングチャンバ12に、一定数のCrターゲット、Cuターゲット、Agターゲットが順次装着され、且つ、表1に示すように、各種類のターゲット材の放射範囲及び搬送装置37のチェーン走行速度などに応じてコーティングチャンバの各種パラメータを調整する。
表1
【0158】
表1に示すパラメータに従って、フィルターキャビティの表面に、Cu層の厚みが8μm、Ag層の厚みが1μmの複合導電膜層(Cr層は基体とコーティング層との遷移層に属し、厚みに要求しない)を得た。
【0159】
(具体的な実施例2)
【0160】
上記紹介されたフィルタ製品の前処理案及びPVD連続コーティング手順に従って動作し、コーティングチャンバ12に、一定数のCrターゲット、Cuターゲット、Ag-Ta組合せターゲットが順次装着され、そのうち、Ag-Ta組合せターゲットにおけるAgとTaは、スパッタする面積比が8:1であり、且つ、表2に示すように、各種類のターゲット材の放射範囲及び搬送装置37のチェーン走行速度などに応じてコーティングチャンバの各種パラメータを調整する。
表2
【0161】
表2に示すパラメータに従って、フィルターキャビティの表面に、Cu層の厚みが8μm、Ag-Ta合金コーティング層の厚みが0.9μmの複合導電膜層を得ており、そのうち、Ag-Ta合金コーティング層におけるAgとTaの原子百分率が40:1である(Cr層は基体とコーティング層との遷移層に属し、厚みに要求しない)。
【0162】
(具体的な実施例3)
【0163】
上記紹介されたフィルタ製品の前処理案及びPVD連続コーティング手順に従って動作し、コーティングチャンバ12に、一定数のCrターゲット、Cuターゲット、Ag-Ta組合せターゲットが順次装着され、そのうち、Ag-Ta組合せターゲットにおけるAgとTaは、スパッタする面積比が8:1であり、且つ、表3に示すように、各種類のターゲット材の放射範囲及び搬送装置37のチェーン走行速度などに応じてコーティングチャンバの各種パラメータを調整する。
表3
【0164】
表3に示すパラメータに従って、フィルターキャビティの表面に、Cu層の厚みが7μm、Ag-Ta合金コーティング層の厚みが1.1μmの複合導電膜層を得ており、そのうち、Ag-Ta合金コーティング層におけるAgとTaの原子百分率が20:1である(Cr層は基体とコーティング層との遷移層に属し、厚みに要求しない)。
【0165】
(具体的な実施例4)
【0166】
上記紹介されたフィルタ製品の前処理案及びPVD連続コーティング手順に従って動作し、コーティングチャンバ12に、一定数のCrターゲット、Cuターゲット、Ag-Ta組合せターゲットが順次装着され、そのうち、Ag-Ta組合せターゲットにおけるAgとTaは、スパッタする面積比が2:1であり、且つ、表4に示すように、各種類のターゲット材の放射範囲及び搬送装置37のチェーン走行速度などに応じてコーティングチャンバの各種パラメータを調整する。
表4
【0167】
表4に示すパラメータに従って、フィルターキャビティの表面に、Cu層の厚みが9μm、Ag-Ta合金コーティング層の厚みが1.2μmの複合導電膜層を得ており、そのうち、Ag-Ta合金コーティング層におけるAgとTaの原子百分率が10:1である(Cr層は基体とコーティング層との遷移層に属し、厚みに要求しない)。
【0168】
以上の説明から明らかなように、本願の実施例の場合、真空コーティング装置の入口差圧室と出口差圧室とは、複数本の真空ラインが並列に接続された構成とされることによって、堆積待ち製品を次から次へとコーティングチャンバへ搬送し、かつコーティングチャンバから送り出されたコーティング済みの製品を絶え間なく続けて受け取る。このようにして、真空バッファが連続真空コーティング効率向上のボトルネックとならないので、堆積プロセスの効率を大幅に向上させることができる。
【0169】
また、フィルターキャビティ製品について、本願の実施例では、コーティングチャンバの上方にAg-Ta組合せターゲットを用いてAg-Ta合金コーティング層を堆積し、金属同士で相互にインサート結合する簡単な製造方法によってAg-Ta組合せターゲットが製造され、従来の合金ターゲット材(溶解製錬や粉末冶金などのように、冶金方法によって合金を得てターゲット材を製造することは、製造難さが大きく、サイクルが長い)よりもターゲット材の製造難さが低下し、元素成分の調整柔軟性が高くなる。
【0170】
これ以外、フィルターキャビティ製品に対しては、Ag-Ta組合せターゲットを用いて高銀低タンタルのAg-Ta合金膜層を堆積して、フィルタの最外層のコーティング層とする。Ta自体は優れた耐酸化性能を有するので、従来の最外層がAg層である耐酸化性能に比べて、フィルタ表面で得られたAg-Ta合金コーティング層の耐酸化性能が向上した。
【0171】
コーティングチャンバにおいて、各種のターゲット材の間に間隔手段または特定の距離を設置しなく、これにより、フフィルタ製品が一種のターゲット材の放射範囲の末端まで搬送されると、隣接する第2種のターゲット材からの放射を受けて薄い合金層が形成され、2種類の異なるコーティング層の間の遷移層とするので、従来の無遷移層の結合方法よりも二層のコーティング層間の結合力が優れている。
【0172】
なお、図3は、入口差圧室に五つの真空チャンバが設けられ、出口差圧室に四つの真空チャンバが設けられた例を示す。しかしながら、本実施例では、実施形態がこれに限定されず、例えば、一つの実施例では、入口差圧室には四つまたは六つの真空チャンバ等が設けられ、出口差圧室には五つまたは六つの真空チャンバ等が設けられている。
【0173】
当業者にとって、上述した方法の全てまたは何らかの手順、システム、装置のプログラムモジュールまたはユニットは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、およびそれらの適宜の組み合わせとして実現されることが理解できる。ハードウエア実施形態において、上記に言及された機能ブロック又はユニット間の区分けは、必ずしも物理コンポーネントの区分けに対応していない。例えば、1つの物理コンポーネントは複数の機能を有してもよく、または、1つの機能又はステップは複数の物理コンポーネントが協働して実行されてもよい。一部のコンポーネント又は全てのコンポーネントは、例えば、デジタル信号処理またはマイクロプロセッサなどのプロセッサで実行されるソフトウェア、又はハードウェアとして実現されてもよいし、専用の集積回路などの集積回路として実現されてもよい。このようなソフトウェアは、コンピュータ読み取り可能な媒体に分布されることができ、コンピュータ読み取り可能な媒体は、コンピュータ記憶媒体(または非一時的媒体)および通信媒体(または一時的媒体)を含むことができる。当業者にとって周知のように、用語コンピュータ記憶媒体は、情報(コンピュータ読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュール又はその他のデータなど)を記憶するためのいかなる方法または技術で実施される揮発性及び不揮発性、リムーバブル又は非リムーバブルメディアを含む。コンピュータ記憶媒体には、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、その他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多機能ディスク(DVD)、その他の光ディスク格納装置、マガジン、磁気テープ、ディスク格納装置、その他の磁気格納装置、又は所望の情報を格納しかつコンピュータにアクセス可能な任意のその他のメディアが含まれるが、これらに限らない。また、当業者にとって周知のように、通信媒体は通常、コンピュータ読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュール、または、キャリアやその他の送信機構などの変調データ信号における他のデータを含み、かつ任意の情報配信媒体を含むことができる。
【0174】
また、本願の実施例に記載の技術案同士は、衝突しない場合に任意に組み合わせることができる。
【0175】
上述したのは、本願の好ましい実施例のみであり、本願の保護範囲を限定するものではない。
図1
図2
図3