IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 河西工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用天井材及びその製造方法 図1
  • 特許-車両用天井材及びその製造方法 図2
  • 特許-車両用天井材及びその製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】車両用天井材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20220812BHJP
   B32B 3/14 20060101ALI20220812BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
B60R13/02 A
B32B3/14
B32B5/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021528824
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2019025809
(87)【国際公開番号】W WO2020261532
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】野村 大樹
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-71533(JP,A)
【文献】特開平11-188796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B32B 3/14
B32B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の車室内側に設けられ車室内の天井面を形成する表皮層と、前記基材の裏面側に設けられたフィルム層である裏面層と、前記基材及び前記表皮層の間の第1接着層と、前記基材及び前記裏面層の間の第2接着層とを有する車両用天井材であって、
前記裏面層と前記第2接着層との間に、繊維で形成されると共に前記裏面層に対して部分的に設けられた繊維体層を有し、
前記裏面層は、前記繊維体層上に該当する一部分が切り取られている
車両用天井材。
【請求項2】
前記繊維体層と前記第2接着層との間には、通気止め機能を有する第2フィルム層をさらに備え、
前記第2フィルム層は、前記裏面層が切り取られた部分に対応して設けられている
請求項1に記載の車両用天井材。
【請求項3】
車室内の天井面を形成する表皮層と、接着機能を有する第1接着層と、基材と、接着機能を有する第2接着層と、フィルム層である裏面層とをこの順で積層すると共に、繊維で形成されると共に前記裏面層に対して部分的に設けられた繊維体層を前記裏面層と前記第2接着層との間に介在させて一体化する第1工程と、
前記第1工程にて一体化された一体物の前記裏面層のうち前記繊維体層上の部位を前記繊維体層以下の面積で切り取る第2工程と、を有する
車両用天井材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用天井材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも基材と、表皮層と、裏面層とを有し、車両のルーフ部に設けられる車両用天井材が知られている。車両用天井材は、裏面層上にブラケットが取り付けられ、ブラケットを介して車両天井パネルに対して取り付けられる。このような車両用天井材には、不織布などの繊維体を裏面層として備えるものがある。また、車両用天井材には、例えば遮熱天井のようにフィルム層(例えば金属蒸着フィルム)を裏面層として備えるものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-47070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の車両用天井材は、フィルム層を裏面層として備えることから繊維体を裏面層とする場合と比較すると裏面層にブラケットを取り付け難くなってしまう。このため、裏面層にブラケットを取り付けるためには、反応系ホットメルトを用いると共にブラケットをABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂製とする必要があるが、反応系ホットメルトは、オレフィン系ホットメルトと比較すると管理面で大きな手間を要すると共にコスト面で不利となってしまう。また、ABS樹脂についてもPP(Polypropylene)と比較するとコスト面で不利である。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルム層を裏面層として備える場合において、コスト面で有利であると共に、管理面で多大な手間を有するホットメルト接着剤を使用する必要がなくブラケットを良好に取り付けることができる車両用天井材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、第1の発明は、基材と、表皮層と、フィルム層である裏面層と、第1接着層と、第2接着層とを有する車両用天井材であって、裏面層と第2接着層との間に、繊維で形成されると共に裏面層に対して部分的に設けられた繊維体層を有し、裏面層は、繊維体層上に該当する一部分が切り取られている。
【0007】
また、かかる課題を解決するために、第2の発明は、表皮層と、第1接着層と、基材と、第2接着層と、フィルム層である裏面層とをこの順で積層すると共に、繊維で形成されると共に裏面層に対して部分的に設けられた繊維体層を裏面層と第2接着層との間に介在させて一体化する第1工程と、第1工程にて一体化された一体物の裏面層のうち繊維体層上の部位を繊維体層以下の面積で切り取る第2工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コスト面で有利であると共に、管理面で多大な手間を有するホットメルト接着剤を使用する必要がなくブラケットを良好に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る車両用天井材を示す断面図である。
図2図2は、図1に示した車両用天井材の斜視図であり、裏面層側からの斜視状態を示している。
図3図3は、本実施形態に係る車両用天井材の製造方法を示す工程図であり、(a)は積層工程を示し、(b)はホットプレス工程を示し、(c)は切取工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る車両用天井材を示す断面図である。本実施形態に係る車両用天井材1は、車両のルーフ部に設けられるものであって、車両天井パネルの車室内側に取り付けられるものである。この車両用天井材1は、基材10と、表皮層12と、裏面層14と、第1接着層16と、第2接着層18とを備えている。
【0012】
基材10は、例えば半硬質ウレタンフォーム等の発泡材料によって構成されている。表皮層12は、基材10の車室内側に設けられ車室内の天井面を形成するものである。裏面層14は、基材10の裏面側(車両の天井パネル側)に設けられたフィルム層である。この裏面層14は、例えばPET(Polyethylene Terephthalate)等の樹脂フィルムにアルミニウム等の金属が蒸着された金属蒸着フィルムによって構成されている。また、裏面層14は、金属蒸着フィルムに、アルミニウム等の金属の酸化を抑制する無機物系(例えばシリカ系)の酸化防止コートが設けられたものであってもよい。このような裏面層14は、天井パネル側が樹脂フィルム又は酸化防止コートとされている。
【0013】
第1接着層16は、基材10及び表皮層12の間に設けられ、これらを接着する接着機能を有するものである。第2接着層18は、基材10及び裏面層14の間に設けられ、これらを接着する接着機能を有するものである。このような第1及び第2接着層16,18は、イソシアネートを塗布・含侵したガラス繊維によって構成されている。接着に際しては、アミンを希釈した水をスプレー等によって接着面に塗布しておく。これにより、第1及び第2接着層16,18は、イソシアネートと反応してウレアを生成し結合を生じさせることとなる。
【0014】
ここで、このような車両用天井材1については、裏面層14側にホットメルト接着剤等を介してブラケットが取り付けられる。ブラケットは、天井パネルに対して接続される。これにより、車両用天井材1は、天井パネルに対して取り付けられる。
【0015】
しかし、フィルム層を裏面層14に備える車両用天井材1については、繊維体を裏面層とするものと比較するとブラケットを取り付け難くなってしまう。
【0016】
詳細に説明すると、繊維体を裏面層とする車両用天井材については、接着後に環境変化によってホットメルトの寸法が変化しても繊維体が寸法変化を吸収でき、無理な応力が発生し難い。このため、ホットメルト接着剤にはオレフィン系ホットメルトで充分であり、ブラケットについてもコスト面で有利なPP製とすることができる。
【0017】
一方、遮熱天井のように裏面層14に金属蒸着等されたフィルム層を備える場合には、フィルム層が繊維体のように寸法変化を吸収できず無理な応力が発生してホットメルトとフィルム層(裏面層14)との間で界面剥離が生じ易くなってしまう。このため、より強力な接着力を有する反応系ホットメルトを用いるしかなく、ブラケットについても反応系ホットメルトに対して好適なABS樹脂にて作製することとなってしまう。
【0018】
ここで、反応系ホットメルトは、空気中の湿気によって硬化してしまう。このため、反応系ホットメルトを塗布する塗布装置については、非使用時に反応系ホットメルトが硬化してその後の使用に支障をきたさないように、使用完了時に反応系ホットメルトを洗い流す必要がある。また、反応系ホットメルトは硬化時には強力な接着力を有するものの、硬化までに時間が長く、その間にブラケットと反応系ホットメルトとの接触状態を維持する必要がある。このため、ブラケットにテープを貼り付けて反応系ホットメルトとの接触状態を維持する等の工程が必要となってしまう。さらに、反応系ホットメルトは、空気中の湿気によって硬化してしまうことから長期保存できず、一定期間ごとに破棄する必要もある。
【0019】
そこで、本実施形態に係る車両用天井材1は、裏面層14と第2接着層18との間に繊維体層20を備えている。繊維体層20は、スパンレースやスパンボンドの不織布又は織布等の繊維で形成される部材であって、裏面層14に対して部分的に設けられている。加えて、裏面層14は、繊維体層20上に該当する一部分が(繊維体層20以下の面積で)切り取られている。このため、本実施形態に係る車両用天井材1は、裏面層14がフィルム層によって構成されているものの、一部が切り取られて繊維体層20が露出する構成となる。
【0020】
また、繊維体層20と第2接着層18との間には、通気止め機能を有する第2フィルム層22をさらに備えている。第2フィルム層22は、裏面層14が切り取られた部分(切取開口部14a)に対応して設けられている。
【0021】
図2は、図1に示した車両用天井材1の斜視図であり、裏面層14側からの斜視状態を示している。図2に示すように、裏面層14は、繊維体層20の設置位置(破線参照)上、且つ、繊維体層20よりも小さい面積で切り取られ、切取開口部14aが形成されている。この結果、切取開口部14aからは繊維体層20のみが露出した状態となる。
【0022】
このような車両用天井材1にあっては、切取開口部14aから露出した繊維体層20上にホットメルト接着剤を介してブラケットBKを取り付けることができる。特に、ブラケットBKは繊維体層20上に設けられることから、反応系ホットメルト接着剤を用いる必要がなく、且つ、ブラケットBKについてもABS樹脂とする必要が無い。
【0023】
加えて、繊維体層20の表面側(下層)には図1に示すように第2フィルム層22が設けられており、且つ、第2フィルム層22は、切取開口部14aをカバーするように設けられている。このため、裏面層14の切り取りによる通気止め機能の低下を抑えることができる。
【0024】
ここで、本実施形態に係る車両用天井材1は、図1及び図2に示すように、繊維体層20の面積と第2フィルム層22との面積が一致しているが、これに限らず、特に一致していなくともよい。特に、第2フィルム層22の面積は繊維体層20の面積より小さくても、切取開口部14aをカバーしていればよい。さらに、第2フィルム層22の面積が繊維体層20の面積より大きくてもよい。
【0025】
図3は、本実施形態に係る車両用天井材1の製造方法を示す工程図であり、(a)は積層工程を示し、(b)はホットプレス工程を示し、(c)は切取工程を示している。
【0026】
まず、図3(a)に示すように、積層工程では、表裏に第1接着層16及び第2接着層18を形成した基材10の表面側に表皮層12を積層すると共に、基材10の裏面側に裏面層14を積層する。さらに、基材10と裏面層14との間には部分的に繊維体層20及び第2フィルム層22を介在させる。なお、基材10の表裏には、アミンを希釈した水をスプレー等によって塗布されており、この塗布面に対してイソシアネートを塗布・含侵したガラス繊維が設けられることで形成されている。
【0027】
次いで、図3(b)に示すように、ホットプレス工程(第1工程)では、図3(a)に示すようにして積層された積層体にホットプレスを行う。この工程において、基材10の表裏に塗布された水が蒸発し、水蒸気とアミンとがイソシアネートを塗布・含侵したガラス繊維の全体に行きわたることとなる。この結果、イソシアネートは、湿気、アミン、及び熱により急速に硬化して接着効果を発揮する。
【0028】
次いで、図3(c)に示すように、切取工程(第2工程)では、図3(b)に示すようにして得られたプレス積層体のうち裏面層14の一部分をレーザー又は切断刃によって切り取る。このとき、切り取られる部位は、裏面層14のうち繊維体層20上の部位であり、且つ、繊維体層20の面積よりも小さい面積とされる。
【0029】
以上により、略全体的にフィルム層によって構成される裏面層14を有するものの、ブラケットの取付部に関しては繊維体層20を有する車両用天井材1を製造することができる。なお、上記においては、図3(b)に示すようにホットプレス工程を行っているが、これに限らず、例えば単に第1及び第2接着層16,18が接着剤によって構成されて、各層が貼り付けられるようになっていてもよい。
【0030】
このようにして、本実施形態に係る車両用天井材1によれば、裏面層14と第2接着層18との間に、繊維で形成されると共に裏面層14に対して部分的に設けられた繊維体層20を有し、裏面層14は、繊維体層20上の一部分が切り取られている。このため、フィルム層を裏面層14として備える場合であっても、一部については繊維体層20が露出することとなり、この部分に例えばオレフィン系ホットメルト等を用いてブラケットBKを取り付けることができる。従って、フィルム層を裏面層14として備える場合において、コスト面で有利であると共に、管理面で多大な手間を有するホットメルト接着剤を使用する必要がなくブラケットBKを良好に取り付けることができる。
【0031】
また、通気止め機能を有する第2フィルム層22をさらに備え、第2フィルム層22は、少なくとも裏面層14が切り取られた部分に対応して設けられている。このため、裏面層14が切り取られて裏面層14による通気止めが行えなくなる部位には、第2フィルム層22が設けられることとなり、裏面層14の切り取りによる通気止め機能の低下を抑えることができる。
【0032】
さらに、本実施形態に係る車両用天井材1の製造方法によれば、表皮層12と、第1接着層16と、基材10と、第2接着層18と、裏面層14とをこの順で積層すると共に、繊維で形成されると共に裏面層14に対して部分的に設けられた繊維体層20を裏面層14と第2接着層18との間に介在させて一体化し、一体化した一体物の裏面層14のうち繊維体層20上に該当する一部分を切り取る第2工程と、を有する。このため、フィルム層を裏面層14として備える場合であっても、一部については繊維体層20が露出した車両用天井材1とすることができる。従って、フィルム層を裏面層14として備える場合において、コスト面で有利であると共に、管理面で多大な手間を有するホットメルト接着剤を使用する必要がなくブラケットBKを良好に取り付けることができる車両用天井材1を提供することができる。
【0033】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能であれば公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。例えば上記実施形態においては通気止めを考慮して第2フィルム層22を設けているが、特にこれに限らず、通気止めの要求がない場合等、車両用天井材1は第2フィルム層22を備えていなくともよい。
【0034】
さらに、上記実施形態においては、繊維体層20にブラケットBKを取り付ける場合を説明した。しかし、これに限らず、繊維体層20上にはブラケットが取り付けられなくともよい。例えば、金属蒸着フィルム等の金属を含む部材を裏面層14に用いた場合には、裏面層14上にアンテナを配置するときにアンテナの受信感度に影響を与えてしまうことがある。このような場合、裏面層14を部分的に切り取って繊維体層20上にアンテナを配置することで受信感度への影響を抑えることができる。また、アンテナの受信感度の影響を抑えたい場合には、界面剥離を抑える必要がないことから、繊維体層20に代えて、例えば厚紙や樹脂等のように金属でない部材が設けられていてもよい。繊維体層20に代えて他の金属でない部材を用いる場合には、この部材自体が通気止め機能を有するものであることが好ましい。
【符号の説明】
【0035】
1 :車両用天井材
10 :基材
12 :表皮層
14 :裏面層
14a :切取開口部
16 :第1接着層
18 :第2接着層
20 :繊維体層
22 :第2フィルム層
BK :ブラケット
図1
図2
図3