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特許7122480焼結合金製バルブガイド、及び焼結合金製バルブガイドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】焼結合金製バルブガイド、及び焼結合金製バルブガイドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01L 3/08 20060101AFI20220812BHJP
   B22F 5/00 20060101ALI20220812BHJP
   B22F 3/26 20060101ALI20220812BHJP
   B22F 3/11 20060101ALI20220812BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20220812BHJP
   C22C 1/08 20060101ALI20220812BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20220812BHJP
【FI】
F01L3/08 A
B22F5/00 Z
B22F3/26 G
B22F3/11 A
B22F3/24 E
C22C1/08 F
C22C38/00 304
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021555239
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2021016775
【審査請求日】2021-09-30
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 史也
(72)【発明者】
【氏名】原 松太郎
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-232619(JP,A)
【文献】特表2017-508909(JP,A)
【文献】特開2006-052468(JP,A)
【文献】実開昭54-173117(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102009052302(DE,A1)
【文献】英国特許出願公告第00780073(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油が含侵されたバルブガイドの長さ方向において燃焼室側に配置される側の外周表面の空孔が封孔されている、焼結合金製バルブガイドであって、単一の材料で形成され、且つ
前記バルブガイドは、その断面を観察し、該断面において空孔が封孔された前記外周面に該当する部分のうち、長さ30mmの範囲において、深さ20μm以上かつ外周面に開口した長さが20μm以上である空孔の数が18個以下である、バルブガイド。
【請求項2】
前記バルブガイド外周表面は、全面にわたり空孔が封孔されている、請求項1に記載のバルブガイド。
【請求項3】
前記バルブガイドの端面表面のうち、少なくとも燃焼室側に配置される端面表面の空孔が封孔されている、請求項1又は2に記載のバルブガイド。
【請求項4】
潤滑油が含侵される前のバルブガイドの密度が6.55g/cm3~7.15g/cm3である、請求項1~のいずれか1項に記載の、バルブガイド。
【請求項5】
原料粉末を成型して成型体を得る成型工程と、
前記成型体を焼結する焼結工程と、
前記工程で得た焼結体に、潤滑油を含侵させる含侵工程と、
潤滑油が含侵された焼結体の外周表面の空孔に封孔処理を行う封孔処理工程と、
を含む焼結合金製バルブガイドの製造方法であって、
前記バルブガイドは、その断面を観察し、該断面において空孔が封孔された前記外周面に該当する部分のうち、長さ30mmの範囲において、深さ20μm以上かつ外周面に開口した長さが20μm以上である空孔の数が18個以下であり、
前記バルブガイド外周表面は、長さ方向において燃焼室側に配置される側の空孔が封孔されている、製造方法。
【請求項6】
前記含侵工程は、減圧下で焼結体に潤滑油を含侵させる、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記バルブガイド外周表面は、全面にわたり空孔が封孔されている、請求項又はに記載の製造方法。
【請求項8】
前記バルブガイドの端面表面のうち、燃焼室側に配置される端面表面の空孔が封孔されている、請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記封孔処理工程は、ショットブラスト処理、バニシングによるつぶし加工処理、樹脂含侵加工処理、めっき処理、及び水蒸気処理、から選択される1種を含む、請求項のいずれか1項に記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に用いる焼結合金製バルブガイド、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車用ガソリンエンジンにおいては、低燃費、低エミッション、高出力を指向し、ダウンサイジング、直噴高過給などの様々な技術の組合せにより燃焼効率の改善が図られている。燃焼効率の改善は各種損失を低減することであり、特に損失割合の大きい排気損失が注目され、その低減技術として高圧縮化が試みられている。
【0003】
一方で、高圧縮化は必然的にエンジン温度の上昇をもたらし、特に周辺温度が高温となる排気側バルブ周辺では、バルブとの凝着防止のためにバルブガイドに含浸されている潤滑油が排気ガス側に染み出して白煙になり、含侵されている潤滑油の量が減少する。そのため、潤滑が不十分になりバルブ凝着が発生する。
【0004】
このような課題に対し、特許文献1には、焼結合金の密度、粉末粒子径を調整し特定範囲の通気度とし、気孔にシリコーン樹脂を含浸することにより、耐摩耗性と耐焼付き性に優れ含浸潤滑油の流出が少ない焼結合金製の内燃機関用バルブガイドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3573817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1で提案された方法では、高温下環境で潤滑油の量が減少した場合、バルブ凝着が発生して異常摩耗が発生する場合があった。本発明は、高温下環境であってもバルブ凝着を防止し得る、焼結合金製バルブガイドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、高温下に晒された場合であっても潤滑油を保持できる手段について検討を重ね、バルブガイドが潤滑油を保持した状態でバルブガイドの外周表面の空孔に封孔処理を施すことで上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
本発明の一形態は、潤滑油が含侵されたバルブガイド外周表面の空孔が封孔されている、焼結合金製バルブガイドである。
【0009】
また、前記バルブガイド外周表面は、全面にわたり空孔が封孔されていることが好ましく、長さ方向において燃焼室側に配置される側の空孔が封孔されていることが好ましく、前記バルブガイドの端面表面のうち、燃焼室側に配置される端面表面の空孔が封孔されていることが好ましい。
【0010】
また、前記バルブガイドの断面を観察し、該断面において空孔が封孔された前記外周面に該当する部分のうち長さ30mmの範囲において、深さ20μm以上かつ外周面に開口した長さが20μm以上である空孔の数が18個以下であることが好ましい。
【0011】
また、潤滑油が含侵される前のバルブガイドの密度が6.55g/cm~7.15g/cmであることが好ましい。
【0012】
本発明の別の形態は、原料粉末を成型して成型体を得る成型工程と、前記成型体を焼結する焼結工程と、前記工程で得た焼結体に、潤滑油を含侵させる含侵工程と、潤滑油が含侵された焼結体の外周表面の空孔に封孔処理を行う封孔処理工程と、を含む焼結合金製バルブガイドの製造方法である。
【0013】
前記含侵工程は、減圧下で焼結体に潤滑油を含侵させることが好ましい。
また、前記バルブガイド外周表面は、全面にわたり空孔が封孔されていることが好ましく、長さ方向において燃焼室側に配置される側の空孔が封孔されていることが好ましく、前記バルブガイドの端面表面のうち、燃焼室側に配置される端面表面の空孔が封孔されていることが好ましい。
【0014】
前記封孔処理工程は、ショットブラスト処理、バニシングによるつぶし加工処理、樹脂含侵加工処理、めっき処理、水蒸気処理のうちいずれかを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、高温下環境であってもバルブ凝着を防止し得る、焼結合金製バルブガイドを提供することができる。バルブ凝着に起因するバルブガイド内周面の異常摩耗を防止できることから、高耐摩耗性のバルブガイドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来例の外周面付近の断面形状写真である(図面代用写真)。
図2】実施例の外周面付近の断面形状写真である(図面代用写真)。
図3】従来例と実施例の加熱時間と含油率との関係を示すグラフである。
図4】従来例と実施例の加熱後含油率と摩耗量との関係を示すグラフである。
図5】従来例と実施例の開口空孔数と加熱後含油率との関係を示すグラフである。
図6】従来例と実施例の開口空孔数と摩耗量との関係を示すグラフである。
図7】バルブガイド単体摩耗試験機の構造を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態は、潤滑油が含侵された前記バルブガイド外周表面の空孔が封孔されている焼結合金製バルブガイドである。
本実施形態に係るバルブガイドは、鉄基焼結合金であることが好ましく、鉄基焼結合金である場合には、主成分として含有するFeに加えて、Cu、Ca、Zn、Ni、Cr、V、Wなどのその他の金属成分を含有させてもよい。主成分であるFeは、バルブガイド中に通常50質量%以上含有され、60質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよい。Fe以外の、その他の金属成分は、バルブガイドに通常50質量%未満含有され、30質量%以下であってよく、20質量%以下であってよい、
【0018】
バルブガイドにその他の金属成分を含有する場合、Cuを含有することが好ましく、通常Cuの含有量が5質量%以上であり、10質量%以上であってよく、また通常40質量%以下であり、30質量%以下であってよい。
但し、本実施形態に係るバルブガイドは、上記に述べた組成にとどまらず、外周表面に空孔を有する焼結合金であればよい。また、鉄基焼結合金にとどまらず、主成分としてCuを含有するCu基焼結合金であってもよい。
また、潤滑油を含侵させることができれば、焼結合金にとどまらず、合金材料であってもよい。
【0019】
バルブガイドはまた、固体潤滑剤や、離型剤を含有していてもよい。固体潤滑剤としては、公知の固体潤滑剤を用いることができ、例えばMoSなどが例示される。離型剤としては、公知の離型剤を用いることができ、例えばステアリン酸亜鉛などが例示される。バルブガイドが、固体潤滑剤や、離型剤を含有する場合、その含有量は通常0.05質量%以上であり、また通常5質量%以下であり、3質量%以下であることが好ましい。
【0020】
バルブガイドは外周表面に空孔を有する。バルブガイドは一般的に円筒形状であり、外周表面、端面表面、内周表面、を有する。本実施形態では、少なくともバルブガイドの外周表面に空孔を有する。
【0021】
本実施形態では、バルブガイドには潤滑油が含侵される。潤滑油が含有される前のバルブガイドの密度は特段限定されないが、6.55g/cm以上7.15g/cm以下であることが好ましい。バルブガイドの密度が上記範囲であることで、バルブガイドの空孔が適切な量となりやすい。
バルブガイドの密度を上記範囲にする方法としては、バルブガイドの原料粉末成型時の原料プレスの圧力を適宜調整すること、原料粉末の粒径を適宜選択すること、などがあげられる。
【0022】
潤滑油が含侵される前のバルブガイドの空孔を適正な水準とすることで、高温環境下であってもバルブガイドが十分な量の潤滑油を保持できる。その結果、高温下環境であってもバルブ凝着を防止し得る、焼結合金製バルブガイドを提供することができる。また、バルブ凝着に起因するバルブガイド内周面の異常摩耗を防止できることから、高耐摩耗性のバルブガイドを提供できる。
【0023】
本実施形態のバルブガイドに含侵させる潤滑油は、特段限定されず、バルブガイドに保持され得る潤滑油であれば特に限定されない。潤滑油としては、例えば15W-40、10W-30、0W-20などがあげられる。
潤滑油の粘度は特に限定されないが、潤滑油の保持能力を向上させる観点からは、潤滑油は粘度がある程度高いことが好ましい。
【0024】
潤滑油が含侵された本実施形態のバルブガイドは、バルブガイド外周表面の空孔が封孔されている。封孔されているとは、バルブガイド外周表面が封孔処理されることにより、封孔されていない状態と比較して空孔の開口数が低減されていることをいう。空孔の開口数(以下、開口空孔数ともいう)については、以下の方法により測定することができる。
バルブガイドの軸方向に平行な平面の断面形状を光学顕微鏡で観察し、該断面において、バルブガイドの外周面であって表面が封孔処理された部分について、30mmの長さを観察する。30mmの長さは、連続した1箇所でもよく、連続しない数カ所の合計長さでもよい。外周面であって表面が封孔処理された部分に開口した空孔のうち、深さ20μm以上かつ外周面に開口した長さが20μm以上である空孔の数をカウントし、これを開口空孔数とする。
潤滑油を含浸し、封孔処理されたバルブガイドの、外周表面の開口空孔数は30mm当り18個以下であることが好ましく、15個以下であることがより好ましく、10個以下であることが特に好ましい。なお、バルブガイド外周表面のうち、表面が封孔処理された部分の少なくとも1か所の任意の位置において、上記空孔の開口数を満たせばよく、かならずしも封孔処理された部分全体において上記空孔の開孔数を満たす必要はないが、封孔処理された部分全体において上記空孔の開孔数を満たすことが好ましい。
【0025】
潤滑油が含侵されたバルブガイド外周表面は、バルブガイド外周表面の全面にわたり封孔処理されていてもよく、その一部が封孔処理されていてもよい。
また、バルブガイド外周表面の一部が封孔処理される場合、バルブガイドの長さ方向において、燃焼室側に配置される側の外周表面の空孔が封孔されていてもよく、具体的には、封孔処理されている箇所と封孔処理されていない箇所の境界が、バルブガイドの長さ方向において、燃焼室側に配置される側から4%以上30%以下の範囲にあることが好ましい。
また、バルブガイド端面表面の空孔は封孔処理されていてもよく、封孔処理されていなくてもよい。バルブガイド端面表面の空孔が封孔処理されている場合には、少なくとも燃焼室側に配置される側の端面表面の空孔が封孔されていることが好ましい。
【0026】
次に、潤滑油が含侵されたバルブガイドの製造方法について以下説明する。
本発明の別の形態は、原料粉末を成型して成型体を得る成型工程と、前記成型体を焼結する焼結工程と、前記工程で得た焼結体に潤滑油を含侵させる含侵工程と、潤滑油が含侵された焼結体の表面の空孔に封孔処理を行う封孔処理工程と、を含む焼結合金製バルブガイドの製造方法である。
【0027】
<成型工程>
成型工程で用いる原料粉末は、焼結体が例えば鉄基焼結合金である場合、コアとなる純Fe粉末に加え、Cu粉末、Fe合金粉末、Cu合金粉末などを用いることができる。更には、Ca、Zn、Ni、Cr、V、Wを含む粉末などを用いてもよく、固体潤滑剤や離型剤を用いてもよい。
これらの粉末の混合割合は、バルブガイドとして使用できる焼結体となる範囲である限り特に限定されない。
【0028】
原料粉末の平均粒子径は特に限定されないが、通常10~150μm程度であり、平均粒子径が上記範囲の原料粉末を用いることで、焼結体の密度を適切な範囲としやすくなり、好ましい。
成型の方法も特には限定されず、例えば原料粉末を金型に充填し、プレス成型などの方法で、成型体の密度が適切な範囲となるように成型すればよい。
【0029】
<焼結工程>
焼結工程では、上記成型体を焼結する。焼結温度は原料粉末を焼結して焼結体とできれば特段限定されず、例えば1102~1152℃である。焼結時の雰囲気は真空、または窒素ガスやアルゴンガスなどの不活化ガス雰囲気であることが好ましい。
焼結時間は特に限定されず、例えば10分~2時間、好ましくは15分~1時間である。
【0030】
<含侵工程>
含侵工程では、前記工程で得た焼結体に潤滑油を含侵させる工程である。含侵させる潤滑油は、バルブガイドに保持され得る潤滑油であれば特に限定されない。潤滑油としては、例えば10W-30があげられる。
潤滑油の粘度は特に限定されないが、150℃での粘度が2.6cp以上3.6cp以下であってよい。潤滑油の保持能力を向上させる観点からは、潤滑油は粘度がある程度高いことが好ましい。
バルブガイドに潤滑油を含侵させる方法は特に限定されず、潤滑油にバルブガイドをディプしてもよく、バルブガイドに潤滑油を滴下してもよい。一例としては、減圧下で潤滑油を滴下し、密閉状態を維持しながら含侵し、減圧を解除する方法があげられる。
【0031】
<封孔処理工程>
封孔処理は、潤滑油が含侵された焼結体の外周表面の空孔に封孔処理を行う工程である。封孔処理工程を行うことで、バルブガイド外周表面の空孔の開口率が低下し、バルブガイドが高温環境下であっても十分な量の潤滑油を保持できる。その結果、高温下環境であってもバルブ凝着を防止し得る、焼結合金製バルブガイドを提供することができる。また、バルブ凝着に起因するバルブガイド内周面の異常摩耗を防止できることから、高耐摩耗性のバルブガイドを提供できる。
【0032】
封孔処理は、バルブガイド外周表面の空孔の開口率(開口空孔数)を低下できる処理であれば特に限定されない。例えばショットブラスト処理、バニシングによるつぶし加工処理、樹脂含侵加工処理、めっき処理、水蒸気処理、などがあげられる。
ショットブラスト処理により封孔処理を行う場合、例えばスチール、またはジルコン製のショット玉で数秒~数分ブラスト処理することが好ましい。
バニシングによるつぶし加工処理により封孔処理を行う場合、例えばローラ式バニシング加工によりバルブガイド表面を加工することが好ましい。
樹脂含侵加工処理により封孔処理を行う場合、例えばテフロン(登録商標)樹脂などの耐油性・耐摩耗性をもった樹脂を含侵することが好ましい。
めっき処理により封孔処理を行う場合、例えばバルブガイド外周面の銅めっきにより封孔することが好ましい。
水蒸気処理により封孔処理を行う場合、例えば含浸後に水蒸気処理によって、形成される四三酸化鉄(Fe)を主体とする酸化鉄で封孔処理することが好ましい。具体的には、実全昭54-173117号を参照できる。
【0033】
本実施形態では、上記工程以外の工程(その他の工程)を適宜含んでもよい。その他の工程としては、外周表面研磨等があげられる。
【実施例
【0034】
以下、本発明について、実験例により詳細に説明するが、本発明は以下の実験例の結果によって、限定されるものではない。
<封孔処理によるバルブガイドの含油率変化>
原料粉末として以下のものを用いた。
・Fe粉末(平均粒径106 - 150μm)
・Cu粉末(平均粒径45μm以下)
・C粉末(平均粒径50μm以下)
・その他粉末(固体潤滑剤、離型剤等)
これらの粉末を混合し、加圧圧縮することで、外径10.5mm、内径5.0mm、長さ45.5mmの円管形状の成型体を得た。このときの成型体の密度は6.85g/cmであった。次に、この成型体を窒素ガス雰囲気中にて1127℃で30分間焼結することで、焼結体を得た。そして、この焼結体を切削加工することで、外径10.3mm、内径5.5mm、長さ43.5mmのバルブガイド1を得た。
【0035】
バルブガイド1に対し、粘度10W-30のエンジンオイルに含侵した。含侵の条件は以下のとおりである。
・油温80℃
・真空度は0.06から0.1MPaの範囲で調整した。
・真空引き時間と含油時間は、それぞれ5分から20分の範囲で調整した。
次に、潤滑油が含侵されたバルブガイド1の外周表面及び端面に対して以下の条件でショットブラスト処理による封孔処理を行い、バルブガイド2を得た。
・機器:不二製作所製
・ショットブラスト時間15秒
バルブガイド1の軸方向に平行な断面の外周面に存在する開口空孔部を図1に示す。また、バルブガイド2の軸方向に平行な断面の外周面に存在する開口空孔部を図2に示す。
【0036】
バルブガイド1(従来例)とバルブガイド2(実施例)に対し、200℃±10℃で加熱試験を行い、加熱時間による含油率の変化を確認した。結果は図3に示す。
図3から、含油率は加熱時間が経過するにつれて低下し、封孔処理を行ったバルブガイド2は、加熱時間経過に対する含油率の減少幅が抑制されていることがわかった。
【0037】
<封孔処理によるバルブガイド内周面摩耗量の変化>
バルブガイド1と2に対し、上記の温度で加熱を行い、加熱時間を変えて、加熱後含油率を変えたサンプルを5点作製し、以下の条件で、単体摩耗試験を行った。結果を図4に示す。
・試験機:試験機の構造図を図7に示す。
・ガイド温度:300℃
・側圧:7kg
・回転数:3500rpm
・オイル滴下(劣化油)量は、適宜調整した。
・試験時間:4時間
図4の結果より、加熱後含油率が高いほど、摩耗量は少ない事がわかった。したがって、潤滑油が含侵されたバルブガイドに封孔処理を行うことで、バルブガイドの保油性能が向上し、結果としてバルブガイド内周面の摩耗量が減少することがわかった。
【0038】
<開口空孔数と加熱後含油率の関係>
バルブガイド1に対し、封孔処理の条件を変えて、開口空孔数を変えたバルブガイド2のサンプルを作成した。封孔処理はショットブラストで行い、ショットブラストの処理時間を変えてサンプルを作成した。サンプルの開口空孔数を測定した後、200℃±10℃で20hr加熱し、加熱後の含油率を測定した。結果を図5に示す。開口空孔数が少ないほど、加熱後含油率は高くなる傾向が見られた。
なお、封孔処理を行わなかったサンプル(バルブガイド1:従来例)の開口空孔数は25個/30mmであった。
【0039】
<開口空孔数と摩耗量の関係>
次に上記と同じ条件で封孔処理をしたサンプルに対し、単体摩耗試験を行った。結果を図6に示す。ショットブラスト処理時間が長いほど、開口空孔数は小さく、摩耗量は小さくなった。
これにより、封孔処理を行い、開口空孔数を所定の範囲に収めることにより、高温下環境であってもバルブガイド内周面の異常摩耗を防止し得る、焼結合金製バルブガイドを提供することができることがわかった。
【符合の説明】
【0040】
10 バルブガイド単体摩耗試験機
1 バルブ
2 バルブガイド
3 バーナー
【要約】
高温下環境であってもバルブ凝着を防止し得る、焼結合金製バルブガイドを提供することを課題とする。
潤滑油が含侵された前記バルブガイド外周表面の空孔が封孔されている、焼結合金製バルブガイドにより課題を解決できる。より詳細には、潤滑油が含侵された焼結体の外周表面の空孔に封孔処理を行う封孔処理工程により課題を解決する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7