(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】吊り具付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 23/00 20060101AFI20220815BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
B65D23/00 Q
B65D1/02 230
(21)【出願番号】P 2018122589
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 攻一郎
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0240673(US,A1)
【文献】特開2016-182184(JP,A)
【文献】実開平03-089672(JP,U)
【文献】特開2000-132099(JP,A)
【文献】実開昭56-088636(JP,U)
【文献】実開昭57-170747(JP,U)
【文献】特開2000-250410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 23/00
B65D 1/02
A61J 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口及び底部を備える容器本体と、
前記底部から突出して形成される吊環支持部と、
吊環を備えて、前記吊環支持部とヒンジ部を介して接続する吊環部と、
を有し、
前記ヒンジ部は、前記容器本体のパーティングラインに対応するパーティング面
及び前記容器本体の軸心と平行な薄肉溝状に形成される、
ことを特徴とする吊り具付き容器。
【請求項2】
前記吊環部は、前記底部と接続されず、前記吊環支持部の上縁とも接続されない、
ことを特徴とする請求項1に記載の吊り具付き容器。
【請求項3】
前記底部には、前記パーティング面に対して直交する方向に延設される係止溝が形成されて、前記ヒンジ部で折り曲げられた吊環部は前記係止溝と係止することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吊り具付き容器。
【請求項4】
前記吊環部は、前記吊環から延設されて前記ヒンジ部と接続する吊環接続部を備え、
前記係止溝は、前記底部から突出する2つの突条により形成されて、
前記2つの突条のうち一方の前記突条は、前記吊環接続部と対向し前記係止溝に向けて突出する方向に傾斜する傾斜面を有し、
前記傾斜面と対向する前記吊環接続部の縁は、前記傾斜面と対応して傾斜するよう形成されることを特徴とする請求項3に記載の吊り具付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り具付きの容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吊り具を備えた容器が開示されている。例えば、特許文献1の吊り具付き容器は、容器本体の底部から突出する吊環を備え、ブロー成形により一体的に形成される。この吊環は、該吊環の穴の軸心が容器本体のパーティングラインに対応するパーティング面に直交するよう形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される吊り具付き容器は、容器本体のパーティングラインに直交する向きに容器を吊り下げることはできるが、パーティングラインと平行な向きに容器を吊り下げることはできない。従って、容器の吊り下げ方向に制約があり、使い難い場合がある。
【0005】
本発明は、吊り下げ方向の制約が緩和された吊り具付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吊り具付き容器は、吐出口及び底部を備える容器本体と、前記底部から突出して形成される吊環支持部と、吊環を備えて、前記吊環支持部とヒンジ部を介して接続する吊環部と、を有し、前記ヒンジ部は、前記容器本体のパーティングラインに対応するパーティング面と平行な薄肉溝状に形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吊り下げ方向の制約が緩和された吊り具付き容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る吊り具付き容器を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る吊り具付き容器の底部を示す斜視図であり、(a)は正面側から見た斜視図であり、(b)は背面側から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る吊り具付き容器の底部を示し、吊環部を折り曲げて係止溝と係止する状態を示すやや背面側の左側面側から見た斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る吊り具付き容器の底部を示し、吊環部及び吊環支持部とを正面側に倒しこんだ状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1に示すように、吊り具付き容器1は、容器本体10と吊り具部20がブロー成形により一体とされたものである。吊り具付き容器1を構成する材料としては、ブロー成形に適した熱可塑性樹脂を好適に使用することができる。例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が挙げられる。ただし、上記以外の材料も適宜使用することができる。なお、以下の説明においては、
図1を正面側として、その反対側を背面側とする。また、
図1を見て左側を左、右側を右として説明する。吊り具付き容器1の容器本体10は、先端に開口する吐出口11を備える。吊り具付き容器1は、吐出口11から容器本体10に液体を入れ、適宜吐出することができる。吊り具部20は容器本体10における吐出口11と反対側の底部12に形成される。吊り具付き容器1は、吊り具部20を、図示しない点滴スタンド等のフックに引っ掛けて、所定のアダプタ等を吐出口11に取付けて吐出口11を下方に向けることで、点滴や輸血に使用することができる。
【0010】
容器本体10は、
図1における奥行き方向(紙面に垂直な方向)よりも左右方向が長い横断面略長矩形状に形成される。容器本体10は、吐出口11の近傍で、吐出口11に向かって窄まるように形成される。容器本体10の底部12は、
図1の正面視において凹状に形成される。吊り具付き容器1は、
図1の正面視における奥行き方向の中間位置において、ブロー成形におけるパーティングラインPLが形成される(
図2参照)。そして、符号PLSは、パーティングラインPLに対応する金型のパーティング面である。パーティングラインPLは、吊り具付き容器1の軸心DLと直交する。また、パーティング面PLSは、軸心DL及びパーティングラインPLを含む平面である。
【0011】
吊り具部20は、凹状に形成される底部12の凹部12aに形成される。
図2(a),(b)に示すように、底部12の底面12bは、底部12の左右の凸部の凸部底面12b1と、凹部12aの凹部底面12b2と、により形成される。凸部底面12b1には、パーティングラインPLに沿って溝12cが形成される。底部12には、吊り具部20の吊環支持部21が凹部底面12b2から突出して形成される。吊環支持部21は、略板状に形成されて、板面がパーティング面PLSと平行となるようにパーティングラインPLに沿って形成される。
【0012】
吊り具部20には、吊環支持部21と隣接して、略板状とされる吊環部22が形成される。吊環部22は、略環状に開口する吊環22aと、吊環22aと連続して吊環22aから容器本体10側に向けて板状に延設される吊環接続部22bとを備える。吊環接続部22bは、吊環22aに対してオフセットして延設されて、吊環支持部21と隣り合う。吊環22a及び吊環22aの穴は、正面視(
図1参照)において上下方向よりも左右方向に長く形成される。吊環22aの穴は、正面視において、頂部22a1を備える山型に形成される。頂部22a1は、軸心DL上に形成される。吊環22aの外形は、吊環22aの穴の形状と同様に山型に形成される。吊環22aの穴縁は、背面側において所定の間隔を空けて環状に突出する2重の第1環状突出部22a2-1及び第2環状突出部22a2-2を形成する(
図2(b)参照)。外側の第2環状突出部22a2-2は、内側の第1環状突出部22a2-1よりも突出量を大きくして第1環状突出部22a2-1と同形状とされる。正面側においては、第1環状突出部22a2-1と第2環状突出部22a2-2に対応する箇所は凹溝状に形成されて、第1環状突出部22a2-1と第2環状突出部22a2-2の間は環状に突出する。
【0013】
吊環22aの左右外側縁は直線状に形成されて、吊環接続部22bが延設される側の外側縁は吊環22aの外側縁と吊環接続部22bの外側縁とが直線状に接続する。吊環接続部22bの
図2(a)の下端においてはR面取り部を介して、傾斜縁22b1が形成される。傾斜縁22b1は、軸心DLに向けて吊環接続部22bを幅狭化するように傾斜する、吊環接続部22bの底部12側の縁とされる。また、板状の吊環接続部22bの面には、底部12側が傾斜する略直角台形状の環状凸部22b2が形成される。環状凸部22b2は、吊環接続部22bの正面側及び背面側の両面に形成される。
【0014】
吊環部22の吊環接続部22bの内側の縁と吊環支持部21の内側の縁とは、ヒンジ部25を介して接続される。ヒンジ部25は、パーティング面PLSと平行であって、吊り具付き容器1の軸心DLに沿って軸心DL上に薄肉溝状に形成される。そして、吊環部22(傾斜縁22b1)と底面12bとは接続されず、また、吊環支持部21の上縁と、吊環部22において吊環支持部21と対向する吊環部22(吊環22a)の下縁は接続されていない。従って、吊環部22は、ヒンジ部25を中心に回動自在とされる。
【0015】
また、底部12の凹部底面12b2には、凹部底面12b2から突出して、パーティング面PLS(パーティングラインPL)と直交する方向に延在する2つの突条である第1突条31と第2突条32が、吊り具部20に対して正面側及び背面側のそれぞれに形成される。第1突条31は吊環接続部22b側に形成され、第2突条32は吊環支持部21側に形成される。第1突条31と第2突条32は、軸心DL(すなわちヒンジ部25)に対して略均等位置となるよう所定の間隔で隣接して形成される。従って、第1突条31と第2突条32との間には、軸心DL(ヒンジ部25)と略合致した位置に溝状の係止溝30が形成される。
【0016】
一方の突条である第1突条31は、凹部底面12b2から係止溝30に向けて突出する方向に傾斜する傾斜面31aが形成される。一方、吊環接続部22b側の凹部底面12b2は傾斜面31aと同様に傾斜する。すなわち、傾斜面31aは、凹部底面12b2と連続する傾斜面として形成される。傾斜面31a及び吊環接続部22b側の凹部底面12b2は、吊環接続部22bの傾斜縁22b1と対向し、両者の傾斜角度は略一致する。また、傾斜縁22b1は、対向する傾斜面31a及び凹部底面12b2と若干の隙間を空けて位置する。
【0017】
また、第2突条32は、縦断面視略台形状に形成される。なお、凹部底面12b2の吊環支持部21側は、パーティング面PLSに直交する方向においては、パーティングラインPLが頂部となるよう正面側及び背面側から登るよう傾斜しているが、第2突条32の上面は略水平な平坦面状とされている。従って、第2突条32は、側面視においてテーパ状に形成される。
【0018】
このように形成される吊り具部20において、吊環部22は、ヒンジ部25を中心として正面側又は背面側に回動させることができる。ここで、ヒンジ部25は、吊環部22を回動し易く、かつ、吊環支持部21と吊環部22が分離されない程度の強度で形成することが求められる。本実施形態においては、吊環接続部22bに形成される環状凸部22b2が薄肉溝状のヒンジ部25を成形する際の逃げ部となる。従って、ヒンジ部25は、吊り具付き容器1の成形時において高精度に成形される。
【0019】
ヒンジ部25を中心として回動した吊環部22は、
図3に示すように、吊環部22の吊環接続部22bが係止溝30に係止されることにより、不意に回動してしまうことが防止される。前述の通り、吊環接続部22bの傾斜縁22b1は傾斜面31a及び対向する凹部底面12b2に対応して同じ傾斜角度で形成されると共に両者は隙間が空いている。これにより、吊環接続部22bの係止溝30への係止の際、吊環接続部22bが第1突条31を乗り越える直前で、吊環接続部22bの傾斜縁22b1と傾斜面31aが接触する。すなわち、吊環接続部22bを回動すると、吊環接続部22bの傾斜縁22b1と傾斜面31a及び対向する凹部底面12b2の隙間は徐々に狭められ、ヒンジ部25に遠い傾斜縁22b1の先端付近から傾斜面31a(及び対向する凹部底面12b2)と接触し始めて、傾斜縁22b1が傾斜面31aを乗り越える直前のみで傾斜縁22b1と傾斜面31aの接触による大きな反力を吊環接続部22bが受けて、吊環接続部22bは係止溝30に係止する。従って、吊環部22の回動の際に大きな抵抗が発生せず回動操作を容易とすると共に、傾斜縁22b1が傾斜面31aを乗り越える際のヒンジ部25に掛かる負荷を最小限とすることができる。
【0020】
なお、係止溝30(第1突条31、第2突条32)は、本実施形態においては正面側及び背面側の2箇所に設けたが、これに限られず、何れか一方側のみに設けることもできる。しかしながら、本実施形態のように、係止溝30(第1突条31、第2突条32)をパーティングラインPLに対して両側に設けることにより、正面側及び背面側のどちら側に対しても吊環部22を回動させることができるので、吊環部22の回動作業の間違いが無く、よって吊り具部20により吊り下げるための調整作業が簡単となる。さらに、正面側又は背面側の何れかに一度回動させれば吊環部22を係止溝30に係止させることができるので、吊環部22を複数回回動することが無く、従ってヒンジ部25の強度低下を低減することができる。
【0021】
そして、吊り具付き容器1は、吊環部22を回動させない状態(
図1や
図2の状態)でも、吊環部22を回動させた状態でも、点滴スタンド等のフックに引っ掛けることができる。従って、吊り具付き容器1を吊環部22で引っ掛ける方向の制約が緩和される。吊り具付き容器1をフック等で引っ掛けた際には、吊環22aの頂部22a1にフック等が自然に位置される。従って、液体が充填された吊り具付き容器1をフック等に引っ掛けても、フック等の支持点が常に頂部22a1とされて、該支持点は軸心DL上に位置されるので、ヒンジ部25には軸心DLに沿った軸力のみが働く。よって、吊環部22と吊環支持部21をヒンジ部25で引き裂く方向の力が働き難い。
【0022】
また、
図4に示す通り、吊環支持部21の凹部底面12b2との接続箇所は、正面側又は背面側に折り曲げて、吊り具部20を倒すことができる。これにより、底部12を下側として凸部底面12b1を載置面に当接させて、吊り具付き容器1を机上等に載置することができる。このとき、吊り具部20は底部12の凹部12aに形成されるので、吊環支持部21が起立位置に戻る力で吊り具部20が載置面を強く当たって吊り具付き容器1が倒れてしまうことが低減される。なお、吊環支持部21は、本実施形態では板状に形成したが、ブロック状等他の形態でも良いが、板状とすることで容易に吊り具部20を倒せる形態とすることができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は本実施形態によって限定されることは無く、種々の変更を加えて実施することができる。例えば、本実施形態では、吊環部22の吊環22aは環状に形成したが、これに限られず、フック状に形成することもできる。また、本実施形態では、吊環支持部21と凹部底面12b2との接続箇所を折り曲げて吊り具部20を正面側又は背面側に倒せるように形成したが、例えば、吊環部22の吊環22aと吊環接続部22bの接続部を折り曲げ可能に形成して、吊環22aを正面側又は背面側に倒すことができるよう形成しても良い。
【符号の説明】
【0024】
1 吊り具付き容器 10 容器本体
11 吐出口 12 底部
12a 凹部 12b 底面
12b1 凸部底面 12b2 凹部底面
12c 溝 20 吊り具部
21 吊環支持部 22 吊環部
22a 吊環 22a1 頂部
22a2-1 第1環状突出部 22a2-2 第2環状突出部
22b 吊環接続部 22b1 傾斜縁
22b2 環状凸部 25 ヒンジ部
30 係止溝 31 第1突条
31a 傾斜面 32 第2突条
DL 軸心
PL パーティングライン
PLS パーティング面