(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】フェルラ酸含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20220815BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20220815BHJP
A23L 2/39 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
A23L2/00 F
A23L2/00 B
A23L2/00 Q
(21)【出願番号】P 2016135122
(22)【出願日】2016-07-07
【審査請求日】2019-06-03
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】西元 琢也
(72)【発明者】
【氏名】上西 伸卓
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏哉
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】加藤 友也
【審判官】植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-248526(JP,A)
【文献】特開2005-21047(JP,A)
【文献】特開2014-110812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L2/00-2/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルラ酸と、米粉とを含有し、さらに水溶性食物繊維、ビタミンB及びビタミンCから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする飲料
であって、溶媒を留去した固体成分のうち、フェルラ酸の含有質量が0.05%以上1%以下であり、米粉の含有質量が1%以上であり、水溶性食物繊維を含有する場合は、その含有質量が10%以上であり、ビタミンBを含有する場合は、その含有質量が0.005%以上であり、ビタミンCを含有する場合は、その含有質量が0.5%以上であることを特徴とする飲料。
【請求項2】
フェルラ酸と、米粉と、水溶性食物繊維とを含有し、さらにビタミンB及びビタミンCから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする飲料
であって、溶媒を留去した固体成分のうち、フェルラ酸の含有質量が0.05%以上1%以下であり、米粉の含有質量が1%以上であり、水溶性食物繊維の含有質量が10%以上であり、ビタミンBを含有する場合は、その含有質量が0.005%以上であり、ビタミンCを含有する場合は、その含有質量が0.5%以上であることを特徴とする飲料。
【請求項3】
粉末飲料であることを特徴とする、請求項1
又は2のいずれか一項記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルラ酸と、米粉とを含有し、さらに水溶性食物繊維、ビタミンB及びビタミンCから選ばれる1種以上を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
フェルラ酸(4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸)はポリフェノールの1種であり、他のポリフェノールと同様に強い抗酸化作用を持ち、高血圧改善作用、持久力向上や抗疲労作用、エタノール性肝炎の治癒作用、アルツハイマー病の患者における症状改善作用などが知られている。
【0003】
上記のことから、健康食品の素材としてフェルラ酸の需要が高まっており、特許文献1には、高血圧症などの、主に生活習慣や加齢などが発症及び進行に関与する疾患を予防するための、フェルラ酸を添加した疾患の予防食品が記載されている。
【0004】
一方で、フェルラ酸はポリフェノール特有の苦みや渋みなどの不快味を呈することが知られている。特許文献2には、フェルラ酸などの機能性素材に、一定の特徴を持つデキストリンを添加することで、機能性素材の不快味がマスキングされることが記載されている。
【0005】
しかしながら、フェルラ酸の不快味をマスキングする技術はまだ十分に開発されているとは言えない。特許文献2には、一定の特徴を持つデキストリンを添加することで、機能性素材の不快味がマスキングされることが記載されるものの、フェルラ酸を含有する食品についての呈味改善は確認されていない。また、特許文献2には、フェルラ酸を含有する食品の舌触りや後味の改善については記載も示唆もされていない。
【0006】
他方で、健康食品の形態として、手軽に摂取できる飲料が近年注目を集めている。しかしながら、飲料は錠剤やカプセル剤と比較して、摂取時にフェルラ酸の不快味を感じやすいという特徴がある。このような背景のもと、フェルラ酸を機能性素材として含み、さらにフェルラ酸の呈味が改善された飲料の開発が求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-166834号公報
【文献】特開2015-128420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえに、本発明の主たる目的は、フェルラ酸を含有しながらも、呈味に優れた飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、フェルラ酸を含有しながらも、呈味を改善する方法について鋭意研究したところ、フェルラ酸と、米粉とを含有し、さらに水溶性食物繊維、ビタミンB及びビタミンCから選ばれる1種以上を含有する飲料が、格別に呈味に優れることを見出した。本発明は、かかる成功例に基づき、完成された発明である。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
[1]フェルラ酸と、米粉とを含有し、さらに水溶性食物繊維、ビタミンB及びビタミンCから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする飲料。
【0011】
[2]フェルラ酸と、米粉と、水溶性食物繊維とを含有し、さらにビタミンB及びビタミンCから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする飲料。
【0012】
[3]溶媒を留去した固体成分のうち、フェルラ酸の含有質量が0.05%以上であることを特徴とする[1]又は[2]記載の飲料。
【0013】
[4]溶媒を留去した固体成分のうち、水溶性食物繊維の含有質量が10%以上であることを特徴とする[1]~[3]のいずれか一項記載の飲料。
【0014】
[5]溶媒を留去した固体成分のうち、フェルラ酸の含有質量を1としたときの水溶性食物繊維の含有質量が100以上であることを特徴とする[1]~[4]のいずれか一項記載の飲料。
【0015】
[6]粉末飲料であることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか一項記載の飲料。
【発明の効果】
【0016】
本発明の飲料は、フェルラ酸を含有しながらも、呈味に優れていることから、フェルラ酸を手軽に摂取するために適したものである。さらに、本発明の飲料には米粉と、水溶性食物繊維、ビタミンB及びビタミンCから選ばれる1種以上が含まれるため、美肌、ダイエット、整腸などの複数の効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、「えぐ味のなさ」についての比較例及び実施例における官能試験の結果を示すグラフである。
【
図2】
図2は、「苦味のなさ」についての比較例及び実施例における官能試験の結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、「飲みやすさ」についての比較例及び実施例における官能試験の結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、「舌触りの良さ」についての比較例及び実施例における官能試験の結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、「のどごしの良さ」についての比較例及び実施例における官能試験の結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、「後味の良さ」についての比較例及び実施例における官能試験の結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、「総合評価」についての比較例及び実施例における官能試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明の飲料は、(A)フェルラ酸と、(B)米粉とを含有し、さらに(C)水溶性食物繊維、ビタミンB及びビタミンCから選ばれる1種以上を含有する。以下、これらの成分についてそれぞれ説明する。
【0019】
(A)フェルラ酸
フェルラ酸は、上述の通りポリフェノールの1種であり、本発明のフェルラ酸は、フェルラ酸の塩や、ジヒドロフェルラ酸などのフェルラ酸誘導体及びその塩を含む。本発明のフェルラ酸は、植物に含まれるものであっても合成されたものであってもよい。フェルラ酸を含む植物としては、セリ科植物やイネ科植物の葉や茎などが挙げられる。
【0020】
植物に含まれるフェルラ酸を用いる場合、植物の幹、枝、果実、葉、花、種子、樹皮、樹液、根、茎、芽等のいずれの部位を用いても構わないが、簡便に利用するには、葉や茎を用いるとよい。また、植物に含まれるフェルラ酸を用いる場合、植物の乾燥粉末を用いてもよく、植物の抽出物を用いてもよい。
【0021】
植物の乾燥粉末を得る方法としては、従来公知の植物体を乾燥粉末化する方法を用いることができる。そのような方法としては、例えば、フェルラ酸を含む植物の葉や茎に対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法がある。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。乾燥粉末化は、この方法に、さらに必要に応じてブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。
【0022】
植物の抽出物を得る方法としては、従来公知の植物体を抽出する方法を用いることができる。そのような方法としては、例えば、植物体又はその細片化物に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて攪拌や加温して抽出する方法などを挙げることができる。抽出物は、必要に応じて濃縮してもよい。
【0023】
本発明で用いるフェルラ酸は、上記の通り植物に含まれるものや合成したものが挙げられるが、市販品や、該市販品を化学処理、酵素処理、精製処理等に供することによって得られた処理物等を用いてもよい。例えば、フェルラ酸は和光純薬株式会社から入手することができる。これらのフェルラ酸は、1種のみを用いても良いし2種以上を混合しても良い。
【0024】
(B)米粉
米粉(こめこ、べいふん、べいこ)とは、米をひいて粉状にしたものであり、米の粉(こめのこ)、穀粉(こくこ)とも呼ばれる。
【0025】
本発明で用いる米粉の原料となる米の種類は特に限定されず、例えば、うるち米やもち米を用いることができる。また、原料となる米は白米を用いてもよく、玄米を用いてもよい。
【0026】
米粉は用いる米の種類と製造方法によって名称が異なるが、本発明で用いる米粉は特に限定されず、例えば、白玉粉、もち粉、求肥粉、道明寺粉、落雁粉、寒梅粉、上新粉、上用粉、乳児粉、みじん粉などを用いることができる。これらは、1種のみを用いても良いし2種以上を混合しても良い。これらの米粉の入手方法としては、特に制限はなく、例えば米を乾燥させたものをミルなどで粉砕したものを用いてもよく、市販の米粉を用いてもよい。
【0027】
(C)水溶性食物繊維、ビタミンB及びビタミンCから選ばれる1種以上
以下、(C)成分についてそれぞれ説明する。
【0028】
(1)水溶性食物繊維
水溶性食物繊維とは、食物に含まれる人の消化酵素によって消化されない難消化成分(食物繊維)のうち、水溶性のものを指す。本発明で用いる水溶性食物繊維としては、特に限定されず、難消化性デキストリン、ペクチン、アルギン酸、グアーガム、グアーガム加水分解物、グルコマンナン、ガラクトマンナン、ポリデキストロース、カラギーナンなどが挙げられる。これらは、1種のみを用いても良いし2種以上を混合しても良いが、中でも安全性が高く、整腸作用を始めとする多くの機能性を持つことから、難消化性デキストリンが特に好ましい。
【0029】
難消化性デキストリンは澱粉から得られる水溶性食物繊維であり、例えば、澱粉に塩酸を添加して加熱処理した後にアミラーゼ処理を行う、若しくは澱粉に塩酸を添加してエクストルーダーを用いて加熱処理を行う、又はこれらの組合せにより得られる組成物から、必要に応じて塩類やグルコースなどを除去して難消化性成分を適宜精製することによって得られる。
【0030】
(2)ビタミンB
ビタミンBとは、通常知られている「ビタミンB群」に属する水溶性の化合物を指す。本発明で用いるビタミンBとしては、特に限定されず、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB6(ピリドキシン)及びそれらの塩や誘導体などが挙げられる。これらは、1種のみを用いても良いし2種以上を混合しても良いが、中でも呈味の観点からビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6の混合物が特に好ましい。
【0031】
(3)ビタミンC
ビタミンCとは、アスコルビン酸とも呼ばれる水溶性の化合物である。本発明で用いるビタミンCとしては、アスコルビン酸及びその塩や誘導体などが挙げられる。これらは、1種のみを用いても良いし2種以上を混合しても良いが、中でも呈味の観点からアスコルビン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0032】
本発明で用いる水溶性食物繊維、ビタミンB及びビタミンCは、その取得方法について特に限定されず、天然物由来のもの、合成したもの、飲食品の原料として市販されているものなどを利用できる。
【0033】
本発明の飲料に用いる溶媒は特に限定されず、水、湯、牛乳、炭酸水などが挙げられる。これらは、1種のみを用いても良いし2種以上を混合しても良いが、中でも飲料を保存した時の安定性の観点から水が特に好ましい。
【0034】
また、本明細書で「溶媒を留去する」とは、飲料中の気体成分及び液体成分を取り除いて乾燥させ、固体成分だけの状態にすることをいう。溶媒を留去する方法としては従来公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、例えば、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去する方法が挙げられる。
【0035】
フェルラ酸の含有質量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されないが、例えば、本発明の飲料の溶媒を留去した固体成分のうち、下限値としては0.01%以上が好ましく、0.03%以上がより好ましく、0.05%以上がさらに好ましく、上限値としては、1%以下が好ましく、0.7%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。
【0036】
米粉の含有質量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されないが、例えば、本発明の飲料の溶媒を留去した固体成分のうち、下限値としては0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、2%以上がさらに好ましく、上限値としては、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0037】
また、フェルラ酸と米粉の含有質量の比は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されないが、例えば、溶媒を留去した固体成分のうち、フェルラ酸の含有質量を1としたときの米粉の含有質量の下限値としては1以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、上限値としては、200以下が好ましく、150以下がより好ましく、100以下がさらに好ましい。
【0038】
水溶性食物繊維の含有質量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されないが、例えば、本発明の飲料の溶媒を留去した固体成分のうち、下限値としては1%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましく、上限値としては、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。
【0039】
また、フェルラ酸と水溶性食物繊維の含有質量の比は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されないが、例えば、溶媒を留去した固体成分のうち、フェルラ酸の含有質量を1としたときの水溶性食物繊維の含有質量の下限値としては30以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上がさらに好ましく、上限値としては、1500以下が好ましく、1200以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。
【0040】
ビタミンBの含有質量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されないが、例えば、本発明の飲料の溶媒を留去した固体成分のうち、下限値としては0.001%以上が好ましく、0.003%以上がより好ましく、0.005%以上がさらに好ましく、上限値としては、0.5%以下が好ましく、0.3%以下がより好ましく、0.1%以下がさらに好ましい。
【0041】
また、フェルラ酸とビタミンBの含有質量の比は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されないが、例えば、溶媒を留去した固体成分のうち、フェルラ酸の含有質量を1としたときのビタミンBの含有質量の下限値としては0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましく、上限値としては、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。
【0042】
ビタミンCの含有質量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されないが、例えば、本発明の飲料の溶媒を留去した固体成分のうち、下限値としては0.1%以上が好ましく、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、上限値としては、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
【0043】
また、フェルラ酸とビタミンCの含有質量の比は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されないが、例えば、溶媒を留去した固体成分のうち、フェルラ酸の含有質量を1としたときのビタミンCの含有質量の下限値としては0.1以上が好ましく、1以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、上限値としては、100以下が好ましく、70以下がより好ましく、50以下がさらに好ましい。
【0044】
本発明の飲料は、風味や色合いを向上させる目的や、種々の目的に応じて、フェルラ酸、米粉、水溶性食物繊維、ビタミンB及びビタミンC以外のその他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。その他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に限定されず、飲料の剤形や品質などに応じて適宜選択することができ、例えば、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、添加剤などを挙げることができる。
【0045】
例えば、本発明の飲料に、ローヤルゼリー、プロテイン、アミノ酸、キトサン、レシチンなどを含有させて、本発明の飲料に栄養補助としての機能を付与するようにしてもよい。また、本発明の飲料の味を整えることを目的として、糖液や調味料を含有させてもよい。その他の成分の使用量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されず、適宜調整される。
【0046】
本発明の飲料の形態は特に限定されず、任意の形態とすることができる。本発明の飲料の形態としては、例えば、水、湯、牛乳などの任意の液体に分散又は溶解して液状物として摂取する粉末飲料や、ペットボトル、カン、ビン、紙パックなどにあらかじめ液状物として封入された容器詰飲料が挙げられる。これらの形態の中でも、場所を取らずに長期間保存でき、必要な時に調製できることから、粉末飲料であることが好ましい。
【0047】
本発明の飲料の摂取量は、1回摂取量及び1日摂取量ともに特に限定されない。
【0048】
本発明の飲料の製造方法は特に限定されず、使用態様に応じて当業者に知られる一般的な製造方法に準じて製造され得る。例えば、顆粒状の粉末飲料については、フェルラ酸と、米粉と、水溶性食物繊維、ビタミンB及びビタミンCから選ばれる1種以上と、上記のその他の成分とを同時又は数段階に分けて混和したものを、流動層造粒法、攪拌造粒法、押出造粒法などの造粒方法にしたがって造粒して顆粒状とすることができる。
【0049】
本発明の飲料の包装形態は特に限定されず、使用態様に応じて適宜選択できるが、例えば、粉末飲料の包装形態としては、アルミパウチや紙袋などが挙げられる。これらの粉末飲料の包装形態は、1包に1回分が包装されていてもよく、1包に複数回分が包装されていてもよい。
【0050】
本発明の飲料は、後述する実施例において例証されるとおり、フェルラ酸のみを含有するものと比べて、呈味が改善され、摂取しやすいものである。したがって、本発明の飲料は、フェルラ酸の持つ高血圧改善、持久力向上及び抗疲労作用を利用しようとする使用者に対して、格別顕著に有用なものである。
【0051】
また、本発明の飲料は、フェルラ酸と組み合わせられる米粉、水溶性食物繊維、ビタミンB、ビタミンCなどを摂取することができるものであることから、これらに基づく副次的な効果を奏し、使用者の健康維持に資する。
【0052】
本発明の飲料は、生体に対して一定の機能性を有する飲食品である機能性飲食品の形態又は機能性飲食品に配合されるものとすることができる。機能性飲食品は、例えば、特定保健用飲食品、機能性表示飲食品、栄養機能飲食品、保健機能飲食品、特別用途飲食品、栄養補助飲食品、健康補助飲食品、サプリメント、美容飲食品などのいわゆる健康飲食品;乳児用飲食品、妊産婦用飲食品、高齢者用飲食品などの特定者用飲食品を包含する。さらに機能性飲食品は、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康飲食品を包含する。
【0053】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例】
【0054】
[試験例 フェルラ酸含有飲料の官能試験]
(被験試料)
下記表1に示す処方の粉末飲料を調製した。官能試験には、表1に示す参考例1、比較例1~7及び実施例1~8の計16種のサンプルを用いた(デキストリンは賦形剤)。なお、試験には、いずれも市販されているフェルラ酸、米粉、難消化性デキストリン、ビタミンB、ビタミンC、デキストリンを用いた。なお、ビタミンBとしては、ビタミンB1:ビタミンB2:ビタミンB6=1:1:2の混合物を用い、ビタミンCとしては、アスコルビン酸ナトリウムを用いた。
【0055】
【0056】
(試験方法)
上記16種のサンプルを、プラスチック製のコップに移し、それぞれに80mLの水を注いでよくかき混ぜた。それら16種の粉末飲料を男女計6名がそれぞれ摂取し、えぐ味のなさ、苦みのなさ、飲みやすさ、舌触りの良さ、のどごしの良さ、後味の良さ、及び総合評価の項目を評価した。評価方法は、全ての項目において参考例1のデキストリン単独の粉末飲料を基準の「0点」とし、各項目を-5点から5点の11段階で相対的に評価した。評価点数は、参考例1を基準として、「5点 非常に好ましい」「4点 かなり好ましい」「3点 好ましい」「2点 やや好ましい」「1点 どちらかと言えば好ましい」「0点 普通」「-1点 どちらかというと好ましくない」「-2点 やや好ましくない」「-3点 好ましくない」「-4点 かなり好ましくない」「-5点 非常に好ましくない」とした。
【0057】
(試験結果)
各サンプルのそれぞれの項目の被験者の平均点数を
図1~
図7に示す。
【0058】
図1~
図7に示すように、フェルラ酸と、米粉とを含有し、さらに水溶性食物繊維、ビタミンB及びビタミンCから選ばれる1種以上を含有する実施例1~実施例8の飲料は、えぐ味のなさ、苦みのなさ、飲みやすさ、舌触りの良さ、のどごしの良さ、後味の良さ、及び総合評価の全ての項目において、いずれかを含まない比較例1~7の飲料と比較して、顕著に高い評価を得た。
【0059】
さらに、実施例の中でも、フェルラ酸と、米粉と、水溶性食物繊維とを含有し、さらにビタミンB及びビタミンCから選ばれる1種以上を含有する実施例6~実施例8が、全ての評価項目においてより高い評価を得ており、中でも「苦みのなさ」及び「後味の良さ」の項目について、その他の実施例よりも格別に高い評価を得た。また、全ての評価項目において最も高い評価を得たのは、フェルラ酸、米粉、水溶性食物繊維、ビタミンB及びビタミンCを全て含有する実施例8であった。
【0060】
また、実施例1~実施例3を比較すると、溶媒を留去した固体成分のうち、難消化性デキストリンの含有質量が3%である実施例1と比較して、難消化性デキストリンの含有質量が10%である実施例2が全ての評価項目において高い評価を得ており、難消化性デキストリンの含有質量が21%である実施例3が全ての評価項目においてさらに高い評価を得ていることが分かった。中でも、実施例2及び実施例3は「飲みやすさ」及び「のどごしの良さ」の項目について、実施例1よりも格別に高い評価を得た。このことから、本発明の飲料は、溶媒を留去した固体成分のうち、水溶性食物繊維の含有質量が10%以上であることが好ましいことが分かった。
【0061】
さらに、実施例1~実施例3のフェルラ酸と難消化性デキストリンの含有質量の比に着目すると、溶媒を留去した固体成分のうち、フェルラ酸の含有質量を1としたときに、難消化性デキストリンの含有質量が33である実施例1と比較して、難消化性デキストリンの含有質量が100である実施例2が全ての評価項目において高い評価を得ており、難消化性デキストリンの含有質量が211である実施例3が全ての評価項目においてさらに高い評価を得ていることが分かった。中でも、実施例2及び実施例3は「飲みやすさ」及び「のどごしの良さ」の項目について、実施例1よりも格別に高い評価を得た。このことから、本発明の飲料は、溶媒を留去した固体成分のうち、フェルラ酸の含有質量を1としたときに、水溶性食物繊維の含有質量が100以上であることが好ましいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の飲料は、フェルラ酸を含有しながらも、呈味に優れているため、フェルラ酸を手軽に、かつ継続的に摂取することができるため、フェルラ酸が持つ高血圧改善、持久力向上及び抗疲労作用を効果的に利用することができる。したがって、本発明の飲料は、日常的な飲食に適した飲食品、例えば、一般飲食品、特定保健用飲食品、機能性表示飲食品、栄養機能飲食品、保健機能飲食品、特別用途飲食品、栄養補助飲食品、健康補助飲食品、サプリメント、美容飲食品、その他の健康飲食品として利用できる。