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<図1>
  • -風呂用マットおよびその製造方法 図1
  • -風呂用マットおよびその製造方法 図2
  • -風呂用マットおよびその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】風呂用マットおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20220815BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220815BHJP
   B32B 3/10 20060101ALI20220815BHJP
   B29C 43/20 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
A47K3/00 A
B32B27/00 Z
B32B3/10
B29C43/20
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017254038
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019118486
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】500084108
【氏名又は名称】シンエイテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】南條 多潤
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-005730(JP,U)
【文献】特開平09-295377(JP,A)
【文献】特開平02-269258(JP,A)
【文献】特開2008-295626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
B32B 1/00-43/00
B29C 39/00-43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材となる熱可塑性弾性樹脂にマット本体用着色剤が含有されてなるシート状のマット本体の表面に、母材となる熱可塑性弾性樹脂が前記マット本体の母材と同一であり、これに前記マット本体用着色剤とは色が異なる模様構成材用着色剤が含有されてなる任意形状の模様構成材が配置されており、
前記マット本体と前記模様構成材とは、着色剤の色が異なるだけで母材となる熱可塑性弾性樹脂はじめその他の成分が同一であり、
前記マット本体と前記模様構成材とが架橋により一体化されて継ぎ目のない単一層のものとして構成されていることを特徴とする風呂用マット。
【請求項2】
母材となる熱可塑性弾性樹脂にマット本体用着色剤を含有することによりマット本体用混練物を形成するとともに、母材となる熱可塑性弾性樹脂が前記マット本体用混練物の母材と同一であり、これに前記マット本体用着色剤とは色が異なる模様構成材用着色剤を含有することにより模様構成材用混練物を形成し、
任意形状の前記模様構成材用混練物を金型に配置し、その上からシート状に形成した前記マット本体用混練物を重ね合わせ、然る後、前記金型を閉じ、加熱・加圧して着色剤の色が異なるだけで母材となる熱可塑性弾性樹脂はじめその他の成分が同一である前記マット本体用混練物と前記模様構成材用混練物とを架橋により一体化して、継ぎ目のない単一層のものとして構成することを特徴とする風呂用マットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠性に優れ、且つ、反りが生じにくい風呂用マットならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の床に触れた時のひんやり緩和、或いは浴室や浴槽における滑り対策として風呂用マットが広く一般に利用されている。今日、上市されている風呂用マットは無地のものが中心であるが、このような無地の風呂用マットは意匠性に乏しく、他社商品との差別化が図りにくい。
【0003】
このような背景から、所望の図柄が印刷された印刷層をマット本体の表面に貼り合せるという手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、意匠性の高い風呂用マットを提供できるようになり、他社製品との差別化を図ることが容易となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-26764号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、風呂用マットは浴室で使用されるものであるから、熱湯がかかって風呂用マットの温度が高くなったり、冷水がかかって冷めたりと、温度変化の激しい環境に常にさらされ、熱膨張と熱収縮とを何度も繰り返すこととなる。
【0006】
ところが、マット本体の表面に印刷層を貼り合せた2層構造の風呂用マットでは、マット本体と印刷層との熱収縮率が異なるため、熱膨張と熱収縮を何度も繰り返していると、やがて両者の熱収縮率の違いに起因する「反り」が生じ、甚だしい場合には使用に支障が生じるという問題があった。
【0007】
また、従来の2層構造の風呂用マットでは、上述した熱収縮率の違いに起因してマット本体と印刷層との間に隙間が生じることがあり、この僅かな隙間から水が入り込むなどして隙間が大きく広がり、層間剥離を生じるという問題もあった。
【0008】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、意匠性に優れ、且つ、反りや層間剥離が生じない風呂用マットならびにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載した発明は、「母材となる熱可塑性弾性樹脂にマット本体用着色剤が含有されてなるシート状のマット本体12の表面に、母材となる熱可塑性弾性樹脂がマット本体12の母材と同一であり、これにマット本体用着色剤とは色が異なる模様構成材用着色剤が含有されてなる任意形状の模様構成材14が配置されており、着色剤の色が異なるだけで母材となる熱可塑性弾性樹脂はじめその他の成分が同一であるマット本体12と模様構成材14とが架橋により一体化されて継ぎ目のない単一層のものとして構成されている」ことを特徴とする風呂用マット10である。
【0010】
請求項2に記載した発明は「母材となる熱可塑性弾性樹脂にマット本体用着色剤を含有することによりマット本体用混練物12’を形成するとともに、母材となる熱可塑性弾性樹脂がマット本体用混練物12’の母材と同一であり、これにマット本体用着色剤とは色が異なる模様構成材用着色剤を含有することにより模様構成材用混練物14’を形成し、任意形状の模様構成材用混練物14’を金型20に配置し、その上からシート状に形成したマット本体用混練物12’を重ね合わせ、然る後、金型20を閉じ、加熱・加圧して着色剤の色が異なるだけで母材となる熱可塑性弾性樹脂はじめその他の成分が同一である両者12’,14’を架橋により一体化して、継ぎ目のない単一層のものとして構成する」ことを特徴とする風呂用マット10の製造方法である。

【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、模様構成材を任意の形状や色彩に設定することによって意匠性の高い風呂用マットを提供できる。ここで、マット構成材と模様構成材とは母材となる熱可塑性樹脂が同一であり、両者の熱膨張率・熱収縮率が同じであるので、従来のような収縮率の違いに起因する反りが発生するようなことはない。また、マット構成材と模様構成材とが架橋により一体化されることから、両者の間には継ぎ目が存在しない。したがって、水が入り込むような隙間はなく、層間剥離が進行することもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の一実施例の風呂用マットを示す図である。
図2】模様構成材の製造方法を示す図である。
図3】風呂用マットの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に従って説明する。図1は、本発明にかかる風呂用マット10を示す図である。この図が示すように、本発明の風呂用マット10は、マット本体12と模様構成材14とで大略構成されている。
【0014】
マット本体12は、矩形のシート状部材で、その大きさは任意に設定することができる(本実施例では、浴槽内に敷くことができるような大きさに設定されている)。
【0015】
マット本体12の母材となる樹脂としては、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ポリ塩化ビニルといった一般的に風呂用マットとして使用される熱可塑性弾性樹脂を使用することができる。本実施例では、母材としてEPDMが使用され、これに無機充填剤、架橋剤、プロセスオイルおよび着色剤が添加される。
【0016】
無機充填剤は、製品の強度を高める改質剤或いは増量剤として添加されるもので、母材(ここではEPDM)の配合量を100重量%としたとき、約30~40重量%の割合で添加される。
【0017】
無機充填剤としては、公知のものを適宜使用することができ、その一例としては、カーボンブラック、シリカ、クレイ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機フィラーや、セルロース、レシチン、リグニン、デンドリマー等の有機フィラーを例示することができる。
【0018】
架橋剤は、母材同士を連結(架橋)させるためのもので、母材の配合量を100重量%としたとき、約1重量%程の割合で添加される。
【0019】
架橋剤としては、公知のものを適宜使用することができ、その一例としては、ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ジイソプロピルベンゼンのようなパーオキシケタール、或いは、ジクミルパーオキサイドのようなジアルキルパーオキサイド等が挙げられる。
【0020】
プロセスオイルは、ゴムの可塑性を高めて作業性をよくしたり、ゴムの硬度を下げるために用いられるもので、母材の配合量を100重量%としたとき、約6~8重量%の割合で添加される。
【0021】
プロセスオイルとしては、公知のものを適宜使用することができ、その一例としては、例えばパラフィンオイル、ナフテンオイル、トリグリセリド系植物オイルなどが挙げられる。
【0022】
着色剤は、マット本体12を着色するためのもので、母材の配合量を100重量%としたとき、約3~5重量%の割合で添加される。着色剤の具体例としては、有機顔料や無機顔料或いは染料が挙げられる。
【0023】
なお、マット本体12を形成するために使用される着色剤と、後述する模様構成材14を形成するために使用される着色剤とは色彩が異なるものが使用されることから、両者を区別するために、マット本体12において使用される着色剤を「マット本体用着色剤」と呼び、模様構成材14において使用される着色剤を「模様構成材用着色剤」と呼ぶこととする。
【0024】
模様構成材14は、風呂用マット10の模様となるもので、その形状は任意形状とすることができる。本実施例では、形状が異なる2種類の紅葉の形が採用されている。
【0025】
模様構成材14の材質は、色彩の異なる着色剤が使用される以外はマット本体12と同一のものが選択されることから、その説明については上述の記載を援用する。
【0026】
なお、上述したように、模様構成材14で使用される着色剤を「模様構成材用着色剤」と呼び、その色彩はマット本体用着色剤と異なってさえいれば特に限定されるものではなく、任意のものを選択することができる。
【0027】
また、本実施例のように模様構成材14を複数配置する場合、各模様構成材14の色を異ならせるようにしてもよい(この場合、模様構成材用着色剤は複数色が使用される。)。本実施例では、2つの模様構成材14(14a,14b)が配置されており、それぞれの模様構成材用着色剤の色は水色と緑色で異なっている。
【0028】
次に、風呂用マット10の製造方法について説明する。まず、下記表1に記載された配合に従って、各配合物をそれぞれ個別にオープンロール、バンバリーミキサ、加圧ニーダ等で均一に混練し、風呂用マット10を製造するための各混練物、すなわちマット本体用混練物12’および模様構成材用混練物14’をそれぞれ調整した。なお、マット本体用混練物12’を形成するために用いた着色剤(マット本体用着色剤)はピンク色であり、模様構成材用混練物14’を形成するために用いた着色剤(模様構成材用着色剤)は青色と緑色の2種類である(つまり、青色の模様構成材用混練物14a’と緑色の模様構成材用混練物14b’の2種類を調整したことになる)。
【0029】
【表1】
【0030】
マット本体用混練物12’については、ロール、押出機等により所定の厚み(ここでは、約10mm)に成形した。また、模様構成材用混練物14’(14a’,14b’)については、断面形状が紅葉である棒状のものを成形し、これを約1~2mmの厚さにスライスしたものを用意した(図2参照)。
【0031】
次いで、図3に示すように加熱・加圧用の金型20の雌型20a内の所定位置に2枚の模様構成材用混練物14a’,14b’を配置し、その上からマット本体用混練物12’を覆い被せ、雄型20bを押し当てて金型20を閉じる。然る後、一段加熱・加圧方式により、温度150~180℃、圧力:100~160kg/cmで7~8分程度保持してマット本体用混練物12’および模様構成材用混練物14’(14a’,14b’)をそれぞれ架橋させる。これにより、マット本体12の表面に模様構成材14が一体的に形成された目的とする風呂用マット10が得られる。
【0032】
本実施例の風呂用マット10においては、模様構成材14を任意の形状・色彩とすることで、意匠性に非常に優れた風呂用マット10を簡単に形成することができる。
【0033】
ここで、マット本体12と模様構成材14とは、着色剤の色が異なるだけで母材となる熱可塑性樹脂はじめその他の成分が同一であり単一層のものとして得ることができるので、マット本体12と模様構成材14の熱膨張率・熱収縮率は同じである。したがって、従来のような収縮率の違いに起因する反りが発生するようなことはない。
【0034】
また、マット本体用混練物12’および模様構成材用混練物14’(14a’,14b’)とを加熱・加圧して得られる風呂用マット10は、マット本体12および模様構成材14が架橋反応により一体化されており、両者12,14の間には継ぎ目が存在しないので、水が入り込むような隙間はなく、損間剥離が進行することもない。
【符号の説明】
【0035】
10:風呂用マット、12:マット本体、12’:マット本体用混練物、14:模様構成材、14’:模様構成材用混練物、20:金型、20a:雌型、20b:雄型
図1
図2
図3