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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】設置具
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/00 20060101AFI20220815BHJP
   A01M 29/32 20110101ALI20220815BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
H02G7/00
A01M29/32
H02G1/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018016780
(22)【出願日】2018-02-01
(65)【公開番号】P2019134640
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000139573
【氏名又は名称】株式会社愛洋産業
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岸 泰至
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-154598(JP,A)
【文献】特開2019-103207(JP,A)
【文献】特開2011-182704(JP,A)
【文献】特開2017-38488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00
A01M 29/32
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状の一辺である固定辺を縁部に有する平面形状に形成された土台部と、
直線状の一辺である可動辺を縁部に有する平面形状に形成された可動部と、
前記土台部から延設され、活線作業用の工事具で支持可能な被支持部と、
を備え、
前記土台部は、前記固定辺を一辺とする第1平面を有し、
前記可動部は、前記可動辺を一辺とする第2平面を有し、
前記固定辺と前記可動辺とが同じ方向を向くように前記第2平面と前記第1平面とを面接触させ、かつ、前記可動辺が前記土台部に対し前記固定辺に沿った移動方向に相対的に移動するように前記可動部と前記土台部とを組み合わせ、活線の架空線に設置される複数の忌避線架線具を着脱可能な設置具であって、
前記土台部及び前記可動部には、
前記土台部及び前記可動部のうち一方を切り欠いて設けられた一つの垂直凹部と、前記土台部及び前記可動部の他方を切り欠いて設けられた鉤状凹部であって、前記固定辺又は可動辺側に切残部がない第1領域と、前記固定辺又は可動辺側に切残部がある第2領域とを有する一つの鉤状凹部とで構成される対が、前記移動方向に沿って複数設けられ、
各前記垂直凹部は、
前記土台部に設けられる場合は、前記固定辺側から前記固定辺に対し垂直な方向に各前記忌避線架線具を挿入可能な大きさに切り欠かれ、
前記可動部に設けられる場合は、前記可動辺側から前記可動辺に対し垂直な方向に各前記忌避線架線具を挿入可能な大きさに切り欠かれ、
各前記鉤状凹部は、
前記土台部に設けられる場合は、前記固定辺側から当該固定辺に対し垂直な方向に切り欠かれ、前記忌避線架線具を挿入可能な大きさに切り欠かれた前記第1領域と、前記第1領域に連続し、前記固定辺に沿って平行に切り欠かれ、かつ、前記忌避線架線具を挿入可能な大きさに切り欠かれるとともに、前記土台部が切り欠かれていない前記切残部が前記固定辺側に位置する前記第2領域とを有し、
前記可動部に設けられる場合は、前記可動辺側から当該可動辺に対し垂直な方向に切り欠かれ、前記忌避線架線具を挿入可能な大きさに切り欠かれた前記第1領域と、前記第1領域に連続し、前記可動辺に沿って平行に切り欠かれ、かつ、前記忌避線架線具を挿入可能な大きさに切り欠かれるとともに、前記可動部が切り欠かれていない前記切残部が前記可動辺側に位置する前記第2領域とを有し、
前記土台部及び前記可動部は、
前記垂直凹部と前記鉤状凹部の前記第1領域とが重なって、前記忌避線架線具を前記固定辺及び前記可動辺側に挿抜可能な第1空間を形成する第1位置と、前記垂直凹部と前記鉤状凹部の前記第2領域とが重なった第2空間であって、差し込まれた前記忌避線架線具が前記切残部によって前記固定辺及び前記可動辺側に抜けない第2空間を形成する第2位置との間で相対的に移動可能に組み合わされている設置具。
【請求項2】
請求項1記載の設置具において、
前記被支持部は、
前記土台部の前記第1平面に対し垂直な方向に向かって前記土台部から延設されている設置具。
【請求項3】
請求項2に記載の設置具において、
前記被支持部は、
前記土台部のうち前記固定辺が位置する側を表側とした場合に、前記表側に対し、前記土台部の前記第1平面を挟んだ反対側である裏側に位置する前記土台部の縁部から延設された梁部と、
前記梁部の遊端から延設された傾斜部であって、前記土台部から離れる方向、かつ、前記裏側から前記表側に向かう方向に傾斜した傾斜部とを有する設置具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の設置具において、
前記土台部のうち前記固定辺が位置する側を表側とした場合に、前記表側に対し、当該土台部の前記第1平面を挟んだ反対側である裏側に設けられ、前記土台部を水平に配置したとき、重力方向の上方側に向かって開口する複数のロープホルダを備える設置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の忌避線架線具を架空線に設置する作業で用いられる設置具に関する。
【背景技術】
【0002】
架空線には、鳥害を防止するため、架空線の上方に鳥害防止用の忌避線が架けられることがある。この忌避線を架空線の上方に架けるために用いられるのが忌避線架線具であり、架空線には複数の忌避線架線具が架空線の長手方向に沿って所定間隔ごとに設置される。
【0003】
忌避線架線具は、架空線に固定される本体部と、忌避線を支持する支柱部と、操作部とを備えている。このうち、支持部は、本体部から延設されており、忌避線架線具は、本体部が架空線に固定されたときに、この支持部が本体部から上方に向かって延設された状態となるように架空線に取り付けられる。この支持部は、忌避線架線具が架空線に設置されると、架空線の上方で忌避線を支持する。
【0004】
一方、操作部は、本体部が架空線に固定されたときに、本体部の下方に配置される。忌避線架線具は、操作部が操作されると、架空線に設置された本体部が架空線に固定される。
【0005】
このように構成された複数の忌避線架線具を架空線に一度に設置することができる設置具として、図6に記載された、平板状に形成された設置具100が知られている(特許文献1)。
【0006】
この設置具100は、複数の忌避線架線具を架空線に一度に設置するため、その一方の板面上に、各忌避線架線具200を平行に並べつつ板面に対して垂直に着脱できるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-154598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した設置具100を用いて、複数の忌避線架線具200を活線の架空線に設置する作業を行う場合、次のような活線作業用の工事具が用いられることが多い。その工事具は、竿の先端部が二股に分かれて2本の指部をなし、竿の後端部に備えられた操作部を操作すると各指部の遊端が近づき、各指部の遊端の間に対象物を挟んで対象物を把持することが可能な器具である。
【0009】
この活線作業用の工事具を用いて複数の忌避線架線具200を活線の架空線に設置する作業を行う場合、作業員は、まず、設置具100に複数の忌避線架線具200を取り付ける。次に、作業員は、活線作業用の工事具の先端側に設けられた2本の指部で設置具100を挟み、活線作業用の工事具の後端側を持って設置具100を持ち上げ、設置具100に取り付けられた複数の忌避線架線具200を架空線に掛ける。
【0010】
ところで、上述した設置具100を用いて各忌避線架線具200を架空線に掛けた場合、各忌避線架線具200を設置具100から外す必要がある。
しかし、上述した設置具100を用いて各忌避線架線具200を架空線に掛けた場合、設置具100は、設置具100の板面と架空線とが平行になるように配置される。また、架空線に掛けられた各忌避線架線具200は、架空線の延線方向に対して垂直な方向、すなわち、設置具100の板面に対して垂直な方向に移動させることができない。さらに、設置具100は、前述のように、設置具100の板面に対して各忌避線架線具200を垂直に着脱できるよう構成されている。
そのため、上述した設置具100を用いて架空線に掛けた各忌避線架線具200を設置具100から取り外す場合、各忌避線架線具200を設置具100に対して動かすのではなく、設置具100を各忌避線架線具200に対して動かして、各忌避線架線具200を設置具100から外す必要がある。
しかし、設置具100は、各忌避線架線具200が設置具100から外れないように各忌避線架線具200を止めている。そのため、作業員は、設置具100を各忌避線架線具200から外す場合、設置具100を各忌避線架線具200から力を入れて引き剥がす必要がある。
つまり、上述した設置具100を用いて各忌避線架線具200を架空線に掛けた場合、設置具100を各忌避線架線具200から力を入れて引き剥がすことで、結果として、各忌避線架線具200を設置具100から外すことができる。
【0011】
しかし、設置具100を各忌避線架線具200から力を入れて引き剥がす作業は、力を要する作業なので、作業者にとって負担のかかる作業であった。
本発明は、各忌避線架線具を簡単に取り外すことができる設置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の設置具は、直線状の一辺である固定辺を縁部に有する平面形状に形成された土台部と、直線状の一辺である可動辺を縁部に有する平面形状に形成された可動部と、前記土台部から延設され、活線作業用の工事具で支持可能な被支持部と、を備え、前記土台部は、前記固定辺を一辺とする第1平面を有し、前記可動部は、前記可動辺を一辺とする第2平面を有し、前記固定辺と前記可動辺とが同じ方向を向くように前記第2平面と前記第1平面とを面接触させ、かつ、前記可動辺が前記土台部に対し前記固定辺に沿った移動方向に相対的に移動するように前記可動部と前記土台部とを組み合わせ、複数の設置対象物を着脱可能な設置具である。
【0013】
本発明の設置具は、前記土台部及び前記可動部に、前記土台部及び前記可動部のうち一方を切り欠いて設けられた一つの垂直凹部と、前記土台部及び前記可動部の他方を切り欠いて設けられた鉤状凹部であって、前記固定辺又は可動辺側に切残部がない第1領域と、前記固定辺又は可動辺側に切残部がある第2領域とを有する一つの鉤状凹部とで構成される対が、前記移動方向に沿って複数設けられている。
【0014】
各前記垂直凹部は、前記土台部に設けられる場合は、前記固定辺側から前記固定辺に対し垂直な方向に各前記設置対象物を挿入可能な大きさに切り欠かれ、前記可動部に設けられる場合は、前記可動辺側から前記可動辺に対し垂直な方向に各前記設置対象物を挿入可能な大きさに切り欠かれ、各前記鉤状凹部は、前記土台部に設けられる場合は、前記固定辺側から当該固定辺に対し垂直な方向に切り欠かれ、前記設置対象物を挿入可能な大きさに切り欠かれた前記第1領域と、前記第1領域に連続し、前記固定辺に沿って平行に切り欠かれ、かつ、前記設置対象物を挿入可能な大きさに切り欠かれるとともに、前記土台部が切り欠かれていない前記切残部が前記固定辺側に位置する前記第2領域とを有している。
【0015】
前記土台部及び前記可動部には、前記垂直凹部と前記鉤状凹部の前記第1領域とが重なって、前記設置対象物を前記固定辺及び前記可動辺側に挿抜可能な第1空間を形成する第1位置と、前記垂直凹部と前記鉤状凹部の前記第2領域とが重なった第2空間であって、差し込まれた前記設置対象物が前記切残部によって前記固定辺及び前記可動辺側に抜けない第2空間を形成する第2位置との間で相対的に移動可能に組み合わされている。
【0016】
背景技術で述べた忌避線架線具(本発明の設置対象物に相当する)は、架空線に固定される本体部と、この本体部から延設された支柱部とを有し、支柱部は、その延設方向に対し垂直な方向に突出した突出部を有することがある。本発明の設置具を用いて複数の忌避線架線具を架空線に取り付ける場合は、垂直凹部と鉤状凹部の第2領域とが重なったときに形成される第2空間を、各忌避線架線具の支持部のうち突出部が設けられた大径部分を除く小径部分が通るが、大径部分が通らない大きさとすればよい。
【0017】
このようにすると、本発明の設置具は、可動部を土台部に対して第2位置に移動させて、垂直凹部と鉤状凹部の第2領域とが重なって第2空間を形成するようにすれば、切残部が、忌避線架線具の支持部が第2空間から抜けないように固定するので、複数の忌避線架線具を固定することができる。
【0018】
また、本発明の設置具は、可動部を土台部に対して第1位置に移動させて、垂直凹部と鉤状凹部の第1領域とが重なって第1空間を形成するようにすれば、設置対象物を固定辺及び可動辺側に挿抜可能な第1空間が形成されるので、複数の忌避線架線具を着脱することができる。
【0019】
したがって、本発明の設置具を用いると、可動部を土台部に対して移動させるだけの簡単な操作で、本発明の設置具に対して複数の忌避線架線具を簡単に取り付けることができる。しかも、本発明の設置具を用いると、架空線に各忌避線架線具を取り付けた後も、架空線に取り付けられた忌避線架線具から取り外すこともできる。
【0020】
(2)本発明の設置具のように、被支持部は、土台部の第1平面に対し垂直な方向に向かって土台部から延設されていてもよい。
【0021】
活線作業用の工事具を用いて忌避線架線具を架空線に掛ける場合、従来は、架空線の下方から活線作業用の工事具を用いて忌避線架線具を架空線に近づけることが多い。そのため、本発明の設置具を用いて忌避線架線具を架空線に掛ける場合も、活線作業用の工事具で本発明の設置具の被支持部を支持して、本発明の設置具を架空線に近づけることが多くなる。
【0022】
そのため本発明の設置具のように、土台部の第1平面に対し垂直な方向に向かって土台部から延設されるように被支持部を設け、活線作業用の工事具で被支持部を支持すると、その支持した先に土台部を位置させることができる。
【0023】
すなわち、本発明の設置具の被支持部を把持する活線作業用の工事具の先を架空線の下方から架空線に近づければ、活線作業用の工事具の先よりも上方側に、複数の忌避線架線具を固定する土台部及び可動部を位置させることができる。
【0024】
したがって、本発明の設置具を用いると、活線作業用の工事具を用い、忌避線架線具を下方から架空線に近づける、従来と同じ作業方法で、複数の忌避線架線具を架空線に掛けることができる。
【0025】
(3)被支持部は、土台部のうち固定辺が位置する側を表側とした場合に、表側に対し、土台部の第1平面を挟んだ反対側である裏側に位置する土台部の縁部から延設された梁部と、梁部の遊端から延設された傾斜部であって、土台部から離れる方向側、かつ、裏面から表側に向かう方向に傾斜した傾斜部とを有するものとしてもよい。
【0026】
活線作業用の工事具を用いて忌避線架線具を架空線に取り付ける場合、架空線の斜め下方から活線作業用の工事具を用いて忌避線架線具を架空線に近づける作業を行う場合もあるためである。
【0027】
(4)なお、本発明のように、土台部のうち固定辺が位置する側を表側とした場合に、表側に対し、土台部の第1平面を挟んだ反対側である裏側に設けられ、土台部を水平に配置したとき、重力方向の上方側に向かって開口する複数のロープホルダを備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態の設置具に取り付けられる忌避線架線具の斜視図である。(a)は第3挟部を最も下方に移動させた様子を示す正面斜視図、(b)は第3挟部を架空線を第2挟部との間に挟むことが可能な第1挟位置に移動させた様子を示す正面斜視図である。
図2】実施形態の設置具の斜視図である。
図3】実施形態の設置具を構成する土台部の説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図4】実施形態の設置具を構成する可動部の説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図5】実施形態の設置具の動作を説明するための説明図であり、(a)は着脱時の平面図、(b)は固定時の平面図、(c)は固定時の右側面図である。
図6】従来の設置具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態の設置具は、図1(a)及び図1(b)に示す忌避線架線具9を架空線に設置するための設置具である。そのためまず、忌避線架線具9について詳細に説明した後、本実施形態の設置具を説明する。
【0030】
<忌避線架線具9>
忌避線架線具9は、図1(a)及び図1(b)に示すように、本体部7と、支持部8と、操作部90とを備えている。本体部7は、三方覆部70と、蓋部71と、移動部72とを備えている。
【0031】
三方覆部70は、コ字形状に形成されており、忌避線架線具9が架空線に設置されるとき、架空線の上方側、下方側、及び、一方の側方側を覆う。このうち一方の側方側とは、架空線の軸方向を前後方向としたときの左右方向のいずれかの一方の方向側を意味する。
【0032】
蓋部71は、長方形状に形成されており、忌避線架線具9が架空線に設置されるとき、三方覆部70が架空線を覆っていない部分、すなわち、架空線の他方の側方側を覆う。
【0033】
三方覆部70及び蓋部71は、架空線の外周面を囲って、架空線が入る大きさの取付空間79を形成する。
蓋部71は、長手方向の一端が、三方覆部70のうち架空線の上方側を覆う部分である上方部77の遊端を支点として三方覆部70に対して回動可能に固定されている。具体的には、蓋部71は、架空線の他方の側方側を覆う閉位置から、取付空間79の外部から取付空間79の内部に架空線を差し入れることが可能となる開位置まで回動可能に固定されている。
【0034】
移動部72は、取付空間79内で上下方向に移動可能に、三方覆部70に対して取り付けられている。本実施形態では、蓋部71を開けて、取付空間79のうち、移動部72と上方部77との間の空間内に差し入れた後、操作部85を操作して、移動部72を第1挟位置に移動すれば、移動部72と上方部77との間に架空線が挟まれて忌避線架線具9が架空線に固定される。
【0035】
支持部8は、長尺部80と、忌避線固定具81とを備えている。
長尺部80は、上下方向に長細い平板形状に形成されており、板面が左右方向に対して垂直となるように、上方部77の左右方向の中央から上方に向かって延設されている。
【0036】
この長尺部80には、忌避線固定具81が取り付けられる長孔部82が設けられている。この長孔部82は、長尺部80の長さで示すと、長尺部80の上端から下方に1/5下がった地点から3/5下がった地点まで形成された、上下方向に細長い長方形状の孔部である。
【0037】
忌避線固定具81も、長孔部82と同様、上下方向に長細い長方形状に形成されている。長孔部82の内部には、長孔部82の長手方向の中央に、軸方向が前後方向に沿った回転軸が設けられている。忌避線固定具81は、その長手方向の中央部分が、この回転軸に対し回転可能に固定されている。忌避線固定具81は、長尺部80と平行となる位置(以下、「折畳位置」という)まで回転したときに、長孔部82をほぼ埋める大きさに形成されている。
【0038】
忌避線固定具81は、折畳位置に位置するとき、長尺部80に対して固定される。本実施形態では、長孔部82上を通るように忌避線を配置した後、忌避線固定具81を回転させ、忌避線固定具81で忌避線を押して忌避線を長孔部82内に押し入れ、長孔部82内で忌避線固定具81と長尺部80との間に忌避線を挟み、忌避線固定具81を長尺部80に固定すると、忌避線が忌避線架線具9に固定される。すると、忌避線は、取付空間79に位置する架空線から所定距離上方で長尺部80に支持される。
【0039】
長尺部80は、長孔部82の上下で長孔部82に隣接する位置に形成された突出部83を有する。これら突出部83は、長尺部80の延設方向(上下方向)に対し垂直な方向(左右方向)に突出している。
なお、以下では、長尺部80のうち、突出部83が設けられた部分を大径部分84、長尺部80のうち、下方側の突出部83の下方に位置する部分を小径部分85とよぶ。
【0040】
操作部90は、三方覆部70のうち架空線の下方側を覆う部分である下方部78の左右方向の中央から下方に向かって中心軸が延びる円筒形状に形成されている。この操作部90を中心軸周りに回転させると、移動部72が取付空間79内で上下方向に移動する。
【0041】
以上のように構成された忌避線架線具9は、蓋部71を開け、架空線を取付空間79内に入れ、蓋部71を閉め、操作部90を操作して移動部72をさせ、移動部72と上方部77との間に架空線を挟めば、架空線に固定することができる。
【0042】
そして、これら忌避線架線具9を架空線に固定して、忌避線をそれぞれの忌避線架線具9の長尺部80に支持させれば、架空線上に鳥害防止用の忌避線を張ることができる。
【0043】
<設置具1>
次に、本実施形態の設置具1について、図2図4を用いて説明する。
本実施形態の設置具1は、上述の忌避線架線具9を架空線に掛けるために用いられる器具である。
【0044】
本実施形態の設置具1は、図2に示すように、土台部2と、可動部3と、ロープホルダ部5とを備えている。
土台部2は、図3に示すように、長方形状に形成された一枚の平板を、長方形の2つの短辺の中心を結んだ線(以下「折れ線」という)で垂直に折った形状に形成されている。図3では、このように形成された土台部2のうち、折れ線を挟んだ一方の平板の板面(以下、水平板面という)が、水平に配置され、他方の平板の板面が、水平板面に対し垂直下方側に折れた状態で配置した様子を示している。なお、土台部2のうち、板面が水平となる部分の平板を水平部平板20、この水平部平板20に対し板面が垂直となる部分の平板を垂直部平板25という。水平部平板20も垂直部平板25も長方形状に形成される。
【0045】
水平部平板20には、複数の垂直凹部21が設けられている。これら垂直凹部21は、水平部平板20がなす長方形状の板面が有する2つの長辺のうち、垂直部平板25側が位置する側(裏側)とは反対側(表側)に位置する長辺である固定辺22側に設けられている。これら垂直凹部21は、固定辺22に対して垂直な2辺を有する四角形状に切り欠いた平面形状に形成されている。なお、固定辺22は、水平部平板20の厚みを考慮した場合、水平部平板20の厚み方向に垂直な板面のうち、可動部3が載る上方側の板面が有する長辺のうち表側の辺である。
【0046】
また、水平部平板20には、水平部平板20の長手方向に沿って長尺な形状の2つの固定用孔23が設けられている。これら固定用孔23は、可動部3が備える後述する固定用突起34(図4(b)参照)を挿入可能な幅(固定用孔23の長手方向に垂直な方向の幅)を有する。これら固定用孔23は、垂直凹部21よりも垂直部平板25側であって、水平部平板20がなす長方形の2つの短辺の中点を結んだ線上に形成されている。
【0047】
垂直部平板25には、複数のホルダ26が設けられている。これらホルダ26は、垂直部平板25がなす長方形状の板面が有する2つの長辺のうち、水平部平板20側が位置する側とは反対側に位置する長辺である下方辺27に接する垂直部平板25の表側の板面上に設けられている。
【0048】
これらホルダ26は、各垂直凹部21の奥まで、忌避線架線具9の支持部8が挿入されたときに、本体部7を保持する。
【0049】
土台部2は、被支持部4を備えている。被支持部4は、垂直部平板25の下方辺27の長手方向中央より下方に向かって延設されている。下方辺27は、垂直部平板25がなす長方形の2つの長辺のうち、水平部平板20側が位置する側とは反対側に位置する長辺である。被支持部4は、主に2つの部位からなっており、梁部40と、傾斜部41とを有する。
【0050】
梁部40は、下方辺27から下方に向かって延設され、傾斜部41は、梁部40の遊端から延設されている。傾斜部41は、梁部40の遊端から、下方、かつ、裏面から表側に向かう方向に向かって傾斜している。
【0051】
なお、各垂直凹部21の垂直部平板25側の縁部からは、各垂直凹部21に忌避線架線具9の支持部8が挿入されたときに、支持部8が当たって、支持部8が揺れることを抑止するための抑止片28が下方側に向かって延設されている。
【0052】
ロープホルダ部5は、5つのロープホルダ50からなっている。これらロープホルダ50は、有底円筒形状に形成されており、開口した天井部分が上方を向くように、垂直部平板25の裏面側の板面上に取り付けられている。また、これらロープホルダ50は、固定辺22や下方辺27に沿った方向でみた場合、垂直部平板25に対し、各垂直凹部21の間の位置に取り付けられている。
【0053】
可動部3は、図4に示すように、土台部2の水平部平板20よりも長尺な長方形状に形成された平板である。可動部3は、土台部2の水平部平板20の上方側の面に面接触するように、水平部平板20上に載せられる。また可動部3は、可動部3の長手方向と水平部平面20の長手方向とが平行になるように、水平部平板20上に載せられる。
【0054】
可動部3には、複数の鉤状凹部31が形成されている。これら鉤状凹部31は、水平部平板20上に可動部3が重ねられたときに表側に位置する長辺である可動辺32から可動部3を鉤状に切り欠いた形状に形成されている。これら鉤状凹部31は、可動部3が水平部平板20上に重ねられたときに、各垂直凹部21に対向する位置にひとつずつ設けられ、各鉤状凹部31は、対向する垂直凹部21とそれぞれ対をなしている。可動部3には、複数の鉤状凹部31が形成されることにより、複数の切残部310が可動辺32に沿って形成される。なお、可動辺32は、可動部3の厚みを考慮した場合、可動部3の厚み方向に垂直な板面のうち、水平部平板20に接する側の下方側の板面が有する長辺のうち表側の辺である。
【0055】
また可動部3には、2つの操作孔33が形成されている。これら操作孔33は、可動部3の長手方向の両端であって、可動部3の長手方向にみた場合、鉤状凹部31が設けられている領域の外側に設けられている。これら操作孔33は、活線作業用の工事具の指部が通る大きさに形成されている。
【0056】
また、可動部3には、2つの固定用突起34が設けられている。これら固定用突起34は、可動部3が水平部平板20上に重ねられたときに、各固定用孔23に挿入可能な位置にひとつずつ設けられている。
【0057】
なお、以下、各鉤状凹部31のうち、可動辺32側から当該可動辺32に対し垂直な方向に切り欠かれ、忌避線架線具9の支持部8の小径部分85(図1参照)を挿入可能な大きさに切り欠かれた領域を第1領域38と呼ぶ。また、第1領域38に連続し、可動辺32に沿って平行に切り欠かれ、かつ、忌避線架線具9の支持部8の小径部分85を挿入可能な大きさに切り欠かれるとともに、可動部3が切り欠かれていない切残部310が可動辺32側に位置する領域を第2領域39とよぶ。
【0058】
以上のように構成された設置具1の動作について、図5を用いて、説明する。
本実施形態の設置具1は、図5(a)に示すように、土台部2の垂直凹部21と、可動部3の鉤状凹部31のうち第1領域38とが重なる第1位置と、図5(b)に示すように、土台部2の垂直凹部21と、可動部3の鉤状凹部31のうち第2領域39とが重なる第2位置との間で、可動辺32が固定辺22に沿って移動可能に、可動部3が土台部2に対して組み付けられる。これにより、可動部3が土台部2に対して第1位置に移動すると、切残部310が土台部2の垂直凹部21の開口側を閉じる。また、可動部3が土台部2に対して第2位置に移動すると、切残部310が土台部2の垂直凹部21の開口側を開く。
【0059】
また、上記のように可動部3を土台部2に組み付けたときに、固定用孔23に固定用突起34が挿入され、固定用突起34が固定用孔23に挿入された状態で移動するので、固定用孔23は、この移動が可能な長さに形成されている。
【0060】
次に、本実施形態の設置具1に忌避線架線具9を取り付けるときの様子について説明する。
【0061】
本実施形態の設置具1は、可動部3に形成された各鉤状凹部31の各第2領域39が、土台部2に形成された各垂直凹部21に重なるように、土台部2に対して可動部3を移動させると、各鉤状凹部31の各第2領域39が形成する空間と各垂直凹部21が形成する空間とが重なる。このとき重なった空間である第1空間は、切残部310によって閉じられるので、可動辺32及び固定辺22が位置する側に向かって閉じた非開放空間となる。
【0062】
一方、本実施形態の設置具1は、可動部3に形成された各鉤状凹部31の各第1領域38が、土台部2に形成された各垂直凹部21に重なるように、土台部2に対して可動部3を第1位置まで移動させると、各鉤状凹部31の各第1領域38が形成する空間と各垂直凹部21が形成する空間とが重なる。このとき重なった空間である第2空間は、切残部310によって閉じられることはないので、可動辺32及び固定辺22が位置する側に向かって開放される開放空間となる。
【0063】
非開放空間は、忌避線架線具9の支持部8の小径部分85(図1参照)とほぼ同じ大きさに形成されている。そのため、図5(a)に示すように、可動部3を土台部2に対して移動して、開放空間を形成させ、その開放空間を介して忌避線架線具9の支持部8を差し込み、その後図5(b)に示すように、反対方向に可動部3を土台部2に対して移動して、非開放空間を形成させると、忌避線架線具9の支持部8の小径部分85(図1参照)が非開放空間に嵌った状態で忌避線架線具9が設置具1に設置される。
【0064】
また、忌避線架線具9の支持部8には、突起部83が形成されており、その突起部83が形成された部分である大径部分84は、小径部分85よりも断面積が大きいので、忌避線架線具9は、図5(c)に示すように、突起部83が設置具1に引っ掛かることにより、設置具1に固定される。
【0065】
すなわち、本実施形態の設置具1は、可動部3を開放空間が形成される位置まで移動させれば、忌避線架線具9を着脱することができ、可動部3を非開放空間が形成される位置まで移動させると、忌避線架線具9を固定することができる。
【0066】
したがって、本実施形態の設置具1は、可動部3を土台部2に対して移動させるだけの簡単な操作で、本実施形態の設置具1に対して複数の忌避線架線具9を簡単に取り付けることができる。また、本実施形態の設置具1は、架空線に各忌避線架線具9を取り付けた後も、架空線に取り付けられた忌避線架線具9から取り外すこともできる。
【0067】
ところで、活線作業用の工事具を用いて忌避線架線具9を架空線に掛ける場合、従来は、架空線の下方から活線作業用の工事具を用いて忌避線架線具9を架空線に近づけることが多い。そのため、本実施形態の設置具1を用いて忌避線架線具9を架空線に掛ける場合も、活線作業用の工事具で設置具1の被支持部4を支持して、設置具1を架空線に近づけることが多くなる。
【0068】
この点、本実施形態の設置具1は、土台部2から下方に向かって延設された被支持部4を備えているので、活線作業用の工事具で被支持部を把持すると、その把持した先に土台部2を位置させることができる。
【0069】
すなわち、設置具1の被支持部4を把持する活線作業用の工事具の先を架空線の下方から架空線に近づければ、活線作業用の工事具の先よりも上方側に、複数の忌避線架線具9を固定する土台部2及び可動部3を位置させることができる。
【0070】
したがって、本実施形態の設置具1を用いると、活線作業用の工事具を用い、忌避線架線具9を下方から架空線に近づける、従来と同じ作業方法で、複数の忌避線架線具9を架空線に掛けることができる。
【0071】
しかも、本実施形態の設置具1は、被支持部4が傾斜部41を備えているので、この傾斜部41を活線作業用の工事具で把持すれば、架空線の斜め下方から活線作業用の工事具を用いて忌避線架線具を架空線に近づける作業を行うことができる。
【0072】
本実施形態の設置具1と、本発明の設置具との対応関係について説明する。
本実施形態の設置具1が備える土台部2のうち可動部3が重ねられる面が、本発明の設置具の第1平面に相当する。
本実施形態の設置具1が備える可動部3のうち土台部2に重なる面が、本発明の設置具の第2平面に相当する。
【0073】
[他の実施形態]
以上、実施形態について説明したが、特許請求の範囲に記載された発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。
(1)上記実施形態では、土台部2に垂直凹部21を設け、可動部3に鉤状凹部31を設けたが、土台部2に鉤状凹部31を設け、可動部3に垂直凹部21を設けてもよい。また、垂直凹部21及び鉤状凹部31を土台部2及び可動部3に千鳥に設けてもよい。
(2)上記実施形態では、土台部2及び可動部3は長方形状に形成されているが、例えば、半月状などに形成されていてもよい。その場合、固定辺22は、土台部2と可動部3とが組み合わされたとき、可動部3に接触する土台部2の平面の縁部をなす直線状に形成された一辺であればよい。また、可動辺32は、土台部2と可動部3とが組み合わされたとき、土台部2に接触する可動部3の平面の縁部をなす直線状に形成された一辺であればよい。
【0074】
(3)本発明の各構成要素は概念的なものであり、上記実施形態に限定されない。例えば、1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…設置具、2…土台部、3…可動部、4…被支持部、5…ロープホルダ部、
7…本体部、8…支持部、9…忌避線架線具、20…水平部平板、21…垂直凹部、
22…固定辺、23…固定用孔、25…垂直部平板、26…ホルダ、27…下方辺、
28…抑止片、31…鉤状凹部、32…可動辺、33…操作孔、34…固定用突起、
40…梁部、41…傾斜部、50…ロープホルダ、70…三方覆部、71…蓋部、
72…移動部、77…上方部、78…下方部、79…取付空間、80…長尺部、
81…忌避線固定具、82…長孔部、83…突出部、83…突起部、85…操作部、
90…操作部 310…切残部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6