(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】軌条車両検査システム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/08 20060101AFI20220815BHJP
B25B 23/14 20060101ALI20220815BHJP
B61K 13/00 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
G01M17/08
B25B23/14 620Z
B61K13/00 Z
(21)【出願番号】P 2018095335
(22)【出願日】2018-05-17
【審査請求日】2021-03-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日 平成29年11月29日から12月1日 展示会名 第5回鉄道技術展2017 開催場所 幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1)[刊行物等]展示日 平成30年1月17日から1月19日 展示会名 第2回スマート工場EXPO 開催場所 東京ビッグサイト(東京都江東区有明3-11-1)
(73)【特許権者】
【識別番号】000177128
【氏名又は名称】三洋機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】常田 勝男
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-185556(JP,A)
【文献】特開2010-244152(JP,A)
【文献】特開平10-207529(JP,A)
【文献】特開2010-194702(JP,A)
【文献】特開2011-056643(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0048566(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00- 17/10
B61C 1/00- 17/12
B61D 1/00- 15/12
B61G 1/00- 11/18
B61J 1/00- 99/00
B61K 1/00- 13/04
B25B 23/00- 23/18
G06Q 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検査員によって軌条車両を検査するための軌条車両検査システムであって、
各々の前記検査員が携帯する複数の情報端末
と、各々の前記検査員が携帯する複数のトルクレンチとを備え、
各々の前記情報端末は、その前記情報端末を携帯する前記検査員の前記軌条車両に関する第一検査結果データを記憶する第一記憶部と、他の前記検査員の前記軌条車両に関する第二検査結果データを記憶する第二記憶部と、前記第一記憶部及び前記第二記憶部に記憶された前記第一検査結果データ及び前記第二検査結果データを表示可能な表示部とを備え、
各々の前記情報端末は、他の前記情報端末との間で直接無線通信することにより、他の前記情報端末の前記第一記憶部に記憶された前記第一検査結果データを受信し、受信した前記第一検査結果データを前記第二検査結果データとして前記第二記憶部に記憶
し、
各々の前記トルクレンチは、前記軌条車両の締結部材を設定トルク値で締め付けると共に、その締付作業に関する締付作業データを送信し、
各々の前記情報端末は、その前記情報端末を携帯する前記検査員に対応する前記トルクレンチから受信した前記締付作業データに基づいて前記第一検査結果データを生成すると共に、生成した前記第一検査結果データを前記第一記憶部に記憶することを特徴とする軌条車両検査システム。
【請求項2】
各々の前記情報端末は、前記軌条車両の各締結部材の設定トルク値データが予め登録された第三記憶部を更に備え、
各々の前記情報端末は、その前記情報端末を携帯する前記検査員の検査内容に対応する前記設定トルク値データを前記第三記憶部から読み出して送信し、
各々の前記トルクレンチは、その前記トルクレンチを携帯する前記検査員に対応する前記情報端末から受信した前記設定トルク値データに基づいて前記設定トルク値を自動設定することを特徴とする請求項
1に記載の軌条車両検査システム。
【請求項3】
前記表示部は、タッチパネルによるデータ入力が可能であり、
前記第一検査結果データ及び前記第二検査結果データは、各々の検査を実施した前記検査員が前記タッチパネルにより手書き入力したサインデータを含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の軌条車両検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌条車両を検査するための軌条車両検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新幹線などの軌条車両には安全な運行の確保が求められるため、軌条車両に対して各種検査が実施される。各種検査は、定期検査と臨時検査とに大別される。
【0003】
定期検査は、全般検査、台車検査、仕業検査及び交番検査を含む。
【0004】
全般検査では、軌条車両の全ての機器類を取り外すと共に、全般に亘る詳細な検査が実施される。
【0005】
台車検査では、軌条車両の台車に搭載されているブレーキ装置、主電動機、駆動装置などの主要装置を取り外すと共に、これら主要装置を含む台車に関する検査が実施される。
【0006】
仕業検査及び交番検査では、軌条車両を分解せずに、集電装置、台車(ブレーキ装置を含む)などの運行上も特に重要とされる装置に関する検査が実施される。なお、交番検査は、仕業検査よりも詳細な検査であって、仕業検査よりも長い検査周期で実施される。
【0007】
臨時検査は、例えば車両に急なトラブルが生じた際など、定期検査とは異なるタイミングで実施される検査である。このため、臨時検査の検査を実施する検査場所は、トラブルの発生地点やその近傍に臨時で設定される場合が多い。
【0008】
従来、これら定期検査や臨時検査の検査結果は、紙媒体で管理されているのが一般的である。しかしながら、検査結果を複数の検査員の間で共有するのに時間と労力がかかるという問題がある。また、検査結果の記入ミスなどの人為的ミスも生じやすくなるという問題もある。
【0009】
そこで、例えば特許文献1には、情報端末を用いて検査結果の電子化を図ることが提案されている。同文献に開示のシステムでは、検査終了後に、検査員が使用した情報端末をパソコンやサーバーに接続することによって、情報端末に記憶されている検査結果データが各検査員の間で共有されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、軌条車両の定期検査や臨時検査は、複数の検査員によって同時に実施されるのが一般的である。
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示のシステムでは、軌条車両の検査終了後に、各情報端末の検査結果データが他の検査員に初めて共有されるため、検査中は他の検査員の進捗状況や検査結果を全く把握することができない。従って、軌条車両の検査を複数の検査員で効率よく実施することが難しい。
【0013】
本発明は、軌条車両の検査を複数の検査員で効率よく実施することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、複数の検査員によって軌条車両を検査するための軌条車両検査システムであって、各々の検査員が携帯する複数の情報端末を備え、各々の情報端末は、その情報端末を携帯する検査員の軌条車両に関する第一検査結果データを記憶する第一記憶部と、他の検査員の軌条車両に関する第二検査結果データを記憶する第二記憶部と、第一記憶部及び第二記憶部に記憶された第一検査結果データ及び第二検査結果データを表示可能な表示部とを備え、各々の情報端末は、他の情報端末との間で直接無線通信することにより、他の情報端末の第一記憶部に記憶された第一検査結果データを受信し、受信した第一検査結果データを第二検査結果データとして第二記憶部に記憶することを特徴とする。ここで、「軌条車両」には、鉄道車両(例えば新幹線など)及びモノレール車両が含まれる。このような構成によれば、各々の情報端末の間の直接無線通信によって、互いの検査結果データが各々の情報端末の表示部に表示可能な状態となる。従って、複数の検査員によって軌条車両の検査を実施する場合でも、各々の検査員の進捗状況や検査結果を互いにリアルタイムに共有することができる。
【0015】
ここで、各々の情報端末の間でLAN(Local Area Network)を介して通信することも考えられる。しかしながら、軌条車両は非常に長いため、軌条車両の検査はLANが設けられていない屋外で実施される場合が多い。また、臨時検査などの場合には検査場所も都度異なる傾向にあるため、各々の情報端末の間の通信のためのLANを検査場所に予め設置しておくことも現実的には難しい。従って、本願発明では、このような軌条車両に特有の事情を考慮し、各々の情報端末の間の通信に、LANを必要としない直接無線通信を使用している。
【0016】
上記の構成において、各々の検査員が携帯する複数のトルクレンチを更に備え、各々のトルクレンチは、軌条車両の締結部材を設定トルク値で締め付けると共に、その締付作業に関する締付作業データを送信し、各々の情報端末は、その情報端末を携帯する検査員に対応するトルクレンチから受信した締付作業データに基づいて第一検査結果データを生成すると共に、生成した第一検査結果データを第一記憶部に記憶することが好ましい。ここで、「締結部材」には、ボルト及びナットが含まれる。このようにすれば、軌条車両の検査の大部分を占めるトルクレンチによる締結部材の締付作業について、その進捗状況や検査結果を複数の検査員の間でリアルタイムに共有することができる。
【0017】
上記の構成において、各々の情報端末は、軌条車両の各締結部材の設定トルク値データが予め登録された第三記憶部を更に備え、各々の情報端末は、その情報端末を携帯する検査員の検査内容に対応する設定トルク値データを第三記憶部から読み出して送信し、各々のトルクレンチは、そのトルクレンチを携帯する検査員に対応する情報端末から受信した設定トルク値データに基づいて設定トルク値を自動設定することが好ましい。このようにすれば、検査員の検査内容に対応した設定トルク値が自動設定されるため、設定トルク値を誤って設定するという事態を防止することができる。
【0018】
上記の構成において、表示部は、タッチパネルによるデータ入力が可能であり、第一検査結果データ及び第二検査結果データは、各々の検査を実施した検査員がタッチパネルにより手書き入力したサインデータを含むことが好ましい。このようにすれば、各々の検査を実施した検査員をサインデータから特定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、軌条車両の検査を複数の検査員で効率よく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】軌条車両検査システムを適用した軌条車両の検査工程の作業状況を示す図である。
【
図4】情報端末の表示部の表示画面の一例を示す図である。
【
図5】情報端末の表示部の表示画面の一例を示す図である。
【
図6】情報端末の表示部の表示画面の一例を示す図である。
【
図7】情報端末の表示部の表示画面の一例を示す図である。
【
図8】情報端末の表示部の表示画面の一例を示す図である。
【
図9】情報端末の表示部の表示画面の一例を示す図である。
【
図10】情報端末の表示部の表示画面の一例を示す図である。
【
図11】情報端末の表示部の表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る検査システムは、複数の検査員1によって軌条車両2を検査するためのシステムであり、トルクレンチ3と、情報端末4とを備えている。
【0023】
複数の検査員1は、例えば、軌条車両2の1位側(例えば右側)と2位側(例えば左側)とに分かれて検査を実施する。また、軌条車両2の1位側と2位側のそれぞれにおいても、例えば、前方から後方に向かって検査を進める検査員1と、後方から前方に向かって検査を進める検査員1とに分かれる場合がある。
【0024】
複数の検査員1は、それぞれ専用のトルクレンチ3及び情報端末4を携帯している。このため、検査員1の人数に応じてトルクレンチ3及び情報端末4もそれぞれ複数存在する。同一の検査員1が携帯するトルクレンチ3及び情報端末4は、互いに通信可能な一組の装置として機能する。本実施形態では、一組のトルクレンチ3と情報端末4との間で直接無線通信が可能とされている。無線通信としては、Bluetooth(登録商標)のような短距離通信を利用することができる。なお、一組のトルクレンチ3と情報端末4との間で有線により通信してもよい。
【0025】
図2に示すように、トルクレンチ3は、軌条車両の各検査対象を固定するためのボルトを設定トルク値で締め付けるものであり、ボルトに作用するトルク値データを検出するトルク検出部31を備えている。トルク検出部31によって検出されたトルク値データを含む締付作業データは、そのトルクレンチ3と組をなす情報端末4に無線で送信されるようになっている。なお、締結部材としてボルトを例示しているが、締結部材はこれに限定されない。
【0026】
トルクレンチ3は、二度締め(既に規定トルク値で締め付けてあるボルトを再度締め付けた場合)を防止する機能と、締付作業回数をカウントする機能とを更に備えている。情報端末4に無線で送信される締付作業データは、二度締めに関するデータと、締付作業回数に関するデータとを更に含む。なお、トルク値と角度(ボルトの回転角度)を同時に監視することにより、二度締めを防止する。締付作業回数をカウントすることにより、ボルトの必要締付箇所の数よりも締付作業回数が少ない場合に、ボルトの締め忘れがあると判断することができる。この際、二度締めを防止する機能を有するため、二度締めにより締付作業回数が誤ってカウントされることが防止される。
【0027】
トルクレンチ3は、そのトルクレンチ3を携帯する検査員1の検査内容に対応した設定トルク値が自動設定されるようになっている。なお、トルクレンチ3は、自動設定された設定トルク値を修正するなどの目的のために、設定トルク値を手動設定することもできるようになっている。
【0028】
情報端末4は、記憶部41と、表示部42と、判定部43とを備えたタブレット端末である。
【0029】
記憶部41は、その情報端末4を携帯する検査員1の軌条車両2に関する第一検査結果データを記憶する第一記憶部41aと、他の検査員1の軌条車両2に関する第二検査結果データを記憶する第二記憶部41bと、全般検査、台車検査、仕業検査、交番検査及び臨時検査の全ての検査内容データが予め登録された第三記憶部41cとを備えている。検査内容データには、軌条車両2の各ボルトの設定トルク値データが含まれている。記憶部41は、情報端末4に内蔵されたSSDなどの記憶装置で構成される。
【0030】
表示部42は、タッチパネル入力が可能である。検査員1が表示部42に表示されるメニューの中から全般検査などの検査内容を選択すると、選択した検査内容に対応した設定トルク値データが、第三記憶部41cから読み出され、その情報端末4と組をなすトルクレンチ3に無線で送信されるようになっている。トルクレンチ3は、そのトルクレンチ3と組をなす情報端末4から設定トルク値データを受信すると、その設定トルク値データに基づいて設定トルク値を自動設定するようになっている。
【0031】
判定部43は、その情報端末4と組をなすトルクレンチ3から受信した締付作業データに基づいて第一検査結果データを生成するようになっている。詳細には、判定部43は、その情報端末4と組をなすトルクレンチ3から受信した締付作業データと、第三記憶部41cに記憶された検査内容データとを比較し、設定トルク値までボルトが正確に締め付けられた否かを判定する。第一検査結果データは、判定部43で判定された締付作業の合否と、実際の締付トルク値とを含み、これらデータが第一記憶部41aに記憶されるようになっている。判定部43は、情報端末4に内蔵されたCPUにより構成される。
【0032】
判定部43は、二度締めに関するデータに基づいてボルトの二度締めを検出し、締付作業回数に関するデータに基づいてボルトの締め忘れを検出する。情報端末4は、判定部43でボルトの二度締めや締め忘れが検出されると、アラームを発する機能を有する。これにより、いわゆるポカヨケが可能となる。アラームの報知方法としては、情報端末4の表示部42に表示する視覚を通じた報知方法、音声による聴覚を通じた報知方法、バイブレーションによる触覚を通じた報知方法、あるいは、視覚、聴覚、触覚のいずれか2つ以上の併用による報知方法などが使用できる。なお、トルクレンチ3が、アラームを発するようにしてもよい。
【0033】
各々の情報端末4は、他の情報端末4との間で、直接無線通信することが可能となっている。この無線通信により、各々の情報端末4は、その情報端末4の第一記憶部41aに記憶された第一検査結果データを他の情報端末4に送信するようになっている。これと共に、各々の情報端末4は、他の情報端末4の第一記憶部41aに記憶された第一検査結果データを受信すると共に、受信した他の情報端末4の第一検査結果データを第二検査結果データとして第二記憶部41bに記憶するようになっている。無線通信としては、Bluetooth(登録商標)のような短距離通信を利用することができる。なお、各々の情報端末4の間の通信可能距離は、一組のトルクレンチ3と情報端末4の間の通信可能距離よりも長距離に設定されている。
【0034】
このような各々の情報端末4の間の無線通信により、各々の情報端末4は、その表示部42に互いの検査結果データを表示することができる。これにより、複数の検査員1は、各々の進捗状況や検査結果を互いにリアルタイムに共有することができる。具体的には、例えば、軌条車両2の1位側の検査を実施する検査員1と、軌条車両2の2位側の検査を実施する検査員1との間でも、進捗状況や検査結果をリアルタイムに共有することができる。この結果、軌条車両2の一部の検査に遅れが生じた場合には、遅れが生じている検査の検査員1を増員するなどして、軌条車両2に関する全ての検査を迅速に進めることができる。また、軌条車両2の検査を休憩などで一時中断した後に再開する場合であっても、各々の検査員1が、検査済み個所を正確に把握することができるため、検査済み個所に対する重複した検査を回避することができる。従って、複数の検査員1が実施する軌条車両2の検査を効率よく実施することができる。
【0035】
本実施形態では、情報端末4の表示部42には、検査員1による検査を開始する前、及び/又は、検査の終了後に、検査員1のサインを手書き入力するためのサイン記入欄が表示されるようになっている(後述する
図9を参照)。このため、検査員1がサイン記入欄にタッチパネルによりサインを手書き入力すると、サインデータが生成される。このサインデータは、第一検査結果データ及び第二検査結果データに含められ、複数の検査員1の間で共有される。
【0036】
情報端末4は、サイン記入欄に記入されたサインが、その検査員1の過去のサインと異なる場合に、アラームを発する機能を更に備えていてもよい。これにより、他人のなりすましを防止することができる。サインデータは、手書きデータに加え、その手書きデータを文字認識により文字コードに変換したデータを含むことが好ましい。これにより、検査員1毎に検査結果の検索や分析がしやすくなる。
【0037】
次に、本実施形態に係る検査システムの処理フローを簡単に説明する。なお、本実施形態に係る検査システムは、全般検査、台車検査、仕業検査、交番検査及び臨時検査のいずれの検査にも適用可能であるが、以下では仕業検査におけるスリ板及びホーンの交換作業に適用した場合を例に取って説明する。これらの交換作業は、スリ板及び/又はホーンをボルトで締め付ける締付作業と、その締付作業の後確認作業とを含む。後確認作業は、締付作業を実施した検査員1によって実施される。
【0038】
図3に示すように、本実施形態に係る検査システムのフローは、ステップS1~ステップS9を含む。
【0039】
ステップS1では、検査員1が、情報端末4の表示部42を用いて、全般検査、台車検査、仕業検査、交番検査及び臨時検査の中から検査種別を選択する。検査種別を選択するための表示画面の一例を
図4に示す。
図4の表示画面の場合、例えば、検査種別のうち「仕業検査」を押下すると、仕業検査に対応したステップS2に移行する。なお、別の検査種別のボタンを押下した場合も、選択した検査種別に対応したステップに移行する。
【0040】
ステップS2では、検査員1が、情報端末4の表示部42を用いて、検査の日付、編成、号車などを入力する。編成と号車を入力するための情報端末4の表示画面の一例を
図5に示す。
図5の表示画面の場合、編成と号車を入力した後に、画面下部の「確定」を押下すると、ステップS3に移行する。
【0041】
ステップS3では、検査員1が、情報端末4の表示部42を用いて、スリ板及びホーンの交換パターンを選択する。交換パターンを選択するための情報端末4の表示画面の一例を
図6に示す。交換パターンとしては、スリ板の交換がある場合とない場合、ホーンの交換がある場合とない場合がある。このうち、ホーンの交換がある場合には、軌条車両2の1位側のホーンのみを交換する場合、2位側のホーンのみを交換する場合、1位及び2位のホーンを交換する場合が含まれる。
図6の表示画面の場合、交換パターンの中から一つを選択した後に、画面下部の「確定」を押下すると、ステップS4に移行する。
【0042】
ステップS4では、検査員1が、情報端末4の表示部42を用いて、スリ板の種別を確認する。スリ板には、耐摩耗性等の諸特性が異なる複数の種類があるためである。スリ板の種別を確認するための情報端末4の表示画面の一例を
図7に示す。
図7の表示画面の場合、スリ板の種別の中から一つを選択した後に、画面下部の「確定」を押下すると、ステップS5に移行する。なお、ステップS4でスリ板の交換がないパターンが選択された場合、ステップS4は省略される。
【0043】
ステップS5では、検査員1が、ボルトの締付作業とその締付作業の後確認作業を実施すると共に、情報端末4の表示部42を用いて、これら作業の検査結果をリアルタイムで確認する。検査結果を表示する情報端末4の表示画面の一例を
図8に示す。
図8の表示画面において、(1)、(2)、(a)及び(b)がスリ板に関する情報、(3)、(4)、(c)及び(d)がホーンに関する情報である。また、画面上部がスリ板及びホーンを写真や概略図で示す第一領域5であり、画面下部が検査結果を文字や記号で示す第二領域6である。第一領域5では、検査結果や作業進捗に応じて各ボルトに対応する部分が色分けされる。例えば、検査の合格部7が緑丸、検査の不合格部8が赤丸、検査の不要部9が黒丸などである。一方、第二領域6には、各ボルトの実際の締付トルク値と後確認の判定結果(合格:OK、不合格:NG)が表示される。第二領域6においても、検査結果や作業進捗に応じて各ボルトに対応する部分が色分けされる。例えば、検査の合格部10が緑字、検査の不合格部11が赤字などである。
図8の表示画面の場合、表示されている全ての検査が終了した後に、画面右側の「確定」を押下すると、ステップS6に移行する。
【0044】
ここで、
図8の表示画面では、1位側と2位側の二人の検査員1の検査結果が一緒に表示されているが、このような複数の検査員1の検査結果の表示は、各々の情報端末4の間の直接無線通信によって、各々の検査員1の検査結果をリアルタイムに共有することで実現される。検査結果の表示形式は自由に変更することができる。例えば、その情報端末4を携帯する検査員1の検査結果のみが表示された表示画面や、他の検査員1の検査結果のみが表示された表示画面に切り替えることもできる。
【0045】
図8の表示画面では、締付トルク値の合格範囲(指定トルク)が表示されており、各ボルトに付与する締付トルク値を検査員1に予め認識させるようになっている。
【0046】
図8の表示画面では、一部のボルトの判定結果が不合格(NG)となっているが、不合格となったボルトに対応する部分を画面上で選択すれば、締付作業をやり直すことができるようになっている。この締付作業の修正は、ボルト1本単位で行うことができる。
【0047】
ステップS6では、検査員1が、情報端末4の表示部42を用いて、その検査員1が携帯するトルクレンチ3の使用者サイン記入欄にサインを手書き入力する。使用者サイン記入欄を表示する情報端末4の表示画面の一例を
図9に示す。
図9の表示画面の場合、使用者サイン記入欄にサインを入力した後に、画面下部の「確定」を押下すると、ステップS7に移行する。なお、本実施形態では、締付作業と後確認の終了後にトルクレンチ3の使用者のサインを求めるようになっているが、締付作業と後確認の開始前にトルクレンチ3の使用者のサインを求めるようにしてもよい。
【0048】
ステップS7では、検査員1が、情報端末4の表示部42を用いて、スリ板及びホーンの交換作業のチェック表を確認する。チェック表を表示する情報端末4の表示画面の一例を
図10に示す。
図10の表示画面の場合、検査員1は、チェック表に表示される各項目に問題がなければ、チェック表の各項目に対応したチェックボックスを順にチェックする。チェックボックスを全てチェックした後に、画面下部の「確定」を押下すると、ステップS8に移行する。
【0049】
ステップS8では、検査員1が、情報端末4の表示部42を用いて、これまでの検査結果の一覧を最終確認する。検査結果一覧を表示する情報端末4の表示画面の一例を
図11に示す。
【0050】
ステップS9では、検査員1が、情報端末4の表示部42を用いて、担当者サイン記入欄にサインを手書き入力する。
図11の表示画面の場合、検査結果の一覧の中の所定の項目に設けられたチェックボックスを全てチェックすると共に、画面上部の担当者サイン記入欄にサインを手書き入力した後に、画面下部の「確定」を押下すると、これまでの一連のデータが最終結果として保存される。保存後、情報端末4の表示部42は、
図4に示した初期画面に戻る。
【0051】
本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
上記の実施形態において、検査終了後に情報端末をプリンタに接続し、検査結果を紙に印刷してもよい(帳票出力)。
【0053】
上記の実施形態において、検査開始前又は検査終了後に情報端末をパソコンに有線又は無線で接続した状態で、情報端末に記憶されている検査結果データのバックアップを作成したり、検査内容データを更新したりしてもよい。
【0054】
上記の実施形態では、締付作業の後確認作業を締付作業と同じ検査員によって実施する場合を説明したが、後確認作業を別の検査員によって実施してもよい。後確認作業を別の検査員によって実施する場合、後確認作業を実施する検査員は、締付作業を実施した検査員の情報端末を共用してもよいが、専用の情報端末を別途携帯していることが好ましい。
【0055】
上記の実施形態では、トルクレンチを用いた軌条車両の検査を情報端末で管理する場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、例えば軌条車両の検査対象部位の目視検査を情報端末で管理する場合など、トルクレンチを用いない検査にも適用することができる。なお、目視検査に適用する場合は、情報端末が検査対象部位を撮像可能なカメラを備えていることが好ましい。
【符号の説明】
【0056】
1 検査員
2 軌条車両
3 トルクレンチ
31 トルク検出部
4 情報端末
41 記憶部
41a 第一記憶部
41b 第二記憶部
41c 第三記憶部
42 表示部
43 判定部