特許 7122743 タイヤスタンドおよびこれを用いたエアー充填用安全装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-08-12

(45)【発行日】2022-08-22

(54)【発明の名称】タイヤスタンドおよびこれを用いたエアー充填用安全装置

(51)【国際特許分類】

   B60S 5/04 20060101AFI20220815BHJP

【ＦＩ】

B60S5/04

【請求項の数】 4

(21)【出願番号】P 2018159928

(22)【出願日】2018-08-29

(65)【公開番号】P2020032826

(43)【公開日】2020-03-05

【審査請求日】2021-07-05

(73)【特許権者】

【識別番号】590003021

【氏名又は名称】東洋精器工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100114030

【弁理士】

【氏名又は名称】鹿島 義雄

(72)【発明者】

【氏名】阿瀬 正浩

【審査官】村山 禎恒

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１８－１９８３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１６－２１５９２３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００５－１７０１４２（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ６０Ｓ ３／００－１３／０２

Ｂ６０Ｐ ３／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

修理サービスカーの側アオリに取り付けて使用されるタイヤスタンドであって、
取付用基板と、この取付用基板に対し水平に重なり合った姿勢から下向きの直角な姿勢まで回動できるように前記取付用基板の一端部でヒンジを介して連結された長尺の回動杆とからなり、
前記取付用基板並びに回動杆には防爆カバーを取り付けるためのフックが設けられ、前記取付用基板には前記側アオリに取り付けるためのラッチが設けられているタイヤスタンド。

【請求項2】

請求項１に記載のタイヤスタンドと、
当該タイヤスタンドのフックに掛け止めして保持される防爆カバーとからなり、
前記防爆カバーは折り返すことでタイヤを包み込むことができる大きさの略４角形のフレキシブルなシート材で形成され、その四方の端部に前記フックに掛け止めするための複数の係合孔もしくは紐部材またはその両方を備えているエアー充填用安全装置。

【請求項3】

前記防爆カバーを形成するシート材はタイヤがバーストした時に破損しない程度の強度を備えた材料で形成され、かつ、その四方の端部はシート材を折り重ねることで補強されている請求項２に記載のエアー充填用安全装置。

【請求項4】

前記タイヤスタンドが、修理用サービスカーの側アオリ内面に装着されたラッシングレールの嵌合孔に前記ラッチを介して着脱自在に取り付けられている請求項２または請求項３に記載のエアー充填用安全装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、トラックやバス、乗用車等の自動車のタイヤを車両本体から取り外して交換するときや、パンクを修理してエアーを充填するときに用いられるタイヤスタンドならびにこれを用いたエアー充填用安全装置に関する。特に本発明は、荷台にタイヤの修理・交換に必要とされる機械や道具等を搭載した自動車修理サービスカーに取り付けて使用されるタイヤスタンド及びエアー充填用安全装置に関する。

【背景技術】

【0002】

一般に自動車のタイヤがパンクした時は、破損箇所を修理したあと、圧縮エアーを充填して完了する。この圧縮エアーを充填する際に、タイヤ内部のスチール部分の劣化や、パンク後の走行によるタイヤ側面部分の損傷によってバースト（破裂）が発生することがある。バーストが発生すると、それに伴う風圧によってタイヤが暴れたり、金属製のホイールが分離したり風圧を直接受けた物や人が吹き飛ばされて二次的被害、重傷や死亡に至る事例も少なからず発生している。このため、例えば特許文献１や特許文献２で開示されているような安全柵（安全囲い）にタイヤを収納した状態でエアーを充填する方法が実施されている。

【0003】

上記文献に記載されている安全柵は、タイヤの左右側方を格子のような金属枠材で取り囲んだ立体構造体で形成され、タイヤをこの立体構造体の内部に収納してエアーを充填するように構成されている。

【0004】

この従来の安全柵は、金属枠材で組まれた立体構造体であるため体積が大きくて重量があり、修理サービスカーに常時搭載して持ち運びするには不便であった。特にエアー充填時には重量のあるタイヤを荷台に持ち上げるか、或いは安全柵を地上に降ろして使用しなければならないので、実質的に修理サービスカー搭載用としては用いることができず、専らガソリンスタンドや修理工場に定置して使用されている。

【0005】

そこで、サービスカーに常時積載してエアー充填時に荷台から引きおろし、タイヤを包み込んで作業を行うセーフティネットが特許文献３や特許文献４で提案されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【文献】特開平５－２１３０２０号公報

【文献】実公平７－２１３６３号公報

【文献】特許第６２７７１５５号

【文献】特許第６３１９９１５号

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

このようなセーフティネットはコンパクトで折りたたむことができるので修理サービスカーの常設備品として有効である。しかし、これらセーフティネットは、使用時に修理サービスカーの荷台の側アオリ（側壁板）を下向きに倒してこれに被さるように保持されているので、タイヤがバーストした時にその爆圧を側アオリが直接受けて大きく損傷するといった欠点がある。加えて、修理サービスカーでは、雨天時など荷台内で作業する場合に備えて作業性と安全性を考慮し、側アオリを荷台の床面と水平となる姿勢に倒して拡張作業スペース（足場）として利用する仕様が多いが、上記した従来手段では側アオリを下向きに倒して用いるため、作業スペース（足場）の拡張は断念せざるを得ず、その場合は荷台内すなわち車上作業に安全面も含め困難をきたす事になる。

【0008】

そこで本発明は、上記課題に鑑み、タイヤバースト時の側アオリへの損傷を防止することができると共に側アオリによる作業スペースの拡張も図ることのできるエアー充填用安全装置並びにこれに用いられるタイヤスタンドを簡単な機構で提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0009】

上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。即ち、本発明では、修理サービスカーの側アオリに取り付けて使用されるタイヤスタンドであって、取付用基板と、この取付用基板に対し水平に重なり合った姿勢から下向きの直角な姿勢まで回動できるように前記取付用基板の一端部でヒンジを介して連結された長尺の回動杆とからなり、前記取付用基板並びに回動杆には防爆カバーを取り付けるためのフックが設けられ、前記取付用基板には前記側アオリに取り付けるためのラッチが設けられている構成とした。

【0010】

また、本発明は、上記タイヤスタンドと、当該タイヤスタンドのフックに掛け止めして保持される防爆カバーとからなり、前記防爆カバーは折り返すことでタイヤを包み込むことができる大きさの略４角形のフレキシブルなシート材で形成され、その四方の端部に前記フックに掛け止めするための複数の係合孔または紐部材もしくはその両方を備えているエアー充填用安全装置を特徴とする。

【0011】

本発明において、前記防爆カバーを形成するシート材は、タイヤがバーストした時に破損しない程度の強度を備えた材料で形成され、かつ、その四方の端部はシート材を折り重ねることで補強されている構成としてもよい。また、四方の端部以外にも係合孔を設ける場合には、その部位（例えば、後述する図１１の１４ｃ参照）も同様に折り重ねて補強されていてもよい。
また、前記タイヤスタンドが、修理用サービスカーの側アオリ内面に装着されたラッシングレールの取り付け穴に前記ラッチを介して着脱自在に取り付ける構成としてもよい。

【発明の効果】

【0012】

エアー充填中のバーストは、タイヤトレッド部ではなくサイド部で発生するため、本発明では防爆カバーでタイヤを包み込んだ状態でタイヤスタンドのフックに保持させてエアーを充填することができるので、エアー充填時にタイヤがバーストするような事態が発生しても爆風や破片が外部に直接飛散することを確実に防止することができ、作業者の安全を図ることができる。またバースト時の爆圧がタイヤスタンドの回動杆によって受け止められるので、修理サービスカーの側アオリが大きく損傷することはない。加えて、装置全体の構成がコンパクトかつ軽量であるため、修理サービスカーに常時搭載して使用するのに便利である。また、使用時には、通常の使用形態と同じ、側アオリを荷台の床面と水平となる姿勢で保持されるので、側アオリを拡張作業スペース（足場）として使用することが可能となる。さらには、防爆カバーを取り外した状態でも、タイヤを立てかけて保持するスタンドとして利用することができるといった種々の効果がある。
また、タイヤスタンドをラッシングレールに取り付ける構成にすることで、レール範囲内なら作業しやすい任意の位置にセットすることができる。また、場合によっては２セット同時にセッティングすることもできるため、作業効率を上げることができる。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】本発明にかかるエアー充填用安全装置が取り付けられる自動車修理サービスカーの一例を示す斜視図。

【図2】本発明におけるタイヤスタンドの斜視図。

【図3】タイヤスタンドを修理サービスカーに取り付けた状態を示す斜視図。

【図4】タイヤスタンドの取付状態を示す一部断面側面図。

【図5】使用の一態様を示す斜視図。

【図6】使用の一態様を示す側面図。

【図7】本発明における防爆カバーの平面図。

【図8】使用の一態様を示す斜視図。

【図9】防爆カバーでタイヤを包み込む過程を示す側面図。

【図10】防爆カバーでタイヤを包み込んだ状態を示す側面図。

【図11】防爆カバーの別実施例を示す平面図。

【図12】中央用タイヤスタンドの実施例を示す斜視図。

【図13】防爆カバーの他の実施例を示す平面図。

【図14】防爆カバーの更に別の実施例を示す平面図。

【発明を実施するための形態】

【0014】

以下、本発明の詳細を、図１～図１０に基づいて詳細に説明する。本発明のタイヤスタンド及びこれを用いたエアー充填用安全装置は、主として図１に示すような、タイヤの修理・交換に必要とされる機械や道具等を搭載した自動車修理サービスカーＡの側アオリ（側壁）１に取り付けて使用される。

【0015】

図２は本発明にかかるタイヤスタンドＢを示すものであって、金属材からなる取付用基板２と、この取付用基板２に対し水平に重なり合った姿勢から下向きの直角な姿勢まで２７０度回動できるように取付用基板２の一端部でヒンジ３を介して連結された長尺の金属製回動杆４とを備えている。

【0016】

取付用基板２並びに回動杆４の先端部には後述する防爆カバー１３を取り付けるためのフック６、７が設けられており、取付用基板２にはタイヤスタンドＢを修理サービスカーＡの側アオリ１の内面に取り付けるためのラッチ５が設けられている。このラッチ５は、内蔵するスプリング（図示外）により常時突出する方向に付勢された係合爪５ａと、係合爪の反対側で突出する係合突起５ｂとを備え、つまみ５ｂによりスプリングに抗して後退できるように形成されている。
本実施例では、図２（ａ）に示すように、フック６の向きを回動杆４を立てた姿勢で左に向けるとともに、フック７の位置を取付基板２の右側に設けた右用タイヤスタンドと、図２（ｂ）に示すように、フック６の向きを回動杆４を立てた姿勢で右に向けるとともに、フック７の位置を取付基板２の左側に設けた左用タイヤスタンドを用意したが、何れか一方のみであってもよい。

【0017】

図３に示すように、修理サービスカーＡの側アオリ１の内面上部には、タイヤスタンドＢを取り付けるためのラッシングレール８が取り付けられている。ラッシングレール８は帯状の金属板材で形成され、上記ラッチ５が嵌合する長方形の嵌合孔９が長さ方向に沿って一定のピッチで多数設けられている。図４は、ラッチ５が嵌合孔９に嵌合する前と、嵌合させた状態を示すものであって、嵌合させた位置では、図４（ｂ）に示すように、ラッチの係合爪５ａが嵌合孔９の奥部窪み９ａに弾性係合するとともに係合片５ｃが係合孔の反対側の窪み９ａに係合することでタイヤスタンドＢを側アオリ１に取り付けることができるようになっている。タイヤスタンドＢを取り外す時はつまみ５ｂで係合爪５ａを後退させればよい。また、側アオリ１は垂直に立ち上がった姿勢から図３に示すように荷台側方に向かって蝶番１０（図１参照）により回動でき、荷台床面１１に対し水平となる姿勢で鎖などのステー１２により水平保持できるようにしてある。側アオリ１を水平に開いた姿勢でタイヤスタンドＢの回動杆４を、図５並びに図６に示すようにその先端を下向きにした垂直な姿勢まで２７０度回動できるようにしてある。なお、回動杆４の長さは、側アオリ１を垂直に立てたときに回動杆４の先端が荷台の床面１１に当たらない範囲内で側アオリ１の高さと略同じ寸法で形成されている。

【0018】

また、本発明にかかるエアー充填用安全装置は、上記側アオリ１に取り付けられたタイヤスタンドＢのフック６、７に掛け止めして保持される防爆カバー１３を備えている。
防爆カバー１３は、図７～図１０に示すように、折り返すことでタイヤＣを包み込むことができる大きさの長方形のフレキシブルなシート材で形成され、その四方の端部、即ち短辺側端部１３ａと長辺側端部１３ｂの近傍に上記フック６、７に掛け止めするための複数の係合孔１４ａ、１４ｂが設けられている。シート材は、タイヤがバーストした時に破損しない程度の強度を備えた材料、例えば帆布材またはドンゴロス材で形成され、その四方の端部はシート材を折り重ねることで補強されている。また、本実施例では、シート材の長辺側端部１３ｂに紐部材１５が設けられている。

【0019】

使用に際して、図５に示すように、防爆カバー１３の左右寸法に合わせて左右に二つ、中央に二つの、合計４個のタイヤスタンドＢを側アオリ１に取り付けて使用される。この場合、右側の二つは図２（ａ）で示した右用タイヤスタンドが用いられ、左側の二つは図２（ｂ）の左用タイヤスタンドが用いられる。中央に二つのタイヤスタンドＢを並べて取り付けたのは強度を高めるためのものである。
なお、中央の二つのタイヤスタンドに代えて、図１２に示すように、回動杆４を２連に並べて一体化した中央用タイヤスタンドＢａを用いるようにしてもよい。この中央用タイヤスタンドＢａでは、回動杆４を２連に並べた点とフック７を省略した点を除き、先に示したタイヤスタンドＢと同じ構成を備えている。
使用時には、サービスカーＡの側アオリ１を水平に倒した状態でタイヤスタンドＢの回動杆４を２７０度回動させて先端を下向きにした垂直な姿勢にして使用する。この状態で、図６に示すように、タイヤ交換等で車両から取り外したホイール付タイヤＣ、もしくは、ホイールと分離したタイヤＣを一時的に立てかけて保持するタイヤスタンドとして用いることができる。

【0020】

更に、修理したタイヤにエアーを充填するときは、防爆カバー１３の一方の短辺側端部１３ａの係合孔１４ａを取付用基板２のフック６に係合させることで図８並びに図９に示すように防爆カバー１３を引き延ばした状態で取り付け、タイヤＣを包み込むように折り返してもう一方の端部の係合孔をフック６に係合させる（図１０参照）。さらに、左右の長辺側端部１３ｂの係合孔１４ｂに紐部材１５を通し、その紐部材１５を右側並びに左側に位置する回動杆４のフック７に係合する。これにより、折り返すことによって発生する防爆カバー１３の左右の開口部を閉止する。この場合、係合孔１４ｂを通して紐部材１５をフック７に掛け止めすることによって、より確実に左右の開口部を閉止することができる。

【0021】

エアー充填中のバーストはタイヤトレッド部ではなくサイド部で発生するが、タイヤＣは防爆カバー１３によって包み込まれているので、エアー充填時にタイヤＣがバーストするような事態が発生しても爆風や破片が外部に直接飛散することを確実に防止することができ、作業者の安全を図ることができる。またバースト時の爆圧が回動杆４によって受け止められるので、修理サービスカーの側アオリ１が大きく損傷することはない。加えて、装置全体の構成がコンパクトかつ軽量であるため、修理サービスカーに常時搭載して便利に使用することができる。また、右用タイヤスタンドのフック７と左用タイヤスタンドのフック７の向きが互いに向き合うように配置されているので、これに掛け止めされた防爆カバー１３がバーストの時に外れて飛ばされるようなことを効果的に阻止することができる。

【0022】

また使用時には、側アオリ１を荷台の床面１１と水平となる姿勢で保持されるので、側アオリ１を床面と延長した拡張作業スペースとして使用することができるといった効果がある。

【0023】

図１１は本発明における防爆カバー１３の別実施例を示すものである。この実施例では、防爆カバー１３の一方の短辺側端部１３ａから離れた位置で当該端部と平行して帯状の補強領域１３ｃが設けられており、この補強領域１３ｃにタイヤスタンドＢのフック６に係合する係合孔１４ｃが設けられている。この係合孔１４ｃを用いて防爆カバー１３をフック６に掛け止めすることにより、防爆カバーを折り返したときのタイヤ収納スペースを小さくすることができ、小型のタイヤに対応させることが可能となる。

【0024】

図１３並びに図１４は、中央に２連式の中央用タイヤスタンドＢａを使用した場合の防爆カバー１３の実施例を示すものであって、この実施例では、中央用タイヤスタンドＢａのフック６に掛け止めするための係合孔１４ａ、１４ｃが防爆カバー１３の短辺側端部１３ａの中央にそれぞれ一つだけ設けられている。

【0025】

以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものではなく、本考案の目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。

【産業上の利用可能性】

【0026】

本発明は、荷台にタイヤの修理・交換に必要とされる機械や道具等を搭載した自動車修理サービスカーに搭載して、取り外したタイヤにエアーを充填する際の安全装置として、或いはタイヤを立てかけて保持するタイヤスタンドとして利用することができる。

【符号の説明】

【0027】

Ａ 修理サービスカー
Ｂ タイヤスタンド
Ｃ タイヤ
１ 側アオリ
２ 取付用基板
３ ヒンジ
４ 回動杆
５ ラッチ
６ フック
７ フック
８ ラッシングレール
９ 嵌合孔
１３ 防爆カバー
１４ａ 取付穴
１４ｂ 取付穴
１５ 紐部材

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】