(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】電力調整装置、電力調整方法及び電力調整システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20220815BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220815BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20220815BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20220815BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 130
H02J3/00 170
H02J13/00 311R
H02J3/00 180
H02J7/35 K
(21)【出願番号】P 2018212813
(22)【出願日】2018-11-13
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】513256675
【氏名又は名称】ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦
(72)【発明者】
【氏名】西城 和幸
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/157577(WO,A1)
【文献】特開2013-207862(JP,A)
【文献】特開2017-158335(JP,A)
【文献】特開2018-042351(JP,A)
【文献】特開2013-192364(JP,A)
【文献】特開2016-171609(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098200(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-7/12
7/34-7/36
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽光発電設備が電力系統に供給する電力の量を調整する電力調整装置であって、
前記電力系統を管理する送配電事業者から、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量に関する指令を取得する指令取得部と、
前記複数の太陽光発電設備それぞれにおける発電量と相関性を有する前記太陽光発電設備の状況の変化を示す状況情報を取得する情報取得部と、
前記指令の内容と、前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部に対応する前記状況情報とに基づいて、前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部が前記電力系統に供給するべき電力の量の変更を指示するための供給指示情報を前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部に送信する指示送信部と、
を有する電力調整装置。
【請求項2】
前記指令取得部は、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量の目標電力量を示す前記指令を取得し、
前記指示送信部は、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量の合計値を前記目標電力量に一致させるべく、前記供給指示情報を前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部に送信する、
請求項1に記載の電力調整装置。
【請求項3】
前記指令取得部は、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量を増加させるか減少させるかを示す前記指令を取得し、
前記指示送信部は、前記指令に基づいて、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量の合計値を増加又は減少させるべく、前記太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量を増加させるか減少させるかを示す前記供給指示情報を前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部に送信する、
請求項1又は2に記載の電力調整装置。
【請求項4】
前記情報取得部は、前記太陽光発電設備が発生する電力の周波数の変化量を含む前記状況情報を取得し、
前記指示送信部は、前記周波数の変化量にさらに基づいて、前記周波数を所定の周波数に近づけるべく、前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部が前記電力系統に供給するべき電力の量を変更する量を決定し、決定した量に基づく前記供給指示情報を送信する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電力調整装置。
【請求項5】
前記情報取得部は、前記太陽光発電設備の位置の日射量及び気温の少なくともいずれかの変化量を含む前記状況情報を取得し、
前記指示送信部は、前記日射量及び気温の少なくともいずれかの変化量にさらに基づいて、前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部が前記電力系統に供給するべき電力の量を変更する量を決定し、決定した量に基づく前記供給指示情報を送信する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電力調整装置。
【請求項6】
前記情報取得部は、前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部の第1太陽光発電設備による直前の所定の期間内の発電量の変化量に基づいて予測した前記第1太陽光発電設備と異なる第2太陽光発電設備の発電量の変化量を含む前記状況情報を取得する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の電力調整装置。
【請求項7】
前記情報取得部は、前記太陽光発電設備が設置された位置における直前の所定の期間内の気象の変化を示す情報を含む前記状況情報を取得する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の電力調整装置。
【請求項8】
前記指示送信部は、前記情報取得部が取得した前記状況情報に基づいて一の前記太陽光発電設備の発電量が減少すると推定した場合に、発電量が増加すると推定した前記一の太陽光発電設備以外の前記太陽光発電設備に対して、前記電力系統に供給する電力量を増やすことを指示する前記供給指示情報を送信する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の電力調整装置。
【請求項9】
前記複数の太陽光発電設備それぞれに関連付けて、発電可能な最大電力量と現状の発電量との差である発電余力を記憶する記憶部をさらに有し、
前記指示送信部は、前記発電余力に基づいて選択した前記太陽光発電設備に前記供給指示情報を送信する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の電力調整装置。
【請求項10】
前記複数の太陽光発電設備それぞれに関連付けて蓄電設備の有無を記憶する記憶部をさらに有し、
前記指示送信部は、前記記憶部を参照することにより、前記蓄電設備の有無に基づいて選択した前記太陽光発電設備に前記供給指示情報を送信する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の電力調整装置。
【請求項11】
前記指示送信部は、前記指令取得部が前記指令を取得した時点で前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給している電力量の合計値を減少させる必要がある場合に、前記蓄電設備を有する前記太陽光発電設備の少なくとも一部に、前記電力系統に供給する電力を減らすことを指示するための供給指示情報を送信する、
請求項10に記載の電力調整装置。
【請求項12】
前記複数の太陽光発電設備それぞれに関連付けて、発電した電力が固定価格で買い取られるFIT対象設備であるか否かを記憶する記憶部をさらに有し、
前記指示送信部は、前記記憶部を参照することにより、前記FIT対象設備であるか否かに基づいて選択した前記太陽光発電設備に前記供給指示情報を送信する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の電力調整装置。
【請求項13】
前記指示送信部は、前記指令取得部が前記指令を取得した時点で前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給している電力量の合計値を減少させる必要がある場合に、前記FIT対象設備でない前記太陽光発電設備の少なくとも一部に、前記電力系統に供給する電力を減らすことを指示するための供給指示情報を送信する、
請求項12に記載の電力調整装置。
【請求項14】
前記複数の太陽光発電設備それぞれに関連付けて、前記状況情報の誤差の大きさを示す誤差情報を記憶する記憶部をさらに有し、
前記指示送信部は、前記情報取得部が前記太陽光発電設備から取得した前記状況情報を、当該太陽光発電設備に関連付けて前記記憶部に記憶された前記誤差情報に基づいて補正した情報に基づいて前記供給指示情報を作成する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の電力調整装置。
【請求項15】
前記複数の太陽光発電設備それぞれに関連付けて発電効率を記憶する記憶部をさらに有し、
前記指示送信部は、前記情報取得部が前記太陽光発電設備から取得した前記状況情報と、当該太陽光発電設備に関連付けて前記記憶部に記憶された前記発電効率と、に基づいて前記太陽光発電設備が前記電力系統に供給するべき電力の量を決定し、決定した電力の量を示す前記供給指示情報を送信する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の電力調整装置。
【請求項16】
前記複数の太陽光発電設備それぞれに関連付けて、前記太陽光発電設備の発電量に対する前記電力系統に供給している電力の量の割合を示す供給率を記憶する記憶部をさらに有し、
前記指示送信部は、前記供給率にさらに基づいて前記供給指示情報を送信する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の電力調整装置。
【請求項17】
複数の太陽光発電設備が電力系統に供給する電力の量をコンピュータが調整する電力調整方法であって、
前記電力系統を管理する送配電事業者から、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量に関する指令を取得するステップと、
前記複数の太陽光発電設備それぞれにおける発電量と相関性を有する前記太陽光発電設備の状況の変化を示す状況情報を取得するステップと、
前記指令の内容と、複数の前記状況情報とに基づいて、前記太陽光発電設備が前記電力系統に供給するべき電力の量の変更を指示するための供給指示情報を前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部に送信するステップと、
を有する電力調整方法。
【請求項18】
複数の太陽光発電設備と、前記複数の太陽光発電設備が電力系統に供給する電力の量を調整する電力調整装置と、を備える電力調整システムであって、
前記複数の太陽光発電設備のそれぞれは、
前記太陽光発電設備における発電量と相関性を有する前記太陽光発電設備の状況の変化を示す状況情報を記録する状況記録部と、
前記状況情報を前記電力調整装置に送信する状況送信部と、
を有し、
前記電力調整装置は、
前記電力系統を管理する送配電事業者から、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量に関する指令を取得する指令取得部と、
前記複数の太陽光発電設備それぞれにおける発電量と相関性を有する前記太陽光発電設備の状況の変化量を示す状況情報を取得する情報取得部と、
前記指令の内容と、複数の前記状況情報とに基づいて、前記太陽光発電設備が前記電力系統に供給するべき電力の量の変更を指示するための供給指示情報を前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部に送信する指示送信部と、
を有する電力調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電設備が電力系統に供給する電力の量を調整する電力調整装置、電力調整方法及び電力調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の太陽光発電所の発電量を制御するシステムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシステムにおいては、各太陽光発電所の予測発電量と予測需要量とに基づいて、各太陽光発電所に発電させる量を割り当てる。従来のシステムは、天気予報や過去の発電量の実績データ等に基づいて、一日単位で予め予測発電量を計算する。
【0005】
しかしながら、天気予報や過去の発電量の実績データに基づいて予め予測発電量を計算しておく場合、予測発電量と実際の発電量との間に乖離が発生しやすい。その結果、複数の太陽光発電所により供給される電力の量と、要求される電力の量との差が大きくなってしまう場合が生じやすかった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、複数の太陽光発電所により供給される電力の量と、要求される電力の量との差を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の電力調整装置は、複数の太陽光発電設備が電力系統に供給する電力の量を調整する電力調整装置である。電力調整装置は、前記電力系統を管理する送配電事業者から、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量に関する指令を取得する指令取得部と、前記複数の太陽光発電設備それぞれにおける発電量と相関性を有する前記太陽光発電設備の状況の変化を示す状況情報を取得する情報取得部と、前記指令の内容と、前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部に対応する前記状況情報とに基づいて、前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部が前記電力系統に供給するべき電力の量の変更を指示するための供給指示情報を前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部に送信する指示送信部と、を有する。
【0008】
前記指令取得部は、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量の目標電力量を示す前記指令を取得し、前記指示送信部は、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量の合計値を前記目標電力量に一致させるべく、前記供給指示情報を前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部に送信してもよい。
【0009】
前記指令取得部は、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量を増加させるか減少させるかを示す前記指令を取得し、前記指示送信部は、前記指令に基づいて、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量の合計値を増加又は減少させるべく、前記太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量を増加させるか減少させるかを示す前記供給指示情報を前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部に送信してもよい。
【0010】
前記情報取得部は、前記太陽光発電設備が発生する電力の周波数の変化量を含む前記状況情報を取得し、前記指示送信部は、前記周波数の変化量にさらに基づいて、前記周波数を所定の周波数に近づけるべく、前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部が前記電力系統に供給するべき電力の量を変更する量を決定し、決定した量に基づく前記供給指示情報を送信してもよい。
【0011】
前記情報取得部は、前記太陽光発電設備の位置の日射量及び気温の少なくともいずれかの変化量を含む前記状況情報を取得し、前記指示送信部は、前記日射量及び気温の少なくともいずれかの変化量にさらに基づいて、前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部が前記電力系統に供給するべき電力の量を変更する量を決定し、決定した量に基づく前記供給指示情報を送信してもよい。
【0012】
前記情報取得部は、前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部の第1太陽光発電設備による直前の所定の期間内の発電量の変化量に基づいて予測した前記第1太陽光発電設備と異なる第2太陽光発電設備の発電量の変化量を含む前記状況情報を取得してもよい。
【0013】
前記情報取得部は、前記太陽光発電設備が設置された位置における直前の所定の期間内の気象の変化を示す情報を含む前記状況情報を取得してもよい。
【0014】
前記指示送信部は、前記情報取得部が取得した前記状況情報に基づいて一の前記太陽光発電設備の発電量が減少すると推定した場合に、発電量が増加すると推定した前記一の太陽光発電設備以外の前記太陽光発電設備に対して、前記電力系統に供給する電力量を増やすことを指示する前記供給指示情報を送信してもよい。
【0015】
前記複数の太陽光発電設備それぞれに関連付けて、発電可能な最大電力量と現状の発電量との差である発電余力を記憶する記憶部をさらに有し、前記指示送信部は、前記発電余力に基づいて選択した前記太陽光発電設備に前記供給指示情報を送信してもよい。
【0016】
前記複数の太陽光発電設備それぞれに関連付けて蓄電設備の有無を記憶する記憶部をさらに有し、前記指示送信部は、前記記憶部を参照することにより、前記蓄電設備の有無に基づいて選択した前記太陽光発電設備に前記供給指示情報を送信してもよい。
【0017】
前記指示送信部は、前記指令取得部が前記指令を取得した時点で前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給している電力量の合計値を減少させる必要がある場合に、前記蓄電設備を有する前記太陽光発電設備の少なくとも一部に、前記電力系統に供給する電力を減らすことを指示するための供給指示情報を送信してもよい。
【0018】
前記複数の太陽光発電設備それぞれに関連付けて、発電した電力が固定価格で買い取られるFIT対象設備であるか否かを記憶する記憶部をさらに有し、前記指示送信部は、前記記憶部を参照することにより、前記FIT対象設備であるか否かに基づいて選択した前記太陽光発電設備に前記供給指示情報を送信してもよい。
【0019】
前記指示送信部は、前記指令取得部が前記指令を取得した時点で前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給している電力量の合計値を減少させる必要がある場合に、前記FIT対象設備でない前記太陽光発電設備の少なくとも一部に、前記電力系統に供給する電力を減らすことを指示するための供給指示情報を送信してもよい。
【0020】
前記複数の太陽光発電設備それぞれに関連付けて、前記状況情報の誤差の大きさを示す誤差情報を記憶する記憶部をさらに有し、前記指示送信部は、前記情報取得部が前記太陽光発電設備から取得した前記状況情報を、当該太陽光発電設備に関連付けて前記記憶部に記憶された前記誤差情報に基づいて補正した情報に基づいて前記供給指示情報を作成してもよい。
【0021】
前記複数の太陽光発電設備それぞれに関連付けて発電効率を記憶する記憶部をさらに有し、前記指示送信部は、前記情報取得部が前記太陽光発電設備から取得した前記状況情報と、当該太陽光発電設備に関連付けて前記記憶部に記憶された前記発電効率と、に基づいて前記太陽光発電設備が前記電力系統に供給するべき電力の量を決定し、決定した電力の量を示す前記供給指示情報を送信してもよい。
【0022】
前記複数の太陽光発電設備それぞれに関連付けて、前記太陽光発電設備の発電量に対する前記電力系統に供給している電力の量の割合を示す供給率を記憶する記憶部をさらに有し、前記指示送信部は、前記供給率にさらに基づいて前記供給指示情報を送信してもよい。
【0023】
本発明の第2の態様の電力調整方法は、複数の太陽光発電設備が電力系統に供給する電力の量をコンピュータが調整する電力調整方法であって、前記電力系統を管理する送配電事業者から、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量に関する指令を取得するステップと、前記複数の太陽光発電設備それぞれにおける発電量と相関性を有する前記太陽光発電設備の状況の変化を示す状況情報を取得するステップと、前記指令の内容と、複数の前記状況情報とに基づいて、前記太陽光発電設備が前記電力系統に供給するべき電力の量の変更を指示するための供給指示情報を前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部に送信するステップと、を有する。
【0024】
本発明の第3の態様の電力調整システムは、複数の太陽光発電設備と、前記複数の太陽光発電設備が電力系統に供給する電力の量を調整する電力調整装置と、を備える。前記複数の太陽光発電設備のそれぞれは、前記太陽光発電設備における発電量と相関性を有する前記太陽光発電設備の状況の変化を示す状況情報を記録する状況記録部と、前記状況情報を前記電力調整装置に送信する状況送信部と、を有する。前記電力調整装置は、前記電力系統を管理する送配電事業者から、前記複数の太陽光発電設備が前記電力系統に供給する電力の量に関する指令を取得する指令取得部と、前記複数の太陽光発電設備それぞれにおける発電量と相関性を有する前記太陽光発電設備の状況の変化量を示す状況情報を取得する情報取得部と、前記指令の内容と、複数の前記状況情報とに基づいて、前記太陽光発電設備が前記電力系統に供給するべき電力の量の変更を指示するための供給指示情報を前記複数の太陽光発電設備の少なくとも一部に送信する指示送信部と、を有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数の太陽光発電所により供給される電力の量と、要求される電力の量との差を小さくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】電力調整システムの概要を説明するための図である。
【
図3】記憶部が記憶している発電設備データベースの一例を示す図である。
【
図5】状況記録部が記録するログデータの一例を示す図である。
【
図6】電力調整システムにおける通信シーケンスの一例を示す図である。
【
図9】雲の動きと発電量の変化について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[電力調整システムSの概要]
図1は、電力調整システムSの概要を説明するための図である。電力調整システムSは、複数の太陽光発電設備が電力系統Pに供給する電力の量(以下、「供給電力量」という場合がある)を調整するためのシステムであり、電力調整装置1と、複数の太陽光発電設備2と、を備える。電力調整装置1と複数の太陽光発電設備2とは、ネットワークNを介してデータを送受信することができる。ネットワークNは、例えばインターネットである。
【0028】
電力調整装置1は、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の合計量が、事業者サーバ3から受信する指令に対応する量と一致するように、複数の太陽光発電設備2のそれぞれが電力系統Pに供給する電力の量を調整する装置であり、例えばコンピュータである。指令は、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量に関する情報を含んでいる。
【0029】
事業者サーバ3は、複数の太陽光発電設備2が電力を供給する電力系統Pを管理する送配電事業者のサーバである。事業者サーバ3は、一以上の電力調整装置1に対して、電力系統Pに供給される電力を増加又は減少させるための指令を送信することで、電力系統Pにおける電力の需給バランスを最適化する。事業者サーバ3は、例えば、電力売買のリアルタイム市場において前日に入札があった複数の電力供給者から入札価格に基づいて選択した電力供給者が管理する電力調整装置1に対して指令を送信する。
【0030】
以下、
図1を参照しながら、電力調整システムSが実行する処理の概要を説明する。事業者サーバ3は、電力の需要量に変化が発生した場合に、変化が発生した後の需要量に基づいて、電力調整装置1が管理する複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量の目標値である目標電力量を決定する。事業者サーバ3は、決定した目標電力量に基づいて、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量を変更させるための指令を電力調整装置1に送信する。電力調整装置1は、事業者サーバ3から指令を取得する(
図1における(1))。
【0031】
電力調整装置1は、複数の太陽光発電設備2それぞれにおける発電量を特定するとともに、複数の太陽光発電設備2それぞれにおける発電量と相関性を有する太陽光発電設備2の状況の変化を示す状況情報を取得する(
図1における(2))。太陽光発電設備2の状況は、例えば太陽光発電設備2の位置の日射量、太陽光発電設備2の位置の気温、及び太陽光発電設備2の発電効率等である。
【0032】
電力調整装置1は、その時点での複数の太陽光発電設備2それぞれにおける発電量と、取得した状況情報が示す状況の変化とに基づいて、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の合計量が目標電力量に近づくように、複数の太陽光発電設備2それぞれが電力系統Pに供給する電力の量を決定する。電力調整装置1は、例えば、発電を停止させる太陽光発電設備2、又は発電を開始させる太陽光発電設備2を選択したり、複数の太陽光発電設備2それぞれが電力系統Pに供給する電力の量を決定したりする。電力調整装置1は、複数の太陽光発電設備2のうちの少なくとも一部の太陽光発電設備2に対して、変更後の供給電力量を示す供給指示情報を送信する(
図1における(3))。供給指示情報は、発電を開始することを指示する情報、又は発電を停止することを指示する情報であってもよい。
【0033】
電力調整装置1は、太陽光発電設備2の状況の変化を考慮して、複数の太陽光発電設備2それぞれが電力系統Pに供給する電力の量の合計値が目標電力量と一致するように、各太陽光発電設備2の供給電力量を調整する。電力調整装置1がこのように構成されていることにより、例えば日射量が変化することにより、一部の太陽光発電設備2が供給可能な電力の量が変化してしまう場合であっても、複数の太陽光発電設備2が供給する電力量が目標電力量から乖離しづらくなる。
以下、電力調整装置1及び太陽光発電設備2の構成を詳細に説明する。
【0034】
[電力調整装置1の構成]
図2は、電力調整装置1の機能構成例を示す図である。電力調整装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を有する。制御部13は、指令取得部131と、情報取得部132と、指示送信部133と、を有する。
【0035】
通信部11は、太陽光発電設備2及び事業者サーバ3との間でデータを送受信するための通信コントローラである。通信部11は、事業者サーバ3から複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量に関する指令を受信したり、太陽光発電設備2から状況情報を受信したりする。また、通信部11は、制御部13から入力された供給指示情報を太陽光発電設備2に送信する。
【0036】
記憶部12は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク又はソリッドステートドライブを有する。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶している。また、記憶部12は、制御部13が複数の太陽光発電設備2それぞれが供給する電力の量を調整するために使用する各種のデータを記憶している。記憶部12が記憶しているデータの詳細については後述する。
【0037】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、指令取得部131、情報取得部132及び指示送信部133として機能する。
【0038】
指令取得部131は、通信部11を介して、電力系統Pを管理する送配電事業者の事業者サーバ3から、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量に関する指令を取得する。指令は、例えば、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量の目標電力量を示す情報を含む。指令は、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量を増加させるか減少させるかを示す情報を含んでもよい。指令取得部131は、取得した指令の内容を指示送信部133に通知する。
【0039】
情報取得部132は、通信部11を介して、複数の太陽光発電設備2それぞれにおける発電量を示す発電量情報と、複数の太陽光発電設備2それぞれにおける発電量と相関性を有する太陽光発電設備2の状況の変化を示す状況情報とを取得する。情報取得部132は、取得した発電量情報及び状況情報を指示送信部133に通知する。
【0040】
情報取得部132は、例えば、太陽光発電設備2が発生する電力の周波数の変化量とを含む状況情報を取得する。情報取得部132は、太陽光発電設備2の位置の日射量及び気温の少なくともいずれかの変化量を含む状況情報を取得してもよい。
【0041】
指示送信部133は、指令取得部131が取得した指令の内容と、情報取得部132が取得した発電量情報と、複数の太陽光発電設備2の少なくとも一部に対応する状況情報とに基づいて、太陽光発電設備2が電力系統Pに供給するべき電力の量の変更を指示するための供給指示情報を複数の太陽光発電設備2の少なくとも一部に送信する。
【0042】
指令取得部131が取得した指令が、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量の目標電力量を示す情報を含んでいる場合、指示送信部133は、例えば、複数の太陽光発電設備2の少なくとも一部に対応する状況情報に基づいて、太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量の合計値を目標電力量と一致させるべく供給指示情報を生成する。指示送信部133は、太陽光発電設備2が電力系統Pに供給するべき電力の量を示す供給指示情報を複数の太陽光発電設備2の少なくとも一部に送信する。具体的には、指示送信部133は、発電量情報に基づいて特定される複数の太陽光発電設備2の発電量の合計値と目標電力量との差を小さくするように、状況情報に基づいて選択した太陽光発電設備2に、供給電力量を変更する指示を含む供給指示情報を送信する。
【0043】
指令取得部131が取得した指令が、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量を増加させるか減少させるかを示す情報を含んでいる場合、指示送信部133は、例えば、指令に基づいて、発電量情報に基づいて特定される複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量の合計値を増加又は減少させるべく、太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量を増加させるか減少させるかを示す供給指示情報を複数の太陽光発電設備2の少なくとも一部に送信する。
【0044】
ところで、太陽光発電設備2における発電量は、日射量及び気温との間に相関性を有する。具体的には、日射量が多ければ多いほど発電量が大きくなる傾向にあり、気温が高ければ高いほど発電効率が低下して発電量が小さくなる傾向にある。そこで、指示送信部133は、日射量及び気温の少なくともいずれかの変化量にさらに基づいて、複数の太陽光発電設備2の少なくとも一部が電力系統Pに供給するべき電力の量を変更する量を決定し、決定した量に基づく供給指示情報を送信してもよい。
【0045】
一例として、指示送信部133は、日射量及び気温等の変化の傾向に基づいて、その後の時点における日射量及び気温を推定し、推定した結果に基づいて、発電量の変化量を推定する。指示送信部133は、発電量が変化する量の推定値に基づいて、どの太陽光発電設備2にどれだけの量を発電させるかを決定し、決定した結果に基づいて供給指示情報を作成する。
【0046】
指示送信部133は、例えば複数の太陽光発電設備2による電力系統Pへの供給電力量を増やす必要がある場合、状況情報に基づいて、発電量が増える傾向にある太陽光発電設備2を選択し、選択した太陽光発電設備2に対して、発電量を増加させる指示を含む供給指示情報を送信する。指示送信部133は、複数の太陽光発電設備2による供給電力量を増やす必要がある場合、例えば日射量が増加している太陽光発電設備2に対して、電力系統Pに供給する電力を増加させる指示を含む供給指示情報を優先的に送信する。
【0047】
指示送信部133は、状況情報に基づいて、発電量が増える傾向にある太陽光発電設備2において増加させることができる発電量を推定し、推定した発電量に基づいて決定した、電力系統Pに供給する電力の増加量を示す供給指示情報を送信してもよい。指示送信部133は、例えば、ある太陽光発電設備2において発電量が1kW増加すると推定し、かつ指令取得部131が事業者サーバ3から取得した指令が供給電力量を増やすことを示している場合、増加すると見込まれる発電量以下の範囲で電力系統Pに供給する電力の量を増やす指示を含む供給指示情報を太陽光発電設備2に送信する。
【0048】
指示送信部133は、状況情報に基づいて、発電量が減少する傾向にある太陽光発電設備2において減少する発電量を推定し、推定した発電量に基づいて決定した、電力系統Pに供給する電力の減少量を示す供給指示情報を送信してもよい。指示送信部133は、例えば、ある太陽光発電設備2において発電量が1kW減少すると推定し、かつ指令取得部131が事業者サーバ3から取得した指令が供給電力量を減らすことを示している場合、減少すると見込まれる発電量以下の範囲で電力系統Pに供給する電力の量を減らす指示を含む供給指示情報を太陽光発電設備2に送信する。指示送信部133がこのようにすることで、事業者サーバ3から受信した指令の内容に対応するように、複数の太陽光発電設備2からの供給電力量を迅速に変化させることができる。
【0049】
また、指示送信部133は、気温が低下している太陽光発電設備2に対して、電力系統Pに供給する電力を増加させる指示を含む供給指示情報を優先的に送信してもよい。指示送信部133がこのようにすることで、発電効率が良い太陽光発電設備2による発電量を増やすことができるので、電力調整システムSの全体における発電効率を向上させることができる。
【0050】
指示送信部133は、情報取得部132が取得した状況情報に基づいて一の太陽光発電設備2-1の発電量が減少すると推定した場合に、発電量が減少すると推定した太陽光発電設備2-1以外の太陽光発電設備2-2に対して、電力系統Pに供給する電力量を増やすことを指示する供給指示情報を送信してもよい。指示送信部133がこのように動作することで、ある太陽光発電設備2の発電量が減少した場合にも、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の合計値を維持することができる。
【0051】
[発電設備データベース]
指示送信部133は、記憶部12が記憶している太陽光発電設備2の状況を示す各種の情報に基づいて、供給指示情報を送信する対象とする太陽光発電設備2を選択してもよい。記憶部12は、例えば、複数の太陽光発電設備2それぞれに関連付けられた各種の情報が登録された発電設備データベース(以下、発電設備DB)を記憶している。
【0052】
図3は、記憶部12が記憶している発電設備DBの一例を示す図である。
図3に示す発電設備DBにおいては、太陽光発電設備2を識別するための発電設備IDに関連付けて、蓄電設備の有無、固定価格で買い取られるFIT対象設備であるか否か、最大発電量、現状の発電量、発電余力、供給率及び発電効率が関連付けられている。
【0053】
蓄電設備は、電力を蓄積することができる任意の設備を含み、例えば蓄電専用の設備、蓄電可能なバッテリーを搭載した電気自動車、電気自動車に充電可能な設備を有する電力スタンドである。最大発電量は、太陽光発電設備2が発電可能な最大電力量である。発電余力は、最大発電量と現状の発電量との差に相当する。供給率は、それぞれの太陽光発電設備2の発電量に対する、それぞれの太陽光発電設備2が電力系統Pに供給している電力の量の割合を示す値である。供給率は、発電量に対する、発電量から供給電力量を減算した量の割合を示す値であってもよい。
【0054】
指示送信部133は、例えば、記憶部12に記憶された発電設備DBを参照することにより、蓄電設備の有無に基づいて選択した太陽光発電設備2に供給指示情報を送信する。具体的には、指示送信部133は、指令取得部131が指令を取得した時点で複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給している電力量の合計値を減少させる必要がある場合(例えば、合計値が目標電力量よりも大きい場合)に、蓄電設備を有する太陽光発電設備2の少なくとも一部に、電力系統Pに供給する電力を減らすことを指示するための供給指示情報を送信する。蓄電設備を有する太陽光発電設備2は、余剰電力が生じた場合に、余剰電力を蓄電することができる。したがって、指示送信部133が、蓄電設備を有する太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力量を優先的に減らすことで、電力の損失を少なくすることができる。
【0055】
指示送信部133は、記憶部12に記憶された発電設備DBを参照することにより、FIT対象設備であるか否かに基づいて選択した太陽光発電設備2に供給指示情報を送信してもよい。具体的には、指示送信部133は、指令取得部131が指令を取得した時点で複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給している電力量の合計値を減少させる必要がある場合(例えば、合計値が目標電力量よりも大きい場合)に、FIT対象設備でない太陽光発電設備2の少なくとも一部に、電力系統Pに供給する電力を減らすことを指示するための供給指示情報を送信する。
【0056】
FIT対象設備になっている太陽光発電設備2の所有者が得られる対価は、FIT対象設備になっていない太陽光発電設備2の所有者が、太陽光発電設備2が同一の量の電力を供給することにより得られる対価よりも大きい。したがって、FIT対象設備になっている太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量を減らすと、FIT対象設備になっていない太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量を減らす場合に比べて、太陽光発電設備2の所有者に与える経済的損失が大きい。これに対して、指示送信部133が上記のように構成されていることで、FIT対象設備になっている太陽光発電設備2に与える経済的損失を軽減することができる。
【0057】
指示送信部133は、記憶部12に記憶された発電設備DBを参照し、発電余力に基づいて選択した太陽光発電設備2に供給指示情報を送信してもよい。具体的には、指示送信部133は、複数の太陽光発電設備2による供給電力量を増やす必要がある場合、発電余力が大きな太陽光発電設備2に対して、発電量を増加させる指示を含む供給指示情報を優先的に送信する。指示送信部133は、複数の太陽光発電設備2による供給電力量を減らす必要がある場合、発電余力が小さな太陽光発電設備2に対して、発電量を減少させる指示を含む供給指示情報を優先的に送信する。指示送信部133がこのように動作することで、より多くの太陽光発電設備2の発電余力を適切な範囲内に維持しやすくなり、それぞれの太陽光発電設備2の所有者間の公平性を保ちやすくすることができる。
【0058】
指示送信部133は、記憶部12に記憶された発電設備DBを参照することにより、発電効率が高い太陽光発電設備2を優先的に選択してもよい。指示送信部133がこのように構成されていることにより、発電効率が良い太陽光発電設備2による発電量を増やすことができるので、電力調整システムSの全体における発電効率を向上させることができる。
【0059】
なお、指示送信部133は、例えば、情報取得部132が取得した状況情報と、当該太陽光発電設備2に関連付けて記憶部12に記憶された発電効率と、に基づいて太陽光発電設備2が電力系統Pに供給するべき電力の量を決定し、決定した電力の量を示す供給指示情報を送信する。具体的には、指示送信部133は、日射量に基づいて算出される太陽光発電設備2における発電量に発電効率を乗算することにより、太陽光発電設備2が発電可能な電力量を推定した結果に基づいて、各太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量を決定する。指示送信部133は、発電設備DBに記憶された発電効率を気温により補正し、補正した後の発電効率を用いて太陽光発電設備2が発電可能な電力量を推定してもよい。
【0060】
さらに、指示送信部133は、発電設備DBを参照することにより、太陽光発電設備2に関連付けられた供給率にさらに基づいて供給指示情報を送信してもよい。指示送信部133は、例えば、指令の内容を満たすとともに、複数の太陽光発電設備2の供給率の差が小さくなるようにするための供給指示情報を送信する。
【0061】
具体的には、電力系統Pに供給する電力の量を増やす必要がある場合、指示送信部133は、相対的に供給率が低い太陽光発電設備2に対して、電力系統Pに供給する電力の量を増やすことを指示する供給指示情報を送信する。また、電力系統Pに供給する電力の量を減らす必要がある場合、指示送信部133は、相対的に供給率が高い太陽光発電設備2に対して、電力系統Pに供給する電力の量を減らすことを指示する供給指示情報を送信する。指示送信部133がこのように供給率に基づく供給指示情報を送信することで、複数の太陽光発電設備2それぞれの供給率の差が大きくなることを予防できるので、それぞれの太陽光発電設備2の所有者間の公平性を保ちやすくすることができる。
【0062】
以上のとおり、指示送信部133は、発電設備DBを参照することにより、蓄電設備の有無、FIT対象であるか否か、発電余力、供給率、及び発電効率の少なくともいずれかの項目に基づいて、各太陽光発電設備2の供給電力量を調整する。指示送信部133は、項目ごとに複数の太陽光発電設備2の優先順位に対応する点数を付与し、複数の項目の点数の合計値に基づいて、供給指示情報を送信する太陽光発電設備2を選択したり、各太陽光発電設備2の供給電力量を決定したりしてもよい。
【0063】
[太陽光発電設備2の構成]
図4は、太陽光発電設備2の構成例を示す図である。太陽光発電設備2は、太陽光パネル21と、パワーコンディショナー22と、センサ23と、ログ記録装置24と、を有する。ログ記録装置24は、状況記録部241及び制御部242を有する。
【0064】
太陽光パネル21は、太陽電池を含んでおり、太陽光を受けることにより直流の電力を発生する。太陽光パネル21は、発生した電力をパワーコンディショナー22に入力する。
【0065】
パワーコンディショナー22は、太陽光パネル21から入力された直流の電力を交流の電力に変換するインバータを含む。パワーコンディショナー22は、制御部242からの指示に基づいて、交流に変換した電力を電力系統Pに供給する量を制御する。パワーコンディショナー22は、交流に変換した電力の大きさ(すなわち発電量)、及び電力系統Pに供給されている電力の周波数を状況記録部241に通知する。
【0066】
センサ23は、太陽光パネル21が設置されている場所の日射量及び温度を検出するセンサである。センサ23は、検出した日射量及び温度を状況記録部241に通知する。
【0067】
ログ記録装置24は、例えばコンピュータである。状況記録部241は、ハードディスク等の記憶媒体を有しており、太陽光発電設備2における発電量と相関性を有する太陽光発電設備2の状況の変化量を示す状況情報を記録する。具体的には、状況記録部241は、パワーコンディショナー22から通知された発電量及び周波数、並びにセンサ23から通知された日射量及び温度をログデータとして記憶媒体に記録する。
【0068】
図5は、状況記録部241が記録するログデータの一例を示す図である。
図5に示すように、ログデータにおいては、日時に関連付けて発電量、周波数、日射量、及び温度が記録されている。
【0069】
制御部242は、電力調整装置1からの要求に応じて、状況記録部241が記録している状況情報を電力調整装置1に送信する状況送信部として機能する。また、制御部242は、電力調整装置1から受信した供給指示情報に基づいてパワーコンディショナー22を制御する。具体的には、制御部242は、例えば供給指示情報が、電力の供給を停止する指示を含んでいる場合、電力の供給を停止するように電力系統Pを制御する。制御部242は、供給指示情報が供給電力量を変更するための指示を含んでいる場合、供給指示情報が示す供給電力量になるようにパワーコンディショナーを制御する。
【0070】
[通信シーケンス]
図6は、電力調整システムSにおける通信シーケンスの一例を示す図である。まず、事業者サーバ3は、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量を変更する必要があると判定した場合、複数の太陽光発電設備2の供給電力量を変更させるための指令を電力調整装置1に通知する。電力調整装置1は、複数の太陽光発電設備2から状況情報を取得し、取得した状況情報に基づいて、供給指示情報を送信する対象とする太陽光発電設備2を選択するとともに、供給指示情報を作成する。電力調整装置1は、選択した太陽光パネル21に対して、作成した供給指示情報を送信する。電力調整装置1は、このように動作することで、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力の量をリアルタイムで調整することができる。
【0071】
[電力調整装置1の動作フローチャート]
図7及び
図8は、電力調整装置1の動作フローチャートである。情報取得部132は、複数の太陽光発電設備2のそれぞれから状況情報を取得し、取得した日時に関連付けて、取得した状況情報を記憶部12に記憶させる(S11)。情報取得部132は、例えば1秒ごとに状況情報を取得する。
【0072】
指示送信部133は、指令取得部131が取得した指令が、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力量を増加させることを示しているか否かを判定する(S12)。指示送信部133は、指令が、電力系統Pに供給される電力量を増加させることを示していると判定した場合(S12においてYES)、記憶部12に記憶された発電設備DBを参照することにより、発電余力が比較的大きい太陽光発電設備2を、電力系統Pに供給する電力量を増加させる太陽光発電設備2として優先的に選択する(S13)。指示送信部133は、例えば、発電余力が所定の閾値以上である太陽光発電設備2を選択する。指示送信部133は、選択した太陽光発電設備2の発電余力の合計値が増加させるべき電力量よりも大きくなるように、複数の太陽光発電設備2を選択する。
【0073】
指示送信部133は、発電余力が所定の閾値以上である太陽光発電設備2の数が所定数以上である場合(S14においてYES)、発電設備DBを参照することにより、蓄電設備がない太陽光発電設備2を選択する(S15)。指示送信部133は、蓄電設備がない太陽光発電設備2の数が所定数以上である場合(S16においてYES)、発電設備DBを参照することにより、FIT対象の太陽光発電設備2を選択する(S17)。
【0074】
指示送信部133は、選択した太陽光発電設備2に対して、電力系統Pに供給する電力を増加させることを指示するための供給指示情報を送信する(S18)。なお、指示送信部133は、S14及びS16において太陽光発電設備2の数が所定数に満たない場合、S13において選択した太陽光発電設備2に供給指示情報を送信する。
【0075】
指示送信部133は、S12において、指令取得部131が取得した指令が、電力量を増加させることを示していないと判定した場合(S12においてNO)、目標電力量が、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力量を減少させることを示しているか否かを判定する(S20)。指示送信部133は、目標電力量が、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力量を減少させることを示していないと判定した場合(S20においてNO)、電力量を変化させる必要がないと判定してS11に戻る。指示送信部133は、目標電力量が、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給する電力量を減少させることを示していると判定した場合(S20においてYES)、
図8のS21に進む。
【0076】
図8において、指示送信部133は、記憶部12に記憶された発電設備DBを参照することにより、発電余力が比較的小さい太陽光発電設備2を優先的に選択する(S21)。指示送信部133は、例えば、発電余力が所定の閾値以上である太陽光発電設備2を、電力系統Pに供給する電力量を減少させる太陽光発電設備2として優先的に選択する。指示送信部133は、例えば、発電余力が所定の閾値未満である太陽光発電設備2を選択する。指示送信部133は、選択した太陽光発電設備2が電力系統Pに供給している電力量の合計値が減少させるべき電力量よりも大きくなるように、複数の太陽光発電設備2を選択してもよい。
【0077】
指示送信部133は、発電余力が所定の閾値未満である太陽光発電設備2の数が所定数以上である場合(S22においてYES)、発電設備DBを参照することにより、蓄電設備がある太陽光発電設備2を選択する(S23)。指示送信部133は、蓄電設備がある太陽光発電設備2の数が所定数以上である場合(S24においてYES)、発電設備DBを参照することにより、FIT対象でない太陽光発電設備2を選択する(S25)。指示送信部133は、選択した太陽光発電設備2に対して、電力系統Pに供給する電力を減少させることを指示するための供給指示情報を送信する(S26)。
【0078】
[太陽光発電設備2の状況を特定する他の方法]
以上の説明においては、情報取得部132が、太陽光発電設備2が発電した電力の周波数、並びに太陽光発電設備2が設置されている場所の日射量及び気温を状況情報として取得したが、情報取得部132は、他の情報を状況情報として取得してもよい。
【0079】
情報取得部132は、複数の太陽光発電設備2の少なくとも一部の太陽光発電設備2-1による直前の所定の期間内の発電量の変化に基づいて予測した太陽光発電設備2-1と異なる太陽光発電設備2-2の発電量の変化量を状況情報として取得してもよい。太陽光発電設備2-1は、例えば太陽光発電設備2-2よりも西に設置されており、雲が、太陽光発電設備2-1が設置された位置から太陽光発電設備2-2が設置された位置に向かって移動する場合、太陽光発電設備2-1の日射量の変化と同等の変化が、太陽光発電設備2-1と太陽光発電設備2-2との距離に対応する時間だけ遅延してから太陽光発電設備2-2にも発生する。
【0080】
そこで、情報取得部132は、太陽光発電設備2-1の発電量が変化したことを検出してから太陽光発電設備2-1と太陽光発電設備2-2との距離に対応する時間だけ経過した時点で、太陽光発電設備2-2の発電量が、太陽光発電設備2-1の発電量の変化量に対応する量だけ変化すると推定する。太陽光発電設備2-1と太陽光発電設備2-2との距離に対応する時間は、例えば太陽光発電設備2-1と太陽光発電設備2-2との距離に対応する時間を雲の移動速度で除算して得られる時間である。情報取得部132は、日時に関連付けて、推定した発電量を指示送信部133に通知する。指示送信部133は、通知された推定発電量に基づいて、電力系統Pへの電力の供給量を増加又は減少させる太陽光発電設備2を選択することができる。
【0081】
ここで、雲が移動する向きは気象状態によって変化する。情報取得部132は、太陽光発電設備2が設置された位置における直前の所定の期間内の気象の変化を示す情報を状況情報として取得してもよい。そして、指示送信部133は、情報取得部132が取得した気象の変化を示す情報に基づいて、ある太陽光発電設備2の発電量の変化量を推定するために発電量の変化量を参照する他の太陽光発電設備2を選択してもよい。指示送信部133は、発電量の変化量を推定する対象となる太陽光発電設備2-2に対して、雲が移動する手前側にある他の太陽光発電設備2の発電量の変化量を用いて、太陽光発電設備2-2の発電量の変化量を推定してもよい。
【0082】
図9は、雲の動きと発電量の変化について説明するための図である。
図9における斜線の領域は雲が存在する領域を示している。
図9(a)は、第1の時刻T1における雲の位置を示しており、
図9(b)は、第1の時刻T1よりも後の第2の時刻T2における雲の位置を示している。
図9(c)は、第2の時刻T2よりも後の第3の時刻T3における雲の位置を示している。指示送信部133は、例えば、
図9(a)に示す雲の位置及び
図9(b)に示す雲の位置に基づいて、
図9(c)に示す雲の位置を推定する。
【0083】
図9に示す太陽光発電設備2-6は、時刻T1において太陽光発電設備2-1の位置にあり、時刻T2において太陽光発電設備2-4の位置にある雲が、時刻T3において上空にあると推定される位置に設置されている。この場合、指示送信部133は、例えば時刻T1において太陽光発電設備2-1の発電量が通常の50%に減少したことを示す状況情報、及び時刻T2において太陽光発電設備2-4の発電量が通常の50%に減少したことを示す状況情報に基づいて、時刻T3において太陽光発電設備2-6の発電量が通常の50%に減少すると推定する。指示送信部133がこのように動作することで、指示送信部133は、太陽光発電設備2の発電量の変化量の推定精度を高めることができるので、電力系統Pに供給する電力量の調整精度を向上させることができる。
【0084】
[誤差の補正]
記憶部12は、複数の太陽光発電設備2それぞれに関連付けて、状況情報の誤差の大きさを示す誤差情報を記憶してもよい。誤差情報は、予め電力調整装置1の管理者により記憶部12に書き込まれる情報である。この場合、指示送信部133は、情報取得部132が太陽光発電設備2から取得した状況情報を、当該太陽光発電設備2に関連付けて記憶部12に記憶された誤差情報に基づいて補正した情報に基づいて供給指示情報を作成する。指示送信部133がこのように動作することで、電力系統Pに供給する電力量の調整精度をさらに向上させることができる。
【0085】
[変形例]
以上の説明においては、電力調整装置1が、事業者サーバ3から取得した指令に基づいて、複数の太陽光発電設備2が電力系統Pに供給するべき電力の量の変更を指示するための供給指示情報を送信する場合を例示したが、電力調整装置1は、他の情報に基づいて供給指示情報を送信してもよい。例えば、指示送信部133は、情報取得部132が取得した電力系統Pに供給されている電力の周波数の変化量にさらに基づいて、周波数を所定の周波数に近づけるべく、複数の太陽光発電設備2の少なくとも一部が電力系統Pに供給するべき電力の量を変更する量を決定し、決定した量に基づく供給指示情報を送信してもよい。所定の周波数は、例えば50.0Hz又は60.0Hzである。電力調整装置1がこのように構成されていることにより、事業者サーバ3が指令を送信するタイミング以外のタイミングで電力系統Pにおける需給バランスが崩れたときにも、迅速に需給バランスを回復させることができる。
【0086】
[電力調整システムSによる効果]
以上説明したように、電力調整装置1は、複数の太陽光発電設備2それぞれの発電量を示す発電量情報と、複数の太陽光発電設備2それぞれにおける発電量と相関性を有する太陽光発電設備2の状況の変化を示す状況情報とを取得する情報取得部132を有する。さらに、電力調整装置1は、指令の内容と、発電量と、複数の太陽光発電設備2の少なくとも一部に対応する状況情報とに基づいて、複数の太陽光発電設備2の少なくとも一部が電力系統Pに供給するべき電力の量の変更を指示するための供給指示情報を複数の太陽光発電設備2の少なくとも一部に送信する指示送信部133を有する。電力調整装置1がこのような構成を有することにより、電力の需要量が変動した場合であっても、複数の太陽光発電所により供給される電力の量と、要求される電力の量との差を迅速に小さくすることができる。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0088】
1 電力調整装置
2 太陽光発電設備
3 事業者サーバ
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
21 太陽光パネル
22 パワーコンディショナー
23 センサ
24 ログ記録装置
131 指令取得部
132 情報取得部
133 指示送信部
241 状況記録部
242 制御部