(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】継手システム
(51)【国際特許分類】
G01F 1/00 20220101AFI20220815BHJP
G01N 27/02 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
G01F1/00 T
G01F1/00 H
G01N27/02 Z
(21)【出願番号】P 2019552812
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2018041194
(87)【国際公開番号】W WO2019093331
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2017215052
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390006415
【氏名又は名称】高砂電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 博之
(72)【発明者】
【氏名】林 豊
(72)【発明者】
【氏名】内藤 建
(72)【発明者】
【氏名】井上 征明
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-031861(JP,A)
【文献】特開2000-300099(JP,A)
【文献】特開平10-311451(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0377193(US,A1)
【文献】特開2013-117241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00
G01F 1/00
F16K 31/06
F16K 37/00
F17D 5/06
G01N 27/02-27/10
G01P 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を取り扱う流体装置に連結される流路と、
少なくとも2つの流路に個別に設けられて流路中の流体と電気的に接触する電極
と、
前記少なくとも2つの流路に個別に設けられた電極を利用して異なる流路中の流体間の電気的な導通度合い
に応じて流体装置を通過する流体の量あるいは有無を検知する回路と、を含み、
該回路は、正値の電圧と負値の電圧とが周期的に交互に入れ替わる方形波交流の電圧を、異なる流路に設けられた第1の電極と第2の電極との間に印加する信号生成部と、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電流の大きさを表す計測値を取得する信号処理部と、前記流体装置を通過する流体の量あるいは有無を判定する判定部と、を備え、
前記信号処理部は、前記信号生成部が印加する電圧が負値から正値に切り替わる第1の時点を基準として所定時間ずれた時点で第1の計測値を取得すると共に、前記信号生成部が印加する電圧が正値から負値に切り替わる第2の時点を基準として前記所定時間ずれた時点で第2の計測値を取得し、
前記回路は、前記第1の計測値と前記第2の計測値との差分値の大きさを、前記電気的な導通度合いを表す指標として計測するように構成された継手システム。
【請求項2】
請求項1において、前記少なくとも2つの流路が一体的に設けられていると共に、前記流体装置に対して取付可能に構成された継手ユニットを含む継手システム。
【請求項3】
請求項
1または2において、前記回路は、前記流体装置を流体が通過する状態で、前記第1あるいは第2の時点の後、前記信号処理部が取得する計測値が最大値あるいは最小値に至るまでのずれ時間を計測する時間計測部を備え、当該ずれ時間を前記所定時間として設定する継手システム。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか1項において、前記判定部は、前記差分値に閾値処理を施して前記流体装置を通過する流体の有無を検知するように構成され、
前記回路は、前記閾値処理に適用する閾値を設定する閾値設定部を備えている継手システム。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項において、前記流路は、流体との間で電気的な絶縁性が確保されており、前記電極は、前記流体装置との間で電気的な絶縁性が確保されている継手システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を取り扱う流体装置の流路に連結される継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液などの流体の流路を有する各種の工業製品が知られている。このような工業製品の多くは、液の流れを止めたり、流路を切り替えたり、流量を調整するためのバルブや切替弁などを備えている。特に例えば薬液やサンプル液などを取り扱う各種の分析装置や検査装置などでは、液の流量や流路を精度高く管理する必要があるため、精密なバルブや切替弁が採用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
バルブや切替弁としては、電磁力によって進退駆動される弁体と、この弁体が押し当たる弁座と、を備えるものがある。このバルブ等では、弁座に弁体が押し当たって流路が閉じられる一方、弁座から弁体が後退すると両者間に隙間が生じて流路が開かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のバルブや切替弁やポンプ等の流体装置では、次のような問題がある。すなわち、取り扱う液によっては結晶が析出し易い性状を有するものがあり、定期的なメンテナンスが必要である一方、メンテナンスが不十分であると、例えば弁座と弁体との接触箇所などのシール面に結晶が析出してシール不良が生じ、液漏れ等のトラブルが発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、流体装置の動作状態の検知が容易な継手システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、流体を取り扱う流体装置に連結される流路と、
少なくとも2つの流路に個別に設けられて流路中の流体と電気的に接触する電極と、を含み、
前記少なくとも2つの流路に個別に設けられた電極を利用して異なる流路中の流体間の電気的な導通度合いを計測可能に構成された継手システムにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の継手システムは、前記少なくとも2つの流路に個別に設けられた電極を含むシステムである。この継手システムでは、電極を利用して異なる流路中の流体間の電気的な導通度合いを計測可能である。異なる流路間に流体の流れや液漏れが有れば、流体間の電気的な導通度合いが高くなり、例えば流体間の電気的な抵抗値が小さくなる。一方、異なる流路間で流体が遮断されていれば、上記の電気的な導通度合いが低くなり、例えば流体間の電気的な抵抗値が大きくなる。
【0009】
このように本発明の継手システムは、異なる流路中の流体間の電気的な導通度合いの計測が容易であり、流体装置の動作状態の検知に好適なシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1における、継手システムを構成する継手ユニットの装着例を示す図。
【
図2】実施例1における、継手ユニットの断面構造を示す斜視図。
【
図3】実施例1における、電磁弁の開弁動作を説明する図。
【
図4】実施例1における、継手ユニットに組み合わせる検知回路のブロック図。
【
図5】実施例1における、検知回路が組み込まれた継手ユニットを示す図。
【
図6】実施例1における、他の継手ユニットを示す図。
【
図7】実施例2における、継手システムを構成する継手の装着例を示す図。
【
図9】実施例3における、マニフォールドに組み合わせる継手ユニットの説明図。
【
図10】実施例3における、継手ユニットの斜視図。
【
図11】実施例3における、継手ユニットの継手部分の構造を示す断面図。
【
図12】実施例4における、電極間の電気的な経路の等価回路を示す回路図。
【
図13】実施例4における、交流信号、中間信号、検出信号を示すグラフ。
【
図14】実施例5における、制御ユニットのブロック図。
【
図15】実施例5における、交流信号、中間信号、検出信号を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の継手システムを適用する対象の流体装置としては、バルブや三方弁や四方弁などの切替弁、流体を流路に圧送したり流体を吸引するポンプのほか、流路を有するパイプやチューブ、複数の流路を設けたマニフォールド等がある。さらに、流路を有するパイプやチューブとしては、直線的な単管であっても良く、流路の分岐箇所や合流箇所を有する分岐管あるいは集合管であっても良い。
【0012】
本発明における好適な一態様の継手システムは、前記少なくとも2つの流路が一体的に設けられていると共に、前記流体装置に対して取付可能に構成された継手ユニットを含んでいる。
前記少なくとも2つの流路が一体的に設けられた継手ユニットを前記流体装置に取り付ければ、異なる流路中の流体間の電気的な導通度合いを効率良く計測できる。
【0013】
本発明における好適な一態様の継手システムは、前記電気的な導通度合いに応じて流体装置を通過する流体の有無を検知する回路を含んでいる。
該検知する回路を含む継手システムによれば、前記流体装置を通過する流体の有無を検知することで、該流体装置の液漏れなど不良な動作状態を検知できる。
【0014】
本発明における好適な一態様の継手システムは、前記電気的な導通度合いに応じて流体装置を通過する流体の量を検知する回路を含んでいる。
前記流体の量は、前記流体装置における流体の通路の断面積、あるいは例えばデューティー制御等によって通路の開放状態と封鎖状態とを時間的に切り換える場合の開放状態の時間的な占有率、等に依存している。前記電気的な導通度合いは、前記通路の断面積や前記開放状態の時間的な占有率等に依存して変化すると考えられる。したがって、前記電気的な導通度合いに基づけば、前記流体の量を検知できる可能性がある。
【0015】
本発明における好適な一態様の継手システムにおける流路は、流体との間で電気的な絶縁性が確保されており、前記電極は、前記流体装置との間で電気的な絶縁性が確保されている。
この場合には、前記流体間の電気的な導通度合いを精度高く計測できる。
【実施例】
【0016】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、継手システム1Sを構成する継手ユニット1を電磁弁2に適用した例である。この内容について、
図1~
図6を参照して説明する。
流体装置の一例をなす電磁弁2は、液(流体)が流れる流路の途中に弁座260と弁体25とが設けられ、弁座260に弁体25が押し当たって閉弁し、弁座260と弁体25との間に隙間が生じて開弁するバルブである。
【0017】
この電磁弁2に取り付けられる継手ユニット1は、電磁弁2に対して液を供給する流路11Aと、電磁弁2から液を流出させる流路11Bと、を備えている。この継手ユニット1は、電磁弁2の流入側の液と流出側の液との電気的な導通度合いを計測するための電極14として、流入側の液と電気的に導通する第1の電極141と、流出側の液と電気的に導通する第2の電極142と、を備えている。
以下、まず電磁弁2の構成を説明し、続いて継手システム1Sの内容を詳しく説明する。
【0018】
図1の電磁弁2は、弁体25を駆動するためのプランジャ21を含む駆動部2Aと、流路が形成された流路部2Bと、により構成される流体装置である。電磁弁2は、例えば外部の駆動ユニット8が出力する駆動信号によって動作する。
【0019】
駆動部2Aは、電線が巻回された円筒状のコイル22の内側に、円柱状のプランジャ21を内挿配置して構成されている。コイル22は、有底円筒状の金属製のケース20の内側に固定されている。コイル22の両端の巻回端は、例えばケース20の外側に固定される駆動ユニット8に結線できるよう、ケース20の外側に取り出される。
【0020】
プランジャ21は、強磁性材料よりなる円柱状の部品である。このプランジャ21は、ケース20の底側に圧縮状態で配置された円筒状のスプリング210に対して同軸をなすように組み込まれている。プランジャ21は、このスプリング210の付勢力により軸方向における突出側に付勢された状態となっている。プランジャ21の先端面には、円柱状の弁体25を螺入するためのネジ孔211が穿設されている。
【0021】
弁体25は、樹脂成型品である軸部252に対してゴム製のシール部材251を組み合わせた部品である。軸部252では、軸方向の中間部分に膜状のフランジ253が一体成形されていると共に、シール部材251を取り付けるための取付構造が先端に設けられている。シール部材251は、円盤状をなし、軸部252とは反対側の表面が弁座260に押し当たるシール面となっている。シール部材251やフランジ253等を含めて弁体25はすべて、非導電性材料によって形成されている。
【0022】
弁体25のフランジ253は、駆動部2Aに対して流路部2Bを取り付けたとき、その外周部が駆動部2Aと流路部2Bとの間で液密に固定されるように構成されている。このフランジ253は、組付け状態において、駆動部2A側への液漏れを防止すると共に、弾性変形に応じて弁体25の軸方向の変位を許容するように機能する。
【0023】
流路部2Bは、
図1のごとく、背の低い略円柱状の外形状を呈しており、同様に略円柱状を呈する駆動部2Aの端面に取り付けられる。この流路部2Bは、非導電性樹脂材料による樹脂加工品である。流路部2Bの表面のうち、駆動部2Aに対する取付面に当たる側には、略円柱状の中空部である液室26が穿設されている。流路部2Bの反対側の表面には、流入側の流路261と、流出側の流路262と、が開口している。
【0024】
流入側の流路261は、液室26の底面の中心近くに立設された円筒状の縁部を介して液室26に連通している。井戸枠のような円筒状の縁部は、上記の弁体25が押し当たる弁座260として機能する。流出側の流路262は、液室26の底面における弁座260の外周側の偏心位置に開口している。
【0025】
流路部2B及び弁体25は、非導電性の樹脂材料あるいはゴム材料等により形成されている。したがって、流路261、流路262、液室26中の液は、電磁弁2側と電気的に接触することなく絶縁された状態となる。
【0026】
以上のように構成された電磁弁2では、駆動ユニット8によるコイル22への通電に応じてプランジャ21が電磁的に駆動されて、流路部2Bから遠ざかる方向に後退する。プランジャ21がこのように後退すると、流路部2Bの弁座260から弁体25が離れて隙間が生じ、この隙間を介して流入側の流路261と流出側の流路262が連通する開弁状態となる(
図3参照。)。一方、コイル22への非通電時では、スプリング210の付勢力によりプランジャ21が流路部2B側に軸方向に突出し、これにより流路部2Bの弁座260に対して弁体25が押し当たって流入側の流路261と流出側の流路262とが遮断される閉弁状態となる。なお、この弁体25が弁座260に押し当たった閉弁状態の時、弁座260の上流側に液が溜まると共に、下流側にも液が溜まって残る構造になっている。したがって、電磁弁2が閉弁状態のときには、第1電極141が流入側の液に浸っていると共に、第2電極142が流出側の液に浸る状態となる。
【0027】
電磁弁2では、弁座260に弁体25が押し当たる閉弁状態のとき、流入側の流路261の液が、液室26の液及び流出側の流路262の液と電気的に絶縁された状態になる。一方、弁座260から弁体25が離れる開弁状態のとき、流入側の流路261の液が、液室26の液及び流出側の流路262の液と電気的に接触する状態となる。
【0028】
次に、継手システム1Sを構成する継手ユニット1及び検知回路(回路)10について説明する。
継手ユニット1は、
図1及び
図2のごとく、流体装置である電磁弁2等に取り付けられ、外部に流路を取り出す継手をなすユニットである。検知回路10は、電磁弁2の流入側の流路261と流出側の流路262との間で電気的な導通度合いが過大であるときにリーク信号を出力する回路である。この検知回路10は、継手ユニット1及び電磁弁2を駆動する駆動ユニット8と信号線を介して電気的に接続されている。
【0029】
なお、継手ユニット1に対して検知回路10を組み合わせる態様としては、継手ユニット1の外側に取り付ける態様や、継手ユニット1の内側にスペースを設けて内部に収容する態様や、別体で検知回路10を組み合わせる態様等がある。
【0030】
継手ユニット1は、
図1及び
図2のごとく、外径が電磁弁2とほぼ同様の背の低い略円柱状の外形状を呈する継手ユニットである。非導電性樹脂材料よりなる継手ユニット1は、略円柱状を呈する電磁弁2の流路部2B側の端面に取り付けられる。電磁弁2に対する継手ユニット1の取付面18Aには、電磁弁2側の流路261・262に連結される流入側及び流出側の流路11A・Bが開口していると共に、図示しない固定ネジを貫通配置するための貫通孔180が設けられている。取付面18Aにおける流路11A・Bの開口部分には、Oリング110を配置できるように拡径されたシール部113A・Bが形成されている。
【0031】
継手ユニット1の外周面では、対向して位置する2か所に流路11A・Bの開口部111A・Bが設けられている。各開口部111A・Bの内周面には、ネジ山が形成されており、図示しない配管を接続可能である。なお、シリコーン製のチューブなどの配管が予め接続された継手ユニットであっても良い。
【0032】
継手ユニット1では、一方の開口部111Aをなす流入側の流路11Aと、他方の開口部111Bをなす流出側の流路11Bと、により流路が形成されている。継手ユニット1では、外周面に開口する流入側の流路11A及び流出側の流路11Bが直角に曲げられて上記のように取付面18Aにそれぞれ開口している。
【0033】
継手ユニット1では、電磁弁2に対する取付面18Aとは反対側の表面18Bに、流路11A・Bにそれぞれ連通する2か所の取付孔140が穿設されている。各取付孔140にはそれぞれ電極14が埋設されている。第1の電極141は、流入側の流路11Aの内周壁面を貫通して流路11A内に突出している。第2の電極142は、流出側の流路11Bの内周壁面を貫通して流路11B内に突出している。各電極14は、ガスケット145を介して取付孔140に液密に保持されている。
【0034】
検知回路10(
図4)は、交流信号を生成する信号生成部101、検出信号を処理する信号処理部103、及び液漏れを判定する判定部105、を含めて構成されている。検知回路10は、所定電圧に調整された交流信号を第1の電極141に印加する一方、第2の電極142に生じる電流の大きさに応じて液漏れを検知する。
【0035】
信号生成部101は、第1の電極141に印加するための所定電圧の交流信号を生成する回路部である。交流信号としては、例えば周波数1KHzで周期的に変化する信号などを利用できる。交流信号を電極141に印加すれば、電極で起こり得る電解や結晶の析出を未然に抑制できる。特に、結晶の析出を抑制できれば、塩などの蓄積を回避でき、電極の感度特性の変化等を抑制できる。また、電解を抑制すれば、流通する液体の性質の変化等を抑制できる。このように交流信号を電極141に印加することで電極で起こり得る電解や結晶の析出を未然に抑制すれば、種々のトラブルの発生を未然に回避できる。
【0036】
なお、本例では、第1の電極141に作用する交流信号として、正値の期間と負値の期間が周期的に交互に現れる方形波交流(電圧)を採用している。交流信号としては、正弦波、三角波、パルス波など、様々な信号を採用できる。本例では、周波数1kHzの交流信号を採用しているが、交流信号の周波数は適宜選択的に設定すると良い。また、所定電圧の交流信号を印加すれば、電源電圧の変動等の影響が検知回路10の出力電位に及ぶおそれを抑制でき、検出の精度を向上できる。なお、第1の電極141に交流信号を作用する、あるいは第1の電極141に電圧を印加する等の表現は、第1の電極141と第2の電極142との間に電圧を印加することを意味している。
【0037】
信号処理部103は、第2の電極142に生じる電流を検出信号として取り込み、判定部105が取り扱いし易い検出信号(電圧)に変換する回路部である。ここで、第2の電極142に生じる電流は、第1の電極141と第2の電極142との間に印加した電圧に応じて、第1の電極141と第2の電極142との間に流れる電流を意味している。信号処理部103は、第1の電極141に上記の交流信号(電圧)を作用したとき、第2の電極142に生じる交流の検出信号(電流)を増幅する機能と、増幅後の検出信号の大きさを電圧値に変換して中間信号(交流電圧)を生成する機能と、この中間信号の振幅の大きさを示す計測値の一例である検出信号を生成する機能と、を備えている。検出信号を生成する機能は、中間信号の最大値を保持するピークホールド回路と、中間信号の最小値を保持するピークホールド回路と、これら最大値と最小値との差分値を生成する差分回路と、を含む信号処理部103により実現される。
【0038】
上記の3つの機能を備える信号処理部103は、第2の電極142に生じた交流の検出信号(交流電流)を元にして、電流/電圧変換によって交流電圧の中間信号を得、その中間信号の振幅の大きさを表す直流電圧の検出信号に変換して出力する。
【0039】
なお、上記の中間信号(交流電圧)を生成する機能に、バンドパスフィルタによって低周波成分及び高周波成分を除去する機能を含めることも良い。このバンドパスフィルタの周波数的な特性については、信号生成部101が生成する交流信号の周波数に対応して設定すると良い。例えば周波数1KHzで周期的に変化する交流信号を電極141に作用する場合であれば、1kHz近傍の周波数を選択的に通過させるバンドパスフィルタを採用すると良い。
【0040】
判定部105は、電磁弁2の閉弁期間において液漏れを判定する回路部である。判定部105は、駆動ユニット8の駆動信号を監視して電磁弁2の閉弁期間を特定すると共に、信号処理部103が変換した検出信号(電圧値)に関する閾値処理を実行する。判定部105は、電磁弁2の閉弁期間において検出信号の電圧値が予め定めた閾値を超えていれば、液漏れと判定する。判定部105は、液漏れと判定したとき、液漏れを検出した旨を表すリーク信号を駆動ユニット8へ出力する。
【0041】
上記の継手ユニット1と検知回路10とを含む継手システム1Sを電磁弁2などの流体装置に組み合わせれば、電磁弁2の流入側の液と流出側の液との間の電気的な導通度合いに応じて、閉弁状態下の液漏れを検出可能である。この継手システム1Sは、結晶が析出し易い液を取り扱う流体装置への適用の際に特に有効である。例えば電磁弁2への適用では、例えば弁座260に析出した結晶に起因するシール不良によって起こり得る液漏れを早期に検出可能である。
【0042】
液漏れを表すリーク信号の発生に応じて電磁弁2のメンテナンス等を実施すれば、弁座260や弁体25等に生じた液漏れ症状の重症化や、電磁弁2から液の供給を受けて動作する図示しない外部装置のトラブル等を未然に回避できる。
【0043】
なお、本例では、電磁弁2の弁座260に弁体25が当接する閉弁状態のとき、継手ユニット1の流路を含めて電磁弁2の流入側の液と流出側の液とが電気的に絶縁される構成を例示している。閉弁状態のとき、電磁弁2の流入側の液と流出側の液とが電磁弁2の構成部品や継手ユニット1の構成部品を介在して電気的に導通する構成であっても良い。この場合、これらの構成部品を介する電気的抵抗の大きさとの比較において、液の電気的抵抗が十分に小さいものであるか否かが問題となる。電磁弁2や継手ユニット1の構成部品を介する電気的抵抗の大きさが、液の電気的抵抗を有限の値として取り扱いできる程度の大きさであれば良い。さらに、電磁弁2の構成部品や継手ユニット1の構成部品を介する電気的抵抗の大きさが、液の電気的抵抗に比して十分に大きいこと(液の電導度に対して、電磁弁2の構成部品や継手ユニット1の構成部品の電導度を無視できること)が望ましい。
【0044】
この場合には、上記のように電磁弁2、継手ユニット1の構成部品を介在して電磁弁2の流入側の液と流出側の液とが電気的に導通する構成であっても、両者間の電気的抵抗など電気的な導通度合いを表す指標値が計測可能である。そして、この指標値の変化に応じて液漏れ等を検知できる。
【0045】
本例では、流体装置として電磁弁2を例示したが、流入側の液と流出側の液との電気的な導通度合いを計測して液漏れを検知するという構成は、手動バルブや、ステッピングモータを利用したバルブや、流路を切り替える三方弁や四方弁など各種の流体装置に適用可能である。
【0046】
本例では、検出信号の電圧値に関する閾値処理により検知回路10が液漏れの有無を判定する構成を例示している。これに代えて、検出信号の電圧値の大小に応じて液の流量を計測することも良い。また、例えば、開と閉とが周期的に繰り返されるデューティー制御で電磁弁2を駆動する場合であれば、検出信号の電圧値の時間的な平均値に応じて弁開度を推定して流量を算出することも良く、検出信号の電圧値がHiの期間とLoの期間との比率から弁開度を推定して流量を算出することも良い。
【0047】
さらに、上記の閾値処理に適用する閾値を適切に設定するための閾値設定部を、検知回路10に設けることも良い。この閾値設定部による閾値の設定方法としては、例えば、以下の方法がある。
(設定方法1)
電磁弁2が閉弁時の検出信号の大きさ(電圧値)に対して、係数を乗算して閾値を設定する方法。この係数としては、例えば、1.1や1.2など、1.0を超える値を設定できる。
(設定方法2)
電磁弁2が開弁時の検出信号の大きさ(電圧値)に係数を乗算して閾値を設定する方法。この係数としては、例えば、1/10や1/100などの値を設定できる。
(設定方法3)
電磁弁2が閉弁時の検出信号の大きさ(電圧値)を、電磁弁2が開弁時の検出信号の大きさ(電圧値)で除算した値に、係数を乗算して閾値を設定する方法。この係数としては、例えば、1.1や1.2など、1.0を超える値を設定できる。なお、この場合の閾値処理の対象は、電磁弁2が開弁時の検出信号の大きさ(電圧値)により対象の検出信号の大きさを除算した値である。
なお、上記のように設定した閾値を利用する閾値処理は、デジタル回路による処理であっても良く、アナログ回路による処理であっても良い。
【0048】
電極14に生じた交流の検出信号を増幅する信号処理部103の機能について、増幅率を複数種類設けることも良い。増幅率1を含めて増幅率が小さいと微弱な検出信号を見逃すおそれが生じる一方、増幅率が大きいと大きな検出信号が発生したときに飽和を生じるおそれがある。増幅率を複数種類設ける場合であれば、増幅後の大きさが適切な範囲にある検出信号を選択して処理できる。このような構成は、取り扱う液の電気伝導度が不明であったり、様々であったりする場合に有効であり、汎用性の向上に役立つ。
【0049】
なお、本例では、信号処理部103が生成し、判定部105が液漏れ判定に利用する検出信号として、電圧値の検出信号を例示している。電圧値の検出信号であれば、例えば、この検出信号をそのまま駆動ユニット8に出力する場合であっても、受け取り側での取り扱いが比較的容易であり、検出信号を取り扱うための回路構成をシンプルにできる。
【0050】
信号処理部103の検出信号、あるいは検知回路10のリーク信号を、信号線等で直接接続されていない外部に出力する手段を設けることも良い。例えば、無線LAN等を介してインターネット等の通信回線網に出力すれば、外部から電磁弁2の動作状態を監視できるようになる。
【0051】
本例では、継手ユニット1に対して検知回路10を別体で設けた継手システム1Sを例示したが、
図5のように継手ユニット1に対して検知回路10を組み込むことも良い。この場合には、電線等で継手ユニット1と検知回路10とを接続する必要がなくなり、一体的な取り扱いが容易になる。
【0052】
本例では、取付孔140に金属製の電極14を嵌入した継手ユニット1を例示している。インサート成形により電極14を設けることも良い。あるいは、
図6のように、例えば、導電性を呈する第1の樹脂材料と、電気的な絶縁性を備える第2の樹脂材料と、による2色成形により継手ユニット1を作製することも良い。継手ユニット1の本体部分を上記の第2の樹脂材料により形成する一方、電極14として機能する電気的な経路を上記の第1の樹脂材料により形成すると良い。
【0053】
さらに、例えばカーボンナノチューブなどの導電性材料が練り込まれて導電性が高められたゴムを電極として採用することも良い。ゴムよりなる電極は、例えば、インサート成形等により樹脂材料中に配置しても良く、予め穿設された取付孔140に圧入等しても良い。圧入の場合には、ゴムよりなる電極が適度に変形してシール材として機能するため、電極のほかに別途シール材を設ける必要がなくなり部品点数を削減できる。
【0054】
継手システム1Sの態様としては、本例で上述したように継手としての機能を備える継手ユニット1に対して検知回路10を組み合わせた態様のほか、継手ユニット1に対して検知回路10を組み込んだ態様や、検知回路10と同様の機能を備える外部の回路装置を組み合わせ可能な継手ユニット1のみの態様など、の様々な態様がある。
【0055】
なお、本例では、閉弁状態の時、弁座260の上流側に液が溜まると共に、下流側にも液が溜まって残る構造の流体装置(電磁弁2)を例示している。この流体装置では、閉弁状態のとき、第1電極141が流入側の液に浸っていると共に、第2電極142が流出側の液に浸る状態となる。流体装置の中には、閉弁状態のとき、弁の下流側の液体が排出されて流路が空になる装置もある。このような流体装置の場合、流出側に第1電極141及び第2電極142の両方を設けることも良い。閉弁状態のときに液漏れがあれば、電極141、142間の電気的抵抗が低下するので、液漏れの検知が可能である。また、液が流れる状態において流路が液で満たされる一方、液が流れない状態では流路から液が排出されて空になるパイプやチューブなどの流体装置の場合についても、流入側、流出側を区別することなく、流路中に第1電極141と第2電極142とを設けると良い。例えば電極141、142の両方を流出側に設けることも良い。電極141、142間の電気的抵抗などによって、液が流れる状態か否かを判別できる。この場合、第1電極141と第2電極142とは、液が流れる方向における同じ位置であっても良く、異なる位置であっても良い。
【0056】
(実施例2)
本例は、実施例1の継手ユニットに代えて、流路毎の個別の継手3を含む継手システム1Sの例である。この内容について、
図7及び
図8を参照して説明する。
本例の継手システム1Sを適用する対象の流体装置は、実施例1と同様の電磁弁2である。本例の電磁弁2では、流入側の流路及び流出側の流路が、円柱形状の流路部2Bの外周面に穿設された開口部261A・262Aに連通している。この開口部261A・262Aには、ネジ山が形成されており、電極36を備える継手3を個別に接続可能である。
【0057】
継手3は、
図8のごとく、流路をなすPTFE(PolyTetraFluoroEthylene)製のチューブ33を内挿配置するジョイントボディ31、金属製のメタルシーラー35、ゴム製のソフトシーラー37等を含んで構成される継手である。
ジョイントボディ31は、ボルトに似通った外形状を呈すると共に、貫通孔310が設けられた樹脂成形品である。ジョイントボディ31では、一方の端部にスパナ等の工具をかける断面六角形状の頭部311が設けられ、他の部分の外周面にはねじ山313が形成されている。ジョイントボディ31の貫通孔310は、頭部311とは反対側において、開口側に向かって次第に拡径するテーパー状の開口端部310Tを有している。
【0058】
ジョイントボディ31では、後端にコネクタ部360を設けたピン形状の電極36がインサート成形により埋設されている。電極36は、先端面361がジョイントボディ31の端面と略面一をなして露出すると共に、後端のコネクタ部360がジョイントボディ31の頭部311から外部に突出する状態となっている。
【0059】
メタルシーラー35は、円環状のフランジ部351に対して小径の筒部353を組み合わせた金属製のシール部品であり、導電性を備えている。筒部353は、先端に向けて次第に外径が小さくなるテーパー状に形成されている。このテーパー状の筒部353は、チューブ33を外挿配置する状態でジョイントボディ31のテーパー状の開口端部310Tに挿入される。
【0060】
ソフトシーラー37は、メタルシーラー35のフランジ部351よりもひと回り大径の円環形状のゴム製あるいはPTFE製のシール部品である。メタルシーラー35を組み付けたジョイントボディ31を開口部261A・262Aに接続する際、ソフトシーラー37が先端側に配置されて開口部261A・262Aの底面に押し付けられる。
【0061】
電磁弁2に対して継手3を接続するに当たっては、まず、ジョイントボディ31に貫通配置されたチューブ33の先端にメタルシーラー35のテーパー状の筒部353を挿入しておく。そして、ソフトシーラー37が底側に配置された電磁弁2の開口部261A・262Aに対して、上記のようにメタルシーラー35を組み合わせたジョイントボディ31を螺入する。
【0062】
ジョイントボディ31を開口部261A・262Aに螺入すると、先端のメタルシーラー35がソフトシーラー37に押し当たる。ソフトシーラー37は、開口部261A・262Aの底面とメタルシーラー35との間で挟み込まれて適度な弾性変形を生じ、これによりソフトシーラー37の表裏両側に液密をなすシール面が形成される。
【0063】
ジョイントボディ31を螺入したとき、メタルシーラー35のテーパー状の筒部353がジョイントボディ31のテーパー状の開口端部310Tに押し込まれると共に、メタルシーラー35のフランジ部351がジョイントボディ31の先端面に押し付けられる。筒部353と開口端部310Tとの間では、PTFE製のチューブ33が適度に圧縮変形し、その内周面が筒部353の外周面に押し当たって液密をなすシール面が形成される。メタルシール35のフランジ部351は、ジョイントボディ31の先端面に押し当たり、これによりジョイントボディ31の先端面に露出する電極36の先端面361と電気的に接触する状態となる。
【0064】
継手3は、メタルシーラー35が液の流路の一部を形成し、その内周面に液が接触する構造を備えている。この継手3では、メタルシーラー35のフランジ部351が電極36と電気的に接触しており、継手3を流れる液と電極36とが電気的に接続された状態にある。開口部261A・262Aにそれぞれ継手3を接続すれば、各継手3の電極36を介して電磁弁2の流入側の液と流出側の液との間の電気的な導通度合いを検出可能である。
【0065】
本例の継手システム1Sの態様としては、少なくとも2つの継手3に対して図示しない検知回路(実施例1の検知回路と同様の回路)を含めた態様のほか、少なくとも2つの継手3により構成され、外部の検知回路と組み合わせ可能な態様であっても良い。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0066】
(実施例3)
本例は、実施例1の継手ユニットを元にして、流路の閉鎖や切替が可能な流体装置であるマニフォールド58に装着可能なように構成が変更された継手ユニット5を含む継手システム1Sの例である。この内容について
図9~
図11を参照して説明する。
【0067】
図9に例示のマニフォールド58は、樹脂製の平板に複数の流路を設けたプレート形状のマニフォールドである。マニフォールド58の表裏両面には、流路の開口孔580が複数穿設されている。一方の表面である設置面58Aは、電磁弁581や四方弁585やポンプ583などの機器を取り付ける側の表面である。この表面の開口孔580は、これらの機器へ液を供給するか、あるいはこれらの機器から流出した液を還流するための孔である。このマニフォールド58では、設置面58Aに取り付ける機器の種類や、取り付ける箇所に応じてマニフォールド58の機能を変更できる。
【0068】
設置面58Aとは反対側のマニフォールド58の連結面58Bは、平板状の継手ユニット5を積層して取り付ける面である。連結面58Bには、設置面58Aの開口孔580に連通する図示しない連結孔が複数開口している。これらの連結孔は、継手ユニット5の表面に開口する流路550に連結される。
【0069】
継手ユニット5は、
図9及び
図10のごとく、複数の流路550(
図11)が穿設された樹脂製平板状の継手プレート55を含むユニットである。継手ユニット5では、マニフォールド58の連結面58Bに穿設された連結孔と連結するための流路550が形成され、この流路550からチューブ521が延設されている。継手プレート55の両面のうち、チューブ521が接続される側の表面には、検知回路57が取り付けられている。
【0070】
継手プレート55の表面には、
図11のごとく、テーパー状の先端部を有すると共に中間部にネジ部を設けたニップル552が流路550毎に立設されている。継手ユニット5では、テーパー状の先端部にチューブ521が外挿されたニップル552に対して締付ナット52を螺入することで、各流路550に対してチューブ521が液密に接続されている。
【0071】
図11の断面図のごとく、継手プレート55には、一方の端部にコネクタ部560を設けたカギ形状の電極56が各流路550に対応して埋設されている。インサート成形により埋設された各電極56は、コネクタ部560とは反対側の先端が流路550の内周壁面に露出する一方、ニップル552の外周側に当たる継手プレート55の表面から他端のコネクタ部560が突出している。各コネクタ部560は、図示しない信号線を介して検知回路57と電気的に接続されている。
図10及び
図11の継手システム1Sでは、コネクタ部560の組み合わせを適宜変更することで、液間の電気的な導通度合いを計測する対象の流路550の組み合わせを切替可能である。
【0072】
例えば
図9のように、設置面58Aの隣接する2つの開口孔580に、機器である電磁弁581の流入口と流出口をそれぞれ接続することで、電磁弁581の流入口と接続された開口孔580に対応する流路550から延設されたチューブ521が流入側チューブとなり、電磁弁581の流出口と接続された開口孔580に対応する流路550から延設されたチューブ521が流出側チューブとなる。この場合、流入側チューブ521→流路550→電磁弁581→流路550→流出側チューブ521の流路が形成される。そして、その流路に2つの電極56が電磁弁581を挟んで流入側と流出側に配設された「継手システム」が形成される。
【0073】
従来、バルブや切替弁などが複数配置されたマニフォールド58などの流体装置のシステムで異常が発生した場合、漏れ等の異常発生箇所の特定が難しく、どこで漏れが発生しているのか分からなかったという問題がある。一方、本例の継手システム1Sを適用すれば、マニフォールド58で漏れ等の異常が発生した際、異常発生箇所の特定が容易であり、異常発生箇所に該当するバルブを交換する等のメンテナンス作業を迅速、かつ、的確に実施できる。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0074】
(実施例4)
本例は、実施例1の継手システムに基づいて、漏れ検知の精度向上のために検知回路10が実行する信号処理の内容を変更した例である。この内容について、
図4、
図12及び
図13を参照して説明する。
【0075】
本例の構成を説明するに当たって、まず、第1の電極141と第2の電極142との間の電気的な経路について説明する。第1の電極141と第2の電極142との間の電気的な経路には、電極141、142が液に接する界面の存在等に起因し、電荷を蓄える電子部品であるコンデンサと同様の電気的な作用を生じる浮遊容量や、電気的な抵抗などが存在している。第1の電極141と第2の電極142との間の電気的な経路は、
図12の等価回路で表現できる。この等価回路のうちの抵抗R1は、液や電磁弁などを介在する電極141、142間の経路の電気的な抵抗である。静電容量Cは、電極141、142間の浮遊容量である。抵抗R2は、電極141、142の内部抵抗や電気配線などで生じる電気的な抵抗である。なお、上記内部抵抗や電気配線にも図示しない浮遊容量が存在している。
【0076】
電極141、142間に静電容量Cが存在する場合、第1の電極141に印加する交流電圧(交流信号)の正負の切り換わりに応じて、静電容量Cの充放電のために第2の電極142に僅かな電流が生じる。また、交流信号が正から負への切り換わったときと、交流信号が負から正に切り換わったときと、では、第2の電極142に生じる電流の向きが異なる。それ故、電磁弁の正常な閉弁時であっても、第1の電極141に交流信号を作用すると第2の電極142に交流電流(中間信号)が生じる。これにより、液漏れが発生していない正常な閉弁状態であっても中間信号の振幅である検出信号がゼロにならず、これに起因して液漏れの誤検知が発生するおそれが生じている。
【0077】
ここで前出の実施例1では、第2の電極142側で生じる中間信号(交流電圧)の振幅の大きさを表す検出信号を生成するために、中間信号の最大値を保持するピークホールド回路や、中間信号の最小値を保持するピークホールド回路などを利用している。そして、差分回路により中間信号の最大値と最小値との差分値を求め、この差分値に相当する電圧値を検出信号としている。上記のように電磁弁の閉弁時であっても中間信号に振幅が生じるため、検出信号はゼロにならない。そのため、実施例1の構成では、液漏れによって生じた検出信号か、正常な閉弁状態での検出信号か、の区別する処理の難易度が高くなっている。漏れ検知の際、正常な閉弁状態下の誤検知を抑制するためには、検出信号(電圧値)に閾値処理を適用する際、正常な閉弁状態での検出信号の大きさを考慮して閾値を設定する必要がある。
【0078】
これに対して、本例では、適切に設定された2点の計測時点での計測値の差分値を検出信号とすることで、正常な閉弁状態における検出信号の大きさがほぼゼロになっている。これにより、漏れ検知の際の閾値処理に適用する閾値の設定が容易となっており、適切な閾値設定によって漏れ検知の精度が向上している。以下、本例における計測時点の設定方法について説明する。
【0079】
図12の等価回路における抵抗R1は、電磁弁が開弁状態であるか閉弁状態であるかによって大きく変動する。開弁状態であれば流路中の液を介在して電極141、142が接触するので、抵抗R1が小さくなる。一方、閉弁状態では、上流側の液と下流側の液とが電磁弁によって分断されるので、抵抗R1が大きくなる。このような抵抗R1の大小は、第2の電極142側の中間信号の位相に影響を与える。閉弁時の抵抗R1が十分に大きい状態での中間信号と、開弁時の抵抗R1が小さい状態での中間信号と、を比較すると、90度の位相差が発生する(
図13参照。)。なお、開弁時のR1をRLo、閉弁時のR1をR1c、電極間容量によるリアクタンス値をXcと表記すると、90度の位相差を生じる条件は、R1c>>Xc>>RLoである。
【0080】
開弁時の中間信号(
図13(b))と、閉弁時の中間信号(同図(c))との位相差が90度の場合、開弁時の中間信号が最大値のとき閉弁時の中間信号がゼロとなり、開弁時の中間信号が最小値のとき閉弁時の中間信号がゼロとなる。そこで、本例の構成では、閉弁時の検出信号(中間信号の振幅の大きさを表す電圧値)がゼロとなるよう、開弁時の中間信号が最大値及び最小値となる2点を計測時点に設定している。
【0081】
一方、
図13に示す通り、第1の電極141に印加する交流電圧(
図13(a)の交流信号)に対して閉弁時の中間信号の位相ずれは、約90度である。したがって、上記の2点の計測時点は、方形波の交流信号が負から正に切り換わる第1の時点を基準として1/4周期に相当する所定時間の分だけ経過した第1の計測時点と、交流信号が正から負に切り換わる第2の時点を基準として1/4周期に相当する所定時間の分だけ経過した第2の計測時点と、の組合せとなる。そして、本例では、第1の計測時点での中間信号の大きさである第1の計測値と、第2の計測時点での中間信号の大きさである第2の計測値と、の差分値を検出信号としている。
【0082】
本例の構成によれば、電磁弁の閉弁時において、第1の電極141に交流電圧(交流信号)を印加したときの中間信号に振幅を生じても、検出信号の大きさがゼロとなる。一方、電磁弁の閉弁時に液漏れが発生したときには、開弁時の中間信号に近づくため、上記の第1及び第2の計測時点の中間信号の絶対値が大きくなり、差分値である検出信号の値が大きくなる。したがって、本例の構成では、例えばゼロに近い閾値による閾値処理を検出信号の大きさに適用することで、精度高く液漏れを検知可能である。
【0083】
さらに、本例では、2点の計測時点で中間信号の大きさを計測し、差分をとって検出信号を生成する構成を採用している。この構成であれば、ピークホールド回路が必要ではないので、検知回路10の回路構成を簡略化でき、コスト削減が容易になる。
なお、上記の中間信号(交流電圧)を生成する際、バンドパスフィルタを適用して低周波成分及び高周波成分を除去すると良い。このバンドパスフィルタの周波数的な特性については、信号生成部321が生成する交流信号の周波数に対応して設定すると良い。例えば周波数1KHzで周期的に変化する交流信号を電極141に作用する場合であれば、1kHz近傍の周波数を選択的に通過させるバンドパスフィルタを採用すると良い。
また、本例では、第1の電極141に印加する交流信号(交流電圧)として方形波を例示しているが、交流信号は正弦波等であっても良い。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0084】
(実施例5)
本例は、実施例4の構成に基づいて、検出信号を生成するための中間信号の計測時点の設定を変更した例である。この内容について
図14、
図15を参照して説明する。
第1の電極141に印加する交流電圧(交流信号)と閉弁時の中間信号との位相差は約90度である一方、第1の電極141に印加する交流電圧(交流信号)に対する開弁時の中間信号の位相ずれは、実施例4で例示した90度まで変動する場合がある。
【0085】
本例では、
図14に示す通り、上記の位相ずれに相当するずれ時間を計測するための時間計測部107が、液漏れを検知する検知回路10に追加されている。時間計測部107は、
図15のように、電磁弁が開弁状態のとき、第1の電極141に印加する交流電圧(交流信号)が負から正に切り換わる第1の時点、あるいは正から負に切り換わる第2の時点を基準として、中間信号が最大値あるいは最小値に至るまでのずれ時間を計測する。時間計測部107は、例えば、交流信号の周波数である1kHzよりも十分に速い周期で中間信号の計測を繰り返すことで、最大値となる時点、最小値となる時点を特定し、これにより上記のずれ時間を計測する。
【0086】
本例の構成では、このずれ時間を、計測時点を設定するための所定時間として取り扱う。
図15のごとく、第1の電極141に印加する交流電圧(交流信号)が負値から正値に切り替わる第1の時点を基準として上記のずれ時間の分ずらした時点を第1の計測時点に設定すると共に、交流電圧が正値から負値に切り替わる第2の時点を基準として上記のずれ時間の分ずらした時点を第2の計測時点に設定している。そして、第1の計測時点で中間信号の第1の計測値を取得すると共に、第2の計測時点で中間信号の第2の計測値を取得し、第1及び第2の計測値の差分値を検出信号としている。
【0087】
電磁弁が開弁時の中間信号と、電磁弁が閉弁時の中間信号と、の位相ずれは90度ではないが(
図15参照。)、開弁時の中間信号が最大値となる前記第1の計測時点、および最小値となる前記第2の計測時点では(
図15中の計測パターンA)、検出信号を最大にできる。ノイズレベルがランダム且つほぼ一定と仮定すると、前記第1の計測時点と前記第2の計測時点とを設定すれば、ノイズに対するシグナルの比(S/N比)を最大にできる。
【0088】
本例では開弁時の中間信号の最大値と最小値の時点を計測時点に設定している(
図15中の計測パターンA)。例えばノイズレベルが相対的に低く開弁と閉弁との判別に影響を与えない条件下では、閉弁時の中間信号が正から負に切り換わってゼロをクロスする時点を第1の計測時点、負から正にクロスする時点を第2の計測時点に設定することもできる(
図15中の計測パターンB)。これにより、閉弁状態から漏れの度合いに応じた検出信号を高感度に得ることもできる。
【0089】
以上のように、本例の構成によれば、第1の電極141に印加する交流電圧(交流信号)に対する中間信号(閉弁時)の位相ずれが90度からずれた場合であっても、中間信号の計測時点を適切に設定でき、これにより閉弁時の検出信号の大きさをゼロに近づけることが可能である。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例4と同様である。
【0090】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。実施例では、バルブなどの機器が流路に介在している流体装置への適用を例示したが、ポンプや切換弁などの機器が流路に介在している流体装置に適用しても良く、あるいはバルブやポンプや切換弁などの機器が設けられていない流路である流体装置に適用しても良い。さらに言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0091】
1、5 継手ユニット
1S 継手システム
10、57 検知回路(回路)
11A・B 流路
14、36、56 電極
141 第1の電極
142 第2の電極
2 電磁弁(流体装置)
21 プランジャ
22 コイル
25 弁体
260 弁座
3 継手
55 継手プレート
58 マニフォールド