(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】組織気化装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/08 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
A61B18/08
(21)【出願番号】P 2020017872
(22)【出願日】2020-02-05
(62)【分割の表示】P 2016540633の分割
【原出願日】2014-12-16
【審査請求日】2020-02-05
(32)【優先日】2013-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512023018
【氏名又は名称】ノヴォクセル リミテッド
【住所又は居所原語表記】43 HeMelacha Street, P.O.Box 8539, Poleg Industrial Zone, Natania, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スラトカイン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シャビット ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ズロクオベル ジェイコブ
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-500119(JP,A)
【文献】特表2008-504913(JP,A)
【文献】特表2008-539007(JP,A)
【文献】特表2012-523928(JP,A)
【文献】特表2012-523936(JP,A)
【文献】国際公開第2013/085702(WO,A1)
【文献】特開2004-290574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00 ― 18/28
A61N 1/00 ― 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の穴を気化させる装置であって、
チタンと比較して高熱伝導率である第1の材料で形成され、プレートの上に構成された気化要素のアレイと、
前記第1の材料を被覆する
少なくとも1つの第1被膜と、
チタン化合物で形成され、前記
少なくとも1つの第1被膜を被覆する生体適合性
チタン被膜と、
を備え、
前記
少なくとも1つの第1被膜
は、前記組織側への前記第1の材料の拡散を低減し、また、前記気化要素のアレイが300~600℃の温度まで加熱された場合に、前記生体適合性
チタン被膜は、
前記組織側への前記少なくとも1つの第1被膜の材料のイオンの拡散を低減し、これにより、前記装置の生体適合性を維持する、装置。
【請求項2】
前記気化要素のアレイは、複数の突出部のアレイである、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記プレートに搭載されている、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
局所薬剤を塗布するために瘢痕組織の表面を露出させるのに用いられる、
請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記気化要素のアレイは、焼結材料で形成されている、
請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記突出部の少なくとも一部分の先端は、頂部が除去された錐体である、
請求項2または3に記載の装置。
【請求項7】
前記突出部の前記一部分は、少なくとも前記突出部の他の部分よりも短い、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記複数の突出部の少なくとも1つの突出部は、鋭い遠位端を備える、
請求項2、3、6、7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記複数の突出部は、1平方センチメートル当たりの突出部数が2~100
となるように表面領域にわたって分布している、
請求項2、3、6から8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記突出部の底幅と前記突出部の長さとの比は、1:1~1:5である、
請求項2、3、6から9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記複数の突出部は、
ピラミッド形状と、
円錐形状と、
からなる群から選択される形状を有する、
請求項2、3、6から10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
500℃よりも高い温度までケラチンを加熱することにより、爪の角質層を気化させる
のに用いられる、
請求項1から11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記気化要素のアレイの伝熱係数は、80
W/m・Kよりも大きい、
請求項1から12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記第1の材料は、銅であり、
前記
少なくとも1つの第1被膜
のうちの1つの被膜は、前記銅を覆い前記組織への銅の拡散を低減するニッケル被膜である、
請求項1から
13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記第1の材料は、銅であり、
前記
少なくとも1つの第1被膜
のうちの1つの被膜は、前記
銅を覆い前記組織への銅の拡散を低減する銀被膜である、
請求項1から
13のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記
少なくとも1つの第1被膜は、金で構成された層である、
請求項
15に記載の装置。
【請求項17】
前記気化要素のアレイは、深さ20μm未満の組織層を気化させるように選択された熱容量を有する、
請求項1から
16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
前記組織の表面上で当該装置を動かす車輪をさらに備えた、
請求項1から
17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記プレートは、平面状であり、表面積が0.0001cm
2~5cm
2の範囲である、
請求項1から
18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記プレートは、前記組織の細長狭隘クレータを気化させるのに用いるために、幅が100μm未満である、
請求項1から
19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記プレートは、銅で形成さ
れている、
請求項1から
20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
前記生体適合性
チタン被膜は、厚さ500μm未満のシートとして形成されている、
請求項1から
21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
前記生体適合性
チタン被膜は、厚さが0.5~10μmの範囲で形成されている、
請求項1から
22のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
前記
チタン化合物は、チタン、窒化チタン及び酸化チタンの何れかである、
請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記
少なくとも1つの第1被膜は、金、ニッケル、及び銀の何れかで形成されている、
請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、手術方法および装置に関し、より詳細には、組織の気化方法および装置に関するが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0002】
組織アブレーションの実施には、さまざまな技術が知られており、一般的には、パルス・レーザまたはRFエネルギーの使用を必要とする。
【0003】
特許文献1は、手術用プローブ・シャフト等の細長シャフトと、シャフトの遠位端に取り付けられた針電極アレイと、切除エネルギーを電極アレイに与える、たとえば高周波(RF)発生器等のアブレーション源と、を具備した組織アブレーション・システムを開示している。この組織アブレーション・システムは、針電極アレイと熱的に連通するシャフトの遠位端内に配設されたヒート・シンクをさらに具備する。このように、熱エネルギーが針電極アレイから取り除かれることにより、電極アレイが冷却されて、より効率的な切除プロセスが提供される。
【0004】
この組織アブレーション・システムは、ヒート・シンクと流体連通する冷媒流導管をさらに備えるため、ヒート・シンクから熱エネルギーを取り除くことができる。好適な実施形態において、流導管は、ヒート・シンクと流体連通する熱交換空洞と、冷却媒体(たとえば、室温以下の生理食塩水等)を熱交換空洞に搬送する冷却ルーメンと、熱交換空洞から加熱媒体を搬送する戻しルーメンとを具備する。この組織アブレーション・システムは、冷却ルーメンを通ってシャフトの遠位端の熱交換空洞に冷却媒体を搬送するポンプ・アセンブリをさらに備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2004/0181214号
【発明の概要】
【0006】
本発明の主たる一態様は、組織の穴を気化させる装置であって、チタンと比較して高熱伝導率である第1の材料で形成され、プレートの上に構成された気化要素のアレイと、前記組織側への前記第1の材料の拡散を低減するために前記第1の材料を被覆する第1被膜と、前記組織側への赤外線(IR)放射率を低減するために、300~600℃の温度で生体適合性を維持する第2の材料で形成され、前記第1被膜を被覆する生体適合性被膜と、を備え、前記第1被膜および前記生体適合性被膜は、前記装置の生体適合性を維持する、装置である。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、組織の少なくとも1つの穴を気化させる装置であって、気化要素のアレイと、気化要素を加熱するように構成された1つまたは複数の加熱要素と、を備え、気化要素の少なくとも一部の形状が、他の気化要素の組織への過剰な穿通を防止するように構成された、装置が提供される。いくつかの実施形態において、上記気化要素の一部は、組織と接触するように構成された先端表面領域であり、組織への過剰な穿通が防止された気化要素の先端表面領域よりも大きな、先端表面領域を有することによって、他の気化要素の過剰な穿通を防止する。いくつかの実施形態において、第2の気化要素の過剰な穿通を防止するように成形された気化要素の遠位端は、切頂型である。任意選択として、切頂型の気化要素は、第2の気化要素よりも短い。任意選択として、第2の気化要素は、鋭い遠位端を備える。いくつかの実施形態において、気化要素は、300~600℃の範囲の温度まで加熱される。いくつかの実施形態において、気化要素は、プレートに搭載されている。いくつかの実施形態において、組織の表面に対する気化要素の少なくとも一部の穿通の深さは、300μm未満である。いくつかの実施形態において、アレイは、深いクレータおよび浅いクレータの組み合わせを含む損傷パターンを組織に生じさせる。いくつかの実施形態において、アレイは、2~100クレータ/cm2の範囲の空間分布で複数のクレータを組織に生じさせる。いくつかの実施形態において、気化要素の長さは、3:1よりも小さな係数で、気化要素の底幅よりも大きいことにより、気化要素の曲げを防止する。任意選択として、この装置は、ピラミッド形状の気化要素を備える。
【0008】
任意選択として、この装置は、円錐状の気化要素を備える。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の加熱要素は、気化要素による組織の気化に適した加熱手順に従って動作可能である。いくつかの実施形態において、この装置は、500℃よりも高い温度までケラチンを加熱することにより、爪の角質層を気化させるように構成されている。いくつかの実施形態において、この装置は、瘢痕組織の表面を露出させて、局所薬剤を塗布するように構成されている。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態一態様によれば、組織の少なくとも1つの穴を気化させる装置であって、気化要素のアレイと、気化要素を加熱するように構成された1つまたは複数の加熱要素と、を備え、気化要素が、300℃よりも高い温度まで気化要素が加熱された場合に、局所的な気化を生じるとともに損傷領域を低減するように選択された少なくとも1つの材料を含む、装置が提供される。任意選択として、上記材料の伝熱係数は、80ワット/ケルビン度/メートルよりも大きい。いくつかの実施形態において、上記材料は、300℃よりも高い温度まで気化要素が加熱された場合に、第2の材料中の拡散を低減する。いくつかの実施形態において、上記材料、第2の材料、および/または第2の材料を被覆する材料は、組織側へのIR放射率を低減する。任意選択として、第1の材料は、銀またはニッケルであり、第2の材料は、銅である。いくつかの実施形態において、気化要素の本体は、銅で構成され、この銅は、ニッケル層に覆われている。いくつかの実施形態において、銅およびニッケルの層は、金で構成された低IR放射率層で被覆されている。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、気化要素のアレイを自己殺菌する方法であって、アレイが加熱要素に結合され、約500℃よりも高い温度まで気化要素を加熱することにより、気化要素から残留炭素を除去するステップを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態において、気化要素は、0.5~5秒の範囲の継続時間にわたって、約500℃よりも高い温度まで加熱される。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、組織の少なくとも1つの穴を気化させる装置であって、アレイ状に配置された複数の気化要素と、気化要素を加熱するように構成された1つまたは複数の加熱要素と、を備え、気化要素のアレイは、周期的な移動プロファイルで移動するように構成されており、気化要素は、組織側へと通じる気化要素の経路の少なくとも30%に沿って単調増加する絶対加速度で、組織に対して繰り返し下降および上昇される、装置が提供される。任意選択として、増加する絶対加速度は、組織との接触時に最大値に達する。いくつかの実施形態において、アレイは、カムシャフト・アセンブリによって動かされる。任意選択として、カムシャフト・アセンブリは、回転モータと、気化アレイの直線運動を生じさせるレバーとを備える。いくつかの実施形態において、この装置およびカムシャフト・アセンブリは、手持ち装置として構成されている。任意選択として、この手持ち装置は、制御ユニットをさらに備える。いくつかの実施形態において、制御ユニットは、気化要素の処置温度プロファイル、気化要素の自己殺菌温度プロファイル、組織への穿通距離、組織における気化要素の滞在時間、アレイの前進および/または後退速度、繰り返し処置数、繰り返し処置間の時間間隔、気化要素の交換のうちの少なくとも1つを制御するように構成されている。いくつかの実施形態において、この装置は、組織全体を水平方向に移動可能である。いくつかの実施形態において、この装置は、アレイを水平に前進させる車輪およびバネの少なくとも一方を備える。任意選択として、気化要素の穿通深さは、アレイを組織に対して平行に移動させることにより低減される。いくつかの実施形態において、水平移動は、制御装置によってもたらされる。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、組織を繰り返し気化させる方法であって、気化要素のアレイを加熱して、組織の領域を気化させるステップと、気化要素を組織から上昇させて、気化中に形成された蒸気のほとんどを逃がすステップと、気化要素のアレイを再適用して、組織の領域をさらに気化させるステップと、を含む、方法が提供される。
【0013】
任意選択として、再適用するステップは、組織の移動前に実行される。任意選択として、再適用するステップは、気化要素が組織を解放した時点から200msecよりも短い時間間隔において実行される。いくつかの実施形態においては、この方法を繰り返すことにより、組織内のより深い層を気化させる。いくつかの実施形態において、この方法は、組織の気化に先立って、気化可能な物質を組織に塗布するステップをさらに含む。任意選択として、気化可能な物質は、液体またはゲルである。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、組織を加熱する装置であって、アレイ状に配置され、組織と接触するように構成された複数の伝熱要素と、気化要素を加熱するように構成された加熱要素と、RF発生器と、RFエネルギーを組織に伝送する少なくとも1つのRF導管とを備えた、装置が提供される。任意選択として、アレイは、RFエネルギーを組織中に伝送するように構成された電極をさらに備える。いくつかの実施形態において、この装置は、手持ち装置である。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、組織の薄層を気化させる装置であって、箔として成形された気化要素と、気化要素を加熱するように構成された1つまたは複数の加熱要素と、気化要素を保持するフレームであって、組織に対して接離移動するように構成された、フレームとを備えた、装置が提供される。いくつかの実施形態において、箔は、深さ20μm未満の組織層を気化させる。任意選択として、箔は、組織に対して前記箔を前進および後退させるバネに取り付けられている。いくつかの実施形態において、この装置は、組織の表面上で当該装置を動かす車輪をさらに備える。いくつかの実施形態において、箔は、平面状であり、表面積が0.0001cm2~1cm2の範囲である。いくつかの実施形態において、箔は、組織の細長狭隘クレータを気化させるように、幅が100μm未満である。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、組織の少なくとも1つの穴を気化させる装置であって、アレイ状に配置された1つまたは複数の気化要素と、気化要素を加熱するように構成された1つまたは複数の加熱要素と、アレイに対して機械的に結合され、組織および1つまたは複数の加熱要素の少なくとも一方に向かって気化要素を移動させる少なくとも1つの圧電トランスデューサとを備えた、装置が提供される。いくつかの実施形態において、圧電トランスデューサは、断熱ロッドによってアレイに結合されている。いくつかの実施形態において、トランスデューサは、処置する組織からのアレイの距離のインジケーションに従って、制御装置により作動される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、組織の穴を気化させるピラミッド形状の要素であって、生体適合性材料内に埋め込まれた伝熱コアを備え、長さが1~10mmの範囲である、要素が提供される。任意選択として、コアは、銅で形成され、生体適合性材料は、チタンおよびステンレス鋼の少なくとも一方で形成されている。
【0018】
任意選択として、この要素は、ピラミッド形状である。いくつかの実施形態において、気化要素の全長に対するコアの長さは、この要素の熱緩和時間を短縮するように選択されている。いくつかの実施形態において、生体適合性材料は、厚さ500μm未満のシートとして形成されている。
【0019】
任意選択として、シートは、厚さ可変に形成されている。
【0020】
本明細書に記載の通り、用語「気化」には、組織への伝熱による組織中の穴の生成を含んでいてもよく、穴の組織の蒸気化、組織アブレーション、組織の変性、組織のより小さな粒子への崩壊、組織の燃焼、組織の彫刻、および/または組織への伝熱による他の効果等、1つまたは複数の効果をもたらす。
【0021】
別途規定のない限り、本明細書において使用するすべての技術的および/または科学的な用語は、本発明が関連する技術分野における当業者が通常理解しているのと同じ意味を有する。本発明の実施形態の具現化または試験には、本明細書に記載したものと同様または同等の方法および材料を使用可能であるが、以下では、例示的な方法および/または材料を説明する。不一致の場合は、定義を含めて、本特許明細書が支配的となる。また、これらの材料、方法、および例は、ほんの一例に過ぎず、必ずしも限定的なものではない。
【0022】
特許または出願ファイルには、少なくとも1つのカラー作成図面を含む。
【0023】
本明細書においては、添付の図面を参照しつつ、一例としてのみ、本発明のいくつかの実施形態を説明する。ここで、図面を具体的に詳しく参照して重要なのは、図示の各項目が一例であり、本発明の実施形態を例示的に論じることを目的としている点である。この点、図面に伴う説明によって、当業者には、本発明の実施形態を具現化可能な方法が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態に係る、気化要素のアレイの側面図である。
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態に係る、気化要素のアレイの前面図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態に係る、例示的なアレイ構成を示した図である。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態に係る、例示的なアレイ構成を示した図である。
【
図2C】本発明のいくつかの実施形態に係る、例示的なアレイ構成を示した図である。
【
図2D】本発明のいくつかの実施形態に係る、例示的なアレイ構成を示した図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態に係る、気化要素または気化要素のアレイを用いた組織気化システムのブロック図である。
【
図4A】本発明のいくつかの実施形態に係る、気化要素の模式断面図である。
【
図4B】本発明のいくつかの実施形態に係る、要素が搭載されたプレートの模式断面図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態に係る、気化要素を含むアレイの自己殺菌方法のフローチャートである。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態に係る、繰り返し処置パルスを適用する方法のフローチャートである。
【
図7A】本発明のいくつかの実施形態に係る、組織気化の組織学的結果を示した図である。
【
図7B】本発明のいくつかの実施形態に係る、組織気化の組織学的結果を示した図である。
【
図8A】本発明のいくつかの実施形態に係る、カムシャフト機構を利用した周期的な移動プロファイルの実施態様を示した模式図である。
【
図8B】本発明のいくつかの実施形態に係る、例示的な移動プロファイルを示した模式図である。
【
図9】本発明のいくつかの実施形態に係る、RF発生器を備えた組織気化システムのブロック図である。
【
図10】本発明のいくつかの実施形態に係る、組織を気化させる箔を例示した図である。
【
図11】本発明のいくつかの実施形態に係る、フレームにより保持された平面状気化要素の例示的な構成を示した図である。
【
図12】本発明のいくつかの実施形態に係る、手持ち組織気化装置を示した図である。
【
図13】本発明のいくつかの実施形態に係る、組織のクレータを気化させる装置を示した図である。
【
図14】本発明のいくつかの実施形態に係る、爪を貫通する気化要素または気化要素のアレイの使用を示した図である。
【
図15】本発明のいくつかの実施形態に係る、組織の瘢痕を処置する気化要素または気化要素のアレイの使用を示した図である。
【
図16A】本発明のいくつかの実施形態に係る、ある材料で構成された気化アレイを用いたフラクショナル・スキン・リサーフェシングの5日後の写真である。
【
図16B】本発明のいくつかの実施形態に係る、別の材料で構成された気化アレイを用いたフラクショナル・スキン・リサーフェシングの5日後の写真である。
【
図17】本発明のいくつかの実施形態に係る、例示的なプリズム形状の気化要素を示した図である。
【
図18】気化可能な物質の塗布を含む、組織のクレータを気化させる例示的な方法を示した図である。
【
図19A】本発明のいくつかの実施形態に係る、水平および垂直速度成分を含む例示的な移動プロファイルを示した図である。
【
図19B】本発明のいくつかの実施形態に係る、水平および垂直速度成分を含む例示的な移動プロファイルを示した図である。
【
図19C】本発明のいくつかの実施形態に係る、水平および垂直速度成分を含む例示的な移動プロファイルを示した図である。
【
図19D】本発明のいくつかの実施形態に係る、水平および垂直速度成分を含む例示的な移動プロファイルを示した図である。
【
図19E】本発明のいくつかの実施形態に係る、水平および垂直速度成分を含む例示的な移動プロファイルを示した図である。
【
図19F】本発明のいくつかの実施形態に係る、水平および垂直速度成分を含む例示的な移動プロファイルを示した図である。
【
図20A】本発明のいくつかの実施形態に係る、1つまたは複数の圧電トランスデューサを備えたアレイ・アセンブリを示した図である。
【
図20B】本発明のいくつかの実施形態に係る、1つまたは複数の圧電トランスデューサを備えたアレイ・アセンブリを示した図である。
【
図21】本発明のいくつかの実施形態に係る、高伝導コアを備えた気化要素を示した図である。
【
図22A】本発明のいくつかの実施形態に係る、高伝導コアを備えた気化要素を示した図である。
【
図22B】本発明のいくつかの実施形態に係る、高伝導コアを備えた気化要素を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、手術方法および装置に関し、より詳細には、組織の気化方法および装置に関するが、これらに限定されない。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態は、短時間に大量の熱を供給して組織を気化させる一方、組織のチャーリング等の他の種類の熱損傷を抑えるように構成された気化ロッド等の気化要素に関する。いくつかの実施形態においては、穴、溝、クレータ、または窪みが組織に生じる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、組織の局所領域への高温での伝熱を行う気化要素のアレイに関し、気化要素の少なくとも一部は、他の気化要素の組織への過剰な穿通を防止するように成形されている。いくつかの実施形態において、第2の気化要素の過剰な穿通を防止するように構成された気化要素は、第2の気化要素の表面よりも大きな先端表面領域を有する。いくつかの実施形態において、気化要素の配置は、たとえば切頂型の気化ロッドに隣接して位置決めされた先鋭な円錐状の気化ロッドの組み合わせを含むことにより、組織のより深くへの先鋭ロッドの移動を制限することによって、動作中の固有の安全性を提供する。いくつかの実施形態において、形状が異なる気化要素の配置は、さまざまな深さ等、さまざまな寸法のクレータの組み合わせを組織中に生じさせる。いくつかの実施形態において、気化要素は、ピラミッドとして成形されている。任意選択として、気化要素の少なくとも一部には、切頂型の遠位端を備える。切頂型の要素の断面積は、たとえば非切頂型の気化要素により形成されるクレータの寸法に影響する可能性がある。
【0028】
いくつかの実施形態の一態様は、高温下でのアレイの性能に寄与する多層構造を備えた気化要素のアレイに関する。いくつかの実施形態において、気化要素は、動作温度(たとえば、400℃よりも高い温度)まで加熱された場合に、限られた気化を生じるとともに損傷領域を低減するように選択された少なくとも1つの材料を含む。いくつかの実施形態において、材料の伝熱係数は、80ワット/ケルビン度/メートルよりも大きい。いくつかの実施形態において、上記材料は、第2の材料中の拡散を低減する(たとえば、銀の層は、銅の下層からの拡散を低減する)。いくつかの実施形態において、上記材料は、組織側へのIR放射率を低減するように選択されている(たとえば、IR放射率が相対的に低い金を用いて気化要素を被覆している)。
【0029】
いくつかの実施形態において、気化要素の中間および/または外部層は、内部層の状態を維持するように構成されている。いくつかの実施形態において、気化要素の内部層は、銅等の伝熱材料で形成されており、この銅は任意選択として、アレイが動作する温度の考え得る範囲である高温、特に、およそ300℃で頻発する銅イオンの拡散を低減するように構成された層で被覆されている。任意選択として、この層は、銀で構成されている。いくつかの実施形態において、銀被覆気化要素および/または気化要素が搭載されたプレートの表面は、生体適合性層(たとえば、金および/またはロジウムの層)で被覆されている。
【0030】
任意選択として、金層は、金の相対的に低いIR放射率特性のため、組織の表面へのIR放射を低減する。
【0031】
いくつかの実施形態において、銅または窒化アルミニウム(ALN)等の伝熱材料は、セラミックまたはガラスで被覆されることにより、たとえば気化要素を機械的に保護している。セラミックまたはガラス被膜は、高い動作温度(たとえば、およそ400℃)に耐えるように構成されている。
【0032】
いくつかの実施形態においては、多層構造が高温に耐えるので、アレイは、自己洗浄および/または自己殺菌するように構成されている。いくつかの実施形態において、自己殺菌は、気化要素を500℃超の温度まで加熱することによって実現される。任意選択として、気化要素に付着した組織粒子および/または炭化粒子は、たとえば残留炭素をCO2に変換する酸化の結果として、自己殺菌プロセスにより除去される。
【0033】
いくつかの実施形態の一態様は、気化要素のアレイの周期的な移動プロファイルに関する。いくつかの実施形態において、移動プロファイルには、組織における気化要素の滞在継続時間を短くするのに十分高い速度まで気化要素のアレイを加速させることを含む。いくつかの実施形態において、移動プロファイルには、繰り返し処置間に組織から気化要素の先端を上昇させて、組織と気化要素の先端との間に閉じ込められた蒸気を解放することを含む。いくつかの実施形態において、周期的な移動プロファイルには、処置間の組織の移動を防止するのに十分短い繰り返し処置間の時間間隔を設定することを含む。任意選択として、組織の領域の繰り返し気化によって、より深いクレータを生成可能である。いくつかの実施形態においては、カムシャフト機構を利用することにより、アレイを周期的な移動プロファイルで動作させる。任意選択として、カムシャフト・アセンブリは、回転モータと、車輪と、気化アレイの直線運動を生じさせるレバーとを具備する。
【0034】
いくつかの実施形態において、アレイの気化要素は、一体的に移動する。あるいは、1つまたは複数の気化要素が他の要素とは独立に移動する。
【0035】
いくつかの実施形態において、アレイは、水平方向に移動可能である。
【0036】
任意選択として、アレイを垂直および水平に移動させることにより、アレイの穿通深さが低減され得る。いくつかの実施形態において、水平移動は、組織に形成されたクレータの幅の拡大をもたらす。
【0037】
いくつかの実施形態の一態様は、RF発生器に接続された気化アレイに関する。任意選択として、アレイの気化要素は、RFエネルギーを組織に伝送するように構成されている。これに加えて、または代替として、たとえば気化要素が搭載された同じプレートに取り付けられた異なるRF電極を使用する。
【0038】
いくつかの実施形態において、気化要素は、組織の薄層(たとえば、組織の最上面に対する最大深さ20μmのクレータ)を気化させるように構成された薄い箔として成形されている。
【0039】
いくつかの実施形態においては、細長狭隘クレータの損傷パターンが組織に生じる。任意選択として、細長狭隘クレータのパターンは、ワイヤとして成形された1つまたは複数の気化要素を用いることにより得られる。いくつかの実施形態においては、組織の表面を転がって細長狭隘クレータの損傷パターンを形成するように構成された複数のワイヤが装置に組み付けられている。
【0040】
いくつかの実施形態において、気化アレイおよび/または単一の気化要素は、手持ち装置に組み込まれている。任意選択として、手持ち装置は、処置温度プロファイル、組織中の気化要素の穿通深さ、気化要素の運動プロファイル、組織における要素の滞在継続時間、繰り返し処置パルス間の時間間隔等、組織の気化および/または組織への損傷の制限に関連するパラメータを制御する制御ユニットを備える。
【0041】
いくつかの実施形態の一態様は、1つまたは複数の圧電トランスデューサを備えた気化アレイ・アセンブリに関する。いくつかの実施形態において、トランスデューサは、アレイに対して機械的に結合され、組織および/または加熱要素に向かってアレイを移動させ、電気的作動に応じて変形するように構成されている。任意選択として、トランスデューサは、たとえば処置する組織からのアレイの距離のインジケーションに従って、制御装置により作動される。
【0042】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、以下の記述、図面、および/または実施例に示す構成要素および/または方法の構成詳細および配置に本発明の用途が必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態も可能であるし、さまざまに具現化または実行することも可能である。
【0043】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、以下の記述または実施例による例示に示す詳細に本発明の用途が必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態も可能であるし、さまざまに具現化または実行することも可能である。
【0044】
気化要素のアレイ
ここで図面を参照して、
図1Aおよび
図1Bはそれぞれ、本発明のいくつかの実施形態に係る、気化要素のアレイの側面図および前面図である。
【0045】
いくつかの実施形態において、アレイ101は、円錐状ロッド103および/または円錐状ロッド105等の少なくとも1つの気化要素を備える。いくつかの実施形態において、気化要素は、短時間に大量の熱を供給して組織111の少なくとも一部を気化させるように構成されている。いくつかの実施形態においては、穴、溝、窪み、および/またはクレータが組織111に生じる。
【0046】
気化させない組織を破壊することなく組織を気化させるため、本発明は、そのいくつかの実施形態において、組織の局所領域への高温での熱の印加を教示している。いくつかの実施形態において、この温度は、組織を急速に気化させるのに十分高い温度、すなわち、組織の主要な構成物質である水の沸点であるおよそ100℃とする。この温度は、たとえば200~600℃の範囲(たとえば、300、400、450、または500℃)等、約200℃よりも高いのが好ましい。
【0047】
いくつかの実施形態においては、高温プロファイルによって、気化組織の出血が抑えられる。いくつかの実施形態においては、高温プロファイルによって、境界が明確なクレータが形成されるとともに、副次的な損傷が抑えられる。たとえば、形成クレータを囲む損傷は、クレータの外縁から10μm未満、5μm未満、1μm未満、これらの中間、以上、または以下の程度に制限可能である。
【0048】
いくつかの実施形態において、気化要素の熱容量は、組織に隣接する気化要素の先端107等の先端が、当該先端に隣接する組織113を気化させるのに十分な熱量を含むものとする。組織の気化に必要な熱量は、気化対象の体積によって決まる。気化対象の体積は、先端の断面に気化対象の深さを乗じたものに略等しい。鋭いピラミッド状の先端の場合、気化体積は、上記乗算の1/3であり、同じ幅および同じエネルギーでより深いクレータを気化させることができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、要素103、105等の気化要素は、プレート115に接合されている(たとえば、プレート115に対して、溶接、接着接合、ならびに/またはピンもしくはネジ等を用いた機械的接合がなされている)。
【0050】
いくつかの実施形態において、プレート115は、加熱要素117に結合されている。いくつかの実施形態において、加熱要素は、高温箔、電気加熱ワイヤ、光学的熱源、金属加熱要素、および/または200~600℃の範囲の温度まで気化要素を加熱するのに適したその他任意の加熱要素である。いくつかの実施形態において、加熱要素117(たとえば、箔)は、電気抵抗119によって加熱される。
【0051】
いくつかの実施形態において、気化装置は、単一の気化要素を備える。あるいは、気化装置は、たとえば2~20個の気化要素(たとえば、8つの要素、10個の要素、16個の要素、任意の中間数、多数、または少数の要素)等の気化要素のアレイを備える。
【0052】
また、さまざまな気化要素が異なる形状を有していてもよい。たとえば、気化要素は、円錐プロファイル、円形プロファイル、矩形プロファイル、ピラミッド状プロファイル、台形プロファイル、またはその他任意の形状を有していてもよい。この図は、たとえば円錐プロファイルを有する103および105等の気化要素を示している。任意選択として、単一のアレイがさまざまな形状の要素を備える。
【0053】
いくつかの実施形態において、気化要素の少なくとも一部は、たとえば組織と接触するように構成された先端表面領域であり、組織へのさらなる穿通が防止された別の気化要素の先端表面領域よりも大きな、先端表面領域を有することによって、他の気化要素の過剰な穿通を防止するように構成されている。たとえば、(
図1Bにおいて109が指す)気化要素103の先端表面は、たとえば20%、50%、75%、90%、これらの中間、以上、または以下の百分率だけ、(
図1Bにおいて107が指す)気化要素105の先端表面領域よりも大きい。任意選択として、たとえば要素103の先端表面領域のサイズは、たとえば要素105の所望の穿通深さによって決まる。任意選択として、先端表面が大きくなると、組織の表面により印加される抵抗が大きくなるため、要素の少なくとも一部の追加の穿通が防止される。
【0054】
いくつかの実施形態において、要素105等の気化要素は、組織に進入するように構成された鋭い先端107を備える。あるいは、要素103等の気化要素は、先端109等の鈍い切頂型の先端を備える。いくつかの実施形態において、切頂型の要素103は、組織の表面に隣接するように構成されている。これに加えて、または代替として、切頂型の要素103は、組織の表面を押圧するように構成されている。これに加えて、または代替として、切頂型の要素は、たとえば要素105により形成されたクレータよりも浅いクレータを形成するように構成されている。
【0055】
いくつかの実施形態において、アレイ101は、先鋭な要素および切頂型の要素の組み合わせを含む。任意選択として、切頂型の要素103等の気化要素は、先鋭な要素107等の要素の組織深層への過剰な穿通を防止する。任意選択として、先鋭な要素および切頂型の要素の組み合わせは、組織(たとえば、皮膚)上への導入時のアレイの動きを制限することにより、固有の安全機構を提供する。いくつかの実施形態において、組織に形成されたクレータの寸法は、予測可能である。たとえば、先鋭な気化要素105(長さL2)と切頂型の気化要素103(長さL1)との間の長さの差によって、最大深さを決定可能である。
【0056】
いくつかの実施形態において、アレイ101は、さまざまな長さの気化要素の組み合わせを含む。任意選択として、異なる長さの要素を用いた場合には、異なる深さのクレータが形成される。たとえば、この図に示すように、長さL1の要素103は、長さL2の要素105よりも短い。いくつかの実施形態において、気化要素の長さは、1~10mmの範囲である。
【0057】
いくつかの実施形態において、気化要素は、気化段階において、組織中に50μm~500μm前進する。
【0058】
いくつかの実施形態において、アレイ101は、さまざまな幾何学的プロファイルおよび/または断面積の気化要素の組み合わせを含む。任意選択として、気化要素の寸法と任意選択的に適合するさまざまな断面積、さまざまな体積、および/またはさまざまな幾何学的プロファイルのクレータが形成される。
【0059】
いくつかの実施形態において、アレイ101の構成は、たとえば所定の距離でのクレータの形成等、特定の損傷パターンを生じさせるように決定される。たとえば、
図1Bに示すように、気化要素の先端間の距離(L3等)は、中心間の距離が同様にL3であるクレータを形成するように決定される。いくつかの実施形態において、気化要素の隣接する先端間(遠位端表面間および/または先端と遠位端表面との間)の距離L3は、0.5mm~1.5mmの範囲である。
【0060】
いくつかの実施形態において、アレイの構成は、組織中にクレータの特定の空間分布を形成するように与えられる。一例において、気化アレイ構成は、2~100クレータ/cm2の空間分布でクレータを形成するように与えることができる。いくつかの実施形態において、アレイ101の気化要素の構成は、浅い窪みに囲まれた深いクレータおよび/またはその他任意の損傷パターンを形成するように与えられる。
【0061】
いくつかの実施形態において、組織の外部表面から測定したクレータ深さは、たとえば1~200μmの範囲である。いくつかの実施形態において、クレータ深さは、気化要素の穿通深さと同一である。熱が要素から組織中に拡散して、気化要素よりも前に組織を気化させることがあるため、場合によっては、クレータ深さが気化要素の穿通深さと必ずしも同一ではないことに留意するものとする。
【0062】
いくつかの実施形態において、気化要素は、プレート115を介して加熱要素117により加熱される。いくつかの実施形態においては、プレート115と加熱要素117との間の結合によって、加熱要素117からプレート115への高速伝熱が可能となる。
【0063】
任意選択として、プレート115および/または加熱要素117の互いに対向する表面は、両者間の間隙が最小となって伝熱速度が高くなるように平らである。たとえば、プレートの表面および/または加熱要素の表面は、これら表面間の接触面積を大きくするため、たとえば1cm2の領域上での計算として、30μm未満の高さ公差で構成されている。
【0064】
任意選択として、伝熱速度は、1秒当たり1回の処置を行う(すなわち、処置組織に対してアレイを1回適用する)速度を与えるのに十分である。たとえば、加熱要素117とプレート115との間の伝熱速度は、少なくとも1ジュール/秒である。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の加熱要素117は、気化要素による組織の気化に適した加熱手順で動作可能である。任意選択として、1つまたは複数の加熱要素からの伝熱速度は、相対的に短い時間で気化要素が組織を効果的に加熱するのに十分な高さである。
【0065】
いくつかの実施形態において、プレートと気化要素とのアセンブリおよび/またはその一部のみ(気化要素の先端等)は、1sec未満で約500℃まで加熱される。
【0066】
非限定的な一例として、100ミクロン×100ミクロンの領域を100ミクロンの深さまで気化させるには、約3,000ジュール/cm3という水の気化エネルギーに基づいて、約3ミリジュールの熱が必要である。なお、組織の熱パラメータが水の熱パラメータと酷似しているため、組織の気化に必要な熱は実質的に、水の気化に必要な熱に近い。
【0067】
熱を組織に供給するため、気化要素の熱緩和時間は、熱が気化要素の先端の表面まで高速に達し得るようにするものとする。なお、熱緩和時間は、数ある因子の中でも、熱伝導率、熱容量、および気化要素の長さ等の幾何学的寸法によって決まる。
【0068】
熱の供給は、拡散する熱が多過ぎることのないように隣接する組織を気化させるのに十分高速であるものとする。すなわち、熱緩和時間は、許容または計画壊死深さを組織に生じさせる熱緩和時間よりも実質的に短い。概算として、熱緩和時間は、水の熱緩和時間よりも実質的に短いものとする。
【0069】
いくつかの実施形態において、気化要素(あるいは、気化要素のアレイ)は、非常に短い限られた時間にわたって、組織上に「フリック」される。このフリッキングによって、気化要素が短時間だけ組織に隣接(任意選択として、接触)するため、組織中への熱伝導の時間が制限されるとともに、副次的な損傷が許容レベルに制限される。
【0070】
いくつかの実施形態において、気化要素は、組織に隣接している限りは組織に熱を与えるものと考えられる。いくつかの実施形態において、気化要素は、クレータの容積内にある限りは組織に熱を与えるものと考えられる。
【0071】
熱を組織に高速供給するため、気化要素は、高速伝熱を可能とする少なくとも1つの材料を含む。いくつかの実施形態において、気化要素は、伝熱係数が80ワット/ケルビン度/メートルよりも大きい材料を含む。いくつかの実施形態において、気化要素は、比熱容量が0.3キロジュール/キログラム/ケルビン度よりも大きい材料を含む。いくつかの実施形態において、気化要素は、熱伝導率が銅の熱伝導率以上の材料を含む。いくつかの実施形態において、気化要素は、比熱容量が銅の比熱容量以上の材料を含む。一部の金属等の一部の材料(非限定的な一例としての銅)は、上記のような高速熱流を可能とする高い熱伝導率を有する。いくつかの実施形態において、気化要素は、伝熱係数がステンレス鋼の伝熱係数以上の材料を含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、たとえば非常に浅いクレータの作成が好都合な場合、気化要素は、熱伝導率がガラスの熱伝導率以下の材料を含んでいてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態においては、たとえば単一のアレイにおいて、異なる材料の気化要素が一体的に組み合わされる。たとえば、アレイの気化要素の一部が銅で構成され、アレイの気化要素の第2の部分がステンレス鋼で構成されている。任意選択として、これら材料の伝熱特性の違いのため、さまざまな深さのクレータを組織に形成することができる。たとえば、ステンレス鋼で構成され、熱伝導率が銅のおよそ1/30である要素は、銅の要素よりも浅いクレータを形成するようにしてもよい。たとえば単一のアレイにおいて、異なる材料の気化要素を組み合わせることにより、潜在的な利点として、処置の「侵襲性」の修正が挙げられる。
【0074】
いくつかの実施形態において、気化要素を組織に適用した場合、当該組織は伸張する。任意選択として、PCT公開第WO2011/013118号に詳しく開示されている通り、伸張によって組織との均一な接触が確保される。
【0075】
いくつかの実施形態においては、たとえば皮膚の皺および/もしくは瘢痕の処置、スキン・リサーフェシングもしくはスキン・リジュビネーション、爪組織の処置、ならびに/または口腔、鼻腔、もしくは耳腔の処置、鼓膜の処置、声帯の処置、呼吸器系組織、食道組織、膣組織、腹部組織の処置等の他の組織の処置といった美的用途等のさまざまな状態の処置のため、気化要素が組織に適用される。
【0076】
気化要素のアレイのさまざまな構成
図2A~
図2Dは、本発明のいくつかの実施形態に係る、さまざまなアレイ構成を示している。
【0077】
図2Aは、ロッド201および203等の円筒状ロッドとして成形された気化要素を備えたアレイの側面図であり、
図2Bは前面図である。いくつかの実施形態において、ロッドの少なくとも一部は、他のロッドよりも短い。たとえば、ロッド201は、ロッド203よりも短い。いくつかの実施形態において、ロッドは、クレータ209およびより深いクレータ207等、さまざまな深さのクレータを形成する。
【0078】
いくつかの実施形態において、ロッドの寸法は、処置の種類によって決まる。スキン・リサーフェシング等のいくつかの実施態様の場合は、たとえば直径Dが200~300μmでロッド間の距離Sが700~800μmの4×5個のロッドを備えた
図2Bに示すアレイ等のアレイが用いられるようになっていてもよい。任意選択として、この場合、ロッド長Lは、0.7~1.5mmの範囲であってもよく、たとえば201等の短いロッドの場合が1mm、203等の長いロッドの場合が1.2mmである。別の例において、長いロッドと短いロッドとの差は、たとえば50~300μm(100μm、200μm等)の範囲であってもよい。
【0079】
図2Cは、ピラミッド211として成形された気化要素を備えたアレイの側面図であり、
図2Dは前面図である。いくつかの実施形態においては、たとえばこの図に示すように、気化ピラミッドが等しくサイズ指定されている。あるいは、気化要素は、たとえば異なる長さ等、サイズが異なっていてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、気化要素の寸法は、気化要素を高温に加熱した結果として生じる可能性がある要素の曲げを防止するように規定されている。気化要素は、たとえば気化要素を構成する金属の軟化(銅の軟化等)の結果として、徐々に曲がる可能性がある。任意選択として、気化要素を加熱し、冷却し、再び加熱する複数の処置の結果として曲げが生じる。
【0081】
任意選択として、曲げは、気化要素(または、要素のアレイ)と組織との間に形成された角度の影響を受ける。組織と気化要素との間に約90°の角度が形成されるように気化要素を組織に垂直に位置決めすることによって、気化要素の曲げを抑えることができる。任意選択として、経時的な曲げは、気化要素の遠位端の変位の原因となり、クレータが間違った位置に形成される可能性がある。たとえば、繰り返し処置が適用されるとき、気化要素は、過去に接触したのと同じ組織領域に接触しないことがあり、クレータ間の健常組織の領域が損傷を受けることがある。
【0082】
いくつかの実施形態においては、気化要素の長さと底幅との比が曲げに影響することが分かっている。本発明者らは、たとえば400℃の動作温度まで加熱される銅要素の場合、気化要素の長さと底幅との比は、1:1~1:5の範囲にすべきと結論付けている。曲げ現象を考慮したピラミッド形状要素の潜在的な利点として、相対的に長い本体(たとえば、高さ1.2mm)を備えた相対的に鋭い先端(たとえば、遠位表面において幅150~200μm)を使用可能である。
【0083】
本発明者らが行った実験においては、底幅500μmの5mm長ロッド(すなわち、比が1:10)を400℃まで加熱して、組織の1×1cm2の領域を20回処置した。動作の最後に、多少の曲げがロッドに確認された。
【0084】
一方、長さが1.23mmで底幅が1.25mmのロッドでは、曲げが一切見られなかった。
【0085】
別の例において、底幅が1.25mm、長さ(高さ)が1.25mm、遠位端の表面における幅が200ミクロンの銅のピラミッド状要素についても、曲げが同様に見られなかった。
【0086】
気化要素のアレイを用いて組織を気化させるシステム
図3は、本発明のいくつかの実施形態に係る、気化要素または気化要素のアレイを用いた組織気化システムのブロック図である。
【0087】
いくつかの実施形態において、気化要素のアレイ301は、加熱要素303に結合されている。任意選択として、加熱要素303は、平面状の構成(たとえば、箔)を有する。任意選択として、加熱要素303は、円筒状の構成および/またはその他任意の形状を有する。
【0088】
任意選択として、加熱要素303は、電気抵抗305ならびに/または光学的熱源、超音波源、もしくは発熱化学反応等のその他任意の手段によって加熱される。
【0089】
いくつかの実施形態において、電気抵抗305は、電気回路によって、たとえばバッテリまたは50/60Hz給電線等の電力接続といった電源307に接続されている。任意選択として、加熱要素は、電源から分離可能である。たとえば、複数の処置間に分断機構を利用して、電源307から加熱要素303を切り離すようにしてもよい。また、いくつかの実施形態において、気化要素は、気化させている組織との電気的な接触を生じないように、電源から電気的に絶縁されている。
【0090】
いくつかの実施形態において、気化アレイ301は、光波による光学的加熱またはマイクロ波による加熱等、無線加熱方法によって加熱される。
【0091】
いくつかの実施形態において、加熱要素303は、当該加熱要素の温度および/または気化要素の温度を監視するサーミスタまたは熱電対等の温度センサ309を備える。
【0092】
いくつかの実施形態において、アレイ301は任意選択として、プレート311を介してヒート・シンク313に結合されている。任意選択として、ヒート・シンクは、アレイのフレームまたはハウジング(この図には示さず)に結合されて、たとえば加熱された構成要素をユーザが掴むことのないようにしている。いくつかの実施形態において、ヒート・シンクは、水タンクを備える。いくつかの実施形態において、ヒート・シンクは、熱電冷却装置を備える。また、ヒート・シンクにサーモスタットを接続して、温度を制御するようにしてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、アレイ301および/または電源307は、制御ユニット315に接続されている。いくつかの実施形態において、制御ユニット315は、第2の電源317に接続されている。任意選択として、加熱要素303および制御ユニット315への給電には、単一の電源を使用する。
【0094】
以下は、制御ユニット315によって自動および/または手動で制御可能なパラメータのいくつかの非限定的な例である。いくつかのパラメータはユーザが選択する一方、その他は制御ユニット315が自動的に制御するようになっていてもよい。いくつかのパラメータは、自動制御および手動制御の両者の組み合わせとして設定されていてもよい。いくつかの実施形態において、制御ユニットは、ユーザ・インターフェースを備える。いくつかの例示的なパラメータを以下に列挙する。
【0095】
A.処置温度プロファイルの制御。任意選択として、この温度プロファイルは、加熱要素303に導かれる電流を修正することによって調整される。いくつかの実施形態においては、加熱要素の現在の温度のインジケーションを温度センサ309が与え、これに応じて温度プロファイルが調整されることにより、気化アレイ301の温度に影響が及ぶ。たとえば検出された温度変化に対する制御ユニットの通常の応答時間は、2秒、4秒、8秒、これらの中間、以上、または以下の応答時間等、1~10秒の範囲であってもよい。
【0096】
B.アレイ301の移動プロファイルの制御。いくつかの実施形態においては、たとえば以下に詳しく図示するように、処置組織への移動および処置組織からの移動を可能とする機構に(直接または加熱器303を介して)アレイ301が結合されている。いくつかの実施形態において、移動プロファイルの制御には、処置間にアレイを任意選択として上昇させる距離の制御を含む。いくつかの実施形態において、移動プロファイルの制御には、アレイ301を組織中へと前進させるために印加する力の量の制御を含む。いくつかの実施形態において、移動プロファイルの制御には、気化アレイの速度の制御を含む。いくつかの実施形態において、移動プロファイルの制御には、気化アレイの加速度の制御を含む。いくつかの実施形態において、移動プロファイルの制御には、処置組織における気化要素の先端の滞在時間の制御を含む。いくつかの実施形態において、移動プロファイルの制御には、繰り返し回数の設定を含む。いくつかの実施形態において、移動プロファイルの制御には、繰り返し処置間の時間間隔の設定を含む。いくつかの実施形態において、移動プロファイルの制御には、たとえばカムシャフト機構の構成要素等、アレイの移動に用いられるモータまたはその他任意の構成要素の制御を含む。
【0097】
C.ヒート・シンク313の温度の制御によるアレイ301の冷却、装置のフレームもしくはハウジングの冷却、ならびに/またはシステムの他の構成要素の冷却の制御。任意選択として、アレイ301は、ヒート・シンク313によって、安全な温度を下回るように保持される。いくつかの実施形態において、制御ユニット315は、ヒート・シンク313(たとえば、水タンク)に接続された熱電対からのインジケーションを受信する。場合によっては、たとえば過熱を防止するため、熱電対が特定の閾値を上回る水温を示している場合、制御ユニット315は、サーモスタットを作動させて、加熱要素303の過熱を防止する。
【0098】
D.自己殺菌/自己洗浄プロファイルの制御。いくつかの実施形態においては、以下に詳しく説明する通り、たとえば500℃を上回るようにアレイ301の温度を上昇させて、組織との接触により気化要素に付着した組織粒子および/または炭化粒子を除去することにより、炭化物を含まないアレイを生成するようにしてもよい。任意選択として、制御には、たとえば0.5~5秒の範囲等、自己洗浄機能を作動させる時間(たとえば、1~50回の処置パルスごと)および/または作動継続時間の設定を含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、たとえば本明細書に記載のシステムは、手持ち装置として構成されている。任意選択として、装置の快適かつ安全な使用を可能とするため、たとえば外部ハウジングに隣接して温度センサを位置決めすることにより、装置ハウジングの温度を制御して、その過熱を防止する。
【0100】
任意選択として、アレイ301上および/またはアレイ301に隣接して温度センサを位置決めすることにより、アレイの温度を検出する。任意選択として、アレイの温度を監視することにより、たとえば気化要素の過熱を防止する。
【0101】
いくつかの実施形態において、アレイ301の少なくとも一部は取り外し可能であり、任意選択として、たとえば1回、3回、10回、50回、またはその他任意の処置回数等、特定の処置回数の後に処分可能である。任意選択として、アレイ301は、たとえば患者ごとに処分して交換する。
【0102】
気化要素の構造および材料
図4Aおよび
図4Bは、本発明のいくつかの実施形態に係る、気化要素(4A)および要素が搭載されたプレート(4B)の模式断面図である。
【0103】
いくつかの実施形態において、気化要素(たとえば、
図4Aに示す)ならびに/または1つもしくは複数の気化要素が搭載もしくは一体的に接続されたプレート(たとえば、
図4Bに示す)は、たとえば2つ、3つ、4つ、6つ、またはその他任意の数の層を含む多層構造を備える。任意選択として、各層は、異なる材料を含む。任意選択として、各層は、異なる厚さを有する。いくつかの実施形態において、多層構造の材料は、たとえば銅のみで構成された要素と比較して、限られた気化を生じるように選択される。いくつかの実施形態において、材料は、たとえば処置組織の箇所を囲む損傷領域を低減するように選択される。気化要素を構成する材料の少なくとも一部は、たとえば80ワット/ケルビン度/メートルよりも高い伝熱係数等、高い熱伝導率を有する必要がある。いくつかの実施形態において、層は、内部層の状態を維持するように構成されている。たとえば、層は、その下層からの粒子の拡散を低減するものであってもよい。いくつかの実施形態において、気化要素の外部層等の少なくとも1つの層および/または任意選択として組織と直接接触するプレートの外部層は、生態適合性材料を含む。いくつかの実施形態において、外部層等の少なくとも1つの層は、相対的に低いIR放射率レベルを有し、組織側へのIR放射を低減可能である。いくつかの実施形態において、外部層等の層は、気化させている組織との電気的な接触を生じないように、サファイア等の電気絶縁材料を含む。たとえば、サファイアの薄層(100ミクロン等)は、組織への効率的な伝熱の一方、電気的な絶縁を提供可能である。
【0104】
ここで
図4を参照するが、この図は、3つの層を備えた円錐状の気化要素を示している。いくつかの実施形態において、気化要素の本体401は、銅等の伝熱係数が相対的に高い材料で構成されている。他の材料としては、用途の種類に応じて、窒化アルミニウム、ステンレス鋼、セラミック、ガラス、および/またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0105】
いくつかの実施形態において、本体401は、焼結銅、焼結ステンレス鋼、および/または焼結窒化アルミニウム(ALN)で構成されている。任意選択として、焼結材料は、たとえば機械加工材料とは対照的に、バリが少ない。
【0106】
任意選択として、焼結材料の表面は、たとえば異なる材料で均一に被覆できるように、十分滑らかである。
【0107】
いくつかの実施形態において、本体401は、たとえば銀で構成された第2の層403で被覆されている。任意選択として、層403の厚さは、5~20μmの範囲である。本発明者らは、銀層403によって、高温に加熱された(たとえば、300℃まで加熱された)銅で観察可能な周知の現象である本体401中の銅イオン405の拡散を抑え得ることを示している。銅の拡散を抑制および/または排除する潜在的な利点として、加熱された材料の生態適合性の維持が挙げられる。いくつかの実施形態において、層403は、別の層407によって被覆されている。いくつかの実施形態において、層407は、組織と直接接触するため、生態適合性材料を含む。いくつかの実施形態において、層407は、IR放射率が相対的に低い材料を含み、処置組織側へのIR放射を低減可能である。いくつかの実施形態において、層407は、金および/またはロジウムで構成されている。これに加えて、または代替として、層407は、炭素、ダイヤモンド、グラフェン、パラジウム、窒化チタン、チタン、ステンレス鋼、および/または他の材料を含む。任意選択として、層407の厚さは、0.5~10μmの範囲である。
【0108】
任意選択として、層407は、拡散銀イオンに対する障壁として作用することにより、放出イオンが組織に達しないようにする。
【0109】
いくつかの実施形態において、層403および/または層407は、任意選択として本体401を構成する材料よりも低伝熱性の材料を含む。たとえば、層403および/または層407は、ステンレス鋼またはチタンで構成可能である。
【0110】
いくつかの実施形態において、層間の厚さの比は、気化要素のさまざまな部分に沿って変化する。たとえば、気化要素の遠位端の先端409は、本体401が先端の端部まで延び、層403および/または407の厚さが小さくなるように構造化されていてもよい。いくつかの実施形態において、被覆層403および/または407等の層は、一様に分布しておらず、ある部分に沿っては厚く、他の部分に沿っては薄くなっている。
【0111】
いくつかの実施形態において、層状構造は、電気メッキ技術を用いて製造される。いくつかの実施形態において、これらの層は、化学蒸着技術および/またはスパッタリングを用いて堆積される。たとえば、窒化チタンの層をスパッタリングによって適用可能である。
【0112】
図4Bは、本発明のいくつかの実施形態に係る、プレートの例示的な層構造を示している。いくつかの実施形態において、プレートの層構造は、気化要素の層構造と同様である。あるいは、プレートは、気化要素と異なる層構造を備える。いくつかの実施形態において、プレートは、たとえば銅、セラミック、および/またはステンレス鋼で構成された単一の層を備える。
【0113】
いくつかの実施形態において、プレートの総厚さは、アレイの曲げを防止するのに十分厚く、一方、加熱要素から気化要素への高速伝熱を可能とする十分な薄さである。任意選択として、プレートの総厚さは、たとえば、1mm、3mm、6mm等、0.5~10mmの範囲である。
【0114】
この例に示すように、プレートは、
図4Aの気化要素と同様に、任意選択として加熱要素の表面に対向する銅層411、たとえば銀で構成された中間層413、ならびにたとえば金および/もしくはロジウムで構成され、組織側に対向する外部層415という3つの層を備える。
【0115】
いくつかの実施形態においては、プレートの一部分のみ(たとえば、気化要素間の露出表面)が生態適合性材料および/または金等のIR放射低減材料で被覆されている。
【0116】
いくつかの実施形態において、気化要素および/またはプレートは、粉末金属をバインダ材料と混ぜ合わせて「原料」混合物を形成した後、中空の鋳型に射出し、焼結によって最終製品を生成する金属射出成型プロセスを用いて製造される。任意選択として、焼結温度、使用する材料の種類、鋳型寸法等の条件は、最終製品が事前選択寸法に従って正確に形成されるように選択される。
【0117】
気化要素のアレイの自己殺菌方法
図5は、本発明のいくつかの実施形態に係る、気化要素を含むアレイの自己殺菌方法のフローチャートである。
【0118】
いくつかの実施形態においては、多層構造が高温に耐えるので、アレイは、自己洗浄および/または自己殺菌するように構成されている。いくつかの実施形態においては、自己洗浄によって、炭化物を含まないアレイが維持される。いくつかの実施形態において、自己殺菌は、処置中にアレイに付着している可能性がある組織粒子および/または炭化粒子をアレイから取り除くのに必要である。
【0119】
いくつかの実施形態において、この方法は、たとえば皮膚組織等の組織に気化処置を適用するステップを含む(501)。任意選択として、たとえば2回、5回、10回、20回、50回、これらの任意の中間、またはそれ以上の繰り返しを含む繰り返し処置を適用する。処置後、たとえば所望の気化深さが実現されたら、アレイを処置組織から遠ざける(503)。
【0120】
いくつかの実施形態においては、アレイの洗浄および/または殺菌のため、約500℃を超える温度までアレイを加熱する(505)。一例において、アレイは、0.5~5秒の範囲の時間にわたって、550℃まで加熱する。任意選択として、このような高温まで加熱すると、酸化によって、アレイ上に存在する組織粒子および/または炭化粒子等の残留炭素がCO2蒸気へと変換される。
【0121】
本発明者らは、500℃を超える温度まで加熱することの洗浄効果を証明する実験を行った。本発明者らは、380~400℃で組織を処置したが、これによって、一部の気化要素の表面上およびプレートの一部に薄い炭化層が徐々に形成された。アレイを組織から除去した後、1~3秒の範囲の時間にわたって550℃までアレイを加熱することにより、すべての炭化残留物を廃棄した。
【0122】
いくつかの実施形態においては、たとえば1~50回の処置パルス等、特定回数の処置パルスの後に殺菌および/または洗浄を適用する。いくつかの実施形態においては、たとえば10秒、40秒、2分、5分、20分、60分、これらの中間、以上、または以下の動作時間ごと等、累積動作時間に従って殺菌を適用する。
【0123】
いくつかの実施形態においては、たとえば処置後、1つもしくは複数の気化要素ならびに/または気化要素のアレイを装置(たとえば、手持ち装置)から除去して、新たな気化要素または新たな気化要素のアレイと交換する。任意選択として、交換は、ロボット制御で実行する。
【0124】
任意選択として、交換は、装置の制御装置によって制御する。
【0125】
組織の繰り返し気化方法
図6は、本発明のいくつかの実施形態に係る、繰り返し処置パルスを適用する方法のフローチャートである。
【0126】
いくつかの実施形態において、組織の気化には、たとえばより深いクレータを組織に生じさせる繰り返し処置パルスの適用を含む。
【0127】
いくつかの実施形態においては、第1の処置パルスを適用する(601)。いくつかの実施形態においては、処置パルスの後、たとえば組織の表面の上方に遠位端が位置決めされるように、気化要素を組織から上昇させる(603)。任意選択として、気化要素の遠位端とクレータとの間には、CO2蒸気等の蒸気が閉じ込められる場合があり、気化要素の上昇によって、形成された蒸気の50%、70%、90%等、蒸気の少なくとも一部を逃がすことができる。蒸気解放の潜在的な利点として、より深いクレータの気化が挙げられる。
【0128】
いくつかの実施形態においては、装置に換気機器が結合されて、蒸気の除去を加速させる。これに加えて、または代替として、装置に対して、吸引を提供可能なポンプ等の装置が結合されて、蒸気の除去を加速させる。
【0129】
いくつかの実施形態においては、第2の処置パルスを適用する(605)。任意選択として、第2の処置は、組織の移動を防止するのに十分短い時間間隔において適用する。任意選択として、これにより、クレータ壁に関する以前の位置決めと同様の箇所に気化要素を再位置決め可能であり、任意選択として、副次的な損傷および/または境界が明確でないクレータの形成が抑えられる。
【0130】
いくつかの実施形態においては、3パルス、5パルス、10パルス、50パルス等、繰り返し処置パルスを適用する(607)。一例においては、50msecの時間間隔で3回の処置パルスを適用する。いくつかの実施形態においては、1秒の時間内に1~5回の処置パルスを適用する。任意選択として、2回の処置パルス間の時間間隔は、200msecよりも短い。
【0131】
任意選択として、繰り返し処置パルスの適用によって、より深い組織層を気化させることにより、より深いクレータを形成する。
【0132】
より深いクレータを形成するための繰り返し処置は、たとえば厚い表皮層が存在し、真皮乳頭層への到達が望ましい場合に有用となり得る。
【0133】
図7Aおよび
図7Bは、本発明のいくつかの実施形態に係る、組織気化の組織学的結果である。
【0134】
両者の例に示す組織学的結果は、各ピラミッドの高さが1.25mm、正方形基部の縁部の幅が1.25mmである9×9個のピラミッド形状気化要素のアレイを用いて得られたものである。各要素は、厚さ10μmのニッケルおよび/または金の層で被覆された銅本体を備えるものとした。
【0135】
図7Aにおいては、単一の処置パルスを400℃で組織に適用した。この図は、単一の気化要素により形成された単一のクレータ701を示している。
【0136】
単一の処置パルスの適用によって、真皮乳頭に深さ100μmの相対的に表面的なクレータが形成された。
【0137】
図7Bにおいては、3回の処置パルスを400℃で組織に適用した。繰り返し処置パルス間の時間間隔は、50msecとした。図に見られるように、組織には、壁がはっきりと明確なより深い(深さ約150ミクロン)損傷領域703が形成されている。
【0138】
気化要素のアレイの例示的な移動プロファイル
図8Aは、本発明のいくつかの実施形態に係る、たとえばカムシャフト機構を利用した周期的な移動プロファイルの実施態様を示している。
【0139】
いくつかの実施形態において、気化要素のアレイの動作には、アレイの周期的な移動プロファイルの生成を含む。いくつかの実施形態において、気化要素の絶対加速度は、要素が組織に向かって前進すると増加する。任意選択として、最大の絶対加速度は、組織接触点において得られる。任意選択として、要素が組織に接触すると、速度の方向が反転して、要素が組織から後退する。任意選択として、方向の反転は、たとえば組織との接触時から10マイクロ秒~100ミリ秒の範囲等の相対的に短い時間に生じる。いくつかの実施形態において、絶対加速度は、たとえば組織に向かう要素の経路の20%、30%、50%、70%、これらの中間、以上、または以下の部分等、経路の少なくとも一部に沿って増加する。任意選択として、絶対加速度は、組織に向かうアレイの最初の前進時に増加する。
【0140】
これに加えて、または代替として、絶対加速度は、アレイが組織に近づくと増加する。
【0141】
いくつかの実施形態において、絶対加速度は、たとえば100μsec等、気化要素の組織内滞在時間が短くなるように設定されている。
【0142】
組織における滞在時間を短くすることによって、副次的な損傷を抑えることができる。場合によっては、たとえば治癒の遅延が好都合である場合、1~100msec等のより長い滞在時間が望ましいことに留意するものとする。気化要素の別の例示的な滞在時間は、1msec、6msec、14msec、18msec、および25msecである。また、滞在継続時間の選択は、気化先端材料に依存する。たとえば、銅の先端では、深さ100ミクロンのクレータの気化に6msecを要し、ALNの先端では、14msecを要し、ステンレス鋼の先端では、18または25ミリ秒を要する可能性がある。
【0143】
例示的な絶対加速度は、たとえば0~2×105cm/sec2(たとえば、2×103~2×105cm/sec2)の範囲である。
【0144】
いくつかの実施形態においては、たとえば
図8に示すカムシャフトを用いた機構を利用することにより、アレイの周期的な移動プロファイルを生成して、角速度をアレイの線速度に変換する。
【0145】
いくつかの実施形態において、モータ801が回転ホイール803を動作させ、たとえば角速度ωでホイールを回転させる。いくつかの実施形態において、モータ801は、DCモータである。モータ801としては、ステッピング・モータ、アキシャル・ロータ・モータ、またはホイール803を回転させるのに適したその他任意の種類のモータが可能である。
【0146】
いくつかの実施形態において、ホイール803は、当該ホイール803の円運動を気化要素のアレイ807の直線運動に変換するレバー805に取り付けられている。いくつかの実施形態において、レバー805とアレイ807との間は、シャフト809が接続している。
【0147】
動作中は、ホイール803の回転によって、たとえば3~25mm(たとえば、10~15mm)の範囲の距離だけ、アレイの位置の関数として変化する線速度Vで、レバー805がシャフト809を上下させる。
【0148】
いくつかの実施形態においては、たとえば気化要素のアレイ、具体的には気化要素の遠位端の振動(距離Xで示す)を精密に制御するため、マイクロメータ等の測定手段を使用可能である。任意選択として、マイクロメータは、ホイール803に取り付けられている。いくつかの実施形態において、距離Xは、50~2000μmの範囲である。
【0149】
いくつかの実施形態において、距離Xは、処置中に組織を押圧する処置装置811のハウジングの遠位端からのアレイ807の気化要素の突出に影響する。突出の程度は、たとえば0.3mm、0.5mm、1mm、1.8mm等、0~2mmの範囲であってもよい。場合によっては、たとえば皮膚に対するアレイの配置および押圧に際して皮膚組織等の組織が押し上げられると、気化要素間で皮膚の少なくとも一部が膨らむ可能性がある。このような場合、突出の程度は、たとえば-1mm等の負の距離と見なせるため、皮膚の膨らみが補償される。
【0150】
いくつかの実施形態において、アレイの線速度Vは、70~100cm/sec、10~20cm/sec、30~50cm/sec等、0~150cm/secの範囲である。
【0151】
いくつかの実施形態においては、光結合素子、ホール磁気センサ、またはその他任意の回路等のエンコーダをモータ801に導入して、アレイ807の現在位置のインジケーション、ホイール速度に関する情報、および/またはアレイ速度に関する情報を生成する。
【0152】
いくつかの実施形態においては、たとえば上記説明の通り、インジケーションが制御ユニットに伝達される。任意選択として、制御ユニットは、たとえばユーザが選択したパラメータおよび/または制御ユニットが自動的に選択したパラメータに従って、カムシャフト機構を作動させる。たとえば、ユーザは、アレイの速度、前進および後退距離、組織におけるアレイの滞在時間、繰り返し回数、組織への気化要素の穿通深さ、ならび/またはその他任意のパラメータ等のパラメータを選択可能である。
【0153】
いくつかの実施形態において、アレイ807は、バネに取り付けられている。任意選択として、バネの剛性および/またはバネの振動距離は、組織に向かうアレイの加速度および/または気化要素の組織内滞在時間に影響を及ぼす。
【0154】
いくつかの実施形態において、たとえばカムシャフト機構および/またはバネにより動作するアレイ・アセンブリは、光結合素子等、アレイの現在位置を検出するように構成されたセンサを備える。
【0155】
いくつかの実施形態において、アレイ・アセンブリは、たとえば抵抗およびバッテリ等の低電圧電源を用いた組織の導電率の測定によって気化要素の組織内滞在継続時間を測定するセンサを備える。任意選択として、電源は、たとえば100マイクロアンペア等、臨床基準により設定されたレベルを下回る電流レベルの維持に十分な低さである。
【0156】
いくつかの実施形態においては、滞在継続時間が許容時間よりも長い場合および/またはアレイの現在位置が異常を示している場合に、たとえば本明細書に記載の通り、センサからの入力を受信するとともに、アレイの上昇および/または組織の押し進めによるアレイからの離間を行うように安全機構が構成されている。任意選択として、異常の場合に装置を上昇させる追加のバネが設けられている。
【0157】
任意選択として、異常の場合に組織を押してアレイから離間させる押下フレームが設けられている。
【0158】
図8Bは、本発明のいくつかの実施形態に係る、気化アレイの周期的な移動プロファイルを示した例示的なグラフである。このグラフは、処置組織813に対する位置の関数として、気化アレイの絶対加速度811を示している。いくつかの実施形態においては、気化アレイが組織に向かって前進すると、絶対加速度が増加し、組織813との接触に際して最大の絶対値に達する。任意選択として、たとえば組織中の所望の深さに達すると、気化アレイの方向は反転して、組織から上昇する。任意選択として、この図に示すように、たとえば繰り返しパルスを適用すると、アレイの方向が再び反転して組織へと前進し、以下同様である。いくつかの実施形態において、気化アレイの移動プロファイルは、要素の組織内滞在継続時間が短くなるように決定される。
【0159】
RFエネルギーの伝達および/または組織の気化を行うデュアルシステム
図9は、本発明のいくつかの実施形態に係る、RF発生器を備えた組織気化システムのブロック図である。
【0160】
いくつかの実施形態においては、RF発生器901がシステムに組み込まれることにより、熱作動モードおよびRFエネルギー作動モードに適応したデュアル機能装置を提供している。
【0161】
いくつかの実施形態において、アレイ903は、気化要素905およびRF電極907の組み合わせを含む。あるいは、気化要素905は、RFエネルギーを組織に伝送するように構成されている。任意選択として、銅および/またはステンレス鋼等の金属で構成された気化要素は、RFの伝送に適している。
【0162】
あるいは、アレイ903は、RF電極のみを備える。いくつかの実施形態においては、RFアンテナ等の導管913を用いて、RFエネルギーを発生器901から組織へと伝達する。いくつかの実施形態において、アレイは、必ずしも組織を気化させるようには構成されていない伝熱要素を備える。
【0163】
いくつかの実施形態において、制御ユニット909は、熱的加熱モードとRFエネルギー伝送モードとを切り替えるように構成され、たとえば、ユーザが操作可能な電気スイッチにより作動される。RFエネルギー伝送モードが選択されると、RF発生器901により生成されたRFエネルギーがアレイ903によって組織中に伝送され、切除が行われる。熱モードが選択されると、加熱要素911による気化要素905の加熱によって、組織が気化する。いくつかの実施形態においては、両モードが同時に作動される。
【0164】
フラクショナル・スキン・リサーフェシング用途においては、RF発生器を備えたシステムが特に有用となる可能性がある。
【0165】
いくつかの実施形態においては、たとえば本明細書に記載したようなカムシャフト機構を利用することにより、RF発生器を備えたシステムが周期的な移動プロファイルで動作する。
【0166】
組織を気化させる箔
図10は、本発明のいくつかの実施形態に係る、組織を気化させる箔を示している。
【0167】
いくつかの実施形態においては、たとえば上記説明の通り、組織と接触する気化要素の横方向表面のサイズが相対的に小さい。たとえば、組織の特定の深さまで穿通するように要素が成形されている場合は、要素の長さが重要である。いくつかの実施形態において、たとえば平面状の箔等の箔として気化要素が成形されている場合、組織と接触する要素の表面は、相対的に大きい。
【0168】
いくつかの実施形態において、気化要素は、箔1001等、厚さが小さな平面状構成に成形されて、組織1005の表面に隣接する表面クレータ1003を気化させる。クレータ1003の深さは、たとえば0~50μmの範囲であってもよい。
【0169】
いくつかの実施形態において、箔1001は、ワイヤ1007(たとえば、銅ワイヤ)により加熱される。任意選択として、ワイヤ1007は、組織の反対側を向く箔1001の表面に搭載されている。任意選択として、ワイヤ1007は、箔1001に埋め込まれている。いくつかの実施形態において、ワイヤ1007は、電気絶縁材料で被覆されている。ワイヤ1007の両端部は、電源に直接または(たとえば、別のワイヤを介して)間接的に接続されている。いくつかの実施形態において、電源は、0.5~9Vバッテリ1009等の低電圧電源である。
【0170】
いくつかの実施形態においては、箔1001を保持するフレーム1011が設けられている。
【0171】
任意選択として、箔1001が相対的に軽量(たとえば、1グラム未満の重量)であることから、フレーム1011によって、箔1001の表面と組織とが十分に接触する。いくつかの実施形態においては、箔1001がわずかに窪んだ位置で保持されるため、フレーム1011が組織に接触することはない。
【0172】
いくつかの実施形態において、フレーム1011は、たとえば加熱要素への結合によって、箔1001を加熱するように構成されている。
【0173】
いくつかの実施形態において、フレーム1011は、箔1001を前進および後退させるバネ1013に取り付けられている。これに加えて、または代替としては、コイルおよび磁気アセンブリの利用によって、箔1001を移動させる。いくつかの実施形態において、バネ1013は、作動に際して1回の振動を行うように構成されている。
【0174】
いくつかの実施形態において、箔1001は、たとえばガラスまたは酸化アルミニウム被膜等の電気絶縁被膜を備える。いくつかの実施形態において、被膜は、窒化クロムおよび/または窒化アルミニウムを含む。
【0175】
いくつかの実施形態においては、安全機構が設けられる。箔1001が組織1005に接触するとともに組織を気化させる熱エネルギーが消耗したら、バッテリ1009等の電源と加熱ワイヤ1007との間の接触が切り離される。任意選択として、箔1001が組織から後退すると、接触が回復して、ワイヤ1007が再び加熱される。電源の切り離しおよび/または再接続は、機械的および/または電気的(たとえば、トランジスタを使用)に行われる。
【0176】
いくつかの実施形態においては、グランド915が設けられる。
【0177】
いくつかの実施形態において、箔1001の表面積は、1mm2~5cm2の範囲である。
【0178】
いくつかの実施形態において、箔1001は、たとえば幅が100μmの薄片として成形されている。任意選択として、この場合、箔1001は、加熱ワイヤとして機能し、電流を導くようにしてもよい。組織への電流伝導を排除するため、箔1001は、電気絶縁材料で被覆されている。これに加えて、または代替として、相対的に低電圧の電源が用いられる。
【0179】
いくつかの実施形態において、箔1001は、ステンレス鋼またはチタンで構成されている。
【0180】
任意選択として、箔1001は、電気メッキおよび/または電解研磨技術を用いて製造および/または気化要素への適用がなされている。いくつかの実施形態において、箔1001は、ガラスで構成されている。
【0181】
箔1001は、美容師が行うことが多い剥離および/またはマイクロ皮膚剥離等の皮膚処置において特に有用となり得る。箔は、たとえば目、首、および手の周りの皮膚組織の表面薄層の処置に利用可能である。
【0182】
以下は、皮膚の表面層を処置する薄い箔の使用を含む用途の例示的なパラメータ計算である。
【0183】
この例においては、ガラス(伝熱係数が約1W/mdegC)で構成された箔を使用する。箔の厚さは1mm、体積は0.1cm3、重量(M)は0.3グラムである。
【0184】
また、定数がk=100N/mで振動の振幅がX=1cmのバネを使用する。1回の振動の継続時間Tは、約10msecである。
【0185】
箔およびバネ・アセンブリは、1回の振動において、皮膚をY=2mmの距離まで押すように構成されている。
【0186】
上記アセンブリを用いた箔の組織内滞在時間は、以下の式によって計算することができる。
【0187】
【数1】
この場合は、たとえばt=2msecである。
【0188】
上記条件において、組織に形成されるクレータの深さは、約15μmである(皮膚の最外層である角質層の深さが15μmと推定される)。
【0189】
最も高い温度まで加熱されたガラス箔の箇所から組織表面の箇所まで熱が放散する層の厚さ(Z)を計算するため、以下の式を適用可能である。
【0190】
【数2】
ここで、
Kは、ガラスの熱伝導率であって、たとえば約10
-2W/cmDegCである。
Ρは、ガラス箔の密度であって、たとえば3g/cm
3である。
Cは、ガラス箔の熱容量であって、たとえば約0.8J/g*degCである。
【0191】
上記に示す2msecというガラス箔の組織内滞在時間の場合、熱放散層の計算厚さZは、約30μmである。
【0192】
500℃の温度で30μmのガラスに蓄えられる熱エネルギー量は、熱容量(C)に温度を乗じて求められ、4Jである。
【0193】
したがって、2msecの滞在期間に、箔による4Jの熱エネルギーの組織への放散によって、組織を気化可能であることが分かる。水の気化に必要なエネルギーが約3000J/cm3であることから、4Jのエネルギーであれば、1.3*10-3cm3の体積を気化可能であるため、(クレータおよび気化箔の正方形寸法を仮定すると)深さ13μmのクレータを形成可能である。
【0194】
図11は、本発明のいくつかの実施形態に係る、フレーム1103により保持された平面状気化要素1101の例示的な構成を示している(フレームの一部のみを示している)。
【0195】
いくつかの実施形態において、箔1101は、凹状の輪郭が形成されるように、フレーム1103に取り付けられている。動作中は、フレーム1103のロッドによって、箔1101からの熱の少なくとも一部を吸収可能である。時間とともに、フレーム1103のロッドは、箔1101の他の部分よりも高温になって、場合により、箔1101の縁部が過熱状態となる可能性がある。クレータ境界の過熱を防止するため、提示の構成を利用することにより、処置中に箔1101の縁部を組織から持ち上げることができる。
【0196】
手持ち組織気化装置
図12は、本発明のいくつかの実施形態に係る、手持ち組織気化装置を示した図である。
【0197】
いくつかの実施形態においては、たとえば
図10において上述した1つまたは複数の気化箔のアセンブリが手持ち装置に組み込まれている。いくつかの実施形態において、手持ち装置の(組織に対向する)遠位部には、1つまたは複数のホイール1201を備える。任意選択として、たとえば皮膚等の組織の表面上でユーザが装置を摺動する。ホイール1201の直径は、たとえば1mm、5mm、1cm、2cm等、特定の距離だけ気化箔1203を前進させるように設定可能である。いくつかの実施形態においては、ホイール1201の回転によってバネ1207に力が加わり、これが箔1203を組織側へ押しやるように、レバーおよび/またはケーブル1205が設けられている。任意選択として、処置間に箔1203が組織から離間して位置決めされるように、レバー1205がバネを後退させる。
【0198】
前進機構を備えた装置を使用する潜在的な利点として、顔面皮膚等の大きな表面領域の処置が挙げられる。
【0199】
図13は、本発明のいくつかの実施形態に係る、組織のクレータを気化させる装置を示している。
【0200】
図13は、組織の表面上を転がるように構成された装置を示している。いくつかの実施形態において、この装置は、狭隘細長クレータを気化させる少なくとも1つのワイヤ1301を備える。いくつかの実施形態において、ワイヤ1301の熱容量は、深さが20~100μmのクレータの気化を可能とする十分な大きさである。
【0201】
いくつかの実施形態において、ワイヤは、たとえばタングステン、ステンレス鋼、および/または銅で構成された金属ワイヤである。いくつかの実施形態において、ワイヤ1301は、ガラスまたはセラミックの薄層で被覆されている。いくつかの実施形態において、ワイヤ1301の直径は、20~150μmの範囲である。ワイヤ1301の長さは、用途の種類に応じて、1~20mmの範囲であってもよい。
【0202】
いくつかの実施形態においては、1つまたは複数のワイヤ1301(この図に示すように、たとえば4つのワイヤ)が2つのプレート1303間に伸張している。任意選択として、ワイヤは、たとえば動作中の変形を防止するため、プレート上で強く伸張している。
【0203】
いくつかの実施形態においては、プレート1303がホイール1305に接続されており、装置が組織1313の表面上で転がることができる。
【0204】
いくつかの実施形態において、ワイヤ1301は、たとえば両端において、逆帯電した電極1307に取り付けられている。任意選択として、電極1307は、ホイール1305に対して適所に固定されている。各電極には、点Aおよび点Bを端点とするブラシ状構造1309等の電流伝導構造が取り付けられていてもよい。電極1307は、たとえばバッテリ等の電源1311に接続されている。
【0205】
装置の動作中は、ホイール1305の回転によって、プレート1303が回転する。ワイヤ1301は、たとえば点Aにおいて構造1309に接触すると、電気回路を完成させるため、ワイヤ1301を介して電極1307間に電流が通じる。いくつかの実施形態においては、点Bが組織1313の近く(たとえば、組織から2mm未満)に配置されており、ワイヤ1301は、(円運動中に)構造1309を介して点AおよびB間で前進すると、たとえば200~800℃まで加熱されて、組織を気化させる。任意選択として、ワイヤ1301が点Bから離れると、ワイヤ1301を介して電流が通じなくなる。
【0206】
任意選択として、ワイヤ1301は、たとえば点Aに再度達するまで、回転に伴って冷える。ワイヤ1301を切り離す潜在的な利点として、組織に伝達される熱エネルギー量の制限が挙げられる。
【0207】
いくつかの実施形態においては、複数のワイヤを使用するが、組織中に生成されるクレータ間の距離は、ワイヤの数および/または装置の前進距離(たとえば、ホイールの完全な回転中の前進距離)によって決まる。
【0208】
いくつかの実施形態において、組織は、ワイヤ1301の後退の後に冷却される。
【0209】
任意選択として、冷却は、たとえば1315で示すように、空気の吹き付けによって行われる。これに加えて、または代替として、冷却は、霧状液滴の吹き付け、液体の噴霧、低温金属プレートの組織への載置、および/または熱電冷却装置によって行われる。
【0210】
いくつかの実施形態において、装置にはモータが接続されている。任意選択として、モータは、たとえば1~20cm/secの一定速度等、特定の速度で装置を前進させるように構成されている。
【0211】
例示的な装置は、(外周が約3cmであることにより)単一の回転中に約3cmの距離だけ転がるように構成された直径1cmのホイールおよび/またはプレートを具備していてもよい。プレート間には、たとえば1mmの間隔で、複数のワイヤ(たとえば、5本、10本、15本、25本、30本、これらの中間、以上、または以下の数のワイヤ)が伸張している。各ワイヤの直径は、たとえば50μmである。皮膚等の組織上で装置を10cm/secの速度で動かすことにより、各ワイヤの皮膚との接触の継続時間は、500μsecである。組織には、たとえば幅が50μmの細長狭隘クレータが1mmごとに形成される。
【0212】
任意選択として、クレータの深さは、皮膚の角質層を超えない。
【0213】
ワイヤ長、直径、ワイヤ数、前進距離、および/または前進速度等のパラメータは、用途の種類に応じて選択可能である。たとえば、瘢痕の処置の場合は、1~10mmの範囲のワイヤ長が好ましい。いくつかの実施形態において、装置の異なるワイヤは、長さおよび/または幅が異なることにより、多様な損傷パターンを生成する。
【0214】
いくつかの実施形態において、装置の少なくとも一部(たとえば、ワイヤ)は、取り外し可能であるとともに、処分可能である。
【0215】
爪処置用気化アレイ
図14は、本発明のいくつかの実施形態に係る、爪の角質層を貫通する気化要素または気化要素のアレイの使用を示している。
【0216】
爪の角質層を通るクレータの形成は、液剤を爪に塗布して真菌感染症を処置する爪甲真菌症の処置において有用となり得る。角質層は、100~300μmの厚さが可能であるため、薬剤が爪に浸透して感染した下層の皮膚の表面に達するのを防止する障壁を構成可能である。
【0217】
図14は、爪1405を介してクレータまたは穴1403を気化させるように構成された気化要素1401を示している。いくつかの実施形態において、気化要素は、円筒状ロッド、ピラミッド、円錐状ロッド、またはこれらの組み合わせとして成形されている。
【0218】
角質層の気化に用いられる任意選択としての処置温度プロファイルは、たとえば400~500℃の範囲またはこれ以上である。なお、170℃等の低温では、気化とは対照的に、角質層が融けることになるため、要素の急速加熱が重要となり得る。ケラチンが融けると、別の障壁になって、その下の組織への薬剤の塗布を妨げる可能性がある。いくつかの実施形態において、処置継続時間は、1~100msecの範囲である。
【0219】
本発明者らは、底幅が1mmのピラミッド状の金被覆銅先端のアレイを450℃の温度まで加熱し、100msecの継続時間にわたって爪の表面に適用する実験を行った。角質層には、深さが300μmのクレータが形成された。
【0220】
いくつかの実施形態においては、たとえばユーザが要素を爪の表面に適用する押下ボタンを備えたペン状ハウジングに単一の気化要素を組み付け可能である。1つまたは複数のクレータが形成されたら、液剤等の薬剤を塗布して、形成されたクレータを通過させることにより、感染した組織を処置することができる。
【0221】
瘢痕処置用気化アレイ
図15は、本発明のいくつかの実施形態に係る、組織の瘢痕を処置する気化要素または気化要素のアレイの使用を示した図である。
【0222】
いくつかの実施形態においては、気化アレイ1501が瘢痕組織1503に適用される。いくつかの実施形態においては、繰り返し処置の適用によって、層ごとに瘢痕組織を徐々に気化させる。繰り返し処置間の時間間隔は、処置する組織の種類に応じて、1日~2カ月の範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、処置間の時間間隔は、新たな瘢痕の形成速度を古い瘢痕の気化速度よりも小さくして新たな瘢痕の形成を防止するように決定される。
【0223】
いくつかの実施形態においては、400℃等の高温のため、気化クレータの壁に存在し得る炭素粒子が酸化されてCO2蒸気に変換され、クレータ壁が炭化物を含まなくなる。炭化物を含まないクレータ壁によって、組織の治癒がさらに促進される可能性がある。
【0224】
いくつかの実施形態において、瘢痕処置に用いられる気化要素は、相対的に平坦および/またはわずかに曲線的な先端を有することにより、瘢痕組織のより深い層への不要な穿通が防止される。
【0225】
いくつかの実施形態において、組織における気化要素の滞在継続時間は、10~100msecの範囲である。
【0226】
いくつかの実施形態においては、たとえば処置前および/または処置後に、露出した瘢痕組織に局所薬剤が塗布される。なお、薬剤は、露出した瘢痕組織のみならず、組織中に生じた如何なる種類の穴にも塗布可能である。いくつかの実施形態において、薬剤には、瘢痕組織等の処置組織の治癒を加速させ得るステロイドを含む。
【0227】
図16Aおよび
図16Bは、本発明のいくつかの実施形態に係る、異なる材料で構成された気化アレイを用いたフラクショナル・スキン・リサーフェシングの5日後の写真である。
【0228】
図16Aは、ステンレス鋼で構成されたピラミッド状気化要素のアレイにより処置された腕の皮膚を示している。
図16Bは、ALNで構成されたピラミッド状気化要素のアレイにより処置された腕の皮膚を示している。
【0229】
気化要素の寸法は、底幅が1.25mm、(プレートから要素の遠位端まで測定した)長さが1.25mm、要素の遠位端における表面の幅が200μmであった。処置中は、400~450℃の範囲の温度まで両アレイを加熱した。
【0230】
組織との接触の継続時間は、ステンレス鋼アレイの場合に14~25msec、ALNアレイの場合に6~18msecの範囲であった。
【0231】
暗点1601は、形成されたクレータの位置を示しており、治癒中に痂皮の形成が始まっている。穏やかな処置の実現にはステンレス鋼要素を使用可能である一方、より侵襲的な処置にはALNを使用可能であることが示唆されている。
【0232】
例示的なプリズム形状気化要素
図17は、例示的なプリズム形状気化先端1701を示している。いくつかの実施形態において、気化要素の長さ1703は、100μm~1cmの範囲である。
【0233】
任意選択として、プリズム形状要素のアレイは、たとえば互いに平行に整列した10個、5個、15個、20個、30個、またはその他任意の数のプリズム形状要素を含む。任意選択として、プリズム形状要素のアレイは、細長クレータを組織に形成する。潜在的な利点としては、形成された細長クレータに対して垂直な配向で伸張する処置組織の相対的に高い伸展性が挙げられ、以下に詳しく記述する通り、組織への薬物送達に影響を及ぼし得る。これに加えて、または代替として、いくつかの実施形態においては、気化要素が六面体形状であってもよい。
【0234】
組織に対する気化可能な物質の塗布を含む組織気化方法
図18は、処置に先立つ組織への気化可能な物質の塗布を含む、皮膚等の組織を気化させる例示的な方法である。いくつかの実施形態においては(1801)、水および/またはゲル(たとえば、水性ゲル)等の気化可能な物質の層を組織に適用する。水および/またはゲルは、たとえば皮膚組織への直接配置に対して、相対的に均一な表面を処置対象の組織箇所に形成可能である。これに加えて、または代替として、水および/またはゲルは、組織の表面の形状に適合するように当該表面に付着する。水および/またはゲルの蒸気は、患者および医療関係者に安全であるため、これらの物質を気化可能な物質として使用するのに適している。
【0235】
いくつかの実施形態において、気化可能な層の厚さは、20、30、50μm等、10~80μmの範囲である。その後、たとえば任意選択としてアレイ状に配置された1つまたは複数の気化要素を用いることにより、ゲルで覆われた組織中のクレータを気化可能である(1803)。任意選択として、組織が気化する前に、適用した物質が気化する。水またはゲル等の物質を適用する利点の1つとしては、気化深さの制御が挙げられ、任意選択として、組織に対する気化要素の移動の正確な制御の必要性が低くなる。たとえば、30μm厚のゲル層を適用するとともに、(たとえば、アレイを作動させるように構成された制御ユニットを用いて)50μmの深さを気化させるように気化要素を設定することにより、組織には、20μm深さのクレータが形成されることになる。いくつかの実施形態において、ゲルの適用は、制御ユニットによって作動および/または制御される。任意選択として、制御ユニットは、ゲルの厚さを決定するように構成されている。
【0236】
水平および垂直速度成分を含む例示的な移動プロファイル
図19A~
図19Fは、垂直速度成分v1および水平速度成分v2を含む気化要素のアレイおよび/または単一の気化要素の例示的な移動プロファイルを示している。
【0237】
本明細書に概説の移動プロファイルは、表皮の最外層である角質層の気化において特に有用となり得る。潜在的な利点としては、下側の表皮層の損傷を伴わない角質層の気化が挙げられる。
【0238】
図19Aは、任意選択として手持ち気化装置の遠位端に構成された気化要素のアレイ1901が組織(たとえば、皮膚)1903に向かって前進する一実施形態を示している。いくつかの実施形態においては、たとえば組織との接触に先立って、たとえばレバー、モータ、および/もしくはホイール、または組織と平行にアレイを前進させるのに適した他の手段を用いることにより、アレイが水平方向に摺動する。いくつかの実施形態においては、組織と平行なアレイの移動により、たとえば正方形(たとえば、200×200μm
2の面積、120×120μm
2のサイズ、400×400μm
2のサイズ、これらの中間、以上、または以下の面積)、長方形(たとえば、100×10,000μm
2、50×500μm
2、600×8000μm
2、これらの中間、以上、または以下の面積)、または他の形状として処置領域が成形されるようになっていてもよい。いくつかの実施形態において、平行移動は、たとえば組織の上0.7mm、0.5mm、0.2mm等、気化要素の遠位端が組織からわずかな距離だけ上にある場合に、組織との接触に先立って作動される。任意選択として、水平移動は、気化要素が組織から持ち上げられると終了する。
【0239】
図19Bに示す実施形態は、たとえばロッド1905として成形された単一の気化要素を含む。任意選択として、水平移動が適用されていない場合(すなわち、V2=0)、要素の最大穿通深さHは、たとえば60、75、90μm、これらの中間、以上、または以下の深さ等、50~100μmの範囲である。形成クレータの処置表面領域は、たとえば150、200、250μm、これらの中間、以上、または以下の直径等、100~300μmの範囲のロッド1905の直径Dによって決まるようになっていてもよい。なお、Dは、直径のみならず、たとえば気化要素が正方形または長方形の断面プロファイルを有する場合の要素の任意の幅を表していてもよい。
【0240】
図19Cは、たとえば
図19Bに示す気化ロッド1905の移動パターンを示しており、水平速度成分を含む。
【0241】
任意選択として、水平速度は、一定である。あるいは、水平速度は変化するものであり、たとえば組織との最初の接触点と組織解放点との間で増加する。
【0242】
いくつかの実施形態においては、ロッド1905の水平移動によって、組織全体に染み付くクレータが形成される。任意選択として、穿通深さHは、小さくなる。たとえば、形成クレータの水平方向の幅が直径Dに係数Nを乗じたものである場合(たとえば、3、5、7、これらの中間、以上、または以下の値等、2~10の範囲である場合)、穿通深さHは任意選択として、同じ係数Nだけ小さくなり、H/Nという穿通深さになる。
【0243】
以下の数値例において、直径D=200μm、穿通深さH(水平速度の適用なし)=100μm、および組織との接触継続時間=5msecである。任意選択として、v2=40cm/sec(200μm/0.5msec)の水平速度の適用により、形成クレータの幅は、たとえば水平速度が適用されない場合に形成される200μmの代わりに、5msec~2000μmの接触期間において大きくなる。200μmの領域の滞在時間が5msecであることから、N=10という係数が得られる。これにより、穿通深さHは、N=10だけ小さくなり、10μmになる。
【0244】
気化要素(または、気化要素のアレイ)を水平に移動させる潜在的な利点として、気化の精度の向上が挙げられる。たとえば、上記の例において、深さ100μmのクレータの気化に適した装置は、水平速度成分が追加された場合に深さ10μmだけ気化可能であるため、公差が大きくなる。
【0245】
任意選択として、このような装置は、皮膚の角質層の厚さが約10μmであることから、より深い組織層の損傷を伴わない角質層の処置に適するものとなる。
【0246】
いくつかの実施形態において、装置を動作させるように構成された制御装置は、自動的またはユーザから受けた入力によって、穿通深さ、組織との接触継続時間、垂直速度、および/または水平速度等の1つまたは複数のパラメータを選択および/または修正するように構成されている。任意選択として、制御装置は、使用する気化要素のサイズを選択するように構成されている。任意選択として、制御装置は、第3のパラメータに影響する2つ以上のパラメータの選択および組み合わせによって、たとえば水平速度および/または気化要素のサイズの選択により、組織位置上の要素の滞在時間を制御するように構成されている。いくつかの実施形態において、制御装置は、パルスでの処置の適用によって、たとえば所要のより深い穿通深さ(たとえば、10μmではなく20μm)を得るように構成されている。
【0247】
本発明者らは、皮膚の処置において、気化要素を皮膚に水平に移動させる場合、組織の抵抗は相対的に微小または皆無であることを実験において示している。少なくとも部分的には、皮膚の弾性によって、皮膚上の気化要素の摺動が可能であることが示唆されている。
【0248】
図19Dおよび
図19Eは、手持ち装置1907の水平移動の一実施態様を示している。
図19Dに示す装置1907は、組織上を転がるように構成された一組のホイール1909を備える。任意選択として、この移動は、DCモータまたはステッピング・モータ等のモータにより駆動される。任意選択として、この移動は、マイクロプロセッサによって制御される。
図19Eに示す装置は、組織上に載置された遠位カップ構造1911を備える。任意選択として、気化要素1913は、カップ1911の開口1915または指定穴を通過可能である。いくつかの実施形態においては、装置1907にソレノイド1917(または、水平移動の生成に適した任意のバネもしくはモータ)が結合されて、組織上でアレイを押す水平力Fを印加する。
【0249】
図19Fは、たとえば皮膚の角質層の処置のために気化要素のアレイを水平に移動させるのに必要な力Fの例示的な定量化計算を与えている。一実施形態においては、標識Aのアレイ位置に示すように、気化要素1913と組織1919との間の接触の前に力Fが印加される。任意選択として、位置Aにおいては、水平速度v2=0である。アレイを距離Xだけ移動させて位置Bに達すると、速度は、最大値v2=40cm/secまで増加する。任意選択として、気化中の速度は、一定に維持される。装置1907の重量がM(たとえば、M=500g)である場合、アレイ1913の水平加速度は、F/Mとなる。アレイの位置Aと位置Bとの間の時間である標識tの継続時間は、以下の式を満足する。
X=a*t
2/2およびv2=a*t、よって、
a=v2
2/(2X)→F/M=v2
2/2X→F=M*v2
2/2X
M=500g、v2=40cm/sec、X=4mmという値の場合、所要の力Fは等しい。
F=(0.5×16×10
-2)/(2×4×10
-3)~10N~1Kgf
別の例において、たとえば長さが1cmで直径が100μmのワイヤの形態の単一の細長気化要素の場合、重量100gの手持ち装置で20cm/secの水平速度を得るのに必要な力Fは、滞在時間が500μsecの場合、70gfとなる。
【0250】
1つまたは複数の圧電トランスデューサを備えたアレイ・アセンブリ
図20は、1つまたは複数の圧電バイモルフ・トランスデューサ2001を含む一実施形態を示している。いくつかの実施形態においては、アレイ2003が1つまたは複数の断熱ロッド2005に結合されており、これがトランスデューサ2001と接触している。
【0251】
任意選択として、トランスデューサ2001は、電気的な作動により変形して、加熱要素2007側に屈曲し、アレイ2003の気化要素と加熱要素2007との間に電気的な接触を確立する。任意選択として、トランスデューサ2001は、たとえばフレーム2011を介して駆動ロッド2009に接続されている。いくつかの実施形態においては、(たとえば、モータまたはバネ(図示せず)を用いて)遠位方向および/または近位方向にロッド2009を駆動することにより、圧電トランスデューサ2001の移動と同時に加熱要素2007が上下する。
【0252】
一実施形態において、たとえば加熱要素2007、圧電トランスデューサ2001、およびアレイ2003を備えた上記のようなアセンブリは、アレイ2003の先端が組織に近接する位置まで下降するが、依然として組織には接触しない。たとえば、アレイ2003の気化要素の遠位端は、組織の表面上0.5mmに位置決めされる。任意選択として、この点において、
図20Aに示すように、アレイ2003が加熱要素2007に接触し、これにより、気化要素は、たとえば400℃の温度まで加熱される。いくつかの実施形態において、アレイと組織との間の距離は、制御装置によって識別される。
【0253】
任意選択として、制御装置は、たとえば印加電位の極性を反転させることにより、距離のインジケーションに基づいて、トランスデューサを作動させるように構成されている。いくつかの実施形態においては、
図20Bに示すように、印加電圧に応答してトランスデューサが変形し、アレイ2003を加熱要素2007から切り離す。アレイ2003が遠位方向に前進することにより、気化要素は、組織を貫通してこれを気化させる。圧電トランスデューサを用いてアレイを動作させる潜在的な利点としては、短い応答時間が挙げられ、たとえば約±1μmの精度で20μmの深さまで、たとえば100μsec以下の間に角質層を気化可能である。処置期間が終わったら、制御装置は、トランスデューサの印加電圧の極性を再び反転させて、アレイ2003と加熱要素2007とを再び接触させるようにしてもよい。
【0254】
例示的な一実施形態において、加熱要素2007およびアレイ2003は、互いに結合されている間、たとえば100msecの時間内に、皮膚の表面上250~500μmの距離まで移動する。アセンブリは、たとえば25msec等、加熱された気化要素からの赤外線放射による皮膚の損傷を低減または防止するのに十分短い時間にわたって、この位置に維持される。いくつかの実施形態において、圧電トランスデューサは、長さLとして40mm、幅Wとして20mm、および厚さTとして0.5mmという寸法を有していてもよい。トランスデューサの偏位は、2.7*10-3*L2メートル/ボルトで与えられる。すなわち、50ボルトで210μmまたは100ボルトで500μmである。トランスデューサの共振周波数は、たとえば150Hzである。任意選択として、トランスデューサをその共振周波数で作動させた場合、アレイの1回の振動の長さは、およそ7msecである。振動の振幅が500μmで振動の時間が7msecの場合、20μmの穿通深さに達した際のアレイの滞在継続時間は、500μsec未満である。また、トランスデューサを作動させる電位を変更することにより、振動の振幅が修正されるようになっていてもよい。
【0255】
高伝導コアを備えた気化要素の追加の設計
いくつかの実施形態においては、
図21に示すように、チタンまたはステンレス鋼等の生体適合性材料2103および高伝導コア2105(たとえば、銅を含む)で気化要素2101が構成されている。いくつかの実施形態において、コア2105は、この図に示すように、たとえばピラミッド状要素等の要素内に埋め込まれたプラグとして成形されている。任意選択として、生体適合性層2103は、酸化チタンの薄層(たとえば、厚さ1μm未満)で被覆されている。任意選択として、酸化チタン層は、700℃等の高温に耐えられる。
【0256】
いくつかの実施形態において、コア2105と生体適合性層2103とが熱的に十分接触している場合は、軸2107に沿った気化要素の熱緩和時間(すなわち、平衡へと戻るのに要する時間)が短くなる。たとえば、気化要素の全長Xの半分に等しい長さのコア2105を(たとえば、ろう付けプロセスにより)組み込むことによって、熱緩和時間は、(たとえば、X2に比例することから)約4倍短くなる可能性がある。任意選択として、コア2105が銅で構成されて熱伝導率が約400W/msecであり、生体適合性層2103がステンレス鋼またはチタンで構成されて熱伝導率が16~25W/msecである場合、要素2101の有効熱伝導率は、約80W/msecである。
【0257】
図22Aおよび
図22Bは、コア2201が銅等の熱伝導率が高い材料で形成され、たとえばチタンおよび/またはステンレス鋼で構成された薄い生体適合性金属シート2203により被覆された一実施形態を示している。任意選択として、シート2203は、気化要素のコア2201の形状に従って製造される。任意選択として、シート2203は、厚さが一定である。あるいは、シート2203は、厚さが変化する。任意選択として、シート2203は、気化要素の所定の寸法を満たすようにサイズ指定されており、たとえば厚さが200μmである。いくつかの実施形態において、シート2203は、10μm、50μm、150μm、これらの中間、以上、または以下の厚さで形成されている。いくつかの実施形態において、シート2203は、印圧加工プロセスを用いて生成される。任意選択として、シート2203は、圧力の印加によって、コア2201に取り付けられる。任意選択として、シート2203は、たとえば900℃の高温でコア2201にろう付けされることにより、材料間の接触を向上させて熱伝導率を高くする。
【0258】
いくつかの実施形態においては、さまざまな長さおよび/または幅の気化要素によって、さまざまな深さのクレータが生成される。任意選択として、要素のさまざまな長さおよび/または幅は、さまざまな厚さで形成されたシート2203を用いることによって得られる。
【0259】
いくつかの実施形態においては、たとえば
図22Bに示すように、気化要素が搭載されたプレート2205にシート2203が接触しない。潜在的な利点としては、気化要素のコア2201に対するシート2203のより簡単な搭載プロセスが挙げられ、コアと接触するシートの面積の低減および両者間の結合の増強が可能である。任意選択として、この搭載は、たとえば約900℃まで加熱されたオーブンを用いることにより、ろう付けによって行われる。コアとシートとの間に空気が閉じ込められた場合でも、この空気は、シートとプレートとの間に形成された空間2207へと流れ得る。
【0260】
本願からの特許の有効期間中に、多くの関連する気化アレイおよび/または要素が開発されるであろうが、気化アレイおよび/または要素という用語の範囲には、このような新しい技術をすべて先験的に含むことになるものと予想される。
【0261】
用語「備える、含む(comprises、comprising)」、「具備する、含む(includes、including)」、「有する(having)」、およびそれぞれの同根語は、「非限定的に含む」ことを意味する。
【0262】
用語「~からなる(consisting of)」は、「限定的に含む」ことを意味する。
【0263】
用語「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、組成、方法、または構造が別の成分、ステップ、および/または部品を含み得ることを意味するが、この別の成分、ステップ、および/または部品によって、特許請求の範囲に係る組成、方法、または構造の基本的かつ新規な特性が実質的に変化しない場合に限る。
【0264】
本明細書において、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上の別段の明示がない限り、対象要素の複数形も含む。たとえば、用語「化合物(a compound)」または「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」には、複数の化合物(それらの混合物も含む)を含む場合がある。
【0265】
本願の全体を通して、本発明の種々実施形態は、範囲形式で提示する場合がある。範囲形式での記述は単に、利便性および簡潔性を目的としており、本発明の範囲に関する絶対的な限定と解釈すべきではないことを理解されたい。したがって、範囲に関する記述は、考え得るすべての部分範囲の他、当該範囲内の個々の数値を具体的に開示したものと考えるべきである。たとえば、1~6等の範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲の他、当該範囲内の個々の数(たとえば、1、2、3、4、5、および6)を具体的に開示したものと考えるべきである。これは、範囲の広さと無関係に当てはまる。
【0266】
本明細書において数値範囲を指定している場合は常に、指定範囲内の任意の引用数値(分数または整数)を含むことを意味する。第1の指定数と第2の指定数との「間の範囲」という表現および第1の指定数「から」第2の指定数「までの範囲」という表現は、本明細書において区別なく使用しており、第1および第2の指定数ならびに両者間のすべての分数および整数を含むことを意味する。
【0267】
本明細書において、用語「方法」は、化学、薬理学、生物学、生化学、および医学の専門家に既知または化学、薬理学、生物学、生化学、および医学の専門家が既知の方式、手段、技術、および手順から容易に開発し得る方式、手段、技術、および手順(ただし、これらに限らない)を含む所与のタスクを実現するための方式、手段、技術、および手順を表す。
【0268】
本明細書において、用語「処置」は、状態の進行を抑止、実質的に阻止、遅延、もしくは反転させること、状態の臨床的または審美的な症状を実質的に改善すること、または状態の臨床的または審美的な症状の出現を実質的に防止することを含む。
【0269】
当然のことながら、本発明の特定の特徴は、明瞭化のため別個の実施形態の文脈で記載しているが、単一の実施形態で組み合わせて提供することも可能である。逆に、本発明のさまざまな特徴は、簡潔化のため単一の実施形態の文脈で記載しているが、別個の提供、任意適当な部分的組み合わせでの提供、または本発明のその他任意の上記実施形態に適するような提供も可能である。種々実施形態の文脈で記載した特定の特徴は、これらの要素がなくて当該実施形態が無効となるのでなければ、これら実施形態の本質的な特徴とは考えないものとする。
[関連出願]
本願は、2010年7月22日に出願されたPCT特許出願第PCT/IL2010/000588号(公開第WO2011/013118号)に関連しており、その内容を全体として本明細書に援用する。
【0270】
本願は、2013年12月18日に出願された米国仮特許出願第61/917,435号の優先権の利益を主張する。上記出願の内容は、一切漏れなく本明細書に援用する。