(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】安全帯用発報装置
(51)【国際特許分類】
A62B 35/00 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
A62B35/00 J
(21)【出願番号】P 2021124295
(22)【出願日】2021-07-29
(62)【分割の表示】P 2018173456の分割
【原出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591199741
【氏名又は名称】株式会社プロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 光也
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-204998(JP,A)
【文献】特開2010-46325(JP,A)
【文献】特開2011-15794(JP,A)
【文献】特開2011-104339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 35/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉤状部材を有するフックを含む安全帯に取り付けて使用される安全帯用発報装置であって、
前記鉤状部材の一部をその内側縁部が露出した状態で外側縁部から覆うように形成された着脱自在のケースと、
前記ケースに設けられた、
前記フックが第1被掛止物に掛けられたことを検知する検知手段と、
報知動作を行う報知手段と、
前記検知手段の検知信号に基づき第1被掛止物に掛けられたことを報知するよう前記報知手段を制御する報知制御手段と、を備え、
前記検知手段は、前記フックが第1被掛止物に掛けられた際に該第1被掛止物に当接して回動するレバーと、前記レバーの回動を検知するセンサとを備える
ことを特徴とする安全帯用発報装置。
【請求項2】
前記ケースは、前記鉤状部材をその厚み方向に挟んだ状態で両側から押圧する押圧部材により、前記鉤状部材に固定可能となっている
ことを特徴とする請求項1記載の安全帯用発報装置。
【請求項3】
前記ケースには、安全帯の人体ベルト又は作業服のベルトなどの第2被掛止物に引っ掛けるための引っ掛け片が形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の安全帯用発報装置。
【請求項4】
前記報知手段は音響装置を含み、
前記報知制御手段は音声を前記音響装置から出力する
ことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の安全帯用発報装置。
【請求項5】
前記報知手段は前記ケースの外面に露出するよう設けられた発光素子を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の安全帯用発報装置。
【請求項6】
前記ケースの外面には凹部が形成されており、前記発光素子はその頭部がケース外面から露出した状態で前記凹部の底面に配置されている
ことを特徴とする請求項5記載の安全帯用発報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業の作業員が装着する安全帯に関し、その使用状態を発報する発報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場等の高所での作業の際には、作業者には、墜落防止のための安全帯の着用が義務づけられている。安全帯は、作業者の体に装着される人体ベルトと、人体ベルトに一端が連結したロープと、ロープの他端に設けられたフックとを備える。なお、人体ベルトは、作業者の肩・腰部・腿等複数箇所において支持する構造のフルハーネス型と、作業者の腰部に着用する帯状の胴ベルト型とに大別される。また、人体ベルトとロープとの連結部に、さらに墜落制止時の衝撃を吸収するショックアブソーバを備えるものや、ロック機構付きのロープ巻き取り器を備えるものも知られている。作業者は、高所作業に先立ち、親綱や足場の手すりや建築物などの取り付け設備にフックを引っ掛け、その後に高所作業を行う。安全帯は、墜落制止用器具とも呼ばれる。
【0003】
墜落事故を防止するためには、作業員が安全帯を正しく且つ確実に使用することが必須である。そこで、作業者に対して安全帯の装着を促すとともに使用状況を管理するためのシステムが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のものでは、感圧センサや開閉センサなどのセンサ類及びセンサ信号を無線で送信する送信回路をフックに設けるとともに、人体ベルトにコントロールボックスを設けている。コントロールボックスは、センサ信号受信部と、スピーカと、LEDと、制御装置とを備えている。コントロールボックスの制御装置は、フックから受信したセンサ信号に基づき、スピーカやLEDを用いた各種報知制御を行うとともに、無線通信によりパーソナルコンピュータに安全帯の使用状態を送信する。パーソナルコンピュータは、安全帯から受信した使用状態を管理するとともに、必要に応じて報知制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の安全帯は、センサ類を取り付けた専用フックを用いているため、換言すれば既存の安全帯を用いることができないため、コストが高いという問題がある。また、特許文献1に記載の安全帯は、フックとコントロールボックスの双方にバッテリが必要となるため、煩雑なバッテリ管理や交換作業が必要になるという問題がある。また、使用時においてもフックとコントロールボックスの双方で電源を入れる操作を行う必要があるため、利便性に欠けるという問題がある。さらに、フックからコントロールボックスへのセンサ信号の伝達を無線通信で行っているので、作業環境によっては通信障害により適切な動作が阻害されるおそれがあるとともに、消費電力やコストが高くなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、既存の安全帯に改造等を加えることなく安全帯の使用状態を発報することができ且つ廉価な発報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明は、鉤状部材を有するフックを含む安全帯に取り付けて使用される安全帯用発報装置であって、前記鉤状部材の一部をその内側縁部が露出した状態で外側縁部から覆うように形成された着脱自在のケースと、前記ケースに設けられた、前記フックが第1被掛止物に掛けられたことを検知する検知手段と、報知動作を行う報知手段と、前記検知手段の検知信号に基づき第1被掛止物に掛けられたことを報知するよう前記報知手段を制御する報知制御手段と、を備え、前記検知手段は、前記フックが第1被掛止物に掛けられた際に該第1被掛止物に当接して回動するレバーと、前記レバーの回動を検知するセンサとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安全帯用発報装置のケースが、安全帯のフックの鉤状部材の一部をその内面が露出した状態で外側縁部から覆うように形成されているので、専用のフックを用意することなく、既存のフックに取り付けるだけで使用することができる。また、検知手段と報知手段と報知制御手段とが1つのケースに設けられており、他の装置等を必要としない簡便な構成なので、製造コストを抑えることができるとともに、使用時の利便性も高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】安全帯用発報装置をフックに装着した様子を示す正面図
【
図5】安全帯用発報装置をフックに装着した状態で
図2のA線の位置で切断した断面図
【
図7】安全帯用発報装置の装着先であるフックの正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る安全帯用発報装置について図面を参照して説明する。
図1は安全帯用発報装置の正面図、
図2は安全帯用発報装置の上面図、
図3は安全帯用発報装置の左側面図、
図4は安全帯用発報装置をフックに装着した様子を示す正面図、
図5は安全帯用発報装置をフックに装着した状態で
図2のA線の位置で切断した断面図、
図6は
図4のB線で切断した断面図、
図7は安全帯用発報装置の装着先であるフックの正面図である。
【0011】
まず、
図7を参照して、安全帯用発報装置の装着先であるフックの構成について説明する。フック200は、
図7に示すように、鉤状部材210と、鉤状部材210の開口に対して開閉動作をする外れ止め部材220と、外れ止め部材220の開閉動作を制限するロック部材230とを備えている。
【0012】
鉤状部材210は、親綱や足場の手すりなど被掛止物を開口の内側に引っ掛けるよう板状部材を湾曲させた形状を有している。鉤状部材210の一端側は、安全帯のロープ(図示省略)と連結するための連結孔211が形成されている。
【0013】
外れ止め部材220は、その一端側をリベット221により、鉤状部材210の開口の内側において回動自在に付設されている。外れ止め部材220の他端側は、鉤状部材210の先端部の内側に係止するよう形成されている。外れ止め部材220は、バネ222により鉤状部材210の開口を閉鎖する方向に付勢されている。
【0014】
ロック部材230は、その一端側をリベット231により、鉤状部材210の外側において回動自在に付設されている。ロック部材230は、バネ232により鉤状部材210の外側に向けて付勢されている。ロック部材230には、スライド溝233が形成されている。このスライド溝233には、前記外れ止め部材220の一部と重なっており、外れ止め部材220に設けられたリベット223が挿通している。スライド溝233は、外れ止め部材220が鉤状部材210の開口を閉鎖した状態にあるとき、ロック部材230の回動にしたがって外れ止め部材220のリベット223がスライド溝233内を移動するよう形成されている。さらに、スライド溝233は、ロック部材230を鉤状部材210方向に回動させた状態にあるとき、外れ止め部材220の回動にしたがってリベット223がスライド溝233内を移動するよう形成されている。
【0015】
次に、本実施の形態に係る安全帯用発報装置の構成について説明する。
図1~
図6に示すように、安全帯用発報装置100は、ケース110と、フック200が被掛止物10に掛けられたことを検知する検知手段を構成するレバー120及びスイッチ130と、報知動作を行う報知手段であるスピーカ140及び複数のLED150と、前記検知手段の検知信号に基づき被掛止物10に掛けられたことを報知するよう前記報知手段を制御する報知制御手段である制御回路160と、を備えている。
【0016】
ケース110は、フック200の鉤状部材210の一部、具体的には湾曲部を、その内面が露出した状態で外側縁部から覆うように、断面略U字状に形成されている。フック200を被掛止物10に掛けた際に当該被掛止物10がケース110に衝突しない又は衝突による衝撃が小さくなるように、鉤状部材210の湾曲部を覆う箇所のケース110内縁は、鉤状部材210の湾曲部の内縁と一致またはやや外側に位置している。換言すれば、ケース110の内縁の稜線は、フック200の鉤状部材210の一部、具体的には湾曲部の内側縁部の稜線と一致する又はやや内側に位置した状態となっている。ケース110は、鉤状部材210をその厚み方向に挟んだ状態で両側から押圧する押圧部材(本実施の形態では複数のネジ111)により、前記鉤状部材210に着脱自在に固定可能となっている。
【0017】
ケース110には、鉤状部材210の連結孔211側の端部に、スピーカ140・スイッチ130・制御回路160を収納する箱部112が形成されている。さらに、箱部112には、安全帯の人体ベルト又は作業服のベルトなど、墜落防止のために用いるものとは異なる被掛止物に引っ掛けるための引っ掛け片113が外側に向けて形成されている。
【0018】
ケース110の湾曲部の内側であって左右一方の底面には、レバー120を収容するための溝114が形成されている。レバー120は、前記溝114内においてリベット115によって回動自在に設けられている。レバー120は、レバー120の端部に設けられたバネ116により鉤状部材210の湾曲部の内側方向に付勢されている。レバー120の可動域は、レバー120の端部と当接する係止片117a,117bにより規制されている。ここで、レバー120は、通常時は、フック200が被掛止物10に掛けられた際に当該被掛止物10に当接して回動するよう、フック200の鉤状部材210の湾曲部の内側縁部の稜線よりもやや内側に位置している。
【0019】
スイッチ130は、レバー120が被掛止物10と当接して回動したことを検知するセンサである。スイッチ130は、レバー120が回動した際に、レバー120の端部がスイッチ130のアクチュエータを操作するように配置されている。
【0020】
ケース110の上面及び両側面には、鉤状部材210の湾曲にそって形成された凹部118及び119が形成されている。各凹部118及び119の底面には、発光素子であるLED150が互いに間隔をおいて複数設けられている。凹部118及び119の深さは、LED150の頭部がケース110の外面から露出する深さに形成されている。これにより、LED150の視認性を確保するとともに、LED150が障害物にあたって壊れることから保護している。
【0021】
スピーカ140は、例えば、圧電スピーカからなる。ケース110の箱部112にはスピーカ140から発せられる音を外部に放出するための音響孔(図示省略)が設けられている。
【0022】
図8に安全帯用発報装置の回路図を示す。
図8に示すように、制御回路160にはスイッチ130とスピーカ140とLED150が接続されている。制御回路160は、図示省略のバッテリ及び電源スイッチを備えており、電源スイッチをオンにしてバッテリからの電力供給により動作する。制御回路160は、スイッチ130用の入力回路、スピーカ140の駆動回路、LED150用の駆動回路を含む。
【0023】
制御回路160は、スイッチ130によりレバー120の回動を検知すると、スピーカ140及びLED150を用いてフック200が被掛止物10に掛けられた旨を報知するよう所定の報知制御を行う。具体的には、例えば「安全です」なる音声データを所定の記憶部に予め記憶しておき、当該音声データを所定回数(例えば2回)スピーカ140から出力するよう制御する。また例えば、全てのLED150を所定時間(例えば3秒間)、所定の間隔で点滅させる制御を行う。なお、音による報知(聴覚に訴える報知)と光による報知(視覚に訴える報知)は何れか一方だけ実施してもよいし、本実施の形態のように両方を実施するようにしてもよい。
【0024】
このような安全帯用発報装置100は、
図4に示すように、フック200の鉤状部材210の湾曲部に外側から被せ、ネジ111により固定することによりフック200に装着される。作業者は、高所での作業前や移動時など安全帯の使用前に、安全帯用発報装置100の電源がオンにし、安全帯用発報装置100の引っ掛け片113を、安全帯の人体ベルト又は作業服のベルトなど、墜落防止のために用いるものとは異なる被掛止物に引っ掛けておく。ここで、安全帯の使用前では、安全帯用発報装置100は作動しないので、誤った報知を防止することができる。
【0025】
そして、作業員が安全帯を使用すべく親綱や足場の手すりなどにフック200を引っ掛けると、安全帯用発報装置100のレバー120が回動して、スピーカ140及びLED150が報知動作を行う。これにより、作業員に対して、安全帯のフック200が確実に使用されていることを認識させることができる。
【0026】
このように、本実施の形態に係る安全帯用発報装置100によれば、ケース110が、安全帯のフック200の鉤状部材210の一部をその内側縁部が露出した状態で外側縁部から覆うように形成されているので、専用のフックを用意することなく、既存のフックに取り付けるだけで使用することができる。また、検知手段と報知手段と報知制御手段とが1つのケース110に設けられており、他の装置等を必要としない簡便な構成なので、製造コストを抑えることができるとともに、使用時の利便性も高いものとなる。
【0027】
また、本実施の形態に係る安全帯用発報装置100によれば、ケース110は、鉤状部材210をその厚み方向に挟んだ状態で両側から押圧する押圧部材であるネジ111により、鉤状部材210に固定可能となっているので、安全帯用発報装置100のフック200に対する着脱を確実且つ容易に行うことができる。
【0028】
また、本実施の形態に係る安全帯用発報装置100によれば、ケース110には、安全帯の人体ベルト又は作業服のベルトなどの、他の被掛止物に引っ掛けるための引っ掛け片113が形成されているので、安全帯の使用時以外に報知動作が行われることを防止できる。
【0029】
また、本実施の形態に係る安全帯用発報装置100によれば、LED150はケース110に形成された凹部118及び119の底面に、LED150の頭部がケース110の外面から露出するように配置されているので、LED150の視認性を確保できるととものに、LED150が障害物にあたって壊れることから保護することができる。
【0030】
以上、本発明の一実施の形態について詳述したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態ではケース110に引っ掛け片113を形成したが、当該引っ掛け片113は省略してもよい。
【0031】
また、上記実施の形態では、フック200が被掛止物10に掛けられたことを検知する手段としてレバー120及びスイッチ130を用いたが、光センサによりレバー120の回動を検出したり、感圧センサを用いたりするなど、他のセンサを用いてもよい。
【0032】
また、上記実施の形態では、光による報知手段として、複数のLED150をケース110の上面及び側面に設けたが、LED150の数や設置場所は不問である。また発光素子としてLED以外のものを用いてもよい。
【0033】
また、上記実施の形態では、ケース110を鉤状部材210に着脱自在に固定する手段として鉤状部材210を挟み込むように押圧するネジ111を用いたが、ケース110に引っ掛け片を形成して鉤状部材210を支持するなど、他の構造によりケース110と鉤状部材210に着脱自在に固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…被掛止物
100…安全帯用発報装置
110…ケース
118,119…凹部
120…レバー
130…スイッチ
140…スピーカ
150…LED
160…制御回路
200…フック
210…鉤状部材
220…外れ止め部材
230…ロック部材