(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】移動可能な環境に適合した小型OCT用分光計
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20220815BHJP
G01J 3/45 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
G01N21/17 620
G01J3/45
(21)【出願番号】P 2021517176
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 KR2019006762
(87)【国際公開番号】W WO2019235829
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0064969
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0086004
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520474934
【氏名又は名称】ピロポス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジュン ホ
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-506072(JP,A)
【文献】特開昭60-180377(JP,A)
【文献】特開平09-033344(JP,A)
【文献】特開2017-078722(JP,A)
【文献】特表2011-523460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0376001(US,A1)
【文献】Arne Leinse,Spectral domain, common path OCT in a handheld PIC based system,Proc.of SPIE,2018年02月14日,Vol.10483,pp.J1-J9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
G01J 1/00-1/60
G01J 3/00-3/52
A61B 1/00-3/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドヘルド用小型OCT(optical coherence tomography)分光計において、
分光計光学
系モジュールと、
前記分光計光学
系モジュールの一側に結合し、前記分光計光学
系モジュールから受信した光を電気信号に変換するセンサーを含むセンサーボードと、
前記
ハンドヘルド用小型OCT分光計の外部の他の回路から受信したコントロール信号と電力信号を前記センサーボードに供給し、前記センサーボードから受信した信号を外部の他の回路に伝達するように構成されるコネクターと、を含み、
前記センサーボードは、前記分光計光学
系モジュールと共にパッケージングされ、
前記センサーは、前記センサーボードの表面から突出されるように形成され、前記センサーの受光部は、前記パッケージングされた
前記分光計光学系モジュールの光部品に向けるように構成され、前記分光計光学
系モジュールから光を収集
し、
前記センサーの受光部の上端にはカバーガラスが設けられていなく、前記センサーはバッテリーから既に設定された入力電源として動作できるように低電力回路が構成され、
前記センサーを構成する複数のピクセルは、それぞれ既に設定された値以内の幅を有し、前記センサーが受信する光信号の波長成分が有する焦点のサイズを前記ピクセルの幅よりも小さく設計して、光検出感度の劣化を最小化する、ハンドヘルド用小型OCT分光計。
【請求項2】
前記センサ
ーは、単一パッケージング工程を介さず、前記センサーボード上に埋設されるように製作される、請求項1に記載のハンドヘルド用小型OCT分光計。
【請求項3】
前記センサーボードは、電圧変換部を備え、前記コネクターから既に設定された電圧を受信できない場合、前記電圧変換部を通じて前記コントロール信号から電源供給に必要な他の電圧に変換する、請求項1に記載のハンドヘルド用小型OCT分光計。
【請求項4】
前記センサーボードは、前記センサーから受信したアナログ信号をデジタル信号に変換し、前記コネクターに伝達するアナログデジタル変換器を更に含み、
前記アナログデジタル変換器は、入力を受ける前記アナログ信号の電圧範囲が
ノイズフロアから前記センサーのFull well capacityに対応する電圧範囲を含むように設定され、
前記Full well capacityは、前記センサー内の各ピクセルで光を受信し、既に設定された時間の間に蓄積できる最大電子の量を意味する、請求項1に記載のハンドヘルド用小型OCT分光計。
【請求項5】
前記コネクターは、前記アナログデジタル変換器から発生されたデジタル信号を、前記
ハンドヘルド用小型OCT分光計内のメインボードに転送する、請求項
4に記載のハンドヘルド用小型OCT分光計。
【請求項6】
前記
ハンドヘルド用小型OCT分光計は、
前記センサーの各ピクセルで測定した電気信号値に対する補正を行う補正モジュールを更に含み、
前記補正モジュールは、各ピクセルの光電変換特性値が異なることによる前記電気信号値の間の相違と、光入力がない時に、各ピクセルの
ノイズフロア特性値の相違をそれぞれ減殺できるように補正する、請求項1に記載のハンドヘルド用小型OCT分光計。
【請求項7】
前記補正モジュールは、
各ピクセルで測定された電気信号値に、各ピクセルのオフセッ
ト値の間の相違を示すファクタ
ーを引算し、前記引算された値に入力光の量に応じて各ピクセルの利
得値を示すファクタ
ーを除算することで前記補正を行う、請求項
6に記載のハンドヘルド用小型OCT分光計。
【請求項8】
前記補正モジュールは、
前
記センサーの
クロストークを補正するために、一ピクセルに光信号が入力された時
における、理想的な電気信号値対比、隣接
するピクセルに
光信号が漏れて実際に測定される電気信号値の比率、分光計の実際の動作状況で、各ピクセルで実際に測定された電気信号値及び
クロストークが除去された理想的な状況の電気信号値を用いて、数式を算出し、前記数式を通じて前記各ピクセルで測定される前記電気信号値を補正する、請求項
6に記載のハンドヘルド用小型OCT分光計。
【請求項9】
前記補正モジュールは、
前記ピクセルに入射され
る光信号の非線
形電気信号値を補正するために、
非線形的な領域での同じ前記光信号に対応する非線形電気信号値及び線形電気信号値をそれぞれ算出及び対応させた
ルックアップテーブルまたは関数を既に生成し
ておき、前記
ハンドヘルド用小型OCT分光計が実際に前記光信号を入射して前記非線
形電気信号値を受信
したとき、前記
ルックアップテーブルまたは前記関数に基づいて前記線形電気信号値を算出して補正を行う、請求項
6に記載のハンドヘルド用小型OCT分光計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動が必要な環境で使用するのに適合した小型OCT(optical coherence tomography)用分光計を具現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉断面映像(optical coherence tomography;OCT)は、光を用いて生体組織の内部の観察ができる技術であって、眼科、心血管などの分野で使われている先端の医療診断技術であり、時間領域(time domain)、分光領域(spectral domain)及びスウェプトソース(swept source)方式などがある。そのうち、分光領域方式のOCTシステムは、一定水準以上の性能を確保していると共に、製造原価を低減させることができるため、脚光を浴びている方式である。
【0003】
図1は、従来の分光領域OCTシステムの概念を示す図である。
【0004】
図1に示すように、分光計1は、分光領域方式のOCTシステムにおける核心的な構成要素であって、基準光と同時に、生体組
織で散乱されて戻ってきたサンプル光をスペクトラム成分で広げた上、センサーから検出する時に、干渉現象を用いて生体組
織内部の構造的な信号を取得することができる。
【0005】
また、OCTは、これまで眼科、心血管の分野などを中心として市場を拡大してきたところ、1991年に初めて技術が発明された以来、他の診断分野での普及率はあまり高くない方であった。その主な原因として、1億ウォンを超えるほど装備のコストが高いという点、通常はデスクトップやカート型であるため、設置空間がある程度は必要であるという点、高い使用料と保険数価の問題などが挙げられる。
【0006】
よって、OCTシステムが小型化され、コストが低くなると、OCTは多様な診断分野において、その波及力が高くなると思われる。そのためには、分光計の小型低価化が必須である。
【0007】
分光計1を使用するOCTシステムにおいて、生体組織の内部断面を正確に映像化するためには、人工的な雑音を最小化すべきであるところ、従来には分光計で光を電気信号に変えるセンサーのカバーウィンドウのため、一部の光が反射されて、OCT断面映像が出力される時に、人工的な横線形態の雑音を発生させる。
【0008】
ところが、このようなカバーウィンドウは、センサーと単一パッケージに製作されて、任意の除去が難しい。また、このような単一パッケージでは、センサー自体の位置が表面から埋め立てられている場合が多いため、分光計を小型化することにおいて障害物として作用する。
【0009】
図2は、従来の分光計1で使われているセンサーを示す図である。
【0010】
図2に示すように、
図2(a)は、センサーの上面を、
図2(b)は、センサーの側面を示す図である。
【0011】
図2(a)に示すように、従来のセンサーの場合、表面にカバーウィンドウが備えられており、実際の検出領域が表面から埋め立てられていることが確認できる。また、
図2(b)からも該事項の確認が可能である。
【0012】
また、従来のOCT用分光計1は、ハンドヘルド(handheld)またはモバイル環境を考慮していないため、通常、分光計1のセンサー回路に電力を供給するための自体電源回路及びコネクターが備えられている。そのため、分光計1には、別途の電源アダプダが連結されているべきであり、このような形態は分光計の小型化において障害物として作用する。
【0013】
また、分光計1用センサーボードでは、センサーの感度が充分に考慮されるべきである。この値が高ければこそ、更に少ない量の光子(photon)でも十分な電流を発生させることができるところ、センサーの感度が低いと、高出力の光源を必要とする。このような構造は、少ない電力消耗を要求するハンドヘルドまたはモバイルOCTでは不適であるため、感度の高いセンサーを利用した分光計1の具現が必要である。
【0014】
センサーの感度を高めようとする時には、センサーのfull well capacityという項目も考慮しなければならない。光がセンサーに到逹すると、光子(photon)が電子を発生させるところ、各ピクセルにおいて露出時間(integration time)の間に蓄積される電子の量が飽和状態まで到逹する時の値がfull well capacityである。この値が低いと、センサーの感度がいくら良くても直ぐに飽和状態に到逹するようになるため、入力される光信号の強さに制限を加えるようになる。よって、移動環境に適合したOCT用分光計では、感度が高いと共に、full well capacity値も高いセンサーの具現が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、バッテリーによって駆動されるハンドヘルドまたはモバイルOCT機器に適合した小型分光計1を具現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記のような技術的課題を達成するための本発明の一実施例に係る、ハンドヘルド用小型OCT(optical coherence tomography)分光計において、分光計光学系モジュールと、分光計光学系モジュールの一側に結合し、分光計光学系モジュールから受信した光を電気信号に変換するセンサーを含むセンサーボードと、分光計の外部の他の回路から受信したコントロール信号と電力信号をセンサーボードに供給し、センサーボードから受信した信号を外部の他の回路に伝達するように構成されるコネクターと、を含み、センサーボードは、分光計光学系モジュールと共にパッケージングされ、センサーは、センサーボードの表面から突出されるように形成され、センサーの受光部は、パッケージングされた分光計光学系モジュールの光部品に向けるように構成され、分光計光学系モジュールから光を収集する装置であり得る。
【0017】
また、センサー自体は、単一パッケージング工程を介さず、センサーボード上に埋設されるように製作され得る。
【0018】
また、センサーの受光部の上端には、カバーガラスが含まれていないことができる。
【0019】
また、センサーを構成する複数のピクセルは、それぞれ10μm以内の幅を有することができる。
【0020】
また、センサーは、既に設定された入力電源で動作できるように低電力回路を構成することができる。
【0021】
なお、センサーが受信する光信号の波長成分が有する焦点のサイズをピクセルの幅よりも小さく設計することで、分光性能の劣化を最小化することができる。
【0022】
また、センサーボードは、電圧変換部を備え、コネクターから既に設定された電圧を受信できない場合、電圧変換部を通じてコネクターから伝達された信号から電源供給に必要な他の電圧に変換することができる。
【0023】
また、センサーボードは、センサーから受信したアナログ信号をデジタル信号に変換し、コネクターに伝達するアナログデジタル変換器を更に含み、アナログデジタル変換器は、入力を受けるアナログ信号の電圧範囲がノイズフロア(noise floor)からセンサーのFull well capacityに対応する電圧まで含むように設定されるものであり、Full well capacityは、センサー内の各ピクセルで光を受信し、既に設定された時間の間に蓄積できる最大電子の量を意味することができる。
【0024】
また、コネクターは、アナログデジタル変換器から発生されたデジタル信号をOCTシステムのメインボードに転送することができる。
【0025】
なお、分光計は、センサーの各ピクセルで測定した電気信号値に対する補正を行う補正モジュールを更に含み、補正モジュールは、各ピクセルの光電変換特性値が異なることによる電気信号値の間の相違と、光入力がない時に、各ピクセルのノイズフロア(noise floor)特性値の相違をそれぞれ減殺できるように補正することができる。
【0026】
また、補正モジュールは、各ピクセルで測定された電気信号値に、各ピクセルのオフセット(OFFSET)値の間の相違を示すファクター(factor)を引算し、引算された値に入力光の量に応じて各ピクセルの利得(GAIN)値を示すファクター(factor)を除算することで補正を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一実施例に係るバッテリーによって駆動されるハンドヘルドまたはモバイルOCT機器に適合した小型分光計1を具現することができる。
【0028】
本発明を通じて、分光計1のサイズを小型化することで電力消耗を最小化し、センサーと光学系を単一パッケージで具現することで、分光領域OCTシステムのサイズとコストを低減することができる。
【0029】
これを通じて、これまで制限的であったOCTの普及率を極大化することができ、OCTを利用した診断が普遍化されることによって、医療保険の数価の拡大も期待できる。
【0030】
さらに、このようなハンドヘルドまたはモバイル形態のOCTシステムがpoint・of・care(POC)機器として位置づけて、病院への接近性が良くない地域でも、医者が患者を訪問して先端の診断器機を通じた医療恩恵を拡大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】従来の分光領域OCTシステムの概念図を示す図である。
【
図2】従来の分光計に使われているセンサーを示す図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る、小型OCT用分光計と以後の信号処理端の構成を示す図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る、センサー及び分光計の例示を示す図である。
【
図5】本発明の一実施例に係る、分光計光学
系に入射された光を処理する過程を示す動作フロー図である。
【
図6】本発明の一実施例に係る、センサーボード出力の線形性を確保する過程の例示を示すグラフである。
【
図7】本発明の一実施例に従い、一ピクセルを基準にして照射される光信号の形態を示す例示グラフである。
【
図8】本発明の一実施例に従い、一ピクセルを基準にして照射される光信号の形態を示す例示グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、添付した図面を参照しながら、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例を詳しく説明する。ところが、本発明は様々な異なる形態に具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されるものではない。そして、図面において、本発明を明確に説明するために、説明とは関係ない部分は省略しており、明細書全体に亘って類似した部分に対しては類似した図面符号を付けている。
【0033】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているという場合、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで「電気的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味し、1つ或いはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部分品、又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除するものではないと理解されなければならない。
【0034】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるための詳細な説明であり、本発明の権利範囲を制限するものではない。よって、本発明と同じ機能を行う同一範囲の発明も本発明の権利範囲に属するだろう。
【0035】
図3は、本発明の一実施例に係る、小型OCT用分光計1と、以後の信号処理端の構成を示す図である。
【0036】
図3に示すように、分光計1は、分光計光学
系モジュール110、センサーボード120、コネクター130を含み、これらはOCTのメインボード140及び電源装置150に連結され得る。
【0037】
分光計光学系モジュール110は、分光計1のレンズ及び鏡などで構成され、測定対象から戻ってきた光信号が波長別に広がれてセンサーに適切に到逹できるようにガイドする役割を行うようになる。
【0038】
本発明では、分光計1の小型化のために分光計光学
系モジュール110に使われる光部品のサイズを小型化するか、集積化を通じて分光計1の小型化を具現するようになったのであり、その一例を後述する
図4(b)に示す。
【0039】
センサーボード120は、分光計光学系モジュール110の一側に結合して分光計光学系モジュール110で受信される光信号を電気信号に変換するセンサーが含まれ、変換された信号を、コネクター130を通じて外部に伝達するようになる。
【0040】
また、センサーボード120は、分光計光学系モジュール110と共にパッケージングされ、センサーはセンサーボード120の表面から埋め立てられないか、突出されるように形成され(すなわち、センサーボードの表面で外部に露出されるように形成され)、この時、センサーの受光部は、パッケージングされた部品の内部に向けるように構成され、分光計光学系モジュール110から光を収集するようになる。
【0041】
この時、センサー自体は、別途のパッケージング工程を介さずに、センサーボード120上に装着された後、分光計光学系モジュール110と共にパッケージングされるため、これを通じて従来のセンサーにおいて、センサーの保護のために上端に備えられるカバーガラスが除去できるようになるのである。ところが、従来の技術のように、カバーガラスが存在するようになる場合、OCT映像生成時に、雑音の原因になり得る。
【0042】
また、センサーボード120は、センサーから受信するアナログ(analog)信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器(analog to digital converter;ADC)を更に含むことができる。
【0043】
アナログデジタル変換器がアナログ信号をデジタル信号に変換する時に、デジタル信号の出力最低値はセンサーのノイズフロア(noise floor)に該当する値よりは低くて、出力最高値はセンサーのFull well capacityに該当する電圧よりは高くなるように設定されるべきである。
【0044】
この時、Full well capacityは、センサー内の各ピクセルで光信号を受信し、既に設定された時間の間に発生させる電子の量が飽和状態に到逹する時の値を意味するようになる。
【0045】
より詳細に説明すると、一般的に入力される光信号の値が大きくなる時に出力されるアナログ信号がセンサーのFull well capacityよりも大きくなる場合、
図6の上端のグラフのように、飽和度(saturation)が高くなることによって入力される光信号に対する線形性が崩れるようになる。すなわち、入力光の強さの上昇によって出力される電圧が、
図6の下端のグラフのように持続的に線形性が維持されるように形成されることが好適であるが、一般的な場合、このように線形性が崩れる瞬間が発生されるので、Full well capacity値の高いセンサーを使って、入射光の強さと出力電気信号との間の線形性が維持される範囲内でアナログ、デジタル変換が行われることが望ましい。
【0046】
この時、センサーの感度が良くて、一定の光入力信号によって発生される電気信号の強さが大きいとしても、このfull well capacity値が低いと、取得された電気信号は正確な光信号を反映できなくなる。
【0047】
よって、本発明では、ノイズフロア(noise floor)に該当する入力電圧からFull well capacityに該当する入力電圧まで(すなわち、線形性が維持される電圧範囲内で)重点的にデジタル化できるように、アナログデジタル変換器の電圧設定範囲を合わせることにする。
【0048】
一方、センサーボード120に供給される電源は、別途の電源アダプダを必要とする駆動形態ではなく、充電用USBケーブルのように信号処理用ケーブルを用いて電源を確保することができるように具現され、分光計1を小型化することができる。
【0049】
この時、外部で様々な電圧の電源が印加されなくなる場合には、センサーボード120内に備えられた電圧変換部がコネクター130から信号処理用ケーブルを通じて受信した一つの電圧信号を、電源供給に必要な他の電圧に変換して、センサーとアナログデジタル変換器などに印加するようになる。
【0050】
なお、追加の実施例として、センサーボード120には雑音低減や電気衝撃の防止のための付加回路部も具現され得る。
【0051】
他の追加の実施例として、センサーボード120は単一ボードに具現されることができ、機能を分割して2個以上のボードに具現されることもできる。
【0052】
コネクター130は、センサーボード120に連結され、他の回路(メインボード140)から受信したコントロール信号及び電力信号に基づいてセンサーボード120に信号を供給するように構成される。また、センサーボード120から受信された信号をメインボード140に伝達し、前記メインボード140が含まれたOCT本体から電源を受信するようになる。
【0053】
メインボード140は、本発明の分光計1が連結されるOCT本体が含んでいる回路ボードを意味するようになる。OCT本体のメインボード140から生成されるコントロール信号と電源装置150から発源された電源を、コネクター130を通じて伝達し、それによって取得された分光計の信号を受信するようになる。
【0054】
よって、センサーボード120のアナログデジタル変換器から生成されたデジタル信号は、コネクター130を通じてメインボード140に伝達する。
【0055】
電源装置150は、メインボード140と連結され、OCT本体及び分光計1に電力を伝達する装置になり得る。この時、本発明では、携帯可能な小型OCTに備えられる分光計1を意味するところ、電源装置150は脱着式あるいは充電式バッテリーに具現され得る。
【0056】
本発明における分光計1は、ハンドヘルドまたはモバイル状況を勘案し、落下時にも耐えられるように、部品締結、パッケージング、及び衝撃吸収のための器具的な設計が裏付けられるべきである。
【0057】
図4は、本発明の一実施例に係る、センサー及び分光計光学
系モジュール110の例示を示す図である。
【0058】
図4に示すように、
図4(a)は、センサーの具現の例示であり、
図4(b)は、分光計光学
系モジュール110の例示である。
【0059】
図4(a)に示すように、センサーは単独でパッケージングする形態は排除し、人工雑音を低めるために、カバーウィンドウを装着しない形態に具現される。分光計1の小型パッケージング化が可能になるように、カバーウィンドウを除去したセンサーの表面がセンサーボード120から外部に突出されている。
【0060】
この時、センサーを構成する各ピクセルの幅は10μm以内に狭く製作され、分光計1の分光計光学系モジュール110と共に、単一パッケージに製作する時に、全体的なサイズを小さくすることができる。また、少量の電力を消耗して動作され得るように、低電力回路に構成されるべきである。
【0061】
図4(a)に示すように、センサーが含まれた電子基板は、センサーの検出領域が表面に突出されており、カバーウィンドウがなくて、
図4(b)に描写されたような分光計光学
系の左側末端に結合され、全体的な分光計1のサイズを小型化することができる。
【0062】
このように突出されたセンサーの表面は、
図4(b)に示すようなレンズと回折格子(grating)などの部品で構成された幾何光学
系にも使用可能であり、追加の小型化のために、光部品を半導体工程で行った平面上に導波管(waveguide)形態に具現する集積光学
系(integrated optics)にも適合である。
【0063】
また、OCTシステムの性能を評価する一つの指標として、光検出感度(optical detection sensitivity)または光動的範囲(optical dynamic range)がある。
【0064】
光検出感度は、完全な反射鏡がサンプル位置にあると仮定する場合、信号対雑音比(SNR:signal-to-noise ratio)を意味するようになる。雑音を構成する要素には、散弾雑音(shot noise)、熱雑音(thermal noise)、及び相対的強度雑音(relative intensity noise;RIN)がある。
【0065】
よって、散乱と吸収の多い生体組織においては、散弾雑音が格段に高い散弾雑音制限(shot-noise limited)の状況でシステムを駆動することができる。
【0066】
この時、センサーにおける光に対する露出時間が長いほど、光検出感度が大きくなるが、分光計の動作速度が遅くなるため、適切な妥協点を探るべきである。
【0067】
ところが、光検出感度は、光信号が生体組織の奥まで深く入って行ってから戻ってくるほど更に劣化される。この劣化される程度は、センサーの各ピクセル上に宿る各波長成分の焦点のサイズと各ピクセルの幅の比率と関連があるところ、本発明では、この焦点のサイズがピクセル幅よりは小さく設計することで、光検出感度の劣化を最小化する。
【0068】
一方、大部分の多重ピクセル形態のセンサーでは、半導体工程によって各ピクセルでの特性が一定ではないため、photo response nonuniformity(PRNU)とdark signal nonuniformity(DSNU)が存在する。前者は、入射された光量に応じて生成される電流の量が少しずつ異なるものであり、後者は、入力光がない時の値が少しずつ異なるものである。すなわち、PRNUは、各ピクセルの利得に関するファクターであり、DSNUは、各ピクセルのオフセット値に関するファクターである。
【0069】
本発明において、分光計1は、センサーの各ピクセルで測定する電気信号値に対する補正を行う補正モジュールを更に含んでおり、補正モジュールが各ピクセルの光電変換特性値が異なることによる電気信号値間の相違と、光入力がない時、各ピクセルのノイズフロア(noise floor)特性値の相違と、をそれぞれ減殺できるように補正するようになる。
【0070】
この時、補正モジュールは、各ピクセルで測定された電気信号値に、各ピクセルのオフセット(offset)値の間の相違を示すファクター(factor)を引算し、引算された値に入力光の量に応じて各ピクセルの利得(gain)値を示すファクター(factor)を除算することで補正を行うようになる。
【0071】
よって、測定された各ピクセルの値は、予め分析された各ピクセル別のPRNUとDSNU値を用いて補正されればこそ、正確な測定値を得ることができる。すなわち、以下のような数学式1の形態に補正された信号が得られる。
【0072】
【0073】
図5は、本発明の一実施例に係る、分光計光学
系モジュール110に入射された光を処理する過程を示す動作フロー図である。
【0074】
図5に示すように、先ず、分光計光学
系モジュール110を通じて入射光を獲得するようになる(S510)。
【0075】
段階(S510)を通じて獲得された入射光を、分光計光学系モジュール110に備えられているレンズを通じて平行光化(collimation)作業を行う(S520)。
【0076】
平行光化された分光信号を波長別に分離(S530)し、分離された分光信号を分光計光学系モジュール110に備えられているレンズを通じて集中化(focusing)を行うようになる(S540)。
【0077】
最後に、段階(S530)を通じて集中化を介した分光信号を、センサーボード120に備えられたセンサーで検出する段階を有するようになる(S550)。
【0078】
図6は、本発明の一実施例に係る、センサーボード120出力の線形性を確保する過程の例示を示すグラフである。
【0079】
図6に示す2つのグラフは、飽和度(saturation)と光信号に関するものであって、
図6(a)は、一般的な分光計の出力信号(電気信号値)を、
図6(b)は、理想的な分光計の出力信号(電気信号値)を意味するようになる。
【0080】
図6(a)に示すように、特定ピクセルに入射される入力光信号が線形的に増加するとしても、該ピクセルでの出力値(電気信号値)は、
図6(a)に示すように、非線形的に増加することがある。このような場合、出力値をそのまま使えば、不明確な分光計の出力結果が得られるようになる。
【0081】
よって、既に設定されたアルゴリズムを通じて、非線形的な出力値を線形的な値に補正するようになる場合、
図6(b)のような線形的な出力値が得られることになって、正確な分光計の出力結果が得られるようになる。
【0082】
この時、既に設定されたアルゴリズムとは、一例として、入力光信号対比出力値が線形的な領域でのカーブを外挿、非線形領域での理想的な線形出力値を導出して、特定入力光信号の強さで実際に測定される非線形的な出力値に対する理想的な線形的な出力値のルックアップテーブルを既に格納した後、実際に分光計を作動させて非線形的な出力値を受信すれば、既に格納された該線形的な出力値をルックアップテーブルから呼び出して、代わりに出力するようになる。他例として、非線形的な状態を含む関数をフィッティング(fitting)などの技法で導出した後、線形的な状態に変形させる関数を計算して適用することもできる。
【0083】
このような補償の場合、既存のPRNU及びDSNUにも追加されることができるため、分光計を通じて得られる結果値の正確度を高めることができるようになる。
【0084】
また、従来の分光計で作用可能なクロストーク現象に対する補償アルゴリズムも含まれ得る。これは、分光計の内部に装着されるセンサーが一般的に1次元形態に配列されるところ、一ピクセルのみで感知されるべきの光信号が、センサーの理想的ではない動作特性によって、隣接したピクセルにも漏れてしまい、信号が測定されるようになるのである。よって、ある一ピクセルのみに光信号を入力する状況で、隣接した様々なピクセル(端側1~3個程度)での電気信号値を測定した後、これをすべてのピクセルに対して拡張すると、理想的な状態で一ピクセルのみで測定されるべきの電気信号値が、実際にはどのように測定されるかに該当する行列数式を算出するようになる。この時、算出された行列数式に対する逆行列計算を通じて、ピクセルで測定される電気信号値を理想的な電気信号値に対応するように補正を行うようになるのである。
【0085】
図7~
図8は、本発明の一実施例に従い、一ピクセルを基準にして照射される光信号の形態を示す例示グラフである。
【0086】
図7に示すように、理想的な状況では、光信号に対する
クロストークがない場合、図面に示すように、一ピクセルのみで信号が測定されるようになる。
【0087】
しかし、実際には、光信号が電子を発生させる位置から各ピクセルの電極の位置が、ある程離隔されている要因などによって、
図8に示すように、基準になるピクセル以外にも光信号の測定される問題点が発生され得る。
【0088】
よって、本発明では、後述するアルゴリズムを通じて、このようなクロストークを適切に補償させることで、正確な分光を測定することができるようになる。
【0089】
このようなクロストーク補正に使われるアルゴリズムを説明するために、隣接した3個のピクセルからクロストークが発生するとともに、すべてのピクセルが同じクロストーク現象を有すると仮定すると、分光計は、以下のような数式を通じて、クロストークに対する補正を行うようになる。
【0090】
y[1]=a0x[1]+a1x[2]+a2x[3]+a3x[4]
y[2]=a1x[1]+a0x[2]+a1x[3]+a2x[4]+a3x[5]
y[3]=a2x[1]+a1x[2]+a0x[3]+a1x[4]+a2x[5]+a3x[6]
y[4]=a3x[1]+a2x[2]+a1x[3]+a0x[4]+a1x[5]+a2x[6]+a3x[7]…
y[n]=a3x[n-3]+a2x[n-2]+a1x[n-1]+a0x[n]+a1x[n+1]+a2x[n+2]+a3x[n+3]…
y[N-3]=a3x[N-6]+a2x[N-5]+a1x[N-4]+a0x[N-3]+a1x[N-2]+a2x[N-1]+a3x[N]
y[N-2]=a3x[N-5]+a2x[N-4]+a1x[N-3]+a0x[N-2]+a1x[N-1]+a2x[N]
y[N-1]=a3x[N-4]+a2x[N-3]+a1x[N-2]+a0x[N-1]+a1x[N]
y[N]=a3x[N-3]+a2x[N-2]+a1x[N-1]+a0x[N]
【0091】
x[n]:n番目のピクセルに測定されるべきの元の値
y[n]:n番目ピクセルで実際に測定された値
a0:一ピクセルで元々測定されるべきの値対比該ピクセルで実際に測定された値の比率
a1:一ピクセルで元々測定されるべきの値対比、1番目に隣接したピクセルで実際に測定された値の比率
a2:一ピクセルで元々測定されるべきの値対比、2番目に隣接したピクセルで実際に測定された値の比率
a3:一ピクセルで元々測定されるべきの値対比、3番目に隣接したピクセルで実際に測定された値の比率
N:ピクセルの個数
【0092】
この時、上記の数式を行列で整理すれば、以下のような行列数式が算出され得る。
Y=[y[1]y[2]…y[N]]′
X=[x[1]x[2]…x[N]]′
【0093】
最終的に、上記の行列数式を通じて、「Y=AX」という数式が算出され、実際に測定されるべきの値に対してクロストークを補正するために、以下の公式が使われ得る。
「X=A-1Y」
【0094】
この時、例示として挙げた上記の行列数式に使われた因子が7個に構成され得るが、これを単純にする場合、3個または5個が使われることができ、高度化される場合、9個以上の因子が使われることができる。また、クロストークがピクセル毎に異なる場合には、さらに多い因子になることもできる。すなわち、予めセンサーの測定を通じて因子を確定した後、因子を格納媒体に格納して行列数式を構成し、逆行列もリアルタイムで計算することで、クロストークに対する補正を行うことができるようになる。
【0095】
また、選択的な実施例で、クロストークを補正するための数式を簡素化することができる。これは、複雑な数式は分光計の演算速度の低下を誘発する可能性があるため、予め行列数式に対応する逆行列のうち、意味を有する因子を予め格納し、これを通じて数式を、加算及び乗算のみが使われる簡素化した数式が適用され得るようにする。
【0096】
上述した本願の説明は例示のためのものであり、本願の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本願の技術的思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解できるはずである。それゆえ、前記した実施例は全ての面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して実施されても良く、同様に、分散したものと説明されている構成要素も結合された形態で実施されても良い。
【0097】
本願の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態が本願の範囲に含まれると解釈されなければならない。