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特許7122801作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/85 20060101AFI20220815BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
E02F3/85 D
E02F9/20 N
E02F9/20 Q
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2016154816
(22)【出願日】2016-08-05
(65)【公開番号】P2018021426
(43)【公開日】2018-02-08
【審査請求日】2019-07-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石橋 永至
(72)【発明者】
【氏名】稲丸 昭文
(72)【発明者】
【氏名】古川 洋介
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】有家 秀郎
【審判官】奈良田 新一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/69042(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/76223(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/12404(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/40397(US,A1)
【文献】米国特許第5924493(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F9/20-9/22
E02F3/42-3/43
E02F3/84-3/85
G05D1/00-1/12
G05D3/00-3/20
G08G1/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を有する作業車両の制御システムであって、
作業対象の現況地形を示す現況地形情報を記憶する記憶装置と、
前記記憶装置と通信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
掘削開始位置から作業車両の進行方向に延びる第1設計面と、前記第1設計面からさらに進行方向に延びる第2設計面とを含む仮想設計面を算出し、
前記仮想設計面に沿って前記作業機を移動させる指令信号を生成し、
掘削を開始する最初の設計面であり前記掘削開始位置の直ぐ前方に位置する前記第1設計面が前記現況地形よりも上方に位置するときには、前記現況地形に沿う、又は、前記現況地形よりも下方に位置するように前記第1設計面の位置を変更する、
作業車両の制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記仮想設計面と前記現況地形との間の土量が所定の目標土量となるように、前記第2設計面の傾斜角を決定する、
請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記仮想設計面が、前記現況地形よりも下方に位置する掘削部分と、前記現況地形よりも上方に位置する盛土部分とを含む場合、前記掘削部分と前記現況地形との間の土量を加算し、前記盛土部分と前記現況地形との間の土量を減算することで、前記仮想設計面と前記現況地形との間の土量を算出し、
前記仮想設計面と前記現況地形との間の土量が所定の目標土量となるように、前記第2設計面の傾斜角を決定する、
請求項2に記載の作業車両の制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記作業車両の外部に配置される第1コントローラと、
前記第1コントローラと通信し、前記作業車両の内部に配置される第2コントローラと、
を有し、
前記第1コントローラは、前記記憶装置と通信し、
前記第2コントローラは、前記作業機を移動させる前記指令信号を生成する、
請求項1から3のいずれかに記載の作業車両の制御システム。
【請求項5】
作業機を有する作業車両を制御するためにコンピュータに実装される方法であって、
作業対象の現況地形を示す現況地形情報を取得するステップと、
掘削開始位置から前記作業車両の進行方向に延びる第1設計面と、前記第1設計面からさらに進行方向に延びる第2設計面とを含む仮想設計面を算出するステップと、
前記仮想設計面に沿って前記作業機を移動させる指令信号を生成するステップと、
を備え、
掘削を開始する最初の設計面であり前記掘削開始位置の直ぐ前方に位置する前記第1設計面が前記現況地形よりも上方に位置するときには、前記現況地形に沿う、又は、前記現況地形よりも下方に位置するように前記第1設計面の位置が変更される、
作業車両の制御方法。
【請求項6】
前記仮想設計面と前記現況地形との間の土量が所定の目標土量となるように、前記第2設計面の傾斜角が決定される
請求項5に記載の作業車両の制御方法。
【請求項7】
前記仮想設計面が、前記現況地形よりも下方に位置する掘削部分と、前記現況地形よりも上方に位置する盛土部分とを含む場合、前記掘削部分と前記現況地形との間の土量を加算し、前記盛土部分と前記現況地形との間の土量を減算することで、前記仮想設計面と前記現況地形との間の土量を算出するステップをさらに備え、
前記仮想設計面と前記現況地形との間の土量が所定の目標土量となるように、前記第2設計面の傾斜角が決定される、
請求項6に記載の作業車両の制御方法。
【請求項8】
作業機と、
前記作業機を制御するようにプログラムされたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
作業対象の現況地形を示す現況地形情報を取得し、
掘削開始位置から作業車両の進行方向に延びる第1設計面と、前記第1設計面からさらに進行方向に延びる第2設計面とを含む仮想設計面を算出し、
前記仮想設計面に沿って前記作業機を移動させる指令信号を生成し、
掘削を開始する最初の設計面であり前記掘削開始位置の直ぐ前方に位置する前記第1設計面が前記現況地形よりも上方に位置するときには、前記現況地形に沿う、又は、前記現況地形よりも下方に位置するように前記第1設計面の位置を変更する、
作業車両。
【請求項9】
前記コントローラは、前記仮想設計面と前記現況地形との間の土量が所定の目標土量となるように、前記第2設計面の傾斜角を決定する、
請求項8に記載の作業車両。
【請求項10】
前記コントローラは、
前記仮想設計面が、前記現況地形よりも下方に位置する掘削部分と、前記現況地形よりも上方に位置する盛土部分とを含む場合、前記掘削部分と前記現況地形との間の土量を加算し、前記盛土部分と前記現況地形との間の土量を減算することで、前記仮想設計面と前記現況地形との間の土量を算出し、
前記仮想設計面と前記現況地形との間の土量が所定の目標土量となるように、前記第2設計面の傾斜角を決定する、
請求項9に記載の作業車両。
【請求項11】
前記仮想設計面は、前記第1設計面と前記第2設計面とを含む複数の設計面を含み、
前記コントローラは、前記複数の設計面のうち、掘削を開始する最初の設計面である前記第1設計面を除く他の設計面が、前記現況地形よりも上方に位置するときには、前記現況地形よりも上方に位置する前記他の設計面の位置を変更しない、
請求項1に記載の作業車両の制御システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルドーザ、或いはグレーダ等の作業車両において、作業機の位置を自動的に調整する制御が提案されている。例えば、特許文献1では、掘削制御と整地制御とが開示されている。
【0003】
掘削制御では、ブレードに係る負荷を目標負荷に一致させるように、ブレードの位置が自動調整される。整地制御では、掘削対象の目標形状を示す設計地形に沿ってブレードの刃先が移動するように、ブレードの位置が自動調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5247939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の制御によれば、作業機への負荷が過剰に大きくなったときに作業機を上昇させることにより、シュースリップの発生を抑えることができる。これにより、効率良く作業を行うことができる。
【0006】
しかし、従来の制御では、図18に示すように、現況地形300の掘削開始後、作業機100への負荷が大きくなると、負荷制御によって作業機100を上昇させる(図18の作業機100の軌跡200参照)。そして、掘削を再開した後、作業機100への負荷が大きくなると、再び作業機100を上昇させる。このような動作が繰り返されると、凹凸の大きな地形が形成されることになるため、スムーズに掘削作業を行うことは困難である。また、掘削される地形が荒れ易くなり、仕上がりの品質が低下することが懸念される。
【0007】
本発明の課題は、効率良く、且つ、仕上がりの品質の良い掘削作業を行うことができる作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の局面に係る制御システムは、作業機を有する作業車両の制御システムであって、記憶装置と、コントローラとを備える。記憶装置は、作業対象の現況地形を示す現況地形情報を記憶する。コントローラは、記憶装置と通信する。
【0009】
コントローラは、掘削開始位置から作業車両の進行方向に延びる第1設計面と、第1設計面からさらに進行方向に延びる第2設計面とを含む仮想設計面を算出する。コントローラは、仮想設計面に沿って作業機を移動させる指令信号を生成する。コントローラは、第1設計面が現況地形よりも上方に位置するときには、現況地形に沿う、又は、現況地形よりも下方に位置するように第1設計面の位置を変更する。
【0010】
第2の局面に係る作業車両の制御方法は、作業機を有する作業車両を制御するためにコンピュータに実装される方法であって、以下のステップを備える。第1ステップでは、作業対象の現況地形を示す現況地形情報を取得する。第2ステップでは、掘削開始位置から作業車両の進行方向に延びる第1設計面と、第1設計面からさらに進行方向に延びる第2設計面とを含む仮想設計面を算出する。第3ステップでは、仮想設計面に沿って作業機を移動させる指令信号を生成する。第1設計面が現況地形よりも上方に位置するときには、現況地形に沿う、又は、現況地形よりも下方に位置するように第1設計面の位置が変更される。
【0011】
第3の局面に係る作業車両は、作業機と、コントローラとを備える。コントローラは、作業機を制御するようにプログラムされている。コントローラは、作業対象の現況地形を示す現況地形情報を取得する。コントローラは、掘削開始位置から作業車両の進行方向に延びる第1設計面と、第1設計面からさらに進行方向に延びる第2設計面とを含む仮想設計面を算出する。コントローラは、仮想設計面に沿って作業機を移動させる指令信号を生成する。コントローラは、第1設計面が現況地形よりも上方に位置するときには、現況地形に沿う、又は、現況地形よりも下方に位置するように第1設計面の位置を変更する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、現況地形に基づいて決定される仮想設計面に沿って掘削が行われる。そのため、大きな凹凸を生成させることなく、スムーズに掘削を行うことができる。また、掘削開始位置では作業機に保有されている土量は0、或いは非常に少ない値である。従って、掘削開始位置の直ぐ前方の現況地形に凹みがあっても埋めることはできない。そのため、上記のように第1設計面が変更されることで、作業機の空振りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る作業車両を示す側面図である。
図2】作業車両の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図3】作業車両の構成を示す模式図である。
図4】掘削作業における作業機の自動制御の処理を示すフローチャートである。
図5】最終設計地形、現況地形、及び仮想設計面の一例を示す図である。
図6】作業機の自動制御の処理を示すフローチャートである。
図7】最終設計地形、現況地形、及び仮想設計面の一例を示す図である。
図8】最終設計地形、現況地形、及び仮想設計面の一例を示す図である。
図9】仮想設計面の傾斜角の一例を示す図である。
図10】最終設計地形、現況地形、及び仮想設計面の一例を示す図である。
図11】最終設計地形、現況地形、及び仮想設計面の一例を示す図である。
図12】最終設計地形、現況地形、及び仮想設計面の一例を示す図である。
図13】作業機の自動制御の処理を示すフローチャートである。
図14】最終設計地形、現況地形、及び仮想設計面の一例を示す図である。
図15】最終設計地形、現況地形、及び仮想設計面の一例を示す図である。
図16】変形例に係る制御システムの構成を示すブロック図である。
図17】他の変形例に係る制御システムの構成を示すブロック図である。
図18】従来技術による掘削を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係る作業車両について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る作業車両1を示す側面図である。本実施形態に係る作業車両1は、ブルドーザである。作業車両1は、車体11と、走行装置12と、作業機13と、を備えている。
【0015】
車体11は、運転室14とエンジン室15とを有する。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右一対の履帯16を有している。なお、図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業車両1が走行する。
【0016】
作業機13は、車体11に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19と、アングルシリンダ20と、チルトシリンダ21とを有する。
【0017】
リフトフレーム17は、車幅方向に延びる軸線Xを中心として上下に動作可能に車体11に取り付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に移動する。
【0018】
リフトシリンダ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、軸線Xを中心として上下に回転する。
【0019】
アングルシリンダ20は、リフトフレーム17とブレード18とに連結される。アングルシリンダ20が伸縮することによって、ブレード18は、略上下方向に延びる軸線Yを中心として回転する。
【0020】
チルトシリンダ21は、リフトフレーム17とブレード18とに連結される。チルトシリンダ21が伸縮することによって、ブレード18は、略車両前後方向に延びる軸線Zを中心として回転する。
【0021】
図2は、作業車両1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。図2に示すように、駆動系2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。
【0022】
油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトシリンダ19と、アングルシリンダ20と、チルトシリンダ21とに供給される。なお、図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0023】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0024】
制御システム3は、操作装置25と、コントローラ26と、制御弁27とを備える。操作装置25は、作業機13及び走行装置12を操作するための装置である。操作装置25は、運転室14に配置されている。操作装置25は、例えば、操作レバー、ペダル、スイッチ等を含む。
【0025】
操作装置25は、走行装置12用の操作装置251と、作業機13用の操作装置252とを含む。走行装置12用の操作装置251は、前進位置と後進位置と中立位置とに操作可能に設けられる。走行装置12用の操作装置251の操作位置が前進位置であるときには、作業車両1が前進するように、走行装置12、或いは動力伝達装置24が制御される。走行装置12用の操作装置251の操作位置が後進位置であるときには、作業車両1が後進するように、走行装置12、或いは動力伝達装置24が制御される。
【0026】
作業機13用の操作装置252は、リフトシリンダ19と、アングルシリンダ20と、チルトシリンダ21の動作を操作可能に設けられる。作業機13用の操作装置252が操作されることにより、ブレード18のリフト操作、アングル操作、及びチルト操作を行うことができる。
【0027】
操作装置25は、オペレータによる操作装置25の操作を検出するセンサ25a,25bを含む。操作装置25は、作業機13及び走行装置12を駆動するためのオペレータによる操作を受け付け、センサ25a,25bは操作に応じた操作信号を出力する。センサ25aは、走行装置12用の操作装置251の操作に応じた操作信号を出力する。センサ25bは、作業機13用の操作装置252の操作に応じた操作信号を出力する。
【0028】
コントローラ26は、取得した情報に基づいて作業車両1を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、例えばCPU等の処理装置を含む。コントローラ26は、操作装置25のセンサ25a,25bから操作信号を取得する。コントローラ26は、操作信号に基づいて、制御弁27を制御する。なお、コントローラ26は、一体に限らず、複数のコントローラに分かれていてもよい。
【0029】
制御弁27は、比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、リフトシリンダ19、アングルシリンダ20、チルトシリンダ21などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19と、アングルシリンダ20と、チルトシリンダ21とに供給される作動油の流量を制御する。コントローラ26は、上述した操作装置252の操作に応じて作業機13が動作するように、制御弁27への指令信号を生成する。これにより、リフトシリンダ19と、アングルシリンダ20と、チルトシリンダ21とが、操作装置252の操作量に応じて、制御される。なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁27は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0030】
制御システム3は、リフトシリンダセンサ29を備える。リフトシリンダセンサ29は、リフトシリンダ19のストローク長さ(以下、「リフトシリンダ長L」という。)を検出する。図3に示すように、コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいてブレード18のリフト角θliftを算出する。図3は、作業車両1の構成を示す模式図である。
【0031】
図3では、作業機13の原点位置が二点鎖線で示されている。作業機13の原点位置は、水平な地面上でブレード18の刃先が地面に接触した状態でのブレード18の位置である。リフト角θliftは、作業機13の原点位置からの角度である。
【0032】
図2に示すように、制御システム3は、位置検出装置31を備えている。位置検出装置31は、作業車両1の位置を検出する。位置検出装置31は、GNSSレシーバ32と、IMU 33と、を備える。GNSSレシーバ32は、運転室14上に配置される。GNSSレシーバ32は、例えばGPS(Global Positioning System)用のアンテナである。GNSSレシーバ32は、作業車両1の位置を示す車体位置情報を受信する。コントローラ26は、GNSSレシーバ32から車体位置情報を取得する。
【0033】
IMU 33は、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)である。IMU 33は、車体傾斜角情報を取得する。車体傾斜角情報は、車両前後方向の水平に対する角度(ピッチ角)、および車両横方向の水平に対する角度(ロール角)を示す。IMU 33は、車体傾斜角情報をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、IMU 33から車体傾斜角情報を取得する。
【0034】
コントローラ26は、リフトシリンダ長Lと、車体位置情報と、車体傾斜角情報とから、刃先位置P0を演算する。図3に示すように、コントローラ26は、車体位置情報に基づいて、GNSSレシーバ32のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいて、リフト角θliftを算出する。コントローラ26は、リフト角θliftと車体寸法情報に基づいて、GNSSレシーバ32に対する刃先位置P0のローカル座標を算出する。車体寸法情報は、記憶装置28に記憶されており、GNSSレシーバ32に対する作業機13の位置を示す。コントローラ26は、GNSSレシーバ32のグローバル座標と刃先位置P0のローカル座標と車体傾斜角情報とに基づいて、刃先位置P0のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、刃先位置P0のグローバル座標を刃先位置情報として取得する。
【0035】
制御システム3は、記憶装置28を備えている。記憶装置28は、例えばメモリーと補助記憶装置とを含む。記憶装置28は、例えば、RAM、或いはROMなどであってもよい。記憶装置28は、半導体記憶装置、或いはハードディスクなどであってもよい。コントローラ26は、記憶装置28と有線、或いは無線により通信を行うことで、記憶装置28に記憶された情報を取得する。
【0036】
記憶装置28は、刃先位置情報と現況地形情報と設計地形情報とを記憶する。設計地形情報は、最終設計地形の位置および形状を示す。最終設計地形は、作業現場における作業対象の目標地形である。コントローラ26は、現況地形情報を取得する。現況地形情報は、作業現場における作業対象の現況地形の位置および形状を示す。コントローラ26は、現況地形情報と、設計地形情報と、刃先位置情報とに基づいて、作業機13を自動的に制御する。
【0037】
なお、作業機13の自動制御は、オペレータによる手動操作と合わせて行われる半自動制御であってもよい。或いは、作業機13の自動制御は、オペレータによる手動操作無しで行われる完全自動制御であってもよい。
【0038】
以下、コントローラ26によって実行される、掘削作業における作業機13の自動制御について説明する。図4は、掘削作業における作業機13の自動制御の処理を示すフローチャートである。
【0039】
図4に示すように、ステップS101では、コントローラ26は、現在位置情報を取得する。ここでは、コントローラ26は、上述したように、作業機13の現在の刃先位置P0を取得する。
【0040】
ステップS102では、コントローラ26は、設計地形情報を取得する。図5に示すように、設計地形情報は、作業車両1の進行方向において、所定間隔ごとの複数地点(図5の“-d5”-“d7”参照)での最終設計地形60の高さを含む。従って、最終設計地形60は、複数地点において分割された複数の最終設計面60_1, 60_2, 60_3として把握される。
【0041】
なお、図面においては、一部の最終設計面のみに符号が付されており、他の最終設計面の符号は省略されている。図5では、最終設計地形60は、水平方向に平行な平坦な形状であるが、これと異なる形状であってもよい。
【0042】
ステップS103では、コントローラ26は、現況地形情報を取得する。図5に示すように、現況地形情報は、作業車両1の進行方向に位置する現況地形50の断面を示す。
【0043】
なお、図5において、縦軸は、地形の高さと、後述する推定保有土量とを示している。横軸は、作業車両1の進行方向における基準位置d0からの距離を示している。基準位置は、作業車両1の現在の刃先位置P0であってもよい。詳細には、現況地形情報は、作業車両1の進行方向における複数地点での現況地形50の高さを含む。複数地点は、所定間隔、例えば1mごとに並んでいる(図5の“-d5”-“d7”参照)。
【0044】
従って、現況地形50は、複数地点において分割された複数の現況面50_-1, 50_1, 50_2, 50_3として把握される。なお、図面においては、一部の現況面のみに符号が付されており、他の現況面の符号は省略されている。
【0045】
コントローラ26は、刃先位置P0の最新の軌跡を示す位置情報を、現況地形情報として取得する。従って、位置検出装置31は、現況地形情報を取得する現況地形取得装置として機能する。刃先位置P0が移動することにより、コントローラ26は、現況地形情報を最新の現況地形に更新して、記憶装置28に保存する。
【0046】
或いは、コントローラ26は、車体位置情報と車体寸法情報とから履帯16の底面の位置を算出し、履帯16の底面の軌跡を示す位置情報を現況地形情報として取得してもよい。或いは、現況地形情報は、作業車両1の外部の測量装置によって計測された測量データから生成されてもよい。或いは、カメラによって現況地形50を撮影し、カメラによって得られた画像データから現況地形情報が生成されてもよい。
【0047】
ステップS104では、コントローラ26は、目標土量Stを取得する。目標土量Stは、例えばブレード18の容量に基づいて決定された固定値であってもよい。或いは、目標土量Stは、オペレータの操作によって任意に設定されてもよい。
【0048】
ステップS105では、コントローラ26は、掘削開始位置Psを取得する。ここでは、コントローラ26は、操作装置25からの操作信号に基づいて、掘削開始位置Psを取得する。例えば、コントローラ26は、ブレード18を下げる操作を示す信号を操作装置252から受信した時点での刃先位置P0を掘削開始位置Psとして決定してもよい。或いは、掘削開始位置Psは、予め記憶装置28に保存されていて、記憶装置28から取得されてもよい。
【0049】
ステップS106では、仮想設計面70を決定する。コントローラ26は、例えば図5に示すような仮想設計面70を決定する。仮想設計面70は、現況地形50と同様に、複数地点において分割された複数の設計面(分割単位面)70_1, 70_2, 70_3として把握される。なお、図面においては、一部の現況面のみに符号が付されており、他の現況面の符号は省略されている。仮想設計面70の詳細な決定方法については後述する。
【0050】
ステップS107では、仮想設計面70に沿って作業機13を制御する。ここでは、コントローラ26は、ステップS106で作成した仮想設計面70に沿って作業機13の刃先位置P0が移動するように、作業機13への指令信号を生成する。生成された指令信号は、制御弁27に入力される。それにより、作業機13の刃先位置P0が仮想設計面70に沿って移動することで、現況地形50の掘削作業が行われる。
【0051】
次に、仮想設計面70の決定方法について説明する。図6は、コントローラ26によって実行される仮想設計面70を決定するための処理を示すフローチャートである。
【0052】
図6に示すように、ステップS201では、作業機13の推定保有土量Sを算出する。推定保有土量Sは、図5に示すように、仮想設計面70に沿って作業機13の刃先位置P0を移動させたときに、作業機13によって保有される土量の推定値である。コントローラ26は、仮想設計面70と現況地形50との間の土量を推定保有土量Sとして算出する。なお、図5において二点鎖線は、推定保有土量Sの変化を示している。
【0053】
仮想設計面70は、最終設計地形60よりも上方に位置しており、少なくとも一部は、現況地形50よりも下方に位置している。仮想設計面70は、掘削開始位置Psから直線的に延びている。
【0054】
仮想設計面70と現況地形50との間の土量は、図5に示すように、仮想設計面70と現況地形50との間の断面積(図5のハッチングを付した部分の面積)に相当するものとして算出される。その際、本実施形態では、作業車両1の幅方向における現況地形50の大きさは考慮しないものとする。ただし、作業車両1の幅方向における現況地形50の大きさを考慮して、土量が算出されてもよい。
【0055】
なお、図7に示すように、現況地形50が凹みを含むときには、仮想設計面70が、現況地形50よりも下方に位置する部分(以下、「掘削部分」と呼ぶ)70a, 70cと、現況地形50よりも上方に位置する部分(以下、「盛土部分」と呼ぶ)70bと、を含む場合がある。この場合、コントローラ26は、掘削部分70a, 70cと現況地形50との間の土量を加算し、盛土部分70bと現況地形50との間の土量を減算することで、仮想設計面70と現況地形50との間の土量の総和を推定保有土量Sとして算出する。
【0056】
例えば、図7では、掘削部分70aと現況地形50との間の土量S1と、掘削部分70cと現況地形50との間の土量S3とが推定保有土量Sに加算され、盛土部分70bと現況地形50との間の土量S2が推定保有土量Sから減算される。従って、コントローラ26は、S=S1+(-S2)+S3によって、推定保有土量Sを算出する。
【0057】
ステップS202では、仮想設計面70の傾斜角αを算出する。ここでは、コントローラ26は、ステップS201で算出した推定保有土量Sが、ステップS104で取得した目標土量Stとなるように、傾斜角αを決定する。
【0058】
例えば、図5に示すように、距離がd0の地点(以下、「地点d0」と示す)が掘削開始位置Psである場合、掘削開始位置Psから延びる仮想設計面70と現況地形50との間の土量の総和(図5においてハッチングを付した部分)が目標土量Stと一致する傾斜角αをコントローラ26は算出する。これにより、掘削開始位置Psから、目標土量Stを達成する地点d3まで直線状に延びる仮想設計面70が決定される。目標土量Stが達成される地点d3以降については、現況地形50に沿うように仮想設計面70が決定される。
【0059】
なお、本実施形態では、土量の算出を容易にするため、目標土量Stが達成される地点と、現況地形50に沿うように仮想設計面70が決定される地点との間の土量は、推定保有土量Sの算出に考慮しないものとする。例えば、図7では、地点d2において推定保有土量Sが目標土量Stと一致する。コントローラ26は、地点d2の次の地点d3において、現況地形50の高さと一致するように、仮想設計面70の高さを決定する。従って、目標土量Stが達成される地点d2と、現況地形50に沿うように仮想設計面70が決定される地点d3との間の土量は、推定保有土量Sに含まれない。ただし、この部分の土量を考慮して、推定保有土量Sが算出されてもよい。
【0060】
コントローラ26は、最終設計地形60を下回らないように、仮想設計面70を決定する。従って、図8に示すように、仮想設計面70と最終設計地形60と現況地形50との間の推定保有土量Sが目標土量Stと一致するように、傾斜角αが決定される。そのため、図8に示すように、地点d2において掘削が開始されたときには、地点d4において最終設計地形60に到達し、地点d4以降は最終設計地形60に沿うように、コントローラ26は、仮想設計面70を決定する。
【0061】
ステップS203では、傾斜角αが下り勾配を示す角度であるかを決定する。ここでは、コントローラ26は、ステップS202で算出した傾斜角αが、作業車両の進行方向において、水平方向よりも下方を向く角度である場合に、傾斜角αが下り勾配を示す角度であると決定する。現況地形50が、上り勾配と、上り勾配よりも前方に位置する下り勾配とを含むときには、図9(A)に示すように傾斜角αが上り勾配を示す角度となる場合と、図9(B)に示すように傾斜角αが下り勾配を示す角度となる場合とがあり得る。
【0062】
ステップS203において、傾斜角αが下り勾配を示す角度であると決定されたときには、処理はステップS204に進む。ステップS204では、掘削開始位置Psの後方の現況面が上り勾配であるか否かを決定する。ここでは、コントローラ26は、作業車両1の進行方向において、掘削開始位置Psの直ぐ後方に位置する現況面(例えば図5の現況面50_-1参照)が水平方向よりも上方を向いており、且つ、水平方向に対する角度が、所定の角度閾値以上である場合に、掘削開始位置Psの後方の現況面が上り勾配であると決定する。図5の現況面50_-1のような小さな起伏を無視するために、角度閾値は、例えば1度から6度の小さな値であってもよい。或いは、角度閾値は0であってもよい。
【0063】
ステップS204において、掘削開始位置Psの後方の現況面が上り勾配ではないと決定されたときには、処理はステップS205に進む。従って、掘削開始位置Psの後方の現況面が下り勾配、又は水平であるときには、処理はステップS205に進む。ステップS205では、傾斜角αの仮想設計面70が作業機13を制御するための仮想設計面70として決定される。例えば、図5に示すように、コントローラ26は、掘削開始位置Psから傾斜角αで傾斜した方向に延びる仮想設計面70を決定する。
【0064】
ステップS206では、仮想設計面70において最初の設計面(仮想設計面70を複数に分割した最初の設計面)が現況地形50よりも上方に位置するか否かを判定する。最初の設計面は、掘削開始位置Psの直ぐ前方の設計面(第1設計面)である。例えば、図10に示すように、掘削開始位置Psの直ぐ前方の設計面70_-2が現況地形50よりも上方に位置する場合には、最初の設計面70_-2が現況地形50よりも上方に位置すると決定され、処理はステップS207に進む。
【0065】
ステップS207では、最初の設計面を変更する。ここでは、コントローラ26は、掘削開始位置Psの次の設計面の位置を、現況地形50よりも所定距離、下方の位置に変更する。所定距離は、例えば、0cmから10cmまでの小さな値であってもよい。これにより、図11に示すように、最初の設計面70_-2が現況地形50よりも下方に位置するように変更される。所定距離が0cmである場合には、最初の設計面70_-2が現況地形50に沿うように変更される。
【0066】
また、ステップS208において、仮想設計面70の傾斜角αを再算出する。ここでは、図11に示すように、最初の設計面70_-2よりもさらに前方に位置する仮想設計面70(第2設計面)の傾斜角αを再算出する。コントローラ26は、掘削開始位置Psの次の地点(例えば図11の地点-d2)を、仮掘削開始位置Ps’として算出された推定保有土量Sが目標土量Stと一致するように、傾斜角αを再算出する。そして、上述したステップS107において、再算出された傾斜角αの仮想設計面70に沿って移動するように作業機13が制御される。
【0067】
通常、掘削開始位置Psでは作業機13に保有されている土量は0、或いは非常に少ない値である。従って、図10に示すように、掘削開始位置Psの直ぐ前方の現況地形50に凹みがあっても埋めることはできない。そのため、上記のように最初の設計地形70_-2を変更することで、作業機13の空振りを防止することができる。
【0068】
一方、ステップS206において、仮想設計面70において最初の設計面が現況地形50より上方に位置しないと決定されたときには、最初の設計地形の変更は行われない。従って、例えば、図7に示すように、仮想設計面70の途中において現況地形50に凹みがある場合には、その凹みの上方を通るように作業機13が制御される。この場合、作業機13は、掘削開始位置Psから凹みに到達するまでに掘削した土を保有している。そのため、作業機13が、凹みの上方を通る仮想設計面70に沿って移動することで、凹みを埋めることができる。
【0069】
上述の図9(A)で示したように、現況地形50が、上り勾配と、上り勾配よりも前方に位置する下り勾配とを含むときには、ステップS202で算出した傾斜角αが水平又は上り勾配を示す角度となる場合がある。その場合、処理はステップS203からステップS209に進む。
【0070】
ステップS209では、足場面701を含む仮想設計面70を決定する。図12に示すように、足場面701は、現況地形50の下方に位置しており、水平方向に延びている。コントローラ26は、掘削開始位置Psの次の地点(図12の地点-d1参照)から水平方向に延びる足場面701と、掘削開始位置Psと足場面701とをつなぐ最初の設計面(図12の設計面70_-1参照)とを含む仮想設計面70を決定する。
【0071】
なお、足場面701は、水平方向と完全に平行でなくてもよい。足場面701は、水平方向に対して小さな角度をなす方向に延びていてもよい。例えば、足場面701は、掘削開始位置Psの上り勾配よりも傾斜の緩やかな角度で傾斜していてもよい。
【0072】
ステップS210において、コントローラ26は、仮想設計面70と現況地形50との間の推定保有土量Sが目標土量Stとなるように、足場面701の高さを決定する。コントローラ26は、仮想設計面70と現況地形50との間の土量が目標土量Stに達する地点(図12の地点d1)以降は、現況地形50に沿うように、仮想設計面70を決定する。
【0073】
このように、コントローラ26は、傾斜角αが上り勾配を示す角度であるときには、足場面701を含む仮想設計面70に沿って移動するように作業機13を制御する。これにより、作業車両1の足場となる平坦な地形を形成することで、その後の作業を効率よく行うことができる。
【0074】
ステップS203において、傾斜角αが下り勾配を示す角度であるときには、ステップS204に進む。そして、図9(B)に示すように、掘削開始位置Psの後方の現況面が上り勾配であるときには、図13に示すステップS211に進む。
【0075】
ステップS211では、足場面701と、足場面701に対して傾斜した傾斜面702とを含む仮想設計面70を決定する。図14に示すように、足場面701は、現況地形50の下方に位置しており、掘削開始位置Psから水平方向に延びている。なお、足場面701は、水平方向と完全に平行でなくてもよい。足場面701は、水平方向に対して小さな角度をなす方向に延びていてもよい。例えば、足場面701は、掘削開始位置Psの後方、或いは前方の上り勾配よりも傾斜の緩やかな角度で傾斜していてもよい。
【0076】
足場面701は、現況復帰地点Qの直ぐ後方の地点まで延びている。現況復帰地点Qは、足場面701の延長線が現況地形50と重なる地点である。傾斜面702は、現況復帰地点Qの直ぐ後方の地点から延びている。図14では、傾斜面702は、現況復帰地点Qの直ぐ後方の地点d1から延びている。
【0077】
ステップS212では、傾斜面702の傾斜角αを算出する。ここでは、コントローラ26は、足場面701と傾斜面702とを含む仮想設計面70と現況地形50との間の土量が、目標土量Stと一致するように、傾斜面702の傾斜角αを算出する。
【0078】
このように、コントローラ26は、掘削開始位置Psが上り勾配に位置し、且つ、ステップS202で算出した傾斜角αが下り勾配を示す角度であるときには、掘削開始位置Psから延びる足場面701と、足場面701に対して傾斜した傾斜面702とを含む仮想設計面70を決定する。そして、コントローラ26は、足場面701と傾斜面702とを含む仮想設計面70に沿って移動するように、作業機13を制御する。これにより、作業車両1の足場となる平坦な地形を形成することで、その後の作業を効率よく行うことができる。
【0079】
また、この場合、足場面701の形成だけであれば作業機13の保有土量に余裕がある。従って、傾斜面702に沿って作業機13を移動させることで、保有土量の余裕を無駄にせずに、下り勾配側では傾斜面702に沿った掘削を行うことができる。これにより、作業の効率を向上させることができる。
【0080】
なお、現況地形50が上り傾斜と下り傾斜とを含む場合であっても、図15に示すように、掘削開始位置Psが下り勾配に位置し、且つ、ステップS202で算出した傾斜角αが下り勾配を示す角度であるときには、コントローラ26は、傾斜角αで傾斜した仮想設計面70に沿って移動するように作業機13を制御する。
【0081】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0082】
作業車両は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ等の他の車両であってもよい。
【0083】
作業車両1は、遠隔操縦可能な車両であってもよい。その場合、制御システム3の一部は、作業車両1の外部に配置されてもよい。例えば、コントローラ26は、作業車両1の外部に配置されてもよい。コントローラ26は、作業現場から離れたコントロールセンタ内に配置されてもよい。
【0084】
コントローラは、互いに別体の複数のコントローラを有してもよい。例えば、図16に示すように、コントローラは、作業車両1の外部に配置されるリモートコントローラ261と、作業車両1に搭載される車載コントローラ262とを含んでもよい。リモートコントローラ261と車載コントローラ262とは通信装置38,39を介して無線により通信可能であってもよい。そして、上述したコントローラ26の機能の一部がリモートコントローラ261によって実行され、残りの機能が車載コントローラ262によって実行されてもよい。例えば、仮想設計面70を決定する処理がリモートコントローラ261によって実行され、作業機13への指令信号を出力する処理が車載コントローラ262によって実行されてもよい。
【0085】
操作装置25は、作業車両1の外部に配置されてもよい。その場合、運転室は、作業車両1から省略されてもよい。或いは、操作装置25が作業車両1から省略されてもよい。操作装置25による操作無しで、コントローラ26による自動制御のみによって作業車両1が操作されてもよい。
【0086】
現況地形取得装置は、上述した位置検出装置31に限らず、他の装置であってもよい。例えば、図17に示すように、現況地形取得装置は、外部の装置からの情報を受け付けるインターフェ-ス装置37であってもよい。インターフェ-ス装置37は、外部の計測装置41が計測した現況地形情報を無線によって受信してもよい。或いは、インターフェ-ス装置37は、記録媒体の読み取り装置であって、外部の計測装置41が計測した現況地形情報を記録媒体を介して受け付けてもよい。
【0087】
上記の実施形態では、仮想設計面は、掘削開始位置から延びているが、他の位置から伸びていてもよい。例えば、仮想設計面は、作業機の現在位置から延びていてもよい。すなわち、仮想設計面は、現在の刃先位置P0から延びていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、効率良く、且つ、仕上がりの品質の良い掘削作業を行うことができる作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両を提供することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 作業車両
3 制御システム
13 作業機
26 コントローラ
28 記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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