(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】液体状又は半液体状の製品内のバクテリアを測定するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/02 20060101AFI20220815BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20220815BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
G01N27/02 E
C12Q1/06
C12M1/34 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018078714
(22)【出願日】2018-04-16
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】102017000044103
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518089540
【氏名又は名称】エイエルアイ グループ ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ カルピジャーニ
【氏名又は名称原語表記】ALI GROUP S.r.l.CARPIGIANI
【住所又は居所原語表記】Via Gobetti 2/A,20063 CERNUSCO SUL NAVIGLIO (MILANO),Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア コッキ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ラッザリーニ
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-237353(JP,A)
【文献】特開2015-102326(JP,A)
【文献】特開2011-106814(JP,A)
【文献】特開2013-253962(JP,A)
【文献】特開昭53-052681(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0009572(US,A1)
【文献】GROSSI et al.,A Portable Sensor With Disposable Electrodes for Water Bacterial Quality Assessment,IEEE SENSORS JOURNAL,2013年05月,Vol.13/No.5,PP.1775-1782
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
C12Q 1/06
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状又は半液体状の製品内のバクテリアを測定する方法であって、
-ある量の分析対象の液体状又は半液体状の製品を準備する工程と、
-前記液体状又は半液体状の製品を所定の計測温度(Tm)に維持し、所定の時刻における前記液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表す値(α)を導出する工程と、
-電気インピーダンス角度を表す前記値(α)の時間的傾向の関数として前記液体状又は半液体状の製品のバクテリア濃度を導出する工程と、を備え
、
前記電気インピーダンス角度を表す前記値(α)の前記時間的傾向の関数として前記液体状又は半液体状の製品のバクテリア濃度を導出する前記工程は、
-連続的な時刻における前記液体状又は半液体状の製品の前記電気インピーダンス角度の前記値(α)の時間微分値を計算する工程と、
-前記連続的な時刻の各時刻について、前記微分値を所定の基準値と比較して、前記微分値が前記所定の基準値より大きいかどうか確認する工程と、
-前記時刻のうち一つに関して前記微分値が前記所定の基準値より大きい場合には、バクテリア濃度と時間との間の所定の関係に基づいて、その時刻に関して、その時刻に対応するバクテリア濃度の値を計算する工程と、を備える方法。
【請求項2】
電気インピーダンス角度(α)の値を導出する前記工程が、前記液体状又は半液体状の製品において時間変化する電圧信号(Vref)を発生する工程と、前記液体状又は半液体状の製品において、前記電圧信号(Vref)に起因する電流(Iout)を計測する工程とを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
連続的な時刻における前記液体状又は半液体状の製品の前記電気インピーダンス角度の値(α)を導出する前記工程は、各時刻に関して、
-前記電圧信号(Vref)がゼロである時刻(T
0)を検出する工程と、
-前記電圧信号(Vref)に起因する前記電流(Iout)がゼロである時刻(T
1)を検出する工程と、
-以下の数式によってその時刻における前記液体状又は半液体状の製品の前記電気インピーダンス角度の前記値(α)を計算する工程と、を備え、
前記数式がα=T
0-T
1であり、尚、T
0は前記電圧信号(Vref)がゼロである時刻であり、T
1は、前記電流(Iout)がゼロである時刻である請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
所定の時刻における前記液体状又は半液体状製品の電気インピーダンス角度を表す値(α)を導出する前記工程が、
-分析対象の前記液体状又は半液体状の製品の温度を測定する工程と、
-分析対象の前記液体状又は半液体状の製品を加熱して、前記液体状又は半液体状の製品の温度信号に基づいて所定の計測温度(Tm)に維持する工程と、を備える請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ある量の液体状又は半液体状の製品を所定の計測温度(Tm)に維持して所定の時刻にて前記液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表す値(α)を導出する前記工程が更に、外部周辺の温度を測定する工程を備え、分析対象の前記液体状又は半液体状の製品を加熱して前記液体状又は半液体状の製品の前記温度信号に基づいて所定の計測温度(Tm)に維持する前記工程は、前記液体状又は半液体状の製品の前記温度信号及び更に前記外部周辺の温度信号に基づいて前記液体状又は半液体状の製品を所定の計測温度(Tm)に加熱する工程を備える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
液体状又は半液体状の製品内のバクテリアを測定する方法であって、
-ある量の分析対象の液体状又は半液体状の製品を準備する工程と、
-前記液体状又は半液体状の製品を所定の計測温度(Tm)に維持し、所定の時刻における前記液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表す値(α)を導出する工程と、
-電気インピーダンス角度を表す前記値(α)の時間的傾向の関数として前記液体状又は半液体状の製品のバクテリア濃度を導出する工程と、を備え、
前記電気インピーダンス角度を表す前記値(α)の前記時間的傾向の関数として前記液体状又は半液体状の製品のバクテリア濃度を導出する前記工程は、
-各時刻について、前記電気インピーダンス角度を表す前記値(α)と所定の基準値とを比較して、導出された前記電気インピーダンス角度を表す前記値(α)が前記所定の基準値より大きいかどうかを確認する工程と、
-導出された前記電気インピーダンス角度を表す前記値(α)が前記所定の基準値より大きい場合には、バクテリア濃度と時間との間の所定の関係に基づいて、その時刻に関して、その時刻に対応するバクテリア濃度の値を計算する工程と、を備え
、
バクテリア濃度と時間との前記関係は、計測時間に対して前記バクテリア濃度が減少していくような関数である、方法。
【請求項7】
前記所定の濃度関係は二次関数である、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
バクテリア濃度と計測時間との前記所定の関係は、前記バクテリア濃度に関して、1未満の正の底を有し、正の計測時間指数による指数時間関数である、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
液体状又は半液体状の製品内のバクテリアを測定するための装置(1)であって、
-支持フレーム(2)と、
-前記支持フレーム(2)から取り外し可能であって、その内部収容空間(5)に検査対象の液体状又は半液体状の製品を充填するよう構成した容器(3)と、
-前記支持フレーム(2)と関連する加熱手段(6)であって、使用時に前記取り外し可能な容器(3)と熱的に接触して検査対象の前記液体状又は半液体状の製品を加熱する加熱手段と、
-前記液体状又は半液体状の製品を所定の測定温度(Tm)に維持するよう前記加熱手段(6)を制御するよう構成された制御ユニット(15)と、
-電気測定ユニット(7)であって、
-経時的に可変である電圧信号(Vref)を発生するよう構成された信号発生機(8)と、
-前記信号発生機(8)に電気的に接続され、前記取り外し可能な容器(3)の前記内部収容空間(5)の内部に搭載された測定電極(9)と、
-前記電圧信号(Vref)によって、前記測定電極(9)及び前記液体状又は半液体状の製品を流れる電流(Iout)を測定するよう構成されたセンサ(10)と、
-前記センサ(10)によって測定した前記電流(Iout)及び前記電圧信号(Vref)に基づいて、所定の時刻での前記液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表し、前記電流(Iout)と前記電圧信号(Vref)との間の時相シフトに対応する値(α)を計算するよう構成される計算機ユニット(11)と、を備える電気測定ユニット(7)と、を備え
、
前記計算機ユニット(11)は、
-連続的な時刻における前記液体状又は半液体状の製品の前記電気インピーダンス角度の前記値(α)の時間微分値を計算し、
-各時刻について、前記微分値を所定の基準値と比較して、前記微分値が前記所定の基準値より大きいかどうか確認し、
-前記時刻のうち一つに関して前記微分値が前記所定の基準値より大きい場合には、バクテリア濃度と時間との間の所定の関係に基づいて、その時刻に対応するバクテリア濃度の値を計算するよう構成される、装置。
【請求項10】
使用時に前記取り外し可能な容器(3)と関連して前記液体状又は半液体状の製品の温度を測定するための第一の温度センサ(12)を更に備え、前記制御ユニット(15)は、前記第一の温度センサ(12)によって測定した温度に応じて前記加熱手段(6)を制御するよう構成される、請求項
9に記載の装置(1)。
【請求項11】
周辺温度を測定するための第二の温度センサ(13)を更に備え、前記制御ユニット(15)は、更に前記第二の温度センサ(13)によって測定した温度に応じて前記加熱手段(6)を制御するよう構成される、請求項
10に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記微分値は1階微分値である、請求項
9に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記微分値は2階微分値である、請求項
9に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記計算機ユニット(11)は、
-各時刻について、導出された電気インピーダンス角度を表す前記値(α)と所定の基準値とを比較して、導出された前記電気インピーダンス角度を表す前記値(α)が前記所定の基準値より大きいかどうかを確認し、
-導出された前記電気インピーダンス角度を表す前記値(α)が前記所定の基準値より大きい場合には、時間とバクテリア濃度との間の所定の関係に基づいて、その時刻に対応するバクテリア濃度の値を計算するよう構成される、請求項
9から
13のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項15】
前記計算機ユニット(11)は、各時刻について、以下の数式に応じて前記電気インピーダンス角度を表す前記値(α)を導出するよう構成され、
前記数式はα=T
0-T
1であり、尚、T
0は前記電圧信号(Vref)がゼロである時刻であり、T
1は、前記電流(Iout)がゼロである時刻である請求項
9から
14のいずれかに記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、乳及び/又は水に溶かした食品混合物である、液体状又は半液体状の食品内のバクテリア(bacterial charge)を測定するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体状又は半液体状の食品内のバクテリア及び/又は微生物含有量の測定及び検査が非常に重要であることは周知されている。これらの製品が食品としての消費を意図されたものだからである。
【0003】
実際、微生物濃度が非常に高い場合(もし病原性であれば)、人の健康に深刻な脅威となる可能性がある。
【0004】
従って、食品部門では、液体状又は半液体状の食品内のバクテリアの量を現場にて直接即ち製造場所にて、ごく簡単で信頼性の高い方法で測定可能とする必要性が特に強く感じられている。
【0005】
従って、食品部門では、迅速かつ安価にバクテリアの量を測定可能とする必要性についても強く感じられている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は従って、液体状又は半液体状の食品内のバクテリアを測定するための装置及び方法を提供することによって上述の必要性を満たすことを目的とする。
【0007】
具体的に、本発明の目的は、ごく簡単で信頼性の高い方法で液体状又は半液体状の食品内のバクテリアを測定するための装置及び方法を提供することである。
【0008】
本発明の更なる目的は、迅速かつ安価に液体状又は半液体状の食品内のバクテリアを測定するための装置及び方法を提供することである。
【0009】
こうした目的は、添付の請求項に記載の液体状又は半液体状の製品内のバクテリアを測定するための装置及び方法によって実質的に達成される。
【0010】
更なる特徴及び利点については、好適であって非限定的である本発明の実施形態の例についての詳細な説明によってより明らかとなるであろう。
【0011】
上述の目的に関する本発明の技術的特徴は、以下に記載の請求項に明示されており、その利点は本発明の非限定的な例を示す添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明によってより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に記載の液体状又は半液体状の製品内のバクテリアを測定するための装置及び方法の一実施形態の概略図。
【
図2】本発明に記載の液体状又は半液体状の製品内のバクテリアを測定するための装置及び方法の一実施形態の概略図。
【
図3】先行する図面の装置の容器にて検査される液体状又は半液体状の製品にて計測された印加電圧及び結果的な電流を概略的に表すグラフ。
【
図4】リアクティブインピーダンス(reactive impedance)Xc、抵抗性インピーダンスR、及びインピーダンス角度Φを示すインピーダンス図。
【
図5】バクテリアの濃度が様々である複数の検査サンプルに関して時間(横軸)に対するインピーダンス角度(縦軸)を示す概略図。
【
図6】
図5の検査サンプルのうちの幾つかから抽出したバクテリア濃度値(縦軸)及び関連時間(横軸)を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照すると、参照符号1により、本発明に記載の液体状又は半液体状の製品内のバクテリアを測定するための装置を示す。
【0014】
好ましくは、液体状又は半液体状の製品内のバクテリアを測定するための装置1は、
-支持フレーム2と、
-支持フレーム2から取り外し可能であって、その内部収容空間5に検査対象の液体状又は半液体状の製品を充填するよう構成した容器3と、
-支持フレーム2と関連する加熱手段6(即ちヒーター、好ましくは電気ヒータ)であって、使用時には取り外し可能な容器3と熱的に接触して検査対象の液体状又は半液体状の製品を加熱する加熱手段と、
-液体状又は半液体状の製品を所定の測定温度(Tm)に維持するよう加熱手段6を制御するよう構成された制御ユニット15と、
-電気測定ユニット7であって、
-経時的に可変である電圧信号Vrefを発生するよう構成された(電子)信号発生機8と、
-信号発生機8に電気的に接続され、取り外し可能な容器3の内部収容空間5の内部に搭載された測定電極9と、
-電圧信号Vrefによって、測定電極9及び液体状又は半液体状の製品を流れる電流(Iout)を測定するよう構成されたセンサ10と、
-センサ10によって測定した電流Iout及び電圧信号Vrefに基づいて、所定の時刻での液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表し、電流Ioutと電圧信号Vrefとの間の時相シフト(time phase shift)に対応する値αを計算するよう構成される計算機ユニット11と、を備える電気測定ユニット7と、を備える。
【0015】
従って、電気測定ユニット7は、(様々な時刻に得た)検査中の液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表す値αの時間的傾向に基づいてバクテリア濃度の指示値(indication)を導出するよう構成される。
【0016】
取り外し可能な容器3が試験管であることが好ましい。
【0017】
取り外し可能な容器3は、液体状又は半液体状の製品を収容する収容部と蓋とを備えることが好ましい。
【0018】
制御ユニット15は、支持フレーム2に関連する(その内部に収容される)ことが好ましい。
【0019】
電気測定ユニット7は、支持フレーム2に関連する(その内部に収容される)ことが好ましい。
【0020】
尚、電圧信号Vrefにより、測定電極9及び液体状又は半液体状の製品を流れる電流Ioutを測定するよう構成されたセンサ10は、任意の種類のセンサ(電圧センサ、電流センサ等)であってよい。
【0021】
実際、周知のように、複数のセンサのうち任意のセンサを用いた複数の異なる方法のうちの任意の方法で、電流を測定可能である。
【0022】
一態様によれば、装置1は、使用時に取り外し可能な容器3と関連して液体状又は半液体状の製品の温度を測定するための第一の温度センサ12を備え、制御ユニット15は、第一の温度センサ12によって測定した温度に応じて加熱手段6(即ち、好ましくは電気ヒータ)を制御するよう構成される。
【0023】
制御ユニット15は、第一の温度センサ12によって測定した温度と基準温度Tmとに基づいて閉ループ内で(フィードバックにより)加熱手段6を制御するよう構成されることが好ましい。
【0024】
基準温度Tmは、フィードバック制御用の基準温度に対応する(制御ユニット15は、所定の許容差を加えた又は差し引いた所定の基準温度Tmに液体状又は半液体状の製品を維持するよう加熱手段6を制御するよう構成される)。
【0025】
尚、基準温度は、30°Cから45°Cの範囲の温度に対応することが好ましく、35°Cから40°Cの範囲であることが更に好ましい。
【0026】
別の態様によれば、装置1は更に、周辺温度を測定するための第二の温度センサ13を備え、制御ユニット15は、更に第二の温度センサ13によって測定した周辺温度に応じて加熱手段6を制御するよう構成される。
【0027】
周辺温度の測定値にも基づいて制御を行うことにより、容器3内部の製品温度の測定が、急な温度変化(特に、外部熱源による正の変化)によって影響される(変化する)のを防ぐことができる。
【0028】
実際、周辺温度がわかっていれば、特に熱出力を制御することによって、加熱手段6を最適に制御可能である。
【0029】
一態様によれば、加熱手段6は、可変熱出力を放出するよう構成され、制御ユニット15は、加熱手段6によって放出された熱出力を調整する。
【0030】
更なる態様によれば、制御ユニット15と電気測定ユニット7とは(電気的に)互いに独立している。
【0031】
更なる態様によれば、装置1は更にバスを備え、制御ユニット15と電気測定ユニット7とがバス16に接続している。
【0032】
制御ユニット15と電気測定ユニット7とが「従属」ユニットとして構成されることが好ましい。
【0033】
バス16はモドバス(Modbus)であることが好ましい。
【0034】
更なる態様によれば、計算機ユニット11は、以下の数式に従ってインピーダンス角度を表す値αを導出するよう構成される。
【0035】
α=T0-T1、尚、T0は電圧信号Vrefがゼロ(正又は負の微分値(derivative)を有する)である時刻であり、T1は、電流Ioutがゼロ(正又は負の微分値を有するが、T0の計算に使用した電気信号Vrefの微分値と同じ符号を有する)である時刻である。
【0036】
尚、計算機ユニット11は、時間領域において時刻T0及びT1を同定するのに使用可能な時間信号を発生するよう構成された装置(タイマー、即ち、周期信号発生機)を備えることが好ましい。
【0037】
【0038】
尚、T0及びT1の時間測定後に差分演算(difference operation)をすることによって、液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表す値αを導出しているので、この値がかなりの正確性と精度とを有して導出可能である。実際には、電子装置(例えばマイクロプロセッサ)を使用して高い精度で時間の測定が可能である。
【0039】
このように、液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表す値αの測定は、特に迅速で信頼性が高い。
【0040】
加熱手段6がペルチェセル(Peltier cell)を備えることが好ましい。
【0041】
装置1は、電源(electrical mains)に接続可能であって上述の電気素子又はユニットの一以上に電力を供給するよう構成された電力供給部20を備えることが好ましい。
【0042】
更なる態様によれば、装置1は、(図示しない)電池を備えてもよい。
【0043】
更なる態様によれば、
図3に示すように、電気信号(Vref)は正弦波信号である。
【0044】
更なる態様によれば、この信号は、周波数が150から300Hzである周期信号である。
【0045】
この周波数が180Hzから220Hzであることが更に好ましい。
【0046】
図5は、様々な初期バクテリア値に関して(C1=バクテリア不在、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10)、時間(横軸)の関数として、液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表す値α(縦軸上)を示すグラフである。
【0047】
図5のグラフは、様々なバクテリア濃度の値に関して行われた実験的検査の結果である。
【0048】
このグラフにおいて、C1=バクテリア不在、C2=10cfu/ml、C3=10^2cfu/ml、C4=5*10^2cfu/ml、C5=7,5*10^2cfu/ml、C6=3*10^4cfu/ml、C7=2*10^5cfu/ml、C8=5*10^7cfu/ml、C9=10^10cfu/mlである。
【0049】
更なる態様によれば、計算機ユニット11は、
-連続的な時刻における液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表す値αの時間微分値を計算し、
-各時刻について、この微分値を所定の基準値と比較して、この微分値が所定の基準値より大きいかどうか確認し、
-時刻のうち一つに関して微分値が所定値より大きい場合には、バクテリア濃度と計測時間との間の所定の関係に基づいて、その時刻に対応するバクテリア濃度の値を計算するよう構成される。
【0050】
尚、「計測時間」とは、測定を開始した時刻と、複数の時刻のうちの一つに関して微分値が所定の基準値より大きくなった時刻との間の時間である。
【0051】
一態様によれば、微分値は1階微分値(first deribative)である。
【0052】
一態様によれば、微分値は2階微分値(second deribative)である。
【0053】
図5の参照ラベルD2、D3、D4、D5、D6、D7、D8、D9は、(異なる試験濃度に関して)可能な基準微分値を表す。
【0054】
基準微分値が高い値であることが好ましく、結果として、バクテリア濃度の測定の信頼性が更にかなり高くなる。
【0055】
実際、これによって、値αの微分値が所定の高い値を超える(計測時間における)時刻、即ち、値αの信号において(1階又は2階)微分値が急激に変化する時刻を判断することが可能となる。
【0056】
図5に示すように、(D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8、D9の場合のように)基準微分値が高い値であれば、このような時刻を明確に同定可能である。
【0057】
図6は、
図5の検査サンプル(C1は除く)から導出したバクテリア濃度を示す。
【0058】
尚、
図6は、図示した値(C2-C9)を補間した二次曲線CUを示している。
【0059】
更なる態様によれば、計算機ユニット11は、
-各時刻について、電気インピーダンス角度を表す値αと所定の基準値とを比較して、導出された電気インピーダンス角度を表す値αが所定の基準値より大きいかどうかを確認し、
-導出された電気インピーダンス角度を表す値αが所定の基準値より大きい場合には、計測時間とバクテリア濃度との間の所定の関係に基づいて、その時刻に対応するバクテリア濃度の値を計算するよう構成される。
【0060】
この態様によれば、濃度値は微分値を用いて導出又は計算されず、電気インピーダンス角度を表す値αを用いて導出又は計算される。
【0061】
図5に示すように、各検査バクテリア濃度(C2-C9)に関して、電気インピーダンス角度を表す値αは、所定の時間後に漸近値α
*に至る。
【0062】
この計測時間、即ち電気インピーダンス角度を表す値αが漸近値α*に至る(即ち、所定の許容差デルタαだけα*より大きい値に到達する)時間を計測することによって、検査される液体状又は半液体状の製品のバクテリア濃度の指示値を導出可能となる。
【0063】
更なる態様によれば、液体状又は半液体状製品内のバクテリアを測定するための方法が規定されるが、この方法は、
-ある量の(a quantity of)分析対象の液体状又は半液体状の製品を準備する工程と、
-予め設定された計測温度(Tm)にこのある量の液体状又は半液体状の製品を維持し、所定の時刻における液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表す値αを導出する工程と、
-電気インピーダンス角度を表す値αの時間的傾向の関数として液体状又は半液体状の製品のバクテリア濃度を導出する工程と、を備える。
【0064】
この方法の更なる態様によれば、電気インピーダンス角度αの値を導出する工程は、液体状又は半液体状の製品において時間変化する電圧信号Vrefを発生する工程と、液体状又は半液体状の製品において、電圧信号Vrefに起因する電流Ioutを計測する工程とを備える。
【0065】
更なる態様によれば、可変電圧信号Vrefは(経時的に)周期性の信号である。
【0066】
更なる態様によれば、連続的な時刻における液体状又は半液体状製品の電気インピーダンス角度を表す値αを導出する工程は、各時刻に関して、以下の工程を備える。すなわち、
-電圧信号Vrefがゼロである時刻T0を検出する工程と、
-電圧信号Vrefに起因する電流信号Ioutがゼロである時刻T1を検出する工程と、
-以下の数式によってその時間における液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度の値αを計算する工程と、を備える。
【0067】
α=T0-T1、尚、T0は電圧信号Vrefがゼロである時刻であり、T1は、電流Ioutがゼロである時刻である。
【0068】
更なる態様によれば、電圧信号の周波数は100Hzから500Hzである(150Hzから300Hzであることが更に好ましい)。
【0069】
更なる態様によれば、所定の時刻における液体状又は半液体状製品の電気インピーダンス角度を表す値αを導出する工程は、
-分析対象の液体状又は半液体状の製品の温度を測定する工程と、
-分析対象の液体状又は半液体状の製品を加熱して、液体状又は半液体状の製品の温度信号に基づいて予め設定された計測温度Tmに維持する工程と、を備える。
【0070】
ある量の液体状又は半液体状の製品を予め設定された計測温度Tmに維持して、所定の時刻にて液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表す値αを導出する工程が更に、外部周辺温度を測定する工程を備え、分析対象の液体状又は半液体状の製品を加熱して液体状又は半液体状の製品の温度信号に基づいて予め設定された計測温度Tmに維持する工程が、液体状又は半液体状の製品の温度信号及び更に外部周辺温度信号に基づいて液体状又は半液体状の製品を予め設定された計測温度Tmに加熱する工程を備えることが好ましい。
【0071】
この方法の更なる態様によれば、ある量の液体状又は半液体状の製品を予め設定された計測温度(Tm)に維持する工程は、ペルチェセルを用いてこのある量の液体状又は半液体状の製品を加熱する工程を備える。
【0072】
この方法の更なる態様によれば、電気インピーダンス角度を表す値αの時間的傾向の関数として液体状又は半液体状の製品のバクテリアの存在の指示値を導出する工程は、
-連続的な時刻における液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表す値αの時間微分値を計算する工程と、
-連続時刻の各時刻について、この微分値を所定の基準値と比較して、この微分値が所定の基準値より大きいかどうか確認する工程と、
-時刻のうち一つの時刻に関して微分値が所定値より大きい場合には、バクテリア濃度と時間との間の所定の関係に基づいて、その時刻に関して、その時刻(又は計測時間)に対応するバクテリア濃度の値を計算する工程と、を備える。
【0073】
この方法の更なる態様によれば、微分値は1階微分値である。
【0074】
この方法の更なる態様によれば、微分値は2階微分値である。
【0075】
更なる態様によれば、電気インピーダンス角度を表す値αの時間的傾向の関数として液体状又は半液体状の製品のバクテリアの存在の指示値を導出する工程は、
-各時刻について、電気インピーダンス角度を表す値αと所定の基準値とを比較して、導出された電気インピーダンス角度を表す値αが所定の基準値より大きいかどうかを確認する工程と、
-導出された電気インピーダンス角度を表す値αが所定の基準値より大きい場合には、バクテリア濃度と(計測)時間との間の所定の関係に基づいて、その時刻に関して、その時刻に対応するバクテリア濃度の値を計算する工程と、を備える。
【0076】
更なる態様によれば、電気インピーダンス角度を表す値(α)の時間的傾向は、(横軸が時間を表し縦軸が計測した電気インピーダンス角度を表す値を示す
図5に示すように)時間減少(time-decreasing)関数である。
【0077】
図5のグラフの縦軸の計測単位は、ラジアンであって、1000を掛けた値である。
【0078】
図5のグラフの横軸の計測単位は、時間(hour)(計測時間)である。
【0079】
更なる態様によれば、バクテリア濃度と計測時間との関係は、(横軸に計測時間を表し縦軸にバクテリア濃度を表す
図6に示すように)計測時間に対してバクテリア濃度が減少していくような関数である。
【0080】
一態様によれば、バクテリア濃度と計測時間との関係は、二次関数即ち計測時間の二次関数である(
図6に示すように、バクテリア濃度と計測時間との関係はy=a
*t^2+b+t+cの形である。ここでyは液体状又は半液体状の製品におけるバクテリア濃度を表し、tは計測時間を表し、a、b、cは数値である)。
【0081】
更なる態様によれば、バクテリア濃度と時間との上述の関係は、バクテリア濃度に関して、1未満の正の底を有し、正の指数(計測時間)による指数計測時間の関数である。
【0082】
更なる態様によれば、バクテリア濃度と時間との上述の関係は、バクテリア濃度に関して、1未満の正の底を有し、正の時間指数による指数計測時間の関数である。
【0083】
更なる態様によれば、バクテリア濃度と時間との上述の関係は、バクテリア濃度に関して、負の角度係数を有する線形時間関数である。
【0084】
更なる態様によれば、この方法は、所定の時刻における液体状又は半液体状製品の電気インピーダンス角度を表す所定の数の(例えば、”n”個の)値を導出し、その後以下の演算を行う工程を備える。
【0085】
この所定の数の値を用いて、(n-1)次の、即ち、所定の数の値から1ユニットを減じた次数(degree)を有する、補間曲線(好ましくは多項式)を構築する。
【0086】
補間曲線の次数が5より大きく15より小さいことが好ましい。
【0087】
電気インピーダンス角度を表すこの補間曲線上で、電気インピーダンス角度を表す”n”個の値のそれぞれについて微分値(好ましくは1階微分値)が計算される。
【0088】
電気インピーダンス角度を表す”n”個のそれぞれの(1階)微分値の中から、その微分値が予め設定された閾値より大きい電気インピーダンス角度を表す値(即ち「検出時刻」)がもしあれば、これを同定する。
【0089】
微分値は先行する又は次の点(point)で計算してもよい。
【0090】
尚、液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンスの角度を表す新しい値が導出された場合、液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンス角度を表す値のうち最初のものを除いて、電気インピーダンス角度を表す新しい値を含めたn-1個の値をもとに、新たな補間曲線が計算される。
【0091】
この方法によれば、液体状又は半液体状の製品の電気インピーダンスの角度を表す新しい値と共に移動し常に(n-1)の点を含むような一種の窓を実現可能となる。