IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIエアロスペースの特許一覧

特許7122863画像表示装置、画像表示方法および遠隔操縦システム
<>
  • 特許-画像表示装置、画像表示方法および遠隔操縦システム 図1
  • 特許-画像表示装置、画像表示方法および遠隔操縦システム 図2
  • 特許-画像表示装置、画像表示方法および遠隔操縦システム 図3
  • 特許-画像表示装置、画像表示方法および遠隔操縦システム 図4
  • 特許-画像表示装置、画像表示方法および遠隔操縦システム 図5
  • 特許-画像表示装置、画像表示方法および遠隔操縦システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】画像表示装置、画像表示方法および遠隔操縦システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/00 20060101AFI20220815BHJP
   F41H 11/16 20110101ALI20220815BHJP
   B25J 3/00 20060101ALI20220815BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
B25J5/00 Z
F41H11/16
B25J3/00 Z
E02F9/26 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018093244
(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公開番号】P2019198905
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】岡本 伸也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩明
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-160741(JP,A)
【文献】特開2017-110492(JP,A)
【文献】特開平05-162695(JP,A)
【文献】特開2013-201958(JP,A)
【文献】特開2006-058064(JP,A)
【文献】特開2015-219782(JP,A)
【文献】特開2017-052053(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0256607(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0051446(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0004526(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 3/00- 5/00
B64D 45/08
E02F 9/16- 9/26
F41H 11/16
G01C 21/00
G06T 1/00
G06F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動ロボットに設けられ対象物を把持して持ち上げる持上機構の遠隔操縦時に当該対象物を含む領域の画像データを表示する画像表示装置であって、
前記移動ロボットに設けたカメラにより撮像された、前記対象物を含む領域の画像データを受ける通信部と、
前記通信部が受けた前記画像データを表示するディスプレイと、
水平面に対する前記カメラの姿勢を特定可能な情報を姿勢情報として、前記移動ロボットに設けられた姿勢センサが検出した前記姿勢情報に基づいて、水平面を表わす水平面指標と鉛直方向を示す鉛直指標を、前記画像データとともに前記ディスプレイに表示させる表示制御装置とを備え
前記水平面指標は、前記画像データにおける前記水平面に位置するように3次元的に表示される格子の画像であり、前記画像データに重ねて表示される、画像表示装置。
【請求項2】
前記表示制御装置は、
前記姿勢情報に基づいて、前記画像データにおける水平面の方向と鉛直方向を求める方向計算部と、
該方向計算部が求めた水平面の方向と鉛直方向に基づいて、前記水平面指標と前記鉛直指標を前記画像データとともに前記ディスプレイに表示させる表示制御部とを含む、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記鉛直指標は矢印である、請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
移動ロボットに設けられ対象物を把持して持ち上げる持上機構の遠隔操縦時に当該対象物を含む領域の画像データを表示する画像表示装置であって、
前記移動ロボットに設けたカメラにより撮像された、前記対象物を含む領域の画像データを受ける通信部と、
前記通信部が受けた前記画像データを表示するディスプレイと、
水平面に対する前記カメラの姿勢を特定可能な情報を姿勢情報として、前記移動ロボットに設けられた姿勢センサが検出した前記姿勢情報に基づいて、水平面の方向を示す水平面指標を、前記画像データとともに前記ディスプレイに表示させる表示制御装置とを備え、
前記表示制御装置は、
前記姿勢情報に基づいて、前記画像データにおける水平面の方向を求める方向計算部と、
該方向計算部が求めた水平面の方向に基づいて、前記水平面指標を前記画像データとともに前記ディスプレイに表示させる表示制御部とを含み、
前記表示制御部は、前記水平面指標を前記画像データに重ねて前記ディスプレイに表示させ、かつ、前記水平面指標の寸法を前記ディスプレイに表示させ、該寸法は、対応する現実世界の寸法である画像表示装置。
【請求項5】
移動ロボットに設けられ対象物を把持して持ち上げる持上機構の遠隔操縦時に当該対象物を含む領域の画像データを表示する画像表示装置であって、
前記移動ロボットに設けたカメラにより撮像された、前記対象物を含む領域の画像データを受ける通信部と、
前記通信部が受けた前記画像データを表示するディスプレイと、
水平面に対する前記カメラの姿勢を特定可能な情報を姿勢情報として、前記移動ロボットに設けられた姿勢センサが検出した前記姿勢情報に基づいて、水平面の方向を示す水平面指標と鉛直方向を示す鉛直指標の一方または両方を、前記画像データとともに前記ディスプレイに表示させる表示制御装置とを備え、
前記表示制御装置は、
前記姿勢情報に基づいて、前記画像データにおける水平面の方向と鉛直方向の一方または両方を求める方向計算部と、
該方向計算部が求めた水平面の方向と鉛直方向の一方または両方に基づいて、前記水平面指標と前記鉛直指標の一方または両方を前記画像データとともに前記ディスプレイに表示させる表示制御部とを含み、
前記表示制御部は、前記水平面指標と前記鉛直指標の一方または両方を、前記画像データとともに前記ディスプレイに表示させ、かつ、移動ロボットの本体上の設定点から、表示された前記水平面指標または前記鉛直指標までの距離を指標距離として前記ディスプレイに表示させる画像表示装置。
【請求項6】
前記持上機構の各部の動作量が、前記移動ロボットの検出部で検出されて前記表示制御部に入力され、
前記表示制御部は、
当該動作量と、前記持上機構の各部の既知の寸法と、前記本体上の前記設定点の既知の位置とに基づいて、前記本体上の前記設定点から前記持上機構の先端部までの距離を先端部距離として算出し、
当該先端部距離と、前記指標距離と、前記水平面指標と前記鉛直指標の一方または両方とを、前記画像データとともに前記ディスプレイに表示させる、請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項7】
移動ロボットに設けられ対象物を把持して持ち上げる持上機構の遠隔操縦時に当該対象物を含む領域の画像データを表示する画像表示方法であって、
(A)前記移動ロボットに設けたカメラにより撮像された、前記対象物を含む領域の画像データを受け、
(B)水平面に対する前記カメラの姿勢を特定可能な情報を姿勢情報として、前記移動ロボットに設けられた姿勢センサが検出した前記姿勢情報に基づいて、水平面を表わす水平面指標と鉛直方向を示す鉛直指標を、前記画像データとともにディスプレイに表示させ
前記水平面指標は、前記画像データにおける前記水平面に位置するように3次元的に表示される格子の画像であり、前記(B)において前記画像データに重ねて表示される、画像表示方法。
【請求項8】
対象物を把持して持ち上げる持上機構が設けられた移動ロボットと、前記持上機構を遠隔操縦するための遠隔操縦側装置とを備える遠隔操縦システムであって、
前記遠隔操縦側装置は、
請求項1~6のいずれか一項に記載の画像表示装置と、
前記持上機構を遠隔操縦するために操作され、なされた操作に応じた動作指令を生成する操作装置と、を備え、
前記移動ロボットは、
前記遠隔操縦側装置から送信された前記動作指令に従って前記持上機構の動作を制御する動作制御部を備える、遠隔操縦システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動ロボットに設けられ対象物を把持して持ち上げる持上機構(例えばロボットアームを用いた機構)を、人が遠隔操縦する際に人が参照するための画像データを表示する画像表示装置と画像表示方法に関する。また、本発明は、当該画像表示装置と、移動ロボットと、移動ロボットの持上機構を遠隔操縦するために人に操作される操作装置とを備える遠隔操縦システムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物が地表面または他の箇所に置かれている場合に、移動ロボットを用いて、次のように対象物を把持して別の場所へ運ぶことができる。対象物が置かれている場所へ移動ロボットが移動する。移動ロボットに設けたカメラにより対象物を含む領域を撮像し、これにより得た画像データを、遠隔操縦側の装置へ送信する。遠隔操縦側の装置では、送信されてきた画像データをディスプレイに表示し、人は、表示された画像データを見て、操作部(例えば操作レバーやボタン)を操作することにより、移動ロボットの持上機構(例えばロボットアーム)を遠隔操縦する。この操縦に従って、持上機構が、対象物を把持して持ち上げ、この状態で、移動ロボットが別の場所まで移動する。なお、移動ロボットは、例えば、人が遠隔操縦することにより又は自律移動により移動可能である。
【0003】
上述した対象物は、例えば危険物である。危険物が、人の往来する場所に置かれている場合には、移動ロボットにより、上述のように人が存在しない別の場所へ運ぶことができる。危険物としては、例えば、即席爆発装置(IED:Improvised Explosive Device)または不発弾がある。
【0004】
下記の特許文献1には、クローラ式走行体である移動ロボットを用いて、次のように不発弾を撤去することが記載されている。移動ロボットに設けた作業機により不発弾を持ち上げる際に、移動ロボットに設けたカメラで不発弾を撮像し、これにより得た画像データを遠隔操縦側の装置に送信している。遠隔操縦側の装置では、この画像データがディスプレイに表示される。人は、表示された画像データを見て作業機を遠隔操縦できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-121343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水平面に対して傾いた斜面に対象物が置かれており、この対象物を上述の持上機構により把持して持上げる場合には、表示された画像データにおいて、人は水平面の方向または鉛直方向を認識しにくい。そのため、人の遠隔操縦により、対象物を適切に把持して持ち上げる動作を持上機構に行わせるのに時間がかかってしまう可能性がある。例えば、持上機構の先端部に設けたロボットハンドで対象物を適切に把持するには、ロボットハンドの向きを例えば鉛直にすべき場合に、人は、鉛直方向を認識しにくいので、遠隔操縦により、ロボットハンドの向きを鉛直にするのに時間がかかってしまう可能性がある。
【0007】
また、人が、表示された画像データを見ても、水平面の方向または鉛直方向を認識できない場合や、水平面の方向または鉛直方向を誤って認識した場合には、人の遠隔操縦により、持上機構が対象物を把持しても対象物を鉛直方向に持ち上げられず落としてしまう可能性がある。例えば、上述のロボットハンドで対象物を把持して鉛直方向に持ち上げるべき場合に、鉛直方向から大きく傾いた方向に対象物を持ち上げてしまったことにより対象物がロボットハンドから抜け落ちてしまう可能性がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、対象物が水平面に対して傾いた斜面に置かれている場合であっても、対象物を含む領域を撮像した画像データにおける水平面の方向または鉛直方向を人が容易に認識できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明によると、移動ロボットに設けられ対象物を把持して持ち上げる持上機構の遠隔操縦時に対象物を含む領域の画像データを表示する画像表示装置であって、
移動ロボットに設けたカメラにより撮像された、対象物を含む領域の画像データを受ける通信部と、
通信部が受けた画像データを表示するディスプレイと、
水平面に対するカメラの姿勢を特定可能な情報を姿勢情報として、移動ロボットに設けられた姿勢センサが検出した姿勢情報に基づいて、水平面の方向を示す水平面指標と鉛直方向を示す鉛直指標の一方または両方を、画像データとともにディスプレイに表示させる表示制御装置とを備える、画像表示装置が提供される。
【0010】
また、本発明によると、移動ロボットに設けられ対象物を把持して持ち上げる持上機構の遠隔操縦時に対象物を含む領域の画像データを表示する画像表示方法であって、
(A)移動ロボットに設けたカメラにより撮像された、対象物を含む領域の画像データを受け、
(B)水平面に対するカメラの姿勢を特定可能な情報を姿勢情報として、移動ロボットに設けられた姿勢センサが検出した姿勢情報に基づいて、水平面の方向を示す水平面指標と鉛直方向を示す鉛直指標の一方または両方を、画像データとともにディスプレイに表示させる、画像表示方法が提供される。
【0011】
さらに、本発明によると、対象物を把持して持ち上げる持上機構が設けられた移動ロボットと、持上機構を遠隔操縦するための遠隔操縦側装置とを備える遠隔操縦システムであって、
遠隔操縦側装置は、
上述の画像表示装置と、
持上機構を遠隔操縦するために操作され、なされた操作に応じた動作指令を生成する操作装置と、を備え、
移動ロボットは、
遠隔操縦側装置から送信された動作指令に従って持上機構の動作を制御する動作制御部を備える、遠隔操縦システムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明によると、水平面に対するカメラの姿勢を特定可能な情報を姿勢情報として、移動ロボットに設けられた姿勢センサが検出した姿勢情報に基づいて、水平面の方向を示す水平面指標と鉛直方向を示す鉛直指標の一方または両方を、画像データとともにディスプレイに表示させる。したがって、人は、持上機構を遠隔操縦する際に、表示された水平面指標と鉛直指標の一方または両方を見ることで画像データにおける水平面の方向または鉛直方向を容易に認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による遠隔操縦システムを示すブロック図である。
図2】移動ロボットの一例を示す。
図3】ディスプレイの画面に表示された、カメラの画像データの一例を示す。
図4】ディスプレイの画面に表示された、カメラの画像データと水平面指標と鉛直指標の一例を示す。
図5図4の指標距離の説明図であり、水平方向から見た概念図である。
図6】本発明の実施形態による画像表示方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態による遠隔操縦システム100を示すブロック図である。遠隔操縦システム100は、移動ロボット10と遠隔操縦側装置20を備える。
【0016】
<移動ロボットの構成>
移動ロボット10の一例を図2に示す。移動ロボット10は、地表面2または他の箇所に置かれた対象物1を持ち上げて運ぶことに用いられる。すなわち、移動ロボット10は、対象物1が置かれた場所まで移動可能であり、当該場所において対象物1を持ち上げて、他の場所まで移動することにより、対象物1を運ぶ。図2では、対象物1は、水平面に対して傾いた地表面2に置かれている。対象物1は、例えば危険物である。危険物は、例えば、即席爆発装置または不発弾である。対象物1が危険物である場合、移動ロボット10は、例えば人が通る地表面2に置かれた危険物を持ち上げて運ぶことにより、危険物を撤去することに用いられる。
【0017】
移動ロボット10は、地表面2を移動する移動機構5が設けられた本体3を含む。移動機構5は、地表面2に接しながら回転駆動されることにより本体3を移動させる回転体5aであってよい、回転体5aは、図2の例では、クローラベルト(すなわち無端状のベルト)であるが、車輪であってもよい。
【0018】
なお、移動ロボット10の移動は、人による遠隔操縦または自律移動制御により行われてよい。前者の場合、例えば、人は図示しない移動操縦装置を操作することにより、移動ロボット10を所望の場所まで移動させることができる。後者の場合、例えば移動ロボット10に設けられた移動制御部に、所望の場所を示す情報を送信することにより、この移動制御部が、当該情報が示す場所へ移動ロボット10を移動させるように移動ロボット10の移動を制御する。移動ロボット10の移動の遠隔操縦と、移動ロボット10の自律移動は、例えば公知の技術により行うことができるので、その詳細な説明は省略する。
【0019】
・持上機構の構成
移動ロボット10の本体3には持上機構7が設けられる。持上機構7は、地表面2または他の箇所に置かれた対象物1を持ち上げる動作を行う。持上機構7は、本体3に連結された基端部7aと、先端部7bと、先端部7bに取り付けられ対象物1に接触して対象物1を把持する把持装置7cと、基端部7aと先端部7bとを連結する中間部7dとを含む。把持装置7cは、例えば対象物1を挟んで把持する1対の把持部材7c1(後述の図3を参照)を有するものであってよい。中間部7dは、基端部7aに対して動作することにより、先端部7bが基端部7aと本体3に対して移動する。中間部7dは、例えば、図2のように互いに回転可能に連結した複数のアームを含んでいてよく、基端部7aと先端部7bと中間部7dによりロボットアームが構成されてよい。
【0020】
なお、基端部7aは、軸Cまわりに回転可能に本体3に連結されていてもよい。軸Cは、本体3に固定された方向を向いている。軸Cは、本体3の左右方向と前後方向の両方に交差(例えば直交)する方向を向いていてよい。なお、本体3の左右方向と前後方向は、本体3が水平姿勢にある状態では水平方向を向いている。また、先端部7bは、中間部7dに対して回転可能に連結されていてよい。中間部7dは、基端部7aに対して回転可能に連結されていてよい。
【0021】
移動ロボット10が対象物1から上限距離以内の範囲に位置している状態で、持上機構7は次のように動作可能である。持上機構7が動作することにより、その先端部7bの把持装置7c(図2の例では、ロボットハンドを構成する1対の把持部材7c1)が対象物1を把持できる位置へ移動させられる。図2の例では、開いた状態の1対の把持部材7c1が、これらの間に対象物1が位置するようになる位置へ移動させられる。次いで、把持装置7cは対象物1を把持するように動作する。図2の例では、1対の把持部材7c1が閉じるように動作することで、1対の把持部材7c1で対象物1を挟んで把持する。次いで、把持装置7cが対象物1を把持した状態で、持上機構7が動作することにより、対象物1が地表面2から持ち上げられる。
【0022】
移動ロボット10には、図1のように、持上機構7の動作を制御する動作制御部9が設けられる。動作制御部9は、後述する操作装置20Bにより生成された動作指令を、操縦側の通信部19と移動ロボット側の通信部15を介して受ける。動作制御部9は、受けた動作指令が示す動作を持上機構7が行うように持上機構7を制御する。この時、動作制御部9は、持上機構7を駆動する駆動装置11を制御することにより持上機構7の動作を制御する。駆動装置11は、図2の例では、中間部7dを構成するアーム同士の連結部に設けられ両アームを互いに対して回転駆動するアクチュエータと、本体3に対して基端部7aを軸C回りに回転駆動するアクチュエータと、中間部7dに対して先端部7bを回転駆動するアクチュエータと、1対の把持部材7c1を開閉させるアクチュエータとを含んでよい。各アクチュエータは、例えばサーボモータであってよいが、他の装置であってもよい。
【0023】
・画像表示装置に用いられるデータを取得する構成
移動ロボット10には、カメラ13が設けられる。カメラ13は、対象物1を含む領域を撮像して当該領域の画像データを生成する。カメラ13は、図2の例では、移動ロボット10の本体3に設けられたものであるが、図2の破線で示すように持上機構7(例えば先端部7b)に設けられたものであってもよい。また、複数のカメラが移動ロボット10に設けられ、これらの中から使用するカメラを、操作装置20Bの操作により選択してもよい。この場合、以下においてカメラ13は、選択されたカメラである。カメラ13が生成した画像データは、図1のように、移動ロボット10に設けられた移動ロボット側の通信部15から画像表示装置20Aへ送信される。通信部15による送信は、無線通信を利用して行われてよい。
【0024】
移動ロボット10には、図1のように姿勢センサ17が設けられる。姿勢センサ17は、水平面に対するカメラ13の姿勢を特定可能な情報(以下で姿勢情報という)を検出する。姿勢センサ17が検出した姿勢情報は、移動ロボット側の通信部15から画像表示装置20Aへ送信される。
【0025】
カメラ13が本体3に設けられている場合には、姿勢センサ17は、本体3またはカメラ13に設けられたジャイロスコープ17aを用いたものであってよい。
【0026】
カメラ13が持上機構7の先端部7bに設けられている場合には、姿勢センサ17は、例えば、本体3に設けられたジャイロスコープ17aと、本体3に対する持上機構7の各部の動作量を検出する動作量検出部17bを含む。この場合、姿勢情報は、ジャイロスコープ17aを用いて検出した、水平面に対する本体3の姿勢と、動作量検出部17bが検出した持上機構7の各部の動作量とを含む。持上機構7の各部の動作量は、図2の例では、中間部7dを構成する複数のアームの互いに対する回転角度、基端部7aの軸C回りの回転角度、および中間部7dに対する先端部7bの回転角度を含む。これらの回転角度は、それぞれ、アームと基端部7aと先端部7bの予め定めた基準回転位置からの回転角度を意味してよい。
【0027】
<遠隔操縦側装置の構成>
遠隔操縦側装置20は、図1のように、画像表示装置20Aと操作装置20Bとを備える。画像表示装置20Aは、操縦側の通信部19とディスプレイ21と表示制御装置23を備える。
【0028】
操縦側の通信部19は、移動ロボット10のカメラ13により生成され移動ロボット側の通信部15から送信された画像データを受ける。この画像データは、操縦側の通信部19から表示制御装置23(表示制御部23b)に入力される。操縦側の通信部19は、移動ロボット10の姿勢センサ17により検出され移動ロボット側の通信部15から送信された姿勢情報を受ける。この姿勢情報は、操縦側の通信部19から表示制御装置23(すなわち、後述の方向計算部23aと表示制御部23b)に入力される。
【0029】
ディスプレイ21は、操縦側の通信部19が受けた画像データを表示するためのものである。この画像データは、移動ロボット10の持上機構7を人が遠隔操縦する際に人が参照するために表示される。図3(A)は、ディスプレイ21の画面21aに表示された画像データを示す。
【0030】
表示制御装置23は、入力された姿勢情報に基づいて、水平面を示す水平面指標Mhと鉛直方向を示す鉛直指標Mvを、入力された画像データとともにディスプレイ21に表示させる。表示制御装置23は、方向計算部23aと表示制御部23bを含む。水平面指標Mhは、互いに交差する複数の水平方向を示す。
【0031】
方向計算部23aは、入力された姿勢情報に基づいて、上述の画像データにおける水平面の方向と鉛直方向の一方または両方を求める。図3(B)は、図3(A)の画像データにおいて、方向計算部23aが求めた水平面Hの方向(互いに直交する2つの水平方向)Dh1,Dh2と鉛直方向Dvを表わしたものである。
【0032】
一例では、方向計算部23aは、姿勢情報に基づいて、図3(B)に示すように画像データにおける設定位置Ps(設定画素)での水平面Hの方向Dh1,Dh2と鉛直方向Dvを求める。ただし、設定位置Psは、表示される上述の画像データにおいては定められた画素の位置であり、当該位置に対応する現実世界の位置は、当該画像データの取得時にカメラ13から設定距離だけ離れているとする。すなわち、上述の画像データが、現実世界における対象物1と、ある位置を撮像したものと仮定して、画像データにおける当該ある位置が設定位置Psとなり、当該撮像時における当該ある位置とカメラ13との現実世界の距離が設定距離である。このような設定位置と設定距離は、予め定められて方向計算部23aに設定されていてよい。
【0033】
なお、図3(B)の水平方向Dh1,Dh2、鉛直方向Dv、設定位置Ps、水平面H(図3(B)では水平面に含まれる破線の水平フレームH)は、説明のために図示したものであり、実際にはディスプレイ21に表示されなくてもよい。
【0034】
カメラ13が本体3に設けられている場合には、方向計算部23aは、姿勢情報と、本体3に対するカメラ13の既知の向きに基づいて、画像データにおける、設定位置Psでの水平面Hの方向Dh1、Dh2と鉛直方向Dvの一方または両方を求める。カメラ13が持上機構7の先端部7bに設けられている場合には、方向計算部23aは、姿勢情報(水平面に対する本体3の姿勢と持上機構7の各部の動作量を含む)と、先端部7bに対するカメラ13の既知の向きと、先端部7bにおけるカメラ13の既知の位置と、持上機構7の各部の既知の寸法(図の例では、各アームの長さ、基端部7aの寸法など)に基づいて、設定位置Psでの水平面Hの方向Dh1、Dh2と鉛直方向Dvの一方または両方を求める。
【0035】
表示制御部23bは、方向計算部23aが求めた、設定位置Psでの水平面Hの方向Dh1、Dh2と鉛直方向Dvの一方または両方に基づいて、設定位置Psを含む水平面を表わす水平面指標Mhと、鉛直指標Mvを上述の画像データとともにディスプレイ21に表示させる。例えば、表示制御部23bは、水平面指標Mhと鉛直指標Mvを上述の画像データの上に重ねて表示させる。鉛直指標Mvは、上述の設定位置Psに表示されてよい。図4は、表示制御部23bによりディスプレイ21に表示させられた画像データと水平面指標Mhと鉛直指標Mvなどの一例を示す。
【0036】
水平面指標Mhは、画像データにおいて表示される水平面の画像であってよい。この場合、水平面指標Mhは、例えば、図4のように、当該水平面に位置するように3次元的に表示される格子の画像であってよい。この格子は、例えば、図4のように、画面21aの左右方向に沿う方向に延び画像データの奥行方向に格子間隔をおいて配置された複数の線と、画像データの奥行方向に延び画面21aの左右方向に沿う方向に格子間隔をおいて配置された複数の線とを含んでよい。なお、表示制御部23bは、水平面指標Mhとしての水平面の画像(例えば上記格子の画像)を、画像データにおける設定範囲にわたって表示してよい。設定範囲は、当該画像データの取得時におけるカメラ13からの距離の指定範囲(例えば1mから2mである範囲)に対応する範囲である。
【0037】
表示制御部23bは、上述のように画像データと水平面指標Mhと鉛直指標Mvに加えて、更に次の水平面指標Mhの寸法と本体3からの距離の一方または両方を、ディスプレイ21に表示させてもよい。
【0038】
・水平面指標の寸法の表示
表示制御部23bは、水平面指標Mhを画像データに重ねてディスプレイ21に表示させ、かつ、水平面指標Mhの寸法を水平面指標Mhと関連付けてディスプレイ21に表示させる。水平面指標Mhの寸法は、水平面指標Mhの一部の寸法であってもよいし、水平面指標Mhの全体の寸法であってもよい。表示制御部23bは、前者の場合、水平面指標Mhの一部(図4の例では、画面21aの左右方向に沿った格子間隔と画像データの奥行方向に沿った格子間隔)の寸法を当該一部と関連付けてディスプレイ21に表示させ、後者の場合、水平面指標Mhの全体の寸法を当該全体と関連付けてディスプレイ21に表示させてよい。なお、水平面指標Mhの寸法とは、対応する現実世界の寸法を意味する。すなわち、水平面指標Mhが現実世界にあると仮定し、かつ、上述の画像データが、対象物1と水平面指標Mhを撮像したものであると仮定して、現実世界の水平面指標Mhの寸法(一部または全体の寸法)が、ディスプレイ21に表示される上記寸法である。
【0039】
図4の例では、水平面指標Mhの一部である格子間隔の寸法は、格子間隔を表わす矢印A1,A2と、矢印A1,A2にそれぞれ付した数値P,Qにより表示されている。矢印A1は、画像データの左右方向に沿った格子間隔を表わし、矢印A2は、画像データの奥行方向に沿った格子間隔を表わす。図4において、矢印A1,A2は、表示される位置により、格子間隔の寸法と関連付けられている。
【0040】
表示制御部23bは、例えば、上述した設定位置Psと設定距離とカメラ13の特性などに基づいて、水平面指標Mhの寸法を算出して、当該寸法を上述のようにディスプレイ21に表示させる。
【0041】
・本体からの距離の表示
表示制御部23bは、本体3上の設定点(例えば本体3の前端)から、表示された水平面指標Mhまたは鉛直指標Mvまでの距離(単に指標距離ともいう)を、当該水平面指標Mhまたは鉛直指標Mv(例えば当該指標Mh,Mv上の設定点)と関連付けてディスプレイ21に表示させる。指標距離は、画像データにおける水平面指標Mhまたは鉛直指標Mv上の設定点に対応する現実世界での位置と、本体3上の設定点との実際の距離であってよい。指標距離は、水平方向の距離であってよい。2つの位置の水平方向の距離(指標距離または後述の先端部距離)とは、当該2つの位置(例えば本体3上の設定点と後述の設定点P1又はP2)を1つの水平面に鉛直方向に投影した場合に、投影された当該2つの位置同士の距離である(以下、同様)。図4(A)又は図4(B)の例では、指標距離は、本体3上の設定点から水平面指標Mh上の設定点P1又はP2までの水平方向の距離である。図5は、図4(A)又は図4(B)の場合について、水平方向(本体3の前後方向を含む鉛直面と直交する水平方向)から見た概念図である。
【0042】
図4(A)では、設定点P1は、水平面指標Mh(例えば格子の画像の水平面指標Mh)における中間位置にある点である。この中間位置は、水平面指標Mhの中央部にある位置(例えば水平面指標Mhの中心)であってよいが、これに限定されない。図4(A)では、指標距離は、矢印A3の表示位置により水平面指標Mh上の設定点P1と関連付けて、矢印A3に付した数値R1により表示されている。
【0043】
図4(B)では、設定点P2は、水平面指標Mh(例えば格子の画像の水平面指標Mh)において最も手前側の点である。ここで、「手前側」とは、本体3に近い側を意味する。すなわち、「最も手前側の点」は、水平面指標Mh上の各点が対応する現実世界の各点のうち本体3の上記設定点に最も近い点に対応する点であってよい。図4(B)では、指標距離は、矢印A3の表示位置により水平面指標Mh上の設定点P2と関連付けて、矢印A3に付した数値R2により表示されている。
【0044】
指標距離は、カメラ13の特性などに基づいて表示制御部23bにより求められてよい。カメラ13が本体3に設けられている場合には、表示制御部23bは、本体3上の設定点の既知の位置と、本体3に対するカメラ13の既知の取付位置及び取付姿勢と、水平面に対する本体3の姿勢と、上記設定位置Psと設定距離と、水平面指標Mhまたは鉛直指標Mv上の設定点(図4(A)(B)では、設定点P1又はP2)の位置と、カメラ13の特性とに基づいて、指標距離を求めてよい。カメラ13が持上機構7の先端部7bに設けられている場合には、表示制御部23bは、本体3上の設定点の既知の位置と、先端部7bに対するカメラ13の既知の取付位置及び取付姿勢と、水平面に対する本体3の姿勢と、上記設定位置Psと設定距離と、水平面指標Mhまたは鉛直指標Mv上の設定点(図4(A)(B)では、設定点P1又はP2)の位置と、カメラ13の特性と、持上機構7の各部の動作量と、当該各部の既知の寸法に基づいて、指標距離を求めてよい。ここで、指標距離を求めるのに用いられる「水平面に対する本体3の姿勢と持上機構7の各部の動作量」は、該当する画像データをカメラ13が取得した時に移動ロボットの検出部(例えば上述のジャイロスコープ17aや動作量検出部17b)により検出されたものであり、表示制御装置23に入力された上述の姿勢情報に含まれているものであってよい。なお、指標距離が、水平方向の距離ではなく、3次元的な距離である場合には、指標距離を求めるのに、水平面に対する本体3の姿勢を用いなくてもよい。
【0045】
また、表示制御部23bは、上述の指標距離とともに、本体3上の上記設定点から持上機構7の先端部7bまでの距離(先端部距離という)をディスプレイ21に表示させてもよい。この場合、表示制御部23bは、入力された持上機構7の各部の動作量と、持上機構7の各部の既知の寸法と、本体3上の上記設定点の既知の位置と、水平面に対する本体3の姿勢とに基づいて、本体3上の上記設定点から持上機構7の先端部7bまでの先端部距離を算出する。例えば図4のように、先端部距離としてScmが予め定めた位置(例えば画像データの右下)に表示されてよい。ここで、先端部距離の算出に用いられる「水平面に対する本体3の姿勢と持上機構7の各部の動作量」は、該当する画像データをカメラ13が取得した時に移動ロボットの検出部(例えば上述のジャイロスコープ17aや動作量検出部17b)により検出されたものであり、表示制御装置23に入力された上述の姿勢情報に含まれているものであってよい。なお、上述の指標距離が水平方向の距離である場合には、先端部距離は、水平方向の距離であり、上述の指標距離が3次元的な距離である場合には、先端部距離は、3次元的な距離であるのがよい。なお、先端部距離が、水平方向の距離ではなく、3次元的な距離である場合には、先端部距離を求めるのに、水平面に対する本体3の姿勢を用いなくてもよい。
【0046】
<操作装置の構成>
操作装置20Bは、人が持上機構7を遠隔操縦するためのものである。図1において、操作装置20Bは、人に操作される操作部25と、操作部25になされた操作に応じた動作指令を生成する指令生成部27とを含む。
【0047】
操縦側の通信部19は、指令生成部27により生成された動作指令を、無線で移動ロボット10へ送信する。移動ロボット側の通信部15は、操縦側の通信部19から送信された動作指令を受信して動作制御部9へ入力する。
【0048】
操作部25として、持上機構7の先端部7bを本体3に対して移動させるための移動操作部25aと、把持装置7cに把持動作を実行させるための把持操作部25bとが設けられていてよい。
【0049】
移動操作部25aの操作によって指令生成部27が生成する動作指令は、例えば、移動ロボット10の本体3に対する設定方向(以下で単に設定方向という)における先端部7bの移動を示してよい。すなわち、設定方向の移動を指令する操作を移動操作部25aに行うことができ、当該操作により、指令生成部27は、当該設定方向の移動を示す動作指令を生成する。
【0050】
複数の設定方向があり、各設定方向について当該設定方向の移動を指令する操作を人が移動操作部25aに行えるように移動操作部25aが構成されていてよい。この場合、2つ以上の設定方向の各々の移動を指令する操作を人が移動操作部25aに同時に行えるように移動操作部25aが構成されていてもよい。
【0051】
移動操作部25aは、例えば、1つ又は複数のレバーを含むものであってよい。この場合、各設定方向は、レバーが操作されるいずれかの方向(例えばレバーを基準姿勢から傾ける方向)に対応していてよい。レバーが、いずれかの設定方向に対応する方向に操作されると、設定方向の移動を示す動作指令が指令生成部27により生成される。なお、レバーが、2つの設定方向にそれぞれ対応する2つの方向の成分を有する方向に操作された場合、指令生成部27は、当該2つの設定方向の各々の移動を示す動作指令を同時に生成してよい。なお、レバーが設定方向に対応する方向に操作されている時間だけ、指令生成部27は当該設定方向の移動を示す動作指令を生成してよい。これにより、当該時間だけ先端部7bは当該設定方向に移動する。
【0052】
一例では、複数の設定方向は、次の(1)~(3)であってよい。
(1)本体3の左右方向
(2)本体3の前後方向
(3)本体3の左右方向と本体3の前後方向の両方に交差(例えば直交)する方向
【0053】
この場合、移動操作部25aは、例えば第1および第2のレバーを含んでよい。第1のレバーを操作者から見て右側に傾けると、上記(1)の左右方向のうち右方向への先端部7bの移動を示す動作指令が指令生成部27により生成される。第1のレバーを操作者から見て左側に傾けると、上記(1)の左右方向のうち左方向への先端部7bの移動を示す動作指令が指令生成部27により生成される。同様に、第1のレバーを操作者から見て前側に傾けると、上記(2)の前後方向のうち前方向への先端部7bの移動を示す動作指令が指令生成部27により生成され、第1のレバーを操作者から見て後側に傾けると、上記(2)の前後方向のうち後方向への先端部7bの移動を示す動作指令が指令生成部27により生成される。また、同様に、第2のレバーを操作者から見て前側に傾けると、上記(3)の方向(互いに逆向きの2方向)のうち一方の方向への先端部7bの移動を示す動作指令が指令生成部27により生成され、第2のレバーを操作者から見て後側に傾けると、上記(3)の方向のうち他方の方向への先端部7bの移動を示す動作指令が指令生成部27により生成される。ただし、移動操作部25aは、他の構成を有していてもよい。
【0054】
別の例では、複数の設定方向は、次の(4)~(6)であってもよい。
(4)持上機構7の基端部7aの軸Cまわりの方向。
(5)持上機構7が向いている方向。ここで、持上機構7が向いている方向とは、持上機構7の基端部7aから先端部7bに向かう方向であって、本体3の左右方向と本体3の前後方向を含む平面と平行な方向である。
(6)本体3の左右方向と本体3の前後方向の両方に交差(例えば直交)する方向。
【0055】
この場合においても、上記(4)~(6)の各設定方向について、当該設定方向の移動を指令する操作を人が移動操作部25aに行えるように移動操作部25aが構成されている。
【0056】
また、把持操作部25bは、把持装置7cが対象物1を把持する動作を指令するための操作ができるように構成されていてよい。例えば、移動操作部25aの操作により先端部7bの把持装置7cが対象物1を把持できる位置に移動させられた状態で、把持を実行するための操作が把持操作部25b(例えばボタン)になされることにより、把持装置7cは、対象物1を把持する動作を行う。当該動作は、図2図3の例では、開いている1対の把持部材7c1が閉じることにより対象物1を挟んで把持する動作であってよい。
【0057】
<画像表示方法>
図6は、上述した遠隔操縦システム100において行われる画像表示方法を示すフローチャートである。
【0058】
ステップS1において、移動ロボット10が、遠隔操縦されることにより又は自律移動により、対象物1が置かれている場所へ移動し、持上機構7で対象物1を把持して持ち上げられる位置で停止する。なお、自律移動の場合には、当該場所を示す位置情報が移動ロボット10の移動制御部(図示せず)に与えられる。
【0059】
ステップS2において、移動ロボット10のカメラ13が、対象物1を含む領域を撮像して、この領域の画像データを生成する。
【0060】
ステップS3において、ステップS2を行う時に、移動ロボット10の姿勢センサ17が上述の姿勢情報を検出する。ステップS2とステップS3は同時に行われてよい。
【0061】
ステップS4において、ステップS2、S3でそれぞれ得た画像データと姿勢情報が、移動ロボット側の通信部15から遠隔操縦側装置20へ送信される。
【0062】
ステップS5では、ステップS4で送信された画像データと姿勢情報が操縦側の通信部19に受信されて表示制御装置23に入力される。
【0063】
ステップS6において、表示制御装置23の方向計算部23aは、上述したように、ステップS5で入力された姿勢情報などに基づいて、ステップS5で入力された画像データにおける設定位置Psでの水平面の方向と鉛直方向の一方または両方を求める。
【0064】
ステップS7において、表示制御部23bは、ステップS5で入力された画像データをディスプレイ21に表示させるとともに、ステップS6で求めた設定位置Psでの水平面の方向と鉛直方向の一方または両方に基づいて、水平面指標Mhと鉛直指標Mvをディスプレイ21に表示させる。この時、表示制御部23bは、水平面指標Mhと鉛直指標Mvを当該画像データにおける上記設定位置Psに表示させてよい。
【0065】
また、ステップS7において、表示制御装置23の表示制御部23bは、上述のように、カメラ13の特性などに基づいて水平面指標Mhの寸法を算出して、水平面指標Mhの寸法を水平面指標Mhと関連付けてディスプレイ21に表示させてもよい。
【0066】
また、ステップS7において、表示制御装置23の表示制御部23bは、上述のように、カメラ13の特性などに基づいて、本体3上の設定点から水平面指標Mhまたは鉛直指標Mv上の設定点までの距離(指標距離)を求め、指標距離を、水平面指標Mhまたは鉛直指標Mv上の設定点と関連付けてディスプレイ21に表示させてもよい。
また、表示制御部23bは、上述のように、指標距離とともに、本体3上の上記設定点から持上機構7の先端部7bまでの距離(先端部距離)をディスプレイ21に表示させてもよい。
【0067】
上述したステップS2~S7は、繰り返し行われる。これによりディスプレイ21に表示される画像データ、水平面指標Mh、鉛直指標Mv、水平面指標Mhの寸法、および指標距離を見ながら、操作者は操作部25を操作することにより、持上機構7により対象物1を把持して持ち上げる。
【0068】
<実施形態の効果>
上述した実施形態では、例えば以下の効果が得られる。
【0069】
水平面に対するカメラ13の姿勢を特定可能な情報を姿勢情報として、移動ロボット10に設けられた姿勢センサ17が検出する。この姿勢情報に基づいて、水平面の方向を示す水平面指標Mhと鉛直方向を示す鉛直指標Mvの一方または両方を、対象物1の領域を撮像した画像データとともにディスプレイ21に表示させる。したがって、人は、持上機構7を遠隔操縦する際に、表示された水平面指標Mhと鉛直指標Mvの一方または両方を見ることで画像データにおける水平面の方向または鉛直方向を容易に認識できる。したがって、対象物1が水平面に対して傾いた斜面に置かれている場合であっても、対象物1を把持して持ち上げるように移動ロボット10の持上機構7を遠隔操縦することが容易になる。例えば、操作者は、持上機構7が対象物1を鉛直方向に持ち上げるように持上機構7を遠隔操縦することが容易になる。
【0070】
対象物1を含む領域をカメラ13で撮像する時に姿勢センサ17で検出した姿勢情報に基づいて、方向計算部23aが、画像データにおける水平面の方向と鉛直方向の一方または両方を求める。このように求めた水平面の方向と鉛直方向の一方または両方に基づいて、表示制御部23bが、水平面指標Mhと鉛直指標Mvをディスプレイ21に表示させることができる。
【0071】
水平面指標Mhが、画像データにおける水平面に位置するように3次元的に表示される格子の画像である場合には、人は、このような格子が延びている方向を見ることで、水平面が延びている方向を認識しやすくなる。
【0072】
表示制御部23bは、水平面指標Mhを画像データに重ねてディスプレイ21に表示させ、かつ、水平面指標Mhまたは鉛直指標Mvの寸法をディスプレイ21に表示させる場合には、人は、この寸法を参照して、画像データにおいて水平面指標Mhまたは鉛直指標Mvと対象物1との大きさを比較することで、対象物1の寸法を認識しやすくなる。
【0073】
表示制御部23bは、本体3上の設定点から、表示された水平面指標Mhまたは鉛直指標Mv上の設定点までの距離をディスプレイ21に表示させる場合には、人は、この距離を参照して、画像データにおいて水平面指標Mhまたは鉛直指標Mvの位置と対象物1の位置とを比較することで、本体3から対象物1までの距離を認識しやすくなる。
【0074】
表示制御部23bは、指標距離とともに、本体3上の上記設定点から持上機構7の先端部7bまでの距離(先端部距離)をディスプレイ21に表示させる場合には、人は、指標距離と先端部距離を参照することで、水平面指標Mhまたは鉛直指標Mvと先端部7b(把持装置7c)との距離の差を確認できる。この場合、人は、さらに、画像データにおける水平面指標Mhまたは鉛直指標Mvと対象物1との位置関係を見ることで、対象物1と先端部7b(把持装置7c)との位置関係を認識しやすくなる。その結果、把持装置7cで対象物1の所望の箇所を把持するように持上機構7を遠隔操縦しやすくなる。
【0075】
<変更例>
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1~3のいずれかを採用してもよいし、変更例1~3の複数を任意に組わせて採用してもよい。この場合、以下で説明しない点は、上述と同じであってよい。
【0076】
(変更例1)
方向計算部23aは、移動ロボット10に設けられていてもよい。この場合、画像データにおける水平面の方向と鉛直方向の一方または両方は、方向計算部23aにより求められて、移動ロボット側の通信部15と操縦側の通信部19を介して表示制御部23bへ入力される。
【0077】
(変更例2)
表示制御部23bは、水平面指標Mhと鉛直指標Mvのうち一方(水平面指標Mhまたは鉛直指標Mv)のみをディスプレイ21に表示させてもよい。
【0078】
(変更例3)
なお、上述のカメラ13の代わりに、レーザセンサ(例えばレーザレンジファインダLRF)を用いてもよい。この場合、上述において、画像データは、レーザセンサの計測により生成された距離画像データとなる。
【符号の説明】
【0079】
1 対象物、2 地表面、3 本体、5 移動機構、5a 回転体、7 持上機構、7a 基端部、7b 先端部、7c 把持装置、7c1 把持部材、7d 中間部、9 動作制御部、10 移動ロボット、11 駆動装置、13 カメラ、15 移動ロボット側の通信部、17 姿勢センサ、17a ジャイロスコープ、17b 動作量検出部、19 操縦側の通信部、20 遠隔操縦側装置、20A 画像表示装置、20B 操作装置、21 ディスプレイ、21a 画面、23 表示制御装置、23a 方向計算部、23b 表示制御部、25 操作部、25a 移動操作部、25b 把持操作部、27 指令生成部、100 遠隔操縦システム、C 軸、Dh1,Dh2 水平面の方向(水平方向)、Dv 鉛直方向、H 水平面(水平フレーム)、Ps 設定位置、Mh 水平面指標、Mv 鉛直指標
図1
図2
図3
図4
図5
図6