(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】車両用バッテリパック支持装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20220815BHJP
B62D 21/02 20060101ALI20220815BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220815BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D21/02 A
H01M50/20
(21)【出願番号】P 2018121978
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直龍
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/104034(WO,A1)
【文献】特開2017-71253(JP,A)
【文献】特開2004-71281(JP,A)
【文献】実開昭55-163250(JP,U)
【文献】特開平8-324453(JP,A)
【文献】特開2010-36901(JP,A)
【文献】特開昭49-15112(JP,A)
【文献】特開2012-254690(JP,A)
【文献】実開平6-12149(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 21/02
H01M 50/20
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のラダーフレームを構成するサイドレールにバッテリパックを懸架する車両用バッテリパック支持装置であって、
前記サイドレールの外側面に連結されるフレーム側ブラケットと、
前記フレーム側ブラケットと前記バッテリパックとを弾性的に連結する弾性連結部と、を備え、
前記フレーム側ブラケットは、前記外側面に連結されるブラケット背面、前記ブラケット背面に直交しながら連続しつつ前記弾性連結部を支持するブラケット底面、及び前記ブラケット背面と前記ブラケット底面との両方に直交しながら連続するブラケット側面が形成されるように、折り曲げた複数の板状部材が積層されてなる、車両用バッテリパック支持装置。
【請求項2】
前記ブラケット側面は、部分ごとに前記板状部材の積層枚数が異なる、請求項1に記載の車両用バッテリパック支持装置。
【請求項3】
前記ブラケット側面は、前記ブラケット背面との境界、及び前記ブラケット底面との境界がなす角部を含む領域において、前記板状部材の積層枚数が最多である、請求項2に記載の車両用バッテリパック支持装置。
【請求項4】
前記ブラケット側面は、前記サイドレールから
前記車両の車幅方向の外側に離間する方向に向かって前記板状部材の積層枚数が減少する、請求項3に記載の車両用バッテリパック支持装置。
【請求項5】
前記ブラケット側面は、前記弾性連結部から
前記車両の車高方向の上側に離間する方向に向かって前記板状部材の積層枚数が減少する、請求項3に記載の車両用バッテリパック支持装置。
【請求項6】
前記ブラケット側面は、前記領域が、
前記車高方向に対して前記サイドレールの底面よりも高い位置まで延在する、請求項
5に記載の車両用バッテリパック支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリパック支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、環境負荷低減の観点に着目し、エンジンのような内燃機関に代えて走行用動力源としてモータを利用する電気自動車、及び当該内燃機関と当該モータとを併用するハイブリッド自動車等の電動車両の開発が進んでいる。特に、これらの電動車両においては、当該モータを駆動するために駆動用のバッテリが搭載され、当該バッテリから当該モータへ電力を供給することにより、車両を走行させるために必要となる動力が得られる。近年、このような電動車両に関し、トラック等の商用車の分野においても、その開発が行われている。例えば、特許文献1には、駆動用のバッテリパックを電動トラックのラダーフレームに保持する保持構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的にトラックのラダーフレームは、車両重量を安定的に支持可能な剛性を有しつつも、僅かな捩れや撓みを許容する柔軟性を備えることにより、例えば走行時に路面から受ける衝撃力を吸収できるよう設計されている。一方、支持装置を介してラダーフレームに支持されるバッテリパックは、ラダーフレームの変形に伴う応力が入力されることを想定して設計されていない。そのため、支持装置は、ラダーフレームからバッテリパックへ伝達される応力を低減するため、例えば弾性体を介して変位を吸収できる構成とするなどの対策を講じる必要がある。
【0005】
しかしながら、このような支持装置は、バッテリパックの重量やラダーフレームとバッテリパックとの接続方向などによって剛性要求が異なるため、仕様ごとに設計・製造が行われる場合には、製造コストが増大する虞が生じる。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、様々な剛性要求に対応しながら、製造コストの低減を図ることのできる車両用バッテリパック支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様に係る車両用バッテリパック支持装置は、車両のラダーフレームを構成するサイドレールにバッテリパックを懸架する車両用バッテリパック支持装置であって、前記サイドレールの外側面に連結されるフレーム側ブラケットと、前記フレーム側ブラケットと前記バッテリパックとを弾性的に連結する弾性連結部と、を備え、前記フレーム側ブラケットは、前記外側面に連結されるブラケット背面、前記ブラケット背面に直交しながら連続しつつ前記弾性連結部を支持するブラケット底面、及び前記ブラケット背面と前記ブラケット底面との両方に直交しながら連続するブラケット側面が形成されるように、折り曲げた複数の板状部材が積層されてなる。
【0008】
車両用バッテリパック支持装置は、フレーム側ブラケットと弾性連結部とを介して、車両に搭載されるバッテリパックをサイドレールに懸架する。ここで、フレーム側ブラケットは、サイドレールの外側面との連結面を構成するブラケット背面、弾性連結部との連結面を構成するブラケット底面、及びブラケット背面とブラケット底面との両方に直交しながら連続するブラケット側面からなる。また、フレーム側ブラケットは、ブラケット背面、ブラケット底面、及びブラケット側面が、それぞれ折り曲げた複数の板状部材からなり、これらが積層されることにより一体に形成されている。これにより、フレーム側ブラケットは、バッテリパックの懸架において要求される剛性を、積層される板状部材の枚数によって調整することができる。また、フレーム側ブラケットは、積層される複数の板状部材が、いずれも共通のプレート材料を加工して形成することができる。従って、車両用バッテリパック支持装置は、様々な剛性要求に対応しながら、製造コストの低減を図ることができる。
【0009】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様に係る車両用バッテリパック支持装置においては、上記した本発明の第1の態様において、前記ブラケット側面は、部分ごとに前記板状部材の積層枚数が異なってもよい。
【0010】
本発明の第2の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、フレーム側ブラケットのブラケット側面は、板状部材の積層枚数を増加させることにより剛性を強化する部分と、板状部材の積層枚数を減少させることにより軽量化を図る部分とをそれぞれ形成することができる。
【0011】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、上記した本発明の第2の態様において、前記ブラケット側面は、前記ブラケット背面との境界、及び前記ブラケット底面との境界がなす角部を含む領域において、前記板状部材の積層枚数が最多であってもよい。
【0012】
本発明の第3の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、ブラケット側面は、バッテリパックを支持する上で最も応力が集中する領域において、板状部材を最も多く積層して剛性を強化することができる。
【0013】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様に係る車両用バッテリパック支持装置においては、上記した本発明の第3の態様において、前記ブラケット側面は、前記サイドレールから離間する方向に向かって前記板状部材の積層枚数が減少してもよい。
【0014】
本発明の第4の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、ブラケット側面は、比較的応力を受けやすいサイドレールとフレーム側ブラケットとの連結面に対して、サイドレールから離間する方向に向かって板状部材の積層枚数が減少することにより、応力の緩和に応じた効率的な軽量化を図ることができる。
【0015】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様に係る車両用バッテリパック支持装置においては、上記した本発明の第3の態様において、前記ブラケット側面は、前記弾性連結部から離間する方向に向かって前記板状部材の積層枚数が減少してもよい。
【0016】
本発明の第5の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、ブラケット側面は、比較的応力を受けやすい弾性連結部とフレーム側ブラケットとの連結面に対して、弾性連結部から離間する方向に向かって板状部材の積層枚数が減少することにより、応力の緩和に応じた効率的な軽量化を図ることができる。
【0017】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様に係る車両用バッテリパック支持装置においては、上記した本発明の第3乃至5のいずれかの態様において、前記ブラケット側面は、前記領域が、車高方向に対して前記サイドレールの底面よりも高い位置まで延在してもよい。
【0018】
本発明の第6の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、フレーム側ブラケットのブラケット背面において、サイドレールの底面の高さに相当する位置に応力が集中したとしても、当該位置をブラケット側面の最も剛性が高い領域でフレーム側ブラケットを補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る車両用バッテリパック支持装置が搭載された車両の全体構成を概略的に示す上面図である。
【
図2】車両に搭載されるバッテリパックの概形を表す斜視図である。
【
図3】サイドレールとバッテリパックとを接続する支持装置の構成及び接続形態を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る支持装置を部分的に示す分解斜視図である。
【
図6】車両前後方向から見た支持装置の構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0021】
図1は、本発明に係る車両用バッテリパック支持装置が搭載された車両1の全体構成を概略的に示す上面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、ラダーフレーム10、キャブ20、荷箱30、車輪機構40、駆動ユニット50、駆動電力供給部60、バッテリパック70、及び「車両用バッテリパック支持装置」としての支持装置80を備える電動トラックである。なお、
図1では、車両1の上面からキャブ20及び荷箱30を透過するように見た場合の上面図として表している。
【0022】
本実施形態において、車両1は、走行用駆動源として電動機(後述するモータ51)を備える電気自動車として想定されているが、エンジンを更に備えるハイブリッド自動車であってもよい。また、車両1は電動トラックに限定されることなく、電動塵芥車など、車両を駆動するためのバッテリを備える他の商用車であってもよい。
【0023】
ラダーフレーム10は、サイドレール11と複数のクロスメンバ12を有する。また、サイドレール11は、車両1の車両前後方向Xに沿って延在し、互いに車幅方向Yに対して平行に配置される左サイドレール11L及び右サイドレール11Rからなる。複数のクロスメンバ12は、左サイドレール11Lと右サイドレール11Rとを連結している。すなわち、ラダーフレーム10は、いわゆる梯子型フレームを構成している。そして、ラダーフレーム10は、キャブ20、荷箱30、駆動ユニット50、駆動電力供給部60、バッテリパック70、及び車両1に搭載されるその他の重量物を支持する。
【0024】
キャブ20は、図示しない運転席を含む構造体であり、ラダーフレーム10の前部上方に設けられている。一方、荷箱30は、車両1によって搬送される荷物等が積載される構造体であり、ラダーフレーム10の後部上方に設けられている。
【0025】
車輪機構40は、本実施形態においては、車両前方に位置する左右の前輪41、2つの前輪41の車軸としてのフロントアクスル42、車両後方に位置し且つ左右に各2つ配置された後輪43、及び後輪43の車軸としてのリアアクスル44から構成される。そして、本実施形態に係る車両1においては、後輪43が駆動輪として機能するように駆動力が伝達され、車両1が走行することになる。尚、車輪機構40は、図示しないサスペンション機構を介してラダーフレーム10に懸架され、車両1の重量を支持する。
【0026】
駆動ユニット50は、モータ51、減速機構52、及び差動機構53を有する。モータ51は、後述する駆動電力供給部60から交流電力が供給されることにより、車両1の走行に必要な駆動力を発生させる。減速機構52は、図示しない複数のギアを含み、モータ51から入力される回転トルクを減速して差動機構53に出力する。差動機構53は、減速機構52から入力される動力を左右の後輪43に対して振り分ける。すなわち、駆動ユニット50は、減速機構52及び差動機構53を介して、モータ51の駆動トルクを車両の走行に適した回転速度に減速してリアアクスル44に駆動力を伝達する。これにより駆動ユニット50は、リアアクスル44を介して後輪43を回転させて車両1を走行させることができる。
【0027】
駆動電力供給部60は、いわゆるインバータであり、バッテリパック70から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ51へ供給し、車両1に対するアクセル操作に応じてモータ51の回転速度を制御する。
【0028】
バッテリパック70は、車両1を走行させるためのエネルギー源としてモータ51に電力を供給する二次電池である。バッテリパック70は、車両1に必要とされる電力を蓄えるために比較的大型で大容量のバッテリモジュール(図示せず)を内部に複数備える。また、バッテリパック70は、複数の電動補機とそれらに電力を供給する配電ユニットとが車両1に搭載されている場合には(いずれも図示せず)、当該配電ユニットにも電力を供給できるよう構成されていてもよい。
【0029】
支持装置80は、詳細を後述するように、バッテリパック70をラダーフレーム10に懸架するための接続部材である。支持装置80は、本実施形態においては、車幅方向Yに対してラダーフレーム10の両側にそれぞれ3つ(合計6つ)設けられている。ただし、支持装置80は、バッテリパック70の重量及び寸法に応じ、その数量を適宜変更することができる。
【0030】
図2は、車両1に搭載されるバッテリパック70の概形を表す斜視図である。バッテリパック70は、本実施形態においては、車両前後方向Xに対していずれも同じ長さの略直方体形状である第1バッテリ収容部71と第2バッテリ収容部72とが一体となるように形成されている。
【0031】
また、第1バッテリ収容部71は、車幅方向Yに対して、上記した左サイドレール11Lと右サイドレール11Rとの間に収まる幅に設定されている。一方、第2バッテリ収容部72は、車幅方向Yの長さが第1バッテリ収容部71よりも広い幅に設定され、車高方向Zの下方から第1バッテリ収容部71に連結されている。
【0032】
すなわち、バッテリパック70は、車両前後方向Xに垂直な平面における断面形状が逆T型となる形状を備えている。そして、バッテリパック70は、第1バッテリ収容部71及と第2バッテリ収容部72との幅の違いにより生じる段差部分をサイドレール11が通るように配置される。これにより、バッテリパック70は、左サイドレール11Lと右サイドレール11Rとの間、及びサイドレール11の下方のスペースを有効に利用して、バッテリの収容量を増加させている。
【0033】
また、バッテリパック70は、第2バッテリ収容部72の車幅方向Yの側面において、後述するバッテリ側ブラケット82を接続するための複数の支持装置取付領域73が設けられている。
【0034】
図3は、サイドレール11とバッテリパック70とを接続する支持装置80の構成及び接続形態を示す斜視図である。
図3は、より詳しくは、左サイドレール11Lに接続される1つの支持装置80について、車両1の左斜め前方から見た場合の斜視図である。
【0035】
ここで、サイドレール11は、車幅方向Yに垂直な平面を形成するウェブ11wと、車高方向Zに垂直な平面を形成する2つのフランジ11fとが連続する形状を有している。また、ウェブ11wには、車両1に各種の重量物を懸架するためのボルトを固定する貫通孔が格子状に形成されている。
【0036】
支持装置80は、フレーム側ブラケット81、バッテリ側ブラケット82、弾性連結部83、及びスペーサ84を備える。
【0037】
フレーム側ブラケット81は、サイドレール11の外側面、すなわちウェブ11wに対して連結される金属部材である。また、バッテリ側ブラケット82は、バッテリパック70の上記した支持装置取付領域73に固定される金属部材である。
【0038】
弾性連結部83は、フレーム側ブラケット81とバッテリ側ブラケット82とを車高方向Zの上下で弾性的に連結する連結部材である。スペーサ84は、サイドレール11とフレーム側ブラケット81との互いの接続面が離間している場合に、両者の間に介在する金属部材である。このため、サイドレール11とフレーム側ブラケット81とが離間していない場合には、スペーサ84が不要となる。
【0039】
このように、本実施形態の車両1においては、バッテリパック70は、バッテリ側ブラケット82、弾性連結部83、フレーム側ブラケット81、及びスペーサ84からなる支持装置80を介してサイドレール11に懸架される。このため、車両1の走行に伴いサイドレール11に捩れや撓みに伴う応力が発生した場合であっても、弾性連結部83は、その緩衝効果により、当該応力がバッテリパック70へ伝達される虞を低減することができる。
【0040】
図4は、本発明に係る支持装置80を部分的に示す分解斜視図である。より具体的には、
図4は、
図3におけるフレーム側ブラケット81、弾性連結部83、及びスペーサ84の接続形態を表している。
【0041】
本実施形態に係るフレーム側ブラケット81は、ブラケット背面81a、ブラケット底面81b、及び2つのブラケット側面81cからなり、それぞれの面が互いに直交するように形成されている。さらに、フレーム側ブラケット81は、後述するように、フレーム側ブラケット81を構成する複数の板状部材を一体に締結する複数の積層締結ボルト81dを含む。
【0042】
ブラケット背面81aは、車幅方向Yに垂直な平面を構成し、スペーサ84を介してサイドレール11の外側面に対して図示しない複数のボルトで連結される。ブラケット底面81bは、ブラケット背面81aに連続しつつ車高方向Zに垂直な平面を構成し、略中央に形成された開口部を利用して弾性連結部83を支持する。2つのブラケット側面81cは、ブラケット背面81aとブラケット底面81bとの両方に直交しながら両者に連続するように構成されている。
【0043】
弾性連結部83は、より詳しくは、座面部材83a、挿通部材83b、弾性部材83c、及び複数の締結部材83dからなる。座面部材83aは、フレーム側ブラケット81のブラケット底面81bに載置されると共に、複数の締結部材83dによってブラケット底面81bに固定される。挿通部材83bは、一部が座面部材83aから車高方向Zの上方に突出すると共に、座面部材83aに形成された開口部とブラケット底面81bの開口部とを貫通して車高方向Zの下方に位置するバッテリ側ブラケット82に固定される。弾性部材83cは、座面部材83aと挿通部材83bとの間に介在し、両者の相対変位に伴う応力を吸収する所謂ラバーブッシュである。
【0044】
ここで、フレーム側ブラケット81は、ブラケット背面81aがサイドレール11に対して車幅方向Yに連結され、ブラケット底面81bが弾性連結部83を介して車高方向Zの下方におけるバッテリパック70の重量を支持する。このため、2つのブラケット側面81cは、ブラケット背面81aとブラケット底面81bとの相対角度が広がることを防止している。
【0045】
図5は、フレーム側ブラケット81の分解斜視図である。フレーム側ブラケット81は、第1板金部材90、第2板金部材91、及び第3板金部材92からなり、これらの板状部材を積層して複数の積層締結ボルト81d(
図4参照)により一体に固定されて形成されている。ここで、第1板金部材90、第2板金部材91、及び第3板金部材92は、共通の板金をそれぞれの形状に合わせて切り出した上で、上記したブラケット背面81a、ブラケット底面81b、及び2つのブラケット側面81cを構成するように折り曲げて形成されている。
【0046】
第1板金部材90は、ブラケット背面81aの一部となる第1板金背面90a、第1板金背面90aから連続しつつブラケット底面81bの一部となる第1板金底面90b、及び第1板金背面90aから連続しつつブラケット側面81cの一部となる第1板金側面90cからなる。第1板金背面90aは、平面視した場合にはブラケット背面81aと略同一の形状を有している。第1板金底面90bは、平面視した場合には弾性連結部83の座面部材83aと略同一の形状を有している。第1板金側面90cは、平面視した場合には略直角三角形であるが、車幅方向Yに対する幅がブラケット側面81cよりも短く設定されている。
【0047】
第2板金部材91は、ブラケット背面81aの一部となる第2板金背面91a、第2板金背面91aから連続しつつブラケット側面81cの一部となる第2板金側面91c、及び第2板金側面91cから連続しつつブラケット底面81bの一部となる第2板金底面91bからなる。第2板金背面91aは、平面視した場合にはブラケット背面81aと略同一の形状を有している。第2板金底面91bは、平面視した場合には弾性連結部83の座面部材83aと略同一の形状を有しているが、2つの第2板金側面91cと連続するそれぞれの部分を分離するように両者の間にギャップGが形成されている。第2板金側面91cは、平面視した場合にはブラケット側面81cと略同一の形状を有している。尚、第2板金底面91bにギャップGが形成されていることにより、第1板金部材90、第2板金部材91、及び第3板金部材92が積層されたときの組み付け性が向上する。
【0048】
第3板金部材92は、ブラケット底面81bの一部となる第3板金底面92b、及び第3板金底面92bから連続しつつブラケット側面81cの一部となる第3板金側面92cからなる。第3板金底面92bは、平面視した場合には弾性連結部83の座面部材83aと略同一の形状を有している。第3板金側面92cは、平面視した場合には略直角三角形であるが、車高方向Zに対する高さがブラケット側面81cよりも低く設定されている。
【0049】
図6は、車両前後方向Xから見た支持装置80の構成を模式的に示す側面図である。より詳しくは、
図6は、車両前後方向Xの前方から支持装置80を見た場合のフレーム側ブラケット81の構成を透過的に示している。
【0050】
フレーム側ブラケット81は、ブラケット側面81cにおいて、
図6の第1積層領域93、第2積層領域94、及び第3積層領域95として示すように、部分ごとに板状部材の積層枚数が異なっている。
【0051】
より具体的には、第1積層領域93は、第1板金部材90、第2板金部材91、及び第3板金部材92が積層されている(
図6で領域Iとして図示される領域)。また、第2積層領域94は、第1板金部材90又は第3板金部材92のいずれか一方と、第
2板金部材
91とが積層されている(
図6で領域IIとして図示される領域)。そして、第3積層領域95は、第2板金部材91のみからなる(
図6の領域IIIとして図示される領域)。
【0052】
ここで、フレーム側ブラケット81は、上記したように、サイドレール11及び弾性連結部83に対する連結方向が互いに直交している。このとき、ブラケット側面81cにおいて、ブラケット側面81cとブラケット背面81aとの境界、及びブラケット側面81cとブラケット底面81bとの境界がなす角部Cを含む領域には、サイドレール11とバッテリパック70との相対変位に伴う応力が集中することになる。
【0053】
このため、フレーム側ブラケット81は、ブラケット側面81cの中でも、角部Cを含む領域において、板状部材の積層枚数を最多とする第1積層領域93を設定することにより剛性を強化し、集中する応力に対する頑健性を向上させている。
【0054】
また、ブラケット側面81cは、第1積層領域93と比較して相対的に応力が緩和される領域においては、その応力の大きさに応じて第2積層領域94又は第3積層領域95を設定し、板状部材が余分に積層されないようにすることにより重量及び材料コストを低減することができる。より具体的には、ブラケット側面81cは、車幅方向Yに対してはサイドレール11から離間する方向に向かって板状部材の積層枚数が減少し、また、車高方向Zに対しては、弾性連結部83から離間する方向に向かって板状部材の積層枚数が減少する。
【0055】
ここで、フレーム側ブラケット81は、バッテリパック70がサイドレール11に対して車幅方向Yに変位しようとした場合には、ロール方向の応力を受けることになる。より具体的には、
図6において、例えばバッテリパック70が車幅方向Yに対して右側に変位しようとした場合、バッテリパック70に連結するバッテリ側ブラケット82及び弾性連結部83も右側に変位しようとし、ブラケット背面81aには、サイドレール11の底面の高さに相当する位置Pを支点として、サイドレール11の側方から下方に回り込む方向の応力が発生する。このため、ブラケット背面81aは、サイドレール11の底面の高さに相当する位置Pにおいて応力が集中することになる。
【0056】
そこで、本実施形態に係るブラケット側面81cは、
図6において点Hで示すように、板状部材の積層枚数が最多である第1積層領域93が、車高方向Zに対してサイドレール11の底面よりも高い位置まで延在するように構成されている。これにより、フレーム側ブラケット81は、ブラケット側面81cの中で最も剛性の高い第1積層領域93において上記したロール方向の応力に対する頑健性を向上させている。
【0057】
以上のように、本発明に係る支持装置80は、サイドレール11の外側面に連結されるフレーム側ブラケット81とバッテリパック70に連結されたバッテリ側ブラケット82とを弾性連結部83によって接続することにより、バッテリパック70をサイドレール11に弾性的に支持する。そして、フレーム側ブラケット81は、板状部材を折り曲げて形成された第1板金部材90、第2板金部材91、及び第3板金部材92の積層により構成されている。このため、本発明に係る支持装置80は、バッテリパック70の重量や連結方向に伴う多様な剛性要求に対して、フレーム側ブラケット81における板状部材の積層枚数によって対応することができる。この場合、第1板金部材90、第2板金部材91、及び第3板金部材92は、いずれも共通の板金から形成することができる。従って、本発明に係る支持装置80によれば、様々な剛性要求に対応しながら、製造コストの低減を図ることができる。
【0058】
また、フレーム側ブラケット81は、例えばバッテリパック70の重量や接続形態の仕様変更により、ブラケット背面81a、ブラケット底面81b、又はブラケット側面81cのうちの一部の強度が不足した場合には、補強が必要な部分に新たな板金部材を追加して積層することができる。この場合、フレーム側ブラケット81は、既存の第1板金部材90、第2板金部材91、及び第3板金部材92をそのまま利用することができ、新たな仕様に合わせて全体的に設計し直す必要がなく、低コストで仕様を拡張することができる。
【0059】
特に、バッテリパック70は、車両前後方向Xの長さに応じて、複数の支持装置80を介してサイドレール11に連結される範囲も長くなる。このため、バッテリパック70は、サイドレール11の捩れや撓みに伴う変位の影響が、車両前後方向Xの前方と後方との間で当該長さに応じて増幅されることになる。このため、バッテリパック70に連結される複数の支持装置80のそれぞれは、車両前後方向Xにおける設置位置によって、板状部材の積層枚数が調整されてもよい。
【0060】
また、フレーム側ブラケット81は、ブラケット側面81cにおいて、部分ごとに板状部材の積層枚数が異なり、積層枚数に応じた剛性を有することから、応力が集中する部分において剛性を強化することができる。特に、ブラケット側面81cは、ブラケット背面81aとブラケット底面81bとの交点における角部Cを含む領域において、板状部材の積層枚数を最多にすることにより、最も応力が集中する領域を補強することができる。
【0061】
一方、フレーム側ブラケット81は、ブラケット側面81cにおいて、相対的に応力が緩和される部分においては積層枚数を減じて軽量化を図ることができる。より具体的には、ブラケット側面81cは、比較的応力を受けやすいサイドレール11とフレーム側ブラケット81との連結面に対して、サイドレール11から離間する方向に向かって板状部材の積層枚数が減少することにより、応力の緩和に応じた効率的な軽量化を図ることができる。また、ブラケット側面81cは、比較的応力を受けやすい弾性連結部83とフレーム側ブラケット81との連結面に対して、弾性連結部83から離間する方向に向かって板状部材の積層枚数が減少することにより、応力の緩和に応じた効率的な軽量化を図ることができる。
【0062】
また、ブラケット側面81cは、スペーサ84の介在の有無に拘らず、サイドレール11とフレーム側ブラケット81との連結部分において、最も剛性が高い第1積層領域93がサイドレール11の底面の高さよりも車高方向Zに対して高い位置まで延在している。これにより、ブラケット側面81cは、フレーム側ブラケット81が受けるロール方向の応力に対する剛性を備えることができる。
【0063】
また、本発明に係る支持装置80は、サイドレール11とバッテリパック70とを車幅方向Yにおける双方の側面同士で連結しているため、左サイドレール11Lと右サイドレール11Rとの間、及びサイドレール11の下方領域からなる一続きのスペースを確保することができ、車両1に大型のバッテリパック70を配置することができる。
【0064】
また、本発明に係る支持装置80は、サイドレール11とフレーム側ブラケット81との連結部分、フレーム側ブラケット81と弾性連結部83との連結部分、及び複数の板状部材を一体に積層する連結部分が、いずれも溶接ではなくボルトにより締結されている。ここで、仮に各連結部分を溶接により接続した場合には、対向する面同士を接続することになるため、条件によっては溶接面が応力に対して脆弱となる虞が生じる。これに対し、本発明に係る支持装置80は、連結する双方の部材に跨るボルトにより各連結部分を固定しているため、応力に対する頑健性を高めることができる。
【0065】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、第1板金部材90、第2板金部材91、及び第3板金部材92について具体的な形状を例示したが、各板金部材の構造やその積層枚数は、サイドレール11とバッテリパック70との接続形態等、種々の条件に応じて変更することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 車両
10 ラダーフレーム
11 サイドレール
11w ウェブ
70 バッテリパック
80 支持装置
81 フレーム側ブラケット
81a ブラケット背面
81b ブラケット底面
81c ブラケット側面
82 バッテリ側ブラケット
83 弾性連結部
84 スペーサ
90 第1板金部材
91 第2板金部材
92 第3板金部材