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特許7122893SiCまたはGaN MOSFETトランジスタ用スイッチング装置のショートに対する保護回路および関連方法
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  • 特許-SiCまたはGaN  MOSFETトランジスタ用スイッチング装置のショートに対する保護回路および関連方法 図1
  • 特許-SiCまたはGaN  MOSFETトランジスタ用スイッチング装置のショートに対する保護回路および関連方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】SiCまたはGaN MOSFETトランジスタ用スイッチング装置のショートに対する保護回路および関連方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20220815BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20220815BHJP
   G01R 19/165 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
H01L27/04 H
G01R19/165 R
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018128353
(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公開番号】P2019016791
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】1756382
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】313011906
【氏名又は名称】アルストム トランスポート テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アル カヤル、フィサル
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-017237(JP,A)
【文献】特開2012-065483(JP,A)
【文献】国際公開第2009/081561(WO,A1)
【文献】特開平09-304447(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184688(US,A1)
【文献】特開2017-215307(JP,A)
【文献】特開2010-286372(JP,A)
【文献】特開2016-052198(JP,A)
【文献】特開2007-124007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/04
H01L 21/822
G01R 19/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電流(I;Ia,Ib,Ic)が流れうるSiCまたはGaN MOSFET型の少なくとも1つのトランジスタ(12;12a,12b,12c)を備える電力スイッチング装置(10)であって、
前記トランジスタ(12;12a,12b,12c)の主電流(I)を、前記トランジスタ(12;12a,12b,12c)により生成される電磁場から間接的に測定するように構成された少なくとも1つの測定モジュール(14;14a,14b,14c)と、
主電流(Ia,Ib,Ic)の時間的なドリフトの符号に基づいてショートを検出するように構成された少なくとも1つの保護回路(16;16a,16b,16c)と、
を備えることを特徴とするスイッチング装置(10)。
【請求項2】
前記測定モジュール(14;14a,14b,14c)は、前記トランジスタ(12;12a,12b,12c)から直流的に絶縁されたアンテナ(18)を備える、
請求項1に記載のスイッチング装置(10)。
【請求項3】
前記アンテナ(18)は、前記トランジスタ(12;12a,12b,12c)を中心とし、半径が1mm~10cmである円のなかに配置される、
請求項2に記載のスイッチング装置(10)。
【請求項4】
複数の前記トランジスタ(12a,12b,12c)を備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載のスイッチング装置(10)。
【請求項5】
前記トランジスタ(12a,12b,12c)と同じ数の前記測定モジュール(14a,14b,14c)を備え、前記トランジスタ(12a,12b,12c)のそれぞれは独立した前記測定モジュール(14a,14b,14c)に関連付けられ、前記測定モジュール(14a,14b,14c)のそれぞれは、これに関連付けられた前記トランジスタ(12a,12b,12c)を流れる前記主電流(Ia,Ib,Ic)を測定するように構成される、
請求項4に記載のスイッチング装置(10)。
【請求項6】
前記測定モジュール(14a,14b,14c)のそれぞれは、これに関連付けられた前記トランジスタ(12a,12b,12c)により生成された電磁場以外の少なくとも1つの電磁場から電磁的に隔離される、
請求項5に記載のスイッチング装置(10)。
【請求項7】
前記測定モジュール(14a,14b,14c)のそれぞれ、およびこれに関連付けられた前記トランジスタ(12a,12b,12c)は、ファラデーケージのなかに配置される、
請求項6に記載のスイッチング装置(10)。
【請求項8】
前記トランジスタ(12a,12b,12c)のそれぞれは、これを流れる前記主電流(Ia,Ib,Ic)の時間的なドリフトの符号のための観測窓(Tobs.a,Tobs.b,Tobs.c)に関連付けられ、
前記観測窓(Tobs.a,Tobs.b,Tobs.c)は、前記トランジスタ(12a,12b,12c)のオフ状態からオン状態へのスイッチングと同時にトリガされることができ、
前記観測窓(Tobs.a,Tobs.b,Tobs.c)は互いに独立している、
請求項4~7のいずれか1項に記載のスイッチング装置(10)。
【請求項9】
前記トランジスタ(12a,12b,12c)のそれぞれを流れる前記主電流(Ia,Ib,Ic)を測定するように構成された単一の前記測定モジュール(14)、
を備える請求項4に記載のスイッチング装置(10)。
【請求項10】
前記トランジスタ(12a,12b,12c)のそれぞれは、これを流れる前記主電流(Ia,Ib,Ic)の時間的なドリフトの符号のための観測窓(Tobs.a,Tobs.b,Tobs.c)に関連付けられ、
前記観測窓(Tobs.a,Tobs.b,Tobs.c)は、前記トランジスタ(12a,12b,12c)のオフ状態からオン状態へのスイッチングと同時にトリガされることができ、
前記観測窓(Tobs.a,Tobs.b,Tobs.c)は互いに独立している、
請求項9に記載のスイッチング装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主電流が流れるSiCまたはGaN MOSFET型の少なくとも1つのトランジスタを備える電力スイッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、絶縁ゲートバイポーラトランジスタとも呼ばれるSiCまたはGaN MOSFET(それぞれ「シリコンカーバイド(SiliconCarbide)」、「窒化ガリウム(Gallium Nitride)」および「金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)」)型のトランジスタは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor)とも呼ばれ、3つの電気端子または接点、つまり、ゲート、ドレインおよびソースを備える。
【0003】
特に、SiCまたはGaN MOSFET型のトランジスタは電気スイッチとして使用されることができる。実際、このようなトランジスタは、ドレインがソースに電気的に接続されたオン状態と、ドレインとソースとが互いに電気的に絶縁されたオフ状態とを規定する。
【0004】
2つの状態の間のスイッチングは、適切な制御手段によりゲートに印加される設定点電圧により制御される。
【0005】
特に、オフ状態とオン状態との間のスイッチングは、トランジスタをオフ状態からオン状態にスイッチングすることからなるファイアリング(firing)へスイッチングする段階と、トランジスタをオン状態からオフ状態にスイッチングすることからなるスイッチオフの段階とを含む。
【0006】
一般に、SiCまたはGaN MOSFETトランジスタの動作は、適切なスイッチング装置により制御され、特に、トランジスタが使用される電気回路網のなかのショート(short circuit)を検出することを可能にする。
【0007】
このようなショートは、例えば、SiCまたはGaN MOSFETトランジスタのドレインとソースとの間に現れることがある。
【0008】
ショートを検出するために、既存のスイッチング装置は、ドレインとソースとの間の電圧を直接に測定し、この測定値に基づいてショートを検出する保護回路を使用する。言い換えると、既存の装置において、保護回路は、一方ではドレインに、他方ではソースに接続され、電圧を直接に測定する。
【0009】
しかしながら、これらの装置により実現される既存のスイッチング装置およびショート検出のための方法は、充分に満足のいくものではない。
【0010】
実際、既存の装置は、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor))トランジスタから継承されている。このような装置は、SiCまたはGaN MOSFET型のトランジスタには適していない。
【0011】
SiCまたはGaN MOSFET型のトランジスタは、IGBT型のトランジスタよりも高いスイッチング速度に達することができ、従って、スイッチング周波数に達することができる。これは、スイッチング装置に使用される構成要素の容積、重量およびコストを低減させることを可能とする。
【0012】
しかし、SiCまたはGaN MOSFET型トランジスタの高周波動作の間に発生する電磁干渉は無視できない。特に、これらは、コモンモード電流を生成し、コモンモード電流は、ドレインとソースの両方に接続された保護回路を含むトランジスタの近くの電子部品を破壊する。
【0013】
高周波数でスイッチングするSiCまたはGaN MOSFET型のトランジスタの場合、コモンモード電流は充分に大きく、スイッチング装置を停止させる原因となりうる誤ったアラームをトリガする。そして、ソースと保護電流の間に強化されたフィルタリング(filtering)を挿入し、コモンモード電流をフィルタリングする(filter)必要がある。
【0014】
さらに、IGBT型のトランジスタとは異なり、SiCまたはGaN MOSFET型のトランジスタは、ショートの際にアンロード(unload)しない。従って、ショート電流は、SiCまたはGaN MOSFET型トランジスタへのアンロード(unloading)により制限されないが、これはIGBTトランジスタへの場合である。
【0015】
さらに、SiCまたはGaN MOSFET型のトランジスタのオン抵抗値は、IGBT型のトランジスタよりもはるかに低く、IGBT型のトランジスタの場合よりもSiCまたはGaN MOSFET型のトランジスタの場合の方がショート電流ははるかに大きい。
【0016】
従って、SiCまたはGaN MOSFET型のトランジスタの破壊を回避するために、保護回路の反応時間は、1~2マイクロ秒程度と非常に短くなければならない。
【0017】
この反応性の制約は、保護回路の入力におけるフィルタリングを軽減することを必要とする。同時に、前に説明されたように、保護回路の入力におけるフィルタリングは、コモンモード電流をフィルタリングするために強化されなければならない。
【0018】
既存の装置は、そして、保護回路の反応性と、保護回路のトランジスタが高い周波数で動作するときに生じる電磁干渉への耐性との間で満足な妥協を得ることを可能としない。
【0019】
この問題は、SiCまたはGaN MOSFET型のトランジスタが高い周波数で動作する鉄道分野に特に関係がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、良好に動作し、高いスイッチング速度に対して堅牢なSiCまたはGaN MOSFETトランジスタスイッチング装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的のために、本発明は、主電流が流れうるSiCまたはGaN MOSFET型の少なくとも1つのトランジスタを備える電力スイッチング装置に関し、スイッチング装置は、トランジスタの主電流を、トランジスタにより生成された電磁場から間接的に測定するように構成された少なくとも1つの測定モジュールと、主電流の時間的なドリフトの符号(sign)に基づいてショートを検出するように構成された少なくとも1つの保護回路とを備える。
【0022】
よって、既存の保護回路と比較して、本発明は、電流(および電圧でない)測定に基づいており、さらに、測定は、トランジスタにより放射される電磁場からの電流の間接的な測定であり、これは、破壊源(つまり、トランジスタ)と保護回路との間を切り離せるようにする。
【0023】
実際、本発明によれば、「間接」とは、保護回路がトランジスタのソースに接続されていないことを意味し、このことは、ショートのときにトランジスタにより生成されるコモンモード電流から保護することを可能にする。
【0024】
本発明の他の有利な態様によれば、方法は、単独で、または技術的に可能な全ての組み合わせに従って考慮される以下の特徴のうちの1つ以上を備える。
-測定モジュールは、トランジスタから直流的に絶縁されたアンテナを備え、
-アンテナは、トランジスタを中心とし、半径が1mm~10cmに含まれる円のなかに配置され、
-スイッチング装置は複数のトランジスタを備え、
-スイッチング装置は、トランジスタと同じ数の測定モジュールを備え、トランジスタそれぞれは独立した測定モジュールに関連付けられ、測定モジュールそれぞれは、関連付けられたトランジスタを流れる主電流を測定するように構成され、
-測定モジュールそれぞれは、関連付けられたトランジスタにより生成された電磁場以外の少なくとも1つの電磁場から電磁的に隔離され、
-測定モジュールそれぞれ、およびこれに関連付けられたトランジスタはファラデーケージのなかに配置され、
-トランジスタそれぞれは、このトランジスタを流れる主電流の時間的なドリフトの符号のための観測窓に関連付けられ、観測窓は、トランジスタがオフ状態からオン状態にスイッチングされると同時にトリガされることができ、観測窓は互いに独立し、
-スイッチング装置は、トランジスタそれぞれを流れる主電流を測定するように構成された単一の測定モジュールを備え、
-トランジスタそれぞれは、このトランジスタを流れる主電流の時間的なドリフトの符号のための観測窓に関連付けられ、観測窓は、トランジスタのオフ状態からオン状態へのスイッチングと同時にトリガされることができ、観測窓は互いに独立している。
【0025】
本発明のこれらの特徴および利点は、非限定的な例としてのみ提供され、添付の図面を参照して行われる以下の記載を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の第1の実施形態にかかる電力スイッチング装置の概略図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態にかかる電力スイッチング装置の概略図である。
図3図3は、本発明の第3の実施形態にかかる電力スイッチング装置の概略図である。
図4図4は、図1のスイッチング装置により実現されるショート検出方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1~3は、電気エネルギーを変換することが意図された電力スイッチング装置10を示す。
【0028】
電力スイッチング装置10は、特に鉄道の分野で使用されることができ、例えば鉄道車両に搭載される。
【0029】
図1を参照すると、スイッチング装置10は、少なくとも1つのトランジスタ12と、少なくとも1つの測定モジュール14と、少なくとも1つの保護回路16とを備える。
【0030】
トランジスタ12は、SiCまたはGaN MOSFET(それぞれ「炭化シリコン」、「窒化ガリウム」および「金属酸化物半導体電界効果トランジスタ」)型のトランジスタであり、絶縁ゲートバイポーラトランジスタとも呼ばれる。
【0031】
トランジスタ12それ自体は公知であり、特に3つの電気端子または接点、つまりゲートG、ドレインDおよびソースSを備える。
【0032】
トランジスタ12は、ドレインDとソースSとの間に電流I、以下、主電流と呼ばれる、が流れるオン状態と、ドレインDがソースSから電気的に絶縁されたオフ状態とを規定する。
【0033】
測定モジュール14は、トランジスタ12により生成される電磁場からトランジスタ12を通過する主電流Iの強度を間接的に測定するように構成される。
【0034】
実際、トランジスタ12により放射される電磁場は、本質的に、全単射的な関係に従う主電流Iの写像であり、トランジスタにより放射される電磁場は、本質的にコモンモード電流を誘導する。よって、トランジスタ12のなかでショートがないときよりも、ショートがあるときの方が、測定される電磁場は強力である。
【0035】
よって、トランジスタ12により放射される電磁場を使用することにより、測定モジュール14は、トランジスタ12を流れる主電流Iの強度のいかなる変化をも間接的に検出できる。
【0036】
言い換えると、測定モジュール14は、時間の経過とともに主電流Iの強度の値の増加または減少を検出することを可能にする。
【0037】
言い換えると、測定モジュール14は、主電流Iの時間的な導関数dI/dtの符号を検出することを可能にする。
【0038】
好ましくは、測定モジュール14は、トランジスタ12から直流的に絶縁され、トランジスタ12により放射される電磁場を測定できるアンテナ18を備える。トランジスタ12により生成された電磁場は、アンテナ18を介して受信され、コモンモード電流が誘導され、その強度は、測定モジュール14のなかで測定され、トランジスタ12を流れる主電流Iの強度と相関する。
【0039】
有利には、アンテナ18は、トランジスタ12を中心とする円のなかに配置され、トランジスタ12により放射される電磁場の充分に正確な測定値を得るために、円の半径は1mm~10cmとの間に含まれる。
【0040】
従来、保護回路16は、トランジスタにより放射され、測定モジュール14のなかで受信される電磁信号の電磁干渉(IEM)をフィルタリングするように構成されたフィルタリング回路Fに、一方で接続されることができ、設定点電圧を発生するように構成されたパルス発生装置GPに、他方で接続されることができる。
【0041】
言い換えると、本発明によれば、保護回路16は、トランジスタ12のソースSに、直接に、またはフィルタリング回路Fを介して、接続されず、このことは、トランジスタ12のショートがあるときに発生されるコモンモード電流から保護回路16を保護することを可能とする。
【0042】
さらに、保護回路16は、パルス発生装置GPを介して、ゲートGに設定点電圧および設定点電流を印加することにより、トランジスタ12の動作を制御することができる。
【0043】
保護回路16は、フィルタリング回路Fを介して測定モジュール14にさらに接続され、トランジスタ12により放射される電磁場からdI/dtの符号の間接的な測定値を復元する。
【0044】
保護回路16は、より詳細に後述されるショート100を予め決められた時間的な観測窓Tobs.で検出する方法を実現することができる。
【0045】
図2および図3に示される実施形態において、装置10は、複数のパワーアセンブリ(つまり「パック(packs)」または「スイッチ」)、例えば3つのパック20a,20b,20cと、パックそれぞれのトランジスタ12a,12b,12cのスイッチングを制御するように構成された制御ユニット22とを含む。このために、制御ユニット22は、パルス発生装置GPa,GPb,GPcに接続される。
【0046】
パワーパック20aは、保護回路16a、パルス発生装置GPaに関連付けられたトランジスタ12aを備える。トランジスタ12aには主電流Iaが流れる。
【0047】
パワーパック20bは、保護回路16b、パルス発生装置GPbに関連付けられたトランジスタ12bを備える。トランジスタ12bには主電流Ibが流れる。
【0048】
パワーパック20cは、保護回路16cに関連付けられたトランジスタ12c、パルス発生装置GPcを備える。トランジスタ12cには主電流Icが流れる。
【0049】
パワーパック20a,20b,20cは、同様の構成(つまり、同じスイッチング速度、同じ機器など)から利益を得る。
【0050】
あるいは、パワーパック20a,20b,20cの少なくとも1つは、他のパックとは異なる。
【0051】
1つのパワーパックにより生成される電磁的妨害が隣接するパワーパックに及ぶことを回避するために、本発明により、いくつかの代替実施形態が考慮され、潜在的に組み合わせられる。
【0052】
図示されない第1の代替案によれば、パック20a,20b,20cそれぞれは、制御ユニット22によりそれ専用にされた観測窓Tobs.a,Tobs.b,Tobs.cに、それぞれ関連付けられる。
【0053】
好ましくは、観測窓Tobs.a,Tobs.b,Tobs.cは独立であり、つまり、好ましくは時間に対して非連続である。
【0054】
観測窓Tobs.aは、関連付けられたトランジスタ12aのオフ状態からオン状態へのスイッチングと同時に開始する。同様に、観測窓Tobs.bは、関連付けられたトランジスタ12bのオフ状態からオン状態へのスイッチングと同時に開始し、観測窓Tobs.cは、関連付けられたトランジスタ12cのオフ状態からオン状態へのスイッチングと同時に開始する。
【0055】
従って、観測窓Tobs.aにおいて、トランジスタ12b,12cのオフ状態からオン状態へのスイッチングは、トランジスタ12aにより放射される電磁場の測定を妨害しない。
【0056】
制御部22は、トランジスタ12a,12b,12cを独立してオン状態からオフ状態に、または、オフ状態からオン状態にスイッチングすることができる。
【0057】
第1の代替案と組み合わされても、組合わされなくてもよい、図2により示された第2の代替案によれば、装置10は、パワーパック20a,20b,20にそれぞれ関連付けられた3つの測定モジュール14a,14b,14cを含む。
【0058】
より具体的には、測定モジュール14a,14b,14cは、トランジスタ12a,12b,12cによりそれぞれ放射される電磁場から間接的に主電流Ia,Ib,Icを測定するように構成される。
【0059】
有利には、測定モジュール14aは、これと関連付けられたトランジスタ12a以外の少なくとも1つの電磁場から電磁的に隔離される。言い換えると、測定モジュール14aは、トランジスタ12b,12cにより生成される電磁場から隔離される。
【0060】
このために、測定モジュール14aおよび関連付けられたトランジスタ12aは、例えば、ファラデーケージまたは電磁的に絶縁された(つまりシールドされた)図示されないハウジングのなかに配置される。
【0061】
測定モジュール14b,14cおよび関連付けられたトランジスタ12b,12cは、同様の構成から有利に利益を得る。
【0062】
言い換えると、この代替案によれば、パック毎に個々の保護が実現される。
【0063】
第1の代替案と組み合わされても、組合わされなくてもよい、図3により示される第3の代替案によれば、装置10は単一の測定モジュール14を含む。
【0064】
測定モジュール14は、パックにより生成された電流の変化を、トランジスタ12a,12b,12cによりそれぞれ放射される電磁場から間接的に測定するように構成される。
【0065】
有利には、測定モジュール14は、トランジスタ12a,12b,12cから等距離に隔離される。
【0066】
測定モジュール14は、その測定値をパックの1つに関連付けられた保護回路、例えば保護回路16aに通信し、保護回路は、図3に示されるように、これらを処理し、処理結果を制御部22に転送する。この処理結果によりショートがあることが識別されたとき、制御ユニット22は、パワーパック(すなわち、パワースイッチ)20a,20b,20cの全てのための全体的な開放コマンドを生成し、検出されたショートからこれらを保護する。
【0067】
図示されない代替例では、保護回路16aは、他のパワーパック20b,20cに関連付けられた保護回路16b,16cと通信できるか、接続されることができる。
【0068】
ここで、スイッチング装置10の動作が、図1の単一トランジスタ実施形態を参照して説明されるであろう。
【0069】
トランジスタ12をオフ状態からオン状態にスイッチングする段階の間に、電力スイッチング装置10は、ショートを検出する方法100を実行する。
【0070】
特に、この方法100はいくつかのステップを含み、そのフローチャートは図4に示されている。
【0071】
第1のステップ110の間に、測定モジュール14は、トランジスタ12により生成された電磁場を測定する。この測定から、測定モジュール14は、主電流Iの時間的なドリフトdI/dtの符号を判定する。
【0072】
ステップ120において、保護回路16は、時間的な観測窓Tobs.における主電流Iの時間的なドリフトdI/dtの時間を観測する。
【0073】
予め決められた時間的な観測窓Tobs.に含まれるテスト期間Ttestの間、主電流Iの時間的なドリフトdI/dtが真に正であるとき、保護回路16は、ステップ130の間にショートがあることを検出する。これ以外のとき、保護回路16は、ショートがないことを検出する。
【0074】
有利には、方法100は、ステップ140をさらに含み、保護回路16は、その間に検出されたショートがあることを確認する
【0075】
特に、このステップ140の間に、保護回路16は、主電流Iの時間的なドリフトdI/dtが、テスト期間Ttestに応じた追加期間にわたってゼロ以上のままであるときショートがあることを確認する。追加期間に主電流Iの時間的なドリフトdI/dtが真に正のとき、保護回路16はステップ150の間にショートがあることを検出する。これ以外のとき、保護回路16はショートがないことを検出する。
【0076】
追加期間は、テスト期間Ttestの終わりで始まり、例えば時間的な観測窓Tobs.で終了する。
【0077】
テスト期間Ttestおよび追加期間は、観測窓Tobs.に含まれる。
【0078】
ショートが検出されたとき、保護回路16は、そしてショートの信号を送り、少なくとも予め決められた遮断期間において、トランジスタ12をオフ状態に保持する。
【0079】
テスト期間Ttestは、保護回路16により構成され、方法100を実行する前に、例えば10ナノ秒~15マイクロ秒の間に調整される。
【0080】
観測窓Tobs.の長さは、保護回路16により構成されることができ、方法100を実施する前に、例えば10ナノ秒~15マイクロ秒の間に調整される。
【0081】
そして、本発明にはいくつかの利点があることが分かるであろう。
【0082】
本発明にかかる検出方法は、異なる時間間隔における主電流Icの導関数dI/dtの符号の分析のみを使用して、トランジスタにおけるショートを検出することを可能にする。
【0083】
本発明にかかる装置は、電力回路を変更しない。従って、スイッチングエネルギー損失および過電圧のリスクは増やされない。
【0084】
アンロード電圧(unloading voltage)が温度に大きく依存することを考慮すると、放射電磁場からの間接的な電流測定は、SiCまたはGaN MOSFETトランジスタの電圧測定よりも正確であることは留意されるべきである。
【0085】
さらに、ドリフトdI/dtの符号のみが方法100を実行するために重要である。主電流Iの値またはドリフトdI/dtの値の測定は必要ではなく、このことは、種々の測定手段に課される要件を単純にすることを可能にする。
【0086】
これは、特に、高電圧下で動作するトランジスタ、特に鉄道分野で使用されるトランジスタにとって有利である。
【0087】
さらに、ドリフトdI/dtの符号は、トランジスタ12により放射される電磁場からの間接的な測定により測定される。
【0088】
従って、保護回路16は、SiCまたはGaN MOSFETトランジスタのソースSに直接に、またはフィルタリング回路Fを介して、接続されておらず、コモンモード電流に影響されない。これはまた、装置10が、既存の装置と比較して、保護回路16の電磁適合性EMCに、それほど敏感でないことを意味する。従って、保護回路16の反応時間が既存の装置に比べて少なくされるように、フィルタリングFを強化する必要はない。
【0089】
(付記)
(付記1)
主電流(I;Ia,Ib,Ic)が流れうるSiCまたはGaN MOSFET型の少なくとも1つのトランジスタ(12;12a,12b,12c)を備える電力スイッチング装置(10)であって、
前記トランジスタ(12;12a,12b,12c)の主電流(I)を、前記トランジスタ(12;12a,12b,12c)により生成される電磁場から間接的に測定するように構成された少なくとも1つの測定モジュール(14;14a,14b,14c)と、
主電流(Ia,Ib,Ic)の時間的なドリフトの符号に基づいてショートを検出するように構成された少なくとも1つの保護回路(16;16a,16b,16c)と、
を備えることを特徴とするスイッチング装置(10)。
【0090】
(付記2)
前記測定モジュール(14;14a,14b,14c)は、前記トランジスタ(12;12a,12b,12c)から直流的に絶縁されたアンテナ(18)を備える、
付記1に記載のスイッチング装置(10)。
【0091】
(付記3)
前記アンテナ(18)は、前記トランジスタ(12;12a,12b,12c)を中心とし、半径が1mm~10cmである円のなかに配置される、
付記2に記載のスイッチング装置(10)。
【0092】
(付記4)
複数の前記トランジスタ(12a,12b,12c)を備える、
付記1~3のいずれか1つに記載のスイッチング装置(10)。
【0093】
(付記5)
前記トランジスタ(12a,12b,12c)と同じ数の前記測定モジュール(14a,14b,14c)を備え、前記トランジスタ(12a,12b,12c)のそれぞれは独立した前記測定モジュール(14a,14b,14c)に関連付けられ、前記測定モジュール(14a,14b,14c)のそれぞれは、これに関連付けられた前記トランジスタ(12a,12b,12c)を流れる前記主電流(Ia,Ib,Ic)を測定するように構成される、
付記4に記載のスイッチング装置(10)。
【0094】
(付記6)
前記測定モジュール(14a,14b,14c)のそれぞれは、これに関連付けられた前記トランジスタ(12a,12b,12c)により生成された電磁場以外の少なくとも1つの電磁場から電磁的に隔離される、
付記5に記載のスイッチング装置(10)。
【0095】
(付記7)
前記測定モジュール(14a,14b,14c)のそれぞれ、およびこれに関連付けられた前記トランジスタ(12a,12b,12c)は、ファラデーケージのなかに配置される、
付記6に記載のスイッチング装置(10)。
【0096】
(付記8)
前記トランジスタ(12a,12b,12c)のそれぞれは、これを流れる前記主電流(Ia,Ib,Ic)の時間的なドリフトの符号のための観測窓(Tobs.a,Tobs.b,Tobs.c)に関連付けられ、
前記観測窓(Tobs.a,Tobs.b,Tobs.c)は、前記トランジスタ(12a,12b,12c)のオフ状態からオン状態へのスイッチングと同時にトリガされることができ、
前記観測窓(Tobs.a,Tobs.b,Tobs.c)は互いに独立している、
付記4~7のいずれか1つに記載のスイッチング装置(10)。
【0097】
(付記9)
前記トランジスタ(12a,12b,12c)のそれぞれを流れる前記主電流(Ia,Ib,Ic)を測定するように構成された単一の前記測定モジュール(14)、
を備える付記4に記載のスイッチング装置(10)。
【0098】
(付記10)
前記トランジスタ(12a,12b,12c)のそれぞれは、これを流れる前記主電流(Ia,Ib,Ic)の時間的なドリフトの符号のための観測窓(Tobs.a,Tobs.b,Tobs.c)に関連付けられ、
前記観測窓(Tobs.a,Tobs.b,Tobs.c)は、前記トランジスタ(12a,12b,12c)のオフ状態からオン状態へのスイッチングと同時にトリガされることができ、
前記観測窓(Tobs.a,Tobs.b,Tobs.c)は互いに独立している、
付記9に記載のスイッチング装置(10)。
図1
図2
図3
図4