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特許7122902非接触式通信モジュールおよびカードリーダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】非接触式通信モジュールおよびカードリーダ
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20220815BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20220815BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
G06K7/10 232
G06K7/10 264
H01Q7/00
H01Q1/52
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018140826
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020017157
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】米山 裕二
(72)【発明者】
【氏名】竹内 淳朗
(72)【発明者】
【氏名】小澤 茂樹
【審査官】小太刀 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-026852(JP,A)
【文献】特開2011-234195(JP,A)
【文献】特開平11-340630(JP,A)
【文献】特開平07-271889(JP,A)
【文献】特開2001-284828(JP,A)
【文献】特開2008-252003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00
7/10
17/00
19/00
H01Q 1/00
1/52
5/00
7/00
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導によって非接触式のICカードと非接触でデータの通信を行う非接触式通信モジュールにおいて、
環状に形成されるアンテナコイルと、前記アンテナコイルが接続されるアンテナ回路と、前記アンテナ回路が接続されるとともに前記ICカードとの間で通信されるデータを処理するための制御回路と、前記アンテナコイルと前記制御回路と前記アンテナ回路とが実装される回路基板とを備え、
前記回路基板は、絶縁層を介して積層される複数の配線層を備える多層基板であり、
前記回路基板の厚さ方向から見たときに、前記制御回路および前記アンテナ回路は、前記アンテナコイルの内周側に配置され、
複数の前記配線層のそれぞれには、前記制御回路用のグランド配線である第1グランド配線が形成され、
複数の前記配線層の少なくとも1つの前記配線層には、前記アンテナ回路用のグランド配線である第2グランド配線が形成され、
前記第2グランド配線が形成される前記配線層を第2グランド形成層とすると、
前記第2グランド形成層では、前記第1グランド配線と前記第2グランド配線とが複数の接続配線を介して電気的に接続され、
複数の前記配線層のそれぞれに形成される前記第1グランド配線は、多数のビアホールによって互いに電気的に接続され
前記アンテナ回路が形成される前記配線層には前記第2グランド配線が形成されておらず、前記アンテナ回路が形成される前記配線層を除く残りの前記配線層が前記第2グランド形成層となっていることを特徴とする非接触式通信モジュール。
【請求項2】
前記制御回路は、前記回路基板の厚さ方向から見たときに、複数の前記配線層のそれぞれに形成される前記第1グランド配線の領域内に配置されていることを特徴とする請求項1記載の非接触式通信モジュール。
【請求項3】
前記回路基板の厚さ方向から見たときに、前記制御回路が形成される領域と、複数の前記配線層のそれぞれに形成される前記第1グランド配線の領域とが略一致していることを特徴とする請求項2記載の非接触式通信モジュール。
【請求項4】
前記回路基板は、前記配線層として、前記アンテナコイルのシールド配線と前記制御回路と前記第1グランド配線と前記第2グランド配線とが形成される第1配線層と、前記アンテナコイルと前記第1グランド配線と前記第2グランド配線とが形成される第2配線層と、電源回路と電源配線と前記第1グランド配線と前記第2グランド配線とが形成される第3配線層と、前記アンテナコイルと前記アンテナ回路と前記制御回路と前記第1グランド配線とが形成される第4配線層とを備え、
前記回路基板の厚さ方向において、前記第1配線層と前記第2配線層と前記第3配線層と前記第4配線層とがこの順番で配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の非接触式通信モジュール。
【請求項5】
請求項に記載の非接触式通信モジュールと、前記非接触式通信モジュールが取り付けられる本体部とを備え、
前記本体部には、前記ICカードが移動するカード移動路が形成され、
前記非接触式通信モジュールは、前記第1配線層が前記カード移動路側に配置されるように前記本体部に取り付けられていることを特徴とするカードリーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導によって非接触式のICカードと非接触でデータの通信を行う非接触式通信モジュールに関する。また、本発明は、この非接触式通信モジュールを備えるカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁誘導によって非接触式のICカードと非接触でデータの通信を行う非接触式通信モジュールが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の非接触式通信モジュールは、ICカードとデータの通信を行ったり、ICカードに電力を供給するためのアンテナコイルを備えている。アンテナコイルは、円環状に形成されている。アンテナコイルは、回路基板に実装されている。回路基板は、ガラスエポキシ基板等のリジッド基板である。また、回路基板は、絶縁層を介して積層される複数の配線層(導体層)を備える多層基板である。
【0003】
特許文献1に記載の非接触式通信モジュールでは、回路基板に、信号処理回路部が実装されている。信号処理回路部は、制御回路を備えている。制御回路には、フィルタ回路および整合回路を介してアンテナコイルの一端側が電気的に接続されるとともに、受信回路を介してアンテナコイルの他端側が電気的に接続されている。回路基板の厚さ方向から見たときに、信号処理回路部は、円環状に形成されるアンテナコイルの外周側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-87888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の非接触式通信モジュールでは、回路基板の厚さ方向から見たときに、信号処理回路部がアンテナコイルの外周側に配置されている。したがって、特許文献1に記載の非接触式通信モジュールでは、非接触式通信モジュールとICカードとの間の通信特性を高めるためにアンテナコイルの外径を大きくすると、モジュールの外形が大きくなる。そこで、本願発明者は、特許文献1に記載の非接触式通信モジュールにおいて、アンテナコイルの内周側に信号処理回路部を配置することを検討している。回路基板の厚さ方向から見たときに、アンテナコイルの内周側に信号処理回路部が配置されていれば、アンテナコイルの外径を大きくしつつ、モジュールの外形を小さくすることが可能になる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の非接触式通信モジュールにおいて、回路基板の厚さ方向から見たときに、アンテナコイルの内周側に信号処理回路部が配置されると、非接触式通信モジュールから発生する不要な電気的ノイズ(エミッション)のレベルが高くなることが本願発明者の検討によって明らかになった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、電磁誘導によって非接触式のICカードと非接触でデータの通信を行う非接触式通信モジュールにおいて、アンテナコイル、制御回路およびアンテナ回路が実装される回路基板の厚さ方向から見たときに、環状に形成されるアンテナコイルの内周側に制御回路およびアンテナ回路が配置されていても、エミッションのレベルを低減することが可能な非接触式通信モジュールを提供することにある。また、本発明の課題は、かかる非接触式通信モジュールを備えるカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本願発明者は種々の検討を行った。特に本願発明者は、アンテナ回路(アンテナコイルが接続されるアンテナ回路)用のグランド配線と、制御回路(アンテナ回路が接続されるとともにICカードとの間で通信されるデータを処理するための制御回路)用のグランド配線とに着目して種々の検討を行った。その結果、本願発明者は、制御回路用のグランド配線の構成を改善するとともに、制御回路用のグランド配線とアンテナ回路用のグランド配線との電気的な接続関係を改善することで、回路基板の厚さ方向から見たときに、環状に形成されるアンテナコイルの内周側に制御回路およびアンテナ回路が配置されていても、非接触式通信モジュールから発生するエミッションのレベルを低減することが可能になることを知見するに至った。
【0009】
本発明の非接触式通信モジュールは、かかる新たな知見に基づくものであり、電磁誘導によって非接触式のICカードと非接触でデータの通信を行う非接触式通信モジュールにおいて、環状に形成されるアンテナコイルと、アンテナコイルが接続されるアンテナ回路と、アンテナ回路が接続されるとともにICカードとの間で通信されるデータを処理するための制御回路と、アンテナコイルと制御回路とアンテナ回路とが実装される回路基板とを備え、回路基板は、絶縁層を介して積層される複数の配線層を備える多層基板であり、回路基板の厚さ方向から見たときに、制御回路およびアンテナ回路は、アンテナコイルの内周側に配置され、複数の配線層のそれぞれには、制御回路用のグランド配線である第1グランド配線が形成され、複数の配線層の少なくとも1つの配線層には、アンテナ回路用のグランド配線である第2グランド配線が形成され、第2グランド配線が形成される配線層を第2グランド形成層とすると、第2グランド形成層では、第1グランド配線と第2グランド配線とが複数の接続配線を介して電気的に接続され、複数の配線層のそれぞれに形成される第1グランド配線は、多数のビアホールによって互いに電気的に接続され、アンテナ回路が形成される配線層には第2グランド配線が形成されておらず、アンテナ回路が形成される配線層を除く残りの配線層が第2グランド形成層となっていることを特徴とする。
【0010】
本発明の非接触式通信モジュールでは、複数の配線層のそれぞれに制御回路用のグランド配線である第1グランド配線が形成されている。すなわち、本発明では、全ての配線層に第1グランド配線が形成されている。また、本発明では、アンテナ回路用のグランド配線である第2グランド配線が形成される第2グランド形成層では、第1グランド配線と第2グランド配線とが複数の接続配線を介して電気的に接続されている。さらに、本発明では、複数の配線層のそれぞれに形成される第1グランド配線は、多数のビアホールによって互いに電気的に接続されている。そのため、本願発明者の検討によれば、本発明では、回路基板の厚さ方向から見たときに、環状に形成されるアンテナコイルの内周側に制御回路およびアンテナ回路が配置されていても、非接触式通信モジュールから発生するエミッションのレベルを低減することが可能になる。また、本発明では、アンテナ回路が形成される配線層に第2グランド配線が形成されておらず、アンテナ回路が形成される配線層を除く残りの配線層が第2グランド形成層となっているため、本願発明者の検討によれば、非接触式通信モジュールから発生するエミッションのレベルを効果的に低減することが可能になる。
【0011】
なお、「エミッションのレベルを低減することが可能になる(端的には、エミッションを低減することが可能になる)」とは、具体的には、非接触通信モジュールを動作させたときに発生する電磁波の高調波成分のレベルを低減することが可能になるということである。特に環状に形成されるアンテナコイルの内周側に制御回路およびアンテナ回路等が配置されていると、この高調波成分のレベルが高くなってしまい、この高調波成分が非接触通信モジュールのアンテナ特性に影響を与えてしまうため、この高調波成分のレベルを低減する必要がある。
【0012】
本発明において、制御回路は、回路基板の厚さ方向から見たときに、複数の配線層のそれぞれに形成される第1グランド配線の領域内に配置されていることが好ましい。本願発明者の検討によれば、このように構成すると、非接触式通信モジュールから発生するエミッションのレベルを効果的に低減することが可能になる。
【0013】
本発明において、回路基板の厚さ方向から見たときに、制御回路が形成される領域と、複数の配線層のそれぞれに形成される第1グランド配線の領域とが略一致していることが好ましい。第1グランド配線の領域が大きくなり過ぎると、第1グランド配線の影響で非接触式通信モジュールとICカードとの間の通信特性が低下するおそれがあるが、本願発明者の検討によれば、このように構成すると、非接触式通信モジュールとICカードとの間の通信特性を確保しつつ、非接触式通信モジュールから発生するエミッションのレベルを効果的に低減することが可能になる。
【0015】
本発明において、たとえば、回路基板は、配線層として、アンテナコイルのシールド配線と制御回路と第1グランド配線と第2グランド配線とが形成される第1配線層と、アンテナコイルと第1グランド配線と第2グランド配線とが形成される第2配線層と、電源回路と電源配線と第1グランド配線と第2グランド配線とが形成される第3配線層と、アンテナコイルとアンテナ回路と制御回路と第1グランド配線とが形成される第4配線層とを備え、回路基板の厚さ方向において、第1配線層と第2配線層と第3配線層と第4配線層とがこの順番で配置されている。
【0016】
本発明の非接触式通信モジュールは、非接触式通信モジュールが取り付けられる本体部を備えるカードリーダに用いることができる。このカードリーダでは、本体部に、ICカードが移動するカード移動路が形成され、非接触式通信モジュールは、第1配線層がカード移動路側に配置されるように本体部に取り付けられている。このカードリーダでは、回路基板の厚さ方向から見たときに、環状に形成されるアンテナコイルの内周側に制御回路およびアンテナ回路が配置されていても、非接触式通信モジュールから発生するエミッションのレベルを低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明では、アンテナコイル、制御回路およびアンテナ回路が実装される回路基板の厚さ方向から見たときに、環状に形成されるアンテナコイルの内周側に制御回路およびアンテナ回路が配置されていても、非接触式通信モジュールから発生するエミッションのレベルを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)は、本発明の実施の形態にかかる非接触式通信モジュールが取り付けられるカードリーダの概略構成を説明するための図であり、(B)は、(A)に示す非接触式通信モジュールの側面図である。
図2図1に示す非接触式通信モジュールの構成を説明するためのブロック図である。
図3】(A)は、図1(B)に示す第1配線層の構成を説明するための平面図であり、(B)は、図1(B)に示す第2配線層の構成を説明するための平面図である。
図4】(A)は、図1(B)に示す第3配線層の構成を説明するための平面図であり、(B)は、図1(B)に示す第4配線層の構成を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(カードリーダの概略構成および非接触式通信モジュールの構成)
図1(A)は、本発明の実施の形態にかかる非接触式通信モジュール1が取り付けられるカードリーダ3の概略構成を説明するための図であり、図1(B)は、図1(A)に示す非接触式通信モジュール1の側面図である。図2は、図1に示す非接触式通信モジュール1の構成を説明するためのブロック図である。図3(A)は、図1(B)に示す第1配線層11の構成を説明するための平面図であり、図3(B)は、図1(B)に示す第2配線層12の構成を説明するための平面図である。図4(A)は、図1(B)に示す第3配線層13の構成を説明するための平面図であり、図4(B)は、図1(B)に示す第4配線層14の構成を説明するための平面図である。
【0021】
本形態の非接触式通信モジュール1は、電磁誘導によって非接触式のICカード2と非接触でデータの通信を行うためのモジュールである。非接触式通信モジュール1は、カードリーダ3に取り付けられて使用される。カードリーダ3は、たとえば、ATM(Automated Teller Machine)等の所定の上位装置に搭載されて使用される。カードリーダ3は、非接触式通信モジュール1が取り付けられる本体部4を備えている。
【0022】
本体部4には、ICカード2が移動するカード移動路5が形成されている。カードリーダ3は、カード移動路5でICカード2を搬送するための駆動ローラ6およびパッドローラ7を備えている。すなわち、カードリーダ3は、カード搬送式のカードリーダである。なお、カードリーダ3は、ICカード2の搬送機構を備えていない手動式のカードリーダであっても良い。
【0023】
非接触式通信モジュール1は、回路基板10を備えている。回路基板10は、ガラスエポキシ基板等のリジッド基板であり、略長方形の平板状に形成されている。また、回路基板10は、絶縁層を介して積層される複数の配線層(導体層)11~14を備える多層基板である。本形態の回路基板10は、配線層11~14として、第1配線層11と第2配線層12と第3配線層13と第4配線層14とを備えている。すなわち、本形態の回路基板10は、4個の配線層11~14を備えている。第1配線層11と第2配線層12と第3配線層13と第4配線層14とは、回路基板10の厚さ方向において、回路基板10の一方の面10aから他方の面10bに向かってこの順番で配置されている。
【0024】
回路基板10は、カード移動路5で搬送されるICカード2の厚さ方向と回路基板10の厚さ方向とが一致するように配置されている。また、回路基板10は、カード移動路5で搬送されるICカード2の厚さ方向におけるカード移動路5の一方側に配置されている。回路基板10は、回路基板10の一方の面10aがカード移動路5側を向くように配置されている。すなわち、回路基板10は、第1配線層11がカード移動路5側を向くように配置されており、非接触式通信モジュール1は、第1配線層11がカード移動路5側に配置されるように本体部4に取り付けられている。
【0025】
回路基板10には、ICカード2とデータの通信を行ったり、ICカード2に電力を供給するためのアンテナコイル15、16と、アンテナコイル15、16が接続されるアンテナ回路17と、アンテナ回路17が接続されるとともにICカード2との間で通信されるデータを処理するための制御回路18と、電源回路19とが実装されている。アンテナコイル15、16は、環状に形成されている。具体的には、アンテナコイル15、16は、略長方形の環状に形成されている。
【0026】
制御回路18は、集積回路(IC)22を備えている(図4(B)参照)。アンテナ回路17は、フィルタ回路(ローパスフィルタ)23と整合回路24と受信回路25とを備えている。制御回路18には、フィルタ回路23および整合回路24を介してアンテコイル15、16の一端側が接続され、受信回路25を介してアンテナコイル15、16の他端側が接続されている。回路基板10の厚さ方向から見たときに、アンテナ回路17および制御回路18は、アンテナコイル15、16の内周側に配置されている。また、回路基板10の厚さ方向から見たときに、電源回路19および後述の電源配線27も、アンテナコイル15、16の内周側に配置されている。
【0027】
アンテナコイル15は、第2配線層12に形成されている。アンテナコイル16は、第4配線層14に形成されている。アンテナ回路17は、第4配線層14に形成されている。第1配線層11には、アンテナコイル15、16のシールド配線(シールドパターン)26が形成されている。シールド配線26は、アンテナコイル15、16と同形状の略長方形の環状に形成されている。第1配線層11側から回路基板10を見ると、アンテナコイル15、16は、シールド配線26に覆われている。なお、電磁誘導によってシールド配線26に生じる電流がシールド配線26を回るように流れることがないように、シールド配線26の周方向において、シールド配線26の一部は繋がっていない。
【0028】
制御回路18は、第1配線層11および第4配線層14に形成されている。制御回路18の一部を構成する集積回路22は、第4配線層14に実装されている。電源回路19は、第3配線層13に形成されている。第3配線層13には、電源配線(電源パターン)27が形成されている。なお、回路基板10の他方の面10bには、各種の電子部品(図示省略)が実装されている。すなわち、第4配線層14の、第3配線層13に対向する面と反対側の面には、各種の電子部品が実装されている。
【0029】
第1配線層11、第2配線層12、第3配線層13および第4配線層14には、制御回路18用のグランド配線(グランドパターン)である第1グランド配線28が形成されている。すなわち、4個の配線層11~14のそれぞれには、第1グランド配線28が形成されている。回路基板10の厚さ方向から見たときに、第1グランド配線28は、アンテナコイル15、16の内周側に配置されている。
【0030】
また、回路基板10の厚さ方向から見たときに、制御回路18は、配線層11~14のそれぞれに形成される第1グランド配線28の領域内に配置されている。本形態では、回路基板10の厚さ方向から見たときに、制御回路18が形成される領域と、配線層11~14のそれぞれに形成される第1グランド配線28の領域とが略一致している。また、回路基板10の厚さ方向から見たときに、電源回路19および電源配線27も配線層11~14のそれぞれに形成される第1グランド配線28の領域内に配置されている。
【0031】
第1配線層11、第2配線層12および第3配線層13には、アンテナ回路17用のグランド配線(グランドパターン)である第2グランド配線29が形成されている。すなわち、アンテナ回路17が形成される第4配線層14には、第2グランド配線29は形成されていない。本形態の配線層11~13は、第2グランド配線29が形成される第2グランド形成層である。すなわち、本形態では、アンテナ回路17が形成される配線層14を除く残りの配線層11~13が第2グランド形成層となっている。
【0032】
回路基板10の厚さ方向から見たときに、第2グランド配線29は、アンテナコイル15、16の内周側に配置されている。また、回路基板10の厚さ方向から見たときに、アンテナ回路17は、配線層11~13のそれぞれに形成される第2グランド配線29の領域内に配置されている。本形態では、回路基板10の厚さ方向から見たときに、アンテナ回路17が形成される領域と、配線層11~13のそれぞれに形成される第2グランド配線29の領域とが略一致している。
【0033】
配線層11~13では、第1グランド配線28と第2グランド配線29とが複数の接続配線(接続パターン)30を介して電気的に接続されている。そのため、本形態では、第1グランド配線28と第2グランド配線29との間のインピーダンスが下がっている。また、回路基板10の厚さ方向から見たときに、第1配線層11に形成される接続配線30と、第2配線層12に形成される接続配線30と、第3配線層13に形成される接続配線30とは、略同じ位置に配置されている。
【0034】
配線層11~14のそれぞれに形成される第1グランド配線28は、多数のビアホール10c(図1(B)参照)によって互いに電気的に接続されている。そのため、本形態では、配線層11~14のそれぞれに形成される第1グランド配線28の間のインピーダンスが下がっている。ビアホール10cは、たとえば、回路基板10を貫通する貫通ビアホールである。また、ビアホール10cは、たとえば、約6(mm)間隔で回路基板10に多数形成されている。同様に、配線層11~13のそれぞれに形成される第2グランド配線29も、多数のビアホールによって互いに電気的に接続されている。そのため、本形態では、配線層11~14のそれぞれに形成される第2グランド配線28の間のインピーダンスが下がっている。
【0035】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、4個の配線層11~14のそれぞれに、制御回路18用のグランド配線である第1グランド配線28が形成されている。また、本形態では、アンテナ回路17用のグランド配線である第2グランド配線29が形成される配線層11~13では、第1グランド配線28と第2グランド配線29とが複数の接続配線30を介して電気的に接続されている。さらに、本形態では、配線層11~14のそれぞれに形成される第1グランド配線28は、多数のビアホール10cによって互いに電気的に接続されている。そのため、本願発明者の検討によれば、本形態では、回路基板10の厚さ方向から見たときに、環状に形成されるアンテナコイル15、16の内周側に制御回路18およびアンテナ回路17が配置されていても、非接触式通信モジュール1から発生するエミッションのレベルを低減することが可能になる。
【0036】
特に本形態では、回路基板10の厚さ方向から見たときに、制御回路18が、配線層11~14のそれぞれに形成される第1グランド配線28の領域内に配置されているため、本願発明者の検討によれば、非接触式通信モジュール1から発生するエミッションのレベルを効果的に低減することが可能になる。また、本形態では、アンテナ回路17が形成される第4配線層14に第2グランド配線29は形成されていないが、残りの配線層11~13に第2グランド配線29が形成されているため、本願発明者の検討によれば、非接触式通信モジュール1から発生するエミッションのレベルを効果的に低減することが可能になる。
【0037】
本形態では、回路基板10の厚さ方向から見たときに、制御回路18が形成される領域と、配線層11~14のそれぞれに形成される第1グランド配線28の領域とが略一致している。第1グランド配線28の領域が大きくなり過ぎると、第1グランド配線28の影響で非接触式通信モジュール1とICカード2との間の通信特性が低下するおそれがあるが、本願発明者の検討によれば、回路基板10の厚さ方向から見たときに、制御回路18が形成される領域と、配線層11~14のそれぞれに形成される第1グランド配線28の領域とが略一致していれば、非接触式通信モジュール1とICカード2との間の通信特性を確保しつつ、非接触式通信モジュール1から発生するエミッションのレベルを効果的に低減することが可能になる。
【0038】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0039】
上述した形態において、回路基板10の厚さ方向から見たときに、配線層11~14のそれぞれに形成される第1グランド配線28の領域が、制御回路18が形成される領域を覆っているのであれば、配線層11~13のそれぞれに形成される第2グランド配線29の領域は、回路基板10の厚さ方向から見たときに、アンテナ回路17が形成される領域と一致しない必要最小限の領域となっていても良い。
【0040】
上述した形態において、回路基板10の厚さ方向から見たときに、配線層11~14のそれぞれに形成される第1グランド配線28の領域が、制御回路18が形成される領域より広くなっていても良い。また、上述した形態において、回路基板10の厚さ方向から見たときに、制御回路18が形成される領域が、配線層11~14のそれぞれに形成される第1グランド配線28の領域よりも広くなっていて、制御回路18の一部が、配線層11~14のそれぞれに形成される第1グランド配線28の領域からはみ出していても良い。
【0041】
上述した形態において、第4配線層14に第2グランド配線29が形成されていても良い。また、上述した形態において、第1配線層11、第2配線層12および第3配線層13の中から任意に選択される1個または2個の配線層に第2グランド配線29が形成されていなくても良い。また、上述した形態において、回路基板10が備える配線層の数は、2個または3個であっても良いし、5個以上であっても良い。
【0042】
上述した形態において、アンテナコイル15またはアンテナコイル16が第3配線層13に形成されていても良い。また、上述した形態において、アンテナコイル15およびアンテナコイル16が、第2配線層12、第3配線層13または第4配線層14のいずれかに形成されていても良い。さらに、上述した形態において、アンテナコイル15、16は、円環状や楕円環状に形成されていても良いし、略長方形以外の四角環状や四角環状以外の多角環状に形成されていても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 非接触式通信モジュール
2 ICカード
3 カードリーダ
4 本体部
5 カード移動路
10 回路基板
10c ビアホール
11 第1配線層(配線層、第2グランド形成層)
12 第2配線層(配線層、第2グランド形成層)
13 第3配線層(配線層、第2グランド形成層)
14 第4配線層(配線層)
15、16 アンテナコイル
17 アンテナ回路
18 制御回路
19 電源回路
26 シールド配線
27 電源配線
28 第1グランド配線
29 第2グランド配線
30 接続配線
図1
図2
図3
図4