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  • 特許-トルクコンバータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】トルクコンバータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 47/08 20060101AFI20220815BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
F16H47/08 A
F16H1/28
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018167764
(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公開番号】P2020041564
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳宏
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-294556(JP,A)
【文献】特開2001-004007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 47/08
F16H 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機からのトルクを出力軸へと出力するトルクコンバータであって、
原動機からトルクが入力されるフロントカバー、インペラ、タービン、及びステータ、を有するトルクコンバータ本体と、
サンギア、遊星ギア、前記出力軸へトルクを出力する遊星キャリア、及びリングギア、を有する遊星歯車機構と、
第1クラッチと、
第2クラッチと、
を備え、
前記サンギア及び前記リングギアのうち一方のギアである第1ギアは、回転不能に配置され、
前記サンギア及び前記リングギアのうち他方のギアである第2ギアは、前記タービンに取り付けられ、
前記第1クラッチは、前記第2ギアを前記フロントカバーに連結し、
前記第2クラッチは、遊星キャリアを前記フロントカバーに連結する、
トルクコンバータ。
【請求項2】
前記タービンと前記第2ギアとの間に配置される第1ワンウェイクラッチをさらに備える、
請求項1に記載のトルクコンバータ。
【請求項3】
固定軸をさらに備え、
前記第ギアは、前記固定軸に固定される、
請求項1又は2に記載のトルクコンバータ。
【請求項4】
前記ステータと前記固定軸との間に配置される第2ワンウェイクラッチをさらに備える、
請求項3に記載のトルクコンバータ。
【請求項5】
前記第1ギアは、サンギアであり、
前記第2ギアは、リングギアである、
請求項1から4のいずれかに記載のトルクコンバータ。
【請求項6】
前記第1ギアは、リングギアであり、
前記第2ギアは、サンギアである、
請求項1から4のいずれかに記載のトルクコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、遊星歯車機構を有するトルクコンバータが提案されている。このトルクコンバータは、トルクコンバータ及び遊星歯車機構を介して原動機からのトルクを出力するトルク伝達パターン、もしくは、トルクコンバータ及び遊星歯車機構を介さずに原動機からトルクを直接出力するトルク伝達パターンを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2925472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したトルクコンバータは2つのトルク伝達パターンを有しているが、このトルク伝達パターンを増やしてトルク伝達パターンの多様性を向上させることが好ましい。そこで、本発明の課題は、トルク伝達パターンの多様性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に係るトルクコンバータは、原動機からのトルクを出力軸へと出力するように構成されている。このトルクコンバータは、トルクコンバータ本体、遊星歯車機構、第1クラッチ、及び第2クラッチを備えている。トルクコンバータ本体は、原動機からトルクが入力されるフロントカバー、インペラ、タービン、及びステータ、を有する。遊星歯車機構は、サンギア、遊星ギア、出力軸にトルクを出力する遊星キャリア、及びリングギア、を有する。サンギア及びリングギアのうち一方のギアである第1ギアは、回転不能に配置されている。そして、サンギア及びリングギアのうち他方のギアである第2ギアは、タービンに取り付けられている。第1クラッチは、第2ギアをフロントカバーに連結する。第2クラッチは、遊星キャリアをフロントカバーに連結する。
【0006】
この構成によれば、第1クラッチをクラッチオン状態とし、第2クラッチをクラッチオフ状態とすることによって、フロントカバーに入力されたトルクを、第2ギア→遊星ギア→遊星キャリア→出力軸の順で出力することができる。すなわち、トルクコンバータ本体を介さずに遊星歯車機構のみを介して出力軸にトルクを出力する第1のトルク伝達パターンを得ることができる。
【0007】
また、第1クラッチ及び第2クラッチをクラッチオフ状態とすることによって、フロントカバーに入力されたトルクを、インペラ→タービン→第2ギア→遊星ギア→遊星キャリア→出力軸の順で出力することができる。すなわち、トルクコンバータ本体及び遊星歯車機構を介して出力軸にトルクを出力する第2のトルク伝達パターンを得ることができる。
【0008】
さらには、第1クラッチをクラッチオフ状態とし、第2クラッチをクラッチオン状態とすることによって、フロントカバーに入力されたトルクを、遊星キャリア→出力軸の順で出力することができる。すなわち、トルクコンバータ本体及び遊星歯車機構を介さずに出力軸にトルクを出力する第3のトルク伝達パターンを得ることができる。
【0009】
以上のように、本発明の第1側面に係るトルクコンバータによれば、第1~第3のトルク伝達パターンの3つのトルク伝達パターンを得ることができ、従来に比べてトルク伝達パターンの多様性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の第1側面に係るトルクコンバータでは、原動機がモータの場合、モータを逆回転させることによってリバース走行をすることができる。このリバース走行の場合、例えば、第1クラッチをクラッチオン状態とし、第2クラッチをクラッチオフ状態とすることによって、フロントカバーに入力された逆回転のトルクを、第2ギア→遊星ギア→遊星キャリア→出力軸の順で出力することができる。すなわち、トルクコンバータ本体を介さずに遊星歯車機構のみを介して出力軸に逆回転のトルクを出力することができる。
【0011】
好ましくは、トルクコンバータは、タービンと第2ギアとの間に配置される第1ワンウェイクラッチをさらに備える。
【0012】
好ましくは、トルクコンバータは、固定軸をさらに備える。第1ギアは、固定軸に固定される。
【0013】
本発明の第2側面に係るトルクコンバータは、原動機からのトルクを出力軸へと出力するように構成されている。このトルクコンバータは、トルクコンバータ本体、遊星歯車機構、第1クラッチ、及び第2クラッチを備えている。トルクコンバータ本体は、原動機からトルクが入力されるフロントカバー、インペラ、タービン、及びステータ、を有する。遊星歯車機構は、回転不能に配置されたサンギア、遊星ギア、出力軸に取り付けられる遊星キャリア、及びタービンに取り付けられるリングギア、を有する。第1クラッチは、リングギアをフロントカバーに連結する。第2クラッチは、遊星キャリアをフロントカバーに連結する。
【0014】
この構成によれば、第1クラッチをクラッチオン状態とし、第2クラッチをクラッチオフ状態とすることによって、フロントカバーに入力されたトルクを、リングギア→遊星ギア→遊星キャリア→出力軸の順で出力することができる。すなわち、トルクコンバータ本体を介さずに遊星歯車機構のみを介して出力軸にトルクを出力する第1のトルク伝達パターンを得ることができる。
【0015】
また、第1クラッチ及び第2クラッチをクラッチオフ状態とすることによって、フロントカバーに入力されたトルクを、インペラ→タービン→リングギア→遊星ギア→遊星キャリア→出力軸の順で出力することができる。すなわち、トルクコンバータ本体及び遊星歯車機構を介して出力軸にトルクを出力する第2のトルク伝達パターンを得ることができる。
【0016】
さらには、第1クラッチをクラッチオフ状態とし、第2クラッチをクラッチオン状態とすることによって、フロントカバーに入力されたトルクを、遊星キャリア→出力軸の順で出力することができる。すなわち、トルクコンバータ本体及び遊星歯車機構を介さずに出力軸にトルクを出力する第3のトルク伝達パターンを得ることができる。
【0017】
以上のように、本発明の第2側面に係るトルクコンバータによれば、第1~第3のトルク伝達パターンの3つのトルク伝達パターンを得ることができ、従来に比べてトルク伝達パターンの多様性を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の第2側面に係るトルクコンバータでは、原動機がモータの場合、モータを逆回転させることによってリバース走行をすることができる。このリバース走行の場合、例えば、第1クラッチをクラッチオン状態とし、第2クラッチをクラッチオフ状態とすることによって、フロントカバーに入力された逆回転のトルクを、リングギア→遊星ギア→遊星キャリア→出力軸の順で出力することができる。すなわち、トルクコンバータ本体を介さずに遊星歯車機構のみを介して出力軸に逆回転のトルクを出力することができる。
【0019】
好ましくは、トルクコンバータは、タービンとリングギアとの間に配置される第1ワンウェイクラッチをさらに備える。
【0020】
好ましくは、トルクコンバータは、固定軸をさらに備える。サンギアは、固定軸に固定される。
【0021】
本発明の第3側面に係るトルクコンバータは、原動機からのトルクを出力軸へと出力するように構成されている。このトルクコンバータは、トルクコンバータ本体、遊星歯車機構、第1クラッチ、及び第2クラッチを備えている。トルクコンバータ本体は、原動機からトルクが入力されるフロントカバー、インペラ、タービン、及びステータ、を有する。遊星歯車機構は、タービンに取り付けられるサンギア、遊星ギア、出力軸に取り付けられる遊星キャリア、及び回転不能に配置されたリングギア、を有する。第1クラッチは、サンギアをフロントカバーに連結する。第2クラッチは、遊星キャリアをフロントカバーに連結する。
【0022】
この構成によれば、第1クラッチをクラッチオン状態とし、第2クラッチをクラッチオフ状態とすることによって、フロントカバーに入力されたトルクを、サンギア→遊星ギア→遊星キャリア→出力軸の順で出力することができる。すなわち、トルクコンバータ本体を介さずに遊星歯車機構のみを介して出力軸にトルクを出力する第1のトルク伝達パターンを得ることができる。
【0023】
また、第1クラッチ及び第2クラッチをクラッチオフ状態とすることによって、フロントカバーに入力されたトルクを、インペラ→タービン→サンギア→遊星ギア→遊星キャリア→出力軸の順で出力することができる。すなわち、トルクコンバータ本体及び遊星歯車機構を介して出力軸にトルクを出力する第2のトルク伝達パターンを得ることができる。
【0024】
さらには、第1クラッチをクラッチオフ状態とし、第2クラッチをクラッチオン状態とすることによって、フロントカバーに入力されたトルクを、遊星キャリア→出力軸の順で出力することができる。すなわち、トルクコンバータ本体及び遊星歯車機構を介さずに出力軸にトルクを出力する第3のトルク伝達パターンを得ることができる。
【0025】
以上のように、本発明の第3側面に係るトルクコンバータによれば、第1~第3のトルク伝達パターンの3つのトルク伝達パターンを得ることができ、従来に比べてトルク伝達パターンの多様性を向上させることができる。
【0026】
また、本発明の第3側面に係るトルクコンバータでは、原動機がモータの場合、モータを逆回転させることによってリバース走行をすることができる。このリバース走行の場合、例えば、第1クラッチをクラッチオン状態とし、第2クラッチをクラッチオフ状態とすることによって、フロントカバーに入力された逆回転のトルクを、サンギア→遊星ギア→遊星キャリア→出力軸の順で出力することができる。すなわち、トルクコンバータ本体を介さずに遊星歯車機構のみを介して出力軸に逆回転のトルクを出力することができる。
【0027】
好ましくは、トルクコンバータは、タービンとサンギアとの間に配置される第1ワンウェイクラッチをさらに備える。
【0028】
好ましくは、トルクコンバータは、固定軸をさらに備える。リングギアは、固定軸に固定される。
【0029】
好ましくは、トルクコンバータは、ステータと固定軸との間に配置される第2ワンウェイクラッチをさらに備える。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、トルク伝達パターンの多様性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態に係るトルクコンバータの概略図。
図2】第2実施形態に係るトルクコンバータの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
第1実施形態
以下、本発明に係るトルクコンバータの第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0033】
[全体構成]
図1に示すように、トルクコンバータ100は、回転軸Oを中心に回転可能に配置されている。トルクコンバータ100は、原動機101からのトルクを出力軸102へと出力している。例えば、出力軸102は、減速機103に連結されている。この原動機101は、例えば、電気モータ又はガソリンエンジンなどである。トルクコンバータ100は、固定軸1、トルクコンバータ本体2、遊星歯車機構3、第1クラッチ4、及び第2クラッチ5を備えている。
【0034】
[固定軸1]
固定軸1は、回転不能に配置されている。例えば、固定軸1は、ケーシング104に固定されている。固定軸1の中心軸は、トルクコンバータ100の回転軸Oと略一致している。固定軸1は、円筒状である。この固定軸1の内部空間を、出力軸102が延びている。
【0035】
[トルクコンバータ本体2]
トルクコンバータ本体2は、フロントカバー21、インペラ22、タービン23、及びステータ24を有している。
【0036】
フロントカバー21は、原動機101からのトルクが入力される。フロントカバー21は、円板部211と、円筒部212とを有している。円筒部212は、円板部211の外周端部からインペラ22側へ軸方向に延びている。
【0037】
インペラ22は、フロントカバー21に固定されている。すなわち、インペラ22は、フロントカバー21からのトルクが入力される。インペラ22は、インペラシェル221、複数のインペラブレード222、及びインペラハブ223を有する。インペラシェル221は、例えば溶接によって、フロントカバー21に固定されている。
【0038】
インペラブレード222は、インペラシェル221の内側面に固定されている。インペラハブ223はインペラシェル221の内周端部に溶接などによって固定されている。
【0039】
タービン23は、インペラ22に対向して配置されている。タービン23は、タービンシェル231、及び複数のタービンブレード232を有している。タービンブレード232は、タービンシェル231の内側面に、ろう付けなどによって固定されている。
【0040】
ステータ24は、タービン23からインペラ22へと戻る作動油を整流するように構成されている。ステータ24は、回転軸O周りに回転可能である。例えば、ステータ24は、固定軸1に、第2ワンウェイクラッチ106を介して支持されている。このステータ24は、軸方向において、インペラ22とタービン23との間に配置される。
【0041】
ステータ24は、円板状のステータキャリア241と、その外周面に取り付けられる複数のステータブレード242と、を有している。
【0042】
[遊星歯車機構3]
遊星歯車機構3は、サンギア31、複数の遊星ギア32、遊星キャリア33、及びリングギア34を有している。なお、第1実施形態では、サンギア31が本発明の第1ギアに相当し、リングギア34が本発明の第2ギアに相当する。
【0043】
サンギア31は、回転不能に配置されている。詳細には、サンギア31は、回転軸O周りに回転しない。例えば、サンギア31は、固定軸1に固定されている。サンギア31は、固定軸1と一体的に形成されていてもよい。
【0044】
各遊星ギア32は、サンギア31の半径方向外側に配置されている。各遊星ギア32は、サンギア31と噛み合っている。各遊星ギア32は、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。各遊星ギア32は、サンギア31の周りを自転しながら公転する。
【0045】
遊星キャリア33は、各遊星ギア32を回転可能に支持している。遊星キャリア33は、回転軸Oを中心に回転可能に配置されている。遊星キャリア33は、出力軸102にトルクを出力するように構成されている。例えば、遊星キャリア33は、出力軸102に取り付けられており、出力軸102と一体的に回転可能である。
【0046】
リングギア34は、各遊星ギア32の半径方向外側に配置されている。リングギア34は、各遊星ギア32と噛み合っている。リングギア34は、回転軸Oを中心に回転可能に配置されている。リングギア34は、タービン23に取り付けられている。
【0047】
[第1ワンウェイクラッチ105]
第1ワンウェイクラッチ105は、リングギア34とタービン23との間に配置されている。すなわち、リングギア34は、第1ワンウェイクラッチ105を介してタービン23に取り付けられている。第1ワンウェイクラッチ105は、タービン23からリングギア34へのトルクを伝達する一方で、リングギア34からタービン23へのトルクの伝達を遮断する。例えば、タービン23がリングギア34よりも速い回転数で回転するときに第1ワンウェイクラッチ105が結合し、タービン23からリングギア34へとトルクを伝達する。一方、リングギア34がタービン23よりも速い回転数で回転するときに第1ワンウェイクラッチ105が空転し、リングギア34からタービン23へのトルクは伝達されない。
【0048】
[第1クラッチ4]
第1クラッチ4は、リングギア34をフロントカバー21に連結するように構成されている。詳細には、第1クラッチ4がクラッチオン状態となると、リングギア34とフロントカバー21とを連結する。この結果、リングギア34とフロントカバー21とが一体的に回転する。また、第1クラッチ4がクラッチオフ状態となると、リングギア34とフロントカバー21との連結を遮断する。この結果、リングギア34とフロントカバー21とは相対回転可能となる。例えば、第1クラッチ4は、油圧式であって、1枚以上の摩擦板から構成することができる。第1クラッチ4は、フロントカバー21に取り付けられており、クラッチオン状態となると、リングギア34又はリングギア34と一体的に回転する部材に摩擦係合する。
【0049】
[第2クラッチ5]
第2クラッチ5は、遊星キャリア33をフロントカバー21に連結するように構成されている。詳細には、第2クラッチ5がクラッチオン状態となると、遊星キャリア33とフロントカバー21とを連結する。この結果、遊星キャリア33とフロントカバー21とが一体的に回転する。また、第2クラッチ5がクラッチオフ状態となると、遊星キャリア33とフロントカバー21との連結を遮断する。この結果、遊星キャリア33とフロントカバー21とが相対回転可能となる。例えば、第2クラッチ5は、油圧式であって、1枚以上の摩擦板から構成することができる。第2クラッチ5は、フロントカバー21に取り付けられており、クラッチオン状態となると、遊星キャリア33又は遊星キャリア33と一体的に回転する部材に摩擦係合する。
【0050】
[トルクコンバータ100の動作]
以上のように構成されたトルクコンバータ100の動作について説明する。
【0051】
まず、第1のトルク伝達パターンでは、第1クラッチ4をクラッチオン状態とし、第2クラッチ5をクラッチオフ状態とする。この結果、リングギア34はフロントカバー21と一体的に回転し、遊星キャリア33はフロントカバー21と相対回転可能となる。この第1のトルク伝達パターンでは、原動機101からフロントカバー21に入力されたトルクは、リングギア34→遊星ギア32→遊星キャリア33→出力軸102の順で出力される。
【0052】
このように第1のトルク伝達パターンでは、原動機101からのトルクは、トルクコンバータ本体2を介さずに遊星歯車機構3を経由して出力される。すなわち、原動機101からのトルクは遊星歯車機構3のみで増幅されて出力される。なお、この第1のトルク伝達パターンは、例えば、通常走行時に用いられる。また、この第1のトルク伝達パターンにおいて、第1ワンウェイクラッチ105は、リングギア34からタービン23へのトルクを伝達しない。
【0053】
次に、第2のトルク伝達パターンでは、第1クラッチ4及び第2クラッチ5の両方をクラッチオフ状態とする。この結果、リングギア34及び遊星キャリア33はフロントカバー21と相対回転可能となる。この第2のトルク伝達パターンでは、原動機101からフロントカバー21に入力されたトルクは、インペラ22→タービン23→リングギア34→遊星ギア32→遊星キャリア33→出力軸102の順で出力される。なお、第1ワンウェイクラッチ105は、タービン23からリングギア34へのトルクを伝達する。
【0054】
このように第2のトルク伝達パターンでは、原動機101からのトルクは、トルクコンバータ本体内2及び遊星歯車機構3を経由して出力される。すなわち、原動機101からのトルクは、トルクコンバータ本体2及び遊星歯車機構3の両方で増幅されて出力される。なお、この第2のトルク伝達パターンは、例えば、坂道などの高負荷走行時に用いられる。
【0055】
次に、第3のトルク伝達パターンでは、第1クラッチ4をクラッチオフ状態とし、第2クラッチ5をクラッチオン状態とする。この結果、リングギア34はフロントカバー21と相対回転可能となり、遊星キャリア33はフロントカバー21と一体的に回転する。この第3のトルク伝達パターンでは、原動機101からフロントカバー21に入力されたトルクは、遊星キャリア33→出力軸102の順で出力される。なお、この第3のトルク伝達パターンにおいて、第1ワンウェイクラッチ105は、リングギア34からタービン23へのトルクを伝達しない。
【0056】
このように第3のトルク伝達パターンでは、原動機101からのトルクは、トルクコンバータ本体2及び遊星歯車機構3のいずれも経由せずに出力される。すなわち、原動機101からのトルクは、トルクコンバータ本体2及び遊星歯車機構3のいずれにおいて増幅されずに出力軸102に出力される。なお、この第3のトルク伝達パターンは、例えば、高速走行時に用いられる。
【0057】
第2実施形態
次に第2実施形態に係るトルクコンバータについて説明する。なお、以下では、第1実施形態に係るトルクコンバータと異なる部分について主に説明し、第1実施形態に係るトルクコンバータと基本的に同じ構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0058】
図2に示すように、第2実施形態に係るトルクコンバータ100では、サンギア31が回転軸Oを中心に回転可能に配置されている。サンギア31は、タービン23に取り付けられている。すなわち、第2実施形態では、サンギア31が本発明の第2ギアに相当し、リングギア34が本発明の第1ギアに相当する。
【0059】
リングギア34は、回転不能に配置されている。詳細には、リングギア34は、回転軸O周りに回転しない。例えば、リングギア34は、固定軸1に固定されている。リングギア34は、固定軸1と一体的に形成されていてもよい。
【0060】
第1ワンウェイクラッチ105は、サンギア31とタービン23との間に配置されている。すなわち、サンギア31は、すなわち、サンギア31は、第1ワンウェイクラッチ105を介してタービン23に取り付けられている。第1ワンウェイクラッチ105は、タービン23からサンギア31へのトルクを伝達する一方で、サンギア31からタービン23へのトルクの伝達を遮断する。例えば、タービン23がサンギア31よりも速い回転数で回転するときに第1ワンウェイクラッチ105が結合し、タービン23からサンギア31へとトルクを伝達する。一方、サンギア31がタービン23よりも速い回転数で回転するときに第1ワンウェイクラッチ105が空転し、サンギア31からタービン23へのトルクは伝達されない。
【0061】
第1クラッチ4は、サンギア31をフロントカバー21に連結するように構成されている。詳細には、第1クラッチ4がクラッチオン状態となると、サンギア31とフロントカバー21とを連結する。この結果、サンギア31とフロントカバー21とが一体的に回転する。また、第1クラッチ4がクラッチオフ状態となると、サンギア31とフロントカバー21との連結を遮断する。この結果、サンギア31とフロントカバー21とは相対回転可能となる。例えば、第1クラッチ4は、油圧式であって、1枚以上の摩擦板から構成することができる。第1クラッチ4は、フロントカバー21に取り付けられており、クラッチオン状態となると、サンギア31又はサンギア31と一体的に回転する部材に摩擦係合する。
【0062】
以上のように構成された第2実施形態に係るトルクコンバータ100の動作について説明する。
【0063】
まず、第1のトルク伝達パターンでは、第1クラッチ4をクラッチオン状態とし、第2クラッチ5をクラッチオフ状態とする。この結果、サンギア31はフロントカバー21と一体的に回転し、遊星キャリア33はフロントカバー21と相対回転可能となる。この第1のトルク伝達パターンでは、原動機101からフロントカバー21に入力されたトルクは、サンギア31→遊星ギア32→遊星キャリア33→出力軸102の順で出力される。
【0064】
このように第1のトルク伝達パターンでは、原動機101からのトルクは、トルクコンバータ本体2を介さずに遊星歯車機構3を経由して出力される。すなわち、原動機101からのトルクは遊星歯車機構3のみで増幅されて出力される。なお、この第1のトルク伝達パターンは、例えば、通常走行時に用いられる。また、この第1のトルク伝達パターンにおいて、第1ワンウェイクラッチ105は、サンギア31からタービン23へのトルクを伝達しない。
【0065】
次に、第2のトルク伝達パターンでは、第1クラッチ4及び第2クラッチ5の両方をクラッチオフ状態とする。この結果、サンギア31及び遊星キャリア33はフロントカバー21と相対回転可能となる。この第2のトルク伝達パターンでは、原動機101からフロントカバー21に入力されたトルクは、インペラ22→タービン23→サンギア31→遊星ギア32→遊星キャリア33→出力軸102の順で出力される。なお、第1ワンウェイクラッチ105は、タービン23からサンギア31へのトルクを伝達する。
【0066】
このように第2のトルク伝達パターンでは、原動機101からのトルクは、トルクコンバータ本体内2及び遊星歯車機構3を経由して出力される。すなわち、原動機101からのトルクは、トルクコンバータ本体2及び遊星歯車機構3の両方で増幅されて出力される。
なお、この第2のトルク伝達パターンは、例えば、坂道などの高負荷走行時に用いられる。
【0067】
次に、第3のトルク伝達パターンでは、第1クラッチ4をクラッチオフ状態とし、第2クラッチ5をクラッチオン状態とする。この結果、サンギア31はフロントカバー21と相対回転可能となり、遊星キャリア33はフロントカバー21と一体的に回転する。この第3のトルク伝達パターンでは、原動機101からフロントカバー21に入力されたトルクは、遊星キャリア33→出力軸102の順で出力される。なお、この第3のトルク伝達パターンにおいて、第1ワンウェイクラッチ105は、サンギア31からタービン23へのトルクを伝達しない。
【0068】
このように第3のトルク伝達パターンでは、原動機101からのトルクは、トルクコンバータ本体2及び遊星歯車機構3のいずれも経由せずに出力される。すなわち、原動機101からのトルクは、トルクコンバータ本体2及び遊星歯車機構3のいずれにおいて増幅されずに出力軸102に出力される。なお、この第3のトルク伝達パターンは、例えば、高速走行時に用いられる。
【0069】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0070】
変形例1
例えば、上記各実施形態では、第1ワンウェイクラッチ105をタービン23とリングギア34又はサンギア31との間に設置しているが、第1ワンウェイクラッチ105の設置を省略してもよい。例えば、第1実施形態においてリングギア34はタービン23に直接取り付けられていてもよいし、第2実施形態においてサンギア31はタービン23に直接取り付けられていてもよい。
【0071】
変形例2
原動機101は、ガソリンエンジンであってもよいし、電気モータであってもよいし、これらの組合せであってもよい。原動機101を電気モータとした場合、原動機101を逆回転させてリバース走行することもできる。このリバース走行時は、例えば、第1クラッチ4をクラッチオン状態とし、第2クラッチ5をクラッチオフ状態とする。この結果、第1実施形態では、リングギア34はフロントカバー21と一体的に回転し、遊星キャリア33はフロントカバー21と相対回転可能となる。また、第2実施形態では、サンギア31はフロントカバー21と一体的に回転し、遊星キャリア33はフロントカバー21と相対回転可能となる。
【0072】
このリバース走行時におけるトルク伝達パターンにおいて、原動機101からフロントカバー21に入力された逆回転のトルクは、第1実施形態では、リングギア34→遊星ギア32→遊星キャリア33→出力軸102の順で出力され、第2実施形態では、サンギア31→遊星ギア32→遊星キャリア33→出力軸102の順で出力される。このようにリバース走行時におけるトルク伝達パターンでは、原動機101からの逆回転のトルクは、トルクコンバータ本体2を介さずに遊星歯車機構3のみを経由して出力される。すなわち、原動機101からの逆回転のトルクは、遊星歯車機構3のみで増幅されて出力される。
【0073】
変形例3
上記各実施形態では、遊星キャリア33は出力軸102に直接取り付けられているが、これに限定されず、遊星キャリア33は出力軸102に間接的に取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 固定軸
2 トルクコンバータ本体
21 フロントカバー
22 インペラ
23 タービン
24 ステータ
3 遊星歯車機構
31 サンギア
32 遊星ギア
33 遊星キャリア
34 リングギア
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ
100 トルクコンバータ
101 原動機
102 出力軸
105 第1ワンウェイクラッチ
106 第2ワンウェイクラッチ
図1
図2