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特許7122975ハードディスク用基板及びそれを用いたハードディスク装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】ハードディスク用基板及びそれを用いたハードディスク装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/73 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
G11B5/73
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018559627
(86)(22)【出願日】2017-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2017047169
(87)【国際公開番号】W WO2018124262
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2016256994
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 彩香
(72)【発明者】
【氏名】迎 展彰
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-334445(JP,A)
【文献】特開2006-241513(JP,A)
【文献】国際公開第2012/001914(WO,A1)
【文献】特開2012-195021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金基板の表面にNiPめっき膜が形成されたハードディスク用基板であって、
前記アルミニウム合金基板の板厚が0.338mm以上0.635mm以下であり、
前記アルミニウム合金基板のビッカース硬度が60Hv以上でかつ、
前記アルミニウム合金基板の板厚に応じて前記NiPめっき膜のめっき厚と前記アルミニウム合金基板の板厚との比が3.8以上となるように前記NiPめっき膜のめっき厚を22μm以上60μm以下とし、かつ、
前記ハードディスク用基板のヤング率が74.6GPa以上でかつ、
前記ハードディスク用基板のビッカース硬度が293Hv以上であることを特徴とするハードディスク用基板。
【請求項2】
前記NiPめっき膜が単層であることを特徴とする請求項1に記載のハードディスク用基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハードディスク用基板を用いたハードディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク用基板及びそれを用いたハードディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置の大容量化、小型化に伴い、ハードディスク用基板の板厚の薄形化が進んでいる。ハードディスク用基板の厚みを薄くすることで、ハードディスク装置内のハードディスクの積載量(枚数)を増やし、ハードディスク装置の大容量化を図ることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、外径が1.89インチのAl合金基板を用いた磁気記録用基板の板厚を0.635mmとし、NiPめっき層の膜厚を7μm以上とすることが記載されている。そして、特許文献2では、磁気ディスクの耐衝撃性能を向上させるために、表面処理膜のビッカース硬度を所定値以上とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-7251号公報
【文献】特開平9-198640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、Al合金基板の厚みを薄くすると、ハードディスク装置内でハードディスクが回転したときに面ブレ(フラッタリング)を生じるおそれがある。
【0006】
また、Al合金基板の厚みを薄くすると、ハードディスク用基板の耐力が低下し、硬度が低下する。したがって、落下の衝撃やフラッタリング等によってハードディスク装置内でハードディスクに磁気ヘッド等が接触した際に、ハードディスクの表面に傷が付きやすくなる。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ディスク表面への傷付きを抑え、回転時の面ブレの発生を抑えることができる薄形のハードディスク用基板及びそれを用いたハードディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明のハードディスク用基板は、
アルミニウム合金基板の表面にNiPめっき膜が形成されたハードディスク用基板であって、
前記アルミニウム合金基板のビッカース硬度が60Hv以上でかつ、該NiPめっき膜のめっき厚と前記アルミニウム合金基板の板厚との比が3.8%以上でかつ、前記ハードディスク用基板のヤング率が74.6GPa以上でかつ、前記ハードディスク用基板のビッカース硬度が293Hv以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明のハードディスク用基板は、
前記アルミニウム合金基板の板厚が0.338mm以上0.635mm以下であり、
前記NiPめっき膜のめっき厚が両面併せて22μm以上60μm以下であることを特徴とする。
また、本発明は、上記ハードディスク用基板を用いたハードディスク装置をも含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、かかるハードディスク用基板をハードディスク装置に用いた場合に、ハードディスクの表面に傷が付きにくくなり、ハードディスクの回転時におけるフラッタリングによる振幅を低減させることができる。
【0011】
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ハードディスク用基板の断面を模式的に示す図。
図2】めっき厚と板厚との比と、ビッカース硬度との関係を示すグラフ。
図3】めっき厚と板厚との比と、ヤング率との関係を示すグラフ。
図4】めっき厚と板厚との比と、ビッカース硬度との関係を示すグラフ。
図5】めっき厚と板厚との比と、ヤング率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、ハードディスク用基板の断面を模式的に示す図である。
【0014】
ハードディスク用基板1は、アルミニウム合金基板(以下、Al合金基板)2の表面に非磁性な表面処理膜であるNiPめっき膜3が形成された構成を有している。NiPめっき膜3は、Al合金基板2の両面に形成されている。ハードディスクは、ハードディスク用基板1の表面に磁性膜が形成された構成を有している。ハードディスク装置は、複数枚のハードディスクを積載しており、モータや磁気ヘッドを備えている。
【0015】
本実施の形態におけるハードディスク用基板は、大容量のハードディスク用基板であり、好適な耐衝撃性及びフラッタリング性能に優れた磁気ディスク用基板である。
【0016】
ハードディスク用基板は近年、薄形化しており、且つ、薄形化によりハードディスク装置に内蔵されるハードディスクの搭載枚数は増加している。特にニアライン向けのハードディスク用途では記録容量が大容量化している。また、ハードディスクの表面と磁気ヘッドのスライダー表面との間の距離も近接化しており、これによる記録容量の大容量化も図られている。
【0017】
しかしながら、ハードディスクの薄形化に伴い、ハードディスクがハードディスク装置内で回転する際、フラッタリング性能が悪化し、ハードディスクがバタつくおそれがあり、特に、ハードディスク用基板の板厚が0.635mm以下にて顕著である。
【0018】
下記の式(1)は、ハードディスクのフラッタリング性能を表す式である。
W=F・a2・(1―ν2)/(E・β・h3・λ4) ・・・(1)
W:ハードディスクの振幅、F:基板回転数、a:基板外半径、ν:ポアソン比、E:ヤング率、β:基板のダンピングファクター、h:基板の板厚、λ:基板形状パラメーター
【0019】
ハードディスクのフラッタリング性能が悪化すると、ハードディスクの表面に対する磁気ヘッドやディスクと接する部位との衝突回数が増加し、例えば、衝突によりハードディスクの保護膜あるいは磁性膜を破壊し、データの信頼性が劣化する。従って、ハードディスク用基板としては、ヤング率を向上させ、フラッタリング(基板の振幅)を低減させ、且つ、磁気ヘッドやディスクと接する部位との衝突に対する強度向上として、耐力や、硬度を高めることが必要である。
【0020】
本発明のハードディスク用基板1は、Al合金基板2のビッカース硬度が60Hv以上でかつ、NiPめっき膜3のめっき厚とAl合金基板2の板厚との比が3.8%以上でかつ、ハードディスク用基板1のヤング率が74.6GPa以上でかつ、ハードディスク用基板1のビッカース硬度が293Hv以上である。
【0021】
NiPめっき膜3のめっき厚(b1+b2)とAl合金基板2の板厚(a1)との比であるめっき厚比率(めっき厚/アルミ厚(%))は、下記の式(2)によって算出される。
((b1+b2)÷(a1))×100(%)・・・(2)
【0022】
なお、本実施例の説明では、ハードディスク用基板1の両面のNiPめっき膜3のめっき厚を合計した値を「NiPめっき膜3のめっき厚」と称し、ハードディスク用基板1の片面のNiPめっき膜3のめっき厚を「NiPめっき膜3の片側めっき厚」と称する。
【0023】
ハードディスク用基板1は、Al合金基板2の板厚が0.338mm以上0.635mm以下であり、NiPめっき膜3のめっき厚が22μm以上60μm以下であることが好ましい。さらに、NiPめっき膜3のめっき厚は、22μm以上40μm以下であることがより好ましい。例えば、Al合金基板2の板厚が0.617mmの場合、NiPめっき膜のめっき厚を22μm以上とすることが好ましい。
【0024】
本実施の形態におけるハードディスク用基板の製造方法は、Al合金基板を研削して基板を形成する基板形成工程と、基板に無電解NiPめっきを施して基板の表面に無電解NiPめっき膜を形成するめっき工程と、無電解NiPめっき膜が形成された基板の表面を研磨する研磨工程と、研磨されためっき皮膜を洗浄する洗浄工程と、を含む。
【0025】
上記各工程のうち、めっき工程は、(1)脱脂処理、(2)水洗、(3)エッチング処理、(4)水洗、(5)脱スマット処理、(6)水洗、(7)1次ジンケート処理、(8)水洗、(9)脱ジンケート処理、(10)水洗、(11)2次ジンケート処理、(12)水洗、(13)無電解NiPめっき、(14)水洗、(15)乾燥、(16)焼鈍で行うことができる。
【0026】
上記(13)無電解NiPめっきに用いられるめっき液は、析出速度が早くかつ耐食性が良いものが好ましい。例えば析出速度が6.0μm/h以上であることが好ましい。そして、生成されたNiPめっき皮膜は濃度30%の硝酸に40℃、7分間浸漬した場合に、腐食面積が1.3%以下の耐食性を有するものとなることが好ましい。
【0027】
ハードディスク用基板を製造する方法において、Al合金基板の板厚を0.635mm以下と薄くする場合、Al合金基板の板厚が例えば0.8mmと厚い場合に比べて、NiPめっき膜3の膜厚をより厚くしなければならない。したがって、従来の析出速度が遅いめっき液を使用してめっき膜を厚くしようとすると生産性を阻害してしまう。
【0028】
これに対して、本実施の形態では、Al合金基板の板厚が0.635mm以下と薄いものを使用するが、無電解NiPめっき液は上記の析出速度が速いものを使用するので、生産性を阻害することはない。また、析出速度を速めると耐食性が低くなることが懸念されるが、本実施の形態では、耐食性が良いものを使用しており、耐食性が損なわれることはない。したがって、ハードディスク用基板をハードディスク装置に用いた場合に、ハードディスクの表面に傷が付きにくくなり、ハードディスクの回転時におけるフラッタリングによる振幅を低減させることができるハードディスク用基板を効率良く生産することが可能となる。
【0029】
上記したハードディスク用基板1によれば、フラッタリング(基板の振幅)を低減させ、磁気ヘッドやディスクと接する部位との衝突に対する耐力や、強度を向上させることができる。
【0030】
[実施例]
<基板の作製>
ビッカース硬度60Hv以上、板厚0.617mmのAl合金基板(JIS H4000に規定された5000系の5086アルミニウム合金)の表面に無電解NiPめっき法を用いて、種々のめっき膜厚の非晶質NiPめっきを施した。
【0031】
Al合金基板は、厚みが0.617mmでビッカース硬度が60Hvと75Hvの合計2種類のものを使用した。めっき前処理では、ダブルジンケート処理を適用し、(i)リン酸ソーダ、界面活性剤からなる公知の脱脂液を用いて50℃で2分間の脱脂処理を行い、(ii)硫酸、リン酸を含有する公知のエッチング液を用いて50℃で2分間のエッチング処理を行い、(iii)硝酸を含有する公知の脱スマット液を用いて20℃で30秒間の脱スマット処理を行い、(iv)水酸化ナトリウムと亜鉛と鉄およびその錯化剤からなる公知のアルカリジンケート処理液を用いて20℃で30秒間の一次ジンケート処理を行い、(v)脱スマット液と同様の液を用い20℃で30秒間の脱ジンケート処理を行い、(vi)一次ジンケート処理と同様の液を用い20℃で30秒間の二次ジンケート処理を行った。なお、これら(i)~(vi)の各工程間には水洗処理を実行した。次いで、公知のリンゴ酸-コハク酸系無電解ニッケルめっき液を用い、目的の膜厚になるよう任意の時間、無電解ニッケルめっきを行った。
【0032】
[評価1:ビッカース硬度]
作製しためっき基板のビッカース硬度を求めるために、ビッカース硬度計((株)アカシ社製、マイクロビッカース硬さ試験機MVK-G2)を使用し、100g荷重で測定を行った。測定方法は、JISZ2244の規定に従って行った。なお、高精度硬さ基準片((株)山本科学工具研究社製、HMV200)で精度を確認しながら測定した。
【0033】
表1は、Al合金基板のビッカース硬度が60Hvの場合における、NiPめっき膜の膜厚とAl合金基板の板厚との比率(めっき厚比率)と、ハードディスク用基板1のビッカース硬度の測定結果を示すものであり、表2は、Al合金基板のビッカース硬度が75Hvの場合における、NiPめっき膜の膜厚とAl合金基板の板厚との比率(めっき厚比率)と、ハードディスク用基板1のビッカース硬度の測定結果を示すものである。そして、図2は、表1及び表2の測定結果をグラフに示したものである。
【0034】
なお、表1及び表2において、片側めっき厚とは、Al合金基板2の一方側のNiPめっき膜の膜厚(b1またはb2の一方)であり、基本的にAl合金基板の一方側の膜厚と他方側の膜厚は同じ値となっている。すなわち、片側めっき厚の2倍がめっき厚になる。
【表1】
【表2】
【0035】
めっき厚/アルミ厚の比(めっき厚比率)と、ビッカース硬度との関係式を求めると、下記の式(3)、(4)となる。
Al合金基板のビッカース硬度が60Hv、厚み0.617mmの場合
y=103.79x-97.55 ・・・(3)
Al合金基板のビッカース硬度が75Hv、厚み0.617mmの場合
y=95.307x-44.248 ・・・(4)
【0036】
(耐衝撃性試験及び評価方法)
上記した実施例1-4のものと比較例3、4、5のものに対して、耐衝撃性試験を行った。耐衝撃性試験では、デュポン社製の衝撃試験器具に罫書き針(トラスコ社製、KB-PK)を装着し、打ち型と受け代の間にディスク用基板を挟み、おもりを落下させて凹みを作り、凹み深さをデジタルマイクロスコープ((株)ハイロックス社製、KH-8700)の3D測定により測定した。
【0037】
衝撃値の計算方法を下記に示す。
おもりM:11.9784g
おもり落下高さh:0.05m
打ち具m:13.0840g
停止するまでの時間を0.001sと仮定した場合、
衝撃値『G』=(M/(M+m)×√2gh-止まったときの速度)÷停止するまでの時間(s)=475.2m/s=48.5G
【0038】
(評価基準)
凹み深さをそれぞれ異なる箇所で10点測定し、その平均値が120μmより大きいものを耐衝撃性NGである「×」とし、凹み深さの平均値が120μm以下のものを耐衝撃性OKである「○」とした。
【0039】
(評価結果)
上記した試験の結果、実施例1、2、3、4は、「○」となり、耐衝撃性OKの評価となった。そして、比較例3、4、5は、「×」となり、耐衝撃性NGの評価となった。
表1及び図2に示すように、めっき厚比率が上がるごとにビッカース硬度は向上し、めっき厚比率が3.82%以上となる実施例1-4のものでは、ビッカース硬度が293.0Hvを超える高強度材となった。
【0040】
[評価2:ヤング率]
作製したビッカース硬度60Hvのめっき基板のヤング率を求めるためにヤング率試験装置(日本テクノプラス社製、JE-RT)を用い、室温・大気雰囲気で自由共振法により測定を行った。
【0041】
基板は幅10mm、長さ60mmに切断し、金属細線にて振動節の位置に吊るし自由端共振させ、式(5)を用いてヤング率Eを算出した。
ただし、E:ヤング率、f:曲げ共振周波数、m:質量、L:板の長さ、w:板の幅、t:板の厚さ
【0042】
表3はAl合金基板のビッカース硬度が60Hvの場合における、NiPめっき膜の膜厚とAl合金基板の板厚との比率(めっき厚比率)と、ハードディスク用基板1のヤング率の測定結果を示すものであり、図3は、表3の測定結果をグラフに示したものである。
【表3】
【0043】
比較例11~比較例20より、めっき厚/アルミ厚の比(めっき厚比率)と、ヤング率との関係式を求めると、下記の式(6)となる。
y=1.6202x+68.935 ・・・(6)
【0044】
表3及び図3に示すように、めっき厚比率が上がるごとにヤング率は向上し、めっき厚比率が3.82%以上の実施例8-12のものでは、ヤング率が74.6GPaを超え、フラッタリング性能が飛躍的に向上した。
【0045】
表4及び表5は、Al合金基板の板厚が0.559mmでかつAl合金基板のビッカース硬度が60Hvの場合におけるハードディスク用基板1のビッカース硬度及びヤング率を、Al合金基板の板厚が0.617mmの測定結果を元に作成した式(6)に、Al合金基板の板厚が0.559mmのめっき厚比率をxに代入して算出した数値(参考値)を示すものであり、図4及び図5は、表4及び表5の参考値をグラフに示すものである。表4及び表5に示す参考値は、表1-3に示す実施例1-12と比較例1-22に基づいて算出した。
【表4】
【表5】
【0046】
めっき厚比率と、ビッカース硬度(参考値)との関係式を求めると、下記の式(7)となる。
y=95.755x-106.29 ・・・(7)
【0047】
そして、めっき厚比率と、ヤング率(参考値)との関係式を求めると、下記の式(8)となる。
y=1.6202x-68.935 ・・・(8)
【0048】
表4及び表5に示すハードディスク用基板1は、実施例1-12よりもAl合金基板の板厚がさらに薄くなっているので、実施例1-12よりも片側めっき厚を厚くするほうが好ましい。ビッカース硬度の参考値4-7は293.0Hvを越えるフラッタリング抑制効果の高いものとなっており、また、ヤング率の参考値10-12は75.76GPaを越える高強度材となっている。
【0049】
表6は、Al合金基板の板厚が0.559mmでかつAl合金基板のビッカース硬度が60Hvの場合におけるハードディスク用基板1のビッカース硬度の測定結果を示すものである。
【表6】
【0050】
表6に示す実施例13のハードディスク用基板1は、Al合金基板の片側めっき厚が30μmであり、めっき厚比率が10.73である。実施例13のハードディスク用基板1は、ビッカース硬度の測定結果が616.0Hvの高強度材となり、各比較例よりも表面が傷付くのを抑制する効果が高いものとなっている。
【0051】
表7は、Al合金基板の板厚が0.559mmでかつAl合金基板のビッカース硬度が60Hvの場合におけるハードディスク用基板1のヤング率の測定結果を示すものである。
【表7】
【0052】
表7に示す実施例14のハードディスク用基板1は、実施例13と同様に、Al合金基板の片側めっき厚が30μmであり、めっき厚比率が10.73である。実施例14のハードディスク用基板1は、ヤング率の測定結果が81.3GPaのフラッタリング抑制効果の高いものとなり、各比較例よりもフラッタリング性能が飛躍的に向上している。
【0053】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0054】
1 ハードディスク用基板
2 アルミニウム合金基板(Al合金基板)
3 NiPめっき膜
a1 アルミニウム合金基板の板厚
b1、b2 NiPめっき膜の膜厚
図1
図2
図3
図4
図5