(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20220815BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220815BHJP
H01M 4/52 20100101ALI20220815BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/52
(21)【出願番号】P 2019015088
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】津國 和之
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 樹理
(72)【発明者】
【氏名】殿川 孝司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛之
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特許第5774606(JP,B2)
【文献】特開2015-82445(JP,A)
【文献】特開2017-59455(JP,A)
【文献】特開2018-156778(JP,A)
【文献】国際公開第2006/082846(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0562
H01M 4/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、第1のn型酸化物半導体材料を含んだ第1の層と、
前記第1の層上に配置され、第2のn型酸化物半導体材料と第1の絶縁材料とを含んだ第2の層と、
前記第2の層の上に配置され、固体電解質層である第3の層と、
前記第3の層の上に配置され、六角形状のNi(OH)
2微結晶を有する第4の層と、を備えた二次電池。
【請求項2】
前記第4の層に対して微小角入射X線回折法によるX線回折測定を行うことにより得られたX線回折パターンにおいて、Ni(OH)
2の(001)面の回折強度を示す第1ピーク、及びNi(OH)
2の(100)面の回折強度を示す第2ピークが存在している請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、第1のn型酸化物半導体材料を含んだ第1の層と、
前記第1の層上に配置され、第2のn型酸化物半導体材料と第1の絶縁材料とを含んだ第2の層と、
前記第2の層の上に配置され、固体電解質層である第3の層と、
前記第3の層の上に配置され、微結晶の水酸化ニッケルを含んだ第4の層と、を備え、
前記第4の層に対して微小角入射X線回折法によるX線回折測定を行うことにより得られたX線回折パターンにおいて、Ni(OH)2の(001)面の回折強度を示す第1ピーク、及びNi(OH)2の(100)面の回折強度を示す第2ピークが存在している二次電池。
【請求項4】
前記第1ピークの半値幅は、前記第2ピークの半値幅よりも大きい請求項2、又は3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記微結晶の平面サイズが200nm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第4の層が、前記第2電極と接することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第4の層の厚さが、500nm以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の性能を向上するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1電極と第2電極との間に、第1酸化物半導体層、第1充電層、第2充電層、水酸化物層、第3酸化物半導体層を備えた二次電池が開示されている。第3酸化物半導体層は酸化ニッケル(NiO)であり、水酸化物層は、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)である。水酸化ニッケル層は、第2電極形成後に電気的処理を行う電気刺激工程で形成されている。つまり、第1電極、及び第2電極の間にパルス電圧を印加することで、第2充電層と第3酸化物半導体層との間に水酸化ニッケル層が形成される。
【0003】
特許文献2には、第1電極と第2電極との間に、第1酸化物半導体層、第1充電層、第2充電層、第3酸化物半導体層を備えた二次電池が開示されている。第3酸化物半導体層は、厚さ200nm-1000nmのp型酸化物半導体層である。具体的には、p型酸化物半導体層酸化ニッケルNiOと、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)との混在層である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-37261号公報
【文献】特開2018-152311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような二次電池では、さらなる性能の向上が望まれている。
【0006】
本発明は、二次電池の性能を向上するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の一態様に係る二次電池は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に配置され、第1のn型酸化物半導体材料を含んだ第1の層と、前記第1の層上に配置され、第2のn型酸化物半導体材料と第1の絶縁材料とを含んだ第2の層と、前記第2の層の上に配置され、固体電解質層である第3の層と、前記第3の層の上に配置され、六角形状のNi(OH)2微結晶を有する第4の層と、を備えている。
【0008】
上記の二次電池において、前記第4の層に対して微小角入射X線回折法によるX線回折測定を行うことにより得られたX線回折パターンにおいて、Ni(OH)2の(001)面の回折強度の第1ピーク、及びNi(OH)2の(100)面の回折強度を示す第2ピークが存在していてもよい。
【0009】
本実施形態の一態様に係る二次電池は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に配置され、第1のn型酸化物半導体材料を含んだ第1の層と、前記第1の層上に配置され、第2のn型酸化物半導体材料と第1の絶縁材料とを含んだ第2の層と、前記第2の層の上に配置され、固体電解質層である第3の層と、前記第3の層の上に配置され、微結晶の水酸化ニッケルを含んだ第4の層と、を備え、前記第4の層に対して微小角入射X線回折法によるX線回折測定を行うことにより得られたX線回折パターンにおいて、水酸化ニッケルの(001)面の回折強度の第1ピーク、及びNi(OH)2の(100)面の回折強度を示す第2ピークが存在している。
【0010】
上記の二次電池において、前記第1ピークの半値幅は、前記第2ピークの半値幅よりも大きい請求項2又は3に記載の二次電池。
上記の二次電池において、前記微結晶の平面サイズが200nm以下であることが好ましい。
【0011】
上記の二次電池において、前記第4の層が、前記第2電極と接していてもよい。
【0012】
上記の二次電池において、前記第4の層の厚さが、500nm以上であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二次電池の性能を向上するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1にかかる二次電池の積層構成を模式的に示す図である。
【
図7】第4の層のX線回折パターンを示す図である。
【
図8】Ni(OH)
2の結晶構造を模式的に示す図である。
【
図9】二次電池の製造方法を示すフローチャートである。
【
図10】第4の層の断面SEM写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施形態を示しており、本発明の技術的範囲が以下の実施形態に限定されない。
【0016】
実施の形態1.
(二次電池の積層構造)
以下、本実施の形態にかかる二次電池の基本的な構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、二次電池100の積層構成を模式的に示す断面図である。
【0017】
図1において、二次電池100は、第1電極21、第1の層11、第2の層12、第3の層13、第4の層14、及び第2電極22がこの順序で積層された積層構造を有している。
【0018】
[第1電極21]
第1電極21は、二次電池100の負極となる。第1電極21は、基材として機能する導電性シートや導電性基板である。第1電極21としては、例えば、SUSシートやアルミニウムシート等の金属箔シートを用いることができる。なお、絶縁体からなる基材を用意して、基材の上に第1電極21を形成することもできる。絶縁性基材上に第1電極21を成膜する場合、第1電極21の材料として、タングステン(W)、クロム(Cr)又はチタン(Ti)等の金属材料を用いることができる。第1電極21の材料として、アルミニウム(Al)、銀(Ag)等を含む合金膜を用いてもよい。第1電極21を基材上に形成する場合、後述する第2電極22と同様に形成することができる。
【0019】
[第1の層11]
第1電極21の上には、第1の層11が配置されている。第1の層11は、第1電極21の第2電極22側に配置されている。第1の層11は、第1電極21と接するように形成されている。第1の層11の膜厚は、例えば、約50nm-200nm程度である。
【0020】
第1の層11はn型酸化物半導体材料(第1のn型酸化物半導体材料)を含んでいる。第1の層11は、所定の厚さで形成されたn型酸化物半導体層である。第1の層11としては、例えば、二酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)又は酸化亜鉛(ZnO)等を使用することが可能である。例えば、第1の層11は、スパッタリング又は蒸着等により、第1電極21上に成膜されたn型酸化物半導体層である。第1の層11の材料として、二酸化チタン(TiO2)を用いることが特に好ましい。
【0021】
[第2の層12]
第1の層11の上には、負極活物質として機能する第2の層12が配置されている。第2の層12は、第1の層11の第2電極22側に配置されている。第2の層12は、第1の層11と接するように形成されている。第2の層12の厚さは、例えば200nm~3000nmとなっている。第2の層12の厚さは、例えば、10μm以上であってもよい。
【0022】
第2の層12は、絶縁材料(第1の絶縁材料)を含んでいる。第1の絶縁材料としては、シリコーン樹脂を用いることができる。例えば、第1の絶縁材料としては、シリコン酸化物等のシロキサン結合による主骨格を持つシリコン化合物(シリコーン)を使用することが好ましい。よって、第2の層12は、第1の絶縁材料として酸化ケイ素(SiOx)を含んでいる。
【0023】
また、第2の層12は、絶縁材料(第1の絶縁材料)に加えて、n型酸化物半導体材料(第2のn型酸化物半導体材料)を含んでいる。すなわち、第2の層12は、第1の絶縁材料と第2のn型酸化物半導体材料とを混合した混合物により形成されている。例えば、第2のn型酸化物半導体材料として、微粒子のn型酸化物半導体を使用することが可能である。
【0024】
例えば、第2の層12は、第2のn型酸化物半導体材料をチタン酸化物として、酸化シリコンとチタン酸化物とによって形成される。この他に、第2の層12で使用可能なn型酸化物半導体材料としては、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)が好適である。チタン酸化物、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化マグネシウムの2つ、3つ、又は全てを組み合わせた材料を使用することも可能である。
【0025】
第2の層12に含まれる第2のn型酸化物半導体材料と、第1の層11に含まれる第1のn型酸化物半導体材料とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、第1の層11に含まれる第1のn型酸化物半導体材料が酸化チタンである場合、第2の層12の第2のn型酸化物半導体材料は酸化チタンであってもよいし、酸化チタン以外のn型酸化物半導体材料であってもよい。
【0026】
[第3の層13]
第2の層12の上には、固体電解質として機能する第3の層13が配置されている。第3の層13は、第2の層12の第2電極22側に配置されている。第3の層13は、第2の層12と接するように形成されている。第3の層13の厚さは、50nm以上、800nm以下であることが好ましい。第3の層13の厚さは、800nm以上であってもよい。
【0027】
第3の層13は、H+及び電子(e-)の移動を調整する。第3の層13は、タンタル酸化物を含む層である。例えば、第3の層13は、所定の厚さのタンタル酸化物膜(TaOx膜)により形成することができる。具体的には、第3の層13は、スパッタリング等により第2の層12の上に成膜されたTaOx層である。また、第3の層13は、タンタル酸化物を含んだ非晶質層(アモルファス層)であることが好ましい。あるいは、第3の層13は、複数のタンタル酸化物ナノ粒子を含んだナノ粒子層であることが好ましい。
【0028】
[第4の層14]
第3の層13の上には、正極活物質として機能する第4の層14が配置されている。第4の層14は、第3の層13の第2電極22側に配置されている。第4の層14は、第3の層13と接するように形成されている。第4の層14は、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)を含んでいる。具体的には、所定の厚さで成膜された水酸化ニッケル層が第4の層14となる。第4の層14の厚さは、500nm以上とすることが好ましい。また、第4の層14の厚さは、3600nm以下とすることが好ましい。
【0029】
第4の層14は、複数のNi(OH)2を含んだ六角形状の微結晶を有する。第4の層14は、Ni(OH)2の微結晶が積層された集合体となっている。例えば、Ni(OH)2の微結晶の平面サイズは、200nm以下となっている。第4の層14は、例えば、引上げ法、又は移流集積法等で形成することができる。さらに、第4の層14には、水酸化ニッケル層に、特性改善のためのコバルト(Co)又は亜鉛(Zn)等の金属材料が添加されていてもよい。
【0030】
[第2電極22]
第4の層14の上には、第2電極22が配置されている。第2電極22は、第4の層14と接するように形成されている。第2電極22は、導電膜によって形成されていればよい。また、第2電極22の材料としては、クロム(Cr)又は銅(Cu)等の金属材料を用いることができる。第2電極22の材料として、アルミニウム(Al)、銀(Ag)等を含む合金膜を用いてもよい。その形成方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の気相成膜法を挙げることができる。また、金属電極は電解メッキ法、無電解メッキ法等により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能である。例えば、第2電極22は、厚さ300nmのAl膜となっている。
【0031】
固体電解質層である第3の層13の上に、水酸化ニッケル膜を直接成膜することで、第4の層14が形成される。このようにすることで、第4の層14を十分な厚さを有する水酸化ニッケル層とすることができる。よって、正極活物質の増加により、蓄電容量を増加することができる。さらに、Ni(OH)2の微結晶を堆積した構造とすることで、金属材料を容易に添加することができる。
【0032】
これに対して、特許文献1では、第2電極形成後に電気的処理を行う電気刺激工程で形成されている。よって、Ni(OH)2の微結晶を形成することができない。さらに、十分な厚さの水酸化ニッケル層を形成することが困難である。
【0033】
また、特許文献2では、水素を含有する酸化ニッケル膜を、スパッタデポジション法で成膜している。具体的には、NiまたはNiOをターゲットとしている。そして、水は、スパッタデポジション装置のチャンバー内の水蒸気若しくは水分から取り込まれる。よって、Ni(OH)2の微結晶を形成することができない。さらに、十分な厚さの水酸化ニッケル層を形成することが困難である。
【0034】
図2、
図3は、第4の層14の表面SEM(Scanning Electron Microscope)写真を示す。
図3では、
図2よりも拡大倍率が大きくなっている。
図2、
図3からわかるように、微結晶の平面サイズは、200nm以下となっている。なお、微結晶の平面サイズは、表面SEM写真から計測することができる。
【0035】
図4は、第4の層14の表面SEM写真であり、
図5は断面SEM写真である。第4の層14は、平面サイズが100nm程度で、厚さ数十nm程度の微結晶が堆積した集合体となる。
【0036】
図6は、厚さ3600nmの水酸化ニッケル層のより広範囲のSEM写真、つまり、低倍率での断面SEM写真を示している。このように、3600nmの膜厚とした場合でも、微結晶構造の水酸化ニッケル層を均一に形成することができる。
【0037】
図7は、第4の層14が露出した状態でのX線回折パターン(スペクトル)を示す。
図7では、横軸は回折角度2θ(入射X線方向と回折X線方向とのなす角度)であり、縦軸は回折強度(a.u.)である。本実施形態では、波長1.5418オングストロームのCuKα線を用いた微小角入射X線回折法でX線回折測定を行っている。
【0038】
第4の層14のX線回折パターンには、3つのピークA~Cが現れている。ピークAはNi(OH)2の(001)面に対応するピークである。ピークBは、Ni(OH)2の(100)面に対応するピークである。ピークCは第4の層14の下地にある第3の層13に含まれるシリコン(Si)によるピークである。第4の層14に対して微小角入射X線回折法によるX線回折測定を行うことにより得られたX線回折パターンにおいて、Ni(OH)2の(001)面の回折角度のピークが存在している。さらに、X線回折パターンにおいて、Ni(OH)2の(100)面の回折角度のピークが存在している。(001)面のピークが(100)面のピークよりも大きくなっている。(001)面のピークの半値幅が(100)面のピークの半値幅よりも大きくなっている。
【0039】
図8を用いて、Ni(OH)
2の結晶構造について説明する。Ni(OH)
2は
図8に示すように六角形状の結晶構造を有している。六角形結晶面を(001)面と呼ぶ、四角形結晶面(100)面とする。Ni(OH)
2は六方晶系の結晶構造をとり、c軸の格子定数は、約4.6オングストロームである。(001)面に対応するX線回折ピークの2θ=19.581°である。(100面)に対応するX線回折ピークの2θ=33.40°である。X線回折パターン、及び表面SEM写真から、c軸方向の薄い六角形状の平面的な微結晶であることが推測される。
【0040】
このような結晶構造のNi(OH)2を第4の層14として堆積することで、電池性能を向上することができる。つまり、固体電解質層となる第3の層13の上に、上記の結晶構造の第4の層14を形成することで、電池性能を向上することができる。例えば、正極活物質層の増加により、蓄電容量を増加することができる。また、電気刺激工程を用いずに第4の層14を形成することができるため、電気刺激による不具合を抑制することができる。
【0041】
(製造方法)
次に、本実施の形態にかかる二次電池100の製造方法について、
図9を用いて説明する。
図9は、二次電池100の製造方法を示すフローチャートである。
【0042】
まず、第1電極21上に、第1の層11を形成する(S11)。第1の層11は、上記のように第1のn型酸化物半導体材料を含んでいる。例えば、第1の層11は、Ti又はTiOをターゲットとするスパッタ法によって、TiO2膜を第1の層11として成膜することができる。第1の層11は、厚さ50nm~200nmのTiO2膜とすることができる。また、第1電極21は、例えば、タングステン電極等である。
【0043】
次に、第1の層11の上に、第2の層12を形成する(S12)。第2の層12は、塗布熱分解法を用いて形成することができる。まず、酸化チタン、又は酸化スズ、又は、酸化亜鉛の前駆体と、シリコーンオイルとの混合物に溶媒を混合した塗布液を用意する。ここでは、第2の層12は、第1の絶縁材料として酸化シリコンを、第2のn型酸化物絶縁材料として酸化チタンとする例について説明する。この場合、酸化チタンの前駆体としての脂肪酸チタンを用いることができる。脂肪酸チタンとシリコーンオイルとを溶媒とともに攪拌して、塗布液を用意する。
【0044】
スピン塗布法、スリットコート法などにより、塗布液が第1の層11上に塗布される。具体的には、スピン塗布装置により、回転数500~3000rpmで、塗布液を塗布する。
【0045】
次に、塗布膜に対して、乾燥、焼成、及びUV照射を行うことで、第1の層11上に第2の層12を形成することができる。例えば、塗布後、ホットプレート上で乾燥させる。ホットプレート上での乾燥温度は、30℃~200℃程度であり、乾燥時間は、5分~30分程度である。乾燥後、焼成炉を用いて大気中で焼成する。焼成温度は、例えば、300℃~600℃程度であり、焼成時間は、10分~60分程度である。
【0046】
これにより、脂肪族酸塩が分解してシリコーンの絶縁膜に覆われた二酸化チタンの微粒子層が形成される。この微粒子層は、具体的にはシリコーンが被膜された二酸化チタンの金属塩がシリコーン層中に埋められている構造である。焼成後の塗布膜に対して、低圧水銀ランプにより、UV光を照射する。UV照射時間は10分~60分である。
【0047】
なお、第2のn型酸化物半導体が酸化チタンである場合、前駆体の他の一例として、例えばチタニウムステアレートが使用できる。酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛は、金属酸化物の前駆体である脂肪族酸塩から分解して形成される。酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛などについては、前駆体を用いずに、酸化物半導体の微細な粒子を用いることも可能である。酸化チタン、又は酸化亜鉛のナノ粒子をシリコーンオイルと混合することで、混合液が生成される。さらに、混合液に溶媒を混合することで、塗布液が生成される。
【0048】
第2の層12の上に、第3の層13を形成する(S13)。第3の層13は、上記のようにタンタル酸化物を含んでいる。例えば、第3の層13は、Ta、又はTa2O5をターゲットとするスパッタ法によって形成することができる。あるいは、スパッタ成膜の代わりに、蒸着、又はイオンプレーティングなどの成膜方法を用いることができる。これらの成膜方法により、TaOx膜を第3の層13として成膜することができる。スパッタ成膜では、アルゴン(Ar)ガスのみを用いてもよく、アルゴンガスに酸素(O2)ガスを加えて供給してもよい。第3の層13は、厚さ50nm以上、800nm以下のTaOx膜とすることができる。ここでは、第3の層13として、非晶質のTaOx膜又は複数のタンタル酸化物ナノ粒子が堆積したTaOx膜を形成することが好ましい。
【0049】
第3の層13の上に、第4の層14を形成する(S14)。第4の層14は、例えば、引上げ法、又は移流集積法を用いて形成される。硝酸ニッケルとアンモニアを中和反応させることで、水酸化ニッケルの微結晶を生成する。そして、生成した微結晶を引上げ法、又は移流集積法で、第3の層13の上に堆積積層させる。これにより、水酸化ニッケル膜を形成することができる。したがって、水酸化ニッケルの微結晶層を第4の層14として形成することができる。移流集積法により3500nmの厚膜の水酸化ニッケル層を形成することができる。
【0050】
次に、第4の層14の上に、第2電極22を形成する(S15)。第2電極22の形成方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の気相成膜法を挙げることができる。なお、マスクを用いて、第2電極22を部分的に成膜してもよい。また、第2電極22は電解メッキ法、無電解メッキ法等により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能である。例えば、第2電極22は、厚さ300nmのAl膜となっている。
【0051】
上記の製造方法により、高性能の二次電池100を高い生産性で製造することができる。例えば、正極活物質の増加により、蓄電容量を増加することができる。また、第4の層14の形成工程において、微結晶の形成と、成膜工程を分離することができる。つまり、微結晶を形成した後に、第3の層13の上に六角形状の微結晶を有する水酸化ニッケル膜を堆積することができる。また、微結晶形成プロセス中での特性改善のための金属材料(Co、Znなど)を容易に添加することができる。また、電気刺激工程を省略することができる。
【0052】
実施の形態2.
実施の形態2にかかる二次電池100Aの構成について、
図10を用いて説明する。
図10は、二次電池100Aの構成を示す断面図である。二次電池100Aでは、電解質層として機能する第3の層13が2層構造となっている。具体的には、第3の層13は、TaO
x層13aと、TEOS層13bとを備えている。なお、第3の層13以外の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
TaOx層13aの上には、TEOS層13bが配置されている。つまり、TaOx層13aと第2電極22との間に、TEOS層13bが形成されている。TEOS層13bは、TaOx層13a及び第2電極22に接触している。TaOx層13aは、実施の形態1の第3の層13であるTaOx層と同様であるため、説明を省略する。
【0054】
TEOS層13bは、テトラエトキシシラン(TEOS:Tetra ethyl ortho silicate)を用いて化学的気相蒸着法(CVD法)により形成されたものである。TEOS層13bの膜厚は、例えば、50nm~200nm程度とすることができる。
【0055】
このような構成においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。すなわち、第4の層14として、六角形状の微結晶を含む水酸化ニッケル層を形成しているため、蓄電容量を増加することができる。
【0056】
なお、二次電池は、電極間に、第1の層11~第4の層14以外の層を備えていてもよい。つまり、上記した第1の層11~第4の層14以外の層が追加されていてもよい。また、電解質層となる第3の層13は、実施の形態1,2以外の材料を用いて形成されたものであってもよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。
【符号の説明】
【0058】
100 二次電池
11 第1の層
12 第2の層
13 第3の層
14 第4の層
21 第1電極
22 第2電極