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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】ポリマー発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20220815BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20220815BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20220815BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20220815BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20220815BHJP
【FI】
C08L23/10
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
C08J9/04 CET
C08L25/04
C08K5/098
C08K3/01
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019185097
(22)【出願日】2019-10-08
(62)【分割の表示】P 2017561233の分割
【原出願日】2015-02-16
(65)【公開番号】P2020023706
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2019-10-08
(31)【優先権主張番号】14/622,964
(32)【優先日】2015-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391024559
【氏名又は名称】フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーテス,レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】リー,フェンクイ
(72)【発明者】
【氏名】ティペット,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ブラックモン,ケネス
(72)【発明者】
【氏名】マイホール,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルズ,リランド
(72)【発明者】
【氏名】アシュバウ,ジョン
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-302565(JP,A)
【文献】国際公開第2015/013138(WO,A1)
【文献】特開2012-082384(JP,A)
【文献】特開2006-348095(JP,A)
【文献】特開2012-082420(JP,A)
【文献】特表2014-525482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの総重量に対して少なくとも50wt%のポリプロピレンを有するポリプロピレンベースのポリマー、又はスチレンポリマー;
金属アクリレート;及び
1種以上の酸中和剤を含む、高分子組成物であって、
前記酸中和剤は、酸化亜鉛と炭酸ナトリウムとの組み合わせである、
上記高分子組成物。
【請求項2】
前記金属アクリレートは、前記高分子組成物中に、0.01~6wt%の量で存在する、請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項3】
前記金属アクリレートは、前記高分子組成物中に、5wt%未満の量で存在する、請求項2に記載の高分子組成物。
【請求項4】
前記金属アクリレートは、金属ジアクリレートである、請求項2に記載の高分子組成物。
【請求項5】
前記金属アクリレートは、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジ(メチルアクリレート)、銅ジアクリレート、銅ジ(メチルアクリレート)、アルミニウムトリアクリレート、アルミニウムトリ(メチルアクリレート)、ジルコニウムテトラアクリレート、ジルコニウムテトラ(メチルアクリレート)、ナトリウムアクリレート又はこれらの組み合わせである、請求項2に記載の高分子組成物。
【請求項6】
前記高分子組成物は、3:2重量%比の金属アクリレートに対する各酸中和剤を含む、請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項7】
前記高分子組成物は、3重量%の酸中和剤を含む、請求項6に記載の高分子組成物。
【請求項8】
ポリマーの総重量に対して少なくとも50wt%のポリプロピレンを有するポリプロピレンベースのポリマー、又はスチレンポリマー;
少なくとも1%の金属アクリレート;及び
少なくとも1%の1種以上の酸中和剤を含む、発泡体であって、
ここで、前記ポリマー発泡体中のアクリル酸の量がアクリレートを含み酸中和剤を含まないポリマー発泡体に比べて75%~95%少なく、
前記酸中和剤は、酸化亜鉛と炭酸ナトリウムとの組み合わせである、
上記発泡体。
【請求項9】
前記1種以上の酸中和剤が、1種以上の酸中和剤を含まない高分子組成物に比べて少なくとも95%アクリル酸の量を減少させるのに十分な量で存在する、請求項8に記載の発泡体。
【請求項10】
金属アクリレートと、酸化亜鉛と炭酸ナトリウムとの組み合わせである1種以上の酸中和剤と、ポリマーの総重量に対して少なくとも50wt%のポリプロピレンを有するポリプロピレンベースのポリマー、又はスチレンポリマー樹脂とを含む、高分子組成物を供給すること、及び
該高分子組成物と発泡剤とを混合してポリマー発泡体を形成することを含む、プロセスであって、
ここで、前記ポリマー発泡体中のアクリル酸の量がアクリレートを含み酸中和剤を含まないポリマー発泡体に比べて75%~95%少ない、
上記プロセス。
【請求項11】
前記発泡剤は、ペンタン、イソペンタン、二酸化炭素、窒素、水蒸気、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、2,3-ジメチルプロパン、1-ペンテン、シクロペンテン、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,3-ジメチルブタン、1-ヘキセン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、又はこれらの組み合わせである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記金属アクリレートは、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジ(メチルアクリレート)、銅ジアクリレート、銅ジ(メチルアクリレート)、アルミニウムトリアクリレート、アルミニウムトリ(メチルアクリレート)、ジルコニウムテトラアクリレート、ジルコニウムテトラ(メチルアクリレート)、ナトリウムアクリレート又はこれらの組み合わせである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ポリマー発泡体中のアクリル酸の量が、アクリレートを含み酸中和剤を含まないポリマー発泡体に比べて95%少ない、請求項10に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般に、ポリマー類から作られる発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー類は、種々の発泡適用のため、詳細には、軽量のエネルギー管理又は緩衝作用を要する適用のために使用され得る。例は、自動車構成部品、梱包、荷敷、断熱及び繰り返しの衝撃が起こり得る安全性応用を含む。
【発明の概要】
【0003】
本開示の実施形態は、高分子組成物を含む。高分子組成物は、ポリオレフィン又はスチレンポリマー、金属アクリレート及び酸中和剤を含む。
【0004】
本開示の別の実施形態は、金属アクリレート、酸中和剤及びポリオレフィン又はスチレンポリマー樹脂を含む高分子組成物を供給すること、及びこの高分子組成物と発泡剤とを混合してポリマー発泡体を形成することを含むプロセスを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示は、添付の図面と共に読まれる場合に、以下の詳細な説明から、最もよく理解される。
図1図1は、headspace GC/MSによって測定された、実施例における対照ポリプロピレン及びサンプル1と一致するポリプロピレン発泡体サンプルにおいて見出されたアクリル酸の量を示すグラフである。
図2図2は、headspace GC/MSによって測定された、実施例におけるサンプル1及び2と一致するポリプロピレン発泡体サンプルにおいて見出されたアクリル酸の量を示すグラフである。
図3図3は、headspace GC/MSによって測定された、実施例におけるサンプル1及び3と一致するポリプロピレン発泡体サンプルにおいて見出されたアクリル酸の量を示すグラフである。
図4図4は、headspace GC/MSによって測定された、実施例におけるサンプル1、4及び5と一致するポリプロピレン発泡体サンプルにおいて見出されたアクリル酸の量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
序論及び定義
詳細な説明が、ここで提示される。この説明は、特定の実施形態、変形及び実施例を含むが、本開示はこれらの実施形態、変形及び実施例に限定されず、これらの情報が利用可能な情報及び技術と組み合わされる場合に、当業者が本開示を製造しそして使用することを可能にするために、含められる。
【0007】
本明細書中で使用される種々の用語が、以下に示される。特許請求の範囲において使用される用語が以下で定義されない限りそれは、出願時点の印刷された刊行物及び発行された特許において反映されるように、当業者が与える最も広い定義が与えられるべきである。さらに、別段に特定されない限り、本明細書中で記載される全ての化合物は、置換又は未置換であってもよく、そして化合物の一覧は、その誘導体を含む。
【0008】
さらに、種々の範囲及び/又は数値の限定が、以下に明示的に述べられている場合がある。別段に述べられない限り、終点は、相互交換可能であるように意図されることが、認
められるべきである。さらに、いかなる範囲も、明示的に述べられた範囲又は限定の内に含まれるような大きさの相互に作用する範囲を含む。
【0009】
ポリマー類
本開示において有用なポリマー類は、スチレンポリマー類及びポリオレフィン類を含む。
【0010】
本開示において有用なスチレンモノマー類は、モノビニル芳香族化合物、例えばスチレン並びにアルキル化スチレン類を含み、ここで、アルキル化スチレン類は、核又は側鎖においてアルキル化されている。アルファメチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-メチルスチレン、メタクリル酸及びビニルトルエンが、本開示のポリマーを形成する際に有用であり得るモノマー類である。これらのモノマー類は、Reimersらに対する米国特許第7,179,873号(その全体が参考によって組み込まれる)において開示される。スチレンポリマーは、ホモポリマーであってもよく、又は場合により1種以上のコモノマー類を含んでもよい。本明細書中で使用される場合、用語スチレンは、種々の置換スチレン類(例えば、アルファ-メチルスチレン)、p-メチルスチレンなどの環置換スチレン類、p-t-ブチルスチレンなどの分散型スチレン類及び未置換スチレン類、並びにこれらの組み合わせを含む。
【0011】
モノビニリデン芳香族ポリマーは、一般的な目的のポリスチレンであっても、又は多量のゴムがスチレンマトリックス中に分散されている高耐衝撃ポリスチレンなどのゴム変性高分子組成物であってもよい。ポリブタジエン又は共役1,3-ジエンのポリマーは、ゴム-スチレン溶液の重量の0.1wt%~50wt%以上又は1%~30wt%の量で使用され得る。
【0012】
ポリオレフィン類の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィンエラストマー類及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。ポリオレフィンエラストマー類は、ポリイソプレン、プリブタジエン、クロロプレン、ブチルゴム、スチレンブタジエン、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリアクリルゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フルオロエラストマー類、ペルフルオロエラストマー類、ポリエーテルブロックアミド類、クロロスルホン化ポリエチレン及び酢酸エチレンビニルを含むが、これらに限定されない。本開示において有用なポリオレフィン類の他の非限定の例は、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、プラストマー類、高密度ポリエチレン類、低密度ポリエチレン類、中密度ポリエチレン類、ポリプロピレン及びポリプロピレンコポリマー類を含む。ポリマーはまた、上記のものの官能化型、例えばマレエート化ポリプロピレンを含んでもよい。
【0013】
1つ以上の実施形態において、ポリオレフィンは、プロピレンベースのポリマーである。本明細書中で使用される場合、用語「プロピレンベースの」は、用語「プロピレンポリマー」又は「ポリプロピレン」と相互交換可能に使用され、例えば、ポリマーの総重量に対して少なくとも約50wt%、又は少なくとも約70wt%、又は少なくとも約75wt%、又は少なくとも約80wt%、又は少なくとも約85wt%、又は少なくとも約90wt%、又は少なくとも95wt%のポリプロピレンを有するポリマーをいう。
【0014】
いくつかの実施形態において、ポリプロピレンは、例えば、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー、プロピレン耐衝撃コポリマー、シンジオタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリプロピレン又はアタクチックポリプロピレンであってもよい。他の実施形態において、プロピレンベースのポリマー類は、「ミニ-ランダム(mini-random)」プロプロピレンであってもよい。ミニ-ランダムポリプロピレンは、約1.0wt%未満のコモノマーを有する。特定の実施形態において、ミニ-ラン
ダムポリプロピレンにおけるコモノマーは、エチレンである。プロピレンベースのポリマー類は、例えば、少なくとも約100℃、又は約115℃~約175℃の融点(Tm)(
DSCによって測定した場合)を有し得る。プロピレンベースのポリマー類は、例えば、約15wt%もしくはそれ未満、又は約12wt%もしくはそれ未満、又は約10wt%もしくはそれ未満、又は約6wt%もしくはそれ未満、又は約5wt%もしくはそれ未満、又は約4wt%もしくはそれ未満のキシレン可溶性物質(XS)を含み得る(ASTM
D5492-06によって測定した場合)。特定の実施形態において、プロピレンベースのポリマー類は、GPCによって測定した場合、例えば、約2~約50、約6~約30、又は8以上の分子量分布(Mw/Mn)を有し得る。これらのプロピレンベースのポリマー類は、例えば、約0.01dg/分~約30dg/分、又は約10dg/分~約25dg/分、又は25dg/分未満のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238によって190℃及び2.16kgの負荷にて測定された場合)を有し得る。
【0015】
1つ以上の実施形態において、ポリマー類は、エチレンベースのポリマー類を含む。本明細書中で使用される場合、用語「エチレンベースの」は、用語「エチレンポリマー」又は「ポリエチレン」と相互交換可能に使用され、ポリマーの総重量に対し、例えば、少なくとも約50wt%、又は少なくとも約70wt%、又は少なくとも約75wt%、又は少なくとも約80wt%、又は少なくとも約85wt%、又は少なくとも約90wt%、又は少なくとも95wt%のポリエチレンを有するポリマーを云う。
【0016】
エチレンベースのポリマー類は、例えば、約0.86g/cc~約0.98g/cc、又は約0.88g/cc~約0.965g/cc、又は約0.90g/cc~約0.965g/cc、又は約0.925g/cc~約0.97g/ccの密度(ASTM D-792によって測定された場合)を有し得る。
【0017】
エチレンベースのポリマー類は、例えば、約0.01dg/分~約1000dg/分、又は約0.01dg/分~約25dg/分、又は約0.03dg/分~約15dg/分又は約0.05dg/分~約10dg/分のメルトインデックス(MI2)(ASTM D
-1238によって190℃及び2.16kgの負荷にて測定された場合)を有し得る。
【0018】
1つ以上の実施形態において、ポリオレフィン類は、低密度ポリエチレンを含む。1つ以上の実施形態において、ポリオレフィン類は、直鎖状低密度ポリエチレンを含む。1つ以上の実施形態において、ポリオレフィン類は、中密度ポリエチレンを含む。本明細書中で使用される場合、用語「中密度ポリエチレン」は、ASTM D-792によって測定された場合、例えば、約0.92g/cc~約0.94g/cc又は約0.926g/cc~約0.94g/ccの密度を有するエチレンベースのポリマー類をいう。
【0019】
1つ以上の実施形態において、ポリオレフィン類は、高密度ポリエチレンを含む。本明細書中で使用される場合、用語「高密度ポリエチレン」は、ASTM D-792によって測定した場合、例えば、約0.94g/cc~約0.97g/ccの密度を有するエチレンベースのポリマー類をいう。
【0020】
本開示の特定の非限定の実施形態において、1種以上のポリオレフィン類の混合物が、使用されてもよい。
【0021】
本開示の特定の実施形態において、ポリオレフィン又はスチレンポリマーは、1種以上の有機金属化合物と組み合わせられて、高分子組成物を形成してもよい。有機金属化合物は、例えば、「金属アクリレート」と呼ばれるアクリレート官能基を有する有機金属塩などの官能化された有機金属化合物を含み得る。金属アクリレートの非限定の例は、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジ(メチルアクリレート)、銅ジアクリレート、銅ジ(メチルアクリ
レート)及びこれらの組み合わせなどの金属ジアクリレートである。他の有機金属化合物は、ジ(ビニル酢酸)亜鉛、ジ(エチルフマル酸)亜鉛、ジ(ビニル酢酸)銅、ジ(エチルフマル酸)銅、アルミニウムトリアクリレート、アルミニウムトリ(メチルアクリレート)、トリ(ビニル酢酸)アルミニウム、トリ(エチルフマル酸)アルミニウム、ジルコニウムテトラアクリレート、ジルコニウムテトラ(メチルアクリレート)、テトラ(ビニル酢酸)ジルコニウム、テトラ(エチルフマル酸)ジルコニウム、ナトリウムアクリレート、ナトリウムメタクリレート、銀メタクリレート及びこれらの組み合わせを含む。金属ジアクリレートの例は、製品DYMALINK(登録商標)9200(以前のSR732)又はDYMALINK(登録商標)9201であり、これら両方は、Cray Valley Specialty Chemicalsから市販されている。DYMALINK(登録商標)9200は、約207g/molの分子量を有する白色粉末として入手可能である。DYMALINK(登録商標)9201は、金属ジアクリレートを、ペレット濃縮物で含む。ポリマー及び有機金属化合物の高分子組成物は、0.001~8wt%の有機金属化合物、0.01~6wt%の有機金属化合物、5wt%以下の有機金属化合物、又は約2wt%の有機金属化合物を含み得る。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態において、添加剤が、高分子組成物と組み合わせられてもよい。例えば、添加剤は、ペルオキシジカーボネートペルオキシドであってもよい。これらの実施形態において、ペルオキシジカーボネートペルオキシドは、ROC(O)O-O(O)COR1の一般式を有し得、ここで、R及びR1は、アルキル及び/又はアリール基を表す。ペルオキシジカーボネートペルオキシドの非限定の例は、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、イソプロピルsec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。高分子組成物は、0.001~3wt%のペルオキシジカーボネートペルオキシド、0.01~2.5wt%のペルオキシジカーボネートペルオキシド、又は2wt%以下のペルオキシジカーボネートペルオキシドを含み得る。
【0023】
金属アクリレートが十分に分散されるのであれば、有機金属化合物とポリマーの混合は、一軸又は二軸押出機を含む中~高強度混合装置、BANBURY(登録商標)ミキサー又はロールミルを用いた融解混合(melt mixing)によって実施されてもよい。混合のために用いられる温度は、ポリマーの融点の30℃上であってもよい。詳細な実施形態において、高分子組成物は、200℃を超えて、又は200~260℃の間で加熱されてもよい。本開示の特定の実施形態、例えばペルオキシジカーボネートペルオキシドが使用される場合において、有機金属化合物は、インサイチュで形成されてもよく、すなわち、融解混合プロセスの間に形成されてもよい。例えば、1つの実施形態において、有機金属化合物は、酸化亜鉛をポリマーと混合している間に、アクリル酸と混合することによって形成されてもよい。
【0024】
他の実施形態において、添加剤は、極性ポリマーであってもよく、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール又はこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。これらの実施形態において、極性ポリマーは、高分子組成物の0.001~3wt%、高分子組成物の0.01~2.5wt%、又は高分子組成物の2wt%以下の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、ペルオキシジカーボネートペルオキシド及び極性ポリマーの両方が、高分子組成物中に存在してもよい。
【0025】
なお他の実施形態において、添加剤は、高分子組成物のものと異なるポリオレフィンなどの非極性ポリマーであってもよい。例は、ポリプロピレン及びポリエチレンを含むが、これらに限定されない。非極性ポリマーは、高分子組成物のポリマーと物理的に混合され
てもよく又はこれによって化学的に生成されてもよい。すなわち、非極性ポリマーは、高分子組成物のポリマーと併せて、1つ以上の反応容器内における高分子組成物のポリマーの形成の間に製造されてもよく、又は非極性ポリマーは、一軸又は二軸押出機、BANBURY(登録商標)ミキサー又はロールミルなどによって、物理的に混合されてもよい。
【0026】
本開示の特定の実施形態において、ポリオレフィン又はスチレンポリマーは、有機金属化合物の非存在下で、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール又はこれらの混合物などの極性ポリマーと混合されて、高分子組成物を形成してもよい。これらの実施形態において、極性ポリマーは、高分子組成物の0.001~3wt%、高分子組成物の0.01~2.5wt%、又は高分子組成物の2wt%以下の量で存在し得る。
【0027】
本開示の特定の実施形態において、ポリオレフィン又はスチレンポリマーは、酸中和剤と混合されてもよい。非限定の酸中和剤は、例えば、酸化金属類、炭酸金属類、水酸化物類、ステアリン酸金属類及び天然又は合成のヒドロタルサイト中和剤類を含み得る。酸化金属類は、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化チタン及びこれらの組み合わせを含む。炭酸金属類は、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及びこれらの組み合わせを含む。水酸化物類は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びこれらの組み合わせを含む。ステアリン酸金属類の例は、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム及びこれらの組み合わせを含む。天然又は合成のヒドロタルサイト中和剤の例は、ヒドロタルサイトマグネシウム類、例えば、DHT-4A(登録商標)、DHT-4V(登録商標)、DHT-4C(登録商標)(全てKyowa Chemical Co.から入手可能);HYSAFE(登録商標)539及びHYSAFE(登録商標)530(J.M.Huber Corporationから入手可能);L-55RTM酸中和剤類(Reheis Inc.から入手可能);及びヒドロタルサイト亜鉛、例えば、ZH4-ATM(Kyowa Chemical Co.から入手可能)を含む。特定の実施形態において、異なる種の酸中和剤、例えば酸化金属と炭酸金属とが、組み合わせられてもよい。
【0028】
特定の実施形態において、1種以上の酸中和剤が、金属アクリレート及びポリオレフィン又はスチレンポリマーと合わせられて、500ppm~10%の間の酸中和剤、又は0.1%~7.5%の酸中和剤、又は0.25%~4.0%の酸中和剤(全て、高分子組成物の総重量に対する)を含む高分子組成物を形成してもよい。他の実施形態において、「マスターバッチ」または濃縮物が、形成されてもよい。例えば、ポリオレフィン又はスチレンポリマーは、酸中和剤と混合されて、混合物の重量に対して10%~90%又は30%~70%、又は40%~60%、又は約50%の酸中和剤を含む混合物を形成してもよい。このマスターバッチは、その後、アクリル金属塩及びポリオレフィン又はスチレンポリマーの混合物と合わせられて、500ppm~10%の間の酸中和剤、又は0.1%~7.5%の酸中和剤、又は0.25%~4.0%もしくは少なくとも3%の酸中和剤(全て高分子組成物の総重量に対する)を含む高分子組成物に到達してもよい。
【0029】
酸中和剤を高分子組成物に含有させることは、ポリマー発泡体における例えばアクリル酸など酸の存在に起因する臭気を制御し得ることが見出されている。特定の実施形態において、酸中和剤を含まない金属アクリレートを有するポリマー発泡体と比較して、酸中和剤は、約75%以上、約95%以上、又はおよそ100%のアクリル酸の量を減少させ得る。他の実施形態において、酸中和剤を含まないアクリル酸塩を有するポリマー発泡体と比較して、酸中和剤は、75%と95%の間のアクリル酸の量を減少させ得る。
【0030】
特定の実施形態において、高分子組成物に添加される構成成分は、ポリオレフィン又はスチレンポリマー、アクリル酸金属及び酸中和剤のみである。他の実施形態において、高分子組成物は、抗酸化剤、光安定剤、酸掃去剤、潤滑剤、帯電防止剤、核化/清澄剤、着
色剤又はこれらの組み合わせなどの添加剤を含み得る。1つの実施形態において、添加剤は、高分子組成物の重量に対して0.01~5wt%、場合により0.1~3wt%、場合により0.5~2wt%の量で存在する。いくつかの実施形態において、高分子組成物は、ペレット化されてもよい。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態において、高分子組成物のメルトフローレートは、ASTM D-1238によって190℃及び2.16kgの負荷にて測定された場合、0.1g/10分~50g/10分、又は1g/10分~10g/10分の間、又は1.5g/10分と6g/10分との間であってもよい。高分子組成物のダイスウェルは、ASTM
D-3835によって測定された場合、1~15、又は3~10、又は4~8であってもよい。
【0032】
製品適用
ポリマー組成物は、ポリマー発泡シート又はフィルムにおける発泡高分子層(本明細書中以後、集合的に「ポリマー発泡体」と呼ぶ)の製造において、有用である。ポリマー発泡体は、高分子組成物及び発泡剤から調製されてもよい。特定の実施形態において、発泡の前に、ペレット化又は未ペレット化(unpelletized)高分子組成物は、抗酸化剤、光安定剤、酸掃去剤、潤滑材、帯電防止剤、核化/清澄剤、着色剤又はこれらの組み合わせなどの添加剤と合わせられてもよい。高分子組成物は、本明細書中で前述された種類のものであってもよい。発泡剤は、高分子組成物の他の構成成分と適合性のある任意の発泡剤、例えば、物理発泡剤、化学発泡剤などであってもよい。物理発泡剤は、代表的には、高分子組成物を迅速に排出し、空隙を高分子組成物中に残すことが可能である気体である。化学発泡剤は、高温で吸熱的に分解する化学化合物である。化学発泡剤の分解は、高分子組成物中に混入することによって高分子組成物内の空隙の形成を導く気体を発生する。本開示における使用のために好適な発泡剤の非限定の例は、限定することなく、ペンタン、イソペンタン二酸化炭素、窒素、水蒸気、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、2,3-ジメチルプロパン、1-ペンテン、シクロペンテン、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,3-ジメチルブタン、1-ヘキセン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、及びこれらの組み合わせを含む。
【0033】
1つの実施形態において、発泡高分子組成物は、高分子組成物を発泡剤と接触させ、そして例えばコンパウンディング又は押出しによって構成成分を完全に混合することにより、調製される。1つの実施形態において、高分子組成物は、押出し機内での加熱によって可塑化されるか又は融解し、そして発泡剤と接触させられて完全に混合される。あるいは、高分子組成物は、混合物の押出し機への(例えば、バルク混合を介した)導入の前に、高分子組成物の押出し機への導入の間に、又はこれらの組み合わせにて、発泡剤と接触させられてもよい。
【0034】
添加剤の例及び発泡体製造方法は、2012年6月18日にBerry Plastics Corporationによって出願されたPCT/US2012/043018(これは、本明細書中で参考によって完全に組み込まれる)において見出され得る。
【0035】
本開示の特定の実施形態において、ポリマー発泡体は、80%未満、50%未満又は30%未満の連続気泡含量を示す。特定の実施形態において、ポリマー発泡体における連続ではない気泡は、独立気泡である。いくつかの実施形態において、ポリマー発泡体の密度は、0.50g/cc未満、0.25g/cc未満又は0.20g/cc未満である。特定の実施形態において、ポリマー発泡体は、0.15~0.20g/ccの密度を有し、そして30%~40%の連続気泡含量を有する。
【実施例
【0036】
実施例において、対照PP等級(Total Petrochemicals and
Refining USA,Inc.から市販されるTotal LUMICENE(登録商標)M3766)を、加熱後に発生するアクリル酸の含量において、5種の高分子組成物(表1で記載するサンプル1~5)と比較した。一連の発泡体サンプルを、形成した。サンプル1は、2wt%の二アクリル酸亜鉛(Total Cray Valley製のDYMALINK(登録商標)9200)を含むポリプロピレン組成物から押し出された発泡体であった。サンプル2~5については、酸化亜鉛マスターバッチ(50%酸化亜鉛及び50%ポリプロピレン)及び炭酸ナトリウムマスターバッチ(50%炭酸ナトリウム及び50%ポリプロピレン)を、上の記載にしたがって形成し、そして、サンプル1において使用した高分子組成物とともに使用して、表1に記載するような発泡体サンプルを形成した。
【0037】
【表1】
【0038】
発泡体の各々を、アクリル酸の存在について、headspaceガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)法を用いて試験した。GC-MS条件を、表2に提示する。
【0039】
【表2】
【0040】
GC-MS法の結果を、図1~4に示す。アクリル酸の減少を、サンプル3、4及び5とのサンプル2の比較において計算した。この計算の結果を、表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
文脈に基づき、本明細書中の全ての「開示」という言及は、いくつかの場合には特定の具体的な実施形態のみを言う場合がある。他の場合には、それは、1つ以上の、しかし必ずしも全てでなくてもよい、請求項において挙げられた対象を言う場合がある。上記は、本特許における情報が利用可能な情報及び技術と組み合わされた場合に当業者が本開示を製造しそして使用することを可能にするために含められた、本開示の実施形態、変形及び実施例に向けられるが、本開示は、これらの実施形態、変形及び実施例のみに限定されない。本開示の他のそしてさらなる実施形態、変形及び実施例が、その基本的な範囲を逸脱することなく考案され得、そしてその範囲は、以下の特許請求の範囲によって、決定される。
図1
図2
図3
図4