(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】弾性的に位置変更可能な当接部が設けられた中央凹部を有する頭部支持表面付き工具軸
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
B23B51/00 T
(21)【出願番号】P 2019508216
(86)(22)【出願日】2017-08-08
(86)【国際出願番号】 IL2017050875
(87)【国際公開番号】W WO2018047155
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-06-19
(32)【優先日】2016-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘクト ジル
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-530117(JP,A)
【文献】特表2014-507294(JP,A)
【文献】特表2010-517800(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0116920(US,A1)
【文献】特開2016-221664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00
B23B 29/04 - 29/22
B23C 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向(D
F、D
R)を規定する長手方向の回転軸(A1)を有する工具軸(20)であって、
前端(24)に頭部受け入れポケット(22)と、そこから前記長手方向の回転軸(A1)に沿って後方向(D
R)に延びる複数の切り屑フルート(26)と、を含み、
前記頭部受け入れポケット(22)は、前記長手方向の回転軸(A1)を横切る支持表面(30)及び中央凹部(32)を有し、
前記中央凹部(32)は、前記支持表面(30)に形成され、前記長手方向の回転軸(A1)に沿ってそこから後方向(D
R)へ延び、
前記中央凹部(32)は、複数の中間部(40)と周方向に交互に位置するとともに間を空けて配置される複数の弾性的に位置変更可能な当接部(38)を有し、
当接部(38)のそれぞれは、径方向内側に向く当接表面(42)を有し、
中間部(40)のそれぞれは、二つの周方向に隣り合う当接表面(42)に交差する中間表面(44)を有し、
前記
長手方向の回転軸(A1)に垂直で、前記中央凹部(32)を通る第1平面(P1)における断面において、
前記当接表面(42)のそれぞれは、凹状に湾曲しており、
前記長手方向の回転軸(A1)と同軸の仮想上の第1円(C1)は、前記中央凹部(32)に内接するとともに前記複数の当接表面(42)に接触する、工具軸(20)。
【請求項2】
前
記第1平面(P1)における
前記断面において、
当接表面(42)のそれぞれは、第1の周囲角度範囲(E1)を有し、
中間表面(44)のそれぞれは、第2の周囲角度範囲(E2)を有し、
前記複数の当接表面(42)及び前記複数の中間表面(44)の結合された周囲角度範囲は、360度に等しい、請求項1に記載の工具軸(20)。
【請求項3】
前記
複数の当接表面(42)は、前記仮想上の第1円(C1)と一致する複数の間を空けた当接弧(50)を形成する、請求項1又は2に記載の工具軸(20)。
【請求項4】
前記複数の当接表面(42)にかけられる径方向外側への力(F
O)がないときに、前記仮想上の第1円(C1)は、第1直径(D1)を有し、
前記複数の当接表面(42)にかけられる径方向外側への力(F
O)があるときに、前記仮想上の第1円(C1)は、第1の負荷直径(D
L1)を有し、
前記第1直径(D1)は、前記第1の負荷直径(D
L1)よりも小さい、請求項1
から3
の何れか一項に記載の工具軸(20)。
【請求項5】
前記第1平面(P1)における前記断面において、
前記長手方向の回転軸(A1)と同軸の仮想上の第2円(C2)は、複数の第1フルート点(N
F1)で前記複数の切り屑フルート(26)と接し、
前記長手方向の回転軸(A1)及び少なくとの前記第1フルート点(N
F1)の一つを含む第3平面(P3)は、前記当接表面(42)の少なくとも一つと交差する、請求項
1から4
の何れか一項に記載の工具軸(20)。
【請求項6】
径方向の軸(A2)が、前記第1平面(P1)及び前記第3平面(P3)と交差するところに形成され、
第1フルート点(N
F1)のそれぞれは、前記径方向の軸(A2)に沿う隣接する当接表面(42)から最小第1距離(d1)に配置される、請求項5に記載の工具軸(20)。
【請求項7】
前記
仮想上の第1円(C1)は、第1直径(D1)を有し、
前記仮想上の第2円(C2)は、第2直径(D2)を有し、
前記第1直径(D1)は、前記第2直径(D2)の半分よりも大きく、前記第2直径(D2)よりも小さい、請求項
5に記載の工具軸(20)。
【請求項8】
前記
複数の当接部(38)は、前記複数の切り屑フルート(26)と等しい数である、請求項
1~7の何れか一項に記載の工具軸(20)。
【請求項9】
前記複数の中間表面(44)は、前記支持表面(30)の後方から中央凹部床(45)までの第1凹部深さ(H1)へ延び、
前記複数の当接表面(42)は、記支持表面(3)の後方の第2凹部深さ(H2)へ延び、前記中央凹部床(45)から長手方向に間を空けて配置されており、
前記第1凹部深さ(H1)の前記第2凹部深さ(H2)に対する割合は、1.3~2.5の間(1.3<H1/H2<2.5)である、請求項1~8の何れか一項に記載の工具軸(20)。
【請求項10】
前記中央凹部(32)は、前記複数の切り屑フルート(26)のいずれにも交差しない、請求項1~9の何れか一項に記載の工具軸(20)。
【請求項11】
前記複数の当接表面(42)は、前記後方向(D
R)で分岐する、請求項1~10の何れか一項に記載の工具軸(20)。
【請求項12】
前記複数の中間表面(44)は、前記支持表面(30)に交差する、請求項1~11の何れか一項に記載の工具軸(20)。
【請求項13】
前記複数の当接部(38)は、径方向外側方向(D
O)に弾性的に位置変更可能である、請求項1~12の何れか一項に記載の工具軸(20)。
【請求項14】
前記支持表面(30)に接する工具軸側面で、前記中央凹部(32)の全体は隠れており、前記当接表面(42)及び前記中間表面(44)は、視認されない、請求項1~13の何れか一項に記載の工具軸(20)。
【請求項15】
複数の動作部材(34)が前記支持表面(30)から前方へ突出し、
動作部材(34)のそれぞれは、前記長手方向の回転軸(A1)の周囲の回転方向(R)に面する動作表面(36)を含む、請求項1~14の何れか一項に記載の工具軸(20)。
【請求項16】
請求項1~15の何れか一項に記載の工具軸(20)と、前記頭部受け入れポケット(22)に着脱可能に取り付けられる切削頭部(54)と、を含む回転切削工具(52)であって、
前記切削頭部(54)は、切削部(56)及び取付部(58)を含み、
前記取付部(58)は、底部表面(60)及び頭部軸(A3)に沿って前記底部表面(60)から突出する係合部材(62)を有し、
組み立て位置において、
前記底部表面(60)は、前記支持表面(30)に向き合い、
前記頭部軸(A3)は、前記長手方向の回転軸(A1)と一致し、前記係合部材(62)は、前記複数の当接表面(42)に向かって前記中央凹部(32)に弾性的に保持される、回転切削工具(52)。
【請求項17】
前
記第1平面(P1)における
前記断面において
、
組み立てられていない位置において、前記係合部材(62)は、前記中央凹部(32)に弾性的に保持されておらず、前記仮想上の第1円(C1)は、第1直径(D1)を有し、
組み立てられた位置において、前記仮想上の第1円(C1)は、第1組み立て直径(D
A1)を有し、
前記第1直径(D1)は、第1組み立て直径(D
A1)よりも小さい、請求項16に記載の回転切削工具(52)。
【請求項18】
前記仮想上の第1円(C1)は、前記複数の当接表面(42)に接する、請求項17に記載の回転切削工具(52)。
【請求項19】
前記係合部材(62)は、複数の接合表面(66)と周方向に沿って交互に並び径方向外側に向く複数の係合表面(64)を有し、
前記複数の係合表面(64)は、複数の当接表面(42)と接触する、請求項16~18の何れか一項に記載の回転切削工具(52)。
【請求項20】
前
記第1平面(P1)における
前記断面において、
前記長手方向の回転軸(A1)と同軸の仮想上の第3円(C3)は、前記係合部材(62)に外接する、請求項19に記載の回転切削工具(52)。
【請求項21】
前記仮想上の第3円(C3)は、前記複数の係合表面(64)に接触する、請求項20に記載の回転切削工具(52)。
【請求項22】
前記複数の係合表面(64)は、前記後方向(D
R)で分岐する、請求項19~21の何れか一項に記載の回転切削工具(52)。
【請求項23】
前記底部表面(60)は、支持表面(30)か又は前記支持表面(30)からずれる複数の肩表面(63)に接触する、請求項16~22の何れか一項に記載の回転切削工具(52)。
【請求項24】
前記切削頭部(54)は、前記頭部受け入れポケット(22)に、追加的な締結部材を必要とすることなく着脱可能に取り付けられる、請求項16~23の何れか一項に記載の回転切削工具(52)。
【請求項25】
請求項16~24の何れか一項に記載の回転切削工具(52)の組み立て方法であって、
前記係合部材(62)は、複数の接合表面(66)と周方向に沿って交互に並び径方向外側に向く複数の係合表面(64)を有し、
f)前記底部表面(60)を前記支持表面(30)に向ける工程と、
g)頭部軸(A3)を前記長手方向の回転軸(A1)と合わせて並べる工程と、
h)複数の係合表面(64)を回転させながら複数の中間表面(44)と合わせて並べる工程と、
i)前記係合部材(62)を前記中央凹部(32)に挿入する工程と、
j)前記複数の係合表面(64)が前記複数の当接表面(42)に向かって弾性的に保持されるまで、前記切削頭部(54)を前記頭部軸(A3)の周りで回転させる工程と、
を含む、切削工具(52)の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して金属の切削加工、特にドリル操作のために用いられる、回転切削工具及び弾性的に位置変更可能な当接部を有する頭部受け入れポケットを有する工具軸に関する。
【背景技術】
【0002】
ドリル操作に用いられる切削工具の分野では、「周方向に開口した」中央凹部及び弾性的に位置変更可能な当接部を有する工具軸の多くの例がある。
【0003】
米国特許明細書第7,360,974号は、工具軸及び着脱可能な切削インサートを有する回転切削工具を開示する。工具軸は、二本の長手方向に延びる切り屑フルート及び切り屑フルートに向かって開口する軸の先端の位置開口を含む。位置開口は、円形の断面を有する。切削インサートは、やや楕円形の断面を有する締結ピンを含み、締結ピンは、位置開口に挿入されて、締結位置で回転する。
【0004】
米国特許明細書第7,467,915号は、工具軸及び着脱可能な切削頭部を有する回転切削工具を開示する。切削頭部は、工具軸の頭部受け入れポケットに取り付けられ、係合する。切削頭部は、鳩尾部材付きの軸接続部を有する。頭部受け入れポケットは、中央床部から上方へ突出する二つの概して対称な城壁風の壁領域を含む。城壁風の壁領域は、内側で向かい合う円錐台状の表面を含み、鳩尾部材が頭部受け入れポケットとの連結位置へと回転したとき、鳩尾部材は、内側で向かい合う円錐台状の表面に係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許明細書第7,360,974号
【文献】米国特許明細書第7,467,915号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、「周方向に閉じた」中央凹部を有する頭部受け入れポケット及び弾性的に位置を変更可能な当接部を有する改善された工具軸を提供することを目的とする。
【0007】
高い再現可能性をもって、工具軸の頭部受け入れポケットに切削頭部が着脱可能に取り付けられた、改善された回転切削工具を提供することもまた本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に沿って、前後方向を規定する長手方向の回転軸を有する工具軸が提供される。工具軸は、前端に頭部受け入れポケットと、そこから前記長手方向の回転軸に沿って後方向に延びる複数の切り屑フルートと、を含み、前記頭部受け入れポケットは、前記長手方向の回転軸を横切る支持表面及び中央凹部を有し、前記中央凹部は、前記支持表面に形成され、前記長手方向の回転軸に沿ってそこから後方へ延び、前記中央凹部は、複数の中間部と周方向に交互位置するとともに間を空けて配置される複数の弾性的に位置変更可能な当接部を有し、当接部のそれぞれは、径方向内側に向く当接表面を有し、中間部のそれぞれは、二つの周方向に隣り合う当接表面に交差する中間表面を有する。
【0009】
また、本発明に沿って、上述した工具軸と、その頭部受け入れポケットに着脱可能に取り付けられる切削頭部と、を含む回転切削工具が提供される。前記切削頭部は、切削部及び取付部を含み、前記取付部は、底部表面及び頭部軸に沿ってそこから突出する係合部材を有し、組み立て位置において、前記底部表面は、前記支持表面に向き合い、前記頭部軸は、前記長手方向の回転軸と一致し、前記係合部材は、前記複数の当接表面に向かって前記中央凹部に弾性的に保持される。
【0010】
さらに、本発明に沿って、上述した種類の回転切削工具の組み立て方法が提供される。前記係合部材は、複数の接合表面と周方向に沿って交互に並び径方向外側に向く複数の係合表面を有し、前記方法は、a)前記底部表面を前記支持表面に向ける工程と、b)頭部軸を長手方向の回転軸と合わせて並べる工程と、c)複数の係合表面を回転させながら複数の中間表面と合わせて並べる工程と、d)前記係合部材を前記中央凹部に挿入する工程と、e)前記複数の係合表面が前記複数の当接表面に向かって弾性的に保持されるまで、前記切削頭部を前記頭部軸の周りで回転させる工程と、を含む。
【0011】
よりよい理解のために、添付の図面を参照し、ここで発明は例示のみによって述べられる。図面では、一点鎖線は、部材の部分図のための切断された境界を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態に沿った工具軸の斜視図である。
【
図4】
図3に示す工具軸のIV-IV線における断面図である。
【
図5】径方向外側へ力がかかった
図4の断面図である。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態に沿った回転工具軸の展開斜視図である。
【
図8】
図7に示す回転工具軸のVIII-VIII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、前方向D
Fから後方向D
Rを規定する長手方向の回転軸A1を有する工具軸20に関する。
図1~3に示すように、工具軸20は、前端22の頭部受け入れポケット22と、そこから長手方向の回転軸A1に沿って後方向D
Rに延びる複数の切り屑フルート26と、を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、複数の切り屑フルート26は、工具軸20の円柱状の軸の周縁表面28に形成されてよい。
【0015】
また、本発明のいくつかの実施形態では、複数の切り屑フルート26は、長手方向の回転軸A1に沿って、らせん状に延びてよい。
【0016】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、工具軸20は、三つの切り屑フルート26を有してよい。
【0017】
さらにまた本発明のいくつかの実施形態では、工具軸20は、好ましくは工具鋼から製造されてよい。
【0018】
本発明によれば、
図1~3に示すように、頭部受け入れポケット22は、長手方向の回転軸A1を横切る支持表面30を有する。
【0019】
中央凹部32は、支持表面30に形成され、そこから長手方向の回転軸A1に沿って後方向DRへ延びる。
【0020】
図2の端面図に示すように、支持表面30は、工具軸20の軸周縁表面28から径方向に間を空けてよく、ポケット22の中央領域に配置され、したがって「中央」支持表面30だと考えられる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、中央凹部32は複数の切り屑フルート26のいずれとも交差しない。
【0022】
また、本発明のいくつかの実施形態では、頭部受け入れポケット22は、複数の切り屑フルート26のいずれかと中央凹部32とを連絡する通路を有さなくてよい。
【0023】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、支持表面30は、平坦であってよく、長手方向の回転軸A1に対して垂直であってよい。
【0024】
またさらに本発明のいくつかの実施形態では、複数の動作部材34が支持表面30から前方へ突出してよい。動作部材34のそれぞれは、長手方向の回転軸A1の周囲の回転方向Rに面する動作表面36を含んでよい。
【0025】
図4に示すように、長手方向の回転軸A1に対して垂直であるとともに中央凹部32を通る第1平面P1における断面図において、中央凹部32は円形でなくてよく、このため、円形でない断面を有してよい。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、中央凹部32は、長手方向の回転軸A1の周囲で回転対称を示してもよい。
【0027】
また、本発明のいくつかの実施形態では、
図2に示すように、中央凹部32は、長手方向の回転軸A1を含む第2平面P2の周囲で鏡面対称を示してもよい。
【0028】
本発明によれば、
図1及び
図2に示すように、中央凹部32は、複数の中間部40と周方向に交互に位置し、複数の中間部40と間を空けて配置される、複数の位置変更可能な当接部38を有する。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の当接部38は、径方向外側方向DOに弾性的に位置変更可能であってよい。
【0030】
また、本発明のいくつかの実施形態では、複数の当接部38は、複数の中間部40と等しい数である。
【0031】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、複数の当接部38は、複数の切り屑フルート26と等しい数である。
【0032】
本発明によれば、
図2に示すように、当接部38のそれぞれは、径方向に内側で向き合う当接表面42を有する。中間部40のそれぞれは、周方向に隣り合う二つの当接表面42に交差する中間表面44を有する。中間表面44のそれぞれは、二つの隣接する当接表面42の径方向外側へと延びる。
【0033】
複数の中間表面44と周方向に交代する複数の当接表面42により、頭部受け入れポケット22は、「周方向に閉じた」中央凹部32を有し、これにより複数の当接部38の弾性を改善して工具軸20の寿命をのばす。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の中間表面44は、複数の当接表面42の長手方向の領域の全体に沿って延びてよい。
【0035】
図3の隠された詳細に示すように、複数の中間表面44は、支持表面30の後方から中央凹部床45までの第1凹部深さH1まで延びてよい。また、複数の当接表面42は、支持表面30の後方の第2凹部深さH2まで延び、中央凹部床45から長手方向に間を空けている。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、第1凹部深さH1の第2凹部深さH2に対する比率は、1.3~2.5の間の範囲であってよい(1.3<H1/H2<2.5)。このことは、複数の当接部38を、当接表面22の領域において、弾性の最適なレベルを提供する。
【0037】
また、本発明のいくつかの実施形態では、複数の中間表面44は、支持表面30に交差してよい。
【0038】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、当接部38のそれぞれは、当接表面42と支持表面30の間の当接面取り部46を含んでよい。
【0039】
またさらに本発明のいくつかの実施形態では、複数の当接表面42は、後方向DRに分岐してよい。
【0040】
またさらに本発明のいくつかの実施形態では、二つの移行縁48が、中間表面44とその二つの周方向に隣接する当接表面42との交差部に形成されてもよい。
【0041】
図3に示すように、支持表面30に対する接線の工具軸の側面図において、中央凹部32の全体(その輪郭が破線で示される)は、図から隠されており、その図では、当接表面42及び中間表面44の部分が見えない。このように、中央凹部32は、支持表面30に形成される「沈んだ」中央凹部32であると考えられてよい。
【0042】
図4に示すように、第1平面P1における断面図では、当接表面42のそれぞれは、第1の周囲角度範囲E1を有し、中間表面44のそれぞれは、第2の周囲角度範囲E2を有する。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の当接表面42及び複数の中間表面33の結合された周囲の角度範囲は、360度と等しい。
【0044】
また、本発明のいくつかの実施形態では、第2の周囲角度範囲E2は、第1の周囲角度範囲D1よりも大きい。
【0045】
図4に示すように、第1平面P1における断面図において、長手方向の回転軸A1と同軸の仮想上の第1円C1は、中央凹部32に内接している。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態では、仮想上の第1円C1は、複数の当接表面42に接触してよい。
【0047】
また、本発明のいくつかの実施形態では、複数の中間表面44は、仮想上の第1円の外側に配置されていてよい。
【0048】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、複数の当接表面42は、仮想上の第1円C1と一致する複数の間を空けた当接弧50を形成してよい。
【0049】
図4に示すように、第1平面P1における断面図において、長手方向の回転軸A1と同軸の仮想上の第2円C2は、複数の第1フルート点N
F1で複数の切り屑フルート26に接する。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態では、長手方向の回転軸A1及び少なくとも第1フルート点NF1の一つを含む第3平面P3が、当接表面42の少なくとも一つと交差する。
【0051】
また本発明のいくつかの実施形態では、仮想上の第1円C1は、第1直径D1を有し、仮想上の第2円C2は、第2直径D2を有し、また、第1直径D1は、第2直径D2の半分よりも大きい。
【0052】
第1円C1の第1直径D1は、複数の当接表面42にかかる径方向外側への力FOがかからずに測定されるということが理解される。
【0053】
図5に示すように、複数の当接表面42にかかる径方向外側への力F
Oの存在により、仮想上の第1円C1は、第1の負荷直径D
L1を有する。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、第1直径D1は、第1の負荷直径DL1よりも小さい。
【0055】
図4に示すように、径方向の軸A2は、第1平面P1及び第3平面P3の交差点に形成される。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、第1のフルート点NF1のそれぞれは、径方向の軸A2に沿う隣接する当接表面42から最小第1距離d1に配置される。
【0057】
図4に示すように、第1平面P1における断面図において、切り屑フルート26のそれぞれは、第1フルート点N
F1から間を空けた第2フルート点N
F2を有する。第2フルート点N
F2は、隣接する中間表面44から最小第2距離d2に配置される。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態では、最小第2距離d2は、最小第1距離d1と同じかそれよりも小さくてよい。
【0059】
図6及び7に示すように、本発明は、さらに工具軸20及び工具軸20の頭部受け入れポケット22に着脱可能に取り付けられる切削頭部54を含む回転切削工具52に関する。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態では、切削頭部54は、好ましくは、例えば炭化タングステンのようなプレス又は焼結した形状の接着された炭化物によって製造され、塗装されていても、されていなくてもよい。
【0061】
また、いくつかの実施形態では、切削頭部54は、頭部受け入れポケット22に、例えば締結ねじのような追加的な締結部材を必要とすることなく取り付けられてよい。
【0062】
本発明によれば、切削頭部54は、切削部56と、取付部58と、を有し、取付部58は、底部表面60と、頭部軸A3に沿って底部表面60から突出する係合部材62と、を有する。
【0063】
組み付けられた位置で:底部表面60は、支持表面30と向き合う。頭部軸A3は、長手方向の回転軸A1と一致する。係合部材62は、複数の当接表面42に向かって弾性的に中央凹部32に保持される。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態では、係合部材62は、切削部56から遠位に配置されてよい。
【0065】
図8に示すように、第1平面P1における断面図で、係合部材62は、非円形であってよい。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態では、底部表面60は、支持表面30と接触するか、又はそこからずれた複数の肩表面63に接触してもよい。
【0067】
仮想上の第1円C1の第1直径D1は、組み立てられていない位置で測定され、組み立てられていない位置とは、係合部材62が中央凹部32に弾性的に保持されていないことが理解されるべきである。
【0068】
組み立てられた位置では、
図8に示すように、仮想上の第1円C1は、第1の組み立て直径D
A1を有する。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、第1直径D1は、第1組み立て直径DA1よりも小さくてよい。
【0070】
図6に示すように、係合部材62は、複数の径方向外側に向いて複数の結合表面66と周方向に交代する係合表面64を有してよい。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態では、組み立て位置において、複数の係合表面64は、中央凹部32に属する複数の当接表面42と接触してよい。
【0072】
また、本発明のいくつかの実施形態では、複数の係合表面64は、後方向DRで分岐してよく、係合部材62は、鳩尾の形状をしていてよい。
【0073】
図8に示すように、第1平面P1における断面図において、係合表面64のそれぞれは、第3の周囲角度範囲E3を有する。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態では、第2の周囲角度範囲E2は、第3の周囲角度範囲E3よりも大きくてよい。
【0075】
回転切削工具52を組み立てている間、第2の周囲角度範囲E2が第3の周囲角度範囲E3よりも大きいために、複数の係合表面64は複数の中間表面と回転しながら並ぶことができ、係合部材62を、容易に中央凹部32に挿入することができる。
【0076】
図8に示すように、第1平面P1における断面図において、長手方向の回転軸A1と同軸の仮想上の第3円C3は、係合部材62に外接する。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態では、仮想上の第3円C3は、複数の係合表面64と接触してよい。
【0078】
また、本発明のいくつかの実施形態では、複数の接合表面66は、仮想上の第3円C3の内側に配置されてよい。
【0079】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、複数の係合表面64は、仮想上の第3円C3と一致し、間を空けて配置される複数の係合弧68を形成してよい。
【0080】
またさらに、本発明のいくつかの実施形態では、仮想上の第3円C3は、第1組み立て直径DA1と等しい第3直径D3を有してよい。
【0081】
図6及び7に示すように、取付部58は、周方向に間を空けて配置され、底部表面から切削部56の方へ延びる複数の側面70を有してよく、側面70のそれぞれは、トルク移行表面72を有する。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態では、動作表面36のそれぞれは、トルク移行表面72の一つと接触してよい。
【0083】
また、本発明のいくつかの実施形態では、側面70のそれぞれは、フルート延出表面74を含んでよく、フルート延出表面74のそれぞれは、切削部56の先端表面76と交差して切削縁78を形成してよい。
【0084】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、複数の頭部周縁表面80は、複数の側面70と周方向に交互に位置し、フルート延出表面74のそれぞれは、頭部周縁表面80の一つと交差して、先端縁82を形成してよい。
【0085】
本発明は、さらに回転切削工具52を組み立てる方法に関する。方法は、
a)底部表面60を支持表面30に向き合うように方向づける工程と、
b)頭部軸A3を、長手方向の回転軸A1と合わせて並べる工程と、
c)複数の係合表面64を回転させながら複数の中間表面44と合わせて並べる工程と、
d)係合部材62を中央凹部32に挿入する工程とし、
e)複数の係合表面64が弾性的に複数の当接表面42に向かって保持されるまで、切削頭部54をその頭部軸A3の周囲で回転させる工程と、を含む。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態では、d)工程において、係合部材62は、底部表面60が支持表面30又は複数の肩表面63に接触するまで中央凹部32に挿入されてよい。
【0087】
また、本発明のいくつかの実施形態では、工程e)において、動作表面36のそれぞれがトルク移行表面72の一つと接触するまで、切削頭部54は、回転方向Rの反対の方向に、その頭部軸A3の周りを回転してよい。
【0088】
本発明はある程度詳細に述べられたが、様々な変更や修正が、次にクレームされる本発明の精神及び範囲を離れずに行われることが理解されるべきである。