IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

特許7123044エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/16 20060101AFI20220815BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
C08F210/16
C08J5/18 CES
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019527460
(86)(22)【出願日】2017-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017064826
(87)【国際公開番号】W WO2018111638
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】62/435,336
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】メフメット・デミローズ
(72)【発明者】
【氏名】ブライデン・イー・グラッド
(72)【発明者】
【氏名】ロンジュアン・コン
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-528689(JP,A)
【文献】特表2016-505694(JP,A)
【文献】特表2006-517607(JP,A)
【文献】特表2015-523446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/00 - 210/18
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100~500の範囲のコモノマー分布定数(CDC)、インターポリマー組成物中に存在する1000個の総炭素原子当たり0.15個未満のビニルのビニル不飽和、1.5~5の範囲のゼロ剪断粘度比(ZSVR)、0.903~0.950g/cmの範囲の密度、0.1~15g/10分の範囲のメルトインデックス(I)、1.8~4.5の範囲の分子量分布(M/M)、および0.50~1.10の分離指数を有する、キャストフィルム用エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物。
【請求項2】
前記組成物が、200~400の範囲のCDCを有する、請求項1に記載のエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物。
【請求項3】
前記組成物が、0.903~0.925の範囲の密度を有する、請求項1~2のいずれかに記載のエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物。
【請求項4】
前記組成物が、0.1~10g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物。
【請求項5】
前記組成物が、0.60~1.08の分離指数を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物。
【請求項6】
前記組成物が、0.60~1.05の分離指数を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物から形成されたキャストフィルムを含む物品。
【請求項8】
前記フィルムが、0.8ミルの厚さおよび345%を超える極限延伸値を有する、請求項に記載の物品。
【請求項9】
前記フィルムが、0.6ミルの厚さおよび295%を超える極限延伸値を有する、請求項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物に関し、より具体的には、実施形態は、0.50~1.10の分離指数を有するエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、フィルムなどを含む多くの物品に利用され得る。ポリマーは、重合反応において1種類以上のモノマーを反応させることによって形成され得る。当業界では、1つ以上の望ましい特性を有するポリマーを形成するために利用され得る新規かつ改善された物質および/または方法を開発することに引き続き焦点が当てられている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、ポリエチレンおよびα-オレフィンコモノマーを含むエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物を提供する。ここで、ポリエチレンは、インターポリマー組成物の総重量を基準として、インターポリマー組成物の70重量%~100重量%であり、インターポリマー組成物は、100~500の範囲のコモノマー分布定数(CDC)、インターポリマー組成物中に存在する1000個の総炭素原子当たり0.15個未満のビニルのビニル不飽和、1.5~5の範囲のゼロ剪断粘度比(ZSVR)、0.903~0.950g/cmの範囲の密度、0.1~15グラム/10分の範囲のメルトインデックス(I)、1.8~4.5の範囲の分子量分布(M/M)、および0.50~1.10の分離指数によって特徴付けられる。
【0004】
本開示の上記概要は、開示された各実施形態または本開示の全ての実施形態を説明することを意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示するものである。本出願全体に亘る幾つかの場所では、指針が、例のリストを通じて提供され、これらの例は、種々の組み合わせで使用することができる。各例において、列挙されたリストは、代表的なグループとしてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0005】
エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物が、本明細書に記載される。一例として、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、ポリエチレンおよびα-オレフィンコモノマーを含み得る。ここで、ポリエチレンは、インターポリマー組成物の総重量を基準として、インターポリマー組成物の70重量%~100重量%であり、インターポリマー組成物は、100~500の範囲のコモノマー分布定数(CDC)、インターポリマー組成物中に存在する1000個の総炭素原子当たり0.15個未満のビニルのビニル不飽和、1.5~5の範囲のゼロ剪断粘度比(ZSVR)、0.903~0.950g/cmの範囲の密度、0.1~15グラム/10分の範囲のメルトインデックス(I)、1.8~4.5の範囲の分子量分布(M/M)、および0.50~1.10の分離指数によって特徴付けられる。
【0006】
0.50~1.10の分離指数を提供することは、他の利点の中でも特にエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物から形成される生成物に有利な特性を提供するのに役立つ。例えば、本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物から形成されるフィルムは、他の組成物から作製されるフィルムと比較して、改善された、例えばより大きな極限延伸を有利に有し得る。
【0007】
言及したように、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、本明細書に記載される。本明細書で使用される場合、「組成物」は、本明細書で使用される場合、組成物を構成する材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を指す。本明細書で使用される場合、「ポリマー」は、本明細書で使用される場合、同一または異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、通常、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる「ホモポリマー」という用語、および以下に定義されるような「インターポリマー」という用語を包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、記載されているようなインターポリマーを示す。本明細書で使用される場合、「インターポリマー」は、少なくとも2種の異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。インターポリマーという総称は、2種の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられるコポリマー、および3種以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。本明細書で使用される場合、「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」は、重合性モノマーの総量を基準として、50モルパーセントを超える重合エチレンモノマー、および少なくとも1種のα-オレフィンを含有するインターポリマーを指す。
【0008】
エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、ポリエチレンを含む。インターポリマー組成物は、インターポリマー組成物の総重量を基準として、70重量%~100重量%のポリエチレンを含み得る。70重量%~100重量%の全ての個々の値および部分範囲が含まれる。例えば、インターポリマー組成物は、インターポリマー組成物の総重量を基準として、70、75、80、85、または90重量%の下限から100、99、98、97、96、または95重量%の上限までのポリエチレンを含み得る。言い換えれば、インターポリマー組成物は、インターポリマー組成物の総重量を基準として、100重量%以下のエチレン誘導単位、または少なくとも70質量%、または少なくとも80質量%、または少なくとも90質量%のエチレン誘導単位を含み得る。
【0009】
インターポリマー組成物は、α-オレフィンコモノマーを含む。α-オレフィンコモノマーは、20個以下の炭素原子を有し得る。例えば、本開示の1つ以上の実施形態は、α-オレフィンコモノマーが、3~10個の炭素原子を有し得ることを示す。本開示の1つ以上の実施形態は、α-オレフィンコモノマーが、3~8個の炭素原子を有し得ることを示す。α-オレフィンコモノマーの例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテン、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。α-オレフィンコモノマーの1種以上は、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンから選択され得るか、またはその代りに、例えば1-ヘキセン、および1-オクテンから選択され得る。
【0010】
エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、多くのエチレン(共)重合反応プロセス、例えば従来のエチレン(共)重合反応プロセスによって形成され得る。そのようなエチレン(共)重合反応プロセスとしては、スラリー相重合プロセス、溶液相重合プロセス、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、多くの反応器、例えば並列、直列、およびこれらの組み合わせの、例えばループ反応器、撹拌槽反応器、バッチ反応器を利用することによって形成され得る。エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、操作、反応器構成、触媒系などが選択され、用いられ、行われるという条件で、溶液、スラリー、または気相重合プロセスを含む、当業界で公知の任意の重合方法および手順により形成され得て、本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物を、本明細書に記載される特性の組み合わせで確かに提供する。
【0011】
一例として、本明細書に開示されるようなエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、第1の触媒の存在下で、エチレンおよび任意に1種以上のα-オレフィンを重合して、第1の反応器またはマルチパート反応器の第1の部分内で半結晶性ポリマーを形成する工程と、有機金属触媒を含む第2の触媒の存在下で、新鮮な供給エチレンおよび任意に1種以上のα-オレフィンを反応させて、それによって少なくとも1つの他の反応器またはマルチパート反応器の後半部分内でエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物を形成する工程と、を含み、工程のうちの1つにおいて、触媒系のうちの少なくとも1つは、次式に対応する多価アリールオキシエーテルの金属錯体を含む、プロセスによって形成され得る。
【0012】
【化1】
【0013】
式中、Mは、Ti、Hf、またはZrであり、Arは、それぞれ独立して、置換C9-20アリール基であり、ここで置換基は、それぞれの存在において独立して、アルキル、シクロアルキル、およびアリール基、ならびにこれらのハロ-、トリヒドロカルビルシリル-、およびハロヒドロカルビル-置換誘導体からなる群から選択され、ただし、少なくとも1つの置換基が、それが結合しているアリール基との共平面性を欠いている条件で、Tはそれぞれ、C2-20アルキレン、シクロアルキレン、もしくはシクロアルケニレン基、またはこれらの不活性置換誘導体であり、R21は、それぞれ独立して、水素、ハロ、水素を数えない最大50原子のヒドロカルビル、トリヒドロカルビルシリル、トリヒドロカルビルシリルヒドロカルビル、アルコキシ、またはジ(ヒドロカルビル)アミノ基であり、Rは、それぞれ独立して、水素、ハロ、水素を数えない最大50原子のヒドロカルビル、トリヒドロカルビルシリル、トリヒドロカルビルシリルヒドロカルビル、アルコキシ、もしくはアミノであるか、または同一のアリーレン環上の2つのR基、もしくは同一もしくは異なるアリーレン基上のRおよびR21基は、一緒になって2つの位置でアリーレン基に結合する二価の配位子基を形成するか、もしくは2つの異なるアリーレン環を一緒に結合し、Rは、それぞれ独立して、ハロ、水素を数えない最大20原子のヒドロカルビルもしくはトリヒドロカルビルシリル基であるか、または2つのR基は、共に、ヒドロカルビレン、ヒドロカルバジイル、ジエン、もしくはポリ(ヒドロカルビル)シリレン基である。
【0014】
本開示の1つ以上の実施形態は、MがZrであることを示す。
【0015】
好適なプロ触媒、触媒、および/または助触媒としては、[[2,2”-[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-k-O)]ビス[3”,5,5”-トリス(1,1)-(ジメチルエチル)-5’-メチル[1,1’:3’,1”-テルフェニル]-2’-オラト-k-O]](2-)]-ジルコニウムジメチル、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミン、および/または変性メチルアルミノキサン、ならびにこれらの組み合わせなどが挙げられる。様々な用途のために、プロ触媒、触媒、および/または助触媒は、単独でおよび/または互いに組み合わせて利用され得る。本明細書中で使用される場合、プロ触媒、触媒、および助触媒はそれぞれ、触媒構成成分と称され得る。
【0016】
述べたように、本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、100~500のコモノマー分布定数(CDC)を有し得る。100~500の全ての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、100、120、140、160、180、または200の下限から、500、480、460、440、420、または400の上限までのCDCを有し得る。本開示の1つ以上の実施形態は、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物が、200~400のCDCを有し得ることを示す。
【0017】
本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物中に存在する1000個の総炭素原子当たり0.15未満のビニルのビニル不飽和を有し得る。例えば、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物中に存在する1000個の総炭素原子当たり、0.01または0.02の下限レベルから0.15、0.13、0.10、0.09または0.08の上限までのビニルのビニル不飽和を有し得る。不飽和は、米国特許第8,372,931号で示されるものを含み得、それは参照により組み込まれる。
【0018】
本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、1.5~5.0のゼロ剪断粘度比(ZSVR)を有し得る。1.5~5.0の全ての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、1.5、1.7、または1.8の下限から、5.0、4.8、または4.6の上限までのZSVRを有し得る。
【0019】
本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、0.903~0.950g/cmの密度を有し得る。0.903~0.950g/cmの全ての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、0.903、0.905、0.907、または0.909g/cmの下限から、0.950、0.945、0.940、0.935、0.930、または0.925g/cmの上限までの密度を有し得る。
【0020】
本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、0.1~15.0g/10分のメルトインデックス(I)を有し得る。0.1~15/10分の全ての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、0.1、0.3、0.5、または1.0g/10分の下限から、15.0、14.0、13.0、12.0、11.0、または10.0g/10分の上限までのメルトインデックス(I)を有し得る。
【0021】
本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、1.8~4.5の分子量分布(M/M)を有し得る。1.8~4.5の全ての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、1.8、1.9、または2.0の下限から、4.5、4.4、または4.35の上限までの分子量分布(M/M)を有し得る。
【0022】
本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、0.50~1.10の分離指数を有し得る。0.50~1.10の全ての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、0.50、0.55、0.60、または0.70の下限から、1.10、1.09、1.08、1.07、1.06、または1.05の上限までの分離指数を有し得る。
【0023】
本開示の1つ以上の実施形態は、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物が、加工助剤、例えば可塑剤を含み得ることを示す。加工助剤の例としては、フタル酸ジオクチルおよびフタル酸ジイソブチルなどのフタレート、ラノリンなどの天然油、ならびに石油精製から得られるパラフィン油、ナフテン油、および芳香油、ならびにロジンまたは石油原料由来の液体樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。異なる量の加工助剤が、様々な用途に利用され得る。
【0024】
本開示の1つ以上の実施形態は、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物が、添加剤および/または補助剤を含み得ることを示す。添加剤および/または補助剤の例としては、粘土、タルク、二酸化チタン、ゼオライト、粉末状金属を含む有機または無機粒子などの充填剤、炭素繊維、窒化ケイ素繊維、鋼線またはメッシュを含む有機または無機繊維、およびナイロンまたはポリエステルコード、ナノ粒子、粘土など、粘着付与剤、パラフィン油またはナフテン油を含むエクステンダー油、および他の天然および合成ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の1つ以上の実施形態は、添加剤および/または補助剤がエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物の形成後に添加され得ることを示す。異なる量の添加剤および/または補助剤が、様々な用途に利用され得る。
【0025】
エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、他のポリオレフィンとブレンドされ得る。本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物とブレンドするのに好適なポリマーとしては、天然および合成ポリマーを含む熱可塑性および非熱可塑性ポリマーが挙げられる。ブレンド用のポリマーの例としては、耐衝撃性改良ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、およびランダムエチレン/プロピレンコポリマーなどのポリプロピレン、高圧フリーラジカルLDPE、チーグラーナッタLLDPE、メタロセンPEを含み、例えば米国特許第6,545,088号、同第6,538,070号、同第6,566,446号、同第5,844,045号、同第5,869,575号、同第6,448,341号に開示されている生成物などのチーグラーナッタPEとメタロセンPEとの「反応器内」ブレンドなどの多重反応器PEを含む、様々な種類のポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、ポリスチレン、耐衝撃性改良ポリスチレン、ABS、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、およびこれらの水素化誘導体(SBSおよびSEBS)、および熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。本明細書において、引用される全ての出願、公開、特許、試験手順、および他の文書は、そのような開示が、開示された組成物および方法と矛盾しない限り、かつそのような組み込みが許可される全ての権限の範囲に関して、参照により完全に組み込まれる。オレフィンプラストマーおよびエラストマーなどの均質なポリマー、エチレンおよびプロピレン系コポリマー、例えばVERSIFY(商標)プラストマーおよびエラストマー(The Dow Chemical Company)、SURPASS(商標)(Nova Chemicals)、およびVISTAMAXX(商標)(ExxonMobil Chemical Co.)の商品名で入手可能なポリマーもまた、本明細書で開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物を含むブレンド中の構成成分として有用であり得る。異なる量の他のポリオレフィンが、様々な用途に利用され得る。
【0026】
本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、多数の様々な用途、例えば多数の物品を形成するのに利用され得る。例えば、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、フィルム、例えば単層フィルムおよび多層フィルムを形成するのに利用され得る。フィルムは、キャスト、インフレーション、カレンダー、および/または押出しコーティングプロセスによって調製され得る。エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、ブロー成形品、射出成形品、または回転成形品などの成形品を形成するのに利用され得る。エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、押出し成形品、繊維、および織布または不織布を形成するのに利用され得る。エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物は、他の組成物、例えば他の天然または合成材料、ポリマー、添加剤、補強剤、耐火添加剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、増量剤、架橋剤、発泡剤、および/または可塑剤とのブレンドを含む熱可塑性組成物に利用され得る。
【0027】
述べたように、本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物から形成された物品は、多くの有利な特性を有し得る。例えば、本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物から形成される約0.8ミルの厚さを有するフィルム、例えば単層フィルムは、345%超または350%超の極限延伸値を有し得る。フィルムは、345%、または350%の下限から、400%超、例えば450%、425%、410%、または405%の上限までの極限延伸値を有し得る。
【0028】
本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物から形成される約0.8ミルの厚さを有するフィルム、例えば単層フィルムは、8.5、9.0、または9.2lbfの下限から、16.0、15.5、または15.0lbfの上限までのパレット上の穿孔値を有し得る。
【0029】
本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物から形成される約0.8ミルの厚さを有するフィルム、例えば単層フィルムは、10.5、11.0、または11.3lbfの下限から、17.0、16.5、または16.0の上限までのパレット上の引裂き値を有し得る。
【0030】
本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物から形成される約0.6ミルの厚さを有するフィルム、例えば単層フィルムは、295%超の極限延伸を有し得る。フィルムは、295%、または296%の下限から、400%、395%、390%、または380%の上限までの極限延伸を有し得る。
【0031】
本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物から形成される約0.6ミルの厚さを有するフィルム、例えば単層フィルムは、6.0、6.5、または7.0lbfの下限から、14.0、13.5、または13.0lbfの上限までのパレット上の穿孔値を有し得る。
【0032】
本明細書に開示されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物から形成される約0.6ミルの厚さを有するフィルム、例えば単層フィルムは、6.0、6.5、7.0、7.5または8.0lbfの下限から、14.0、13.5、13.0、12.5、12.0、または11.5の上限までのパレット上の引裂き値を有し得る。
【実施例
【0033】
実施例では、例えば以下のものを含む材料についての様々な用語および呼称が使用される:ELITE(商標)AT6111(比較例Aとして利用される、エチレン/オクテンコポリマー、The Dow Chemical Companyから入手可能)、ELITE(商標)5230G(比較例Bとして利用される、エチレン/オクテンコポリマー、The Dow Chemical Companyから入手可能)。
【0034】
実施例1~3、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物を、以下のように調製した。
【0035】
反応環境に導入する前に、全ての原材料(モノマーおよびコモノマー)およびプロセス溶媒(狭い沸点範囲の高純度イソパラフィン溶媒、Isopar-E)を分子ふるいで精製した。水素を高純度グレードとして加圧して供給し、それ以上精製はしなかった。反応器モノマー供給流を機械的圧縮機を介して、反応圧力を超える圧力まで加圧した。溶媒およびコモノマー供給物をポンプを介して反応圧力を超える圧力まで加圧した。個々の触媒構成成分を精製された溶媒で手動で特定の構成成分濃度までバッチ希釈し、反応圧力を超える圧力まで加圧した。全ての反応供給流を質量流量計で測定し、コンピュータ自動弁制御系で独立して制御した。
【0036】
二重反応器系を直列構成で稼働させた。連続溶液重合反応器はそれぞれ、熱除去を伴う連続撹拌槽反応器(CSTR)に似ている液体充填、等温、循環、ループ反応器から構成された。全ての新鮮な溶媒、モノマー、コモノマー、水素、および触媒構成成分供給物の独立した制御が可能である。反応器への総新鮮供給流(溶媒、モノマー、コモノマー、および水素)を、供給流を熱交換器に通すことによって温度制御した。重合反応器への総新鮮供給物を各注入位置の間でほぼ等しい反応器容積で、2つの位置で反応器に注入した。新鮮供給物を制御し、各注入器は総新鮮供給物質量流量の半分を受容した。触媒構成成分を注入ストリンガーを通して重合反応器に注入した。主要触媒構成成分供給物を特定の目標で反応器モノマー転化を維持するように制御した。助触媒構成成分は、計算された特定のモル比に基づいて、主要触媒構成成分に供給された。各反応器供給物注入位置の直後に、供給流を循環重合反応器の内容物と静的混合要素を用いて混合した。反応器の内容物を反応熱の大部分を除去する役割を果たす熱交換器を通して、かつ特定温度で等温反応環境を維持する役割を果たす冷却剤側の温度で連続的に循環させた。反応器ループ周りの循環は、ポンプにより提供された。
【0037】
第1の重合反応器からの(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒構成成分、およびポリマーを含有する)流出物は、第1の反応器ループを出て、第2の反応器ループに加わえられた。
【0038】
第2の重合反応器からの最終的な反応器流出物は、好適な試薬(水)の添加およびそれとの反応により流出物が失活するゾーンに入った。この同じ反応器出口位置で、他の添加剤をポリマー安定化のために添加した。
【0039】
触媒の失活および添加剤の添加に続いて、反応器流出物は、ポリマーが非ポリマー流から除去される脱揮発系に入った。単離されたポリマー溶融物をペレット化して収集した。非ポリマー流を、系から除去されたエチレンの大部分を分離する様々な機器を通過させた。溶媒および未反応コモノマーの大部分を、精製系を通過させた後、反応器に再循環した。少量の溶媒およびコモノマーをプロセスからパージした。触媒構成成分2は、変性メチルアルミノキサンであり、触媒構成成分1は、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミンであり、触媒構成成分3は、[[2,2’’’-[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-k-O)]ビス[3”,5,5”-トリス(1,1-ジメチルエチル)-5’-メチル[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-2’-オラト-k-O]](2-)]-ジルコニウムジメチルである。
【0040】
プロセス条件を表1に報告する。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例1~3および比較例A~Bを本明細書に記載される試験方法に従って様々な特性について試験し、その特性を表2に報告する。
【0043】
密度をASTM D1928に従って密度測定用の試料を調製し、ASTM D792、方法B(イソプロパノール)を用いて試料プレスの1時間以内に測定することによって決定した。
【0044】
メルトインデックス(I)をASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定した。
【0045】
ビニル不飽和をH核磁気共鳴(H NMR)分光法を利用することによって決定した。原液(3.26g)を0.113gに、10mmNMR管内の実施例1~3および比較例A~Cのそれぞれの試料(0.133g)に添加した。原液は、テトラクロロエタン-d(TCE)およびペルクロロエチレン(50:50、w:w)と0.001MのCr3+との混合物であった。管内の溶液を5分間Nでパージして、酸素量を減少させた。蓋をした試料管を室温で一晩放置して、ポリマー試料を膨潤させた。試料を振とうしながら110℃で溶解させた。試料は、不飽和の一因となり得る添加剤、例えばエルカミドなどの滑剤を含まない。
【0046】
ゼロ剪断粘度比(ZSVR)について、ゼロ剪断粘度比を、直径25mmの平行板を用いて190℃でAR-G2応力制御レオメーター(TA Instruments,New Castle,Del.)で行ったクリープ試験によって得た。取付け器具をゼロにする前に、レオメーターオーブンを少なくとも30分間試験温度に設定した。その試験温度で、圧縮成形試料ディスクをプレート間に挿入し、5分間平衡状態にさせた。次いで、上側プレートを所望の試験間隙(1.5mm)より50μm上まで下げた。余分な材料をトリミングして除去し、上側プレートを所望の間隙まで下げた。測定を、5L/分の流量で、窒素パージ下で行った。初期設定クリープ時間を2時間に設定した。試料の全てに20Paの一定の低剪断応力を加えて、定常状態の剪断速度がニュートン領域になるのに十分な低さであることを確実にした。得られた定常状態の剪断速度は、この試料については10-3~10-4-1の範囲であった。定常状態を、log(J(t))対log(t)のプロットの最後の10%の時間ウィンドウ内の全てのデータについて線形回帰を取ることによって決定した、ここでJ(t)はクリープコンプライアンスであり、tはクリープ時間である。線形回帰の勾配が0.97超の場合、定常状態に達したと見なし、次いでクリープ試験を停止した。全ての場合において、勾配は2時間以内に基準を満たした。定常状態の剪断速度を、c対tのプロットの最後の10%の時間ウィンドウ内の全てのデータ点の線形回帰の勾配から決定した、ここでcはひずみである。ゼロ剪断粘度は、加えられた応力の定常状態の剪断速度に対する比から決定した。クリープ試験中に試料が劣化しているかどうかを決定するために、0.1~100ラジアン/秒の同じ試験片についてクリープ試験の前後に小振幅振動剪断試験を行った。2つの試験の複素粘度値を比較した。0.1ラジアン/秒における粘度値の差が5%超の場合、クリープ試験中に試料は劣化したと見なされ、結果を廃棄した。
【0047】
ゼロ剪断粘度比(ZSVR)は、以下の式に示されるようにエチレン等価重量平均分子量(Mw-gpc)での、分岐ポリエチレン材料のゼロ剪断粘度(ZSV)の線状ポリエチレン材料のZSVに対する比として定義される。
【0048】
【数1】
【0049】
ZSV値を上述した方法により190℃でのクリープ試験から得た。Mw-gpc値を従来のGPC法によって決定した。線状ポリエチレンのZSVとそのMw-gpcとの間の相関は、一連の線状ポリエチレン参照材料に基づいて確立された。ZSV-Mwの関係についての説明は、ANTEC会報において見られ得る:Karjala,Teresa P.;Sammler,Robert L.;Mangnus,Marc A.;Hazlitt,Lonnie G.;Johnson,Mark S.;Hagen,Charles M.,Jr.;Huang,Joe W.L.;Reichek,Kenneth N.ポリオレフィン中の低レベルの長鎖分岐の決定。年次技術会議(Annual Technical Conference)-プラスチック技術者協会(Society of Plastics Engineers)(2008)、第66回887-891。
【0050】
H NMRを、Bruker AVANCE 400MHz分光計で120℃において10mmのクライオプローブを用いて実行した。2つの実験、すなわち対照実験および二重前飽和実験を実行して不飽和を得た。対照実験について、データを指数窓関数、LB=1Hzで処理し、ベースラインを7~-2ppmに補正した。TCEの残留Hからの信号を100に設定し、対照実験において全ポリマーからの信号として-0.5~3ppmの積分値T合計を用いた。ポリマー中のCH基の数、NCHを、以下のように計算した。
NCH=I合計/2
【0051】
二重前飽和実験について、データを指数窓関数、LB=1Hzで処理し、ベースラインを6.6~4.5ppmに補正した。TCEの残留Hからの信号を100に設定し、不飽和についての対応する積分(Iビニレン、I三置換体、Iビニル、およびIビニリデン)を、米国特許第8,372,931号の図20に示されるような領域に基づき積分した。
【0052】
ビニレン、三置換体、ビニル、およびビニリデンの不飽和単位の数を計算する。
ビニレン=Iビニレン/2
三置換体=I三置換体
ビニル=Iビニル/2
ビニリデン=Iビニリデン/2
不飽和単位/1,000,000個の炭素を以下のように計算する。
ビニレン/1,000,000C=(Nビニレン/NCH)×1,000,000
三置換体/1,000,000C=(N三置換体/NCH)×1,000,000
ビニル/1,000,000C=(N置換ビニル/NCH)×1,000,000
ビニリデン/1,000,000C=(N置換ビニリデン/NCH)×1,000,000
【0053】
1000個の総C原子当たりのビニル不飽和は、(Nビニル/1,000,000C)×1000に等しい。不飽和NMR分析の要件は以下を含む:定量レベルは、3.9重量%の試料(Vd2構造については、Macromolecules,vol.38,6988,2005を参照されたい)、10mm高温クライオプローブを用いて、200回の走査(対照実験を実行するための時間を含む、1時間未満のデータ収集)でVd2について0.47±0.02/1,000,000炭素である。定量レベルをシグナル対ノイズ比10として定義した。TCT-d2からの残留プロトンからのH信号について化学シフト基準を6.0ppmに設定した。対照を、ZGパルス、TD32768、NS4、DS12、SWH10,000Hz、AQ1.64秒、D1 14秒で実行した。二重前飽和実験を、修正パルスシーケンス、O1P1.354ppm、O2P0.960ppm、PL9 57db、PL21 70db、TD32768、NS200、DS4、SWH10,000Hz、AQ1.64秒、D1 1秒、D13 13秒で実行した。Bruker AVANCE400MHz分光計での不飽和のための修正パルスシーケンスは以下の通りである。
【0054】
【数2】
【0055】
クロマトグラフ系は、Polymer Laboratories Model PL-210(Agilent)、またはPolymer Laboratories Model PL-220(Agilent)、またはPolymerChar HT GPC(スペイン)のいずれかで構成される。カラムおよびカルーセルコンパートメントを140℃で操作する。3つのPolymer Laboratories、10μm Mixed-Bカラムを、1,2,4-トリクロロベンゼンの溶媒と共に使用する。試料を50mLの溶媒中0.1gのポリマー、または8mLの溶媒中16mgのポリマーの濃度で調製する。試料を調製するために使用される溶媒は、200ppmのBHTを含有する。試料を、160℃で4時間軽く撹拌することによって調製する。使用される注入量は、100マイクロリットルであり、流量は、1.0mL/分である。GPCカラムセットの較正をPolymer Laboratoriesから購入した21個の分子量分布の狭いポリスチレン標準を用いて行った。標準物の分子量(MW)は、580~8,400,000g/モルの範囲であり、標準物は、6つのカクテル混合物に含まれる。各標準混合物は、個々の分子量間で少なくとも10の分離を有している。標準物質をPolymer Laboratories(Shropshire,UK)から購入する。ポリスチレン標準を、1,000,000g/mol以上の分子量について20mLの溶媒中0.001g、および1,000,000g/mol未満の分子量について20mLの溶媒中0.005gで調製する。
【0056】
以下の式1を用いて、ポリスチレン標準ピーク分子量をポリエチレン分子量に変換する。
Mポリエチレン=A(Mポリエチレン)(式1),
【0057】
式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4316の値を有し、Bは、1.0に等しい(T.WilliamsおよびI.M.Ward,Polym.Letters,6,621-624(1968))。三次多項式を、溶出量の関数として対数分子量較正を構築するために決定した。ポリエチレン当量分子量の計算を、Agilent GPC測定器用のVISCOTEK TriSECソフトウェアバージョン3.0、またはPolymerChar GPC測定器用のGPCOneソフトウェアを用いて行う。
【0058】
【表2】
【0059】
CEF法
コモノマー分布分析を、IR-4検出器またはIR-5検出器(PolymerChar,スペイン)および2角度光散乱検出器モデル2040(Precision Detectors,現在はAgilent Technologies)を備えた、結晶化溶出分別(Crystallization Elution Fractionation)(CEF)(PolymerChar,スペイン)(Monrabalら,Macromol.Symp.257,71-79(2007))を用いて行う。IR-4またはIR-5検出器が使用される。IR-4検出器またはIR-5検出器を検出器オーブン内に入れる直前に、50×4.6mmの10または20ミクロンガードカラム(PolymerLab、現在のAgilent Technologies)を取り付ける。Sigma-Aldrichから、オルト-ジクロロベンゼン(ODCB、99%無水グレード)および2,5-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(「BHT」、カタログ番号B1378-500G、バッチ番号098K0686)が得られる。使用前にODCBは蒸留される。EMD Chemicalsから、シリカゲル40(粒径0.2~0.5mm、カタログ番号10181-3)も得られる。使用前に、シリカゲルを160℃の真空オーブンで約2時間乾燥させる。800mgのBHTおよび5gのシリカゲルを、2リットルのODCBに加える。ODCBは、シリカゲルを充填した1つまたは複数のカラムを通過させることによっても、乾燥させることができる。N2パージ能力を有するオートサンプラを備えたCEF装置の場合、シリカゲル40を、2つの300×7.5mmのGPCサイズのステンレス鋼カラムに充填し、シリカゲル40カラムをCEF装置のポンプの入口に取り付けて、ODCBを乾燥させる。また、BHTは移動相に全く添加されない。このBHTおよびシリカゲルを含有するODCB、またはシリカゲル40で乾燥したODCBを、ここで「ODCB」と称する。このODBCを、使用前に乾燥窒素(N)で1時間スパージングする。乾燥窒素は、窒素をCaCOおよび5Åモレキュラーシーブに90psig未満で通過させることによって得られるものである。得られる窒素は、約-73℃の露点を有するはずである。試料調製を、160℃で2時間振盪させながら、(別段の指定がない限り)4mg/mlでオートサンプラを用いて行う。注入体積は300μlである。CEFの温度プロファイルは、3℃/分で110℃~30℃での結晶化、30℃で5分間の熱平衡(2分として設定された可溶性画分溶出時間(Soluble Fraction Elution Time)を含む)、3℃/分で30℃~140℃での溶出、である。結晶化中の流量は、0.052ml/分である。冷却ステップ中の流量は、0.052mL/分である。溶出中の流量は、0.50ml/分である。データは、1データポイント/秒で収集される。CEFカラムを、米国特許第8,372,931号に従って、1/8インチのステンレス管を用いて、125μm±6%(MO-SCI Specialty Products)のガラスビーズで充填する。カラム外径(OD)は、1/8インチである。この方法を再現するためのパラメータは、カラム内径(ID)およびカラム長(L)を含む。IDおよびLの選択は、直径125μmのガラスビーズを充填する場合、液体内部体積が2.1~2.3mLになるようにする必要がある。Lが152cmの場合、その時にはIDは0.206cmとなり、壁の厚さは0.056cmとなる。ガラスビーズの直径が125μmであり、かつ液体内部体積が2.1~2.3mLである限り、LとIDについて異なる値を使用することができる。カラム温度較正は、ODCB中のNIST標準参照物質、線状ポリエチレン1475a(1.0mg/ml)およびエイコサン(2mg/ml)の混合物を用いて行う。CEF温度較正は、(1)測定されたエイコサンのピーク溶出温度から30.00℃を差し引いた値の間の温度オフセットとして定義される、遅延体積を計算する工程と、(2)溶出温度の温度オフセットをCEF生温度データから差し引く工程と、この温度オフセットは、溶出温度、溶出流量などの実験条件の関数であることに留意すべきであり、(3)NIST線状ポリエチレン1475aが101.0℃でピーク温度を有し、エイコサンが30.0℃のピーク温度を有するように、30.00℃~140.00℃の範囲に亘る溶出温度を変換する直線較正線を作成する工程と、(4)30℃で等温的に測定される可溶性画分について、溶出温度が、3℃/分の溶出加熱速度を用いることによって直線的に外挿される工程と、の4つの工程からなる。報告された溶出ピーク温度を、観測コモノマー含有量較正曲線が、以前に米国特許第8,372,931号で報告されたものと合致するように得る。GPCOneソフトウェア(PolymerChar,スペイン)を用いてCEFクロマトグラムを処理する。
【0060】
CDC法
コモノマー分布定数(CDC)を、CEFによるコモノマー分布プロファイルから計算した。CDCを、以下の式に示されるように、コモノマー分布指数(Comonomer Distribution Index)を100倍したコモノマー分布形状因子(Comonomer Distribution Shape Factor)で割ったものとして定義する。
【0061】
【数3】
【0062】
コモノマー分布指数を、35.0~119.0℃での、コモノマー含有量中央値(C中央値)の0.5から、C中央値の1.5までの範囲のコモノマー含有量を有するポリマー鎖の総重量分率で表す。コモノマー分布形状因子を、コモノマー分布プロフィールの半値幅をピーク温度(T)からのコモノマー分布プロフィールの標準偏差で割った比として定義する。
【0063】
CDCを、CEFによるコモノマー分布プロファイルから計算し、CDCを、上記のCDC式に示されるように、コモノマー分布指数を100倍したコモノマー分布形状因子で割ったとして定義し、コモノマー分布指数を、35.0~119.0℃での、コモノマー含有量中央値(C中央値)の0.5から、C中央値の1.5までの範囲のコモノマー含有量を有するポリマー鎖の総重量分率で表し、コモノマー分布形状因子を、コモノマー分布プロフィールの半値幅をピーク温度(T)からのコモノマー分布プロフィールの標準偏差で割った比として定義する。
【0064】
CDCを、以下の工程に従って計算する。
【0065】
(A)以下の式に従って、CEFからの0.200℃の温度ステップ上昇で、35.0℃~119.0℃の各温度(T)での重量分率(wT(T))を得る工程、
【0066】
【数4】
【0067】
(B)以下の式に従って、累積重量分率0.500での温度中央値(T中央値)を計算する工程、
【0068】
【数5】
【0069】
(C)以下の式に従って、コモノマー含有量較正曲線を用いることによって、温度中央値(T中央値)でのモル%での対応するコモノマー含有量中央値(C中央値)を計算する工程、
【0070】
【数6】
【0071】
(D)既知量のコモノマー含有量を有する一連の参照物質、すなわち狭いコモノマー分布(35.0~119.0℃のCEF中の単峰性コモノマー分布)を有する11の参照物質を用いてコモノマー含量較正曲線を作成し、0.0モル%~7.0モル%の範囲のコモノマー含有量で(従来のGPCによって測定される)35,000~115,000の重量平均Mwを、CEF実験の項に明記されているのと同じ実験条件でCEFで分析する工程、
【0072】
(E)各参照物質のピーク温度(T)およびそのコモノマー含有量を用いてコモノマー含有量較正を計算し、較正は、上記の(C)に示されるような式を利用して各標準物質から計算され、ここで、Rは相関定数である、工程、
【0073】
(F)0.5×C中央値~1.5×C中央値の範囲のコモノマー含有量を有する総重量分率からコモノマー分布指数を計算し、T中央値が98.0℃より高い場合、コモノマー分布指数が0.95と定義される工程、
【0074】
(G)35.0℃~119.0℃での最も高いピークについて各データ点を検索することによって、CEFコモノマー分布プロファイルから最大ピーク高さを得て(2つのピークが同一である場合、その時にはより低い温度のピークが選択される)、半値幅は、最大ピーク高さの半分での前面温度と背面温度の間の温度差として定義され、最大ピークの半分での前面温度は35.0℃から前方に検索され、一方最大ピークの半分での背面温度は119.0℃から後方に検索され、ピーク温度の差が各ピークの半値幅の合計の1.1倍以上である、明確な二峰性分布の場合、本発明のエチレン系ポリマー組成物の半値幅は、各ピークの半値幅の算術平均として計算される工程、
【0075】
(H)以下の式に従って温度の標準偏差(Stdev)を計算する工程。
【0076】
【数7】
【0077】
結晶化溶出分別(CEF)分析を利用して、実施例1~3および比較例A~Bについて分離指数を決定した。CEF温度がx…x425と表され、各xにおけるCEF信号の大きさがf(x)と表されるように、35℃~120℃の0.2℃の間隔で収集されたデータを有するCEF曲線を利用した。各点xピークを以下のように特定した。
f(xピーク)-f(xピーク-1)≧0
f(xピーク)-f(xピーク-2)≧0
f(xピーク)-f(xピーク-3)≧0
f(xピーク)-f(xピーク+1)≧0
f(xピーク)-f(xピーク+2)≧0
f(xピーク)-f(xピーク+3)≧0
【0078】
2つの値、xピーク1およびxピーク2は、xピーク2>xピーク1となるように、最大のf(x)値を有するxピーク値とした。ただ1つのピークしか存在しなかった場合、その時には定義によって分離指数S=0であり、それ以上の工程は行われないことに留意すべきである。
【0079】
からxに対して反復が行われ、x1bは、f(x)>f(xピーク1)/3となるように第1のxとして定義された。
【0080】
ピーク1からxに対して反復が行われ、x1fは、f(x)<f(xピーク1)/3となるように第1のxとして定義された。
【0081】
425からxに対して逆方向に反復が行われ、x2fは、f(x)>f(xピーク2)/3となるように第1のxとして定義された。
【0082】
ピーク2からxに対して逆方向に反復が行われ、x2bは、f(x)<f(xピーク2)/3となるように第1のxとして定義された。
【0083】
次いで、分離指数を以下の式を評価することによって決定した。
【0084】
【数8】
【0085】
この定義を利用することによって、1つの暗黙のピーク幅が複数のピークを組み込み得ることが、非常に多峰性の構造について観察され得ることに留意すべきである。狭く分布したピークについては、x2b<x1fまたはさらに<x1bであることも可能である。これらの場合の両方において、定義は、Sを減少させるであろう、これらの設計は、それぞれ過度に広いかつ過度に狭いSCBDを表すので望ましい。
【0086】
実施例1~3および比較例A~Bについてのコモノマー分布定数および分離指数を表3に報告する。
【0087】
【表3】
【0088】
実施例4~9および比較例C~Fは、以下のように形成されたキャストフィルムであった。キャストフィルムを、3つのEgan Davis-Standard modからなるEgan-Davis共押出キャストフィルムライン上で加工した。350押出機(2.5インチ、30:1L/D)および2つのEgan-Davis Standard mod。Ds-25(2インチ、30:1L/D)押出機。このラインでは、Cloeren5層二重平面供給ブロックと、0.020インチのダイ間隙のCloeren36インチEpoch III AUTOGAUGE5.1コートハンガーダイを利用した。押出機バレル温度を、一定の溶融温度を維持するために樹脂およびポンピング速度に基づいて調整した。ダイゾーン温度は、ポリマー溶融温度、約525°Fに対応した。ライン速度を、Scantech LF1-1000X線センサーフィルム測定および制御系を用いて、フィルム厚さ(0.8および0.6ミル)を制御しながら400ポンド/時での出力速度を維持することによって決定した。一次および二次の冷却ロール温度を、共に70°Fで一定に保った。全ての試料についてエアギャップを約3.5インチに維持した。エアナイフを使用してフィルムを冷却ロールに押さえつけた。
【0089】
実施例4~6および比較例C~Dは、0.8ミルの厚さを有し、それぞれ実施例1~3および比較例A~Bから形成され、実施例7~9および比較例E~Fは、0.6ミルの厚さを有し、それぞれ実施例1~3および比較例A~Bから形成された。
【0090】
実施例4~9および比較例C~Dについて、極限延伸、パレット上の穿孔、およびパレット上の引裂きを決定した。
【0091】
極限延伸を、Highlight Industriesから市販されているHighlight Test Standに従って決定した。試験を以下のように行った。フィルムロールを機械の巻き出し部分に設置し、フィルムを一組のローラーに通した。次いで、フィルムを、それがその極限延伸点に達するまで、力を増しながら巻き出した。加えられた力の量をロードセルによって測定し、フィルムに存在する延伸量を決定するために、ローラー回転速度の比を用いて計算した。フィルム幅は20インチであり、フィルムは延伸後に一定の180フィート/分のフィルム速度を維持するように巻き出した。3つ以上の試験(特定されている通り)を行って、一緒に平均して平均極限延伸値を得た。
【0092】
パレット上の引裂きを、Lantech延伸ラッパーを利用して決定した。それぞれの20インチ幅のフィルムを、250%延伸に設定された延伸ラッパー上に巻き付けた。円筒状試験パレット(直径約57インチ)を10rpmで巻きつけ、フィルムを上下に動かすのではなく、試験パレットの一定部分を巻きつけた。試験はダンサーバー「F2」設定を変え、それは7lbf~18lbfで0.5lbf単位で変更できる。パレット上の引裂きについては、試験は、機械方向に向けられたボックスカッターブレードコーナーで終わる3.5インチの長さの突出部を巻きつけ、突出部のブレード部分のみがフィルムと相互作用する。パレットを連続的に巻きつけ、フィルムが1回の巻きつけ時間(6秒)内に機械に直交方向に完全に裂けるまで、巻きつけごとにF2力を0.5lbf増加させた。そのような破損が起こらなかった最大F2力を、パレット上の引裂きとして報告した。
【0093】
パレット上の穿孔を、Lantech延伸ラッパーを利用して決定した。それぞれの20インチ幅のフィルムを、250%延伸に設定された延伸ラッパー上に巻き付けた。長方形パレット(約35×44インチ)を10rpmで巻きつけ、フィルムを上下に動かすのではなく、試験パレットの一定部分を巻きつけた。試験はダンサーバー「F2」設定を変え、それは7lbf~18lbfで0.5lbf単位で変更できる。パレットは、パレットの1つの角から(長方形の短辺に平行に)12インチの距離まで伸びる2インチ×2インチの鋼製突起部を巻きつける。プローブは中空であり、滑らかさのためにマスキングテープで覆われていた。各試行は、パレットを3回巻きつけ、プローブがフィルムを穿孔したかどうかを評価することから構成された。所与のF2力について、フィルムが6回の試行のうち少なくとも3回穿孔されなかった場合、そのフィルムはそのF2力で合格したと見なされる。合格した最大F2力(0.5lbfの間隔を用いて階段法により決定される)を、パレット上の穿孔結果として報告する。
【0094】
極限延伸、パレット上の穿孔、およびパレット上の引裂きを、実施例4~6および比較例C~Dについて決定し、表4に報告する。極限延伸、パレット上の穿孔、およびパレット上の引裂きを、実施例7~9および比較例E~Fについて決定し、表5に報告する。
【0095】
【表4】
【0096】
【表5】
【0097】
表4および5のデータは、比較例A~Bと比較して改善された分離指数をそれぞれ有するエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物実施例1~3から形成される実施例4~9が、それぞれ有利に、改善された、例えば比較例C~Dおよび比較例E~Fとそれぞれ比較してより大きな極限延伸値を有する。改善された極限延伸値は、多くの用途にとって重要な加工パラメータであり得る。

本出願は例えば以下の発明も提供する。
[1] 100~500の範囲のコモノマー分布定数(CDC)、インターポリマー組成物中に存在する1000個の総炭素原子当たり0.15個未満のビニルのビニル不飽和、1.5~5の範囲のゼロ剪断粘度比(ZSVR)、0.903~0.950g/cm の範囲の密度、0.1~15g/10分の範囲のメルトインデックス(I )、1.8~4.5の範囲の分子量分布(M /M )、および0.50~1.10の分離指数を有する、エチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物。
[2] 前記組成物が、200~400の範囲のCDCを有する、[1]に記載のエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物。
[3] 前記組成物が、0.903~0.925の範囲の密度を有する、[1]~[2]のいずれかに記載のエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物。
[4] 前記組成物が、0.1~10g/10分の範囲のメルトインデックス(I )を有する、[1]~[3]のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物。
[5] 前記組成物が、0.60~1.08の分離指数を有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物。
[6] 前記組成物が、0.60~1.05の分離指数を有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物。
[7] [1]~[6]のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィンインターポリマー組成物から形成された物品。
[8] 前記物品が、フィルムを含む、[7]に記載の物品。
[9]
前記フィルムが、0.8ミルの厚さおよび345%を超える極限延伸値を有する、[8]に記載の物品。
[10] 前記フィルムが、0.6ミルの厚さおよび295%を超える極限延伸値を有する、[8]に記載の物品。