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特許7123052粉末形態の熱可塑性ポリマーを予備含浸させた繊維材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】粉末形態の熱可塑性ポリマーを予備含浸させた繊維材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 15/14 20060101AFI20220815BHJP
   B29C 70/20 20060101ALI20220815BHJP
   B29K 105/10 20060101ALN20220815BHJP
【FI】
B29B15/14
B29C70/20
B29K105:10
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2019534205
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 FR2017053729
(87)【国際公開番号】W WO2018115737
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】1663204
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オシュステテール,ジル
(72)【発明者】
【氏名】バボー,アルチュール・ピエール
(72)【発明者】
【氏名】サバール,チボー
(72)【発明者】
【氏名】タンギー,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ユズ,ドニ
(72)【発明者】
【氏名】カプロ,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ガイヤール,パトリス
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518288(JP,A)
【文献】特開平05-154838(JP,A)
【文献】特開平08-150664(JP,A)
【文献】特開平07-040341(JP,A)
【文献】国際公開第2015/121583(WO,A1)
【文献】特表2017-507045(JP,A)
【文献】特表2017-533983(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02600585(FR,A1)
【文献】特表2019-511593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16,15/08-15/14
C08J 5/04-5/10,5/24
B29C 70/00-70/88
B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続繊維でできた繊維材料と少なくとも1種の熱可塑性ポリマーマトリックスとを含む予備含浸繊維材料の製造方法であって、前記予備含浸繊維材料が単一の一方向リボン又は複数の一方向平行リボンで作製され、前記方法が、粉末形態の前記熱可塑性ポリマーによるロービング(81a)又はいくつかの平行ロービングの形態の前記繊維材料のコアでの含浸ステップを含み、前記含浸ステップが、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマー及び前記繊維材料を用いて行われ、当該熱可塑性ポリマー粒子の体積基準のD90/D10の比が、1.5~50の範囲であり、前記繊維材料の平均直径単位繊維に対する前記熱可塑性ポリマー粒子の平均体積直径(D50)の比が、3~40の範囲であり、前記D50/単位繊維の平均直径の比が3~8である熱可塑性ポリマーによる炭素繊維製繊維材料の水性懸濁液含浸工程は除き、任意の帯電での静電工程は除
前記含浸ステップが、流動床(22)、水性分散液中での繊維の連続通過、又はスプレーガン若しくは粉体塗装ノズルを用いた噴霧によって行われ、
前記予備含浸繊維材料中の繊維含有量が、45~65体積%である、
製造方法。
【請求項2】
前記繊維材料がガラス繊維からなり、前記単位繊維の前記D50/平均直径比が、3~15の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊維材料が炭素繊維からなり、前記単位繊維の前記D50/平均直径比が、10~40の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記含浸段階が、槽(20)内の乾式流動床(22)によって行われ、前記繊維材料中の前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーマトリックスの含有量の制御が、前記粉末中の前記繊維材料の滞留時間を制御することによって行われることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記粉末中の前記滞留時間が、0.01秒から10秒の範囲であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記槽(20)が、流動床(22)を含み、前記含浸ステップが、前記ロービング(81a)又は前記いくつかのロービングを前記流動床の入口と出口との間で同時に延展しながら行われることを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記流動床が、少なくとも1つの張力デバイス(82)を備え、前記ロービング(81a)又は前記いくつかのロービングが、前記少なくとも1つの張力デバイス(82)の表面の一部又は全体と接触していることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ロービング(81a)又は前記いくつかのロービングの前記延展が、少なくとも前記少なくとも1つの張力デバイス(82)で行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの張力デバイス(82)が、凸状、凹状又は円筒状の圧縮ローラであることを特徴とする、請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの圧縮ローラが、円筒形であり、前記流動床の入口と出口との間の前記ロービング(81a)又は前記いくつかのロービングの延展パーセンテージが、1%~400%の間を占めることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項11】
単一の圧縮ローラが、流動床(22)内に存在し、前記含浸が、前記ロービング(81a)又は前記いくつかのロービングによって前記圧縮ローラの入口と前記圧縮ローラに対する垂直接線との間に形成される角度αで行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
角度αが、0~89°の範囲であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記流動床(22)内に2つの圧縮ローラR及びRが存在し、前記含浸が、前記ロービング(81a)若しくは前記いくつかのロービングによって前記圧縮ローラRの前記入口と前記圧縮ローラに対する垂直接線との間に形成される角度αで、及び/又は、前記ロービング(81a)若しくは前記いくつかのロービングによって前記圧縮ローラRの前記入口と前記圧縮ローラRに対する前記垂直接線との間に形成される角度αで行われ、前記圧縮ローラRが、(当該プロセスの進行方向において)前記圧縮ローラRに先行し、前記ロービング(81a)又は前記いくつかのロービングが、前記ローラRの上又は下を走行することができることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記2つの圧縮ローラR及びRが、前記槽(20)の最大寸法に相当する長さで0.15mm離れており、前記2つの圧縮ローラR及びRの間の高さの差が、0~前記2つの圧縮ローラの直径から差し引かれた前記槽(20)の最大高さに相当する高さであり、Rが上部圧縮ローラであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
単一の熱可塑性ポリマーマトリックスが使用され、前記熱可塑性ポリマー粉末が流動化可能であることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの加熱カレンダ(51、52、53)を使用してカレンダ加工することにより、前記含浸繊維材料の前記ロービング(81a)又は前記平行ロービングを、単一の一方向リボン又は複数の一方向平行リボンの形態に成形するステップをさらに含み、後者の場合、前記加熱カレンダが、前記リボンの数に応じて、複数のカレンダ溝(73)を備え、前記カレンダのローラ間の圧力及び/又は間隔が、閉ループシステムにより制御されることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記カレンダ加工ステップが、繊維ロービング(81a)の移動方向に対して並列及び/又は直列に接続された複数の加熱カレンダ(51、52、53)を使用して行われることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記加熱カレンダが、前記熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーの混合物中の炭素質装入物の存在と結びつけられたマイクロ波又は誘導統合加熱システムを備えることを特徴とする、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記加熱カレンダが、前記(各)カレンダ(51、52、53)の前及び/又は後に配置された急速補助加熱デバイス(41、42、43)に組合わされることを特徴とする、請求項1618のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記含浸ステップが、粉末を含浸させた後の前記単一ロービング(81a)又は前記複数の平行ロービングのコーティングステップによって完了され、前記コーティングステップが、前記カレンダ加工ステップの前に、流動床(22)内の粉末の形態の前記ポリマーと同一でも異なっていてもよい溶融熱可塑性ポリマーを用いて行われことを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記熱可塑性ポリマーが、炭素質充填剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記熱可塑性ポリマーが、液晶ポリマー若しくは環化ポリ(ブチレンテレフタレート)、又はそれらを添加剤として含有する混合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、ポリアリールエーテルケトン(PAEK);ポリアリールエーテルケトンケトン(PAEKK);芳香族ポリエーテルイミド(PEI);ポリアリールスルホン;ポリアリールスルフィド;ポリアミド(PA);PEBA、ポリアクリレート;ポリオレフィン、ポリ乳酸(PLA)、ポリビニルアルコール(PVA)、及びフッ素化ポリマー;並びにそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、ガラス転移温度Tgが≧80℃であるようなポリマー又は融点Tfが≧150℃である半結晶性ポリマーであることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記繊維材料が、炭素繊維、ガラス、炭化ケイ素、玄武岩、シリカ、天然繊維、又は前記ポリマー又は前記ポリマー混合物が非晶質である場合前記ポリマー又は前記ポリマー混合物のガラス転移温度Tgより高いTgを有し、前記ポリマー又は前記ポリマー混合物が半結晶性である場合前記ポリマー又は前記ポリマー混合物のTfより高いTgを有する非晶質熱可塑性繊維、又は前記ポリマー又は前記ポリマー混合物が非晶質である場合前記ポリマー又は前記ポリマー混合物のTgより高い融点Tfを有し、前記ポリマー又は前記ポリマー混合物が半結晶性である場合前記ポリマー又は前記ポリマー混合物のTfより高いTfを有する半結晶性熱可塑性繊維、又は前記繊維の2つ以上の混合物から選択される連続繊維を含むことを特徴とする、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の方法によって得られることを特徴とする、予備含浸繊維材料の一方向性リボン。
【請求項27】
スリットを必要としない三次元部品の製造におけるロボットによる取出しに適した幅(l)及び厚さ(ep)を有することを特徴とする、請求項26に記載のリボン。
【請求項28】
熱可塑性ポリマーが、ポリアミドであることを特徴とする、請求項26又は27に記載のリボン。
【請求項29】
ロボットを用いた前記リボンの自動取出しによる、三次元複合部品の製造に適した標準化されたリボンの製造のための、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項30】
三次元複合部品の製造における、請求項2628のいずれか一項に記載の予備含浸繊維材料のリボンの使用。
【請求項31】
前記複合部品の前記製造が、輸送分野、石油及びガス、ガス貯蔵、民間航空又は軍用、航海用、鉄道用;再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵デバイス、太陽電池パネル;熱保護パネル;スポーツ及びレクリエーション、健康及び医療、武器又はミサイル部品を使用した弾道学、セキュリティ及び電子工学に関連することを特徴とする、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
請求項2628のいずれか一項に記載の予備含浸繊維材料の少なくとも1つの一方向ストリップの使用から得られることを特徴とする、三次元複合材ピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末形態の熱可塑性ポリマーを予備含浸させた繊維材料の製造方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、予備含浸繊維材料の製造方法であって、三次元複合部品の製造に直接使用可能な、予備含浸繊維材料リボンを得るための、低減及び制御された細孔度を有する、標準化された寸法の、特にそのコアにおける予備含浸繊維材料の調製のための含浸ステップを含む方法に関する。
【0003】
本明細書において、「繊維材料」という用語は、強化繊維の集合体を指す。繊維材料は、成形される前はロービングの形態である。成形後、繊維材料はストリップ又はシートとなる。強化繊維が連続的である場合、それらの集合体は布地又は不織材料(NCF)を構成する。繊維が短い場合、それらの集合体はフェルト又は不織材料を構成する。
【0004】
そのような予備含浸繊維材料は、特に、三次元構造及び良好な機械的及び熱的性質を有する機械部品を製造するための軽量複合材料の製造を目的としている。繊維が炭素であるか、又は樹脂に適切な添加剤が充填されている場合、これらの繊維材料は静電荷を放出することができる。したがって、それらは、特に、力学、民間又は軍用の航空、並びに航海、自動車、石油及びガス、特に海洋、貯蔵ガス、エネルギー、健康及び医療、軍隊及び軍備、スポーツ及びレクリエーション、並びにエレクトロニクスの分野における部品の製造に適合する特性を有する。
【0005】
そのような予備含浸繊維材料はまた、複合材料とも呼ばれる。それらは、強化繊維によって構成された繊維材料と、含浸ポリマーで構成されるマトリックスとを含む。このマトリックスの主な役割は、強化繊維をコンパクトな形態に維持し、最終製品に所望の形状を与えることである。このマトリックスはまた、繊維間の電荷移動を確実にし、したがって、複合材の機械的強度を調整する。そのようなマトリックスはまた、強化繊維を摩耗及び攻撃的な環境から保護し、表面の外観を制御して繊維間に任意の電荷を分散させるのにも役立つ。このマトリックスの役割は、特に疲労及びクリープに関して、複合材料の長期的な挙動に重要である。
【背景技術】
【0006】
予備含浸繊維材料から製造された良質の三次元複合部品は、特に強化繊維を熱可塑性ポリマーで含浸する方法の制御によって達成される。
【0007】
本明細書において、「ストリップ」という用語は、幅が400mm以上である繊維材料のストリップを指すのに使用される。「リボン」という用語は、標準化された幅で400mm以下のリボンを指すのに使用される。
【0008】
「ロービング」という用語もまた、繊維材料を指すのに使用される。
【0009】
これまで、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーの含浸によって強化された繊維材料のストリップの製造は、特にポリマーの性質、最終的に望まれる複合材料の種類及びその用途の範囲に依存するいくつかの方法に従って行われた。例えばWO2012/066241A2において説明されているように、溶融ポリマークロスヘッド上の粉末含浸又は押出し技術は、エポキシ樹脂等の熱硬化性ポリマーで強化繊維を含浸するためにしばしば使用される。これらの技術は、一般に、熱可塑性ポリマー、特に高いガラス転移温度を有し、繊維及び半完成品又は良質完成品の十分な含浸を得るには高すぎる溶融粘度を有するものに直接適用できない。
【0010】
別の公知の含浸方法は、ポリマー粉末の水性分散液又はポリマー粒子の水性分散液又はエマルジョン若しくは水性ポリマー懸濁液中の繊維の連続通過である。例えば、EP0324680を参照することができる。この方法では、マイクロメートルサイズの粉末(約20μm)の分散液が使用される。水溶液に浸した後、繊維にポリマー粉末を含浸させる。次いでこの方法は、浸している間に吸収された水を蒸発させるために含浸した繊維を第1の炉に通すことからなる、乾燥ステップを含む。次いで、含浸され乾燥された繊維を高温で第2の加熱ゾーンに通過させる熱処理ステップが、ポリマーを溶融することでポリマーを繊維に接着させ、分散及びコーティングするために必要とされる。
【0011】
この方法の主な欠点は、時に不完全となる堆積物の均一性である。この方法に伴う別の問題は、製造コストに強く影響する乾燥時間及びエネルギー消費である。さらに、一般的に使用される粉末の粒径は細かく(典型的には体積で20μmのD50)、これはまた予備含浸リボン又はシートの最終コストを増加させる。
【0012】
さらに、この方法の乾燥ステップは、水を蒸発させることによって予備含浸繊維に多孔性を誘導する。
【0013】
次いで、予備含浸繊維材料は、例えばリボンに成形する必要がある。
【0014】
ベンゾフェノン等の有機溶媒を含有する熱可塑性ポリマー溶融物中に繊維を連続的に通過させることにより一方向繊維を含浸させる方法によって得られた繊維材料のストリップが市販されている。例えば、Imperial Chemical Industriesの米国特許第4541884号明細書を参照することができる。有機溶媒の存在によって、特に溶融混合物の粘度を適合させ、繊維の良好なコーティングを確実にすることができる。このようにして予備含浸された繊維は、次に成形される。それらは、例えば、異なる幅のストリップに切断され、次いでプレス下に置かれ、次いで、ポリマーの溶融温度より高い温度に加熱して材料の凝集を、特にポリマーの繊維への接着を確実にしてもよい。この含浸及び成形方法は、高い機械的強度を有する構造部品の製造を容易にする。
【0015】
この技術の欠点の1つは、これらの材料を得るのに必要な加熱温度にある。ポリマーの溶融温度は、特にそれらの化学的性質に依存する。溶融温度は、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)ポリマーについては比較的高く、又はポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)又はポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)についてはさらに非常に高くなり得る。したがって、加熱温度は、250℃より高い、さらに350℃より高い温度、溶媒の沸点及び引火点より高い温度に上昇することがあり、これらはそれぞれ、ベンゾフェノンの場合305℃及び150℃である。この場合、溶媒の突然の離脱があり、繊維内に高い多孔性を誘発し、したがって複合材料中に欠陥の出現を引き起こす。したがって、この方法は再現が難しく、作業者を危険にさらす爆発の危険性を伴う。最後に、有機溶媒の使用は、環境上及び健康上及び安全上の理由から避けるべきである。
【0016】
Atochem及びフランス国の共同名義で出願された文献EP0406067、並びに文献EP0201367は、ポリマー粉末の流動床を含浸するための技術を説明している。EP0406067に関しては、繊維は任意選択的にローラ又は溝付きロールによって互いに分離され、繊維はこれらのローラ又はシリンダと接触する摩擦により静電的に帯電している。この静電荷により、ポリマー粉末が繊維の表面に付着し、それによりそれらを含浸することが可能になる。
【0017】
国際公開第2016/062896号は、ロービングを接地し、粉末コーティングガンの先端又はノズルとロービングとの間に電位差を印加することによる、任意の帯電によりロービングを粉末コーティングするための静電方法を説明している。
【0018】
文献WO2008/135663は、第3の変形例において、含浸繊維リボンの製造を説明している。この文献では、繊維リボンは、含浸ステップの前に、保持によって一緒に支持された繊維リボンの形態で既に予備成形されている。このようにして予備成形されたリボンを静電気で予備帯電し、リボンをポリマーコーティング層でコーティングするために圧縮空気中に懸濁したポリマー微粒子の流動床を含む容器内に浸漬する。そのような文献は、1つ以上の繊維ロービングの含浸及び1つ以上の一方向平行リボンの形態の予備含浸ロービングの連続的な成形を容易にしていない。
【0019】
文献EP2586585は、同様に、繊維をポリマー粒子の流動床に通過させることによって繊維を含浸させる原理を説明している。しかしながら、それは、そのように含浸された1つ以上のロービングを1つ以上の一方向平行リボンの形態で連続的に成形することを説明していない。
【0020】
米国特許出願公開第2002/0197397号は、ポリマー粉末の混合物を繊維に含浸させる方法を説明しており、前記混合は、事前の配合なしに流動床内で直接行われる。
【0021】
国際公開第2015/121583号は、流動床への前記材料の含浸及び前記ロービングのホットカレンダ加工によって予備含浸繊維材料を製造する方法を説明している。
【0022】
ホットカレンダ加工は、含浸デバイスの下流で行われ、ポリマー分布及び繊維の含浸を均質化することを可能にする。得られる多孔性は制御され、再現性があるが、定量化されていない。
【0023】
国際公開第2012/164014号は、熱可塑性又は熱硬化性であってもよいポリマーマトリックスを粉末で含浸する方法を説明している。
【0024】
含浸後、ストリップを加熱し、次いで各面を加熱によって不織ポリマー繊維で被覆する。
【0025】
D90/D10比は、熱硬化性樹脂の使用に関してのみ提供されている。
【0026】
フランス特許第2600585号明細書は、繊維径が5~10ミクロンであるガラス繊維、炭素繊維、ケブラーのロービングを流動床で予備含浸する方法であって、前記ロービングをまずローラで延展して繊維を分離し、次いで前記延展されたロービングを、平均直径がフィラメントの直径に対応する限界内にあるプラスチック粒子で構成される流動床内に通過させる方法を開示している。
【0027】
Millerらによる論文「熱可塑性マトリックス複合材のための含浸技術」(Polymers and Polymer Composites、Rapra Technology、第4巻、第7号、1996年1月1日、459~481ページ)は、特に粉末形態のポリマーを使用する流動床内でロービングを予備含浸するための様々な方法を説明しているが、粉末中のロービングの滞留時間も、粉末粒子の体積直径D50も言及されていない。
【0028】
文献EP0335186は、電磁放射線防護用の成形体の製造に使用される、予備含浸金属繊維を含む複合材を圧密するためのカレンダ又はプレスを使用する可能性を説明している。この文献は、1つ以上の繊維ロービングを含浸し、それらをホットカレンダ加工によって1つ以上の一方向平行リボンに連続的に成形することを開示していない。
【0029】
ロボットを用いた自動取出しによる三次元複合部品の製造に適した標準化されたストリップの形態の予備含浸繊維材料の成形は、一般に後処理で行われる。
【0030】
このように、文献国際公開第92/20521号は、熱可塑性粉末の粒子の流動床を通過させることによって繊維のロービングを含浸する可能性を説明している。このようにポリマー粒子でコーティングされた繊維は、ポリマーがよく浸透して繊維を被覆するように炉又はヒーターで加熱される。得られた予備含浸繊維強化材の後処理は、研磨ローラの組にそれを通過させ、まだ液体のマトリックスでの含浸を改善することによって行うことができる。また、1つ以上の重ねられた繊維強化材が、ストリップを形成するために2つのローラ間に配置され得る。そのような文献は、1つ以上の繊維ロービングを含浸させること、及び1つ以上の一方向平行リボンの形態の予備含浸ロービングを連続的に成形することを可能にしていない。
【0031】
予備含浸繊維材料のリボンの品質、ひいては最終複合材料の品質は、繊維の含浸の均一性、したがって予備含浸繊維材料の多孔性の制御及び再現性だけでなく、最終的なリボンのサイズ、より具体的には幅及び厚さにも依存する。これらの二次元パラメータの均一性及び制御は、材料の機械的強度を改善する。
【0032】
現在、繊維材料の含浸に使用される工程に関係なく、幅の狭い、すなわち400mm幅未満のリボンの製造は、一般に、シートとも呼ばれる400mm幅を超える幅のスリット加工(すなわち切断)を必要とする。このようにして寸法決めされたリボンは、次いでヘッドを使用してロボットによって堆積されるために戻される。
【0033】
さらに、シートロールの長さが1kmを超えず、切断後に得られるリボンは一般に、ロボットによる取出し中にいくつかの大きな複合部品を製造するのに十分な長さではない。したがって、リボンは、より長い長さを得るために隣接しなければならず、余分な厚さが生じる。不均質な外観を導くこれらの余分な厚さは、前記複合部品を構成する良質の複合材料を得るのに弊害となる。
【0034】
さらに、これらの余分な厚さは、ダウンタイム及びロボットの再起動を必要とし、したがって時間と生産性の損失を招く。
【0035】
したがって、繊維材料を含浸させ、標準化されたリボンの形態で予備含浸させたそのような繊維材料を成形するための現在の技術は、いくつかの欠点を有する。例えば、熱可塑性ポリマーの溶融混合物をダイ内及びダイ出口で材料のコアまで均一に加熱することは困難であり、これは含浸品質を変化させる。さらに、含浸ダイのレベルでの繊維とポリマーの溶融混合物との間の既存の温度の差もまた、含浸の品質及び均質性を変化させる。さらに、この含浸溶融物のモードでは、特に高性能複合材料を得るのに必要である高いガラス転移温度を有する場合、熱可塑性樹脂の高い粘度のために高い繊維含有量又は高い製造速度を得ることが可能とならない。有機溶媒の使用は通常、材料中の欠陥の出現、並びに一般に環境、健康及び安全上のリスクを伴う。ストリップの形態の予備含浸繊維材料の高温後処理による成形は、繊維内のポリマーの均一な分布を必ずしも容易にするわけではないために依然として困難であり、それにより、多孔性の制御に乏しいより低品質の材料が得られる。標準化されたリボンを得るためのシートのスリット加工及びこれらのリボンの接合は、追加の製造コストをもたらす。スリット加工はまた、ロボットによる取出しに使用される予備含浸繊維材料のリボンを汚染する重大な粉塵問題を生じさせ、ロボットの誤動作及び/又は複合材料の不完全性を引き起こす可能性がある。これは潜在的に、ロボット修理コスト、生産停止及び不適合製品の廃棄につながる。最後に、スリット加工工程中に、かなりの量の繊維が劣化し、予備含浸繊維材料のリボンの特性の喪失、特に機械的強度及び導電性の低下を引き起こす。
【0036】
さらに、含浸は常に中心部で行われるわけではなく、上記の引用文献が徹底的な含浸を示している場合、得られる多孔性は、特に上記の用途には高すぎるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【文献】国際公開第2012/066241号
【文献】欧州特許出願公開第0324680号明細書
【文献】米国特許第4541884号明細書
【文献】欧州特許第0406067号明細書
【文献】欧州特許第0201367号明細書
【文献】国際公開第2016/062896号
【文献】国際公開第2008/135663号
【文献】欧州特許第2586585号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/0197397号明細書
【文献】国際公開第2015/121583号
【文献】国際公開第2012/164014号
【文献】仏国特許発明第2600585号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0335186号明細書
【文献】国際公開第92/20521号
【非特許文献】
【0038】
Millerらによる論文「熱可塑性マトリックス複合材のための含浸技術」(Polymers and Polymer Composites、Rapra Technology、第4巻、第7号、1996年1月1日、459~481ページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
したがって、本発明は、従来技術の欠点の少なくとも1つを改善することを目的としている。本発明は特に、含浸デバイス内での滞留時間の制御を前記デバイスでの前記繊維材料の延展の制御に関連付ける含浸技術による予備含浸繊維材料の製造方法を提供することを目的とし、また、最終複合部品の性能が左右される、低減され、制御され、また再現性のある多孔性を有する、特にコアにおける繊維の含浸及び寸法を制御することを示す予備含浸繊維材料を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0040】
これに関して、本発明の主題は、連続繊維でできた繊維材料と少なくとも1種の熱可塑性ポリマーマトリックスとを含む予備含浸繊維材料の製造方法であって、ロービング又はいくつかの平行ロービングの形態の前記繊維材料の特にコアにおける、粉末の形態で存在する少なくとも1種の熱可塑性ポリマーマトリックスへの含浸ステップを含む方法である。
【0041】
本発明はまた、上で規定されたような方法によって得られることを特徴とする、予備含浸繊維材料の一方向性リボン、特にリールに巻かれたリボンに関する。
【0042】
本発明は、さらに、三次元部品の製造における上記で規定されたようなリボンの使用に関する。前記複合部品の前記製造は、輸送分野、特に自動車、石油及びガス、特に海洋、ガス貯蔵、民間又は軍用航空、航海用、鉄道用;再生可能エネルギー、特に風力タービン、潮力タービン、エネルギー貯蔵デバイス、太陽電池パネル;熱保護パネル;スポーツ及びレクリエーション、健康及び医療、武器又はミサイル部品を使用した弾道学、セキュリティ及び電子工学に関連する。
【0043】
本発明はまた、上記で規定されたような予備含浸繊維材料の少なくとも1つの一方向リボンの使用から得られることを特徴とする、三次元複合部品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、連続繊維でできた繊維材料と少なくとも1種の熱可塑性ポリマーマトリックスとを含む予備含浸繊維材料の製造方法であって、前記予備含浸繊維材料が単一の一方向リボン又は複数の一方向平行リボンで作製され、前記方法が、粉末形態の前記熱可塑性ポリマーによるロービング又はいくつかの平行ロービングの形態の前記繊維材料の、特にコアでの含浸ステップを含み、前記含浸ステップが、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマー及び前記繊維材料を用いて行われ、熱可塑性ポリマー粒子の体積基準のそのD90/D10の比は、1.5~50、特に2~10の範囲であり、前記繊維材料の平均直径単位繊維に対する熱可塑性ポリマー粒子の平均体積直径(D50)の比は、3~40の範囲であり、前記D50/単位繊維の平均直径の比が3~8である熱可塑性ポリマーによる炭素繊維製繊維材料の水性懸濁液含浸工程は除き、任意の帯電での静電工程は除く、製造方法を提供する。
【0045】
本発明者らは、予想外にも、一方で、粉末中の滞留時間の制御滞留時間の制御によって、特にコアにおいて十分に制御された粉末(樹脂)比での繊維材料への熱可塑性ポリマーマトリックスの含浸が容易になることを見出し、また他方で、25μmのD50未満では、粒子のサイズは、特にローラの入口のガン又は粉末コーティングノズルによって流動化又は正確に射出するには小さすぎ、これにより実装性が低下し、したがって含浸が悪いことを見出した。
【0046】
ポリマーマトリックス
熱可塑性物質、又は熱可塑性ポリマーは、一般に、周囲温度で半結晶性又は非晶質であってもよい固体であり、また特にそのガラス転移温度(Tg)を過ぎた後の温度上昇中に軟化し、非晶質の場合はより高い温度で流動し、半結晶性の場合はその溶融温度(Tf)の経過時に純粋な融解を示すことができ、結晶化温度未満の温度(半結晶性の場合)及びそのガラス転移温度未満の温度(非晶質の場合)での低下中に再び固体となる材料を意味すると理解される。
【0047】
Tg及びTfは、それぞれ11357-2:2013及び11357-3:2013規格に従って、示差走査熱量測定(DSC)によって求められる。
【0048】
繊維材料の含浸マトリックスを構成するポリマーは、有利には熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーの混合物である。このポリマー又は熱可塑性ポリマーの混合物は、それが槽等のデバイス、特に流動床において使用され得るように、粉末形態に粉砕される。
【0049】
槽の形態のデバイス、特に流動床のデバイスは、開放型でも閉鎖型でもよい。
【0050】
任意選択的に、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーブレンドは、炭素質充填剤、特にカーボンブラック又はカーボンナノ充填剤、好ましくはカーボンナノ充填剤、特にグラフェン及び/又はカーボンナノチューブ及び/又はカーボンナノフィブリル又はそれらの混合物から選択されるものをさらに含む。これらの装入物は、電気及び熱の伝導を促進し、その結果、ポリマーマトリックスが加熱されたときのその潤滑性を改善する。
【0051】
任意選択的に、前記熱可塑性ポリマーは、特に触媒、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、光安定剤、潤滑剤、充填剤、可塑剤、難燃剤、核形成剤、鎖延長剤及び染料又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。
【0052】
別の変形例によれば、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーブレンドは、液晶ポリマー又は環化ポリ(ブチレンテレフタレート)、又はCYCLICS CORPORATIONによって市販されているCBT100樹脂という混合物、をさらに含んでもよい。これらの化合物は、繊維のコアへのより良好な浸透のために、特に溶融状態のポリマーマトリックスの流動化を促進する。含浸マトリックスを製造するのに使用されるポリマー、又は熱可塑性ポリマーの混合物の性質、特にその溶融温度に応じて、これらの化合物のいずれかが選択されるであろう。
【0053】
繊維材料の含浸マトリックスの一部を形成する熱可塑性ポリマーは、以下から選択することができる:
-脂肪族、脂環式ポリアミド(PA)又は半芳香族PA(ポリフタルアミド(PPA)としても知られる)のファミリーのポリマー及びコポリマー、
-ポリ尿素、特に芳香族、
-ポリアクリレート、より具体的にはポリメチルメタクリレート(PMMA)又はその誘導体等のアクリルのファミリーのポリマー及びコポリマー、
-ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のポリアリールエーテルケトン(PAEK)、又はポリエーテルケトンケトン(PEKK)等のポリアリールエーテルケトンケトン(PAEKK)、又はそれらの誘導体のファミリーのポリマー及びコポリマー、
-芳香族ポリエーテルイミド(PEI)、
-ポリアリールスルフィド、特にポリフェニレンスルフィド(PPS)、
-ポリアリールスルホン、特にポリフェニレンスルホン(PPSU)、
-ポリオレフィン、特にポリプロピレン(PP)、
-ポリ乳酸(PLA)、
-ポリビニルアルコール(PVA)、
-フッ素化ポリマー、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)若しくはポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、
並びにそれらの混合物。
【0054】
有利には、前記熱可塑性ポリマーが混合物である場合、これは「ドライブレンド」若しくは化合物によって以前に得られた粉末形態で槽に添加されるか、又は「ドライブレンド」の形態で直接槽に添加される。
【0055】
有利には、これは「ドライブレンド」によって以前に得られた粉末形態で槽に添加されるか、又は「ドライブレンド」の形態で直接槽に添加され、混合物はPEKKとPEIの混合物である。
【0056】
有利には、前記ポリマーが2種のポリマーP1及びP2の混合物である場合、ポリマーP1及びP2の重量割合は1-99%~99-1%の範囲である。
【0057】
有利には、PEKK/PEI混合物は、重量基準で90~10%対60~40%、特に90~10%対70~30%の範囲である。
【0058】
熱可塑性ポリマーは、繊維材料を含浸する非反応性最終ポリマー、又は同じく繊維材料を含浸するが含浸後、又は連鎖延長剤を用いて、特に加熱カレンダでの加熱中に反応性プレポリマーによって担持される鎖の末端に応じてそれ自体で又は別のプレポリマーと反応することができる反応性プレポリマーであってもよい。
【0059】
第1の可能性によれば、前記プレポリマーは、同じ鎖上(すなわち、同じプレポリマー上)に担持される少なくとも1つの反応性(ポリアミド)プレポリマーを含むかそれらからなってもよく、2つの末端官能基X’及びY’官能基は、それぞれ縮合により共反応し、より具体的には、X’及びY’は、それぞれアミン及びカルボキシ又はカルボキシ及びアミンである。第2の可能性によれば、前記プレポリマーは、相互反応性であり、それぞれ2つの同じ末端官能基X’又はY’(同じプレポリマーでは同一であり、2種のプレポリマー間では異なる)を有する少なくとも2つのポリアミドプレポリマーを含むか又はそれらからなってもよく、プレポリマーの前記官能基X’は、特に縮合によって、他のプレポリマーの前記官能基Y’とのみ反応することができ、より具体的には、X’及びY’は、それぞれアミン及びカルボキシ、又はカルボキシ及びアミンである。
【0060】
第3の可能性によれば、前記プレポリマーは、-NH2、-CO2H及び-OH、好ましくはNH2及び-CO2Hから選択されるn個の末端反応性官能基Xを有する前記熱可塑性ポリアミドポリマーの少なくとも1種のプレポリマーを含むか又はそれらからなってもよく、nは、1~3、好ましくは1~2、より好ましくは1又は2、より具体的には2であり、非ポリマー構造の少なくとも1種の鎖延長剤Y-A’-Y(A’は炭化水素ビラジカルである)は、好ましくは500未満、より好ましくは400未満の分子量の前記プレポリマーa1)の少なくとも1つの官能基Xとの重付加によって反応する、2つの同一の末端反応性官能基Yを有する。
【0061】
熱可塑性マトリックスの前記最終ポリマーの数平均分子量Mnは、好ましくは10,000~40,000、好ましくは12,000~30,000の範囲である。これらのMn値は、ISO 307:2007に従ってm-クレゾール中で測定されるが、溶媒を変更することにより0.8以上の固有粘度に対応することができる。(硫酸の代わりにm-クレゾールを使用し、温度は20℃である)
【0062】
上記の2つの選択肢による前記反応性プレポリマーは、500~10,000、好ましくは1,000~6,000、特に2,500~6,000の範囲の数平均分子量Mnを有する。
【0063】
Mn値は、特に、溶液中の電位差滴定によって測定された末端官能基の割合及び前記プレポリマーの官能価からの計算によって測定される。また、Mn質量は、サイズ排除クロマトグラフィー又はNMRによって測定することができる。
【0064】
ポリアミドの定義に使用される命名法は、ISO1874-1:2011「プラスチック-成形及び押出用ポリアミド(PA)材料-パート1:名称」、特に3ページ(表1及び2)に記載されており、また当業者に周知である。
【0065】
ポリアミドはホモポリアミド、コポリアミド又はそれらの混合物であってもよい。
【0066】
有利には、マトリックスを構成するポリマーは、ポリアミド(PA)、特に脂肪族ポリアミド、特にPA11及びPA12、脂環式ポリアミド、並びに尿素単位で任意選択的に修飾された半芳香族ポリアミド(ポリフタルアミド)及びそのコポリマー、ポリメチルメタクリレート(PPMA)及びそのコポリマー、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素化ポリマーから選択される。
【0067】
フルオロポリマーについては、フッ化ビニリデンのホモポリマー(式CH=CFのVDF)、又は少なくとも50重量%のVDF及びVDFと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーを含むVDFコポリマーである。特に熱的及び化学的ストレスに供された場合に構造部品に良好な機械的強度を保証するためには、VDF含有量は、80重量%超でなければならず、さらにより良好には90重量%でなければならない。コモノマーは、フッ素化モノマー、例えばフッ化ビニルであってもよい。
【0068】
高温に耐えなければならない構造部品には、フッ素化ポリマーに加えて、PAEK(ポリアリールエーテルケトン)、例えばポリエーテルケトンPEK、ポリエーテルエーテルケトンPEEK、ポリエーテルケトンケトンPEKK、ポリエーテルエーテルケトンエーテルケトンケトンPEKEKK又は高温ガラス転移PA Tgが、本発明に従って有利に使用される。
【0069】
有利には、前記熱可塑性ポリマーは、そのガラス転移温度がTg≧80℃であるようなポリマー、又はその融点がTf≧150℃である半結晶性ポリマーである。
【0070】
有利には、前記熱可塑性ポリマーは、
ポリアミド6(PA-6)、ポリアミド11(PA-11)、ポリアミド12(PA-12)、ポリアミド66(PA-66)、ポリアミド46(PA-46)、ポリアミド610(PA-610)、ポリアミド612(PA-612)、ポリアミド1010(PA-1010)、ポリアミド1012(PA-1012)、又はそれらの混合物若しくはそれらのコポリアミドから選択される脂肪族ポリアミド、
式A/XTの半芳香族ポリアミドを含む、EP1505099に記載されているような、尿素単位で任意選択的に修飾された半芳香族ポリアミド、特に式X/YArの半芳香族ポリアミドであり、式中、Aは、アミノ酸から得られる単位、ラクタムから得られる単位、及び式(Caジアミン)。(Cb二酸)を有する単位から選択され、aは、ジアミンの炭素原子の数を表し、bは、二酸の炭素原子の数を表し、a及びbは、それぞれ4~36の間、有利には9~18の間であり、単位(Caジアミン)は、直鎖又は分岐状脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、及びアルキル芳香族ジアミンから選択され、(Cb二酸)単位は、直鎖又は分岐状二酸、脂環式二酸及び芳香族二酸から選択され;
XTは、Cx中のジアミンとテレフタル酸との重縮合から得られる単位を指し、xは、Cx中のジアミンの炭素原子数を表し、xは、6~36の間、有利には9~18の間であり、特に式A/6T、A/9T、A/10T又はA/11Tのポリアミド(Aは、上で規定された通りである)、特にポリアミドPA6/6T、66/6T、6I/6T、MPMDT/6T、PA11/10T、11/6T/10T、MXDT/10T又はMPMDT/10T、BACT/10T、MXD6及びMXD10、並びにブロックコポリマー、特にポリアミド/ポリエーテル(PEBA)である。
【0071】
Tは、テレフタル酸であり、MXDは、m-キシリレンジアミンであり、MPMDは、メチルペンタメチレンジアミンであり、BACは、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンである。
【0072】
繊維材料:
前記繊維材料の構成繊維に関して、構成繊維は、特に無機物、有機物又は植物起源の繊維である。無機物起源の繊維は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、又は炭化ケイ素繊維を含み得る。有機物起源の繊維は、例えば、半芳香族ポリアミド繊維、アラミド繊維又はポリオレフィン繊維等の熱可塑性又は熱硬化性ポリマーベースの繊維を含み得る。好ましくは、それらは非晶質熱可塑性ポリマーをベースとし、含浸マトリックスが非晶質である場合は含浸マトリックスの構成のポリマー若しくは熱可塑性ポリマー混合物のガラス転移温度Tgより高い、又は含浸マトリックス構成が半結晶性である場合は含浸マトリックス構成の熱可塑性ポリマー若しくは混合物のTfより高いTgを有する。有利には、それらは半結晶性熱可塑性ポリマーをベースとし、含浸マトリックスが非晶質である場合は含浸マトリックスの構成のポリマー若しくは熱可塑性ポリマー混合物のTgより高い、又は含浸マトリックス構成が半結晶性である場合は含浸マトリックス構成の熱可塑性ポリマー若しくは混合物の融点Tfより高いTfを有する。したがって、最終複合材の熱可塑性マトリックスを含浸する間に、繊維材料を構成する有機繊維が融着するリスクはない。植物起源の繊維は、亜麻、麻、リグニン、竹、絹、特にクモ糸、サイザル、及び他のセルロース系繊維、特にビスコース繊維をベースとする天然繊維を含み得る。これらの植物ベース繊維は、熱可塑性ポリマーマトリックスの接着及び含浸を容易にするために、純粋な状態で使用するか、コーティング層で処理するか、又はコーティングすることができる。
【0073】
繊維材料はまた、繊維で編まれた又は織布であってもよい。
【0074】
繊維材料はまた、保持糸を有する繊維にも対応し得る。
【0075】
これらの構成繊維は、単独で、又は組合わせて使用され得る。したがって、有機繊維を無機繊維と混合して熱可塑性ポリマーを含浸させ、予備含浸繊維材料を形成することができる。
【0076】
有機繊維ロービングは、いくらかの重量を有し得る。それらはまた、いくつかの形状を有し得る。繊維は、短繊維の形態であってもよく、これが次いでストリップ、シート若しくはピースの形態であってもよいフェルト若しくは不織布を構成し、又は、連続繊維の形態であってもよく、これが2D布地、組紐又は一方向(UD)若しくは不織繊維を構成する。繊維材料を構成する繊維は、異なる形状のこれらの強化繊維の混合物の形態であってもよい。好ましくは、繊維は連続的である。
【0077】
好ましくは、繊維材料は、炭素、ガラス若しくは炭化ケイ素の連続繊維又はそれらの混合物、特に炭素繊維により構成される。それはロービング又はいくつかのロービングの形態で使用される。
【0078】
有利には、前記繊維材料はガラス繊維からなり、単位繊維の前記D50/平均直径比は、3~15、特に3~10の範囲である。
【0079】
特に、前記繊維材料はガラス繊維からなり、単位繊維の前記D50/平均直径比は、4~15、特に4~10の範囲である。
【0080】
有利には、前記繊維材料は、炭素繊維で構成され、単位繊維の前記D50/平均直径比は、10~40の範囲である。
【0081】
「すぐに使用可能な」材料としても知られる予備含浸材料では、ポリマー又は熱可塑性含浸ポリマーの混合物は、繊維の周囲に均一及び均質に分布している。この種の材料では、最少量の多孔性、すなわち繊維間の最少量の空隙を得るために、熱可塑性含浸ポリマーを繊維内に可能な限り均質に分布させなければならない。実際、この種の材料中に多孔性が存在すると、例えば機械的引張応力の間に応力下に置かれた場合に集中点として作用する可能性があり、次いで応力集中点は予備含浸繊維材料の破壊開始点を形成し、繊維材料を機械的に弱くする。したがって、ポリマー又はポリマー混合物の均質な分布は、これらの予備含浸繊維材料から形成された複合材料の機械的強度及び均質性を向上させる。
【0082】
したがって、「すぐに使用可能な」予備含浸材料の場合、前記含浸繊維材料中の繊維の含有量は、45~65体積%、好ましくは50~60体積%、特に54~60体積%である。
【0083】
含浸速度の測定は、画像分析(特に顕微鏡又はカメラ又はデジタルカメラの使用)、リボンの横断面、ポリマーを含浸させたリボンの表面を生成物の総表面積(含浸された表面積+多孔質の表面積)で割ることによって行うことができる。良質の画像を得るためには、その横断方向に切断されたリボンを標準の研磨樹脂で被覆し、顕微鏡の最低6倍の倍率での試料の観察を可能にする標準のプロトコルで研磨することが好ましい。
【0084】
有利には、前記予備含浸繊維材料の多孔率は、0%~30%、特に1%~10%、特に1%~5%である。
【0085】
多孔率は、独立多孔率に対応し、電子顕微鏡法によって、又は本発明の実施例の項に記載されているように前記予備含浸繊維材料の理論密度と実験密度との間の相対差として測定することができる。
【0086】
含浸段階:
前記含浸ステップは、粉末堆積、流動床、繊維を水性分散液中に連続的に通過させること、又はロール入口でスプレーガン若しくは粉末化ノズルを用いて噴霧することにより行われる。
【0087】
有利には、含浸ステップは、含浸槽内の流動床によって行われる。
【0088】
含浸槽において流動床製造方法を実施するための例示的なユニットは、国際特許出願公開第2015/121583号において説明されており、槽(他に含浸槽とも呼ばれ、本発明の場合には、圧縮ローラ(図4)であってもよい張力デバイス(図3)を備えた流動床を備える)を除いて図1に表される。
【0089】
圧縮ローラは、固定式でも回転式でもよい。
【0090】
繊維材料の含浸ステップは、特にポリマー粉末の流動床(22)を備える槽(20)を備える連続含浸デバイスに、1つ以上のロービングを通過させることによって実施される。
【0091】
ポリマー又はポリマー粉末は、ガスG(例えば空気)中に懸濁され、槽に導入されて、ホッパ21を通して槽内を循環する。ロービングは、この流動床22内を循環する。
【0092】
槽は、任意の形状、特に円筒形又は平行六面体形状、特に直方体又は立方体形状、有利には直方体形状を有してもよい。
【0093】
槽は開放型又は閉鎖型槽であってもよい。有利には、槽は開放型である。
【0094】
槽が閉鎖型である場合には、槽は、ポリマー粉末が前記槽から出てくるのを防ぐために、シーリングシステムを備えている。
【0095】
したがって、この含浸ステップは乾式で行われ、すなわち、熱可塑性ポリマーマトリックスは粉末形態であり、特にガス、特に空気中に懸濁しているが、溶媒又は水中に分散できない。
【0096】
含浸される各ロービングは、シリンダ(図示せず)によって生成された牽引力下でデバイス(10)のリール(11)から巻き解かれる。好ましくは、デバイス(10)は、複数のリール(11)を備え、各リールは、含浸のためにロービングを巻き解くためのものである。したがって、いくつかの繊維ロービングを同時に含浸することが可能である。各リール(11)は、各繊維ロービングに張力を印加するためにブレーキ(図示せず)を備えている。この場合、整列モジュール(12)は、繊維ロービングを互いに平行に配置することを可能にする。このようにして、繊維ロービングは互いに接触することができず、これは、それらの間の摩擦による繊維の機械的劣化を防ぐのを助ける。
【0097】
次いで、繊維ロービング又は平行繊維ロービングは、図1の場合には圧縮ローラ(23)である張力デバイスを備えた、特に流動床(22)を備える槽(20)に入る。次いで、繊維ロービング又は平行繊維ロービングは、粉末中の滞留時間の制御下での含浸後に槽から出現する。
【0098】
したがって、本発明者らは、予想外にも、粉末中の滞留時間の制御によって、繊維材料に熱可塑性ポリマーマトリックスを、十分に制御された樹脂含有量で含浸することが可能になることを見出した。
【0099】
本発明者らはまた、少なくとも1つの張力デバイスを使用することにより、先行技術の方法と比較して含浸が改善されること、特に含浸がコアでの含浸であることを見出した。
【0100】
張力デバイスは、ロービングが槽内でスクロールする能力を有する任意のシステムを指す。張力デバイスは、ロービングがスクロールできる瞬間から、任意の形状をとることができる。
【0101】
本発明の範囲を限定することなく、張力デバイスの例を図3に詳述する。
【0102】
この含浸は、ポリマー粉末を繊維ロービングのコアに浸透させ、槽からの粉末含有ロービングの搬出を支持するのに十分に繊維に付着させるために行われる。粉末を予備含浸させたロービングは、次いで、カレンダ加工の前に予備加熱し、及び任意選択的にカレンダ加工後に加熱することができる加熱カレンダ加工デバイスに誘導される。
【0103】
任意選択的に、この含浸ステップは、ちょうど流動床粉末(20)含浸槽(22)の出口で、及びカレンダ加工成形ステップの直前に、含浸ロービングを被覆するステップによって完了することができる。この目的のために、EP0406067において説明されているように、槽(20)(流動床22)の排出ハッチを、カバークロスヘッドを備えてもよいコーティングデバイス(30)に接続することができる。オーバーレイポリマーは、流動床ポリマー粉末と同じ又は異なっていてもよい。好ましくは、オーバーレイポリマーは、同じ性質のものである。そのようなコーティングは、所望の範囲内の最終ポリマー体積率を得るため、及び複合部品の製造中のタップ溶接に干渉するであろう過剰に高い繊維含有量の予備含浸ロービングの表面上の存在を回避するため、特に「すぐに使用可能な」良質の繊維材料を得るためだけでなく、得られる複合材料の性能を改善するために、繊維含浸段階の完了を促進する。
【0104】
上記のような本発明の方法は、任意の帯電における静電的工程を除いて、乾式法によって行われる。
【0105】
「任意の帯電における」という表現は、繊維材料と粉末との間に電位差が印加されることを意味する。帯電は、顕著に制御及び増幅される。次いで、粉末粒子は、帯電した粉末を繊維の反対側に引き付けることによって繊維材料に含浸する。粉末は、異なる手段(2つの金属電極間の電位差、金属部分の機械的摩擦等)によって負又は正に帯電させることができ、繊維を逆に(正又は負に)帯電させることができる。
【0106】
本発明の方法は、槽の前又はそのレベルで実装ユニット要素上の繊維材料の摩擦によって現れ得るが、いずれにせよ意図しない帯電である静電荷の存在を排除するものではない。
【0107】
有利には、前記含浸繊維材料中の繊維の含有量は、45~65体積%、好ましくは50~60体積%、特に54~60体積%である。
【0108】
45%未満の繊維では、強化は機械的特性の観点から必要ではない。
【0109】
65%を超えると、工程限界に達し、機械的特性が失われる。
【0110】
ガラス繊維等の繊維材料がサイジングを有する場合、繊維材料が槽に入る前に、任意選択の脱サイジングステップを実施することができる。「サイジング」という用語は、ダイの端部(生地サイズ)及び布地(プラスチックサイジング)で強化繊維に適用される表面処理を指す。
【0111】
ダイの出口でフィラメントに適用される「テキスタイル」サイズは、それらの間のフィラメントの結合を確実にし、摩耗を低減してその後の操作(織り、ドレーピング、編み)を容易にし、また静電荷の形成を防止する結合剤の付着からなる。
【0112】
布地に適用される「プラスチック」又は「仕上げ」サイズは、架橋剤の付着からなり、架橋剤の役割は、繊維と樹脂との間の物理化学的結合を確実にし、繊維をその環境から保護することである。
【0113】
有利には、前記含浸繊維材料中の繊維の含有量は、50~60体積%、特に54~60体積%の範囲である。
【0114】
有利には、粉末中の滞留時間は、0.01秒から10秒、好ましくは0.1秒から5秒、特に0.1秒から3秒の範囲である。
【0115】
粉末中の繊維材料の滞留時間は、特に前記繊維材料のコアにおける含浸に必須である。
【0116】
0.1秒未満では、含浸はコアにとって良好でない。
【0117】
10秒を超えると、繊維材料を含浸するポリマーマトリックスの含有量が高すぎ、予備含浸繊維材料の機械的特性が低くなる。
【0118】
有利には、本発明の方法において使用される槽は、流動床を備え、前記含浸段階は、前記ロービングを前記流動床の入口と出口との間で同時に延展しながら行われる。
【0119】
「流動床入口」という表現は、流動床を備える槽の端部の垂直接線に対応する。
【0120】
「流動床の出口」という表現は、流動床を備える槽の他方の端部の垂直接線に対応する。
【0121】
槽の幾何学的形状に応じて、槽の入口と出口との間の距離は、円筒の場合には直径に、立方体の場合には辺に、又は直方体の場合には幅若しくは長さに対応する。延展は、前記ロービングの各構成フィラメントをそれを密接に取り囲む他のフィラメントからできるだけ多く選び出すことからなる。これは、ロービングの横方向の延展に対応する。
【0122】
換言すれば、流動床(又は流動床を備える槽)の入口と流動床(又は流動床を備える槽)の出口との間の横方向の延展又はロービングの幅が増加し、したがって特に繊維材料のコアにおける含浸の改善を可能にする。
【0123】
流動床は、開放型又は閉鎖型であってもよく、特に流動床は開放型である。
【0124】
有利には、流動床は、少なくとも1つの張力デバイスを備え、前記ロービングは、前記少なくとも1つの張力デバイスの表面の一部又は全体と接触している。
【0125】
図3は、高さ調節可能で高さ調節可能な張力デバイス(82)を有する流動床(22)を備える槽(20)を詳細に示す。
【0126】
ロービング(81a)は、前記少なくとも1つの張力デバイスの一部又は全体の表面と接触しており、したがって張力デバイス(82)の表面上を部分的又は完全にスクロールする含浸前のロービングに対応し、前記システム(82)は、含浸が行われる流動床に浸漬される。次いで、前記ロービングは、粉末中の滞留時間を制御した後、槽を出る(81b)。
【0127】
前記ロービング(81a)は、回転若しくは固定ローラ又は平行六面体の縁部であってもよい槽の縁部(83a)と接触してもよい、又は接触しなくてもよい。
【0128】
有利には、前記ロービング(81a)は、槽の縁部(83a)と接触している、又は接触していない。
【0129】
有利には、槽の縁部(83b)は、特に円筒形で回転式のローラである。
【0130】
前記ロービング(81b)は、ローラ、特に円筒形で回転式又は固定式ローラ、又は平行六面体の縁部であってもよい槽の縁部(83b)と接触してもよい、又は接触しなくてもよい。
【0131】
有利には、前記ロービング(81b)は、槽の縁部(83b)と接触している。
【0132】
有利には、槽の縁部(83b)は、特に円筒形で回転式のローラである。
【0133】
有利には、前記ロービング(81a)は、槽の縁部(83a)と接触し、槽の縁部(83b)は、特に円筒形で回転式のローラであり、前記ロービング(81b)は、槽の縁部(83b)と接触し、槽の縁部(83b)はローラであり、特に円筒形で回転式である。
【0134】
有利には、前記張力デバイスは、前記ロービングの方向に対して垂直である。
【0135】
有利には、前記ロービングの延展は、少なくとも、前記少なくとも1つの張力デバイスで行われる。
【0136】
したがって、ロービングの延展は、主に張力デバイスのレベルであるが、ロービングと前記縁部の間に接触がある場合には槽の縁部でも行うことができる。
【0137】
別の実施形態では、前記少なくとも1つの張力デバイスは、凸状、凹状又は円筒状の圧縮ローラである。
【0138】
凸形態は延展に有利であるが、凹形態は延展に不利であるものの、関係なく実行される。
【0139】
「圧縮ローラ」という表現は、ロールするロービングが前記圧縮ローラの表面上に部分的に又は完全に位置していることを意味し、これが前記ロービングの延展をもたらす。
【0140】
有利には、前記少なくとも1つの圧縮ローラは円筒形状であり、前記流動床の入口と出口との間の前記ロービングの延展パーセンテージは、1%~400%の間、好ましくは30%~400%の間、好ましくは30%~150%の間、好ましくは50%~150%の間である。
【0141】
延展は、使用される繊維材料に依存する。例えば、炭素繊維材料の延展は、亜麻繊維の延展よりはるかに大きい。
【0142】
延展はまた、ロービング中の繊維又はフィラメントの数、それらの平均直径、及びサイズによるそれらの結合に依存する。
【0143】
前記少なくとも1つの圧縮ローラの直径は、3mm~500mm、好ましくは10mm~100mm、特に20mm~60mmの範囲である。
【0144】
3mm未満では、圧縮ローラによってもたらされる繊維変形が大きすぎる。
【0145】
有利には、圧縮ローラは円筒形で溝がなく、特に金属製である。
【0146】
張力デバイスが少なくとも1つの圧縮ローラである場合、第1の変形例によれば、単一の圧縮ローラが流動床に存在し、前記含浸は、前記ロービングにより前記圧縮ローラの入口と前記圧縮ローラに対する垂直接線との間に形成される角度αで行われる。
【0147】
前記ロービングによって前記圧縮ローラの入口と前記圧縮ローラの垂直接線との間に形成される角度αは、粉末が集中する領域の形成を可能にすることにより「くさび効果」をもたらし、前記圧縮ローラによるロービングの同時の延展が、より広い幅のロービングにわたる含浸を可能にし、したがって従来技術の技術と比較して含浸を改善する。滞留時間の制御と組合わせることで、徹底的な含浸が可能になる。
【0148】
有利には、角度αは、0~89°、好ましくは5°~85°、好ましくは5°~45°、好ましくは5°~30°の範囲である。
【0149】
しかしながら、0~5°の角度αは、機械的ストレスのリスクを生じさせる可能性があり、これは繊維の破損を招き、85°~89°の角度αは、「くさび効果」を生じさせるのに十分な機械力を発生させない。
【0150】
0°の角度αの値は、垂直繊維に対応する。円筒形圧縮ローラの高さは調節可能であり、したがって繊維の垂直方向の位置付けを容易にすることは明らかである。
【0151】
ロービングが出て行くことを可能にするために、槽の壁が穿孔されていたとしても本発明の範囲外ではない。
【0152】
有利には、槽の縁部(83a)は、特に円筒形及び回転式のローラを備えており、その上を前記ロービングが走っているため、事前に延展することになる。
【0153】
有利には、延展が開始される流動床を備える槽の下流に1つ以上の問題点が存在する。
【0154】
有利には、延展は前述の障害物のうちの前記1つ以上で開始され、槽の端部(83a)で継続する。
【0155】
したがって、延展は、1つ以上の圧縮ローラを通過した後に最大になる。
【0156】
図4は、これに限定されないが、単一の圧縮ローラに対する実施形態を開示しており、槽(20)は流動床(22)を備え、単一の円筒形圧縮ローラが存在し、角度αが示されている。
【0157】
繊維上の矢印は、繊維のスクロール方向を示す。
【0158】
有利には、前記流動床内の前記粉末のレベルは、前記圧縮ローラの少なくとも中間の高さである。
【0159】
明らかに、角度αによってもたらされる「コーナー効果」は、一方の側での含浸を促進するが、圧縮ローラを通して得られる前記ロービングの延展はまた、前記ロービングの他方側への含浸を可能にする。換言すれば、前記含浸は、前記ロービングによって前記少なくとも1つの圧縮ローラRの入口と前記圧縮ローラRの垂直接線との間に形成される角度αで、前記ロービングの一方の表面上に可能になるが、展開はまた他の表面の含浸を可能にする。
【0160】
角度αは、上で規定された通りである。
【0161】
第2の変形例によれば、張力デバイスが少なくとも1つの圧縮ローラである場合、2つの圧縮ローラR及びRが前記流動床にあり、前記含浸は、前記ロービングによって前記圧縮ローラRの入口と前記圧縮ローラRに対する垂直接線との間に形成される角度αで、及び/又は、前記ロービングによって前記圧縮ローラRの入口と前記圧縮ローラRの垂直接線との間に形成される角度αで行われ、前記圧縮ローラRは、前記圧縮ローラRに先行し、前記ロービングは、ローラRの上方(図5及び6)又は下(図7及び8)を通過することができる。
【0162】
有利には、2つの圧縮ローラは、同一又は異なる形状であり、凸状、凹状又は円筒形状から選択される。
【0163】
有利には、2つの圧縮ローラは、同一及び円筒形で、溝付きではなく、特に金属である。
【0164】
2つの圧縮ローラの直径は同じであっても異なっていてもよく、上で規定された通りである。
【0165】
有利には、2つの圧縮ローラの直径は同一である。
【0166】
2つの圧縮ローラR及びRは、互いに対して及び槽の底部に対して同じレベルにあってもよく(図6及び7)、又は互いに対して及び槽の底部に対して傾斜してもよく、圧縮ローラRの高さは、槽の底部に対して圧縮ローラRのそれより高い、又は低い(図5及び8)。
【0167】
有利には、2つのローラが異なる高さにあり、ロービングがローラR2の上を通過する場合、αは、0~90°の範囲である。
【0168】
したがって、有利には、前記含浸は、前記ロービングの1つの表面上で、前記ロービングにより前記圧縮ローラRの入口と前記圧縮ローラに対する垂直接線との間に形成される角度αで、及び前記ロービングの反対側で、前記ロービングにより前記圧縮ローラRの入口と前記圧縮ローラRに対する垂直接線との間に形成される角度α(ローラR上を通過することにより得られる)で行われる。
【0169】
有利には、この実施形態における前記ロービングは、各角度α及びαで延展に供される。
【0170】
図6は、これに限定されないが、2つの圧縮ローラR及びR(RはRに先行する)を有し、流動床(22)を備える槽(20)を有する実施形態を説明しており、同じレベルで横に並んだ2つの円筒状圧縮ローラが存在し、前記1つ以上のロービングが前記圧縮ローラRとRとの間で現れる場合が示されている。
【0171】
この場合、角度αは0に等しく、前記1つ以上のロービングはローラRを通過する。
【0172】
繊維上の矢印は、繊維のスクロール方向を示す。
【0173】
代替方法では、前記ロービングは前記圧縮ローラRとRとの間の入力でスクロールし、前記圧縮ローラRの表面の一部又は全部と接触した後に現れる。
【0174】
有利には、前記ロービングは、前記圧縮ローラRの表面の一部又は全部と接触しており、ローラRの下で前記圧縮ローラRの表面の一部又は全部と接触した後に圧縮ローラRの外側に現れ、角度αは、前記圧縮ローラRの入口と前記圧縮ローラRの垂直接線との間で前記ロービングにより形成される。この場合、角度α=90°である。
【0175】
したがって、有利には、前記含浸は、前記ロービングの1つの表面上で、前記ロービングにより前記圧縮ローラRの入口と前記圧縮ローラに対する垂直接線との間に形成される角度αで、及び前記ロービングの同じ側で、前記ロービングにより前記圧縮ローラRの入口と前記圧縮ローラRに対する垂直接線との間に形成される角度αで行われるが、延展はまた、他の側を含浸することを可能にする。
【0176】
有利には、この実施形態における前記ロービングは、各角度α及びαで延展に供される。
【0177】
図7は、互いに同じレベルにある2つの圧縮ローラR及びRを有する実施形態の一例を示す。
【0178】
第2の変形例の別の実施形態によれば、2つの圧縮ローラが存在する場合、2つの圧縮ローラRとRとの間の距離は、槽の最大寸法に相当する長さで0.15mm、好ましくは10mm~50mmであり、2つの圧縮ローラRとRとの間の高さの差は、0~2つの圧縮ローラの直径から差し引かれた槽の最大高さに相当する高さ、好ましくは、0.15mm~2つの圧縮ローラの直径から差し引かれた槽の最大高さに相当する高さ、より好ましくは、10mm~300mmの間の高さの差であり、Rは、上部圧縮ローラである。
【0179】
有利には、2つの圧縮ローラが存在し、また互いに対して同じレベルにある場合、前記流動床内の前記粉末のレベルは、少なくとも前記2つの圧縮ローラの中間の高さに位置する。
【0180】
図8は、これに限定されないが、流動床(22)を備える槽(20)を有する2つの圧縮ローラR及びR(RはRに先行する)に対する実施形態を説明しており、異なるレベルの2つの円筒状圧縮ローラが存在し、角度α及びαが示されている。
【0181】
圧縮ローラR及びRの直径は、図5、6、7及び8において同一として示されているが、各円筒形圧縮ローラの直径は異なっていてもよく、圧縮ローラRの直径は、上記の範囲内で圧縮ローラRの直径より大きくてもよく、又は小さくてもよい。
【0182】
有利には、2つの圧縮ローラの直径は同一である。
【0183】
圧縮ローラRが圧縮ローラRより高い場合も本発明の範囲外ではない。
【0184】
第3の変形例によれば、2つの圧縮ローラが存在し異なるレベルにある場合、少なくとも第3の圧縮ローラRがさらに存在し、圧縮ローラRとRとの間に垂直に配置される(図9)。
【0185】
有利には、前記ロービングは前記圧縮ローラRの表面の一部又は全部と接触し、次いで前記圧縮ローラRの表面の一部又は全部と接触し、前記圧縮ローラRの表面の一部又は全部と接触した後に現れる。
【0186】
有利には、前記含浸は、前記ロービングの1つの表面上で、前記ロービングにより前記少なくとも1つの圧縮ローラRの入口と圧縮ローラRに対する垂直接線との間に形成される角度αで、並びに前記ロービング及び圧縮ローラRに対する垂直接線とにより形成される角度αで、並びに他方の面において、前記ロービング及び圧縮ローラRに対する垂直接線により形成される角度αでのみ行われる。
【0187】
有利には、2つの圧縮ローラが異なるレベルで存在し、少なくとも1つの第3の圧縮ローラRがさらに存在する場合、前記ロービングにより前記少なくとも1つの圧縮ローラRの入口と前記圧縮ローラRに対する垂直接線との間に形成される角度αは、180°~45°、特に120°~60°の範囲である。
【0188】
有利には、角度αは、0°~180°、好ましくは45°~135°の範囲である。
【0189】
図9は、これに限定されないが、2つの圧縮ローラR及びR(RはRに先行する)、並びに第3の圧縮ローラRを有する流動床(22)を備える槽(20)を有する実施形態を説明しており、角度α、α及びαが示されている。
【0190】
圧縮ローラR、R、及びRの直径は、図9では同一として示されているが、各円筒形圧縮ローラの直径は異なっていてもよく、又は2つの圧縮ローラが同じ直径を有し、3つ目が上で規定されたような範囲内のより大きい若しくはより小さい異なる直径を有してもよい。
【0191】
有利には、3つの圧縮ローラの直径は同一である。
【0192】
有利には、この第3の変形例において、前記ロービングの第2の延展制御は、圧縮ローラRのレベルで行われ、第3の延展制御は、圧縮ローラRで行われる。
【0193】
この第3の変形例における滞留時間は上記で規定された通りである。
【0194】
有利には、この第3の変形例において、前記流動床内の前記粉末のレベルは、少なくとも前記圧縮ローラRの中間の高さにある。
【0195】
この第3の変形例において、前記ロービングが前記圧縮ローラRの表面の一部又は全部と接触し、次いで前記圧縮ローラRの表面の一部又は全部と接触し、前記圧縮ローラRの表面の一部又は全部と接触した後に現れる場合も、依然として本発明の範囲内である。
【0196】
本発明の他の実施形態によれば、本発明の方法において使用される槽は流動床を有さないが、ロール入口に前記粉末のスプレーガン又は粉末ノズルを備え、前記含浸ステップは、槽の入口と出口との間で前記ロービングを同時に延展しながら行われる。
【0197】
上記と同様に、粉末の流動床内での滞留時間を制御し、槽に同じ張力デバイス、特に上記で規定されたような1つ以上の圧縮ローラを設けることができる。
【0198】
有利には、槽内の滞留時間は、0.01秒から10秒、好ましくは0.1秒から5秒、特に0.1秒~3秒の範囲である。
【0199】
有利な実施形態によれば、本発明は、単一の熱可塑性ポリマーマトリックスが使用され、熱可塑性ポリマー粉末が流動化可能であることを特徴とする、上記で規定されたような方法に関する。
【0200】
「流動化可能」という用語は、流動床に適用される空気流が、図17に示されるように最小流動化流量(Umf)からs(Umb)の間にあることを意味する。
【0201】
最小流動化速度未満では流動化はなく、ポリマー粉末粒子は床に落下してもはや懸濁状態ではなく、本発明による方法は機能し得ない。
【0202】
最小吹き込み流量を超えると、粉末粒子は消滅し、一定流動床の組成はもはや一定に維持することができない。
【0203】
有利には、粒子の体積直径D90は、50~500μmの間、有利には120~300μmの間である。
【0204】
有利には、粒子の体積直径D10は、5~200μmの間、有利には35~100μmの間である。
【0205】
有利には、熱可塑性ポリマー粉末粒子の平均体積直径は、30~300μm、特に50~200μm、より具体的には70~200μmの間である。
【0206】
粒子の体積直径(D10、D50及びD90)は、ISO9276:2014に従って規定されている。
【0207】
「D50」は、すなわち、検査された粒子集団を正確に2つの部分に分割する粒径の値を意味する、体積による平均直径に相当する。
【0208】
「D90」は、体積粒径分布の累積曲線の90%における値に相当する。
【0209】
「D10」は、粒子体積の10%のサイズに相当する。
【0210】
本発明による方法の別の実施形態によれば、流動床を備える槽入口で前記ロービングの張力を制御するため、流動床を備える槽の前にクリールが存在する。
【0211】
任意選択的に、本発明による方法において、流動床を備える槽の後に1つ以上の問題点が存在する。
【0212】
成形ステップ
特に流動床(22)を備える槽(20)を出るとすぐに、任意選択的に溶融ポリマーで被覆された予備含浸ロービング(平行ロービング)は、1つ以上の加熱カレンダを備える連続カレンダデバイスにより、単一の一方向リボン又は複数の平行一方向リボンに成形される。
【0213】
有利には、カレンダデバイスの加熱カレンダは、材料を表面だけではなくコアでも加熱する急速加熱方法と結びつけられている。
【0214】
流動床(22)を備える槽出口(20)の扇形ロービングは、次いで加熱の影響下で収縮し、これがロービング繊維間への溶融ポリマーの挿入に寄与することにより、前記ロービングの多孔性を低減し、特に前記ロービングのコアにおける含浸を容易にする。
【0215】
これらの急速加熱方法と結びつけられたカレンダの機械的ストレスは、特に繊維材料が「すぐに使用可能な」材料である場合、多孔性の存在の排除及びポリマーの均質な分布を可能にする。
【0216】
有利には、このホットカレンダ加工は、均一に繊維に浸透、接着、及び被覆するために含浸ポリマーを加熱することを可能にするだけでなく、予備含浸繊維材料のリボンの厚さ及び幅の監視を可能にする。
【0217】
流動床を通過する、複数の一方向平行リボン、すなわち予備含浸平行ロービングと同数のリボンを製造することができるようにするために、図1の概略図において(51)、(52)、(53)で示されるカレンダは、有利には、リボンの数に応じて、複数溝(73)カレンダを含む。この溝の数は、例えば最大200であってもよい。制御されたシステムSYSTはまた、リボンのep厚さを監視するためにカレンダ(70)のローラ(71)、(75)間の圧力及び/又はE間隔の調整を可能にする。そのようなカレンダ(70)は、以下で説明される図2に概略的に示されている。
【0218】
カレンダデバイスは、少なくとも加熱カレンダ(51)を備える。好ましくは、カレンダデバイスは、繊維ロービングの進行方向に対して並列に、及び/又は直列に接続されたいくつかの加熱カレンダ(51)、(52)、(53)を備える。
【0219】
特に、連続カレンダ加工ステップは、(プロセスの進行方向において)ローラ間の圧力の増加及び/又は(プロセスの進行方向において)ローラ間の間隔の減少と共に徐々に行われる。
【0220】
いくつかの連続カレンダを有することは、材料を圧密し、また材料中の多孔性を低減してそれらの割合を低下させる。したがって、この複数のカレンダは、「いつでも使用可能な」繊維材料を製造することを意図する場合に重要である。
【0221】
いくつかの平行グリルを有すると、前処理されたロービングの数が増加する。
【0222】
有利には、カレンダ加工デバイスの各カレンダは、ポリマー又は熱可塑性ポリマーの混合物を加熱するために、好ましくはマイクロ波による誘導又はマイクロ波統合加熱システムを備える。有利には、ポリマー又はポリマー混合物が、炭素含有充填剤、例えばカーボンブラック又はカーボンナノ充填剤、好ましくはカーボンナノ充填剤、特にグラフェン及び/又はカーボンナノチューブ及び/又はカーボンナノフィブリル又はそれらの混合物から選択されるものを含む場合、マイクロ波の効果又は誘導加熱は、これらの装入物の存在によって増幅され、次いでこれが材料のコアに熱を伝達する。
【0223】
有利には、デバイスの各カレンダ(51)、(52)、(53)は、材料に熱エネルギーを迅速に伝達し、溶融ポリマーによる繊維の含浸を完了するために、各カレンダの前及び/又は後に配置された急速加熱デバイス(41)、(42)、(43)に結びつけられる。急速加熱デバイスは、例えば、以下のデバイスから選択することができる:マイクロ波デバイス若しくは誘導、IRレーザー若しくは赤外線デバイス、又は火炎若しくは高温ガス等の熱源と直接接触させるための他のデバイス。カーボンナノ充填剤は加熱効果を増幅し、それを材料のコアに伝達するため、マイクロ波又は誘導デバイスは、特にポリマー又はポリマー混合物中のカーボンナノ充填剤の存在と組合わせると非常に有利である。
【0224】
代替の実施形態によれば、これらの加熱デバイスのいくつかを組合わせることも可能である。
【0225】
方法は、前記含浸の前に、好ましい加熱方法として、前記加熱カレンダの加熱システムと同様にマイクロ波加熱で繊維ロービングを加熱するステップをさらに含んでもよい。
【0226】
任意選択的に、後続のステップは、1つ以上の予備含浸及び成形リボンの巻き取りである。その趣旨で、本方法を実施するためのユニット(100)は、リボンと同数のコイル(61)を備える巻き取りデバイス(60)を備え、コイル(61)は各リボンに割り当てられる。いかなる劣化も防ぐためにリボンが接触するのを防ぎながら、予備含浸リボンをそのそれぞれのコイル(61)に偏向させるために、一般に分割器(62)が設けられる。
【0227】
図2は、カレンダ(70)の断面図の溝(73)の詳細を概略的に示す。カレンダ(70)は、上部ローラ(71)及び下部ローラ(75)を備える。一方のローラ、例えば上部ローラ(71)は、刻み目部分(72)を備え、他方のローラ(この例では下部ローラ(75)を意味する)は、溝部分(76)を備え、溝の形状は、上部ローラの突出部(72)の形状と相補的である。ローラ(71)、(75)間の間隔E、及び/又は2つのローラによって互いに加えられる圧力によって、溝73の寸法、特にそれらの厚さep及び幅lを画定することが可能になる。各溝(73)は、繊維ロービングを収容するために設けられており、繊維ロービングは次いでローラ間で押圧及び加熱される。次いで、ロービングは、厚さ及び幅がカレンダの溝(73)によって標準化された平行な一方向リボンとなる。各カレンダは、有利には複数の溝を備え、その数は、溝及び予備含浸ロービングと同数のリボンを製造するために、最大200となり得る。カレンダ加工デバイスは、この目的のために提供されたコンピュータプログラムによって制御される、図1のSYSTで示される中央デバイスをさらに備え、これはすべてのユニット100カレンダのカレンダローラの圧力及び/又は間隔の同時調整を可能にする。
【0228】
このようにして製造された一方向リボンは、正しい幅で分割される必要なしに、三次元部品製造におけるロボットによる取出しに適合した幅l及び厚さepを有する。リボンの幅は、有利には5~400mm、好ましくは5~50mm、さらにより好ましくは5~15mmである。
【0229】
このようにして、予備含浸繊維材料を製造するための上述の方法は、高い生産性での予備含浸繊維材料の製造を可能にする一方で、特に繊維のコアでの含浸、並びに多孔性制御及び再現性を可能にし、したがって想定される最終複合品の結果の制御及び再現性を可能にする。特に繊維周囲のコアへの含浸及び多孔性の欠如は、前記粉末中、特に流動床を備える槽内での滞留時間の制御によって、及び圧縮ローラでのロービングの同時延展と結びつけた「くさび効果」によって、槽内での含浸ステップにより確保される。得られた材料は、厚さ及び幅が標準化され、多孔性が低いリボンの形態の半製品である。
【0230】
したがって、この方法は、ロボットを使用して前記リボンを自動的に取出すことによって、三次元複合部品の製造に適応した予備含浸繊維材料の標準化されたリボンの製造を可能にする。
【0231】
有利には、本発明による方法で得られるリボンの熱可塑性ポリマーは、ガラス転移温度Tgが≧80℃であるような非晶質ポリマーから、及び/又は融点Tfが≧150℃である半結晶性ポリマーから選択される。
【0232】
有利には、前記熱可塑性ポリマーは、
ポリアミド6(PA-6)、ポリアミド11(PA-11)、ポリアミド12(PA-12)、ポリアミド66(PA-66)、ポリアミド46(PA-46)、ポリアミド610(PA-610)、ポリアミド612(PA-612)、ポリアミド1010(PA-1010)、ポリアミド1012(PA-1012)、それらの混合物及びそれらのコポリアミド、特に1010/11、1010/12等から選択される脂肪族ポリアミド、
式A/XTの半芳香族ポリアミドを含む、EP1505099に記載されているような、尿素単位で任意選択的に修飾された芳香族ポリアミド、特にポリフタルアミド、特に式X/YArの半芳香族ポリアミドであり、式中、Aは、アミノ酸から得られる単位、ラクタムから得られる単位、及び式(Caジアミン)。(Cb二酸)を有する単位から選択され、aは、ジアミンの炭素原子の数を表し、bは、二酸の炭素原子の数を表し、a及びbは、それぞれ4~36の間、有利には9~18の間であり;
XTは、Cx中のジアミンとテレフタル酸との重縮合から得られる単位を指し、xは、Cx中のジアミンの炭素原子数を表し、xは、6~36の間、有利には9~18の間であり、
特に式A/6T、A/9T、A/10T又はA/11Tのポリアミド(Aは、上で規定された通りである)、特にポリアミドPA6/6T、66/6T、6I/6T、PA11/10T、11/6T/10T、MXDT/10T又はMPMDT/10T、BACT/10Tアラミド、及びブロックコポリマー、特にポリアミド/ポリエーテル(PEBA)である。
【0233】
有利には、本発明による方法で得られたリボンの繊維材料は、炭素繊維でできる。
【0234】
有利には、本発明による方法によって得られるリボンの熱可塑性ポリマーは、特にPA11、PA12、PA11/1010、PA12/1010、PA11/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T及びPA BACT/10Tから選択される半芳香族ポリアミドであり、本発明による方法によって得られるリボンの繊維材料は、炭素繊維でできている。
【0235】
有利には、熱可塑性ポリマーがPA11、PA12、PA11/1010、PA12/1010、PA11/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T及びPA BACT/10Tから選択されるポリアミドである前記リボンは、民間又は軍用の航空又は自動車に使用される。
【0236】
有利には、本発明による方法によって得られるリボンの熱可塑性ポリマーは、PEKKである。
【0237】
有利には、本発明による方法で得られたリボンの繊維材料は、炭素繊維でできている。
【0238】
有利には、本発明による方法によって得られるリボンの熱可塑性ポリマーは、PEKKであり、また本発明による方法によって得られるリボンの繊維材料は、炭素繊維でできている。
【0239】
有利には、本発明による方法によって得られるリボンの熱可塑性ポリマーは、PEIである。
【0240】
有利には、本発明による方法で得られたリボンの繊維材料は、炭素繊維でできている。
【0241】
有利には、本発明による方法によって得られるリボンの熱可塑性ポリマーは、PEIであり、また本発明による方法によって得られるリボンの繊維材料は、炭素繊維でできている。
【0242】
有利には、本発明による方法によって得られるリボンの熱可塑性ポリマーは、好ましくは重量基準で90~10%対60~40%、特に90~10%対70~30%のPEKK及びPEIの混合物である。有利には、本発明による方法で得られたリボンの繊維材料は、炭素繊維でできている。
【0243】
有利には、本発明による方法によって得られるリボンの熱可塑性ポリマーは、PEKK及びPEIの混合物であり、また本発明による方法によって得られるリボンの繊維材料は、炭素繊維でできている。
【0244】
別の態様によれば、本発明は、三次元複合部品の製造における、上で規定されたような予備含浸繊維材料のリボンの使用に関する。
【0245】
有利には、前記複合部品の前記製造は、輸送分野、特に自動車、石油及びガス、特に海洋、ガス貯蔵、民間又は軍用航空、航海用、鉄道用;再生可能エネルギー、特に風力タービン、潮力タービン、エネルギー貯蔵デバイス、太陽電池パネル;熱保護パネル;スポーツ及びレクリエーション、健康及び医療、武器又はミサイル部品を使用した弾道学、セキュリティ及び電子工学に関連する。
【0246】
さらに別の態様によれば、本発明は、上で規定されたような予備含浸繊維材料の少なくとも1つの一方向リボンの使用から得られることを特徴とする、三次元複合部品に関する。
【0247】
本発明の方法の有利な実施形態
有利には、繊維材料は、炭素繊維及びガラス繊維から選択される。
【0248】
有利には、炭素繊維を含浸させるために使用される熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、特にPA11、PA12、PA11/1010若しくはPA12/1010等の脂肪族ポリアミド、又は半芳香族ポリアミド、特にポリアミド、PA11/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T若しくはPA MPMDT/10T、若しくはPA BACT/10T、PEKK及びPEI又はそれらの混合物から選択される。
【0249】
有利には、炭素繊維を含浸させるために使用される熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、特にPA11、PA12、PA11/1010若しくはPA12/1010等の脂肪族ポリアミド、又は半芳香族ポリアミド、特にポリアミド、PA11/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T若しくはPA MPMDT/10T、若しくはPA BACT/10T、PEKK及びPEI又はそれらの混合物から選択される。
【0250】
有利には、含浸炭素繊維又はガラス繊維からなる前記繊維材料中の繊維の含有量は、45~65体積%、好ましくは50~60体積%、特に54~60体積%である。
【0251】
【表1】
【0252】
PEKK又はPEIを含む実施形態において、PEKKは、PEIと組合わされてもよく、PEIは、上で規定された割合でPEKKと組合わされてもよい。
【0253】
有利には、流動床内に2つの圧縮ローラが存在する上記の表Iの組成物において、ローラRは、槽の底部に対してローラRの上方にあり、特に、H-Hは、1cm~30cm、好ましくは1~10cm、特に1cm~3cmの範囲、特に約2cmであり、角度αは、0~90°、特に25~45℃、特に25~35°の範囲であり、ロービングは、Rの上を走行する。
【0254】
これらの実施形態は、図5に対応する。
【0255】
有利には、流動床内に2つの圧縮ローラが存在する上記表Iの組成物において、ローラRは、槽の底部に対してローラRの上方にあり、特にH-Hは、1cm~30cmの範囲、特に約2cmであり、角度αは、90~180℃、特に115~135°、特に115~125°の範囲であり、ロービングは、Rの下を走行する。
【0256】
有利には、上記の表Iの組成物において、繊維材料がガラス繊維である場合、単位繊維のD50/平均直径比は、3~15、特に4~15である。
【0257】
有利には、上記の表Iの組成物において、繊維材料がガラス繊維である場合、単位繊維のD50/平均直径比は、3~10、特に4~10である。
【0258】
有利には、上記の表Iの組成物において、繊維材料が炭素繊維である場合、単位繊維のD50/平均直径比は、10~40の間である。
【0259】
有利には、流動床内に2つの圧縮ローラが存在する上記の表Iの組成物において、ローラRは、槽の底部に対してローラRの上方にあり、特にH-Hは、1cm~3cmの範囲、特に約2cmであり、角度αは、25~45℃、特に25~35°であり、ロービングは、Rの上を走行し;繊維材料がガラス繊維である場合、単位繊維のD50/平均直径比は、3~15、特に4~15、特に3~10、特に4~10の範囲である。
【0260】
有利には、流動床内に2つの圧縮ローラが存在する上記の表Iの組成物において、ローラRは、槽の底部に対してローラRの上方にあり、特にH-Hは、1cm~3cmの範囲、特に約2cmであり、角度αは、80~45℃、特に60~45°であり、ロービングは、Rの下を走行し、繊維材料がガラス繊維である場合、単位繊維のD50/平均直径比は、3~15、特に4~15、特に3~10、特に4~10の範囲である。
【0261】
有利には、流動床内に2つの圧縮ローラが存在する上記の表Iの組成物において、ローラRは、槽の底部に対してローラRの上方にあり、特にH-Hは、1cm~3cmの範囲、特に約2cmであり、角度αは、25~45℃、特に25~35°であり、ロービングは、Rの上を走行し;繊維材料が炭素繊維である場合、単位繊維のD50/平均直径比は、10~40の範囲である。
【0262】
有利には、流動床内に2つの圧縮ローラが存在する上記の表Iの組成物において、ローラRは、槽の底部に対してローラRの上方にあり、特にH-Hは、1cm~3cmの範囲、特に約2cmであり、角度αは、80~45℃、特に60~45°であり、ロービングは、Rの下を走行し、繊維材料が炭素繊維である場合、単位繊維のD50/平均直径比は、10~40の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0263】
図1】本発明による予備含浸繊維材料の製造方法の実装ユニットの図である。
図2図1のユニットにおいて使用されるようなカレンダを構成する2つのローラの断面図である。
図3】高さ調節可能で高さ調節可能な張力デバイス(82)を有する流動床(22)を備える槽(20)を詳細に示す図である。槽入口の縁部には、ロービング81aが走行する回転ローラ83aが設けられ、槽出口の縁部には、ロービング81bが走行する回転ローラ83bが設けられている。
図4】流動床(22)を有する槽(20)を有する単一の圧縮ローラの実施形態を示す図であり、単一の円筒状の圧縮ローラが存在し、角度αが示されている。 繊維上の矢印は、繊維のスクロール方向を示す。
図5】これに限定されないが、流動床(22)を備える槽(20)を有する2つの圧縮ローラR及びR(RはRに先行する)を有する実施形態を示す図であり、2つの円筒形圧縮ローラは、槽の底部に対して異なる高さにあり(高さHのRは高さHのRの上にある)、角度α及びαが示されている。 繊維上の矢印は、繊維のスクロール方向を示す。
図6】流動床(22)を備える槽(20)を有する例示的な実施形態を示す図であり、2つの圧縮ローラR及びRは、互いに同じレベルで横に並んだ円筒形であり、角度α及び角度α=0°が示され、ロービングは2つのローラ間を通過する。
図7】流動床(22)を備える槽(20)を有する例示的な実施形態を示す図であり、2つの圧縮ローラR及びRは、互いに同じレベルで横に並んだ円筒形であり、角度α及び角度α=90°が示され、ロービングはRの下を走行する。
図8】流動床(22)を備える槽(20)を有する例示的な実施形態を示す図であり、異なるレベルの2つの円筒形圧縮ローラR及びR(RはRに先行する)が存在し、角度α及びαが示され、ロービングはローラR2の下を走行する。
図9】2つの圧縮ローラR及びR(RはRに先行する)、並びに圧縮ローラRを有する流動床(22)を備える槽(20)を有する実施形態を示す図であり、角度α、α及びαが示されている。
図10】本発明の方法(実施例2に記載の通り、カレンダ加工後)に従ってD50=115μmのポリアミドPA粉末MPMDT/10Tを含浸させた1/4インチの「炭素繊維ロービング」(東レ12K T700S M0E繊維、直径7μm)の断面の、走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。 画像分析は、ストリップの縁部を除いて5%の多孔率を示す。 D50/直径比=16.4。
図11】本発明の方法(実施例2に記載の通り、カレンダ加工後)に従ってD50=132μmのPA11/6T/10Tポリアミド粉末を含浸させた1/4インチの「炭素繊維ロービング」(東レ12K T700繊維、直径7μm)の断面の、走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。 D50/直径比=18.9。
図12】本発明の方法(実施例3に記載の通り、カレンダ加工前)に従ってD50=120μmのPA11ポリアミド粉末を含浸させた3B HiPer Tex 2400 texガラス繊維メッシュ(直径17μm)の断面の、走査型電子顕微鏡下で撮影した写真である。 D50/直径比=7。
図13】本発明の方法(実施例3に記載の通り、カレンダ加工前)に従ってD50=132μmのPA 11/6T/10Tを含浸させた3B HiPer Tex 2400 texガラス繊維メッシュ(直径17μm)の断面の、走査型電子顕微鏡下で撮影した写真である。 D50/直径比=7。
図14】本発明の方法(実施例4に記載の通り、カレンダ加工後)に従ってD50=115μmのポリアミド粉末MPMDT/10Tを含浸させた1/2インチ(SGLグレードAA、50K、直径7μm)の炭素繊維ロービングの断面の、双眼鏡写真である。 D50/直径比=16.4。
図15】本発明の方法(実施例2に記載の通り、カレンダ加工後)に従ってD50=20μmのPA11ポリアミド粉末を含浸させた1/4インチの「炭素繊維ロービング」(東レ12K T700繊維、直径7μm)の断面の、走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。 D50/直径比=2.8。
図16】本発明の方法(実施例2に記載の通り、カレンダ加工前)に従ってD50=30μmのPA11ポリアミド粉末を含浸させた3B HiPer Tex 2400 texガラス繊維メッシュ(直径17μm)の断面の、走査型電子顕微鏡下で撮影した写真である。 D50/直径比=1.8。
図17】気流に基づく流動化を示す。流動床に適用される空気流量は、最小流動化速度(Umf)と最小吹き込み流量(Umb)の間でなければならない。
【0264】
以下の実施例は、本発明の範囲を非限定的に例示するものである。
【実施例
【0265】
[実施例1(比較例)]
炭素繊維ロービング(東レ12K T700S M0E、直径7μm)に、D50=20μMのPA11/6T/10Tを含浸させた。
【0266】
D50/直径比=2.8、<3。
【0267】
結果:
[実施例1a(比較例)]
ガラス繊維ロービング(3Bガラス繊維2400 tex、直径17μm)に、D50=30μmのPA11を含浸させた。
【0268】
D50/直径比=1.8、<3。
【0269】
結果は、図15(PA11の実施例1)及び16(PA11の実施例1a)に示されるが、粉末が薄すぎて(また過度に狭いサイズ分布を有していて)適切に流動化することができないという事実に関連する、コアにおける低い含浸を示している。特に、含浸方法を妨げる多くの不安定性が流動床に存在する(気泡の存在)。さらに、両方の例(ガラス及び炭素)において、流動床によって延展された繊維ロービングは、その小さい粒径のために粉末を保持することが困難である。
【0270】
[実施例2]
単一ロール流動床内で繊維材料(炭素繊維)にポリアミド粉末を含浸させるための一般的手順
以下の手順を実行した。
- 槽内の円筒形圧縮ローラ(L=500mm、l=500mm、H=600mm)、直径25mm。
- 粉末中での滞留時間0.3秒
- 25°の角度α
- 1/4インチの炭素繊維炭素ロービング東レ12K T700S M0E、直径7μmに対して、約100%(すなわち幅の2倍)の延展。
- MPMDT/10Tの粉末に対して、D50=115μm(D10=49μm、D90=207μm)。
粉末11/6T/10Tに対して、D50=132μm、(D10=72μm及びD90=225μm)。
- 固定ローラを装備した槽の縁部。
D50/直径比=14.1。
【0271】
この手順に従って、ポリアミド(規定された粒径のPA11/6T/10T及びMPMDT/10T)を予備含浸した繊維材料(1/4インチの「炭素繊維ロービング」)を調製し、図10及び11に示す。
【0272】
図10はMPMDT/10Tに対応し、図11はPA11/6T/10Tに対応する。
【0273】
これは、圧縮ローラを有する流動床内の乾燥粉末による含浸方法、及び粉末中の滞留時間の制御の有効性を実証している。
【0274】
[実施例3]
単一ローラ流動床内で繊維材料(ガラス繊維)にポリアミド粉末(PA11及び11/6T/10T)を含浸させるための一般的手順
以下の手順を実行した。
【0275】
- 直径6mmの槽内の固定圧縮ローラ
- 対流時間約5秒
- 45°のアルファ1角度
- 120μmのD50のPA11粉末(D10=60μm及びD90=210μm)。
120μmのD50のPA11粉末(D10=60μm及びD90=210μm)。
- 固定ローラを装備した槽の縁部。
この手順に従って、繊維材料(1200 texのガラス繊維メッシュ)に異なるポリアミド(PA11及び11/6T/10T)を予備含浸させ、これらを図12及び13に示す。図12はPA11に対応し、図13はPA11/6T/10Tに対応する。
【0276】
これは、圧縮ローラを有する流動床内の乾燥粉末による含浸方法、及び粉末中の滞留時間の制御の有効性を実証している。
【0277】
[実施例4]
二重ローラ流動床内で繊維材料にポリアミド粉末を含浸させるための一般的手順
- 槽内の高さの差H-H=2cmの2つの円筒形圧縮ローラ(L=500mm、l=500、H=600)、両方とも直径25mm。ローラ距離約1cm(図5に示す通り)。
- 粉末中での滞留時間2秒。
- 25°の角度α及び30°の角度α
- 1/2インチの「炭素繊維ロービング」SGLグレードAAに対して、約100%(幅の2倍)の延展。
- 98.9μmのD50の粉末。
- 回転ローラを装備した槽の縁部。
【0278】
この手順に従って、ポリアミドMPMDT/10Tを予備含浸させた繊維材料(1/2インチの「炭素繊維ロービング」)を調製し、図14(双眼鏡図)に示す。
含浸率は40%である。
これは、2つの圧縮ローラを有する流動床内の乾燥粉末による含浸方法、及び粉末中の滞留時間の制御の有効性を実証している。
【0279】
[実施例5]
画像分析による多孔率の測定
多孔率は、MPMDT/10Tを含浸させた1/2インチの「炭素繊維ロービング」に対する画像分析によって測定した。多孔率は5%である。
【0280】
[実施例6]
多孔率の測定、理論密度と実験密度との間の相対差(一般的方法)
a)必要なデータは以下を含む:
- 熱可塑性マトリックスの密度
- 繊維の密度
- 補強材の重量:
例えば1/4インチストリップ(一列から)の場合の線密度(g/m)
例えば幅の広いストリップ又は布地の場合の単位面積当たりの質量(g/m
【0281】
b)行うべき測定:
結果が調査材料の代表値となるためには、試料数は少なくとも30でなければならない。
行うべき測定は以下を含む:
- 収集した試料のサイズ:
長さ(線密度が分かっている場合)。
長さ及び幅(単位面積当たりの重量が分かっている場合)。
- 収集した試料の実験密度:
空気中及び水中での重量測定。
【0282】
- 繊維含有量の測定は、ISO1172:1999に従って、又は例えばB.Benzler、Applikationslabor、Mettler Toledo、Giesen、UserCom 1/2001で測定されるように熱重量分析(TGA)によって測定される。
【0283】
炭素繊維含有量の測定は、ISO14127:2008に従って測定することができる。
【0284】
理論繊維質量比の測定:
a)理論繊維質量比の測定:
【0285】
【数1】
【0286】
式中、
は、ストリップの線密度であり、
Lは、試料の長さであり、
Meairは、空気中で測定された試料の質量である。
【0287】
繊維質量比の変動は、強化材中の繊維の量の変動を考慮に入れずに、マトリックス含有量の変動に直接関係すると考えられる。
【0288】
b)理論密度の測定:
【0289】
【数2】
【0290】
式中、d及びdは、マトリックス及び繊維のそれぞれの密度である。
【0291】
このようにして計算された理論密度は、試料中に細孔がない場合の到達可能密度である。
【0292】
c)多孔率の評価:
したがって、多孔率は、理論密度と実験密度との間の相対差である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17