(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】車両構成要素を加熱し且つ車両構成要素との近接度を検知するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20220815BHJP
B62D 1/06 20060101ALI20220815BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20220815BHJP
B60R 21/015 20060101ALN20220815BHJP
【FI】
B60N2/56
B62D1/06
A47C7/74 B
B60R21/015 310
(21)【出願番号】P 2019563196
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 US2018032821
(87)【国際公開番号】W WO2018213344
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-14
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518287353
【氏名又は名称】ジョイソン セイフティ システムズ アクイジション エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】リッセマン ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ドルチェッティ ブレイン
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー バレリー
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0102024(US,A1)
【文献】特表2016-527657(JP,A)
【文献】特開2015-128993(JP,A)
【文献】特表2015-536275(JP,A)
【文献】特開2008-024087(JP,A)
【文献】特開2014-136462(JP,A)
【文献】特開2016-222145(JP,A)
【文献】特開2016-168972(JP,A)
【文献】特開2007-275254(JP,A)
【文献】特開昭61-146671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/56
B62D 1/06
A47C 7/74
B60R 21/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両構成要素加熱システムであって、
電力信号用のデューティサイクルを規定する電源を制御するコンピュータであって、前記電力信号が、加熱信号と、検知信号と、加熱信号も検知信号も生成されない前記デューティサイクル内の休止期間とを含む、前記コンピュータと、
前記電源に接続されて車両構成要素の検知ゾーン内に配置された少なくとも1つの電極であって、前記加熱信号を受信したことに応答して前記検知ゾーン内の前記車両構成要素の表面に熱を発生させ且つ前記検知信号を受信したことに応答して車両乗員と前記検知ゾーンとの近接度を検知するための前記電極と、
前記コンピュータに接続されて、メモリと前記電極と少なくとも1つの車両制御システムと電気通信するプロセッサであって、前記メモリが、前記プロセッサを制御するための命令を記憶し、前記命令が、前記プロセッサに、
前記少なくとも1つの車両制御システムから少なくとも1つの入力信号を受信することと、
前記少なくとも1つの車両制御システムからの前記少なくとも1つの入力信号に基づいて、前記加熱信号を生成するための前記デューティサイクルの加熱率、前記検知信号を生成して測定し、測定された前記検知信号を通知するための前記デューティサイクルの検知率、及び加熱信号も検知信号も生成されない前記デューティサイクルの休止率を選択することであって、前記加熱率と前記検知率と前記休止率の合計が100%である、前記選択することと、
前記選択された比率に基づいて、前記加熱信号を生成し、且つ/又は前記検知信号を生成して測定し、測定された前記検知信号を通知することと
を行わせる、前記プロセッサと
を備える、車両構成要素加熱システム。
【請求項2】
前記命令が更に、前記プロセッサに、前記少なくとも1つの車両制御システムからの前記少なくとも1つの入力信号に基づいてデューティサイクル継続期間を選択することを行わせ、並びに前記加熱信号を生成し、且つ/又は前記検知信号を生成して測定し、測定された前記検知信号を通知することが更に、前記選択されたデューティサイクル継続期間に基づく、請求項1に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項3】
前記デューティサイクル継続期間並びに/又は前記デューティサイクルの前記加熱率、前記検知率、及び前記休止率の前記選択は、前記通知された検知信号測定値が前記検知ゾーンにおける存在又は非存在の変化を表すかどうかに基づく、請求項2に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項4】
前記検知ゾーンにおける存在又は非存在の変化を表す前記通知された検知信号測定値に応答して、前記デューティサイクル継続期間が減少し且つ/又は前記検知率が増加する、請求項3に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項5】
前記検知ゾーンにおける存在又は非存在に変化がないことと、前記表面の温度が目標温度よりも低いこととを表す前記通知された検知信号測定値に応答して、前記デューティサイクル継続期間が増加し且つ/又は前記加熱率が増加する、請求項3に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項6】
乗員が前記検知ゾーンに隣接していることと、前記車両構成要素の前記表面の温度が閾値温度よりも低いこととを表す、前記少なくとも1つの車両制御システムから受信した前記少なくとも1つの入力信号に応答して、前記加熱率が前記検知率よりも高い、請求項1に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項7】
前記車両構成要素の前記表面の前記温度が前記閾値温度に近づくにつれて、前記加熱率が低下する、請求項
6に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項8】
乗員が前記検知ゾーンに隣接していることと、前記車両構成要素の前記表面の温度が閾値温度以上であり且つ目標温度よりも低いこととを表す、前記少なくとも1つの車両制御システムから受信した前記少なくとも1つの入力信号に応答して、前記加熱率が前記検知率よりも低く、前記閾値温度が前記目標温度未満である、請求項1に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの入力信号が、カメラに基づく監視システムからの、前記車両内の乗員の存在/非存在を表す入力を含む、請求項1に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの入力信号は、前記車両が自動又は半自動運転モードにあることを表す入力を含む、請求項1に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの入力信号は、前記車両の電源が遠隔操作でオン又はオフにされていることを表す入力を含む、請求項1に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項12】
前記電極が、ステアリングホイール内に配置される、請求項1に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項13】
前記電極が、座席内に配置される、請求項1に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項14】
前記検知ゾーンが第1の検知ゾーンであり、前記電極が第1の電極であり、且つ前記システムが、前記第1の電極から離間して配置される第2の電極を更に備え、前記第2の電極が、前記第1の検知ゾーンから離間して配置される第2の検知ゾーン内にある、請求項1に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項15】
前記第1の電極及び前記第2の電極が、基板の表面に配置される、請求項
14に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項16】
前記電極が第1の電極であり、且つ前記システムが、前記第1の電極と前記車両構成要素のフレームとの間に配置された第2の電極を更に備え、前記第2の電極が前記プロセッサと電気通信し、且つ前記命令が、前記プロセッサに、前記第2の電極と通信するためのシールド信号を生成することを行わせ、前記シールド信号が、前記第1の電極と前記車両構成要素の前記フレームとの間の寄生容量を防止する、請求項1に記載の車両構成要素加熱システム。
【請求項17】
前記命令が更に、前記プロセッサに、前記検知ゾーンとの近接度を表す前記通知された検知信号測定値の連続的変化の間に経過した時間を表す検知継続期間値を受信することを行わせ、並びに前記デューティサイクル及び/又は前記デューティサイクルの比率の前記選択が更に、前記検知継続期間値に基づく、請求項1に記載の車両構成要素加熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月15日に出願された「Systems and Methods for Heating and Sensing Proximity to Vehicle Components」という表題の同時係属中の米国仮特許出願第62/506,477号明細書の優先権を主張するものであり、この明細書全体が参照によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
世界の寒冷地において、寒冷期には、乗員に暖を与えて乗員の運転経験を改善するために、車両乗員が接触する特定の位置(例えば、車両座席、車両用ステアリングホイールなど)に加熱要素を備えた車両を提供することが望ましい場合がある。乗員に暖を与えるように構成された加熱要素に比較的ごく近接する乗員の存在を検知するために電極を用いる乗員センサシステムを設計しようとするときに、困難が生じる場合がある。例えば、電極と加熱要素との間に位置決めされたシールド層がなければ、電極と加熱要素との電気的結合が、車両乗員と電極との電気的結合よりも大きくなることがある。結果として、電極では乗員の存在を確実に判定できないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、当技術分野では、座席及びステアリングホイールなどの、車両構成要素との近接度を検知するための改良されたシステム及び方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
種々の実施態様は、コンピュータと少なくとも1つの電極とプロセッサとを含む車両構成要素加熱システムを含む。コンピュータは、電力信号用のデューティサイクルを規定する電源を制御し、且つ電力信号は、加熱信号と、検知信号と、加熱信号も検知信号も生成されないデューティサイクル内の休止期間とを含む。少なくとも1つの電極は、電源に接続されて、車両構成要素の検知ゾーン内に配置される。電極は、加熱信号を受信したことに応答して検知ゾーン内の車両構成要素の表面に熱を発生させ、且つ検知信号を受信したことに応答して車両乗員と検知ゾーンとの近接度を検知するためのものである。プロセッサは、コンピュータに接続されて、メモリと電極と少なくとも1つの車両制御システムと電気通信する。メモリは、プロセッサを制御するための命令を記憶し、且つ命令は、プロセッサに、(1)少なくとも1つの車両制御システムから少なくとも1つの入力信号を受信することと、(2)少なくとも1つの車両制御システムからの少なくとも1つの入力信号に基づいて、加熱信号を生成するためのデューティサイクルの加熱率、検知信号を生成して測定し、測定された検知信号を通知するためのデューティサイクルの検知率、及び加熱信号も検知信号も生成されないデューティサイクルの休止率を選択することであって、加熱率と検知率と休止率の合計が100%である、選択することと、(3)選択された比率に基づいて、加熱信号を生成し、且つ/又は検知信号を生成して測定し、測定された検知信号を通知することとを行わせる。
【0005】
いくつかの実施態様では、命令は更に、プロセッサに、少なくとも1つの車両制御システムからの少なくとも1つの入力信号に基づいてデューティサイクル継続期間を選択することを行わせ、並びに加熱信号を生成し且つ/又は検知信号を生成して測定することが更に、選択されたデューティサイクル継続期間に基づく。
【0006】
いくつかの実施態様では、デューティサイクル継続期間及び/又はデューティサイクルの比率の選択は、通知された検知信号測定値が検知ゾーンにおける存在又は非存在の変化を表すかどうかに基づく。
【0007】
いくつかの実施態様では、検知ゾーンにおける存在又は非存在の変化を表す通知された検知信号測定値に応答して、デューティサイクル継続期間が減少し且つ/又は検知率が増加する。そして、いくつかの実施態様では、検知ゾーンにおける存在又は非存在に変化がないことと、表面の温度が目標温度よりも低いこととを表す検知信号に応答して、デューティサイクル継続期間が増加し且つ/又は加熱率が増加する。
【0008】
いくつかの実施態様では、車両構成要素の表面の温度が閾値に近づくにつれて、加熱率が低下する。
【0009】
いくつかの実施態様では、乗員が検知ゾーンに隣接していることと、車両構成要素の表面の温度が閾値温度以上であり且つ目標温度よりも低いこととを表す、少なくとも1つの車両制御システムから受信した少なくとも1つの入力信号に応答して、加熱率が検知率よりも低く、閾値温度は目標温度未満である。
【0010】
いくつかの実施態様では、比率及び/又はデューティサイクル継続期間は、車両構成要素の表面に対する加熱目標速度に基づいて選択される。
【0011】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、ドア開/閉状態の変化を表す入力を含む。
【0012】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、シートベルト着用/非着用状態の変化を表す入力を含む。
【0013】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、車両の電源オン/オフ状態の変化を表す入力を含む。
【0014】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、車両が走行している速度を表す車速入力を含む。
【0015】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、カメラに基づく監視システムからの、車両内の乗員の存在/非存在を表す入力を含む。
【0016】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、ステアリングコラム位置の変化を表す入力を含む。
【0017】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、点火スイッチからの入力を含み、且つ点火スイッチからの入力は、点火スイッチ状態の変化を表す。
【0018】
いくつかの実施態様では、点火スイッチ状態の変化は、オン状態、オフ状態、アクセサリモード状態、又はクランク状態の間で変化することを含む。
【0019】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、座席位置の変化を表す入力を含む。
【0020】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、ブレーキペダルの踏み込みを表す入力を含む。
【0021】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、車両が自動又は半自動運転モードにあることを表す入力を含む。
【0022】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、車両の電源オン/オフ状態を遠隔操作で変化させたことを表す入力を含む。
【0023】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、駐車支援システムを作動させていることを表す入力を含む。
【0024】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、車車間(V2V)通信システムからの入力を含む。
【0025】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、路車間(V2I)通信システムからの入力を含む。
【0026】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの入力信号は、車両の電源が遠隔操作でオン又はオフにされていることを表す入力を含む。
【0027】
いくつかの実施態様では、電極は、ステアリングホイール内に配置される。
【0028】
いくつかの実施態様では、電極は、座席内に配置される。
【0029】
いくつかの実施態様では、検知ゾーンは第1の検知ゾーンであり、電極は第1の電極であり、且つシステムは、第1の電極から離間して配置される第2の電極を更に含む。第2の電極は、第1の検知ゾーンから離間して配置される第2の検知ゾーン内にある。
【0030】
いくつかの実施態様では、第1の電極及び第2の電極は、基板の表面に配置される。
【0031】
いくつかの実施態様では、電極は第1の電極であり、且つシステムは、第1の電極と車両構成要素のフレームとの間に配置された第2の電極を更に含む。第2の電極はプロセッサと電気通信し、且つ命令は、プロセッサに、第2の電極と通信するためのシールド信号を生成することを行わせる。シールド信号は、第1の電極と車両構成要素のフレームとの間の寄生容量を低減する。
【0032】
いくつかの実施態様では、命令は更に、プロセッサに、検知ゾーンとの近接度を表す通知された検知信号測定値の連続的変化の間に経過した時間を表す検知継続期間値を受信することを行わせ、並びにデューティサイクル及び/又はデューティサイクルの比率の選択は更に、検知継続期間値に基づく。
【0033】
種々の他の実施態様では、車両構成要素加熱システムは、コンピュータと、少なくとも1つの電極と、プロセッサとを含み得る。コンピュータは、電力信号に対するデューティサイクルを規定する電源を制御し、電力信号は、加熱信号と、検知信号と、信号が生成されないデューティサイクル内の休止期間とを含む。少なくとも1つの電極は、電源に接続されて、車両構成要素の検知ゾーン内に配置される。少なくとも1つの電極は、電源から電力信号を受信する。電極は、加熱信号を受信したことに応答して検知ゾーン内の車両構成要素の表面に熱を発生させ、且つ検知信号を受信したことに応答して車両乗員と検知ゾーンとの近接度を検知する。プロセッサは、コンピュータに接続されて、電源とメモリと電極と少なくとも1つの車両制御システムと電気通信する。メモリは、プロセッサを制御するための命令を記憶し、且つ命令は、プロセッサに、(1)電極からの検知信号の連続的変化の間に経過した時間を表すとともに検知ゾーンとの近接度を表す検知継続期間値を受信することと、(2)受信した検知継続期間値に基づいて、加熱信号を生成するためのデューティサイクルの加熱率、検知信号を生成して測定し、測定された検知信号をメモリに通知するためのデューティサイクルの検知率、及び信号が生成されないデューティサイクルの休止率を選択することであって、加熱率と検知率と休止率の合計が100%である、選択することと、(3)選択された比率に従って加熱信号及び/又は検知信号を生成するように電源を構成することと、(4)選択された比率に基づいて、検知信号を測定し、測定された検知信号を通知することとを行わせる。
【0034】
本発明の特徴、態様、及び利点は、以下の説明と、以下に簡潔に説明する、図面に示す添付の例示的な実施態様とから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】
図2は、例示的な実施態様による、複数のヒータゾーンを含む乗員検知システムを含むステアリングホイールの概略正面図である。
【
図3】
図3は、並列構成を有する乗員検知システムの概略図である。
【
図4】
図4は、別の並列構成を有する乗員検知システムの概略図である。
【
図5】
図5は、直列構成を有する乗員検知システムの概略図である。
【
図6】
図6は、一実施態様による、加熱信号を生成し、検知信号を生成して測定し、測定された検知信号を通知し、且つ/若しくは休止状態となる比率及び/又はデューティサイクル継続期間を選択するフローチャートである。
【
図7】
図7は、別の実施態様による、加熱信号を生成し、検知信号を生成して測定し、測定された検知信号を通知し、且つ/若しくは休止状態となる比率及び/又はデューティサイクル継続期間を選択するフローチャートである。
【
図8-9】
図8および
図9は、種々の実施態様による、異なる比率及びデューティサイクル継続期間を有する例示的なデューティサイクルを図示している。
【
図10】
図10は、
図6及び
図7のコンピュータ化された命令を実行するように構成された車両構成要素加熱システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方が、例示及び説明的なものに過ぎないことを理解されたい。
【0037】
本開示の実施態様は、限定されるものではないが、本明細書で述べるコンピュータ制御アルゴリズムの影響下にあるバッテリなどの、電源によって生成された電力信号のデューティサイクルに言及する。非限定的な一例において、電子制御ユニット又はコンピュータは、(
図3~
図5の電圧源として図示する)電源を制御してもよく、且つ種々の実施態様の特徴を実現するために以下に説明するプロセッサと関連のソフトウェアを記憶するメモリとに接続されてもよい。従来の用語では、デューティサイクルとは、対象信号がゼロ以外の大きさを有する(すなわち、信号が能動である)信号周期の比率を指す。よって、「デューティサイクル」という用語は、常にとは限らないが、特定の周波数で生成された信号に対して考慮されることが多い。しかしながら、本開示は、「デューティサイクル」という用語の標準的な定義を含むのみならず、より広範な考慮事項を指すこともある。例えば、本明細書で述べるデューティサイクルは、入力電力信号の規定のサイクルの100パーセント(100%)を占めるその電力信号の比率で構成され得る。規定のサイクルは、電力信号サイクルが再び繰り返すまでの電力信号のデューティサイクル継続期間を共に規定する(大きさがゼロである休止期間及び任意のオフセット電圧を含む)任意のそれぞれの大きさの全ての所望のシーケンスを含み得る。非限定的な一例では、電力信号のデューティサイクルは、電力信号を構成する、加熱信号と休止時間と検知信号についてのそれぞれの比率を含む。
【0038】
図10に示す車両構成要素加熱システムは、コンピュータ1000と、少なくとも1つの電極18と、プロセッサ1002とを含む。コンピュータ1000は、電力信号のデューティサイクルを規定する電源1010を制御する。電力信号は、加熱信号と、検知信号と、加熱信号も検知信号も生成されないデューティサイクル内の休止期間とを含む。いくつかの実施態様では、休止期間に信号が生成されなくてもよい。少なくとも1つの電極18は、電源1010に接続されて、車両構成要素の検知ゾーン内に配置される。電極18は、加熱信号を受信したことに応答して検知ゾーン内の車両構成要素の表面に熱を発生させ、且つ検知信号を受信したことに応答して車両乗員と検知ゾーンとの近接度を検知する。システムは、コンピュータ1000に接続されてメモリ1004と電極18と少なくとも1つの車両制御システム1020と電気通信するプロセッサ1002を更に含む。メモリ1004は、プロセッサ1002を制御するための命令を記憶し、且つ命令は、プロセッサ1002に、(1)少なくとも1つの車両制御システム1020からの少なくとも1つの入力信号及び/又は電極18からの検知信号の連続的変化の間に経過した時間を表すとともに検知ゾーンとの近接度を表す検知継続期間値を受信することと、(2)加熱信号を生成するためのデューティサイクルの加熱率、検知信号を生成するためのデューティサイクルの検知率、加熱信号も検知信号も生成されないデューティサイクルの休止率、及び/又はデューティサイクル継続期間を選択することであって、加熱率と検知率と休止率の合計が100%である、選択することと、(3)選択された比率に基づいて、加熱信号を生成し、且つ/又は検知信号を生成して測定し、測定された検知信号を通知することとを行わせる。いくつかの実施態様では、命令はまた、プロセッサ1002に、加熱信号及び/又は検知信号を生成し、検知信号を測定し、選択された比率に従って測定された検知信号を通知するように電源1010を構成することを行わせる。コンピュータ1000は、クロック1008と、通信ハードウェア1012とを更に含み得る。そして、プロセッサ1002及びメモリ1004は、
図10に示すように、電子制御装置1006の構成要素であり、電子制御装置1006は、いくつかの実施態様では、コンピュータ1000の構成要素である。
【0039】
米国特許出願公開第2007/0192007号明細書及び米国特許出願公開第2014/0151356号明細書に開示されている乗員検出知システムと同様に、検知回路(例えば、ASIC)は、乗員の手がステアリングホイールに近接していること又は乗員の身体が別の車両構成要素(例えば、座席)に近接していることを検出するために、複素インピーダンスの変化に関するデータを提供するように設計することができる。また、加熱システムの動作には、米国特許第7,521,940号明細書に開示されている方法及び構造的特徴を採用することができる。これらの出願及びこの特許は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0040】
図1は、車室の運転席の例示的な図を示している。
図1を参照すると、車両運転者は、ステアリングホイール12と車両座席(例えば、運転者の座席13)とを備えた運転席(車室内)10から車両を運転し得る。運転者の座席13に着座しているときに、運転者は、ステアリングホイール12を回転させて車両車輪の向きを変え、車両を所望の方向に進めてもよい。ステアリングホイール12はまた、車両用オーディオシステムの制御(例えば、音量、チューニング、モードなど)、車両用照明の制御(例えば、天井照明、ヘッドライトなど)、電話機制御、クルーズコントロール、又は他の好適な制御などの、運転者から容易に手の届く範囲内に設けられたスイッチ又はボタンの形態の種々の制御手段を含み得る。当業者であれば、ステアリングホイール12が、種々の例示的な実施態様による、本明細書に開示した制御手段の任意の組み合わせを含み得ることと、これらの構成が、ステアリングホイール12に設けられた制御手段の可能な配置を限定するように意図されていないことを理解すべきである。例えば、例示的な一実施態様において用いられる要素は、別の例示的な実施態様において用いられる要素との種々の組み合わせで用いられてもよい。
【0041】
図2は、複数のセンサ/ヒータゾーン16を有する例示的なステアリングホイール12を図示している。ステアリングホイール12は、リング状の外側部分14、すなわちリムと、車両のステアリングコラムに結合された、内側部分15、すなわちハブとを含む。外側部分14は、剛性フレーム又はアーマチュアで形成されてもよく、剛性フレーム又はアーマチュアは、外側層(例えば、外皮、カバー、ラップなど)によって部分的又は完全に覆われてもよい。外側層は、ステアリングホイール12に審美的に魅力的な外観を提供するように且つ人間工学的に魅力的な層をステアリングホイール12の外側表面に追加するように(つまり、外皮がステアリングホイール12の人間工学性、手触り、把持性などを向上させるように)構成されてもよい。本明細書では特定のステアリングホイールが説明されているが、本明細書に開示する例示的な実施態様によるステアリングホイールシステムが任意の好適な構成を有し得ることと、特定の外側部分及び内側部分が限定的なものではないことは容易に理解されるはずである。
【0042】
更に、ステアリングホイール12の外側部分14は、1つ又は複数のセンサ/ヒータゾーン16を含む。センサ/ヒータゾーン16は、運転者の手を温めるか又は手とセンサ/ヒータゾーン16との近接度を検知するように選択的に作動可能である。図に示すセンサ/ヒータゾーン16の数、位置、及び構成が例示であり且つステアリングホイールに設けられたセンサ/ヒータゾーンの可能な種々の構成を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。例えば、ステアリングホイール12は、1つ又は複数の対応するセンサ/ヒータゾーン16を提供するための1つ又は複数の電極18を含み得る。センサ/ヒータゾーン16は、ステアリングホイール12における任意の好適な箇所に(例えば、外側部分14に沿って又は内側部分15に)設けられてもよい。そして、上述のように、センサ/ヒータゾーン16は、座席13などの、別の車両構成要素における任意の好適な箇所に設けられてもよい。
【0043】
図3は、一実施態様による車両構成要素加熱システム20の概略図を示している。システム20は、各センサ/ヒータゾーン16内に配置される、電極18(例えば、加熱要素)を含む。システム20は、任意の好適な数のセンサ/ヒータゾーン内に位置決めされた任意の好適な数のそのような電極を含み得る。電極18は、電極に加熱信号が供給されたときに車両乗員に暖を与えるために用いられてもよい(例えば、電極は、乗員の手に伝達される熱を発生させてもよい)。更に、電極18は、電極18に検知信号が供給されたときに車両乗員の手と検知ゾーンとの近接度を判定するために用いられてもよい。加熱信号は、検知信号と比較して大電流を流してもよい。このように、電極18は、協働してセンサ及びヒータとして用いられるように構成される。したがって、電極18は、ヒータゾーンの加熱要素の上に別個のセンサ及びシールドを追加することに関連するコスト及びパッケージ化の難しさを緩和してもよい。
【0044】
電極18は、車両電源(例えば、バッテリ又はオルタネータなどによって給電され得る車両のDCバス)に結合されてもよい。更に、車両電源は、電極に加熱信号を供給するために用いられてもよい。システム20は、ヒータゾーンの温度を制御する(したがって、加熱される車両構成要素(例えば、ステアリングホイール12又は座席13)が過熱しない)ように、加熱信号を制御又は調整するために用いられる、様々な制御手段、センサ、及び他の要素を更に含み得る。
【0045】
例示的な実施態様によれば、システム20の電子制御装置又はプロセッサは、検知信号が電極18に供給されるか、加熱信号が電極18に供給されるか、又は信号が電極18に供給されないかを制御する。例示的な一実施態様では、本開示の目的と、乗員の身体とセンサ/ヒータゾーン16との近接度に基づいて供給される各信号の印加とを達成するために、コンピュータ制御される電圧が電源からの電力信号として電極18に印加される。例えば、電極18がステアリングホイール12のセンサ/ヒータゾーン16内に配置される例示的な実施態様によれば、制御装置は、センサ/ヒータゾーン16の近傍で手が検出されるまで又は検出されない限り、電極18に加熱信号を供給しなくてよい。換言すれば、システム20は、身体の一部がセンサ/ヒータゾーン16に近接していると検知されたときに電極18に加熱信号を自動的に供給するように構成されてもよい。
【0046】
例示的な実施態様によれば、制御装置は、加熱信号及び検知信号を、所定の時間間隔で交互に電極18に供給する。更に、加熱信号及び検知信号は、システム20において多数の電極がどのように配設されるか(例えば、多数の電極が並列に配設されるか直列に配設されるか)に基づいて、多数の電極間で時間多重化されてもよい。
【0047】
システム20は、電極18と直列に位置決めされた様々な固体素子を含み得る。固体素子は、検知モードにおける高インピーダンスと加熱モードにおける低インピーダンスとを切り替える。固体素子は、限定されるものではないが、ハイサイドドライバ及びローサイドドライバとして構成できる、MOSFETSなどのトランジスタを含み得る。固体素子は、検知モードにおける検知周波数で、及び加熱モードにおける加熱周波数で任意の好適なインピーダンスを有し得る。スイッチ負荷が、電極を較正するために検知モードで用いられてもよい。例示的な実施態様によれば、インダクタからの検知信号をシールドするために、駆動シールド信号が与えられてもよい。更に、多数の駆動シールド信号レベルをシールドノードに印加して、センサとシールドノードとの間のインピーダンスを切り替えることを含み得る、多重測定法を利用してもよい。このようにして、インダクタの構成(例えば、測定アーキテクチャ)によって引き起こされる(生じる、起因するなど)エラーが、低減され、取り消され、軽減されてもよい。
【0048】
図3~
図5は、システム20の種々の構築例を図示している。それらの例は、ハイサイドMOSFET及びローサイドMOSFETと、それぞれスイッチ26a、26bとして示す、他の固体スイッチ素子とを含む。更に、システム20は、電極18用のスイッチ26と検知ノード28との間に追加のインピーダンス源又はインダクタとしての大電流スイッチ24を含む。しかしながら、上で説明したように、代替的で例示的な実施態様では、インピーダンス源は、任意の特定の固体スイッチ素子に限定されるものではなく、適切なインピーダンスを有する、他のFET又は他の任意の好適な要素を含み得る。
【0049】
図3を参照するに、システム20は、検知及び加熱が時間多重化される並列加熱構成を有するものとして示されている。
図3に示すように、システム20は、多数のヒータゾーン16a、16b用のハイサイドスイッチ26a及びローサイドスイッチ26bを含み得る。そのような並列加熱構成は、システム20の複雑さ及びコストを低減し得る。更に、各センサ/ヒータゾーン16a、16bは、スイッチ24として示す、分離インピーダンス源(すなわち、インダクタ)を電極18のいずれかの側に含み得る。
図3に示すように、システム20は、全てのセンサ/ヒータゾーン16a、16bに対する加熱がオフ状態であるときに車両乗員の存在を検知するように構成されてもよい。当業者であれば、2つのセンサ/ヒータゾーン16a、16bが
図3に示されているが、任意の数のセンサ/ヒータゾーンを含むようにシステム20を構成できることを理解すべきである。
【0050】
ここで
図4を参照すると、システム20’は、乗員検知機能及び加熱機能が個々の検知/加熱ゾーンに対して時間多重化される並列加熱構成を含み得る。例えば、
図4に示すシステム20’は、第1のセンサ/ヒータゾーン16a’内の乗員の存在を検知するように且つ同時に/又は第2のセンサ/ヒータゾーン16b’に暖/熱を与えるように構成される。特定時間の経過後に、第1のセンサ/ヒータゾーン16a’及び第2のセンサ/ヒータゾーン16b’は、機能を入れ替えて(すなわち、切り替えて)もよく、結果として、システム20’は、第2のセンサ/ヒータゾーン16b’内の乗員の存在を検知するように且つ同時に第1のセンサ/ヒータゾーン16a’に暖/熱を与えるように構成される。ハイサイドスイッチ26a’及びローサイドスイッチ26b’は、センサ/ヒータゾーン16a’、16b’の各々に対して設けられる。当業者であれば、2つのセンサ/ヒータゾーン16’が
図4に示されているが、任意の数のセンサ/ヒータゾーンを含むようにシステム20’を構成できることを理解すべきである。
【0051】
ここで
図5を参照すると、システム20’’は、乗員検知機能及び加熱機能が時間多重化される直列加熱構成を含み得る。システム20’’は、
図5に示すように、限定されるものではないが、ハイサイドスイッチ26a’’とローサイドスイッチ26b’’とを含む、適切な固体スイッチを含み得る。更に、
図5に示すセンサシステム20’’は、並列設計(例えば、上で説明し且つ
図3~
図4に示す)と比較して、より少ない分離インピーダンス源(例えば、スイッチ24’’)を含み得る。したがって、直列設計を有するシステム(例えば、システム20’’)のコストは、並列設計を有するシステム(例えば、システム20、20’)のコストよりも低くなることがある。更に、
図5に示すように、直列設計を有するセンサシステム20’’は、各ヒータゾーン16’’の加熱機能がオフ状態である場合に、単一のセンサ/ヒータゾーン16’’内の乗員の存在を検知してもよい。当業者であれば、3つのセンサ/ヒータゾーン16’’が
図5に示されているが、任意の数のセンサ/ヒータゾーンを含むようにセンサシステム20’’を構成できることを理解すべきである。
【0052】
上で説明したシステム20、20’、20’’のいずれかに関して、プロセッサ22、22’、22’’は、メモリと電極18、18’、18’’と少なくとも1つの車両制御システム23、23’、23’’と電気通信する。メモリは、例えば、
図6及び
図7のフローチャートを実行するように構成された命令などの、プロセッサ22、22’、22’’を制御するための命令を記憶する。
図6は、プロセッサ22、22’、22’’によって実行され得る、加熱区間、検知区間、及び休止区間を選択する方法を図示している。
【0053】
方法600は、少なくとも1つの車両制御システム23、23’、23’’から少なくとも1つの入力信号を受信するステップ602で始まる。次いで、ステップ604では、加熱信号を生成するためのデューティサイクルの加熱率、検知信号を生成して測定し、測定された検知信号を通知するためのデューティサイクルの検知率、加熱信号も検知信号も生成されない(例えば、信号が生成されない)デューティサイクルの休止率、及び/又はデューティサイクル継続期間は、少なくとも1つの車両制御システム23、23’、23’’からの少なくとも1つの入力信号に基づいて選択される。加熱率と検知率と休止率の合計は、本明細書で説明する回路及びコンピュータ制御アルゴリズムに従って加熱及び検知を行うために使用される電力信号全体に対する規定のデューティサイクルの100%である。電力信号のデューティサイクルは、少なくとも1つの車両制御システム23、23’、23’’からの入力信号によって少なくとも部分的に決定されるように、異なる条件に対して経時的に変化する。デューティサイクルの継続期間は、少なくとも1つの入力信号に基づいて、又は検知測定値の変化及び/若しくは検知測定の継続期間に基づいて選択され、予め設定されてもよい。次いで、ステップ606では、加熱信号が生成される時間及び/又は検知信号が生成されて測定され測定値が通知される時間が、選択された比率及び/又はデューティサイクル継続期間に基づく。
【0054】
デューティサイクルは、一連の種々の信号大きさ(ゼロである大きさを含む)の全体が完成される期間と見なされてもよい。期間(「デューティサイクル継続期間」と称される)は、プロセッサ22、22’、22’’が加熱信号を生成する部分(「加熱率」と称される)、プロセッサ22、22’、22’’が検知信号を生成して測定し且つ検知信号を通知する部分(まとめて「検知率」と称される)、並びに/又はプロセッサ22、22’、22’’が休止状態となる部分(「休止率」と称される)に分割される。加熱する期間、検知する期間、及び休止状態となる期間の比率の合計は、100%であり、加熱率、検知率、及び休止率の各々は、デューティサイクル継続期間の0%~100%とすることができる。加熱信号及び検知信号は、目下の条件に適した同じ又は異なる大きさを有し得、且つデューティサイクルの休止部分は、大きさがゼロである期間又はオフを示す別の一定の大きさの期間であってもよい。例えば、デューティサイクルは、いくつかの実施態様よれば、100ミリ秒~4秒のデューティサイクル継続期間を有し得る。本開示のいずれも、デューティサイクルの一部分を所与の電力信号についての任意の特定の数、種類、又は使用に限定するものではなく、且つデューティサイクルは、特定の目的に必要なそれぞれの大きさを有する追加部分についての比率を含み得る。
【0055】
いくつかの実施態様によれば、デューティサイクル継続期間及び/又はデューティサイクルの比率の選択は、検知信号の測定値と、電極18から受信した検知信号の測定値がそれぞれのセンサ/ヒータゾーン16における存在又は非存在の変化を表すかどうかとに基づく。例えば、ある特定の実施態様では、センサ/ヒータゾーン16における存在又は非存在の変化を表す検知信号の測定値に応答して、デューティサイクル継続期間が減少し且つ/又は検知率が増加する。そして、ヒータ/センサゾーンにおける存在又は非存在に変化がないことと、表面の温度が目標温度よりも低いこととを表す検知信号の測定値に応答して、デューティサイクル継続期間が増加し且つ/又は加熱率が増加する。
【0056】
例えば、乗員の身体が車両構成要素に存在する状態又は車両構成要素から離れた状態から変化したときに、後続のデューティサイクルにおいて測定されて電極18から通知された検知信号が、前回のデューティサイクルにおいて測定されて通知された検知信号から変化する。例えば、連続するデューティサイクル中に乗員がステアリングホイールに触れた後、ステアリングホイールに触れない場合(又はその逆も同様である)、測定されて通知される検知信号は、存在又は非存在の変化を表す。しかしながら、連続するデューティサイクル中に乗員が車両構成要素に触れ続けるか又は触れない状態を続ける場合、測定されて通知される検知信号は、連続するデューティサイクルから測定された検知信号の変化(又は存在若しくは非存在の変化を表すある特定の閾値よりも大きな変化)を表さない。測定されて通知された検知信号の変化を検出したことに応答して、プロセッサは、より短いデューティサイクル継続期間を選択し、且つ/又は検知信号を生成して測定するために検知率を増加させて、測定値をより頻繁に通知する。プロセッサが検知信号測定値の変化をもはや検出しなくなったときに、プロセッサは、デューティサイクル継続期間を増加させ且つ/又は検知率を低下させる。
【0057】
加えて、いくつかの実施態様では、システムは、存在又は非存在の変化を表す検知信号測定値の連続的変化の間に経過した時間を表す検知継続期間値に基づいて、デューティサイクルの加熱率、検知率、若しくは休止率及び/又はデューティサイクル継続期間を選択する。例えば、
図7は、プロセッサ22、22’、22’’によって実行され得る、加熱率、検知率、及び休止率を選択する方法を図示している。方法700は、検知信号の連続的変化の間に経過した時間を表すとともに検知ゾーンとの近接度を表す検知継続期間値を受信するステップ702で始まる。次いで、ステップ704では、加熱率、検知率、休止率及び/又はデューティサイクル継続期間が、検知継続期間値に基づいて選択される。その後、ステップ706では、電源が、選択された比率に従って加熱信号及び/又は検知信号を生成するように構成される。ステップ708では、検知信号が測定され、測定された検知信号が通知される。例えば、いくつかの実施態様では、検知継続期間値が増加するにつれて、加熱率及び/又はデューティサイクル継続期間が増加する。検知継続期間値の増加は、存在又は非存在状況がより高い頻度で変化しているときよりも長い期間にわたって加熱信号を生成する機会を与える、より一貫した存在又は非存在を表す。検知継続期間値が所定の閾値に達した場合に、加熱率を増加させてもよく、且つ検知率及び/又は休止率を低下させてもよい。デューティサイクル継続期間も増加させてもよい。例えば、より一貫したセンサ信号測定の間の100ミリ秒のデューティサイクル継続期間に対して、加熱率及び検知率を40%に設定してもよく、且つ休止率を20%に設定してもよく、これによって、より一貫した存在/非存在状況が表される。これらの設定によって、40ミリ秒間に加熱信号が生成され、且つ40ミリ秒間に検知信号が生成されて測定され、測定値が通知され、且つ20ミリ秒間は信号が生成されない。この例又は他の例のいずれも、本開示の任意の実施態様について任意の加熱信号、検知信号、又は休止時間の順序を限定するものではない。また、センサ信号測定値の変化の間の検知継続期間値が所定の閾値に達したか又は所定の閾値を超えた場合に、加熱率を80%に増加させ、検知率を5%に低下させ、且つ休止率を15%に低下させ、並びにデューティサイクル継続期間を1秒に増加させてもよく、このことは
図8に示されている。
【0058】
加えて、所定の閾値、相対比率、及び/又はデューティサイクル継続期間は、導入時又は導入後に設定することができる。この実施態様では、所定の閾値は、時間に基づく閾値(ミリ秒、秒、分など)である。しかしながら、他の実施態様では、所定の閾値は、検知信号(例えば、接地に対する乗員検出結合)のレベル又は検知信号のレベルの変化量(Δ)であってもよい。
【0059】
別の例として、いくつかの実施態様では、車両構成要素の表面の温度が上昇するにつれて、加熱率が低下する。例えば、いくつかの実施態様では、少なくとも1つの車両制御システムから受信した少なくとも1つの入力が、乗員がセンサ/ヒータゾーン16に隣接していることと、車両構成要素の表面の温度が閾値温度よりも低いことを表す場合に、加熱率は、検知率及び/又は休止率よりも高い。例えば、これらの条件下では、加熱率が90%、検知率が10%、休止率が0%であってもよい。この状況では、1秒のデューティサイクル継続期間に対して、プロセッサは、900ミリ秒間に加熱信号を生成し、且つデューティサイクルの100ミリ秒間に検知信号を生成して測定し、測定値を通知する。4秒のデューティサイクル継続期間に対して、プロセッサは、3600ミリ秒間に加熱信号を生成し、且つデューティサイクルの400ミリ秒間に検知信号を生成して測定し、測定値を通知する。そして、別の例として、
図9に示すように、デューティサイクル継続期間が10ミリ秒に減少し、検知率が60%に設定され、休止率が30%に設定され、且つ加熱率が10%に設定される。
図9に示すデューティサイクルでは、検知信号が最初に生成され、次いで、信号が生成されず、その後、加熱信号が生成される。しかしながら、他の実施態様では、加熱信号及び検知信号が生成される順序、並びにデューティサイクル継続期間内の休止時間が異なってもよい。車両構成要素の表面の温度が上昇して閾値温度を超える(但し、目標温度よりも低い)と、加熱率が低下する。閾値温度は目標温度未満であり、且つ目標温度は、車両構成要素が達するように意図される温度である。目標温度に達した時点で、加熱率及び休止率が0%に設定され、且つ検知率が100%に設定されてもよい。別の例として、加熱率が0%に設定されてもよく、且つ検知率及び休止率が0%~100%(例えば、80%の検知率及び20%の休止率、又は100%の検知率及び0%の休止率)に設定されてもよい。
【0060】
追加の又は更なる実施態様では、加熱率、検知率、及び/若しくは休止率、並びに/又はデューティサイクルの継続期間は、車両構成要素の表面の加熱目標速度に基づいて選択される。加熱目標速度は、車両構成要素に対して予想される温度の経時的な変化及び/又は車両構成要素が目標温度に達すると予想される最大時間を表す。いくつかの実施態様では、車両構成要素の表面の温度が閾値温度及び/又は目標温度に近づくにつれて、加熱率が低下する。例えば、いくつかの実施態様では、選択された比率は、予想される最大時間内に車両構成要素を目標温度まで加熱するのに十分な加熱信号をシステムが生成することを可能にする。
【0061】
デューティサイクルの相対比率及び/又はデューティサイクル継続期間は、プロセッサが種々の車両制御システムから受信した2次入力に基づいて選択されてもよい。例えば、検知率又はデューティサイクル継続期間の増加をもたらし得る入力は、乗員が車両運転席に乗り込んだこと又は車両運転席内にいることを表す入力を含み得る。例えば、入力は、(例えば、ドアセンサシステムからの)ドア開/閉状態の変化を表す入力、(例えば、シートベルトセンサシステムからの)シートベルト着用/非着用状態の変化を表す入力、(例えば、車速センサシステムからの)車両が走行している速度を表す車速入力、カメラに基づくシステムからの、車両内の乗員の存在/非存在を表す入力、(例えば、ステアリングセンサシステムからの)ステアリングコラム位置の変化を表す入力、点火スイッチからの点火スイッチ状態(例えば、オン状態、オフ状態、アクセサリモード状態、又はクランク状態の間で変化する)の変化を表す入力、(例えば、座席位置検知システムからの)座席位置の変化を表す入力、(例えば、ブレーキペダルセンサシステムからの)ブレーキペダルの踏み込みを表す入力、(例えば、動作モードシステムからの)車両が自動若しくは半自動運転モードにあることを表す入力、駐車支援システムを作動させる入力、車車間(V2V)通信システムからの入力、又は路車間(V2I)通信システムからの入力を含み得る。車両が自動又は半自動運転モードにあることを表す入力を少なくとも1つの入力信号が含む状況では、半自動又は自動運転モードは、ある特定の乗員の入力を必要とせずに車両が少なくとも部分的に動作する運転状態を表すことに留意されたい。例えば、半自動又は自動運転モードは、運転中に車線を変更するために用いられる、ステアリングホイール、アクセル、ブレーキ、並びに/又は構成要素及び付属品に乗員が触れる必要なしに車両が動作する動作モードを含む。例えば、半自動又は自動運転モードは、SAE国際規格(International Standard)J3016のSAEレベル1~5を含み得る。
【0062】
本開示の実施態様は、電源1010を制御して電力信号用のデューティサイクルを規定するコンピュータ1000などの、
図10に図示する装置を更に含み、電力信号は、加熱信号と、検知信号と、加熱信号も検知信号も生成されないデューティサイクル内の休止期間とを含む。コンピュータ1000は、電源に接続されて車両構成要素の検知ゾーン内に配置され且つ電源から電力信号を受信する少なくとも1つの電極であって、加熱信号を受信したことに応答して検知ゾーン内の車両構成要素の表面に熱を発生させ且つ検知信号を受信したことに応答して車両乗員と検知ゾーンとの近接度を検知するための電極と通信ハードウェア1012を介してデータ通信するように構成される。コンピュータは、電源1010とメモリ1004と電極18と少なくとも1つの車両制御システム1020と電気通信するプロセッサを含み得るか、又はこのプロセッサに接続するように構成されてもよい。メモリは、プロセッサを制御するための命令を記憶し、且つ命令は、プロセッサに、(1)電極からの検知信号の連続的変化の間に経過した時間を表すとともに検知ゾーンとの近接度を表す検知継続期間値を受信することと、(2)受信した検知継続期間値に基づいて、加熱信号を生成するためのデューティサイクルの加熱率、検知信号を生成して測定し、測定された検知信号をメモリに通知するためのデューティサイクルの検知率、及び加熱信号も検知信号も生成されないデューティサイクルの休止率を選択することであって、加熱率と検知率と休止率の合計が100%である、選択することと、(3)選択された比率に従って加熱信号及び/又は検知信号を生成するように電源を構成することと、(4)選択された比率に基づいて、検知信号を測定し、測定された検知信号を通知することとを行わせる。
【0063】
比率及び/又はデューティサイクル継続期間を決定するために使用され得る他の種類の入力は、電源オン/オフ状態(例えば、バッテリ若しくはエンジンオン/オフ状態)の変化を表す入力又は車両に対する電源が(例えば、遠隔電源オン/オフシステムから)遠隔操作でオン若しくはオフにされていることを表す入力を含む。入力は、内燃機関(ICE)自動車、電気自動車、及びこれらの組み合わせなどの、推進システムのタイプにかかわらず、任意の種類の車両に合わせて調整されてもよい。
【0064】
別の例として、車両が静止しているとき、車両の速度が閾値速度未満であるとき、加熱された車両構成要素の温度若しくは車両の内部温度が閾値温度よりも低いとき、又は運転者が車両内にいることが検出されないときなど、検知が重要な仕事ではなく加熱が優先され得ることを表す入力を受信したこと応答して、加熱率及び/又はデューティサイクル継続期間を増加させてもよい。例えば、電源が遠隔操作で開始されているが乗員が車両に乗り込んだことを表す入力が受信されていないことを車両制御システムからの入力が表す場合、検知機能は必要でないので、ステアリングホイール12内の各電極18に提供される加熱信号を生成するためのデューティサイクルの加熱率は、100%となるように選択されてもよい。別の車両制御システムからの入力によって表すように、乗員が車両に乗り込んだときに、プロセッサは、加熱率を低下させて、乗員がステアリングホイール12に触れたかどうか/いつ触れたかをシステムが検知することを可能にする。
【0065】
加えて、電極18は、マットなどの、基板上に配置されてもよい。電極は、いくつかの実施態様によれば、基板の同じ又は異なる側に配置されてもよい。更に、いくつかの実施態様では、システム20は、センサ/ヒータゾーン用の電極18と車両構成要素のフレームとの間に配置されたシールド電極を更に含み得る。
【0066】
シールド電極はプロセッサと電気通信し、且つ命令は、プロセッサに、シールド電極と通信するためのシールド信号を生成することを行わせる。シールド信号は、電極18と車両構成要素のフレームとの間の寄生容量を防止する。
【0067】
本開示の目的で、「結合される」という用語は、2つの構成要素が互いに直接又は間接的に(電気的、機械的又は磁気的に)接合されることを意味する。そのような接合は、事実上静止しているか又は事実上移動可能であってもよい。そのような接合は、2つの構成要素(電気的若しくは機械的)及び任意の追加の中間部材が単一体として互いに若しくは2つの構成要素と一体に画成されることで、又は2つの構成要素及び任意の追加の部材が互いに取り付けられることで実現されてもよい。そのような接合は、事実上恒久的であってもよく、又は代替的に、事実上取り外し可能又は解除可能であってもよい。
【0068】
本開示について例示的な実施態様を参照しながら説明してきたが、当業者であれば、本開示の主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形式上及び詳細に変更が加えられ得ることを認識するであろう。例えば、異なる例示的な実施態様が、1つ又は複数の利益をもたらす1つ又は複数の特徴を含むものとして説明されているかもしれないが、説明した例示的な実施態様又は他の代替的な実施態様では、説明した特徴が相互に交換され得るか、代替的に、互いに組み合わされ得ることが考えられる。本開示の技術は複雑であるので、技術の変化の全てを予測できるわけではない。例示的な実施態様を参照しながら説明する本開示は、できる限り広い範囲であることが意図されていることは明らかである。例えば、特段の断りのない限り、単一の特定要素を引用する例示的な実施態様は、複数のそのような特定要素も包含する。
【0069】
例示的な実施態様は、機械実行可能命令若しくはデータ構造を搬送するか又は記憶するためのコンピュータ又は機械可読媒体を含むプログラム製品を含み得る。例えば、センサ及び加熱要素は、コンピュータ駆動されてもよい。図の方法で示す例示的な実施態様は、機械実行可能命令若しくはデータ構造を搬送するか又は記憶するためのコンピュータ又は機械可読媒体を含むプログラム製品によって制御されてもよい。そのようなコンピュータ又は機械可読媒体は、汎用若しくは専用のコンピュータによって又はプロセッサを備えた他の機械によってアクセスできる任意の利用可能な媒体とすることができる。例として、そのようなコンピュータ又は機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROM若しくは他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置若しくは他の磁気記憶装置、或いは、機械実行可能命令若しくはデータ構造の形態の所望のプログラムコードを搬送若しくは記憶するために使用でき且つ汎用若しくは専用のコンピュータによって又はプロセッサを備えた他の機械によってアクセスできる他の任意の媒体を含むことができる。上記の組み合わせもコンピュータ又は機械可読媒体の範囲内に含まれる。コンピュータ又は機械実行可能命令は、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は専用処理機に、ある特定の機能又は機能群を実行させる命令及びデータを含む。本開示のソフトウェア実施態様は、種々の接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ、及び判定ステップを実現するルールベース論理及び他の論理を用いた標準的なプログラミング技術で実現することができる。
【0070】
好ましい実施態様および他の例示的な実施態様に示すシステムの要素の構築及び配置が例示的なものに過ぎないことに留意することも重要である。本開示ではある特定の数の実施態様のみを詳細に説明してきたが、本開示を検討する当業者であれば、列挙された主題の新規な教示及び利点から大きく逸脱することなく、多くの修正(例えば、種々の要素の大きさ、寸法、構造、形状及び割合、パラメータの値、装着配置、材料の用法、色、向きなどの変更)が可能であることを容易に認識するであろう。例えば、一体に形成されるものとして示す要素を多数の部品から構築してもよく、又は多数の部品として示す要素を一体に形成してもよく、組立作業を逆順で行うか又は別様に変更してもよく、システムにおける構造及び/又は部材又はコネクタ又は他の構成要素の長さ又は幅を変更してもよく、要素間に設けられた調節及び取付位置の性質又は数を変更してもよい。システムの要素及び/又は組立品は、十分な強度又は耐久性を与える多種多様な材料のいずれから構築されてもよいことに留意すべきである。よって、そのような全ての修正は、本開示の範囲内に含まれるように意図されている。任意の工程又は方法ステップの順番又は順序は、代替的な実施態様に従って変更又は再順序付けされてもよい。他の置換、修正、変更、及び省略が、本主題の趣旨から逸脱することなく、好ましい実施態様および他の例示的な実施態様の設計、動作条件及び配置において行われてもよい。