(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】気腹器、気腹器用コネクタおよび気腹装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
A61B17/00
(21)【出願番号】P 2019570280
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2018029963
(87)【国際公開番号】W WO2019155661
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2018019317
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平賀 都敏
(72)【発明者】
【氏名】山岡 弘治
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 侑磨
(72)【発明者】
【氏名】木村 敬太
(72)【発明者】
【氏名】上杉 武文
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 真也
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0287817(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0202391(US,A1)
【文献】特表2012-511394(JP,A)
【文献】特開2005-279061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチューブおよび第2のチューブが接続されたコネクタが挿入可能であり且つ挿入された前記コネクタと接続されるレセプタクルを備えた気腹器であって、
前記レセプタクルは、
前記コネクタと前記レセプタクルの接続時に前記第1のチューブと連通する第1の口金部と、
前記コネクタと前記レセプタクルの接続時に前記第2のチューブと連通する口金本体と前記口金本体を前記コネクタの挿入逆方向に付勢する付勢部材 とを含む第2の口金部とを備えていることを特徴とする気腹器。
【請求項2】
気腹器に設けられたレセプタクルに挿入可能な気腹器用コネクタであって、
前記レセプタクルに設けられた第1の口金部と接続且つ連通する第1のポートと、
前記レセプタクルに設けられた口金本体と前記口金本体を前記気腹器用コネクタの挿入方向とは逆方向に付勢する付勢部材を含む第2の口金部と接続且つ連通する第2のポートと、を備え、
前記第1のポートは、前記第1の口金部とは、仮想の直線に平行な方向である基準方向に延びる前記第1のポートの少なくとも一部と前記第1の口金部の少なくとも一部とが嵌合され且つ重なり合うようにして接続され、
前記第2のポートは、前記第2の口金部とは、前記基準方向において、前記第2のポートの少なくとも一部と前記第2の口金部の少なくとも一部とが嵌合され且つ押し合うようにして接続されることを特徴とする気腹器用コネクタ。
【請求項3】
前記第1のポートと前記第1の口金部との間を封止する第1のシール部材と、
前記第2のポートと前記第2の口金部との間を封止する第2のシール部材とを具備し
、
前記第1のシール部材は、嵌合され且つ重なり合う前記第1のポートと前記第1の口金部との間に位置するように、前記第1のポート内に配置され、
前記第2のシール部材は、嵌合され且つ押し合う前記第2のポートと前記第2の口金部との間に位置するように、前記第2のポート内に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の気腹器用コネクタ。
【請求項4】
前記第1のポートは、前記第1の口金部の少なくとも一部の外周面に対向する内周面と、前記内周面において前記内周面の中心軸周り方向に形成された溝部とを含み、
前記第1のシール部材は、環状の形状を有し、その一部が前記溝部に収容されていることを特徴とする請求項3に記載の気腹器用コネクタ。
【請求項5】
前記第1のシール部材は、弾性変形可能な材料よりなることを特徴とする請求項3に記載の気腹器用コネクタ。
【請求項6】
前記第2のポートは、突出部を含み、
前記第2のシール部材は、前記突出部の先端に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の気腹器用コネクタ。
【請求項7】
前記第2のシール部材は、弾性変形可能な材料よりなることを特徴とする請求項3に記載の気腹器用コネクタ。
【請求項8】
前記第1のポートと前記第1の口金部とが接続且つ連通することによって構成される第1の経路は、患者の腹腔内に気腹用気体を供給するための経路であり、
前記第2のポートと前記第2の口金部とが接続且つ連通することによって構成される第2の経路は、前記腹腔内の圧力を伝達するための経路であることを特徴とする請求項3に記載の気腹器用コネクタ。
【請求項9】
第1の口金部と、第2の口金部と、前記第1の口金部および前記第2の口金部が設けられたレセプタクルとを有する気腹器と、
患者の腹腔内に連通する第1のチューブおよび第2のチューブと、
前記第1の口金部および前記第2の口金部に対して前記第1のチューブおよび前記第2のチューブを接続するために用いられる気腹器用コネクタとを具備する気腹装置であって、
前記気腹器用コネクタは、
互いに反対側に位置する第1の端部および第2の端部を有し、前記レセプタクルに嵌合するコネクタ本体と、
前記コネクタ本体における前記第1の端部側に配置され、それぞれ前記第1のチューブおよび前記第2のチューブが接続される第1の接続部および第2の接続部と、
前記コネクタ本体における前記第2の端部側に配置され、前記第1の接続部に接続された前記第1のチューブに連通し、且つ前記コネクタ本体が前記レセプタクルに嵌合された状態である嵌合状態において前記第1の口金部と接続且つ連通する第1のポートと、
前記コネクタ本体における前記第2の端部側に配置され、前記第2の接続部に接続された前記第2のチューブに連通し、且つ前記嵌合状態において前記第2の口金部と接続且つ連通する第2のポートと、
前記嵌合状態において前記第1のポートと前記第1の口金部との間を封止する第1のシール部材と、
前記嵌合状態において前記第2のポートと前記第2の口金部との間を封止する第2のシール部材とを具備し、
前記第1の端部および前記第2の端部と交差する仮想の直線に平行な方向を基準方向としたときに、前記第1のポートは、前記第1の口金部とは、前記基準方向に延びる前記第1のポートの少なくとも一部と前記基準方向に延びる前記第1の口金部の少なくとも一部とが重なり合うようにして接続され、
前記第2のポートは、前記第2の口金部とは、前記基準方向において、前記第2のポートの少なくとも一部と前記第2の口金部の少なくとも一部とが押し合うようにして接続され、
前記第1のシール部材は、前記嵌合状態において、重なり合う前記第1のポートの少なくとも一部と前記第1の口金部の少なくとも一部との間に位置するように、前記第1のポート内に配置され、
前記第2のシール部材は、前記嵌合状態において、押し合う前記第2のポートの少なくとも一部と前記第2の口金部の少なくとも一部との間に位置するように、前記第2のポート内に配置されていることを特徴とする気腹装置。
【請求項10】
前記第1のポートは、前記第1の口金部の少なくとも一部の外周面に対向し且つ前記基準方向に平行な中心軸を有する内周面と、前記内周面において前記中心軸周り方向に形成された溝部とを含み、
前記第1のシール部材は、環状の形状を有し、その一部が前記溝部に収容されていることを特徴とする請求項9に記載の気腹装置。
【請求項11】
前記第1のシール部材は、弾性変形可能な材料よりなり、前記嵌合状態では、重なり合った前記第1のポートと前記第1の口金部の各々から外力を受けて変形し、前記第1のシール部材から前記第1のポートと前記第1の口金部の各々に向かって生じる第1の反発力によって前記第1のポートと前記第1の口金部との間を封止することを特徴とする請求項9に記載の気腹装置。
【請求項12】
前記第2のポートは、前記基準方向に延びる突出部を含み、
前記第2のシール部材は、前記突出部の先端に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の気腹装置。
【請求項13】
前記第2のシール部材は、弾性変形可能な材料よりなり、前記嵌合状態では、押し合った前記第2のポートと前記第2の口金部の各々から外力を受けて変形し、前記第2のシール部材から前記第2のポートと前記第2の口金部の各々に向かって生じる第2の反発力によって前記第2のポートと前記第2の口金部との間を封止することを特徴とする請求項9に記載の気腹装置。
【請求項14】
前記第2の口金部は、前記基準方向に移動可能に設けられた口金本体と、前記口金本体に対して前記基準方向に付勢力を与える付勢部材とを含み、
前記嵌合状態では、前記第2のポートの少なくとも一部は、前記口金本体を押し込み、前記付勢部材は、前記口金本体に対して、押し込まれた方向とは反対の方向に付勢力を与えることを特徴とする請求項9に記載の気腹装置。
【請求項15】
前記付勢部材は、ばねであることを特徴とする請求項14に記載の気腹装置。
【請求項16】
前記第1のポートと前記第1の口金部とが接続且つ連通することによって構成される第1の経路は、前記腹腔内に気腹用気体を供給するための経路であり、
前記第2のポートと前記第2の口金部とが接続且つ連通することによって構成される第2の経路は、前記腹腔内の圧力を伝達するための経路であり、
前記気腹器は、更に、前記第1の経路の一部を構成し且つ前記気腹用気体を供給する送気管路と、圧力センサと、前記第2の経路の一部を構成し且つ前記圧力センサに連通する圧力測定管路とを有することを特徴とする請求項9に記載の気腹装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気腹器、気腹器に複数のチューブを接続するために用いられる気腹器用コネクタ、および気腹器と気腹器用コネクタとを具備する気腹装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者への侵襲を小さくする目的で、開腹することなく治療処置を行う腹腔鏡下外科手術が行われている。腹腔鏡下外科手術は、患者への侵襲が低いという点から、様々な患者や部位に適用され始めている。具体的には、通常よりも容積が小さい腹腔や直腸等に適用されたり、通常よりも容積が大きい肥満患者等の腹腔に適用されたりしている。
【0003】
腹腔鏡下外科手術においては、例えば、観察用の内視鏡と、処置具と、気腹用気体が患者の腹腔内に導かれる。気腹用気体は、腹腔を膨らませるためのものであり、内視鏡の視野を確保する目的と、処置具の操作領域を確保する目的で用いられる。気腹用気体としては、例えば二酸化炭素ガスが用いられる。気腹用気体は、腔内の圧力を一定にするように、その流量が制御される。
【0004】
気腹用気体を送気する装置としては、例えば、日本国特開2005-245772号公報に記載された気腹器が用いられる。この気腹器は、気腹用気体の供給量を制御するバルブユニットと、気腹用気体の供給路に設けられている圧力センサとを備えている。腹腔内の圧力は、気腹用気体の腹腔内への供給を断続的に行って、送気を停止している状態において、圧力センサによって測定される。
【0005】
しかし、日本国特開2005-245772号公報に記載された気腹器では、送気を停止している状態において腹腔内の圧力を測定するため、圧力制御の応答性が悪く、特に、通常よりも容積が小さい腹腔や直腸等に気腹用気体を送気する場合には、腹腔内の圧力を一定に維持することが難しい。
【0006】
そこで、気腹用気体の供給路とは別に、圧力測定専用の管路を設けた構成の気腹器が考えられる。この構成の気腹器では、腹腔内の圧力をリアルタイムに測定し、且つ圧力測定結果に基づいて気腹用気体の流量を制御することによって、腹腔内の圧力を一定に維持することが可能になる。
【0007】
上記の構成の気腹器では、少なくとも、気腹用気体の供給路と腹腔とを接続するチューブと、圧力測定専用の管路と腹腔とを接続するチューブが必要になる。このように、気腹器に用いられるチューブの数が増加すると、気腹器に設けられた口金部にチューブを接続する時間が増えてしまい、その結果、腹腔鏡下外科手術の準備時間が延びてしまう。これを防止するためには、複数の口金部に対して複数のチューブをワンタッチで接続できる構成にすることが望ましい。
【0008】
また、一般的に、気腹用気体の供給路の口金部や圧力測定専用の管路の口金部にチューブを接続する際には、気体が漏洩して気腹用気体の流量が低下したり、腹腔内の圧力を誤測定したりすることを防止するために、口金部を確実に封止することが必要である。これは、上記のように、複数の口金部に対して複数のチューブをワンタッチで接続できる構成においても同様である。
【0009】
なお、通常よりも容積が大きい腹腔に気腹用気体を送気する場合には、気腹用気体の供給路を複数設けた構成の気腹器が考えられる。この構成の気腹器では、気腹用気体の供給路と腹腔とを接続するチューブが必要になる。この構成の気腹器においても、複数の口金部に対して複数のチューブをワンタッチで接続できる構成にすることが望ましく、且つ複数の口金部を確実に封止することが必要である。
【0010】
そこで、本発明は、気腹器に設けられた2つの口金部に対して2本のチューブをワンタッチで接続することができ、且つ2つの口金部が不完全な状態で封止されることを防止することができる気腹器用コネクタおよび気腹装置を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の気腹器は、第1のチューブおよび第2のチューブが接続されたコネクタが挿入可能であり且つ挿入された前記コネクタと接続されるレセプタクルを備えた気腹器であって、前記レセプタクルは、前記コネクタと前記レセプタクルの接続時に前記第1のチューブと連通する第1の口金部と、前記コネクタと前記レセプタクルの接続時に前記第2のチューブと連通する口金本体と前記口金本体を前記コネクタの挿入逆方向に付勢する付勢部材 とを含む第2の口金部とを備えている。
本発明の一態様の気腹用コネクタは、気腹器に設けられたレセプタクルに挿入可能な気腹器用コネクタであって、前記レセプタクルに設けられた第1の口金部と接続且つ連通する第1のポートと、前記レセプタクルに設けられた口金本体と前記口金本体を前記気腹器用コネクタの挿入方向とは逆方向に付勢する付勢部材を含む第2の口金部と接続且つ連通する第2のポートと、を備え、前記第1のポートは、前記第1の口金部とは、仮想の直線に平行な方向である基準方向に延びる前記第1のポートの少なくとも一部と前記第1の口金部の少なくとも一部とが嵌合され且つ重なり合うようにして接続され、前記第2のポートは、前記第2の口金部とは、前記基準方向において、前記第2のポートの少なくとも一部と前記第2の口金部の少なくとも一部とが嵌合され且つ押し合うようにして接続される。
【0012】
また、本発明の一態様の気腹装置は、第1の口金部と、第2の口金部と、前記第1の口金部および前記第2の口金部が設けられたレセプタクルとを有する気腹器と、患者の腹腔内に連通する第1のチューブおよび第2のチューブと、前記第1の口金部および前記第2の口金部に対して前記第1のチューブおよび前記第2のチューブを接続するために用いられる気腹器用コネクタとを具備する気腹装置であって、前記気腹器用コネクタは、互いに反対側に位置する第1の端部および第2の端部を有し、前記レセプタクルに嵌合するコネクタ本体と、前記コネクタ本体における前記第1の端部側に配置され、それぞれ前記第1のチューブおよび前記第2のチューブが接続される第1の接続部および第2の接続部と、前記コネクタ本体における前記第2の端部側に配置され、前記第1の接続部に接続された前記第1のチューブに連通し、且つ前記コネクタ本体が前記レセプタクルに嵌合された状態である嵌合状態において前記第1の口金部と接続且つ連通する第1のポートと、前記コネクタ本体における前記第2の端部側に配置され、前記第2の接続部に接続された前記第2のチューブに連通し、且つ前記嵌合状態において前記第2の口金部と接続且つ連通する第2のポートと、前記嵌合状態において前記第1のポートと前記第1の口金部との間を封止する第1のシール部材と、前記嵌合状態において前記第2のポートと前記第2の口金部との間を封止する第2のシール部材とを具備し、前記第1の端部および前記第2の端部と交差する仮想の直線に平行な方向を基準方向としたときに、前記第1のポートは、前記第1の口金部とは、前記基準方向に延びる前記第1のポートの少なくとも一部と前記基準方向に延びる前記第1の口金部の少なくとも一部とが重なり合うようにして接続され、前記第2のポートは、前記第2の口金部とは、前記基準方向において、前記第2のポートの少なくとも一部と前記第2の口金部の少なくとも一部とが押し合うようにして接続され、前記第1のシール部材は、前記嵌合状態において、重なり合う前記第1のポートの少なくとも一部と前記第1の口金部の少なくとも一部との間に位置するように、前記第1のポート内に配置され、前記第2のシール部材は、前記嵌合状態において、押し合う前記第2のポートの少なくとも一部と前記第2の口金部の少なくとも一部との間に位置するように、前記第2のポート内に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係わる気腹装置を含む内視鏡システムの構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態における気腹器の構成を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係わるコネクタの断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態における第2のシール部材の断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態におけるレセプタクルと第1および第2の口金部の断面図である。
【
図7】
図6に示したレセプタクルと第1および第2の口金部の正面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係わるコネクタがレセプタクルに嵌合した状態を示す断面図である。
【
図9】
図8に示した状態における第1のポート、第1のシール部材および第1の口金部の断面図である。
【
図10】
図8に示した状態における第2のポート、第2のシール部材および第2の口金部の断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係わる気腹装置の変形例の構成を示す説明図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係わるコネクタの変形例の断面図である。
【
図13】本発明の実施の形態における第1および第2の口金部の変形例とレセプタクルの断面図である。
【
図14】
図12に示したコネクタが
図13に示したレセプタクルに嵌合した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
(内視鏡システムの構成)
始めに、
図1を参照して、本発明の実施の形態に係わる気腹装置を含む内視鏡システム100の構成について説明する。ここでは、患者90の腹腔91内の患部を手術対象とする場合を例にとって説明する。
図1に示したように、内視鏡システム100は、主に、内視鏡装置60と、患者90に対して手術を行うための外科手術装置としての電気メス装置70と、本実施の形態に係わる気腹装置1とを備えている。
【0016】
内視鏡装置60は、内視鏡61と、内視鏡61に供給される照明光を発生する光源装置62と、内視鏡61と光源装置62とを接続するライトガイドケーブル63と、内視鏡61の接眼部に装着された内視鏡カメラ64と、ビデオプロセッサ65と、モニタ66と、内視鏡カメラ64とビデオプロセッサ65とを接続する撮像ケーブル67とを備えている。
【0017】
内視鏡61は、挿入部61Aを有している。挿入部61Aは、患者90に穿刺されたトラカール81を介して、患者90の腹腔91内に挿入される。また、挿入部61Aは、その内部に設けられたライトガイドと、挿入部61Aの先端に位置する照明窓および観察窓とを有している。光源装置62において発生した照明光は、ライトガイドケーブル63およびライトガイドを順に伝送して、照明窓から腹腔91内の患部に対して照射される。
【0018】
照明光によって照らされた患部等の被写体は、観察窓に設けられた対物レンズによって光学像として結像される。この光学像は、接眼部に伝送される。内視鏡カメラ64は、接眼部に伝送された光学像を撮像し、撮像信号を生成する。この撮像信号は、撮像ケーブル67を介してビデオプロセッサ65に伝送される。ビデオプロセッサ65は、撮像信号に対して所定の信号処理を行うことによって映像信号を生成する。モニタ66は、ビデオプロセッサ65が生成した映像信号を内視鏡画像として表示する。
【0019】
なお、内視鏡カメラ64が装着された内視鏡61の代わりに、挿入部の先端部に撮像素子を内蔵した内視鏡を用いてもよい。
【0020】
電気メス装置70は、電気メス71と、電気メス71に供給される高周波電力を発生する電気メス電源装置72と、電気メス71と電気メス電源装置72とを電気的に接続するケーブル73とを備えている。電気メス71は、患者90に穿刺されたトラカール82を介して、患者90の腹腔91内に挿入される。術者は、電気メス71の把持部等に設けられた図示しないスイッチを操作することによって、焼灼等の所定の処置を行うことができる。
【0021】
気腹装置1は、内視鏡61の視野と電気メス71による手術領域を確保するために、気腹用気体を腹腔91に供給することによって、腹腔91を膨らませる装置である。気腹装置1は、装置本体である気腹器2と、患者90の腹腔91内に連通する第1のチューブ3および第2のチューブ4と、本実施の形態に係わる気腹器用コネクタ(以下、単にコネクタと記す。)5と、気腹用気体としての二酸化炭素を収納する二酸化炭素ガスボンベ(以下、単にガスボンベと記す。)6とを具備している。気腹器2には、各種の操作や設定を行うための図示しない操作部と、腹腔91内の圧力や送気流量等を表示する図示しない表示部とが設けられている。
【0022】
コネクタ5は、第1および第2のチューブ3,4の各々の一端部を気腹器2に接続するために用いられる。第1および第2のチューブ3,4の各々の他端部は、例えば、患者90に穿刺されたトラカール83に接続されている。トラカール83は、第1および第2のチューブ3,4と腹腔91内とを連通させる管路を有している。なお、コネクタ5は、ディスポーザブルタイプのコネクタであってもよい。
【0023】
(気腹器の構成)
以下、
図2を参照して、気腹器2の構成について詳しく説明する。気腹器2は、第1の口金部11と、第2の口金部12と、第1および第2の口金部11,12が設けられたレセプタクル10とを有している。レセプタクル10には、後述するコネクタ5のコネクタ本体が嵌合される。コネクタ5は、第1および第2の口金部11,12に対して第1および第2のチューブ3,4を接続するために用いられる。第1の口金部11には、コネクタ5を介して、第1のチューブ3が接続される。第2の口金部12には、コネクタ5を介して、第2のチューブ4が接続される。本実施の形態では、第1のチューブ3は、患者90の腹腔91(
図1参照)内に気腹用気体を供給するためのものである。第2のチューブ4は、患者90の腹腔91内の圧力を伝達するためのものである。なお、後で、レセプタクル10と第1および第2の口金部11,12の構成について詳しく説明する。
【0024】
気腹器2は、更に、送気管路13を有している。送気管路13の一端は、第1の口金部11に接続されている。送気管路13の他端は、ガスボンベ6に接続されている。送気管路13は、ガスボンベ6の気腹用気体(二酸化炭素)を、第1の口金部11まで導く管路である。
【0025】
気腹器2は、更に、送気管路13の途中に、ガスボンベ6側から順に設けられた減圧器14、流量圧力調整器15、圧力センサ16、流量センサ17および電磁弁18を有している。減圧器14は、ガスボンベ6から送気される気腹用気体の圧力を減圧する。流量圧力調整器15は、減圧された気腹用気体の流量および圧力を調整する。圧力センサ16は、流量圧力調整器15によって調整された気腹用気体の圧力を測定する。流量センサ17は、流量圧力調整器15によって調整された気腹用気体の流量を測定する。電磁弁18は、送気管路13の開閉を行う。
【0026】
気腹器2は、更に、圧力センサ20と、圧力センサ20に連通する圧力測定管路19とを有している。圧力測定管路19の一端は、第2の口金部12に接続されている。圧力測定管路19の他端は、圧力センサ20に接続されている。圧力測定管路19は、第2のチューブ4を介して第2の口金部12に伝達された患者90の腹腔91内の圧力を、圧力センサ20に伝達する管路である。圧力センサ20は、圧力測定管路19によって伝達された患者90の腹腔91内の圧力を測定する。
【0027】
気腹器2は、更に、制御基板21と、電源22とを有している。制御基板21は、信号線を介して、流量圧力調整器15、圧力センサ16、流量センサ17、電磁弁18および圧力センサ20に電気的に接続されている。電源22は、電源線を介して、流量圧力調整器15、圧力センサ16、流量センサ17、電磁弁18、圧力センサ20および制御基板21に電気的に接続されている。
【0028】
制御基板21は、図示しない操作部に入力された操作内容および設定値や、圧力センサ20の測定値に基づいて、流量圧力調整器15および電磁弁18を制御する図示しない中央演算処理装置(以下、CPUと記す。)を含んでいる。CPUは、患者90の腹腔91内の圧力が設定値に一致するように、流量圧力調整器15を制御すると共に、電磁弁18を制御して、気腹用気体の供給の開始と停止を制御する。なお、CPUは、圧力センサ16の測定値や流量センサ17の測定値に基づいて、気腹用気体の流量と圧力を制御することもできる。
【0029】
制御基板21は、更に、図示しない操作部に入力された操作内容および設定値を記憶する記憶部を含んでいてもよい。この場合、CPUは、記憶部に記憶された内容に基づいて、流量圧力調整器15および電磁弁18を制御してもよい。
【0030】
(コネクタの構成)
次に、
図3および
図4を参照して、本実施の形態に係わるコネクタ5の構成について詳しく説明する。
図3は、コネクタ5の断面図である。
図4は、
図3に示したコネクタ5の正面図である。コネクタ5は、レセプタクル10(
図2参照)に嵌合するコネクタ本体50を具備している。以下、コネクタ本体50がレセプタクル10に嵌合された状態を、嵌合状態と言う。コネクタ本体50は、金属材料によって構成されていてもよいし、樹脂材料によって構成されていてもよいし、金属材料と樹脂材料とを組み合わせて構成されていてもよい。
図3には、コネクタ本体50が金属材料よりなる例を示している。
【0031】
図3に示したように、コネクタ本体50は、互いに反対側に位置する第1の端部50aおよび第2の端部50bと、第1の端部50aと第2の端部50bとを接続する外周面50cとを有している。
図4は、第2の端部50b側から見たコネクタ5を示している。ここで、
図3に示したように、基準方向Dを定義する。基準方向Dは、第1および第2の端部50a,50bと交差する仮想の直線L1に平行な方向である。
【0032】
本実施の形態では、コネクタ本体50の、基準方向Dに垂直な断面の形状は、ほぼD字形状である。
図4に示したように、コネクタ本体50の外周面50cは、曲面部50c1と平面部50c2とを含んでいる。なお、コネクタ本体50の上記断面の形状は、D字形状に限らず、円形状、楕円形状、多角形状等であってもよいし、基準方向Dの位置に応じて異ならせてもよい。
【0033】
図3に示したように、コネクタ本体50は、更に、外周面50cにおいてコネクタ本体50の軸周り方向に形成された支持溝50dを有している。支持溝50dには、後述するレセプタクル10の係止部材が嵌入される。なお、コネクタ本体50の軸周り方向とは、コネクタ本体50の中心軸周りの方向を意味する。コネクタ本体50の中心軸は、仮想の直線L1および基準方向Dに平行である。
【0034】
コネクタ5は、更に、コネクタ本体50における第1の端部50a側に配置された第1の接続部51および第2の接続部52と、コネクタ本体50における第2の端部50b側に配置された第1のポート53および第2のポート54とを具備している。第1のポート53は、嵌合状態において第1の口金部11が接続される位置に配置され、第2のポート54は、嵌合状態において第2の口金部12が接続される位置に配置される。
図3および
図4に示した例では、第1のポート53と第2のポート54は、基準方向Dに垂直な方向(
図3および
図4における上下方向)に並んでいる。
【0035】
なお、第1の口金部11と第2の口金部12の位置が、後で説明する
図6および
図7に示した例と異なる場合には、第1の口金部11と第2の口金部12の位置に合わせて、第1のポート53と第2のポート54の位置が変更される。
【0036】
第1および第2の接続部51,52は、それぞれ、第1の端部50aから突出している。第1の接続部51には、第1のチューブ3が挿嵌接続されている。第2の接続部52には、第2のチューブ4が挿嵌接続されている。
【0037】
図3に示したように、本実施の形態では、第1のポート53は、コネクタ本体50の第2の端部50bに掘られた溝状の部分である。第1のポート53は、基準方向Dに延びる形状を有している。第1のポート53の基準方向Dに垂直な断面の形状は、円形状である。また、第1のポート53は、基準方向Dに平行な中心軸を有する内周面53aと、内周面53aにおいて上記中心軸周り方向に形成された溝部53bとを含んでいる。
【0038】
なお、第1のポート53は、上記のような溝状の部分に限らず、第2の端部50b側に固定された筒状の部品によって構成されていてもよい。
【0039】
図3に示したように、本実施の形態では、第2のポート54は、コネクタ本体50の第2の端部50bに掘られた溝部54aと、基準方向Dに延びるように溝部54aの底部から突出する突出部54bとを含んでいる。溝部54aは、基準方向Dに延びる形状を有している。溝部54aの基準方向Dに垂直な断面の形状は、円形状である。突出部54bの形状は、基準方向Dに延びる円柱形状である。突出部54bの先端には、後述する第2のシール部材を取り付けるための段差が形成されている。なお、この段差は、突出部54bの必須の構成要素ではなく、設けられていなくてもよい。
【0040】
なお、第2のポート54は、上記の構成に限らず、突出部54bと、その内部に突出部54bが配置された、第2の端部50b側に固定された筒状の部品とによって構成されていてもよい。
【0041】
コネクタ5は、更に、第1のポート53と第1の接続部51に接続された第1のチューブ3とを連通させる第1の管路55と、第2のポート54と第2の接続部52に接続された第2のチューブ4とを連通させる第2の管路56とを具備している。第1の管路55は、一端が第1のポート53の底部で開口し、他端が第1の接続部51の先端で開口している。これにより、第1のポート53は、第1のチューブ3に連通する。また、第2の管路56は、一端が第2のポート54の突出部54bの先端で開口し、他端が第2の接続部52の先端で開口している。これにより、第2のポート54は、第2のチューブ4に連通する。
【0042】
嵌合状態では、第1のポート53は、第1の口金部11(
図2参照)と接続且つ連通し、第2のポート54は、第2の口金部12(
図2参照)と接続且つ連通する。コネクタ5は、更に、嵌合状態において第1のポート53と第1の口金部11との間を封止する第1のシール部材57と、嵌合状態において第2のポート54と第2の口金部12との間を封止する第2のシール部材58とを具備している。
【0043】
第1のシール部材57は、第1のポート53内に配置されている。具体的には、第1のシール部材57は、環状の形状を有し、その一部が第1のポート53の溝部53bに収容されている。第1のシール部材57の残りの部分は、第1のポート53の内周面53aによって囲まれた空間に露出している。第1のシール部材57は、弾性変形可能な材料よりなる。弾性変形可能な材料としては、例えば、ゴム等の樹脂材料が用いられる。本実施の形態では特に、第1のシール部材57は、Oリングである。
【0044】
第2のシール部材58は、第2のポート54内に配置されている。具体的には、第2のシール部材58は、第2のポート54の突出部54bの先端に設けられており、ガスケットとして用いられる。第2のシール部材58は、弾性変形可能な材料よりなる。弾性変形可能な材料としては、例えば、ゴム等の樹脂材料が用いられる。
【0045】
ここで、
図5を参照して、第2のシール部材58の形状について詳しく説明する。
図5は、第2のシール部材58の断面図である。第2のシール部材58の外観形状は、基準方向Dに延びる円柱形状である。第2のシール部材58は、互いに反対側を向いた第1の面58aおよび第2の面58bと、第1の面58aにおいて開口する嵌合孔58cと、嵌合孔58cに連続し、第2の面58bにおいて開口する通気孔58dとを有している。第2のシール部材58は、嵌合孔58cが、突出部54bの先端に形成された段差(
図3参照)に嵌合することによって、突出部54bに取り付けられる。通気孔58dは、第2のシール部材58が突出部54bに取り付けられた状態では、第2の管路56(
図3参照)に連通する。
【0046】
(レセプタクルと第1および第2の口金部の構成)
次に、
図6および
図7を参照して、レセプタクル10と第1および第2の口金部11,12の構成について詳しく説明する。
図6は、レセプタクル10と第1および第2の口金部11,12の断面図である。
図7は、
図6に示したレセプタクル10と第1および第2の口金部11,12の正面図である。なお、以下、嵌合状態におけるレセプタクル10の姿勢を基準にして、レセプタクル10と第1および第2の口金部11,12の構成を説明する。
図6に示した基準方向Dの定義は、
図3に示した基準方向Dの定義と同じである。
【0047】
図6および
図7に示した例では、第1の口金部11と第2の口金部12は、基準方向Dに垂直な方向(
図6および
図7における上下方向)に並ぶように、レセプタクル10に設けられている。しかし、第1の口金部11と第2の口金部12の配置は、
図6および
図7に示した例に限られない。例えば、第1の口金部11と第2の口金部12は、
図7における左右方向に並んでいてもよいし、
図7における上下方向と左右方向の各々に対して傾いた方向に並んでいてもよい。
【0048】
レセプタクル10、第1の口金部11および第2の口金部12は、それぞれ、金属材料によって構成されていてもよいし、樹脂材料によって構成されていてもよいし、金属材料と樹脂材料とを組み合わせて構成されていてもよい。
図6には、レセプタクル10、第1の口金部11および第2の口金部12がいずれも金属材料よりなる例を示している。
【0049】
レセプタクル10は、コネクタ本体50が挿入される嵌合孔10Aを有している。嵌合孔10Aは、コネクタ本体50に対応した形状を有している。本実施の形態では、嵌合孔10Aの、基準方向Dに垂直な断面の形状は、ほぼD字形状である。
図7に示したように、嵌合孔10Aの内周面は、曲面部10A1と平面部10A2とを含んでいる。
【0050】
レセプタクル10は、更に、コネクタ本体50を係止する少なくとも1つの係止部材と、少なくとも1つの係止部材用孔とを有している。
図6および
図7に示した例では、4つの係止部材10Bが、レセプタクル10の軸周り方向に所定の間隔を開けて配置されている。係止部材10Bは、先端部が嵌合孔10A内に突出するように、係止部材用孔10Cに挿入固定されている。係止部材10Bとしては、例えばボールプランジャが用いられる。なお、レセプタクル10の軸周り方向とは、レセプタクル10の中心軸周りの方向を意味する。レセプタクル10の中心軸は、基準方向Dに平行である。
【0051】
第1の口金部11の少なくとも一部は、基準方向Dに延びる円筒形状を有している。本実施の形態では、第1の口金部11の全体が、上記円筒形状を有している。第1の口金部11は、互いに反対側に位置する第1の端部11aおよび第2の端部11bと、外周面11cと、第1および第2の端部11a,11bの各々において開口する管路11dとを有している。第1の口金部11は、第1の端部11aと外周面11cの少なくとも一部が嵌合孔10A内に位置するように、レセプタクル10に固定されている。管路11dは、嵌合孔10Aと送気管路13(
図2参照)に連通している。
【0052】
第2の口金部12は、基準方向Dに移動可能に設けられた口金本体121と、口金本体121に対して基準方向Dに付勢力を与える付勢部材122と、口金本体121と付勢部材122を収容する収容部材123と、抜け止め部材124とを含んでいる。
図6に示したように、本実施の形態では、付勢部材122は、ばね、より具体的にはコイルばねである。
【0053】
口金本体121は、フランジ部121aと、このフランジ部121aから基準方向Dに延びる管状部121bと、口金本体121を基準方向Dに貫通する管路121cとを含んでいる。フランジ部121aと管状部121bの各々の基準方向Dに垂直な断面の形状は、円形状である。フランジ部121aの外径は、管状部121bの外径よりも大きい。管路121cは、フランジ部121aと管状部121bの各々の端部において開口し、嵌合孔10Aと圧力測定管路19(
図2参照)に連通している。
【0054】
収容部材123は、基準方向Dに延びる円筒形状を有しており、その一部が嵌合孔10A内に位置するように、レセプタクル10に固定されている。収容部材123は、嵌合孔10Aに連通する収容孔123aと、この収容孔123aとレセプタクル10の外部に連通する通過孔123bとを有している。口金本体121は、収容孔123aと通過孔123bに挿通されている。収容孔123aの内径は、フランジ部121aの外径よりもわずかに大きい。これにより、口金本体121は、収容孔123a内において基準方向Dに移動可能である。また、通過孔123bの内径は、管状部121bの外径よりもわずかに大きいが、フランジ部121aの外径よりも小さい。そのため、管状部121bは、通過孔123bを通過することができるが、フランジ部121aは、通過孔123bを通過することができない。収容孔123aと通過孔123bとの間には、各々の内径の違いに起因する段差が存在する。
【0055】
図6に示したように、付勢部材122(コイルばね)は、収容部材123の収容孔123aに収容されており、口金本体121のフランジ部121aと、収容部材123の上記段差との間に挟まれている。付勢部材122(コイルばね)の内側には、口金本体121の管状部121bが挿通されている。
【0056】
抜け止め部材124は、レセプタクル10の外部において口金本体121の管状部121bに固定されている。抜け止め部材124は、口金本体121が収容部材123から脱落することを防止する機能を有する。
【0057】
(嵌合状態)
次に、
図4、
図7ないし
図10を参照して、コネクタ本体50がレセプタクル10に嵌合された状態である嵌合状態について説明する。
図8は、嵌合状態を示す断面図である。
図9は、嵌合状態における第1のポート53、第1のシール部材57および第1の口金部11の断面図である。
図10は、嵌合状態における第2のポート54、第2のシール部材58および第2の口金部12の断面図である。
【0058】
コネクタ本体50がレセプタクル10に嵌合される際には、コネクタ本体50は、コネクタ本体50の外周面50cの平面部50c2(
図4参照)が、レセプタクル10の嵌合孔10Aの内周面の平面部10A2(
図7参照)に一致するような姿勢で、嵌合孔10Aに挿入される。そして、
図8に示したように、コネクタ本体50は、コネクタ本体50の支持溝50dに、係止部材10Bの先端部が嵌入する位置まで挿入される。これにより、コネクタ本体50がレセプタクル10に嵌合される。
【0059】
平面部10A2,50c2は、レセプタクル10に対するコネクタ本体50の姿勢を決定する機能を有する。係止部材10Bは、コネクタ本体50を係止して、コネクタ本体50がレセプタクル10から脱落することを防止する機能を有する。なお、平面部10A2,50c2、係止部材10Bおよび支持溝50dは、レセプタクル10およびコネクタ本体50の必須の構成要素ではなく、設けられていなくてもよい。
【0060】
第1のポート53は、以下のようにして、第1の口金部11と接続且つ連通する。
図8および
図9に示したように、嵌合状態では、第1のポート53は、第1の口金部11とは、基準方向Dに延びる第1のポート53の少なくとも一部と基準方向Dに延びる第1の口金部11の少なくとも一部とが重なり合うようにして接続される。本実施の形態では、第1のポート53内に第1の口金部11が挿入されるように、第1の口金部11の外径は第1のポート53の内径よりも小さい。また、本実施の形態では、第1のポート53のほぼ全体と、第1の口金部11のうちの嵌合孔10A内に位置する部分とが、基準方向Dにおいて重なり合っている。
【0061】
また、第1のポート53と第1の口金部11は、第1のポート53が第1の口金部11に接続されることにより連通する。コネクタ5の第1の管路55の開口と第1の口金部11の管路11dの開口は、嵌合状態において、それらの位置がほぼ一致するように構成されている。
【0062】
第1のポート53と第1の口金部11とが接続且つ連通することによって、第1の経路が構成される。この第1の経路は、患者90の腹腔91(
図1参照)内に気腹用気体を供給するための経路である。
図2に示した送気管路13は、第1の経路の一部を構成し、且つ気腹用気体を供給する。第1のチューブ3は、第1の経路の他の一部を構成する。
【0063】
第2のポート54は、以下のようにして、第2の口金部12と接続且つ連通する。
図8および
図10に示したように、第2のポート54は、第2の口金部12とは、基準方向Dにおいて、第2のポート54の少なくとも一部と第2の口金部12の少なくとも一部とが押し合うようにして接続される。本実施の形態では、コネクタ本体50がレセプタクル10に嵌合される際に、第2のポート54の溝部54a内に第2の口金部12の収容部材123が挿入され、且つ、収容部材123の収容孔123a内に第2のポート54の突出部54bが挿入されるように、収容部材123の外径は溝部54aの内径よりも小さく、且つ、突出部54bの外径は収容孔123aの内径よりも小さい。
【0064】
なお、コネクタ本体50がレセプタクル10に嵌合される際には、第2のシール部材58も収容部材123の収容孔123a内に挿入される。そのため、第2のシール部材58の外径は収容孔123aの内径よりも小さい。
【0065】
収容孔123a内に挿入された突出部54bは、第2の口金部12の口金本体121を押し込む。口金本体121が押し込まれると、口金本体121には、付勢部材122の復元力によって、押し込まれた方向とは反対方向に付勢力が与えられる。その結果、突出部54bは、口金本体121によって、押し込まれた方向とは反対方向の反発力を受ける。このようにして、突出部54bと口金本体121とが、押し合うようにして接続される。
【0066】
また、第2のポート54と第2の口金部12は、第2のポート54が第2の口金部12に接続されることにより連通する。コネクタ5の第2の管路56の開口と口金本体121の管路121cの開口は、嵌合状態において、それらの位置が、第2のシール部材58の通気孔58dの開口の位置にほぼ一致するように構成されている。
【0067】
第2のポート54と第2の口金部12とが接続且つ連通することによって、第2の経路が構成される。この第2の経路は、患者90の腹腔91(
図1参照)内の圧力を伝達するための経路である。
図2に示した圧力測定管路19は、第2の経路の一部を構成する。第2のチューブ4は、第2の経路の他の一部を構成する。
【0068】
第1のシール部材57は、嵌合状態において第1のポート53と第1の口金部11との間を封止する部材である。本実施の形態では、第1のポート53の内周面53aは、第1の口金部11の外周面11cの一部に対向している。第1のシール部材57は、嵌合状態において、重なり合う第1のポート53の少なくとも一部と第1の口金部11の少なくとも一部との間、具体的には内周面53aと外周面11cとの間に位置するように、第1のポート53内に配置されている。なお、上記の外周面11cの一部は、第1のポート53と重なり合う第1の口金部11の一部の外周面とも言える。嵌合状態以外の状態では、第1のシール部材57の内径は、第1の口金部11の外径よりもわずかに小さい。
【0069】
図9に示したように、嵌合状態では、第1のシール部材57は、重なり合った第1のポート53と第1の口金部11の各々から外力を受けて変形する。その結果、第1のシール部材57の材料の復元力によって、第1のシール部材57から第1のポート53と第1の口金部11の各々に向かって第1の反発力F1が生じる。第1の反発力F1によって、第1のシール部材57が第1のポート53と第1の口金部11に密着し、第1のポート53と第1の口金部11との間が封止される。
【0070】
第2のシール部材58は、嵌合状態において第2のポート54と第2の口金部12との間を封止する部材である。第2のシール部材58は、嵌合状態において、押し合う第2のポート54の突出部54bと第2の口金部12の口金本体121との間に位置するように、第2のポート54内に配置されている。
【0071】
図10に示したように、嵌合状態では、第2のシール部材58は、押し合った突出部54bと口金本体121の各々から外力を受けて変形する。その結果、第2のシール部材58の材料の復元力によって、第2のシール部材58から第2のポート54と第2の口金部12の各々に向かって第2の反発力F2が生じる。第2の反発力F2によって、第2のシール部材58が突出部54bと口金本体121に密着し、第2のポート54と第2の口金部12との間が封止される。
【0072】
第2のシール部材58の圧縮量は、第2のシール部材58が突出部54bと口金本体121の両方から受ける外力の大きさに依存する。この外力の大きさは、付勢部材122によって口金本体121に与えられる付勢力に依存する。付勢力の大きさは、基準方向Dにおける突出部54bの長さすなわち突出部54bが口金本体121を押し込む距離と、付勢部材122の特性値、具体的にはばね定数によって調整することができる。第2のシール部材58の圧縮量を調整することにより、第2のシール部材58の、突出部54bおよび口金本体121に対する密着度(以下、第2のシール部材58の密着度と言う。)を調整することができる。
【0073】
嵌合状態では、第1のチューブ3は、コネクタ5の第1の管路55と第1の口金部11の管路11dとを介して、第1の口金部11に接続された送気管路13(
図2参照)に連通し、第2のチューブ4は、コネクタ5の第2の管路56と口金本体121の管路121cとを介して、第2の口金部12に接続された圧力測定管路19(
図2参照)に連通する。コネクタ5は、第1および第2のチューブ3,4がそれぞれ送気管路13および圧力測定管路19に連通するように、第1および第2の口金部11,12に対して第1および第2のチューブ3,4を接続するために用いられるものである。
【0074】
(作用および効果)
次に、本実施の形態に係わるコネクタ5および気腹装置1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、レセプタクル10に第1および第2の口金部11,12が設けられている。コネクタ5のコネクタ本体50には、第1および第2のポート53,54が設けられていると共に、第1および第2のチューブ3,4が接続されている。第1および第2のポート53,54は、第1および第2のチューブ3,4に連通している。コネクタ本体50をレセプタクル10に嵌合すると、第1のポート53は第1の口金部11と接続且つ連通し、第2のポート54は第2の口金部12と接続且つ連通する。このような構成により、本実施の形態によれば、第1および第2の口金部11,12に対して、コネクタ5を介して、第1および第2のチューブ3,4をワンタッチで接続することができる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、第1および第2の口金部11,12が不完全な状態で封止されることを防止することができる。以下、この効果について、比較例のコネクタおよび比較例の気腹器と比較しながら説明する。比較例の気腹器は、第1および第2の口金部と、第1および第2の口金部が設けられたレセプタクルとを有している。第1および第2の口金部の各々の構成は、本実施の形態における第1の口金部11の構成と同じである。比較例の気腹器のその他の構成は、本実施の形態における気腹器2と同じである。
【0076】
また、比較例のコネクタは、比較例の気腹器のレセプタクルに嵌合するコネクタ本体と、このコネクタ本体に設けられた第1および第2のポートと、第1および第2のシール部材とを具備している。第1および第2のポートの各々の構成は、本実施の形態における第1のポート53の構成と同じである。第1および第2のシール部材の各々の構成および配置は、本実施の形態における第1のシール部材57の構成および配置と同じである。第1および第2のシール部材は、いずれも、具体的にはOリングである。比較例のコネクタのその他の構成は、本実施の形態に係わるコネクタ5と同じである。
【0077】
比較例では、第1のシール部材が第1のポートと第1の口金部に密着し、これにより、第1のポートと第1の口金部との間が封止される。また、比較例では、第2のシール部材が第2のポートと第2の口金部に密着し、これにより、第2のポートと第2の口金部との間が封止される。
【0078】
ところで、コネクタ、レセプタクルならびに第1および第2の口金部の各々の構成要素は、実際には、所定の公差の範囲内で作製される。そのため、仮に、第1の口金部が不完全な状態で封止されることを防止するために、第1のポートの中心軸と第1の口金部の中心軸とが一致するように、コネクタ本体をレセプタクルに嵌合させたとしても、第2のポートの中心軸と第2の口金部の中心軸がずれてしまう場合がある。中心軸のずれ量が大きくなると、第2のシール部材を第2のポートと第2の口金部に確実に密着させることができなくなり、第2の口金部が不完全な状態で封止されてしまう。
【0079】
本実施の形態においても、第1の口金部11が不完全な状態で封止されることを防止するために、第1のポート53の中心軸と第1の口金部11の中心軸とが一致するように、コネクタ本体50をレセプタクル10に嵌合させたとしても、第2のポート54の中心軸と、第2の口金部12の中心軸がずれてしまう場合がある。しかしながら、本実施の形態では、第2のポート54は、第2の口金部12とは、基準方向Dにおいて、第2のポート54の突出部54bと第2の口金部12の口金本体121とが押し合うようにして接続されることから、突出部54bの中心軸と口金本体121の中心軸がずれたとしても、中心軸がずれていない場合と同様に、押し合うようにして接続される状態を実現することができる。また、本実施の形態では、第2のシール部材58は、押し合う突出部54bと口金本体121との間に位置する。そのため、本実施の形態によれば、突出部54bの中心軸と口金本体121の中心軸のずれの有無に関わらず、第2のシール部材58を変形させて、第2のポート54と第2の口金部12との間を封止することができる。このように、本実施の形態によれば、第1の口金部11が不完全な状態で封止されることを防止しながら、第2の口金部12が不完全な状態で封止されることを防止することができる。
【0080】
また、本実施の形態では、第2の口金部12には、付勢部材122が設けられている。もし、付勢部材122が設けられておらず、口金本体121が収容部材123に固定されている場合には、基準方向Dにおける口金本体121のフランジ部121aの位置のばらつきや、基準方向Dにおける第2のポート54の突出部54bの長さのばらつきや、基準方向Dにおける第2のシール部材58の長さのばらつきによって、第2のシール部材58が十分に変形しないおそれがある。
【0081】
これに対し、本実施の形態では、付勢部材122を設けると共に、突出部54bによって口金本体121が押し込まれるように構成することによって、第2のシール部材58を確実に変形させることができる。これにより、本実施の形態によれば、第2の口金部12が不完全な状態で封止されることを、より効果的に防止することができる。
【0082】
なお、本実施の形態では、第2のシール部材58は、突出部54bと口金本体121の各々から外力を受けると、基準方向Dに圧縮し、且つ第2のシール部材58の径方向に膨張するように変形する(
図10参照)。第2のシール部材58が径方向に膨張すると、第2のシール部材58が、収容部材123の収容孔123aの内周面に密着し、第2のポート54と第2の口金部12との間が封止される。これにより、本実施の形態によれば、第2の口金部12が不完全な状態で封止されることを、より効果的に防止することができる。
【0083】
以上のことから、本実施の形態によれば、第1および第2の口金部11,12に対して第1および第2のチューブ3,4をワンタッチで接続することができ、且つ第1および第2の口金部11,12が不完全な状態で封止されることを防止することができる。
【0084】
以下、本実施の形態におけるその他の効果について説明する。前述の比較例のコネクタおよび比較例の気腹器において、第1および第2の口金部が不完全な状態で封止されることを防止するには、第1および第2のシール部材(Oリング)の各々の内径を小さくして、第1のシール部材を第1のポートと第1の口金部に確実に密着させ、且つ第2のシール部材を第2のポートと第2の口金部に確実に密着させることが考えられる。しかし、第1および第2のシール部材の各々の内径を小さくすると、コネクタ本体をレセプタクルに嵌合させるために必要な力(以下、嵌合力と言う。)が大きくなってしまう。もし、嵌合力を低減しようとすると、例えば、倍力効果が得られるてこ機構等の倍力機構を気腹器に設ける必要がある。このように、嵌合力が大きくなったり、倍力機構が必要になったりすると、使用者にとっての使い勝手が悪くなる。また、倍力機構の分だけ、気腹器が高価になってしまう。
【0085】
これに対し、本実施の形態によれば、前述のように、第1および第2の口金部11,12が不完全な状態で封止されることを防止することができることから、第1のシール部材57(Oリング)の内径を必要以上に小さくすることは不要である。これにより、本実施の形態によれば、比較例に比べて、嵌合力を小さくすることができる。また、本実施の形態では、上記のような倍力機構は不要である。これらのことから、本実施の形態によれば、比較例に比べて、使用者にとっての使い勝手をよくすることができると共に、気腹器2の価格を低減することができる。
【0086】
また、本実施の形態では、コネクタ本体50には平面部50c2が設けられており、コネクタ本体50が挿入されるレセプタクル10の嵌合孔10Aには平面部10A2が設けられている。本実施の形態によれば、コネクタ本体50をレセプタクル10に嵌合させる際に、平面部10A2,50c2を一致させることにより、レセプタクル10に対するコネクタ本体50の姿勢を簡単に決定することができる。
【0087】
ところで、第2のポート54が第2の口金部12と接続且つ連通することよって構成される第2の経路の内圧が大きい場合には、第2のポート54と第2の口金部12との間からの気体の漏洩を防止するために、第2のシール部材58の密着度を大きくする必要がある。第2のシール部材58の密着度を大きくするためには、第2のシール部材58が突出部54bと口金本体121の各々から受ける外力が大きくなるように構成する必要がある。このような構成では、嵌合力が大きくなってしまう。
【0088】
これに対し、本実施の形態では、第2の経路は、患者90の腹腔91内の圧力を伝達するための経路であり、患者90の腹腔91内に気腹用気体を送気するための経路である第1の経路よりも内圧が小さくなる。そのため、本実施の形態によれば、第2の経路が患者90の腹腔91内に気腹用気体を送気するための経路である場合に比べて、第2のシール部材58の密着度を小さくすることができ、嵌合力を小さくすることができる。
【0089】
また、嵌合状態では、第2の管路56と口金本体121の管路121cとを確実に連通させるために、第2の管路56の中心軸と管路121cの中心軸が一致することが望ましい。しかし、実際には、第2の管路56の中心軸と管路121cの中心軸がずれてしまう場合がある。これに対し、本実施の形態では、
図10に示したように、第2の管路56の内径を、管路121cの内径よりもわずかに大きくしている。これにより、本実施の形態によれば、第2の管路56の中心軸と管路121cの中心軸がずれた場合であっても、第2の管路56と管路121cを確実に連通させることができる。なお、第2の管路56の内径は、管路121cの内径と同じであってもよいし、
図10に示した例よりも大きくてもよい。
【0090】
[変形例]
次に、
図11ないし
図13を参照して、本実施の形態における気腹装置1の変形例について説明する。
図11は、気腹装置1の変形例の構成を示す説明図である。
図12は、コネクタ5の変形例の断面図である。
図13は、第1および第2の口金部の変形例とレセプタクル10の断面図である。
【0091】
図11に示したように、変形例では、気腹装置1の気腹器2は、第1の口金部11および第2の口金部12の代わりに、第1の口金部12Aおよび第2の口金部12Bを有している。変形例における気腹器2のその他の構成は、
図2に示した気腹器2と同じである。第1および第2の口金部12A,12Bは、レセプタクル10に設けられている。第1の口金部12Aには、送気管路13が接続されている。第2の口金部12Bには、圧力測定管路19が接続されている。
【0092】
(コネクタの構成)
また、
図12に示したように、変形例では、コネクタ5は、第1のポート53、第2のポート54、第1のシール部材57および第2のシール部材58の代わりに、第1のポート54A、第2のポート54B、第1のシール部材58Aおよび第2のシール部材58Bを具備している。第1のポート54Aは、嵌合状態において第1の口金部12Aが接続される位置に配置され、第2のポート54Bは、嵌合状態において第2の口金部12Bが接続される位置に配置される。
【0093】
第1および第2のポート54A,54Bの各々の構成は、第2のポート54の構成と同じである。すなわち、
図12に示したように、第1のポート54Aは、コネクタ本体50の第2の端部50bに掘られた溝部54Aaと、基準方向Dに延びるように溝部54Aaの底部から突出する突出部54Abとを含んでいる。溝部54Aaおよび突出部54Abの形状は、
図3および
図4に示した溝部54aおよび突出部54bの形状と同じである。突出部54Abの先端には、第1のシール部材58Aを取り付けるための段差が形成されている。
【0094】
また、
図12に示したように、第2のポート54Bは、コネクタ本体50の第2の端部50bに掘られた溝部54Baと、基準方向Dに延びるように溝部54Baの底部から突出する突出部54Bbとを含んでいる。溝部54Baおよび突出部54Bbの形状は、
図3および
図4に示した溝部54aおよび突出部54bの形状と同じである。突出部54Bbの先端には、第2のシール部材58Bを取り付けるための段差が形成されている。
【0095】
なお、
図12に示したように、基準方向Dにおける突出部54Abの長さは、基準方向Dにおける突出部54Bbの長さよりも大きい。
【0096】
変形例では、第1の管路55は、一端が第1のポート54Aの突出部54Abの先端で開口し、他端が第1の接続部51の先端で開口している。これにより、第1のポート54Aは、第1のチューブ3に連通する。また、第2の管路56は、一端が第2のポート54Bの突出部54Bbの先端で開口し、他端が第2の接続部52の先端で開口している。これにより、第2のポート54Bは、第2のチューブ4に連通する。
【0097】
嵌合状態では、第1のポート54Aは、第1の口金部12Aと接続且つ連通し、第2のポート54Bは、第2の口金部12Bと接続且つ連通する。第1のシール部材58Aは、嵌合状態において第1のポート54Aと第1の口金部12Aとの間を封止する。第2のシール部材58Bは、嵌合状態において第2のポート54Bと第2の口金部12Bとの間を封止する。
【0098】
第1のシール部材58Aは、第1のポート54Aの突出部54Abの先端に設けられている。第2のシール部材58Bは、第2のポート54Bの突出部54Bbの先端に設けられている。第1および第2のシール部材58A,58Bの各々の材料は、第2のシール部材58の材料と同じである。
【0099】
第1および第2のシール部材58A,58Bの各々の形状は、
図5に示した第2のシール部材58の形状と同じである。すなわち、第1および第2のシール部材58A,58Bは、それぞれ、互いに反対側を向いた第1の面58aおよび第2の面58bと、第1の面58aにおいて開口する嵌合孔58cと、嵌合孔58cに連続し、第2の面58bにおいて開口する通気孔58dとを有している。
【0100】
(第1および第2の口金部の構成)
レセプタクル10における第1および第2の口金部12A,12Bの配置は、第1および第2の口金部11,12の配置と同じである。第1および第2の口金部12A,12Bの各々の材料は、第2の口金部12の材料と同じである。
【0101】
第1および第2の口金部12A,12Bの各々の構成は、第2の口金部12の構成と同じである。すなわち、
図13に示したように、第1の口金部12Aは、基準方向Dに移動可能に設けられた口金本体121Aと、口金本体121Aに対して基準方向Dに付勢力を与える付勢部材122Aと、口金本体121Aと付勢部材122Aを収容する収容部材123Aと、抜け止め部材124Aとを含んでいる。
図13に示したように、付勢部材122Aは、ばね、より具体的にはコイルばねである。
【0102】
また、
図13に示したように、第2の口金部12Bは、基準方向Dに移動可能に設けられた口金本体121Bと、口金本体121Bに対して基準方向Dに付勢力を与える付勢部材122Bと、口金本体121Bと付勢部材122Bを収容する収容部材123Bと、抜け止め部材124Bとを含んでいる。
図13に示したように、付勢部材122Bは、ばね、より具体的にはコイルばねである。
【0103】
口金本体121A,121Bの各々の構成は、
図6に示した口金本体121の構成と同じである。すなわち、口金本体121A,121Bは、それぞれ、フランジ部121aと、管状部121bと、管路121cとを含んでいる。口金本体121Aの管路121cは、レセプタクル10の嵌合孔10Aと送気管路13(
図11参照)に連通している。口金本体121Bの管路121cは、嵌合孔10Aと圧力測定管路19(
図11参照)に連通している。
【0104】
また、収容部材123A,123Bの各々の構成は、
図6に示した収容部材123の構成と同じである。すなわち、収容部材123A,123Bは、それぞれ、基準方向Dに延びる円筒形状を有しており、その一部が嵌合孔10A内に位置するように、レセプタクル10に固定されている。収容部材123A,123Bは、それぞれ、収容孔123aと、通過孔123bとを有している。収容孔123aと通過孔123bとの間には、各々の内径の違いに起因する段差が存在する。
【0105】
口金本体121Aは、収容部材123Aの収容孔123aと通過孔123bに挿通されている。口金本体121Aは、収容部材123Aの収容孔123a内において基準方向Dに移動可能である。付勢部材122A(コイルばね)は、収容部材123Aの収容孔123aに収容されており、口金本体121Aのフランジ部121aと、収容部材123Aの上記段差との間に挟まれている。付勢部材122A(コイルばね)の内側には、口金本体121Aの管状部121bが挿通されている。
【0106】
口金本体121Bは、収容部材123Bの収容孔123aと通過孔123bに挿通されている。口金本体121Bは、収容部材123Bの収容孔123a内において基準方向Dに移動可能である。付勢部材122B(コイルばね)は、収容部材123Bの収容孔123aに収容されており、口金本体121Bのフランジ部121aと、収容部材123Bの上記段差との間に挟まれている。付勢部材122B(コイルばね)の内側には、口金本体121Bの管状部121bが挿通されている。
【0107】
抜け止め部材124Aは、レセプタクル10の外部において口金本体121Aの管状部121bに固定されている。抜け止め部材124Aは、口金本体121Aが収容部材123Aから脱落することを防止する機能を有する。また、抜け止め部材124Bは、レセプタクル10の外部において口金本体121Bの管状部121bに固定されている。抜け止め部材124Bは、口金本体121Bが収容部材123Bから脱落することを防止する機能を有する。
【0108】
(嵌合状態)
次に、
図12ないし
図14を参照して、変形例における嵌合状態について説明する。
図14は、変形例における嵌合状態を示す断面図である。前述のように、第1のポート54Aは、第1の口金部12Aと接続且つ連通する。第1のポート54Aと第1の口金部12Aの接続方法は、
図8および
図10を参照して説明した、第2のポート54と第2の口金部12の接続方法と同様である。第2のポート54と第2の口金部12の接続方法の説明中の、第2のポート54、溝部54a、突出部54b、第2の口金部12、口金本体121、付勢部材122、収容部材123および第2のシール部材58を、それぞれ第1のポート54A、溝部54Aa、突出部54Ab、第1の口金部12A、口金本体121A、付勢部材122A、収容部材123Aおよび第1のシール部材58Aに置き換えれば、第1のポート54Aと第1の口金部12Aの接続方法の説明になる。
【0109】
また、前述のように、第2のポート54Bは、第2の口金部12Bと接続且つ連通する。第2のポート54Bと第2の口金部12Bの接続方法は、
図8および
図10を参照して説明した、第2のポート54と第2の口金部12の接続方法と同様である。第2のポート54と第2の口金部12の接続方法の説明中の、第2のポート54、溝部54a、突出部54b、第2の口金部12、口金本体121、付勢部材122、収容部材123および第2のシール部材58を、それぞれ第2のポート54B、溝部54Ba、突出部54Bb、第2の口金部12B、口金本体121B、付勢部材122B、収容部材123Bおよび第2のシール部材58Bに置き換えれば、第2のポート54Bと第2の口金部12Bの接続方法の説明になる。
【0110】
変形例では特に、第1の口金部12Aの収容部材123Aの収容孔123a内に挿入された第1のポート54Aの突出部54Abは、第1の口金部12Aの口金本体121Aを押し込み、第2の口金部12Bの収容部材123Bの収容孔123a内に挿入された第2のポート54Bの突出部54Bbは、第2の口金部12Bの口金本体121Bを押し込む。前述のように、基準方向Dにおける突出部54Abの長さは、基準方向Dにおける突出部54Bbの長さよりも大きい。そのため、
図14に示したように、突出部54Abが口金本体121Aを押し込む距離は、突出部54Bbが口金本体121Bを押し込む距離よりも大きくなる。その結果、基準方向Dにおける付勢部材122Aの圧縮量は、基準方向Dにおける付勢部材122Bの圧縮量よりも大きくなり、付勢部材122Aによって口金本体121Aに与えられる付勢力は、付勢部材122Bによって口金本体121Bに与えられる付勢力よりも大きくなる。
【0111】
第1のシール部材58Aは、嵌合状態において第1のポート54Aと第1の口金部12Aとの間を封止する部材である。第1のシール部材58Aが第1のポート54Aと第1の口金部12Aとの間を封止する方法は、
図8および
図10を参照して説明した、第2のシール部材58が第2のポート54と第2の口金部12との間を封止する方法と同様である。第2のシール部材58が第2のポート54と第2の口金部12との間を封止する方法の説明中の、第2のポート54、突出部54b、第2の口金部12、口金本体121、付勢部材122および第2のシール部材58を、それぞれ第1のポート54A、突出部54Ab、第1の口金部12A、口金本体121A、付勢部材122Aおよび第1のシール部材58Aに置き換えれば、第1のシール部材58Aが第1のポート54Aと第1の口金部12Aとの間を封止する方法の説明になる。
【0112】
また、第2のシール部材58Bは、嵌合状態において第2のポート54Bと第2の口金部12Bとの間を封止する部材である。第2のシール部材58Bが第2のポート54Bと第2の口金部12Bとの間を封止する方法は、
図8および
図10を参照して説明した、第2のシール部材58が第2のポート54と第2の口金部12との間を封止する方法と同様である。第2のシール部材58が第2のポート54と第2の口金部12との間を封止する方法の説明中の、第2のポート54、突出部54b、第2の口金部12、口金本体121、付勢部材122および第2のシール部材58を、それぞれ第2のポート54B、突出部54Bb、第2の口金部12B、口金本体121B、付勢部材122Bおよび第2のシール部材58Bに置き換えれば、第2のシール部材58Bが第2のポート54Bと第2の口金部12Bとの間を封止する方法の説明になる。
【0113】
なお、前述のように、変形例では、突出部54Abが口金本体121Aを押し込む距離は、突出部54Bbが口金本体121Bを押し込む距離よりも大きくなり、付勢部材122Aによって口金本体121Aに与えられる付勢力は、付勢部材122Bによって口金本体121Bに与えられる付勢力よりも大きくなる。そのため、第1のシール部材58Aの圧縮量は、第2のシール部材58Bの圧縮量よりも大きくなり、その結果、第1のシール部材58Aの、突出部54Abおよび口金本体121Aに対する密着度(以下、第1のシール部材58Aの密着度と言う。)は、第2のシール部材58Bの、突出部54Bbおよび口金本体121Bに対する密着度(以下、第2のシール部材58Bの密着度と言う。)よりも大きくなる。
【0114】
変形例では、第1のポート54Aが第1の口金部12Aと接続且つ連通することよって第1の経路が構成され、第2のポート54Bが第2の口金部12Bと接続且つ連通することよって第2の経路が構成される。第1の経路は、第1の経路は、患者90の腹腔91(
図1参照)内に気腹用気体を供給するための経路である。第2の経路は、患者90の腹腔91内の圧力を伝達するための経路である。第1の経路の内圧は、第2の経路の内圧よりも大きくなる。もし、第1のシール部材58Aの密着度が第2のシール部材58Bの密着度よりも小さい場合には、第1のポート54Aと第1の口金部12Aとの間から気体が漏洩するおそれがある。これを防止するために、第1のシール部材58Aの密着度を大きくすると、嵌合力が大きくなってしまう。
【0115】
これに対し、変形例では、第1のシール部材58Aの密着度を第2のシール部材58Bの密着度よりも大きくしている。すなわち、変形例では、そのシール部材が用いられる経路の内圧が大きい場合にはそのシール部材の密着度が大きくなるように、経路の内圧と密着度とを相関させることにより、第1のポート54Aと第1の口金部12Aとの間から気体が漏洩することを防止しながら、嵌合力を小さくすることができる。
【0116】
なお、変形例では、付勢部材122Aのばね定数と付勢部材122Bのばね定数は、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、基準方向Dにおける突出部54Abの長さと基準方向Dにおける突出部54Bbの長さを等しくして、付勢部材122Aのばね定数と付勢部材122Bのばね定数を互いに異ならせることにより、第1のシール部材58Aの圧縮量と第2のシール部材58Bの圧縮量を互いに異ならせてもよい。この場合、第1のシール部材58Aの圧縮量が第2のシール部材58Bの圧縮量よりも大きくなるように、付勢部材122Aのばね定数と付勢部材122Bのばね定数を調整することが好ましい。
【0117】
ところで、変形例では、第1および第2の口金部12A,12Bには、それぞれ、付勢部材122A,122Bが設けられている。もし、付勢部材122A,122Bが設けられておらず、口金本体121A,121Bがそれぞれ収容部材123A,123Bに固定されている場合には、基準方向Dにおける口金本体121A,121Bの各々のフランジ部121aの位置のばらつきや、基準方向Dにおける突出部54Ab,54Bbの各々の長さのばらつきや、基準方向Dにおける第1および第2のシール部材58A,58Bの各々の長さのばらつきによって、第1および第2のシール部材58A,58Bが十分に変形しないおそれがある。
【0118】
これに対し、変形例では、付勢部材122A,122Bを設けると共に、突出部54Abによって口金本体121Aが押し込まれ、突出部54Bbによって口金本体121Bが押し込まれるように構成することによって、第1および第2のシール部材58A,58Bを確実に変形させることができる。これにより、第1および第2の口金部12A,12Bが不完全に封止されることを防止することができる。
【0119】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。例えば、
図5に示した第2のシール部材58の代わりに、Oリングを用いてもよい。このOリングは、突出部54bの先端に取り付けられる。
【0120】
また、気腹用気体の供給量が比較的少ない場合には、第2のポート54が第2の口金部12と接続且つ連通することによって構成される第2の経路が、患者90の腹腔91内の圧力を伝達するための経路になり、第1のポート53が第1の口金部11と接続且つ連通することによって構成される第1の経路が、患者90の腹腔91内に気腹用気体を供給するための経路になってもよい。
【0121】
また、第1の経路と第2の経路の両方が、気腹用気体を送気するための供給であってもよい。この場合には、より多くの気腹用気体を患者90の腹腔91内に供給することができ、気腹装置1をより大きな容積の腹腔91に適用させることができる。第1の経路の内圧は、第2の経路の内圧と同じであってもよいし、第2の経路の内圧よりも大きくてもよい。後者の場合には、第1のポート53と第1の口金部11との間から気体が漏洩することを防止しながら、嵌合力を小さくすることができる。
【0122】
また、変形例では、ポート、口金部およびシール部材が2組設けられているが、ポート、口金部およびシール部材は、3組以上設けられていてもよい。これにより、3本以上のチューブをワンタッチで接続することができる。
【0123】
本出願は、2018年2月6日に日本国に出願された特願2018-19317号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲に引用されるものとする。