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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】意匠性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220815BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220815BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220815BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220815BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20220815BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20220815BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/63
C09D7/61
C09D7/65
B05D5/06 D
B05D7/14 J
B32B15/08 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020196214
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084372
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2021-12-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300075348
【氏名又は名称】日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】沼田 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】淺野 賢三
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-051652(JP,A)
【文献】特開平11-172163(JP,A)
【文献】特開平11-090322(JP,A)
【文献】特開2018-023963(JP,A)
【文献】特開平06-134925(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0003104(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0027043(KR,A)
【文献】特開2008-068453(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0443537(KR,B1)
【文献】特開2015-108049(JP,A)
【文献】特開平10-195346(JP,A)
【文献】特開平10-219188(JP,A)
【文献】特開平11-114492(JP,A)
【文献】特開2009-228286(JP,A)
【文献】特開2006-219731(JP,A)
【文献】特開2013-018263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B05D 5/06
B05D 7/14
B32B 15/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも塗膜形成樹脂(A)架橋剤(B)、スルホン酸(C)、アミン化合物(D)及びシリカ粒子を含む塗料組成物であり、
前記塗膜形成樹脂(A)の水酸基価が、27mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であり、
前記架橋剤(B)が、アミノ樹脂を含み、
前記架橋剤(B)の含有量は、前記塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、樹脂固形分として5質量部以上100質量部以下であり、
前記スルホン酸(C)の含有量は、前記塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、1.0質量部以上18.0質量部以下であり、
前記アミン化合物(D)によるスルホン酸(C)の酸基の中和率は、300%以上3,000%以下であり、
前記シリカ粒子の粒子径は、1μm以上20μm以下であり、
前記シリカ粒子の含有量は、前記塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下であり、
以下の方法により測定される、該塗料組成物を硬化させた塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.2μm以上であり、かつ展開面積比(Sdr)が800%以上
であることを特徴とする塗料組成物。
[算術平均高さ(Ra)及び展開面積比(Sdr)の測定方法]
塗料組成物を、乾燥塗膜が22μmとなるようにバーコーターを用いて鋼板に塗装し、素材最高到達温度220℃となる条件で25秒間加熱し、硬化させた塗膜について、表面の算術平均高さ(Ra)をJIS B 0601-2001に準拠して測定し、表面の展開面積比(Sdr)をISO 25178に準拠して測定する。
【請求項2】
前記塗膜形成樹脂(A)は、水酸基を有する樹脂であり、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの変性物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記架橋剤(B)は、メラミン樹脂及び尿素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記アミン化合物(D)は、沸点50℃以上250℃以下の2級又は3級アミンである、請求項のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
鋼板及び前記鋼板の少なくとも一方の表面上に塗膜を有する塗装鋼板であって、
前記塗膜は、少なくとも塗膜形成樹脂(A)と、架橋剤(B)と、スルホン酸(C)と、アミン化合物(D)と、シリカ粒子とを含む塗料組成物より形成され、
前記塗膜形成樹脂(A)の水酸基価が、27mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であり、
前記架橋剤(B)が、アミノ樹脂を含み、
前記架橋剤(B)の含有量は、前記塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、樹脂固形分として5質量部以上100質量部以下であり、
前記スルホン酸(C)の含有量は、前記塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、1.0質量部以上18.0質量部以下であり、
前記アミン化合物(D)によるスルホン酸(C)の酸基の中和率は、300%以上3,000%以下であり、
前記シリカ粒子の粒子径は、1μm以上20μm以下であり、
前記シリカ粒子の含有量は、前記塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下であり、
前記塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.2μm以上であり、かつ展開面積比(Sdr)が800%以上、
であることを特徴とする塗装鋼板。
【請求項6】
鋼板及び前記鋼板の少なくとも一方の表面上に塗膜を有する塗装鋼板であって、
前記塗膜は、請求項1~のいずれか1項に記載の塗料組成物より形成され、
前記塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.2μm以上であり、かつ展開面積比(Sdr)が800%以上、
であることを特徴とする塗装鋼板。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の塗料組成物を、被塗物に塗装する塗装工程、及び
塗装後の塗料組成物を150℃以上270℃以下の温度で乾燥及び/又は硬化させることを含む、
塗膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一な艶消し外観を有する意匠性に優れた塗膜を形成し、かつ耐候性に優れる塗料組成物に関し、鋼板等の基板の塗装に適した塗料組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
冷延鋼板やめっき鋼板を基材として塗装を施した塗装鋼板はプレコート鋼板(「PCM」ともいう)とも呼ばれ、シャッター、雨戸、ドア、屋根及びサイディング等の建築部材、クーラー室外機等の電気機器類の外装材、並びに内装材等の各種の部材として用いられている。通常、プレコート鋼板は、鋼板の表面に塗装を施し、塗膜を形成させた後、要求される製品へと加工される。このため、プレコート鋼板に形成される塗膜には、柔軟性と、加工の際、例えば、プレコート鋼板を曲げた際に割れたり剥がれたりしない等、高い加工性とが要求されている。その上、プレコート鋼板は上記部材の外観を構成するため、プレコート鋼板には優れた意匠性が求められている。また、プレコート鋼板には、用途に応じて、耐摩耗性、耐傷付き性、耐食性、耐候性等の各種特性が求められている。
【0003】
近年、建材用や器物加工用等のプレコート塗装金属板の分野においては、より美粧性に優れた塗装金属板が求められており、粒子径の大きな有機樹脂微粒子を配合した上塗塗料、無機質微粒子を大量に配合した上塗塗料、アミン化合物を配合し塗膜表面と塗膜内部における硬化速度の差を利用して均一な艶消し外観を形成させる上塗塗料等を塗装した艶消塗装金属板等が市場に出ている。
【0004】
また、消費者の高級化志向から、低光沢(艶消し)の塗膜外観への要求が高くなりつつあり、塗料組成物及び塗装方法が種々検討されてきた。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等の体質顔料を塗料組成物中に配合して低光沢としたプレコート鋼板が検討されてきた。しかしながら、これらの塗膜には、加工性や耐候性が劣る等の問題点があった。
【0005】
例えば、特許文献1(特開2002-146280号公報)には、均一な艶消し外観を有する塗膜を発生する塗料組成物として、変性ポリエステル樹脂(A)、水酸基を含有するポリエステル樹脂又はアクリル樹脂(B)、低核体メチル化メラミン樹脂(C)及びスルホン酸1当量と沸点30℃以上250℃以下の第2級もしくは第3級アミンとの混合物(D)を含有する塗料組成物の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-146280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の塗料組成物では、加工性が改善された艶消し外観を有する塗膜は得られるものの、塗膜の耐候性(退色性)は、特に中彩色から濃彩色にかけての色相領域において、改良の余地がある。なお、本開示において、中彩色、濃彩色とは、塗膜の明度(L値)によって定義され、明度(L値)はJIS K 5600-4-4の3.2及びJIS K 5600-4-5に記載に従って算出される。明度(L値)は、例えば、分光測色計CM-M6(コニカミノルタ社製)等で測定できる。明度(L値)が40未満である塗色を濃彩色、40以上80未満の塗色を中彩色とする。
本開示の目的は、低光沢、かつ、高耐候性を有する塗膜の形成に寄与できる塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本開示は下記態様を提供する。
[1]
少なくとも塗膜形成樹脂(A)及び架橋剤(B)を含む塗料組成物であり、
該塗料組成物を硬化させた塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.2μm以上であり、かつ展開面積比(Sdr)が800%以上
であることを特徴とする塗料組成物。
[2]
更に、スルホン酸(C)、アミン化合物(D)及び骨材(E)を含む、[1]に記載の塗料組成物。
[3]
前記塗膜形成樹脂(A)は、水酸基を有する樹脂であり、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの変性物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]又は[2]に記載の塗料組成物。
[4]
前記架橋剤(B)は、メラミン樹脂及び尿素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[5]
前記架橋剤(B)の含有量は、前記塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、樹脂固形分として5質量部以上100質量部以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[6]
前記スルホン酸(C)の含有量は、前記塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、1.0質量部以上18.0質量部以下である、[2]~[5]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[7]
前記アミン化合物(D)は、沸点50℃以上250℃以下の2級又は3級アミンである、[2]~[6]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[8]
前記アミン化合物(D)による、前記スルホン酸(C)の酸基の中和率は、300%以上3,000%以下である、[2]~[7]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[9]
前記骨材(E)は、アクリル樹脂粒子、ガラスビーズ、アクリロニトリル樹脂粒子、尿素樹脂粒子、セラミック繊維及びシリカ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[2]~[8]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[10]
前記骨材(E)は、アクリル樹脂粒子、尿素樹脂粒子及びシリカ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
シリカ粒子の粒子径は、1μm以上20μm以下である、[2]~[9]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[11]
鋼板及び前記鋼板の少なくとも一方の表面上に塗膜を有する塗装鋼板であって、
前記塗膜は、少なくとも塗膜形成樹脂(A)と、架橋剤(B)とを含む塗料組成物より形成され、
前記塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.2μm以上であり、かつ展開面積比(Sdr)が800%以上、
であることを特徴とする塗装鋼板。
[12]
鋼板及び前記鋼板の少なくとも一方の表面上に塗膜を有する塗装鋼板であって、
前記塗膜は、[1]~[10]のいずれか1つに記載の塗料組成物より形成され、
前記塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.2μm以上であり、かつ展開面積比(Sdr)が800%以上、
であることを特徴とする塗装鋼板。
[13]
[1]~[10]のいずれか1つに記載の塗料組成物を、被塗物に塗装する塗装工程、及び
塗装後の塗料組成物を150℃以上270℃以下の温度で乾燥及び/又は硬化させることを含む、
塗膜の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示の塗料組成物は、低光沢、かつ、高耐候性を有する塗膜の形成に寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の塗料組成物について説明する。
【0011】
本開示の塗料組成物は、少なくとも塗膜形成樹脂(A)及び架橋剤(B)を含み、
該塗料組成物を硬化させた塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.2μm以上であり、かつ展開面積比(Sdr)が800%以上
であることを特徴とする。
本開示の塗料組成物を用いることにより、本開示の塗料組成物を硬化させて得られた塗膜において、光沢が低くなり、かつ、耐候性が良好になる。これは、特定の理論に限定して解釈すべきではないが、以下のように考えられる。本開示の塗料組成物により形成される塗膜は、その表面において特定の算術平均高さ(Ra)及び展開面積比(Sdr)を有する凹凸構造を有する。このような塗膜では、表面積が増加するため、単位面積当たりの紫外線の受光量は減少し、その結果、塗膜の劣化を抑制できると考えられる。更に、本開示の塗料組成物より形成された塗膜が建築部材等に用いられた場合に、紫外線に照射される時間を短くすることができ、その結果、塗膜の劣化を抑制できる。これは、該塗膜が凹凸構造を有するために、ある時刻には太陽に直接照射されていた箇所が、別の時刻には太陽に直接照射されなくなるためと考えられる。更に、塗膜の表面に凹凸構造を有するため、塗膜表面上で光の乱反射が生じ、その結果、塗膜の光沢を低減できるとともに、光が散乱するために塗膜の内部への光の入射を抑制でき、塗膜内部からの劣化も防ぐことができると考えられる。
【0012】
算術平均高さ(「Ra」ともいう)は、塗膜の表面の粗さを示すパラメータであり、塗膜の表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表す。Raが小さい場合には、塗膜表面はより平坦である、すなわち、均一な艶消し外観が十分に形成されていないことを意味する。Raの測定は、JIS B 0601-2001に準拠して測定し、例えば、表面粗さ測定機HANDYSURF E-35B(東京精密社製)等により測定することができる。
【0013】
Raは1.2μm以上、好ましくは2.5μm以上である。Raの上限値は好ましくは6μm、より好ましくは5μmである。得られる塗膜が均一な艶消し外観を有する場合、Raは上記範囲に含まれる値となる。
【0014】
展開面積比(「Sdr」ともいう)は、ISO 25178に基づき測定したときの、測定領域における実際の凹凸が反映された表面積(展開面積)が、測定領域における凹凸のない平面の面積に対してどれだけ増大しているかを表すパラメータであり、下記式で表される。このSdrが小さいほど表面が平滑であるといえ、完全に平坦な表面のSdrは0%となる。Sdrは、例えば、レーザー顕微鏡OPTELICS HYBRID C3(レーザーテック社製)等により測定することができる。
展開面積比(Sdr)={(A-B)/B}×100[%]
A:測定領域における実際の凹凸が反映された表面積(展開面積)
B:測定領域における凹凸のない平面の面積
【0015】
Sdrは800%以上、好ましくは1,000%以上である。Sdrの上限値は、好ましくは3,000%、より好ましくは、2,500%である。Sdrが上記範囲内にある場合、得られる塗膜は均一な艶消し外観を有する。
【0016】
本開示の塗料組成物を硬化させた塗膜の表面において、Raが1.2μm以上、かつ、Sdrが800%以上であり、この塗膜はより均一な艶消し外観を有し、耐候性に優れる。
【0017】
<塗膜形成樹脂(A)>
塗膜形成樹脂(A)は、架橋剤(B)と反応し得る官能基を有し、かつ、塗膜形成能を有する樹脂である限り特に制限されない。
【0018】
塗膜形成樹脂(A)としては、例えば、ポリエステル樹脂及びその変性物(ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂等);アクリル樹脂及びその変性物(シリコーン変性アクリル樹脂等);ウレタン樹脂及びその変性物(エステル系ウレタン樹脂、エーテル系ウレタン樹脂、カーボネート系ウレタン樹脂、エポキシ系ウレタン樹脂等);フェノール樹脂及びその変性物(アクリル変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂等);フェノキシ樹脂;アルキド樹脂及びその変性物(ウレタン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂等);フッ素樹脂等の樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
一実施態様において、塗膜形成樹脂(A)は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの変性物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。艶消し外観の形成のしやすさ、形成される塗膜の高耐候性という観点からは、塗膜形成樹脂(A)は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの変性物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0020】
一実施態様において、塗膜形成樹脂(A)は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及びこれらの変性物からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0021】
好ましくは、塗膜形成樹脂(A)は、水酸基を有する樹脂であり、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びこれらの変性物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。塗膜の加工性及び耐候性の観点からは、水酸基を有するポリエステル樹脂が好ましい。
【0022】
一実施態様において、上記塗膜形成樹脂(A)の水酸基価(「OHV」ともいう)は、例えば、5mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であってもよく、5mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であってもよい。このような塗膜形成樹脂(A)を用いることによって、塗膜外観に優れ、耐候性にも優れる塗膜を得ることができる。なお、本開示において、水酸基価は、JIS K 0070に準拠した方法により測定された値である。
本開示の塗料組成物が、複数種の塗膜形成樹脂(A)を含む場合、全塗膜形成樹脂(A)の水酸基価が上記範囲内にあることが好ましい。
別の態様においては、本開示の塗料組成物が、複数種の塗膜形成樹脂(A)を含む場合、塗膜形成樹脂(A)の水酸基価の平均値が上記範囲内に含まれ得る。
【0023】
塗膜形成樹脂(A)は、1,000以上40,000以下の数平均分子量を有することができる。
数平均分子量がこのような範囲内であることにより、白ボケ感のない均一な艶消し外観が得られやすくなる。本開示中において、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定し、ポリスチレン換算により求めた値である。
【0024】
塗膜形成樹脂(A)は、本開示の塗料組成物中に、塗膜形成樹脂(A)及び架橋剤(B)の樹脂固形分の合計100質量部に対して、樹脂固形分として50質量部以上95質量部以下含まれ得る。塗膜形成樹脂(A)の含有量が上記範囲内にあることで塗料組成物からは均一な艶消し外観の塗膜が得られ、その加工性にも優れるという利点がある。
【0025】
(ポリエステル樹脂)
一実施態様において、ポリエステル樹脂の水酸基価は、例えば5mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であってもよく、5mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であってもよい。水酸基価が上記範囲内にあることで、得られる塗膜の加工性及び耐候性が優れるという利点がある
【0026】
ポリエステル樹脂、例えば、その変性物である水酸基含有ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,000以上40,000以下であることが好ましく、2,000以上40,000以下であることがより好ましく、2,000以上30,000以下であることが特に好ましい。なお、本開示において、特に言及のない限り、単にポリエステル樹脂と記載する場合、ポリエステル樹脂及びポリエステル樹脂の変性物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを意味する。
ポリエステル樹脂がこのような数平均分子量を有することにより、ポリエステル樹脂と架橋剤(B)との架橋反応が十分に進行し、高い耐湿性を有する塗膜を形成できる。また、上記のような数平均分子量のポリエステル樹脂を有することにより、形成される塗膜の架橋密度が高くなりすぎることを抑制でき、十分な伸び率を有する塗膜を形成でき、例えば、十分な折り曲げ加工性を有する塗膜を形成できる。また更に、上記のような数平均分子量のポリエステル樹脂を有することにより、本開示の塗料組成物は適切な粘度を有し得、取り扱い性が良好となり得る。
【0027】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-35℃以上110℃以下であることが好ましく、例えば、-30℃以上80℃以下であり、-30℃以上60℃以下であることができる。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であることにより、形成される塗膜の透湿性が過度に高くなることなく、塗膜の耐湿性が十分となる。
【0028】
ポリエステル樹脂(その変性物を含む)の固形分酸価は、0.1mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であり、例えば、0.2mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であり、0.3mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であってよい。
固形分酸価がこのような範囲であることにより、例えば、耐加水分解性を向上させることができ、耐湿性を有する塗膜を形成できる。
【0029】
ポリエステル樹脂は、多価アルコールと多塩基酸との重縮合により得ることができる。
多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール又は1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ヒドロキシアルキル化ビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル-2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオネート(BASHPN)、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)ジメチルヒダントイン、ポリカプロラクトンポリオール、グリセリン、ソルビトール、アンニトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-(ヒドロキシエチル)イソシアネート等を挙げることができる。多価アルコールは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
多塩基酸の具体例としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、無水コハク酸、乳酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、無水エンド酸等を挙げることができる。多塩基酸は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
ポリエステル樹脂の変性物としては、例えば、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂等の変性ポリエステル樹脂を挙げることができる。例えば、ウレタン変性ポリエステル樹脂は、ポリエステルを主鎖に有し、その末端をイソシアネートで変性させ、ウレタン変性させた樹脂である。例えば、シリコーン変性ポリエステル樹脂を例に挙げれば、これは、ポリエステル樹脂と有機シリコーン(例えば、官能基として-SiOCH基及び/又は-SiOH基を有する数平均分子量300以上1,000以下程度の有機シリコーン)とを反応させることにより調製することができる。有機シリコーンの使用量は、通常、ポリエステル樹脂100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下程度である。また、ウレタン変性ポリエステル樹脂を例に挙げれば、これは、上記ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物とを反応させて調製することができる。
ポリエステル樹脂及び水酸基含有ポリエステル樹脂変性物として市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ベッコライト46-118、ベッコライトM-6205-50、ベッコライトM-6401-52、ベッコライトM-6402-50(いずれもDIC社製)、バイロン220、バイロンUR3500、バイロンUR5537、バイロンUR8300、バイロンUR4410、バイロンGK13CS(いずれも東洋紡社製)等を挙げることができる。
【0031】
(アクリル樹脂)
一実施態様において、アクリル樹脂の水酸基価は、例えば、5mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であってもよく、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であってもよく、例えば、5mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であってもよい。
【0032】
アクリル樹脂及びその変性物の数平均分子量(Mn)は、1,000以上40,000以下であることが好ましい。なお、本開示において、特に言及のない限り、単にアクリル樹脂と記載する場合、アクリル樹脂及びアクリル樹脂の変性物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを意味する。
アクリル樹脂がこのような数平均分子量を有することにより、アクリル樹脂と架橋剤(B)との架橋反応が十分に進行し、高い耐湿性を有する塗膜を形成できる。また、上記のような数平均分子量のアクリル樹脂を用いることにより、形成される塗膜の架橋密度が高くなりすぎることを抑制でき、十分な伸び率を有する塗膜を形成でき、例えば、十分な折り曲げ加工性を有する塗膜を形成できる。また更に、上記のような数平均分子量のアクリル樹脂を用いることによりを有することにより、本開示の塗料組成物は適切な粘度を有し得、取り扱い性が良好となり得る。
【0033】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-35℃以上110℃以下であることが好ましく、例えば、-30℃以上80℃以下であり、-30℃以上60℃以下であることができる。
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であることにより、塗膜の透湿性が過度に高くなることなく、塗膜の耐湿性が十分となる。
【0034】
アクリル樹脂(その変性物を含む)の固形分酸価は、例えば、0.1mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であってよい。
固形分酸価がこのような範囲であることにより、例えば、耐加水分解性を向上させることができ、耐湿性を有する塗膜を形成できる。
【0035】
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、N-メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー及びそのラクトン付加物;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アルキル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル等から選択される1種又は2種以上のモノマーからなるアクリル樹脂を挙げることができる。アクリル樹脂は、上記モノマーに由来する構成単位のほか、他のモノマー(例えば、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有エチレン性モノマーや、スチレン等のビニル系モノマー等)に由来する構成単位を含んでいてもよい。なお、本開示において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を表す。
アクリル樹脂の変性物としては、例えば、シリコーン変性アクリル樹脂等の変性アクリル樹脂を挙げることができる。例えば、シリコーン変性アクリル樹脂を例に挙げれば、これは、アクリル樹脂と上記したような有機シリコーンとを反応させることにより調製することができる。有機シリコーンの使用量は、通常、アクリル樹脂100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下程度である。
【0036】
アクリル樹脂及びその変性物としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、アクリディックWSG-806(DIC社製)、コータックスSA-105(東レ・ファインケミカル社製)等を挙げることができる。
【0037】
(ウレタン樹脂)
一実施態様において、ウレタン樹脂は水酸基を有する。本態様においては、ウレタン樹脂の水酸基価は、例えば、5mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であってもよく、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であってもよく、例えば、5mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であってもよい。
【0038】
ウレタン樹脂及び変性ウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,000以上30,000以下であり、例えば、2,000以上28,000以下であり、2,500以上25,000以下であってよい。一実施態様において、ウレタン樹脂及び変性ウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)は、6,000以上15,000以下である。なお、本開示において、特に言及のない限り、単にウレタン樹脂と記載する場合、ウレタン樹脂及びウレタン樹脂の変性物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを意味する。
ウレタン樹脂がこのような数平均分子量をもつことにより、形成される塗膜の架橋密度が高くなりすぎることを抑制でき、十分な伸び率を有する塗膜を形成でき、例えば、十分な折り曲げ加工性を有する塗膜を形成できる。また更に、上記のような数平均分子量のウレタン樹脂を用いることにより、本開示の塗料組成物は適切な粘度を有し得、取り扱い性が良好となり得る。
【0039】
一実施態様において、ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30℃以上80℃以下であり、例えば、-30℃以上60℃以下であり、-30℃以上50℃以下であることができる。
ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であることにより、塗膜の透湿性が過度に高くなることなく、塗膜の耐湿性が十分となる。
【0040】
ウレタン樹脂(その変性物を含む)の固形分酸価は、0.1mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であり、例えば、0.2mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であり、0.3mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であってよい。
固形分酸価がこのような範囲であることにより、例えば、耐加水分解性を向上させることができ、耐湿性を有する塗膜を形成できる。
【0041】
ウレタン樹脂として、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させ、その後に更に鎖伸長剤によって鎖伸長して得られるもの等を挙げることができる。
ポリオール化合物としては、1分子当たり2個以上の水酸基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ビスフェノールヒドロキシプロピルエーテル等のポリエーテルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、又はそれらの混合物が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、1分子当たり2個以上のイソシアネート基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香脂肪族ジイソシアネート、又はそれらの混合物が挙げられる。
鎖伸長剤としては、分子内に1個以上の活性水素を含有する化合物であれば特に限定されず、水又はアミン化合物を適用できる。アミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミンや、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミンや、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミンや、ヒドラジン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のヒドラジン類や、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタノール、3-アミノプロパンジオール等のアルカノールアミン等が挙げられる。
【0042】
一実施態様において、ウレタン樹脂として、エステル系ウレタン樹脂、エーテル系ウレタン樹脂及びカーボネート系ウレタン樹脂を用いてもよい。
【0043】
<架橋剤(B)>
架橋剤(B)は、塗膜形成樹脂(A)と反応して硬化塗膜を形成する。
【0044】
架橋剤(B)として、例えば、ポリイソシアネート化合物;ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を活性水素含有化合物でブロックしたブロックポリイソシアネート化合物(「BI」ともいう);アミノ樹脂;フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0045】
架橋剤(B)の含有量(樹脂固形分量)は、塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対し、5質量部以上100質量部以下であってもよく、10質量部以上70質量部以下であってもよく、10質量部以上40質量部以下であってもよく、10質量部以上30質量部以下であってもよい。
架橋剤(B)を上記の量含むことにより、塗膜形成樹脂(A)と架橋剤(B)との架橋反応が良好に進行し、得られる塗膜外観が良好となり、均一な艶消し外観が得られる。また、得られる塗膜の加工性及び耐食性が良好となり得る。
【0046】
一実施態様において、架橋剤(B)は、アミノ樹脂である。アミノ樹脂は、無触媒下においても塗膜形成樹脂(A)との架橋反応性に優れており、均一な艶消し外観の形成のしやすさの観点から好ましい。
【0047】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂等を挙げることができ、これらの中ではメラミン樹脂が好ましい。
アミノ樹脂(例えば、メラミン樹脂)は、塗膜形成樹脂(A)との架橋反応性に優れており、得られる塗膜外観が特に良好となり、均一な艶消し外観が得られる。また、得られる塗膜の加工性及び耐食性が良好となり得る。
【0048】
「メラミン樹脂」とは、一般的に、メラミンとアルデヒドから合成される熱硬化性の樹脂を意味し、トリアジン核とトリアジン核1つあたり3つの反応性官能基-NXとを有している。メラミン樹脂としては、反応性官能基として-N(CHOR)〔Rは炭素数1以上8以下のアルキル基を示す、以下同じ〕を含む完全アルキル化型;反応性官能基として-N(CHOR)(CHOH)を含むメチロール基型;反応性官能基として-N(CHOR)(H)を含むイミノ基型;反応性官能基として、-N(CHOR)(CHOH)と-N(CHOR)(H)とを含む、あるいは-N(CHOH)(H)を含むメチロール/イミノ基型の4種類を例示することができる。
上記メラミン樹脂のなかでも、完全アルキル化型のメラミン樹脂を用いることが好ましく、このような樹脂としては、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル、ブチル混合型メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂等が挙げられ、これらの中では、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル、ブチル混合型メラミン樹脂が好ましい。
【0049】
メラミン樹脂として市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、サイメル303、サイメル254、サイメル1170、サイメル235、サイメル238、サイメル1123、マイコート715(いずれもダイセル・オルネクス社製)、スミマールM-40S(住友化学社製)、スーパーベッカミンJ-820-60、スーパーベッカミンL-121-60、(いずれもDIC社製)、ユーバン20SE-60(三井化学社製)等を挙げることができる。
上記メラミン樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ある態様では、上記メラミン樹脂とポリイソシアネート化合物を併用してもよい。また、必要に応じて、錫化合物、チタン化合物等の金属触媒を用いてもよい。
【0050】
本開示の塗料組成物は、更に、スルホン酸(C)、アミン化合物(D)及び骨材(E)を含み得る。
【0051】
<スルホン酸(C)>
スルホン酸(C)は、塗膜形成樹脂(A)と架橋剤(B)との反応を促進する触媒であり、加えることによって上記反応時間を短くし得る。また、スルホン酸(C)とアミン化合物(D)とは塩を形成し得る。スルホン酸(C)とアミン化合物(D)との塩は、塗料組成物より形成される塗膜の表面硬化と内部硬化との差を大きくする作用があり、その結果として均一性が高く白ボケの少ない艶消し塗膜を形成することができる。
【0052】
スルホン酸(C)の含有量は、塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上18.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以上15.0質量部以下であり、例えば、2.0質量部以上9.0質量部以下であってもよい。
スルホン酸(C)の含有量が上記範囲内にあることで、均一性が高く白ボケの少ない艶消し塗膜が得られ、かつ、得られた塗膜の耐薬品性が優れるという利点がある。
【0053】
スルホン酸としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
<アミン化合物(D)>
アミン化合物(D)は、スルホン酸(C)の中和に寄与するために存在し、少なくともその一部が本開示の塗料組成物中にスルホン酸(C)との塩として存在し得る。アミン化合物(D)は、均一な艶消し塗膜を形成することに寄与する。
【0055】
アミン化合物(D)は、好ましくは、沸点50℃以上250℃以下の2級又は3級アミンである。沸点50℃以上250℃以下の2級又は3級アミンとしては、特に限定されないが、例えば、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジアミルアミン、ジアリルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、N-エチル-1,2-ジメチルプロピルアミン、N-メチルヘキシルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ピペリジン、2-ピペコリン、3-ピペコリン、4-ピペコリン、2,4-ルペチジン、2,6-ルペチジン、3,5-ルペチジン、3-ピペリジンメタノール、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリアリルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N-メチルジアリルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアリルアミン、N-メチルピペリジン、4-エチルピリジン、N-メチルピペラジン、N-メチルモルホリン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。アミン化合物(D)は、より好ましくは沸点70℃以上220℃以下の2級又は3級アミンである。
【0056】
一実施態様として、アミン化合物(D)は、スルホン酸(C)の酸基の中和率が、好ましくは300%以上、より好ましく320%以上であるように、本開示の塗料組成物に加えることができる。アミン化合物(D)は、スルホン酸(C)の酸基の中和率が3,000%以下となるように加えることができ、例えば2,000%以下、具体的には1,600%以下、より具体的には1,500%以下、更に具体的には550%以下となるように加えることができる。ここで、中和率とは、スルホン酸(C)の酸基の量100モル%に対する、アミン化合物(D)の塩基の量(モル%)をいう。なお、中和率の単位は、単に「%」と記載することもある。
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、中和率が上記のような範囲にあることにより、塗料組成物を焼付ける際にアミン化合物(D)が揮発し、この時にアミン化合物(D)の塩基のカウンターとしてのスルホン酸(C)が、形成される膜の表層に移行して濃化すると考えられる。このようにスルホン酸(C)が表層において濃化することにより、表層における硬化反応が促進され、その結果、塗膜表面の凹凸がより良好に形成され、艶消し外観塗膜が形成されやすくなると考えられる。
【0057】
スルホン酸(C)及びアミン化合物(D)は、予め、例えば、20~30℃で10~20分間混合して形成した混合物として、塗料組成物に配合してもよい。このとき、混合物中に、スルホン酸(C)とアミン化合物(D)との塩(例えば、2級又は3級アミンでスルホン酸をブロックしたスルホン酸)が含まれ得る。
別の態様では、スルホン酸(C)とアミン化合物(D)との反応物、例えば、2級又は3級アミンでスルホン酸をブロックしたブロック化スルホン酸化合物の市販品を、塗料組成物に配合してもよい。この場合、アミン化合物(D)を併せて加えることができる。ブロック化スルホン酸化合物の市販品としては、ジノニルナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸と、これらのアミンブロック体を挙げることができる。
また、塗料組成物に、スルホン酸(C)とアミン化合物(D)とを加え、例えば、20~30℃で10~20分間混合してもよい。
【0058】
スルホン酸(C)とアミン化合物(D)との塩を加える場合、上記塩の含有量は、塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、スルホン酸換算で1.0質量部以上23.0質量部以下が好ましく、2.0質量部以上19.0質量部以下がより好ましい。
なお、本開示において、前記スルホン酸(C)とアミン化合物(D)との塩のような化合物を使用する場合、含有量はスルホン酸換算の量を意味する。
【0059】
一実施態様において、スルホン酸(C)の含有量が、塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、1質量部以上18質量部以下であり、かつ、アミン(D)の中和率が、300%以上3,000%以下の範囲にあることが好ましく、スルホン酸(C)の含有量が2質量部以上15質量部以下であり、かつ、アミン(D)中和率320%以上2,000%以下の範囲にあることがより好ましく、スルホン酸(C)の含有量が2質量部以上15質量部以下であり、かつ、アミン(D)の中和率が320%以上1,500%以下の範囲にあることが更に好ましい。塗料組成物が上記のようなスルホン酸(C)の含有量及び中和率を有することにより、形成される塗膜の表面におけるRa及びSdrの値が特に良好になり得る。また、上記のような塗料組成物を用いることにより、艶消し外観を有し、低光沢、及び高耐候性を有する塗膜が形成され得る。
【0060】
<骨材(E)>
骨材(E)を含むことにより、本開示の塗料組成物より形成される塗膜において、均一性が高く白ボケの少ない艶消し塗膜を安定的に発現させ得る。
【0061】
骨材(E)は、塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下加えてもよく、2質量部以上12質量部以下加えてもよい。
骨材(E)を上記の範囲で加えることにより、均一な艶消し塗膜を特に安定的に発現させることができる。
【0062】
一実施態様において、骨材(E)は、アクリル樹脂粒子、ガラスビーズ、アクリロニトリル樹脂粒子、尿素樹脂粒子、セラミック繊維及びシリカ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含み、アクリル樹脂粒子、尿素樹脂粒子及びシリカ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、シリカ粒子を含むことがより好ましい。
本態様の骨材(E)を含むことにより、本開示の塗料組成物より得られる塗膜において、均一な艶消し塗膜を安定的に発現させ得る。
【0063】
(シリカ粒子)
一実施態様において、骨材(E)はシリカ粒子である。
前記シリカ粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上17μm以下、例えば2μm以上15μm以下、2.5μm以上15μm以下であってもよい。なお、本開示において、骨材(E)の平均粒子径は、レーザー散乱法や回折法等を用いた通常の測定機器により求めた体積平均粒子径(D50)を指すものであり、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2300(島津製作所社製)等を使用して測定することができる。
【0064】
シリカ粒子の含有量は、塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下であってもよく、2質量部以上12質量部以下であってもよい。シリカ粒子の含有量が上記範囲内にあることで、得られる塗膜はより均一な艶消し外観となり得る。
【0065】
シリカ粒子は、特に限定されないが、湿式法、乾式法のいずれの方法によって製造されたものであってもよい。シリカ粒子としては、例えば、表面が無処理のシリカ粒子、表面が有機物で処理されたシリカ粒子、有機溶剤分散性コロイダルシリカ等を挙げることができる。
【0066】
シリカ粒子としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、サイリシア710、サイリシア740、サイリシア550(以上、いずれも富士シリシア化学社製)、ミズカシルP-73(水澤化学工業社製)、ニップシール E-200A、ニップジェル AZ-6A0(いずれも東ソー・シリカ社製)、GASIL HP270、GASIL HP395(いずれもPQコーポレーション社製)等を挙げることができる。
【0067】
(アクリル樹脂粒子)
一実施態様において、骨材(E)はアクリル樹脂粒子である。
アクリル樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm以上20μm以下であり、例えば2μm以上15μm以下、2.5μm以上15μm以下であってもよく、5μm以上10μm以下であってもよい。
【0068】
アクリル樹脂粒子の含有量は、塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下であってもよく、2質量部以上12質量部以下であってもよい。アクリル樹脂粒子の含有量が上記範囲内にあることで、均一な艶消し外観が形成できる。
【0069】
アクリル樹脂粒子としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、ガンツパール GM-0801(アイカ工業社製)等を挙げることができる。
【0070】
(尿素樹脂粒子)
一実施態様において、骨材(E)は尿素樹脂粒子である。
尿素樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm以上20μm以下であり、例えば2μm以上15μm以下、2.5μm以上15μm以下であってもよい。
【0071】
尿素樹脂粒子の含有量は、塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下であってもよく、2質量部以上12質量部以下であってもよい。尿素樹脂粒子の含有量が上記範囲内にあることで、より均一な艶消し外観が形成できる。
【0072】
尿素樹脂粒子としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、パーゴパックM4(ロンザ・ジャパン社製)等を挙げることができる。
【0073】
一実施態様において、塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、スルホン酸(C)は1.0質量部以上18.0質量部以下(具体的には2.0質量部以上9.0質量部以下)、アミン化合物(D)の中和率は300%以上3,000%以下(具体的には300%以上1,500%以下、例えば、550%以下)、骨材(E)は2質量部以上12質量部以下加えてもよい。本態様においては、スルホン酸(C)としては、スルホン酸、アミン化合物(D)としては、2級又は3級アミン、骨材(E)としては、シリカ粒子、アクリル樹脂粒子を用いることが好ましい。
【0074】
<その他の添加剤>
本開示の塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A)に加えて、更に、熱可塑性樹脂を用いることもできる。
熱可塑性樹脂として、例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化オレフィン系樹脂;塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン等をモノマー成分とする単独重合体又は共重合体;セルロース系樹脂;アセタール樹脂;アルキド樹脂;塩化ゴム系樹脂;変性ポリプロピレン樹脂(酸無水物変性ポリプロピレン樹脂等);フッ素樹脂(例えば、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ素化オレフィンとビニルエーテルとの共重合体、フッ素化オレフィンとビニルエステルとの共重合体)等を挙げることができる。熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂を併用することで、形成される塗膜において、より良好な塗膜物性、例えば、より良好な塗膜強度、伸び等を得ることができる。
【0075】
本開示の塗料組成物は、更に、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、表面調整剤;体質顔料;着色顔料、染料等の着色剤;ワックス;遮熱顔料;光輝性顔料;溶剤;紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等);酸化防止剤(フェノール系、スルフォイド系、ヒンダードアミン系酸化防止剤等);可塑剤;カップリング剤(シラン系、チタン系、ジルコニウム系カップリング剤等);タレ止め剤;増粘剤;顔料分散剤;顔料湿潤剤;レベリング剤;色分かれ防止剤;沈殿防止剤;消泡剤;凍結防止剤;乳化剤;防腐剤;防かび剤;抗菌剤;安定剤等がある。これらの添加剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
表面調整剤としては、塗料用として当業者に周知のものを使用できる。
好ましい表面調整剤としては、アクリル系、シリコーン系及びフッ素系の界面活性剤等を挙げることができる。これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
艶消し外観塗膜は、塗膜の表層部の硬化反応が速いために形成されるが、塗膜の表層部よりも内面側に存在する層(「下層部」ともいう)の流動性が大きすぎると、円形の艶ムラやワレ状肌等の外観不良が生じることがある。表面調整剤を塗料組成物に添加することで、塗膜上下層の反応温度差を保持しながら下層部の流動性を適度な状態に抑制し、上記の塗膜の外観不良を抑制し、均一な縮み肌の形成に寄与し得る。
表面調整剤の含有量は、例えば、塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下である。
表面調整剤としては、例えば、ディスパロンOX-70(楠本化成社製)を挙げることができる。
【0077】
体質顔料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、マイカ、ガラス繊維等を挙げることができる。これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。一実施態様において、体質顔料の含有量は、塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して1質量部以上40質量部以下であり、例えば、10質量部以上30質量部以下である。体質顔料の量がこのような範囲内であることにより、塗膜の耐傷付性を向上させる等の有利な効果がある。
【0078】
着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、コールダスト等の着色無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ペリレン、アンスラピリミジン、カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、アゾオレンジ、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、アゾイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、ペリレンレッド、アゾレッド、アントラキノンレッド等の着色有機顔料;アルミニウム粉、アルミナ粉、ブロンズ粉、銅粉、スズ粉、亜鉛粉、リン化鉄、微粒化チタン等を挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
遮熱顔料は、無機系遮熱顔料及び/又は有機系遮熱顔料を含む。
無機系遮熱顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、チタン酸ナトリウム、酸化ケイ素、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化クロム、酸化鉄、酸化銅、酸化セリウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物系顔料;酸化鉄-酸化マンガン、酸化鉄-酸化クロム(例えば、大日精化社製のダイピロキサイドカラーブラック#9595、アサヒ化成工業社製のBlack6350)、酸化鉄-酸化コバルト-酸化クロム(例えば、大日精化社製のダイピロキサイドカラーブラウン#9290、ダイピロキサイドカラーブラック#9590)、酸化銅-酸化マグネシウム(例えば、大日精化社製のダイピロキサイドカラーブラック#9598)、酸化マンガン-酸化ビスマス(例えば、アサヒ化成工業社製のBlack6301)、酸化マンガン-酸化イットリウム(例えば、アサヒ化成工業社製のBlack6303)等の複合酸化物顔料;アルミニウム、鉄、マグネシウム、マンガン、ニッケル、チタン、クロム、カルシウム等の金属系顔料;更に、鉄-クロム、ビスマス-マンガン、鉄-マンガン、マンガン-イットリウム等の合金系顔料が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。
有機系遮熱顔料としては、例えば、アゾ系顔料、アゾメチン系顔料、レーキ系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系顔料(アントアンスロン顔料、ジアミノアンスラキノニル顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、アントラピリミジン顔料等)、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、キニフタロン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。
なお、本開示において、遮熱顔料とは、近赤外波長域(波長:780nm~2,500nm)の光を吸収しないか、又は近赤外波長域(波長:780nm~2,500nm)の光の吸収率が小さい顔料を示す。
【0080】
光輝性顔料としては、例えば、アルミ箔、ブロンズ箔、スズ箔、金箔、銀箔、チタン金属箔、ステンレススチール箔、ニッケル・銅等の合金箔、箔状フタロシアニンブルー等の箔顔料を挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
ワックスとしては、塗料用として当業者に知られているワックスが使用でき、例えば、マイクロクリスタリン、ポリエチレン、ポリプロピレン、パラフィン、カルナウバ及びそれらの変性物等が挙げられる。
【0082】
溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系有機溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ソルフィット(クラレ社製)等のアルコール系有機溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;3-メトキシブチルアセテート、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系有機溶剤;並びに、N-メチル-2-ピロリドン、トルエン、ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット、T-SOL 100、T-SOL 150(いずれも芳香族炭化水素系溶剤、JXTGエネルギー社製)等を挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
本開示の塗料組成物は、水系塗料であってもよく、有機溶剤系の塗料であってもよい。
【0084】
<塗料組成物の調製方法>
本開示の塗料組成物を調製する方法は、特に限定されない。例えば、サンドグラインドミル、ボールミル、ブレンダー、ペイントシェーカー又はディスパー等の混合機、分散機、混練機等を選択して使用し、各成分を混合することにより、調製することができる。
【0085】
(被塗物)
本開示の塗料組成物の塗装の対象となる被塗物は、例えば、溶融法又は電解法等により製造される亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金めっき鋼板、アルミニウム合金めっき鋼板、溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、冷延鋼板等の金属板が挙げられる。また、これら鋼板又はめっき鋼板以外に、アルミニウム板(アルミニウム合金板を含む)等の金属板も塗装対象とすることができる。
上記金属板は、表面処理されていることが好ましい。具体的には、上記金属板は、アルカリ脱脂処理、湯洗処理、水洗処理等の前処理が施された後に、化成処理が施されていることが好ましい。化成処理は公知の方法で行ってよく、その例にはクロメート処理、リン酸亜鉛処理等の非クロメート処理等が含まれる。上記表面処理としては、使用する鋼板に応じて適宜選択することができるが、重金属を含まない処理が好ましい。
【0086】
<塗装鋼板>
本開示の塗装鋼板は、鋼板、及び、該鋼板の少なくとも一方の表面に本開示の塗料組成物から形成された塗膜を有する。上記塗料組成物は、少なくとも塗膜形成樹脂(A)と、架橋剤(B)とを含む。上記塗膜の表面において、算術平均高さ(Ra)が1.2μm以上であり、かつ展開面積比(Sdr)が800%以上である。
【0087】
塗料組成物から形成された塗膜の膜厚は、10μm以上25μm以下であり、ある態様においては、膜厚は、15μm以上22μm以下である。
【0088】
一の態様において、鋼板は、一方の表面に本開示に係る塗料組成物から形成された塗膜を有し、他方の表面に、既知の塗料組成物から形成される塗膜を有する。例えば、他方の表面には、エポキシ樹脂を含む塗料組成物等、公知の塗料組成物から形成された塗膜を有してもよい。
【0089】
塗装鋼板は、鋼板と、本開示の塗料組成物から形成した塗膜との間に、下塗り塗膜を有してもよい。
上記下塗り塗料は従来公知のものであってよく、例えば、従来公知の非クロム系防錆塗料等が挙げられる。
下塗り塗膜を有することで、本開示の塗料組成物から形成された塗膜の密着性、耐食性を高めることができる。
ある態様において、下塗り塗膜の膜厚は、3μm以上15μm以下であり、例えば5μm以上10μm以下である。
【0090】
<塗膜の製造方法>
本開示の塗膜の製造方法は、
被塗物に本開示の塗料組成物を塗装する工程、及び
前記塗料組成物を150℃以上270℃以下の温度で乾燥及び/又は硬化させることを含む。
【0091】
被塗物の表面に塗装下地処理としてリン酸塩処理、クロメート処理等の化成処理を施し、その上に塗料組成物を塗装することが好ましい。このように化成処理を施した金属板面上に、本開示の塗料組成物を塗装することにより、塗膜の金属板面に対する密着性が向上するとともに耐食性も向上する。また、化成処理を施した金属板面に下塗り塗膜(プライマー塗膜)を形成し、その上に塗装することもできる。
本発明の塗料組成物からなる塗膜は、塗料組成物を鋼板等の被塗物に塗布した後、被塗物を加熱する焼付け処理を行なうことによって形成することができる。
塗料組成物の塗装は、被塗物に、バーコーター、ロールコーター、ロールカーテンコーター、カーテンフローコーター、ダイコーター又はスプレーガンを用いて行うことができる。
また、塗装後、被塗物を加熱する焼付け処理方法は特に限定しないが、熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱等の加熱手段により塗膜を焼き付け、樹脂を架橋させて硬化塗膜を得ることができる。焼付け温度(鋼板等の被塗物が達する最高温度)は、通常180℃以上250℃以下であり、焼付け時間は、通常10秒以上200秒以下である。
本発明の塗料組成物を用いて得られる塗膜の膜厚(乾燥膜厚)は、通常1μm以上30μm以下であり、例えば、上塗り塗膜である場合は、好ましくは10μm以上25μm以下である。
【実施例
【0092】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。実施例中「部」及び「%」は、ことわりのない限り質量基準による。
【0093】
[塗膜形成樹脂(A)]
塗膜形成樹脂(A-1)~(A-6)として、それぞれ以下のように調製したものを用いた。
【0094】
<塗膜形成樹脂(A-1)の調製>
温度計、コンデンサー及び撹拌機を備えた反応容器に、ネオペンチルグリコール155質量部、1,6-ヘキサンジオール222質量部、トリメチロールプロパン50質量部、イソフタル酸441質量部、アジピン酸132質量部及びキシレン26質量部を混合し、窒素気流中で230℃にまで徐々に昇温し、生成する水を留去しながら、脱水量が126質量部に達し、反応物が所定の粘度になるまでエステル化反応を行った(工程a1-1)。その後、反応容器の温度を50℃に下げた後、キシレン90質量部、T-SOL150 379質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート87質量部を混合し(工程a1-2)、塗膜形成樹脂(A-1)(ポリエステル樹脂1;固形分濃度:60質量%、数平均分子量:3,000、水酸基価:55mgKOH/g)を調製した。
【0095】
<塗膜形成樹脂(A-2)の調製>
(工程a1-1)のモノマー組成を、ネオペンチルグリコール202質量部、1,6-ヘキサンジオール153質量部、トリメチロールプロパン66質量部及びイソフタル酸579質量部(脱水量:122質量部)に変更した以外は、前記塗膜形成樹脂(A-1)の調製方法と同様にして、塗膜形成樹脂(A-2)(ポリエステル樹脂2;固形分濃度:60質量%、数平均分子量:2,300、水酸基価:70mgKOH/g)を調製した。
【0096】
<塗膜形成樹脂(A-3)の調製>
温度計、コンデンサー、滴下ロート及び撹拌機を備えた反応容器に、キシレン87質量部、T-SOL150 219質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート292質量部を仕込み、窒素雰囲気下で130℃に昇温した。これに、スチレン300質量部、メタクリル酸メチル61質量部、メタクリル酸n-ブチル510質量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル116質量部及びアクリル酸13質量部からなるモノマー溶液と、開始剤としてカヤエステルO(化薬アクゾ社製、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサネート)85質量部及びキシレン92質量部からなる開始剤溶液を、それぞれ滴下ロートを通じて3時間で等速滴下し、その後、反応物温度を130℃で30分間保持した。次に、カヤエステルO 10質量部及びキシレン40質量部からなる開始剤溶液を30分で等速滴下し、その後、反応物を130℃で2時間保持し、塗膜形成樹脂(A-3)(アクリル樹脂1;固形分濃度:60質量%、数平均分子量:3,500、水酸基価:45mgKOH/g)を調製した。
【0097】
<塗膜形成樹脂(A-4)の調製>
モノマー組成を、スチレン200質量部、メタクリル酸メチル382質量部、アクリル酸n-ブチル282質量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル127質量部及びアクリル酸9質量部に変更した以外は、前記塗膜形成樹脂(A-3)の調製方法と同様にして、塗膜形成樹脂(A-4)(アクリル樹脂2;固形分濃度:60質量%、数平均分子量:3,600、水酸基価:50mgKOH/g)を調製した。
【0098】
<塗膜形成樹脂(A-5)の調製>
温度計、コンデンサー及び撹拌機を備えた反応容器に、ネオペンチルグリコール368質量部、1,6-ヘキサンジオール118質量部、イソフタル酸464質量部、アジピン酸51質量部及びキシレン71質量部を混合し、窒素気流中で230℃にまで徐々に昇温し、生成する水を留去しながら、脱水量が113質量部に達し、反応物が所定の粘度になるまでエステル化反応を行った(工程a5-1)。その後、反応容器の温度を50℃に下げた後、ヘキサメチレンジイソシアネート117質量部、ジブチルチンジラウレート0.5質量部、キシレン456質量部及びシクロヘキサノン527質量部を混合し、110℃で反応させた。IR(島津フーリエ変換赤外分光光度計FTIR―8400S:島津製作所社製)でイソシアネート基に由来するピークが消失するまで反応を継続し(工程a5-2)、塗膜形成樹脂(A-5)(ポリウレタン樹脂1;固形分濃度:50質量%、数平均分子量:2,700、水酸基価:42mgKOH/g)を調製した。
【0099】
<塗膜形成樹脂(A-6)の調製>
(工程a5-1)のモノマー組成を、ネオペンチルグリコール314質量部、1,6-ヘキサンジオール193質量部及びイソフタル酸493質量部(脱水量:107質量部)に、(工程a5-2)に加えた組成を、ヘキサメチレンジイソシアネート236質量部、ジブチルチンジラウレート0.5質量部、キシレン494質量部及びシクロヘキサノン565質量部に変更した以外は、前記塗膜形成樹脂(A-5)の調製方法と同様にして、塗膜形成樹脂(A-6)(ポリウレタン樹脂2;固形分濃度:50質量%、数平均分子量:4,400、水酸基価:27mgKOH/g)を調製した。
【0100】
(実施例1)
[塗料組成物1の調製]
塗膜形成樹脂(A-1)83.4質量部、溶剤としてT-SOL 150/ソルフィット=1/1(質量比)の混合溶液 9.2質量部、着色顔料としていてブラック6350 50.1質量部をディスパーで撹拌、混合し、混合物を得た。
次に、卓上式SGミル1500W型分散機(大平システム社製)に、得られた混合物全量とガラスビーズ100質量部(顔料分散塗料の合計質量と同量(又は1.5倍に相当する量)を入れ、ブラック6350の粒子径が10μm以下となるまで顔料分散を実施し、顔料分散塗料を調製した。
更に、この顔料分散塗料142.7質量部に対して、架橋剤(B-1)15.0質量部、スルホン酸(C-1)2.4質量部、アミン化合物(D-1)4.0質量部、骨材(E-1)5.0質量部及び表面調整剤としてディスパロンOX-70 1.12質量部を、ディスパーで撹拌、混合し、塗料組成物を得た。なお、アミン化合物(D-1)は、スルホン酸(C-1)の中和率が540%となるように加えた。
得られた塗料組成物を、フォードカップNo.4で100秒(25℃)となるようT-SOL 150/シクロヘキサノン=1/1の混合溶液を用いて希釈し、塗料組成物1を得た。
【0101】
[塗装鋼板の製造]
厚さ0.4mmの溶融亜鉛めっき鋼板をアルカリ脱脂した後、リン酸処理剤サーフコートEC2310(日本ペイント・サーフケミカルズ社製)を、鋼板表面及び裏面に塗布することにより化成処理を施し、乾燥した。
次に、得られた鋼板の裏面に、裏面下塗り塗料として、スーパーラックR-90(日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製、エポキシ樹脂系塗料)を、乾燥膜厚が5μmとなるようにバーコーターを用いて塗装し、素材到達最高温度230℃となる条件で60秒間焼付けを行い、裏面塗膜を形成した。
下塗り塗料として、フレキコート612WWヨウプライマー(日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製、ポリエステル樹脂系プライマー)を、乾燥膜厚が5μmになるようにバーコーターを用いて塗装し、素材到達最高温度215℃となる条件で25秒間焼付けを行い、下塗り塗膜を形成した。
その後、上記で得られた塗料組成物1を、乾燥塗膜が22μmとなるようにバーコーターを用いて塗装し、素材最高到達温度220℃となる条件で25秒間焼付けを行い、表面上塗り塗膜を形成し、塗装鋼板を得た。得られた塗膜の明度(L値)は23.4であった。
【0102】
(実施例2~30、比較例1~8)
各成分の種類及び量を、表1A~1Hに記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして塗料組成物2~30及び塗料組成物34~41を調製した。得られた塗料組成物を用いて、実施例1の塗装鋼板の製造と同様に、塗装鋼板を形成した。得られた塗膜の明度(L値)は、いずれも22.5~24.9の範囲(濃彩色)であった。
【0103】
(実施例31)
顔料種及び量を、ブラック6350 1.2質量部、タイペーク CR-97 1.6質量部、TAROX 合成酸化鉄 HY-100 42.7質量部、TODA COLOR KN-V 1.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、塗料組成物31を調整した。得られた塗料組成物31を用いて、実施例1の塗装鋼板の製造と同様に、塗装鋼板を形成した。得られた塗膜の明度(L値)は51.6(中彩色)であった。
【0104】
(実施例32)
顔料種及び量を、COLOR BLACK FW200 BEADS 18.6質量部、タイペーク CR-97 10.4質量部、TODA COLOR KN-V 2.6質量部、LIONOL BLUE SPG-8 6.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、塗料組成物32を調整した。得られた塗料組成物32を用いて、実施例1の塗装鋼板の製造と同様に、塗装鋼板を形成した。得られた塗膜の明度(L値)は18.2(濃彩色)であった。
【0105】
(実施例33)
顔料種及び量を、ブラック6350 19.7質量部、タイペーク CR-97 70.3質量部、TAROX 合成酸化鉄 HY-100 4.6質量部、TODA COLOR KN-V 0.1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、塗料組成物33を調整した。得られた塗料組成物33を用いて、実施例1の塗装鋼板の製造と同様に、塗装鋼板を形成した。得られた塗膜の明度(L値)は54.7(中彩色)であった。
【0106】
実施例、比較例に用いた下記表中に示される各成分は下記のとおりである。
[架橋剤(B)]
(B-1)サイメル303(オルネクス・ジャパン社製)、メチル化メラミン樹脂;固形分濃度:100質量%
(B-2)スーパーベッカミン L-155-70(DIC社製)、ブチル化メラミン樹脂;固形分濃度:70質量%
(B-3)アミディア G-1850(DIC社製)、尿素樹脂;固形分濃度:60質量%
[スルホン酸(C)]
(C-1)ドデシルベンゼンスルホン酸(花王ケミカル社製)
(C-2)パラトルエンスルホン酸(江南化工社製)
[中和アミン(D)]
(D-1)トリエチルアミン、3級アミン;沸点:90℃
(D-2)ジイソプロピルアミン、2級アミン;沸点:84℃
(D-3)ジエタノールアミン、2級アミン;沸点:268℃
[骨材(E)]
(E-1)ニップシール E-200A(東ソー・シリカ社製)、シリカ微粒子;平均粒子径:3μm
(E―2)ニップジェル AZ-6A0(東ソー・シリカ社製)、シリカ微粒子;平均粒子径:6μm
(E-3)GASIL HP270(PQコーポレーション社製)、シリカ微粒子;平均粒子径:9μm
(E-4)GASIL HP395(PQコーポレーション社製)、シリカ微粒子;平均粒子径:14μm
(E-5)ガンツパール GM-0801(アイカ工業社製)、アクリル樹脂微粒子;平均粒子径:8μm
(E-6)パーゴパックM4(ロンザ・ジャパン社製)、尿素樹脂粒子;粒子径:4μm
(E-7)ガンツパール GM-2801(アイカ工業社製)、アクリル樹脂微粒子;平均粒子径:28μm
[その他]
表面調整剤:
・ディスパロンOX-70(楠本化成社製)、アクリル系表面調整剤;固形分濃度:30質量%
顔料:
・ブラック6350(アサヒ化成工業社製)、クロム鉄酸化物
・COLOR BLACK FW200 BEADS(オリオン・エンジニアドカーボンズ社製)、カーボンブラック
・タイペーク CR-97(石原産業社製)、二酸化チタン
・TAROX 合成酸化鉄 HY-100(チタン工業社製)、黄酸化鉄
・TODA COLOR KN-V(戸田ピグメント社製)、酸化第二鉄
・LIONOL BLUE SPG-8(トーヨーカラー社製)、銅フタロシアニン
溶剤:
・T-SOL 150(JXTGエネルギー社製)、芳香族系溶剤
・ソルフィット(クラレ社製)、アルコール系溶剤
・シクロヘキサノン(昭栄化学工業社製)、ケトン系溶剤
【0107】
【表1A】
【0108】
【表1B】
【0109】
【表1C】
【0110】
【表1D】
【0111】
【表1E】
【0112】
【表1F】
【0113】
【表1G】
【0114】
【表1H】
【0115】
[評価項目]
表の評価結果は、以下のように評価したものである。
【0116】
1)算術平均高さ(Ra)
実施例及び比較例で得られた塗膜表面の算術平均高さ(Ra)は、表面粗さ測定機HANDYSURF E-35B(東京精密社製)を用いて、JIS B 0601-2001に準拠して測定した。
【0117】
2)展開面積比(Sdr)
実施例及び比較例で得られた塗膜表面の展開面積比(Sdr)は、レーザー顕微鏡OPTELICS HYBRID C3(レーザーテック社製、拡大倍率:50倍)を用いて、ISO 25178に準拠して測定した。
【0118】
3)塗膜外観
実施例及び比較例で得られた塗膜の外観を目視により観察し、塗膜の艶消し外観の程度を、下記基準に従って評価した。
◎ :塗膜全体が均一でかつ明瞭に艶消し外観が形成されている。
○ :艶消し外観が形成されているが、ごく一部分が不均一及び/又は不明瞭である。
△ :艶消し外観が形成されているが、部分的に不均一及び/又は不明瞭である。
× :艶消し外観が形成されているが、著しく不均一及び/又は不明瞭である。
××:艶消し外観が形成されていない。
【0119】
4)光沢度
実施例及び比較例で得られた塗膜の60°光沢度を、光沢計VG 7000(日本電色工業社製)を用い、JIS K 5600-4-7(鏡面光沢度)に準拠して測定した。光沢度は、下記基準に従って評価した。
◎:光沢度が1.0以下
〇:光沢度が1.0を超え1.5以下
△:光沢度が1.5を超え2.5以下
×:光沢度が2.5を超える
【0120】
5)促進耐候性
実施例及び比較例で得られた塗装鋼板を、JIS B 7753に規定するサンシャインカーボンアーク灯式促進耐候性試験機であるサンシャインウェザーメーターS80(スガ試験機社製)を使用し、2,000時間及び5,000時間の促進耐候性試験を行った。運転条件は、以下のとおりである。
放射照度:255W/m
ブラックパネル温度:63℃
水噴射時間:120分中18分
促進耐候性試験後の各塗装鋼板の外観について、色差計SM-T45(スガ試験機社製)を用いて評価を行った。評価基準は次のとおりであり、〇以上を合格とした。
◎ :色差(ΔE)が1.0以下
〇 :ΔEが1.0を超え2.0以下
× :ΔEが2.0を超え5.0以下
××:ΔEが5.0を超える
【0121】
実施例1~33に示すように、形成された塗膜のRa及びSdrの値が特定の範囲内に含まれる場合、形成された塗膜は低光沢で均一な艶消し外観となり、かつ、促進耐候性試験において変退色の小さい良好な耐候性を有することが確認された。
一方で、比較例1~8の塗料組成物に示すように、形成された塗膜のRa及び/又はSdrが特定の範囲から外れる場合には、形成された塗膜が低光沢及び/又は均一な艶消し外観とならない、或いは、促進耐候性試験において変退色が大きく耐候性の劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本開示の塗料組成物によれば、低光沢、かつ、高耐候性を有する塗膜を形成できる。また、低光沢であることから意匠性に優れ、均一性が高く白ボケの少ない艶消し外観を有する塗膜を形成することができる。