(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】キッチン用キャビネットの設置構造
(51)【国際特許分類】
A47B 96/18 20060101AFI20220815BHJP
A47B 77/00 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
A47B96/18 H
A47B77/00
(21)【出願番号】P 2020199919
(22)【出願日】2020-12-01
(62)【分割の表示】P 2016005293の分割
【原出願日】2016-01-14
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】平間 啓佑
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-115964(JP,A)
【文献】実開平05-049879(JP,U)
【文献】特開2000-037315(JP,A)
【文献】実開昭53-048001(JP,U)
【文献】米国特許第5348384(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 96/18、97/00
A47B 77/00-77/06
A47K 1/00、1/02
E03C 1/18
日本意匠分類 D7-140、D5-1201、D5-1220
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁と間隔をあけて配置された天板と、
前記天板を支持するキャビネット部と、
前記壁と前記天板との間の上部に設けられたコーキング材と、
を備え、
前記天板は、
天板本体と、
前記天板本体の上面を形成する辺部のうち、少なくとも壁に突き当たる奥側の辺部である奥側辺部に形成され、上方に突出する突出部と、
を有し、
前記奥側辺部の延びる方向における断面視で、前記上面と前記突出部の頂部との間の傾斜面は、前記頂部から前記上面に向かうにしたがって下降するとともに下方に凹
み、略円弧状の湾曲形状を有し、
前記頂部は、上方に向かって湾曲するように突出し、
該頂部の曲率は、前記傾斜面の曲率よりも大きく、
前記頂部において上方に向かって湾曲する湾曲面と前記傾斜面とが連続する1つの曲線をなし、
前記コーキング材の上面は前記壁から前記頂部に向かうにしたがって下降する傾斜面で構成され
、
前記頂部から前記奥側の辺部を含む対向面にかけて延びる稜線の曲率は、前記頂部を境として、前記頂部から前記天板本体の上面に向かうにしたがって延びる稜線の曲率よりも大きい、
キッチン用キャビネットの設置構造。
【請求項2】
壁と間隔をあけて配置された天板と、
前記天板を支持するキャビネット部と、
前記壁と前記天板との間の上部に設けられたコーキング材と、
基部と突出片とを有する止水部材と、
を備え、
前記天板は、
天板本体と、
前記天板本体の上面を形成する辺部のうち、少なくとも壁に突き当たる奥側の辺部である奥側辺部に形成され、上方に突出する突出部と、
を有し、
前記奥側辺部の延びる方向における断面視で、前記上面と前記突出部の頂部との間の傾斜面は、前記頂部から前記上面に向かうにしたがって下降するとともに下方に凹む湾曲形状を有し、
前記頂部は、上方に向かって湾曲するように突出し、
該頂部の曲率は、前記傾斜面の曲率よりも大きく、
前記頂部において上方に向かって湾曲する湾曲面と前記傾斜面とが連続する1つの曲線をなし、
前記コーキング材の上面は前記壁から前記頂部に向かうにしたがって下降する傾斜面で構成され、
前記基部は前記壁と前記天板との間、且つ前記コーキング材の下方に配置され、前記壁に密接すると共に前記天板から離間し、
前記突出片は前記基部から上方に延び、前記突出片の下端から中間位置までの下部は前記壁から離間し、前記突出片の前記中間位置から上端までの上部は前記コーキング材と前記壁との間に挿入され、
手前から奥に向かう奥行き方向で、
前記基部及び前記突出片の下部と前記天板との間に防水テープが設けられ、
前記突出片の下部と前記壁との間にスポンジパッキンが収容されている、
キッチン用キャビネットの設置構造。
【請求項3】
壁と間隔をあけて配置された天板と、
前記天板を支持するキャビネット部と、
前記壁と前記天板との間の上部に設けられたコーキング材と、
基部と一対の突出片とを有する止水部材と、
を備え、
前記天板は、
天板本体と、
前記天板本体の上面を形成する辺部のうち、少なくとも壁に突き当たる奥側の辺部である奥側辺部に形成され、上方に突出する突出部と、
を有し、
前記奥側辺部の延びる方向における断面視で、前記上面と前記突出部の頂部との間の傾斜面は、前記頂部から前記上面に向かうにしたがって下降するとともに下方に凹む湾曲形状を有し、
前記頂部は、上方に向かって湾曲するように突出し、
該頂部の曲率は、前記傾斜面の曲率よりも大きく、
前記頂部において上方に向かって湾曲する湾曲面と前記傾斜面とが連続する1つの曲線をなし、
前記コーキング材の上面は前記壁から前記頂部に向かうにしたがって下降する傾斜面で構成され、
前記基部は前記壁と前記天板との間、且つ前記コーキング材の下方に配置され、前記壁及び前記天板から離間し、
前記一対の突出片は前記基部から上方に延び、前記一対の突出片のうち一方の突出片の少なくとも上部は前記コーキング材と前記天板との間に挿入され、前記一対の突出片のうち他方の突出片の少なくとも上部は前記コーキング材と前記壁との間に挿入され、
手前から奥に向かう奥行き方向で、前記天板及び前記壁と前記基部との間に防水テープが設けられている、
キッチン用キャビネットの設置構造。
【請求項4】
前記天板本体と前記突出部とは互いに一体に且つ同一の部材で形成されている、
請求項1
から3の何れか一項に記載のキッチン用キャビネットの設置構造。
【請求項5】
前記天板本体と前記突出部とは互いに異なる部材によって構成されている、
請求項1
から3の何れか一項に記載のキッチン用キャビネットの設置構造。
【請求項6】
前記壁と前記天板との間に、前記コーキング材の下方から前記コーキング材に隣接するバックアップ材が設けられている、
請求項1から3の何れか一項に記載のキッチン用キャビネットの設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板、及びキッチン用キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
システムキッチンの一例として、壁面に接するように設けられる形態のものが従来知られている。具体的には、この種のシステムキッチンは、作業面を有する天板と、この天板を床面上で支持するとともに、各種の収納用スペースとして活用されるキャビネット部と、を有している。このようなシステムキッチンでは、調理作業中に発生する水分等が天板上を伝って壁面側に流下する虞がある。このため、天板と壁面との間の水密性を維持するための措置が必要となる。このような水密性を確保するための技術の一例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、キッチン等に用いられるカウンターが記載されている。このカウンターの上面のうち、壁面に対向する部分には、該壁面に沿って設けられた立ち上がり部が形成されている。このような立ち上がり部を設けることによって、カウンター上面からシステムキッチンと壁面との間の隙間への水の浸入を抑制することができる。
【0005】
ところで、近年では、システムキッチンにおける審美性や美観の向上に対する要請が高まっている。特に、天板上の各部の凸凹が可能な限り排除されたシンプルなデザインによって、商品としての訴求力が高まるとされている。しかしながら、上記特許文献1に記載されたカウンターでは、立ち上がり部が大きく目立つため、上記のような審美性や美観を向上させる上での課題の一つとなっていた。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、止水性を確保しつつ、審美性をさらに向上させた天板、及びこれを備えるキッチン用キャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るキッチン用キャビネットの設置構造は、壁と間隔をあけて配置された天板と、前記天板を支持するキャビネット部と、前記壁と前記天板との間の上部に設けられたコーキング材と、を備え、前記天板は、天板本体と、前記天板本体の上面を形成する辺部のうち、少なくとも壁に突き当たる奥側の辺部である奥側辺部に形成され、上方に突出する突出部と、を有し、前記奥側辺部の延びる方向における断面視で、前記上面と前記突出部の頂部との間の傾斜面は、前記頂部から前記上面に向かうにしたがって下降するとともに下方に凹み、略円弧状の湾曲形状を有し、前記頂部は、上方に向かって湾曲するように突出し、該頂部の曲率は、前記傾斜面の曲率よりも大きく、前記頂部において上方に向かって湾曲する湾曲面と前記傾斜面とが連続する1つの曲線をなし、前記コーキング材の上面は前記壁から前記頂部に向かうにしたがって下降する傾斜面で構成され、前記頂部から前記奥側の辺部を含む対向面にかけて延びる稜線の曲率は、前記頂部を境として、前記頂部から前記天板本体の上面に向かうにしたがって延びる稜線の曲率よりも大きい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、審美性をさらに向上させた天板、及びこれを備えるキッチン用キャビネットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るキッチン用キャビネットの全体図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る天板にコーキング材を充填する工程を説明する図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る天板の断面図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係る天板の変形例における断面図である。
【
図6】本発明の各実施形態に係る天板のさらなる変形例における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係るキッチン用キャビネット100、及び天板1について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るキッチン用キャビネット100は、互いにおおむね直交する2つの壁面(側壁Ws、及び奥壁Wb)によって形成される隅部に配置される。具体的には、このキッチン用キャビネット100は、シンク3やグリル4が配置される天板1と、この天板1を床面上で支持するキャビネット部2と、を備えている。
【0020】
詳しくは後述するが、天板1は、人工大理石によって一体に形成された平板状の部材である。この天板1上には、シンク3やグリル4等が配置されるとともに、調理作業時に使用される作業面5が形成されている。上面視で矩形をなす天板1の4つの辺部のうち、奥側の辺部(奥側辺部Lb)は、上記の奥壁Wbに突き当たっている。また、奥側辺部Lbと交差する側辺部Lsのうち、少なくとも一方は、上記の側壁Wsに突き当たっている。
【0021】
キャビネット部2は、おおむね箱状をなしている。キャビネット部2は、キャビネット部本体21と、戸棚22と、引き出し23とを備えている。なお、これら戸棚22、及び引き出し23の配置や寸法はあくまで一例であって、設計や仕様に応じて種々の態様を採ることが可能である。上記のようなキッチン用キャビネット100では、シンク3における水仕事のほか、グリル4上における加熱調理や、作業面5での各種調理作業が行われる。
【0022】
続いて、
図2を参照して、天板1の詳細な構成について説明する。
図2は、天板1における奥側辺部Lb周辺を示す断面図である。同図に示すように、天板1は、板状の天板本体11と、天板本体11から上方に向かって突出する突出部12と、を有している。本実施形態では、天板本体11と突出部12とは人工大理石によって一体に形成されている。
【0023】
より詳細には、突出部12は、天板本体11における上記の奥側辺部Lbに設けられている。奥側辺部Lbの延びる方向における断面視で、突出部12の頂部12Aは、上方に向かって湾曲するように形成されている。言い換えれば、突出部12の頂部12Aは、略円弧状の断面形状を有している。
【0024】
さらに、頂部12Aと天板本体11の上面10との間を結ぶ稜線13は、上面10に対して傾斜している。言い換えると、稜線13は、頂部12Aから上面10に向かうにしたがって下方に傾斜している。より具体的には、本実施形態では、稜線13は、下方に向かってわずかに凹む湾曲形状で形成されている。この稜線13も上記の頂部12Aと同様に、略円弧状の断面形状を有している。なお、頂部12Aの曲率は、稜線13の曲率に対して相対的に大きく設定されている。以上のように形成された頂部12A、稜線13、及び上面10は、連続する一つの曲線状をなしている。
なお、詳しくは図示しないが、稜線13は必ずしも上記のように湾曲している必要はなく、上面10に対して傾斜している限りにおいては、稜線13は直線状をなしていてもよい。
【0025】
なお、天板本体11の上面10から頂部12Aまでの上下方向における寸法は、1.0mm以上2.0mm以下であることが望ましい。より望ましくは、この寸法は1.2mm以上1.8mm以下とされ、最も望ましくは1.5mmとされる。
【0026】
奥側辺部Lbのうち、上記の奥壁Wbと対向する面は、対向面14とされている。奥壁Wbと対向面14との間であって、上記の頂部12Aよりも下方の位置には、バックアップ材15が取り付けられている。バックアップ材15は、例えばスポンジ状の樹脂で形成されている。
【0027】
さらに、バックアップ材15よりも上方の空間には、充填部30が形成されている。この充填部30は、例えばシリコン等を主剤とするコーキング材を充填・硬化させることで形成される。特に、この充填部30は、
図3に示すように、頂部12Aの対向面14側の部分と、対向面14との間の間隙に向かってコーキング材Cを(上面10に対して)略45°の角度から注入することによって形成されることが望ましい。このような注入の態様を、「三角打ち」と呼ぶことがある。この注入方法を採ることにより、充填部30の上側の面は、奥壁Wbから頂部12Aに向かうにしたがって下方に延びるように傾斜した状態で硬化する。さらに、コーキング材Cの硬化時に「ヒケ」が生じても、この傾斜はおおむね維持される。
【0028】
以上のように構成された天板1上(上面10)では、加熱調理や水仕事等が適宜行われる。この際、調理作業中に発生する水分等が天板1の上面10を伝って奥壁Wb側に到達する場合がある。しかしながら、上述した天板1では、天板本体11から上方に突出する突出部12によって、天板1上の水分を受け止めることができる。これにより、水分が天板1から外部に散逸してしまう虞を低減することができる。
【0029】
さらに、突出部12と天板本体11との間は湾曲形状で結ばれているため、天板1上で突出部12が目立ちにくくなる。これにより、天板1全体における凹凸を極力排することができるため、美観をさらに向上させることができる。
【0030】
加えて、上記の構成によれば、頂部12Aが上方に湾曲するように突出していることから、頂部12Aと壁との間に隙間が形成される。したがって、突出部12と壁との間にコーキングを施す(充填部30を形成する)に当たって、上記の隙間によって十分な量のコーキング材を保持することができる。
【0031】
さらに加えて、頂部12Aによってコーキング材を容易に保持することができることから、上述した「三角打ち」を容易に施すことが可能となる。これにより、充填部30の上側の面を
図1に示すように傾斜した状態で硬化させることができる。また、このように充填部30の上側の面が傾斜している場合、コーキング材の硬化時に「ヒケ」が生じても、傾斜面に大きな凹みが形成されにくい。これにより、当該上側の面に水分等がたまりにくくなる。
【0032】
さらに、本実施形態では、天板1全体が人工大理石で一体に形成される。すなわち、人工大理石の有する模様や質感等によって、天板1の審美性をさらに高めることができる。
【0033】
ところで、上記のように奥壁Wbに沿ってキッチン用キャビネット100を配置した場合、経年劣化等により、奥壁Wbがキッチン用キャビネット100から離間する方向に向かって、わずかに傾斜する場合がある。この場合、上述の充填部30にヒビ等が発生し、このヒビから天板1上の水分が浸透してしまう。しかしながら、充填部30と、バックアップ材15とにより、対向面14と奥壁Wbとの間の間隙が埋められている。したがって、仮に奥壁Wbが経年劣化により対向面14と離間する方向に向かってわずかに倒れたとしても、バックアップ材15によって、水分の下方への浸透を抑止することができる。
【0034】
[第二実施形態]
続いて、本発明の第二実施形態について、
図4を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態に係るキッチン用キャビネット100では、天板1の対向面14と奥壁Wbとの間に、止水部材40が設けられている点で上記第一実施形態とは異なる。
【0035】
止水部材40は、おおむね奥壁Wbに沿って延びる板状の部材である。より具体的には、この止水部材40は、奥壁Wbに密接する基部41と、基部41から奥壁Wbに沿って上方に延びる突出片42と、を備えている。
【0036】
基部41の両面のうち、奥壁Wbと反対側を向く面と、天板1の対向面14との間には、上下方向に延びる間隙が形成されている。この間隙には、防水テープ50が設けられる。この防水テープ50は、基部41の表面(天板1の対向面14を向く側の面)に接着剤等を介して貼付される。
【0037】
基部41の両面のうち、奥側を向く面の一部には、スポンジパッキン60を収容するための収容凹部43が形成されている。収容凹部43は、基部41の表面から天板1の対向面14に向かう方向に凹む角溝状をなしている。スポンジパッキン60は、この収容凹部43に、弾性変形した状態で収容される。言い換えると、収容凹部43に収容される前のスポンジパッキン60は、収容凹部43の容積よりも大きな体積を有している。
【0038】
突出片42は、基部41の上側の面から上方に向かって延びる板状をなしている。突出片42の両面のうち、奥壁Wbに密接する側の面は、上記の収容凹部43を挟んで、基部41の表面と面一をなしている。すなわち、突出片42と基部41とは、ともに奥壁Wbに対して密接している。なお、突出片42の厚さ方向の寸法は、基部41の厚さ方向の寸法よりも小さく設定されている。
【0039】
基部41と突出片42とは、一例としてアルミニウム等のように、加工性が比較的高い金属材料で一体に形成される。
【0040】
基部41の上側の面と、突出片42と、天板1の対向面14とによって囲まれる空間には、充填部30Bが設けられている。充填部30Bは、シリコン等を主剤とするコーキング材を充填・硬化させることで形成される。充填部30Bの上側の面は、上記の第一実施形態における充填部30と同様に、奥壁Wbから頂部12Aに向かうにしたがって下方に延びるように傾斜した状態で硬化する。さらに、コーキング材の硬化時に「ヒケ」が生じても、この傾斜はおおむね維持される。
【0041】
以上のような構成によれば、上記第一実施形態と同様に、天板本体11から上方に突出する突出部12によって、天板1上の水分を受け止めることができる。これにより、水分が天板1から外部に散逸してしまう虞を低減することができる。
【0042】
さらに、突出部12と天板本体11との間は湾曲形状で結ばれているため、天板1上で突出部12が目立ちにくくなる。これにより、天板1全体における凹凸を極力排することができるため、美観をさらに向上させることができる。
【0043】
加えて、上記の構成によれば、頂部12Aが上方に湾曲するように突出していることから、頂部12Aと壁との間に隙間が形成される。したがって、突出部12と壁との間にコーキングを施す(充填部30を形成する)に当たって、上記の隙間によって十分な量のコーキング材を保持することができる。
【0044】
ところで、上記のように奥壁Wbに沿ってキッチン用キャビネット100を配置した場合、経年劣化等により、奥壁Wbがキッチン用キャビネット100から離間する方向に向かって、わずかに傾斜する場合がある。この場合、上述の充填部30Bにヒビ等が発生し、このヒビから天板1上の水分が浸透してしまう。しかしながら、上記のように、充填部30Bの下方には止水部材40と防水テープ50とが設けられている。これらの部材により、充填部30Bに浸透した水分が受け止められ、この水分がさらに下方へと浸透する虞を低減することができる。
【0045】
[第二実施形態の変形例]
なお、上記の止水部材40は、
図5に示すような構成を採ることも可能である。具体的には、同図に示す止水部材40Bは、上下方向に延びる板状の基部41Bと、基部41Bの上端部からそれぞれ上方に向かって延びるとともに、水平方向に互いに離間するように延びる一対の突出片42B(第一突出片421、及び第二突出片422)を備えている。
【0046】
基部41Bは、天板1の対向面14と、奥壁Wbとの間の空間内で、防水テープ50によって厚さ方向の両側から支持されている。言い換えると、基部41Bの厚さ寸法は、対向面14と奥壁Wbとの間の寸法よりも小さく設定されている。第一突出片421は、基部41Bの上端部から、対向面14に向かって斜めに延びる板状の部材である。より詳細には、第一突出片421は、基部41Bの上端部から、上方に向かうにしたがって対向面14側に向かって斜めに延びている。
【0047】
第二突出片422は、基部41Bの上端部から、奥壁Wbに向かって斜めに延びる板状の部材である。より詳細には、第二突出片422は、基部41Bの上端部から、上方に向かうにしたがって奥壁Wb側に向かって斜めに延びている。このような構成により、第一突出片421と第二突出片422との間には、溝状の空間が形成されている。
【0048】
この溝状の空間には、シリコン等を主剤とするコーキング材を充填・硬化させることによって形成された充填部30Cが設けられている。充填部30Cの上側の面は、上記の第一実施形態における充填部30と同様に、奥壁Wbから頂部12Aに向かうにしたがって下方に延びるように傾斜した状態で硬化する。さらに、コーキング材の硬化時に「ヒケ」が生じても、この傾斜はおおむね維持される。
【0049】
なお、止水部材40Bが対向面14と奥壁Wbとの間に取り付けられた状態において、第一突出片421、及び第二突出片422はともに弾性変形した状態となっている。具体的には、第一突出片421は、天板1の対向面14に奥壁Wb側から当接することによって弾性変形し、奥壁Wb側に向かって湾曲した状態となっている。このとき、第一突出片421の先端部は、対向面14に密接した状態となる。
【0050】
また、第二突出片422は、奥壁Wbに対向面14側から当接することによって弾性変形し、対向面14側に向かって湾曲した状態となっている。このとき、第二突出片422の先端部は、奥壁Wbに密接した状態となる。
【0051】
上記のような構成によれば、充填部30Cにヒビ等が発生し、このヒビから天板1上の水分が浸透しても、止水部材40Bの溝(第一突出片421と第二突出片422との間の溝)によって水分が受け止められ、この水分がさらに下方へと浸透する虞を低減することができる。
【0052】
以上、本発明の各実施形態、及び変形例について図面を参照して説明した。なお、上記の各構成はあくまで一例であって、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記の各実施形態では、天板1における天板本体11と突出部12とが一体に形成されている例について説明した。しかしながら、天板1の態様は上記実施形態によっては限定されず、
図6に示すように、天板1は互いに異なる別の部材によって形成されていてもよい。具体的には、
図6の例では、天板1は第一部材11Aと、第一部材11Aに対して接合部Gを介して接合される第二部材11Bと、を有している。第一部材11Aには上記の天板本体11が含まれ、第二部材11Bには上記の突出部12が含まれている。
【符号の説明】
【0053】
100…キッチン用キャビネット 1…天板 2…キャビネット部 Ws…側壁 Wb…奥壁 3…シンク 4…グリル 5…作業面 Lb…奥側辺部 Ls…側辺部 21…キャビネット部本体 22…戸棚 23…引き出し 11…天板本体 11A…第一部材 11B…第二部材 12…突出部 12A…頂部 10…上面 13…稜線 14…対向面 15…バックアップ材 30…充填部 40…止水部材 41…基部 42…突出片 50…防水テープ 60…スポンジパッキン 43…収容凹部 30B…充填部 40B…止水部材 41B…基部 42B…突出片 421…第一突出片 422…第二突出片 30C…充填部 G…接合部