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特許7123124スズランの香りを増強するためのAMBROCENIDE(登録商標)の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】スズランの香りを増強するためのAMBROCENIDE(登録商標)の使用
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20220815BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20220815BHJP
   C07D 317/72 20060101ALI20220815BHJP
   C07D 309/10 20060101ALI20220815BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20220815BHJP
   D06M 13/165 20060101ALI20220815BHJP
   C11C 5/00 20060101ALN20220815BHJP
【FI】
C11B9/00 G
C11B9/00 K
C11B9/00 D
C11B9/00 M
C11D3/50
C07D317/72
C07D309/10
D06M13/144
D06M13/165
C11C5/00 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020506821
(86)(22)【出願日】2017-08-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2017070219
(87)【国際公開番号】W WO2017174827
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】ベッツァー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ランブレヒト シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】エー マルクス
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-517509(JP,A)
【文献】特開2007-154069(JP,A)
【文献】特表2014-503609(JP,A)
【文献】特表2016-523827(JP,A)
【文献】特表2012-511614(JP,A)
【文献】特表2013-531633(JP,A)
【文献】特開平10-218877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00- 9/02
C11D 1/00-19/00
C07D317/08
C07D309/10
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
D06M 13/00-15/715
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズランの香りを有する1種または複数のフレグランスの嗅覚的印象を改質する、および/または増強するめの、式(I)の化合物の1種または複数の立体異性体の使用であって、
【化1】
(I)
1種または複数のフレグランスが、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(3-tert-ブチルフェニル)プロパナール、2,5,7,7-テトラメチルオクタナール、4-(1,1-ジメチルエチル)フェニルプロパナール、3-(4-イソプロピルフェニル)プロパナール、オクタヒドロ-8,8-ジメチルナフタレン-2-カルボキシアルデヒド、オクタヒドロ-4,7-メタノインダニリデンブタナール、ベータ-メチル-3-(1-メチルエチル)フェニルプロパナール、2-メチル-3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)プロパナール、7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール、,2-ジメチル-3-(3-メチルフェニル)プロパノール、cis-4-(1-メチルエチル)シクロヘキサンメタノール、1-(4-イソプロピルシクロヘキシル)エタノール、3-メチル-4-フェニルブタン-2-オール、ジメチルフェニル-プロパノール、2-メチル-3-(4-(2-メチルプロピル)フェニル)プロパナール、3-(4-イソブチルフェニル)-2-メチルプロパナール、3,4-ジオキシ(シクロアセトニル)トルエン、3-(1-エトキシエトキシ)-3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、アルファ,アルファ-ジメチル-4-エチルフェニル-プロパナール、ガンマ-メチルフェニルペンタナール、および式(II)の化合物からなる群から選択され
【化2】
(II)
前記使用。
【請求項2】
フレグランス、またはフレグランスの1種が、式(II)の化合物の2種以上の立体異性体を含み、またはそれらからなり、
【化3】
(II)
cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量
【化4】
対式trans-(II)(+)および式trans-(II)(-)の化合物の全量
【化5】
の質量比が、65:35と95:5の間ある、請求項に記載の使用。
【請求項3】
式(I)の化合物の1種もしくは複数の立体異性体
【化6】
(I)
および式(II)の化合物の2種以上の立体異性体
【化7】
(II)
を含む、またはそれらからなる混合物であって、
式cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量
【化8】
対式trans-(II)(+)および式trans-(II)(-)の化合物の全量
【化9】
の質量比が、65:35と95:5の間ある、混合物。
【請求項4】
式(I)の化合物の立体異性体の全量
【化10】
(I)
対式(II)の化合物の立体異性体の全量
【化11】
(II)
の質量比が、1:12000と1:0.5の間あり、
ならびに/または
式(I)の化合物の立体異性体の全量が、式(II)の化合物の2種以上の立体異性体の嗅覚的印象を、改質する、および/もしくは増強するに十分である、請求項に記載の混合物。
【請求項5】
式(II)の化合物のスズランの香りを改質する、および/または増強する法であって、
i)式(I)の化合物の1種または複数の立体異性体を用意するステップと、
【化12】
(I)
ii)式(II)の化合物の2種以上の立体異性体を用意するステップであって、
【化13】
(II)
式cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量
【化14】
対式trans-(II)(+)および式trans-(II)(-)の化合物の全量
【化15】
の質量比が、65:35と95:5の間ある、ステップと、
iii)ステップi)およびステップii)で用意された化合物を混合するステップであって、(I)の化合物の1種または複数の立体異性体の量が、式(II)の化合物のスズランの香りを改質する、および/または増強するに十分である、ステップと
を含む、またはそれらからなる、方法。
【請求項6】
式(I)の化合物の立体異性体の全量
【化16】
(I)
対式(II)の化合物の立体異性体の全量
【化17】
(II)
の質量比が、1:12000と1:0.5の間ある、請求項に記載の方法。
【請求項7】
i)式(I)の化合物の1種または複数の立体異性体を用意するステップと、
【化18】
(I)
ii)式(II)の化合物の2種以上の立体異性体を用意するステップであって、
【化19】
(II)
式cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量
【化20】
対式trans-(II)(+)および式trans-(II)(-)の化合物の全量
【化21】
の質量比が、65:35と95:5の間ある、ステップと、
(iii)ステップ(i)およびステップ(ii)で用意された化合物を混合するステップと
を含む、またはそれらからなる混合物の製造方法
【請求項8】
請求項3および4のいずれか1項に記載の混合物、およびらに1種もしくは複数の追加のフレグランスを含む、またはそれらからなる、フレグランス組成物
【請求項9】
追加のフレグランス、または追加のフレグランスのうち1種、複数、もしくは全てが、3-(4-メチル-1-シクロヘキサ-3-エニル)-ブタナール、4-(4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン、(E)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキサ-2-エニル)ブタ-3-エン-2-オン、(E)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキサ-2-エニル)ブタ-3-エン-2-オン、(E)-1-(2,6,6-トリメチル-シクロヘキセン-1-イル)ペンタ-1-エン-3-オン、(E)-4-[(1S)-1,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-ブタ-3-エン-2-オン、1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキサ-2-エニル)ペンタ-1-エン-3-オン、[(Z)-ヘキサ-3-エニル]メチルカルボネート、3-[(Z)-ヘキサ-3-エノキシ]プロパンニトリル、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,3,4,5,6,7-ヘキサ-ヒドロナフタレン-2-イル)エタノン、スピロ[1,3-ジオキソラン-2,5’-(4’,4’,8’,8’-テトラメチル-ヘキサヒドロ-3’,9’-メタノナフタレン)]、[3R-(3α,3aβ,6β,7β,8aα)]-オクタ-ヒドロ-6-メトキシ-3,6,8,8-テトラメチル-1H-3a,7-メタノアズレン、[3R-(3α,3aβ,7β,8aα)]-1-(2,3,4,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,6,8,8-テトラメチル-1H-3a,7-メタノ-アズレン-5-イル)エタン-1-オン、1-(2,2,6-トリメチル-シクロヘキシル)ヘキサン-3-オール、6,6-ジメトキシ-2,5,5-トリメチルヘキサ-2-エン、2,6-ジメチルオクタ-7-エン-2-オール、3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール、(3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-イル)アセテート、(4-メチル-1-プロパン-2-イル-1-シクロヘキサ-2-エニル)アセテート、(8E)-シクロヘキサデカ-8-エン-1-オン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-シクロペンタ(g)-2-ベンゾピラン、エトキシメトキシ-シクロドデカン、1,1,2,3,3-ペンタメチル-2,5,6,7-テトラヒドロインデン-4-オン、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,3,4,5,6,7-ヘキサ-ヒドロナフタレン-2-イル)エタノンからなる群から選択される、請求項8に記載のフレグランス組成物。
【請求項10】
式(I)の化合物の立体異性体の全量が、
【化22】
(I)
式(II)の化合物の2種以上の立体異性体の嗅覚的印象を改質する、および/または増強するに十分である、請求項8およびのいずれか1項に記載のフレグランス組成物。
【化23】
(II)
【請求項11】
式(I)の化合物の立体異性体の全量が、
【化24】
(I)
フレグランス組成物の全質量に基づいて、0.0001~10質量%ある、請求項8から10のいずれか1項に記載のフレグランス組成物
【請求項12】
請求項3および4のいずれか1項に記載の混合物、または求項から11のいずれか1項に記載のフレグランス組成物、感覚有効量で含む付香製品
【請求項13】
混合物またはフレグランス組成物の量が、製品の全質量に基づいて、0.01~100質量%である、請求項12に記載の付香製品。
【請求項14】
製品が、香水抽出物、オーデパルファム、オードトワレ、髭剃りローション、オーデコロン、プレシェーブ製品、スプラッシュコロン、香水入りリフレッシングティッシュ、酸性、アルカリ性、および中性の洗剤、布用芳香剤、アイロンがけ補助剤、液体洗剤、粉末洗剤、洗濯前処理剤、繊維用柔軟剤、洗濯石鹸、洗浄タブレット、消毒剤、表面消毒剤、消臭スプレー、エアゾールスプレー、ワックスおよび研磨剤、ボディケア製品、ハンドクリームおよびハンドローション、フットクリームおよびフットローション、脱毛クリームおよび脱毛ローション、アフターシェーブクリームおよびアフターシェーブローション、日焼けクリームおよび日焼けローション、ヘアケア製品、デオドラントおよび制汗剤、装飾用化粧品、ロウソク、ランプオイル、線香、殺虫剤、防虫剤、および燃料からなる群から選択される、請求項12および13のいずれか1項に記載の付香製品。
【請求項15】
付香製品製造する方法であって、
i)請求項3および4のいずれか1項に記載の混合物、または請求項から11のいずれか1項に記載のフレグランス組成物を用意するステップと、
(ii)製造される付香製品の、1種または複数の他の成分を用意するステップと、
(iii)ステップ(ii)で用意された他の成分を、感覚有効量の、ステップ(i)で用意された成分と接触させる、または混合するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、スズランの香りを有する1種または複数のフレグランスの嗅覚的印象を改質する、および/または増強するための、本明細書に記載の式(I)の化合物の1種または複数の立体異性体の使用に関する。本発明は、本明細書に記載の式(I)の化合物の1種もしくは複数の立体異性体、および本明細書に記載の式(II)の化合物の2種以上の立体異性体を含む、またはそれらからなり、本明細書に記載の式(II)の化合物の立体異性体のある質量比を有する、新規の混合物、本明細書に記載の混合物を含む、またはそれからなる、フレグランス組成物、本明細書に記載の混合物またはフレグランス組成物を含む付香製品、ならびに本明細書に記載の付香製品を製造するために、それぞれ、本明細書に記載の式(II)の化合物のスズランの香りを改質する、および/または増強する方法にさらに関する。
本発明のさらなる態様および好ましい形態は、以下の説明、添付の実施例、および特に添付の特許請求の範囲によるものである。
【背景技術】
【0002】
既存のフレグランスは多数あるにもかかわらず、香水産業は依然として、新規のフレグランスおよびフレグランス組成物を全般的に必要としている。例えば、フレグランスは、(フレグランス組成物において)主な香気の他に、さらに興味をそそるノートをつくることができ、その新規の、または恣意的な嗅覚特性を有する調香師の可能性を広げることができることが必要である。特に、フローラルのフレグランスおよび/またはフルーツのフレグランスを調和して組み合わせることができる、香りを有するフレグランスは興味深い。好ましくは、全体的に複雑な嗅覚的印象を生み出すために、様々な嗅覚的な態様およびノートが付加されるべきである。
新規の組成物を作出するために、複雑な感覚特徴を有する新規の香水の組成物の基として作用することができる、特別な感覚特性をもつフレグランスが常に必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
主な目的は、例えば、香水のフレグランスとして用いることができる、興味をそそる、好ましくは複雑な、機知に富んだ感覚プロフィールをもつフレグランスを見出すことであった。本発明の関連の中で、スズランの香りを改質する、および/または増強することができる化合物が探し求められた。
探し求められた化合物により、特別な嗅覚的ノートおよび嗅覚的態様をもつ、新規のフレグランス組成物の製造が可能になる。有利なものは、「スズラン」のノートを有する、他のフレグランスとの組み合わせに特に好適な物質であろう。
さらに、この主な目的を満たすフレグランスは、好ましくは、その主な、すなわち嗅覚的な特性に加えて、追加の有益な、副次的な特性、例えば、ある施用条件の下での高い安定性、非常に広範囲に及ぶこと、良好な付着、高い持続性、もしくは香り増強の特性(いわゆるブースターもしくは増強効果)を有するべきであり、ならびに/または顕著な感覚効果を達成することができるように、他のフレグランスと組み合わせて、その自然らしさ、新鮮さ、ふくよかさ、(晴れやかな)パワーおよび/もしくは方散性を仕上げる。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明によれば、主な課題は、スズランの香りを有する1種または複数のフレグランスの嗅覚的印象を改質する、および/または増強する、好ましくは強めるために、式(I)の化合物の1種または複数の立体異性体を使用することによって解決される。
【化1】
(I)
【0005】
本発明が基とする研究の関連において、意外なことに、式(I)の化合物(Ambrocenide(登録商標)、CAS No:211299-54-6)が、様々なスズランフレグランスのスズランの香りを改質する、および/または増強する、特に増強するのに極めて良く適することが明らかになった。
【0006】
本発明によれば、以下のジアステレオマー(Ia)~(Id)のうち1種、2種、3種、または全ては、式(I)の化合物として使用することができ、個々のジアステレオマー(Ia)~(Id)、またはこれらのジアステレオマーの任意の混合物を使用できることを意味する。
【化2】
式(I)の化合物、特に本明細書に記載の利点について本明細書で述べられることは、個々のジアステレオマー(Ia)~(Id)、およびこれらのジアステレオマーの任意の混合物(上記参照)にも適用される。
【0007】
好ましくは、本発明による使用は、1種または複数のフレグランスが、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(3-tert-ブチルフェニル)プロパナール、2,5,7,7-テトラメチルオクタナール、4-(1,1-ジメチルエチル)フェニルプロパナール、3-(4-イソプロピルフェニル)プロパナール、オクタヒドロ-8,8-ジメチルナフタレン-2-カルボキシアルデヒド、オクタヒドロ-4,7-メタノインダニリデンブタナール、ベータ-メチル-3-(1-メチルエチル)フェニルプロパナール、2-メチル-3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)プロパナール、7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、2,2-ジメチル-3-(3-メチルフェニル)プロパノール、cis-4-(1-メチルエチル)シクロヘキサンメタノール、1-(4-イソプロピルシクロヘキシル)エタノール、3-メチル-4-フェニルブタン-2-オール、ジメチルフェニル-プロパノール、2-メチル-3-(4-(2-メチルプロピル)フェニル)プロパナール、3-(4-イソブチルフェニル)-2-メチルプロパナール、3,4-ジオキシ(シクロアセトニル)トルエン、3-(1-エトキシエトキシ)-3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、アルファ,アルファ-ジメチル-4-エチルフェニル-プロパナール、ガンマ-メチルフェニルペンタナール、および式(II)の化合物からなる群から選択され、
【0008】
【化3】
(II)
好ましくは、フレグランスが、式(II)の化合物である、本明細書に記載の使用に関する。
【0009】
特に好ましくは、フレグランスが、式(II)の化合物の1種もしくは複数の立体異性体を含み、またはそれらからなり、
【化4】
(II)
好ましくは、式cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量
【化5】
対式trans-(II)(+)および式trans-(II)(-)の化合物の全量
【化6】
の質量比が、65:35と95:5の間、好ましくは70:30と90:10の間、特に好ましくは75:25と85:15の間である、本明細書に記載の使用である。
【0010】
上で定義された範囲の異性体比を有する、本明細書に記載の式(II)の化合物の、本発明による使用は、本発明の関連において特に好ましい。上に定義された範囲の異性体比を有する、本明細書に記載の式(II)の化合物は、例えば、商標ピラノールで知られている。ピラノールは、比較的揮発性であり、本発明によれば、式(I)の化合物の1種または複数の立体異性体の添加によって、意外にも、より自然で、より晴れやかになる、スズラン(ムーゲ(muguet))の典型的なノートを有する、やわらかいフローラルフレグランスを有する。さらに、式(I)の化合物の1種または複数の立体異性体の添加により、ピラノールのスズランの香りをより顕著にし(ブースト効果)、その持続性を増す。
【0011】
式(II)の化合物の、一部の異性体混合物、例えば、Florol(登録商標)/Florosa(登録商標)は、一部の例では高価過ぎると認識される。異性体の他の混合物、例えば、ピラノールは、その嗅覚特性に関して、式(II)の化合物の異性体の他の混合物に対して、フレグランスの、より少ない特徴、より少ない方散性、および/またはより弱い付着の嗅覚物質であると一部で認識される。意外なことに、式(I)の化合物の1種または複数の立体異性体の添加は、感覚の高揚(以下の実施例を参照)、すなわちフレグランスの、より多い特徴、より多い方散性、および/またはより強い付着をもたらす。
スズランの香り(上記の通り)を有する、他のフレグランスについて、式(II)の化合物を使用する、他の利点は、式(II)の化合物が、規制の負担をあまり受けず(無害な分類/ラベル付け)、より良好な費用/性能比を有することである。
【0012】
本発明による使用の一実施形態によれば、式cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量が、主要量の、すなわち式cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量に対して50質量%より多くの、式cis-(II)(-)の化合物を含むことが好ましく、好ましくは、60質量%、70質量%、80質量%、もしくは90質量%の式cis-(II)(-)の化合物を含み、または式cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量に対して、好ましくは100質量%の式cis-(II)(-)の化合物から本質的になる。
【0013】
本発明による使用の一実施形態によれば、式cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量が、主要量の、すなわち式cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量に対して50質量%より多くの、式cis-(II)(+)の化合物を含むことが好ましく、好ましくは、60質量%、70質量%、80質量%、もしくは90質量%の式cis-(II)(+)の化合物を含み、または式cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量に対して、好ましくは100質量%の式cis-(II)(+)の化合物から本質的になる。
【0014】
別の態様によれば、本発明はまた、式(I)の化合物の1種もしくは複数の立体異性体
【化7】
(I)
および式(II)の化合物の2種以上の立体異性体
【化8】
(II)
を含む、またはそれらからなる混合物であって、
式cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量
【0015】
【化9】
対式trans-(II)(+)および式trans-(II)(-)の化合物の全量
【化10】
の質量比が、65:35と95:5の間、好ましくは70:30と90:10の間、特に好ましくは75:25と85:15の間である、混合物にも関する。
【0016】
好ましくは、式(I)の化合物の立体異性体の全量
【化11】
(I)
対式(II)の化合物の立体異性体の全量
【0017】
【化12】
(II)
の質量比が、1:12000と1:0.5の間、好ましくは1:600と1:0.7の間、特に好ましくは1:100と1:1の間であり、
ならびに/または
式(I)の化合物の立体異性体の全量が、式(II)の化合物の2種以上の立体異性体の嗅覚的印象を、改質する、および/もしくは増強する、好ましくは増強するのに十分である、本明細書に記載の混合物である。
【0018】
別の態様によれば、本発明はまた、式(II)の化合物のスズランの香りを改質する、および/または増強する、好ましくは増強する方法であって、
i)式(I)の化合物の1種または複数の立体異性体を用意するステップと、
【化13】
(I)
ii)式(II)の化合物の2種以上の立体異性体を用意するステップであって、
【0019】
【化14】
(II)
式cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量
【0020】
【化15】
対式trans-(II)(+)および式trans-(II)(-)の化合物の全量
【化16】
の質量比が、65:35と95:5の間、好ましくは70:30と90:10の間、特に好ましくは75:25と85:15の間である、ステップと、
iii)ステップi)およびステップii)で用意された化合物を混合するステップであって、好ましくは式(I)の化合物の1種または複数の立体異性体の量が、式(II)の化合物のスズランの香りを改質する、および/または増強する、好ましくは増強するのに十分である、ステップと
を含む、またはそれらからなる、方法にも関する。
【0021】
好ましくは、式(I)の化合物の立体異性体の全量
【化17】
(I)
対式(II)の化合物の立体異性体の全量
【化18】
(II)
の質量比が、1:12000~1:0.5、好ましくは1:600~1:0.7、特に好ましくは1:10~1:1である、本明細書に記載の本発明の方法である。
【0022】
本発明の別の態様は、
i)式(I)の化合物の1種または複数の立体異性体を用意するステップと、
【化19】
(I)
ii)式(II)の化合物の2種以上の立体異性体を用意するステップであって、
【化20】
(II)
式cis-(II)(+)および式cis-(II)(-)の化合物の全量
【0023】
【化21】
対式trans-(II)(+)および式trans-(II)(-)の化合物の全量
【0024】
【化22】
の質量比が、65:35と95:5の間、好ましくは70:30と90:10の間、特に好ましくは75:25と85:15の間である、ステップと、
(iii)ステップ(i)およびステップ(ii)で用意された化合物を混合するステップと
を含む、またはそれらからなる方法によって得ることができる、混合物、好ましくは本明細書に記載の混合物に関する。
【0025】
別の態様によれば、本発明はまた、本明細書に記載の混合物、および好ましくはさらに1種もしくは複数の追加のフレグランスを含む、またはそれらからなる、フレグランス組成物、好ましくは香油であって、
好ましくは、追加のフレグランス、または追加のフレグランスのうち1種、複数、もしくは全てが、3-(4-メチル-1-シクロヘキサ-3-エニル)-ブタナール、4-(4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン、(E)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキサ-2-エニル)ブタ-3-エン-2-オン、(E)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキサ-2-エニル)ブタ-3-エン-2-オン、(E)-1-(2,6,6-トリメチル-シクロヘキセン-1-イル)ペンタ-1-エン-3-オン、(E)-4-[(1S)-1,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-ブタ-3-エン-2-オン、1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキサ-2-エニル)ペンタ-1-エン-3-オン、[(Z)-ヘキサ-3-エニル]メチルカルボネート、3-[(Z)-ヘキサ-3-エノキシ]プロパンニトリル、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,3,4,5,6,7-ヘキサ-ヒドロナフタレン-2-イル)エタノン、スピロ[1,3-ジオキソラン-2,5’-(4’,4’,8’,8’-テトラメチル-ヘキサヒドロ-3’,9’-メタノナフタレン)]、[3R-(3α,3aβ,6β,7β,8aα)]-オクタ-ヒドロ-6-メトキシ-3,6,8,8-テトラメチル-1H-3a,7-メタノアズレン、[3R-(3α,3aβ,7β,8aα)]-1-(2,3,4,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,6,8,8-テトラメチル-1H-3a,7-メタノ-アズレン-5-イル)エタン-1-オン、1-(2,2,6-トリメチル-シクロヘキシル)ヘキサン-3-オール、6,6-ジメトキシ-2,5,5-トリメチルヘキサ-2-エン、2,6-ジメチルオクタ-7-エン-2-オール、3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール、(3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-イル)アセテート、(4-メチル-1-プロパン-2-イル-1-シクロヘキサ-2-エニル)アセテート、(8E)-シクロヘキサデカ-8-エン-1-オン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-シクロペンタ(g)-2-ベンゾピラン、エトキシメトキシ-シクロドデカン、1,1,2,3,3-ペンタメチル-2,5,6,7-テトラヒドロインデン-4-オン、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,3,4,5,6,7-ヘキサ-ヒドロナフタレン-2-イル)エタノンからなる群から選択される、フレグランス組成物にも関する。
【0026】
好ましくは、式(I)の化合物の立体異性体の全量が、
【化23】
(I)
式(II)の化合物の2種以上の立体異性体の嗅覚的印象を改質する、および/または増強する、好ましくは増強するのに十分である、本明細書に記載のフレグランス組成物である。
【化24】
(II)
【0027】
さらに好ましくは、式(I)の化合物の立体異性体の全量が、
【化25】
(I)
フレグランス組成物の全質量に基づいて、0.0001~10質量%、好ましくは0.001~5質量%、特に好ましくは0.01~1質量%である、本明細書に記載の本発明のフレグランス組成物、好ましくは香油である。
【0028】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載の本発明の混合物、または好ましくは本明細書に記載の本発明のフレグランス組成物、好ましくは香油を、感覚有効量で含む付香製品であって、混合物またはフレグランス組成物の量が、製品の全質量に基づいて、好ましくは、0.01~100質量%、好ましくは0.02~50質量%、特に好ましくは0.1~20質量%の範囲であり、
好ましくは、製品が、香水抽出物、オーデパルファム、オードトワレ、髭剃りローション、オーデコロン、プレシェーブ製品(pre-shave product)、スプラッシュコロン、香水入りリフレッシングティッシュ、酸性、アルカリ性、および中性の洗剤、布用芳香剤、アイロンがけ補助剤、液体洗剤、粉末洗剤、洗濯前処理剤、繊維用柔軟剤、洗濯石鹸、洗浄タブレット、消毒剤、表面消毒剤、消臭スプレー、エアゾールスプレー、ワックスおよび研磨剤、ボディケア製品、ハンドクリームおよびハンドローション、フットクリームおよびフットローション、脱毛クリームおよび脱毛ローション、アフターシェーブクリームおよびアフターシェーブローション、日焼けクリームおよび日焼けローション、ヘアケア製品、デオドラントおよび制汗剤、装飾用化粧品、ロウソク、ランプオイル、線香、殺虫剤、防虫剤、および燃料からなる群から選択される、付香製品に関する。
【0029】
本発明の別の態様は、付香製品、好ましくは本明細書に記載の本発明の製品を製造する方法であって、
i)本明細書に記載の本発明の混合物、または本明細書に記載の本発明のフレグランス組成物を用意するステップと、
(ii)製造される付香製品の、1種または複数の他の成分を用意するステップと、
(iii)ステップ(ii)で用意された他の成分を、感覚有効量の、ステップ(i)で用意された成分と接触させる、または混合するステップと
を含む、方法にも関する。
【0030】
上記の、本発明の態様について、本発明による使用に関して前述されたことは、好ましくは、上記の本発明の態様に準用されることになり、同様に、上記の本発明の態様に関して述べられたことは、本発明による使用に準用されることになる。さらに、本明細書に記載の実施形態は、技術的に妥当なものである限り、互いに、任意で組み合わせることができる。
本発明は、以下の実施例を用いてより詳細に説明される。別段の指示がない限り、全ての明細書は質量を参照する。
【実施例
【0031】
ピラノールおよびAmbrocenide(登録商標)の好ましい混合物
混合物1
【表1】

効果:ピラノールのスズランの香りは、増強され、より簡明になり、より高い価値を伴う。
混合物2
【表2】

効果:ピラノールのスズランの香りは、より永続的になり、より自然になり、混合物2をより価値あるものにする。
【0032】
香油1
【表3】
【0033】
香油A:スズランフレグランスであるFlorosa(登録商標)を含む、標準フレグランス組成物
香油B:香油AからのFlorosa(登録商標)をピラノールで置き換える。香油Bのフレグランスは、香油Aに比べて、フローラルの香りが少なく、晴れやかさが乏しく、複雑さを失う。香油Aのフレグランスは、フローラルの香りが少なく、晴れやかさが乏しく、複雑さが乏しい。
香油C:香油AからのFlorosa(登録商標)を混合物1(上記の通り)で置き換える。香油Cのフレグランスは、香油Bよりもより晴れやかであり、より深みがあり、より良好な快楽性がある。
香油D:香油AからのFlorosa(登録商標)を混合物2(上記の通り)で置き換える。香油Dのフレグランスは、香油Bに比べて、より強く、より永続的である。さらに、香油Dはまた、香油Aよりも、より晴れやかであり、より複雑であり、全体としてより高性能である。
【0034】
香油2
【表4】
【0035】
香油E:スズランフレグランスであるFlorosa(登録商標)を含む、標準フレグランス組成物
香油F:Florosa(登録商標)を混合物1(上記の通り)で置き換える。フレグランスの嗅覚的な改善は低いが、Florosa(登録商標)を混合物1で置き換えることによって、原料費を節約することができる。
香油G:Florosa(登録商標)を混合物2(上記の通り)で置き換える。フレグランス組成物Gのフレグランスは、より強くなり、より永続的になり、組成物Eおよび組成物Fのものよりも、よりフローラルの特徴を有する。
【0036】
付香製品
洗浄粉末
【表5】
【0037】
香油は、洗浄粉末に、この製品から期待される典型的な匂いをもたらす。その匂いは、清潔さおよび清々しさのメッセージを送る。この場合、フレグランスは、清々しさを表す、アルデヒドおよびシトラスの組み合わせで始まる。優しい特徴である、フローラルハートが続く。ベースノートは、森林、アンバー、麝香の特徴を有する、長続きする成分からなり、数日後でさえも、洗濯したばかりの印象を与える。
【0038】
シャンプー
【表6】
【0039】
フレグランスである香油は、人が有する、製品の期待を伝達する。シャンプーの場合、洗浄およびケアが期待される。これは、フレグランスによって伝達される。清潔なリンゴ/シトラスの組み合わせは、洗浄部分を表すが、フレグランスの中心(フルーツのノートを含むフローラル)は、ケアの態様である。フレグランスの認識は、温かい、森林、麝香の成分によって仕上げられる。