(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】調整可能な摺動面を有するプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 11/02 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
B41J11/02
(21)【出願番号】P 2020512373
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(86)【国際出願番号】 IB2018056542
(87)【国際公開番号】W WO2019043566
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】102017000097133
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518118231
【氏名又は名称】アレフ ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】ALEPH S.r.l.
【住所又は居所原語表記】Via Giotto 26,22075 Lurate Caccivio,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】マネス,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリス,ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】マネス,ロベルト
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/060875(WO,A1)
【文献】特開平07-214766(JP,A)
【文献】特開2013-119217(JP,A)
【文献】特開2013-193219(JP,A)
【文献】特開2001-018382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0201168(US,A1)
【文献】特開2004-314605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 29/12-29/24
B65H 29/32
B41J 11/00-11/70
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(9)を印刷するためのインクジェットプリンタ(1)であって、
2つの側壁(21、22)を含む支持構造(2)と、
前進方向(x)に前記基板(9)を前進させるための摺動可能な移送装置(3)であって、コンベヤベルト(30)と固定支持面(31)とを含み、前記コンベヤベルト(30)が前記基板(9)と接触するように意図された外面(303)と前記固定支持面(31)と接触するように意図された内面とを含む、移送装置(3)と、
前記コンベヤベルト(30)の前記外面(303)の近くに配置され且つ前記前進方向(x)に垂直な印刷方向(y)に沿って作動する印刷ヘッド(41)を含む印刷デバイス(4)と、
前記コンベヤベルト(30)に対して前記基板(9)を付着且つ固定するように維持するために適した保持手段(5)と、
前記移送装置(3)を調整するための
調整手段(6)と、を含み、
前記固定支持面(31)は、2つの側端部(311、312)を含み、
前記固定支持面(31)の前記2つの側端部(311、312)は、前記支持構造(2)の前記2つの側壁(21、22)に載っており、
前記移送装置(3)の前記調整手段(6)が、前記2つの側壁の一方(21)と前記固定支持面(31)の対応する前記側端部(311)との間に配置された少なくとも1つの側部調整アセンブリ(61;62)を含み、
前記少なくとも1つの側部調整アセンブリ(61;62)は、前記固定支持面(31)の前記側端部(311;312)に前記印刷方向(y)周りの回転運動を課すのに適している、プリンタ(1)。
【請求項2】
前記移送装置(3)の前記調整手段(6)が、2つの側部調整アセンブリ(61、62)を含み、前記2つの側部調整アセンブリ(61、62)の各々は、前記2つの側壁(21、22)の一方と前記固定支持面(31)の対応するそれぞれの前記側端部(311、312)との間に配置される、請求項1に記載のプリンタ(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの側部調整アセンブリ(61;62)は、前記固定支持面(31)の前記側端部(311;312)に前記前進方向(x)および前記印刷方向(y)を含む印刷面(xy)に垂直な調整方向(z)の並進運動を課すのに適している、請求項1または2に記載のプリンタ(1)。
【請求項4】
前記支持構造(2)は、前記2つの側壁の間に延在するクロスビーム(20)をさらに備え、前記移送装置(3)の前記調整手段(6)は、前記クロスビーム(20)と前記固定支持面(31)の中央部分(310)との間に配置された中央調整アセンブリ(60)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のプリンタ(1)。
【請求項5】
前記支持構造(2)は、前記2つの側壁の間に延在するクロスビーム(20)をさらに備え、前記移送装置(3)の前記調整手段(6)は、前記クロスビーム(20)と前記固定支持面(31)の中央部分(310)との間に配置された中央調整アセンブリ(60)を含み、
前記中央調整アセンブリ(60)は、前記固定支持面(31)の前記中央部分(310)に、前記印刷面(xy)に垂直な前記調整方向(z)の並進運動を課すのに適している、請求項3に記載のプリンタ(1)。
【請求項6】
前記移送装置(3)の前記調整手段(6)が、前記固定支持面(31)に固定された前記印刷面(xy)に対して傾斜した少なくとも1つの
傾斜面(631)と、前記傾斜面(631)と前記支持構造(2)との間に配置された少なくとも可動くさび(641)とを含む、請求項3または5に記載のプリンタ(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの側部調整アセンブリ(61;62)は、前記支持構造(2)の前記側壁(21)のねじ穴にねじ込まれた引きねじ(64)と、前記側壁(21)の表面に軸方向に当接する押しねじ(65)とを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のプリンタ(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの側部調整アセンブリ(61;62)は、前記支持構造(2)の前記側壁(21)のねじ穴にねじ込まれた引きねじ(64)と、前記側壁(21)の表面に軸方向に当接する押しねじ(65)とを備え、
前記引きねじは、前記調整方向(z)に平行な軸を有し且つ前記固定支持面(31)の前記側端部(311)の滑らかな貫通穴に沿って自由に動き、前記押しねじは、前記調整方向(z)に平行な軸を有し且つ前記側端部(311)のねじ穴にねじ込まれる、請求項3、5および6のいずれか一項に記載のプリンタ(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの側部調整アセンブリ(61;62)は、前記支持構造(2)の前記側壁(21)のねじ穴にねじ込まれた引きねじ(64)と、前記側壁(21)の表面に軸方向に当接する押しねじ(65)とを備え、
前記引きねじ(64)が前記印刷方向(y)に平行な軸を有し且つ前記可動くさび(641)の滑らかな貫通穴に沿って自由に動き、前記押しねじ(65)は、前記印刷方向(y)に平行な軸を有し且つ前記可動くさび(641)のねじ穴にねじ込まれる、請求項6に記載のプリンタ(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの側部調整アセンブリ(61;62)は、前記前進方向(x)に沿って互いに間隔を空けて配置された前側部調整サブアセンブリ(611)および後側部調整サブアセンブリ(612)を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のプリンタ(1)。
【請求項11】
前記支持構造(2)の前記側壁(21)が当接部(211)を規定し、
前記側部調整アセンブリが前記当接部(211)に
前記回転運動および前記並進運動を加えるために適しており、
前記固定支持面(31)の前記側端部(311)が前記当接部(211)に載っている、請求項
3、5および6のいずれか一項に記載のプリンタ(1)。
【請求項12】
前記基板(9)を前記コンベヤベルト(30)に対して付着且つ固定した状態に維持するのに適した前記保持手段(5)が真空システム(50)を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のプリンタ(1)。
【請求項13】
前記真空システム(50)は、前記固定支持面(31)を構成する透かし壁(531)を備える真空ボックス(53)を備える、請求項12に記載のプリンタ(1)。
【請求項14】
前記基板(9)を前記コンベヤベルト(30)に対して付着且つ固定した状態に維持するのに適した前記保持手段(5)が真空システム(50)を含み、
前記真空システム(50)は、前記固定支持面(31)を構成する透かし壁(531)を備える真空ボックス(53)を備え、
前記中央調整アセンブリ(60)は、前記真空ボックス(53)の外側に、前記クロスビーム(20)と前記真空ボックス(53)の中央部分(530)との間に、配置される、請求項4に記載のプリンタ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に平坦性および幾何学的配置(orientation)を調整するための装置を含む、調整可能な摺動面を有する大判プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
大判基板にデジタル印刷するための工業用プリンタ、典型的にはインクジェットプリンタの使用が知られている。これらの用途のための印刷基板は、通常、紙、ポリマまたは繊維材料でできている。例として、そのようなプリンタは、ポスター、広告板、バナー、衣類の布地、家具の布地などを印刷するために一般的に使用される。
【0003】
このタイプのプリンタは通常、印刷中に前進方向に基板を前進させるのに適した摺動移送装置を備える。
【0004】
基板を移送装置に付着した状態に維持するための保持手段を設けることも知られている。それ自体既知の方法で、保持手段は、接着剤または静電荷の層の使用に基づいて、基板を移送装置に付着した状態に維持することができる。
【0005】
保持手段の別の既知の解決策は、あまり一般的ではないが、真空システムを提供することである。このシステムは、前進および印刷段階中に、移送装置に対して基板を静止状態に保つのに適している。
【0006】
図1は、既知のタイプの大判産業用プリンタを示す。説明を簡略化するために、以下のいくつかの慣習について言及がなされる。プリンタは重力加速度gの存在下で使用されることを目的としているので、重力加速度gが垂直方向を一意に定義することが意図されている。同様に、重力加速度gに基づいて、用語「高い」、「より高い」、「上」などが、用語「低い」、「より低」、「下」などに対して明確に定義されていることが理解される。さらに、重力加速度gは、重力加速度gと直交する水平面を一意に定義する。
【0007】
基板の前進が発生する水平方向はxと呼ばれ、xに垂直な水平方向はyと呼ばれる。xおよびyと右手系を形成する垂直方向はzと呼ばれる。したがって、これらの慣習に従って、zとgは同一の方向を持ち、gは負の値を持つ。
【0008】
基板の前進に関して、「前」、「前方へ」などの用語は、「後」、「後方へ」などの用語に対して定義される。
【0009】
プリンタの重要な特徴は、印刷領域の幅である。幅とは、y方向の印刷領域のサイズを意味する。基板はしばしばロール状に配置されるので、印刷領域の最大長(つまり、x方向で測定される寸法)はほとんど不定であり、最も一般的な要件をはるかに超える制限を持つ。それどころか、印刷領域の最大幅は、プリンタの寸法および特に移送装置の幅によって制限される。このため、一般に、プリンタの幅が広いほど、汎用性の観点から市場で高く評価される。
【0010】
しかしながら、当業者がよく理解できるように、プリンタの幅を大きくするといくつかの問題が生じる。これらのうち、かなり重要な問題は、摺動移送装置の平坦性と正しい幾何学的配置を保証することである。言い換えれば、摺動移送装置の実際の表面が可能な限り最良の方法で平面(平坦性)に近似し、この平面が2つの方向(幾何学的配置)xおよびyによって幾何学的視点から厳密に規定された印刷面xyに平行であることを保証する必要がある。通常、近似しようとする印刷面xyは水平面である。
【0011】
摺動移送装置は、通常、少なくとも1つが電動化された2つのローラに取り付けられたコンベヤベルトを備える。2つのローラの軸は方向yに平行である。このようにして、コンベヤベルトは、移送部分(上部)と戻り部分(下部)を規定する。移送部分では、既知の方法で、基板上にインクの効果的な堆積が行われる印刷領域が規定される。戻り部分では、例えばコンベヤベルトのクリーニング、ウォッシングおよび/または乾燥のために、サービスエリアが有利に提供され得る。
【0012】
移送部分およびしたがってコンベヤベルトの印刷領域は、ベルト自体の下に配置された固定支持面によって支持される。支持面は、コンベヤベルトが2つのローラの間に凹状の形状をとることを防ぎ、高品質の印刷を保証するために必要な剛性を与える。
【0013】
上述のように、移送装置に真空システムを設けることが知られている。この場合、コンベヤベルトは多数の小さな貫通穴を備え、同様に、固定支持面は真空システムと連通する開口部を備える。このようにして、プリンタの動作中、真空システムによって作られたくぼみのおかげで、移送装置に載っている基板がコンベヤベルトによって保持され、引きずられ、所定の位置に保持される。
【0014】
既に前述したように、高い印刷品質を得るために必要な条件の1つは、移送装置、特に印刷領域の平坦性と幾何学的配置を保証することである。実際には、最終的な印刷品質は、他の要因の中で、プリントヘッドノズルと基板とを隔てる距離にも依存する。移送装置の平坦性と幾何学的配置により、均一な印刷品質を得るために、印刷領域全体にわたってこの距離を一定に保つことができる。したがって、支持面の平坦性と幾何学的配置を保証する必要があり、支持面がコンベヤベルトの印刷領域の平坦性と幾何学的配置を決める。
【0015】
支持面の平坦性は、少なくとも2つの要因に対して問題がある。第一に、真空システムの機能を保証するために、この平面には穴のあいた構造、およびしたがって比較的変形可能な構造が必要である。さらに、既に上述したように、移送装置の幅を増加させる顕著な傾向がある。
【0016】
同一出願人により出願された特許出願WO2017/060875は、平坦性のみを調整する手段を備える吸引移送装置を備えるインクジェットプリンタを記載している。より具体的には、その解決策に従って、コンベヤベルトの下に真空ボックスが提供される。ボックスは、それが置かれているプリンタの側壁間の橋のように延びる。ボックスは、コンベヤベルトの固定支持面を構成する上壁によって上部において閉じられたボウルで構成される。プリンタの幅が原因で、2つの側壁間の曲げ変形を制限するためにボックスを強化する必要が生じた。このため、国際公開第WO2017/060875号の真空ボックスは、より高い剛性を与えるためにy方向に一方の側から他方の側に完全に延びる中央隔壁も含む。それにも関わらず、曲げによるボックスの変形は全く無視できないので、真空ボックス内の支持面の平坦性を調整する手段がある。概念的には、これらの手段は2つのくさび面によって形成されたブロックを備え、当該2つのくさび面の一方は真空ボックス内に固定され、他方は適切なガイドネジの作用によりy方向に摺動できる。2つのくさび面は、y方向に相互に摺動して、z方向のブロック全体の高さの変化を決定する。ブロックの高さを徐々に上げることにより、曲げによるたわみを相殺するために、2つの側壁間の中間スラストが支持面に提供され得る。しかしながら、中央隔壁の存在は、最適位置での、すなわち中央での平坦性調整手段の位置決めを妨げる。このため、既知の解決策では、平坦性を調整するための手段を倍増させて、各々が中央隔壁の両側にそれぞれ独自のガイドネジを備えた2つの同一のブロックを設ける必要があった。
【0017】
このようにして、国際公開第WO2017/060875号は、曲げによるたわみをキャンセルする可能性を提供し、支持面の平坦性を大幅に改善する。この解決策は、広く評価されているが、いくつかの改善の可能性を示した。
【0018】
第一に、この解決策は、プリンタが支持面の幾何学的配置の観点から完璧に取り付けられていることを前提としている。言い換えれば、この解決策は、同時に、
側壁によって提供される2つの当接部のそれぞれは、その上に真空ボックスが置かれ、完全に水平である(方向xに平行)こと、および
側壁によって提供される2つの当接部は、方向zにおいて互いに完全に一直線になること、を前提としている。
【0019】
この方法でのみ、側壁によって提供される2つの当接部が完全に水平面を規定する。この前提に基づき、支持面の正しい幾何学的配置が確実であると想定され、その平坦性は真空ボックスの曲げによるたわみをキャンセルすることにより大幅に改善できることは明らかである。
【0020】
しかしながら、現実の事実は非常に異なる。第一に、プリンタのサイズと全体の質量を考慮すると、最高水準の設置はかなり困難である。
【0021】
さらに、最高水準の設備の場合でも、後続のセツルメント(settlements)が行われる可能性がある。プリンタの金属木工品(metallic carpentry)とそれを保持する工事(civil works)(基礎および舗装)の両方が、方向xに対する各当接部の位置合わせおよび/または互いに対する2つの当接部の位置合わせを損なうようなセツルメントを受け得る。当然、これらの位置合わせがないと、支持面の幾何学的配置が失われ、したがって、曲げによるたわみのキャンセルは有用であるが、不十分である。
【0022】
さらに、倍の調整手段の性質は、必然的に、関連するコストの倍増、および、とりわけ質量の倍増を伴う。この点で、真空ボックスは頻繁にメンテナンスサイクルにさらされる必要があることに留意すべきである。このため、オペレータが取り外して取り扱う必要があるため、真空ボックスは可能な限り軽量でなければならない。
【0023】
さらに、倍の調整手段の提供は、平坦性および幾何学的配置の調整段階がより複雑になることを示唆している。実際、前進方向xでの支持面の傾きの導入を避けるために、両方のブロックを調整して互いに位置合わせする必要がある。
【0024】
さらに、特定の試験の過程で、出願人は、平面の平坦性を調整するための既知の手段の効率が改善される可能性があることに気付いた。実際、支持面の下面を押すために、このような手段は必然的に等しく且つ反対の拘束反応を生成する。特定のケースでは、この拘束反応は真空ボックスの底壁によって提供される。ただし、この底壁の剛性は上壁のそれに匹敵する。したがって、平坦性調整作用は、平坦性調整手段が作用する両方の壁に変形を課す。このため、平坦性調整手段の作用は特に効率的ではない。
【発明の概要】
【0025】
したがって、本発明の目的は、上記で強調した既知の技術の欠点を克服することである。
【0026】
この目的の範囲内で、本発明の課題は、摺動移送装置を有し、既知の解決策で既に評価されている品質を維持し且つ最適でない側面を少なくとも部分的に改善する平坦性および幾何学的配置を調整するための手段を備えたプリンタを利用可能にすることである。
【0027】
特に、本発明の課題は、摺動移送装置の平坦性および幾何学的配置を調整するための手段によって、プリンタの側壁によって提供される支持体の不整合を補償することを可能にすることである。
【0028】
さらに、本発明の課題は、摺動移送装置の平坦性および幾何学的配置を調整するための手段が効率的で使いやすいことである。
【0029】
最後に、本発明の課題は、日常的なメンテナンスのために容易に取り外し可能な平坦性および幾何学的配置を調整するための手段を備えた摺動移送装置を利用可能にすることである。
【0030】
この目的およびこれらの課題は、請求項1に記載のプリンタによって達成される。
【0031】
プリンタは、以下の好ましい特徴の1つ以上をさらに備えてもよい。
【0032】
好ましくは、プリンタは、基板を移送装置に付着した状態に維持するように構成された保持手段も備える。
【0033】
印刷方向yは、好ましくは前進方向xに垂直である。
【0034】
2つの方向xとyは、印刷面xyを規定する。好ましくは、前進方向x、印刷方向yおよび印刷面xyは水平である。
【0035】
いくつかの実施形態では、印刷ヘッドは、基板の幅全体を実質的にカバーするように、印刷方向yに沿って移動可能である。他の実施形態では、印刷ヘッドは固定されており、基板の幅全体をカバーするような延長部を有する。
【0036】
好ましくは、移送装置は、コンベヤベルトと固定支持面とを含む。
【0037】
好ましくは、コンベヤベルトは、基板と接触するように設計された外面を有する移送部分を含む。好ましくは、コンベヤベルトは、固定支持面と接触するように意図された内面も含む。
【0038】
好ましくは、印刷デバイスは、コンベヤベルトの外面の近くに配置される。
【0039】
好ましくは、保持手段は、基板をコンベヤベルトに対して付着且つ固定された状態に維持するように構成される。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、支持構造は2つの側壁を含む。
【0041】
好ましくは、固定支持面は2つの側端部を含む。
【0042】
好ましくは、固定支持面の側端部は、支持構造の側壁に載っている。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、移送装置の調整手段は、側壁と固定支持面の対応する側端部との間に配置された少なくとも1つの側部調整アセンブリを含む。
【0044】
好ましくは、少なくとも1つの側部調整アセンブリは、固定支持面の対応する側端部に、印刷面xyに垂直な調整方向zの並進運動を加えるのに適している。
【0045】
好ましくは、少なくとも1つの側部調整アセンブリは、印刷方向yの周りに固定支持面の対応する側端部の周りの回転運動を加えるのに適している。
【0046】
好ましくは、側部調整アセンブリは、必要に応じて前進方向xに沿って異ならせることができる調整方向z(例えば垂直)の並進を加えるのに適している。調整方向zの並進は、側端部の前部と側端部の後部との間で異ならせることができる。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、側部調整アセンブリは、一対のねじ、すなわち、引きねじと押しねじを備え、両方ともが調整方向zに平行な軸を有する。引きねじは、固定支持面の側端部にある滑らかな貫通穴に自由にスライドし、支持構造の側壁のねじ穴にねじ込まれる。押しねじは、側端部のねじ穴にねじ込まれ、側壁面に対して軸方向に支持される。両方のねじを組み合わせて締めることにより、固定支持面の側端部のブロッキングが決まる。2本のねじのうち一方を緩めて他方を締めることにより、側端部を調整方向zに沿って移動させ、したがって、側壁からの距離を調整できる。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、側部調整アセンブリは、2つのサブアセンブリ、すなわち、前側部調整サブアセンブリおよび後側部調整サブアセンブリを含む。好ましくは、2つの側部調整サブアセンブリの各々は、一対のねじ、すなわち、各々が調整方向zに平行な軸を有する引きねじと押しねじを含む。各側部調整サブアセンブリの各対のねじは上記のように作用し、側端部のそれぞれの部分の調整方向zに沿った位置を調整することを可能にする。
【0049】
好ましくは、支持構造の側壁は、固定支持面の側端部が支持および拘束される当接部を規定する。側部調整アセンブリは、当接部を前進方向xに合わせるために、当接部にロト-トランスレーションを加えることができる。横方向端部が当接部に載っているので、当接部のロト-トランスレーションは側端部に同じように伝達される。
【0050】
他の実施形態によれば、移送装置の調整手段は、2つの側部調整アセンブリ、すなわち、既に上述した第1の側部調整アセンブリと、第2の側部調整アセンブリとを含む。第1の側部調整アセンブリは、第1の側壁と固定支持面の第1の側端部との間に配置され、第2の側部調整アセンブリは、第2の側壁と固定支持面の第2の側端部との間に配置される。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、2つの側部調整アセンブリの一方は、対応する横方向端部のロト-トランスレーションを課すのに適しており、2つの側部調整アセンブリの他方は、単純な並進を課すのに適しており、その達成においては、関連する側端部はそれ自体に平行のままである。
【0052】
他の実施形態によれば、第2の側部調整アセンブリの構造は、第1の側部調整アセンブリの構造と実質的に同一であり、好ましくは、2つの構造は、平面xzに関して対称的である。
【0053】
好ましくは、第2の側部調整アセンブリも2つのサブアセンブリ、すなわち前側部調整サブアセンブリと後側部調整サブアセンブリを含む。2つの側部調整サブアセンブリの各々は、好ましくは、一対のねじ、すなわち、両方ともが調整方向zに平行な軸を有する引きねじと押しねじを含む。
【0054】
好ましくは、第1の側部アセンブリおよびその持ち得るサブアセンブリについて上述した特徴、動作モードおよび調整の可能性は、第2のアセンブリおよびその持ち得るサブアセンブリに同様に適用される。
【0055】
好ましくは、移送装置の調整手段は、固定支持面の各角度に対して特定の調整サブアセンブリを含む。
【0056】
好ましくは、支持構造は、2つの側壁の間に延びるクロスビームを含む。
【0057】
好ましくは、移送装置の調整手段は中央調整アセンブリを含む。
【0058】
好ましくは、中央調整アセンブリは、クロスビームと固定支持面の中央部分との間に配置される。
【0059】
好ましくは、中央調整アセンブリは、固定支持面の中央部分に、印刷面xyに垂直な調整方向zの並進運動を加えるのに適している。
【0060】
好ましくは、第1の側部調整アセンブリは、
印刷面xyに対して傾斜し且つ固定支持面の第1の側端部に固定された表面と
傾斜面と支持構造の第1の側壁との間に配置された可動くさびと、を含む。
【0061】
傾斜面は、印刷面xyと、好ましくは4°と12°の間、さらに好ましくは6°と10°の間の角度を形成する。
【0062】
好ましくは、可動くさびは、傾斜面に対して相補的な形状を有する。
【0063】
好ましくは、可動くさびの移動は、少なくとも一対のねじ、すなわち、両方ともが印刷方向yに平行な軸を有する引きねじと押しねじによって得られる。
【0064】
引きねじは、可動くさびの滑らかな貫通穴に自由にスライドし、側壁のねじ穴にねじ込まれる。押しねじは、可動くさびのねじ穴にねじ込まれ、側壁の表面で軸方向に支持される。両方のねじを組み合わせて締めることにより、可動くさびのブロッキングが決まる。逆もまた同様であるが、2つのねじの一方を緩めて他方を締めることによって、可動くさびを印刷方向yに沿って移動させ、したがって、側壁に対する位置を調整することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、可動くさびは、前進方向xに沿った延長部を有し、これにより、前側部調整サブアセンブリと後側部調整サブアセンブリの両方を含めることができる。
【0066】
好ましくは、各側部調整サブアセンブリは、一対のねじを備え、各対は、両方ともが印刷方向yに平行な軸を有する引きねじおよび押しねじを含む。
【0067】
上記の第1の側部アセンブリとその一対のねじの機能、動作モード、および調整の可能性は、その2つのサブアセンブリとそれぞれの一対のねじに同様に適用される。
【0068】
いくつかの実施形態では、可動くさびの上面は、固定支持面の側端部を載せるための上記の当接部を構成する。
【0069】
第2の側部調整アセンブリの構造は、第1の側部調整アセンブリの構造と実質的に同一であり、平面xzに関して対称的であるという唯一の違いがある。
【0070】
好ましくは、中央調整アセンブリは、
印刷面xyに対して傾斜し且つ固定支持面の中央部分に固定された表面と、
傾斜面と支持構造のクロスビームとの間に配置された可動くさびと、を含む。
【0071】
好ましくは、中央調整アセンブリは、可動くさびを印刷方向yに並進させることを可能にする1つの調整ねじのみを含み、したがって、それ自体に常に平行のままである。
【0072】
好ましくは、プリンタは、基板を移送装置に付着した状態に維持するように構成された保持手段を備える。
【0073】
一実施形態によれば、保持手段は真空システムを含む。
【0074】
好ましくは、真空システムは真空ボックスを含む。
【0075】
好ましくは、真空ボックスは透かし壁を備える。
【0076】
好ましくは、透かし壁は固定支持面を構成する。
【0077】
好ましくは、中央調整アセンブリは、真空ボックスの外側、例えばクロスビームと真空ボックスの中央部との間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
本発明をよりよく理解し、その利点を理解するために、その例示的且つ非限定的な実施形態のいくつかが添付の図面を参照して以下に説明される。
【
図1】従来技術による真空摺動移送装置を備えたインクジェットプリンタの斜視図を示す。
【
図2】本発明による真空摺動移送装置を備えたインクジェットプリンタの斜視図を示し、より明確にするために、印刷部材とコンベヤベルトが取り除かれている。
【
図5】
図4にVで示されている詳細の拡大図を示し、より明確にするために、本発明に直接関連しないいくつかの要素が取り除かれている。
【
図7】
図5のVII-VII線に沿った断面を示す。
【
図8a】アセンブリ構成における本発明によるプリンタの概略側面図を示す。
【
図8b】作業構成における本発明によるプリンタの概略側面図を示す。
【
図9a】アセンブリ構成における本発明によるプリンタの概略正面図を示す。
【
図9b】作業構成における本発明によるプリンタの概略正面図を示す。
【
図9c】メンテナンス構成における本発明によるプリンタの概略正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明は、全体として1で示されるプリンタに関する。例えば、プリンタ1はインクジェットタイプのものであり得る。さらに、プリンタ1は、布地、紙、ポリマまたは他の材料で作られた基板9を印刷するのに適したタイプのものであり得る。プリンタ1は、
支持構造2と、
前進方向xに基板9を前進させるための移送装置3と、
印刷方向yに沿って動作する印刷ヘッド41を備える印刷デバイス4と、
移送装置3を調整するための手段6と、を含む。
【0080】
好ましくは、プリンタ1は、基板9を移送装置3に付着した状態に維持するように適合された保持手段5も備える。
【0081】
厳密には必要ではないが、印刷方向yは、好ましくは前進方向xに垂直である。2つの方向xとyは、印刷面xyを規定する。通常、前進方向x、印刷方向y、および印刷面xyは水平である。
【0082】
この構成は、印刷デバイス4が移送装置3の上方に配置されたものであり、唯一の可能な構成ではないが、特定の利点を可能にする。例えば、この構成により、印刷で使用されるインクの流れを管理するために重力加速度gを最大限に活用できる。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、印刷ヘッド41は、基板9の全幅(すなわち、印刷方向y自体における基板9の延長部)を実質的にカバーするように、印刷方向yに沿って移動可能である。他の実施形態では、印刷ヘッド41は固定され、いずれの場合でも印刷される基板9の全幅をカバーするように印刷方向yに延長部を有する。
【0084】
好ましくは、移送装置3は、コンベヤベルト30と固定支持面31とを備える。コンベヤベルト30は、有利には、基板9と接触するように意図された外面303と、固定支持面31と接触するように意図された内面とを有する移送部分301を備える。好ましくは、印刷デバイス4は、コンベヤベルト30の外面303の近くに配置される。
【0085】
好ましくは、保持手段5は、基板9をコンベヤベルト30に対して付着且つ固定された状態に維持するように適合される。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態によれば、支持構造2は2つの側壁21、22を備え、固定支持面31は2つの側端部311、312を備える。固定支持面31の側端部311、312は、好ましくは、支持構造2の側壁21、22に載っている。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、本発明によるプリンタ1では、移送装置3の調整手段6は、側壁21と固定支持面31の対応する側端部311との間に配置された少なくとも1つの側部調整アセンブリ61を含む。
【0088】
好ましくは、少なくとも1つの側部調整アセンブリ61は、固定支持面31の対応する側端部311に、印刷面xyに垂直な調整方向zの並進運動、および/または印刷方向y周りの回転運動を加えるのに適している。
【0089】
側部調整アセンブリ61は、実際には、必要に応じて前進方向xに沿って異ならせることができる調整方向z(通常は垂直)の並進を課すのに適している。言い換えれば、調整方向zの並進は、側端部311の前部3111と側端部311の後部3112との間で異ならせることができる。当業者が理解できるように、調整方向zの均一な並進は、固定支持面31の側端部311がそれ自体に平行のままである移動を課す。逆に、前進方向xに沿って異なった調整方向zの並進は、側端部311も印刷方向y周りに回転する移動を課す。
【0090】
調整方向zに沿った位置は、通常これは垂直であるので、以下では「高さ」とも呼ばれる。
【0091】
いくつかの実施形態(図示せず)によれば、側部調整アセンブリ61は、一対のねじ、すなわち、両方ともが調整方向zに平行な軸を有する引きねじおよび押しねじを含む。引きねじは、側端部311の好ましくは滑らかな貫通穴に自由にスライドし、側壁21のねじ穴にねじ込まれる。押しねじは、側端部311のねじ穴にねじ込まれ、その先端に当接する、すなわち、側壁面21で、その端部の1つと軸方向に当接する。両方のねじを組み合わせて締めることによって、側端部311のブロッキングが決まる。逆も同様であるが、2つのねじの一方を緩めて他方を締めることにより、調整方向zに沿って側端部311を動かし、したがって、側壁21からの距離を調整することができる。より詳細には、側端部311のブロッキング状態から出発して、調整方向zに沿って側壁21から側端部311を遠ざけるために、押しねじのための自由移動を作り出すように引きねじが緩められる必要がある。押しねじを締めることにより、側端部311は側壁21から遠ざかる。調整方向zに沿って所望の位置が得られると、引きねじを締めることにより、端部311のブロックが再び得られる。逆もまた同様に、同じロッキング状態から出発して、側端部311を調整方向zに沿って側壁21に近づけるためには、引きねじのための自由移動を作り出すように押しねじが緩められる必要がある。引きねじを締めることにより、側端部311は側壁21に接近する。調整方向zに沿って所望の位置が得られたら、押しねじを締めることにより、端部311のブロックが再び得られる。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、側部調整アセンブリ61は、好ましくは、前進方向xに沿って互いに間隔を空けた2つのサブアセンブリ、すなわち前側部調整サブアセンブリ611および後側部調整サブアセンブリ612を含む。2つの側部調整サブアセンブリ611および612の各々は、好ましくは、一対のねじ、すなわち、両方ともが調整方向zに平行な軸を有する引きねじおよび押しねじを含む。各側部調整サブアセンブリの各対のねじは上記のように作用し、側端部311のそれぞれの部分の調整方向zに沿った位置を調整することを可能にする。特に、前側部調整サブアセンブリ611の一対のねじは、側端部311の前部3111の調整方向zに沿った位置を調整することを可能にし、同様に、後側部調整サブアセンブリ612の一対のねじは、側端部311の後部の調整方向zに沿った位置を調整することを可能にする。既に上述したように、2つの側部調整サブアセンブリ611および612の同一の調整により、側端部311がそれ自体に対して平行のままである並進が決定される。逆に、2つの側部調整サブアセンブリ611および612にそれぞれ異なるエンティティを有する調整介入によって、印刷方向y周りの側端部311の回転を決定することも可能である。
【0093】
側部調整アセンブリ61の機能をより詳細に説明するために、以下では
図8aおよび8bを参照する。
図8aは、完全に水平ではないベースに設置されたプリンタ1を概略的に示し、このため、プリンタ1の固定支持面31は、水平面(一点鎖線で示す)に対してずれている。
図8aでは、読者が容易に知覚できるように、水平に対する位置ずれが誇張されている。通常、実際に発生する位置ずれは、はるかに小さい。
【0094】
側部調整アセンブリ61を異なる態様で動作させることにより、側端部311を前進方向xに沿って異なる程度に上昇させて、水平に完璧に位置合わせされた
図8bの構成にもっていくことが可能である。
【0095】
好ましくは、側壁21は、固定支持面31の側端部311が支持され且つ拘束される当接部211を規定する。この場合、側部調整アセンブリ61は、前進方向xと位置合わせするために、当接部211にロト-トランスレーションを加えることを可能にする。側端部311は当接部211に載っているので、当接部211のロト-トランスレーションは、側端部311に同じように伝達される。
【0096】
側部調整アセンブリ61が当接部211にロト-トランスレーションを課すこの解決策により、いくつかの利点を得ることができる。この場合、実際には、例えばメンテナンスのための支持面31の起こり得る取り外しは、前進方向xと完全に位置合わせされたままの当接部211の調整に影響を与えない。支持面31が再び組み立てられると、その側端部311は、当接部211のおかげで再び正しい位置をとる。この特定の構成により、プリンタ1および特に支持面31のメンテナンスを実行しやすくなる。
【0097】
他の実施形態によれば、本発明によるプリンタ1では、移送装置3の調整手段6は、2つの側部調整アセンブリ、すなわち、既に上述した第1の側部調整アセンブリ61および第2の側部調整アセンブリ62を含む。第1の側部調整アセンブリ61は、第1の側壁21と固定支持面31の第1の側端部311との間に配置され、第2の側部調整アセンブリ62は、第2の側壁22と固定支持面31の第2の側端部312との間に配置される。
【0098】
いくつかの実施形態によれば、2つの側部調整アセンブリの一方(例えば、第1の側部調整アセンブリ61)は、対応する側端部(同じ例では第1の側端部311)のロト-トランスレーションを課すのに適しており、2つの側部調整アセンブリの他方(この例では第2の側部調整アセンブリ62)は、関連する側端部(この例では第2の側部調整端部312)がそれ自体に平行のままである直線の単純な並進を課すのに適している。
【0099】
他の実施形態によれば、第2の側部調整アセンブリ62の構造は、第1の側部調整アセンブリ61の構造と実質的に同一であり、平面xzに関して対称であるという唯一の違いがある。
【0100】
好ましくは、第2の側部調整アセンブリ62も、2つのサブアセンブリ、すなわち、前側部調整サブアセンブリ621および後側部調整サブアセンブリ622を含む。2つの側部調整サブアセンブリ621および622の各々は、好ましくは、一対のねじ、すなわち、両方が調整方向zに平行な軸を有する引きねじおよび押しねじを含む。
【0101】
明らかに、第1の側部アセンブリ61およびその持ち得るサブアセンブリ611および612について上述した特徴、動作モードおよび調整の可能性は、第2のアセンブリ62およびその持ち得るサブアセンブリ621および622にも同様に適用される。このようにして、2つの側部調整アセンブリ61および62の各々は、固定支持面31のそれぞれの側端部311および312の前進方向xに完全に位置合わせすることを可能にする。
【0102】
状況によっては、2つの側端部311および312の完全に水平な幾何学的配置は、固定支持面31の印刷面xyに対する位置合わせを決定するには不十分であることが判明する場合がある。例えば、2つの側端部311および312が、両方とも完全に水平であるが、調整方向zに沿って異なる高さに配置されている場合、固定支持面31は全体として印刷面xyに対して傾斜することになる。2つの側部調整アセンブリ61および62の存在により、2つの側端部311および312が互いに対して位置する2つの高さzを容易に調整することが可能になる。特に、調整により、水平面に対して2つの高さzの間の差が生じないようにする必要がある。
【0103】
上述の実施形態では、移送装置3の調整手段6は、固定支持面31の側端部の各部分に対して特定の調整サブアセンブリを備える。特に、第1の前側部調整サブアセンブリ611は、第1の側端部311の前部3111に関連付けられており、第1の後側部調整サブアセンブリ612は、第1の側端部311の後部3112に関連付けられており、第2の前側部調整サブアセンブリ621は、第2の側端部312の前部3121に関連付けられており、第2の後側部調整サブアセンブリ622は、第2の側端部312の後部3122に関連付けられている。
【0104】
当業者は、固定支持面31の側端部の各部分の位置の細かな且つ独立した調整の可能性に由来する利点を容易に理解することができる。この構成は、実際に高い調整の汎用性を可能にする。
【0105】
固定軸受面31の2つの側端部311および312が完全に水平であり、それらが調整方向zにおいて正確に同じ高さである場合に、典型的には水平な印刷面xyに対する固定支持面31の完全な幾何学的配置を確保するために最良の条件が整えられる。
【0106】
しかしながら、従来技術を参照して既に上記で説明したように、場合によっては、2つの側部調整アセンブリ61および62によって提供される条件は、固定支持面31の平坦性を保証するのに十分でない場合がある。
【0107】
固定支持面31は好ましくは2つの側壁21と22の間のブリッジとして配置されるので、場合によっては、曲げによる平面の無視できない変形を引き起こし得る重力を受ける。特に、固定支持面31の中央部分310が、側端部311および312に対して(「たわみ」と呼ばれる)調整方向zに特定の高さだけ落ちることが起こり得る。
【0108】
この特定の問題をより詳細に説明するために、以下に
図9aおよび9bを参照する。
図9aは、プリンタ1を概略的に示し、その固定支持面31が、正確に同じ高さzの完全に水平な側端部311および312を有するが、水平面に対して無視できないたわみ(一点鎖線で示される)を受けている。
図9aでは、読者が容易に知覚できるように、水平に対するたわみが誇張されている。通常、実際に発生するたわみは、はるかに小さい。
【0109】
好ましくは、支持構造2は、2つの側壁21と22との間に延びるクロスビーム20を備える。移送装置3の調整手段6は、有利には、クロスビーム20と固定支持面31の中央部分310との間に配置された中央調整アセンブリ60を含む。
【0110】
好ましくは、中央調整アセンブリ60は、固定支持面31の中央部分310に、印刷面xyに垂直な調整方向zの並進運動を加えるのに適している。このようにして、中央調整アセンブリ60の動作により、たわみをキャンセルし、中央部分310を2つの側端部311および312の同じ同一の高さに戻すことができる。この構成は、
図9bに概略的に示されており、そこでは固定支持面31の完全な平坦性が復元されている。
【0111】
移送装置3の調整手段6の特定の実施形態を以下に説明する。この形態だけが唯一の可能なものではないが、特に有利であることが証明されている。
【0112】
この実施形態は、第1の側部調整アセンブリ61について詳細に説明される。しかしながら、必要な変更を加えて、同じ説明が第2の側部調整アセンブリ62および中央調整アセンブリ60に適用される。特に
図5-7を参照する。
【0113】
第1の側部調整アセンブリ61は、好ましくは、
印刷面xyに対して傾斜し且つ固定支持面31の第1の側端部311に固定された表面631と、
傾斜面631と支持構造2の第1の側壁21との間に配置された可動くさび641と、を含む。
【0114】
傾斜面631は、好ましくは4°と12°の間、さらにより好ましくは6°と10°の間の角度を印刷面xyと形成する。可動くさび641は、傾斜面631に対して相補的な形状を有する(特に
図6の断面を参照)。角度を小さくすると微調整が可能になるが、可動くさび641のより長い移動を必要とする。対照的に、角度を大きくすると、可動くさび641のより短いストロークが可能になるが、より急激な調整を必要とする。
【0115】
可動くさび641の(印刷方向yにおける)移動は、少なくとも一対のねじ、すなわち、両方が印刷方向yに平行な軸を有する引きねじ64および押しねじ65によって得られる。引きねじ64は、可動くさび641の滑らかな貫通穴に自由にスライドし、側壁21のねじ穴にねじ込まれる。押しねじ65は、可動くさび641のねじ穴にねじ込まれ、その先端に当接する、すなわち、側壁面21で、その端部の1つと軸方向に当接する。両方のねじを組み合わせて締めることにより、可動くさび641のブロッキングが決まる。逆もまた同様であるが、2つのねじの一方を緩めて他方を締めることにより、可動くさび641を印刷方向yに沿って移動させ、したがって、側壁21に対するその位置を調整することができる。より詳細には、可動くさび641のブロッキング状態から開始して、印刷方向yに沿って側壁21から可動くさび641を遠ざけるために、押しねじ65の自由な移動を生成するために、引きねじ64を緩めなければならない。押しねじ65を締めると、可動くさび641が側壁21から離れるように移動する。印刷方向yに沿って所望の位置が得られると、引きねじ64を締めることにより、可動くさび641のブロックが再び得られる。逆に、同じロッキング状態から開始して、可動くさび641を印刷方向yに沿って側壁21に近づけるために、押しねじ65を解放して、引きねじ64の自由な移動を生成する必要がある。引きねじ64を締めることにより、可動くさび641が側壁21に接近する。印刷方向yに沿って所望の位置が得られると、押しねじ65を締めることにより、可動くさび641のブロックが再び得られる。両方のねじを組み合わせて締めることにより、可動くさび641のブロッキングが決まる。逆もまた同様であるが、2本のねじの一方を緩めて他方を締めることにより、可動くさび641を印刷方向yに沿って移動させることができる。印刷方向yに沿った可動くさび641の並進は、傾斜面631の調整方向zへの並進を伴う。この並進により、固定支持面31の第1の側端部311の高さを調整することが可能になる。
【0116】
特に
図7に見られるように、第2の側部調整アセンブリ61は、2つのサブアセンブリ、すなわち、前側部調整サブアセンブリ611および後側部調整サブアセンブリ612を含む。可動くさび641と、それ故に可動くさび641に共役する傾斜面631とは、両方のサブアセンブリを収容することを可能にする前進方向xに沿った延長部を有する。さらに、各側部調整サブアセンブリは、一対のねじを備え、各対は、両方が印刷方向yに平行な軸を有する引きねじ64および押しねじ65を備える。
【0117】
明らかに、第1の側部アセンブリ61およびその対のねじについて上述した特徴、動作モードおよび調整可能性は、その2つのサブアセンブリ611および612ならびに各対のねじに同様に適用される。
【0118】
このようにして、2つのサブアセンブリ611および612と各対のねじとで異なる移動を課すことが可能である。これにより、可動くさび641に、前進方向xに沿って異なった印刷方向yの並進が課される。可動くさび641のこの異なった並進は、前進方向xに沿って異なった調整方向zの並進を傾斜面631に課す。したがって、傾斜面631も印刷方向yの周りを回転する運動が得られる。
【0119】
この特定の実施形態では、可動くさび641の上面は、上述の当接部211を構成する。
【0120】
第2の側部調整アセンブリ62の構造は、第1の側部調整アセンブリ61の構造と実質的に同一であり、平面xzに関して対称であるという唯一の違いがある。
【0121】
中央調整アセンブリ60は通常、より単純な構造を有する。中央調整アセンブリ60は、好ましくは、
印刷面xyに対して傾斜し且つ固定支持面31の中央部分310に固定された表面630と、
傾斜面630と支持構造2のクロスビーム20との間に配置された可動くさび640と、を含む。
【0122】
以下で特に説明しないものについては、中央調整アセンブリ60は、好ましくは、上述の第1の側部調整アセンブリ61に類似している。例えば、表面630は、好ましくは4°と12°の間、さらにより好ましくは6°と10°の間の角度を印刷面xyと形成する。可動くさび640は、好ましくは、傾斜面630に対して相補的な形状を有する。
【0123】
有利には、中央調整アセンブリ60は、可動ウェッジ640を印刷方向yに並進させることができるように調整ねじ66を1つだけ備え、それにより常にそれ自体に平行のままである。印刷方向yに沿った可動くさび640の並進は、傾斜面630の調整方向zへの並進を伴う。この並進により、固定支持面31の中央部分310の高さを調整して、例えば、曲げによるたわみをキャンセルし、平坦性を回復することが可能になる。
【0124】
既に上で簡単に説明したように、プリンタ1は、好ましくは、基板9を移送装置3に付着した状態に維持するように適合された保持手段5を備える。特に、移送装置3がコンベヤベルト30を含む場合、保持手段5は、コンベヤベルト30に対して基板9を付着且つ固定された状態にするように適合されている。
【0125】
保持手段5の異なる実施形態を提供することが可能である。例えば、それらは、制御された方法で接着剤の層を移送装置3および/または基板9に塗布するための装置を含むことができる。この場合、印刷が終了すると、接着剤の残留物を基板9から除去するための装置を設けることが好ましい。
【0126】
別の実施形態によれば、保持手段5は、移送装置3と基板9との間に2つの異なる静電荷を生成するのに適したシステムを含むことができる。この場合、静電引力により、基板9を移送装置3に付着した状態に維持することが可能になる。
【0127】
添付の図に示される本発明の実施形態によれば、保持手段5は真空システム50を備える。真空システム50は、真空ボックス53を備え、真空ボックス53は、固定支持面31を構成する透かし壁531を備える。
【0128】
好ましくは、中央調整アセンブリ60は、真空ボックス53の外側に、クロスビーム20と真空ボックス53の中央部分530との間に、配置される。
【0129】
このようにして、中央調整アセンブリ60の配置および構成は、真空ボックス53の内部構造の影響を受けない。特に、印刷方向yに真空ボックス53を完全に横切る隔壁の存在は、中央調整アセンブリ60の配置および構成にいかなる影響も与えない。さらに、この解決策のおかげで、中央調整アセンブリ60の動作は特に効率的である。実際、真空ボックス53の中央部分530上で中央調整アセンブリ60によってもたらされる推力に続いて生じる拘束反応は、クロスビーム20によって直接対抗される。
【0130】
最後に、メンテナンスのために真空ボックス53を分解して取り外す必要がある場合に、真空ボックス53とともに傾斜面630のみが取り外され、中央調整アセンブリ60の残りの部分(特に調整ねじ66と可動くさび640)はプリンタ1に残る。これに関しては、特に
図9cの図を参照する。この特定の構成により、プリンタ1および特に真空ボックス530のメンテナンスを実行しやすくなる。
【0131】
本発明によるプリンタ1のいくつかの実施形態では、移送装置3は、コンベヤベルト30と、2つの固定支持面、すなわち、第1の固定支持面31および第2の固定支持面32を備える。既に上述した第1の固定支持面31は、好ましくは、印刷ヘッド41に配置される。第2の固定支持面32は、第1の固定支持面31について上述した技術的特徴の1つ以上を備えてもよい。特に、移送装置3の調整手段6は、印刷面xyに対する第2の固定支持面32の平坦性および/または正しい幾何学的配置を保証するように適合された1つ以上の調整アセンブリを含む。第1の固定支持面31に関して、第2の固定支持面32は、好ましくは、前進方向xに沿った最後尾の位置に配置される。これに関しては、特に
図2および3を参照する。
【0132】
当業者が十分理解できるように、本発明は、先行技術を参照して上記で強調した欠点を克服するという目的を達成する。
【0133】
この目的の範囲内で、本発明は、摺動移送装置を有し、既知の解決策で既に評価されている品質を維持し且つそれらの最適でない側面を改善する平坦性および幾何学的配置を調整するための手段を備えたプリンタを利用可能にする。
【0134】
特に、本発明は、プリンタの側壁によって提供される支持体の不整合を補償することを可能にする、摺動移送装置の平坦性および幾何学的配置を調整するための手段を利用可能にする。
【0135】
さらに、本発明によれば、摺動移送装置の平坦性および幾何学的配置を調整する手段は、効率的で使いやすい。
【0136】
最後に、本発明によれば、平坦性および幾何学的配置を調整するための手段を備えた摺動移送装置は、日常的なメンテナンスのために容易に取り外し可能である。
【0137】
例示的且つ非限定的な意図で、特定の特徴が本発明の様々な実施形態に関して説明されていることは明らかである。明らかに、偶発的且つ特定の要件を満たすために、当業者は本発明にさらなる修正および変更を加えることができる。例えば、本発明の実施形態に関連して説明された技術的特徴は、それから推定され、本発明の他の実施形態に適用されてもよい。しかしながら、そのような修正および変更は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0138】