(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】アセンブリ、燃料電池スタック、およびアセンブリの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0273 20160101AFI20220815BHJP
H01M 8/1004 20160101ALI20220815BHJP
H01M 8/0286 20160101ALI20220815BHJP
【FI】
H01M8/0273
H01M8/1004
H01M8/0286
(21)【出願番号】P 2020533347
(86)(22)【出願日】2018-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2018071476
(87)【国際公開番号】W WO2019048166
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-04-27
(31)【優先権主張番号】102017215504.3
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(73)【特許権者】
【識別番号】591037096
【氏名又は名称】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ギャラファー,エマーソン アール.
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-066766(JP,A)
【文献】特表2016-503230(JP,A)
【文献】特開2009-081115(JP,A)
【文献】特開2009-272287(JP,A)
【文献】特開2009-099531(JP,A)
【文献】特開2008-262847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0273
H01M 8/1004
H01M 8/0286
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタック(100)用のアセンブリ(10)であって、
極板(12)と、
極板(12)に接着的に接続されたフレーム(13)であって、極板(12)とは反対側に、フレーム(13)に接続された少なくとも1つのシール(14)を備えた、フレーム(13)と、
膜(24)と、その両側に配置された触媒と、それらの触媒の両側に配置されたガス拡散層(26)と、を備えた膜電極アセンブリ(22)であって、極板(12)および/またはフレーム(13)に固定されるとともに、その外側周辺領域が、フレーム(13)と極板(12)との間に少なくとも部分的に配置された、膜電極アセンブリ(22)と、
を備え、
極板(12)が凹部を有し、膜電極アセンブリ(22)は、膜(24)が極板(12)
の凹部以外の周辺領域の面上で平らになるように、凹部内に配置されることを特徴とする、アセンブリ(10)。
【請求項2】
フレーム(13)は、膜電極アセンブリ(22)に周方向に接着的に接続されることを特徴とする、請求項1に記載のアセンブリ(10)。
【請求項3】
膜電極アセンブリ(22)が、極板(12)に周方向に接着的に接続されることを特徴とする、請求項1または2に記載のアセンブリ(10)。
【請求項4】
フレーム(13)がフィルムフレームであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のアセンブリ(10)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のアセンブリ(10)を備えた燃料電池スタック(100)。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のアセンブリ(10)の製造方法であって、
フレーム(13)にシール(14)を製造し、
次いで、フレーム(13)の、極板(12)とは反対側にシール(14)を配置するように、フレーム(13)を極板(12)に接着接続する、
ステップを備えた、アセンブリ(10)の製造方法。
【請求項7】
接着接続は、接着剤(28)によって生じることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
シール(14)の製造が、該シール(14)をフレーム(13)上に成形することによって実行されることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極板とシールとを含む燃料電池スタック用のアセンブリに関する。さらに、本発明は、アセンブリを含む燃料電池スタック、およびアセンブリの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電気エネルギーを生成するために、燃料と酸素の水を生成する化学反応を利用する。この目的のために、燃料電池はコア成分として所謂膜電極アセンブリ(MEA)を含み、このアセンブリは、イオン伝導(通常はプロトン伝導)膜と、それぞれの場合に膜の両側に配置された触媒電極(アノードとカソード)と、からなる構造である。後者は通常、担持された希金属、特に白金を備える。加えて、ガス拡散層(GDL)を、膜電極アセンブリの両側における、電極の、膜とは反対側の側面に配置することができる。原則として、燃料電池は、スタック(燃料電池スタック)に配置された複数のMEAによって形成され、その電力が加算される。原則として、個々の膜電極アセンブリの間にバイポーラプレート(流れ場プレートまたはセパレータプレートとも呼ばれる)が配置され、個々のセルに作動媒体、すなわち反応物を確実に供給し、通常、冷却にも使用される。さらに、バイポーラプレートは、膜電極アセンブリとの導電性接触を保証する。燃料電池スタックのスタックマージンには、バイポーラプレートの代わりに、モノポーラプレートが配置される。バイポーラプレートは両側に反応物の流れ場を有し、モノポーラプレートは片側に反応物の流れ場を有する。バイポーラプレートとモノポーラプレートは双方とも、極板という用語に含まれる。
【0003】
燃料電池の作動中、燃料(アノード作動媒体)、特に水素H2または水素含有ガス混合物が、アノード側に開口する流れ場を介してアノードのバイポーラプレートに供給され、H2のプロトンH+への電気化学的酸化が、電子の放出とともに発生する(H2→2H++2e-)。反応空間を気密に互いに分離するとともに電気的に絶縁する電解質または膜を介して、アノード空間からカソード空間へのプロトンの(水が結合したまたは水なしの)輸送が行われる。アノードにもたらされた電子は、電線を介してカソードに供給される。カソード作動媒体としての酸素または酸素含有ガス混合物(たとえば、空気)が、カソード側に開口するバイポーラプレートの流れ場を介してカソードに供給され、それにより電子の取り込みを伴うO2からO2-への還元が生じる(1/2O2+2e-→O2-)。同時に、カソード空間では、酸素アニオンが膜を介して輸送されたプロトンと反応して、水が形成される(O2-+2H+→H2O)。
【0004】
燃料電池スタックへの作動媒体、つまりアノード作動ガス(例えば、水素)、カソード作動ガス(例えば、空気)、および冷却剤の供給は、積層方向全体に亘ってそのスタックを通過する主供給チャネルを介して行われ、それらのチャネルにより、作動媒体がバイポーラプレートを介して個々のセルへと供給される。各作動媒体に対して、少なくとも2つのそのような作動媒体チャネル(主供給チャネル)が存在する。すなわち、一つは作動媒体を供給し、一つは作動媒体を除去するためのものである。
【0005】
燃料電池スタックの個々のセルのシールを、射出成形法によって膜電極アセンブリまたは燃料電池スタックの極板に直接成形することが知られている。
【0006】
ここで、シールは、膜電極アセンブリのフレーム上に成形され得る。一方、フレームのために、大量のプラスチック廃棄物が生成される。さらに、触媒被覆膜(CCM)の不十分な使用しか達成されず、コストが増加する。さらに、フラッシュカット(flush-cut)膜電極アセンブリ上にシールを成形することが知られている。しかしながら、前記のアセンブリは、特に多数の部品を備えた燃料電池スタックの組立時の位置決めを困難にする柔軟な縁部を有する。
【0007】
シールが極板に直接成形されている場合、これは比較的薄いプレートに高い応力をもたらす。したがって、成形には、比較的複雑な射出成形金型および厚くなりがちなプレートが必要となる。
【0008】
したがって、シールの成形は、比較的高い出力密度の用途に必要な比較的薄い極板と適合しないように思われる。これは、シールが膜電極アセンブリ上に成形されているという点でこれまで考慮されてきた。これは、膜電極アセンブリが比較的弾力性があり、応力を吸収できるために可能であった。ただし、結果として得られるコンポーネント部品は、取り扱いや組み立てが困難である。シールは、積層膜電極アセンブリに成形することもできる。しかし、両側に対称的に形成されたシールをほとんど無駄なく適用することは非常に困難である。
【0009】
特許文献1は、燃料電池スタック用のバイポーラプレートアセンブリを開示している。少なくとも1つのシーリング要素が、バイポーラプレートアセンブリの少なくとも1つの側面に適用される。2つのプレートの少なくとも一方は、プレートに少なくとも1つのシーリング要素を固定するように設計されたロック要素を含む。ロック要素を含む領域では、少なくとも1つのシーリング要素の一部が2つのプレート間の間隙に配置される。シーリング要素の材料は、射出成形によってプレートに適用される。
【0010】
公開された特許文献2もまた、射出成形によるバイポーラプレートブランクの表面側へのシールの適用を開示している。そのシールは、入口および/または出口領域を完全に囲む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】独国特許出願公開第102015015392号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015004803号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の根底にある目的は、燃料電池スタックの製造と組み立てを簡素化する解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、独立請求項の特徴を有するアセンブリによって達成される。
【0014】
本発明によれば、燃料電池スタック用のアセンブリが提供される。アセンブリは、極板と、極板に接着的(cohesively)に接続されたフレームとを備え、フレームは、極板から離れた側に、フレームに接続された少なくとも1つのシールを含む。
【0015】
本発明により、少なくとも1つのシールを有する極板が提供され、これにより、燃料電池スタックの連続生産、比較的薄い極板、および膜電極アセンブリの高度の利用が可能になる。これは、シールが極板に直接成形されるのではなく、フレームを介して極板に適用されるため、可能となる。それにより、極板の電圧ピークが防止される。
【0016】
好ましくは、フレームはプラスチックフィルムである。さらに、フレームは電気絶縁性であることが好ましい。特に、フレームはプラスチックフィルムである。フレームは、フィルム、特にラミネートフィルムとも呼ばれる。特に、シールの材料は、シリコーン、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM Ethylene Propylene Diene; Mグループ)、または燃料電池に適した別のシール材料である。特に、フレームは、シール以外の材料を含み、フレームとシール材料は、達成する目的に関して選択することができる。接着接続(cohesive connection)は、特に、接続部が材料を極板に周方向に密封して接続するように形成される。接着接続とは、原子または分子の力によって接続パートナーが互いに結合している接続のことである。この出願で言及されている接着性の接続は、特に接着(bonds)であり、接着用の接着剤として、特に熱可塑性プラスチックまたはエポキシドが使用される。
【0017】
好ましくは、アセンブリは、極板および/またはフレームに固定される膜電極アセンブリを備えることが提供される。極板および/またはフレームの「固定される」とは、極板および/またはフレームに「保持される」ことを意味する。したがって、アセンブリが積層されるという点で、燃料電池スタックを形成するために特に簡単な方法で組み立てることができるアセンブリが作成される。膜電極アセンブリは極板および/またはフレームに固定されているため、組立時の、極板および/またはフレームに対する膜電極アセンブリの正しい位置決めが保証される。膜電極アセンブリは、特に膜、好ましくは触媒被覆膜(CCM)を含む。加えて、膜電極アセンブリは、膜の両側に配置されたガス拡散層を含むことができる。ガス拡散層は、特に、接着的に膜に接続することができる。フレームは、特に片側のみにシールを備えているため、両側にシールを製造する場合の問題は回避される。
【0018】
好ましくは、膜電極アセンブリの外側周辺領域は、フレーム、特にフレームの内側周辺領域と極板との間に少なくとも部分的に配置されることが提供される。したがって、膜電極アセンブリは、極板に確実にロックする方法で固定される。
【0019】
好ましくは、膜電極アセンブリは、極板上に固定され、膜電極アセンブリは、フレームおよび/または極板に接着的に接続される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、フレーム、特にフレームの内側周縁領域は、膜電極アセンブリに、膜電極アセンブリの外側周縁領域に周方向に接着結合されることが提供される。したがって、膜電極アセンブリは、極板上に固定されるだけでなく、さらに、膜電極アセンブリの2つの対向する側面の互いに対する周方向の密封が確保される。この目的のために、フレームは、膜電極アセンブリの膜に周方向に接着的に接続されることが好ましい。
【0021】
本発明の追加の好ましい実施形態によれば、膜電極アセンブリ、特に膜電極アセンブリの外側周辺領域は、極性板に周方向に接着的に接続されることが提供される。これは、膜電極アセンブリの2つの対向する側面の互いに対する周方向の密封を保証するための代替または追加の可能性を表す。
【0022】
さらに、本発明によるアセンブリを含む燃料電池スタックが提供される。燃料電池スタックは、特に、本発明による複数の積層アセンブリを含み、それらのアセンブリの間に中間層が配置されないことが好ましい。取り扱いが容易なアセンブリにより、燃料電池スタックを特に簡単な方法で製造することができる。
【0023】
さらに、本発明による燃料電池スタックを含む車両が提供される。車両は、特に、燃料電池システムの燃料電池によって電気エネルギーが供給される車両を駆動するための電気モーターを備える。したがって、車両は燃料電池車とも呼ばれる。
【0024】
さらに、本発明によるアセンブリを製造するための本発明による方法が提供され、この方法は、フレーム上(フレームの領域内)にシールを製造するステップを備える。さらに、この方法は、極板とは反対側のフレームの側面にシールが配置されるように、極板にフレームを接着接続する後続のステップを備える。
【0025】
フィルムは、極板とは反対側のフレームの側面にのみ少なくとも1つのシール、つまり片側に配置、特に成形されたシールを含むため、その両側にシールを成形することができるように射出成型時に圧力を調整または補正しようとする際に発生する問題を回避することができる。
【0026】
好ましくは、接着接続は接着剤によって行われることが提供される。特に、フレームまたは極板は接着剤で(事前に)コーティングされている。好ましくは、フレームは、自己接着(self-adhesive)フレーム、特に接着フィルムのフレームである。さらに、フレーム上のシールの製造を簡素化するために、極板を接着剤でコーティングすることができる。接着剤によるコーティングは、プレスすることによって生じうる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、シールの製造は、シールをフレーム上に成形することにより実行されることが提供される。したがって、すでに実証済みの射出成形法をシールの製造に使用することができる。
【0028】
好ましくは、この方法は、極板上に膜電極アセンブリを配置するステップを備えることが提供される。その工程またはその後で、膜電極アセンブリを極板に固定することができる。
【0029】
この目的のために、フレームの極板への接着接続のステップ中に、フレームの膜電極アセンブリへの接着接続が生じることが好ましい。したがって、フレームと膜電極アセンブリとの間にシール、特に周方向シールを生成することができる。
【0030】
代替的または付加的に、この方法は、膜電極アセンブリを極板に接着接続するステップを備えることが好ましい。したがって、極板と膜電極アセンブリとの間の周方向のシールが生成される。
【0031】
本発明の追加の好ましい実施形態は、従属請求項に記載された残余の特徴に起因する。
【0032】
本願で言及された本発明の異なる実施形態は、個々の場合において特段の指示がない限り、有利に互いに組み合わせることができる。
【0033】
本発明は、関連する図面を参照しながら実施形態の例に以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】好ましい実施形態による燃料電池スタックを示す図である。
【
図2】アセンブリの第1の好ましい実施形態の個々のコンポーネントを示す図である。
【
図3】アセンブリの第1の好ましい実施形態を示す図である。
【
図4】アセンブリの第2の好ましい実施形態の個々のコンポーネントを示す図である。
【
図5】アセンブリの第2の好ましい実施形態を示す図である。
【
図6】アセンブリの第3の好ましい実施形態の個々のコンポーネントを示す図である。
【
図7】アセンブリの第3の好ましい実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、概略図で、好ましい実施形態による100で示される燃料電池スタックを示す。燃料電池スタック100は、燃料電池スタック100によって電気エネルギーが供給される電気牽引モーターを備える、特に詳細には示されていない車両、特に電気自動車の一部である。
【0036】
燃料電池スタック100は、複数の(積層された)アセンブリ10を備え、これらのアセンブリ10は、その平坦な側面に交互に一列に(積層されて)配置されている。アセンブリ10はそれぞれ、極板12および少なくとも1つのシール14を含む。さらに、アセンブリはそれぞれ、膜電極アセンブリ(この図では見えない)を含むことができる。
【0037】
したがって、全体として、複数の積層されたアセンブリ10または個々のセル11は、燃料電池スタック100を形成し、個々のセル11の1つおよび全体としての燃料電池スタック100の両方を燃料電池と呼ぶことができる。
【0038】
極板12は、膜電極アセンブリ10の間に配置される限り、バイポーラプレートとして形成することができる。燃料電池スタック100のエンドプレート16に最も近く配置される2つの極板12は、モノポーラプレートと呼ばれる。極板12とそれぞれの膜電極アセンブリとの間に、図示されていないアノードおよびカソード空間が配置され、これらは周囲シール14によって区切られる。とりわけ、シール14のシール機能を確立するために、燃料電池スタック100は、クランプ装置18によってスタック方向Sに一緒に押圧される(圧縮される)。この目的のために、クランプ装置18は、2つのエンドプレート16間に引張力を伝達し、エンドプレート16は、この目的のために、クランプ装置18は、燃料電池スタック100のスタック方向Sに延びる。さらに、燃料電池スタック100は、2つの集電装置20を含む。
【0039】
図2は、アセンブリ10の第1の好ましい実施形態の個々の構成要素を示す。アセンブリ10は、個々の構成要素として、極板10、例えばバイポーラプレートまたはモノポーラプレートを含む。さらに、アセンブリは、ラミネートフィルムであってもよいフレーム13を含む。フレーム13には、複数のシール14または1つ≡≡の(共通の)シール14のみが接続されている。以下では、「シール(seal)」と「複数のシール(seals)」という用語は同義語として使用する。アセンブリ10はさらに、膜24と、膜24の両側に配置された触媒(明示せず)とを含む膜電極アセンブリ22を含むことができる。膜24は、触媒被覆膜22(CCM)として形成できる。さらに、膜電極アセンブリ22は、膜24の両側に配置されたガス拡散層26を有することができる。ガス拡散層26は、膜24に接着することができる。
【0040】
シール14は、例えば、シリコーンゴムまたはエチレンプロピレンジエンゴム(エチレンプロピレンジエン; Mグループ、EPDM)から製造することができる。
【0041】
アセンブリ10を製造するために、まず、フレーム13上にシール14を成形することにより少なくとも1つのシール14が製造される。通常、これは、射出成形プロセス(液体射出成形、LIM)の射出成形で生じる。少なくとも1つのシール14は、単一のシールまたは複数の別個のシールを含むことができる。シール14は、フレーム13の片側のみに成形(形成)されるため、射出成形プロセスが簡略化される。
【0042】
膜24および極板12に面するガス拡散層26を含む膜電極アセンブリ22は、極板12上に配置される。膜24およびガス拡散層26は既に接着されていてもよい。極板12から離れる側を向くガス拡散層26は、(周方向に)他のガス拡散層26よりもわずかに小さい設計であり、膜24上に配置される。あるいは、2つのガス拡散層26を膜に予め接着することもできる。極板12に面する膜24の側はアノード側であり、膜24のもう一方の側はカソード側を形成する(またはその逆)。
【0043】
フレーム13の極板12への接着接続が生じるのは、フレーム13上にシール14が製造された後、特に、シール14がフレーム13の極板12から離れる方向を向いた側に配置されるように製造された後のみである。
【0044】
図2および
図3に示す本発明の第1の好ましい実施形態によれば、この目的のために、シール14の製造の前または後にフレーム13に接着剤28をプレコートすることができる。接着剤28は熱可塑性接着剤であってもよい。熱可塑性接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むことができる。そのようなポリフッ化ビニリデンは、例えば、アルケマ(Arkema)社のキナー(Kynar)という商品名で知られている。
【0045】
接着接続のために、フレーム13はシール14とともに極板12および膜電極アセンブリ22上に配置または押圧され、加熱され、それにより熱可塑性接着剤が極板12に接続される。接着剤28は片側のフレーム13と極板12との間ならびに反対側の膜24との間の周方向接着接続(27)を表す。ここで、接着剤28は、極板12とは反対側の膜24の側に対して周方向にフレーム13を封止し、膜電極アセンブリ22を固定する。極板12とは反対側のガス拡散層26は接着剤28によって固定される。
【0046】
図3では、それにより、燃料電池スタック100用のアセンブリ10が製造され、これは、極板12およびフレーム13を含むことが分かる。フレーム13は、極板12に接着するように接続され、極板12の反対側には、フレーム13に接続された少なくとも1つのシール14を備える。さらに、アセンブリ10は、極板12に固定された膜電極アセンブリ22を含み、膜電極アセンブリ22の外側の周辺領域は、フレーム13の内側周辺領域と極板12との間に少なくとも部分的に配置される。フレーム13の内側周辺領域は、接着剤28により膜電極アセンブリ22の外側周辺領域に周方向に接着結合される。
【0047】
したがって、シール14は、有利に製造可能な支持体、すなわち、シール14を極板12に接着するために使用されるフレーム13上に製造することができる支持体上に配置されている。それにより極板12には相対的に僅かな応力しか生じない。
【0048】
さらに、フレーム13は、膜電極アセンブリ22を極板12に接合してアセンブリ10を形成するために使用することができる。この目的のために、膜電極アセンブリ22の個々の構成要素は、極板12に関する切断後すぐに整列させることができ、それにより、最適な位置合わせが行われ、無駄が最小限に抑えられる。極板12自体は、複数の個別の板(図示せず)を有することができる。接合されたアセンブリ10により、燃料電池スタック100は特に簡単な方法で組み立てることができる。加えて、膜電極アセンブリ、特に触媒被覆膜24の材料の高度な利用が達成される。
【0049】
図4は、アセンブリ10の第2の好ましい実施形態の個々の構成要素を示し、
図5は、完成した製造状態のアセンブリ10の第2の好ましい実施形態を示す。示される実施形態は、以下に言及される点を除いて、
図2および3に示される実施形態に対応する。この実施形態により、(CCMの)膜24の材料の潜在的に改善された利用が達成される。
【0050】
第1に、接着剤28の追加の層が、極板12上に適用、例えば、プレスされる。接着剤28は、熱可塑性接着剤またはエポキシ(樹脂)とすることができる。これらの接着剤は、原則として、言及したすべての実施形態に適している。続いて、周方向にわずかに小さい寸法を有するガス拡散層26が、極板12、特に極板12の凹部に配置される。
図3に示す膜電極アセンブリ22は、膜24が極板12と面一に配置されるように極板12の凹部に配置することもできる。ここで、ガス拡散層26は、極板12に適用された接着剤28の境界内に配置される。より大きいため、すでに配置されたガス拡散層26に比較して周方向に突出する膜24(CCM)と、第2のガス拡散層26と、が次いで極板12上に配置される。膜24および第2のガス拡散層26は、予め接着することができる。同様に、2つのガス拡散層26および膜24を含む膜電極アセンブリ22全体を予め接着することができ、その結果、膜電極アセンブリ22のみが全体として極板12上に配置される必要がある。
【0051】
上述の実施形態の製造とは異なり、膜電極アセンブリ22は、次に、極板12に周方向に接着的に接続される。したがって、接着剤28は、周方向の接着接続(27)をもたらし、したがって、膜電極アセンブリ22の膜24の外側周縁領域と、極板12との間のシールをもたらす。続いてまたは同時に、再び接着剤28またはアセンブリ10全体が設けられたフレーム13が加熱され、熱可塑性接着剤28が、フレーム13と極板12との間に正のロック結合をもたらす。同時に、フレーム13は、ガス拡散層26および膜24が極板12上に保持されるように、極板12とは反対側を向くガス拡散層26にも接着される。
【0052】
図2および3に示す実施形態とは対照的に、フレーム13は膜24に接着されていない。フレーム13の中央開口部を、フレーム13が、極板12から離れる方向に面する拡散層26を極板12上で保持しない点まで広げることも可能である。膜24と極板12との間、ならびに膜24と極板12から離れて面するガス拡散層26との間の接着接続(27)により、膜電極アセンブリ22は、それにもかかわらず、極板12上に保持される。
【0053】
図6は、アセンブリ10の第3の好ましい実施形態の個々の構成要素を示し、
図7は、組み立てられた状態のアセンブリ10の第3の好ましい実施形態を示す。示される実施形態は、以下に言及される相違点を除いて、
図4および5に示される実施形態に対応する。
【0054】
上記の2つの実施形態では、シール14は熱可塑性接着剤28でコーティングされたフレーム13(ラミネートフィルム)に成形される。これには、接着剤28の溶融温度より低い成形温度、あるいは、例えば、金型が接着剤28を封入するという点で金型が接着剤を溶融し、流すのに適している成形温度のいずれかを要する。
【0055】
この実施形態によれば、既に述べた接着剤28の1つが、例えば押圧されて、極板12に適用される。ここで、接着剤28は、例えば、個々のセル11に作動媒体を供給するために使用される作動媒体チャネル30、および極板12の外側周辺領域など、シールされる領域の周りに塗布される。さらに、接着剤28は、
図4および
図5から分かるように、極板12に面するガス拡散層26が挿入される極板12の凹部の周囲(膜電極アセンブリ22の後の周囲)に周方向に適用される。
【0056】
それにより、シール14は、唯一の構成要素としてプラスチックフィルムのみを有するフレーム13上に再び鋳造(成形)することができる。これは、極板12上へのシール14の直接成形よりも製造するのが潜在的に容易である。次いで、シール14と共にフレーム13を極板12に接着結合(接着)する。膜電極アセンブリ22も同様に、接着剤28を用いることにより極板12に接着結合される。
【0057】
膜電極アセンブリ22の活性領域を覆わないように使用されるフレーム13の窓は、極板12とは反対側を向くガス拡散層26が、極板12(
図7参照)に保持(固定)されるような寸法にすることができる。
図4および
図5の直前の実施形態に関して既に述べたように、窓は、フレームが極板12とは反対側のガス拡散層26のわずかに外側で終わる点まで拡大することもできる。
【0058】
全体として、本発明は、高出力密度のための比較的薄い構成要素が、同時に多数の部品を用いた連続生産に適していることを可能にする。
さらに、実施形態の解決策は互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0059】
10…アセンブリ
11…個々のセル
12…極板(polar plate)
13…フレーム
14…シール
16…エンドプレート
18…引張り(pulling)装置
20…集電体
22…膜電極アセンブリ
24…膜/触媒被覆膜
26…ガス拡散層
27…接着接続
28…接着剤
30…作動媒体チャネル