(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンの燃料系統における必要な圧力および燃料流量の創出方法
(51)【国際特許分類】
F02C 9/28 20060101AFI20220815BHJP
F02C 7/236 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
F02C9/28 A
F02C7/236
(21)【出願番号】P 2020541334
(86)(22)【出願日】2018-10-03
(86)【国際出願番号】 RU2018000646
(87)【国際公開番号】W WO2019070160
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-06-05
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】520121315
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー“ユナイテッド エンジン コーポレーション”(ジェイエスシー“ユーイーシー”)
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ロシク,ミハイル ヴィクトロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】サヴェンコフ,ユリ セミョーノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】リソヴィン,イゴール ゲオルギェヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ルカビシュニコフ,ヴィアチェスラフ イヴギェーニイェヴィチュ
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0139123(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0293919(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0192244(US,A1)
【文献】特開2006-083864(JP,A)
【文献】特表2008-530442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0235631(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0138473(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第02573585(GB,A)
【文献】米国特許第9206775(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 1/00- 9/58
F23R 3/00- 7/00
B64B 1/00- 1/70
B64C 1/00-99/00
B64D 1/00-47/08
B64F 1/00- 5/60
B64G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気駆動燃料ポンプ、機械駆動燃料ポンプ、燃料流量計量/分配装置、制御装置および複数の変換器を含む航空機のガスタービンエンジンの燃料システムにおける必要な燃料圧力および必要な燃料流量の創出方法であって、
a)ガスタービンエンジンロータの最大回転数の40%まで、前記電気駆動燃料ポンプが前記燃料システムおよび前記ガスタービンエンジンを運転することで、前記電気駆動燃料ポンプは(i)前記ガスタービンエンジンの燃焼室に前記必要な燃料流量を全て供給すること、および、(ii)油圧駆動の燃料分配装置を作動させるために前記必要な燃料圧力と前記必要な燃料流量とを発生させること、を少なくとも実行し
b)前記ガスタービンエンジンロータの最高回転数の40%から、前記ガスタービンエンジンの始動段階を終了し、グランドアイドルモードに到達するまで、前記電気駆動燃料ポンプが、(i)前記電気駆動燃料ポンプの現在の回転数を徐々に減少させること、かつ、(ii)前記電気駆動燃料ポンプの排出口から前記燃料システムの注入口までの燃料バイパスを開くこと、を少なくとも実行することによって前記電気駆動燃料ポンプを流れる燃料流量を徐々に減少させ、前記機械駆動燃料ポンプは前記ガスタービンエンジンに前記必要な燃料流量を供給し、徐々に減少する前記電気駆動燃料ポンプからの前記燃料流量を補填し、
c)前記ガスタービンエンジンの前記始動段階が完了し、前記グランドアイドルモード中に、(i)燃料ヘッドが減少したとき、前記電気駆動燃料ポンプを独立待機モードに切換えること、および/または、(ii)前記電気駆動燃料ポンプを停止させること、の少なくとも1つが実行され、
d)前記機械駆動燃料ポンプは、(i)前記ガスタービンエンジンがアイドルモードで運転されている場合、および(ii)前記ガスタービンエンジンロータの回転数が前記アイドルモードにおける回転数を超える他のモードで前記ガスタービンエンジンが動作する場合において、前記ガスタービンエンジンの前記燃焼室に前記必要な燃料流量を供給するために使用され、前記油圧駆動の燃料分配装置に前記必要な燃料圧力を発生させるために使用され、
e)前記ガスタービンエンジンの回転数が前記アイドルモードにおける回転数を越えて、かつ、(i)前記機械駆動燃料ポンプの前記注入口または前記排出口に十分な燃料圧力がない場合、または、(ii)前記機械駆動燃料ポンプの前記注入口での燃料温度が+10℃未満になった場合、において前記電気駆動燃料ポンプを起動し、および/または、回転数を上げて、燃料圧力と温度とを十分に高く維持する、
ガスタービンエンジンの燃料システムにおける必要な燃料圧力および必要な燃料流量の創出方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明は、航空機のガスタービンエンジン(GTE)の燃料システムにおける、必要な圧力および燃料の流量の創出方法に関する。
【0002】
ガスタービンエンジンの燃料供給システムは、(1)入力がエンジンパラメータおよびフライトモードの複数の変換器に接続されている電子制御装置、(2)高圧電気ポンプ、および、(3)計量装置を含み、これらが直列に接続されているものが知られている。大きな推力に対するシステムの欠点は、(1)電気ポンプの過度の重量および寸法特性、(2)GTEの信頼性が、飛行臨界モード(離着陸)での電気駆動ポンプの電力供給の質に依存すること、(3)電気駆動ポンプの電力供給源および二次電力供給変換器からの高出力と高信頼性の必要性、および、(4)長期耐用年数中におけるGTE運転の場合での高負荷ポンプ電気駆動の十分な信頼性の供給の困難性である(特許RU No.2329387,2008年7月20日に公開、IPC F02C9/26)。それゆえ、飛行機GTEの最も広く普及している燃料システムは、重量およびサイズに関して大きな利点を有し、実証された高い信頼性を有する機械駆動燃料ポンプが装備されている。
【0003】
請求された発明に最も類似するものは、電気燃料ポンプ、ギアボックスからの機械駆動燃料ポンプ、燃料計量/分配装置、制御装置、複数の変換器を含む、GTE補助動力ユニットの燃料システムの動作方法である。類似発明では事実として、機械駆動燃料ポンプの回転速度が、必要な燃料の流量を確保することが十分でない場合では、電気燃料ポンプの稼働率および動作を犠牲にして、1-8%のGTE回転速度で燃料をGTE燃料室へ供給する。また、GTE回転速度が8%より多い場合では、制御装置は電気燃料ポンプを切り、機械駆動燃料ポンプの動作により、燃料が燃焼室に供給される(米国特許第9206775号、IPC B64D37/34号、F02C7/236号、F02M31/16号、F02M37/00号、2015年12月08日公開)。
【0004】
公知のGTE補助動力ユニットの燃料システムの欠点は、事実として、推進モータの設計に対する類似のアプローチの効率的な応用とともに、制御された容量(電気駆動燃料ポンプ)および制御されない容量(機械駆動燃料ポンプ)を用いた2つの燃料ポンプ動作モードの組み合わせが必要となることである。
【0005】
本発明が目的とする解決方法に対する技術的課題は、(1)推進航空機GTEにおける、異なる駆動形式の2つの燃料ポンプの利点の効的な使用、これらのポンプの欠点の最小化、および、燃料ポンプの高い特性および最適なパラメータの取得、(2)GTE運転開始期間の燃焼室点火の段階における、高圧圧縮機回転数に関する、燃料の流量および圧力の制限の排除、(3)(アイドル、フライトアイドル、巡航飛行に代表される)低燃料率でのメインモードにおける、制御されない容量(機械駆動)による燃料ポンプからの燃料の予熱の低減、(4)「エンジン失速」機能故障に関する、エンジン故障保障の向上、(5)燃料ポンプの長期寿命達成のための条件の提供、および、(6)燃料ポンプの最適な重量および寸法パラメータの取得にある。
【0006】
上記の技術的問題は、以下に示す、ガスタービンエンジンの燃料システムにおける燃料の圧力および流量の創造方法によって解決される。すなわち、ガスタービンエンジンの燃料システムにおける燃料の圧力および流量の創出方法であって、(1)前記燃焼システムが電気駆動ポンプと、ギアボックスによる機械駆動ポンプと、燃料計量/分配装置と、制御装置と、複数の変換器とを含み、(2)燃料システムおよびガスタービンエンジン動作は、ガスタービンエンジンロータの最大回転数の40%までの電気駆動ポンプから提供され、(i)電気駆動燃料ポンプの回転数は徐々に減少されること、および、(ii)電気駆動ポンプの排出口から燃料システムの注入口への燃料のバイパスが開放されること、の少なくともいずれか1つが行われており、(3)GTE回転数が40%を超える場合、必要な燃料流量は、燃焼室への必要な流量を除いて、燃料システムにおける電気駆動燃料ポンプの動作モードにおいて、機械駆動燃料ポンプおよび電気駆動燃料ポンプによって、提供され、更に、油圧駆動装置および燃料配分装置のために必要な燃料圧力および流量が提供され、(4)ガスタービンエンジンの運転開始後、かつ、GTEがアイドルモードに到達した後、電気駆動ポンプが圧力を減少させた(ヘッドを減少させた)独立待機モードかまたはオフに切り替えられ、(5)グランドアイドルモード、ならびに、GTEロータおよび機械駆動燃料ポンプ駆動シャフトの回転数がグランドアイドルモードを超える全てのエンジン動作モードは、GTE燃焼室への必要な燃料の流量供給、および、油圧駆動装置のための必要な燃料の圧力創出のための機械駆動燃料ポンプの動作によって確保され、更に、40%を超えるGTEロータ回転数でのGTE動作モード時、および、機械駆動燃料ポンプの注入口および排出口での不十分な燃料圧力の条件の発生時には、機械駆動ポンプの注入口での燃料温度が10℃未満である時と同様に、電気駆動燃料ポンプのロータ回転数が始動および/または上昇し、燃料の圧力および温度が必要なレベルに維持される。
【0007】
燃料システムおよびガスタービンエンジンの動作に関する提案された発明は、電気駆動燃料ポンプから、GTEの最大回転数の40%までの燃料供給を確保する。
(1)(i)電気駆動燃料ポンプの回転数は徐々に減少されることと、および、(ii)電気駆動ポンプの排出口から燃料システムの吸入口への燃料のバイパスが開放されることの、少なくともいずれか1つが行われており、(2)GTEロータの回転数が40%を超える場合、必要な燃料流量は、供給源によって機械駆動燃料ポンプおよび電気駆動燃料ポンプから提供され、(3)電気駆動燃料ポンプの動作段階において、必要な燃料供給から燃焼室への燃料供給を除いて、油圧駆動装置および燃料分配装置の動作のために、必要な燃料の圧力および流量を確保し、(4)GTE始動完了後、およびGTEアイドルモードに到達した後に、電気駆動燃料ポンプが、圧力を減少させた(ヘッドを減少させた)独立待機モードかまたはオフに切り替えられ、(5)グランドアイドルモード、ならびに、GTEロータおよび機械駆動燃料ポンプ駆動シャフトの回転数がグランドアイドルモードを超える全てのエンジン動作モードは、GTE燃焼室への必要な燃料の量の供給、ならびに、油圧駆動装置の動作のためのひつような燃料の流量および圧力の創出のための機械駆動燃料ポンプによって確保され、さらに、40%を超えるGTEロータ回転数でのGTEモード時、および機械駆動燃料ポンプの注入口および排出口での不十分な燃料圧力の条件の発生時には、機械駆動ポンプの注入口での燃料温度が+10℃未満である時と同様に、電気駆動燃料ポンプのロータ回転数が始動および/または上昇し、燃料の圧力または温度が、飛行機推進エンジンでの異なる駆動による燃料ポンプの利点の使用を効率的に可能にする、必要なレベルに維持される。
【0008】
図1は、GTE燃料システムにおける必要な圧力と流量の創出を示す概略図である。
【0009】
GTE燃料システムにおける必要な圧力および流量の創出方法は次のように実施される。電気駆動燃料ポンプ1は、(図示しない)GTEの開始の初期期間において、メインポンプとして使われ、(図示しない)燃焼室への燃料供給プロセスを確保し、エンジン始動のための油圧駆動装置の動作のために作動油(燃料)を供給する。
【0010】
エンジン始動の初期期間における、ギアボックス5による機械駆動燃料ポンプ2は、閉鎖ループで動作する。ポンプ回転数が増加し、エンジンがアイドルモードに到達するまでの間には、燃料供給プロセスへの機械駆動燃料ポンプ2の接続は、円滑である。これに伴い、電気駆動燃料ポンプ1の利用容量はそれぞれ減少する。
【0011】
高いGTEロータおよび機械駆動燃料ポンプ駆動シャフト2の回転数を伴う、グランドアイドルおよび全てのエンジンモードは、必要な燃料流量をエンジン燃焼室に供給し、油圧駆動装置の動作のための必要な作動油の圧力の創出を行う機械駆動燃料ポンプ2の動作によって完全に保証されている。これにより、エンジンの要求に依存して、電気駆動燃料ポンプ1は、切られたり、より減少した供給において閉鎖ループで動作したり、燃焼室の燃料供給に接続されたり、特定の状態において必要な燃料の圧力および温度パラメータを、維持するのに使用され得る。
【0012】
制御装置4は、複数の変換器6の計測値の読込値を使用し、電気駆動燃料ポンプ1と燃料計量/分配装置3との接続および動作モードを制御する。燃料計量/分配装置3は、燃焼室への燃料の計測と、燃料システムにおける燃料配分を提供する。
【0013】
それゆえに、上述の特徴を有する提案した発明の実施は、(1)ガスタービンエンジンの運転始動時における回転数に基づく燃料の流量と圧力の限界の排除を可能にし、(2)低燃料流量を伴うメインモードにおける、燃料ポンプからの、機械駆動燃料ポンプによる制御されない容量による燃料余熱の影響を減少させ、(3)「エンジン失速」機能故障に関するエンジン故障安全性を上昇させ、(4)ガスタービンエンジンにおける互いに異なる動作モード間の機能配分を犠牲にすることで、燃料ポンプの長期寿命の達成ための条件の提供が可能となり、(5)燃料ポンプの最適な重量および寸法パラメータを獲得する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】GTE燃料システムにおける必要な圧力と流量の概略図である。