(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】駆動機構の制御システム
(51)【国際特許分類】
E02B 7/20 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
E02B7/20 102
(21)【出願番号】P 2021009390
(22)【出願日】2021-01-25
(62)【分割の表示】P 2019150621の分割
【原出願日】2016-09-06
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591073337
【氏名又は名称】株式会社丸島アクアシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100119390
【氏名又は名称】竹中 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】半田 英明
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-069810(JP,A)
【文献】特開2002-285533(JP,A)
【文献】特開2014-125762(JP,A)
【文献】津波・高潮対策における水門・陸閘等管理システムガイドライン,Ver.3.0,農林水産省、国土交通省,2015年04月,4-2、4-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉部を開放位置で係止し、前記扉部を閉鎖する場合、扉部の係止状態を解除し、ウエイトの質量に起因する重力によって、前記扉部を閉鎖する向きに自動的に駆動するように構成される駆動機構と
、
前記扉部を開閉するように前記駆動機構を制御するための制御装置と、
により構成され、
前記駆動機構は、前記ウエイトとして主ウエイトと補助ウエイトとを含み、
前記主ウエイトと前記補助ウエイトとの連結を可能とする連結部材を有し、
鉛直最上方に位置する前記主ウエイトの鉛直下方に間隔をおいて1以上の前記補助ウエイトが連結され、
駆動開始時点においては、全ての前記ウエイトは、その重量を利用して駆動し、
前記扉部が動き出した後は、複数の前記ウエイトの連結が鉛直下方側から解除され、鉛直最上方に位置する前記ウエイトがその重量を利用して駆動するように構成され
ていることを特徴とする、駆動機構の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記ウエイトおよび前記扉部の前記係止状態を維持するためのバッテリーを含み、
遠隔操作又は全国瞬時警報システムからの情報、速報、注意報、若しくは警報に応じて、前記バッテリーを利用して前記ウエイトおよび扉部の係止状態を解除するように制御されることを特徴とする、
請求項1に記載の駆動機構の制御システム。
【請求項3】
前記バッテリーは、商用電源、発電機、およびソーラーパネルのうちの少なくとも1つによって充電される、請求項
2に記載の駆動機構の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
全国瞬時警報システムからの信号と、携帯電話又は携帯タブレットからの無線信号と、リモコン等からの有線信号又は無線信号とを受信するように構成されている、請求項1
ないし請求項
3のいずれかに記載の駆動機構の制御システム。
【請求項5】
カメラと、回転灯・チャイムと、挟まれ防止センサーと、障害物センサーとが使用できるように構成され、避難する人が前記扉部に挟まれることを回避できる安全装置として機能するように構成されている、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の駆動機構の制御システム。
【請求項6】
前記駆動機構は、前記ウエイトとして主ウエイトと補助ウエイトとを含み、
前記主ウエイトと前記補助ウエイトとの連結を可能とする連結部材を有し、
鉛直最上方に位置する前記主ウエイトの鉛直下方に間隔をおいて1以上の前記補助ウエイトが連結され、
駆動開始時点においては、全ての前記ウエイトは、その重量を利用して駆動し、
前記扉部が動き出した後は、前記主ウエイトと1以上の前記補助ウエイトとの掛止が逐次解除され、複数の前記ウエイトの連結が鉛直下方側から逐次解除され、鉛直最上方に位置する前記ウエイト及び当該ウエイトに連結するウエイトがその重量を利用して駆動するように構成されていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の駆動機構の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、例えば種々の扉、門又はゲートの開閉に使用できる駆動機構の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、横引き扉タイプの防潮ゲートにおいて、小型の防潮ゲートの場合は、手動で開閉操作が実施されている。また、中大型の防潮ゲートの場合は、電動で開閉操作が実施され、補助として手動で開閉操作が実施されている。
【0003】
特許文献1には、従来の横引き扉タイプの中大型の防潮ゲートの一例が記載されている。この防潮ゲートは、電気制御装置によって圧縮気体を制御し圧縮気体を動力源とするモータにより開閉操作が実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の防潮ゲートは、閉門時には電気制御装置が必要であるため、地震等などの緊急時において電源が喪失した場合、閉門ができないという不具合があった。また、陸閘が長期間全開状態で待機していた場合に、油脂の固着により大きな静止摩擦力が発生し抵抗が増大するため、陸閘を閉鎖できないおそれがあった。一方、閉鎖動作が確実に行われるようにするためには大きな駆動力で陸閘を駆動する必要があるが、大きな駆動力で閉鎖動作を開始すると、閉鎖動作の開始後に陸閘の閉鎖速度が過大となるおそれがあった。そして、陸閘閉減速点検出センサー又は制限開閉器により陸閘が完全に閉門する直前であることを検知できたとしても、扉の閉鎖速度が過大となっていた場合、減速ができないか減速できたとしても間に合わず、ゲート機構に損傷を与えたり、通行人等に危害を与えたりするおそれがあった。さらに、圧縮ガスの維持管理も煩雑であるという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、商用電源を喪失したときでも自動で安全かつ確実に駆動を開始して閉門等をすることができ、さらに、圧縮ガスなどの特別の設備も必要なく、維持管理が簡易である駆動機構の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る請求項1に記載の駆動機構の制御システムは、
扉部を開放位置で係止し、前記扉部を閉鎖する場合、扉部の係止状態を解除し、ウエイトの質量に起因する重力によって、前記扉部を閉鎖する向きに自動的に駆動するように構成される駆動機構と、
前記扉部を開閉するように前記駆動機構を制御するための制御装置と、
により構成され、
前記駆動機構は、前記ウエイトとして主ウエイトと補助ウエイトとを含み、
前記主ウエイトと前記補助ウエイトとの連結を可能とする連結部材を有し、
鉛直最上方に位置する前記主ウエイトの鉛直下方に間隔をおいて1以上の前記補助ウエイトが連結され、
駆動開始時点においては、全ての前記ウエイトは、その重量を利用して駆動し、
前記扉部が動き出した後は、複数の前記ウエイトの連結が鉛直下方側から解除され、鉛直最上方に位置する前記ウエイトがその重量を利用して駆動するように構成されていることを特徴とする、駆動機構の制御システム。
同請求項2に記載の駆動機構の制御システムは、前記制御装置は、前記ウエイトおよび前記扉部の前記係止状態を維持するためのバッテリーを含み、
遠隔操作又は全国瞬時警報システムからの情報、速報、注意報、若しくは警報に応じて、前記バッテリーを利用して前記ウエイトおよび扉部の係止状態を解除するように制御されることを特徴とする。
この発明に係る駆動機構の制御システムによれば、商用電源を喪失したときでも自動で安全かつ確実に駆動を開始して閉門をすることができ、さらに、圧縮ガスなどの特別の設備も必要なく、維持管理が簡易であるものとすることができる。
ことを特徴とする。
同請求項3に記載の駆動機構の制御システムは、バッテリーが、商用電源、発電機、およびソーラーパネルのうちの少なくとも1つによって充電される、ことを特徴とする。
同請求項4に記載の駆動機構の制御システムは、制御装置が、全国瞬時警報システムからの信号と、携帯電話又は携帯タブレットからの無線信号と、リモコン等からの有線信号又は無線信号とを受信するように構成されている、ことを特徴とする。
同請求項5に記載の駆動機構の制御システムは、カメラと、回転灯・チャイムと、挟まれ防止センサーと、障害物センサーとが使用できるように構成され、避難する人が扉部に挟まれることを回避できる安全装置として機能するように構成されている、ことを特徴とする。
同請求項6に記載の駆動機構の制御システムは、前記駆動機構は、前記ウエイトとして主ウエイトと補助ウエイトとを含み、
前記主ウエイトと前記補助ウエイトとの連結を可能とする連結部材を有し、
鉛直最上方に位置する前記主ウエイトの鉛直下方に間隔をおいて1以上の前記補助ウエイトが連結され、
駆動開始時点においては、全ての前記ウエイトは、その重量を利用して駆動し、
前記扉部が動き出した後は、前記主ウエイトと1以上の前記補助ウエイトとの掛止が逐次解除され、複数の前記ウエイトの連結が鉛直下方側から逐次解除され、鉛直最上方に位置する前記ウエイト及び当該ウエイトに連結するウエイトがその重量を利用して駆動するように構成されている、ことを特徴とする。
この発明に係る駆動機構によれば、駆動開始時点は、大きな駆動力で駆動対象物を駆動することができ、駆動対象物が動き出した後は、駆動力を減衰させながら駆動対象物を駆動する。したがって、駆動対象物の駆動開始時点は、駆動対象物は確実に移動を開始することができ、駆動対象物が動き出した後においては、駆動対象物の移動速度を所定速度以下に抑え、駆動対象物は安全な速度を保って移動を続ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、商用電源を喪失したときでも自動で安全かつ確実に駆動を開始して閉門等をすることができ、さらに、圧縮ガスなどの特別の設備も必要なく、維持管理が簡易である駆動機構の制御システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る防潮ゲートの開門状態の正面図である。
【
図2】実施形態に係る防潮ゲートの開門状態の平面図である。
【
図3】実施形態に係る防潮ゲートの断面図であって、
図1のIII-III線矢印 方向から見た図である。
【
図4】実施形態に係る防潮ゲートの閉門状態の正面図である。
【
図5】実施形態に係る防潮ゲートの閉門状態の平面図である。
【
図6】実施形態に係る防潮ゲートの駆動部の正面図である。
【
図7】実施形態に係る防潮ゲートの駆動部の平面図である。
【
図8】実施形態に係る防潮ゲートの駆動部のうち係止機構、伝達機構及び速度抑制 機構の右側面図である。
【
図9】実施形態に係る防潮ゲートの手動ハンドル、ねじブレーキ及び切離機構の断 面図である。
【
図10】実施形態に係る防潮ゲートの手動開放操作時の手動ハンドル、ねじブレー キ及び切離機構の断面図である。
【
図11】実施形態に係る防潮ゲートの手動開放操作時の爪歯車の動作を説明するた めの模式図である。
【
図12】実施形態に係る防潮ゲートの手動閉鎖操作時の手動ハンドル、ねじブレー キ及び切離機構の断面図である。
【
図13】主ウエイトと1以上の補助ウエイトとの連結方法の一例を示す模式図であ る。
【
図14】実施形態に係る防潮ゲートの制御システムの一例を示すブロック図である 。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の駆動機構を用いた防潮ゲートの実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る防潮ゲートの開門状態の正面図である。
図2は、実施形態に係る防潮ゲートの開門状態の平面図である。
図3は、実施形態に係る防潮ゲートの断面図であって、
図1のIII-III線矢印方向から見た図である。
図4は、実施形態に係る防潮ゲートの閉門状態の正面図である。
図5は、実施形態に係る防潮ゲートの閉門状態の平面図である。
【0012】
本発明の実施形態に係る防潮ゲート10は、堤防1と堤防3との間に形成されている開口部2を開閉する横引き扉タイプの防潮ゲートである。防潮ゲート10は、開門時(以下、「平常時」とも称する。)は一方の堤防1の側に位置して扉部の開放状態を維持し、閉門時(以下、「防潮時」とも称する。)には他方の堤防3の方向側に進み、扉部を閉鎖して開口部2を閉門する。
【0013】
ここで、防潮ゲート10の海側を正面側(手前側)として定義し、陸側を背面側(奥側)として定義し、海から陸に向かう方向を海陸方向と定義し、防潮ゲート10が開口部2を開放する時に移動する側を開放側(左側)として定義し、防潮ゲート10が開口部2を閉鎖する時に移動する側を閉鎖側(右側)として定義し、以下の説明においては、これらの用語を使用する。
【0014】
防潮ゲート10は、扉部12と、開口部2を開閉するために扉部12を開閉する駆動部18とを備えている。
【0015】
(防潮ゲートの扉部)
扉部12は、横引き扉14と、扉部支持部材16と、ガイド102と、一対のガイドローラ104a及びガイドローラ104bと、一対のガイドローラ104c及びガイドローラ104dと、一対のガイドローラ104e及びガイドローラ104fと、一対の車輪110a及び車輪110bと、一対の車輪110c及び車輪110dと、一対のレール130a及びレール130bと、水密ゴム(図示しない)と、を備えている。
【0016】
横引き扉14は直方体形状であり、横引き扉14の海陸方向に相対する手前側面14a及び奥側面14bと、横引き扉14の高さ方向に相対する上面14c及び下面14dと、横引き扉14の移動方向に相対する左側面14e及び右側面14fとを有している。横引き扉14の左右方向における長さ寸法は堤防1と堤防3との間に形成されている開口部2の長さより若干長く設定され、横引き扉14の高さ寸法は堤防1の高さ及び堤防3の高さと略等しく設定されている。横引き扉14は防潮に強度的に適するように鋼材等により形成されている。
【0017】
扉部支持部材16は、横引き扉14の左側面14e、即ち、開放側の側面に取付けられている。扉部支持部材16は、略V字形を横にした状態で、横引き扉14の移動方向に沿って延びるように取り付けられている。扉部支持部材16は、横引き扉14の海陸方向に相対する手前側面16a及び奥側面16bと、高さ方向の上面16cとを有している。
上面16cには、開放側の位置に一方の扉用線状部材用フック84が形成され、閉鎖側の位置に他方の扉用線状部材用フック86が形成されている。
【0018】
長尺のガイド102は、横断面がコ字形を反時計回りに90度回転した形をしている。長尺のガイド102は、一方の堤防1の上面1aに等間隔で固定されたガイド支持部材100a及びガイド支持部材100b及びガイド支持部材100c及びガイド支持部材100dによって、横引き扉14から扉部支持部材16に亘って、横引き扉14の上面14c及び扉部支持部材16の上面16cに配置されている。長尺のガイド102は、
図3に示すように、ガイド支持部材100a及びガイド支持部材100b及びガイド支持部材100c及びガイド支持部材100dのそれぞれ断面形状が略逆L字形状であり、それらの長い腕部101の裏面に、固定されている。横断面がコ字形を反時計回りに90度回転した形のガイド102は、手前側の側部102aが横引き扉14の手前側面14aに沿うように配置され、奥側の側部102bが横引き扉14の奥側面14bに沿うように配置されている。
【0019】
一対のガイドローラ104a及びガイドローラ104bは、それぞれ、横引き扉14の上面14cの右側面14f寄りの位置に回転自在に固定されている。ガイドローラ104aは手前側面14aの側に配置され、ガイドローラ104bは奥側面14bの側に配置され、両者の間は横引き扉14の海陸方向の厚み寸法より短い距離であって所定の距離だけ離隔している。そして、一対のガイドローラ104aとガイドローラ104bとの間には、後述の扉用線状部材240が通っている。ガイドローラ104aは、ローラー軸が高さ方向に延びており、その外周面がガイド102の手前側の側部102aの内面に当接している。ガイドローラ104bは、ローラー軸が高さ方向に延びており、その外周面がガイド102の奥側の側部102bの内面に当接している。
【0020】
一対のガイドローラ104c及びガイドローラ104dは、それぞれ、横引き扉14の上面14cの左側面14e寄りの位置に回転自在に固定されている。ガイドローラ104cは手前側面14aの側に配置され、ガイドローラ104dは奥側面14bの側に配置され、両者の間は横引き扉14の海陸方向の厚み寸法より短い距離であって所定の距離だけ離隔している。そして、一対のガイドローラ104cとガイドローラ104dとの間には、扉用線状部材240が通っている。ガイドローラ104cは、ローラー軸が高さ方向に延びており、その外周面がガイド102の手前側の側部102aの内面に当接している。ガイドローラ104dは、ローラー軸が高さ方向に延びており、その外周面がガイド102の奥側の側部102bの内面に当接している。
【0021】
一対のガイドローラ104e及びガイドローラ104fは、それぞれ、扉部支持部材16の上面16cの左側寄りの位置に回転自在に固定されている。ガイドローラ104eは扉部支持部材16の手前面16a側に配置され、ガイドローラ104fは扉部支持部材16の奥面16b側に配置され、両者の間は横引き扉14の海陸方向の厚み寸法より短い距離であって所定の距離だけ離隔している。そして、一対のガイドローラ104eとガイドローラ104fとの間には、扉用線状部材240が通っている。ガイドローラ104eは、ローラー軸が高さ方向に延びており、その外周面がガイド102の手前側の側部102aの内面に当接している。ガイドローラ104fは、ローラー軸が高さ方向に延びており、その外周面がガイド102の奥側の側部102bの内面に当接している。
【0022】
そのため、扉部12は、ガイド102に従って一対の直線状レール130a及び直線状レール130bの上を進退することができる。
【0023】
一対の車輪110a及び車輪110bは、それぞれ、横引き扉14の下面14dの右側面14f寄りの位置に回転自在に取付けられている。車輪110aは手前側面14a側に配置され、車輪110bは奥側面14b側に配置され、両者の間は車軸116によって一対のレール130aとレール130bとの間隔の距離だけ離隔して配置されている。車軸116は、横引き扉14の手前側面14aの下部の右側面14f寄りの位置に固定されたローラー軸受け114aと横引き扉14の奥側面14bの下部の右側面14f寄りの位置に固定されたローラー軸受け114bとによって回転自在に支持されている。一対の車輪110a及び車輪110bは、一対のレール130a及びレール130bの上を回転しながら移動して進退する。
【0024】
一対の車輪110c及び車輪110dは、それぞれ、横引き扉14の下面14dの左側面14e寄りの位置に回転自在に取付けられている。車輪110cは手前側面14a側に配置され、車輪110dは奥側面14b側に配置され、両者の間は車軸116によって所定の距離だけ離隔して配置されている。車軸116は、横引き扉14の手前側面14aの下部の左側面14e寄りの位置に固定されたローラー軸受け114aと横引き扉14の奥側面14bの下部の左側面14e寄りの位置に固定されたローラー軸受け114bによって回転自在に支持されている。一対の車輪110a及び車輪110bは、一対のレール130a及びレール130bの上を回転しながら移動して進退する。
【0025】
一対のレール130a及びレール130bは、それぞれ、上面を露出させた状態で着地面に埋設されている。レール130aとレール130bとの幅方向の間隔は、横引き扉14の海陸方向の厚み寸法より短い距離であって車輪110aと車輪110bとの間隔、及び、車輪110cと車輪110dとの間隔と略等しくなるように設定されている。一対のレール130a及びレール130bの長さは、横引き扉14が、平常時に一方の堤防1の側に位置し、緊急時には他方の堤防3の側に進み、開口部2を閉鎖するために必要かつ十分の長さに設定されている。
【0026】
水密ゴム(図示しない)は、横引き扉14の手前側(海側)かつ下面14dに、横引き扉14の左側面14eから右側面14fに渡って、着地面に這うように、設けられている。水密ゴムは、防潮時に、津波又は高潮等の海水が閉鎖された防潮ゲート10から陸側に漏出することを防ぐための部材である。
なお、水密ゴム(図示しない)は、堤防3の横引き扉14の右側面14fとの接触面においても、設けられている。
【0027】
(防潮ゲートの駆動部)
図6は、本実施形態に係る防潮ゲートの駆動部の正面図である。
図7は、本実施形態に係る防潮ゲートの駆動部の平面図である。
図8は、本実施形態に係る防潮ゲートの駆動部のうち係止機構及び伝達機構及び速度抑制機構の右側面図である。
【0028】
扉部12を開閉する駆動部18は、主ウエイト72と、主ウエイト72に連結し且つ相互に鉛直方向に連結する1以上の補助ウエイト74と、主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74の合計質量に起因する重力を扉部12に伝達する伝達機構20と、扉部12を一方の堤防1の側の位置(以下、「開放位置」とも称する。)まで手動または電動で移動させて係止する係止機構30と、伝達機構20に連結し扉部12の移動速度の変化を抑制する速度抑制機構40と、を備えている。
【0029】
防潮ゲート10の駆動部18は、扉部12の閉鎖手段の1つとして、主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74の合計質量に起因する重力、即ち、主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74の位置エネルギーを動力源として利用している。
【0030】
主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74の位置エネルギーは、扉部12を開放する時において、伝達機構20を介して、手動ハンドル又は電動モータが主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74を逐次吊り上げることによって蓄えられる。
【0031】
防潮ゲート10は、平常時、係止機構30によって、扉部12が開放位置で係止された状態で、かつ、主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74が自身の重力に抗して吊り上げられて係止された状態で、待機している。
【0032】
駆動部18は、扉部12が動き出して扉部12を閉鎖する動作を開始する時点(以下、「閉鎖動作開始時点」とも称する。)で、係止機構30による扉部12並びに主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74の係止状態を解除し、主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74の合計質量に起因する重力によって、伝達機構20を介して、扉部12を閉鎖する向きに自動的に駆動するように構成されている。
【0033】
さらに、駆動部18は、扉部12が動き出した後は、主ウエイト72と1以上の補助ウエイト74との連結が後述するように逐次解除され、伝達機構20に連結する少なくとも主ウエイト72及び連結状態にある補助ウエイト74の合計質量に起因する重力によって、伝達機構20を介して、扉部12を閉鎖する向きに自動的に駆動するように構成されている。
【0034】
(主ウエイト及び補助ウエイトの連結)
主ウエイト72は鉛直最上方に位置し、1以上の補助ウエイト74は主ウエイト72の鉛直下方に所定の間隔をおいて連結されている。なお、以下の実施の形態では、補助ウエイト74が1つの場合を例にして説明するが、主ウエイト72の鉛直下方に所定の間隔をおいて連結される補助ウエイト74は、2以上であってもよい。主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74の下方の着地面は、主ウエイト72及び補助ウエイト74の降下距離を確保するために、必要に応じて掘り下げられていてもよい。
【0035】
図6に示すように、主ウエイト72は直方体形状であり、後述する略筒形状の連結部材76に、主ウエイト72が連結部材76の内部を下降及び上昇自在に収容されている。
【0036】
連結部材76は、開口700と、掛止部760と、補助ウエイト用支持部762と、開口702と、を有する。連結部材76は、主ウエイト72と補助ウエイト74との連結を可能とする。連結部材76の左右方向の幅は主ウエイト72の左右方向の幅より若干大きく設定され、主ウエイト72の外周面72aと連結部材76の内周面76aとが滑らかに摺動するように構成されている。
【0037】
連結部材76は上端に開口700が形成され、掛止部760が開口700に向かって水平方向に突出するように設けられている。連結部材76の下端には、鉛直下方に延びる補助ウエイト用支持部762が設けられている。補助ウエイト用支持部762は、下端に開口702が形成され、その開口702の内周面に矩形状の補助ウエイト74の外周面を嵌合することによって、連結部材76の補助ウエイト用支持部762に補助ウエイト74が支持されている。
【0038】
主ウエイト72および補助ウエイト74は、小体積化及び大質量化のために、密度の大きい鉄や鉛などの金属から成る。
【0039】
扉部12が開放されている平常時、連結部材76は、主ウエイト72の上面に連結部材76の掛止部760が掛止され、主ウエイト72によって吊り上げられた状態で待機している。従って、ウエイト用線状部材200には、主ウエイト72及び補助ウエイト74の合計質量に起因する重力がかかっている。
【0040】
なお、本実施の形態において、「主ウエイト72及び補助ウエイト74の合計質量に起因する重力」とは、厳密には、主ウエイト72及び補助ウエイト74の合計質量に起因する重力に、一対の動滑車220及び動滑車222と連結部材76との合計質量に起因する重力を加算したものとなる。
【0041】
そして、駆動部18は、扉部12の閉鎖動作開始時点で、主ウエイト72及び補助ウエイト74の合計質量に起因する重力によって、伝達機構20を介して、扉部12を閉鎖する向きに駆動するように構成されている。このとき、防潮ゲート10が開門状態で長期間待機されていた場合、駆動部18の各部品に余分な油脂が固着するなどして、扉部12の初動移動抵抗力(最大静止摩擦力)が増大していることが予想される。そのときであっても、ウエイトが主ウエイト72と補助ウエイト74との2段構造となっているため、扉部12の閉鎖動作開始時点でのウエイトが増大しており、遅滞なく扉部12は移動開始することができる。
【0042】
さらに駆動部18は、扉部12が堤防3への向き(閉鎖側)に動き出した後は、伝達機構20を介して、主ウエイト72及び補助ウエイト74及び連結部材76が降下する。主ウエイト72の下方に位置している補助ウエイト74及び連結部材76が着地面に到達して下降が停止すると、連結部材76の掛止部760が主ウエイト72の上面から外れ、主ウエイト72と補助ウエイト74との掛止が解除される。
【0043】
その後、主ウエイト72のみが、補助ウエイト74の上面に当接するまで連結部材76内を円滑に降下する。従って、伝達機構20に連結する主ウエイト72の質量に起因する重力によって、伝達機構20を介して、扉部12を閉鎖する向きに駆動する。このとき、扉部12は、主ウエイト72の質量に起因する重力のみによって閉鎖する向きに駆動するため、扉部12は、車輪110aないし車輪110dによる転がり摩擦及び水密ゴムによる摺動摩擦により、減速し、又は、大きな加速度で加速することなく、適度の速度で移動することができる。そして、主ウエイト72が補助ウエイト74の上面に達したときに、扉部12が堤防3に到達するように構成されていることが好ましい。
【0044】
また、主ウエイト72と補助ウエイト74との掛止解除(連結解除)は、主ウエイト72の降下ストロークの1割ないし2割程度のストロークを主ウエイト72が降下した時に行われるように設定されることが好ましい。扉部12が過剰に加速しないようにするためである。ただし、扉部12の閉鎖速度を速めたい場合には、補助ウエイト74の主ウエイト72との掛止解除(連結解除)は、更に長いストロークを経た時でもよい。
【0045】
また、主ウエイト72の上側に1以上の補助ウエイト74の連結部材の掛止部760が掛止することによって、主ウエイト72と補助ウエイト74との連結方法を多段化してもよい。上記構成によると、扉部12の閉鎖動作開始後においては、駆動部18は、主ウエイト72と2以上の補助ウエイト74との掛止(連結)が逐次解除されて、伝達機構20に連結する少なくとも主ウエイト72及び掛止(連結)状態にある補助ウエイト74の合計質量に起因する重力によって、伝達機構20を介して、扉部12を閉鎖する向きに駆動する。
【0046】
多段化の方法としては、例えば、主ウエイト72の上面に掛止している連結部材76及び当該連結部材76に支持された補助ウエイト74を内包するように、当該連結部材76の上側に一段階大きな連結部材76の掛止部760が掛止するようにしてもよい。同様に、さらに大きな連結部材76が連結部材76及び補助ウエイト74を段階的に内包することによって、主ウエイトと2以上の補助ウエイト74との連結方法を多段化することができる。
【0047】
その他の多段化されたウエイトの連結方法としては、伝達機構20に連結し鉛直最上方に位置するウエイト以外の2以上のウエイトには掛止部材(ロッド又はワイヤー)が配設され、鉛直最上方に位置するウエイトに掛止部材(ロッド又はワイヤー)の配設されたウエイトの1つが掛止され、当該ウエイト又は鉛直最上方のウエイトにその他の掛止部材(ロッド又はワイヤー)の配設されたウエイトが逐次掛止されることによって、全てのウエイトは伝達機構20に連結され且つ相互に鉛直方向に連結されるように構成されていてもよい。この構成の場合は、地震などの際に意図せず連結が解除され難いという利点がある。
【0048】
例えば、具体的には
図13に示すように、主ウエイト72の前後又は左右に、連結部材76(掛止部材)であるロッド(以下、「ロッド76」と称する。)を挿通するための一対の孔が形成されており、その一対の孔は、主ウエイト72に連結される1以上の補助ウエイト74の数と同対数形成されている。主ウエイト72の鉛直下方に所定の間隔を隔てて位置する2以上の補助ウエイト74にも同様に、前後又は左右に、ロッド76を挿通するための一対の孔が形成されている。ロッド76は、上端に掛止部760を有し、下端に補助ウエイト用支持部762を有している。ロッド76の掛止部760は、主ウエイト72の上面に掛止するための部材であり、略T字形の突起状に形成されている。ロッド76の補助ウエイト用支持部762は、補助ウエイトの下面を支持するための部材であり、略逆T字形の突起状に形成されている。そして、ロッド76を介して、主ウエイト72と2以上の補助ウエイト74とは、連結される。
【0049】
図13(a)は、連結部材がロッドである場合において、扉部12が開放位置で待機している際に主ウエイト72及び2以上の補助ウエイト74が係止機構30により吊り上げられ係止されている状態を示した模式図である。
図13(b)は、連結部材がロッドである場合において、係止機構30が扉部12並びに主ウエイト72及び補助ウエイト74の係止状態を解除し、扉部12が後述する閉鎖位置まで移動し、主ウエイト72及び2以上の補助ウエイト74が最下位まで降下した状態を示した模式図である。
【0050】
図13(a)の状態から、係止機構30が扉部12並びに主ウエイト72及び補助ウエイト74の係止状態を解除した後は、まず初めに鉛直最下方に位置する補助ウエイト(以下、「補助ウエイト74a」という。)が着地面(符号なし)に到達し停止する。これにより、補助ウエイト74aを支持していたロッド76は主ウエイト72の上面から掛止部760を離間し、主ウエイト72との連結を解除する。
続いて、補助ウエイト74aの次に上方に位置する補助ウエイト(以下、「補助ウエイト74b」という。)は、補助ウエイト74aの上面に到達し停止する。これにより、補助ウエイト74bを支持していたロッド76は主ウエイト72の上面から掛止部760を離間し、主ウエイト72との連結を解除する。
同様に、主ウエイト72と2以上の補助ウエイト74との掛止(連結)が逐次解除される。
【0051】
以上より、扉部の閉鎖動作開始時点は、主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74の合計質量に起因する重力によって、主ウエイト72の上面に連結される伝達機構20を介して、扉部12を閉鎖する向きに駆動し、扉部12が動き出した後は、伝達機構20に連結する少なくとも主ウエイト72及び掛止状態にある補助ウエイト74の合計質量に起因する重力によって、伝達機構20を介して、扉部を閉鎖する向きに駆動する。
よって、扉部12を駆動する駆動部18による駆動力は、その力を減衰させながら、扉部12を駆動する。
したがって、扉部12の閉鎖動作開始時点は、大きな駆動力で扉部12を駆動することができ、扉部12が動き出した後は、駆動力を減衰させながら扉部12を駆動する。つまり、扉部12が長期間全開状態で待機し、油脂の固着により大きな静止摩擦力が発生し抵抗が増大した場合であっても、扉部12の閉鎖動作開始時点は、確実に閉鎖動作を開始することができ、扉部12の閉鎖動作開始後においては、扉部12の閉鎖速度を所定速度以下に抑え、扉部12が安全な速度を保って閉鎖動作を続け、扉部12の諸機構に損傷が生じず、かつ、通行人等に危害を与えることもない。また、商用電源を喪失したときでも自動で閉門することができ、かつ、圧縮ガスなどの特別の設備も必要なく、維持管理が簡易である。
【0052】
あるいは、伝達機構20に連結し主ウエイト72の上面に第1補助ウエイト74が掛止され、第1補助ウエイト74の上面に第2補助ウエイト74が掛止され、同様に、逐次、第n補助ウエイト74の上面に第n+1ウエイト74が掛止されることによって、全てのウエイトは伝達機構20に連結され且つ相互に鉛直方向に連結されるように構成されていてもよい。この構成の場合は、連結部材が不要になるという利点がある。
【0053】
なお、主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74の降下時に、その降下経路を補助するためのガイドレール(図示しない)が主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74の周辺に設けられていることが好ましい。
当該ガイドレールは、上限位置で待機している主ウエイト72と1以上の補助ウエイト74との連結(掛止)が、地震等により意図せず解除されることを防止するとともに、主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74の降下動作を安定させる。
【0054】
(駆動部の伝達機構)
駆動部18の伝達機構20は、主ウエイト72及び補助ウエイト74の合計質量に起因する重力を扉部12に伝達するものである。
【0055】
伝達機構20は、ウエイト用線状部材200と、ウエイト用線状部材200が巻回する2つの定滑車210及び定滑車212と、ウエイト用線状部材200が巻回する2つの動滑車220及び動滑車222と、ウエイト用線状部材200が巻き付くドラム230と、ドラム230に巻回してドラム230から延びて扉部12に接続する扉用線状部材240と、扉用線状部材240が巻回する3つの定滑車250及び定滑車252及び定滑車254と、一対の手前側支持部材260及び奥側支持部材262と、を有している。
【0056】
一対の手前側支持部材260及び奥側支持部材262は、それぞれ、正面視が略逆L字形である。一方の手前側支持部材260は、ガイド102の手前側の側部102aに面一で垂直に配置され、他方の奥側支持部材262は、ガイド102の奥側の側部102bに面一で垂直に配置され、両者はガイド102の横幅(海陸方向の幅)と等しい寸法の間隔で対向している。
【0057】
ドラム230は、手前側支持部材260と奥側支持部材262との間の上部の略中央の位置に架け渡されたドラム回転軸232に回転自在に取り付けられている。
【0058】
2つの定滑車210及び定滑車212は、手前側支持部材260と奥側支持部材262との間の上部かつ開放側の位置に架け渡された定滑車回転軸211を同一軸にして、並置されて回転自在に取り付けられている。
【0059】
定滑車250は、手前側支持部材260と奥側支持部材262との間のドラム230の下方かつ略開放側の位置に架け渡された定滑車回転軸251に回転自在に取り付けられている。
【0060】
定滑車252は、手前側支持部材260と奥側支持部材262との間のドラム230下方かつ定滑車250よりやや上方かつ略閉鎖側の位置に架け渡された定滑車回転軸253に回転自在に取り付けられている。定滑車252は、垂直方向において、ドラム230の位置と定滑車250の位置との間に位置している。
【0061】
定滑車254は、ガイド102の閉鎖側の端部に固定された支持部材264の手前側の支持部と奥側の支持部との間に架け渡された定滑車回転軸255に回転自在に取り付けられている。
【0062】
2つの動滑車220及び動滑車222は、主ウエイト72の上面に設けた繋部73に突設しており海陸方向に延びる動滑車回転軸221を同一軸にして、並置されて回転自在に取り付けられている。
【0063】
ドラム回転軸232の軸方向及び定滑車回転軸211の軸方向及び定滑車回転軸251の軸方向及び定滑車回転軸253の軸方向及び定滑車回転軸255の軸方向及び動滑車回転軸221の軸方向は、海陸方向であり、一対の手前側支持部材260及び奥側支持部材262に対して略垂直である。
【0064】
ウエイト用線状部材200は、一方の端部200aがドラム230に繋がれ、ドラム230の外周面の奥側の位置に複数回巻き回されて、定滑車212及び動滑車222及び定滑車210及び動滑車220の順に巻回され、他方の端部200bが錨軸257に繋がれている。
【0065】
錨軸257は、ドラム回転軸232と定滑車回転軸211との間の位置にあり、手前側支持部材260と奥側支持部材262との間に架け渡されている。
【0066】
一対の動滑車220及び動滑車222に連結されている主ウエイト72と補助ウエイト74とは、外見上は4本のウエイト用線状部材200によって吊り下げられている状態となる。従って、動滑車回転軸221のストローク、言い換えると主ウエイト72及び補助ウエイト74の移動ストロークに対して、ドラム230に巻回する扉用線状部材240のストローク、言い換えると扉部12の移動ストロークが4倍となる。つまり、主ウエイト72と補助ウエイト74の移動距離は扉部12の移動距離の4分の1となり、駆動部18を小型化できる。なお、扉部12が閉鎖される防潮時に、扉部12を確実に移動させるためには、主ウエイト72と補助ウエイト74との合計質量に起因する重力が、扉部12の初動移動抵抗力(最大静止摩擦力)にウエイト用線状部材200の外見上の本数(本実施の形態の場合は4)を乗算した力の大きさを超える力の大きさとなるよう、主ウエイト72と補助ウエイト74との合計質量は設定されることが好ましい。ここで、扉部12の初動移動抵抗力(最大静止摩擦力)は、扉部12や駆動部18の諸機構への油脂の固着による抵抗力を含む。また、主ウエイト72の質量は、扉部12の車輪110a及び車輪110bとレール130a及びレール130bとの間の転がり摩擦と、扉部12下部に設けられている水密ゴムと着地面との摺動摩擦と、に抗う程度の力にウエイト用線状部材200の外見上の本数を乗算した力に相当する重力となるよう設定されることが好ましい。
【0067】
扉部12が開放されている平常時においては、ウエイト用線状部材200はドラム230の外周面に最大の巻き回数で巻回され、主ウエイト72と補助ウエイト74とは、高さ方向に上限位置まで吊り上げられて待機するように設定されている。
【0068】
扉用線状部材240は、一方の端部240aが扉部12の扉部支持部材16の上面16cに形成された一方の扉用線状部材用フック84に繋がれ、下段に位置された定滑車250に巻回され、上段に位置されたドラム230の外周面の手前側の位置に巻回され、中段に位置された定滑車252に巻回されている。さらに、扉用線状部材240は、ガイド102の上方を閉鎖側に向かってガイド102に沿って通り、ガイド102の端部に位置された定滑車254に巻回された後、向きを反転して、ガイド102の内側の中央の位置を開放側に向かってガイド102に沿って通っている。そして、扉用線状部材240は、他方の端部240bが扉部12の扉部支持部材16の上面16cに形成された他方の扉用線状部材用フック86に繋がれている。
【0069】
上記のような扉用線状部材240とドラム230との構成により、駆動部18と扉部12との連結方法の自由度が高くなる。また、例えば、ラックとピニオンギアとを用いた構成よりも、構造が簡易であり、コスト的に安価である。扉用線状部材240とドラム230との間で抵抗が生じることから、扉部12が安全な速度を保って閉鎖動作を続けることができる。扉用線状部材240は、扉部12を介してその上方を周回するように、一方の端部240a及び他方の端部240bがともに扉部12の開放側に繋がっている。従って、扉部12は、開放時にはドラム230を時計回りに回転させることによって、開放側に移動された後開放位置に待機され、閉鎖時にはドラム230を反時計回り方向に回転させることによって、閉鎖側に移動された後閉鎖位置に到達するように構成されている。扉用線状部材240は、扉部12を介してエンドレス状になっており、ラックとピニオンギアとを用いなくても、ドラム230の回転方向に応じて扉部12を開閉することができる、つまり、扉部12を開放側及び閉鎖側の両方向に移動させることができる。
【0070】
また、伝達機構20において動滑車を用いる構成により、扉部12の移動距離に比して主ウエイト72及び掛止状態にある補助ウエイト74の移動距離を減少しながら、主ウエイト72及び掛止状態にある補助ウエイト74の合計質量に起因する重力が扉部12に伝達される。
【0071】
(駆動部の係止機構)
駆動部18の係止機構30は、扉部12を堤防1の側の開放位置まで手動または電動で移動させて係止するものである。
【0072】
係止機構30は、電動モータ300と、電磁クラッチ302と、減速機304と、手動ハンドル306と、ねじブレーキ308と、伝達機構20に連結して主ウエイト72及び補助ウエイト74並びに扉部12を係止する係止用制動器であるディスクブレーキ310と、制限開閉器312と、を有している。
【0073】
電動モータ300は、ブレーキ付きのモータであって、電磁クラッチ302を介して減速機304から延びる回転軸304aに連結されている。電動モータ300は、電磁クラッチ302及び減速機304を介して伝達機構20に連結されている。電動モータ300と電磁クラッチ302とは、制限開閉器312に接続する後述の制御装置90により制御される。
【0074】
電磁クラッチ302は、減速機304を介して伝達機構20に連結されており、電動モータ300と伝達機構20の連結を制御する。
【0075】
減速機304は、伝達機構20に連結されている。減速機304は、電動モータ300の高速回転を減速して、伝達機構20のドラム230の回転速度が最適な回転速度になるように設定されている。一方、減速機304は、手動ハンドル306により伝達機構20にもたらされる回転のモーメントを増幅し、人の腕の力で、大質量を有する扉部12並びに主ウエイト72及び補助ウエイト74を駆動することを可能とする。また、後述する速度抑制機構40であるファンブレーキ400の回転速度をドラムの回転速度より増速する。減速機304は、扉部12の開閉方向(左右方向)と同一方向で開放側と閉鎖側とに共に延びる回転軸304aを有する。回転軸304aは、開放側で電磁クラッチ304と電動モータ300と連結されており、閉鎖側で後述するローター310aとファンブレーキ400と連結されている。さらに、減速機304には、制限開閉器312がチェンスプロケット314及びローラーチェン316及びチェンスプロケット318を介して減速機304に連結されている。
【0076】
ディスクブレーキ310は、後述するファンブレーキ400と、減速機304から延びる回転軸304aを共有して減速機304に連結されている。ディスクブレーキ310は、減速機304を介して伝達機構20に連結し、主ウエイト72及び補助ウエイト74並びに扉部12を係止する。ディスクブレーキ310は、ローター310aをブレーキパッド(図示しない)で圧接することにより、主ウエイト72及び補助ウエイト74並びに扉部12を係止する。ディスクブレーキ310は、後述する手動開閉器311で係止又は係止解除できる構成としている。
【0077】
制限開閉器312は、減速機304を介してドラム230の回転数を検知する。これにより、制限開閉器312に接続する制御装置900は、横引き扉14が開放位置又は閉鎖位置に到達したことを検知し、電磁クラッチ302により電動モータ300を伝達機構20から連結解除するとともに、電動モータ300への電力の供給を遮断する。
【0078】
扉部12を開放する平常時においては、伝達機構20を介して、電動モータ300又は手動ハンドル306によって、主ウエイト72と補助ウエイト74とが、ウエイトの重力に抗して逐次吊り上げられる。扉部12が開放位置まで移動すると、係止用制動器であるディスクブレーキ310のブレーキパッドがローター310aに圧接され、主ウエイト72及び補助ウエイト74並びに扉部12を係止した状態で待機するように構成されている。
【0079】
扉部12を閉鎖する防潮時においては、手動または電動により、係止用制動器であるディスクブレーキ310のブレーキパッドが、ローター310aの圧接を開放して、主ウエイト72及び補助ウエイト74並びに扉部12の係止状態を解除するように構成されている。係止状態が解除されると、主ウエイト72及び補助ウエイト74の合計質量に起因する重力が、ドラム230を反時計方向に回転駆動させる。
【0080】
ドラム230が反時計方向に回転駆動すると、ドラム230に巻き付かれていたウエイト用線状部材200が引き出され、主ウエイト72及び補助ウエイト74が降下し始める。同時に、ドラム230に巻回されている扉用線状部材240も、一方の定滑車252から他方の定滑車250に向かって移動するため、扉部12も一方の堤防1の側から他方の堤防3の側に向かって移動し、開口部2を閉鎖する。従って、上記の防潮ゲート10によれば、商用電源を喪失したときでも自動で閉門することができ、かつ、圧縮ガスなどの特別の設備も必要なく、維持管理が簡易である。
【0081】
このとき、仮に、主ウエイト72及び補助ウエイト74の合計質量に起因する重力又は主ウエイト72の質量に起因する重力が扉部12の転がり摩擦及び水密ゴムの摺動抵抗に比して過大であり、扉部12が過剰に加速しようとする場合であっても、ファンブレーキ400の速度抑制機能が作動して、伝達機構20を介して、扉部12の速度の変化を抑制する。これにより、扉部12は安全な速度を保って閉鎖動作し続けることができる。そして、扉部12の諸機構に損傷を生じることなく、かつ、通行人等に危害を与えることなく、閉鎖動作を完了することができる。
【0082】
なお、ディスクブレーキ310の係止解除は、手動開閉器311による手動操作、又は、制御装置900による電動による、スマートフォン932等からの遠隔操作もしくは全国瞬時警報システム930からの情報等の受信に基づいた自動操作などで行われる。
【0083】
図9は、本実施形態に係る防潮ゲートの手動ハンドル、ねじブレーキ及び切離機構の断面図である。
【0084】
図9に示すように、手動ハンドル306は、ねじブレーキ308及び減速機304を介して伝達機構20に連結可能である。手動ハンドル306は、ねじブレーキ308を組み込んだ一体構造であり、ねじブレーキ308とともに、伝達機構20との連結を切り離す切離機構506を有する。防潮ゲート10の扉部12が電動で開閉されるときは、手動ハンドル306とねじブレーキ308とは、切離機構506により、伝達機構20から連結解除される。
【0085】
手動ハンドル306は、握り部502を設けたハンドル本体500と、矩形のハンドルベース508と、4つのハンドルガイド軸520及びハンドルガイド軸522及びハンドルガイド軸524及びハンドルガイド軸526と、4つのハンドルガイド530及びハンドルガイド532及びハンドルガイド534及びハンドルガイド536と、ハンドル中心軸550と、ハンドル中心軸ストッパ552と、ハンドル中心軸受け556と、を有している。
【0086】
図11に示すように、矩形のハンドルベース508は、中央部にハンドル中心軸用孔510が形成されている。
図9に示すように、ハンドルベース508の上面の中央部には、ハンドル中心軸用孔510と同一中心の軸を有するハンドル中心軸受け556が設けられている。ハンドル中心軸550は、ハンドル中心軸用孔510内及びハンドル中心軸受け556内に回転自在に挿通されている。
ハンドル中心軸550は、一方の端部550aがハンドル本体500の中心部504に固定されている。ハンドル中心軸550は、他方の端部550bの外周面にねじ山が形成されると共に、端面の中央部にねじブレーキ中心軸用穴554が形成されている。
【0087】
矩形のハンドルベース508の4つの角部には、それぞれ、ハンドルガイド530及びハンドルガイド532及びハンドルガイド534及びハンドルガイド536が嵌入されている。
【0088】
ハンドルガイド軸520はハンドルガイド530内に移動自在に挿通され、ハンドルガイド軸522はハンドルガイド532内に移動自在に挿通され、ハンドルガイド軸524はハンドルガイド534内に移動自在に挿通され、ハンドルガイド軸526はハンドルガイド536内に移動自在に挿通されている。ハンドルガイド軸520及びハンドルガイド軸522及びハンドルガイド軸524及びハンドルガイド軸526のそれぞれの足部は、減速機304の外面に固定されている。
【0089】
ハンドルベース508は、ハンドルガイド軸520及びハンドルガイド軸522及びハンドルガイド軸524及びハンドルガイド軸526のそれぞれの頭部に設けた上ストッパ538と中段に設けた下ストッパ540との間を、上下に移動できる。
【0090】
ねじブレーキ308は、手動ハンドル306と減速機304との間に連結されており、手動ハンドル30と伝達機構20との連結を手動ハンドル306の回転方向に応じて制御する。ねじブレーキ308は、扉部12を開放する向き(時計回り)に手動ハンドル306を回転することによって、手動ハンドルを伝達機構20に連結し、扉部12を閉鎖する向き(反時計回り)に手動ハンドル306を回転することによって、手動ハンドル306を伝達機構20から連結解除するように構成されている。
【0091】
ねじブレーキ308は、ねじブレーキ中心軸600と、爪歯車610と、右ねじのクラッチ爪ナット620と、ブレーキディスク630及びブレーキディスク632と、ブレーキ爪640及びブレーキ爪642と、クラッチ爪650と、を有している。
【0092】
爪歯車610は、ハンドル中心軸ストッパ552との間にブレーキディスク630が圧接可能の状態で配置されると共に、ハンドル中心軸550の他方の端部550bの外周面に形成されたねじ山に螺着されているクラッチ爪ナット620との間にブレーキディスク632が圧接可能の状態で配置されている。
【0093】
ねじブレーキ中心軸600は、一方の端部600aが、ハンドル中心軸550の他方の端部550bに形成されたねじブレーキ中心軸用穴554に挿入されている。ねじブレーキ中心軸600は、一方の端部600aがねじブレーキ中心軸600内に出入して伸縮可能である。従って、手動ハンドル306のハンドル中心軸550は、後述する切離機構506及びねじブレーキ中心軸600によって、ハンドル中心軸ストッパ552及びハンドルベース508及び爪歯車610及びクラッチ爪ナット620と共に減速機304の反対側に移動して、手動ハンドル306は引かれた位置(以下、「離脱位置」とも称する。)となることが可能である一方、手動ハンドル306は、減速機304側に移動して、クラッチ爪650とクラッチ爪ナット620とが噛合する位置(以下、「噛合位置」とも称する。)となることも可能である。
【0094】
ねじブレーキ中心軸600は、平行キー660が形成された他方の端部600bにクラッチ爪650が取り付けられると共に、減速機304の回転軸に連結されている。電動操作の際には、切離機構506によりクラッチ爪650とクラッチ爪ナット620とは離間しており、手動ハンドル306が空回りしない。
【0095】
切離機構506は、握り部502と、ハンドル本体500と、ハンドル中心軸550と、ハンドル中心軸受け556と、ねじブレーキ中心軸600と、ハンドル中心軸ストッパ552と、爪歯車610と、クラッチ爪ナット620と、ハンドルベース508と、ブレーキ爪640及びブレーキ爪642と、上ストッパ538と、下ストッパ540と、により構成される。握り部502又はハンドル本体500を手で把持して、減速機304と反対側である離脱位置又は減速機304側である噛合位置にハンドル本体500を移動させることによって、ねじブレーキ中心軸600が伸縮し、ねじブレーキ中心軸600が挿入されているハンドル中心軸550が減速機304に対して遠ざかる又は接近する。これにより、ハンドル中心軸550と一体的に接続するハンドル中心軸ストッパ552と、ハンドル中心軸550の他方の端部550b近傍に螺着するクラッチ爪ナット620と、ハンドル中心軸ストッパ552とクラッチ爪ナット620との間に配設される爪歯車640と、ハンドル中心軸受け556と、ハンドル中心軸受け556に接続するハンドルベース508と、ハンドルベース508に接続するブレーキ爪640及びブレーキ爪642と、は一体的に減速機304に対して遠ざかる又は接近する。そして、ねじブレーキ308を構成するクラッチ爪ナット620の爪と、減速機に接続するクラッチ爪650の爪とが、離脱する又は噛合する。
【0096】
つまり、切離機構506を有することにより、手動ハンドル306は、離脱位置に移動して、ねじブレーキ308とともに、伝達機構から連結解除し、一方、手動ハンドル306は、噛合位置に移動して、ねじブレーキとともに、伝達機構20に連結する。
【0097】
図10は、本実施形態に係る防潮ゲートの手動開放操作時の手動ハンドル、ねじブレーキ及び切離機構の断面図である。
図11は、本実施形態に係る防潮ゲートの手動開放操作時の爪歯車の動作を説明するための模式図である。
【0098】
手動開放操作の際には、手動ハンドル306は噛合位置に人の手によって移動される。ねじブレーキ308は、扉部12を開放する向きに手動ハンドル306を回転することによって、手動ハンドル306を伝達機構20に連結する。具体的には、手動ハンドル306は押し込まれてねじブレーキ中心軸600が縮んだ状態で右回転(時計回りに回転)され、ねじブレーキ308のクラッチ爪ナット620とクラッチ爪650とが噛み合わされる。ここで、右回転(時計回りに回転)とは、手動ハンドル306側から減速機304側を見たときに、時計回りに回転させることをいう。以下同じである。左回転(反時計回りに回転)についても、同様である。
【0099】
手動ハンドル306が押し込まれて右回転されると、右ねじのクラッチ爪ナット620とハンドル中心軸の端部550bとの間のねじ山の作用により、クラッチ爪ナット620が爪歯車610側に移動する。これにより、クラッチ爪ナット620に押圧されながら、爪歯車610は、ブレーキ爪640及びブレーキ爪642に係止されることなく右回転しながらハンドル中心軸ストッパ552側に移動し、手動ハンドル306のクラッチ爪ナット620とハンドル中心軸ストッパ552との間に、ブレーキディスク630及びブレーキディスク632を介して挟み込まれてロックされる。
【0100】
ロックされることにより、ハンドル中心軸550とクラッチ爪ナット620と爪歯車610とハンドル中心軸ストッパ552とが、一体的に固定された状態となり、ハンドル本体500の握り部502から入力された回転力は、ハンドル中心軸550とクラッチ爪ナット620とクラッチ爪650とを介して、減速機304に出力される。
【0101】
よって、手動ハンドル306が伝達機構20に連結された状態となる。そして、手動ハンドル306が右回転されると、主ウエイト72及び補助ウエイト74の合計質量に起因する重力に抗してドラム230は右回転させられて、ウエイト用線状部材200はドラム230の外周面に巻き回され、主ウエイト72と補助ウエイト74とは、吊り上げられる。同時に、扉部12は開放される。
【0102】
図12は、本実施形態に係る防潮ゲートの手動閉鎖操作時の手動ハンドル、ねじブレーキ及び切離機構の断面図である。
【0103】
手動閉鎖操作の際には、手動ハンドル306は、噛合位置に人の手によって移動される。ねじブレーキ308は、扉部12を閉鎖する向きに手動ハンドル306を回転することによって、手動ハンドル306を伝達機構20から連結解除する。具体的には、手動ハンドル306は、押し込まれてねじブレーキ中心軸600が縮んだ状態で左回転(反時計回りに回転)され、ねじブレーキ308のクラッチ爪ナット620とクラッチ爪650とが噛み合わされる。
【0104】
手動ハンドル306が押し込まれて左回転されると、クラッチ爪ナット620が減速機304側に若干移動する。このとき、爪歯車610は、ブレーキ爪640及びブレーキ爪642によって係止され左回転しない。クラッチ爪ナット620が爪歯車610から離れると、手動ハンドル306のクラッチ爪ナット620と爪歯車610とハンドル中心軸ストッパ552との間のロックは解除される。これにより、手動ハンドル306が伝達機構20から連結解除される。
【0105】
減速機304からは、主ウエイト72の質量に起因する重力又は主ウエイト72及び補助ウエイト74の合計質量に起因する重力が、伝達機構20を介して、クラッチ爪650を右回転する向きに伝達されており、クラッチ爪650に噛合するクラッチ爪ナット620は右回転する。これにより、右ねじのクラッチ爪ナット620とねじブレーキ中心軸600との間のねじ山の作用により、再度、クラッチ爪ナット620は爪歯車610側に移動する。そして、再度、クラッチ爪ナット620と爪歯車610とハンドル中心軸ストッパ552とは、一体的に固定される。つまり、ねじブレーキ308の作用により、手動ハンドル306と伝達機構20とを連結解除するために手動ハンドル306を左回転させた分だけ自動的に主ウエイト72と補助ウエイト74と扉部12とは移動し、その移動によるねじブレーキ308の作用により再び、手動ハンドル306と伝達機構20とは連結され、主ウエイト72と補助ウエイト74と扉部12とは係止される。
【0106】
この後さらに、手動ハンドル306を左回転すると、手動ハンドル306が回転された分だけウエイト用線状部材200はドラム230の外周面から巻き解かれ、主ウエイト72と補助ウエイト74とは降下する。これによりドラム230が回転し、扉部12は閉鎖される。
【0107】
以上のように、切離機構506により、手動ハンドル306を押し込んで噛合位置まで移動させ回すと手動操作でき、引くと離脱位置になる。手動ハンドル306が離脱位置になると、電動操作により扉部12を開放する際に、又は、主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74の合計質量に起因する重力により扉部12を閉鎖する際に、手動ハンドル306が空回りしない。つまり、手動ハンドル306は、ねじブレーキ308と切離機構506とにより、手動ハンドル306を使用する場合においても使用しない場合においても、安全に、扉部12を開放及び閉鎖することができると共に、主ウエイト72及び補助ウエイト74を引き上げ及び引き下げすることができる。
【0108】
つまり、係止機構30を備える防潮ゲート10によれば、手動又は電動により扉部12を開放位置まで移動し開放位置で係止することができ、扉部12を閉鎖する時においては、手動又は電動により扉部12の係止状態を解除し、手動ハンドル306を用いて扉部12を閉鎖する場合においても扉部12を安全に閉鎖することができる。
【0109】
(駆動部の速度抑制機構)
駆動部18の速度抑制機構40は、伝達機構20に連結し扉部12の移動速度の変化を抑制するものである。
【0110】
速度抑制機構40は、ファンブレーキ400を有している。ファンブレーキ400は、ファン402と、ダンパー(図示しない)と、を有している。ファン402は、空気抵抗によって制動力を生じさせる部材であり、ダンパーは、ファン402に流入する空気量を調整する部材である。ファン402は、減速機304から左右方向の閉鎖側に延びる回転軸304aに連結されている。従って、ファンブレーキ400は、減速機304を介して伝達機構20のドラム230のドラム回転軸232に連結されている。このとき、ファン402の回転速度は、減速機304を介することにより、ドラム230の回転速度より増速される状態となっている。
【0111】
防潮時に扉部12を閉鎖する時、扉部12が動き出した後は、ファンブレーキ400によって扉部12の移動速度の変化を抑制するように構成されている。具体的には、ファンブレーキ400のダンパーの開閉によってファン402による制動力を調整し、ドラム230のドラム回転軸232の回転速度の調整が実行される。従って、仮に、主ウエイト72の質量又は主ウエイト72及び補助ウエイト74の合計質量が過大であったとしても、扉部12はファンブレーキ400によって安全な移動速度を保って閉鎖動作を継続することができる。なお、速度抑制機構40は、遠心ブレーキ、油圧ブレーキなどであってもよい。
【0112】
(防潮ゲートの制御システム)
図14は、防潮ゲート10の制御システムの一例を示すブロック図である。制御装置900は、操作回路・通信装置902と、バッテリー904と、バッテリーボックス906と、充電908と、スイッチS1及びスイッチS2及びスイッチS3及びスイッチS4と、サーミスタ910とを有している。操作回路・通信装置902はバッテリー904に電気的に接続されている。
【0113】
防潮ゲート10は、電源として、商用AC100V電源と、ポータブル発電機920と、ソーラーパネル922とが使用できるように構成されている。さらに、商用AC100V電源とポータブル発電機920とは、それぞれ、スイッチS1を介してバッテリー904に電気的に接続され、バッテリー904を充電することができる。また、ソーラーパネル922は、バッテリーボックス906及び充電908を介してバッテリー904に電気的に接続され、バッテリー904を充電することができる。
【0114】
バッテリー904は、操作回路・通信装置902に電力を供給する。そしてバッテリー904から操作回路・通信装置902に電力が供給されることにより、制御装置900は、操作回路・通信装置902に応じて、主ウエイト72及び補助ウエイト74並びに扉部12がディスクブレーキ310により係止状態を維持され、又は、係止状態を解除されるように構成されている。
【0115】
従って、制御装置900は、商用AC100V電源などを喪失した時においても、主ウエイト72及び補助ウエイト74並びに扉部12の係止状態を維持するためのバッテリー904を有し、遠隔操作又は全国瞬時警報システムからの情報、速報、注意報、若しくは警報に応じて主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74並びに扉部12の係止状態を解除することができるように構成されている。
【0116】
また、防潮ゲート10は、駆動部18の係止機構30の解除のトリガー信号として、全国瞬時警報システム(Jアラート)930からの信号と、携帯電話(スマートフォン)又は携帯タブレット932からの無線信号と、リモコン934等からの有線信号又は無線信号とを受信できるように構成されている。全国瞬時警報システム930からの信号は、自動的に操作回路・通信装置902によって受信される。
【0117】
また、防潮ゲート10は、扉部12の閉鎖手段として、上述の手動ハンドル306と、電動モータ300及び電動モータ用の電磁クラッチ302と、手動開放器311が付いたディスクブレーキ310と、が使用できるように構成されている。電動モータ300及び電磁クラッチ302は、サーミスタ910及びスイッチS1及びスイッチS2及びスイッチS3を介して商用AC100V電源及びポータブル発電機920に電気的に接続されている。手動開放器311が付いたディスクブレーキ310は、スイッチS4を介してバッテリー904に電気的に接続されている。
【0118】
従って、係止機構30は、全国瞬時警報システム930からの情報、速報、注意報、又は警報を自動的に受信すると、バッテリー904に充電される電気を利用して、係止用制動器であるディスクブレーキ310が開放されることによって、主ウエイト72及び補助ウエイト74並びに扉部12の係止状態を自動で解除することができる制御装置900を備えている。これにより、防潮時に人が扉部12を閉鎖するための操作を必要とすることなく、扉部12は自動的に閉鎖動作を開始することができる。
【0119】
また、地震等による災害時において商用電源を喪失した時においても、比較的小容量のバッテリー904によって、係止機構30による主ウエイト72及び補助ウエイト74並びに扉部12の係止状態を維持し、さらに、防潮時においては人が防潮ゲート10を操作するために防潮ゲート10に接近することを必要とすることなく、遠隔又は自動的に閉鎖動作を開始することができる。
【0120】
また、防潮ゲート10は、安全装置として、カメラ950と、回転灯・チャイム952と、挟まれ防止センサー954と、障害物センサー956とが使用できるように構成されている。カメラ950と回転灯・チャイム952と挟まれ防止センサー954と障害物センサー956とは、それぞれ、操作回路・通信装置902に電気的に接続されている。これにより、避難する人が横引き扉14に挟まれるなどの危険を回避できる。
【0121】
上述した実施形態において、主ウエイト72及び1以上の補助ウエイト74(複数のウエイト)は別途、独立した駆動機構として、様々な扉、門、ゲート等に用いることができる。上述した実施形態である防潮ゲートに用いられる他、例えば回転式のゲートに用いることができる。つまり、本発明における主ウエイト72と1以上の補助ウエイト74とからなる構成は、扉等を開閉するための駆動機構であって、鉛直方向に相互に連結する複数のウエイト、を有し、駆動開始時点においては、全てのウエイトはその重量を利用して駆動し、駆動対象物が動き出した後は、複数のウエイトの連結が鉛直下方側から逐次解除され、鉛直最上方に位置するウエイト及び当該ウエイトに連結するウエイトがその重量を利用して駆動する、駆動機構、として成立する。当該駆動機構は、上述した実施形態の駆動部18に含まれている。
そして、当該駆動機構によれば、駆動対象物の駆動開始時点は、確実に移動を開始することができ、駆動対象物が動き出した後においては、駆動対象物の移動速度を所定速度以下に抑え、駆動対象物は安全な速度を保って移動を続ける。
【0122】
以上のように、本発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、機序、形状、材質、数量、位置又は配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0123】
1,3 堤防
1a,3a 堤防の上面
2 堤防と堤防との間に形成されている開口部
10 防潮ゲート
12 扉部12
14 横引き扉
16 扉部支持部材
18 駆動部
20 伝達機構
30 係止機構
40 速度抑制機構
72 主ウエイト
73 繋部
74 補助ウエイト
76 連結部材
84 一方の扉用線状部材用フック
86 他方の扉用線状部材用フック
100a,100b,100c,100d ガイド支持部材
101 ガイド支持部材の腕部
102 ガイド
102a ガイドの手前側の側部
102b ガイドの奥側の側部
104a,104b,104c,104d,104e,104f ガイドローラ
110a,110b,110c,110d 車輪
114a,114b ローラー軸受け
116 車軸
130a,130b レール
200 ウエイト用線状部材
210,212 定滑車
211 定滑車回転軸
220,222 動滑車
221 動滑車回転軸
230 ドラム
232 ドラム回転軸
240 扉用線状部材
240a 扉用線状部材の一方の端部
240b 扉用線状部材の他方の端部
250,252,254 定滑車
251,253,255 定滑車回転軸
257 錨軸
260 手前側支持部材
262 奥側支持部材
264 支持部材
300 電動モータ
302 電磁クラッチ
304 減速機
304a 減速機の回転軸
306 手動ハンドル
308 ねじブレーキ
310 ディスクブレーキ(係止用制動器)
310a ローター
311 手動開閉器
312 制限開閉器
314,318 チェンスプロケット
316 ローラーチェン
400 ファンブレーキ
402 ファン
500 ハンドル本体
502 握り部
504 中心部
506 切離機構
508 ハンドルベース
510 ハンドル中心軸用孔
520,522,524,526 ハンドルガイド軸
530,532,534,536 ハンドルガイド
538 上ストッパ
540 下ストッパ
550 ハンドル中心軸
550a ハンドル中心軸の一方の端部
550b ハンドル中心軸の他方の端部
552 ハンドル中心軸ストッパ
554 ねじブレーキ中心軸用穴
556 ハンドル中心軸受け
600 ねじブレーキ中心軸
600a ねじブレーキ中心軸の一方の端部
600b ねじブレーキ中心軸の他方の端部
610 爪歯車
620 クラッチ爪ナット
630,632 ブレーキディスク
640,642 ブレーキ爪
650 クラッチ爪
660 平行キー
700 連結部材の上端の開口
702 連結部材の下端の開口
760 連結部材の掛止部
762 補助ウエイト用支持部
900 制御装置
902 操作回路・通信装置
904 バッテリー
906 バッテリーボックス
908 充電
910 サーミスタ
920 ポータブル発電機
922 ソーラーパネル
930 全国瞬時警報システム(Jアラート)
932 携帯電話(スマートフォン)又は携帯タブレット
934 リモコン
950 カメラ
952 回転灯・チャイム
954 挟まれ防止センサー
956 障害物センサー
S1,S2,S3,S4 スイッチ