(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】機械加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/08 20140101AFI20220815BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20220815BHJP
B23K 26/382 20140101ALI20220815BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20220815BHJP
B23K 26/062 20140101ALI20220815BHJP
G02B 13/00 20060101ALI20220815BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20220815BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
B23K26/08 Z
B23K26/38 Z
B23K26/382
B23K26/064 G
B23K26/062
G02B13/00
G02B5/04 Z
G02B26/10 104Z
(21)【出願番号】P 2021066496
(22)【出願日】2021-04-09
(62)【分割の表示】P 2018527013の分割
【原出願日】2016-08-12
【審査請求日】2021-05-10
(32)【優先日】2015-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/052384
(32)【優先日】2016-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518047322
【氏名又は名称】レーザー エンジニアリング アプリケーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エスティヴァル、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】マルタン、ポール - エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】クピシーヴィッツ、アクセル
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-248591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0175243(US,A1)
【文献】特開2002-066780(JP,A)
【文献】特開平08-015619(JP,A)
【文献】特開2007-012981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
G02B 5/04、13/00、26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源(33)と、
前記光源(33)により生成される入射光ビーム(1)から、出射光ビーム(7)を得る光学システム(2)であって、
前記入射
光ビーム(1)から得られる第1入射光ビーム(4)の反射により、第1反射光ビーム(23)を得る可動ミラー(19)
であって、前記第1入射光ビーム(4)と前記可動ミラー(19)の法線(16)とが、前記可動ミラー(19)のすべての可能な位置や方向について、0.01°から5°の範囲で離間している、可動ミラー(19)と、
前記第1反射
光ビーム(23)を第2入射光ビーム(8)として、前記可動ミラー(19)に戻ってくるように方向付ける光学要素(21)と、
を備え、
前記出射光ビーム(7)は、前記可動ミラー(19)上の前記第2入射光ビーム(8)の反射から得られる光学システム(2)と、
前記可動ミラー(19)を移動させる駆動手段(6)と、
前記出射光ビーム(7)を対象物(10)上に集束させる集束手段(9)と、
を備え、
前記光学システム(2)は、
前記出射光ビーム(7)は、入射光ビーム(1)から空間的にオフセットされるように、
前記可動ミラー(19)と前記光学要素(21)との位置の変化が、前記入射光ビーム(1)と前記出射光ビーム(7)との間の空間オフセットの変化を引き起こすことができるように、そして
前記可動ミラー(19)の位置に応じて、前記出射光ビーム(7)が異なる軌道をたどり、集束手段(9)より下流側の出射光ビーム(7)の歳差運動を駆動する働きをすることができるように構成される、
機械加工装置(100)。
【請求項2】
前記出射光ビーム(7)は
、前記入射光ビーム(
1)に対して並進される、請求項1に記載の機械加工装置(100)。
【請求項3】
前記可動ミラー(9)のみが可動する、請求項1、又は2に記載の機械加工装置(100)。
【請求項4】
前記集束手段(9)より上流側では、前記出射光ビーム(7)は、通常、円柱面を描き、前記可動ミラー(9)の位置や方向に関係なく、所定方向と平行なままである、請求項1~3のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項5】
前記可動ミラー(9)は、
前記第1入射光ビーム(4)から第1反射光ビーム(23)を得るように、
前記法線(16)
を有するほぼ平らな反射面を有し、
その法線(16)が3次元空間に軌道を描くことができるように可動であり、
前記光学システム(2)は、前記第1入射光ビーム(4)と前記可動ミラー(19)の法線(16)とが、前記可動ミラー(19)のすべての可能な位置や方向について、0°から15°の角度(15)で離間するよう構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項6】
前記光学要素(21)が再帰反射システムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項7】
前記光学要素(21)は、前記第1反射光ビーム(23)から後方光ビームとして、前記第2入射光ビーム(8)を与え、前記第1反射光ビーム(23)と前記第2入射光ビーム(8)は、前記再帰反射システムに対して前記第1反射光ビーム(23)の全ての可能な入射について平行である、請求項1~6のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項8】
前記光学システム(2)は、前記入射光ビーム(1)及び出射光ビーム(
7)の間で少なくとも2つの非平行方向に沿って2Dでオフセットを生じさせる、請求項1~7のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項9】
前記第1入射光ビーム(4)と前記可動ミラー(19)の
前記法線(16)とが、前記可動ミラー(19)のすべての可能な位置や方向について、
0.1°から
3°の角度(15)
で離間される、請求項1~8のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項10】
前記第1入射光ビーム(4)と前記可動ミラー(19)の前記法線(16)とが、前記可動ミラー(19)のすべての可能な位置や方向について、0.5°の角度で離間される、請求項1~9のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項11】
前記可動ミラー(19)は、回転、及び/又は並進、及び/又は傾斜して可動である、請求項1~1
0のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項12】
前記可動ミラー(19)は、その法線(16)に交差する回転軸(5)を中心に360°回転を描くことができ、前記駆動手段(6)は、前記可動ミラー(19)を前記回転軸(5)を中心に回転させることができる、請求項1~1
1のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項13】
前記可動ミラー(19)は、2つ以上の方向に傾斜可能であり、前記駆動手段(6)は、当該2つ以上の方向について前記可動ミラー(19)の傾斜を変更することができる、請求項1~1
2のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項14】
前記可動ミラー(19)は並進運動可能であり、前記駆動手段(6)は、前記可動ミラー(19)に並進運動(24)を行わせることができる、請求項1~1
3のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項15】
前記光学要素(21)は並進運動可能であり、前記駆動手段(6)は、前記光学要素(21)に並進運動を行わせることができる、請求項1
、2、及び4~1
4のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項16】
前記可動ミラー(19)は、2つのほぼ平らな反射面を有し、
各
前記2つのほぼ平らな反射面反射面は、法線
を有し、
一方の反射面は、前記入射光ビーム(1)から生じる前記第1入射光ビーム(4)から前記第1反射光ビーム(23)を得て、
もう一方の反射面は、前記第2入射光ビーム(8)を反射させて前記出射光ビーム(7)を得る、請求項1~1
5のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項17】
前記光学要素(21)は、光ビームの偏光を維持することができる、請求項1~1
6のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項18】
前記光学要素(21)は、
・ダブプリズム(29)と直角二等辺プリズム(30)、
・半波長遅延板(45)とルーフプリズム(35)と偏光ビームスプリッターキューブ(50)、
・ダブプリズム(29)とルーフプリズム、
・ダブプリズム(29)と2つのルーフプリズム、
・ダブプリズム(29)と2つのミラー、
・5つのミラー、
・キューブコーナー、
のうち、1以上の構成を備える、請求項1~1
7のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項19】
前記光学システム(2)は、前記入射光ビーム(1)を偏向させることにより、前記第1入射光ビーム(4)を得る第1ビーム誘導システム(20)をさらに備え、前記可動ミラー(19)は、前記駆動手段(6)と前記第1ビーム誘導システム(20)との間に配置されている、請求項1~1
8のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【請求項20】
前記第1ビーム誘導システム(20)は、
・ビームスプリッターキューブ、
・偏光ビームスプリッターキューブ(25)、
・第1の1/4波長遅延板(27)、
のうち、1以上の構成を備える、請求項1~1
9のいずれか一項に記載の機械加工装置 (100)。
【請求項21】
前記光学システム(2)は、前記可動ミラー(19)での前記第2入射光ビーム(8)の反射を偏向させることにより、前記出射光ビーム(7)を得る第2ビーム誘導システム(22)をさらに備え、前記可動ミラー(19)は、前記駆動手段(6)と前記第2ビーム誘導システム(22)との間に配置されている、請求項1~
20のいずれか一項に記載の機械加工装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様によれば、本発明は、機械加工装置に関し、特に、光により対象物の機械加工を行う機械加工装置に関するものである。第2の態様によれば、本発明は、光ビーム、好ましくはレーザービームにより対象物又は物質片の機械加工を行う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、部品の機械加工には、レーザービームなどの光ビームを用いることができる。実際には、対象物の物質を融解又は蒸発して、穴や、例えば、彫刻デザインを作成したり、要素を二つに分割したりすることができる。
【0003】
レーザービームにより、線に沿って対象物の機械加工や彫刻を行う装置もある。このような装置は、「1D機械加工装置」と呼ばれることもある。用途によっては、機械加工により対象物に穴を開けることができる装置が望ましい。
【0004】
レーザービームが対象物にその表面と垂直に当たる場合、穴や切り口の側面は、その表面と完全に垂直にはならず、通常、そのビームが向けられた表面の法線に対して約4°の角度にオフセットされている。用途によっては、例えば、時計製造など、精密機器の用途において、ある特定の非常に耐性の低い部品にとって、このように処理中の表面に対して側面がずれることは好ましくはない。一つの解決法としては、レーザービームを対象物表面の法線に対して少し傾ける、一般的には、4°より大きい角度に傾ける。
【0005】
特許文献1には、レーザービームにより空洞を形成する又は物質を除去する装置が記載されている。この文献の
図1からも分かるように、光ビームは、対象物と垂直ではない迎え角を有することができる。出射光ビームを集束する前に入射光ビームに対して横方向にオフセットすることができる偏心システムは、ダブプリズム、アッベ・ケーニッヒプリズム、又は、3つのミラーから成るシステムを備えていてもよい。特許文献1に開示されている光学システムは、比較的複雑な光学システムである。具体的には、このシステムは移動式であるため、かなり複雑な駆動手段を設ける必要があり、この駆動手段としては、光ビームの光路に干渉しないようなものを選択しなければならない。また、補償光学システムによって、偏心システムにおける形状誤差を補う必要がある。この補償光学システムは、装置のサイズと重量を両方増大させてしまう。また、補償光学システムは、それ自体がさらなる複雑化につながる。最後に、入射及び出射光ビーム間の横方向オフセットを制御するには、細心の注意が必要となる。
【0006】
特許文献2には、処理対象の試料や対象物の表面に対して垂直ではない光路に従って、光ビームを対象物に向けることができる光学システムが提案されている。例えば、この文献の
図1に示すビーム115及び
図2に示すビーム115’’を参照。このシステムは、入射光ビーム112に対してオフセットされた出射光ビーム114を得ることができる第1部を備えている。その後、光集束部により対象物に出射光ビーム114を集束させる。この光学システムもかなり複雑なシステムである。特許文献1の場合と同様に、このシステムは移動式であるため、専用のかなり複雑な駆動手段を設ける必要があり、この駆動手段としては、光ビームの光路に干渉しないようなものを選択しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7,842,901号明細書
【文献】米国特許第4,822,974号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】「Les Instruments d’optique. Etude theorique, experimentale et pratique」、 2nd Ed. Luc Dettwiller、 Ellipse
【文献】「Optique」、 E Hecht, Pearson Education
【文献】「光学と光学機器:入門編」、B.K.Johnson, Dover
【文献】「外部ビリヤード:有界領域の外側のシステムと影響」、A.Plakhov、シュプリンガー・サイエンス・アンド・ビジネス・メディア
【発明の概要】
【0009】
第1の態様によれば、本発明の目的の一つは、光ビームにより、より簡単に対象物の機械加工を行う装置を提供することにある。この目的を達成するために、本発明者らは、
光源と、
入射光ビームから、この入射光ビームに対して空間的にオフセットされた出射光ビームを(その出射光ビームが集束手段より上流側で所定の方向と平行なままとなるように)得る光学システムであって、
法線によって定められたほぼ平らな反射面を有し、上記入射光ビームから生じる第1入射光ビームから第1反射光ビームを得るよう構成され、
その法線が3次元空間に軌道を描くことができるよう可動式のミラーを備え、
上記第1入射光ビームと可動ミラーの法線とが、可動ミラーのすべての可能な位置や方向について、0°から15°の角度15で離間するよう構成されている、光学システムと、
上記可動ミラーを移動させる駆動手段と、
上記第1反射光ビームから、上記可動ミラーのすべての可能な位置や方向について、ミラーに第2入射光ビームを得るよう、かつ、上記第2入射光ビームからミラーに出射光ビームを得るように可動ミラーに対して位置決めされ、
(本発明の光学システムの)上記可動ミラーのすべての可能な位置や方向について、その可動ミラーに、上記第1反射光ビームと平行な第2入射光ビームを得ることができる、再帰反射システムと、
上記出射光ビームを対象物上に集束させる集束手段と、
を備える機械加工装置を提案している。
【0010】
上記ミラーの法線は、3次元空間において軌道(運動)を描くことができる。つまり、光学システムは、上記法線が3D表面、例えば、円すい面、すなわち、平面ではない面を形成できるよう構成されている。可動ミラーの位置や方向に関係なく、出射光ビームは、集束手段より上流側の所定位置と平行なままとなる。これは、特に、再帰反射システムを用いることにより可能となる。
【0011】
本発明の装置の光学システムは、可動ミラーの位置が変化することで、入射光ビームと出射光ビームとのオフセットを(2次元又は2Dに)変化させることができるよう構成されている。つまり、機械加工装置の光学システムは、入射光ビームと出射光ビームとの間の空間オフセットを制御することができる。例えば、出射光ビームは、入射光ビームに対して傾斜してオフセットさせることができる、及び/又は、入射光ビームに対して並進させることができる。そして、このオフセットされた出射光ビームをワークピースに向けて、集束手段を通るワークピースの法線に対してゼロ以外の角度で機械加工を行ってもよい。その結果、彫刻又は穿孔処理において自然に生じるコニシティや、出射光ビームのオフセットを調整することにより、正、中性又は負のコニシティを有するカット、彫刻、ボアホールの機能が補われることになる。
【0012】
本発明に係る機械加工装置の光学システムでは、駆動手段はミラーの後方に、つまり、入射光ビームにより、ミラーの光を受光しない側に配置されてもよい。従って、本発明に係る光学システムは、移動式ではなく、反射式のものと見なされてもよい。これにより、より簡素な駆動手段(例えば、「ブラシレス」型モータや線形又は圧電位置決めステージなど)を用いることが可能となる。そうすることで、上記光学システムを用いた本発明の機械加工装置も簡素化され、操作だけでなくメンテナンスがより簡単になる。摩耗部分は、通常、可動部分である。本発明の機械加工装置によれば、一般に、可動な要素は一つだけであり、それはミラーである。ミラーは、特許文献1及び特許文献2における移動式部品と比べても安価なものである。また、可動ミラーは、本発明の装置でより簡単にガイドすることができる。これにより、特に、部品の交換が必要な場合に、本発明の機械加工装置のメンテナンスがより簡単になる。特許文献1及び特許文献2では、光学システム、場合によっては、非常に複雑な装置が高速で回転する。本発明の装置では、一つ又は複数の単純な光学システム、すなわち、ミラーを移動させればよいだけである。これによりメンテナンスにかかるコストが節約される。本発明に係る装置は、単純な光学素子を使用し、また、安価であると同時に長持ちする。
【0013】
本発明の装置は、「2次元(2D)機械加工装置」と呼ばれることもある。出射光ビームは、集束手段より前方(又は上流側)の3次元空間に軌道(運動)を描くことができる。つまり、本発明の装置の光学システムは、入射及び出射光ビームの間で(一方向だけに沿ってではなく)2Dで(少なくとも2つの非平行方向に沿って)オフセットを生じさせることができる。このオフセットに関する2D特性は、ミラーの法線が3次元空間に軌道を描くことができるため、並びに、再帰反射システム(又は再帰反射器)を用いることにより、本発明の装置で可能となる。同様に、ミラーは、その砲戦が3次元空間に運動を描くことができるよう可動式であると言える。再帰反射システムは、可動ミラーのすべての可能な位置や方向について、第1反射光ビームと平行な第2入射光ビームを可動ミラーに与えることができる。本発明の装置の光学システムによれば、第1入射光ビームと可動ミラーの法線によって定められた面に関係なく、第1反射光ビームと平行な第2入射光ビームを可動ミラーに得ることができる。これは、再帰反射システム(再帰反射器と呼ばれることもある)を用いることによって可能となる。第1反射光ビームと第2入射光ビームは、同じ線に沿って互いに反対の方向を向いているので、第1反射光ビームと第2入射光ビームは非平行であると言える。2つの平面ミラーは、第1入射光ビームと可動ミラーの法線によって定められた面に関係なく、第1反射光ビームと平行な第2入射光ビームを可動ミラーに得ることができないので、それらが再帰反射システムを構成することはない。そのため、例えば、集束手段を含む面では、出射光ビームは、必ずしも平面ではない面に沿った軌跡を描くことができる。このことは、機械加工によって穴を形成可能な装置を求める場合に重要である。本発明の装置では、一つの移動式要素、すなわちミラーだけで出射光ビームのオフセットの「2D」特性を得ることができる。その結果、駆動手段に対して一つの要素(例えば、一つのモータや一つの圧電素子)しか必要としない。本発明によれば、2つの異なる1D運動を2つの異なる可動式光学素子に与え、それぞれが入射光ビームと出射光ビーム間の一方向に沿ってオフセットを生じさせることができる、2つの異なる駆動部(例えば、2つのモータ)を同期させるための同期システムを必要としない。
【0014】
当業者に知られている再帰反射システム(又は再帰反射器)については、例えば、非特許文献1~4を参照されたい。再帰反射システムは、前方光ビームから後方光ビームを送る(又は得る)ことができる光学素子(又は光学システム)であり、これらの後方及び前方光ビームは、再帰反射システムに対して前方光ビームの全ての可能な入射について平行である(前方及び後方光ビームは、互いに反対方向でありながら、同じ線に沿って進行し、非平行と呼ばれることもある)。この再帰反射システムのさまざまな例を以下に示す。
【0015】
本発明の装置の光学システムは、第1入射光ビームとミラーの法線とが、可動ミラーのすべての可能な位置や方向について、0°から15°の角度で離間するよう構成されている。つまり、第1入射光ビームと第1反射光ビーム間の角度は、可動ミラーのすべての可能な位置や方向について、0°から30°の範囲である。そして、出射光ビームは、集束手段より前方(又は上流側)であり、伝播方向と垂直な面において、円に近い曲線又は円を描くことができる。その結果、集束手段の後方に位置する対象物に、より質の高い穴(及びカット)を形成することができる。詳細な説明から明らかとなるように、本発明の装置のさまざまな好適実施例によれば、このように入射光ビームとミラーの法線とを角度をつけて離間させることが可能となる。
【0016】
本発明に係る装置によれば、他の利点も得られる。その光学システムは非常にコンパクトである。さまざまな光学素子が存在するため、1次元ではなく、2次元を用いて入射及び出射ビーム間にオフセットを生じさせる。2次元を使って入射及び出射光ビーム間にオフセットを生じさせることにより、空間の有効利用が図られるため、光学システム(ひいては機械加工装置)を比較的小さな寸法で構成することが可能となる。特許文献2号の光学システムは、特に、入射光ビームと出射光ビームとの間に大きな横方向オフセットが求められる場合、かなり大型となる。具体的には、この横方向オフセットは、2つのプリズムを分離することによって定められる。また、本発明に係る装置は比較的軽量でもある。入射及び出射光ビーム間のオフセットは、ミラーと再帰反射システム間の位置を調整するだけで容易に制御可能である。このミラーと再帰反射システムの大きさと重量はいずれも、既知のシステムで用いられるプリズム及び/又はミラーを組み立てたものよりも小さい。結果的に、本発明の装置は、別の理由でも小型で軽量の特徴を有する。すなわち、その光学システムは、光ビームがミラーで2回反射されるため、入射及び出射光ビーム間の横方向オフセットを可能にする光学偏心素子の欠陥による影響がほとんどない。この2回の反射によって、ミラーに関連する誤差や、その考え得る運動を自動的に補正することが可能となる。具体的には、特許文献1の光学システムとは異なり、補償光学システムを設ける必要がない。従って、本発明に係る装置は、ミラーにおける2回の反射により自動補正を行うことができるため、簡素化も図られる。
【0017】
本発明の機械加工装置によれば、出射光ビームは、可動ミラーの位置や方向に関係なく、集束手段に到達するまで所定の方向と平行なままである。これによって、より質の高い穴やカットを得ることができる。集束手段の上流側では、出射光ビームは、一般に、円柱(又は円柱面)を描くことができる。本発明に係る機械加工装置の光学システムは、集束手段を除き、光強度がニュートラルとなる。集束手段は、出射光ビームを対象物の小さい部分に集束させることができる。一般的に、出射光ビームは、この集束手段より前方(又は上流側)に円柱面を描く。この集束手段については、当業者に知られているさまざまなものを用いてもよい。一つの例としては、収束レンズがある。この場合、この収束レンズは、(集束するまで)出射光ビームの主伝播方向と垂直に配置される。集束手段の他の例としては、テレセントリックレンズがあるが、他の例を用いてもよい。本発明の機械加工装置の光学システムが集束手段を備えていることが好ましい。
【0018】
本発明に係る装置は、例えば、(完全なリストではないが)彫刻、表面の模様付け、印字、空洞や穴の穿孔など、数多くの用途で使用されてもよい。本発明の機械加工装置によれば、集束手段より下流側にある対象物の非常に小さい部分(ほぼ点)に出射光ビームを集束又は集光させることができる。そのため、本発明の装置は、レーザー機械加工装置やレーザー彫刻装置と呼ばれることもある。
【0019】
駆動手段としては、当業者に知られているさまざまなタイプのものを使用してもよい。一つの例としては、モータ、好ましくは、電気モータがあるが、他の例が用いられてもよい。この駆動手段は、可動ミラーに機械的に接続されている。
【0020】
光源は、入射光ビームを生成することができる。この光源としては、レーザー光源が好ましい。レーザーとしては、例えば、連続レーザーであっても、パルスレーザーであってもよい。この生成されたレーザービームは、波長が0.2μmから2μm、より好ましくは、1μmのビームであるが、これとは異なる波長を有する他のレーザービーム(ひいてはレーザー光源)を用いてもよい。そのため、光ビームの波長は、例えば、200nmから15μmまでの範囲であってもよい。入射光ビームは、円形に偏光されることが好ましい。光学システムは、入射及び出射光ビーム間の偏光を維持可能であることが好ましい。
【0021】
ミラーは、
再帰反射システムに向かって、第1反射光ビームに従って、第1入射光ビームを反射させ、
第2入射光ビームを反射させて、この2回目の反射により出射光ビームを得ることができるよう配置されている。
【0022】
可能な一好適実施例によれば、上記機械加工装置は、その光学システムが、第1入射光ビームと可動ミラーの法線とが、その可動ミラーのすべての可能な位置や方向について、0.01°から5°の角度で離間するよう構成されていることを特徴とする。これにより、集束手段より前方(又は上流側)であり、主伝播方向と垂直な面において出射光ビームによって描かれた曲線がさらに円に近づく、又は、完全な円となるので、機械加工の対象物にさらに質の高い穴を形成することができる。
【0023】
可能な一好適実施例によれば、上記機械加工装置は、その光学システムが、第1入射光ビームと可動ミラーの法線とが、その可動ミラーのすべての可能な位置や方向について、0.1°から3°の角度で、好ましくは0.5°の角度で離間するよう構成されていることを特徴とする。これにより、集束手段より前方であり、主伝播方向と垂直な面において出射光ビームによって描かれた曲線がさらに円に近づく、又は、完全な円となるので、さらに質の高い穴を形成することができる。
【0024】
可能な一実施例によれば、本発明の機械加工装置は、機械加工の(すなわち、上記出射光ビームが照射される)対象物を移動させる手段(又は位置決め手段)を備えている。この位置決め手段としては、当業者に知られているさまざまなものを用いることができる。
【0025】
本発明者らによって提案された装置は、集束手段より上流側で出射光ビームを偏向させる偏向システムを備えていることが好ましい。従って、この偏向システムは、光学システムの出力と集束手段の間(光学システムに第2ビーム誘導システムが含まれる場合は、その第2ビーム誘導システムと集束手段の間)に備えられている。この好適な変形例によれば、現在知られているものよりはるかに大きなマーキング領域を得ることができる。従って、例えば、10×10mmから40×40mmの大きさのマーキング領域を得ることができる。前項で述べたように、本発明者らによって提案された装置は、機械加工又は彫刻の対象物をシフト又は移動させる手段をさらに備えていてもよい。可動ミラーの位置(例えば、角度位置)は、偏向システムによって生じた運動及び/又は対象物の位置によって決まってもよい。機械加工の対象物を移動させる位置決め手段と、集束手段より上流側で出射光ビームをシフトさせる偏向システムは単体で用いることもできるし、組み合わせて用いることもできる。一般的には、偏向システム(例えば、スキャナー)は、対象物を移動可能な位置決め手段と比べて、運動速度を高めることができる。
【0026】
可能な一好適実施例によれば、可動ミラーは、その法線に対する割線である回転軸を中心に完全に回転することができ、駆動手段は、そのミラーに回転軸を中心とした回転運動をさせることができる。つまり、本好適な実施例によれば、ミラーは、回転軸を中心に完全な回転(360°)を描くことができる。本好適な実施例では、駆動手段は、回転軸を中心としたミラーの完全な回転又は回転運動を発生させることができる。そして、駆動手段は、「ブラシレス」タイプの電気モータを備えていることが好ましい。集束手段より上流側では、本好適な実施例によれば、出射光ビームは、通常、円柱面を描き、ミラーの位置や方向に関係なく、所定方向と平行なままである。本好適な実施例によれば、出射光ビームに、集束手段より後方(又は下流側)に歳差運動を描かせることが特に容易となる。このような運動は、機械加工が施された端部がすべて、機械加工が行われている部品(又は対象物)の表面と垂直となるようにする場合に好ましい。従来技術の考察で述べたように、レーザービームが対象物にその表面と垂直な方向で当たる場合、その側面は、その表面と完全に垂直にはならず、通常、約4°の角度でオフセットされる。特許文献1及び特許文献2に記載のシステムとは異なり、本発明の装置の光学システムにおける駆動手段の駆動軸は、ここで光ビームがたどる光路とは干渉せず、いくつかの好適な実施例では、傾斜した可動ミラーの後方にしか存在しない。つまり、回転可能な傾斜したミラーは、入射光ビームから生じる光ビームが横切らない部分(例えば、後部)を有することができる。従って、駆動手段は、そこに光路に干渉せずに配置してもよい。こうして、本発明に係る装置は、簡素化と低コスト化が図られる。特許文献1及び特許文献2に記載のシステムでは、出射光ビームの歳差運動を発生させたい場合、光ビームを通過させる中空軸が必要となる。それと同時に、回転可能な部品数が、本発明の装置では傾斜されたミラーに限られ、特許文献1及び特許文献2のプリズムに比べて、より簡単かつ容易に回転させることができる。このため、駆動手段は、より小型で強度の低いものであってもよく、本発明の装置全体のさらなる小型化及び軽量化が図られる。特許文献1及び特許文献2に記載のような回転システムは、一般的に、例えば、30,000rpmと非常に高速な回転を行える必要がある。回転が必要な要素のサイズと重量が増大するにつれて、それらを回転させるのがより困難になる。例えば、特許文献1に記載するもののように、回転させる要素が大きくかつ重い場合、例えば、水冷システムなどの冷却システムを設ける必要がある。ミラーが回転可能である一好適実施例では、ミラーは、例えば、毎分100から200000回転の速度(rpm)で、より好ましくは、1000から100000rpmで回転させてもよい。その方向を2つ以上の非平行方向に対して変更可能なミラー(回転軸を中心に完全な回転運動をせずに傾斜可能なミラー)に関しては、回転可能なミラーを用いた機械加工装置の一好適実施例によれば、以下の利点が得られる。すなわち、機械加工により穴を形成する場合に効率化が図られ、ミラーの方向をより迅速に変更することができ、振動が少なくて済む。方向を変更する動きに比べて、回転運動がより連続的に行われる。
【0027】
ミラーが回転可能な場合、その回転軸とミラーの法線とは、通常、並行ではない。ミラーの回転軸の方向は、変更可能であることが好ましい。回転軸とミラーの法線との間の最大角度は、0.1°から2°であることが好ましく、0.5°であることがさらに好ましい。
【0028】
他の可能な実施例によれば、ミラーは、2つ以上の方向に対して傾斜可能であり、駆動手段は、それらの2つ以上の方向についてミラーの傾斜を変更可能である。この場合、駆動手段は、一つ又は複数の圧電位置決めステージや三脚やMEMSを備えていることが好ましい。集束手段より上流側では、通常、出射光ビームは、本好適な実施例によれば、円柱面を描き、ミラーの方向に関係なく、所定の方向と平行なままとなる。本好適な実施例によれば、ミラーの傾斜は、2つ以上の方向に変更可能である。傾斜運動は、軸を中心とした、好ましくは、ミラーの平らな反射面における(部分的な)回転運動として見られてもよい。回転運動(又は完全な回転)を描くことができるミラーに関して、2つ以上の方向に対して傾斜可能なミラーを用いた機械加工装置の好適な実施例によれば、以下の利点が得られる。すなわち、円形ではない穴の形成がより簡単になる。例えば、出射光ビームに所定の軌道を与えることがより容易となるので、四角形の穴の形成がより簡単になる。例えば、四角形の穴の形成には、4つの選択した方向に沿って、4つの運動を行う必要がある。
【0029】
可能な一実施例によれば、ミラーは、並進運動可能(又は並進方向に自由かつ移動可能)であり、駆動手段は、このミラーに並進運動を行わせることができる。本実施例では、駆動手段は、ミラーに、再帰反射システムに対して一つ又は複数(例えば、2つ)の方向に沿って並進運動を行わせることができる。この場合、駆動手段は、線形位置決めステージを備えていることが好ましいが、他の形態を用いてもよい。本好適な実施例によれば、(集束手段より前方で)入射及び出射光ビーム間の横方向オフセットを容易に変更可能となる。ミラーの位置を変化させることによって、光路長、ひいては横方向オフセットを変更することができる。これについては、詳細な説明からより明らかとなるであろう。このオフセットの制御も、ミラーの位置に基づいて行われるため、非常に簡単である。
【0030】
他の可能な実施例によれば、再帰反射システムは、並進運動可能(又は並進方向に自由かつ移動可能)であり、駆動手段は、この再帰反射システムに並進運動を行わせることができる。ミラーを移動可能な駆動手段は、この再帰反射システムを移動可能な駆動手段とは異なる。
【0031】
可能な一実施例によれば、光学システムは、第1及び第2入射光ビームが、ミラーの同じ平らな反射面に当たることができるよう構成されている。そして、本発明の装置は、ミラーの光ビームが横切らない側に駆動手段を配置することができるので、特に単純である。
【0032】
他の可能な実施例によれば、ミラーは、2つのほぼ平らな反射面を有し、
各反射面は、法線によって画定され、
一方の反射面は、入射光ビームから生じる第1入射光ビームから第1反射光ビームを得て、
もう一方の反射面は、第2入射光ビームを反射させて出射光ビームを得る。
この場合、第1及び第2入射光ビームは、ミラーの2つのことなる反射面に当たる。これにより、第1及び第2入射光ビームが2つの異なる面に当たる際、入射光ビームをミラーの法線方向付近に維持しつつ、より小型のミラーを用いることができる。
【0033】
再帰反射システムは、光ビームの偏光、具体的には、第1反射光ビームの偏光を維持することができる。これにより、第1反射光ビームのパワー損失を軽減又は回避することができる。詳細な説明から明らかとなるように、偏光を維持可能な再帰反射システムとしては、さまざまな可能な実施例がある。再帰反射システムでは、さまざまな平面(又は平坦な)反射面において、さまざまな反射が生じる。直線偏光を維持するための再帰反射システムについては、以下のような2つの実施例が考えられる。
再帰反射システムの第1平面反射面で、その第1平面反射面と平行な直線偏光により偶数回反射を行い、第2平面反射面で、その第2平面反射面と垂直な面に属する直線偏光により奇数回反射を行う。
再帰反射システムの第1平面反射面で、その第1平面反射面と平行な直線偏光により奇数回反射を行い、再帰反射システムの第2平面反射面で、その第2平面反射面と垂直な面に属する直線偏光により偶数回反射を行う。
偏光を維持可能な再帰反射システムは、
ダブプリズムと直角二等辺プリズム、又は
ダブプリズム、半波長遅延板、ルーフプリズム、偏光ビームスプリッターキューブ、又は
ダブプリズムと2つのミラー、又は
5つのミラー、
を備えていることが好ましい。
上記以外の例も可能である。
【0034】
上記再帰反射システムは、さまざまな光学素子を備えることができる。本項では、非限定的な例を挙げる。
可能な一実施例によれば、再帰反射システムは、キューブコーナーを備えている。これに関連する利点としては、単純な光学素子を一つしか必要とせず、本発明の装置も特に単純である。
他の可能な実施例によれば、再帰反射システムは、ダブプリズムと直角二等辺プリズムを備えている。これにより、再帰反射システムが非常に簡素化されるので、偏光を維持しつつ、非常に単純な機械加工装置を得ることができる。
さらに他の可能な実施例によれば、再帰反射システムは、(ダブプリズムと直角二等辺プリズムに加えて)半波長遅延板、ルーフプリズム(例えば、当業者に知られているアミチルーフプリズム)、偏光ビームスプリッターキューブをさらに備えている。これらのうちのいくつかを組み合わせて用いることもできる。例えば、再帰反射システムは、2つのミラーとダブプリズム、2つのルーフプリズムとダブプリズム、5つのミラー、ダブプリズムとルーフプリズムから構成することができる。その他の組み合わせやその他の実装も可能である。
【0035】
本発明の機械加工装置の光学システムは、入射光ビームを偏向することによって、第1入射光ビームを得る第1ビーム誘導システムを備えていることが好ましい。本好適な実施例によれば、ミラーへの第1入射光ビームを得る第1ビーム誘導システムによって、(例えば、約90°に)入射光ビームを偏向させることができる。このような好適な実施例によれば、既知のシステムと比べて、さらなる小型化を図ることができる。ミラーは、それを移動可能な駆動手段と上記第1ビーム誘導システムとの間に配置することが好ましい。本好適な実施例によれば、可動ミラーと容易に接続な可能な非常に単純な駆動手段を用いることができる。第1ビーム誘導システムによれば、好ましくは30°から150°、より好ましくは60°から120°、さらに好適な変形例によれば、90°の角度で入射光ビームを偏向させることができる。
【0036】
本発明の機械加工装置の光学システムは、ミラーに入射した第2入射光ビームの反射を偏向させることによって出射光ビームを得る第2ビーム誘導システムを備えていることが好ましい。本好適な実施例によれば、第2ビーム誘導システムによって、第2入射光ビームの反射を、例えば、90°に偏向させることができる。このような好適な実施例によれば、既知のシステムと比べて、さらなる小型化を図ることができる。ミラーは、それを移動可能な駆動手段と上記第2ビーム誘導システムとの間に配置することが好ましい。本好適な実施例によれば、可動ミラーと容易に接続な可能な非常に単純な駆動手段を用いることができる。第2ビーム誘導システムによれば、好ましくは30°から150°、より好ましくは60°から120°、さらに好適な変形例によれば、90°の角度で光ビームを偏向させることができる。
【0037】
第1(又は第2)ビーム誘導システムは、例えば、(偏光)ビームスプリッターキューブ、及び/又は、第1の1/4波長遅延板から構成することができる。第1及び第2ビーム誘導システムは、2つの異なる要素であり、同じ光学特性を有することが好ましい。
【0038】
第1及び第2ビーム誘導システムを用いることによって、本発明の光学システムは、他の既知のシステムと比べて、さらなる小型化を図ることができる。2次元を使って入射及び出射光ビーム間にオフセットを生じさせることにより、空間の有効利用が図られるため、光学システムを比較的小さな寸法で構成することが可能となる。特許文献2号の光学システムは、特に、入射光ビームと出射光ビームとの間に大きな横方向オフセットが求められる場合、かなり大型となる。具体的には、この横方向オフセットは、2つのプリズムを分離することによって定められる。第1及び第2ビーム誘導システムを使用した場合、入射及び出射光ビームは、通常、互いに平行であり、両者間のオフセットは「横方向」である。可動ミラーは、駆動手段と第1(又は第2)ビーム誘導システムとの間に配置されることが好ましい。
【0039】
一好適な実施例によれば、本発明者らは、
光源と、
入射光ビームから、その入射光ビームに対して空間的にオフセットされる出射光ビームを(その出射光ビームが集束手段より上流側で所定の方向と平行なままとなるように)得る光学システムであって、
入射光ビームを偏向させることによって、第1入射光ビームを得る第1ビーム誘導システムと、
第1入射光ビームから第1反射光ビームを得る可動ミラーと、
上記可動ミラーを動かす(又は移動させる)駆動手段と、
上記第1反射光ビームから、上記ミラーに入社した第2光ビームを得る再帰反射システムと、
上記ミラーに入射した第2光ビームの反射を偏向させることによって、出射光ビームを得る(上記第1ビーム誘導システムとは異なる)第2ビーム誘導システムと、
上記出射光ビームを対象物上に集束させる集束手段と、
を備えた光学システム、
を具備し、
上記光学システムは、可動ミラーの位置の変化によって、入射光ビームと出射光ビームとの間の空間オフセットを変化させることができるよう構成されている、機械加工装置を提案している。
ミラーは、法線によって定められた平らな反射面を有することが好ましい。
第1及び第2ビーム誘導システムは、2つの異なる要素であり、同じ光学特性を有することが好ましい。
ミラーは並進運動可能であり、駆動手段は、そのミラーに並進運動を行わせることができることが好ましい。
ミラーは傾斜可能であり、駆動手段は、そのミラーの傾斜を変更可能であることが好ましい。ミラーは、2つ以上の非平行方向に対して傾斜可能であることが好ましい。
ミラーは回転可能であり、駆動手段は、そのミラーを、その平らな反射面の法線に対して平行ではない(例えば、割線である)回転軸を中心に回転させることができることが好ましい。
ミラーは、駆動手段と第1ビーム誘導システム及び/又は第2ビーム誘導システムとの間に配置されていることが好ましい。
集束手段より上流側では、本好適な実施例によれば、出射光ビームは、通常、円柱面を描き、ミラーの位置や方向に関係なく、所定方向と平行なままである。
【0040】
第1及び第2ビーム誘導システムは同じ仕様であることが好ましい。例えば、第1及び第2ビーム誘導システムの第1及び第2偏光ビームスプリッターキューブは同じ仕様である。他の例によれば、第1及び第2ビーム誘導システムの第1及び第2の1/4波長遅延板は同じ仕様である。
【0041】
本発明の機械加工装置の光学システムは、入射光ビームの偏光を変更する回転可能な半波長板と、この半波長板を回転させる手段とをさらに備えていることが好ましい。光学システムが第1及び第2偏光ビームスプリッターキューブを備えている場合、この回転可能な半波長板は、スイッチとして機能することができる。この回転可能な半波長板を回転させることにより、光ビームの偏光が回転する。そして、光ビームが第1及び第2偏光ビームスプリッターキューブで反射されて、オフセットされた出射光ビームが得られるよう、半波長板の位置を選択することができる。半波長板の他の位置によれば、光ビームは、偏向せずに、第1及び第2偏光ビームスプリッターキューブを透過する。そして、出射光ビームは、入射光ビームから空間的にオフセットされない。ミラーが回転すると、歳差運動をたどる又はたどらない出射光ビームを得ることができる。
【0042】
本発明の機械加工装置のミラーは、第1ビーム誘導システム、再帰反射システム、第2ビーム誘導システムのうちの少なくとも一つの要素に対して可動である。好適な変形例によれば、ミラーは、上記3つの要素すべてに対して可動である。
【0043】
ミラーの数多くの可能な位置に関して、ミラーを、第1ビーム誘導システムに対して、第1入射光ビームと第1反射光ビームとがたどる光路が異なるよう配置する。ミラーの数多くの可能な位置に関して、ミラーを、再帰反射システムに対して、第2入射光ビームとミラーでの反射とがたどる光路が異なるよう配置する。
【0044】
本発明の機械加工装置の光源は、例えば、cwモノモードのファイバーレーザー又はパルスファイバーレーザーである。他の可能な実施例によれば、光源は、パルス幅が10ps未満のレーザー光源である。本発明者らに提案された装置は、入射光ビームのコリメーションを変更する一次光学システムを備えていることが好ましい。この好適な変形例によれば、光ビームの広がりによって、直径が正確に制御されたボアホールを形成するために、自然焦点の周りに環状(又はドーナツ型)の迎え領域を形成することができる。穴の直径は、入射光ビームの非コリメーションの大きさに応じて制御することができる。この一次光学システムの一つの要素(例えば、レンズ)は、好適な変形例では、並進運動可能である。
【0045】
本発明者らに提案された機械加工装置によれば、負のコニシティ又は逃げ角を得ることができる。また、時計製造におけるムーブメント部品の切断を行うことができる。さらに、自動車のインジェクタポートを形成したり、医療機器の微細機械加工を行うのに用いることもできる。本発明者らに提案された機械加工装置は、調整可能なコニシティを有する穴、具体的には、ゼロコニシティを有する穴の形成に用いることもできる。
【0046】
第2の態様によれば、本発明者らは、
上記機械加工装置を設ける工程と、
光源の電源を入れて、入射光ビームを得る工程と、
ミラーの法線が3次元空間(平面ではない面)に軌道を描くよう、駆動手段によってミラーを移動させる工程と、
位置決め手段によって、出射光ビームが対象物に当たるよう該対象物の位置決めを行う工程と、
を備えた、対象物を機械加工する方法を提案している。
本発明の方法は、対象物に負のホールコニシティを形成するのに用いることができる。
本発明の第1の態様にかかる機械加工装置について説明した利点は、第2の態様に係る方法にも準用される。上記に説明したような本発明の第1の態様にかかる機械加工装置についてのさまざまな変形例は、本発明に係る方法にも準用される。
【0047】
本発明の上記及び他の態様は、以下の図面を参照して、本発明の特定の実施例の詳細な説明において明らかとなる。
図面は原寸に比例するものではない。図中、類似の構成要素については、概して、類似の符号が付される。図中における符号の有無については、それらの符号が特許請求の範囲にも含まれるものであっても、制限的なものと考えるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明の第1の態様に係る機械加工装置の例示的な実施例を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の機械加工装置に含まれる光学システムの例示的な実施例を示す図である。
【
図3】本発明の機械加工装置に含まれる光学システムの他の例示的な実施例を示す図である。
【
図4】本発明の機械加工装置に含まれる光学システムの他の例示的な実施例を示す図である。
【
図5】本発明の機械加工装置に含まれる光学システムの一つの好適な実施例を示す図である。
【
図6】本発明の機械加工装置に含まれる光学システムの他の好適な実施例を示す図である。
【
図7】本発明の機械加工装置に含まれる光学システムの他の好適な実施例を示す図である。
【
図8】本発明の機械加工装置に含まれる光学システムの他の好適な実施例を示す図である。
【
図9a】偏光が維持された反射の2つの可能な構成を概略的に示す図である。
【
図9b】偏光が維持された反射の2つの可能な構成を概略的に示す図である。
【
図10】再帰反射システムの一つの可能な例を示す図である。
【
図11】本発明の第1の態様に係る可能な機械加工装置を概略的に示す図である。
【
図12】本発明の第1の態様に係る他の可能な機械加工装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本発明の第1の態様に係る機械加工装置100の例示的な実施例を概略的に示す図である。この機械加工装置100は、入射光ビーム1を発生させる、例えば、レーザー光源などの光源33を備えている。機械加工装置100は、この入射光ビーム1から、該入射光ビーム1に対して空間的にオフセットされた出射光ビーム7を得る光学システム2をさらに備えている。
図1に示すように、出射光ビーム7は、例えば、収束レンズなどの集束手段9によって、対象物10上に集束される。このような集束手段9は、機械加工装置100の一部であり、好ましくは、その光学システム2の一部である。また、
図1に示す実施例では、機械加工装置100は、対象物10を移動させる位置決め手段60も備えている。対象物10は、通常、出射光ビーム7に対して対象物10の所望の位置決めを行うための上記位置決め手段60上に載置されている。光学システム2は、集束手段9より前方(又は上流側)では、出射光ビーム7の回転運動を生じさせることが好ましい(その場合も、出射光ビーム7は、集束手段9より上流側では所定の方向と平行なままである)。そして、この出射光ビーム7は、集束手段9より下流側では、機械加工が行われる対象物10の点11(又は小部分11)を中心として歳差運動を行うことができる。
【0050】
位置決め手段60は、並進ポジショナ、例えば、CNC式機械などの5軸システムであってもよい。ミラー19が回転可能である場合、このミラー19を対象物10の位置に関係なく連続回転させたり、そのまた一方で、対象物10をその位置によって決まる角度で処理するために、対象物10の位置に基づいて、ミラー19の角度位置を定めることができる。
【0051】
図2は、本発明に係る機械加工装置100の光学システム2の例示的な実施例を示す図である。入射光ビーム1は、光源33から生じ、主に光学システム2外で移動する光ビームであるのに対し、第1入射光ビーム4は、その光学システム2内のみで移動するものである。この第1入射光ビーム4は、入射光ビーム1の偏向から得られることもあれば(
図3及び
図5乃至
図7などのいくつかの可能な実施例参照)、得られないこともある(
図2及び
図4に示す例)。
図2に示す実施例では、第1入射光ビーム4及び入射光ビーム1は、同じ線形軌道に沿ったものである。光学システム2は、第1入射光ビーム4の反射により第1反射光ビーム23を得ることができる可動ミラー19をさらに備えている。また、光学システム2は、この第1反射光ビーム23がミラー19に帰ってくるように方向付ける再帰反射システム21も備えている。つまり、この再帰反射システム21のおかげで、ミラー19への第2入射光ビーム8が第1反射光ビーム23から得られる。この第2入射光ビーム8がミラー19に反射することにより、出射光ビーム7が得られる。光学システム2は、出射光ビーム7を入射光ビーム1から空間的にオフセットすることができるよう(そして、この出射光ビーム7が集束手段9より上流側で所定の方向と平行なままとなるよう)構成されている。
図2に示す例では、入射光ビーム1及び出射光ビーム7は、横方向にオフセットされている。
図2に示す実施例では、ミラー19は、回転軸5を中心に完全に回転可能であり、駆動手段6は、その回転軸5を中心にミラー19を回転させることができる。機械加工装置100の光学システム2は、第1入射光ビーム4とミラー19の法線16とが、可動ミラー19のすべての可能な位置や方向について、0°から15°の範囲、好ましくは0.01°から5°の範囲、さらに好ましくは0.1°から3°の範囲の角度15で離間している(この角度15は、明確にするために、
図2では原寸通りに描かれてはいない)。光学システム2は、ミラー19と再帰反射システム21との位置の変化によって、入射光ビーム1と出射光ビーム7との間の空間オフセットを変化させることができるよう構成されている。
図2に示す実施例では、ミラー19の角度位置に応じて、出射光ビーム7が異なる軌道をたどることになる。光学システム2は、この出射光ビーム7を対象物10上に集束させる集束手段9を備えている。
図2の実施例では、ミラー19の回転によって生じる出射光ビーム7の回転運動が、機械加工が行われる点11を中心とした機械加工光ビーム(光集束9より下流側の出射光ビーム7)の歳差運動を駆動する働きをすることができる。これを、
図2では、円を描く矢印で示す。
【0052】
光学システム2の駆動手段6には、ミラー19の回転運動に加えて、ミラー19に並進運動を与える手段、及び/又は、ミラー19の傾斜を変更する手段がさらに含まれていてもよい(ミラー19は2つ以上の非平行方向に傾斜可能であり、駆動手段は、圧電システムなどのように、ミラー19の傾斜を変更可能である)。ミラー19に関して並進運動と回転運動とを組み合わせることについては、
図6に関連して説明する。具体的には、ミラー19と再帰反射システム21との間の相対的な回転運動により、集束手段9の向こう側において出射光ビーム7の歳差運動を得ることができるのに対して、その両者間の相対的な並進運動により、集束手段9の向こう側において出射光ビーム7が対象物10に当たる角度を変更することができる。
【0053】
この駆動手段6の例としては、電気モータやブラシレスモータが挙げられるが、それ以外の駆動手段6を用いてもよい。
【0054】
図2の光学システム2の再帰反射システム21は、ダブプリズム29と直角二等辺プリズム30から構成されている。以下に説明するように、その他の例も可能である。
【0055】
図3は、機械加工装置100に含まれる光学システム2の他の例示的な実施例を示す図である。ここでは、再帰反射システム21は、ダブプリズム29、直角二等辺プリズム30、半波長遅延板45、ルーフプリズム35、偏光ビームスプリッターキューブ50から構成されている。駆動手段6は、この再帰反射システム21に対してミラー19を回転させることができる。駆動手段6には、ミラー19と再帰反射システム21との間の相対的な並進運動を生じさせる手段、及び/又は、ミラー19と再帰反射システム21との間の相対的な傾斜を変更する手段がさらに含まれていてもよい。
図3に示す実施例では、光学システム2は、入射光ビーム1の偏向により、ミラー19への第1入射光ビーム4を得る第1ビーム誘導システム20をさらに備えている。この第1ビーム誘導システム20は、例えば、偏光ビームスプリッターキューブであってもよい。また、当業者に知られている他の光学素子を用いてもよい。
図3に示す実施例では、ミラー19が、半波長遅延板を一枚しか必要としない小型のものであるなど、いくつかの利点を示す。
【0056】
図4は、機械加工装置100に含まれる光学システム2の他の例示的な実施例を示す図である。ここでは、再帰反射システム21は、ダブプリズム29、直角二等辺プリズム30、半波長遅延板45、ルーフプリズム35、偏光ビームスプリッターキューブ50から構成されている。駆動手段6は、この再帰反射システム21に対してミラー19を回転させることができる。駆動手段6には、ミラー19と再帰反射システム21との間の相対的な並進運動を生じさせる手段、及び/又は、ミラー19と再帰反射システム21との間の相対的な傾斜を変更する手段がさらに含まれていてもよい。
【0057】
他の可能な実施例によれば、
図2乃至
図4のミラー19は、回転が固定されているが、2つ以上の非平行方向に傾斜可能であり、駆動手段6は、その2つ以上の方向について、ミラー19の傾斜を変更可能である。
【0058】
図2乃至
図4に示す異なる実施例では、第1入射光ビーム4とミラー19の法線16とがなす角度15は、明確にするために、原寸通りに描かれてはいない。上述したように、この角度は、可動ミラー19のすべての可能な位置や方向について、0°から15°の範囲、好ましくは0.01°から5°の範囲、より好ましくは0.1°から3°の範囲、さらに好ましくは0.5°の角度である。
【0059】
図5は、機械加工装置100に含まれる光学システム2の一つの好適な実施例を示す図である。この光学システム2は、以下の要素から構成されている。
入射光ビーム1を偏向することにより、第1入射光ビーム4が得られる第1ビーム誘導システム20。
第1入射光ビーム4を反射して第1反射光ビーム23を得る、傾斜した可動ミラー19。この可動ミラー19は、その法線16が第1入射光ビーム4とは平行にならないよう傾斜している(明確にするために、法線16は
図5では図示されていない)。可動ミラー19は、入射光ビーム1と出射光ビーム7との間に横方向オフセットを生じさせる働きをするため、偏心システム3と呼ばれることもある。
図5に示す好適な例では、ミラー19は回転可能であるので、回転軸5を中心に完全に回転することができる。
可動ミラー19を動かす(
図5の例では回転させる)駆動手段6。
可動ミラー19の方向に関係なく、第1反射光ビーム23から可動ミラー19に入射し、その第1反射光ビーム23と平行な第2光ビーム8を発生させる再帰反射システム21。
可動ミラー19に入射した第2光ビーム8の反射により得られた光ビームを偏向させることによって出射光ビーム7を得る第2ビーム誘導システム22。
対象物10の点11に出射光ビーム7を集束させる集束手段9。
傾斜した可動ミラー19が回転運動を行うことにより、出射光ビーム7は、集束手段9の向こう側で、対象物10の集束点11を中心に歳差運動を描く。集束点11は、例えば、機械加工点11である。回転軸5を中心に完全に回転可能なミラー19ではなく、平行ではない少なくとも2つの方向に傾斜可能なミラー19と、その非平行方向についてミラー19の傾斜を変更可能な駆動手段6を用いることもできる。
【0060】
図5に示す光学システム2は、以下のように機能してもよい。入射光ビーム1が光学システム2に進入する。この入射光ビーム1は、第1ビーム誘導システム20によって、傾斜した可動ミラー19に向けられ、第1入射光ビーム4を形成する。この第1入射光ビーム4は、傾斜した可動ミラー19で反射する。入射光ビーム1がミラー19で反射することにより得られた第1反射光ビーム23は、再帰反射システム21に向かって進む。この第1反射光ビーム23が再帰反射して、ミラー19のすべての位置や方向について、第1反射光ビーム23と平行な、ミラー19への第2入射光ビーム8が得られる。この第2入射光ビーム8は、ミラー19で反射し、このように反射した光ビームは、第2ビーム誘導システム22によって偏向されて、出射光ビーム7が得られる。出射光ビーム7は、出口に向けられて、入射光ビーム1に対して横方向にオフセットされる。集束手段9によって、この出射光ビーム7を点11に集束させることができる。
【0061】
集束手段9より前方の出射光ビーム7と入射光ビーム1とのオフセットは、傾斜したミラー19での2度の反射で光ビームが伝播する距離、及び、傾斜したミラー19の法線16と回転軸5とがなす角度の特定の関数である。
【0062】
傾斜したミラー19が回転すると、傾斜したミラー19の法線16が歳差運動を描くため、出射光ビーム7も回転を始める。具体的には、ミラー19が連続回転すると、出射光ビーム7も、ミラー19と同じ回転速度で、
図5に点鎖線で示す軸を中心に連続回転を行う。
【0063】
図5に示すように、出射光ビーム7は、光集束手段9によって対象物10に集束される。出射光ビーム7の回転運動は、機械加工が行われる点11を中心とした機械加工光ビーム(光集束手段9の下流側のビーム)の歳差運動を駆動する働きをする。
【0064】
図5の好適な実施例は、いくつかの利点を示す。第1及び第2入射光ビーム4、8は、(第1及び第2ビーム誘導システム20、22が行う約90°の偏向や、この第1及び第2ビーム誘導システム20、22に対するミラー19の相対位置のおかげで)ほぼ90°に近い、すなわち、ミラー19の法線16にほぼ近い角度に選択可能な角度でミラー19に当たる。これにより、集束手段9の向こう側に、出射光ビーム7によってほぼ完全な円の歳差輪を描くことができる。第1及び第2入射光ビーム4、8は、(ミラー19の位置に関係なく、第2入射光ビーム8は、第1反射光ビーム23と平行なので)同じ入射角でミラー19に当たる。これにより、機械加工の品質を向上させることができる。
【0065】
出射光ビーム7と入射光ビーム1との横方向オフセットの調整は、光ビームが第1及び第2ビーム誘導システム20、22間を伝播する距離を変更することで、つまり、第1入射光ビーム4、第1反射光ビーム23、第2入射光ビーム8、そして、この第2入射光ビーム8がミラー19に反射することで得られる光ビームの光路長を調整することにより行ってもよい。
【0066】
光ビームが第1及び第2ビーム誘導システム20、22間を伝播する距離については、第1ビーム誘導システム20と第2ビーム誘導システム22に対してその位置を変更するような並進運動24をミラー19に行わせることにより変更を行ってもよい。
【0067】
この原理については、ミラー19が同様に回転可能である好適な実施例に関して、
図6に示す。
図6に示す並進運動24は、一方向のみに沿ったものである。しかしながら、2次元又は3次元の並進運動を可動ミラー19に行わせることができるような駆動手段6を設けることも可能である。他の可能な実施例によれば、ミラー19が回転可能であり、再帰反射システム21が並進運動可能である。そして、駆動手段6は、ミラー19を回転させ、再帰反射システム21を並進運動させることができることが好ましい。
【0068】
図6を参照すると、光ビームが第1及び第2ビーム誘導システム20、22間を伝播する距離は、ミラー19が第1ビーム誘導システム20と第2ビーム誘導システム22から遠ざかるにつれて増大し、そして、集束手段9に到達する前の出射光ビーム7と入射光ビーム1との横方向オフセットも同様に増大する。反対に、光ビームが第1及び第2ビーム誘導システム20、22間を伝播する距離は、ミラー19が第1ビーム誘導システム20と第2ビーム誘導システム22に近づくにつれて減少し、これにより、集束手段9に到達する前の出射光ビーム7と入射光ビーム1との横方向オフセットも縮小する。
【0069】
光集束手段9を光学システム2の下流側に実装する場合、ミラー19と第1及び第2ビーム誘導システム20、22との距離を変更することにより、出射光ビーム7をさまざまな入射角で対象物10の点11に向けることが可能となる。
【0070】
第1及び第2ビーム誘導システム20、22は、(完全なリストではないが)一般的なビームスプリッターキューブ、偏光ビームスプリッターキューブ、偏光ビームスプリッターキューブと1/4波長遅延板の組み合わせなどのさまざまな要素から構成されていてもよい。1/4波長遅延板を使用する場合、その高速軸は、偏光ビームスプリッターキューブで反射された偏光の方向に対して45°に傾斜することが好ましい。
【0071】
図7は、第1ビーム誘導システム20(又は第2ビーム誘導システム22)が第1偏光ビームスプリッターキューブ25(又は第2偏光ビームスプリッターキューブ26)と第1の1/4波長遅延板27(又は第2の1/4波長遅延板28)から構成されている好適な実施例を示す図である。これらの要素は、当業者に知られているものである。第1偏光ビームスプリッターキューブ25と第2偏光ビームスプリッターキューブ26は、同じ仕様であることが好ましい。第1の1/4波長遅延板27と第2の1/4波長遅延板28は、同じ仕様であることが好ましい。
【0072】
入射光ビーム1は、第1偏光ビームスプリッターキューブ25で反射された偏光の方向に直線的に偏光する場合、損失なく反射する。そして、この光ビームは、第1の1/4波長遅延板27を通過する。よって、第1入射光ビーム4は、第1ビーム誘導システム20の出口において、円形に偏光する。ミラー19に入射した第1光ビーム4を反射することにより得られた第1反射光ビーム23は、第1の1/4波長遅延板27を通過する。その円形偏光は、入射光ビーム1の偏光に対して90°回転した場合でも直線状となる。第1反射光ビーム23は、第1偏光ビームスプリッターキューブ25を損失なく進み、再帰反射システム21に到達する。再帰反射システム21は、ミラー19で第2入射光ビーム8を発生させる役割を果たす。そして、第2入射光ビーム8は、第2偏光ビームスプリッターキューブ26を損失なく通過した後、第2の1/4波長遅延板28を通過し、その偏光が円形となる。また、ミラー19で反射し、第2入射光ビーム8から得られた光ビームも第2の1/4波長遅延板28を通過する。その円形偏光は、第2入射光ビーム8の偏光に対して90°回転した場合でも直線状となる。最終的に、第2偏光ビームスプリッターキューブ26で反射された光ビームが損失なく偏向する(又は損失なく反射する)ことで得られた出射光ビーム7の偏光は、入射光ビーム1の偏光と平行になる。
【0073】
図7に示すように、第1及び第2ビーム誘導システム20、22がそれぞれ偏光ビームスプリッターキューブ(25、26)と1/4波長遅延板(27、28)から構成されている場合、入射光ビーム1に対してオフセットした出射光ビーム7を損失なく得ることができる。これは、偏光を維持可能な再帰反射システム21を用いることによっても可能となる。偏光を維持可能な再帰反射システム21の例としては、ダブプリズムと1つ又は2つのルーフプリズムの組み合わせ、ダブプリズムと2つのミラーの組み合わせ、5つのミラーが挙げられる。
【0074】
図2乃至
図7に示す実施例では、光は、ミラー19の一つの反射面で反射する。また、本発明の機械加工装置100の光学システム2は、第1入射光ビーム4とミラー19の法線16とが、可動ミラー19のすべての可能な位置や方向について、0°から15°の範囲、好ましくは0.01°から5°の範囲、さらに好ましくは0.1°から3°の範囲の角度15で離間するよう構成されている。
【0075】
図8は、可動ミラー19が2つの反射面を有する他の可能な実施例を示す図である。第1反射面は、入射光ビーム1から生じる第1入射光ビーム4から第1反射光ビーム23が得られるようにする。第2反射面は、第2入射光ビーム8を反射させる。再帰反射システムと、対応する第1及び第2ビーム誘導システム20、22を用いることにより、第2入射光ビーム8は、ミラー19の位置や方向に関係なく、第1反射光ビーム23と平行になる。第1入射光ビーム4とミラー19の法線16(明確にするため図示せず)とは、0°から15°の範囲、好ましくは0.01°から5°の範囲、さらに好ましくは0.1°から3°の範囲の角度15(明確にするため図示せず)で離間している。
図8に示す例では、第1ビーム誘導システム20(又は第2ビーム誘導システム22)は、第1(又は第2)偏光ビームスプリッターキューブ25(又は26)と、第1(又は第2)1/4波長遅延板27(又は28)から構成されている。これらの要素は、当業者に知られているものである。第1偏光ビームスプリッターキューブ25と第2偏光ビームスプリッターキューブ26は、同じ仕様であることが好ましい。第1の1/4波長遅延板27と第2の1/4波長遅延板28は、同じ仕様であることが好ましい。入射光ビーム1は、第1偏光ビームスプリッターキューブ25の通過を可能にする偏光方向に偏光することが好ましい。そして、入射光ビーム1は、第1の1/4波長遅延板27を通過し、ミラー19に入射した第1光ビーム4を反射することにより得られた第1反射光ビーム23は、第1の1/4波長遅延板27を通過する。第1反射光ビーム23の偏光は、入射光ビーム1の偏光に対して90°回転し、第1反射光ビーム23は、第1偏光ビームスプリッターキューブ25で損失なく反射され、再帰反射システム21に到達する。再帰反射システム21は、第2入射光ビーム8を発生させる役割を果たす。そして、第2入射光ビーム8は、第2偏光ビームスプリッターキューブ26で損失なく反射された後、第2の1/4波長遅延板28を通過する。この第2入射光ビーム8がミラー19で反射して、出射光ビーム7が得られる。そして、この出射光ビーム7は、偏向せずに第2の1/4波長遅延板28と第2偏光ビームスプリッターキューブ26を通過する。出射光ビーム7は、ミラー19のすべての位置や方向について、入射光ビーム1と平行になる。
【0076】
図8に示すように、第1及び第2ビーム誘導システム20、22がそれぞれ偏光ビームスプリッターキューブ(25、26)と1/4波長遅延板(27、28)から構成されている場合、入射光ビーム1に対してオフセットした出射光ビーム7を損失なく得ることができる。
図8に示す例では、ミラー19が、その法線16と平行ではない回転軸を中心に完全に回転可能である。
図8に示す実施例については、非平行な少なくとも2つの方向に傾斜可能なミラー19と、それら少なくとも2つの方向についてミラー19の傾斜を変更可能な駆動手段6を用いることもできる。そして、第1入射光ビーム4とミラー19の法線16間の最大角度は、0°から15°の範囲、好ましくは0.01°から5°の範囲、さらに好ましくは0.1°から3°の範囲である。
図8に示す実施例のさらに別の可能な例によれば、ミラー19は、回転軸5を中心に完全に回転可能であると同時に傾斜可能であり、駆動手段6は、その回転軸5を中心にミラー19を回転させ、その傾斜を1つ、2つ又はそれ以上の方向について変更させることができる。
【0077】
図6乃至
図8の好適な実施例は、
図5の好適な実施例と同様の利点を示す。第1及び第2入射光ビーム4、8は、(第1及び第2ビーム誘導システム20、22が行う約90°の偏向や、この第1及び第2ビーム誘導システム20、22に対するミラー19の相対位置のおかげで)ほぼ90°に近い角度に選択可能な角度でミラー19に当たる。これにより、集束手段9の向こう側に、出射光ビーム7によってほぼ完全な円の歳差輪を描くことができる。第1及び第2入射光ビーム4、8は、同じ入射角でミラー19に当たる。これにより、機械加工の品質を向上させることができる。
【0078】
図2乃至
図8に示すさまざまな実施例では、回転軸を中心に完全な回転を行うことができるミラー19ではなく、2つ以上の方向に傾斜可能なミラー19を用いてもよい。そして、駆動手段6は、それら2つ以上の方向について、ミラー19の傾斜を変更することができる。
【0079】
再帰反射システム21は、光ビームの、具体的には、第1反射光ビーム23の偏光を維持することができる。
図9a及び
図9bは、光ビームが法線71によって定められた平らな反射面70で反射する場合に、その光ビームの直線偏光75が維持される(矢印76は光ビームの主伝播方向を表す)2つの可能な構成をそれぞれ示す図である。第1の可能な構成(
図9a)によれば、直線偏光75が平らな反射面70に対して平行である。第2の可能な構成(
図9b)によれば、直線偏光75が平らな反射面70と垂直な面に含まれている。いずれの場合も、偏光は維持される。この特性は、偏光を維持する再帰反射システム21の設計に用いることができる。再帰反射システム21では、いくつかの反射が起こる。直線偏光を維持するための再帰反射システム21については、以下のような2つの実施例が考えられる。
再帰反射システム21の第1平面反射面で、その第1平面反射面と平行な直線偏光により偶数回反射を行い、第2平面反射面で、その第2平面反射面と垂直な面に属する直線偏光により奇数回反射を行う。
再帰反射システム21の第1平面反射面で、その第1平面反射面と平行な直線偏光により奇数回反射を行い、再帰反射システム21の第2平面反射面で、その第2平面反射面と垂直な面に属する直線偏光により偶数回反射を行う。
【0080】
再帰反射システム21は、さまざまな要素から構成されていてもよい。その例としては(完全なリストではないが)、キューブコーナー、ダブプリズム29と他のプリズム30、好ましくは直角二等辺プリズムの組み合わせが挙げられる。この最後に挙げた組み合わせを
図10に示す。
図10では、上方から見た図を左側に示し、側面から見た図を右側に示す。再帰反射システム21がダブプリズム29と直角二等辺プリズム30から構成される
図10に示す実施例では、第1反射光ビーム23の直線偏光75が維持されている。直線偏光75は、直角二等辺プリズム30の2つの平らな反射面と平行であり、ダブプリズム29の平らな反射面70と垂直な平面に含まれる。ミラー19のすべての位置や方向について、第2入射光ビーム8と第1反射光ビーム23は平行である。
【0081】
図11は、本発明の機械加工装置100の好適な実施例を概略的に示す図である。この図に示すように、装置100は、入射光ビーム1のコリメーションを変更する一次光学システム31を備えていることが好ましい。この一次光学システム31を、ミラー19を連続回転させることができる光学システム2の前方に追加することにより、ユーザは、プログラムによる脱焦点化により直径が決まる穴を形成することができる。また、ユーザは、自然焦点の周りに輪を形成することもできる。光ビームが穴を形成するのと同時に、一次光学システム31の要素(例えば、レンズ)を並進運動させることにより、深さを増大させてもよい。この特徴によれば、本発明は、偏向システム(スキャナ)を追加することなく、かつ、一次光学システム31によって入射光ビーム1に広がりを与えることにより穴の直径を制御しつつ、穴形成(穿孔)を行うのに用いることもできる。
【0082】
図12は、機械加工装置100の他の好適な実施例を示す図である。図に示すように、この好適な実施例では、集束フィールドにわたって対象物10に向けられた出射光ビーム7をシフトする偏向システム32(例えば、ガルバノメトリックスキャナヘッド)をさらに備えている。この構成は、時計製造におけるムーブメント部品や、医療機器産業におけるインプラントなど、複雑な形状を有する部品の製造に特に適している。そして、この機械加工装置100は、テレセントリックレンズ9を備えていることが好ましい。この用語は、当業者に知られているものである。
【0083】
上述したさまざまな例においては、さまざまなタイプの光源33を用いることができる。限定されない例としては、以下のものが挙げられる。
かなりの厚さを有する金属の切断や穿孔を行うためのCO2レーザー
所要の精度や関係する加熱帯に応じて、ミリ秒又はナノ秒の連続モードのレーザーダイオードやファイバーレーザー(マルチモード又はモノモード)
高精度の微細切断や微細穿孔を行うための超短レーザー(ピコ秒又はフェムト秒)
パルス幅が300fsから10psであり、焦点距離が150mm未満(好ましくは100mm)のフェムト秒レーザー
UVレーザー(ns、ps又はfs)
可視レーザー(ns、ps又はfs)
【0084】
他の態様によれば、本発明者らは、上記機械加工装置100を用いることにより、光ビームで対象物10の機械加工を行う方法を提案している。
【0085】
本発明について特定の実施例を参照しながら説明してきたが、その目的は例示的なものにすぎず、決して制限的なものと見なすべきではない。概して、本発明は、上記に例示及び/又は説明した例に限定されるものではない。動詞「備える」、「含む」、「から成る」、又は、何れかの他の変形、並びにそれらのそれぞれの語形変化の使用は、説明したそれら以外の要素の存在を除外するものではない。要素の前の不定冠詞「a」、「an」、又は定冠詞「the」の使用は、複数のかかる要素の存在を除外するものではない。特許請求の範囲に記載された符号は、その範囲を限縮するものではない。
【0086】
要約すれば、本発明は、以下のように説明してもよい。
入射光ビーム1と呼ばれる光ビームを生成する光源33と、
その入射光ビーム1から、3次元空間にほぼ円筒形状の面を描くことができる出射光ビーム7を(その出射光ビーム7が集束手段9より上流側で所定の方向と平行なままとなるように)得る光学システム2であって、
法線16によって定められたほぼ平らな反射面を有し、上記入射光ビーム1から生じる第1入射光ビーム4から第1反射光ビーム23を得るよう構成され、その法線16が3次元空間に軌道を描くことができるよう可動式のミラー19を備え、
上記第1入射光ビーム4と可動ミラー19の法線16とが、可動ミラー19のすべての可能な位置や方向について、0°から15°の角度15で離間するよう構成されている、光学システム2と、
上記可動ミラー19を移動させる駆動手段6と、
上記第1反射光ビーム23から、上記可動ミラー19のすべての可能な位置や方向について、ミラー19に第2入射光ビーム8を得るよう、かつ、上記第2入射光ビーム(8)からミラー19に出射光ビーム(7)を得るように可動ミラー19に対して位置決めされ、
上記可動ミラー19のすべての可能な位置や方向について、その可動ミラー19に、上記第1反射光ビーム23と平行な第2入射光ビーム8を得ることができる、再帰反射システム21と、
出射光ビーム7を対象物10上に集束させる集束手段9と、
を具備する、光ビームにより対象物10の機械加工を行う機械加工装置1。
光学システム2は、入射及び出射光ビーム1、7間の空間オフセットを制御することができる。ミラー19の位置及び/又は方向を変更することによって、出射光ビーム7にほぼ円筒形状の面を描かせることができる。その後、適切な集束手段9を用いて、歳差運動を描く出射光ビーム7により、対象物10の小さな部分で機械加工を行うことができる。
【0087】
機械加工装置100に含まれる光学システム2は、入射光ビーム1を、好ましくは90°まで偏向させることにより、第1入射光ビーム4の生成を可能にする第1ビーム誘導システム20と、その第1入射光ビーム4を受光し、対応する第1反射光ビーム23を生成することができるよう配置された可動ミラー19と、上記第1ビーム誘導システム20に対してミラー19の位置を変更する駆動手段6と、上記ミラー19のすべての可能な位置や方向について、上記第1反射光ビーム23と非平行な第2入射光ビーム8をミラー19において得るために、第1反射光ビーム23の方向を変更する再帰反射システム21と、上記ミラー19で(好ましくは90°まで)反射され、上記第2入射光ビーム8から得られた光ビームを偏向させる第2ビーム誘導システム22とを備えている。
【0088】
そのため、入射光ビーム1の方向をたどって、光学システム2のさまざまな要素は、第1ビーム誘導システム20、ミラー19、再び第1ビーム誘導システム20(好ましくは偏向なしで)、再帰反射システム21、第2ビーム誘導システム22(好ましくは偏向なしで)、再びミラー19、そして最後に再び第2ビーム誘導システム22(ここでは、好ましくは偏向ありで)という順序で光を受光する。従って、機械加工装置100に含まれる光学システム2は、出射光ビーム7をその公称位置に対して非常に簡単にオフセットさせることができ、(出射光ビーム7を集束手段9より上流側で所定の位置に対して平行なままにしながら)対象物10とゼロではない迎え角を形成することができる。この出射光ビーム7と対象物10との迎え角の大きさは、ミラー19の傾斜及び/又はその並進運動に応じて定めることができる。傾斜したミラー19の角度位置(ミラー19が回転可能な場合)により、迎え角αを焦点面にそろえることができる。