(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】ケーブル延線車
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20220815BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20220815BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20220815BHJP
B65H 75/40 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
H02G1/02
B60P3/00 F
H02G1/06
B65H75/40 Z
(21)【出願番号】P 2021090171
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2021-07-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日 令和2年6月6日~令和3年5月28日の間 公開場所 西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)路線内
(73)【特許権者】
【識別番号】591285273
【氏名又は名称】西日本電気システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 義輝
(72)【発明者】
【氏名】小山 広明
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-167175(JP,A)
【文献】特開2002-204513(JP,A)
【文献】実開昭48-56718(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
B60P 3/00
H02G 1/06
B65H 75/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台(2)を備える車両(1)と、
荷台(2)上に水平旋回可能に設置され、ケーブルの繰り出しあるいは巻き取りを担うケーブル巻出装置(9)と、
ケーブル巻出装置(9)の旋回軸より後側の荷台(2)上に設置され、ケーブル巻出装置(9)を操作するための操作台(10)と、
を備え、
車両(1)の平面視において、操作台(10)は、ケーブル巻出装置(9)の回転軌跡(T)内に侵入する前側の格納位置と、ケーブル巻出装置(9)の回転軌跡(T)外に退避する後側の退避位置との間で変位できるように支持構造(38)で支持されており、
退避位置にある操作台(10)が、支持構造(38)で荷台(2)の後端から後方にはみ出した状態で支持されていることを特徴とするケーブル延線車。
【請求項2】
退避位置に変位された操作台(10)を検知する位置検知体(65)が設けられており、
位置検知体(65)が操作台(10)を検知している状態において、ケーブル巻出装置(9)が操作台(10)で操作できるように構成されている請求項1に記載のケーブル延線車。
【請求項3】
支持構造(38)が、荷台(2)側に設けられる固定レール(40)と、操作台(10)側に設けられる可動レール(41)とを含む、前後に伸縮可能なスライドレール(39)で構成されている請求項1または2に記載のケーブル延線車。
【請求項4】
スライドレール(39)は、固定レール(40)に可動レール(41)の全体が引き込まれた引込み姿勢と、固定レール(40)から可動レール(41)が引き出された引出し姿勢との間で伸縮でき、
格納位置にある操作台(10)が、引込み姿勢に収縮されたスライドレール(39)で支持されている請求項3に記載のケーブル延線車。
【請求項5】
ケーブル巻出装置(9)は、荷台(2)上に設置される回動装置(13)で旋回操作される旋回台(14)を含み、荷台(2)の上面と旋回台(14)の下面との間に隙間(G)が形成されており、
スライドレール(39)が、前記隙間(G)の高さ寸法内に収まり、かつ平面視におけるケーブル巻出装置(9)の回転軌跡(T)内に入り込む状態で配されている請求項3または4に記載のケーブル延線車。
【請求項6】
荷台(2)と操作台(10)との間に、操作台(10)を格納位置または退避位置で位置保持するロック構造(55)が設けられている請求項1から5のいずれかひとつに記載のケーブル延線車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷台に、ケーブルを繰り出しあるいは巻き取るケーブル巻出装置が、垂直軸まわりに旋回可能に設置されたケーブル延線車に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル延線車では、敷設作業中におけるケーブルの繰り出し状態あるいは巻き取り状態をオペレーターが視認しつつ操作できるように、ケーブル巻出装置を操作するための操作台は荷台上に設置することが望ましい。これら荷台上に設置されるケーブル巻出装置および操作台などの装置は、ケーブル延線車が公道上を走行する際には、平面視における車両の投影領域内に収まるよう設置する必要がある。また、敷設作業中においてはケーブル巻出装置と操作台との干渉を防ぐ必要もある。例えば特許文献1には、車両(トラック)の荷台上に、ケーブル巻出装置(ケーブル巻取装置)と、ケーブル巻出装置を操作する操作台(制御装置)とが設置されているケーブル延線車が記載されている。ケーブル巻出装置は、水平旋回可能な旋回台と、該旋回台上に設置されるワイヤ巻取り繰出しユニットとなどで構成されている。操作台は、ケーブル巻出装置の前側で、さらに荷台の左右中央から左側に寄せたケーブル巻出装置の回転軌跡外に設置して、ケーブル巻出装置と操作台との干渉を防ぎながら、各装置が車両の投影領域内に収まるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公道上において電線などを敷設するケーブル延線車では、車両の全長が大きいと狭隘な道路に車両が進入できない不利がある。また、軌道においてトロリーを敷設する軌陸車からなるケーブル延線車では、踏切道部分から軌道上に車両を進入させるため、車両の全長が大きいと軌道に進入させることができる踏切道が限定され、ケーブルを敷設する現場近傍の踏切道が利用できないことがある。そのため、この種のケーブル延線車においては、車両全長の短尺化が求められており、例えば特許文献1のケーブル延線車においても、操作台を荷台の左右中央から左側に寄せると、ケーブル巻出装置と操作台との干渉を回避しながら、車両の前後方向においてケーブル巻出装置の回転軌跡に操作台をオーバーラップさせることができるので、操作台を荷台の左右中央に設置した場合に比べて、オーバーラップさせた分だけ荷台の長さを短くすることは可能ではある。しかし、この種のケーブル延線車では、平面視におけるケーブル巻出装置の回転軌跡の直径寸法は、荷台の左右幅寸法に対して大きなものが大半であり、このような寸法関係では、操作台を荷台の左右中央から左右に寄せたとしても、前記回転軌跡に操作台をほとんどオーバーラップさせることができず、車両の全長の短尺化は望めない。
【0005】
本発明は、荷台上にケーブル巻出装置と操作台とが設置されたケーブル延線車において、敷設作業時におけるケーブル巻出装置と操作台との干渉を回避しながら、車両の全長を短尺化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のケーブル延線車は、荷台2を備える車両1と、荷台2上に水平旋回可能に設置され、ケーブルの繰り出しあるいは巻き取りを担うケーブル巻出装置9と、ケーブル巻出装置9の旋回軸より後側の荷台2上に設置され、ケーブル巻出装置9を操作するための操作台10とを備えている。車両1の平面視において、操作台10は、ケーブル巻出装置9の回転軌跡T内に侵入する前側の格納位置と、ケーブル巻出装置9の回転軌跡T外に退避する後側の退避位置との間で変位できるように支持構造38で支持されている。そして、退避位置にある操作台10が、支持構造38で荷台2の後端から後方にはみ出した状態で支持されていることを特徴とする。
【0007】
退避位置に変位された操作台10を検知する位置検知体65が設けられている。位置検知体65が操作台10を検知している状態において、ケーブル巻出装置9が操作台10で操作できるように構成されている。
【0008】
支持構造38は、荷台2側に設けられる固定レール40と、操作台10側に設けられる可動レール41とを含む、前後に伸縮可能なスライドレール39で構成されている。
【0009】
スライドレール39は、固定レール40に可動レール41の全体が引き込まれる引込み姿勢と、固定レール40から可動レール41が引き出される引出し姿勢との間で伸縮できるように構成されている。格納位置にある操作台10は、引込み姿勢に収縮されたスライドレール39で支持されている。
【0010】
ケーブル巻出装置9は、荷台2上に設置される回動装置13で旋回操作される旋回台14を含み、荷台2の上面と旋回台14の下面との間に隙間Gが形成されている。スライドレール39は、前記隙間Gの高さ寸法内に収まり、かつ平面視におけるケーブル巻出装置9の回転軌跡T内に入り込む状態で配されている。
【0011】
荷台2と操作台10との間に、操作台10を格納位置または退避位置で位置保持するロック構造55が設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、ケーブル巻出装置9の旋回軸より後側の荷台2上に設置された操作台10を、車両1の平面視において、ケーブル巻出装置9の回転軌跡T内に侵入する前側の格納位置と、ケーブル巻出装置9の回転軌跡T外に退避する後側の退避位置との間で変位できるように支持構造38で支持した。このようなケーブル延線車によれば、ケーブル巻出装置9の使用時には、操作台10を退避位置に変位させることで、操作台10に干渉することなくケーブル巻出装置9を操作できる。また、例えば車両1の走行時などケーブル巻出装置9の不使用時には、操作台10を前側の格納位置に変位させることで、操作台10がケーブル巻出装置9の回転軌跡T内に侵入している分だけ、操作台10を荷台2のより前方寄りに配することができるので、従来のケーブル延線車に比べて、車両1の前後方向においてケーブル巻出装置9の回転軌跡Tに操作台10を大きくオーバーラップさせることができる。
【0013】
そのうえで本発明のケーブル延線車では、退避位置にある操作台10を、支持構造38で荷台2の後端から後方にはみ出した状態で支持したので、格納位置にある操作台10が荷台2の上面に収まる範囲内で、同台10の後端に荷台2の後端を近接させることにより、荷台2の前後長を短くすることが可能となる。なお、操作台10は、ケーブル巻出装置9を操作してケーブルの敷設作業を行う際に退避位置に変位させるが、当該作業中に車両1は公道上を走行することはなく、したがって、退避位置にある操作台10が車両1の投影領域内に収まっていなくても問題はない。以上により、本発明によれば、荷台2上に操作台10とケーブル巻出装置9とが設置されたケーブル延線車において、敷設作業時におけるケーブル巻出装置9と操作台10との干渉を回避しながら、車両1の全長を短尺化することが可能となる。
【0014】
退避位置に変位された操作台10を検知する位置検知体65が設けられており、位置検知体65が操作台10を検知している状態において、ケーブル巻出装置9が操作台10で操作できるように構成されていると、操作台10がケーブル巻出装置9の回転軌跡Tの内側に侵入している状態で、ケーブル巻出装置9が操作されることを防ぐことができるので、誤ってケーブル巻出装置9が操作台10に接触することを確実に回避できる。
【0015】
支持構造38が、荷台2側に設けられる固定レール40と、操作台10側に設けられる可動レール41とを含む、前後に伸縮可能なスライドレール39で構成されていると、操作台10を前後にスライドさせるだけで格納位置または退避位置に変位させることができるので、操作台10の変位操作を簡便化できる。簡単な構造で格納位置と退避位置との間で操作台10を変位可能に支持できる点でも優れている。
【0016】
スライドレール39は、固定レール40に可動レール41の全体が引き込まれる引込み姿勢と、固定レール40から可動レール41が引き出される引出し姿勢との間で伸縮できるように構成されており、格納位置にある操作台10が、引込み姿勢のスライドレール39で支持されている。これによれば、可動レール41の全体を固定レール40で支持して、格納位置にある操作台10の重量を固定レール40で確りと受け止めることができるので、走行中に車両1が上下動した場合でも、スライドレール39が破損するのを防ぐことができる。因みに、格納位置にある操作台10が引出し姿勢のスライドレール39で支持されていると、固定レール40で片持ち状に支持された可動レール41で操作台10の重量を受け止めるので、走行中の車両1の上下動によって、固定レール40に対して可動レール41を含む操作台10が上下揺動することとなり、スライドレール39が破損するおそれがある。
【0017】
ケーブル巻出装置9は、荷台2上に設置される回動装置13で旋回操作される旋回台14を含み、荷台2の上面と旋回台14の下面との間に隙間Gが形成されており、スライドレール39が、前記隙間Gに収まり、かつ平面視におけるケーブル巻出装置9の回転軌跡T内に入り込む状態で配されている。これによれば、ケーブル巻出装置9の旋回時において、スライドレール39が旋回台14と干渉することを回避しながら、スライドレール39の全長を長尺化することができるので、格納位置と退避位置との間の操作台10の変位距離を大きく設定することができる。したがって、格納位置における操作台10をケーブル巻出装置9の回転軌跡T内により大きく侵入させることができるので、車両1の全長をより短尺化することが可能となる。
【0018】
荷台2と操作台10との間に、操作台10を格納位置または退避位置で位置保持するロック構造55が設けられていると、格納位置または退避位置に位置する操作台10が車両1の走行中あるいは敷設作業中に逆位置側へ変位することを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1に係るケーブル延線車の要部の平面図であり、操作台が退避位置に変位された状態を示している。
【
図2】本発明の実施例1に係るケーブル延線車の全体の側面図であり、操作台が格納位置に変位された状態を示している。
【
図3】本発明の実施例1に係るケーブル延線車の荷台の平面図であり、操作台が格納位置に変位された状態を示している。
【
図7】操作台が退避位置に変位された状態を示す車両の側面図である。
【
図8】操作台が退避位置に変位された状態の支持構造を示す縦断側面図である。
【
図10】操作台が格納位置に変位された状態を示す車両の側面図である。
【
図11】本発明の実施例2に係るケーブル延線車の要部の平面図であり、支持構造の別の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施例1)
図1から
図10に、本発明に係るケーブル延線車の実施例1を示す。本実施例における前後、左右、上下とは、
図1および
図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2に示すようにケーブル延線車は、トラック型の車両1をベースに構成されており、その後部に荷台2を備えている。車両1は、道路上を走行するためのゴムタイヤを有する車輪3と、レール(軌道)上を走行するための鉄輪からなる軌道走行輪4とを備える軌陸車として構成されている。
【0021】
軌道走行輪4は、その下部が車輪3よりも下方に位置する走行位置と、車輪3よりも上方に位置する格納位置とに出退操作できる(
図7参照)。荷台2の下側において前後の車輪3の間には、上下に伸縮可能かつ垂直軸まわりに回転可能な転車装置5が設けられている。転車装置5は、その下面が車輪3の下端よりも上側に位置する収縮位置と、走行位置に進出した軌道走行輪4の下端よりも下側に位置する伸張位置とに伸縮できる。転車装置5を伸張位置にすると車両1の全体を持ち上げることができ、この状態で転車装置5を支点に車両1を垂直軸まわりに回転させることができる。転車装置5は踏切道上の車両1をレール上に乗せる際、あるいはレール上の車両1を踏切道上に戻す際に使用される。
図1などにおいて、符号6は荷台2の後部に設置された安全柵を示している。
【0022】
荷台2上には、作動油を加圧して供給する油圧装置8と、該油圧装置8から供給される作動油で駆動されるケーブル巻出装置9と、該ケーブル巻出装置9を操作するための操作台10とが設置されており、油圧装置8、ケーブル巻出装置9、および操作台10が、荷台2の前から後に向かって記載順に配されている。先の軌道走行輪4の出退、転車装置5の伸縮も油圧装置8から供給される作動油で動作するように構成されている。油圧装置8は、車両1のエンジン(図示していない)で駆動される。
【0023】
ケーブル巻出装置9は、荷台2上に旋回可能に設置される。具体的には、ケーブル巻出装置9は、
図2および
図3に示すように荷台2に固定される回動装置13と、該回動装置13で旋回操作される旋回台14と、該旋回台14上に固定され、ケーブルを繰り出しあるいは巻き取るドラムジャッキ15と、ドラムジャッキ15によるケーブルの繰り出しあるいは巻き取りを補助するトラバーサ16などを備えている。回動装置13は、荷台2の上面に固定される円盤状の固定盤19と、該固定盤19で回転自在に支持され、固定盤19と同心状に配される円盤状の回転盤20とを備えており、油圧装置8から供給される作動油で回転盤20が回転駆動されることで旋回台14が垂直軸まわりに旋回される。これより、回動装置13の中心がケーブル巻出装置9の旋回軸となる。
【0024】
旋回台14は、荷台2の全幅よりも僅かに小さい左右幅に形成された、平面視で左右方向に長い扁平長方形板からなる主台部21と、該主台部21の後縁から後ろ向きに延設される左右一対の片持ち梁状の副台部22とで構成されている。副台部22は、主台部21の後縁右端部分と、後縁中央と後縁左端との中途部分に設けられる。旋回台14には、主台部21の上面にドラムジャッキ15が固定され、一対の副台部22の上面にトラバーサ16が固定される。旋回台14は、主台部21が回転盤20に固定されており、主台部21の左右中央位置と、主台部21および副台部22を含む前後中央位置とが交わる位置が回動装置13の中心と一致するように配される。車両1の平面視におけるケーブル巻出装置9が旋回したときの回転軌跡Tは、
図3の一点鎖線で示すように、主台部21の前側左右角部と、右側の副台部22の後右角部で描かれる。回転盤20に固定された旋回台14は、荷台2の上面と旋回台14の下面との間に隙間Gが形成された状態で、荷台2の上面から離間して配される(
図8参照)。なお、隙間Gを目立たなくすること、隙間Gへの異物侵入を抑制することなどを目的として、旋回台14の周縁部分の下面にフラップ状のカバー体を吊り下げることができる。
【0025】
ドラムジャッキ15は、旋回台14の主台部21に固定される左右一対のジャッキフレーム25と、一対のジャッキフレーム25間に掛け渡されてケーブルが巻回されるドラム26が固定されるドラム軸27と、ドラム軸27を回転駆動するドラム駆動構造28などで構成されている。ドラム駆動構造28を正逆方向に駆動することにより、ドラム軸27を介してドラム26を回転させることができ、ドラム26に巻回されたケーブルを繰り出して敷設し、あるいはケーブルをドラム26に巻き取ってケーブルを回収することができる。
【0026】
トラバーサ16は、旋回台14の副台部22に固定される左右一対の下架台31と、該下架台31で昇降自在に支持される上架台32と、該上架台32で左右スライド自在に支持される案内ヘッド33などを備えている。上架台32は、正面視で横臥コ字状に形成されて、その内部に案内ヘッド33が配されており、下架台31と上架台32との間に設けられた左右一対の昇降シリンダ34で昇降駆動される。案内ヘッド33は、上架台32に設けられた、ボールねじを含むヘッド駆動構造35で左右に駆動される。案内ヘッド33の位置を固定したままドラム26をケーブルの繰り出し方向に回転させることにより、ドラム26に巻回されたケーブルを定位置で繰り出しながらケーブルを敷設することができる。また、案内ヘッド33を左右往復駆動しながらドラム26をケーブルの巻き取り方向に回転させることにより、ドラム26にケーブルを整然と巻き取りながら回収することができる。
【0027】
図1および
図2に示すように、操作台10は縦長長方体状に形成されており、車両1の平面視において、操作台10の左右中央は、荷台2の左右中央よりも左側に寄せて配されている。操作台10の左方において2方を左側と後側の安全柵6で囲まれる部分がオペレーターの立ち入り領域とされている。操作台10の上面には、旋回台14の旋回操作、ドラムジャッキ15によるケーブルの繰り出しあるいは巻き取り操作、トラバーサ16の駆動操作などを行うための各種操作ボタン(図示していない)などが配されている。
【0028】
荷台2と操作台10との間には、操作台10を支持する支持構造38が設けられている。支持構造38で支持された操作台10は、車両1の平面視において、ケーブル巻出装置9の回転軌跡T内に侵入する前側の格納位置(
図3参照)と、ケーブル巻出装置9の回転軌跡T外に退避する後側の退避位置(
図1参照)との間で変位できる。車両1の前後方向において、格納位置にある操作台10は、その後端が荷台2の後端より僅かに前側に位置しており、退避位置にある操作台10は、その後部が荷台2の後端から後方にはみ出している。なお、操作台10は、ケーブル巻出装置9を操作してケーブルの敷設作業を行う際に退避位置に変位させるが、当該作業中は車両1が公道上を走行することはなく、したがって、退避位置にある操作台10が車両1の投影領域内に収まっていなくても問題はない。なお、本実施例では、退避位置にある操作台10は、その一部(後部)が荷台2の後端から後方にはみ出しているが、操作台10の全部が荷台2の後端から後方にはみ出していてもよく、要は操作台10の少なくとも一部が荷台2の後端から後方にはみ出していればよい。
【0029】
支持構造38は、前後に伸縮可能な左右一対のスライドレール39で構成されており、操作台10はスライドレール39で格納位置と退避位置との間をスライド変位される。
図4および
図9に示すように、各スライドレール39は、荷台2側に設けられる固定レール40と、操作台10側に設けられる可動レール41と、固定レール40と可動レール41との間に設けられる中間レール42と、中間レール42と各レール40・41との間にそれぞれ配される多数のボール43などで構成される。固定レール40と可動レール41とは同形状に形成されている。スライドレール39は、固定レール40に可動レール41および中間レール42の全体が引き込まれた引込み姿勢と、固定レール40から可動レール41および中間レール42が引き出された引出し姿勢との間で伸縮でき、引込み姿勢におけるスライドレール39の前後長さ寸法は、操作台10の前後寸法より僅かに短く設定されている。各スライドレール39は、操作台10が格納位置にあるとき引込み姿勢とされており、操作台10の下方において同台10の前後中央と固定レール40の前後中央とが一致するように配されている。操作台10を後方に移動させて各スライドレール39を引出し姿勢とすることにより、操作台10は退避位置へと変位される。
【0030】
各スライドレール39は、固定レール40が固定される固定側ブラケット46と、可動レール41が固定される可動側ブラケット47とを備えており、固定側ブラケット46が荷台2に連結され、可動側ブラケット47が操作台10に連結される。各固定側ブラケット46は、固定レール40が固定される縦壁48と、縦壁48の下端から内向きに連続する下横壁49と、縦壁48の上端から外向きに連続する上横壁50とを備える断面クランク状の条材からなり、下横壁49が荷台2の上面に固定される。固定側ブラケット46の縦壁48は、その高さ寸法が固定レール40の高さ寸法より大きく形成され、長さ寸法が固定レール40の長さ寸法より大きく形成されている。各可動側ブラケット47は、可動レール41が固定される縦壁51と、縦壁51の上端から外向きに連続する上横壁52とを備える断面逆L字状の条材からなり、上横壁52が操作台10の下面に固定される。可動側ブラケット47の縦壁51は、その高さ寸法が可動レール41の高さ寸法より大きく形成され、長さ寸法が可動レール41の長さ寸法より大きく形成されている。
【0031】
操作台10が格納位置にあるとき、同台10はケーブル巻出装置9の回転軌跡T内に侵入しており、また、スライドレール39は同台10の下方に配されている。そのため、
図8に示すように、荷台2に連結される固定レール40は、操作台10を退避位置に変位させた場合でも、ケーブル巻出装置9の回転軌跡T内にその前端側が入り込んでいる。回転軌跡T内に前端側が入り込んだ固定レール40(スライドレール39)がケーブル巻出装置9と干渉するのを防ぐため、固定レール40が固定される固定側ブラケット46を含むスライドレール39の高さ寸法は、荷台2と旋回台14との間に形成される隙間Gの高さ寸法より小さく設定されている。これにより、スライドレール39および固定側ブラケット46は、隙間Gの高さ寸法内に収まるように配されており、ケーブル巻出装置9が旋回したとしても、スライドレール39などが旋回台14(ケーブル巻出装置9)と干渉することはない。
【0032】
操作台10の不必要なスライド変位を防ぐために、荷台2と操作台10との間に左右一対のロック構造55が設けられている。
図4および
図6に示すようにロック構造55は、操作台10に設けられる支持筒56で上下スライド自在に支持されるロッド57と、固定側ブラケット46の上横壁50(荷台2)に貫通状に設けられ、ロッド57の下端が差し込まれる前ロック孔58および後ロック孔59などで構成されている。各ロッド57は操作台10の左右側面の下部前端にそれぞれ配されている。前ロック孔58は格納位置にある操作台10のロッド57に臨んで配され、後ロック孔59は退避位置にある操作台10のロッド57に臨んで配されている。操作台10を格納位置に変位させた状態で、ロッド57を前ロック孔58に差し込むことにより、操作台10は前後スライドが規制されて格納位置に保持される。同様に、操作台10を退避位置に変位させた状態で、ロッド57を後ロック孔59に差し込むことにより、操作台10は前後スライドが規制されて退避位置に保持される。
【0033】
支持筒56の周壁には、上下に伸びるスライド溝60が貫通状に形成されており、ロッド57に設けられた水平方向に伸びる操作軸61がスライド溝60で上下案内されている。スライド溝60の上下端には周方向に伸びる一対の係止溝62が形成されており、操作軸61を上側の係止溝62に係止することにより、ロッド57を前後のロック孔58・59から抜き出された上側のアンロック位置に保持でき、操作軸61を下側の係止溝62に係止することにより、ロッド57を前ロック孔58または後ロック孔59に差し込まれた下側のロック位置に保持できる。支持筒56は、操作台10の側面に固定された断面コ字状のロッドブラケット63に固定されている。
【0034】
格納位置にある操作台10は、ケーブル巻出装置9の回転軌跡T内に侵入しているため、この状態でケーブル巻出装置9が旋回操作されると、操作台10とケーブル巻出装置9とが接触してしまう。そこで本実施例では、操作台10が退避位置にないときには、操作台10によるケーブル巻出装置9の操作を禁止し、操作台10が退避位置に変位したときにケーブル巻出装置9の操作が可能となるようにした。具体的には、退避位置に変位した操作台10を検知するリミットスイッチ(位置検知体)65が設けられており、該リミットスイッチ65が操作台10を検知している状態において、ケーブル巻出装置9が操作台10で操作できるように構成した。
【0035】
図5および
図8に示すようにリミットスイッチ65は、操作台10の下面に設けられた断面L字状のスイッチブラケット66に固定されており、操作台10が退避位置に変位したとき、荷台2の上面に固定された操作片67で押込み操作される。リミットスイッチ65は、押込み操作されていない(操作台10が退避位置にない)状態ではオフ信号を出力し、押込み操作されている(操作台10が退避位置にある)状態ではオン信号を出力する。操作台10の各種操作ボタンが押されたとき、リミットスイッチ65がオン信号を出力しているときのみ、ケーブル巻出装置9は操作ボタンに対応する動作を行うように構成されている。もちろんリミットスイッチ65のオフ信号とオン信号の出力は逆であってもよい。
図5において、符号68は、操作台10の格納位置側(前側)へのスライド変位量を規定する格納側規制片であり、符号69は、操作台10の退避位置側(後側)へのスライド変位量を規定する操作片67と一体に形成された退避側規制片である。スイッチブラケット66が、格納側規制片68に当接することで操作台10の前側への変位が規制され、また、スイッチブラケット66が、退避側規制片69に当接することで操作台10の後側への変位が規制される。
【0036】
本実施例のケーブル延線車は、車両1の保管時や、車両1の走行によるケーブル敷設現場までの移動時は、操作台10をロック構造55で格納位置に保持した状態とする。このとき、リミットスイッチ65はオフ信号を出力しているので、誤って操作台10が操作されたとしても、ケーブル巻出装置9が動作することはない。ケーブルの敷設作業時には、ロック構造55を解除して操作台10を格納位置から退避位置へと変位させ、さらにロック構造55で退避位置に保持した状態とする。これにて、リミットスイッチ65はオン信号を出力し、ケーブル巻出装置9によるケーブルの敷設作業が可能となる。
【0037】
レールに乗せられた車両1の荷台2への昇降を容易化するために、車両1は昇降はしご72を備えており、昇降はしご72は、
図7に示すように車両1の側面に吊り下げられる使用姿勢と、
図10に示すように荷台2上に収納される収納姿勢とに切換え可能に装着できる。昇降はしご72は上下に長い前後一対の主枠73と、主枠73間に上下多段状に設けられる受枠74と、一対の主枠73の上端どうしを接続するように設けられる掛け具75とを備えている。掛け具75は、下向きに伸びる前後一対の吊り下げ軸76を備えており、荷台2の後部左縁に凹み形成された前後一対の吊り下げ孔77(
図3参照)に吊り下げ軸76をそれぞれ上方から差し込むことにより、昇降はしご72を車両1の後部側面に使用姿勢で装着できる。また、最下段の受枠74は、主枠73よりも外側に延設される軸部78を備えており、軸部78側の主枠73を下側にして、前側の吊り下げ孔77に軸部78を差し込み、安全柵6に立て掛けることにより、昇降はしご72を車両1の荷台2に収納姿勢で装着できる。車両1の平面視において、収納姿勢の昇降はしご72は、車両1の投影領域内に収まっているので、車両1は、昇降はしご72を収納姿勢にした状態で、道路上を走行することが可能である。
【0038】
以上のように、本実施例のケーブル延線車では、ケーブル巻出装置9の旋回軸(回動装置13)より後側の荷台2上に設置された操作台10を、車両1の平面視において、ケーブル巻出装置9の回転軌跡T内に侵入する前側の格納位置と、ケーブル巻出装置9の回転軌跡T外に退避する後側の退避位置との間で変位できるように支持構造38で支持した。このようなケーブル延線車によれば、ケーブル巻出装置9の使用時には、操作台10を退避位置に変位させることで、操作台10に干渉することなくケーブル巻出装置9を操作して敷設作業を行うことができる。また、例えば車両1の走行時などケーブル巻出装置9の不使用時には、操作台10を前側の格納位置に変位させることで、操作台10がケーブル巻出装置9の回転軌跡T内に侵入している分だけ、操作台10を荷台2のより前方寄りに配することができるので、従来のケーブル延線車に比べて、車両1の前後方向においてケーブル巻出装置9の回転軌跡Tに操作台10を大きくオーバーラップさせることができる。
【0039】
そのうえで、退避位置にある操作台10を、支持構造38で荷台2の後端から後方にはみ出した状態で支持したので、格納位置にある操作台10が荷台2の上面に収まる範囲内で、同台10の後端に荷台2の後端を近接させることにより、荷台2の前後長を短くすることが可能となる。以上により、本実施例のケーブル延線車によれば、荷台2上に操作台10とケーブル巻出装置9とが設置されたケーブル延線車において、敷設作業時におけるケーブル巻出装置9と操作台10との干渉を回避しながら、車両1の全長を短尺化することが可能となる。
【0040】
退避位置に変位された操作台10を検知するリミットスイッチ65が操作台10を検知している状態において、ケーブル巻出装置9を操作台10で操作できるように構成したので、操作台10がケーブル巻出装置9の回転軌跡Tの内側に侵入している状態で、ケーブル巻出装置9が操作されることを防ぐことができ、誤ってケーブル巻出装置9が操作台10に接触することを確実に回避できる。
【0041】
支持構造38を、荷台2側に設けられる固定レール40と、操作台10側に設けられる可動レール41とを含む、前後に伸縮可能なスライドレール39で構成したので、操作台10を前後にスライドさせるだけで格納位置または退避位置に変位させることができ、操作台10の変位操作を簡便化できる。簡単な構造で格納位置と退避位置との間で操作台10を変位可能に支持できる点でも優れている。
【0042】
格納位置にある操作台10を、固定レール40に可動レール41の全体が引き込まれる引込み姿勢のスライドレール39で支持したので、可動レール41の全体を固定レール40で支持して、格納位置にある操作台10の重量を固定レール40で確りと受け止めることができ、走行中に車両1が上下動した場合でも、スライドレール39が破損するのを防ぐことができる。因みに、格納位置にある操作台10が引出し姿勢のスライドレール39で支持されていると、固定レール40で片持ち状に支持された可動レール41で操作台10の重量を受け止めるので、走行中の車両1の上下動によって、固定レール40に対して可動レール41を含む操作台10が上下揺動することとなり、スライドレール39が破損するおそれがある。
【0043】
スライドレール39を、荷台2の上面と旋回台14の下面との間に形成される隙間Gに収まり、かつ平面視におけるケーブル巻出装置9の回転軌跡T内に入り込む状態で配したので、ケーブル巻出装置9の旋回時において、スライドレール39が旋回台14と干渉することを回避しながら、スライドレール39の全長を長尺化することができ、格納位置と退避位置との間の操作台10の変位距離を大きく設定することができる。したがって、格納位置における操作台10をケーブル巻出装置9の回転軌跡T内により大きく侵入させることができるので、車両1の全長をより短尺化することが可能となる。
【0044】
荷台2と操作台10との間に、操作台10を格納位置または退避位置で位置保持するロック構造55を設けたので、格納位置または退避位置に位置する操作台10が車両1の走行中あるいは敷設作業中に逆位置側へ変位することを確実に防ぐことができる。
【0045】
(実施例2)
図11に、本発明に係るケーブル延線車の実施例2を示す。本実施例では、操作台10を支持する支持構造38が先の実施例1と相違する。支持構造38は、荷台2の上面に固定される軸受部81と、操作台10の下面に固定され軸受部81で回転自在に軸支される垂直軸からなる回転軸82とで構成されており、操作台10は格納位置と退避位置との間で回転変位される。平面視において、軸受部81は退避位置における操作台10の中心よりも前側に設けられている。このように、支持構造38は、操作台10を前後方向にスライド変位自在に支持するものに限らず、回転変位自在に支持するものであってもよい。
【0046】
上記の実施例では、操作台10を伸縮するスライドレール39でスライド変位できるように構成したが、スライドブロックとこれをスライド案内するレール体とでスライド変位できるように支持構造38を構成することができる。位置検知体65はリミットスイッチ以外に、機械式スイッチ、光や磁気を利用して対象物の位置が検知できるセンサ等であってもよい。ロック構造55は、錠本体とフック体からなるスナップ錠であってもよく、例えば錠本体を操作台10に設け、格納位置用のフック体と退避位置用のフック体とを固定側ブラケット46に設けることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 車両
2 荷台
9 ケーブル巻出装置
10 操作台
13 回動装置
14 旋回台
38 支持構造
39 スライドレール
40 固定レール
41 可動レール
55 ロック構造
65 位置検知体(リミットスイッチ)
G 荷台の上面と旋回台の下面との隙間
T ケーブル巻出装置の回転軌跡
【要約】
【課題】荷台上にケーブル巻出装置と操作台とが設置されたケーブル延線車において、敷設作業時におけるケーブル巻出装置と操作台との干渉を回避しながら、車両の全長を短尺化する。
【解決手段】ケーブル延線車は、荷台2を備える車両1と、荷台2上に水平旋回可能に設置され、ケーブルの繰り出しあるいは巻き取りを担うケーブル巻出装置9と、ケーブル巻出装置9の旋回軸より後側の荷台2上に設置され、ケーブル巻出装置9を操作するための操作台10とを備える。車両1の平面視において、操作台10は、ケーブル巻出装置9の回転軌跡T内に侵入する前側の格納位置と、ケーブル巻出装置9の回転軌跡T外に退避する後側の退避位置との間で変位できるように支持構造38で支持されている。退避位置にある操作台10を、支持構造38で荷台2の後端から後方にはみ出した状態で支持する。
【選択図】
図1