(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】電子デバイス用スタイラス
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20220815BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/03 400A
G06F3/044 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021092487
(22)【出願日】2021-06-01
(62)【分割の表示】P 2019187942の分割
【原出願日】2016-09-06
【審査請求日】2021-06-15
(32)【優先日】2015-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503260918
【氏名又は名称】アップル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Apple Inc.
【住所又は居所原語表記】One Apple Park Way,Cupertino, California 95014, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツィンマーマン, エイダン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ウィングシャン
(72)【発明者】
【氏名】アルメンダリズ, ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ボーニィ, ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】パスマ, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】アミニ, マフムード
(72)【発明者】
【氏名】ボー, ブレントン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ブルックス, ライアン ピー.
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0138164(US,A1)
【文献】特表2004-530957(JP,A)
【文献】特開2013-222268(JP,A)
【文献】特開2000-047805(JP,A)
【文献】特開平5-061590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体と、
シャーシであって、導電性であり、かつ前記胴体内に配置され、窓を有する、シャーシと、
前記シャーシ内にある制御基板と、
前記シャーシ内にあるバッテリパックと、
アンテナアセンブリであって、
前記シャーシの前記窓にあるアンテナと、
前記制御基板に接続されたコネクタと、
前記アンテナから前記コネクタまで、前記バッテリパックを横切り、かつ前記シャーシ内に延在する伝送線路と、を含む、アンテナアセンブリと、
を含むことを特徴とするスタイラス。
【請求項2】
先端に力が加えられたときに、前記胴体に対して移動可能な前記先端と、
前記先端に加えられた前記力を検出するための力センサと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のスタイラス。
【請求項3】
前記先端に隣接する前記胴体の端部に配置され、前記スタイラスを握るときに、ユーザが人さし指を置くことができるタッチパッドをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のスタイラス。
【請求項4】
前記先端とともに、前記胴体に対して移動可能な第1の電界発生部と、
前記先端とともに、前記胴体に対して移動可能な第2の電界発生部と、
をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のスタイラス。
【請求項5】
前記胴体が、絶縁性であることを特徴とする請求項1に記載のスタイラス。
【請求項6】
前記制御基板、前記バッテリパック、および、前記アンテナアセンブリが、前記シャーシに締結されたスレッドに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のスタイラス。
【請求項7】
胴体と、
シャーシであって、導電性であり、かつ前記胴体内に配置され、窓を有する、シャーシと、
前記シャーシ内にある制御基板と、
先端アセンブリであって、
先端に力が加えられたときに、前記胴体に対して移動可能な前記先端と、
前記先端に加えられた前記力を検出するための力センサと、
前記先端とともに、前記胴体に対して移動可能な第1の電界発生部と、
前記先端とともに、前記胴体に対して移動可能な第2の電界発生部と、
前記窓に配置されるコネクタを備え、前記先端アセンブリを前記制御基板に接続するフレキシブル回路と、を含む、先端アセンブリと、
を含むことを特徴とするスタイラス。
【請求項8】
前記フレキシブル回路が、前記先端に前記力が加えられたときに、前記フレキシブル回路を収縮または折り畳むことを可能にする関節動作部分を含むことを特徴とする請求項7に記載のスタイラス。
【請求項9】
前記シャーシの追加の窓に部分的に配置され、前記シャーシ内に配置されたアンテナコネクタとともに前記制御基板に結合されたアンテナアセンブリをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のスタイラス。
【請求項10】
前記シャーシ内にあり、前記制御基板の前記先端アセンブリとは反対側にバッテリパックをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のスタイラス。
【請求項11】
アンテナアセンブリであって、
前記シャーシの追加の窓にあるアンテナと、
前記制御基板に接続されたアンテナコネクタと、
前記アンテナから前記アンテナコネクタまで、前記バッテリパックを横切り、かつ前記シャーシ内に延在する伝送線路と、を含む、アンテナアセンブリをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載のスタイラス。
【請求項12】
前記先端に隣接する前記胴体の端部に配置され、前記スタイラスを握るときに、ユーザが人さし指を置くことができるタッチパッドをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のスタイラス。
【請求項13】
前記制御基板が、前記シャーシに締結されたスレッドに取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載のスタイラス。
【請求項14】
胴体と、
シャーシであって、前記シャーシは導電性であり、かつ前記胴体内に配置され、前記シャーシはアンテナ窓およびアセンブリウィンドウを有する、シャーシと、
前記シャーシ内にある制御基板であって、部分的にアセンブリウィンドウに配置され、部分的に前記アンテナ窓と前記アセンブリウィンドウとの間に配置されている、制御基板と、
前記アセンブリウィンドウに配置された先端コネクタによって前記制御基板に結合された先端アセンブリと、
前記アンテナ窓に部分的に配置され、前記アンテナ窓と前記アセンブリウィンドウとの間に配置されたアンテナコネクタによって前記制御基板に結合されたアンテナアセンブリと、
を含むことを特徴とするスタイラス。
【請求項15】
前記シャーシ内にあり、かつ前記アンテナ窓と前記アセンブリウィンドウとの間にバッテリパックをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載のスタイラス。
【請求項16】
前記アンテナアセンブリは、
前記シャーシの前記アンテナ窓にあるアンテナと、
前記アンテナコネクタと、
前記アンテナから前記アンテナコネクタまで、前記バッテリパックを横切り、かつ前記シャーシ内に延在する伝送線路と、
を含むことを特徴とする請求項15に記載のスタイラス。
【請求項17】
前記先端アセンブリは、
先端に力が加えられたときに、前記胴体に対して移動可能な前記先端と、
前記先端に加えられた前記力を検出するための力センサと、
前記先端とともに、前記胴体に対して移動可能な第1の電界発生部と、
前記先端とともに、前記胴体に対して移動可能な第2の電界発生部と、
を含むことを特徴とする請求項14に記載のスタイラス。
【請求項18】
前記スタイラスの先端に隣接する前記胴体の端部に配置され、前記スタイラスを握るときに、ユーザが人さし指を置くことができるタッチパッドをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載のスタイラス。
【請求項19】
前記シャーシは、前記胴体の長さの過半にわたって延在する寸法であることを特徴とする請求項14に記載のスタイラス。
【請求項20】
前記制御基板、および、前記アンテナアセンブリが、前記シャーシに締結されたスレッドに取り付けられていることを特徴とする請求項14に記載のスタイラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この特許協力条約特許出願は、2015年9月8日に出願された「Stylus For Electronic Devices」と題する米国仮特許出願第62/215,620号、及び2016年3月17日に出願された「Stylus For Electronic Devices」と題する米国仮特許出願第62/309,816号に対する優先権を主張する。これらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(技術分野)
本明細書に記載の実施形態は、電子デバイスのためのユーザ入力システムを対象とし、より具体的には、電子デバイスのタッチスクリーンで動作可能な高精度なスタイラスを対象とする。
【背景技術】
【0003】
電子デバイスは、ディスプレイ上に示される要素とのユーザの対話を促進にするように、タッチセンサをディスプレイ内に統合することができる。ユーザが1本以上の指を使ってディスプレイに触れると、タッチセンサが電子デバイスに各タッチの場所を提供し、それにより電子デバイスは、ディスプレイ上に示される要素(例えば、アイコン、ボタン、キー、ツールバー、メニュー、写真、スプライト、アプリケーション、ドキュメント、描画面、マップなど)を変化させることができる。一部の例において、ユーザは、ユーザの指よりも精度の高い器具(例えば、スタイラス)を用いてディスプレイと対話することを好む場合がある。
【0004】
しかしながら、従来のタッチ感知式電子デバイスは主に、ユーザの指の存在及び場所を検出するように構成されているため、従来のスタイラスでは、ユーザに対して、ほんのわずかばかり向上した精度しかもたらさない場合が多い。例えば、多くの従来のタッチ感知式電子デバイスは、スタイラスからの入力とユーザの手のひら、手首又は指からの意図的又は偶発的な入力との間を確実に区別することは不可能である。
【0005】
他の場合には、スタイラス入力に適応するように、一部の従来の電子デバイスは、磁場を発生させるスタイラスからの入力を受け取ることに特化した別個の入力センサ(例えば、電磁デジタイザ)を組み込むことができる。しかしながら、これらの追加の構成要素は、多くの場合、電子デバイスの厚さ及び消費電力を増大させることに加え、電子デバイスの製造のコスト及び複雑さも増大させる。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載の実施形態は、概ね、少なくとも本体及び先端を含むスタイラスについて言及する。先端は、本体の第1の端部に配置することができる。先端は、電子デバイスによって検出される電界を放出するように構成することができる。更に、先端は、先端が電子デバイスに触れた際に力を受けるように構成される。制御回路は、本体内に位置付けられてもよい。制御回路は、電界を発生させるために使用する電気信号を生成するように構成される。力感知構造体もまた本体内に位置付けられ、力に応答して非バイナリ出力を生成するように構成される。最後に、本体内の剛性導管は、制御回路を先端に電気的に結合し、力を力感知構造体に機械的に伝達する。
【0007】
一部の実施形態は、外部デバイスが電界の場所に基づいて先端の場所を検出するように構成され得る構成を含んでもよい。一部の実施形態は、電界を第1の電界と称してもよく、少なくとも剛性導管の周りに配置された環形状の要素を含んでいてもよい。環形状の要素は、第2の電界を放出するように構成されてもよい。一部の実施形態は、外部デバイスが第2の電界を用いてスタイラスの角度位置を検出するように構成された構成を含んでもよい。
【0008】
一部の実施形態はまた、力感知構造体内の又は力感知構造体に結合された回路を本体内に位置付けられた回路及び力感知構造体の後方の回路に電気的に結合するフレキシブル回路を含んでもよい。フレキシブル回路は、力感知構造体の動きに応答して曲がるように構成された関節動作領域を含む。一部の実施形態は、回路のうち一方又は両方が、折り畳まれた可撓性接続部によって取り付けられた2つ以上の基板を含み得る構成を含んでもよい。
【0009】
一部の実施形態は、少なくとも、スタイラスの本体内に位置付けられた、円形の内部体積を有する、円筒状のシャーシを含んでもよい。バッテリは、シャーシに取り付けることができ、かつ円形の内部体積内に位置付けることができる。バッテリは、少なくとも1つの折り畳まれた電極対を含むことができる。
【0010】
一部の実施形態は、剛性導管が剛性導管の長さに沿って形成された伝導性トレースのアレイを含む構成を含んでもよい。例えば、伝導性トレースのアレイは、交互にオフセットされた行に形成され得る。これらの及び関連する実施形態では、剛性導管は、その外面から伝導性トレースのアレイの1つ以上の伝導性トレースへと延在する切欠付きビアを含む。
【0011】
一部の実施形態は、剛性導管が先端信号を送信するように構成された第1の1組の導電体と、環状信号を送信するように構成された第2の1組の導電体と、第1の1組と第2の1組との間に位置付けられる1組の接地導体とを含む構成を含んでもよい。
【0012】
本明細書に記載の実施形態は、概ね、少なくとも本体及び本体の第1の端部に配置された先端を含み、かつ、少なくとも電子デバイスによって検出される電界を放出するように構成されたバルブと、バルブの周囲に形成された、バルブよりも小さい硬度を有するコーティングとを含む、スタイラスについて言及する。他の場合には、スタイラスは、バルブの周囲に形成された、電子デバイスの入力面よりも小さい硬度を有するコーティングを含むことができる。
【0013】
一部の実施形態は、電界が第1の半径において1/2電力点を有する第1の電界であり得る構成を含んでもよく、スタイラスは、バルブの後方に位置付けられ、かつ第1の半径とは異なり得る第2の半径において1/2電力点を有する第2の電界を放出するように構成された導電リングを更に含む。一部の実施形態は、第1の電界又は第2の電界のいずれかが電子デバイスを交差するように構成され得る電界の一部分に対して略球形であり得る構成を含んでもよい。一部の実施形態は、先端がねじ接続部により本体から取り外し可能であり得る構成を含んでもよい。
【0014】
一部の実施形態は、バルブが本体に向かって延在する根元部を有し、かつ信号発生部と電気的に連通し得る構成を含んでもよい。一部の実施形態は、コーティングがオーバーモールディングプロセスを用いて形成することができるポリマー材料から形成され得る構成を含み得る。
【0015】
一部の実施形態は、コーティングが第1のポリマー材料から形成された第1の内側射出成形部(inner shot)及び第2のポリマー材料から形成された第2の外側射出成形部(outer shot)を含む構成を含んでもよい。一部の実施形態は、第2のポリマー材料が第1のポリマー材料よりも軟質であり得る構成を含んでもよい。一部の実施形態では、第1の内側射出成形部は、繊維強化ポリマー材料を含み、第2の外側射出成形部の第2のポリマー材料は、実質的に繊維を含んでいなくてもよい。
【0016】
一部の実施形態は、本体が中空管から形成され得る構成を含んでもよい。信号発生部は、管内に配置され、バルブに動作可能に結合していてもよい。これらの場合、先端及びバルブは、ねじ接続部を介して、本体及び駆動回路から取り外せるように構成される。
【0017】
本明細書に記載の実施形態は、概ね、少なくとも本体と、本体の第1の端部に配置され、力を受けるように構成された先端と、本体内に配置された力感知構造体であって、少なくとも本体に対して固定された第1の縁部を有する第1の片持ち脚部、第1の片持ち脚部とほぼ平行であり、本体に対して固定された第2の縁部を有する第2の片持ち脚部及び第1の片持ち脚部と第2の片持ち脚部との間に延在し、かつそれらを接続する横方向ベッド部を含む力感知構造体と、を含む手持ち式ユーザ入力デバイスについて言及する。歪み感知要素は、第1の片持ち脚部に取り付けることができる。第1の片持ち脚部は、先端が受けた力に応答して偏向するように構成されてもよい。
【0018】
一部の実施形態は、先端が横方向ベッド部に機械的に結合され得る構成を含んでもよい。場合によっては、機械的結合は、先端と横方向ベッド部との間に配置された剛性信号導管によってもたらされる。一部の実施形態は、第2の片持ち脚部が先端が受けた力に応答して偏向するように構成され得る構成を含んでもよい。一部の実施形態は、第1の片持ち脚部が先端が受けた力に応答して蛇行湾曲部に沿って偏向するように構成され得る構成を含んでもよい。一部の実施形態はまた、第1の片持ち脚部の表面に取り付けられた少なくとも2つ以上の歪み感知要素を含んでもよく、1つ以上の歪み感知要素は、力に応答して引張歪みとなるように設置され、1つ以上の他の歪み感知要素は、力に応答して圧縮歪みとなるように設置される。
【0019】
一部の実施形態はまた、2つ以上の歪み感知要素に動作可能に結合され、かつ先端にかかる力によりもたらされる引張歪みと圧縮歪みとの差に基づいて出力を生成するように構成されたセンサ回路を少なくとも含んでもよい。
【0020】
一部の実施形態は、センサ回路の少なくとも一部分が第1と横方向ベッド部との間に配置され得、センサ回路が第2の片持ち脚部に対して固定され得る構成を含んでもよい。一部の実施形態は、先端が力感知構造体を介して本体に力を伝達する構成を含んでもよい。一部の実施形態は、第1の片持ち脚部の第1の縁部が管部材に溶接され得、横方向ベッド部の第3の縁部が管部材に溶接され得、管部材が本体内に配置されかつ本体に取り付けられ得る構成を含んでもよい。
【0021】
本明細書に記載の実施形態は、概ね、少なくとも、本体と、本体の第1の端部に配置され、力を受けるように構成された先端と、本体内に位置付けられ、先端に動作可能に結合されて先端で受けた力を伝達する中間部材と、本体内に配置された力感知構造体であって、少なくとも、それぞれの縁部が本体に対して固定された2つの脚部、2つの脚部間に延在し、中間部材に動作可能に結合された横方向部材、及び2つの脚部のうち第1の脚部(第1の脚部は、先端で受けた力に応答して撓むように構成され得る)に取り付けられた歪み感知要素を含む力感知構造体と、を含む、スタイラスについて言及する。
【0022】
一部の実施形態はまた、本体内に配置されたスリーブを少なくとも含んでもよく、2つの脚部は、スリーブの内側面に溶接される。一部の実施形態は、2つの脚部が横方向部材の両側から延在する構成を含んでもよい。
【0023】
一部の実施形態はまた、第1の脚部の表面に取り付けられた少なくとも2つ以上の歪み感知要素を含んでもよく、1つ以上の歪み感知要素は、力に応答して引張歪みとなるように設置され、1つ以上の他の歪み感知要素は、力に応答して圧縮歪みとなるように設置される。本明細書に記載の実施形態は、概ね、少なくとも、本体と、本体の第1の端部に位置付けられるが本体の第1の端部に対して固定はされていない、力を受けるように構成された先端と、本体内に位置付けられた力感知構造体であって、少なくとも、本体の軸線に対して横断方向に位置付けられた第1及び横方向ベッド部並びに第1の片持ち脚部と第2の片持ち脚部との間に延在する第2の片持ち脚部を含むボックス構造を少なくとも含む、力感知構造体と、を含むスタイラスについて言及する。これらの実施形態では、第2の片持ち脚部は、力に応答して本体に対してずれるように構成されてもよい。
【0024】
一部の実施形態は、ボックス構造が本体内に位置付けられたスリーブの一部分によって形成された側部(本体に対して固定されてもよい)を更に含み、第2の側部が力に応答して本体の軸線に沿う側部に対してずれるように構成され得る構成を含んでもよい。一部の実施形態は、第1及び第2の側部が力に応答して偏向するように構成される構成を含んでもよい。多くの場合、第2の側部は、蛇行形状の外形に偏向する。
【0025】
一部の実施形態は、本明細書に実質的に記載されたスタイラスを対象とする。一部の実施形態は、本明細書に実質的に記載された電子デバイスを対象とする。一部の実施形態は、本明細書に記載されたスタイラス及び電子デバイスを動作させる方法を対象とする。一部の実施形態は、スタイラスと電子デバイスとが通信する方法を対象とする。一部の実施形態は、電子デバイスの入力面上のスタイラスの場所を特定する方法を対象とする。一部の実施形態は、スタイラスによって実行される低電力状態に入るか又は終了させるかを推定する方法を対象とする。一部の実施形態は、電子デバイスの入力面に対するスタイラスの角度位置を推定する方法を対象とする。
【0026】
一部の実施形態は、スタイラスによって、電子デバイスの入力面へ印加された力を測定する方法を対象とする。一部の実施形態は、スタイラスによって、電子デバイスの入力面へ印加された力を、スタイラスが測定する方法を対象とする。一部の実施形態は、スタイラスによって、電子デバイスの入力面へ印加された力を、電子デバイスが測定する方法を対象とする。一部の実施形態は、ねじ接続部を介して取り外し可能なスタイラスのためのノーズピースを対象とする。一部の実施形態は、ノーズピースの先端にあるバルブ形状の電界発生部を含むスタイラスのためのノーズピースを対象とする。一部の実施形態は、バルブ形状の電界発生部がポゴピンである、ノーズピースを対象とする。一部の実施形態は、本明細書に記載したように、2つ以上の回路基板を互いに重ねて折り畳むことによって形成されたスタイラスのための主制御基板を対象とする。一部の実施形態は、スタイラスのためのブラインドキャップを対象とする。一部の実施形態は、放圧孔を更に含む、ブラインドキャップを対象とする。一部の実施形態は、スタイラスから延在するプラグを引きつけるように構成された永久磁石を更に含む、ブラインドキャップを対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下に、添付の図面に例示された代表的な実施形態について参照する。以下の説明は、これらの実施形態を、1つの好ましい実施形態に限定することを意図するものではない点を理解されたい。これとは対照的に、添付の特許請求の範囲により定義されるような、記載された実施形態の趣旨及び範囲内に含まれ得る変形例、修正例及び均等物を網羅することが意図されている。
【0028】
【
図1A】スタイラスからの入力を受信するように構成されたタッチ感知ディスプレイ(「入力面」)を備えた電子デバイスを示す図である。
【0029】
【
図1B】電子デバイスの入力面に対して垂直に配向されている
図1Aのスタイラスを示す図である。
【0030】
【
図1C】
図1Aの電子デバイス及びスタイラスの上面図であり、具体的には、スタイラスが入力面の平面に対してある角度、特に、入力面の平面の横軸に対してスタイラスの方位角で配向されているスタイラスを示す図である。
【0031】
【
図1D】
図1A及び
図1Cの電子デバイス及びスタイラスの側面図であり、具体的には、電子デバイスの入力面の平面に対するスタイラスの極角を示す図である。
【0032】
【
図2A】スタイラス及び電子デバイスを含むユーザ入力システムの簡易ブロック図である。
【0033】
【
図2B】
図2Aのユーザ入力システムのスタイラスの簡易ブロック図である。
【0034】
【
図2C】
図2Aのユーザ入力システムの電子デバイスの簡易ブロック図であり、
図2Bのスタイラスから入力を受信するように構成することができる。
【0035】
【
図2D】
図2Bのスタイラスの調整エンジンの簡易ブロック図である。
【0036】
【
図2E】
図2Bのスタイラスの処理ユニット及び無線インターフェースの簡易ブロック図である。
【0037】
【
図2F】
図2Bのスタイラスの電源サブシステムの簡易ブロック図である。
【0038】
【
図3A】本明細書に記載されるものなどのスタイラスの様々な構成要素及びサブシステムの分解図である(例えば、
図1A~
図1Dに示すユーザ入力システムのスタイラス、
図2D~
図2Fに示すサブシステムを有するスタイラスなど)。
【0039】
【
図3B】
図3Aの組み立てられたスタイラスを示し、具体的には、先端に作用する反作用力がないスタイラスの先端と本体とを隙間が分離している準備完了状態にあるスタイラスを示す図である。
【0040】
【
図3C】
図3Bのスタイラスを示し、具体的には、スタイラスが、
図1A~
図1Cに示す電子デバイスのディスプレイなどの表面に押し付けられたときに先端に作用する反作用力の結果として隙間が部分的に又は全体的に閉じられた入力状態のスタイラスを示す図である。
【0041】
【
図3D】組み立てられた
図3Aのスタイラスを示し、スタイラスの内部シャーシを部分的に透明なものとして描写しながら、スタイラスの胴体、ニブ、及びブラインドキャップを透視で提示している図である。
【0042】
【
図3E】
図3Dの組み立てられたスタイラスの先端の詳細図である。
【0043】
【
図3F】
図3Dの組み立てられたスタイラスの胴体の詳細図である。
【0044】
【
図3G】
図3Dの組み立てられたスタイラスの端部の詳細図である。
【0045】
【
図4A】スタイラスの先端を支持する力感知構造体を示す本明細書に記載されるようなスタイラスの調整エンジンの側面図であり、特に、先端に作用する反作用力がないことを概ね特徴とするノミナル状態の力感知構造体を示す図である。
【0046】
【
図4B】
図4Aの調整エンジンの側面図であり、スタイラスが、
図1A~
図1Cに示す電子デバイスのディスプレイなどの表面に押し付けられたときに先端に作用する反作用力の存在を概ね特徴とする偏向状態の力感知構造体及び先端を示す図である。
【0047】
【
図4C】
図4Aの調整エンジンの側面図であり、特に、別の力感知構造体の偏向状態を示す図である。
【0048】
【
図4D】
図4Aの線A-Aを通る調整エンジンの断面図であり、特に、スタイラスの先端と力感知構造体との間の機械的結合の例を示す図である。
【0049】
【
図4E】ノミナル状態にある例示的な力感知構造体の側面図である。
【0050】
【
図4F】ノミナル状態にある別の力感知構造体の側面図である。
【0051】
【
図4G】ノミナル状態にある更に別の力感知構造体の側面図である。
【0052】
【
図4H】ノミナル状態にある別の例示的な力感知構造体の側面図である。
【0053】
【
図4I】ノミナル状態にある別の力感知構造体の側面図である。
【0054】
【
図4J】ノミナル状態にある更に別の力感知構造体の側面図である。
【0055】
【
図4K】
図4Aの線B-Bに沿って見た力感知構造体の背面図であり、特に、力感知構造体に結合された歪み応答要素の分布を示す図である。
【0056】
【
図4L】ノミナル状態にある別の力感知構造体の背面図であり、特に、力感知構造体に結合された歪み応答要素の例示的な分布を示す図である。
【0057】
【
図4M】ノミナル状態にある更に別の力感知構造体の背面図であり、特に、力感知構造体に結合された歪み応答要素の例示的な分布を示す図である。
【0058】
【
図5A】スタイラスの調整エンジンの組立側面図であり、特に、管状かつ剛性の電磁シールドの中空部分内に配置された信号導管を示す図である。
【0059】
【
図5B】
図5Aの調整エンジンの組立図であり、特に、
図5Aの調整エンジンのオフセットした点源から異なる電界強度で発生され得る電界を示す図である。
【0060】
【
図5C】
図5Bの調整エンジンを示し、特に、
図5Aの調整エンジンのオフセットした点源からの同様の電界強度で発生され得る例示的な電界を示す図である。
【0061】
【
図5D】
図5Bの線C-Cを通る調整エンジンの断面図であり、特に、管状かつ剛性の電磁シールドの中空部分内に配置された信号導管を示す図である。
【0062】
【
図5E】
図5Dの線D-Dに沿う信号導管の断面図であり、回路基板と、信号導管内に配置された信号線と、を示す図である。
【0063】
【
図5F】線E-Eに沿って見た
図5Dの信号導管の断面図であり、回路基板と、信号導管内に配置された信号線と、を示す図である。
【0064】
【
図5G】電子デバイスの入力面に対して垂直に配向されたスタイラスの側面図及び上面図であり、スタイラスは、スタイラスの先端から異なる大きさの先端電界及び環状電界を発生させるように構成され、各電界は、入力面の平面と交差し、先端電界交差エリア及び環状電界交差エリアを画定する、図である。
【0065】
【
図5H】
図5Gのスタイラスの側面図及び上面図であり、特に、スタイラスが電子デバイスの入力面の平面に対してある角度で配向された場合の、先端電界交差エリアと環状電界交差エリアとの相対位置を示す図である。
【0066】
【
図5I】
図5Gのスタイラスの側面図及び上面図であり、特に、スタイラスが電子デバイスの入力面の平面に対して異なる角度で配向された場合の、先端電界交差エリアと環状電界交差エリアとの相対位置を示す図である。
【0067】
【
図5J】
図5Gのスタイラスの側面図及び上面図であり、特に、電子デバイスの入力面の平面に対するスタイラスの方位角及び極角を示す図である。
【0068】
【
図5K】スタイラスの先端から、類似の大きさの先端電界及び環状電界を発生させるスタイラスの側面図であり、電界はそれぞれ、電子デバイスの入力面と交差し、特に、スタイラスが電子デバイスの入力面の平面に対して垂直に配向された場合の、先端電界交差エリアと環状電界交差エリアとの相対位置を示す図である。
【0069】
【
図5L】
図5Kのスタイラスの図であり、特に、スタイラスが電子デバイスの入力面の平面に対してある角度で配向された場合の、先端電界交差エリアと環状電界交差エリアとの相対位置を示す図である。
【0070】
【
図5M】
図5Kのスタイラスの図であり、特に、スタイラスが電子デバイスの入力面の平面に対して異なる角度に配向された場合の、先端電界交差エリアと環状電界交差エリアとの相対位置を示す図である。
【0071】
【
図5N】
図5Kのスタイラスの図であり、特に、スタイラスが電子デバイスの入力面の平面にほぼ平行な角度に配向されている場合の、先端電界交差エリアと環状電界交差エリアとの相対位置を示す図である。
【0072】
【
図6A】スタイラスのノーズピースの断面図であり、具体的には、ノーズピース内に統合された先端電界発生部の一例を示す図である。
【0073】
【
図6B】スタイラスのノーズピースの断面図であり、具体的には、ノーズピース内に統合された先端電界発生部の別の例を示す図である。
【0074】
【
図6C】スタイラスのノーズピースの断面図であり、具体的には、ノーズピース内に統合された先端電界発生部及び環状電界発生部を示す図である。
【0075】
【
図6D】接地信号線を有さない
図6Cのノーズピースを示す図である。
【0076】
【
図6E】先端信号線又は環状信号線を有さない
図6Cのノーズピースを示す図である。
【0077】
【
図6F】スタイラスのノーズピースの断面図であり、具体的には、ノーズピース内に統合された先端電界発生部の別の例を示す図である。
【0078】
【
図6G】スタイラスのノーズピースの断面図であり、具体的には、ノーズピース内に統合された先端電界発生部の別の例を示す図である。
【0079】
【
図7】スタイラスのノーズピースの断面図であり、具体的には、スタイラスの本体内に配置された調整エンジンの力感知構造体によって支持されるノーズピースを示す図である。
【0080】
【
図8A】スタイラスの薄いフォームファクタで受信するために折り畳むことができるコントローラ基板セットの平面図である。
【0081】
【
図8B】
図8Aの線F-Fに沿って見たフレキシブル回路の側面図であり、具体的には、フレキシブル回路を折り畳んだときにスタイラス内のシャーシに結合するように構成された2軸支持棒の配置を示す図である。
【0082】
【
図8C】
図8Aの線F-Fに沿って見たフレキシブル回路の側面図であり、具体的には、フレキシブル回路を折り畳んだときにスタイラス内のシャーシに結合するように構成された表面実装支持棒を示す図である。
【0083】
【
図9A】非使用時に電源コネクタを隠すためのスタイラス及びブラインドキャップの電源コネクタを示す図である。
【0084】
【
図9B】
図9Aの線G-Gによる断面図で示される電源コネクタ及びブラインドキャップを示し、具体的には、ブラインドキャップを電源コネクタに引きつける磁石の構成を示す図である。
【0085】
【
図9C】別の例示的な電源コネクタ及びブラインドキャップを示し、具体的には、ブラインドキャップを電源コネクタに引きつける別の磁気構成を示す図である。
【0086】
【
図9D】更に別の例示的な電源コネクタ及びブラインドキャップを示し、具体的には、ブラインドキャップを電源コネクタに引きつける別の磁気構成を示す図である。
【0087】
【
図10A】非使用時に電源コネクタを隠すためのスタイラス及びブラインドキャップの電源コネクタの断面図であり、特に、電源コネクタの戻り止めと係合するように構成されたブラインドキャップ内の板ばねの構成を示す図である。
【0088】
【
図10B】
図10Aの断面図であり、特に、電源コネクタの戻り止めと係合するブラインドキャップの板ばねを示す図である。
【0089】
【
図10C】電源コネクタ及びブラインドキャップの断面図であり、特に、ブラインドキャップ内の板ばねの代替的な構成を示す図である。
【0090】
【
図10D】スタイラスの電源コネクタを隠すためのブラインドキャップを示し、特に、電源コネクタの戻り止めと係合するように構成されたブラインドキャップ内のフープスプリングの構成を示す図である。
【0091】
【0092】
【
図10F】
図10Eの断面図であり、具体的には、電源コネクタの戻り止めと係合したフープスプリングを示す図である。
【0093】
【
図10G】電源コネクタの戻り止めと係合するように構成された1つ以上のフープスプリングを組み込んでいるブラインドキャップの別の例示的な断面図である。
【0094】
【
図10H】電源コネクタの戻り止めと係合するように構成された1つ以上のフープスプリングを組み込んでいるブラインドキャップの更に別の例示的な断面図である。
【0095】
【
図11A】電子デバイスに結合された電源コネクタを組み込んでいるスタイラスを示す図である。
【0096】
【
図11B】
図11Aのスタイラス及び電子デバイスを示し、具体的には、電源コネクタの柔軟性を示す図である。
【0097】
【
図11C】充電スタンドに結合された
図11Aの電源コネクタを組み込んでいるスタイラスを示す図である。
【0098】
【
図11D】充電ケーブルに結合された
図11Aの電源コネクタを組み込んでいるスタイラスを示す図である。
【0099】
【
図11E】電子デバイスの外部面に電気的に結合するように構成された電源コネクタを組み込んでいるスタイラスを示す図である。
【0100】
【
図11F】一体化した構成における
図11Eのスタイラス及び電子デバイスを示す図である。
【0101】
【
図12】電子デバイスの入力面に触れるスタイラスの場所を特定し、角度位置を推定するプロセスの動作を示すフローチャートである。
【0102】
【
図13】スタイラスによって、電子デバイスの入力面へ印加された力を推定するプロセスの動作を示すフローチャートである。
【0103】
【
図14】本明細書に記載されたスタイラスを製造するプロセスの動作を示すフローチャートである。
【0104】
【
図15】スタイラスの低電力モードを終了させるプロセスの動作を示すフローチャートである。
【0105】
【
図16】スタイラスの低電力モードに入るプロセスの動作を示すフローチャートである。
【0106】
【
図17】スタイラスを充電するようユーザに通知するプロセスの動作を示すフローチャートである。
【0107】
【
図18】スタイラスを電子デバイスで充電するプロセスの動作を示すフローチャートである。
【0108】
【
図19】スタイラスが充電されたことをユーザに通知するプロセスの動作を示すフローチャートである。
【0109】
【
図20】タッチ入力モード又はスタイラス入力モードのいずれか一方で電子デバイスを動作させるプロセスの動作を示すフローチャートである。
【0110】
【
図21】タッチ入力モード及びスタイラス入力モードの両方で電子デバイスを動作させるプロセスの動作を示すフローチャートである。
【0111】
【
図22】入力面上のスタイラスの場所を特定する場合の傾斜誘発オフセットを補償するプロセスの動作を示すフローチャートである。
【0112】
【
図23】圧力抜き孔を組み込んでいるブラインドキャップを製造するプロセスの動作を示すフローチャートである。
【0113】
【
図24】複数のモードでユーザ入力システムを動作させるプロセスの動作を示すフローチャートである。
【0114】
異なる図面における同じ又は類似する参照番号の使用は、類似、関連、又は同一のアイテムを示している。
【0115】
添付図面のクロスハッチング又はシェーディングの使用は、概ね、隣接する要素間の境界を明確にし、また、図の判読性を容易にするために提供される。したがって、クロスハッチング又はシェーディングの有無は、添付図面に示された任意の要素の、特定の材料、材料の特性、要素の比率、要素の寸法、同様に示された要素の共通点、若しくは任意の他の特徴、属性、又は特性に対する任意の優先度又は要件を伝達又は指示するものではない。
【0116】
更に、様々な特徴及び要素(並びにこれらの集合及び群)の比率及び寸法(相対的又は絶対的かのいずれか一方)並びに境界、分離、及びこれらの間に提示される位置関係は、本明細書に記載された様々な実施形態の理解を単に容易にするために添付図面に提供され、したがって、必ずしも一定の縮尺で提示又は図示されていなくてもよく、例示された実施形態に対する任意の優先度又は要件を示すことを意図しておらず、これらを参照して説明された実施形態を排除するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本明細書に記載の実施形態は、概ね、電子デバイス(例えば、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータなど)に入力を提供するように構成されたスタイラス(例えば、マーキングツール、スマートペン、スマートブラシ、ペン型スキャナ、チゼル(chisel)、ユーザ操作式電子入力デバイス、手持ち式入力デバイスなど)について言及する。ユーザは、ライティングすること、スケッチすること、スクロールすること、ゲームをすること、ユーザインタフェース要素を選択すること、ユーザインタフェース要素を移動させることなどであるが、これらに限定されない、電子デバイスの入力面に対するスタイラスの向き及び位置を操作して、情報を電子デバイスに伝達する。多くの実施形態では、電子デバイスの入力面は、マルチタッチディスプレイスクリーンであるが、これは必須ではなく、他の実施形態では、入力面は、トラックパッド又は作画タブレット(drawing tablet)などのディスプレイのない入力面であってもよい。スタイラス及び電子デバイスは、本明細書では、まとめて「ユーザ入力システム」と称される。
【0118】
本明細書に記載のユーザ入力システムを使用して、スタイラスからの自由形式のユーザ入力を捕捉することができる。例えば、ユーザは、電子デバイスの入力面にわたってスタイラスの先端を、スライド、移動、ドラッグするか、又は引くことができ、それに応じて、電子デバイスは、入力面の下に位置付けられたディスプレイを使用して線をレンダーリングすることができる。この例では、レンダーリングされた線は、入力面にわたるスタイラスの経路を辿っているか、又はこれに対応している。レンダーリングされた線の太さは、ユーザがスタイラスを入力面にわたって移動させる力又は速度に少なくとも部分的に基づいて変化し得る。他の場合には、レンダーリングされた線の太さは、少なくとも部分的に、入力面に対するスタイラスの角度に基づいて変化し得る。その角度には、入力面の平面に対するスタイラスの傾き、入力面を横断する水平な書き込み線に対するスタイラスの書き込み角度などが挙げられるがこれらに限定されない。他の例では、スタイラス及び電子デバイスを、任意の他の好適な入力の目的のために併用することができる。
【0119】
概論的かつ広義には、本明細書に記載のユーザ入力システムは、スタイラスの1つ以上の出力(及び/又はスカラ量又はベクトル量としての出力の経時的変化)を判定及び/又は推定して、ユーザのスタイラスの操作を電子デバイスへの入力として解釈する。例えば、ユーザ入力システムは、ユーザのグリップによってスタイラスへ印加された力の大きさ(例えば、スカラ量又はベクトル量としての大きさの非バイナリ推定値)、スタイラスによって、電子デバイスの入力面へ印加された力の大きさ(例えば、スカラ量又はベクトル量としての大きさの非バイナリ推定値)、スタイラスの先端が電子デバイスの入力面に触れる場所又はエリア、スタイラス先端の場所と、同様に入力面に接触しているユーザの手のひら、手首、又は他の指との間の距離、入力面の平面に対するスタイラスの極角(例えば、スタイラスの傾き)、入力面の軸線に対するスタイラスの方位角、入力面の平面に対するスタイラスの角度位置のベクトル表示又はスカラ表示、入力面に対するスタイラスの長さに沿う1つ以上の点の三次元座標(例えば、球面座標、直交座標など)などを推定することができる。多くの実施形態では、ユーザ入力システムは、かかる変数を経時的に監視して、スカラ量又はベクトル量のいずれか一方としての変数の変化率(例えば、速度、加速度など)を推定する。
【0120】
入力面の平面内又は平面に平行な点(又はエリア)としての、スタイラスの二次元位置座標を推定又は判定する動作は、かかる動作が、電子デバイスによって実行されるか、スタイラスによって実行されるか、かつ/又は少なくとも部分的に、電子デバイスとスタイラスとの間の(あるいは、1つ以上の他の電子デバイスとの)協働によって実行されるかに関わらず、本明細書において、概ね、スタイラスの「場所を特定すること」と称される。多くの実施形態では、この動作は、電子デバイスのタッチ感知式ディスプレイ上に配置されたカバーガラスの外部面の左下隅などの、電子デバイスの入力面の平面の原点に対するスタイラス先端の直交座標を推定することを伴う。他の例では、この動作は、スタイラスの先端が触れる入力面の二次元エリア又は領域を推定することを伴う。直交座標(及び/又はエリアに関連付けられた座標のセット)は、入力面自体に平行又は入力面自体に関連付けられた平面によって定義される原点に対するものであってもよい(例えば、局所直交座標系)。一つの例において、原点は、矩形入力面の右上隅にあってもよい。スタイラスの場所を、ベクトル量又はスカラ量など、任意の好適な方法又は形式で表すことができる。
【0121】
入力面の平面に対するスタイラスの向きを推定する動作は、かかる動作が、電子デバイスによって実行されるか、スタイラスによって実行されるか、かつ/又は少なくとも部分的に、電子デバイスとスタイラスとの間の(あるいは、1つ以上の他の電子デバイスとの)協働によって実行されるかに関わらず、本明細書において、概ね、スタイラスの「角度位置」を推定することと称される。多くの実施形態では、スタイラスの角度位置を推定する動作は、入力面の平面に対するスタイラスの長手方向軸線の向きを描く球面座標を推定することを伴う。他の場合には、スタイラスの角度位置を推定することは、スタイラスの長手方向軸線に沿った1つ以上の基準点の三次元直交座標を推定することを伴う。入力面の平面に対するスタイラスの角度位置を判定するための任意の数の実装固有かつ好適な方法は、他の実施形態において用いることができ、また、スタイラスの場所と同様に、スタイラスの角度位置は、1つ以上のベクトル量又はスカラ量など、任意の好適な方法又は形式で表すことができることが理解されるであろう。
【0122】
一部の実施形態では、入力面の平面及び頂点に対するスタイラスの極角及び方位角を推定することができる。極角は、入力面の平面に対して垂直なベクトル(例えば、頂点)に対するスタイラスの角度として計算することができ、方位角は、入力面の平面に平行なベクトル(例えば、軸線)に対するスタイラスの角度として計算することができる。これらの例では、入力面上のスタイラスの先端の位置は、スタイラスの角度位置を定義する局所球面座標系の原点と考えることができる。
【0123】
スタイラスの場所を特定し、角度位置を推定する動作は、本明細書では、概ね、局所的に定義された直交座標系及び局所的に定義された球面座標系に関して言及しているが、かかる座標系が任意の特定の実施形態に対して必須ではなく、本明細書に記載したような様々な計算及び演算の実施において他の座標系又は複数の座標系の連携を使用してもよいことが当業者には理解されるであろう。一部の例では、1つの座標系から別の座標系に移行するために、電子デバイス又はスタイラスのうちいずれか一方又は両方によって、アフィン変換又は同様の計算若しくは変換を実行することができる。
【0124】
上記のとおり、電子デバイス及び/又はスタイラスは、スタイラスの場所及び角度位置を経時的に推定及び/又は監視し、差分量又は積算量(例えば、加速度、速度、総印加力、経路長などが挙げられるがこれらに限定されない)を算定するように構成することができる。例えば、スタイラスが入力面にわたって動かされたときの、その面に対するスタイラスの速度及び/又は加速度を推定する動作は、かかる動作が、電子デバイスによって実行されるか、スタイラスによって実行されるか、かつ/又は少なくとも部分的に、電子デバイスとスタイラスとの間の(あるいは、1つ以上の他の電子デバイスとの)協働によって実行されるかに関わらず、本明細書において、概ね、スタイラスの「平面運動」を推定することと称される。多くの実施形態では、この動作は、スタイラスの経時的な相対移動、より具体的には、スタイラスの位置の経時的な変化を推定することを伴う。特定の期間にわたるスタイラスの位置の変化を使用して、その期間中のスタイラスの速度を推定することができる。同様に、特定の期間におけるスタイラスの速度の変化を使用して、その期間中のスタイラスの加速度を推定することができる。
【0125】
スタイラスが入力面の平面にわたって動かされたときの、入力面の平面に対するスタイラスの角速度及び/又は加速度を推定する動作は、かかる動作が、電子デバイスによって実行されるか、スタイラスによって実行されるか、かつ/又は少なくとも部分的に、電子デバイスとスタイラスとの間の(あるいは、1つ以上の他の電子デバイスとの)協働によって実行されかに関わらず、本明細書において、概ね、スタイラスの「角運動」を推定することと称される。多くの実施形態では、この動作は、スタイラスの極角及び方位角の経時的な変化を推定することを伴う。特定の期間におけるスタイラスの極角の変化は、その期間中のスタイラスの極角速度である。特定の期間におけるスタイラスの方位角の変化は、その期間中のスタイラスの方位角速度である。これらの実施形態では、特定の期間における極角速度又は方位角速度の変化は、本明細書において、概ね、それぞれ、極角加速度及び方位角加速度と称される。
【0126】
多くの実施形態では、スタイラスによって入力面へ印加された力は、正確に又は近似的に推定、測定、計算、ないしは別の方法で算定することができる。本明細書で使用するとき、用語「力」は、力の推定値、判定値、及び/又は計算値を意味し、圧力、変形、応力、張力、力密度、力-エリアの関係、推力、トルク、及び力若しくは関連する分量を含む他の影響などの性質又は特性に対応し得る。
【0127】
スタイラスによって入力面へ印加された力を推定する動作は、電子デバイスによって実行されるか、スタイラスによって実行されるか、かつ/又は少なくとも部分的に、電子デバイスとスタイラスとの間の(あるいは、1つ以上の他の電子デバイスとの)協働によって実行されるかに関わらず、本明細書において、概ね、「印加された力」を推定することと称される。より広義的には、本動作は、力の向き又は方向に従属するか又はこれから独立して、スタイラスの先端及び入力面による、かつスタイラスの先端と入力面との間における、印加された力の大きさを推定することを伴う。多くの実施形態では、スタイラスの先端によって入力面へ印加された力は、スタイラス自体によって推定される。例えば、スタイラス内の力感知構造体は、スタイラスが入力面に対して力を付与した際にスタイラスが受ける「反作用力」を分解又は測定することによって、印加された力を推定することができる。反作用力は、スタイラスによって入力面へ印加された力と等しくかつ相反にあるため、スタイラスによる反作用力の測定は、入力面へ印加された力の測定と対応する。
【0128】
他の場合には、電子デバイスは、印加された力を直接測定することができる。かかる例では、スタイラスが反作用力を判定又は推定することは必須でなくてもよい。
【0129】
更に他の実施形態では、印加された力及び反作用力の両方を推定かつ/又は判定することができる。例えば、ユーザ入力システムは、反作用力の推定値に加え、印加された力の推定値を取得することができる。ユーザ入力システムは、2つの測定値のうち一方又は両方を選択かつ使用してもよく、他の場合には、ユーザ入力システムは、2つの測定値を適切な方法(例えば、平均)で組み合わせてもよい。
【0130】
これら及び他の実施形態について、
図1A~
図24を参照して以下で検討する。しかしながら、これらの図に関して本明細書に記載される「発明を実施するための形態」は、説明を目的とするものに過ぎず、限定するものとして解釈するべきではないことが、当業者には容易に理解されるであろう。本説明の全体にわたって現れるセクションの見出しは、便宜上かつ構成上の目的で設けているに過ぎず、任意の特定のセクション内の開示を、そのセクション内で記載した実施形態、変形例、代替例、詳細、特徴及び/又は特性に制限又は限定することを意図するものではない。
【0131】
スタイラスを組み込んだユーザ入力システム
概論的かつ広義には、
図1A~
図1Dは、電子デバイス102及びスタイラス104を備えるユーザ入力システム100について言及する。ユーザ106は、電子デバイス102に情報を伝達するために、電子デバイス102の入力面108に対するスタイラス104の向き及び位置を操作する。ユーザ入力システム100は、例えば、スタイラス104の場所を特定すること、スタイラス104の角度位置を推定すること、入力面108に対するスタイラス104による力の大きさを推定することなどを含むがこれらに限定されない、複数の動作を実行又は調整するように構成することができる。
【0132】
ユーザ入力システム100は、これらの及び他の動作を、同時に又は異なる時点で実行することができる。非限定的な一例では、スタイラス104の場所を判定する動作は、スタイラス104の角度位置を判定する動作と同時に実行可能であるが、入力面108に対するスタイラス104による力の大きさを推定する動作は、定期的に、かつ/又は、特定の時点における電子デバイス102(又はスタイラス104)の特定の動作モードを所与とすると、電子デバイス102がスタイラスから入力された力を受けるように構成されているかどうかに基づいて実行される。
図1A~
図1Dは、これらの及び他の実施形態に関連して提供される。
【0133】
図1Aは、電子デバイス102及びスタイラス104を含むユーザ入力システム100を示す。ユーザ106は、電子デバイス102の入力面108にわたってスタイラス104の先端をスライドさせて、入力面108の下に位置付けられるか、又は入力面108と統合された、電子デバイス102のディスプレイ上に提示又は提供されたユーザインタフェースと対話する。
【0134】
他の場合には、電子デバイス102は、ディスプレイを含んでいなくてもよい。例えば、電子デバイス102は、
図1A~
図1Dでは単に一例としてタブレットコンピューティング装置として提示され、(入力面108の下に位置付けられたディスプレイを備えるか又は備えない)他の電子デバイスが想定される。例えば、ユーザ入力システム100の電子デバイスを、周辺入力デバイス、トラックパッド、作画タブレットなどとして実装可能である。
【0135】
はじめに、例えば、
図1A及び
図1Bに示すように、スタイラス104の特定の物理的特性及び動作的特性について言及する。スタイラス104は、ユーザ106による使用及び操作を容易にするように様々な形態を取ってもよい。図示の例では、スタイラス104は、ペン又は鉛筆などの筆記用具の一般的な形状を有する。図示した実施形態では、スタイラス104は、2つの端部を有する円筒状の本体を含む。この例では、本体の2つの端部は、それぞれ、テーパ状先端及び丸みのあるキャップで終端される。テーパ状先端及び丸みのあるキャップのうち一方又は両方は、取り外し可能であってもよく、本体に固着されていてもよく、あるいは、本体の一体となっている部分であってもよい。ユーザ106は、入力面108にわたってスタイラス104のテーパ状先端をスライドさせて、電子デバイス102に情報を伝達する。電子デバイス102は、任意の実装固有かつ好適な方法でユーザによるスタイラス104の操作を解釈することができる。
【0136】
スタイラス104の円筒状の本体、あるいはより一般的には、「本体」又は「胴体」は、任意の数の好適な材料で形成することができる。胴体は、
図1Bでは、胴体104aとして特定される。胴体104aは、プラスチック、金属、セラミック、ラミネート、ガラス、サファイア、木材、革、合成材料、若しくは任意の他の材料、又は材料の組み合わせによって形成することができる。胴体104aは、スタイラス104の1つ以上の内部構成要素用の外面(又は部分的外面)及び保護ケースを形成することができる。胴体104aは、前面部品及び背面部品、又は上部クラムシェル及び下部クラムシェルなどの動作可能に共に接続された1つ以上の構成要素から形成することができる。あるいは、胴体104aは、単一の部品(例えば、同一の本体又はユニボディ)から形成することができる。多くの実施形態では、胴体104aは、誘電材料から形成される。
【0137】
一部の実施形態では、胴体104aは、部分的に又は全体的に、多色発光ダイオードから放出される光などの赤外線信号又は別の光信号を拡散する光信号拡散器として構成されてもよい。他の場合には、胴体104aは、部分的に又は全体的に、無線通信及び/又は電界が通過可能なアンテナ窓として構成されてもよい。
【0138】
胴体104aは、選択した色、硬度、弾性、剛性、反射性、屈折パターン、テクスチャーなどを胴体104aに提供するように構成された薬剤でドープした材料から形成することができる。他の例では、ドープ剤は、導電性及び/又は絶縁性、磁性及び/又は反磁性、耐薬品性及び/又は薬品反応性、赤外線及び/又は紫外線光吸収性及び/又は反射性、可視光吸収性及び/又は反射性、抗菌性及び/又は抗ウイルス性、疎油性及び/又は疎水性、熱吸収性、害虫忌避性、耐変色性及び/又は耐色あせ性、帯電防止性、液体曝露反応性などを含むがこれらに限定されない他の性質を胴体104aにもたらすことができる。
【0139】
胴体104aは、一定の又は可変の直径断面を呈し得るが、図示のとおり、胴体104aの円筒状の断面図は、テーパ状先端から丸みのあるキャップまで、ほぼ一定の直径を維持している。テーパ状先端は、
図1Bでは、先端104bとして識別される。丸みのあるキャップは、
図1Bでは、ブラインドキャップ104cとして識別される。
【0140】
他の実施形態では、胴体104aは、変断面(例えば、胴体104aの「外形」は、胴体104aの長さにわたって可変である)を含み得る。一つの例において、胴体104aの直径は、ブラインドキャップ104cより、先端104b付近の方が小さくなっていてもよい。一部の例では、胴体104aの直径は、胴体104aの中間部分、つまり先端104bとブラインドキャップ104cとの間で、外側に膨らんでもよい。場合によっては、胴体104aの外形は、隆起関数、ガウス関数、又はステップ関数などの数学関数に従ってもよい。胴体104aは、エンボス若しくは窪み、緊密な間隔のチャネル、突起、突出部などの1つ以上の把持機構(図示せず)を含むことができる。場合によっては、把持機構は、胴体104aとは異なる材料で形成することができ、把持機構(1つ又は複数)は、高摩擦性を有するポリマー材料から形成されてもよい。
【0141】
円筒状として図示しているが、胴体104aは、すべての実施形態において円筒形状を有する必要はない。したがって、本明細書で使用するとき、用語「直径」は、形状が円形ないしは別の形状であろうと、二次元形状の2つの点を接続することができる直線距離を意味する。例えば、スタイラス104は、直径が可変であるか又は直径が一定であるかのいずれか一方である、n辺の多角形断面(例えば、ヴェシカパイシーズ(vesica piscis)断面、三角形断面、矩形断面、五角形断面など)を有する胴体104aを含むことができる。
【0142】
一部の例では、胴体104aの断面図は、軸対称であるが、これは必須ではなく、本明細書に記載の実施形態によるある特定のスタイラスは、1つの軸線に沿って鏡映対称であるが、他の軸線に沿って鏡映非対称である断面を有する胴体104aを含む。更に他の例では、スタイラス104の胴体104aは、ユーザ106の快適さを向上させるように構成された、溝、へこみ、及び/又は突起を含む人間工学的形状に形成することができる。場合によっては、胴体104aは、先端104bに向かって、線形又は非線形に、直径が小さくなるテーパ部を含む。
【0143】
多くの場合、胴体104aと先端104bとの境界における胴体104aの直径は、その位置における先端104bの直径と実質的に同様であってもよい。このようにして、テーパ状最上部の外部面及び胴体104aの外部面は、スタイラス104の実質的に連続する外部面を形成する。
【0144】
場合によっては、胴体104aは、ボタン、ダイアル、スライド、フォースパッド、タッチパッド、オーディオコンポーネント、触覚コンポーネントなどの1つ以上の入力/出力構成要素が少なくとも部分的に存在する1つ以上の開口を画定することができる。開口(及びそれに相応して、開口に関連付けられた入力/出力構成要素)は、先端104b付近の胴体104aの下端部において画定され得る。このようにして、ユーザ106がスタイラス104を握るときに、ユーザの人さし指を胴体104aに置くことができる場所の近くに、都合よく、入力/出力構成要素は、位置することができる。
【0145】
図1Bに示すように、胴体104aによって画定される別の開口内にインジケータ110を配置することができる。一つの例において、インジケータ110は、スタイラス104の現在の動作モード、電子デバイス102の現在の動作モード及び/又はスタイラス104のバッテリ残量など(であるが、これらに限定されない)の情報をユーザ106に伝達するために点灯する、輝度の調節が可能な単色又は多色発光ダイオードを含む。他の例では、電子デバイス102上で動作するプログラム又はアプリケーションのステータス又は動作モードは、インジケータ110によってユーザ106に伝達される。インジケータ110は、任意の数の好適かつ実装固有の方法で点灯させることができる。インジケータ110は、拡散器又はレンズの後方に位置付けることができる。他の例では、複数のインジケータを含むことができる。
【0146】
スタイラス104のブラインドキャップ104c、あるいはより一般的には、「キャップ」は、スタイラス104の胴体104aに装飾端部を提供するように構成されてもよい。場合によっては、ブラインドキャップ104cは、胴体104aと一体的に形成することができるが、これはすべての実施形態において必須ではない。例えば、一部の実施形態では、ブラインドキャップ104cは、取り外し可能である。かかる一例では、ブラインドキャップ104cは、スタイラス104のデータ及び/又は電源コネクタ112を隠すように構成することができる。ブラインドキャップ104cにより隠すことができるデータ及び/又は電源コネクタ112は、電子デバイス102(及び/又は別の電子デバイス)の電力及び/又はデータポート114に結合して、スタイラス104内に収容されるバッテリの再充電を容易にするように構成することができる。他の場合には、データ及び/又は電源コネクタ112は、電力及び/又はデータポート114を介してスタイラス104と電子デバイス102との間でデータを交換するために使用することができる。データ及び/又は電源コネクタ112は、可撓性であるように構成することができ、電力及び/又はデータポート114に接続されたときに、スタイラス104は、スタイラス104及び/又は電子デバイス102を損傷させる場合がある力に抵抗し、耐えることができる。
【0147】
データ及び/又は電源コネクタ112は、マルチピンで両面兼用の標準的なデータ及び/又は電源コネクタとして図示しているが、かかるコネクタは、必須ではないことを理解されたい。具体的には、一部の実施形態では、Lightningコネクタ、ユニバーサルシリアルバスコネクタ、Firewireコネクタ、シリアルコネクタ、Thunderboltコネクタ、ヘッドホンコネクタ、又は任意の他の好適なコネクタを使用することができる。
【0148】
図示のとおり、データ及び/又は電源コネクタ112は、胴体104aの端部から外側に延在してもよい。しかしながら、これは、すべての実施形態において必須でなくてもよい。例えば、データ及び/又は電源コネクタ112は、胴体104aの表面上に配置される一連の電気接点として実装されてもよい。一つの例において、一連の電気接点は、胴体104aの平坦な先端表面(例えば、円筒形状の円形エンドキャップ)上に配置される。この実施形態では、データ及び/又は電源コネクタ112は、非使用時に、胴体104a内に、手動で又は自動で引っ込むことができる。一部の例では、データ及び/又は電源コネクタ112は、プッシュ・プッシュ機構に接続可能である。これらの実施形態では、ブラインドキャップ104cは必須でなくてもよい。これらの実施形態では、データ及び/又は電源コネクタ112は、電力及び/又はデータポート114などの雌型レセプタクルと嵌合するように構成された雄型コネクタである。他の場合には、データ及び/又は電源コネクタ112は、雄型コネクタと嵌合するように構成された雌型レセプタクルであってもよい。これらの実施形態では、ブラインドキャップ104cは、データ及び/又は電源コネクタ112内に収まるように構成された延長部分を含むことができる。延長部分は、データ及び/又は電源コネクタ112の1つ以上の部分を引きつけるための1つ以上の磁石を含むことができる。
【0149】
データ及び/又は電源コネクタ112は、電子デバイス102の電力及び/又はデータポート114内にデータ及び/又は電源コネクタ112を保持しやすくすることができる、総括して、戻り止め112aとして標識されている1つ以上の戻り止めを含むことができる。更に、戻り止め112aは、
図9A~
図9Dを参照して以下で記載するようなブラインドキャップ104cを保持しやすくすることができる。他の実施形態では、戻り止めは必須でなくてもよい。
【0150】
場合によっては、ブラインドキャップ104cは、ユーザのポケット又は任意の他の好適な保管場所にスタイラス104を取り付けるためのクリップ(図示せず)を含む。ブラインドキャップ104cは、首紐又はテザーと結合するように構成された貫通孔を含むことができる。首紐又はテザーはまた、電子デバイス102に結合するように構成されてもよい。
【0151】
ブラインドキャップ104cは、金属、プラスチック、ガラス、セラミック、サファイアなど又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない任意の好適な材料から形成されてもよい。多くの場合、ブラインドキャップ104cは、胴体104aと同一の材料から形成されるが、これは必須ではない。一部の実施形態では、ブラインドキャップ104cは、部分的に又は全体的に、多色発光ダイオードなどの赤外線信号又は別の光信号を拡散する信号拡散器として構成されてもよい。他の場合には、ブラインドキャップ104cは、部分的に又は全体的に、無線通信及び/又は電界が通過可能なアンテナ窓として構成されてもよい。
【0152】
一部の例では、ブラインドキャップ104cは、1つ以上の(概ね、圧力抜き孔116と標識されている)圧力抜き孔を含むことができる。圧力抜き孔116は、スタイラス104のデータ及び/又は電源コネクタ112の上にブラインドキャップ104cをかぶせたときに、圧力を正常化するための経路を提供することができる。他の場合には、圧力抜き孔116は、一部の場合に、スタイラス104の胴体104aからブラインドキャップ104cを外すことができる圧力差の拡大を防止及び/又は軽減するように構成することができる。圧力抜き孔116は、気流を調整及び/ないしは別の方法で制御するバルブを含むことができる。
【0153】
図示のとおり、ブラインドキャップ104cは、丸みのある端部において終端するが、これはすべての実施形態において必須ではない。一部の実施形態では、ブラインドキャップ104cは、平面として終端する。他の実施形態では、ブラインドキャップ104cは、別の好適な形状で終端する。
【0154】
ブラインドキャップ104cは、一定の又は可変の径断面を呈してもよい。多くの実施形態では、図示のとおり、ブラインドキャップ104cの断面図は、胴体104aとブラインドキャップ104cとが接合する箇所において胴体104aの断面図と一致する。
【0155】
他の実施形態では、ブラインドキャップ104cは、変断面を含み得る。一つの例において、ブラインドキャップ104cの直径は、胴体104aに接続するように構成されたブラインドキャップ104cの一部より、ブラインドキャップ104cの端部付近の方が小さくてもよい。一部の例では、ブラインドキャップ104cの直径は、鉛筆の消しゴムに類似していてもよい。場合によっては、ブラインドキャップ104cの外形は、隆起関数、ガウス関数、又はステップ関数などの数学関数に従ってもよい。ブラインドキャップ104cは、エンボス若しくは窪み、緊密な間隔のチャネル、突起、突出部などの把持機構を含むことができる。場合によっては、把持機構は、ブラインドキャップ104cとは異なる材料で形成することができ、把持部は、高摩擦性を呈するポリマー材料から形成されてもよい。
【0156】
ブラインドキャップ104cは、胴体104aに取り外し可能に取り付けられるように構成することができる。一実施形態では、ブラインドキャップ104cは、ブラインドキャップ104cが胴体104a内の対応するねじ山にねじ込まれるように螺合される。他の場合には、ブラインドキャップ104cは、胴体104a及び/又はブラインドキャップ104cが隠すことができるコネクタ内の1つ以上の対応する凹み及び/又は戻り止めと位置合わせされるように構成された1つ以上の戻り止め及び/又は凹みを含む。他の場合には、ブラインドキャップ104cは、胴体104aに締まり嵌めされるか又はスナップ嵌合される。更に他の場合には、ブラインドキャップ104cは、胴体104aの一部及び/又はブラインドキャップ104cが隠すことができるコネクタに磁気吸引される。
【0157】
場合によっては、ブラインドキャップ104cは、入力構成要素として構成することができる。例えば、スタイラス104は、ブラインドキャップ104cが取り付けられているときは第1のモードで動作し、ブラインドキャップ104cが取り外されているときは第2のモードで動作してもよい。同様に、スタイラス104は、ブラインドキャップ104cが第1の角度に回転したときには第1のモードで動作し、一方、スタイラス104は、ブラインドキャップ104cが第2の角度に回転したときには第2のモードで動作する。電子デバイス102はまた、スタイラス104のブラインドキャップ104cの角度位置に関連するモードで動作するように構成することができる。他の場合には、スタイラス104及び/又は電子デバイス102は、ブラインドキャップ104cの回転角度を回転入力として監視することができる。他の場合には、ブラインドキャップ104cは、ブラインドキャップ104cの押圧によりスタイラス104及び/又は電子デバイス102に対してコマンド又は命令が発せられるように、スイッチに機械的に結合することができる。
【0158】
スタイラス104の先端104b、あるいはより一般的には、「先端」は、ユーザ106と電子デバイス102との間の対話を促進するために、電子デバイス102の入力面108と接触するように構成されてもよい。先端104bは、ペンと同様に、先端に向かってテーパ状になっていてもよく、ユーザ106は、親しみのあるフォームファクタでスタイラス104を精度良く制御することができる。一部の例では、先端104bは、尖形状とは対照的に、平滑であるか又は丸みがあってもよく、あるいは回転可能な又は固定されたボールの形状を有してもよい。
【0159】
多くの実施形態では、先端104bは、入力面108よりも軟らかい材料から形成される。例えば、先端104bは、シリコーン、ゴム、フルオロエラストマー、プラスチック、ナイロン、導電若しくは誘電発泡体、若しくは任意の他の好適な材料、又は材料の組み合わせから形成することができる。このようにして、入力面108にわたる先端104bの描画は、入力面108、又は、反射防止コーティング層、疎油性コーティング層、疎水性コーティング層、装飾コーティング層、インク層などが挙げられるがこれらに限定されない、入力面108に塗布された層を損傷させることができない。
【0160】
胴体104aと同様、先端104bは、選択した色、硬度、弾性、剛性、反射性、屈折パターン、テクスチャーなどを先端104bに提供するように構成された薬剤でドープした材料から形成することができる。他の例では、ドープ剤は、導電性及び/又は絶縁性、磁性及び/又は反磁性、耐薬品性及び/又は薬品反応性、赤外線及び/又は紫外線光吸収性及び/又は反射性、可視光吸収性及び/又は反射性、抗菌性及び/又は抗ウイルス性、疎油性及び/又は疎水性、熱吸収性、害虫忌避性、耐変色性及び/又は耐色あせ性、帯電防止性、液体曝露反応性などを含むがこれらに限定されない他の性質を先端104bにもたらすことができる。
【0161】
多くの場合、先端104bは、胴体104aと同様の材料から形成されるが、これは必須ではない。一部の実施形態では、先端104bは、部分的に又は全体的に、多色発光ダイオードなどの赤外線信号又は別の光信号を拡散する信号拡散器として構成されてもよい。他の場合には、先端104bは、部分的に又は全体的に、無線通信及び/又は電界が通過可能なアンテナ窓として構成されてもよい。
【0162】
先端104bは、線形に小さくなる直径を有することができる。図示のような多くの実施形態では、先端104bの断面図は、胴体104aと先端104bとが境界を接する箇所において胴体104aの断面図と一致し、終端点まで線形に小さくなる。他の例では、先端104bの断面図は、終端点で終端する前に、縮小及び/又は増大してもよい。場合によっては、先端104bの外形は、隆起関数、ガウス関数、又はステップ関数などの数学関数に従ってもよい。先端104bは、エンボス若しくは窪み、緊密な間隔のチャネル、突起、突出部などの把持機構を含むことができる。場合によっては、把持機構は、先端104bとは異なる材料で形成することができ、把持部は、高摩擦性を呈するポリマー材料から形成されてもよい。
【0163】
先端104bは、胴体104aに取り外し可能に取り付けられるように構成することができる。一実施形態では、先端104bは、先端104bが胴体104a内の対応するねじ山にねじ込まれるように螺合される。他の場合には、先端104bは、胴体104a内の1つ以上の対応する凹み及び/又は戻り止めと位置合わせするように構成された1つ以上の戻り止め及び/又は凹みを含む。他の場合には、先端104bは、胴体104aに胴体104aに締まり嵌めされるか又はスナップ嵌合される。更に他の場合には、先端104bは、胴体104aの一部に磁気吸引される。
スタイラスからの入力を受信するように構成された電子デバイス
【0164】
次に、
図1Aに戻り、電子デバイス102の特定の物理特性及び動作特性、並びに
図1A及び
図1Bに示すスタイラス104との電子デバイス102の相互運用について言及する。
【0165】
いくつかの実施形態では、電子デバイス102は、実質的にリアルタイムで、スタイラス104の場所を特定し、角度位置を推定する。電子デバイス102は、スタイラス104と通信し、かつ/又は通信せずに、これらの動作を実行することができる。
【0166】
図示した実施形態において、電子デバイス102は、タブレットコンピューティング装置として示されているが、このフォームファクタは(上述のとおり)すべての実施形態において必須ではない。例えば、電子デバイス102は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、携帯電話、産業用又は商業用コンピューティング端末、医療用デバイス、周辺又は一体型入力装置、携帯又はバッテリ駆動型ポータブル電子デバイス、ナビゲーションデバイス、ウェアラブルデバイスなどの任意の好適なデバイスであることができる。図解の簡略化のために、以下に記載する
図1Aの電子デバイス102の構成要素の多くは、
図1A~
図1Dでは標識されていないか、又は
図1A~
図1Dでは描画されていないかのいずれか一方である。
【0167】
電子デバイス102は、エンクロージャ(例えば「筐体」)を含む。筐体102aは、電子デバイス102の1つ以上の内部構成要素用の外面(又は部分的外面)及び保護ケースを形成することができる。図示した実施形態において、筐体102aは略矩形で形成されるが、この形体は必須ではない。筐体102aは、前面部品及び背面部品、又は上部クラムシェル及び下部クラムシェルなどの動作可能に共に接続された1つ以上の構成要素から形成することができる。あるいは、筐体102aは、単一の部品(例えば、同一の本体又はユニボディ)から形成することができる。
【0168】
筐体102aは、電子デバイス102の内部構成要素を包囲、支持、及び保持するように構成されてもよい。電子デバイス102の構成要素としては、プロセッサ、メモリ、電源、1つ以上のセンサ、1つ以上の通信インターフェース、1つ以上のデータコネクタ、1つ以上の電源コネクタ、例えばスピーカ、回転入力装置、マイクロフォン、オンオフボタン、ミュートボタン、生体センサ、カメラ、力感知式及び/又はタッチ感知式トラックパッドなどの1つ以上の入出力装置のうち1つ以上が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0169】
電子デバイス102はディスプレイ108aを備えることができる。ディスプレイ108aは、入力面108の下に位置付けることができる。他の例では、ディスプレイ108aは、入力面108と統合されている。ディスプレイ108aは、液晶ディスプレイ技術、発光ダイオード技術、有機発光ディスプレイ技術、有機電界発光技術、電子インク、若しくは他の種類のディスプレイ技術、又はディスプレイ技術タイプの組み合わせを用いるマルチタッチ及び/若しくはマルチ感圧タッチスクリーン含むが、これらに限定されない任意の好適な技術を用いて実装することができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、電子デバイス102の通信インターフェースは、電子デバイス102とスタイラス104との間の電子通信を促進する。例えば、一実施形態では、電子デバイス102は、低消費電力のBluetooth通信インターフェース、又は近距離通信インターフェースを介してスタイラス104と通信するように構成されてもよい。他の例では、通信インターフェースは、電子デバイス102と、外部通信ネットワーク、デバイス、又はプラットフォームとの間の電子通信を促進する。
【0171】
電子デバイス102とスタイラス104との間、ないしは電子デバイス102と別の部品との間に関わらず、通信インターフェースは、無線インターフェース、Bluetoothインターフェース、近距離通信インターフェース、磁気インターフェース、ユニバーサルシリアルバスインターフェース、誘導性インターフェース、共鳴インターフェース、容量性結合インターフェース、Wi-Fiインターフェース、TCP/IPインターフェース、ネットワーク通信インターフェース、光学インターフェース、音響インターフェース、又は任意の従来の通信インターフェースとして実装されることができる。
【0172】
電子デバイス102は、通信に加えて、このようなデバイス上で、例えば、メッセージ、ビデオ、動作しているコマンドなどを実行している、外部接続しているか又は通信しているデバイス及び/又はソフトウェアに関係する情報を提供することができる(、かつ外部デバイスからの前述のうちいずれかを受信することができる)。上述のとおり、図解の簡略化のために、
図1A~
図1Dでは、これらの要素の多くを含まずに電子デバイス102が図示され、要素のそれぞれは、部分的に、任意選択的に、又は全体的に、電子デバイス102の筐体102a内に含まれてもよい。
【0173】
上述のとおり、電子デバイス102は、入力面108を備える。入力面108は、電子デバイス102の筐体102aと協働して、電子デバイス102の外部面を形成する。場合によっては、入力面108の上面は、筐体102aの外部面と同一平面にあることができるが、これはすべての実施形態において必須ではない。いくつかの例では、入力面108は、筐体102aの少なくとも一部から盛り上がっている。
【0174】
多くの例において、入力面108は、ガラス又は別の好適な材料、例えばプラスチック、サファイア、金属、セラミック、イオン注入ガラスなどから形成される。場合によっては、入力面108は、中実材料であるが、別の場合においては、入力面108は、いくつかの材料を共に積層又は接着させることにより形成される。場合によっては、入力面108は、光学的に透明であるが、別の場合においては、入力面108は、不透明である。
【0175】
入力面108は、入力面108の外面の上に配置された1つ以上の装飾層又は機能層を含むことができる。例えば、反射防止コーティングを、入力面108の外面(又は内面)に塗布してよい。別の例においては、疎油性コーティングを入力面108に塗布する。他の例では、触知層を入力面108に塗布する。触知層は、スタイラス104が触知層をわたって移動する際に、特定の動摩擦又は静摩擦を示すように構成することができる。
【0176】
電子デバイス102はまた、入力面108の下に位置付けられるか、又は入力面108と統合したディスプレイを備えることができる。電子デバイス102はディスプレイを利用して、画像をレンダーリングして、ユーザに情報を伝達する。ディスプレイは、テキスト、色、線描、写真、アニメーション、ビデオなどを表示するように構成することができる。
【0177】
ディスプレイは、入力面108の底面と接触するように、接着、積層、又は位置付けることができる。ディスプレイは、例えば、透明回路層、カラーフィルタ層、偏光子層、及び他の要素又は層を含む、画像のレンダーリングを容易にする複数の要素のスタックを含むことができる。ディスプレイは、液晶ディスプレイ技術、有機発光ダイオード技術、電界発光技術などを含むがこれらに限定されない任意の好適なディスプレイ技術により実装されてよい。ディスプレイはまた、例えば、ガラスシート、ポリマーシート、偏光子シート、カラーマスク、剛性又は弾性フレームなどを含む、構造性能又は光学性能を改善するための他の層を含んでもよい。
【0178】
電子デバイス102はまた、入力面108及び/又は電子デバイス102のディスプレイの下に位置付けられるか、又はこれらと統合されたセンサ層を備えることができる。電子デバイス102は、センサ層を利用して、他の目的の中でもとりわけ、入力面108上のスタイラス104の存在及び/又は場所を検出する。他の例では、電子デバイス102は、センサ層を利用して、入力面108上のユーザの指などの他のオブジェクトの存在を検出する。更に他の例においては、電子デバイス102は、センサ層を利用して、スタイラス104などのオブジェクトが入力面108を押す力を検出する。
【0179】
センサ層は、光学的に透明又は不透明であってもよい。特定の実施形態のセンサ層がディスプレイ内に配置される場合、センサ層は、ディスプレイの透明度に影響を与えないように、光学的に透明であってもよい。別の例において、センサ層は、ディスプレイの周辺部の周りに配置されてよく、ディスプレイを囲むベゼルの下に位置付けられてもよい。本実施形態では、センサ層は光学的に透明である必要はない。
スタイラスの場所の特定
【0180】
次に、電子デバイス102のセンサ層を使用した、電子デバイス102の入力面108上での、スタイラス104の場所を特定する動作について言及する。電子デバイス102は、多数の好適な方法でスタイラス104の先端の場所を特定し、スタイラス104の直交座標を推定することができる。
【0181】
典型的な実施形態において、スタイラス104は、スタイラス104と電子デバイス102との協働の結果として場所を特定される。概論的かつ広義には、スタイラス104は、小さい有効径を有する電界を発生させることができる。この電界は、スタイラスが入力面上に配置された場合に入力面と交差する。電子デバイス102は、電界を検出し、電界が検出される場所(及び/又はエリア)に基づいて、スタイラスの場所を推定する。スタイラス104により発生させることができる電界を、
図5A~
図5Mを具体的に参照して以下でより詳述する。
【0182】
より具体的には、上述のとおり、電子デバイス102は、スタイラス104により発生する電界を検出するように構成することができるセンサ層を備えることができる。一実施形態では、センサ層は、多数の容量検知ノードを含む。容量検知ノードは、ディスプレイ上若しくはディスプレイ内、かつ/又は入力面108上若しくは入力面108内の任意の好適な層上若しくはこれらの間に位置することができる。
【0183】
いくつかの例では、容量検知ノードは、少なくとも部分的には、インジウム-スズ酸化物及びアンチモン-スズ酸化物などの金属酸化物、銀ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、白金ナノワイヤ、金ナノワイヤなどから形成されるナノワイヤパターン、金属の薄い堆積物などであるが、これらに限定されない、光学的に透明な導電体から形成することができる。容量検知ノードは、自己モード、相互モード、又は他の容量モードで動作し、スタイラス104に容量的に結合し、これによって発生させた信号及び電界を検出するように構成することができる。
【0184】
これらの実施形態では、スタイラス104は、先端から発生する略球状の電界を生み出すことができる。この電界は、先端付近の各容量検知ノードの相互キャパシタンスに影響を及ぼす。電子デバイス102は、これらの容量変化に関する各容量検知ノードを監視し、このような変化が(存在する場合に)生じた場所を推定することによって、入力面108上のスタイラス104の場所を特定する。
【0185】
本明細書で使用する場合、用語「先端信号」は、概ね、スタイラス104により先端104bに付与される電気信号を意味する。本明細書で使用する場合、用語「先端電界」は、概ね、先端信号に応答して、スタイラス104の先端104bにより発生する電界を意味する。上述のとおり、先端電界は任意の好適な形状をとってよいが、多くの実施形態では、先端電界は略球形状をとり、点源単極子電界としてモデリングすることができる。先端電界と交差する入力面108の領域(又は入力面108に平行な平面)は本明細書において、概ね、「先端電界交差エリア」と称される。
【0186】
先端電界交差エリアの周辺部は、電子デバイス102により受信される先端電界の電力密度(例えば、振幅)が、選択した閾値を下回った後の境界として定義することができる。一つの例において、先端電界交差エリアの外周は、先端電界の電力が半減する点(例えば3dB点)として定義される。言い換えると、本例において、先端電界交差エリアは、電界が発生した電力の半分よりも少なくとも大きい振幅を有する先端電界と交差する入力面108の一部として定義される。先端電界を発生及び/又は放出するように構成することができる例示的な構造は、特に、
図3A及び
図5A~
図5Nを参照して以下で詳述される。
【0187】
先端電界は、スタイラス104の先端から発生するため、先端電界交差エリアは、実質的に、スタイラス104の場所に基づいてのみ移動し、典型的な実施形態においては、先端電界交差エリアは、スタイラス104の角度位置に基づいて実質的に移動することができない。したがって、スタイラス104の場所を判定するために、電子デバイスは先端電界交差エリアの幾何中心を判定する。しかしながら、理解され得るように、電子デバイス102のセンサ層は、入力面108の最外面の下に配置されてよい。これらの例において、先端電界交差エリアは、スタイラス104の角度位置(例えば、遠近法効果/視差効果)に依存し得る。
【0188】
他の実施形態において、スタイラス104の場所は、電子デバイス102、スタイラス104、又これらの組み合わせにより、別の方法で判定することができる。例えば、電子デバイス102は、先端電界周辺部の形状、先端電界の最大の場所、先端電界の最小の場所などを判定することができる。言い換えると、本明細書において特定の技術を記載しているが、スタイラスの場所を判定するために、電子デバイス102又はスタイラス104により他の好適な手法が用いられてよいことを理解することができる。
【0189】
多くの場合において、同じセンサ層をまた使用して、ユーザ106の1つ以上の指を検出しながら、同時に先端電界を検出することができる。これらの場合において、電子デバイス102は、タッチ入力とスタイラス入力の両方を受けることができる。特に、容量検知ノードは、タッチ入力モードで動作して、指接触を検出し、ツール入力モードで動作して、スタイラス入力を検出することができる。2つのモードは、指接触(複数接触又は単一接触)及びスタイラス入力の両方を同時又はほぼ同時に検出することが可能な速度において切り替えることができる。
スタイラスの角度位置
【0190】
次に、
図1B~
図1Dを参照し、入力面108に対するスタイラス104の角度位置を推定する動作について言及する。これらの実施形態では、スタイラス104は、先端電界から離間及びオフセットしている第2の電界を発生させることができる。第2の電界は、先端電界と同軸上に位置合わせされ、両方の電界は、スタイラス104の長手方向軸線に沿って軸対称であるため、スタイラス104をグリップにとらわれないようにすることができる。
【0191】
先端電界及び第2の電界を確実に軸対称とするために、多くの実施形態は、直径の小さい電導性リング又はチューブを用いて第2の電界を発生させる。いくつかの実施形態では、導電性リングの直径は、先端電界を発生させる導電体の幅にほぼ等しい(例えば、1ミリメートル以内)。先端信号を先端104bに伝達する役割を担う信号線は、導電性リングを通過する。このようにして、導電性リングにより発生する電界は、軸対称であることができ、電界は、先端信号の先端104bへの伝達を担う信号線の存在に影響を受けない。
【0192】
本明細書で使用する場合、用語「環状信号」は、概ね、スタイラス104により付与されて、第2の電界を生成する電気信号を意味する。多くの実施形態において、環状導電体の半径が小さいために、第2の電界もまた略球状の電界である。言い換えると、電界源は、環状導電体であり、点源ではないものの、導電体の半径は、先端から導電体(それ故に、電子デバイス102の入力面108)を分離する距離と比較して十分に小さく、環状電界により、電子デバイス102が点源単極子を起点にしているように見える。
【0193】
いくつかの実施形態では、環状導電体は、チューブ状又は円柱状である。これらの実施形態では、発生する電界は、カプセル形状(例えば、半球形の末端でキャップされた円柱状)であってよい。これらの実施形態では、環状導電体は、スタイラス104の長手方向軸線に沿って位置合わせされた長手方向軸線を有する。このようにして、チューブ形状の導電体から発生されたカプセル形状の電界の1つの半球形端部は、スタイラス104の先端104bを向いている。
【0194】
先端電界のように、本明細書で使用する場合、用語「環状電界」は、概ね、環状信号に応答してスタイラス104より発生する電界を意味する。環状電界と交差する入力面108のエリア(又は入力面108に平行な平面)は、本明細書において、概ね、「環状電界交差エリア」と称される。
【0195】
他の実施形態において、スタイラス104の角度位置は、電子デバイス102、スタイラス104、又はこれらの組み合わせにより、別の方法で判定することができる。例えば、電子デバイス102は、環状電界周辺部の形状、環状電界の最大の場所、環状電界の最小の場所などを判定することができる。言い換えると、本明細書において特定の手法を記載しているが、スタイラスの角度位置を判定するために、電子デバイス102又はスタイラス104により、他の好適な手法が用いられてもよいことを理解することができる。
【0196】
したがって、概論的かつ広義には、本明細書に記載するもの(例えば、スタイラス104)などのスタイラスは、2つの異なる電界を発生させ、これらの電界の起点は、特定の距離だけ互いからオフセットしている。電界は、スタイラスの長手方向軸線に沿って互いに位置合わせされるため、電界は、軸対称である。第1の電界の起点は、スタイラスの先端に近接し、先端電界と称される。第2の電界の起点は、先端電界から少しの距離だけオフセットし、環状電界と称される。先端電界及び環状電界は共に、スタイラスの先端方向に略球状(又は半球状)である。使用時には、先端電界及び環状電界はそれぞれ、先端電界交差エリア及び環状電界交差エリアにまたがり、電子デバイス(例えば、電子デバイス102)の入力面(例えば、入力面108)を交差する。多くの場合において、交差エリアは、略円形であってもよい。
【0197】
先端電界交差エリアのように、環状電界交差エリアの周辺部は、電子デバイス102が受信する環状信号の電力密度(例えば、振幅)が、選択した閾値を下回った後の境界として定義されてもよい。一つの例において、環状電界交差エリアの外周は、環状電界の電力が半減する点(例えば、3dB点)として定義される。言い換えると、本例において、環状電界交差エリアは、電界が発生した電力の半分より少なくとも大きい振幅を有する環状電界が交差する入力面108の一部として定義される。環状電界を発生及び/又は放出するように構成することができる例示的な構造は、特に、
図3A及び
図5A~
図5Nを参照して以下で詳述される。
【0198】
先端信号及び環状信号はそれぞれ、容量性結合又は別の好適な検知手法によって、電子デバイスのセンサ層により受信される少なくとも1つの交流電流の構成要素を有することができる。多くの実施形態において、先端信号の周波数は、環状信号の周波数又は変調パターンと異なる(例えば、周波数分割多重化)。別の場合において、先端信号及び環状信号を時分割多重化することができる。
【0199】
しかしながら、特に、環状電界の起点(例えば、環形状の導電体)が先端104bと分離しているため、先端電界とは異なり、環状電界交差エリアはスタイラス104の角度位置に基づいて移動してよい。それ故に、スタイラス104をある方向又は別の方向に傾けることにより、環状電界交差エリアは、エリア及び/又は場所が変化する一方、先端電界交差エリアは実質的に固定されたままとなる。
【0200】
これらの実施形態では、先端電界交差エリアと環状電界交差エリアとの相対位置を使用して、スタイラス104の極角及び方位角を推定することができる。より具体的には、先端電界交差エリアの幾何中心及び環状電界交差エリアの幾何中心が互いに離れれば離れるほど、入力面108に対して、スタイラス104の極角は小さくなる(例えば、スタイラス104が近ければ近いほど、入力面108と平行となる)。同様に、先端電界交差エリアの幾何中心と環状電界交差エリアの幾何中心との間で画定されるベクトルの角度を使用して、入力面108に対するスタイラス104の方位角を推定することができる。
【0201】
別の非限定的な言い回しでは、多くの実施形態において、(入力面108の平面に垂直なベクトルと、スタイラス104の長手方向軸線120(例えば頂部)との間で画定される)極角118、及び(極角118と、入力面108の平面内の参照ベクトル(例えば、軸線)との間で画定される)方位角122を推定するために、電子デバイス102は、先端電界及び環状電界の既知の球状直径、環状電界交差エリアの直径、並びに/又は先端と環と間の距離を使用する。
【0202】
極角118と方位角122との相対関係の理解を容易にするために、明解性のため、ユーザ106の手を省略している
図1Aに示す電子デバイス102及びスタイラス104の更なる図を示す
図1C及び
図1Dを提供する。
図1Cは、入力面108の平面に対するスタイラス104の方位角122を具体的に示す、
図1Aの電子デバイス102の平面図を示す。同様に、
図1Dは、電子デバイスの入力面の平面に対するスタイラス104の極角118を具体的に示す、電子デバイス102の下側側面図を示す。
【0203】
相互キャパシタンスを監視することにより先端信号及び環状信号を検出するように構成され得る電子デバイス102のセンサ層を参照して、本明細書に、多くの実施形態が記載されている。しかしながら、環状電界と先端電界の両方を検出するために、任意の実装固有の方法で電子デバイス102を適切に構成することができることを理解されたい。例えば、電子デバイスは、1つ以上の容量性センサノードの自己容量の変化を監視するように構成されたセンサ層を備えることができる。他の例では、電子デバイスを、自己容量モードと相互容量モードの両方で動作するように構成することができる。他の実施形態において、他の検知手法を使用して、先端電界及び環状電界の場所及び相対位置を判定することができる。
【0204】
上述のとおり、センサ層をまた使用して、ユーザ106の1つ以上の指を検出しながら、同時に環状電界を検出することができる。これらの場合において、電子デバイス102は、タッチ入力とスタイラス入力の両方を受けることができる。
スタイラスによって付与された力の検出
【0205】
図1Bに戻り、スタイラス104によって入力面108へ付与された力F
aを推定する動作について言及する。本明細書に記載する他の実施形態のように、スタイラス104によって印加された力を、多数の方法で推定、測定、概算、ないしは別の方法で取得することができる。
【0206】
いくつかの例では、電子デバイス102により力を推定する。他の例では、スタイラス104により力を推定し、その後、スタイラス104が推定した力を(例えば、無線通信インターフェースを介して)電子デバイス102に、任意の好適なコード化フォーマット、又は非コード化フォーマットを使用してベクトル量又はスカラ量として伝達する。更に他の実施形態においては、電子デバイス102により取得された力推定値及びスタイラス104により取得された力推定値を、互いに組み合わせて、平均して、ないしは別の方法で共に使用して、スタイラス104によって付与された力の振幅を推定する。
【0207】
まず、電子デバイス102がスタイラス104によって付与された力Faを推定する実施形態について言及する。これらの実施形態では、電子デバイス102は、入力面108へ付与された力を推定及び/又は概算するように構成される1つ以上の構成要素を備えることができる。スタイラス104の先端が入力面108と接触していることを推定する際に、電子デバイス102は、スタイラス104によって付与された力Faを推定する。これらの実施形態では、電子デバイス102により推定される力を、入力面108に垂直な力ベクトルとして取得することができる。これらの場合において、(例えば、上述した手法に従い算定した)極角118及び方位角122を使用して、電子デバイス102は、力ベクトルを(例えば、余弦定理を使用して)長手方向軸線120に平行なベクトル構成要素と入力面108に平行な構成要素に分解することができる。電子デバイス102は、入力面108に平行な構成要素と、スタイラス104の角度位置に平行な構成要素のいずれか一方又は両方の振幅又は方向をユーザ入力として解釈することができる。
【0208】
次に、スタイラス104が、入力面108へ付与した力Faを推定する実施形態について言及する。これらの例において、スタイラス104は、スタイラス自身が受ける反作用力Frを推定する。反作用力Frは、スタイラス104によって入力面108へ付与された力Faと振幅が等しく符号が逆である。
【0209】
一実施形態では、スタイラス104の先端104bは、少なくとも部分的には、圧電材料などの力感知材料から形成することができる。スタイラス104の先端104bが反作用力Frを感知しているか否かを推定するために、スタイラス104内の回路は、力感知材料の電気的性質を推定する。反作用力Frの推定値を取得後、スタイラス104は、先端104bによって付与された力Faを電子デバイス102に伝達することができる。
【0210】
別の実施形態では、力感知構造体を、スタイラス104の先端104bと胴体104aとの間で一体化することができる。力感知構造体は、先端104bと胴体104aとの間に位置付けられるガスケットシール内に配置される多数の独立した力センサを備えることができる。先端104bが反作用力を感知しているか否かを推定するために、スタイラス104内の回路は、ガスケットシールの電気的性質を推定する。その後、スタイラス104は、先端104bによって付与された力Faを電子デバイス102に伝達することができる。
【0211】
別の実施形態では、力感知構造体を、スタイラス104の胴体104a内で一体化することができる。力感知構造体は、胴体104に沿う種々の場所に配置される、多数の独立した歪み又は力応答性要素を含むことができる。(例えば、ユーザ106の指のうち1本以上からの)1つ以上の力を検出する際に、スタイラス104は、このような力を、長手方向軸線120に平行な単一ベクトルに分解及び/又は組み合わせることができる。より具体的には、これらの実施形態では、スタイラス104は、先端104bが第2種てこの支点であることを指定する。このようにして、スタイラス104の胴体104aにわたる種々の場所において、力感知構造体により検出される種々の力の合計がゼロになる場合、スタイラス104は、スタイラス104の先端104bが入力面108と接触していないと推定することができる。逆に、スタイラス104の本体にわたる種々の場所において力感知構造体により検出された種々の力の合計がゼロでない場合、残っている力が、先端104bを介して入力面108に加えられる必要があることをスタイラス104は推断することができる。その後、スタイラス104は、先端104bによって付与された力Faを電子デバイス102に伝達することができる。
【0212】
他の実施形態において、スタイラス104の先端104bは、概ね長手方向軸線120に沿って移動することができる。このようにして、スタイラス104の先端104bが入力面108(又は任意の他の面)に接触し、力を加える際、先端104bは、反作用力Frの直接的な結果として、スタイラス104の胴体104a内に少なくとも部分的に引き込まれる。引き込み量は、実施形態毎に変化することができる。非限定的な一例において、先端104bは、スタイラス104の本体の中に、1.0mm未満だけ引き込まれることができる。他の実施形態において、先端104bは、スタイラス104の本体の中に、0.1mm未満だけ引き込まれることができる。更に他の実施形態においては、先端104bは、異なる(例えば、より大きいか、又はより小さい)量だけ引き込まれることができる。
【0213】
これらの例において、スタイラス104の本体内の力感知構造体は、先端104bに結合してもよい。力感知構造体は、いくつかの目的に役立つことができる。例えば、力感知構造体は、先端104bへの支持を提供することができる。別の例においては、力感知構造体は、先端104bの胴体104a内への引き込みを誘導することができる。別の例においては、力感知構造体は、力Faがスタイラス104の先端104bによって付与されなくなった際に、スタイラス104の先端104bを中立位置に復元することができる。
【0214】
一実施形態では、力感知構造体は、スタイラス104の先端104bを外側に付勢させる付勢機構を備え、先端104bの、スタイラス104の本体への引き込みに対する抵抗をもたらす。場合によっては、付勢機構は、コイルばね又は板ばねである。
【0215】
力感知構造体は、少なくとも部分的には金属から形成することができる。力感知構造体は、横方向ベッド部であって、横方向ベッド部の各端部から延在する2つの片持ち脚部を有する横方向ベッド部を含むことができる。片持ち脚部は、横方向ベッド部と同じ材料で形成することができる。いくつかの実施形態では、横方向ベッド部及び片持ち脚部は、単一の一体化部品として形成される。他の例では、片持ち脚部は、横方向ベッド部に、接着剤、溶接、又は任意の他の好適な方法で結合される。
【0216】
片持ち脚部のそれぞれを、スタイラス104の内部フレームに対して固定することができ、スタイラス104の本体内で力感知構造体の横方向ベッド部を吊り下げている。上述のとおり、スタイラス104の先端104bは、力感知構造体の一部に機械的に結合されてもよい。例えば、先端104bは、片持ち脚部及び/又は横方向ベッド部のうち少なくとも一方に結合することができる。このようにして、スタイラス104の先端104bが(例えば、先端が入力面108に接触し、力を付与することに応答して)本体に対して内側に移動する際、片持ち脚部は、予測可能な方法で偏向することができる。片持ち脚部のうち一方又は両方の偏向は、歪みセンサ又は他の検知装置を使用して測定することができ、結果的に、スタイラス104によって付与された力を推定するために使用することができる。
【0217】
入力面108からスタイラス104を取り除く際に、力感知構造体の片持ち脚部のうち一方又は両方は、スタイラス104の先端が中立位置に戻る復元力を示すことができる。
【0218】
多くの実施形態において、中立位置にある場合(例えば、先端が力を加えず、スタイラス100が準備状態にある場合)に、片持ち脚部は、横方向ベッド部に実質的に直交する。別の場合において、片持ち脚部は、横方向ベッド部から斜角で延在している。場合によっては、両方の片持ち脚部が横方向ベッド部の同一側に接続し、力感知構造体の外形は広がったU字形をとる。別の場合において、片持ち脚部は、横方向ベッド部の対向する側に接続し、力感知構造体の外形は、伸びたS字形又はZ字形をとる。
【0219】
これらの実施形態では、歪みセンサ(又は他の検知装置)は、付与された力の振幅の関数として変化する電気的に測定可能な性質を示し得る。一つの例において、歪みセンサは、力感知構造体の片持ち脚部に結合することができる。歪みセンサは、スタイラス104内の電気回路に結合することができる。電気回路は、変化に関して、歪みセンサの1つ以上の電気的性質(例えば、抵抗、容量、蓄積電荷、インダクタンスなど)を監視するように構成され得る。
【0220】
スタイラス104の先端104bが力を入力面108に加える際、先端104bは、スタイラス104の本体に対して内側に移動し、結果的に、力感知構造体の片持ち脚部の少なくとも1つが偏向し、これにより、結果的に、歪みセンサの1つ以上の電気的性質を変化させる。次に、電気回路は、これらの変化を定量化し、結果的に力が推定されることを報告する。その後、スタイラス104は、先端104bによって付与された力を電子デバイス102に伝達することができる。
【0221】
図1A~
図1Dで示す実施形態の前述の説明、並びに種々の代替例及び変形例は、概ね、説明の目的で、かつ以下に提示される詳細な実施形態の十分な理解を容易にするために提示されている。しかしながら、本明細書に提示される具体的な詳細のうち一部は、具体的に記載する実施形態又はその等価物の実践のために必須ではない場合があることが、当業者には明らかとなるであろう。それ故に、特定の実施形態の前述及び後述の記載は、図解及び説明の限定的目的のために提示される。これらの説明は、網羅的であるか、又は本明細書で引用される正確な形態に本開示を限定することを目的とするものではない。反対に、上記教示の観点から、多くの修正例及び変更例が可能であることが当業者には明らかとなるであろう。特に、電子デバイス及びスタイラスを備える、
図1A~
図1Dに示すユーザ入力システムを、多数の好適かつ実装固有な方法で実装することができることを理解することができる。
【0222】
しかしながら、概論的かつ広義には、電子デバイスは、スタイラスの特性及び/又は経時的な特性の変化を判定及び/又は推定して、入力としてのユーザのスタイラスの操作を解釈する。電子デバイスは、デバイス自身の推定又はスタイラスとの通信により、スタイラスの場所、スタイラスの角度位置、スタイラスによる電子デバイスへの印加力、スタイラスの速度、スタイラスの加速度、スタイラスの極角速度又は加速度、スタイラスの方位角速度又は加速度などを取得する。これらの動作又はこれらの動作の一部のうち任意は、電子デバイスにより、スタイラスにより実施することができ、かつ/又は少なくとも部分的には、電子デバイスとスタイラスの協働及び通信の結果として実施することができる。
ユーザ入力システムの一般的な動作
【0223】
図2A~
図2Fは、概ね、電子デバイス202と、スタイラス204と、これらの種々のサブ部分と、を備えるユーザ入力システム200の簡易システム図である。図解の簡略化のために、これらの簡易システム図の多くは、特定の実施形態に必要であるか、又は所望され得るシステム要素間のシグナル及び/又は相互接続経路を有さずに提示することができる。したがって、
図2A~
図2Fの簡易ブロック図に示す種々のシステム要素のうち1つ以上を、実装固有かつ適切な方法で、任意の他の適切なシステム要素と通信するように電気的に又は通信可能に構成することができることを理解することができる。特に、種々のシステム要素のうち1つ以上を、1つ以上の回路トレース、ジャンパ、ケーブル、有線又は無線通信インターフェース、データバスなどにより、任意の他の適切なシステム要素とデータ、電力、アナログ信号又はデジタル信号などを交換するように構成することができる。同様に、
図2A~
図2Fの簡易ブロック図に示す種々のシステム要素のうちの1つ以上は、実装固有かつ適切な方法で、任意の他の適切なシステム要素と機械的に結合(、又はこれから機械的に分離)するように構成されてもよいことを理解されたい。
【0224】
したがって、
図2A~
図2Fに示す簡易システム図の種々のシステム要素間の信号経路及び/又は相互接続経路の有無は、種々のシステム要素間での任意の特定の電気的関係又は機械的関係の有無に対する優先度又は要件として解釈されるべきでない。
【0225】
まず、
図2Aに示すユーザ入力システム200の特定の動作構成要素について言及する。本明細書に記載する他の実施形態のように、ユーザ入力システム200は、電子デバイス202及びスタイラス204を備える。電子デバイス202は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、携帯電話、産業用又は商業用コンピューティング端末、医療用デバイス、周辺又は一体化入力装置、携帯又はバッテリ駆動型ポータブル電子デバイス、ナビゲーションデバイス、ウェアラブルデバイスなどを含むがこれらに限定されない任意の好適な電子デバイスとして実装することができる。
図2Aのユーザ入力システム200は、
図1A~
図1Dに関して上で論じたユーザ入力システム100に対応することができる。
【0226】
スタイラス204は、ユーザの一方の手で操作可能な、実質的に任意の形状をとるように形成することができる。例えば、多くの実施形態において、スタイラス204は、スタイラス、ペン、スマートブラシ、棒状の道具、チゼルなどの形状をとる。
【0227】
本明細書で記載する他の実施形態に関して記載したとおり、ユーザは、電子デバイス202の入力面に対してスタイラス204の向き及び位置を操作して、電子デバイス202に情報を伝達する。多くの実施形態では、電子デバイス202の入力面は、マルチタッチディスプレイスクリーンであるが、これは必須ではなく、他の実施形態では、入力面は、トラックパッド又は作画タブレットなどの、ディスプレイのない入力面であってもよい。
ユーザ入力システムのスタイラスの一般的な動作
【0228】
次に、
図2Bに示すものなどの、例示的なスタイラス204の特定の動作構成要素について言及する。スタイラス204は、スタイラス204、又はより一般的には、ユーザ入力システム200の1つ以上の動作又は機能を実施、調整、又は監視するように協働するいくつかのサブシステムを備えることができる。特に、
図2Bに示すように、スタイラス204は、調整エンジン206、処理ユニット208、電源サブシステム210、無線インターフェース212、及び電源コネクタ214を備える。
【0229】
概論的かつ広義には、スタイラス204の調整エンジン206は、上述のような先端電界及び環状電界を発生させることが課せられてもよい。これらの電界は、電子デバイス202によるスタイラス204の直交座標及び球面座標の両方の発見を容易にする。いくつかの実施形態では、調整エンジン206はまた、
図1A~
図1Dに関して記載される反作用力F
rなどのスタイラス204によって付与された力を測定することが課せられてもよい。
【0230】
多くの実施形態において、調整エンジン206の1つ以上の構成要素は、回路並びに/若しくはプロセッサ及びメモリなどの論理構成要素を含むか、又はこれらに通信可能に結合することができる。回路は、スタイラス204の他のサブシステムと通信し、かつ/又はデータをやりとりすること、先端信号及び環状信号を発生させるために使用されるパラメータを受信すること、先端信号及び環状信号を、それぞれ先端電界発生部及び環状電界発生部に伝達すること、先端信号及び環状信号をスタイラス204の別のサブシステムから受信すること、歪みセンサ又は加速度計などの1つ以上のアナログセンサ又はデジタルセンサの出力を測定及び/又は取得することなどが挙げられるが、これらに限定されない、調整エンジン206の動作のうち一部又はすべてを制御又は調整することができる。調整エンジン206は、
図2Dを参照して以下に詳述する。
【0231】
調整エンジン206のプロセッサは、データ又は命令の処理、受信、又は伝達が可能な任意の電子デバイスとして実装することができる。例えば、プロセッサは、マイクロプロセッサ、中央処理装置、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、デジタル信号プロセッサ、アナログ回路、デジタル回路、又はこのようなデバイスの組み合わせであることができる。プロセッサは、シングルスレッドプロセッサ又はマルチスレッドプロセッサであってもよい。プロセッサは、シングルコアプロセッサ又はマルチコアプロセッサであってもよい。
【0232】
したがって、本明細書に記載のとおり、語句「処理ユニット」又はより一般的には「プロセッサ」とは、メモリ内に記憶可能であり、メモリからアクセス可能なプログラムに含まれるコード及び/又は命令として表されるデータ操作を含むデータの具体的な変換を実行するように物理的に構成される、ハードウェアを実装したデータ処理デバイス又は回路を意味する。この用語は、単一のプロセッサ又は処理ユニット、複数のプロセッサ、複数の処理ユニット、アナログ若しくはデジタル回路、又は他の好適に構成される演算要素若しくは要素の組み合わせを包含することを意味する。
【0233】
調整エンジン206を、処理ユニット208に結合することができ、先端信号及び環状信号を調整エンジン206に提供するように構成することができる。処理ユニット208はまた、例えば、無線インターフェース212を介して、電子デバイス202との通信を容易にするように構成されてもよい。処理ユニット208は、
図2Eを参照して以下に詳述される。
【0234】
処理ユニット208は、多くの実施形態において、回路並びに/又はプロセッサ及びメモリなどの論理構成要素を備えるか、又はこれらと通信可能に結合することができる。処理ユニット208の回路は、スタイラス204の他のサブシステムと通信し、かつ/又はこれらとデータをやりとりすること、電子デバイス202と通信し、かつ/又はこれとデータをやりとりすること、先端信号及び/又は環状信号を発生させること、歪みセンサ又は加速度計などの1つ以上のアナログセンサ又はデジタルセンサの出力を測定及び/又は取得すること、通常の電力状態からスタンバイ電力状態又は低電力状態に、スタイラス204の電力状態を変更すること、先端信号及び環状信号のいずれか一方又は両方に、情報及び/又はデータを変調することなどを含むがこれらに限定されない、処理ユニット208の機能又は動作のうち1つ以上を実行、調整、及び/又は監視することができる。
【0235】
内蔵バッテリによりスタイラス204を駆動することができる。電源サブシステム210は、1つ以上の充電式バッテリ及び電力制御部を備えることができる。電源サブシステム210の電力制御部は、電源コネクタ214が電源と結合した場合、バッテリの急速な充電を容易にするように構成されてもよい。場合によっては、電源コネクタ214が接続するように構成され得る電源は、電子デバイス202のデータ及び/又は電力ポートである。別の場合において、電源コネクタ214は、電子デバイスの表面又はチャネルに引きつけるように構成される1つ以上の磁石を備える。
【0236】
電源サブシステム210の電力制御部は、多くの実施形態において、回路並びに/又はプロセッサ及びメモリなどの論理構成要素を備えるか、又はこれらと通信可能に接続することができる。電力制御部の回路は、電子デバイス202と通信し、かつ/又はこれとデータをやりとりすること、バッテリの充電速度を制御すること、特定の時間におけるバッテリの容量を推定及び報告すること、バッテリの容量が最小閾値を下回ったことを報告すること、バッテリが充電されていることを報告することなどを含むがこれらに限定されない、電源サブシステム210の機能又は動作のうち1つ以上を実施、調整、及び/又は監視することができる。電源サブシステム210を、
図2Fを参照して以下に詳述する。
【0237】
スタイラス204に関して上で提示した特定の詳細のうち一部は、特定の説明された実施形態又はその等価物を実践するために、必須でなくてもよいことが当業者には明らかであろう。同様に、他のスタイラスは、はるかに多数のサブシステム、モジュール、構成要素などを含んでもよい。サブモジュールの中には、適切な場合にソフトウェア又はファームウェアとして実装されてよいものもある。したがって、上で提示した説明は、網羅的であるか、又は本明細書で引用される正確な形態に本開示を限定することを意図するものではないことを理解されたい。反対に、上記教示の観点から、多くの修正例及び変更例が可能であることが当業者には明らかとなるであろう。
ユーザ入力システムの電子デバイスの一般的な動作
【0238】
次に、例示的な電子デバイス202の種々のサブシステムが示される
図2Cについて言及する。
図2Bに示すスタイラス204のように、電子デバイス202は、電子デバイス202、又はより一般的には、ユーザ入力システム200の1つ以上の動作又は機能を実施、調整、又は監視するように協働するいくつかのサブシステムを備えることができる。電子デバイス202は、入力面218、調整エンジン220、処理ユニット222、電源サブシステム224、無線インターフェース226、電源コネクタ228、及びディスプレイ230を備える。
【0239】
調整エンジン220は、多くの実施形態において、回路並びに/又はプロセッサ及びメモリなどの論理構成要素を備えるか、又はこれらと通信可能に結合することができる。調整エンジン220の回路は、電子デバイス202の他のサブシステムと通信し、かつ/又はこれらとデータをやりとりすること、スタイラス204と通信し、かつ/又はこれらとデータをやりとりすること、タッチセンサなどの1つ以上のアナログセンサ又はデジタルセンサの出力を測定及び/又は取得すること、容量検知ノードのアレイなどのセンサノードのアレイの1つ以上のセンサノードの出力を測定及び/又は取得すること、スタイラス204からの先端信号及び環状信号を受信し、場所を特定すること、先端信号交差エリア及び環状信号交差エリアなどの場所に基づいて、スタイラス204の場所を特定することなどを含むがこれらに限定されない、調整エンジン220の機能又は動作のうち1つ以上を実施、調整、及び/又は監視することができる。
【0240】
電子デバイス202の調整エンジン220は、入力面218の下に位置付けられるか、又は入力面218と一体化しているセンサ層を備えるか、ないしは別の方法でこれらに通信可能に結合している。調整エンジン220は、センサ層を利用して、入力面218上でのスタイラス204の場所を特定し、本明細書に記載する手法を用いて、入力面218の平面に対するスタイラス204の角度位置を推定する。
【0241】
一実施形態では、電子デバイス202の調整エンジン220のセンサ層は、列及び行として配列される容量検知ノードのグリッドである。より具体的には、列トレースのアレイは、行トレースのアレイに対して垂直に配置される。基板などの誘電材料は、1つの列トレースが1つの行トレースの上又は下で交差するそれぞれの「オーバーラップ」点で、少なくとも1つの容量検知ノードが形成されるように、行トレースから列トレースを分離する。実施形態によっては、列トレースと行トレースを基板の反対側に配置するものもあるが、他の実施形態では、列トレースと行トレースを基板の同じ側に配置する。実施形態によっては、行トレースのみを備え得るものがあるが、他の実施形態では、列トレースのみを備えてもよい。センサ層は、電子デバイスの他の層と分離することができ、あるいはセンサ層は、ディスプレイスタック層、力センサ層、デジタイザー層、ポラライザ層、バッテリ層、構造又は装飾筐体層などこれらに限定されない別の層の上に直接配置することができる。
【0242】
センサ層は、多数のモードで動作することができる。相互容量モードで動作する場合、列トレース及び行トレースは、各オーバーラップ点において単一の容量検知ノードを形成する(例えば、「垂直」相互キャパシタンス)。自己容量モードで動作する場合、列トレース及び行トレースは、各オーバーラップ点で2つの(垂直に位置合わせされた)容量検知ノードを形成する。別の実施形態では、相互容量モードで動作する場合、隣接列トレース及び/又は隣接行トレースはそれぞれ、単一の容量検知ノードを形成することができる(例えば「水平」相互キャパシタンス)。
【0243】
多くの実施形態において、センサ層は、同時に複数のモードで動作することができる。他の実施形態において、センサ層は、速やかに、あるモードから別のモードに移動することができる。更に他の実施形態においては、センサ層は、第1のモードを使用して、オブジェクト(例えば、スタイラス、ユーザの指など)の存在又は接近度を検出し、次に、第2のモードを使用して、そのオブジェクトの推定値を取得することができる。例えば、センサ層は、オブジェクトが入力面付近で検出されるまで自己容量モードで動作することができ、その後、センサ層が(垂直又は水平のいずれか一方あるいは両方の)相互容量モードに移行する。別の場合において、別の実装固有かつ好適な方法で容量検知ノードを配置することができる。
【0244】
センサ層の構成とは無関係に、センサ層に備えられる容量検知ノードは、先端電界、環状電界、及び/又はユーザの指の接触の有無を検出するように構成されてもよい。センサ層は、任意選択的に透明であることができるが、このことはすべての実施形態に対して必須でなくてもよい。
【0245】
上述のとおり、センサ層は、容量検知ノードのそれぞれにおいて示される容量(例えば、相互容量又は自己容量)の変化を監視することにより、先端電界の存在、環状電界の存在、及び/又はユーザの指の接触を検出することができる。多くの場合において、調整エンジン220は、容量性結合により、スタイラス204からセンサ層を通って受信される先端信号及び環状信号を検出するように構成されてもよい。
【0246】
場合によっては、調整エンジン220により変調され得る先端信号、環状信号、及び/又はデータを取得するために、調整エンジン220は、センサ層から受信される1つ以上のそのままの信号を復調、デコード、ないしは別の方法でフィルタするように構成されてもよい。調整エンジン220(又はセンサ層又は調整エンジン220に通信可能に結合した別の構成要素)により実施されるような先端信号及び環状信号を取得する動作は、本明細書に記載する任意の数の実施形態、又はこれらの妥当な等価物に好適な、多数の実装固有の方法で達成することができる。
【0247】
他の実施形態において、センサ層は、自己容量モード及び相互容量モードの両方で動作するように構成することができる。これらの場合において、調整エンジン220は、先端電界及び/又は環状電界を検出する(そして、これに対応して、先端信号及び環状信号を取得する)ために、相互容量の変化を監視して、ユーザの接触(又は2回以上の接触)を検出しながら、各容量検知ノードの1つ以上の部分の自己容量の変化を監視することができる。更に他の例においては、センサ層は、もっぱら、自己容量モードで動作するように構成することができる。
【0248】
調整エンジン220は、先端信号及び環状信号が調整エンジン220により取得され、先端電界交差エリア及び環状電界交差エリアが判定されると、本明細書で記載する手法を用いて、入力面218上でのスタイラス204の場所を特定し、かつ/又はスタイラス204の角度位置は推定する動作を実施する(又はこの実施を補助する)。調整エンジン220は、スタイラス204の場所及びスタイラス204の角度位置が推定されると、更なる処理及び解釈のために、このような情報を処理ユニット222に転送することができる。
【0249】
多くの実施形態において、調整エンジン220を使用して、特定の統計的限界内でのスタイラス204の場所の推定値を取得してもよい。例えば、調整エンジン220は、100マイクロメートルの誤差内で、入力面218上でのスタイラス204の場所を推定するように構成されてもよい。他の実施形態において、調整エンジン220は、50マイクロメートル以内で、入力面218上でのスタイラス204の場所を推定するように構成されてもよい。更に他の実施形態においては、調整エンジン220は、10マイクロメートル以下以内でスタイラス204の場所を推定するように構成されてもよい。
【0250】
調整エンジン220によるスタイラス204の場所を特定する動作の正確性及び/又は精度は、実施形態毎に異なってよいことを理解されたい。場合によっては、動作の正確性及び/又は精度は、実質的に固定されてもよいが、別の場合においては、操作の正確性及び/又は精度は、変数の中でもとりわけ、ユーザ設定、ユーザの嗜好、スタイラスの速度、スタイラスの加速、電子デバイス上で動作するプログラムの設定、電子デバイスの設定、電子デバイスの動作モード、電子デバイスの電力状態、スタイラスの電力状態などに応じて変化してよい。
【0251】
調整エンジン220はまた、特定の統計的限界内でのスタイラス204の角度位置の推定値を取得するように構成されてもよい。例えば、調整エンジン220は、0.2ラジアン(例えば、およそ11.5度)の誤差内で、入力面218の平面に対してスタイラス204の角度位置を推定するように構成されてもよい。他の実施形態において、調整エンジン220は、0.1ラジアン(例えば、およそ5度)以内で入力面218上のスタイラス204の角度位置を推定するように構成されてもよい。更に他の実施形態においては、調整エンジン220は、0.05ラジアン(例えば、およそ3度)以内でスタイラス204の角度位置を推定するように構成されてもよい。
【0252】
調整エンジン220による、スタイラス204の角度位置を推定する動作の正確性及び/又は精度は、実施形態毎に異なってよい。場合によっては、動作の正確性及び/又は精度は、実質的に固定されてもよいが、別の場合においては、動作の正確性及び/又は精度は、変数の中でもとりわけ、ユーザ設定、ユーザの嗜好、スタイラスの速度、スタイラスの加速、電子デバイス上で動作するプログラムの設定、電子デバイスの設定、電子デバイスの動作モード、電子デバイスの電力状態、スタイラスの電力状態などに応じて変化してよい。
【0253】
上述のとおり、先端信号及び/又は環状信号は、電子デバイス202に対してスタイラス204を識別するように構成することができる特定の情報及び/又はデータを含むことができる。このような情報は、本明細書ではおいて、「スタイラス識別」情報と称される。この情報及び/又はデータは、センサ層により受信され、調整エンジン220により解釈、デコード、及び/又は復調されてもよい。
【0254】
例えば、調整エンジン220は、(検出された場合、かつ/又は回復可能な場合、)スタイラス識別情報を処理ユニット222に転送することができる。スタイラス識別情報が先端信号及び/又は環状信号から回復可能でない場合、調整エンジン220は、任意選択的に、スタイラス識別情報が利用不可能であることを処理ユニット222に示すことができる。電子デバイス202は、特定のスタイラスからの入力を承諾又は拒否すること、複数のスタイラスからの入力を承諾すること、電子デバイスの特定の機能性へのアクセスを許可又は拒否すること、特定のスタイラスプロファイルを適用すること、電子デバイスの1つ以上の設定を復元すること、スタイラスが使用中であることを第三者へ通知することなどを含むがこれらに限定されない、任意の好適な方法で、スタイラス識別情報(又はこの情報が存在しないこと)を利用することができる。
【0255】
処理ユニット222は、スタイラス識別情報を使用して、複数のスタイラスからの入力を同時に受信することができる。特に、調整エンジン220は、処理ユニット222に、調整エンジン220により検出されるいくつかのスタイラスのそれぞれの場所及び/又は角度位置を伝達するように構成することができる。別の場合において、調整エンジン220はまた、処理ユニット222に、調整エンジン220により検出されるいくつかのスタイラスの、相対的場所及び/又は相対角度位置に関係する情報を伝達することができる。例えば、調整エンジン220は、処理ユニット222に、第1の検出されたスタイラスが、第2の検出されたスタイラスと3センチメートル離れて位置付けられていることを通知することができる。
【0256】
別の場合において、本明細書で記載する他の実施形態に関して記載するように、先端信号及び/又は環状信号はまた、電子デバイス202に対して、特定のユーザを識別するように機能する特定の情報及び/又はデータを含むことができる。このような情報は、本明細書では、概ね、「ユーザ識別情報」と称される。
【0257】
調整エンジン220は、(検出された場合かつ/又は回復可能な場合、)ユーザ識別情報を処理ユニット222に転送することができる。ユーザ識別情報が先端信号及び/又は環状信号から回復可能でない場合、調整エンジン220は、任意選択的に、ユーザ識別情報が利用不可能であることを処理ユニット222に示すことができる。処理ユニット222は、特定のユーザからの入力を承諾又は拒否すること、電子デバイスの特定の機能性へのアクセスを許可又は拒否すること、特定のユーザへ挨拶すること、特定のユーザプロファイルを適用すること、電子デバイスの設定を復元すること、電子デバイスをロックすることにより、電子デバイスのあらゆる機構へのアクセスを防止すること、使用者が識別されたか又は識別されていないことを第三者へ通知することなどを含むがこれらに限定されない任意の好適な方法で、ユーザ識別情報(又はその情報が存在しないこと)を利用することができる。処理ユニット222は、ユーザ識別情報を使用して、2人以上のユーザからの入力を同時に受信することができる。
【0258】
また更に別の場合では、先端信号及び/又は環状信号は、電子デバイス202に対して、ユーザ又はスタイラス104の設定又はプリファレンスを識別するように構成され得る特定の情報及び/又はデータを含むことができる。このような情報は、本明細書では、概ね、「スタイラス設定」情報と称される。
【0259】
調整エンジン220は、(検出された場合、かつ/又は回復可能な場合、)スタイラス設定情報を処理ユニット222に転送することができる。スタイラス設定情報が先端信号及び/又は環状信号から回復可能でない場合、調整エンジン220は、任意選択的に、スタイラス設定情報が利用不可能であることを処理ユニット222に示すことができる。電子デバイス202は、電子デバイスに対して設定を適用すること、電子デバイス上で動作しているプログラムへ設定を適用すること、電子デバイスのグラフィックプログラムによりレンダーリングされた線の太さ、色、パターンなどを変更すること、電子デバイス上で動作しているビデオゲームの設定を変更することなどを含むがこれらに限定されない任意の好適な方法で、スタイラス設定情報(又はこの情報が存在しないこと)を利用することができる。
【0260】
したがって、概論的かつ広義には、調整エンジン220は、多くの異なる実装固有な方法で、個別に又は協働して、電子デバイス202によりすべて使用可能である多くの種類の入力の区別を容易にする。例えば、電子デバイス202は、入力として以下のうち任意を使用することができる。1つ以上のスタイラスの場所、1つ以上のスタイラスの極角、1つ以上のスタイラスの方位角、1つ以上のスタイラスの角速度若しくは平面速度又は加速度、1つ以上のスタイラスのジェスチャ経路、1つ以上のスタイラスの相対的場所及び/又は角度位置、ユーザにより提供されたタッチ入力、ユーザにより提供されたマルチタッチ入力、タッチ入力のジェスチャ経路、同時のタッチ入力及びスタイラス入力。
【0261】
概論的かつ広義には、処理ユニット222は、電子デバイス202の機能を実施、調整、及び/又は管理するように構成されてもよい。このような機能としては、電子デバイス202の他のサブシステムと通信し、かつ/又はこれらとデータをやりとりすること、スタイラス204と通信し、かつ/又はこれらとデータをやりとりすること、無線インターフェースと通信し、かつ/又は無線インターフェースを介してデータをやりとりすること、有線インターフェースと通信し、かつ/又は有線インターフェースを介してデータをやりとりすること、無線(例えば、誘導性、共鳴など)又は有線インターフェースを介する電力交換を促進すること、1つ以上のスタイラスの場所及び角度位置を受信することなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0262】
多くの実施形態において、処理ユニット222は、回路並びに/又はプロセッサ及びメモリなどの論理構成要素を備えるか、又はこれらと通信可能に結合することができる。処理ユニット222の回路は、電子デバイス202のサブシステムの実質的にすべてと直接的に又は間接的にのいずれか一方で通信することにより、電子デバイスの動作のうちいくつか又はすべてを制御又は調整することができる。例えば、システムバス若しくは信号線、又は他の通信機構は、電子デバイス202の処理ユニット222と他のサブシステムとの間の通信を容易にすることができる。
【0263】
データ又は命令の処理、受信、又は送信が可能な任意の電子デバイスとして処理ユニット222を実装することができる。例えば、プロセッサは、マイクロプロセッサ、中央処理装置、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、デジタル信号プロセッサ、アナログ回路、デジタル回路、又はこのようなデバイスの組み合わせであることができる。プロセッサは、シングルスレッドプロセッサ又はマルチスレッドプロセッサであってもよい。プロセッサは、シングルコアプロセッサ又はマルチコアプロセッサであってもよい。
【0264】
使用中に、処理ユニット222は、内部に命令が記憶されているメモリにアクセスするように構成されてもよい。命令は、プロセッサに、電子デバイス202の動作又は機能のうちの1つ以上を実施、調整、又は監視させるように構成されてもよい。
【0265】
メモリに記憶される命令は、別のプロセッサ、アナログ若しくはデジタル回路、揮発性若しくは不揮発性メモリモジュール、ディスプレイ、スピーカ、マイクロフォン、回転入力装置、ボタン若しくは他の物理的入力装置、生体認証センサ及び/若しくはシステム、力入出力若しくはタッチ入出力構成要素、通信モジュール(無線インターフェース及び/若しくは電源コネクタのいずれか一方など)、並びに/又は触覚若しくは触知フィードバックデバイスなどであるが、これらに限定されない電子デバイス202の他の構成要素の動作を制御又は調整するように構成されてもよい。図解の簡略化及び図面間での要素の重複を減らすために、これら(及び他の)構成要素の多くは、
図2Cから省略されている。
【0266】
メモリはまた、スタイラス又はプロセッサにより使用できる電子データを記憶することができる。例えば、メモリは、メディアファイルなどの電気データ又はコンテンツ、ドキュメント及びアプリケーション、デバイスの設定及びプリファレンス、多様なモジュールのためのタイミング信号及び制御信号又はデータ、データ構造又はデータベース、先端信号及び/又は環状信号の検出に関係するファイル又は設定などを記憶することができる。メモリは、任意の種類のメモリとして構成することができる。例えば、メモリは、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ、リムーバブルメモリ、若しくは他の種類のストレージ要素、又はこのようなデバイスの組み合わせとして実装することができる。
【0267】
電子デバイス202はまた、電源サブシステム224を備える。電源サブシステム224は、バッテリ又は他の電源を含むことができる。電源サブシステム224は、電力を電子デバイス202に供給するように構成されてもよい。電源サブシステム224はまた、電源コネクタ228に結合することができる。電源コネクタ228は、電力を外部電源から受け取るように構成され、かつ/又は電力を外部ロードに提供するように構成することができる任意の好適なコネクタ又はポートであることができる。例えば、いくつかの実施形態では、電源コネクタ228を使用して、電源サブシステム224内でバッテリを充電することができる。別の実施形態では、電源コネクタ228を使用して、電源サブシステム224内に蓄えられている(又は、電源サブシステム224が利用可能な)電力をスタイラス204に移動させることができる。
【0268】
電子デバイス202はまた、電子デバイス202とスタイラス204との電子通信を容易にする無線インターフェース226を備える。一実施形態では、電子デバイス202は、低消費電力のBluetooth通信インターフェース、又は近距離通信インターフェースを介してスタイラス204と通信するように構成されてもよい。他の例では、通信インターフェースは、電子デバイス202と、外部通信ネットワーク、デバイス又はプラットフォームとの間の電子通信を促進する。
【0269】
電子デバイス202とスタイラス204との間、ないしは電子デバイス202と別のものとの間に関わらず、無線インターフェース226は、1つ以上の無線インターフェース、Bluetoothインターフェース、近距離通信インターフェース、磁気インターフェース、ユニバーサルシリアルバスインターフェース、誘導性インターフェース、共鳴インターフェース、容量性結合インターフェース、Wi-Fiインターフェース、TCP/IPインターフェース、ネットワーク通信インターフェース、光学インターフェース、音響インターフェース、又は任意の従来の通信インターフェースとして実装することができる。
【0270】
多くの実施形態において、無線インターフェース226は、スタイラス204と直接通信して、スタイラス204から情報を取得するように構成されてもよい。典型的な実施形態において、無線インターフェース226は、スタイラス204により入力面218に加えられた力に関係するデータを取得することができる。
【0271】
電子デバイス202はまた、ディスプレイ230を備える。ディスプレイ230は、入力面218の背後に位置付けすることができ、又は入力面218と一体化することができる。ディスプレイ230は、処理ユニット222に通信可能に結合することができる。処理ユニット222は、ディスプレイ230を使用して、情報をユーザに提示することができる。多くの場合において、処理ユニット222は、ディスプレイ230を使用して、ユーザが対話可能なインターフェースを提示することができる。多くの場合において、ユーザは。スタイラス204を操作して、インターフェースと対話する。
【0272】
電子デバイス202に関して上で提示した具体的な詳細の一部は、具体的に記載する実施形態又はその等価物の実践のために、必須でなくてもよいもことが、当業者には明らかとなるであろう。同様に、他の電子デバイスは、はるかに多数のサブシステム、モジュール、構成要素などを備えてもよい。サブモジュールの中には、適切な場合にソフトウェア又はファームウェアとして実装されてよいものもある。したがって、上で提示した説明は、網羅的であるか、又は本明細書で引用される正確な形態に本開示を限定することを意図するものではないことを理解されたい。反対に、上記教示の観点から、多くの修正例及び変更例が可能であることが当業者には明らかとなるであろう。
スタイラスと電子デバイスとの間の調整
【0273】
上述のとおり、
図2Aに示すユーザ入力システム200は、スタイラス204の場所を特定し、スタイラス204の角度位置を推定するように構成することができる。これらの操作は、スタイラス204の調整エンジン206と電子デバイス202の調整エンジン220との間の協働により促進される。これらの2つの調整エンジンの一般化された相互動作は上述されているが、スタイラス204の調整エンジン206のより詳細な理解を促進するために、
図2Dを提供する。
【0274】
図2Dは、
図2A~
図2Cを参照して記載されるスタイラス204などのスタイラスにより組み込まれ得る調整エンジン206の例示的なシステム図を示す。本明細書で記載する他の実施形態に関して記載したとおり、調整エンジン206を使用して、電子デバイス202がスタイラス204の場所を特定し、スタイラス204の角度位置を推定可能となる電界(例えば、先端電界及び/又は環状電界)を発生させることができる。
【0275】
更に、調整エンジン206は、スタイラス204によって入力面218へ付与された力を推定するように構成されてもよい。より具体的には、調整エンジン206は、先端電界(図示せず)を発生させ、環状電界(図示せず)を発生及び/又は放出し、スタイラス204の先端によって入力面218へ付与された力を検出するように構成されてもよい。これは、一例として提供されるが、いくつかの実施形態では、電界の発生及び力の検知は、スタイラス204の別の態様により実行されてもよい。
【0276】
多くの実施形態において、調整エンジン206は、処理ユニット208から先端信号を受信し(例えば、
図2Bを参照)、先端信号を先端電界発生部232に伝達する。同様に、調整エンジン206は、処理ユニット208から環状信号を受信し、環状信号を環状電界発生部238に伝達する。更に他の実施形態においては、追加の電界を、追加の電界信号の受信に応答して、追加の電界発生部により発生させることができる。
【0277】
ユーザ、スタイラス、及び/又は電子デバイスに関係する他の情報又はデータにより、先端信号及び/又は環状信号を変調することができる。例えば、先端信号及び/又は環状信号は、スタイラス識別情報、ユーザ識別情報、スタイラス設定情報、力情報、又は特定の実施形態に好適な任意の他の情報を含むことができる。
【0278】
調整エンジン206は、先端電界発生部232を備える。先端電界発生部232は、任意の数の好適な導電材料から形成することができる。先端電界発生部232は、剛性信号導管234に接続されてもよい。剛性信号導管234は、剛性信号導管234に接続した構成要素間での機械的結合をもたらすように構成される剛性部分を備えることができる。更に、剛性信号導管234は、1つ以上のシールド信号線が通過するコア部材を備えることができる。例示的な先端電界発生部及び剛性信号導管の例は、
図3A~
図6Gを参照して以下で詳述する。
【0279】
剛性信号導管234は、調整エンジン206内のプロセッサ、回路、又は電気トレースに、先端電界発生部232を電気的に結合する。このようにして、調整エンジン206は、剛性信号導管234を介して先端信号を先端電界発生部232に伝達する。更に、以下に詳述するように、剛性信号導管234は先端電界発生部232を、力感知構造体236に電気的に結合する。
【0280】
剛性信号導管234の形状は、電磁シールドを先端電界発生部232に提供するように選択することができる。より具体的には、剛性信号導管234の長さは、先端電界発生部232を、特定の最小距離だけ、スタイラス204を有する他の電子構成要素から分離するように選択することができる。結果として、先端電界発生部232により発生する先端信号が、処理ユニット208、電源サブシステム210、無線インターフェース212、及び/若しくは電源コネクタ214、又はスタイラス204の任意の他のシステム若しくはサブシステムなどの、スタイラス204の種々のサブシステムの動作により受ける影響は限りなく少なくなる。
【0281】
スタイラス204の筐体内に先端電界発生部232及び剛性信号導管234を完全に閉じ込めることができる。これらの実施形態では、先端電界発生部232は、筐体材料内にインサート成形することができるため、先端電界発生部232は、スタイラス204の外部面にできるだけ近く位置付けられる。先端電界発生部232とスタイラス204の筐体との相対位置は、
図6A~
図6Gを参照して以下で説明する。
【0282】
多くの実施形態において、先端電界発生部232は、入力面218と係合するように構成することができるスタイラス204の先端の端部に向かって配向された丸みを帯びた形状を有して形成される。この形状の結果、先端電界発生部232は、少なくとも、先端電界発生部232の丸みを帯びた形状が配向される方向に、本来、略球状の電界(例えば、先端電界)を発生させることができる。言い換えると、先端電界発生部232は、実質的に、点状の電界源として機能することができる。電界は、半径がほぼ均一であってもよい。先端電界発生部232により発生する先端電界は、軸対称であってもよい。
【0283】
場合によっては、先端電界発生部232の中心は、球状先端電界の起点として取り扱われてもよい。入力面218は、球状先端電界と交差する平面として数学的にモデル化されてもよい。したがって、先端電界交差エリアは、平面と、配向に関わらず円形である球形との交差形状をとる。しかしながら、先端電界、入力面、及び先端電界交差エリアを数学的にそれぞれ球形、平面、及び円形としてモデル化することが可能であるが、特定の実装で発生する実際の幾何形状は、およそ球形、平面、及び/又は円形のみであってもよいことを理解されたい。
【0284】
先端電界が略球形である場合、先端電界交差エリアは、入力面218の平面内の円形エリア(又は円形セクション)であり、このエリアの中心は、先端電界発生部232の場所にほぼ等しいか、又は正確に等しくてもよい。円形エリアの半径は、先端電界発生部232に適用された先端信号の振幅により影響を受け得る。
【0285】
次に、調整エンジン206の環状電界発生部238について言及する。先端電界発生部232のように、環状電界発生部238は、剛性信号導管234に、少なくとも部分的に接続することができる。多くの例において、環状電界発生部238は、剛性信号導管234の中又は周囲に形成される。例えば、環状電界発生部238は、剛性信号導管234の外部面上に形成することができる。
【0286】
環状電界発生部238は、先端電界発生部232と同軸上に位置合わせされるため、先端電界及び環状電界もまた同軸上に位置合わせされる。多くの場合において、環状電界発生部238は、先端電界発生部232から、一定距離だけ離れている。先端電界発生部232と環状電界発生部238との相対位置を、
図5A~
図5Nを参照して以下で説明する。
【0287】
先端電界発生部232のように、剛性信号導管234は、環状電界発生部238を調整エンジン206内のプロセッサ、回路、又は電気トレースに、電気的に結合する。このようにして、調整エンジン206は、剛性信号導管234を介して環状信号を環状電界発生部238に伝達する。剛性信号導管234はまた、環状電界発生部238を力感知構造体236に機械的に結合する。
【0288】
環状電界発生部238は、いくつかの実施形態では、剛性信号導管234の外部面の周りに配置される導電性リングとして実装されてよい。環状電界発生部238は、先端電界発生部232から離間していてもよく、先端電界発生部232よりも概ね大きい表面積を有し得るが、これは、すべての実施形態において必須ではない。環状電界発生部238は、剛性信号導管234が、環状電界の軸対称性に影響を与えないように先端信号を先端電界発生部232に伝達することを可能にするために、リングのような形状であってもよい。これらの実施形態では、環状電界発生部238により発生する環状電界は、軸対称であってもよい。
【0289】
これらの実施形態では、剛性信号導管234は、電気的接続を画定する少なくとも1つのビアを備える。場合によっては、ビアは、環状電界発生部を形成する前に形成されてもよい。剛性信号導管234の電気的接続により、剛性信号導管234内に配置されたトレースが環状電界発生部238に電気的に結合される。多くの場合において、トレースはシールドされている。シールドの結果、剛性信号導管234はシールドされた環状信号を環状電界発生部238に伝達することができる。
【0290】
環状電界発生部238は、任意の数の好適な導電材料から形成することができる。いくつかの例では、環状電界発生部238は金属から形成される。別の場合において、環状電界発生部238は、金属酸化物又は金属粉末などの、付着導電材料から形成される。例示的な環状電界発生部を、
図5A~
図5Nを参照して以下で詳述する。
【0291】
環状電界発生部238は、スタイラス204の先端から分離しているため、(先端から回転した)スタイラス204の角度位置は、入力面218と環状電界発生部238との間の距離に影響を及ぼす。例えば、スタイラス204が入力面218に非常に鋭角で接触する(例えば、スタイラスが入力面上に実質的に平らに横たわる)場合、環状電界発生部238は、入力面からの距離が小さくなり得る。逆に、スタイラス204が入力面218に対して垂直(例えば角度が90度)である場合、環状電界発生部238は入力面218からの距離が大きい位置に位置付けられる。このようにして、スタイラス204の極角が変化すると、環状電界発生部238は入力面218の上で円弧を横切る。円弧の頂部は、スタイラス204が入力面218に対して垂直となるときに生じる。
【0292】
理解され得るように、前述の一般化した説明は、これが、電子デバイス202の調整エンジン220により検出可能な先端電界及び環状電界の発生に関係しているため、スタイラス204の調整エンジン206について言及している。上述のとおり、電子デバイス202の調整エンジン220は、先端電界及び環状電界、したがって、先端電界交差エリア及び環状電界交差エリアを検出するように構成することができる。電子デバイス202はその後、スタイラスの場所、及びスタイラスの角度位置を推定するために、先端電界交差エリアと環状電界交差エリアとの相対位置を比較する。このようにして、調整エンジン206及び調整エンジン220は協働して、高い正確性で、電子デバイス202の入力面218の平面に対する、スタイラス204の場所及び角度位置を測定することができる。
【0293】
多くの例において、調整エンジン206、220が協働することにより、ユーザ入力システム200が、スタイラスへの電力供給(例えば、誘導電力、共鳴誘導性結合など)、並びにスタイラスからの入力の受信及び解釈という二重の目的を果たす別個の電磁式デジタイザーを備える従来のスタイラス入力システムよりも電力効率のよい方法で動作することができる。更に、調整エンジン220に必須の処理電力は、電磁式デジタイザーを備える従来のスタイラス入力システムが必要とする処理電力未満であってもよい。それ故に、本明細書で記載するユーザ入力システムの実施形態は、従来のスタイラス入力システムよりも低いレイテンシーで動作することができる。
【0294】
調整エンジン206はまた、スタイラス204の先端によって入力面218へ付与された力の大きさを推定することができる。スタイラス204によって入力面218へ付与された力の大きさを検出する1つの例示的方法を以下に記載する。しかしながら、これは単に一例であり、他の実施形態では、別の実装固有かつ好適な方法で、スタイラス204によって付与された力を検出することができることを理解されたい。
【0295】
他の実施形態に関して上述したように、スタイラス204の先端は、長手方向軸線(例えば、
図1Aに示す長手方向軸線120)に概ね沿って、スタイラス204の本体に対して移動可能であってもよい。より具体的には、先端電界発生部232、環状電界発生部238、及び/又は剛性信号導管234は、スタイラス204の先端によって入力面218へ付与された力に応じて、スタイラス204の筐体に対する軸方向に沿って、少なくとも部分的に、位置を移動、変換、後退、ないしは別の方法で変化させるように構成されてもよい。
【0296】
剛性信号導管234は、スタイラス204の先端を、調整エンジン206の力感知構造体236に結合することができる。このようにして、スタイラス204の先端が入力面218(又は任意の他の面)に接触し、力を付与すると、スタイラス204の先端は反作用力を感知し、反作用力は、結果的に剛性信号導管234を介して力感知構造体236に転送される。
【0297】
これらの実施形態では、力感知構造体236はまた、力感知構造体へ付与された力の大きさの関数として変化する電気的に測定可能な性質を示すセンサを備える。一つの例において、センサは、歪みを感知し、力感知構造体236の後側片持ち脚部に結合することができる。このようにして、歪みセンサは、先端電界発生部232及び環状電界発生部238の両方から、任意の寄生結合、電磁干渉、又は、歪みセンサと先端電界発生部232及び環状電界発生部238との間の任意の他の干渉を低下させる距離だけ物理的に離れている。
【0298】
一実施形態では、歪みセンサは、圧縮、伸長、又は力などの寸法の変化に応答して電気抵抗(例えば、コンダクタンス)の変化を示す材料から形成される抵抗センサとして動作する。歪みセンサは、電極の変形、偏向、又は剪断に応答して変化可能な少なくとも1つの電気的性質を示す適合材料であることができる。歪みセンサは、圧電材料、ピエゾ抵抗材料、抵抗材料、又は他の歪み感知材料から形成されてもよい。
【0299】
力感知構造体236は、スタイラスの先端によって付与された力に応答して、スタイラスの本体のフレームに対して偏向するように構成される。偏向の結果、センサの電気的に測定可能な性質は変化することができる。それ故に、センサの電気的性質を測定することで、調整エンジン206により、力の推定値を取得することができる。力の推定値は、スタイラス204で作用する反作用力の大きさの推定値であってもよい。力の推定値が得られると、調整エンジン206は、力の推定値を、任意の好適なコード化フォーマット又は非コード化フォーマットを使用してベクトル量又はスカラ量として、電子デバイス202に伝達する。
スタイラスのメインコントローラサブシステム
【0300】
上記のとおり、
図2Aに図示されたユーザ入力システム200は、調整エンジン206、220間の連携に基づいてスタイラス204の場所を特定し、スタイラス204の角度位置を推定するように構成することができる。多くの実施形態では、他の情報は、電子デバイス202とスタイラス204との間で交換でき、他の情報としては、付与された力の大きさ、スタイラス204の電池容量、スタイラス設定情報、ユーザ識別情報、スタイラス識別情報などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0301】
上記のとおり、そのような情報は、当該情報をデジタルデータ信号又はアナログデータ信号として、先端信号及び環状信号のうちいずれか一方又は両方を介して変調することによって、スタイラス204から電子デバイス202に伝達することができる。しかしながら、他の場合において、別個の通信手法を使用することができる。多数の例では、スタイラスのこれらの追加の動作及び機能は、
図2Bに示したとおり、スタイラス204の処理ユニット208及び無線インターフェース212などの処理ユニット及び無線インターフェースによって、実施、監視、及び/又は調整される。
【0302】
次に、
図2Bのスタイラス204の処理ユニット208及び無線インターフェース212の簡略化したシステム図を示す
図2Eについて言及する。処理ユニット208は、(
図2A及び
図2Bに示したとおり)調整エンジン206、電源サブシステム210、無線インターフェース212及び/又は電源コネクタ214間の通信を容易にするように構成することができる。処理ユニット208のこれらの動作及び目的は、単なる例示であり、異なる実施形態においては、異なる処理ユニット208であってもよい。
【0303】
処理ユニット208は、プロセッサ240、メモリ242、センサ244、及び信号発生部246を含むことができる。プロセッサ240は、スタイラス204の処理ユニット208及び/又は他のサブシステムの構成要素のうち実質的にすべてと直接的又は間接的にのいずれか一方で通信することによって、処理ユニット208の動作のうち一部又はすべてを制御又は調整することができる。例えば、システムバス又は信号線又は他の通信機構は、プロセッサ240と処理ユニット208の様々な構成要素又はより一般的にはスタイラス204の他のサブシステムとの間の通信を容易にすることができる。
【0304】
データ又は命令を処理、受信又は送信することができる任意の電子デバイスとしてプロセッサ240を実装することができる。プロセッサ240は、内部に記憶された命令を有するメモリ242にアクセスするように構成されてもよい。命令は、プロセッサ240に、処理ユニット208及び/又はスタイラス204の動作又は機能のうち1つ以上を実施、調整又は監視させるように構成されてもよい。
【0305】
多くの実施形態では、プロセッサ240の構成要素のうち1つ以上は、アナログ回路、デジタル回路、及びメモリ242などの回路及び/又はロジック構成要素を含むことができるか、又は通信可能に結合することができる。回路は、スタイラス204の他のサブシステムと通信し、かつ/又はデータをやりとりすること、先端信号及び環状信号を発生させるために使用されるパラメータを発生させること、先端信号及び環状信号を調整エンジン206に伝達すること、歪みセンサ又は加速度計などの1つ以上のアナログセンサ又はデジタルセンサの出力を測定及び/又は取得することなどが挙げられるが、これらに限定されない、プロセッサ240の動作のうち一部又はすべてを容易にすることができる。
【0306】
場合によっては、プロセッサ240及びメモリ242は、(表面実装型集積回路であってもよい)同じ集積回路に実装されるが、これは、すべての実施形態において必須ではない。
【0307】
メモリ242に記憶された命令は、別個のプロセッサ、アナログ回路又はデジタル回路、揮発性又は不揮発性メモリモジュール、ディスプレイ、スピーカ、マイクロフォン、回転入力装置、ボタン又は他の物理的入力装置、バイオメトリック認証センサ及び/又はシステム、力又はタッチ入出力構成要素、(無線インターフェース212などの)通信モジュール及び/又は触覚又は触知フィードバックデバイスの動作を制御又は調整するように構成されてもよい。図解の簡略化のため及び図面間での要素の重複を減らすために、これらの(及び他の)構成要素の多くは、
図2A及び
図2B並びに
図2Eに示した簡易システム図のうち1つ以上から省略されている。これらの要素及び構成要素の多くがスタイラス204のハウジング内に全体的に又は部分的にのいずれか一方で含まれてもよいこと、また本明細書に記載された多くの実施形態に適切かつ実装固有の方法で統合化されてもよいことを理解されたい。
【0308】
メモリ242はまた、スタイラス204又はプロセッサ240によって使用できる電子データを記憶することもできる。例えば、メモリ242は、メディアファイル、文書及びアプリケーション、デバイス設定及びプリファレンス、様々なモジュール用又はスタイラス204のサブシステム用のタイミング及び制御信号又はデータ、先端信号及び/又は環状信号に関するデータ構造若しくはデータベース、ファイル、パラメータ又は設定などが挙げられるが、これらに限定されない電気データ又はコンテンツを記憶することができる。
【0309】
メモリ242は、任意の種類のメモリとして構成することができる。例示であるが、メモリ242は、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ、取り外し可能メモリ、若しくは他の種類の記憶素子、又はそのようなデバイスの組み合わせとして実装することができる。
【0310】
プロセッサ240は、センサ244としてまとめて標識されている1つ以上のセンサからデータを取得するように構成されてもよい。センサ244は、処理ユニット208の任意の場所、又はより一般的にはスタイラス204のハウジング内の任意の場所に実質的に位置付けすることができる。例えば、センサ244のうち1つのセンサは、力感知構造体236に結合されたセンサであってもよい(例えば、
図2Dを参照)。
【0311】
いくつかの実施形態では、センサ244は、環境条件及び/又はスタイラス204の動作環境の他の状況を検出するように構成される。例えば、環境センサは、周辺光センサ、近接センサ、温度センサ、気圧センサ、湿度センサなどであってもよい。他の場合には、センサは、周囲温度、気圧、及び/又はスタイラス204への水浸入を算定するために使用されてもよい。そのようなデータは、スタイラス204の動作を調整又は更新するためにプロセッサ240によって使用されてもよく、かつ/又はそのようなデータを電子デバイス202に伝達して、その動作を調節又は更新してもよい。
【0312】
更に他の実施形態では、センサ244は、スタイラス204の動き特性を検出するように構成される。例えば、動きセンサは、スタイラス204の動き及び加速を検出するために、加速度計、ジャイロスコープ、全地球測位センサ、傾きセンサなどを含んでもよい。そのようなデータは、スタイラス204の動作を調節又は更新するために使用されてもよく、かつ/又はそのようなデータを電子デバイス202に伝達して、その動作を調整又は更新してもよい。
【0313】
更に他の実施形態では、センサ244は、スタイラス204を操作しているユーザの生物学的特性に対して構成されてもよい。例示的なバイオセンサは、皮膚温度、心拍数、呼吸速度、血中酸素濃度、血液量推定値、血圧、又はこれらの組み合わせを含む様々な健康指標値を検出することができる。プロセッサ240は、そのようなデータをスタイラス204の動作を調節又は更新するために使用することができ、かつ/又はそのようなデータを電子デバイス202に伝達して、その動作を調節又は更新することができる。
【0314】
スタイラス204はまた、スタイラス204の近傍ないしは外部の物体の性質を推定、定量化、又は推定するために使用してもよい1つ以上のユーティリティセンサを含んでもよい。例示的なユーティリティセンサとしては、磁界センサ、電界センサ、色度計、音響インピーダンスセンサ、pHレベルセンサ、材料検出センサなどが挙げられる。プロセッサ240は、そのようなデータをスタイラス204の動作を調節又は更新するために使用することができ、かつ/又はそのようなデータを電子デバイス202に伝達して、その動作を調節若しくは更新することができる。
【0315】
多くの場合、プロセッサ240は、外部データ、動きデータ、電力データ、環境データ、ユーティリティデータ、及び/又は他のデータをサンプリング(又はこれらのサンプルを受信)でき、規定の又は未規定の期間にわたってそれらの進行を追跡することができる。累積追跡データ、追跡データの変化速度、追跡データの平均、追跡データの最大値、追跡データの最小値、追跡データの標準偏差などはすべて、スタイラス204の動作を調節若しくは更新するために使用することができ、かつ/又はそのようなデータを電子デバイス202に伝達して、スタイラス204の動作を調節又は更新することができる。
【0316】
無線インターフェース212は、プロセッサ240に通信可能に結合することかでき、プロセッサ240と電子デバイス202などの別個の電子デバイスとの間の通信を容易にするように適応された1つ以上の無線インターフェースを含んでもよい。一般に、無線インターフェース212は、プロセッサ240により実行される命令によって解釈することができるデータ及び/又は信号を送受信するように構成されてもよい。
【0317】
無線インターフェース212は、高周波インターフェース、マイクロ波インターフェース、セルラーインターフェース、光ファイバインターフェース、音響インターフェース、Bluetoothインターフェース、赤外線インターフェース、磁気インターフェース、電界インターフェース、ユニバーサルシリアルバスインターフェース、Wi-Fiインターフェース、近距離通信インターフェース、TCP/IPインターフェース、ネットワーク通信インターフェース、又は任意の他の無線通信インターフェースを含むことができる。多くの実施形態では、無線インターフェース212は、低電力Bluethoothインターフェースなどの低電力通信モジュールであってもよい。無線インターフェース212は、双方向通信インターフェース又は片方向通信インターフェースであってもよい。
【0318】
一実施形態では、プロセッサ240は、無線インターフェース212を利用して、スタイラス204に関する情報を電子デバイス202に実質的にリアルタイムに伝達する。例えば、そのような情報は、力感知構造体236のセンサの測定の結果として調整エンジン206及び/又はプロセッサ240によって行われたリアルタイム又は実質的にリアルタイムの力の推定値、スタイラス204内の加速度計又はジャイロスコープからデータを取得後にプロセッサ240によって行われたリアルタイム又は実質的にリアルタイムの角度位置推定値などであってもよいが、これらに限定されない。
【0319】
プロセッサ240はまた、信号発生部246と通信していてもよい。信号発生部246は、調整エンジン206によって、先端電界発生部232及び環状電界発生部238へそれぞれ伝達される先端信号及び環状信号を発生させるように構成されてもよい(例えば、
図2B及び
図2Dを参照)。他の例では、信号発生部246は、調整エンジン206に伝達される先端及び/又は環状信号パラメータを発生、記憶、若しくは変更するか、又はパラメータへアクセスする。調整エンジン206は、これらのパラメータを受信でき、これに応じて、対応する先端信号及び環状信号を発生させることができる。
【0320】
一部の例では、信号発生部246は、先端信号及び/又は環状信号のうち一方又は両方にスタイラス識別情報又はユーザ識別情報を含むことができる。例えば、信号発生部246は、特定の電子デバイスに対して特定のスタイラスを識別する情報を含むことができる。これらの実施形態では、(それぞれ異なる識別情報を有する)複数のスタイラスは、同じ電子デバイス202で使用することができる。場合によっては、複数のスタイラスは、電子デバイス202の異なる機能及び/又は動作に関連付けることができる。一つの例において、一連の個別識別可能なスタイラスを使用して、電子デバイス上で動作する画像表示プログラム内で別個のタスクを実施することができる。
【0321】
他の例では、信号発生部246は、先端信号及び/又は環状信号のうち一方又は両方の中に認証情報を含むことができる。これらの場合には、特定のスタイラスの特定のユーザを、電子デバイスに対して識別することができる。例えば、スタイラスは、スタイラスを操作しているユーザの識別情報を確立するために有用な、指紋センサなどの1つ以上の生体認証センサを含んでもよい。この実施形態では、信号発生部246は、認証情報(例えば、公開キー、機密保護証明書など)を先端信号若しくは環状信号のうち一方又は両方にエンコードすることができる。その後、電子デバイスは、提供された認証情報を取得するために受信した先端信号及び/又は環状信号をデコードかつ/又は復調することができる。電子デバイスは、その後、取得した認証情報が電子デバイスにとって既知か、又は認識できるユーザ識別情報と関連付けられているかどうかを推定してもよい。既知のユーザは、電子デバイスの特定の機構を動作させるための権限、又は電子デバイスに利用可能な若しくは電子デバイスによってアクセス可能な特定の情報にアクセスするための権限が与えられてもよい。
【0322】
スタイラスの電源サブシステム
上記のとおり、
図2Aに図示されたユーザ入力システム200は、スタイラス204の場所を特定し、スタイラス204の角度位置を推定し、かつ電子デバイス202とスタイラス204との間の直接通信を容易にするように構成されてもよい。次に、
図2Fに図示したようにスタイラス204の電源サブシステム210について言及する。
【0323】
概論的かつ広義には、スタイラス204の電源サブシステム210は、電力を蓄積し、かつスタイラス204の様々な構成要素及び他のサブシステムに電力を提供するように構成することができる。電源サブシステム210は、充放電コントローラ248、充電モニタ250、及びバッテリ252を概ね含む。
【0324】
充電モニタ250は、特定の時点でのバッテリ252の容量を推定するように構成することができる。充放電コントローラ248は、プロセッサ、並びに充電モード時にはバッテリ252に供給される電圧及び/又は電流を制御し、かつ別個に、放電モード時にはバッテリ252によって供給される電圧及び/又は電流を制御するように構成することができる電源レギュレータとして実装されてもよい。
【0325】
充放電コントローラ248はまた、電源コネクタ214と結合されている。電源コネクタ214が電源(例えば、
図1Aに示した電子デバイス102のデータポート114などの給電データポート)と結合されているとき、充放電コントローラ248は、バッテリ252の電荷を再充電するために電源から受容した電力をバッテリ252に伝達することができる。
【0326】
一実施形態では、充放電コントローラ248は、バッテリ252の損傷を引き起こすことなくバッテリ252の急速充電を可能にするように構成することができる。場合によっては、充放電コントローラ248は、バッテリ252が、選択された閾値容量を超えて再充電されるとすぐに充電速度を低下させるように構成されてもよい。例えば、充放電コントローラ248は、バッテリ252の容量が80パーセントよりも多いと推定されるまで、高速充電モード(例えば、高定電流)で動作するように構成されてもよい。その後、充放電コントローラ248は、バッテリ252の回復不能な損傷を予防するために、選択された速度に充電速度を低下させてもよい。
【0327】
バッテリ252は、リチウムポリマーバッテリ又はリチウムイオンバッテリであってもよい。しかしながら、他の実施形態では、アルカリバッテリ、ニッケルカドミウムバッテリ、ニッケル金属水素化物バッテリ又は任意の他の好適な充電可能又は単回使用バッテリを使用してもよい。
【0328】
バッテリ252がリチウムポリマーバッテリである実施形態について、バッテリ252は、バッテリ252の構成要素(例えば、アノード、カソード)を形成することができる積層体を含んでもよい。多くの実施形態では、バッテリ252は、パウチ内に密封される前に巻かれてもよい。このようにして、バッテリ252は、スタイラス204の本体内に位置決めされると、未使用スペースをほとんど又は全く有さなくてもよい。
【0329】
バッテリ252は、カソード、電解質、セパレータ、及びアノードを含む。カソード(又は正極)は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)などの層状酸化物、リン酸鉄リチウムなどのポリアニオン又はマンガン酸リチウムなどのスピネルであってもよい。カソードは、活物質(例えば、LiCoO2)、導電性添加物(例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維、グラファイトなど)、バインダ(ポリフッ化ビニリデン、エチレンプロピレン、及びジエン)、及び任意選択的に溶媒を有する溶液を含んでもよい。バインダは、活物質と導電性添加物とを一緒に保持するように作用でき、バインダが非水溶性である場合には、(N-メチルピロリドンなどの)溶媒は、活物質及び導電性添加物をバインダ全体に分配するように作用する。カソード溶液の上記例が単に例示的であることを意味し、多くの他の従来のカソード材料がカソードを形成するために使用されてもよいことに留意されたい。
【0330】
アノード(又は負極)は、概ね、バッテリ252用のイオン源及び電子源である。アノードは、活物質(例えば、リチウム、グラファイト、硬質炭素、ケイ素、又はスズ)、導電性添加物(例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、又は炭素繊維)、バインダ(ポリフッ化ビニリデン、エチレンプロピレン、及びジエンなど)、及び任意選択的に溶媒を含むアノード溶液を含んでもよい。
【0331】
セパレータは、カソードとアノードとの間に位置付けることができる。セパレータは、ガラス繊維布又は可撓性プラスチックフィルム(例えば、ナイロン、ポリエチレン、又はポリプロピレン)であってもよい。セパレータは、アノードとカソードとを分離するが、荷電したリチウムイオンがアノードとカソードとの間を通過できるようにする。
【0332】
電解質は、リチウムイオンの錯体を含むエチレンカーボネート又はジエチルカーボネートなどの有機カーボネートの混合物であってもよい。これらの非水溶性電解質は、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)、リチウムヘキサフルオロアルセネート一水和物(LiAsF6)、リチウムパークロレート(LiClO4)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、及びリチウムトリフラート(LiCF3SO3)などの非配位性アニオン塩を概ね使用する。電解質は、アノード溶液及びカソード溶液の周囲のアノード及び/又はカソード内に充填されてもよい。いくつかの実施形態では、電解質は、セパレータ内で飽和してもよいため、セパレータは、コアに加えられ、電解質も同様に加えられてもよい。
【0333】
いくつかの実施形態では、バッテリ252は、他の構成要素の中でもカソード電極集電体及びアノード電極集電体のうち一方又は両方に動作可能に接続された流れ障壁及び/又は封入壁などの1つ以上の構成要素を含んでもよい。上記のバッテリ252の特定の構成は、単に簡略化した例であり、個々の構成要素の個数及び順序は、変動してもよい。
【0334】
図1A~
図1Dに図示した具体的な実施形態と同様に、
図2A~
図2Fに図示した実施形態、並びに様々な代替形態及び変更形態の前述の記載は、概ね、説明を目的として提示しており、また、本明細書に記載されたような入力システムの一般的動作及び機能を十分に理解することを容易にするために提示している。
【0335】
しかしながら、本明細書に提示する具体的な詳細の中には、具体的に記載する実施形態又はその等価物の実践のために、必須でなくてもよいものがあることが当業者には明らかとなるであろう。それ故に、特定の実施形態の前述及び後述の記載は、図解及び説明の限定的目的のために提示される。これらの説明は、網羅的であるか、又は本明細書で引用される正確な形態に本開示を限定することを目的とするものではない。反対に、上記教示の観点から、多くの修正例及び変更例が可能であることが当業者には明らかとなるであろう。特に、電子デバイスの動作及びスタイラスの動作を含む、
図2A~
図2Fに図示したユーザ入力システムの動作特性が、多数の好適かつ実装固有の方法で実装することができることが理解されよう。
【0336】
スタイラスの構成要素のレイアウト
本明細書に記載された多くの実施形態に関して記載したとおり、(電子デバイスの調整エンジンによって検出することができる)先端電界及び環状電界を発生させるように構成されたスタイラスは、寄生カップリング、電磁干渉、又は先端電界及び/若しくは環状電界に悪影響を及ぼす恐れがある任意の他の干渉を低減又は除去するように役立つ方法で組み立てられてもよい。概論的かつ広義には、本明細書に記載された実施形態は、スタイラス内の電子構成要素及び回路を先端電界発生部及び環状電界発生部から物理的に分離する。加えて、スタイラス内の特定の構造部品は、先端電界発生部、環状電界発生部及び/又はそれらに関連付けられた信号線に役立つ電磁シールドとして機能するように構成される。そのようなある例示的なスタイラスを以下に
図3Aを参照して記載する。しかしながら、ここで示されかつ以下で説明される遮蔽技術及び一般化されたレイアウトは、単なる一例であり、異なる方法で他の実施形態を実装できることが理解されよう。
【0337】
図3Aは、スタイラス300の様々な構成要素を分解図で示す。スタイラス300の様々な構成要素の相互動作及び組立を理解しやすくするために、
図3D~
図3Gが提供され、完全に組み立てられたスタイラス300(例えば、
図3D)、スタイラス300の組み立てられた先端端部の詳細図(例えば、
図3E)、スタイラス300の組み立てられた中間部分の詳細図(例えば、
図3F)、及びスタイラス300の組み立てられたブラインドキャップ端部の詳細図(例えば、
図3G)を示す。図解の簡略化のために、
図3D~
図3Gに示した実施形態のいくつかの部分は、透視で提供されているか又は半透明になるように図示されている。
【0338】
図示した実施形態のスタイラス300は、胴体302を含む。胴体302は、中空である。胴体302は、ユーザによる便利で親しみがあり快適な操作又はスタイラス300を容易にするために様々な形態をとってもよい。図示の例では、胴体302は、ペン又は鉛筆などの筆記用具の一般的な形態を有する。胴体302は、一定の直径を有する概ね円筒状である。胴体302は、プラスチック、金属、セラミック、ラミネート、ガラス、サファイア、木材、革、合成材料若しくは任意の他の材料又は材料の組み合わせによって形成することができる。
【0339】
胴体302は、胴体302の端部でブラインドキャップ304に接続するように構成することができる。ブラインドキャップ304は、スタイラス300の胴体302に装飾端部を提供するように構成されてもよい。ブラインドキャップ304は、胴体302に取り付けられたときに胴体302と共に実質的に連続的な外部面を形成する。
【0340】
場合によっては、ブラインドキャップ304は、ユーザのポケット又は任意の他の好適な保管場所にスタイラス300を取り付けるためのクリップ(図示せず)を含む。ブラインドキャップ304は、首紐又はテザーと結合するように構成された貫通孔を含むことができる。首紐又はテザーはまた、電子デバイスに結合するように構成されてもよい。
【0341】
ブラインドキャップ304は、金属、プラスチック、ガラス、セラミック、サファイアなど又はこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない任意の好適な材料から形成されてもよい。多くの場合、ブラインドキャップ304は、胴体302と同様の材料から形成されるが、これは必須ではない。いくつかの実施形態では、ブラインドキャップ304は、全体的に又は部分的に、多色発光ダイオードなどの赤外線信号又は別の光信号を拡散する信号拡散器として構成されてもよい。他の場合には、ブラインドキャップ304は、全体的に又は部分的に、無線通信及び/又は電界が通過可能なアンテナ窓として構成されてもよい。
【0342】
図示のとおり、ブラインドキャップ304は、丸みのある端部において終端するが、これはすべての実施形態において必須ではない。いくつかの実施形態では、ブラインドキャップ304は、平面として終端する。他の実施形態では、ブラインドキャップ304は、任意の形状で終端する。
【0343】
ブラインドキャップ304は、一定の又は可変の径断面を呈し得る。多くの実施形態では、図示のとおり、ブラインドキャップ304の断面図は、胴体302の断面図と一致し、そこで胴体302とブラインドキャップ304とが接触する。
【0344】
ブラインドキャップ304は、胴体302に取り外し可能に取り付けられるように構成することができる。一実施形態では、ブラインドキャップ304は、ブラインドキャップ304が胴体302内の対応するねじ山にねじ込まれるように、螺合される。他の場合には、ブラインドキャップ304は、胴体302及び/又はブラインドキャップ304が隠し得るコネクタ内の1つ以上の対応する凹み及び/又は戻り止めと位置合わせされるように構成された1つ以上の戻り止め及び/又は凹みを含む。他の場合には、ブラインドキャップ304は、胴体302に締まり嵌めされる。更に他の場合には、ブラインドキャップ304は、胴体302の一部分に磁気吸引される。
【0345】
図示した実施形態では、胴体302は、その一端でテーパ状になっている。胴体302のテーパ状端部は、図ではテーパ状先端302aとして識別される。胴体302の端部の反対側にある胴体302のテーパ状先端302aは、ポイントアセンブリ306を部分的に封入かつ支持するためにブラインドキャップ304に接続するように構成されてもよい(例えば、
図3D及び
図3Eを参照)。
【0346】
図示のとおり、テーパ状先端302aは、胴体302と一体的に形成されてもよい。他の実施形態では、テーパ状先端302aは、胴体302から分離した部品である。例えば、テーパ状先端302aは、胴体302に接着するか、胴体302に超音波溶接するか、胴体302にスナップ嵌合するか、胴体302に摩擦嵌合するか、又は任意の他の好適な方法で胴体302に接続することができる。
【0347】
ポイントアセンブリ306は、テーパ状先端302a内に部分的に配置されている。ポイントアセンブリ306の他の部分は、テーパ状先端302aの端部にその外側から、永続的に又は取り外し可能にのいずれか一方で取り付けられている。ポイントアセンブリ306は、すべてが以下で参照され、詳細に説明されるスタイラス300の先端電界発生部、環状電界発生部及び、歪み応答要素に関連付けられた様々な電子構成要素を封入、保持、及び/又は支持するようにそれ自体構成される。
【0348】
ポイントアセンブリ306は、土台部分306a及び可動部分306bを含むことができる。ポイントアセンブリ306の可動部分306bは、胴体302に対して可動であってもよい。ポイントアセンブリ306の土台部分306aは、胴体302又はそのシャーシに対して固定されていてもよい。
【0349】
ポイントアセンブリ306の可動部分306bは、ノーズピース308を含む。ノーズピース308は、円錐形状を概ねとるが、そのような形状は、すべての実施形態において必須ではない。ノーズピース308は、カラー308a及びニブ308bを含む。
【0350】
多くの場合、ノーズピース308は、ユーザによって交換可能かつ/又は取り外し可能であることができる。例えば、異なるノーズピースは、異なる形状をとることができる。ユーザは、いくつかの例では、ノーズピース308を特定の形状を有するノーズピースと交換することを好む場合がある。例示的なノーズピースの形状には、異なるサイズのポイント形状、チゼル形状、平坦形状、万年筆先端形状などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0351】
ノーズピース308は、単一材料で形成することができる。他の場合には、カラー308aは、第1の材料から形成され、ニブ308bは、第2の材料から形成される。ノーズピース308は、二段階成形プロセス、共成形プロセス、オーバーモールディングプロセス、インサート成形プロセス、又は任意の他の好適なプロセスによって製造することができる。
【0352】
カラー308aは、胴体302内に配置された(以下で詳細に説明する)調整エンジン310の一部に取り外し可能に又は永続的に係合するように構成されてもよい。調整エンジン310は、剛性信号導管310a及び力感知構造体310bを含む。剛性信号導管310aは、ポイントアセンブリ306の可動部分306bを力感知構造体310bに電気的かつ機械的に結合するように構成される(例えば、
図3D~
図3Eを参照)。
【0353】
より具体的には、カラー308aは、剛性信号導管310aの対応するねじ山と係合するように構成することができるねじ山部分を含むことができる。この実施形態では、カラー308aは、剛性信号導管310aに取り付けられたボスに緊密に当接してもよいため、ユーザによるスタイラス300の操作中にノーズピース308により感知されるトルクにより、カラー308aが回転し、かつ/又は剛性信号導管310aから係合解除しないようにする。
【0354】
他の実施形態では、カラー308aは、スナップ嵌合又は摩擦嵌合によるなどの異なる方法で剛性信号導管310aと係合するように構成されてもよい。更に他の例では、カラー308aを、例えば、接着剤を使用して又は溶接によって剛性信号導管310aに永続的に取り付けることができる。
【0355】
カラー308aが剛性信号導管310aに取り付けられると、ノーズピース308は、胴体302に対して可動になることができる。より具体的には、ノーズピース308は、上述したような反作用力に応答して、特定の距離だけ胴体302内へ引き込まれることができる。
【0356】
いくつかの実施において、胴体302内に組み立てられる場合、ノーズピース308は、
図3Bに示したような隙間312だけテーパ状先端302aから分離される。本明細書では、スタイラス300のこの状態は、概ね、「準備」状態と称される。
【0357】
準備状態では、隙間312は、任意の好適な幅を有することができる。しかしながら、典型的な実施形態に関して、隙間312は、中立位置にあるとき(例えば、スタイラス300が任意の表面に対して力を付与しておらず、かつ反作用力が隙間312を閉鎖するように作用していないとき)、1ミリメートル未満であってもよい。他の実施形態では、隙間312は、中立位置にあるとき0.1ミリメートル未満であってもよい。他の実施形態では、隙間312は、異なる幅を有する。いくつかの例では、隙間312の幅は、ノーズピース308を回転することによって設定可能である。一実施形態では、ユーザは、ノーズピース308を回転させて、カラー308aを剛性信号導管310aのねじ山に沿って胴体302に向かって前進させ、それによって、隙間312を小さくさせる。別の実施形態では、ユーザは、ノーズピース308を回転させることができ、カラー308aが剛性信号導管310aのねじ山から胴体302から離れる方向に後退し、それによって、隙間312を大きくさせる。
【0358】
いくつかの例では、準備状態での隙間312の幅は、調整エンジン又はより一般的には胴体302内に配置された電気的若しくは機械的構成要素によって感知されたピーク機械負荷を低減するように少なくとも部分的に選択することができる。より具体的には、隙間312は、
図3Cに示したような、ノーズピース308が特定の閾値(例えば、一実施形態では1キログラム、別の実施形態では0.5キログラム)を超えて反作用力F
rを受けた後に完全に閉鎖するように構成されてもよい。隙間312が完全に閉鎖されると、ニブ308bは、テーパ状先端302aに直接接触し、それによって、調整エンジンなどの胴体302内の構成要素が閾値の大きさよりも大きい反作用力を感知しないように防止する。
図7に関して後述するように、1つ以上の調節可能な内部構成要素を使用して、ノーズピース308の移動及び/又はこれに制限されるものではないが、力感知構造体などの内部構成要素に対して伝達される力を制限することができる。
【0359】
いくつかの実施形態では、隙間312は、エラストマー又はポリマーなどの適合材料により充填することができる。他の例では、変形可能又は圧縮可能材料は、隙間312を装飾的に架橋することができ、ノーズピース308を胴体302のテーパ状先端302aに接続する。
【0360】
図3Aに戻ると、ポイントアセンブリ306のノーズピース308のニブ308bは、電子デバイスの入力面に接触するように構成されてもよい。ニブ308bは、ペンと同様に、先端に向かってテーパ状になっていてもよく、ユーザは、親しみのあるフォームファクタでスタイラス300を精度良く制御することができる。一部の例では、ニブ308bは、尖形状とは対照的に、平滑であるか又は丸みがあってもよく、あるいは回転可能なボール又は固定されたボールの形態を有してもよい。
【0361】
多くの実施形態では、ニブ308bは、(
図1Aに図示した電子デバイス102などの)電子デバイスの入力面よりも軟らかい材料から形成される。例えば、ニブ308bは、シリコーン、ゴム、フルオロエラストマー、プラスチック、ナイロン、若しくは任意の他の好適な材料、又は材料の組み合わせから形成することができる(又はこれらから形成された外部面又はコーティングを有してもよい)。このようにして、入力面にわたるニブ308bによる描画により、入力面又は入力面に塗布されるレイヤ(反射防止コーティング、疎油性コーティング、疎水性コーティング、装飾コーティング、インク層などが挙げられるがこれらに限定されない)を損傷させることができない。
【0362】
ニブ308bは、選択した色、硬度、弾性、剛性、反射性、屈折パターン、テクスチャーなどをニブ308bにもたらすように構成された薬剤でドープした材料から形成することができる。他の例では、ドープ剤は、導電性及び/又は絶縁性、磁性及び/又は反磁性、耐薬品性及び/又は薬品反応性、赤外線及び/又は紫外線光吸収性及び/又は反射性、可視光吸収性及び/又は反射性、抗菌性及び/又は抗ウイルス性、疎油性及び/又は疎水性、熱吸収性、害虫忌避性、耐変色性及び/又は耐色あせ性、帯電防止性、液体曝露性などを含むがこれらに限定されない他の性質をニブ308bにもたらすことができる。多くの場合、ニブ308bは、胴体302と同じ材料から形成されるが、これは必須ではない。
【0363】
先端電界発生部314は、ニブ308bの先端内に配置される(例えば、
図3D及び
図3Eを参照)。多くの実施形態では、先端電界発生部314は、ニブ308b内にインサート成形されるが、これはすべての実施形態に必須でなくてもよい。先端電界発生部314は、ニブ308bの外部面に可能な限り近く配置されてもよい。
【0364】
上記のとおり、ポイントアセンブリ306はまた、胴体302に配置され、かつ胴体302に対して固定することができるいくつかの構成要素を含む。典型的な実施形態では、ポイントアセンブリ306は、支持カラー316及びフランジ付きナット318を含む。いくつかの実施形態では、そのような構成要素は、一体構成要素として形成することができる。
【0365】
多くの実施形態では、フランジ付きナット318は、シャーシ320に溶接、はんだ付け、ないしは別の方法で永続的に接着することができる。シャーシ320は、胴体302内に挿入するスリーブの形状をとることができる。シャーシ320は、胴体302の内側面に対して固定することができる(例えば、
図3D~
図3Gを参照。シャーシ320は、半透明で図示されている)。支持カラー316は、フランジ付きナット318に接続することができる。一部の例では、支持カラー316は、胴体302の内側面内でリップ又はリングに当接する(視認できない)。
【0366】
シャーシ320は、胴体302の内容積内に滑り込むように構成され、スタイラス300の様々な内部構成要素用の構造的支持体取り付け機構を提供することができる。シャーシ320は、胴体302の形状に対応する形状を有する。この場合、シャーシ320は、胴体302の内容積の円筒形状に対応する略円筒形状をとる。シャーシ320は、胴体302の長さの過半にわたって延在するように寸法決めされてもよいが、これはすべての実施形態において必須でなくてもよい(例えば、
図3Dを参照)。
【0367】
一部の例では、シャーシ320は、その外部面上に配置された1つ以上の電気的絶縁層を含むことができる。電気的絶縁層は、シャーシ320がスタイラス300内の1つ以上の回路の動作と干渉することを防止できる。電気的絶縁層は、インク、コーティング又はシャーシ320の内側面に接着ないしは別の方法で固定された別個の構成要素から形成されてもよい。
【0368】
一部の例では、シャーシ320は、その外部面上に配置された1つ以上の電気的絶縁層を含むことができる。電気的絶縁層は、シャーシ320がスタイラス300内の1つ以上の回路の動作と干渉することを防止できる。
【0369】
他の例では、シャーシ320は、1つ以上の回路と電気的に接続することができる。多くの例では、シャーシ320は、系統接地として機能することができ、スタイラス300内に配置されたすべての(又は実質的にすべての)電気回路に電気的接地をもたらす。他の場合には、シャーシ320はまた、1つ以上のアンテナ素子のための接地板として機能することができる。
【0370】
いくつかの実施形態では、1つ以上の無線構成要素は、シャーシ320内に位置付けられ、1つ以上の外部デバイスに信号を送信するように構成される。これらの信号の送信を容易にするために、シャーシ320は、アンテナ窓322を含んでもよい。アンテナ窓322は、アンテナアセンブリ324によって発生された電磁信号が胴体302から出られるように寸法決めされた開口部である。アンテナ窓322のサイズ及び場所は、アンテナアセンブリ324のサイズ及び場所に少なくとも部分的に依存する。
【0371】
図示した実施形態では、シャーシ320は、アンテナ窓322を画定しているが、他の実施形態は、複数のアンテナを含むことができる(例えば、
図3D及び
図3Gを参照)。一部の例では、複数のアンテナアセンブリは、同じアンテナ窓を共有でき、又は他の場合には、それぞれのアンテナアセンブリは、それ自身が割り当てられたアンテナ窓の内部に若しくは隣接して位置付けることができる。
【0372】
シャーシ320はまた、アクセス又はアセンブリウィンドウ326を含んでもよい。アセンブリウィンドウ326は、スタイラス300の簡略化された製造を容易にするために含まれてもよい。例えば、アセンブリウィンドウ326は、ホットバー作業が望ましいか又は両方の構成要素がシャーシ320内に既に配置されているときに一方の構成要素を他方の構成要素に電気的に結合することが好ましい場所に隣接するシャーシ320において画定することができる。他の例では、アセンブリウィンドウ326は、2つの別個の回路間の接続がコネクタを介して行われている場所に隣接するアセンブリウィンドウ326において画定することができる。
【0373】
理解されるように、特定の実施形態は、複数のアセンブリウィンドウを備えるシャーシ320を画定することができる。他の場合には、アセンブリウィンドウは、必須でなくてもよい。
【0374】
一部の例では、アセンブリウィンドウ326は、アセンブリウィンドウ326を必要とする製造作業が終了すると被覆されてもよい。場合によっては、アセンブリウィンドウ326は、導電性テープによって被覆することができる。別の場合には、アセンブリウィンドウ326は、アセンブリウィンドウ326の上にプレートを溶接することによって被覆することができる。理解されるように、特定の実施形態においてアセンブリウィンドウ326の上に配置された被覆は、シャーシ320内に配置された電子素子に電磁シールドを提供するために導電性であってもよい。
【0375】
シャーシ320はまた、接合点328を含むことができる。図示した実施形態では、シャーシ320は、接合点328及び接合点330として標識された2つの接合点を有する。接合点328、330は、別の構成要素に対する接合を容易にする形状により形成することができる。例えば、接合点は、別の金属材料に対する溶接用に調製することができる。溶接用に接合点を調製することは、シャーシ320用に選択された材料に塗布された1つ以上のコーティングを除去すること、接合点を刻むこと、接合点に犠牲材料を加えること、接合点を特定の形状に形成することなどが挙げられるがこれらに限定されない任意の数の動作を含むことができる。
【0376】
シャーシ320の接合点は、シャーシ320の同じ片側に画定されるように図示されているが、接合点がシャーシ320に沿う場所に適切に画定できることが理解される。多くの実施形態では、シャーシ320の接合点328、330は、力感知構造体310bに溶接されるように構成される(例えば、
図3D及び
図3Eを参照)。
【0377】
力感知構造体310bは、少なくとも部分的に、金属から形成することができる。力感知構造体310bは、横方向ベッド部332のそれぞれの端部から延在する2つの片持ち脚部を備える横方向ベッド部332を含むことができる。片持ち脚部は、図示した実施形態では、後側片持ち脚部334及び前側片持ち脚部336として識別される。
【0378】
後側片持ち脚部334及び前側片持ち脚部336は、横方向ベッド部332と同じ材料から形成することができる。いくつかの実施形態では、横方向ベッド部332及び後側片持ち脚部334及び前側片持ち脚部336は、単一の一体部品として形成される。別の例では、後側片持ち脚部334及び前側片持ち脚部336は、接着剤、溶接、又は任意の他の好適な方法で横方向ベッド部332に取り付けられる。
【0379】
場合によっては、後側片持ち脚部334及び前側片持ち脚部336は、旋回接続又はヒンジ接続によって横方向ベッド部332に結合することができる。
【0380】
後側片持ち脚部334及び前側片持ち脚部336の両方は、シャーシ320に機械的接地をもたらすことができ、胴体302内かつ/又はスタイラス300のシャーシ320の内側の力感知構造体310bの横方向ベッド部332を吊り下げる。場合によっては、前側及び後側片持ち脚部334、336のそれぞれの一方の端部は、シャーシ320及び胴体302に対して固定され、横方向ベッド部332は、横方向にずれるか又は移動できるようになっている。
図4A~
図4Mに関して以下でより詳細に記載するように、前側及び後側片持ち脚部334、336は、偏向していてもよく、横方向ベッド部332は、ニブ308b(又は可動部分306b)に与えられた力に応答してずれてもよい。
【0381】
特に、スタイラス300のポイントアセンブリ306の可動部分306bは、剛性信号導管310aと機械的に結合されてもよい。それにより、剛性信号導管310aは、力感知構造体310bの横方向ベッド部332に結合することができる。例えば、ポイントアセンブリ306の可動部分306bは、後側片持ち脚部334又は前側片持ち脚部336のうち少なくとも一方及び/又は横方向ベッド部332に結合することができる。本実施形態では、可動部分306bは、管状シールド340を介して横方向ベッド部332に結合される。このようにして、スタイラス300のポイントアセンブリ306の可動部分306bが胴体302に向かって移動し、かつ/又はシャーシ320の内側に引き込まれると、後側片持ち脚部334及び前側片持ち脚部336は、偏向する。
【0382】
スタイラス300を入力面から除去すると(したがって、スタイラス300上に作用する反作用力を除去すると)、力感知構造体310bの後側片持ち脚部334及び前側片持ち脚部336のうち一方又は両方は、弾性材料から形成され、スタイラス300のポイントアセンブリ306の可動部分306bをその名目上の位置に戻す。
【0383】
多くの実施形態では、後側片持ち脚部334及び前側片持ち脚部336は、中立位置にあるときには横方向ベッド部332に対して実質的に直交する。他の場合には、後側片持ち脚部334及び前側片持ち脚部336は、横方向ベッド部332から斜角で延在する。場合によっては、後側片持ち脚部334及び前側片持ち脚部336の両方は、(例えば、図示したように)横方向ベッド部332の同じ側と接続する。この実施形態では、力感知構造体310bは、広がったU字形の外形を呈する。他の場合には、後側片持ち脚部334及び前側片持ち脚部336は、横方向ベッド部332の両側に接続し、力感知構造体310bの外形は、細長いS字形又はZ字形をとる。
【0384】
これらの実施形態では、力感知構造体310bはまた、印加された力の大きさの関数として変化する、電気的に測定可能な性質を呈する要素を含む。一つの例において、歪み感知電極338は、力感知構造体310bの後側片持ち脚部334に結合されてもよい。歪み感知電極338は、スタイラス300内の電気回路に結合することができる。電気回路は、変化に関して、歪み感知電極338の1つ以上の電気的性質(例えば、抵抗、キャパシタンス、蓄積電荷、インダクタンスなど)を監視するように構成することができる。電気回路は、次いで、印加された力を推定するために使用してもよいこれらの変化を定量化する。その後、スタイラス300は、ユーザ入力として解釈され得る印加された力を、電子デバイスに伝達することができる。
【0385】
多くの実施形態では、複数の歪み感知電極が含まれる。例えば、第1の歪み感知電極は、後側片持ち脚部334の左側に結合することができ、第2の歪み感知電極は、後側片持ち脚部334の右側に結合することができる。言い換えると、複数の歪み感知電極は、後側片持ち脚部334上で互いに隣接して配設することができる。一部の実施形態では、後側片持ち脚部334の変形に応じて、歪み感知電極のうち1つを圧縮状態で設置することができ、一方、別の歪み感知電極は引張状態(例えば、引張歪み)で設置される。他の場合には、後側片持ち脚部334の変形に応じて、複数の歪み感知電極のすべてが圧縮状態(例えば、圧縮歪み)で設置される。
【0386】
複数の歪み感知電極は、後側片持ち脚部334が受ける歪み(例えば、圧縮又は引張)の大きさを概算するために、電気回路(例えば、センサ回路)に結合することができる。この例では、歪みの大きさは、複数の歪み感知電極の共通の性質(例えば、並列及び/又は直列抵抗)又は異なる性質(例えば、分圧)のいずれか一方を測定することによって取得することができる。
【0387】
一実施形態では、並列抵抗などの共通の性質の推定値は、既知の電圧を回路に印加し、複数の歪み感知電極を介して電流を測定することによって取得することができる。別の実施形態では、電流を複数の歪み感知電極に注入することができ、電圧は複数の歪み感知電極から推定可能である。いずれの場合も、複数の歪み感知電極のうち一方又は両方の抵抗は、オームの法則によって計算することができ、それにより、歪み感知電極が受ける歪みの量に相関させることができる。
【0388】
別の実施形態では、複数の歪み感知電極は、互いに電気的に結合することができ、既知の電圧を回路に印加し、複数の歪み感知電極のうち2つ以上の間の点にかかる電圧及び基準電圧を測定することによって異なる性質の推定値(分圧など)を取得することができる。別の実施形態では、電流を複数の歪み感知電極に注入することができ、(複数の)電圧を推定することができる。いずれの場合も、複数の歪み感知電極のうち一方又は両方の抵抗は、オームの法則によって計算することができ、それにより、複数の歪み感知電極のうち1つ以上が受ける歪みの量に相関させることができる。
【0389】
多くの場合、異なる性質の推定値は、共通の性質の推定値と組み合わせられ得るか、又はそれと比較され得る。一部の例では、異なる性質の推定値及び共通の性質の推定値は、非加重又は加重平均によって組み合わせることができる。他の実施形態では、2つの推定値の最大値又は最小値を使用することができる。更に他の例では、2つの推定値を組み合わせる他の方法又は2つの推定値のうちいずれかを決定する他の方法を使用することができる。
【0390】
他の場合には、それぞれ独立した歪み感知電極の抵抗及び/又は蓄積電荷を実際に計算する必要はない。例えば、特定の実施形態では、(例えば、共通の性質の推定値から、異なる性質の推定値から、又はその両方から)推定される電圧又は電流は、力感知構造体が受ける歪みの量に直接的に相関させることができる。
【0391】
計算又は測定によってそれぞれの歪み感知電極の抵抗が一旦得られると、歪み感知電極が引張又は圧縮を受けているかどうかを判定するために、それぞれの抵抗を既知のベースライン抵抗値と比較することができる。言い換えると、力感知構造体が反作用力を受けると、変形する場合があり、それにより1つ以上の歪み感知電極に膨張(例えば、引張)又は収縮(例えば、圧縮)のいずれかが生じて、歪み感知電極の抵抗が、数学的に予測可能な方法で変化し得る。場合によっては、歪み感知電極338の抵抗又は他の電気的性質は、相対値として測定され、気温及び/又は残留歪み若しくは静的歪みなどの環境影響が考慮され得る。
【0392】
特定の材料に関して、抵抗は、圧縮又は引張により線形に変化することができる。他の材料に関しては、抵抗は、圧縮又は引張に応じて、既知の曲線に従って変化し得る。したがって、歪み感知電極用に選択された材料によって、また、力感知構造体上の歪み感知電極の位置(後側片持ち脚部334、横方向ベッド部332又は両方のいずれの上にあるか)によって、特定の抵抗を特定の歪み感知電極が受ける特定の歪みの量に相関させることができ、それにより、特定の抵抗自体が力感知構造体に印加された力の量に相関することができ、また、先端部分によって入力面へ印加された力の量に相関され得る。
【0393】
上記のとおり、歪み感知電極338は、任意の数の好適な材料で製造することができる。一部の例では、歪み感知電極338は、積層スタックに配置された数多くの材料から製造することができる。例えば、一実施形態では、歪み感知電極338は、容量性センサとして実装可能であり、2つの導電性プレートは、誘電材料で分離される。容量性電極が反作用力に応答した力感知構造体310bの変形に応じてずれ、かつ/又は移動するにつれて、容量性電極が呈するキャパシタンスが変化する。電気回路は、本明細書に記載の実施形態に従って、これらの変化を推定し、同変化を力の大きさに相関させることができる。
【0394】
多くの実施形態では、歪み感知電極338を後側片持ち脚部334の外部面に沿って位置付けているが、この構成は必須ではない。例えば、一部の実施形態では、歪み感知電極338は、後側片持ち脚部334及び横方向ベッド部332に重なるように位置付けることができる。言い換えると、歪み感知電極338は、後側片持ち脚部334と横方向ベッド部332との間のコーナ(例えば、接点)の周囲に延在することができる。
【0395】
更に他の実施形態では、歪み感知電極338は、横方向ベッド部332とシャーシ320との間に位置付けることができる。これらの実施形態では、歪み感知電極338は、部分的に固定され、部分的に浮き上がっている。より具体的には、歪み感知電極338は、シャーシ320に対して固定され、横方向ベッド部332に機械的に結合されている。このようにして、横方向ベッド部332が(例えば、反作用力に応答して)シャーシ320内で変位すると、歪み感知電極338が変形する。
【0396】
他の実施形態では、力感知構造体310bの偏向は、光学センサ、音響センサ、共鳴センサ、圧力抵抗センサなどが挙げられるがこれらに限定されない、別の方法で測定することができる。
【0397】
上記のとおり、力感知構造体310bは、剛性信号導管310aを介して、ポイントアセンブリ306の可動部分306bと機械的に連通している。
【0398】
剛性信号導管310aは、管状シールド340を含む。管状シールド340は、中空部分及びトレイ部分を含む。図示のとおり、管状シールド340の中空部分は、下方に延在し、トレイ部分の反対側の管状シールドの端部で螺合される。管状シールド340は、中空部分を通過する電線管(例えば、信号線、トレースなど)を電磁シールドしてもよい。管状シールド340はまた、剛性の構造上の支持体を提供して、ポイントアセンブリ306で受けた反作用力を、実質的な偏向又は座屈を伴わずに、力感知構造体310bに伝達するように構成されてもよい。管状シールド340のトレイ部分は、以下で詳細に説明する制御基板342(例えば、
図3D及び
図3Eを参照)を受容、支持、及び部分的に包囲するように構成されてもよい。
【0399】
管状シールド340は、力感知構造体310b内に受容されるように構成されてもよい。より具体的には、力感知構造体310bの前側片持ち脚部336は、(
図3Aでは見えていない)開口を画定し、その開口を通って管状シールド340の中空部分が延在する。管状シールド340のトレイ部分は、制御基板342と共に、力感知構造体310bの横方向ベッド部332に機械的に締結される。一つの例において、管状シールド340のトレイ部分は、1つ以上のねじ又は他の機械的締結手法で横方向ベッド部332に締結される。管状シールド340は、金属材料から形成され、横方向ベッド部332に溶接されてもよい。別の例では、管状シールド340のトレイ部分は、感圧接着剤、硬化性接着剤又はシリコーン若しくはポリマーシールで横方向ベッド部332に接着される。場合によっては、管状シールド340のトレイ部分は、横方向ベッド部332内にポッティングされる。これらの例では、横方向ベッド部332は、横方向ベッド部332の縁部から上方に延在する側壁を含むことができ、管状シールド340のトレイ部分の少なくとも1つの構成要素を密封するように構成されたポッティング材は、トレイ部分全体に塗布され、横方向ベッド部の側壁に当接してもよい。
【0400】
このようにして、管状シールド340は、力感知構造体310bに少なくとも部分的に差し込まれる。管状シールド340の中空部分のねじ付き端部に印加された力(例えば、上述したような反作用力)は、横方向ベッド部332へと伝達し、それにより力感知構造体310bの前側片持ち脚部336及び後側片持ち脚部334が偏向する。
【0401】
多くの実施形態では、管状シールド340はまた、ポイントアセンブリ306の土台部分306aを通って延在する。例えば、管状シールド340は、支持カラー316及びフランジ付きナット318を通って延在することができる。典型的な実施形態では、管状シールド340は、土台部分306aの内側側壁に衝突することなく、土台部分306aの各構成要素を通って延在するように構成されてもよい。より具体的には、管状シールド340は、土台部分306a内で自由に移動できる。
【0402】
剛性信号導管310aはまた、管状シールド340の中空部分のねじ付き端部に取り付けられた1つ以上の負荷移行ナット(load-shifting nut)344を含む。図示した実施形態では、2つの負荷移行ナット344が示されているが、異なる実施形態では、3つ以上の負荷移行ナット344が使用されてもよいことが理解されるであろう(例えば、
図3D及び
図3Eを参照)。他の実施形態では、単一の負荷移行ナットが含まれてもよい。
【0403】
図示した実施形態では、後側負荷移行ナット344a及び前側負荷移行ナット344bが示されている。概論的かつ広義には、後側負荷移行ナット344a及び前側負荷移行ナット344bは、管状シールド340の中空部分のねじ付き端部に取り付けられ、選択した距離だけ離間している。
【0404】
後側負荷移行ナット344aは、隙間312よりも小さい距離だけフランジ付きナット318から離間していてもよい。同様に、前側負荷移行ナット344bは、ノーズピース308のカラー308aに当接して、ノーズピース308が剛性信号導管310aから不要に離間しないことを確実にするように構成されてもよい。
【0405】
後側負荷移行ナット344aは、力感知構造体310b、あるいはより一般的には、胴体302内に配置された他の電気的又は機械的構成要素に伝達されるピーク機械負荷を制御するために、フランジ付きナット318から離間される。より具体的には、後側負荷移行ナット344aは、隙間312が閉鎖されている(例えば、反作用力を受けて、可動部分306bが胴体302に向かって移動している)間、フランジ付きナット318に衝突するように構成されてもよい。後側負荷移行ナット344aとフランジ付きナット318とを離間する距離は、設定可能であってもよく、固定されていてもよい。
【0406】
剛性信号導管310aはまた、コアインサート346を含む。コアインサート346のバルクは、プラスチックなどの電気絶縁材料から形成される。剛性を増大させるために、コアインサート346のバルクは、ガラス繊維などの繊維材料でドープされてもよい。
【0407】
コアインサート346は、そこを通るいくつかの信号経路を画定する。一つの例において、コアインサート346は、2つの別個の信号経路を画定し、1つは、先端信号を先端電界発生部314に伝達するように構成することができ、1つは、環状信号を(以下で詳述する)環状電界発生部348に伝達するように構成することができる。
【0408】
コアインサート346はまた、1つ以上の接地シールドを含むことができる。接地シールドは、先端信号及び環状信号を伝達するように構成された信号経路間を電磁的に絶縁することができる。例えば、一部の実施形態では、コアインサート346の接地シールドは、環状信号経路と先端信号経路との間に配置することができる。他の場合には、1つ以上の接地シールドは、外部からの干渉が環状信号経路及び先端信号経路に影響を及ぼすことを防止するために、環状信号経路及び先端信号経路を包囲することができる。
【0409】
コアインサート346は、本体350及びフレキシブル回路352を含む。コアインサート346の本体350は、管状シールド340内に挿入されるように構成されてもよい。このようにして、管状シールド340は、本体350の長さを横断する信号経路を電磁シールドする。
【0410】
コアインサート346のフレキシブル回路352は、制御基板342に結合するように構成されてもよい。一つの例において、制御基板342は、フレキシブル回路352にはんだ付けされる。他の場合には、ホットバー結合手法を使用することができる。
【0411】
制御基板342は、コネクタ、はんだ/ホットバーパッド、回路、プロセッサ並びに制御基板を接続するトレース及び/又はシステムバスラインを含むことができる。これらの構成要素は、任意の好適な実装手法を用いて、可撓性基板、剛性基板又は補剛材に結合される可撓性基板に固着することができる。制御基板342は、可撓性コネクタによって接続される複数の回路基板を含むことができる。この実施形態では、制御基板342は、それ自体の上に重ねて又はスタイラスの別の構成要素の上に重ねて折り畳むことができる。
【0412】
上記のとおり、コアインサート346は、先端信号を先端電界発生部314に伝達すること専用の信号線(本明細書では、「先端信号線」)と、環状信号を環状電界発生部348に伝達すること専用の別の信号線(本明細書では、「環状信号線」)と、を含む。これらは単一の線として記載されているが、先端信号線及び環状信号線はそれぞれ、複数の個々の導電素子、線又はトレースからなっていてもよい。
【0413】
一つの例において、先端信号線(
図3Aでは見えていない)は、コアインサート346の下端にある接触パッド354において終端する。一つの例において、接触パッド354は、コアインサート346の製造プロセス中に形成される。例えば、コアインサート346のフラッシングは、仕上げ加工プロセスで切断することができる。切断する場所は、先端信号線が露出されるように、意図的に選択してもよい。場合によっては、切断は、露出した信号線の表面積を増大させるために、鋸歯状とすることができ、増大した表面積は、より耐久性のある方法で、接触パッド354に接合及び/又ははんだ付けすることができる。
【0414】
これらの実施形態では、接触パッド354は、任意の電気的に好適な方法で、先端電界発生部314に結合することができる。例えば、上記のとおり、先端電界発生部314は、例えばポゴピンとして実装された場合には、部分的に可撓性であってもよい。別の例では、接触パッド354は、先端電界発生部314にはんだ付けすることができる。更に他の例では、先端電界発生部314は、製造工程で接触パッド354に塗布される導電性ペースト内に位置することができる。
【0415】
更に他の例では、接触パッド354は、部分的に可撓性であり得る。例えば、接触パッド354は、導電性発泡体又はエラストマーから形成することができる。他の場合には、接触パッド354は、先端電界発生部314のポゴピン構造に加えて、かつ/又はそれとは別個のポゴピン構造を含むことができる。
【0416】
本明細書で記載(及び図示)した他の実施形態に関連して述べたように、先端電界発生部314及び環状電界発生部348は、コアインサート346の長さに沿って同軸状に位置合わせされ、それにより発生した電界(例えば、先端電界及び環状電界)は、軸対称である。このようにして、ユーザは、ユーザにとって快適な任意の方法でスタイラス300を握り、保持することができる。
【0417】
環状電界発生部348は、閉じた環状となっており、先端信号線が、この環を通過する。加えて、1つ以上の接地層、シース又は他の構造体は、先端信号線を環状電界発生部348内に包囲することができる。このようにして、環状電界発生部348は、先端信号と干渉することができず、環状電界及び先端電界の両方は、実質的に球形であってもよく、同軸上に位置合わせすることができる。
【0418】
環状電界発生部348は、任意の好適な方法で形成することができる。多くの場合かつ多くの例において(かつ図示のとおり)、環状電界発生部348は、コアインサート346の周り(かつ/又は部分的にその内部)にある。例えば、環状電界発生部348は、コアインサート346の外部面上に形成される。環状電界発生部348は、物理蒸着、パルスレーザ堆積法、自己粘着性導電フィルム、金属リーフィング手法、金属メッキ手法などが挙げられるがこれらに限定されない、任意の数の好適な製造手法を用いて、コアインサート346の外部面上に配置することができる。他の場合には、環状電界発生部348は、コアインサート346にインサート成形される中実の金属リングであってもよい。
【0419】
環状電界発生部348は、任意の数の好適な導電材料から形成することができる。一部の例では、環状電界発生部348は、金属から形成される。他の場合には、環状電界発生部348は、金属酸化物又は金属粉などの付着導電材料から形成される。例えば、導電材料は、パルスレーザ堆積法、物理蒸着又は任意の他の好適な手法で付着させることができる。
【0420】
場合によっては、環状電界発生部348は、1種の材料から形成され、他の場合には、環状電界発生部348は、複数種の材料から形成される。場合によっては、環状電界発生部348は、剛性であり、他の場合には、環状電界発生部348は、少なくとも部分的には従順性かつ/又は可撓性であってもよい。
【0421】
環状電界発生部348は、任意の電気的に好適な方法で、環状信号線に結合されてもよい。一つの例において、コアインサート346を貫通するビアが、環状信号線を環状電界発生部348に接続する。
【0422】
上記のとおり、環状電界発生部348は、ある特定の距離から推定した場合に、本来、略球形の電界(例えば、環状電界)を発生させるように構成されていてもよい。言い換えると、環状電界発生部348は、実質的に、環形状(例えば、円環状)を有する電界源として機能してもよく、環形状の電界源から発生された電界は、リングの半径よりも大きい距離から測定した場合、実質的に球形である。それ故、多くの実施形態では、環状電界発生部348の半径は、環状電界発生部348の中心とニブ308bの先端とを離間している距離よりも小さい。
【0423】
上述し、
図3Aに示したスタイラス300の個々の構成要素は、概論的かつ広義には、
図2Dに関連して記載した調整エンジン206に関する。様々な構成要素、関係、及びこれらの構成要素の配置は、実質的に実施形態毎に変化してもよく、示した要素は、単に一例を提示しているに過ぎず、ある特定の構成要素は、ある特定の実装においては置き換えられるか又は省略されてもよい。
【0424】
次に、シャーシ320内に配置されてもよいスタイラス300の特定の動作構成要素について言及する。特に、スタイラス300は、処理ユニット回路基板セット356を含んでもよい。
【0425】
処理ユニット回路基板セット356は、1つ以上の基板を含んでもよく、その上に又はそれを介して1つ以上の電子構成要素が配置される。これらの構成要素は、表面実装又は貫通孔構成要素であってもよい。構成要素は、基板の両側に取り付けられてもよい。基板は、単層回路基板、多層回路基板又はフレキシブル回路基板であり得る。一部の例では、1つ以上の補剛材で剛性にしたフレキシブル回路基板を使用することができる。
【0426】
図示した実施形態では、処理ユニット回路基板セット356は、1つ以上のフレキシブル回路が接続される基板を含む。上部制御基板358は、1つ以上の可撓性コネクタ362を介して下部制御基板360に結合されてもよい。場合によっては、可撓性コネクタ362は、上部制御基板358及び/又は下部制御基板360の一方又は両方と一体的に形成される。これらの実施形態では、可撓性コネクタ362は、別個の機構、カップリング、コネクタ又はこれらの制御基板を接続するための製造工程は必要とせず、上部制御基板358を下部制御基板360に電気的かつ機械的に結合する。
【0427】
しかしながら、他の実施形態では、可撓性コネクタ362は、上部制御基板358及び/又は下部制御基板360から分離することができる。例えば、可撓性コネクタ362は、上部制御基板358及び/又は下部制御基板360の一方又は両方に、永続的に又は取り外し可能に取り付けられる。
【0428】
多くの場合、上部制御基板358及び下部制御基板360は、実質的に同一の形状を有する。このようにして、下部制御基板360は、上部制御基板358の下に折り畳むことができる(折り畳み経路364として例示した実施形態に図示)。その後、基板間の選択した距離を保持する方法で、上部制御基板358及び下部制御基板360を共に締結することができる。一部の実施形態では、上部制御基板358及び下部制御基板360は、スタイラス300の他の構成要素の上に折り畳むことができる。
【0429】
一実施形態では、上部制御基板358及び下部制御基板360は、第1の支持棒366、第2の支持棒368及びスペーサ370を用いて、共に締結することができる。第1の支持棒366及び第2の支持棒368は、それぞれ、折り畳まれた基板の上縁部及び下縁部に配置されてもよい。スペーサ370は、上部制御基板358と下部制御基板360との概ね中間に位置付けられてもよい。
【0430】
第1の支持棒366及び第2の支持棒368は、ねじなどの1つ以上の機械的締め具によって基板に締結することができる。他の場合には、第1の支持棒366及び第2の支持棒368は、接着剤を用いて基板に接着される。場合によっては、第1の支持棒366及び/又は第2の支持棒368は、一方の又は両方の基板の回路グランドに電気的に接続することができる。
【0431】
処理ユニット回路基板セット356の幅は、折り畳まれた場合に、シャーシ320の内径よりも小さくなるように選択される。このようにして、処理ユニット回路基板セット356を、製造中に、シャーシ320内に配置することができる。多くの実施形態では、処理ユニット回路基板セット356は、アセンブリウィンドウ326に隣接するシャーシ320の中間部分内に位置付けられる。このようにして、組み立て中、アセンブリウィンドウ326を介して処理ユニット回路基板セット356の少なくとも一部分にアクセスすることができる(例えば、
図3D~
図3Fを参照)。
【0432】
処理ユニット回路基板セット356は、調整エンジン310の制御基板342に結合するため、データ、信号及び/又は電力をこれらの間で交換することができる。一実施形態では、フレキシブル回路372を使用して、処理ユニット回路基板セット356を調整エンジン310の制御基板342に結合することができる。処理ユニット回路基板セット356は、次のうち少なくとも1つを制限なく行うように構成されてもよい。電力及び/又は回路グランド接続を制御基板342に提供すること、先端信号及び/又は環状信号を制御基板342に提供すること、制御基板342が先端信号及び/又は環状信号を発生させるために使用するパラメータを制御基板342に提供すること、制御基板342が先端信号及び/又は環状信号に変調するデータを制御基板342に提供すること、制御基板342から力測定値を受信すること、など。
【0433】
同様に、制御基板342は、次のうち少なくとも1つを制限なく行うように構成されてもよい:電力及び/又は回路グランド接続を処理ユニット回路基板セット356から受け取ること、先端信号及び/又は環状信号を処理ユニット回路基板セット356から受信すること、先端信号及び/又は環状信号に関連するパラメータを処理ユニット回路基板セット356から受信すること、パラメータに従って先端信号及び/又は環状信号を発生させること、歪み感知電極338の電気的性質を測定すること、歪み感知電極338の電気的性質に関連付けられた力を判定すること、力の推定値を処理ユニット回路基板セット356に提供すること、など。
【0434】
制御基板342は、任意の数の好適な回路又は回路系を含むことができる。例えば、多くの実施形態では、制御基板342は、先端信号及び環状信号をそれぞれ、先端電界発生部314及び環状電界発生部348に伝達するように構成することができる。他の場合には、制御基板342は、歪み感知電極338の1つ以上の電気的性質を推定し、かつ/又はかかる電気的性質の大きさを力感知構造体310bが受ける力の大きさと関連付けるように構成することができる。制御基板342は、処理ユニット回路基板セット356と通信可能である。例えば、処理ユニット回路基板セット356は、制御基板342に、スタイラス識別情報、ユーザ識別情報、又はスタイラス設定情報を伝達してもよい。制御基板342は、この情報を受信し、それに応じて先端信号及び/又は環状信号を変更することができる。他の例では、制御基板342は、先端信号及び/又は環状信号を処理ユニット回路基板セット356から直接受信する。
【0435】
一つの例において、フレキシブル回路372は、処理ユニット回路基板セット356のポート376に接続するように構成され得るコネクタ374を含む。また、フレキシブル回路372は、制御基板342に永続的に結合されるように構成された1つ以上のホットバーパッド378を含む。他の場合には、フレキシブル回路372は、コネクタ374(例えば、
図3D~
図3Fを参照)などのコネクタを用いて制御基板342に接続することができる。
【0436】
調整エンジン310の制御基板342を処理ユニット回路基板セット356に結合することに加えて、フレキシブル回路372はまた、力感知構造体310bの歪み感知電極338(又は複数の電極)を、制御基板342又は主制御基板365の一方又は両方に結合することができる。フレキシブル回路372と歪み感知電極338との間の接続は、永続的又は取り外し可能であってもよく、接続は、はんだ付け接続、ホットバー接続、又はコネクタとポートとの間の接続であってもよい。
【0437】
フレキシブル回路372はまた、関節動作部分382を含むことができる。関節動作部分382は、反作用力が電気機械結合をずらした場合に、フレキシブル回路372を収縮させるか、又は折り畳むことを可能にする。概論的に、フレキシブル回路372は、処理ユニット回路基板セット356に対する力感知構造体310bの相対移動を可能にする。関節動作部分382の形状により、制御基板342と処理ユニット回路基板セット356との間の電気的接続の効果が低減されるか、又は最小限になり得る。一部の実施形態では、関節動作部分382は、偏向又は力感知イベントの後の力感知構造体310bの緩和時間又は時定数を減少させるように構成される。
【0438】
処理ユニット回路基板セット356はまた、バッテリパック384に結合される。バッテリパック384は、リチウムポリマーバッテリパック又はリチウムイオンバッテリであってもよい。しかしながら、他の実施形態では、アルカリバッテリ、ニッケルカドミウムバッテリ、ニッケル金属水素化物バッテリ又は任意の他の好適な充電可能又は単回使用バッテリを使用してもよい。
【0439】
バッテリパック384がリチウムポリマーバッテリパックである実施形態について、バッテリパック384は、バッテリパック384の構成要素(例えば、アノード、カソード)を形成することができる積層を含んでもよい。多くの実施形態では、バッテリパック384は、パウチ(図示せず)内に密封される前に、折り畳まれるか又は巻かれてもよい。一部の実施形態では、パウチは、バッテリパック384が内部に挿入された後に巻かれるか、又は折り畳まれ得る矩形のパウチであってもよい。巻く又は折り畳む方向は、胴体302の長手方向軸線と概ね位置合わせすることができる。このようにして、バッテリパック384は、シャーシ320内に位置付けられたときに未使用スペースをほとんど又は全く有さなくなり得る。
【0440】
一部の実施形態では、バッテリパック384は、他の構成要素の中でもカソード電極集電体及びアノード電極集電体のうち一方又は両方に動作可能に接続された流れ障壁及び/又は封入壁などの1つ以上の他の構成要素を含んでもよい。
【0441】
上記のバッテリパック384の特定の構成は、単に簡略化した例であり、個々の構成要素の個数及び順序は多様であってもよい。多くの例において、バッテリパック384は、処理ユニット回路基板セット356に永続的に又は取り外し可能に取り付けるように構成された1つ以上のリード386を含む。バッテリパック384は、電力制御基板388を含む。バッテリパック384及び電力制御基板388は、シャーシ320内に収まるように寸法決めされる。場合によっては、バッテリパック384は、シャーシ320の中心軸と軸方向に位置合わせされてもよいが、これはすべての実施形態において必須ではない。場合によっては、バッテリパック384は、シャーシ320の中心軸に対して軸方向にオフセットされていてもよい。これらの実施形態では、バッテリパック384のオフセット位置調整により、スタイラス300が自身の長手方向軸線に沿って偏心的に均衡をとるようにしてもよく、それにより、スタイラス300を表面上に配置したときにスタイラス300が転がることを防止することができる。一部の実施形態では、スタイラス300の外側の、説明、ロゴ、パーソナライズ化、アイコンなどの印は、スタイラス300を表面上に置いたときに印を見ることができるか、又は隠すことができるように、バッテリパック384の位置調整に基づいて位置付けることができる。
【0442】
電力制御基板388は、バッテリパック384の充電率及び/又は放電率を制御するように構成された回路を含む。多くの例において、電力制御基板388は、バッテリパック384の長さに沿って延在する信号経路トレースを介して、処理ユニット回路基板セット356に直接、通信可能に結合される(例えば、
図3D~
図3Fを参照)。
【0443】
場合によっては、電力制御基板388及び/又はバッテリパック384の別の部分は、アンテナ支持ブロック324bの内容積内に(少なくとも部分的に)配置することができる。場合によっては、電力制御基板388から延在するリードは、サービスループ内へと意図的に伸ばすことができる。スタイラス300の製造を簡略化するために、サービスループを含むことができる。
【0444】
電力制御基板388は、コネクタ、はんだ/ホットバーパッド、回路、プロセッサ並びに制御基板を接続するトレース及び/又はシステムバスラインを含むことができる。これらの構成要素は、任意の好適な装着手法を用いて、可撓性基板、剛性基板又は補剛材に結合される可撓性基板に固着することができる。電力制御基板388は、可撓性コネクタによって接続される複数の回路基板を含むことができる。この実施形態では、電力制御基板388は、処理ユニット回路基板セット356と同様の方法で、それ自体の上に重ねて又はスタイラスの別の構成要素の上に重ねて折り畳むことができる。
【0445】
多くの例において、電力制御基板388は、次のうち少なくとも1つを制限なく行うように構成される。バッテリパック384の容量に関連する情報を処理ユニット回路基板セット356に提供すること、バッテリパック384の充電速度に関連する情報を処理ユニット回路基板セット356に提供すること、バッテリパック384の寿命、正常性又は拡張に関連する情報を処理ユニット回路基板セット356に提供すること、など。
【0446】
多くの場合、バッテリパック384は、バッテリパック384の大部分がスタイラス300の長さと同軸上に位置合わせされるように配置することができる。
【0447】
スタイラス300はまた、データ及び/又は電源コネクタ390を含む。データ及び/又は電源コネクタ390は、電力制御基板388及び処理ユニット回路基板セット356の両方に結合されてもよい。データ及び/又は電源コネクタ390は、コネクタ端部392及びプラグカラー394を含む。
【0448】
コネクタ端部392は、バッテリパック384の再充電を促進するために、電子デバイスの電力及び/又はデータポートに結合するように構成することができる。他の場合には、コネクタ端部392を使用して、スタイラス300と電子デバイスとの間でデータを交換することができる。コネクタ端部392は、可撓性(プラグカラー394内で横方向に移動可能)に構成することができ、電子デバイスに接続されたときに、スタイラス300は、スタイラス300及び/又は電子デバイスを損傷させる可能性のある一定の力に抵抗し、耐えることができる。
【0449】
コネクタ端部392は、マルチピンで両面兼用の標準的なデータ及び/又は電源コネクタとして図示しているが、かかるコネクタは、必須ではないことが理解されよう。特に、一部の実施形態では、Lightningコネクタ、ユニバーサルシリアルバスコネクタ、Firewireコネクタ、シリアルコネクタ、Thunderboltコネクタ、ヘッドホンコネクタ又は任意の他の好適なコネクタを使用することができる。
【0450】
場合によっては、データ及び/又は電源コネクタ390は、アンテナ支持ブロック324bの内容積内に(少なくとも部分的に)配置することができる。場合によっては、データ及び/又は電源コネクタ390から延在する1つ以上のリード390aは、サービスループ内へと意図的に伸ばすことができる。スタイラス300の製造を簡略化するために、サービスループを含むことができる。
【0451】
多くの場合、ブラインドキャップ304は、スタイラス300のデータ及び/又は電源コネクタ390を隠すように構成されてもよい。データ及び/又は電源コネクタ390は、ブラインドキャップ304によって隠されてもよい(例えば、
図3D及び
図3Fを参照)。
【0452】
図示のとおり、データ及び/又は電源コネクタ390は、組み立てられると、胴体302から外側に延在してもよい。プラグカラー394は、組み立てられると、胴体302を密封するように構成することができる。一部の実施形態では、データ及び/又は電源コネクタ390は、非使用時に、胴体302内に、手動で又は自動的に、かつ部分的に又は完全に後退することができる。一部の例では、データ及び/又は電源コネクタ390は、プッシュ・プッシュ機構に接続可能である。
【0453】
処理ユニット回路基板セット356はまた、アンテナアセンブリ324に結合される。アンテナアセンブリ324は、アンテナ324a、アンテナ支持ブロック324b、伝送線路324c、及びコネクタ324dを含む。アンテナ324aは、アンテナ支持ブロック324b上に配置されるかないしは別の方法で結合される。一部の実施形態では、アンテナ支持ブロック324bは、プラスチックなどの誘電材料から形成される。アンテナ324aは、物理蒸着、パルスレーザ堆積法、自己粘着性導電フィルム、金属リーフィング手法、金属メッキ手法などが挙げられるがこれらに限定されない、任意の数の好適な製造手法を用いて、アンテナ支持ブロック324bの外部面上に配置することができる。一部の実施形態では、アンテナ324aは、レーザ直接構造化手法を用いて形成され、アンテナ支持ブロック324bの外面上に直接形成される。
【0454】
アンテナ支持ブロック324bは、内容積を画定する。アンテナ支持ブロック324bの内容積は、電子回路、バッテリ、センサ、ワイヤのサービスループ、可撓性コネクタ、接地板、釣り合い錘、可撓性要素、水分検出機構などが挙げられるがこれらに限定されないスタイラス300の他の構成要素を保持するように寸法決めされるか、かつ/ないしは別の方法で構成することができる。
【0455】
コネクタ324dは、処理ユニット回路基板セット356上のコネクタに直接接続するように構成されてもよい。多くの場合、コネクタ324d及び伝送線路324cは、シールドされていてもよく、これらを通る信号は、外部からの干渉による影響を受けず、また反対に、これらを通る信号は、スタイラス300内のどの構成要素にも影響を及ぼさない。
【0456】
伝送線路324cは、アンテナアセンブリ324及びバッテリパック384がシャーシ320内に組み立てられたときに、バッテリパック384と並んで又はこれに隣接して通るように構成されてもよい。伝送線路324cは、胴体302の長手方向軸線と平行になるように概ね位置合わせされる。上記のとおり、アンテナアセンブリ324は、アンテナ324aとアンテナ窓322との位置が合うように、シャーシ320内に挿入される。
【0457】
場合によっては、伝送線路324cは、圧縮可能要素396によってシャーシ320の内面から離間することができる。圧縮可能要素396は、圧縮可能発泡体396a及び1つ以上の結合要素396bを含む。結合要素396bは、圧縮可能発泡体396a及び伝送線路324cをバッテリパック384に取り付けることができる。
【0458】
上述の多くの実施形態に関連して記載したように、スタイラス300の構成要素のうちの多くは、シャーシ320内に、少なくとも部分的に、配置されてもよい。このようにして、シャーシ320は、スタイラス300の数多くの要素を効果的に電磁シールドする。
【0459】
様々な構成要素をシャーシ320内に設置することを容易にするために、当該構成要素は、一部の例では、スレッド398に取り付けられてもよい。スレッド398は、スレッド398が収容するすべての構成要素と共に、シャーシ320内に滑入されてもよい。その後、シャーシ320及びスレッド398は、任意の好適な方法で互いに締結することができる。例えば、ねじ、リベット又は接着剤を使用して、シャーシ320をスレッド398に締結することができる。他の例では、シャーシ320は、スレッド398に溶接することができる。シャーシ320は、次いで、胴体302の内容積内に挿入されてもよい(例えば、
図3D~
図3Fを参照)。
【0460】
場合によっては、スレッド398は、系統接地として機能することができ、スタイラス300内に配置されたすべての(又は実質的にすべての)電気回路に電気的接地をもたらす。他の場合には、スレッド398はまた、1つ以上のアンテナ素子のための接地板として機能することができる。
【0461】
図3A及び
図3Bに示す実施形態、並びに様々な代替形態及び変更形態についての前述の記載は、概ね、説明のためのものであり、また、本明細書で想到されるようなスタイラスの徹底的な理解を促進するために提示している。しかし、本明細書に提示する具体的な詳細の中には、具体的に記載する実施形態又はその等価物の実践のために、必須でなくてもよいものがあることが当業者には明らかとなるであろう。
【0462】
それ故、特定の実施形態の前述及び後述の記載は、図解及び説明の限定的目的のために提示されているものと理解される。これらの説明は、網羅的であるか、又は本明細書で引用される正確な形態に本開示を限定することを目的とするものではない。反対に、上記教示の観点から、多くの修正例及び変更例が可能であることが当業者には明らかとなるであろう。特に、
図3A及び
図3Bに示したスタイラスは、数多くの好適かつ実装固有の方法で実装可能であることが理解され得る。
【0463】
概論的かつ広義には、
図4A~
図4Mは、本明細書に記載されているような、スタイラスの調整エンジンの様々な実施形態について言及する。ユーザは、スタイラスを操作し、電子デバイスの入力面に力を付与することができる。対応する反作用力は、電気機械結合に接続されたスタイラスの先端を通って、スタイラス内に位置付けられた力感知構造体に伝達されてもよい。力感知構造体は、これに応じて変形してもよく、変形は、スタイラスによって測定され、付与された力を推定するために使用することができる。
図4A~
図4Mに関連して記載した力感知構造体を使用して、付与された力に対応する非バイナリ出力を発生させることができる。例えば、力感知構造体を使用して、付与された力の可変量に従って変化する大きさを表す出力を発生させてもよい。
【0464】
図4Aは、スタイラスの先端を支持する力感知構造体を特に示す、スタイラスの調整エンジン400の側面図である。
図3Aに関連して記載した実施形態と同様に、調整エンジン400は、1つ以上の信号経路(例えば、先端信号経路及び環状信号経路)を介して制御基板406から受信した電子信号をスタイラスのノーズピース408に伝達するように構成された剛性導管404を包囲する管状シールド402を含む。ノーズピース408は、管状シールド402の対応螺合部分上に螺合されるカラー410を含み、それにより対応螺合部分は、力感知構造体412に機械的に結合されてもよい。ノーズピース408は、力感知構造体412から取り外されてもよく、使い捨て可能な、差し替え可能な又は交換可能な構成要素として取り扱ってもよい。
【0465】
管状シールド402及び制御基板406は、任意の好適な方法で力感知構造体412に機械的に結合される。管状シールド402は、中空部分及びベッド部分を含む。管状シールド402は、導電材料から形成され、導電材料は、力が付与されたときに管状シールド402が座屈する又は偏向することを防止する剛性を有する。管状シールド402の中空部分の長さは、先端電界発生部(図示せず)又は環状電界発生部を電磁シールドするように選択することができる。
【0466】
力感知構造体412は、力に応答してスタイラスの本体に対して内側に移動することができる片持ちスレッドとして概ね記載することができる。力感知構造体412の片持ち部分は、その一端において、
図3Aに示すシャーシ320などのスタイラスの内部構造に固着される。
【0467】
力感知構造体412は、前側片持ち脚部414及び後側片持ち脚部416を含み、これらは、2つの片持ち脚部間に延在する横方向ベッド部418によって共に結合されるか又はつながれる。本明細書に記載された他の実施形態に関連して記載したように、前側片持ち脚部414及び後側片持ち脚部416は、スタイラスの本体(例えば、
図3Aに示す胴体)に対して固定される。この例では、前側片持ち脚部414、横方向ベッド部418、及び後側片持ち脚部416の組み合わせ形状は、細長いU字形を形成する。歪み感知電極420は、後側片持ち脚部416の背面上に位置付けられる。
【0468】
力感知構造体412は、降伏又は破断することなく、偏向するか、又は曲がるように構成された弾性材料又は従順性材料から形成することができ、一部の実施形態では、力感知構造体412は、予想可能かつ反復可能な様式で偏向するように構成されている焼き戻しばね鋼から形成されている。力感知構造体412はまた、ポリマー材料から成形されていてもよく、ポリマーと金属の複合材、又は材料の他の組み合わせから形成されていてもよい。
【0469】
前側片持ち脚部414及び後側片持ち脚部416は、スタイラスの1つ以上の内部構成要素に固定されていてもよい。一部の実装では、これらの脚部は、レーザ溶接、又は他の精密溶接プロセスを用いて、スリーブ又はシャーシに溶接されている。これらの脚部はまた、機械的なタブ、締め具、又は他の機械的な取り付け手法を用いて、固定されていてもよい。
【0470】
このようにして、スタイラスのノーズピース408が入力面422に対して力F
aを加えたとき、大きさの等しい反対方向の反作用力F
rが、ノーズピース408により電気機械結合へと伝達され、これにより、ノーズピース408が部分的に引っ込められるか、又は内側に偏向することにより、
図4Bに示したように、前側片持ち脚部414及び後側片持ち脚部416が、蛇行湾曲部に沿って偏向又は変形する。後側片持ち脚部416の変形の結果として、歪み感知電極420が変形する。反作用力F
rの大きさを決定するために、歪み感知電極420の変形を電気回路によって測定することができる。
図4C及び
図4K~
図4Mに関連して以下により詳細に記載されるように、後側片持ち脚部416の1つ以上の表面上には、複数の歪み感知電極が配置されていてもよい。
【0471】
典型的には、前側片持ち脚部414及び後側片持ち脚部416は、(例えば、図示されているように)S字形に変形するが、これは、必須ではなく、異なる実施形態においては、他の変形が可能である。後側片持ち脚部416の偏向はまた、凹領域、凸領域、及び、これらの領域をつなぐ変曲領域(例えば、歪みのない点、又は歪みがほぼない点)を有する蛇行形状として記述することもできる。一部の実施形態では、横方向ベッド部418は、
図4Aの線A-Aに沿った、
図4Dに示す断面に示されているような、1つ以上の補剛材424を含んでいてもよい。補剛材424は、横方向ベッド部418の1つ以上の側面に適用及び/又は接着することができる。補剛材424により、横方向ベッド部418に対して構造上の支持がもたらされるため、力感知構造体412は、実質的に、前側片持ち脚部414及び後側片持ち脚部416の接地点(grounding point)においてのみ変形する。言い換えると、補剛材424は、スタイラスの胴体及び/又はスタイラスのシャーシの内側の側壁(例えば、内側部分)に対して、横方向ベッド部418を実質的に平行に保つ。これらの実施形態では、力感知構造体412は、力が加えられていないときには概ね箱形状となり、力が加えられたときには概ね(辺の変形を伴うか、又は伴わない)平行四辺形となる。
【0472】
図4Cに示されているように、第1の歪み感知電極420aが、後側片持ち脚部416の上側部分416aに配置され、第2の歪み感知電極420bが、後側片持ち脚部416の下側部分416bに配置されている。変曲点416cは、上側部分416aと下側部分416bとの間にある。このようにして、第1の歪み感知電極420aは、後側片持ち脚部416が変形したとき、圧縮力を受け(例えば、上側部分416aは凹状となり)、一方で、第2の歪み感知電極420bは、後側片持ち脚部416が変形したとき、引張力を受ける(例えば、下側部分416bは凸状となる)。
【0473】
一部の実施形態では、横方向ベッド部418は、
図4Aの線A-Aに沿った、
図4Dに示す断面に示されているような、1つ以上の補剛材424を含んでいてもよい。補剛材424は、横方向ベッド部418の1つ以上の側面に適用及び/又は接着することができる。補剛材424により、横方向ベッド部418に対して構造上の支持がもたらされるため、力感知構造体412は、実質的に、前側片持ち脚部414及び後側片持ち脚部416の接地点においてのみ変形する。
【0474】
本明細書に記載の他の実施形態に関連して記載したように、複数の歪み感知電極が含まれていてもよい。一部の例では、歪み感知電極420は、後側片持ち脚部416の内側表面に適用ないしは別の方法で接着することができる。更なる他の実施形態では、歪み感知電極420は、前側片持ち脚部414の前側表面又は後側表面に適用されていてもよい。
【0475】
本明細書に記載の他の実施形態に関連して記載したように、力感知構造体412は、必ずしも
図4Aに示したような形状でなくてもよい。一般的に、力感知構造体412は、一方の縁部が、スタイラスの本体、又は他の内部構造に対して固定された片持ち脚部を、少なくとも1つ有することにより特徴付けることができる。片持ち脚部の固定されていない端部は、ベッド部に接続されているか、又は取り付けられていてもよく、このベッド部は、スタイラスの本体、又は他の構造に対して横方向に移動するように構成されている。この一般的な概念による様々な非限定的な例を、
図4E~
図4Jに関連して以下に説明する。
【0476】
例えば、
図4Eに示したような一実施形態では、例えば、力感知構造体412は、前側片持ち脚部414、及び後側片持ち脚部416を含み、前側片持ち脚部414、及び後側片持ち脚部416は、横方向ベッド部418の両側から延在しており、スタイラスの本体(例えば、
図3Aに示したような胴体)の両側に結合している。この実施形態では、力感知構造体412は、Z文字又はS文字に似た形状となる。
【0477】
図4Fに示したような他の実施形態では、力感知構造体412は、前側片持ち脚部414及び後側片持ち脚部416を含む。前側片持ち脚部414と後側片持ち脚部416はそれぞれ、スタイラスの本体(例えば、
図3Aに示したような胴体)の両側に対して固定された2つの端部を含む。この例では、前側片持ち脚部414及び後側片持ち脚部416は、横方向ベッド部418の両側から延在しており、H文字を細長くした形状に似ている。
【0478】
図4Gに示したような他の実施形態では、力感知構造体412は、横方向ベッド部418の両側から延在する2つの端部を含む、後側片持ち脚部416を含み、これら2つの端部は、スタイラスの本体(例えば、
図3Aに示したような胴体)の両側に対して固定されている。この実施形態では、力感知構造体412は、T文字を細長くした形状を、時計方向に90度回転させたものに似ている。
【0479】
図4Hに示したような更なる他の実施形態では、力感知構造体412は、スタイラスの本体(例えば、
図3Aに示したような胴体)に対して固定された1つの端部を含む、後側片持ち脚部416を含む。後側片持ち脚部416の固定されていない端部は、横方向ベッド部418に取り付けられており、L文字を細長くした形状を、反時計方向に90度回転させたものに似た形状を有する。
【0480】
図4Iに示したような更なる他の実施形態では、力感知構造体412は、弓形状の後側片持ち脚部416を含み、後側片持ち脚部416は、横方向ベッド部418の端部において、2つの方向に延在している。弓の両端部は、スタイラスの本体(例えば、
図3Aに示したような胴体)に対して固定されていてもよい。後側片持ち脚部416は、(スタイラスの先端部から見て)凸形状に図示されているが、後側片持ち脚部416は、凹状、又は他の輪郭形状であってもよい。
【0481】
図4Jに示したような更なる他の実施形態では、例えば、力感知構造体412は、圧縮可能部材426に結合している。一つの例において、圧縮可能部材426は、弾性的に又は粘弾性的に変形するように構成された任意の数の材料から形成されていてもよい。この実施形態では、圧縮可能部材426は、1つ又は複数の場所において、スタイラスの本体に結合されていてもよい。
【0482】
図4A~
図4Jに示す実施形態、及び様々な代替形態及び変更形態についての前述の記載は、概ね説明のためのものであり、また、本明細書に開示されるスタイラスの実施形態に関して記載されるような、力感知構造体及び調整エンジンの概略的理解を深めるためのものである。しかし、本明細書に提示する具体的な詳細の中には、具体的に記載する実施形態又はその等価物の実践のために、必須でなくてもよいものがあることが当業者には明らかとなるであろう。
【0483】
それ故、これらの特定の実施形態の前述及び後述の記載は、例示及び説明の限定的目的のために提示されているものと理解される。これらの説明は、網羅的であるか、又は本明細書で引用される正確な形態に本開示を限定することを目的とするものではない。反対に、上記教示の観点から、多くの修正例及び変更例が可能であることが当業者には明らかとなるであろう。具体的には、
図4A~
図4Jに示される力感知構造体及び調整エンジンは、多くの好適かつ実装固有な方法で実装されてよいことが理解され得る。例えば、上述したように、本明細書に記載されるような、歪みセンサ、又は、より広い意味での歪み応答要素は、任意の数の好適な方法で、力感知構造体の1つ以上の片持ち脚部に適用され得る。
【0484】
したがって、概論的かつ広義には、
図4K~
図4Mは、例えば、
図4Aの調整エンジンに取り付けることができる力感知構造体の、
図4Aの線B-Bに沿って見た背面図を示す。
【0485】
図4Kは、力感知構造体412の後側片持ち脚部416の背面を示す。後側片持ち脚部416の背面は、一様な(solid)シート材料であってもよいし、1つ以上の切り抜きが画定されていてもよい。図示されているように、後側片持ち脚部416の背面は、U字形の切り抜き又はリリーフを含む。これらの実施形態では、後側片持ち脚部416の背面の切り抜き、及び/又は形状は、具体的な実施形態で求められるか、又は所望される、力の感度の程度に応じたものであってもよい。感度を高めるため、又は低下させるために、片持ち脚部の一部分を薄くしたり、厚くしたりしてもよい。また、片持ち脚部の一部分を、特定の形状の偏向が提供されるような形状としてもよい。例えば、片持ち脚部は、偏向された際に、片持ち脚部の長さに沿って、ある変曲点又は変曲線が提供されるような形状を有すか、又は特徴部を含んでいてもよい。後側片持ち脚部416の外形における、寸法及び形状は、概ね、印加された力に対して特定の応答が提供されるように適合化されることとなる。図示した実施形態において、後側片持ち脚部416の上側部分は、スタイラスの本体に機械的に結合されるように構成されていることを理解されたい。多くの場合、この部分は、スタイラスのシャーシに溶接することができる。
【0486】
後側片持ち脚部416の背面を用いて、1つ以上の歪み感知電極420を取り付けることができる。図示した実施形態においては、2つの歪み感知電極420が含まれている。一方の歪み感知電極420は、後側片持ち脚部416の右側に配置されており、一方の歪み感知電極420は、後側片持ち脚部416の左側に配置されている。
【0487】
図示されているように、歪み感知電極420は、軸方向に位置合わせされていてもよいが、このことが、すべての実施形態において必須であったり、好ましかったりするわけではない。例えば、2つの歪み感知電極420のうちの一方は、後側片持ち脚部416の上側部分に対して、より近接して位置付けられてもよい。
【0488】
更なる実施形態では、3つ以上の歪み感知電極が含まれていてもよい。例えば、
図4Lは、4つの独立した歪み感知電極420を含む実施形態を示している。更に他の実施形態では、5つ以上の歪み感知電極が含まれていてもよい。例えば、
図4Mは、6つの独立した歪み感知電極420を含む実施形態を示している。
【0489】
一部の実施形態では、それぞれ、圧縮性の歪み様式及び引張性の歪み様式において配置される後側片持ち脚部416の表面の様々な部分に、1対以上の歪み感知電極を位置付けることができる。
図4Bに関連して上述したように、後側片持ち脚部416は、印加された力に応じてS字形又は蛇行となるように偏向することができる。歪み感知電極対のうちの一方は、圧縮性の歪み様式において偏向するように構成された表面領域に取り付けられていてもよく、歪み感知電極対のうちのもう一方は、引張性の歪み様式において偏向するように構成された異なる領域に取り付けられていてもよい。場合によっては、偏向した表面における凹状輪郭部と凸状輪郭部との間の遷移部に対応する変曲点又は変曲線の両側に歪み感知電極対を位置付けてもよい。引張性の歪み様式における電極と、圧縮性の歪み様式における電極との間の電気的応答の違いを測定することにより、偏向測定の感度を向上させることができ、これにより、印加された力におけるわずかな変化に対する、スタイラスの分解能を向上させることができる。
【0490】
歪み感知電極に好適な材料は、各実施形態によって様々であり、ニッケル、コンスタンタン及びカルマ合金、ガリウムドープ酸化亜鉛、ポリエチレンジオキシチオフェン、インジウムスズ酸化物、カーボンナノチューブ、グラフェン、銀ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、他の金属のナノワイヤなどを挙げることができる。典型的には、例えば、スタイラスの先端で入力面に力を加えたときに、電極がひずむと、その歪みに応じて電極の抵抗値が変化する。この抵抗値を電気回路で推定することができる。
【0491】
特定の実施形態では、歪み感知電極に対し、ホイートストンブリッジを用いた推定を行ってもよい。かかる例では、供給電圧Vsに接続された、2つの並列な分圧回路の出力間の電圧Vgが推定され得る。これらの分圧回路のうちの一方は、既知の抵抗値R1及びR2の2つの抵抗器を含んでいてもよく、他方の電圧回路は、1つの抵抗器又は既知の抵抗値R3及び電極Rxを含んでいてもよい。供給電圧Vsと各電圧出力間の電圧を比較することにより、電極の未知の抵抗値Rxを計算することができ、これにより、スタイラスの先端によって入力面に加えられた力の大きさを推定することができる。
【0492】
他の実施形態では、複数の歪み感知電極を、後側片持ち脚部上で互いに隣接して配設することができる。後側片持ち脚部が受ける歪み(例えば、圧縮又は引張)の大きさを概算するために、複数の歪み感知電極を電気回路に接続することができる。この例では、歪みの大きさは、複数の歪み感知電極の共通の性質(例えば、並列及び/又は直列抵抗)又は異なる性質(例えば、分圧)のいずれか一方を測定することによって取得することができる。
【0493】
一実施形態では、並列抵抗などの共通の性質の推定値は、既知の電圧を回路に印加し、複数の歪み感知電極を介して電流を測定することによって取得することができる。別の実施形態では、電流を複数の歪み感知電極に注入することができ、電圧は複数の歪み感知電極から推定可能である。いずれの場合も、複数の歪み感知電極のうち一方又は両方の抵抗は、オームの法則によって計算することができ、それにより、歪み感知電極が受ける歪みの量に相関させることができる。
【0494】
別の実施形態では、複数の歪み感知電極は、共に電気的に結合することができ、既知の電圧を回路に印加し、複数の歪み感知電極のうち2つ以上の間の点にかかる電圧及び基準電圧を測定することによって異なる性質の推定値(分圧など)を取得することができる。別の実施形態では、電流を複数の歪み感知電極に注入することができ、(複数の)電圧を推定することができる。いずれの場合も、複数の歪み感知電極のうち一方又は両方の抵抗は、オームの法則によって計算することができ、それにより、複数の歪み感知電極のうち1つ以上が受ける歪みの量に相関させることができる。
【0495】
多くの場合、異なる性質の推定値は、共通の性質の推定値と組み合わせられ得るか、又はそれと比較され得る。一部の例では、異なる性質の推定値及び共通の性質の推定値は、非加重又は加重平均によって組み合わせることができる。他の実施形態では、2つの推定値の最大値又は最小値を使用することができる。更に他の例では、2つの推定値を組み合わせる他の方法又は2つの推定値のうちいずれかを決定する他の方法を使用することができる。
【0496】
他の場合には、各個別の電極について、抵抗値を実際に計算する必要がない場合もある。例えば、特定の実施形態では、(例えば、共通の性質の推定値から、異なる性質の推定値から、又はその両方から)推定される電圧又は電流は、力感知構造体が受ける歪みの量に直接的に相関させることができる。
【0497】
一旦計算又は推定によってそれぞれの電極の抵抗値が得られると、歪み感知電極が引張又は圧縮を受けているかどうかを推定するために、それぞれの抵抗値を既知のベースライン抵抗値と比較することができる。言い換えると、(例えば、入力面に力を加えた結果として)力感知構造体が力の印加を受けると、変形する場合があり、それにより1つ以上の歪み感知電極に膨張(例えば、引張)又は収縮(例えば、圧縮)のいずれか一方が生じて、歪み感知電極の抵抗値が、数学的に予測可能な方法で変化し得る。
【0498】
図4K~
図4Mに示す実施形態、及び様々な代替形態及び変更形態についての前述の記載は、概ね説明のためのものであり、また、本明細書に開示されるスタイラスの実施形態に関して記載されるような力感知構造体の片持ち脚部に対する、歪み感知電極の可能な配置についての概略的理解を深めるためのものである。しかしながら、本明細書に提示する具体的な詳細の中には、具体的に記載する実施形態又はその等価物の実践のために、必須でなくてもよいものがあることが当業者には明らかとなるであろう。
【0499】
例えば、本明細書では、歪み感知電極を参照して、これらの実施形態、及び他の実施形態が記載されているが、具体的な実施形態のために、任意の力感知要素及び/又は歪み感知要素が含まれていてよいことが理解される。同様に、片持ち脚部は、任意の好適な形状であってもよい。
【0500】
概論的かつ広義には、
図5A~
図5Nは、本明細書に記載されているような、スタイラスの調整エンジンの剛性信号導管の様々な実施形態について言及する。ユーザは、スタイラスを操作して、先端電界及び環状電界の相対的な場所を変化させる。電子デバイスは、これらの電界の相対位置を計算し、これに応じて、スタイラスの場所を特定し、角度位置を推定する。
【0501】
例えば、
図5Aは、スタイラスの調整エンジン500の一部分の側面図である。
図3Aを参照して記載された実施形態と同様に、調整エンジン500は、内部にコアインサート504を受容するように構成された、管状シールド502を含む。管状シールド502は、トレイ部506を有し、トレイ部506内には(又はトレイ部506上に)、回路基板508を位置付けることができる。管状シールド502は、内部にコアインサート504が配置された中空部分510を有する。
【0502】
コアインサート504は、回路基板508から受信された電気信号を、先端電界発生部512及び環状電界発生部514へと伝達するように構成されていてもよい。一部の実施形態では、先端電界発生部512と環状電界発生部514との間に、接地リング513が配置されていてもよい。接地リング513により、先端電界発生部512と環状電界発生部514との間に容量性結合が生じにくいようにすることができる。
【0503】
コアインサート504は、シールドされた信号経路であってもよい。即ち、コアインサート504内の1つ以上の信号経路は、他の信号経路に対してシールドされていてよく、これにより、これらの信号経路間の容量性結合が防げられる。
【0504】
先端電界発生部512が組み立てられ、動作している場合、先端電界発生部512は、先端電界516を発生及び/又は放出することができ、環状電界発生部514は、環状電界518を発生及び/又は放出することができる。先端電界516と環状電界518とは、異なる出力で発生されてもよく、例えば、
図5Bに示されているように、環状電界518は、先端電界516よりも大きな出力で発生する。他の場合には、先端電界516及び環状電界518は、例えば、
図5Cに示されているように、実質的に同一の出力で発生する。
【0505】
先端電界発生部512は、ある特定の距離から推定した場合に、本質的に略球形の電界(例えば、環状電界)を発生させるように構成されていてもよい。言い換えると、先端電界発生部512は、実質的に、点状の電界源として機能していてよい。
【0506】
図示した実施形態において、環状電界発生部514は、閉じた環形状となっており、先端信号線がこのリングを通過する。このように、環状電界発生部514が、先端信号と干渉しないようにすることができ、環状電界518及び先端電界516の両方を、例えば、
図5Bに示されているように、実質的に球形とするとともに、同軸上に位置合わせすることができる。
【0507】
環状電界発生部514は、環状電界518を発生させる。環状電界発生部514は、円筒形状(例えば、図示されている形状)、王冠形状、一続きのリング状、線の分布(例えば、線及び/又はリングのフィボナッチ配列)などであるが、これらに限定されない任意の数の好適な形状に形成することができる。
【0508】
環状電界発生部514が環形状であるにもかかわらず、多くの実施形態において、環状電界518は、実質的に球形である。当業者であれば理解し得るように、より具体的には、環形状の要素によって発生される電界は、以下の式によってモデル化することができる。
【数1】
【0509】
上の式は、電荷Qを適用した、半径rの環形状の要素の幾何中心からの距離aから推定したときの、電界Eの大きさを記述している。既知のように、クーロン定数kにより、電界Eを正確に推定するために、スケール因子及び単位補正が与えられる。
【0510】
環形状電界発生部の幾何中心からの距離aが、半径rよりもはるかに大きい場合、電界Eは、以下のように近似される。
【数2】
【0511】
それ故、環状電界発生部514と電子デバイスの入力面との間の距離が環状電界発生部514の半径よりも大きい実施形態については、環状電界発生部514が少なくとも幾何学的には点源ではないにもかかわらず、環状電界518が入力面に対して実質的に球形に出現し得る。
【0512】
言い換えると、多くの実施形態では、環状電界発生部514の半径は、環状電界発生部514から入力面までの距離よりも小さくなるように選択される。このようにして、環状電界518は、点電荷によって発生する実質的に球形の電界として入力面に出現する。このようにして、先端電界516及び環状電界518は両方とも、少なくともスタイラスの先端の方向においては、実質的に球形である。
【0513】
しかしながら、本明細書において、多くの実施形態は、スタイラスによって同軸上に整列した球形の電界が発生し、これらの電界が、電子デバイス内のセンサの概ね円形の群によって検出されるものとして記載されているが、このような構成が、すべての実施形態において必須であるとは限らない。一部の例では、環状電界発生部によって発生する環状電界は、非球形状であってもよい。例えば、環状電界発生部は、実質的に円錐形状を作り出すように構成されていてもよい。この例では、環状電界交差エリアは、円錐曲線(例えば、双曲線、楕円、円など)であってもよい。他の例では、環状電界発生部は、複数の電界を発生させるように構成されていてもよい。例えば、環状電界発生部は、4つの実質的に円錐状の電界を発生させるように構成することができ、ここで、それぞれの電界は互いに均一に離間している。隣接する円錐状電界が互いに干渉し合わないように、これらの円錐状電界は極性が交互になっていてもよく、又は異なる環状信号に関連付けられていてもよい。この例では、環状電界交差エリアは、一続きの複数の円錐曲線(例えば、双曲線、楕円、円など)であってもよい。それ故、具体的な実施形態の環状電界発生部により、任意の好適な電界形状、又は一続きの複数の電界形状を発生することができることが理解されるであろう。
【0514】
図5Dは、
図5Bの切断線C-Cを通る調整エンジン500のコアインサート504の断面を示す。上記のとおり、コアインサート504は、先端信号を先端電界発生部512に伝達すること専用の信号線(先端信号線)と、環状信号を環状電界発生部514に伝達すること専用の別の信号線(環状信号線)とを含む。加えて、1つ以上の接地層、シース又は他の構造体は、環状信号線を環状電界発生部514内に包囲することができる。それ故、概論的かつ広義には、コアインサート504は、複数の組の導電体を含み、これらの導電体を通って、1つ以上の電気信号が送信されるように構成されている。
【0515】
先端電界発生部512は、任意の数の好適な導電材料から形成することができる。一部の例では、先端電界発生部512は、金属又はメタライズした材料から形成されている。他の場合には、先端電界発生部512は、導電性シリコーン又は導電性ナイロンなどの、導電性のポリマー又は繊維から形成されている。場合によっては、先端電界発生部512は、1つの材料から形成され、一方で、他の実施形態では、先端電界発生部512は、複数の材料から形成されている。場合によっては、先端電界発生部512は剛性であり、他の場合には、先端電界発生部512は、少なくとも部分的には従順性かつ/又は可撓性であってもよい。一つの例において、先端電界発生部512は、少なくとも部分的に折り畳み可能なポゴピンとして実装されていてもよい。ポゴピンは、ばねと、2つ以上の連動する摺動部材を含んでいてもよい。先端電界発生部512の例示的実施形態が、
図6A~
図6Gを参照して記載される。
【0516】
先端電界発生部512は、反対向きのバルブ形状に形成されていてよい。バルブの丸みのある端部は、スタイラスの先端部の方を向いている。丸みのある端部は、実質的に球形であってもよいし、又は他の実施形態では、実質的に半球形状であってもよい。バルブの根元端部は、スタイラスの内側へと延在するように配向される。バルブの丸みのある端部は、点状の電界源として機能するように構成されていてもよい。言い換えると、バルブの丸みのある端部は、実質的に球形の電界を発生させ得るような形状に形成されていてもよい。多くの場合、先端電界発生部512のバルブの根元端部の直径は、バルブ形状の丸みのある端部から離れる方向に小さくなっていく。直径の減少は一定であってもよいし、指数関数的減衰関数などの数学的な関数に従っていてもよい。
【0517】
環状電界発生部514は、任意の数の種類の好適な導電性材料から形成されていてよい。一部の例では、環状電界発生部514は、金属から形成される。他の場合には、環状電界発生部514は、金属酸化物又は金属粉などの付着導電材料から形成される。
【0518】
環状電界発生部514は、任意の好適な方法で形成することができる。多くの場合、多くの例において(また、図示されているように)、環状電界発生部514は、コアインサート504の外側表面上に配置されている。環状電界発生部514は、物理蒸着、パルスレーザ堆積法、自己粘着性導電フィルム、金属リーフィング手法、金属メッキ手法などが挙げられるがこれらに限定されない、任意の数の好適な製造手法を用いて、コアインサート504の外部面上に配置することができる。一部の実施形態では、環状電界発生部514は、レーザ直接構造化手法を用いて形成され、コアインサート504の外面上に直接形成される。
【0519】
環状電界発生部514は、任意の電気的に好適な方法で、環状信号線に結合されてもよい。一つの例において、コアインサート504を通るビア520が、環状信号線を環状電界発生部514に接続し、このビアは、支持棒電極522において終端していてもよい。多くの場合、ビア520は、切り込み(例えば、逆向きの円錐)形状をとる。ビア520により、支持棒電極522が環状電界発生部514と接続される。ビア520を横断する電気接続520aは、物理蒸着、パルスレーザ堆積法、レーザ直接構造化、自己粘着性導電フィルム、金属リーフィング手法、金属メッキ手法などが挙げられるがこれらに限定されない、任意の数の好適な製造手法を用いて、コアインサート504の外部面上、又はビア520の内側側壁上に配置することができる。場合によっては、ビア520は、金属材料で完全に充填されていてもよいが、このことは、必須ではない。
【0520】
図3Aに示される実施形態に示されているように、先端信号線は、コアインサート504の端部にある、接触パッド524において終端する。これらの実施形態では、接触パッド524は、任意の電気的に好適な方法で、先端電界発生部512に結合することができる。
【0521】
本明細書に記載の他の実施形態に関連して記載したように、(また、図示されているように)先端電界発生部512と環状電界発生部514とは、コアインサート504の長さに沿って同心軸上に整列しており、これにより、先端電界516及び環状電界518は軸方向に整列し、かつ軸対称である。理解し得るように、多くの実施形態において、先端電界516及び環状電界518が球形性を有することにより、入力面上のスタイラスの場所を特定する動作と、更に、スタイラスの角度位置を推定する動作とが容易になる。
【0522】
コアインサート504は、多くの方法で構築することができる。例えば、線D-Dを通る、コアインサート504の断面を示す、
図5Eに特定して言及すると、コアインサート504は、誘電体バルク528内に配置された、多層回路基板526を含んでいてもよい。図面を単純化するため、
図5D~
図5Eからは、多層回路基板526の各層が省略されているが、多層回路基板526は、任意の好適な様式で配向された、任意の好適な数の層を有していてよいことが理解できるであろう。一つの例において、多層回路基板526は、8つの層を有する。
【0523】
誘電体バルク528は、典型的には、プラスチック、又は他の好適な電気絶縁材料から形成されている。剛性向上のために、誘電体バルク528は、ガラスなどの繊維材料でドープされ得る。
【0524】
多くの例において、ビア520は、誘電体バルク528及び多層回路基板526の成形の際に画定されてもよい。例えば、多層回路基板526を、支持体により型内に保持し、この支持体を成形後に取り外すことにより、ビア520を画定してもよい。
【0525】
多層回路基板526は、多層回路基板526の長さに沿って、任意の特定のかつ好適な場所に配置された、任意の数の好適な構成要素を含んでいてもよい。例えば、多層回路基板526は、1つ以上の電気回路構成要素(図示せず)を含んでいてよく(かつ/又は1つ以上の電気回路構成要素に結合されていてよく)、電気回路構成要素としては、プロセッサ、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、トランジスタ、信号線、接地線、接地接続などが挙げられるが、これらに限定されない。多くの実施形態では、多層回路基板526に結合している構成要素は、寄生容量を減らし、かつ/又はなくすように、レイアウトされ、かつ配分される。具体的には、多層回路基板526の構成要素のレイアウトは、先端信号線530と環状信号線532との間の混信(例えば、寄生相互容量)を減らし、かつ/又はなくすように選択されてもよい。このことは、電子デバイスが、環状信号を、先端電界に由来するものとして検出してしまわないようにするために、同様に、電子デバイスが、先端信号を、環状電界に由来するものとして検出してしまわないようにするために、特に望ましいことで有り得る。
【0526】
例えば、図示したように、先端信号線530は、複数の接地信号線534により、環状信号線532から分離かつ絶縁されている。この実施形態では、6本の個別の接地信号線により、2本の先端信号線(それぞれ先端信号線530とする)と、2本の環状信号線(それぞれ環状信号線532とする)が、物理的かつ電気的に分離されている。このようにして、複数の接地信号線534は、1本又は複数本の環状信号線と、1本又は複数本の先端信号線との間の電気的な絶縁をもたらしている。
【0527】
多くの場合、多層回路基板526を通る様々な信号線の外側表面積についても、寄生容量が発生する可能性を小さくするように選択し得る。具体的には、1本又は複数本の接地信号線、1本又は複数本の先端信号線、及び1本又は複数本の環状信号線はいずれも、比較的細いものであってもよい。いずれかの信号線の外表面積が大きいほど、寄生容量により生じ得る変化も大きくなってしまう。図示した実施形態などの多くの実施形態では、各信号は、1本よりも多くの信号線を経由して伝達されてよく(例えば、2本の信号線が環状信号を伝達し、2本の信号線が先端信号を伝達し、6本の信号線が接地されている)、これにより、1本の信号線が細いことに起因する大きな抵抗損失を生じさせることなく、先端電界発生部512及び環状電界発生部514において、信号が受信される。
【0528】
理解し得るように、図示した実施形態では、2本の環状信号線と2本の先端信号線とを分離する6本の接地線が示されているが、この本数がすべての実施形態において必須であるわけではない。場合によっては、より多くの信号線が、又はより少数の信号線が含まれてよい。場合によっては、同一の信号を伝達する信号線が、1つ以上のビア(図示せず)によって、多層回路基板526の長さに沿った様々な箇所において、1つに接続されていてもよい。
【0529】
上述のとおり、コアインサート504の端部には、接触パッド524が配置されている。多くの場合、接触パッド524は、コアインサート504の端部にはんだ付けされている。他の場合には、接触パッド524は、好適なプロセスによって、コアインサート504の端部上に形成されていてよく、好適なプロセスとしては、物理蒸着、パルスレーザ堆積法、レーザ直接構造化、自己粘着性導電フィルム、金属リーフィング手法、金属メッキ手法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0530】
コアインサート504の多層回路基板526は、穴埋め部(符号なし)により終端していてもよく、この穴埋め部では、多くのビアにより、多層回路基板526の複数の層が、同一の電気回路又は信号線に対して、電気的に結合されている。多くの実施形態では、ビア及び信号線のそれぞれは、先端信号線530に電気的に結合されている。例えば、
図5Fは、穴埋め部に沿う、
図5Dの線E-Eを通る、コアインサート504の断面を示す。簡明にするため、
図5Fでは接触パッド524を図示していない。
【0531】
製造の際、多層回路基板526を、穴埋め部を通るように切断して、1つ以上のビア536及び1本以上の信号線538a、538bを露出させてもよい。1本以上の信号線538a、538bは、多層回路基板526の長さに対して平行であってもよいし、垂直であってもよい。他の例では、信号線は、他の様式で、例えばある角度に沿って、配向されていてもよい。このようにして、(先端信号線530に結合している)露出したビア及び信号線は、切断すると、大きな総導電性表面積を呈する。任意の好適な方法を用いて、このような広い面積を、接触パッド524に結合させることができる(又は接触パッド524の一部分として機能させることができる)。表面積を増やすことにより、機械的にも、電気的にもより良好な、先端信号線530と接触パッド524との間の結合が提供される。
【0532】
一部の実施形態では、接触パッド524は、不要な場合もあり、穴埋め領域の露出したエリアが、先端信号を先端電界発生部512へ伝達する機能を果たし得る。他の場合には、接触パッド524は、穴埋め領域の露出したエリア上に配置されている、堆積させた導電性材料であってもよい。
【0533】
コアインサート504の穴埋め領域の長さは、各実施形態によって様々であってよく、コアインサート504を製造する際に達成可能な製造公差に応じていてよい。例えば、ある特定の実装を低い公差にて製造する場合、穴埋め領域は、細長くてもよい(例えば、多層回路基板526の長さを通して、内側に特定の距離にわたって延在している)。他の場合において、ある特定の実装を高い公差にて製造する場合には、穴埋め領域は短くてもよい。同様に、ビアの数及び密度も、各実施形態によって様々であってよく、同様に、信号線の数及び密度も(配向されるものの)、各実施形態によって様々であってもよいことが理解できるであろう。
【0534】
次に、それぞれ電子デバイスの入力面540と交差する、(大きさが異なる)先端電界516及び環状電界518を発生させているスタイラスの側面図が示されている
図5G~
図5Iについて言及する。具体的には、これらの図は、入力面を横切ってスタイラスを傾けたときの、先端電界交差エリア542と環状電界交差エリア544との相対位置を示している(追加的にスタイラスを取り除いた上面図を共に示す)。
【0535】
図5Gは、スタイラスが入力面540に対して直角に配向されているときの、先端電界交差エリア542と環状電界交差エリア544との相対位置を示す。具体的には、先端電界交差エリア542及び環状電界交差エリア544は、同軸上に整列している。
【0536】
図5Hは、スタイラスの極角が入力面540に対して鋭角となる配向にあるとき(例えば、左に傾けたとき)の、先端電界交差エリア542と環状電界交差エリア544との相対位置を示す。具体的には、先端電界交差エリア542は、
図5Gに示す位置と実質的に同一なままであるが、環状電界交差エリア544は、左に移動している。
【0537】
図5Iは、スタイラスの極角が入力面540に対して鋭角となる配向にあるとき(例えば、右に傾けたとき)の、先端電界交差エリア542と環状電界交差エリア544との相対位置を示す。具体的には、先端電界交差エリア542は、
図5Gに示す位置と実質的に同一なままであるが、環状電界交差エリア544は、右に移動している。
【0538】
先端電界交差エリア及び環状電界交差エリアの場所に基づいて、スタイラスの場所を特定する動作は、次のように完了させ得るが、以下に提示する実施形態は、電子デバイスによるスタイラスの場所特定課程において用い得る、多くの方法及び手法のうちの1つに過ぎないことが理解される。同様に、以下に提示する式及び手法は単なる例に過ぎず、以下に提示するものに関連する又は関連していない多くの方法及び式を、本明細書に記載のスタイラスの場所特定課程において用い得ることが理解される。
【0539】
図5Jは、
図5Gのスタイラスについて、電子デバイスの入力面の平面に対するスタイラスの角度位置である、方位角φ及び極角θを具体的に示す図である。
【0540】
これらの実施形態では、概論的かつ広義には、電子デバイスは、先端信号に対する、入力面540に関連する多くのセンサをスキャンする。一群の隣接し合うセンサがすべて、先端信号の存在を検出したと推定される場合、電子デバイスは、この群の幾何中心を推定することができる。上述のとおり、一群の隣接し合うセンサは、典型的には、円形となる。その後、電子デバイスは、先端電界発生部の場所の代わりに、入力面540の原点に対する、その群の幾何中心の座標、より一般的には、スタイラスの先端部分が入力面540に接触した点を記録する。例えば、直交座標系において、半径rの円の幾何中心(x
c、y
c)は、円周に対応する少なくとも2つの推定点(x
m1,y
m1)及び(x
m2,y
m2)を、以下の連立方程式に代入することにより推定することができる。
【数3】
【0541】
上に提示した連立方程式を解くことができる。幾何中心の座標(xc,yc)の2つの変数だけが未知である。このようにして、電子デバイスは、先端電界交差エリア542の幾何中心546を計算することによって、入力面540上のスタイラスの場所を判定できる。
【0542】
先端電界交差エリア542、及び環状電界交差エリア544の場所に基づいて、スタイラスの角度位置(例えば、方位角φ及び極角θ)を判定する動作は、次のように完了させ得るが、以下に提示する実施形態は、電子デバイスによりスタイラスの角度位置を判定する課程において用い得る、多くの方法及び手法のうちの1つに過ぎないことが理解される。
【0543】
例えば、先端電界交差エリア542の幾何中心546の直交座標が、(x
t,y
t)であり、環状電界交差エリア544の幾何中心548の直交座標が、(x
r,y
r)であり、先端電界発生部512と環状電界発生部514とを隔てる距離が、dである場合、スタイラスの極角θを推定する方法の1つを、以下のようにモデル化し、近似することができる。
【数4】
【0544】
この場合において、先端電界交差エリア542及び環状電界交差エリア544の中心間の距離が、先端電界発生部と環状電界発生部とを隔てる距離にほぼ等しい場合(例えば、スタイラスが入力面上で可能な限り倒されている場合)、この逆コサイン演算により、0ラジアンに近い極角θが得られる。
【0545】
あるいは、先端電界交差エリア542及び環状電界交差エリア544の中心間の距離が、ほぼ0に等しい(例えば、スタイラスが入力面に対して垂直になっている)場合、上記逆コサイン演算により、
【数5】
ラジアン、即ち90度に近い極角θが得られる。
【0546】
同様に、スタイラスの方位角φも計算できる。理解し得るように、方位角φは、直交座標系の横軸(例えば、x軸)に平行な基準ベクトル
【数6】
などの、任意の好適なベクトル量を参照して推定され得る。入力面540の平面に対して平行な任意の好適な基準ベクトルを選択し得ることを理解することができるであろう。例えば、場合によっては、直交座標系の縦軸(例えば、y軸)に対して平行な基準ベクトル
【数7】
を用いてもよい。他の例では、任意の角度の基準ベクトルを用いてもよい。
【0547】
先端電界交差エリア542の中心(x
t,y
t)と、環状電界交差エリア544の中心(x
r,y
r)の中心を通って定義される、スタイラスのベクトル
【数8】
を、ドット積を求めるコサインの式に入力して、スタイラスのベクトルと軸ベクトルとの間の角度を推定することができる。例えば、この演算は、以下の式により行うことができる。
【数9】
【0548】
この場合において、先端電界交差エリア542の幾何中心546と環状電界交差エリア544の幾何中心548との間の横方向距離がほぼ0に等しい場合(例えば、極角θに関係なく、スタイラスが入力面の縦軸に対して実質的に平行である場合)、上記逆コサイン演算により、
【数10】
ラジアン、即ち90度に近い方位角φが得られる。
【0549】
あるいは、先端電界交差エリア542及び環状電界交差エリア544の中心間の縦方向距離が、ほぼ0に等しい(例えば、極角θに関係なく、スタイラスが入力面の横軸に対して実質的に平行である)場合、上記逆コサイン演算により、0ラジアン、即ち0度に近い方位角φが得られる。
【0550】
更に他の実施形態では、先端電界及び環状電界は、他の様式で発生されてもよい。例えば、
図5K~
図5Mは、それぞれ電子デバイスの入力面540と交差する、(同じ大きさの)先端電界516及び環状電界518を発生させているスタイラスの側面図が示されている。具体的には、これらの図は、入力面を横切ってスタイラスを傾けたときの、先端電界交差エリア542と環状電界交差エリア544との相対位置を示している(追加的にスタイラスを取り除いた上面図を共に示す)。
【0551】
図5Kは、スタイラスが入力面540に対して直角に配向されているときの、先端電界交差エリア542と環状電界交差エリア544との相対位置を示す。具体的には、先端電界交差エリア542及び環状電界交差エリア544は、同軸上に整列している。この例では、環状電界交差エリア544は、検出可能でなくてもよい。
【0552】
図5Lは、スタイラスの極角が入力面540に対して鋭角となる配向にあるとき(例えば、左に傾けたとき)の、先端電界交差エリア542と環状電界交差エリア544との相対位置を示す。具体的には、先端電界交差エリア542は、
図5Kに示す位置と実質的に同一なままであるが、環状電界交差エリア544は、左に移動している。
【0553】
図5Mは、スタイラスの極角が入力面540に対して鋭角となる配向にあるとき(例えば、右に傾けたとき)の、先端電界交差エリア542と環状電界交差エリア544との相対位置を示す。具体的には、先端電界交差エリア542は、
図5Kに示す位置と実質的に同一なままであるが、環状電界交差エリア544は、右に移動している。更なる例では、スタイラスの極角が小さくなるにつれて、例えば、
図5Nに示されているように、環状電界交差エリア544のサイズは大きくなり得る。
【0554】
概論的かつ広義には、
図6A~
図6Eは、本明細書に記載されているようなスタイラスのノーズピース及び先端電界発生部の様々な実施形態について言及する。ノーズピースは取り外し可能であってもよいし、交換可能であってもよいし、又はスタイラスに対して恒久的に固定されていてもよい。本明細書に記載の他の実施形態と同様に、ユーザは、電子デバイスの入力面を横切ってノーズピースを滑らせることにより、ノーズピース内に配置されている先端電界発生部により発生する先端電界の場所を変化させる。ノーズピースについては、耐久性があり、入力面を損傷させることのない接触をもたらすとともに、先端電界発生部を、入力面に対して正確かつ反復可能な位置に固定することが、概ね有利となり得る。
【0555】
図6Aは、スタイラスのノーズピース600aの断面図であり、先端電界発生部602の一例を具体的に示す図である。先端電界発生部602は、導電性材料から形成された、バルブ形状のポゴピンとして実装されている。先端電界発生部602のバルブは、丸みのある部分604と根元部606を含む。
【0556】
先端電界発生部602のバルブの丸みのある部分604は、実質的に半球形状となるように形成されている。それ故、これにより発生する(また、概ね丸みのある部分604が面している方向を向いた)電界は、実質的に球形となる。
【0557】
先端電界発生部602のバルブの根元部606は、丸みのある部分604から離れる方へテーパ状になるように形成されている。図示した実施形態において、根元部606は、階段状パターンに従ったテーパ形状を有するが、このことが、すべての実施形態において必須でなくてもよい。例えば、バルブの根元部606は、直線的なテーパ形状、又は指数関数的減衰関数に従うテーパ形状を有していてもよい。
【0558】
バルブの丸みのある部分604とは反対側の根元部606の端部において、根元部606は、保持リップ部608を含む。保持リップ部608は、先端電界発生部602内に画定されている空胴体内にて、先端電界発生部602のピン610を保持するように構成されていてもよい。付勢ばね612は、バルブの丸みのある部分604とは反対方向にピン610を付勢するように構成されていてもよい。ピン610は、剛性信号導管620の端部へと形成された、1つ以上の導電性トレースとの電気的接触を維持するように構成されている。一部の実施形態では、ピン610と剛性信号導管620との間に導電性ペースト又は導電性媒体を配置することにより、これら2つの構成要素間での導電性を高めるとともに、境界面における寄生容量を最小化する。
【0559】
一部の例では、剛性信号導管620は、先端電界発生部と境界を接する端部において、鋸歯状になっていたり、テクスチャーが付けられていたり、パターンが付けられていたり、ないしは別の方法で非平坦になっていてもよい。剛性信号導管620がこうした形状であることにより、上記2つの要素間での摩擦が大きくなり、これによって、偶発的な電気接続の切断を防止できる。他の場合には、剛性信号導管620の鋸歯形状により、ピン610と剛性信号導管620が接触し得る、表面積を増加させることができる。
【0560】
先端電界発生部602の丸みのある部分604は、所望の先端電界を作り出すように構成された金属、又は他の導電性材料から形成されていてよい。しかしながら、一部の実施形態では、丸みのある部分604の材料が硬すぎるために、表面に傷をつけたり、又は損傷させたりするリスクを負うことなく、デバイスの入力面を横切るように滑らせることが困難な場合がある。それ故、ノーズピース600aは、入力面に対して、信頼性が高く、かつ傷跡をつけることのない接触を提供するとともに、ノーズピース600aの構造的及び寸法的な完全性を維持するように構成された材料からなる1つ以上の層を含んでいてもよい。
【0561】
一部の実施形態では、ノーズピース600aは、先端電界発生部602の材料よりも硬度が低くてもよい材料からなる1つ以上の層から形成されていてよい。様々な材料からなる層により、ノーズピース600aに様々な電気的又は機械的特性がもたらされる。他の場合には、ノーズピース600aは、例えば、
図6Bに示したように、単一の材料から形成される。
【0562】
図6Aに戻ると、ノーズピース600aは、構造層614を含んでいてもよい。典型的には、構造層614は、ガラスドープしたプラスチック、アクリル、繊維強化したプラスチック又はポリマー、金属などの剛性の構造強化材料から形成されている。一部の実施形態では、構造層614は、例えば、ナイロン、Zytel、Kevlar、Rilsanなどを含むポリアミド系材料から形成される。構造層614は、ねじ山部分616を伴って形成することができる。ねじ山部分616は、ノーズピース600aを、本明細書に記載されているような電気機械結合及び/又は管状シールドに結合するように構成されている。ノーズピース600aは、使い捨て可能な、差し替え可能な又は交換可能な構成要素であってもよい。
【0563】
ノーズピース600aはまた、外部層618を含む。外部層618は、典型的には、プラスチック又はナイロンなどの非導電性材料から形成される。一部の実施形態では、外部層618は、構造的剛性のためにガラスなどの繊維材料でドープされ得るが、他の実施形態では、外部層618は、繊維又は他の補強材を実質的に含まない。繊維又は他の補強材を実質的に含まない外部層618は、より柔らかい入力面又は繊細なコーティング若しくは表面処理が施された入力面との接触に関して特に好適であり得る。場合によっては、外部層618の硬度は、電子デバイスの入力面の硬度よりも低くなるように選択される。一部の実施形態では、外部層618は、例えば、低デュロメータナイロン又は他のポリアミド、ポリエーテル(例えば、Pebax)、エラストマーなどを含む、より軟質のポリマーから形成される。外部層618は、構造層614の上に、構造層614と共に、あるいは構造層614から完全に分離させて、形成することができる。
【0564】
概論的かつ広義には、先端電界発生部602、外部層618及び構造層614は、任意の好適な製造プロセスを用いて、共に又は分離させて製造することができ、その製造プロセスには、二段階成形プロセス、共成形プロセス、オーバーモールディングプロセス、インサート成形プロセス又は任意の他の好適なプロセスなどが挙げられるがこれらに限定されないことが理解される。かかる製造プロセスにより、外部層618及び構造層614が1つ以上のアンダーカット又はインターロック機構を用いて機械的に結合することができ、また、2つの層の間に形成された隙間又は空隙を減少させることができる。一部の実施形態では、層のうち一方又は両方は、インサート成形製造プロセスを用いて、先端電界発生部602上に直接オーバーモールドされる。場合によっては、外部層618は、顔料着色された材料の装飾(又は機能)層でペイントするか又はインク塗布することができる。
【0565】
このようにして、一旦スタイラスに組み付けられると、先端電界発生部602のピン610は、スタイラス内の剛性信号導管620と電気的に接触する。他の実施形態では、スタイラスのノーズピースを異なる方法で実装することができる。例えば、
図6Cは、先端電界発生部及び環状電界発生部の両方を含むスタイラスのノーズピースの断面図である。
【0566】
スタイラスのノーズピース600bは、ヘッドホンコネクタ又はプラグ(例えば、先端・環状スリーブコネクタ又は先端・環状・環状スリーブコネクタ)の形状のような、軸方向の電気接続の形状をとるように形成される。ノーズピース600bは、使い捨て可能な、差し替え可能な又は交換可能な構成要素であってもよい。ノーズピース600bは、先端電界発生部622及び環状電界発生部624を含む。この実施形態では、ノーズピース600bは、略円筒形状を有するが、このことが、すべての実施形態において必須でなくてもよい。
【0567】
先端電界発生部622は、バルブ形状のインサートとして実装される。先端電界発生部622は、丸みのある端部626及び根元端部628を含む。
【0568】
図6Aに示したポゴピンの実施形態と同様に、先端電界発生部622の丸みのある端部626は、略半球形状となるように形成される。それ故、これにより発生する(また、丸みのある端部626が向く方向に概ね配向されている)電界は、略球形となる。
【0569】
先端電界発生部622の根元端部628は、丸みのある端部626から離れる方へテーパ状になるように形成される。図示した実施形態において、根元端部628は、段状の指数関数的減衰パターンに従うことにより、テーパ形状を有するが、このことが、すべての実施形態において必須でなくてもよい。
【0570】
先端電界発生部622の丸みのある端部626の反対側にある根元端部628の先端において、根元端部628は、先端信号線630に接触する。先端信号線630は、ノーズピース600bの一端において露出している環状信号接点636に電気的に接続される。
【0571】
ノーズピース600bはまた、環状電界発生部624を含む。図示した実施形態において、環状電界発生部624は、概ね円錐形状に形成されているが、このことが、すべての実施形態において必須でなくてもよい。環状電界発生部624は、それ自体がノーズピース600bの周囲を囲む環として露出した環状信号接点636に結合され得る、環状信号線634に電気的に結合される。
【0572】
第1の接地信号線638は、先端信号線630及び環状信号線634の両方の周りに配置される。第2の接地信号線640は、先端信号線630と環状信号線634との間に配置される。このようにして、第1の接地信号線638及び第2の接地信号線640は、先端信号線630及び環状信号線634の両方を電磁シールドする。第1の接地信号線638及び第2の接地信号線640はそれぞれ、第1の接地信号接点642及び第2の接地信号接点644において終端し、接地信号接点はそれぞれ、ノーズピース600bの周囲を囲む環として露出している。
【0573】
この実施形態の明確な理解を促進するために、
図6D及び
図6Eを提供する。
図6Dは、第1の接地信号線638及び第2の接地信号線640を省いたノーズピース600bを示す図であり、先端信号線630及び環状信号線634をより明確に示す図である。ノーズピース600bの本体は、透視で提示される。同様に、
図6Eは、先端信号線630及び環状信号線634を省いたノーズピース600bを示す図であり、第1の接地信号線638及び第2の接地信号線640をより明確に示す図である。ノーズピース600bの本体は、透視で提示される。
【0574】
理解され得るように、先端信号線630、環状信号線634、第1の接地信号線638及び第2の接地信号線640、先端信号接点632、環状信号接点636、第1の接地信号接点642並びに第2の接地信号接点644はすべて、導電材料から形成される。ノーズピース600bの本体は、電気絶縁材料から形成されている。
【0575】
一実施形態では、先端電界発生部622は、ノーズピース600bのニブ646内に成形される。ニブ646は、導電性プラスチック又はポリマー材料から形成される。ニブ646の硬度は、電子デバイスの入力面の硬度よりも低くなるように選択される。剛性向上のために、ニブ646は、ガラスなどの繊維材料でドープされ得る。
【0576】
ニブ646は、ノーズピース600bの本体を形成するために使用される材料とは異なる材料から形成することができ、ノーズピース600bは、ガラスでドープしたプラスチック、アクリル、金属などの剛性材料から形成することができる。
【0577】
多くの場合、根元端部628のテーパ形状は、ニブ646と先端電界発生部622とが効果的に接合するように選択される。
【0578】
概論的かつ広義には、
図6C~
図6Eの実施形態で示した先端電界発生部622及び任意の他の構成要素は、任意の好適な製造プロセスを用いて、共に又は分離させて製造することができ、その製造プロセスには、二段階成形プロセス、共成形プロセス、オーバーモールディングプロセス、インサート成形プロセス又は任意の他の好適なプロセスなどが挙げられるがこれらに限定されないことが理解される。
【0579】
他の実施形態は、他の構成をとることができる。
図6Fは、スタイラスのノーズピース600cの断面図であり、先端電界発生部648の一例を具体的に示す図である。先端電界発生部648は、バルブ形状のインサートとして実装される。本明細書に記載した他の実施形態と同様、先端電界発生部648のバルブは、丸みのある部分650及び根元部652を含む。
【0580】
先端電界発生部648のバルブの丸みのある部分650は、略半球形状となるように形成される。それ故、これにより発生する(また、丸みのある部分650が向く方向に概ね配向されている)電界は、略球形となる。
【0581】
先端電界発生部648のバルブの根元部652は、丸みのある部分650から離れる方へテーパ状になるように形成される。図示した実施形態において、根元部652は、階段状パターンに従うことによって、テーパ形状を有するが、このことが、すべての実施形態において必須でなくてもよい。例えば、バルブの根元部652は、直線的なテーパ形状、又は指数関数的減衰関数に従うテーパ形状を有していてもよい。多くの場合、根元部652のテーパ形状は、先端電界発生部648と別の要素(例えば、構造層など)とが効果的に接合するように選択される。
【0582】
本明細書に記載した他の実施形態と同様、ノーズピース600cは、1つ以上の材料層から形成される。様々な材料層により、ノーズピース600cに様々な電気的又は機械的特性がもたらされる。例えば、ノーズピース600cは、構造層654を含むことができる。構造層654は、ガラスでドープしたプラスチック、アクリル、金属などの剛性材料から形成されてもよい。構造層654は、ねじ山部分656を伴って形成することができる。ねじ山部分656は、ノーズピース600cを、本明細書に記載されているような調整エンジン及び/又は管状シールドに結合するように構成されてもよい。多くの場合、根元部652のテーパ形状は、構造層654と先端電界発生部648とが効果的に接合するように選択される。
【0583】
ノーズピース600cはまた、インク層658を含む。インク層658は、非導電性ペイントから形成されてもよい。乾燥インク層の硬度は、電子デバイスの入力面の硬度よりも低くなるように選択することができる。
【0584】
概論的かつ広義には、先端電界発生部648、インク層658及び構造層654は、任意の好適な製造プロセスを用いて、共に又は分離して製造することができ、その製造プロセスには、二段階成形プロセス、共成形プロセス、オーバーモールディングプロセス、インサート成形プロセス又は任意の他の好適なプロセスなどが挙げられるがこれらに限定されないことが理解される。
【0585】
このようにして、一旦スタイラスに組み付けられると、先端電界発生部648の根元部652は、スタイラス内の剛性信号導管660と電気的に接触する。ノーズピース600cは、使い捨て可能な、差し替え可能な又は交換可能な構成要素であってもよい。
【0586】
先端電界発生部648は、任意の好適な導電材料から製造することができる。例えば、先端電界発生部648は、導電性シリコーン、導電性ナイロン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェンなどが挙げられるがこれらに限定されない、導電性のポリマーであり得る。
【0587】
更に他の実施形態では、先端電界発生部648は、異なる方法で実装することができる。例えば、
図6Gに示すように、先端電界発生部662は、導電性ポゴピン664を少なくとも部分的に導電材料666内に付着させることによって形成される。導電材料666は、導電性ポリマー又はプラスチックであり得る。剛性向上のために、導電材料666は、ガラスなどの繊維材料でドープされ得る。
【0588】
本明細書に記載した他の実施形態と同様、ノーズピース600dは、1つ以上の材料層から形成される。様々な材料層により、ノーズピース600dに様々な電気的又は機械的特性がもたらされる。例えば、ノーズピース600dは、構造層668を含むことができる。構造層668は、ガラスでドープしたプラスチック、アクリル、金属などの剛性材料から形成されてもよい。構造層668は、ノーズピース600dを本明細書に記載されているような調整エンジン及び/又は管状シールドに結合するように構成されたねじ山部分を伴って形成することができる。ノーズピース600dは、使い捨て可能な、差し替え可能な又は交換可能な構成要素であってもよい。ノーズピース600dの導電材料666及び/又は構造層668の外側にインク層670で被覆することができる。
【0589】
一部の例では、導電性ポゴピン664は、支持カラー672によってノーズピース600d内に支持される。支持カラー672は、ポリマー材料、エラストマー材料、金属、アクリル、セラミック、繊維強化材料などが挙げられるがこれらに限定されない、任意の数の好適な材料から形成することができる。剛性向上のために、支持カラー672は、ガラスなどの繊維材料でドープされ得る。支持カラー672は、導電材料666と同一の材料から形成することができるが、これは必須ではない。例えば、多くの実施形態では、支持カラー672は、異なる材料から形成される。一部の例では、導電材料666のために選択される材料は、支持カラー672のために選択される材料よりも軟らかい。
【0590】
概論的かつ広義には、先端電界発生部602、支持カラー672、構造層668、導電性ポゴピン664及び導電材料666は、任意の好適な製造プロセスを用いて、共に又は分離して製造することができ、その製造プロセスには、二段階成形プロセス、共成形プロセス、オーバーモールディングプロセス、インサート成形プロセス又は任意の他の好適なプロセスなどが挙げられるがこれらに限定されないことが理解される。例えば、これらの実施形態では、支持カラー672を、二段階成形プロセスの第1の内側射出成形部と称することができ、導電材料666を、第2の外側射出成形部と称することができる。
【0591】
図6A~
図6Gに示す実施形態、並びに様々な代替形態及び変更形態についての前述の記載は、概ね、説明を目的として提示しており、また、本明細書に開示されるスタイラスの実施形態での使用のための先端電界発生部及び/又は環状電界発生部を含む可能なノーズピースの概略的理解を深めるためのものである。しかし、本明細書に提示する具体的な詳細の中には、具体的に記載する実施形態又はその等価物の実践のために、必須でなくてもよいものがあることが当業者には明らかとなるであろう。
【0592】
より一般的には、
図3A~
図6Gに示す実施形態、並びに様々な代替形態及び変更形態についての前述の記載は、概ね、説明のためのものであり、また、本明細書に記載の実施形態によるスタイラスの先端部分の可動部及び土台部の両方の概略的理解を深めるためのものである。これらの様々な構成要素(ノーズピース、力感知構造体、調整エンジン、剛性導管などを含むがこれらに限定されない)は、数多くの実装固有の方法でともに組み立てられてもよいことが理解される。
【0593】
しかしながら、これらの構成要素の1つの可能な組み立てに関する理解を深めるために、
図7を提示する。
図7は、スタイラスの断面図であり、特に先端を力エンジンの力感知構造体に接続し、先端電界発生部及び環状電界発生部のための信号経路を提供する調整エンジンを示す図である。
【0594】
スタイラス700は、その一端でテーパ状になっている胴体702を含む。ノーズピース704は、隙間706によってテーパ状端部で本体から分離されている。力がノーズピース704によって受容されるとき、ノーズピース704は、胴体702に向かって移動し、それによって、隙間706の幅が低減される。ノーズピース704は、負荷移行ナット710に当接できるように管状シールド708のねじ山部分上にねじ込まれる。負荷移行ナット710は、ノーズピース704が管状シールド708から不要に外れてしまうことを防止する。負荷移行ナット710はまた、胴体702に対するノーズピース704の屈曲又はねじれを制限してもよい。具体的には、
図7の断面図に関して、負荷移行ナット710は、ノーズピース704に付与された側面又は非軸方向の力から生じる上下方向におけるノーズピース704の動きを制限することができる。
【0595】
管状シールド708は、力感知構造体712の一部に機械的に結合される。力感知構造体712は、部分的に接地されるかないしは別の方法でシャーシ714に対して固定される。シャーシ714は、胴体702に堅固に結合される。力感知構造体712は、シャーシ714の一部に溶接された片持ち脚部716を含み、それによって、機械的に接地するかないしは別の方法で片持ち脚部716の一端をシャーシ714に固定する。力感知構造体712はまた、片持ち脚部716の非接地又は非固定端部と結合された横方向ベッド部718を含む。このようにして、横方向ベッド部718(及びそれに結合された任意の物体)は、胴体702内で横方向に並進運動することができる。横方向ベッド部の横方向並進運動は、
図7に関して、概ね水平方向の動きを指すことができる。1つ以上の補剛材720を、横方向ベッド部718に結合することができる。
【0596】
横方向ベッド部718は、管状シールド708が結合することができる力感知構造体712の一部である。加えて、管状シールド708は、開口部722を画定する片持ち脚部716を通って少なくとも部分的に延在してもよい。このようにして、管状シールド708(及びそれに結合された任意の物体)は、横方向ベッド部718により横方向に並進運動することができる。
【0597】
このようにして、力がノーズピース704によって受容されたとき、ノーズピース704は、受容した力を管状シールド708に伝達し、それにより管状シールド708は、その力を力感知構造体712の横方向ベッド部718に伝達して、これらの構成要素のそれぞれを横方向に並進運動させて、隙間706の幅を低減させる。しかしながら、片持ち脚部716の固定された脚は、応答して移動しなくてもよく、それ故に、片持ち脚部716は、受容された力に応答して変形する。
【0598】
シャーシ714は、フランジ付きナット724に結合されてもよい(例えば、溶接されてもよい)。ワッシャ726は、フランジ付きナット724とシャーシ714との間に位置決めすることができる。他の例では、ワッシャ726は、発泡体パッドであってもよい。支持カラー728は、フランジ付きナット724のねじ山上にねじ込まれるため、支持カラー728は、胴体702の内側面上に画定された内部リップ730に当接する。言い換えると、支持カラー728は、内部リップ730との間及びシャーシ714との連続した機械的接続を提供し得る。
【0599】
管状シールド708は、支持カラー728及びフランジ付きナット724の両方を通って延在する。加えて、第2の負荷移行ナット732は、管状シールド708上に位置決めできるため、ノーズピース704が中立位置にあるとき(例えば、力を受容しないとき)、第2の負荷移行ナット732は、第2の隙間734だけフランジ付きナット724から分離している。第2の隙間734は、隙間706より小さくてもよい。
【0600】
このようにして、強い大きさの力がノーズピース704によって受容されるとき、ノーズピース704は、受容された力を管状シールド708に伝達し、それにより管状シールド708は、その力を力感知構造体712の横方向ベッド部718に伝達して、これらの構成要素のそれぞれを横方向に並進運動させる。アセンブリが第2の隙間734を閉鎖するほど十分な距離を並進運動すると、アセンブリは、第2の負荷移行ナット732及びフランジ付きナット724によってそれ以上の並進運動が停止されてもよい。このようにして、力感知構造体712が受け得るピーク機械的負荷は、第2の負荷移行ナット732とフランジ付きナット724との相対位置によって制御される。
【0601】
管状シールド708は、中空である。剛性導管736は、管状シールド708内に延在して、先端信号を先端電界発生部738に送達し、更に、環状信号を環状電界発生部740に送達する。
【0602】
図7に図示した実施形態並びに様々な代替形態及び変形形態の上記説明は、概ね、説明を目的として提示しており、また、本明細書に開示されているようなスタイラスの1つの可能なアセンブリの概略的理解を容易にするために提示している。しかしながら、本明細書に提示する具体的な詳細の中には、具体的に記載する実施形態又はその等価物の実践のために、必須でなくてもよいものがあることが当業者には明らかとなるであろう。
【0603】
概論的かつ広義には、
図8A~
図8Cは、本明細書に記載されているようなスタイラスのフレキシブル回路基板の様々な実施形態について言及する。
図8Aは、スタイラスの薄いフォームファクタで受信するために折り畳むことができるコントローラ基板セットの平面図を示す図である。
【0604】
コントローラ基板セット800は、基板を含んでもよく、基板の上に又は基板を介して1つ以上の電子構成要素が配置される。これらの構成要素は、表面実装又は貫通孔構成要素であってもよい。基板は、単層回路基板、多層回路基板又はフレキシブル回路基板であってもよい。一部の例では、1つ以上の補剛材で剛性にしたフレキシブル回路基板を使用することができる。
【0605】
図示した実施形態では、コントローラ基板セット800は、1つ以上のフレキシブル回路で接続される基板を含む。第1の制御基板802は、1つ以上の可撓性コネクタ806を介して第2の制御基板804に結合することができる。多くの場合、第1の制御基板802及び第2の制御基板804は、実質的に同じ形状をとる。このようにして、第2の制御基板804は、(
図8Aの線F-Fに沿って見たとき、
図8Bに示したように)第1の制御基板802の下方に折り畳むことができる。その後、基板間の選択した距離を保持する方法で、第1の制御基板802及び第2の制御基板804を共に締結することができる。
【0606】
一実施形態では、第1の制御基板802及び第2の制御基板804は、第1の支持棒808、第2の支持棒810及びスペーサ812を用いて、共に締結することができる。第1の支持棒808及び第2の支持棒810は、それぞれ、折り畳まれた基板の上縁部及び下縁部に配置されてもよい。スペーサ812は、第1の制御基板802と第2の制御基板804との概ね中間に位置付けることができる。
【0607】
第1の支持棒808及び第2の支持棒810は、ねじなどの1つ以上の機械的締め具によって基板に締結することができる。多くの実施形態では、第1の支持棒808は横長の穴808a及び縦長の穴808bを画定する。横長の穴808a及び縦長の穴808bのうち一方又は両方は、第1の支持棒808を部分的に通って又は完全に通ってのいずれかで延在することができる。横長の穴808a及び縦長の穴808bのうち一方又は両方は、ねじ山付きであり得る。
【0608】
同様に、第2の支持棒810は、横長の穴810a及び縦長の穴810bを画定する。横長の穴810a及び縦長の穴810bのうち一方又は両方は、第2の支持棒810を部分的に通って又は完全に通ってのいずれかで延在することができる。横長の穴810a及び縦長の穴810bのうち一方又は両方は、
図8Bに示したとおりのねじ814、816などの締め具を受容するようにねじ山を付けることができる。
【0609】
他の場合には、第1の支持棒808及び第2の支持棒810は、接着剤を用いて基板に接着される。場合によっては、第1の支持棒808及び/又は第2の支持棒810は、一方の又は両方の基板の回路グランドに電気的に接続することができる。
【0610】
更に他の場合、第1の支持棒808及び第2の支持棒810は、
図8Cに示したように、基板に表面装着、はんだ付け、ホットバー接続ないしは別の方法で機械的に固着される。場合によっては、第1の支持棒808及び/又は第2の支持棒810は、電気接続818を介して一方の又は両方の基板の回路グランドに電気的に接続することができる。
【0611】
図8A~
図8Cに示す実施形態、及び様々な代替形態及び変更形態についての前述の記載は、概ね、説明を目的として提示しており、また、本明細書に開示されるスタイラスの本体又は胴体内に含まれてもよい1つの折り畳み回路基板セットの概略的理解を容易にするために提示する。しかしながら、本明細書に提示する具体的な詳細の中には、具体的に記載する実施形態又はその等価物の実践のために、必須でなくてもよいものがあることが当業者には明らかとなるであろう。例えば、図示された実施形態は、ほぼ等しい幅の2つの回路基板を示すが、より多くの回路基板を記載の方法で共に折り畳むことができることが理解される。
【0612】
概論的かつ広義には、
図9A~
図9Dは、本明細書に記載のようなスタイラスのブラインドキャップにより隠すことができる電源コネクタの異なる実施形態について言及する。これらの実施形態では、ブラインドキャップは、磁気引力を介して電源コネクタに付着している。
図9Aは、スタイラスの電源コネクタ900及び非使用時に電源コネクタを隠すためのキャップを図示する。電源コネクタ900は、プラグ902、カラー904及び本体906を含む。
【0613】
プラグ902は、スタイラスの胴体から延在する。ブラインドキャップ908は、プラグ902を覆って設置することができ、スタイラスの胴体に装飾用端子を設けると同時にプラグ902が損傷しないように保護する。
【0614】
プラグ902は、スタイラス内のバッテリパックの再充電を容易にするために電子デバイスの電力及び/又はデータポートに結合するように構成することができる。他の場合には、プラグ902は、スタイラスと電子デバイスとの間でデータ(例えば、ファームウェア更新、認証パケット、機密保護証明書など)を交換するために使用することができる。多くの場合、プラグ902は、雌型レセプタクルと嵌合するように構成された雄型コネクタであるが、これはすべての実施形態において必須でなくてもよい。他の場合には、プラグ902は、雄型コネクタと係合するように構成された雌型レセプタクルであってもよい。これらの実施形態では、ブラインドキャップ908は、レセプタクル内に適合するように構成された雄型延長部分を含んでもよい。
【0615】
プラグ902は、強磁性である少なくとも1つの要素を含んでもよい。他の場合には、プラグ902は、永久磁石又は選択的に制御可能な電磁石を含むことができる。このようにして、ブラインドキャップ内に配置された強磁性部材及び/又は永久磁石に対して、プラグ902を引きつけることができる。
【0616】
プラグ902は、可撓性(カラー904内で横方向に移動可能)であるように構成できるため、電子デバイスに接続されたときに、スタイラスは、別の方法でスタイラス及び/又は電子デバイスを損傷させる可能性がある一定の力に抵抗し、かつ耐えることができる(例えば、
図11A及び
図11Bを参照)。多くの場合、プラグ902は、1つの自由度(例えば、左右などの2方向)において可撓性である。他の実施形態では、プラグ902は、2つの自由度(例えば、左右及び上下などの4方向)などの複数の自由度において可撓性である。
【0617】
更に、プラグ902は、マルチピンでありかつ標準化された電源コネクタとして図示されているが、そのようなコネクタが必須ではないことが理解されよう。特に、一部の実施形態では、Lightningコネクタ、ユニバーサルシリアルバスコネクタ、Firewireコネクタ、シリアルコネクタ、Thunderboltコネクタ、ヘッドホンコネクタ、又は任意の他の好適なコネクタを使用することができる。
【0618】
一部の実施形態では、電源コネクタ900は、非使用時に胴体内に、手動で又は自動でのいずれかで、かつ部分的に又は完全にのいずれかで後退することができる。一部の例では、電源コネクタ900は、プッシュ・プッシュ機構に接続することができる。
【0619】
ブラインドキャップ908は、任意の好適な形状をとることができる。図示したように、ブラインドキャップ908は、カプセルの半分(例えば、半球で覆われた円筒)の形状をとる。ブラインドキャップ908は、カラー904によって画定されたチャネル内に据えられるように構成することができるリング910を含む。ブラインドキャップ908はまた、ブラインドキャップ908内の圧力を周囲環境の圧力に正常化するように構成することができる圧力抜き孔912を含む。言い換えると、圧力抜き孔912は、場合によっては、スタイラスの胴体からブラインドキャップ908を押し出すことができる圧力差の拡大を防止かつ/又は軽減するように構成することができる。一部の実施形態では、圧力抜き孔912は、それを通して気流を調整及び/ないしは別の方法で制御する弁(図示せず)を含むことができる。
【0620】
多くの実施形態では、カラー904は、スタイラスの胴体と同じ材料から形成される。他の場合には、カラー904は、金属などの異なる材料から形成される。場合によっては、カラー904は、熱処理金属であってもよい。多くの実施形態では、カラー904は、低透磁性を有するが、これは必須ではない。多くの場合、カラー904は、カラー904をプラグ902の外部面に直接接続するシール(図示せず)を含んでもよい。シールは、プラグ902がカラー内で移動することを可能にでき、シールは、プラグ902の金属部分をカラー904の非金属部分に接続することができる。他の実施形態では、カラー904は、プラグ902に異なる方法で結合することができる。場合によっては、カラー904は、回路グランドと結合できるか又はスタイラス内のセンサ回路と結合できるため、スタイラスは、ブラインドキャップ908がスタイラスの胴体に取り付けられているかどうかを判定することができる。
【0621】
カラー904は、スタイラス又は電源コネクタ900の1つ以上の構成要素に構造的支持をもたらすことができる。例えば、カラー904は、スタイラスの胴体を少なくとも部分的にシールすることが可能である。しかしながら、他の場合には、カラー904は、スタイラス又は電源コネクタ900に構造上の支持体を提供することは必須でなくてもよい。例えば、場合によっては、カラー904は、電源コネクタ900の取り付けが、カラー904のみに依存するものではない(例えば、装飾又は他の非構造的形体)ように構成されてもよい。これらの場合、カラー904が破損した(例えば、クラック、破壊、剥離などの)場合、電源コネクタ900は、スタイラスの胴体に取り付けられたままであり、機能的なままであってもよい。
【0622】
いくつかの実施形態では、カラー904は、スタイラスの製造業者又はユーザを識別するために役立てられるシンボル、テキスト、又はパターンを含むように刻印又はエッチングすることができる。
【0623】
図9Bは、線G-Gを通る断面図で示される
図9Aの電源コネクタ900及びブラインドキャップ908を示し、電源コネクタ900は、少なくとも部分的に、強磁性材料から形成することができる。カラー904は、ポッティングされた接合部914を含む。ポッティングされた接合部914は、電源コネクタ900から1つ以上のリード916に延在する回路基板を電気的に結合する。更に、ポッティングされた接合部914は、カバーされ、コーティングされ、ないしは別の方法でポッティングされ、かつ/又はシリコーン、ポリマー、若しくはエラストマーなどの可撓性材料でシールされる。ポッティングされた接合部914は、1つ以上のリード916へその動きを伝送することなく、電源コネクタ900の制限された動きを可能にする。
【0624】
1つ以上のリード916は、電源コネクタ900の後部から本体906の端部に延在する、リリーフスリーブ918を介して、ポッティングされた接合部914から延在する。リリーフスリーブ918は、復帰ばね920によって囲まれている。
【0625】
このように、電源コネクタ900が、電子デバイスに接続され、スタイラスにトルクが加えられた場合、当該トルクは、リリーフスリーブ918及び復帰ばね920内に伝送され、スタイラスの胴体(図示せず)が電源コネクタ900から離れる方向へ少なくとも部分的に撓むことを可能にする。この構成により、スタイラスが電子デバイスに接続する際、スタイラスが一定量のトルクを受容及び/又は吸収することができる。電源コネクタ900のこの可撓性により、スタイラスと関連する電子デバイスの両方に対する損傷を防止することができる。
【0626】
多くの実施形態において、ブラインドキャップ908は、概ね湾曲した外形を有するガイド928を含む。ガイド928の湾曲した外形により、電源コネクタ900をブラインドキャップ908と位置合わせするように促す。
【0627】
ブラインドキャップ908はまた、1つ以上の磁石を含む。図示した実施形態において、磁石は、磁石930a、930bとして識別される。1つ以上の磁石930a、930bは、電源コネクタ900に引きつけられ、それによって、ガイド928を介して電源コネクタ900を引っ張り、ブラインドキャップ908を電源コネクタ900に固定する。磁気分路932は磁石の後方に位置付けられる。磁気分路932は、透磁性の高い材料から形成されている。このように、磁気分路932は、磁石930a、930bの磁束をプラグ902に向けて後方へ向け直す。同様に、磁気分路932は、磁石930a、930bの磁束をブラインドキャップ908の丸みのある端部から離れるように向け直す。場合によっては、磁気分路932は、磁石930a、930bの後側に取り付けられた透磁性シート(例えば、鉄、コバルト鉄など)である。他の場合には、磁気分路932は、半球形状のような、特定の形状になってもよい。
【0628】
多くの例において、磁石930a、930bは、極性が互いに反対であるブラインドキャップ908内に固定することが可能である。本構成により、磁束がガイド928に向かって集中することができ、それにより、プラグ902へのより強い磁気引力を呈する。
【0629】
いくつかの実施形態では、接着剤934は、磁石930a、930bの面にガイドリング936を取り付ける。ガイドリング936は、磁石930a、930bに向かってプラグ902を誘導することができる。他の実施形態において、ガイドリング936は、ガイド928に結合することができる。
【0630】
上述のとおり、磁石930a、930bは、プラグ902内の強磁性要素に引き寄せられるように構成される。これらの要素は、プラグ902内に具体的に含むことができ、あるいは、プラグ902の構造的支持体及び/又は機能性のために別様で必要な要素であり得る。
【0631】
他の実施形態は、他の方法で実装されてもよい。例えば、磁石930a、930bは、
図9Cに示すように、ガイド928の外面に配置されてもよい。この実施形態では、磁石930cとして標識された第3のより大きい磁石は、ガイド928の開口端を覆うことができる。他の実施形態において、磁石930a、930b及び930cは、
図9Dに示すように、単一の大きな磁石930dと置き換えられてもよい。
【0632】
更に、上述の多くの実施形態では、ブラインドキャップ908及び(かような磁石がブラインドキャップ、プラグ、又は両方の内部にあるかどうかに関わらず)スタイラスの本体から延在するプラグ902との間の磁気吸引力について言及しているが、他の実施形態では、本明細書に記載の実施形態と一貫する異なる方法でブラインドキャップをスタイラスに結合することができることを理解されたい。例えば、他の実施形態において、磁気引力は、ブラインドキャップとプラグとの間の締まり嵌めにより、置き換えるか、かつ/又は補うことが可能である。例えば、ブラインドキャップ908の内側側壁から延在する1つ以上の突起は、プラグによって画定された1つ以上の戻り止め902a、902bの中にセットすることが可能である。他の場合には、ブラインドキャップ908は、ねじ接続部によりプラグ902に接続可能である。別の実施形態では、ブラインドキャップ908は、スナップ嵌合接続によりプラグ902に接続可能である。
【0633】
概論的かつ広義には、
図10A~
図10Hは、本明細書に記載のようなスタイラスのブラインドキャップにより隠すことができる電源コネクタの異なる実施形態について言及する。これらの実施形態は、スタイラスのプラグ1002に取り付け、かつプラグ1002を隠すように構成されているブラインドキャップ1000を示す。ブラインドキャップ1000は、外部面及びブラインドキャップ1000の内容積を画定する本体1004を含む。多くの例において、本体1004は、ポリマー材料で形成されるが、これは必須でなくてもよい。
【0634】
いくつかの実施形態では、本体1004は、プラグ1002の形体と境界を接するように構成された1つ以上の突起(例えば、戻り止め)(図示されず)を有して形成可能である。他の場合には、本体1004は、プラグ1002の形体と境界を接するように構成された1つ以上のばねを含むことができる。板ばねを組み込んでいる本体1004を示している特定の例示的な実施形態を
図10A~
図10Cに示し、フープスプリングを組み込んでいる本体1004を示している特定の例示的な実施形態を
図10D~
図10Hに示している。更に他の実施形態においては、ばねの他の構成を使用してもよい。
【0635】
図10Aは、プラグ1002を隠すためのスタイラスのプラグ1002及びブラインドキャップ1000の断面図であり、特に、ブラインドキャップ1000の本体1004内で、板ばね1006a、1006bとして図に標識された板ばねの構成を示している。板ばね1006a、1006bは、本体1004の内側面から延在し、
図10Bに示すように、プラグ1002内の対応する戻り止めと係合するように構成されている。戻り止め1008a、1008bは、任意の好適な形状をとることができる。
【0636】
多くの実施形態において、板ばね1006a、1006bは、金属で形成されている。板ばね1006a、1006bは、本体1004の中にインサート成形することができる。他の場合には、板ばね1006a、1006bは、ブラインドキャップ1000の製造中に、本体1004の中にインサート可能である。これらの例において、板ばね1006a、1006bは、本体1004の内部に恒久的に固着されてもよい。
【0637】
板ばね1006a、1006bは、本体1004の基体から延在するリングから延在するように、
図10A及び
図10Bに図示されているが、この構成は、すべての実施形態に必須ではないが、例えば、板ばね1006a、1006bは、
図10Cに示すように、リングとは別個の部品であってもよい。この実施形態では、板ばね1010a、1010bは、戻り止め1008a、1008bと接触するように下方に延在している。
【0638】
他の場合には、ブラインドキャップ1000をプラグ1002に保持するために、他のばね及び/又は他のばねタイプを使用することができる。例えば、
図10D~
図10Eは、ブラインドキャップ1000及びその断面図を示す。ブラインドキャップ1000の本体1004は、円形状のフープスプリングを含む。円形状のフープスプリングは、フープスプリング1012として特定される。いくつかの実施形態では、フープスプリング1012は、ブラインドキャップ1000の本体1004の基体から外側に延在する装飾用又は機能性のあるリングの一部(例えば、リング1014)であってもよい。他の場合には、
図10Dに示すように、フープスプリング1012は、リング1014とは別個の要素であってもよい。
【0639】
図10D~
図10Eに示すように、フープスプリング1012は、
図10Fに示すように、戻り止め1008a、1008bと係合するように構成された、くぼみ1016a、1016bとして特定される2つのくぼみを含む。
【0640】
図10A~
図10Cに示す板ばねと同様に、フープスプリング1012は、金属で形成することができる。場合によっては、フープスプリング1012は、本体1004にインサート成形することができる。他の場合には、フープスプリング1012は、ブラインドキャップ1000の製造中に、本体1004の中にインサート可能である。これらの例において、フープスプリング1012は、本体1004の内部に恒久的に固着されてもよい。
【0641】
フープスプリング1012は、リング1014の一部であってもよい。他の場合には、フープスプリング1012は、リング1014とは別個であってもよい。更に、フープスプリング1012は、単一の連続的なリングとして示されているが、かような構成はすべての実施形態で必須ではない。例えば、フープスプリング1012は、
図10Gに示すように、フープスプリング部1014a、1014bとして標識される複数の部品に分割することができる。他の場合には、
図10Hで示すように、複数のフープスプリングを使用することができる。この実施形態では、フープスプリング1018a、1018bとして識別される2つのフープスプリングを含む。
【0642】
図10A~
図10Hに示す実施形態、及び様々な代替形態及び変更形態についての前述の記載は、概ね、説明のためのものであり、締まり嵌め手法を使用して、ブラインドキャップをスタイラスに取り付ける様々な方法の概略的理解を深めるためのものである。しかしながら、本明細書に提示する具体的な詳細の中には、具体的に記載する実施形態又はその等価物の実践のために、必須でなくてもよいものがあることが当業者には明らかとなるであろう。例えば、図示した実施形態は、磁気要素のない様々なばね構成を示しているが、
図10A~
図10Hで示す実施形態のうちいずれかは、ブラインドキャップのスタイラス本体への取り付けを改善するために、
図9A~
図9Dに示すような1つ以上の磁石を組み込んでもよいということを理解されたい。
【0643】
本明細書に図示及び記載の実施形態のうち多くは、概ね、電源コネクタを非使用時に、スタイラスの電源コネクタ(例えば、プラグ)を隠すブラインドキャップについて言及する。上述のとおり、スタイラスの電源コネクタは、スタイラス内のバッテリを充電するために使用してもよい。概論的かつ広義には、
図11A~
図11Fは、外部電子デバイスから電力を受信するスタイラスの電源コネクタの様々な例示的な実施形態を示している。
【0644】
例えば、
図11Aは、電子デバイス1100を示している。電子デバイス1100は、スタイラス1102の電源コネクタに結合可能な電力ポートを組み込んでいる。場合によっては、
図9A~
図9Dに関連して、上記のように、スタイラス1102が電子デバイス1100に接続されると、スタイラス1102の電源コネクタは、可撓性であってもよく、スタイラス1102に印加された力Fに応答して曲がるように構成されてもよい。例えば、
図11Bは、力Fに応答して曲がるスタイラス1102を示している。
【0645】
他の場合には、スタイラス1102は他の方法で充電することができる。例えば、スタイラス1102は、
図11Cに示すように、ドック1104に結合可能である。ドック1104は、データ又は電源ケーブル1106を介して別の電子デバイス又は電子アウトレットに結合可能である。別の例では、
図11Dに示すように、スタイラス1102は、データ又は電源ケーブル1106にアダプタ1108を介して直接結合している。
【0646】
更に他の実施形態においては、スタイラス1102は、他の実施形態で記載されているように、電源コネクタを含まなくてもよい。特に、スタイラス1102は、
図11E及び
図11Fに示すように、スタイラス1102の胴体に配置された接点を介して、データ及び/又は電力を電子デバイスから受信してもよい。この実施形態では、電子デバイス1100は、接点群1110として
図11Eに標識された、1つ以上の外部電気接点を含むことができる。同様に、スタイラス1102は、接点群1112として
図11Eに標識された、1つ以上の対応する外部電気接点を含んでいる。
【0647】
接点群1110は、接点群1112とインターフェースで接続し、スタイラス1102と電子デバイス1100との間のデータ及び/又は電力処理を容易にするように構成されている。したがって、接点群1110及び接点群1112は、典型的には、同じ数の離散している接点を有する。しかしながら、他の実施形態において、接点群1110及び接点群1112は、異なる数の接点を有してもよい。
【0648】
いくつかの実施形態では、電子デバイス1100は、
図11Fに示すように、接点群1110が接点群1112とインターフェース接続する(例えば、嵌合する)ような方法で、スタイラス1102を電子デバイス1100に引きつけるように構成された1つ以上の磁石を含む。別の例では、スタイラス1102はまた、スタイラス1102を電子デバイス1100へ引きつけるように構成された磁石を含んでもよい。
【0649】
図11A~
図11Fに示す実施形態、及び様々な代替形態及び変更形態についての前述の記載は、概ね説明のためのものであり、スタイラスの内蔵バッテリを充電する様々な方法の概略的理解を深めるためのものである。しかしながら、本明細書に提示する具体的な詳細の中には、具体的に記載する実施形態又はその等価物の実践のために、必須でなくてもよいものがあることが当業者には明らかとなるであろう。
【0650】
更に、本明細書に記載の多くの実施形態は、それぞれが特定のハードウェアを含む、スタイラス及び電子デバイスを組み込んだユーザ入力システムについて言及するが、この開示は特定の装置又はシステムに限定されない。反対に、本明細書で開示された様々な要素は、数多くの好適かつ実装固有の方法で修正されてもよいということを当業者には理解されよう。言い換えると、本明細書に記載の多くの実施形態は、ユーザ入力システム、スタイラス、電子デバイスなどを動作させ、制御、構成、較正、使用、及び/又は製造する方法に関し、概ねこれについて言及することを当業者には理解されるであろう。これらの図に関して記載及び/又は図示された様々な動作は、あらゆる場合において網羅的であることを意図していないことが理解され得るが、このように、
図12~
図24は、本明細書に記載された特定の例示的な方法の概略的理解を容易にするために提供されている。
【0651】
図12は、電子デバイスの入力面に触れるスタイラスの場所を特定し、スタイラスの角度位置を推定するプロセス1200の動作を示すフローチャートである。プロセス1200は、
図1A~
図1Dを参照して説明した電子デバイス202及び/又は
図2A~
図2Fを参照して説明した電子デバイス102などであるが、これらに限定されない任意の好適な電子デバイスによって実行することができる。
【0652】
概論的かつ広義には、プロセスは、先端信号が電子デバイスのセンサ層によって受信される動作1202で開始する。次に、動作1204において、先端信号交差エリアが推定される。多くの実施形態において、電子デバイスは、動作1202において先端信号を受信するセンサ層の複数の(静電容量式センサノードなどの)センサノードのそれぞれの場所を推定することによって、先端信号交差エリアを推定する。
【0653】
次に、動作1206において、環状信号が、電子デバイスのセンサ層によって受信される。次に、動作1208において、環状信号交差エリアが推定される。多くの実施形態において、電子デバイスは、動作1206において環状信号を受信するセンサ層の複数の(静電容量式センサノードなどの)センサノードのそれぞれの場所を推定することによって、環状信号交差エリアを推定する。
【0654】
次に、動作1210において、先端信号交差エリア及び環状信号交差エリアを使用して、入力面上のスタイラスの場所を特定し、入力面の平面に対するスタイラスの角度位置を推定する。多くの実施形態において、入力面上のスタイラスの場所を特定する動作は、入力面上の定義された原点に対する直交座標を推定することを含む。入力面の平面に対してのスタイラスの角度位置を推定する動作は、スタイラスの、入力面の平面に平行なベクトルに対して、かつスタイラスの、入力面の平面に直交する(例えば、垂直な)ベクトルに対して、それぞれ、方位角及び極角を含む球面座標のセットを含む。
【0655】
図13は、スタイラスによって電子デバイスの入力面上に印加された力を推定するプロセス1300の動作を示すフローチャートである。プロセス1300は、
図1A~
図1Dを参照して説明したスタイラス104及び/又は
図2A~
図2Fを参照して説明したスタイラス204などであるが、これらに限定されない任意の好適なスタイラスによって実行することができる。
【0656】
プロセスは、反作用力がスタイラスの先端(例えば、ニブ)で受容される動作1302で開始する。次に、動作1304において、スタイラスの先端に機械的に結合された力感知構造体の電気的性質を推定する。電気的性質は、抵抗、キャパシタンス、蓄積電荷、インダクタンス、又は任意の他の好適な電気的性質であってもよい。
【0657】
次に、動作1306において、推定される電気的性質を、スタイラスの先端が受容する力の大きさ(例えば、反作用力)に相関させる。相関演算は、任意の数の好適な手法を使用して実行することができる。場合によっては、電気的性質は、力感知構造体に加えられた力で線形に変化し、他の場合には、電気的性質は、力感知構造体に加えられた力で指数関数的に変化する。
【0658】
次に、動作1308において、反作用力の推定される大きさは、任意の好適な符号化又は非符号化フォーマットを使用してベクトル量又はスカラ量としてスタイラスによって加えられる力の大きさとして、(例えば、電子デバイスに)伝達される。
【0659】
図14は、本明細書に記載されたスタイラスを製造するプロセス1400の動作を示すフローチャートである。プロセスは、信号発生部が調整エンジンに接続される動作1402で開始する。信号発生部は、
図3Aに示す実施形態に関して説明した制御基板342などの制御基板であり得る。
【0660】
次に、動作1404において、フレックス回路を信号発生部に結合してもよい。場合によっては、フレックス回路と信号発生部との間の接続は、恒久的であり、別の場合においては、接続は、取り外し可能であってもよい。例えば、フレックス回路は、ホットバーを介して信号発生部にはんだ付けすることができる。他の場合には、フレックス回路のコネクタは、信号発生部のポートに取り付けることができる。更に他の場合には、フレックス回路に取り付けられたポートは、信号発生部に結合されたコネクタに取り付けることができる。
【0661】
次に、動作1406において、フレックス回路は、
図3Aに示した実施形態に関して記載された歪み感知電極338などの歪み応答要素に結合されてもよい。場合によっては、フレックス回路は、歪み応答要素に接続するために、ある角度で曲がっていてもよい。
【0662】
次に、動作1408において、フレックス回路は、
図3Aに示した実施形態に関して記載された処理ユニット回路基板セット356などの処理ユニットに結合されてもよい。場合によっては、フレックス回路は、処理ユニットに接続するために、ある角度で曲がっていてもよい。
【0663】
次に、動作1410において、処理ユニットは、
図3Aに示した実施形態に関して記載された電力制御基板388などの電源サブシステムに結合されてもよい。
【0664】
図15は、スタイラスの低電力モードを終了させるプロセス1500の動作を示すフローチャートである。プロセス1500は、
図1A~
図1Dを参照して説明したスタイラス104及び/又は
図2A~
図2Fを参照して説明したスタイラス204などであるが、これらに限定されない任意の好適なスタイラスによって実行することができる。プロセスは、力の表示がスタイラス内の力感知構造体によって受け取られる動作1502で開始する。この例では、スタイラスは、低電力モードにある。力の表示は、
図13に示す方法に関して記載されたように、推定される力の大きさであってもよい。他の場合には、力の表示は、力が受容されたというバイナリ表示ないしは別の方法の粗表示であってもよい。次に、動作1504において、スタイラスは、低電力モードを終了させる。その後、動作1506及び1508において、スタイラスは、先端信号及び環状信号をそれぞれ発生させてもよい。
【0665】
図16は、スタイラスの低電力モードに入るプロセス1600の動作を示すフローチャートである。プロセス1600は、
図1A~
図1Dを参照して説明したスタイラス104及び/又は
図2A~
図2Fを参照して説明したスタイラス204などであるが、これらに限定されない任意の好適なスタイラスによって実行することができる。プロセスは、ユーザが少なくともある時間(例えば、タイムアウト期間)、スタイラスを操作していないことをスタイラスが推定する動作1602で開始する。スタイラスは、電子デバイスとの通信(又はその欠如)に基づいてこの推定を行うことができる。他の場合には、スタイラスは、スタイラス内の動きセンサから得られたセンサデータ又はセンサ入力に基づいてこの推定を行うことができる。動きセンサは、加速度計、ジャイロスコープ、又は任意の他の好適な動きであってもよい。他の場合には、スタイラス内の力感知構造体が力を受容していないことを推定することにより、スタイラスは、ユーザがスタイラスを操作していないことを、推定することができる。
【0666】
タイムアウト期間が経過したと推定した後、スタイラスは、低電力モードに入ることができる。この例では、スタイラスは、動作1604に示すように、先端信号の発生を停止することができる。更に、スタイラスは、動作1606に示すように、環状信号の発生を停止することができる。その後、動作1608において、スタイラスは、低電力モードに入る。低電力モードは、スタイラスがユーザによって能動的に操作されている場合よりも少ない電力量を消費するスタイラスの設定であってもよい。一部の例では、複数の低電力モードが可能である。例えば、第1のタイムアウトに達した後、スタイラスは、第1の低電力モードに入ることができる。その後、第2のタイムアウトに達した後、スタイラスは、第2の低電力モードに入ることができる。
【0667】
場合によっては、スタイラスによって入力される低電力モード又は複数のモードは、スタイラスのバッテリの電流容量に依存することができる。他の場合には、スタイラスは、電子デバイスからの直接的な通信の後、1つ以上の低電力モードに入ることができる。例えば、電子デバイスは、電子デバイスがスタイラスからの入力を受け入れる必要のない、又はスタイラスからの入力を受け入れるように構成されていないプログラム又はアプリケーション状態に入る場合に、スタイラスに信号を送ることができる。一つの例において、タッチスクリーンを有する電子デバイスは、キーボード入力がユーザから要求された場合、スタイラスにかような信号を送ってもよい。別の場合には、電子デバイスは、電子デバイスを動作させているユーザがグラフィックデザインアプリケーションからフォトブラウジングアプリケーションに切り替えた場合、スタイラスにかような信号を送ってもよい。更に他の例では、電子デバイスは、タイムアウト期間が経過したという電子デバイスの推定に基づいて、スタイラスにかような信号を送ることができる。
【0668】
電子デバイスからかような信号を受信すると、スタイラスは、低電力モードに入ることができる。多くの実施形態において、信号は、Bluetoothインターフェース、赤外線インターフェース、音響インターフェース、又は任意の他の好適な無線インターフェースなどの無線通信インターフェースを介して電子デバイスからスタイラスに送信される。
【0669】
他の場合には、電子デバイスは、電子デバイスが低電力モードに入ると、スタイラスに信号を送信することができる。例えば、電子デバイスは、電子デバイスを動作させているユーザが電子デバイスの電源を切断するか、又は待機状態に入る場合、かような信号をスタイラスに送ることができる。更に他の実施形態では、スタイラスは、スタイラスの向きが特定の閾値を超えていることを推定した後、低電力モードに入ることができる。例えば、スタイラスが表面上に平坦に横たわっている(例えば、極角がゼロである)と推定すると、スタイラスは低電力モードに入ることができる。更に他の実施形態では、スタイラスは、スタイラスが電力ポートに接続されており、
図9D及び
図9Eに示すように、電力を受信していることを推定した後、低電力モードに入ることができる。
【0670】
図17は、スタイラスを充電するようにユーザに通知するプロセス1700の動作を示すフローチャートである。プロセス1700は、
図1A~
図1Dを参照して説明したスタイラス104及び/又は
図2A~
図2Fを参照して説明したスタイラス204などであるが、これらに限定されない任意の好適なスタイラスによって実行することができる。プロセスは、スタイラスのバッテリが一定の最小閾値を下回ったと、スタイラスが推定する動作1702で開始する。次に、動作1704において、スタイラスは、スタイラスが充電を必要としていることを関連する電子デバイスに伝達することができる。
【0671】
図18は、電子デバイスでスタイラスを充電するプロセス1800の動作を示すフローチャートである。プロセス1800は、
図1A~
図1Dを参照して説明したスタイラス104及び/又は
図2A~
図2Fを参照して説明したスタイラス204などであるが、これらに限定されない任意の好適なスタイラスによって実行することができる。プロセスは、スタイラスがデータポートコネクタに差し込まれ、電力を受け取る準備ができていることをスタイラスが推定する動作1802で開始する。次に、動作1804において、スタイラスは、定電流高速充電モードに入ることができる。この例では、スタイラス内のバッテリを急速に充電することができる。
【0672】
一部の実施形態では、スタイラスは、バッテリの現在の充電状況に関連する情報を伝達するために、インジケータを点灯させることができる。例えば、スタイラスは、バッテリの充電中には、赤色又はオレンジ色のインジケータを点灯させることができる。一旦バッテリが充電されると、スタイラスは、緑色のインジケータを点灯させることができる。他の例では、スタイラスは、インジケータの輝度を定期的に調節することができる。他の例では、スタイラスは、スタイラスが充電中であることをユーザに伝達するために、インジケータに動きのある表現をさせる(animate)ことができる(例えば、呼吸パターンでインジケータの輝度を大きく又は小さくする)。
【0673】
図19は、スタイラスが充電されたことをユーザに通知するプロセス1900の動作を示すフローチャートである。プロセス1900は、
図1A~
図1Dを参照して説明したスタイラス104及び/又は
図2A~
図2Fを参照して説明したスタイラス204が挙げられるがこれらに限定されない、任意の好適なスタイラスによって実行することができる。プロセスは、スタイラスに収容されたバッテリが完全に又はほぼ完全に充電されたことをスタイラスが推定する動作1902で開始する。次に、動作1904において、スタイラスは、任意の好適なコード化フォーマット又は非コード化フォーマットを使用して、スタイラスが充電されたことを電子デバイスに伝達する。
【0674】
図20は、タッチ入力モード又はスタイラス入力モードのいずれかで電子デバイスを動作させるプロセス2000の動作を示すフローチャートである。プロセス2000は、
図1A~
図1Dを参照して説明した電子デバイス102及び/又は
図2A~
図2Fを参照して説明した電子デバイス202が挙げられるがこれらに限定されない、任意の好適な電子デバイスによって実行することができる。
【0675】
プロセスは、電子デバイスがタッチ入力モードに入る動作2002で開始する。タッチ入力モードにある場合、電子デバイスは、ユーザから1回のタッチ又は複数回のタッチ入力を受けるように構成されてもよい。かかる入力を受けるために、電子デバイスは、動作2004において、ユーザのタッチから生じる容量性干渉を検出するために、調整エンジン(例えば、
図2A~
図2Fを参照して説明した調整エンジン220)を構成することができる。
【0676】
次に、動作2006において、電子デバイスは、スタイラス入力モードに入る。スタイラス入力モードにある場合、電子デバイスは、1つ以上のスタイラスの場所を特定し、スタイラスの角度位置を推定するように構成されてもよい。かかる入力を受けるために、電子デバイスは、動作2008において、環状電界信号及び先端電界信号を検出するために、調整エンジンを構成することができる。
【0677】
図21は、タッチ入力モード及びスタイラス入力モードの両方で電子デバイスを動作させるプロセス2100の動作を示すフローチャートである。プロセス2100は、
図1A~
図1Dを参照して説明した電子デバイス102及び/又は
図2A~
図2Fを参照して説明した電子デバイス202が挙げられるがこれらに限定されない、任意の好適な電子デバイスによって実行することができる。プロセスは、電子デバイスがハイブリッド入力モードに入る動作2102で開始する。ハイブリッド入力モードにある場合、電子デバイスは、ユーザからのタッチ入力(例えば、1回のタッチ又は複数回のタッチ)を受けることに加えて、1つ以上のスタイラスの場所を特定し、スタイラスの角度位置を推定するように構成されてもよい。かかるハイブリッド入力を受けるために、電子デバイスは、動作2104において、ユーザのタッチから生じる容量性干渉に加えて環状電界信号及び先端電界信号を検出するために、調整エンジンを構成することができる。
【0678】
図22は、入力面上のスタイラスの場所を特定する際に、傾斜誘発性オフセットを補償するプロセス2200の動作を示すフローチャートである。プロセス2200は、
図1A~
図1Dを参照して説明した電子デバイス102及び/又は
図2A~
図2Fを参照して説明した電子デバイス202が挙げられるがこれらに限定されない、任意の好適な電子デバイスによって実行することができる。
【0679】
図22に示す方法は、電子デバイスの入力面が本明細書に記載されているようなスタイラスの先端電界及び環状電界の存在を検出する電子デバイスのセンサ層からある程度の距離だけ離間している実施形態での使用に好適であり得る。理解され得るように、入力面とセンサ層とを離間させる距離により、先端電界交差エリアがスタイラスの極角及び/又は方位角に基づいてずれる場合がある。入力面とセンサ層との間の距離から生じるオフセットは、概ね、「傾斜誘発性オフセット」と称される。
【0680】
プロセスは、スタイラスの角度位置が推定される動作2202で開始する。次に、動作2204において、電子デバイスは、スタイラスの推定場所をスタイラスの角度位置に基づいて補正する。
【0681】
図23は、圧力抜き孔を組み込んだブラインドキャップを製造するプロセスの動作を示すフローチャートである。方法2300は、ブラインドキャップが成形される動作2302で開始する。ブラインドキャップは、射出成形、転写成形、吹込み成形などが挙げられるがこれらに限定されない任意の好適なプロセスを用いて成形することができる。多くの実施形態では、ブラインドキャップは、内部機構を伴って成形されてもよい。例えば、一実施形態では、ブラインドキャップの内側上面に一連のスポークを成形してもよい。スポークは、ブラインドキャップの長手方向軸線を中心に半径方向に分配されてもよい。
【0682】
次に、動作2304において、ブラインドキャップを機械加工してもよい。特に、1つ以上のチャネルを、ブラインドキャップの上部内に機械加工することができる。一実施形態では、チャネルは、概ね、円形形状を有するが、これは必須ではない。多くの実施形態では、チャネルは、ブラインドキャップの内容積を外側に接続させる、ブラインドキャップを貫通する開口を少なくとも部分的に形成する深さに形成される。例えば、ブラインドキャップが一連の内側スポークを伴って成形されている場合、チャネルは、これらのスポーク間の空間を露出させつつ、スポークを所定位置に保持するように形成されてもよい。
【0683】
次に、動作2306において、1つ以上の圧力抜き孔を、動作2304において形成されたチャネルのベース内に機械加工してもよい。場合によっては、圧力抜き孔の機械加工は、必須でなくてもよい。
【0684】
図24は、複数のモードでユーザ入力システムを動作させるプロセスの動作を示すフローチャートである。方法は、本明細書に記載されているようなスタイラス又は本明細書に記載されているような電子デバイスによって実行することができる。方法は、概論的かつ広義には、スタイラスにおける省電力化に関し、これは、特定の時点におけるスタイラスの特定の動作状態である場合に特に必要とされないスタイラスの機構を選択的に非アクティブ化させることによって実現され得る。具体的な一例では、例えば、スタイラスを使用してディスプレイ上のユーザインタフェース要素を選択する場合、スタイラスは、スタイラスの角度位置の判定を必要としないモードで動作可能であってもよい。かかる動作モードにある場合、電子デバイスの環状電界は、スタイラス内の電力を節約するために非アクティブ化させてもよい。
【0685】
他の場合には、スタイラスにおける省電力化は、特定の時点における電子デバイスの特定の入力要件である場合に特に必要とされないスタイラスの機構を選択的に非アクティブ化させることによって実現され得る。具体的な一例では、例えば、電子デバイスが位置情報のみを受信するように構成されている(例えば、一定の太さで線を描く)場合、電子デバイスは、スタイラスの角度位置の判定を必要としないモードで動作可能であってもよい。かかる動作モードにある場合、電子デバイスの環状電界は、スタイラス内の電力を節約するために非アクティブ化されてもよい。
図24は、かかる方法を示す図である。
【0686】
方法2400は、入力形式が判定される動作2402で開始する。入力形式は、電子デバイスの動作状態と関連していてもよい。例えば、電子デバイスは、スタイラスから得た場所及び角度位置情報を疑似鉛筆からの入力として解釈するモードで動作可能であってもよい。この例では、スタイラスの場所は、疑似鉛筆の線又はストロークの経路に対応することができ、角度位置情報は、鉛筆の線又はストロークの幅及び/又は陰影特性に対応することができる。このモードは、「鉛筆入力モード」と称される場合がある。
【0687】
別の例では、電子デバイスは、スタイラスからの場所情報のみを疑似ペンからの入力として解釈するモードで動作可能であってもよい。この例では、スタイラスの場所は、疑似ペンの経路に対応し、角度位置情報は、いかなる方法においても、線の幅又は特性に影響を及ぼさない。このモードは、「ペン入力モード」と称される場合がある。
【0688】
更に別の例では、電子デバイスは、スタイラスからの場所情報のみをユーザの指からの入力として解釈するモードで動作可能であってもよい。この例では、スタイラスの場所は、タッチ入力に対応し、角度位置情報は、タッチ入力に影響を及ぼさない。このモードは、「タッチ入力モード」と称される場合がある。
【0689】
更なる実施形態では、電子デバイスは、数多くの追加的モードで動作可能であってもよく、追加的モードとして、万年筆入力モード、蛍光ペン入力モード、チャコール入力モード、パレットナイフ入力モード、ブラシ入力モード、チゼル入力モード、ユーザインタフェース選択入力モード、ゲーム入力モード、ジョイスティック入力モードなどが挙げられるがこれらに限定されない。これらの入力モードのうち、場所情報及び角度位置情報の両方を必要とするモードもあるが、場所情報のみを必要とするモードもある。
【0690】
電子デバイスの入力モードは、スタイラスの入力形式に対応し得る。スタイラスは、場所のみの入力と、場所及び角度位置の入力との2種類の入力形式を提供するように動作可能であってもよい。
【0691】
したがって、動作2402において、方法2400は、どの入力形式が必要とされているか又は特定の時間にどの入力形式が要求されているかを判定する。次に、動作2404において、スタイラスは、判定された入力形式が場所情報及び角度位置情報の両方を必要とするかを判定することができる。両方が必要とされる場合、方法2400は、動作2406に進み、スタイラスは、環状電界及び先端電界の両方をアクティブ化させる。場所情報のみが必要とされる代替形態では、方法2400は、動作2408に進み、スタイラスは、先端電界のみをアクティブ化させ、環状電界を非アクティブ化させる。
【0692】
多くの実施形態を上記で開示してきたが、本明細書に記載の方法及び技術に関して提示した動作及び工程は、例示として意図されており、したがって、限定するものではないことが理解されるであろう。特定の実施形態において、代替的な工程の順序又はより少ない若しくは追加的な工程が実施されてもよいことが更に理解されるであろう。
【0693】
以上の開示は、種々の例示的な実施形態及び実施例に関して述べたが、個々の実施形態のうち1つ以上で述べた種々の特徴、態様及び機能性は、ここに述べた特定の実施形態への適用に限定されるものではなく、むしろ、そのような実施形態が説明されたかどうかに関わらず、かつそのような特徴がここに述べた実施形態の一部分として提示されたかどうかに関わらず、本発明の1つ以上の実施形態に対して単独で又は種々の組み合わせで適用できることを理解されたい。したがって、本発明の広さと範囲は、上述した例示的実施形態のいずれによっても限定されず、本明細書で提示された特許請求の範囲によって定義される。