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特許7123225抗I型インターフェロン受容体(IFNAR)抗体のための固定用量レジメン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】抗I型インターフェロン受容体(IFNAR)抗体のための固定用量レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220815BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220815BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220815BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220815BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZMD
A61P29/00 101
A61P37/02
C07K16/28 ZNA
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021112707
(22)【出願日】2021-07-07
(62)【分割の表示】P 2020174325の分割
【原出願日】2013-06-12
(65)【公開番号】P2021167336
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】61/659,138
(32)【優先日】2012-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒッグズ,ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,イホン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ロスコス,ローリン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,リンダ
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-514150(JP,A)
【文献】国際公開第2011/028933(WO,A1)
【文献】WANG, D.D. et al.,J Clin Pharmacol,2009年,Vol.49, No.9,p.1012-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全身性エリテマトーデス(SLE)を有する患者を治療する方法において使用するための医薬組成物であって、IFNAR1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含み、該患者に300mg~1000mgの範囲の固定用量の抗体またはその抗原結合断片を提供するように投与され、該抗体またはその抗原結合断片が疾患組織、末梢血またはその組合せにおけるI型IFN遺伝子シグネチャを抑制するものであり、抗体が配列番号1および配列番号2のアミノ酸配列を含み、4週間毎に1回、単回投与で投与される、上記医薬組成物。
【請求項2】
前記I型IFN遺伝子シグネチャが、IFI6、RSAD2、IFI44、IFI44L、IFI27、MX1、IFIT1、HERC5、ISG15、LAMP3、OAS3、OAS1、EPST1、IFIT3、LY6E、OAS2、PLSCR1、SIGLEC1、USP18、RTP4、およびDNAPTP6からなる群から選択される少なくとも4つの薬力学(PD)マーカー遺伝子の上方制御された発現または活性を含んでなる、請求項1に記載の方法において使用するための医薬組成物。
【請求項3】
前記I型IFN遺伝子シグネチャが、遺伝子IFI27、IFI44、IFI44L、およびRSAD2の上方制御された発現または活性を含んでなる、請求項1に記載の方法において使用するための医薬組成物。
【請求項4】
前記I型IFN遺伝子シグネチャが、遺伝子IFI6の上方制御された発現または活性をさらに含んでなる、請求項3に記載の方法において使用するための医薬組成物。
【請求項5】
前記固定用量が、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、および1000mgからなる群から選択される、請求項1に記載の方法において使用するための医薬組成物。
【請求項6】
前記疾患組織が皮膚である、請求項1に記載の方法において使用するための医薬組成物。
【請求項7】
前記抑制が、完全抑制である、請求項1に記載の方法において使用するための医薬組成物。
【請求項8】
前記抑制が、部分的抑制である、請求項1に記載の方法において使用するための医薬組成物。
【請求項9】
前記抗体またはその抗原結合断片が、静脈内、筋肉内、皮下、またはそれらの組み合わせで投与される、請求項1に記載の方法において使用するための医薬組成物。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合断片が、前記固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与に先だつ対象のI型IFN遺伝子シグネチャと比較して、前記I型IFN遺伝子シグネチャを少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%または少なくとも40%抑制する、請求項1に記載の方法において使用するための医薬組成物。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合断片が、集団中の平均I型IFN遺伝子シグネチャと比較して、前記I型IFN遺伝子シグネチャを少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%または少なくとも40%抑制する、請求項1に記載の方法において使用するための医薬組成物。
【請求項12】
抗体がMEDI-546またはその抗原結合断片を含む、請求項1に記載の方法において使用するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固定用量の抗インターフェロン受容体抗体によって、全身性エリテマトーデス、強皮症、狼瘡性腎炎、および筋炎などの自己免疫疾患を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
I型インターフェロン(IFN)は、14IFN-αサブタイプ、IFN-β、-ω、および-κをはじめとする一群のサイトカインであり、それらは全て、抗ウイルスまたは抗腫瘍機能に関与する。全身性硬化症(SSc、強皮症)、全身性エリテマトーデス(SLE)、原発性シェーグレン、関節リウマチ、ならびに筋炎をはじめとする、いくつかの自己免疫障害の病因におけるI型IFNの潜在的役割。
【0003】
SLEは、炎症、組織および臓器障害をもたらす、多様な自己抗原を標的にする自己反応性抗体によって特徴付けられる、慢性リウマチ性疾患である。I型IFNの役割は、SLE発症に関係があるとされている。SScは、皮膚、筋肉、および内臓器官をはじめとする複数の系に影響を及ぼす、結合組織のリウマチ性疾患である。SLE同様、I型IFN誘導性遺伝子の過剰発現と、SSc患者の皮膚および/または血液中の形質細胞様樹状細胞富化によって確認される、増大したI型IFN活性は、SScの病因において役割を果たす(Fleming et al.,PLoS One 3:e1452(2008);Coelho et al.,Arch.Dermatol.Res.299:259-262(2007);Tan et al.,Rheumatology(Oxford)45:694-702(2006);Duan et al.,Arthritis Rheum.58:1465-1474(2008))。これらの観察は、動物モデル研究を含めたその他のデータと共に、I型IFNシグナル伝達が、SLEおよびSScの双方における実現可能な治療標的であることを示唆している(Tan et al.,Rheumatology(Oxford)45:694-702(2006);28.Crow,Rheum.Dis.Clin.North Am.36:173-186(2010);York et al.,Arthritis Rheum.56:1010-1020(2007))。
【0004】
血清または血漿中のI型IFNは、測定が容易でない。他方、I型IFN誘導性遺伝子は、改善された感受性および特異性で、好都合に測定し得る(Bengtsson et al.,Lupus 9:664-671(2000);Dall’era et al.,Ann.Rheum.Dis.64:1692-1697(2005);Kirou et al.,Arthritis Rheum.50:3958-3967(2004))。いくつかの明確に定義されたI型IFNシグネチャを使用して、I型IFN活性と、SLEまたはSSc病因(Eloranta et al.,Ann.Rheum.Dis.69:1396-1402(2010))、疾患活動性(Bilgic et al.,Arthritis Rheum.60:3436-3446(2009))が関連づけられており、ならびにSLEにおける抗IFN-α治療法の薬物-標的相互作用(すなわち薬物動力学、PD)が評価されている(Yao et al.,Arthritis Rheum.60:1785-1796(2009);Yao et al.,Hum.Genomics Proteomics 2009:374312(2009);Yao et al.,Arthritis Res.Ther.12(Suppl 1):S6(2010))。SLEおよびSScの双方で、末梢血と罹患組織間のI型IFN経路の活性化および一致を示す部分母集団を同定する、I型IFNシグネチャの開発(Higgs et al.,Ann.Rheum.Dis.70:2029-2036(2011))は、双方の疾患におけるPDマーカーとしての、I型IFNシグネチャ使用の可能な効用を実証している。
【0005】
新薬の臨床開発は、成功確率が低い長期にわたる高価なプロセスであり、一般的印象に反して、生物学的薬物、特にモノクローナル抗体の臨床開発は、小分子治療薬に比べて迅速でもなく、また安価でもない(DiMasi et al.,Clin.Pharmacol.Ther.87:272-277(2010))。生物学的薬物の初期臨床開発、特に第I相は、小型分子よりもはるかにより長期にわたる。患者における初期研究からの不在の決定的効能シグナル、高感度で疾患に妥当な堅固な生物マーカーは、臨床結果の解釈を大幅に助け得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Fleming et al.,PLoS One 3:e1452(2008)
【文献】Coelho et al.,Arch.Dermatol.Res.299:259-262(2007)
【文献】Tan et al.,Rheumatology(Oxford)45:694-702(2006)
【文献】Duan et al.,Arthritis Rheum.58:1465-1474(2008)
【文献】Tan et al.,Rheumatology(Oxford)45:694-702(2006)
【文献】28.Crow,Rheum.Dis.Clin.North Am.36:173-186(2010)
【文献】York et al.,Arthritis Rheum.56:1010-1020(2007)
【文献】Bengtsson et al.,Lupus 9:664-671(2000)
【文献】Dall’era et al.,Ann.Rheum.Dis.64:1692-1697(2005)
【文献】Kirou et al.,Arthritis Rheum.50:3958-3967(2004)
【文献】Eloranta et al.,Ann.Rheum.Dis.69:1396-1402(2010)
【文献】Bilgic et al.,Arthritis Rheum.60:3436-3446(2009)
【文献】Yao et al.,Arthritis Rheum.60:1785-1796(2009)
【文献】Yao et al.,Hum.Genomics Proteomics 2009:374312(2009)
【文献】Yao et al.,Arthritis Res.Ther.12(Suppl 1):S6(2010)
【文献】Higgs et al.,Ann.Rheum.Dis.70:2029-2036(2011)
【文献】DiMasi et al.,Clin.Pharmacol.Ther.87:272-277(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SLEなどのI型IFN媒介疾患は、多様な疾患症状発現と、極めて変わりやすい疾患進行、再燃、および寛解を呈する。この不均一性のために、同様の経路活性化パラメータがある患者を同定して、異なる患者サブセットについて、最も適切な治療法を指定することが重要である。臨床開発を促進し、成功確率を改善するために、患者において容易に追跡またはモニターし得る、妥当で高感度の堅調なPDマーカーのセットは、初期臨床開発段階における用量設定のために非常に価値がある。このPDマーカーセットを適用する方法は、異なる疾患における標的発現と経路活性化の違いを考慮して、異なる適応症において臨床試験間の橋渡しを促進する、高度に価値あるツールになり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、固定用量の抗インターフェロンα受容体抗体を投与するステップを含んでなる、I型IFN媒介疾患または障害を有する対象を治療する方法を提供する。本開示はまた、対象中で、I型インターフェロン(IFN)遺伝子シグネチャ(GS)を抑制する方法も提供する。さらに本開示は、I型IFN媒介疾患または障害を有する対象において、疾患進行を予後診断およびモニターする方法、投薬計画を予測する方法、候補治療薬を同定する方法、治療薬の候補として患者を同定する方法、および個別化治療法をデザインする方法を提供する。これらの方法に従った、投薬計画および個別化治療法の選択もまた開示されている。
【0009】
いくつかの態様では、本開示は、(a)ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者から採取されたサンプル中のI型インターフェロン遺伝子シグネチャ(I型IFN GS)スコアを測定するステップと;(b)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップとを含んでなり、固定用量の抗体またはその断片が疾患または障害を効果的に治療する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法を提供する。
【0010】
その他の態様では、本開示は、(a)I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片をI型IFN媒介疾患または障害を有する患者に投与するステップと;(b)ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアを測定するステップと;(c)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップとを含んでなり、患者のI型IFN GSの抑制が治効を示唆する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法を提供する。
【0011】
特定の態様では、本開示は、(a)I型IFN媒介疾患または障害がある患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定にかけるステップと;(b)ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを測定結果から判定するステップと;(c)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップとを含んでなり、固定用量の抗体またはその断片が疾患または障害を効果的に治療する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法を提供する。
【0012】
いくつかの態様では、本開示は、(a)I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片をI型IFN媒介疾患または障害を有する患者に投与するステップと;(b)患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定にかけるステップと;(c)ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを測定結果から判定するステップと;(d)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップとを含んでなり、患者のI型IFN GSの抑制が治効を示唆する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法を提供する。
【0013】
その他の態様では、本開示は、(a)I型IFN媒介疾患または障害がある患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定およびベースラインI型IFN GSスコアとの比較にかけるステップと;(b)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップとを含んでなり、固定用量の抗体またはその断片が疾患または障害を効果的に治療する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法を提供する。
【0014】
特定の態様では、本開示は、(a)I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片をI型IFN媒介疾患または障害を有する患者に投与するステップと;(b)患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定およびベースラインI型IFN GSスコアとの比較にかけるステップと;(c)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップとを含んでなり、患者のI型IFN GSの抑制が治効を示唆する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法を提供する。
【0015】
いくつかの態様では、本開示は、(a)I型IFN媒介疾患または障害を有する患者から採取されたサンプルから、I型IFN GSスコアを測定するステップと;(b)ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを判定するステップと;(c)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を投与するように、保健医療提供者に指示するステップとを含んでなり、固定用量の抗体またはその断片が疾患または障害を効果的に治療する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法を提供する。
【0016】
その他の態様では、本開示は、(a)I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を投与されている、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者からサンプルを得るステップと;(b)サンプルからI型IFN GSスコアを測定するステップと;(c)ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを判定するステップと;(d)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるように、保健医療提供者に指示するステップを含んでなり、患者のI型IFN GSの抑制が治効を示唆する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法を提供する。
【0017】
特定の態様では、本開示は、(a)ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者から採取されたサンプル中のIFN GSスコアを測定するステップと;(b)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップとを含んでなり、抗体またはその抗原結合断片の投与が患者のI型IFN GSを抑制する、患者においてI型IFN GSを抑制する方法を提供する。
【0018】
いくつかの態様では、本開示は、(a)I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片をI型IFN媒介疾患または障害を有する患者に投与するステップと;(b)ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアを測定するステップと;(c)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップとを含んでなり、抗体またはその抗原結合断片の投与が患者のI型IFN GSを抑制する、患者においてI型IFN GSを抑制する方法を提供する。
【0019】
別の態様では、本開示は、(a)I型IFN媒介疾患または障害がある患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定にかけるステップと;(b)ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを測定結果から判定するステップと;(c)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップとを含んでなり、抗体またはその抗原結合断片の投与が患者のI型IFN GSを抑制する、患者においてI型IFN GSを抑制する方法を提供する。
【0020】
特定の態様では、本開示は、(a)I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片をI型IFN媒介疾患または障害を有する患者に投与するステップと;(b)患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定にかけるステップと;(c)ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを測定結果から判定するステップと;(d)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップとを含んでなり、抗体またはその抗原結合断片の投与が患者のI型IFN GSを抑制する、患者においてI型IFN GSを抑制する方法を提供する。
【0021】
いくつかの態様では、本開示は、(a)I型IFN媒介疾患または障害がある患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定およびベースラインI型IFN GSスコアとの比較にかけるステップと;(b)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップとを含んでなり、抗体またはその抗原結合断片の投与が患者のI型IFN GSを抑制する、患者においてI型IFN GSを抑制する方法を提供する。
【0022】
別の態様では、本開示は、(a)I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者に投与するステップと;(b)患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定およびベースラインI型IFN GSスコアとの比較にかけるステップと;(c)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップとを含んでなり、抗体またはその抗原結合断片の投与が患者のI型IFN GSを抑制する、患者においてI型IFN GSを抑制する方法を提供する。
【0023】
特定の態様では、本開示は、(a)I型IFN媒介疾患または障害を有する患者から採取されたサンプルから、I型IFN GSスコアを測定するステップと;(b)ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを判定するステップと;(c)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を投与するように、保健医療提供者に指示するステップとを含んでなる、患者においてI型IFN GSを抑制する方法であって、抗体またはその抗原結合断片の投与が患者のI型IFN GSを抑制する方法を提供する。
【0024】
いくつかの態様では、本開示は、(a)I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を投与されている、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者からサンプルを得るステップと;(b)サンプルからI型IFN GSスコアを測定するステップと;(c)ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを判定するステップと;(d)患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるように、保健医療提供者に指示するステップとを含んでなり、抗体またはその抗原結合断片の投与が患者のI型IFN GSを抑制する、患者においてI型IFN GSを抑制する方法を提供する。
【0025】
その他の態様では、本開示は、(a)I型IFN媒介疾患または障害を有する患者から採取されたサンプル中の第1のI型IFN GSスコアを測定するステップと;(b)I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップと;(c)抗体投与に続いて患者から採取されたサンプル中の第2のI型IFN GSスコアを測定するステップと;(d)第2のI型IFN GSスコアを第1のI型IFN GSスコアと比較するステップとを含んでなり、第1および第2のI型IFN GSスコアの間の低下が効能または優れた予後を示唆する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者において、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の治療効果をモニターする方法を提供する。
【0026】
特定の態様では、本開示は、(a)I型IFN媒介疾患または障害がある患者から採取されたサンプルを第1のI型IFN GSスコアの測定にかけるステップと;(b)I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップと;(c)I型IFN媒介疾患または障害がある患者から採取されたサンプルを第2のI型IFN GSスコアの測定にかけるステップと;(d)第2のI型IFN GSスコアを第1のI型IFN GSスコアと比較するステップとを含んでなり、第1および第2のI型IFN GSスコアの間の低下が効能または優れた予後を示唆する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者において、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の治療効果をモニターする方法を提供する。
【0027】
いくつかの態様では、本開示は、(a)I型IFN媒介疾患または障害を有する患者から採取されたサンプルから、I型IFN GSスコアを測定するステップと;(b)I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を投与するように、保健医療提供者に指示するステップと;(c)抗体投与に続いて患者から採取されたサンプル中の第2のI型IFN GSスコアを測定するステップと;(d)第2のI型IFN GSスコアを第1のI型IFN GSスコアと比較するステップとを含んでなり、第1および第2のI型IFN GSスコアの間の低下が効能または優れた予後を示唆する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者において、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の治療効果をモニターする方法を提供する。
【0028】
その他の態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法、および患者においてI型IFN GSを抑制する方法は、固定用量投与後に、ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のより初期のIFN GSスコアと比較して、またはその双方と比較して、患者のI型IFN GSスコアを測定するステップをさらに含んでなる。いくつかの態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法、および患者においてI型IFN GSを抑制する方法は、引き続く固定用量投与後に、ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のより初期のI型IFN GSスコアと比較して、または双方と比較して、患者のI型IFN GSスコアを測定するステップをさらに含んでなる。
【0029】
特定の態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法、および患者においてI型IFN GSを抑制する方法は、固定用量投与後に、ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のより初期のI型IFN GSスコアと比較して、または双方と比較して、患者からのサンプルを患者のI型IFN GSスコアの測定にかけるステップをさらに含んでなる。いくつかの態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法、および患者においてI型IFN GSを抑制する方法は、引き続く固定用量投与後に、ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のより初期のI型IFN GSスコアと比較して、または双方と比較して、患者からのサンプルを患者のI型IFN GSスコアの測定にかけるステップをさらに含んでなる。
【0030】
いくつかの態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法、および患者においてI型IFN GSを抑制する方法は、患者のI型IFN GSスコアが上昇したままであれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップをさらに含んでなる。その他の態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法、および患者においてI型IFN GSを抑制する方法は、患者のI型IFN GSスコアが上昇したままであれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるように、保健医療提供者に指示するステップをさらに含んでなる。なおも別の態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法、および患者においてI型IFN GSを抑制する方法は、患者のI型IFN GSスコアが上昇したままであれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップをさらに含んでなる。
【0031】
本開示は、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を投与するステップを含んでなり、固定用量が障害を治療するのに効果的である、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法もまた提供する。
【0032】
いくつかの態様では、I型IFN活性はIFN-アルファ活性である。いくつかの態様では、I型IFN GSは、IFI6、RSAD2、IFI44、IFI44L、IFI27、MX1、IFIT1、HERC5、ISG15、LAMP3、OAS3、OAS1、EPST1、IFIT3、LY6E、OAS2、PLSCR1、SIGLEC1、USP18、RTP4、およびDNAPTP6からなる群から選択される、少なくとも4つの薬力学(PD)マーカー遺伝子の上方制御された発現または活性を含んでなる。その他の態様では、I型IFN GSは、遺伝子IFI27、IFI44、IFI44L、およびRSAD2の上方制御された発現または活性を含んでなる。いくつかの態様では、I型IFN GSは、遺伝子IFI6の上方制御された発現または活性をさらに含んでなる。
【0033】
いくつかの態様では、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片は、IFN受容体に特異的に結合する。その他の態様では、IFN受容体はIFNアルファ受容体である。いくつかの態様では、IFNアルファ受容体はIFNAR1である。その他の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、IFNAR1のサブユニット1に特異的に結合する。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナルである。その他の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、免疫グロブリンIgGFc領域を含んでなる。特定の態様では、抗体は、MEDI-546またはその抗原結合断片である。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、疾患組織中のI型IFN GSを抑制する。
【0034】
いくつかの態様では、固定用量は、約300mg~約1000mgの範囲である。その他の態様では、固定用量は、約300mgよりも低い。その他の態様では、固定用量は、約100mgである。特定の態様では、固定用量は、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800、約900mg、および約1000mgからなる群から選択される。
【0035】
いくつかの態様では、疾患組織は皮膚である。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、末梢血中のI型IFN GSを抑制する。その他の態様では、抑制は完全抑制である。特定の態様では、抑制は部分的抑制である。
【0036】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、2つ以上の用量で投与される。いくつかの態様では、治療薬は毎月投与される。いくつかの態様では、治療薬は、静脈内、筋肉内、皮下、またはそれらの組み合わせで投与される。いくつかの態様では、疾患は、自己免疫疾患である。いくつかの態様では、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症(SSc)、筋炎、または狼瘡性腎炎である。
【0037】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与に先だつ対象のI型IFN GSと比較して、I型IFN GSを少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%または少なくとも40%抑制する。いくつかの態様では、治療薬は、母集団の平均I型IFN GSシグネチャと比較して、I型IFN GSを少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%または少なくとも40%抑制する。
【0038】
本開示は、患者サンプル中において、差次的に調節される力学(PD)マーカー遺伝子を測定できる診断アッセイのセットを含んでなる、その発病がI型IFNによって媒介される2つの疾患に共通する、I型IFN遺伝子シグネチャ(IFN GS)を検出するキットであって、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与によってI型IFN GSが抑制されるキットもまた提供する。いくつかの態様では、I型IFN GSは、IFI6、RSAD2、IFI44、IFI44L、IFI27、MX1、IFIT1、HERC5、ISG15、LAMP3、OAS3、OAS1、EPST1、IFIT3、LY6E、OAS2、PLSCR1、SIGLEC1、USP18、RTP4、およびDNAPTP6からなる群から選択される、少なくとも4つのPDマーカー遺伝子の上方制御された発現または活性を含んでなる。その他の態様では、I型IFN GSは、少なくとも5個のPDマーカー遺伝子の上方制御された発現または活性を含んでなる。いくつかの態様では、I型IFN GSは、遺伝子IFI27、IFI44、IFI44L、およびRSAD2の上方制御された発現または活性を含んでなる。いくつかの態様では、I型IFN GSは、遺伝子IFI6の上方制御された発現または活性をさらに含んでなる。いくつかの態様では、患者サンプルは、血液またはその画分、筋肉、皮膚、またはそれらの組み合わせである。その他の態様では、診断アッセイは、患者サンプル中のmRNAとハイブリダイズする核酸プローブを含んでなる。
【0039】
本開示は、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による最適投薬計画を予測する、コンピュータにより実現される方法もまた提供する。この方法は、(a)第2のI型IFN媒介疾患または障害からのPK/PDデータを、第1のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータに基づく薬物動態-薬力学(PK/PD)確率モデルを含んでなるコンピュータシステムに入力し、入力された第2のI型IFN媒介疾患または障害からのPK/PDデータを使用して、PK/PD確率モデルを補正するステップと;(b)補正PK/PD確率モデルを第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPK/PDデータに適用するステップと;(c)補正PK/PD確率モデルの結果から、第2のI型IFN媒介疾患または障害のために、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片の最適用量を同定するステップとを含んでなる。
【0040】
本開示は、I型IFN媒介疾患または障害を治療する候補治療薬として、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片を同定する、コンピュータにより実現される方法もまた提供する。この方法は、(a)第2のI型IFN媒介疾患または障害からのPD/PKデータを、第1のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PD値に基づくPK/PD確率モデルを含んでなるコンピュータシステムに入力し、入力された第2のI型IFN媒介疾患または障害からのPD/PKデータを使用して、PK/PD確率モデルを補正するステップと;(b)補正PK/PD確率モデルを第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPK/PDデータに適用するステップと;(c)補正PK/PD確率モデルの結果から、第2のI型IFN媒介疾患または障害を治療する候補治療薬として、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片を同定するステップとを含んでなる。
【0041】
本開示は、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による治療法の候補として患者を同定する、コンピュータにより実現される方法もまた提供する。この方法は、(a)第2のI型IFN媒介疾患または障害からのPD/PKデータを、第1のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータに基づくPK/PD確率モデルを含んでなるコンピュータシステムに入力し、入力された第2のI型IFN媒介疾患からのPD/PKデータを使用して、PK/PD確率モデルを補正するステップと;(b)補正PK/PD確率モデルを第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPD/PKデータに適用するステップと;(c)補正PK/PD確率モデルの結果から、第2のI型IFN媒介疾患について、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による治療法の候補として、第2の疾患がある患者を同定するステップとを含んでなる。
【0042】
本開示は、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片によって、I型IFN媒介疾患または障害を治療する個別化治療法をデザインする、コンピュータにより実現される方法もまた提供する。この方法は、(a)第2のI型IFN媒介疾患または障害からのPD/PKデータを、第1のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータに基づくPK/PD確率モデルを含んでなるコンピュータシステムに入力し、入力された第2のI型IFN媒介疾患または障害からのデータを使用して、PK/PD確率モデルを補正するステップと;(b)補正PK/PD確率モデルを第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPD/PKデータに適用するステップと;(c)補正PK/PD確率モデルの結果から、第2のI型IFN媒介疾患または障害について、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片によって、I型IFN媒介疾患または障害を治療する個別化治療法を同定するステップを含んでなる。
【0043】
いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中のI型IFN活性は、IFN-α活性である。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中の第1および第2のI型IFN媒介疾患または障害は、共通I型IFN GSを共有する。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中のI型IFN GSは、差次的に調節される。
【0044】
いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中のI型IFN GSは、IFI6、RSAD2、IFI44、IFI44L、IFI27、MX1、IFIT1、HERC5、ISG15、LAMP3、OAS3、OAS1、EPST1、IFIT3、LY6E、OAS2、PLSCR1、SIGLEC1、USP18、RTP4、およびDNAPTP6からなる群から選択される、少なくとも4つのPDマーカー遺伝子の上方制御された発現または活性を含んでなる。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中のI型IFN GSは、IFI6、RSAD2、IFI44、IFI44L、IFI27、MX1、IFIT1、HERC5、ISG15、LAMP3、OAS3、OAS1、EPST1、IFIT3、LY6E、OAS2、PLSCR1、SIGLEC1、USP18、RTP5、およびDNAPTP6からなる群から選択される、少なくとも4つのPDマーカー遺伝子の上方制御された発現または活性を含んでなる。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中のI型IFN GSは、遺伝子IFI27、IFI44、IFI44L、およびRSAD2の上方制御された発現または活性を含んでなる。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中のI型IFN GSは、遺伝子IFI6の上方制御された発現または活性をさらに含んでなる。
【0045】
いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中の抗体またはその抗原結合断片は、IFN受容体に特異的に結合する。その他の態様では、コンピュータにより実現される方法IFN受容体は、IFNアルファ受容体である。その他の態様では、コンピュータにより実現される方法中のIFNアルファ受容体は、IFNAR1である。その他の態様では、コンピュータにより実現される方法中の抗体またはその抗原結合断片は、IFNAR1のサブユニット1に特異的に結合する。その他の態様では、コンピュータにより実現される方法中の抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナルである。
【0046】
いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中の抗体またはその抗原結合断片は、免疫グロブリンIgGFc領域を含んでなる。その他の態様では、コンピュータにより実現される方法中の抗体は、MEDI-546である。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中の第1および第2のI型IFN媒介疾患または障害は、自己免疫疾患である。別の態様では、コンピュータにより実現される方法中の自己免疫疾患は、リウマチ性疾患である。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中のリウマチ性疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症(SSc)、筋炎、および狼瘡性腎炎からなる群から選択される。
【0047】
いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中の第1のI型IFN媒介疾患または障害はSScであり、第2のI型IFN媒介疾患または障害はSLEである。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中の第1のI型IFN媒介疾患または障害はSScであり、第2のI型IFN媒介疾患または障害は筋炎である。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中の第1のI型IFN媒介疾患または障害はSScであり、第2のI型IFN媒介疾患または障害は狼瘡性腎炎である。
【0048】
その他の態様では、コンピュータにより実現される方法中の第1のまたは第2のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータは、結合親和性データを含んでなる。いくつかの態様では、データコンピュータにより実現される方法中の結合親和性は、抗体またはその抗原結合断片とIFN受容体の結合に対応する。その他の態様では、コンピュータにより実現される方法中の抗体またはその抗原結合断片は、MEDI-546である。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中のIFN受容体は、IFNAR1である。
【0049】
いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中の第1または第2のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータは、動態データを含んでなる。その他の態様では、動態データは、細胞による抗原-抗体複合体の内部移行動態に対応する。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中の抗原は、IFNAR1である。その他の態様では、コンピュータにより実現される方法中の抗体は、MEDI-546である。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中の細胞は、THP-1細胞である。
【0050】
いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中の第1または第2のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータは、I型IFN GS抑制データを含んでなる。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中のI型IFN GS抑制は、完全抑制である。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中のI型IFN GS抑制は、部分的抑制である。いくつかの態様では、コンピュータにより実現される方法中のI型IFN GSは、遺伝子IFI27、IFI44、IFI44L、RSAD2、およびIFI6の上方制御された発現または活性を含んでなる。
【0051】
いくつかの態様では、PK/PD確率モデルは、2つのコンパートメントを含んでなる。いくつかの態様では、PK/PD確率モデル中の2つのコンパートメントは、中心コンパートメントおよび末梢コンパートメントである。いくつかの態様では、PK/PD確率モデルは、皮膚コンパートメントをさらに含んでなる。いくつかの態様では、PK/PD確率モデルは、2つの排出経路を含んでなる。いくつかの態様では、2つの排出経路は、クリアランス経路および標的媒介処理経路である。1つの特定の態様では、PK/PD確率モデル中のクリアランス経路は、細網内皮系経路である。
【0052】
本開示は、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による最適投薬計画を予測するプログラム命令を含むコンピュータ可読媒体であって、コンピュータシステムの1つまたは複数のプロセッサによるプログラム命令の実行が、1つまたは複数のプロセッサに、(a)第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPK/PDデータをプロセッシングするステップと;(b)第2のI型IFN媒介疾患または障害からのプロセシングされたPK/PDデータによって、第1のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータに基づくPK/PD確率モデルを補正するステップと;(c)確率論的シミュレーションを実行して、第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPK/PDデータに、補正PK/PD確率モデルを適用するステップとを実行させる可読媒体もまた提供し、シミュレーション結果は、第2のI型IFN媒介疾患または障害においてI型IFN活性を調節する、抗体またはその抗原結合断片の最適用量を同定する。
【0053】
本開示は、I型IFN媒介疾患または障害を治療する候補治療薬として、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片を同定するプログラム命令を含有するコンピュータ可読媒体もまた提供し、コンピュータシステムの1つまたは複数のプロセッサによるプログラム命令の実行は、1つまたは複数のプロセッサに、(a)第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPK/PDデータをプロセッシングするステップと;(b)第2のI型IFN媒介疾患または障害からのプロセシングされたPK/PDデータによって、第1のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータに基づくPK/PD確率モデルを補正するステップと;(c)確率論的シミュレーションを実行して、第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPK/PDデータに、補正PK/PD確率モデルを適用するステップとを実行させ、シミュレーション結果は、第2のI型IFN媒介疾患または障害を治療する候補治療薬として、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片を同定する。
【0054】
本開示は、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による治療法の候補として患者を同定するプログラム命令を含有するコンピュータ可読媒体であって、コンピュータシステムの1つまたは複数のプロセッサによるプログラム命令の実行が、1つまたは複数のプロセッサに、(a)第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPK/PDデータをプロセッシングするステップと;(b)第2のI型IFN媒介疾患または障害からのプロセシングされたPK/PDデータによって、第1のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータに基づくPK/PD確率モデルを補正するステップと;(c)確率論的シミュレーションを実行して、第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPK/PDデータに、補正PK/PD確率モデルを適用するステップとを実行させる可読媒体もまた提供し、シミュレーション結果は、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による治療法の候補として、第2のI型IFN媒介疾患がある患者を同定する。
【0055】
本開示は、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片によって、I型IFN媒介疾患または障害を治療する個別化治療法をデザインするプログラム命令を含むコンピュータ可読媒体もまた提供し、コンピュータシステムの1つまたは複数のプロセッサによるプログラム命令実行は、1つまたは複数のプロセッサに、(a)第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPK/PDデータをプロセッシングするステップと;(b)第2のI型IFN媒介疾患または障害からのプロセシングされたPK/PDデータによって、第1のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータに基づくPK/PD確率モデルを補正するステップと;(c)確率論的シミュレーションを実行して、第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPK/PDデータに、補正PK/PD確率モデルを適用するステップとを実行させ、シミュレーション結果は、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片によって、第2のI型IFN媒介疾患または障害を治療する個別化治療法を同定する。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、I型IFN活性は、IFN-α活性である。コンピュータ可読媒体のその他の態様では、第1および第2のI型IFN媒介疾患または障害は、共通IFN GSを共有する。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、I型IFN GSは、差次的に調節される。
【0056】
コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、I型IFN GSは、IFI6、RSAD2、IFI44、IFI44L、IFI27、MX1、IFIT1、HERC5、ISG15、LAMP3、OAS3、OAS1、EPST1、IFIT3、LY6E、OAS2、PLSCR1、SIGLEC1、USP18、RTP4、およびDNAPTP6からなる群から選択される、少なくとも4つのPDマーカー遺伝子の上方制御された発現または活性を含んでなる。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、I型IFN GSは、IFI6、RSAD2、IFI44、IFI44L、IFI27、MX1、IFIT1、HERC5、ISG15、LAMP3、OAS3、OAS1、EPST1、IFIT3、LY6E、OAS2、PLSCR1、SIGLEC1、USP18、RTP5、およびDNAPTP6からなる群から選択される、少なくとも4つのPDマーカー遺伝子の上方制御された発現または活性を含んでなる。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、I型IFN GSは、遺伝子IFI27、IFI44、IFI44L、およびRSAD2の上方制御された発現または活性を含んでなる。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、I型IFN GSは、遺伝子IFI6の上方制御された発現または活性をさらに含んでなる。
【0057】
コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、IFN受容体に特異的に結合する。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、IFN受容体は、IFNアルファ受容体である。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、IFNアルファ受容体は、IFNAR1である。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、IFNAR1のサブユニット1に特異的に結合する。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナルである。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、免疫グロブリンIgGFc領域を含んでなる。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、抗体は、MEDI-546である。
【0058】
コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、第1および第2のI型IFN媒介疾患または障害は、自己免疫疾患である。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、自己免疫疾は、リウマチ性疾患である。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、リウマチ性疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症(SSc)、筋炎、および狼瘡性腎炎からなる群から選択される。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、第1のI型IFN媒介疾患または障害はSScであり、第2のI型IFN媒介疾患または障害はSLEである。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、第1のI型IFN媒介疾患または障害はSScであり、第2のI型IFN媒介疾患または障害は筋炎である。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、第1のI型IFN媒介疾患または障害はSScであり、第2のI型IFN媒介疾患または障害は狼瘡性腎炎である。
【0059】
コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、第1または第2のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータは、結合親和性データを含んでなる。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、結合親和性データは、抗体またはその抗原結合断片とIFN受容体の結合に対応する。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、MEDI-546である。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、IFN受容体は、IFNAR1である。
【0060】
コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、第1または第2のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータは、動態データを含んでなる。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、動態データは、細胞による抗原-抗体複合体の内部移行動態に対応する。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、抗原はIFNAR1である。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、抗体はMEDI-546である。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、細胞はTHP-1細胞である。
【0061】
コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、第1または第2のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータは、I型IFN GS抑制データを含んでなる。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、I型IFN GS抑制は、完全抑制である。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、I型IFN GS抑制は、部分的抑制である。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、IFN GSは、遺伝子IFI27、IFI44、IFI44L、RSAD2、およびIFI6の上方制御された発現または活性を含んでなる。
【0062】
コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、PK/PD確率モデルは、2つのコンパートメントを含んでなる。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、PK/PD確率モデル中の2つのコンパートメントは、中心コンパートメントおよび末梢コンパートメントである。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、PK/PD確率モデルは、皮膚コンパートメントをさらに含んでなる。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、PK/PD確率モデルは、2つの排出経路を含んでなる。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、PK/PD確率モデル中の2つの排出経路は、クリアランス経路および標的媒介処理経路である。コンピュータ可読媒体のいくつかの態様では、PK/PD確率モデル中のクリアランス経路は、細網内皮系経路である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】血液および皮膚標本双方における、SLE(全血、WB:262、皮膚:17)、SSc(全血、WB:28、皮膚:16)、および健常対照患者(全血、WB:54、皮膚:30)のベースラインI型IFN遺伝子シグネチャ(I型IFN GS)スコアを示す。水平の要約線は、I型IFN GSスコアの各分布の平均と標準誤差を示す。
図2A-2B】MI-CP180試験からの全血標本(図A)または皮膚標本(図2B)中の、MEDI-546の単回または複数回IV投与に続く、びまん性SSc患者における、I型IFN GSプロファイル中央値(図2Aおよび図2B)を示す。各プロット対について、単回および複数回投与治療コホートが、それらのそれぞれのグラフに分けられる。X軸は試験開始からの日数を表し、0日目は治療前である。各使用量コホートの標的調節は、100%の開始値からの百分率として報告されるので、各コホートについて治療後の各時点は、残留GSの百分率中央値を示す。ベースライン陽性GSスコアSSc患者のみをプロットした。正常な健常対照プール中の最小および平均GSスコアは、それぞれ黒色の破線および灰色の破線として示される(図2Aおよび図2B)。
図2C-2D】MI-CP180試験からの全血標本(図2C)または皮膚標本(図2D)中の、MEDI-546の単回または複数回IV投与に続く、びまん性SSc患者における、I型IFN GSの残留百分率(図2Cおよび図2D)を示す。各プロット対について、単回および複数回投与治療コホートが、それらのそれぞれのグラフに分けられる。X軸は試験開始からの日数を表し、0日目は治療前である。各使用量コホートの標的調節は、100%の開始値からの百分率として報告されるので、各コホートについて治療後の各時点は、残留GSの百分率中央値を示す。ベースライン陽性GSスコアSSc患者のみをプロットした。
図3】共焦点蛍光画像診断試験による、THP-1細胞中のMEDI-546内部移行速度の測定を示す。細胞は、CFSE(細胞質ゾル)およびMEDI-546-Alexa647によって染色された。内部移行は、細胞を氷から37℃に移すことで開始された。内部移行開始前(図3A)および40分後(図3B)における、CFSEおよびMEDI-546-Alexa647蛍光画像の重ね合わせが示される。細胞質中のMEDI-546-Alexa647蛍光シグナルを総蛍光について正規化し、時間と対比してプロットした(図3C)。各データ点は、実験における三重反復試験の平均を表す。グラフは、4回の独立した実験から得られたデータを組み合わせた。
図4】MEDI-546 PK-PDモデル構造を示す。Ab、Ab、およびAbskinは、それぞれ中心、末梢、および皮膚コンパートメント中のMEDI-546である。Qは、コンパートメント間クリアランスである。血液(血清)から皮膚へのMEDI-546の分配は、kbsおよびksbによって表される。CLRESは、細網内皮系によるクリアランスを表す。MEDI-546(Ab)はIFNAR1(R)に結合し、複合体(Ab.R)は引き続いて細胞内部に取り入れられて、分解される。GSIFN,wb、およびGSIFN,skinは、それぞれ全血および皮膚中のI型IFN GSを表す。Imaxは、MEDI-546によるI型IFN GS生成の最大相対阻害度であり、IC50は、効力(I型IFN GS生成の半数最大阻害に対応するMEDI-546濃度)である。kinおよびkoutは、IFN遺伝子の生成速度および排出速度定度である。皮膚コンパートメントの包含は、シミュレーションのみを目的とする。皮膚組織への分配に起因する、中心コンパートメントからのMEDI-546質量の損失はない。
図5A】MI-CP180臨床試験からのびまん性SSc患者における、典型的な個々のMEDI-546PKおよびI型IFN GSプロファイルを示す。図5Aは、単回投与期のPKに相当する。各用量期について、より低い用量群と別の高用量群から1人ずつ、2人の患者を選択した。複数回投与コホート中の患者は、MEDI-546の毎週の静脈内投与を4回受け;最終用量は28日目に与えられた。白丸は、末梢血中で観察されたMEDI-546のまたはI型GS血清濃度を表す。灰色の線が母集団予測である一方、黒色の線は母集団PK-PDモデルによる個々の予測である。SD:単回投与レジメン、MD:複数回投与レジメン、SID:対象ID。
図5B】MI-CP180臨床試験からのびまん性SSc患者における、典型的な個々のMEDI-546PKおよびI型IFN GSプロファイルを示す。図5Bは、単回投与期のPDに相当する。各用量期について、より低い用量群と別の高用量群から1人ずつ、2人の患者を選択した。複数回投与コホート中の患者は、MEDI-546の毎週の静脈内投与を4回受け;最終用量は28日目に与えられた。白丸は、末梢血中で観察されたMEDI-546のまたはI型GS血清濃度を表す。灰色の線が母集団予測である一方、黒色の線は母集団PK-PDモデルによる個々の予測である。SD:単回投与レジメン、MD:複数回投与レジメン、SID:対象ID。
図5C】MI-CP180臨床試験からのびまん性SSc患者における、典型的な個々のMEDI-546PKおよびI型IFN GSプロファイルを示す。図5Cは、複数回投与期のPKに相当する。各用量期について、より低い用量群と別の高用量群から1人ずつ、2人の患者を選択した。複数回投与コホート中の患者は、MEDI-546の毎週の静脈内投与を4回受け;最終用量は28日目に与えられた。白丸は、末梢血中で観察されたMEDI-546のまたはI型GS血清濃度を表す。灰色の線が母集団予測である一方、黒色の線は母集団PK-PDモデルによる個々の予測である。SD:単回投与レジメン、MD:複数回投与レジメン、SID:対象ID。
図5D】MI-CP180臨床試験からのびまん性SSc患者における、典型的な個々のMEDI-546PKおよびI型IFN GSプロファイルを示す。図5Dは、複数回投与期のPDに相当する。各用量期について、より低い用量群と別の高用量群から1人ずつ、2人の患者を選択した。複数回投与コホート中の患者は、MEDI-546の毎週の静脈内投与を4回受け;最終用量は28日目に与えられた。白丸は、末梢血中で観察されたMEDI-546のまたはI型GS血清濃度を表す。灰色の線が母集団予測である一方、黒色の線は母集団PK-PDモデルによる個々の予測である。SD:単回投与レジメン、MD:複数回投与レジメン、SID:対象ID。
図6A】4週間毎のMEDI-546(固定用量)の複数回IV投与時における、SLE患者の末梢血(図6A)中のシミュレートされたI型IFN GSプロファイルを示す。実線が1,000回のシミュレートされたプロファイルの中央値を表す一方で、点線は下位または上位四分位点を表す。健康なドナーの血液および皮膚中で観察されたI型IFN GSの上方限界(平均+2標準偏差)は、それぞれ2.9および1.8であった。
図6B】4週間毎のMEDI-546(固定用量)の複数回IV投与時における、SLE患者の皮膚組織(図6B)中のシミュレートされたI型IFN GSプロファイルを示す。実線が1,000回のシミュレートされたプロファイルの中央値を表す一方で、点線は下位または上位四分位点を表す。健康なドナーの血液および皮膚中で観察されたI型IFN GSの上方限界(平均+2標準偏差)は、それぞれ2.9および1.8であった。
図7】MI-CP180臨床試験からの、ベースラインGS>13である7人のSSc患者の血液中の標的調節プロファイルを示す。黒色および灰色の線は、それぞれ単回投与(0.3、1、10または20mg/kg)または複数回投与(1mg/kg)レジメンを表し;灰色の破線は、正常な健常対照プールのI型IFN GSスコア(1.1)の平均値を表す。Mpk=mg/kg。
図8】THP-1細胞に対するMEDI-546の特異的結合を示す。細胞は、CFSE(細胞質ゾル)と、IgG-Alexa647(A)またはMEDI-546-Alexa647(B)のいずれかとで染色された。典型的な実験からのCFSEおよびAlexa647蛍光画像の重ね合わせが示される。
図9A】びまん性SSc患者における、観察されたおよびモデル予測されたMEDI-546PKプロファイルを示す。複数回投与コホートに登録した患者は、MEDI-546の毎週のIV投与を4回受けた。記号は、観察された値を表す。灰色の実線は母集団予測であり、黒色の実線は個々の予測である。SD:単回投与、MD:複数回投与、SID:対象ID。X軸は、日数を表す。Y軸は、MEDI-546濃度(μg/mL)を表す。
図9B】びまん性SSc患者における、観察されたおよびモデル予測されたMEDI-546PKプロファイルを示す。複数回投与コホートに登録した患者は、MEDI-546の毎週のIV投与を4回受けた。記号は、観察された値を表す。灰色の実線は母集団予測であり、黒色の実線は個々の予測である。SD:単回投与、MD:複数回投与、SID:対象ID。X軸は、日数を表す。Y軸は、MEDI-546濃度(μg/mL)を表す。
図10A】びまん性SSc患者における、観察されたおよびモデル予測された血液I型IFN GSプロファイルを示す。複数回投与コホートに登録した患者は、MEDI-546の毎週のIV投与を4回受けた。記号は、観察された値を表す。灰色の実線は母集団予測であり、黒色の実線は個々の予測である。SD:単回投与、MD:複数回投与、SID:対象ID。X軸は、日数を表す。Y軸は、I型IFN GSスコアを表す。
図10B】びまん性SSc患者における、観察されたおよびモデル予測された血液I型IFN GSプロファイルを示す。複数回投与コホートに登録した患者は、MEDI-546の毎週のIV投与を4回受けた。記号は、観察された値を表す。灰色の実線は母集団予測であり、黒色の実線は個々の予測である。SD:単回投与、MD:複数回投与、SID:対象ID。X軸は、日数を表す。Y軸は、I型IFN GSスコアを表す。
図11A】びまん性SSc患者からの末梢血中で観察された、およびモデル予測された標的調節を示す。複数回投与コホートに登録した患者は、MEDI-546の毎週のIV投与を4回受けた。記号は、観察された値を表す。灰色の実線は母集団予測であり、黒色の実線は個々の予測である。SD:単回投与、MD:複数回投与、SID:対象ID。X軸は、日数を表す。Y軸は、(100%-標的調節)(%)を表す。
図11B】びまん性SSc患者からの末梢血中で観察された、およびモデル予測された標的調節を示す。複数回投与コホートに登録した患者は、MEDI-546の毎週のIV投与を4回受けた。記号は、観察された値を表す。灰色の実線は母集団予測であり、黒色の実線は個々の予測である。SD:単回投与、MD:複数回投与、SID:対象ID。X軸は、日数を表す。Y軸は、(100%-標的調節)(%)を表す。
図12】成人SSc患者における、MEDI-546 PKプロファイルの視覚的前兆チェックを示す。記号は、観察されたMEDI-546の血清濃度を表す。実線は、1,000個のシミュレートされた複製の中央値である。破線は、母集団PK-PDモデルを使用した1,000個のシミュレーションからの、5位/95位または10位/90位パーセンタイル値を表す。
図13】成人SSc患者における、MEDI-546投与に続く、I型IFN GS応答の視覚的前兆チェックを示す。記号は、末梢血中で観察されたI型IFN GSを表す。実線は、1,000個のシミュレートされた複製の中央値である。破線は、母集団PK-PDモデルを使用した1,000個のシミュレーションからの、5位/95位または10位/90位パーセンタイル値を表す。
図14】MEDI-546のFTIH試験に登録したSSc患者からの皮膚組織中で観察された、およびシミュレートされたI型IFN GSスコアを示す。ベースライン(図14A)および投与後スコア(図14B)が示される。皮膚I型IFN GSデータは、モデル化しなかった(曲線適合は実施しなかった)。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本開示は、患者において疾患進行を同定、診断、治療およびモニターする方法を提供する。びまん性全身性硬化症(SSc)のヒト初回投与試験(FTIH)において、全てのI型IFNをブロックするIFNAR1のサブユニット1に対する完全ヒトIgGκモノクローナル抗体であるMEDI-546(その内容全体を参照によって本明細書に援用する、米国特許出願公開第2011-0059078号明細書を参照されたい)を試験した。全身性エリテマトーデス(SLE)およびSScに共通のI型IFN遺伝子シグネチャ(I型IFN GS)を開発して、薬物動力学を評価し、MEDI-546の臨床上の便益を潜在的に予測した。
【0065】
定義
本明細書および添付の特許請求範囲の用法では、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上例外が明記されていない限り、複数形指示対象を含むことに留意すべきである。「a」(または「an」)という用語、ならびに「1つまたは複数」および「少なくとも1つ」という用語は、本明細書で同義的に使用され得る。
【0066】
さらに本明細書で使用される「および/または」は、他方の有無にかかわらず、2つの指定された特徴または成分のそれぞれの特定の開示と見なされるべきである。したがって本明細書において、「Aおよび/またはB」などの語句で使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、および/またはC」などの語句で使用される「および/または」という用語は、以下の実施形態のそれぞれを包含することが意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0067】
本明細書で実施形態が、「~を含んでなる」という言葉で記述される場合は、「~からなる」および/または「~から本質的になる」によって記述される、その他の点では類似した実施形態もまた、提供されるものと理解される。
【0068】
特に断りのない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。例えばConcise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;およびOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示で使用される用語の多くの一般的辞書を当業者に提供する。
【0069】
単位、接頭辞、および記号は、それらの国際単位系(SI)で認められた形式で示される。数値範囲は、範囲を規定する数を包含する。特に断りのない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ方向に向けて左から右に書かれる。本明細書で提供される見出しは、明細書全体を参照して得られ得る、本開示の様々な態様または実施形態を制限しない。したがってすぐ下で定義される用語は、明細書の内容全体を参照して、より完全に定義される。アミノ酸は、それらの一般に知られている三文字記号、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨される一文字記号のいずれかによって、本明細書で言及される。同様にヌクレオチドは、それらの通常認められた一文字コードによって参照される。
【0070】
本明細書の用法では、「自己免疫疾患」という用語は、患者自身の細胞と反応して抗原抗体複合体を形成する、自己抗体の形成に付随する、障害、病態または状態を指す。「自己免疫疾患」という用語は、例えば全身性エリテマトーデスなどの病状、ならびに例えば急性リウマチ熱などの特定の外部作用物質によって引き起こされる障害を含む。自己免疫障害の例としては、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、ベルジェ病、慢性疲労症候群、クローン病、皮膚筋炎、線維筋痛症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、特発性血小板減少症紫斑病、扁平苔癬、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、潰瘍性大腸炎、および白斑が挙げられるが、これに限定されるものではない。特定の態様では、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症(SSc)、筋炎、または狼瘡性腎炎である。
【0071】
「インターフェロンα受容体-1」、「IFNAR1」、および「IFNAR」という用語は同義的に使用され、ヒトIFNAR1の変種、イソ型、種同族体を含み、IFNAR1に共通する少なくとも1つのエピトープを有する類似体を含む。例えばde Weerd et al.,J.Biol.Chem.282:20053-20057(2007)を参照されたい。したがって特定例では、ヒトIFNAR1に対して特異的なヒト抗体は、ヒト以外の種からのFNAR1と、またはヒトIFNAR1と構造的に関連するその他のタンパク質(例えばヒトIFNAR1同族体)と、交差反応する。他の事例では、抗体はヒトIFNAR1に対して完全に特異的であり得て、種交差反応またはその他の各種交差反応性を示さない。ヒトIFNAR1の完全なeDNAの配列は、Genbank受入番号NM_000629を有する。
【0072】
「I型インターフェロン」または「I型IFN」という用語は、本明細書の用法では、IFNAR1のリガンドである、I型インターフェロン分子ファミリーのメンバー(すなわちIFNAR1に結合できるI型インターフェロン分子ファミリーのメンバー)を指す。I型インターフェロンリガンドの例は、インターフェロンα1、2a、2b、4、5、6、7、S、10、14、16、17、21、インターフェロンβ、およびインターフェロンωである。
【0073】
「I型IFN媒介疾患または障害」という用語は、I型IFNPDマーカー発現プロファイルまたは遺伝子シグネチャ(I型IFN GS)を呈示する、あらゆるI型IFNまたはIFNα誘導性疾患、障害、または病状を指す。PDマーカー発現プロファイルおよび遺伝子シグネチャは、同等物であると理解される。これらの疾患、障害、または病状としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、狼瘡性腎炎、筋炎などの自己免疫要素があるものが挙げられる。I型IFN媒介疾患または障害は、例えば抗体またはその抗原結合断片である、小分子または生物剤の投与によって治療し得る。治療薬が生物剤である場合、それはI型IFNまたはIFNαのあらゆるサブタイプに対して特異的な抗体であってもよい。例えば抗体は、IFNα1、IFNα2、IFNα4、IFNα5、IFNα6、IFNα7、IFNα8、IFNα1O、IFNαl4、IFNα17、IFNα21、IFNβ、またはIFNωのいずれか1つに対して特異的であってもよい。代案としては、抗体は、あらゆる2、あらゆる3、あらゆる4、あらゆる5、あらゆる6、あらゆる7、あらゆる8、あらゆる9、あらゆる10、あらゆる11、あらゆる12のI型IFN IFNαサブタイプに対して特異的であってもよい。抗体が、2つ以上のI型IFNサブタイプに対して特異的である場合、抗体は、IFNα1、IFNα2、IFNα4、IFNα5、IFNα8、IFNα10、およびIFNα21に対して特異的であってもよく;またはそれは、IFNα1、IFNα2、IFNα4、IFNα5、IFNα8、およびIFNα10に対して特異的であってもよく;またはそれは、IFNα1、IFNα2、IFNα4、IFNα5、IFNα8、およびIFNα21に対して特異的であってもよい;またはそれは、IFNα1、IFNα2、IFNα4、IFNα5、IFNα10、およびIFNα21に対して特異的であってもよい。IFNα活性を調節する治療薬は、IFNα活性を中和してもよい。I型IFN媒介疾患または障害はまた、例えばIFNAR1などのI型IFN受容体に対して特異的な抗体で治療し得る。いくつかの態様では、抗IFNAR1抗体は、ヒト以外の種からのIFNAR1と交差反応し得る。その他の態様では、抗IFNAR1抗体は、IFNAR1のみに対して特異的であり得て、種交差反応またはその他の各種交差反応性を示さない。いくつかの態様では、抗IFNAR1抗体は、未修飾抗体と比較して、FCリガンドに対する結合親和性の低下を示し、エフェクター機能(ADCCおよび/またはCDC)の低下または低減、Fcリガンドに対する結合の低下または低減、または毒性の低下または低減を有する。
【0074】
「MEDI-546」という用語は、米国特許第7,662,381号明細書に記載される抗IFNAR9D4抗体のFc修飾バージョンを指す。MEDI-546の配列は、米国特許第2011-0059078号明細書に記載される。MEDI-546は、ヒトIgG1の下側ヒンジおよびCH2ドメインに導入された、L234F、L235E、およびP331Sの3つの変異の組み合わせを含んでなり、それらは、ヒトFcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIII(CD16)、およびC1qに対するそれらの結合低下を引き起こし、番号付与はKabatに記載されるEU指標に従った。例えばその内容全体を参照によって本明細書に援用する、米国特許第2011/0059078号明細書およびOganesyan et al.Acta Crystallographica D64:700-704(2008)を参照されたい。MEDI-546のVHおよびVk配列は、表1に示される。
【0075】
【表1】
【0076】
「I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片」という用語は、患者においてI型IFN活性を調節できる、その最も広い意味での抗体を指す(後述参照)。「調節」という用語は、本明細書の用法では、I型IFN活性の阻害または抑制、ならびにI型IFN活性の誘導または増強を含む。特定の態様では、I型IFN活性は、IFNα活性である。いくつかの態様では、型IFN GSの抑制は、I型IFN活性の抑制である。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、モノクロナ-ルである。特定の態様では、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片は、IFNAR1などのI型IFN受容体に特異的に結合する。いくつかの特定の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、IFNAR1のサブユニット1に特異的に結合する。
【0077】
「抗体」という用語は、本明細書では、その最も広い意味で使用され、例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価の抗体、多特異性抗体、キメラ抗体、およびヒト化抗体を含む。「抗体」という用語は、全抗体を含む。「抗体」という用語はまた、ジスルフィド結合またはその抗原結合部分によって相互連結する、少なくとも2本の免疫グロブリン重(H)鎖および2本の免疫グロブリン軽(L)鎖を含んでなるタンパク質も指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書でVHと略記される)および重鎖定常領域を含んでなる。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3の3つのドメインを含んでなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でVLと略記される)および軽鎖定常領域を含んでなる。軽鎖定常領域は、CLの1つのドメインを含んでなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存的な領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で、アミノ末端からカルボキシ末端に配置される、3つのCDRと4つのFRから構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合領域を含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)、および古典的補体系の最初の構成要素(C1q)をはじめとする、宿主組織または要素への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0078】
「抗原結合断片」、という用語は、本明細書において同義的に使用され、抗原(例えばIFNAR)と特異的に結合する能力を保つ、1つまたは複数の抗体断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって発揮され得ることが示されている。「抗原結合断片」という用語に包含される結合性断片の例は、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価の断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結する、2つのFab断片を含んでなる二価の断片である、F(ab’)断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなる、Fd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなる、Fv断片;(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)をはじめとする抗体である。さらにFv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、それらがその中でVLおよびVH領域が対合して一価の分子を形成する、単一タンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えばBird et al.(1988)Science 242:423-426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879-5883を参照されたい)を形成するようにする、合成リンカーによる組換え法を使用して連結され得る。このような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合断片」という用語に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に知られている従来の技術を使用して得られ、断片は、無傷の抗体と同一様式で、効用についてスクリーニングされる。
【0079】
「単離抗体」は、本明細書の用法では、異なる抗原特異性を有するその他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図される(例えばIFN-αと特異的に結合する単離抗体は、IFNAR以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしIFNARと特異的に結合する単離抗体は、その他の種からのIFNAR分子などのその他の抗原との交差反応性を有し得る。さらに単離抗体は、その他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくあり得る。
【0080】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書の用法では単一分子組成の抗体分子の調製品を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一結合特異性と親和性を示す。
【0081】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書の用法では、その中で、フレームワークおよびCDR領域の双方がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する、可変領域を有する、抗体を含むことが意図される。さらに抗体が定常領域を含有する場合、定常領域もまた、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する。本開示のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば生体外ランダムまたは部位特異的変異誘発によって、または生体内体細胞変異によって、導入された変異)を含み得る。しかし「ヒト抗体」という用語は、本明細書の用法では、その中で、マウスなどの別の哺乳類種の生殖細胞系に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列上にグラフトされている抗体を含むことは、意図しない。
【0082】
「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、その中で、フレームワークおよびCDR領域の双方がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する、可変領域を有する、単一結合特異性を示す抗体を指す。一実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、例えば遺伝子組換えマウスなどの遺伝子組換え非ヒト動物から得られるB細胞を含み、不死化細胞に融合されたヒト重鎖導入遺伝子と軽鎖導入遺伝子とを含んでなるゲノムを有する、ハイブリドーマによって生成される。
【0083】
「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書の用法では、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子またはそれから調製されたハイブリドーマ(下でさらに詳しく説明する)について、遺伝子組換えまたは染色体導入である動物(例えばマウス)から単離された抗体、(b)例えばトランスフェクトーマからなど、ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列をその他のDNA配列にスプライシングするステップを伴う、あらゆる別の手段によって、調製され、発現され、作り出され、または単離された抗体などの組換え手段によって、調製され、発現され、作り出され、または単離された、全てのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、その中でフレームワークおよびCDR領域が、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する、可変領域を有する。しかし特定の実施形態では、このような組換えヒト抗体は、生体外変異誘発(またはヒトIg配列について遺伝子組換えである動物が使用される場合は、生体内体細胞変異誘発)の対象となり得て、したがって組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VHおよびVL配列に由来し関連しながらも、生体内では、ヒト抗体生殖細胞系レパートリー内に天然で存在しなくてもよい配列である。
【0084】
「抗体」という用語は、本明細書の用法では、それらが所望の生物学的活性を示しさえすれば、その中で重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同的である一方、鎖の残部が、別の種に由来する、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列ならびにこのような抗体の断片と同一または相同的である、「キメラ」抗体もまた含む(米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrison et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。
【0085】
脊椎動物系中の基本的抗体構造は、比較的良く知られている。例えばHarlow et al.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual(2nd ed.;Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照されたい。
【0086】
用語に、当該技術分野内で使用されおよび/または認められる2つ以上の定義がある場合、明示的に別段の定めがある場合を除いて、本明細書で使用される用語の定義は、全てのこのような意味を含むことが意図される。具体例は、重鎖および軽鎖ポリペプチドの双方の可変領域内に見られる、非隣接抗原結合位置を記述するための、「相補性決定領域」(「CDR」)という用語の使用である。この特定領域については、参照によって本明細書に援用する、Kabat et al.(1983)U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequences of Proteins of Immunological Interest”;およびChothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)によって記載され、定義は、互いに比較した場合のアミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。それでもなお、抗体またはその変異体のCDRに言及するいずれの定義の適用も、本明細書で定義され使用される用語の範囲内にあることが意図される。上記の参考文献のそれぞれによって定義される、CDRを包含する適切なアミノ酸残基を、比較のために下の表2に記載する。特定のCDRを包含する正確な残基数は、CDRの配列およびサイズ次第で変動する。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列を所与として、いずれの残基が特定のCDRを含んでなるかを慣例的に判定し得る。
【0087】
【表2】
【0088】
Kabat et al.はまた、あらゆる抗体に適用できる、可変領域配列のための番号付与体系を定義した。当業者は、配列それ自体以外のいかなる実験データにも依存することなく、あらゆる可変領域配列に、この「Kabat番号付与」体系を明白に割り当て得る。本明細書の用法では、「Kabat番号付与」は、Kabat et al.(1983)U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequence of Proteins of Immunological Interest”によって記載される番号付与体系を指す。特に断りのない限り、本開示の抗IFNAR抗体または抗原結合断片、変異体、またはその誘導体中の特定のアミノ酸残基位置への番号付与への言及は、Kabat番号付与体系に従う。
【0089】
本明細書の用法では、「治療する」または「治療」という用語は、目的が、リウマチの状態など自己免疫状態の進行などの望ましくない生理学的変化または障害を阻止または遅延(低下)させることである、治療処置および予防または防止手段の双方を指す。有益なまたは所望の臨床結果としては、検出可能または検出不能を問わない、症状の緩和、疾患の程度の縮小、疾患状態の安定化(すなわち非悪化)、疾患進行の遅延または減速、病態の回復または一時的緩和、および寛解(部分的または完全を問わない)が挙げられるが、これに限定されるものではない。「治療」はまた、治療を受けない場合の予測生存期間と比較した、生存期間の長期化を意味し得る。治療を必要とする者としては、既に病状または障害がある者、ならびに病状または障害を有しやすい者、またはその中で病状または障害が予防される者が挙げられる。
【0090】
「有効量」または「~に効果的な量」または「治療有効量」という用語は、所望の結果を生じるのに十分な治療薬の用量への言及を含む。
【0091】
「対象」または「患者」は、診断、予後診断、または治療法が所望される、あらゆる対象、特に哺乳類対象を意味する。本明細書の用法では、「対象」または「患者」という用語は、あらゆるヒトまたは非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語は、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、クマ、ニワトリ、両生類爬虫類などの哺乳類および非哺乳類などの全ての脊椎動物を含む。本明細書の用法では、「I型IFN媒介疾患または障害を有する患者」などの語句は、例えば検出、画像診断、またはその他の診断手順のための、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片の投与から、および/またはこのような抗体またはその抗原結合による治療、すなわち疾患の一時的緩和または予防から、利益を受ける、哺乳類対象などの対象を含む。
【0092】
「治療」または「治療」または「治療する」などの用語は、(1)症状を治癒、遅延、低下させ、および/または診断された病的状態または障害の進行を食い止める治療手段、および(2)標的病的状態または障害の進行を阻止しおよび/または遅延させる予防または防止手段の双方を指す。したがって治療を必要とする対象としては、既に障害がある対象;障害を起こしやすい対象;その中で障害が予防される対象が挙げられる。
【0093】
薬物動態モデルおよび橋渡し応用
第I相治験(MI-CP180;ClinicalTrials.gov Identifier:NCT00930683)では、MEDI-546による治療が、SSc患者からの末梢血および皮膚生検中において、用量依存的様式でI型IFN GSの完全な中和をもたらした。我々の知る限りでは、これはI型IFNが疾患の病因に関与する、末梢血および疾患組織中における、I型IFN GSの正常化を示す最初の研究である。
【0094】
第2相試験のために、SLEの臨床適応症に迅速に橋渡しするために、(1)SSc患者におけるMEDI-546の薬物動態(PK)および薬物動力学(PD)、(2)共焦点画像診断試験から判定されたMEDI-546/IFNAR複合体の内部移行動態、および(3)SScおよびSLE患者間における血液および皮膚中のI型IFN GSの差の大きさを組み込んだ、橋渡しモデルが開発された。このモデルを最初に使用して、臨床データが入手できるSSc患者において、MEDI-546の処理特性およびI型IFNシグネチャの抑制を特性解析した。その後、PK/PDモデルを補正して、SScとSLE患者間のI型IFN GSの差の大きさを考慮に入れて、確率論的PK-PDシミュレーションを実施して、仮想SLE患者において、複数回MEDI-546投与時の血液および皮膚標本中のI型IFN GS応答を予測した。このアプローチは、MEDI-546臨床開発の迅速な進展と、SLEにおける第2相試験の最適デザインを容易にした。確率シミュレーションは、100mg、300mgまたは1000mgの固定用量のMEDI-546の4週間毎の単回静脈内投与が、SLE患者の血液中のI型IFN GSを健常対象のレベル(平均±2標準)にまで抑制し得ることを予測した。
【0095】
したがって本開示は、I型IFN媒介疾患または障害の薬物動態/薬力学(PK/PD)確率モデルを提供する。いくつかの態様では、PK/PD確率モデルは、2つのコンパートメントを含んでなる。これらの2つのコンパートメントは、中心コンパートメントおよび末梢コンパートメントであり得る。特定の態様では、PK/PD確率モデルは、例えば皮膚コンパートメントなどの追加的なコンパートメントを含んでなり得る。PK/PD確率モデルは、少なくとも1つの排出経路もまた含んでなる。いくつかの態様では、PK/PD確率モデルは、2つの排出経路を含んでなり得る。いくつかの態様では、2つの排出経路は、クリアランス経路および標的媒介処理経路である。いくつかの態様では、PK/PD確率モデル中のクリアランス経路は、細網内皮系経路である。
【0096】
PK/PD確率モデルは、例えば橋渡し目的で使用し得る。この点において、第1のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータを使用して、PK/PD確率モデルを作成し得て、次に入力された第2のI型IFN媒介疾患または障害からのPK/PDデータを使用して、PK/PD確率モデルを補正し得る。次にこの補正モデルを使用して、シミュレーションを実施し、最適投薬計画の判定、患者を治療するために候補治療薬を選択すべきかどうかの判定、治療法の候補患者の選択、または個別化治療法デザインなどの第2のI型IFN媒介疾患または障害に対応する情報を推測し得る。いくつかの態様では、補正モデルを使用して、例えば臨床試験の候補対象を選択し得る。
【0097】
第1または第2のI型IFN媒介疾患または障害のPK/PDデータは、結合親和性データを含んでなり得る。例えば結合親和性データは、抗体またはその抗原結合断片のI型IFN受容体への結合に対応し得る。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片はMEDI-546である。いくつかの態様では、I型IFN受容体はIFNAR1である。
【0098】
いくつかの態様では、第1のI型IFN媒介疾患または障害はSScであり、第2のI型IFN媒介疾患または障害はSLEである。いくつかの別の態様では、第1のI型IFN媒介疾患または障害はSScであり、第2のI型IFN媒介疾患または障害は筋炎である。いくつかの態様では、第1のI型IFN媒介疾患または障害はSScであり、第2のI型IFN媒介疾患または障害は狼瘡性腎炎である。一般に、第1および第2のI型IFN媒介疾患または障害は、リウマチ性疾患であり得る。当業者は、その他のI型IFN媒介関連疾患または障害の組を使用し得ることを理解するであろう。
【0099】
いくつかの態様では、第1のまたは第2のI型IFN-媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータは、例えば細胞による抗原-抗体複合体の内部移行動態などの動態データを含んでなる。いくつかの態様では、抗原はIFNAR1である。その他の態様では、抗体はMEDI-546である。いくつかの態様では、細胞はTHP-1細胞である。当業者は、異なる抗体、抗原、および細胞系を使用し得ることを認識するであろう。
【0100】
いくつかの態様では、第1または第2のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータは、I型IFN GS抑制データ(例えば完全抑制または部分的抑制)を含んでなる。いくつかの態様では、I型IFN GSは、遺伝子IFI27、IFI44、IFI44L、およびRSAD2の上方制御された発現または活性を含んでなる。いくつかの態様では、I型IFN GSは、IFI6をさらに含んでなる。当業者は、下で考察されるように、その他のI型IFN GSを使用し得ることを認識するであろう。
【0101】
固定用量投与
本開示は、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗体断片を投与するステップを含んでなり、用量が障害を治療するのに効果的である、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法もまた提供する。いくつかの態様では、抗体は抗IFNAR抗体である。いくつかの特定の態様では、抗体は、例えばMEDI-546などの抗IFNAR1抗体である。
【0102】
「固定用量」は、本明細書の用法では、患者の体重(WT)または体表面積(BSA)に関わりなく、患者に投与される用量を指す。したがって例えばMEDI-546I型などのIFN活性を調節する固定用量の抗体または抗体その断片は、mg/kg用量またはmg/m2用量で提供されず、絶対量の治療薬で提供される。
【0103】
いくつかの態様では、I型IFN活性を調節する抗体または抗体その断片は、約100mg~約1000mgの範囲の固定用量として投与される。その他の態様では、固定用量は、約300mg~約1000mgである。いくつかの態様では、固定用量は、約300mgよりも低い。いくつかの特定の態様では、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗体断片は、MEDI-546である。
【0104】
いくつかの態様では、I型IFN活性を調節する抗体または抗体その断片は、約10mg、または約20mg、または約30mg、または約40mg、または約50mg、または約60mg、または約70mg、または約80mg、または約90mg、または約100mgの固定用量で投与される。その他の態様では、I型IFN活性を調節する抗体または抗体その断片は、約100mg、または約150mg、約200mg、または約300mg、または約400mg、または約500mg、または約600mg、または約700mg、または約800mg、または約900mg、または約1000mg、または約1100mg、または約1200mg、または約1300mg、または約1400mg、または約1500mg、または約1600mg、または約1700mg、または約1800mg、または約1900mg、または約2000mgの固定用量で投与される。特定の態様では、固定用量は約100mgである。その他の特定の態様では、固定用量は約300mgである。さらに別の態様では、固定用量は約1000mgである。
【0105】
いくつかの態様では、I型IFN活性を調節する抗体または抗体その断片は、静脈内、筋肉内、皮下、またはそれらの組み合わせで投与し得る。I型IFN活性を調節する抗体または抗体その断片はまた、当該技術分野で公知の任意の手段によって投与し得る。特定の態様では、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗体断片は、約100mg、または約300mg、または約1000mgの固定用量で静脈内投与される。特定の態様では、I型IFN活性を調節する抗体または抗体その断片は、約100mg、または約300mg、または約1000mgの固定用量で皮下投与される。
【0106】
いくつかの態様では、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗体断片の負荷用量が投与される。特定の態様では、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗体断片は、約100mg、または約300mg、または約1000mgの固定用量で毎月1回静脈内投与される。いくつかの態様では、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗体断片は、皮下投与し得る。
【0107】
I型IFN活性を調節する一連の固定用量の抗体または抗体その断片が投与される場合、これらの用量は、例えばほぼ毎週、ほぼ2週間毎、約3週間毎、または約4週間毎に投与し得る。いくつかの態様では、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗体断片は、ほぼ毎日、ほぼ2日毎、ほぼ3日毎、ほぼ4日毎、ほぼ5日毎、ほぼ6日毎、ほぼ7日毎に投与される。
【0108】
特定の態様では、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗体断片は、100mgの用量で毎月投与される。別の特異的態様では、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体または抗体その断片は、300mgの用量で毎月投与される。特定の態様では、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗体断片は、1000mgの用量で毎月投与される。特定の態様では、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体または抗体その断片は、毎月100mg、300mg、または1000mgの用量のMEDI-546である。
【0109】
特定の態様では、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗体断片を毎月投与し得る。続く数ヶ月間、連続用量を投与し得る。これらの固定用量は、例えば約1ヶ月、または約2ヶ月、または約3ヶ月、または約4ヶ月、または約5ヶ月、または約6ヶ月間投与し得る。例えばこのような固定用量は、保健医療提供者による判定で、例えばI型IFN GSの抑制または抑制欠如などの疾患進行、有害事象、またはその他のパラメータが生じるまで投与を継続し得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の固定用量のI型IFN活性を調節する抗体またはその抗体断片を患者に投与し得る。いくつかの態様では、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗体断片は、等時間間隔で投与される。その他の実施形態では、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗体断片は、変動する時間間隔で投与される。いくつかの態様では、全ての投与される固定用量は、本質的に同一である。その他の態様では、少なくとも1つの固定用量が、例えば容積、濃度、投与経路、配合などに関してその他の用量と異なる。
【0111】
例えばSLE、SSc、筋炎、または狼瘡性腎炎などの自己免疫疾患を予防または治療するために、例えばMEDI-546などのI型IFN活性を調節する抗体またはその抗体断片の固定用量は、例えば上で定義される治療される疾患タイプ、疾患重症度および経過、抗体が予防または治療目的で投与されるかどうか、以前の治療法、患者の病歴と抗体応答、および主治医の自由裁量に左右される。
【0112】
特定の実施形態では、本開示は、MEDI-546などの少なくとも1つの静脈内または皮下固定用量の抗IFNAR抗体を患者に投与するステップを含んでなる、患者において自己免疫障害(例えばSLE、SSc、狼瘡性腎炎、筋炎)などのI型IFN媒介疾患または障害を治療する方法を提供し、固定用量は約100mg、約300mg、または約1000mgである。
【0113】
I型インターフェロン遺伝子シグネチャ(IFN GS)
本開示は、I型IFN媒介疾患または障害に罹患している患者を、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片で治療した場合、特異的に抑制され得るI型インターフェロン遺伝子シグネチャ(I型 IFN GS)もまた提供する。
【0114】
一態様では、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片で抑制され得るI型IFN GSは、既述のSLEにおける抗IFN-αモノクローナル療法であるシファリムマブのための薬物動力学(PD)マーカーとして使用される、21個の遺伝子のサブセットである(Yao et al.,Arthritis Rheum.60:1785-1796(2009);Yao et al.,Hum.Genomics Proteomics 2009:374312(2009);Yao et al.,Arthritis Res.Ther.12(Suppl 1):S6(2010))。
【0115】
いくつかの態様では、これらの21遺伝子(表3を参照されたい)は、IFI27(インターフェロンα誘導性タンパク質27)(配列番号3)、IFI44(インターフェロン誘導性タンパク質44)(配列番号4)、IFI44L(インターフェロン誘導性タンパク質44様)(配列番号5)、RSAD2(遊離基S-アデノシルメチオニンドメイン含有2)(配列番号6)、IFI6(インターフェロン、アルファ誘導性タンパク質6)(配列番号7)、MX1(ミクソウイルス(インフルエンザウイルス)耐性1、インターフェロン誘導性タンパク質p78)(配列番号8)、IFIT1(テトラトリコペプチド反復があるインターフェロン誘導性タンパク質1)(配列番号9)、HERC5(hectドメインおよびRLD5)(配列番号10)、ISG15(ISG15ユビキチン様修飾剤)(配列番号11)、LAMP3(リソソーム結合膜タンパク質3)(配列番号12)、OAS3(2’-5’-オリゴアデニル酸シンセターゼ3、100kDa)(配列番号13)、OAS1(2’-5’-オリゴアデニル酸シンセターゼ1、40/60kDa)(配列番号14)、EPST1(上皮間質相互作用1(乳房))(配列番号15)、IFIT3(テトラトリコペプチド反復があるインターフェロン誘導性タンパク質3)(配列番号16)、LY6E(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座E)(配列番号17)、OAS2(2’-5’-オリゴアデニル酸シンセターゼ2、69/71kDa)(配列番号18)、PLSCR1(リン脂質スクランブラーゼ1)(配列番号19)、SIGLEC1(シアル酸結合Ig様レクチン1、シアロアドヘシン)(配列番号20)、USP18(ユビキチン特異的ペプチダーゼ18)(配列番号21)、RTP4(受容体(化学感覚)輸送体タンパク質4)(配列番号22)、およびDNAPTP6(DNAポリメラーゼ-トランス活性化タンパク質6)(配列番号23)である。その内容全体を参照によって本明細書に援用する、国際公開第2008/070137号パンフレットを参照されたい。
【0116】
【表3-1】
【0117】
【表3-2】
【0118】
【表3-3】
【0119】
【表3-4】
【0120】
【表3-5】
【0121】
【表3-6】
【0122】
いくつかの態様では、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片によって抑制され得るI型IFN GSは、少なくとも4つのPDマーカーの上方制御された発現または活性を含んでなる。いくつかの態様では、I型IFN GSは、少なくとも5つのPDマーカーの上方制御された発現または活性を含んでなる。いくつかの態様では、I型IFN GSは、遺伝子IFI27、IFI44、IFI44L、およびRSAD2の上方制御された発現または活性を含んでなる。いくつかの態様では、I型IFN GSは、遺伝子IFI6の上方制御された発現または活性をさらに含んでなる。
【0123】
いくつかの態様では、I型IFN GS中の遺伝子は、(i)健常対照と比較した患者における過剰発現の蔓延および規模;(ii)I型IFNによる生体外における健康なドナーからの全血中の誘導能力;および(iii)SLE血清による刺激後、例えばMEDI-546などのI型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片によって、健康なドナー末梢血単核細胞中において、生体外で実質的に抑制される能力の主要3基準に基づいて選択される、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片で、抑制され得る(例えばYao et al.,Hum.GenomicsProteomics2009:374312(2009)を参照されたい)。
【0124】
いくつかの態様では、患者の血液および病変皮膚中の上方制御されたI型IFN GSの発現に対応するI型IFN GSスコアは、I型IFN GS中の遺伝子発現レベルから計算し得る。治療後のI型IFN GSスコアおよびその抑制は、例えば患者からの全血(例えば末梢血)または皮膚サンプル中で測定し得る。
【0125】
I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片の固定用量は、本開示のI型IFN GSを抑止または中和し得る。この抑制は、I型IFN GS中の少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20または少なくとも21個の上方制御された遺伝子の発現レベル低下であり得る。いくつかの特定の態様では、抑制は、I型IFN GS中の4つの上方制御された遺伝子の発現レベル低下である。その他の特定の態様では、抑制は、I型IFN GS中の5つの上方制御された遺伝子の発現レベルの低下である。抑制は、I型IFN GS中の遺伝子発現の部分的抑制または完全抑制であり得る。
【0126】
上方制御されたI型IFN GSの発現抑制は、I型IFN GS中の少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20または少なくとも21個の上方制御された遺伝子のいずれかの、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも90%の低下であり得る。
【0127】
代案としては、I型IFN GS中の上方制御された発現の抑制は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20または少なくとも21個の遺伝子の、対照または参照中のこれらの遺伝子の発現レベルの最大50%、最大45%、最大40%、最大35%、最大30%、最大25%、最大20%、最大15%、最大10%、最大5%、最大4%、最大3%、最大2%、または最大1%の発現レベルの低下を指す。いくつかの態様では、例えばMEDI-546などの抗IFNAR抗体などのI型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片は、約100mg、約300mg、または約1000mgなどの固定用量で、I型IFN GSを中和し得る。
【0128】
いくつかの対照または基準サンプルを使用して、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片による治療前または治療後のI型IFN GSの抑制の程度を判定し得る。例えばI型IFN GSをI型IFN活性物質を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片による治療後に、固定用量投与に先だつ対象のI型IFN GSと比較し得る。その他の態様では、一連の治療投与中に、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片による治療後のI型IFN GSを、固定用量投与に先だって分析された患者のI型IFN GSと比較し得る。その他の態様では、母集団の平均I型IFN GS、非応答性患者のI型IFN GS、または再発性患者のI型IFN GSなどのその他の参照を、比較のために使用し得る。
【0129】
I型IFN GSにおけるPDマーカーの遺伝子発現または活性の上方または下方制御は、当該技術分野で公知の任意の手段によって測定し得る。例えば遺伝子発現の上方または下方制御は、mRNAレベルを測定することで検出し得る。mRNA発現は、例えばノーザンブロット法、スロットブロッティング、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応、または遺伝子チップハイブリダイゼーション技術によって判定してもよい。遺伝子チップハイブリダイゼーション技術のための核酸アレイ作成の例については、例えば米国特許第5,744,305号明細書および米国特許第5,143,854号明細書を参照されたい。1:遺伝子発現を測定するためのTAQMAN(登録商標)法の使用例については、Hrovat et al.,Cell.Mol.Biol.Lett.1:55-69(2010),Svec et al.,Int.J.Exp.Pathol.1:44-53(2010)、およびKurokawa et al.,Cancer Chemother.Pharmacol.3:427-436(2010)もまた参照されたい。
【0130】
ポリメラーゼ鎖反応(PCR)において標的と選択的に結合するプライマーは、PCR反応中でハイブリダイズして、背景上で標的を検出するのに十分なシグナルを生成するプライマーを経験的に判定することに基づいて選択し得て、またはManiatis et al.Molecular Cloning,Second Edition,Section 11.46(1989)に記載されるような、プライマー:標的二本鎖の融解温度を使用して予測し得る。同様にTAQMAN(登録商標)中でPCR産物を検出するための核酸プローブ または関連方法は、経験的に選択または予測し得る。このような核酸プライマーおよびプローブ(集合的に「オリゴヌクレオチド」)は、10~30ヌクレオチド以上の長さであってもよい。
【0131】
I型 IFN GS中のPDマーカーの遺伝子発現または活性の上方または下方制御はまた、タンパク質レベルの検出によっても判定し得る。タンパク質発現レベルを検出する方法としては、例えばELISA法、ウエスタンブロット法、タンパク質アレイ、および銀染色などの免疫ベースのアッセイが挙げられる。I型IFN GS中のPDマーカーの遺伝子発現または活性の上方または下方制御はまた、検出可能なリン酸化活性、脱リン酸化活性、または切断活性をはじめとするが、これに限定されるものではない、タンパク質の活性の検出によっても判定し得る。さらにI型IFN GS中のPDマーカーの遺伝子発現または活性の上方または下方制御は、これらの遺伝子発現レベルまたは活性のあらゆる組み合わせの検出によって測定してもよい。I型IFN GS中におけるPDマーカー数の減少とレベル低下のあらゆる組み合わせが、効能を示し得る。
【0132】
本開示は、患者においてI型IFN GSを抑制する特定の方法を提供する。例えばI型IFN GSは、ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者から採取されたサンプル中のI型IFN GSスコアを、測定するステップと;引き続いて患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップとによって抑制し得て、抗体またはその抗原結合断片の投与は、患者のI型IFN GSを抑制する。
【0133】
I型IFN GSはまた、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者に投与するステップと;ベースラインIFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアを測定するステップと;次に患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップとによって抑制し得て、抗体またはその抗原結合断片の投与は、患者のI型IFN GSを抑制する。
【0134】
いくつかの態様では、I型IFN GSは、I型IFN媒介疾患または障害がある患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定にかけるステップと;ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを測定結果から判定するステップと;患者のIFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップとによって抑制し得て、抗体またはその抗原結合断片の投与は、患者のI型IFN GSを抑制する。
【0135】
患者においてI型IFN GSを抑制する別の方法は、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者に投与するステップと;患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定にかけるステップと;ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを測定結果から判定するステップと;患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップとを含んでなり、抗体またはその抗原結合断片の投与は、患者のI型IFN GSを抑制する。
【0136】
別の態様では、I型IFN GSは、I型IFN媒介疾患または障害がある患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定およびベースラインI型IFN GSスコアとの比較にかけるステップと;患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップとによって抑制し得て、抗体またはその抗原結合断片の投与は、患者のI型IFN GSを抑制する。
【0137】
特定の態様では、I型IFN GSは、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者に投与するステップと;患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定およびベースラインI型IFN GSスコアとの比較にかけるステップと;患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップとによって抑制し得て、抗体またはその抗原結合断片の投与は、患者のI型IFN GSを抑制する。
【0138】
別の態様では、患者においてI型IFN GSを抑制する方法は、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者から採取されたサンプルから、I型IFN GSスコアを測定するステップと;ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを判定するステップと;患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を投与するように、保健医療提供者に指示するステップとを含んでなり、抗体またはその抗原結合断片の投与は、患者のI型IFN GSを抑制する。特定の態様では、患者においてI型IFN GSを抑制する方法は、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を投与されている、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者からサンプルを得るステップと;サンプルからI型IFN GSスコアを測定するステップと;ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを判定するステップと;患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるように、保健医療提供者に指示するステップとを含んでなり、抗体またはその抗原結合断片の投与は、患者のI型IFN GSを抑制する。
【0139】
例えば当業者は、以下のセクションで考察されるように、サンプルが当該技術分野で公知の異なる方法によって得られ得ること、サンプルが異なる組織から得られ得ること、サンプルが異なる時点で得られ得ること、異なる個人と事業体が上で開示された方法と異なる手順を実施し得ることを理解するであろう。
【0140】
治療、モニター、および予後診断の方法
本開示は、固定用量でI型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による治療法もまた提供し、I型IFN GSを抑制し得て、したがってI型IFN媒介疾患または障害の1つまたは複数の症状の低下がもたらされる。
【0141】
I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による治療は、I型IFN媒介疾患または障害に関連した急激な増悪を低下させ、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者の予後を改善し、患者により高い生活の質を提供して、第2の治療薬(例えばステロイド)を同時投与する必要性を軽減し、患者への第2の薬剤の投与量を低下させ、またはI型IFN媒介疾患または障害に関連した患者の入院回数を低下させ得る。
【0142】
患者を治療するために、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片の投与前または後に、サンプルが患者から得られ得る。場合によっては、治療開始後または治療停止後に、連続サンプルが患者から得られ得る。サンプルは、例えば保健医療提供者(例えば医師)または医療費給付提供者によって要望されて、同一または異なる保健医療提供者(例えば看護師、病院)または臨床検査室によって入手および/または処理され得て、処理後、結果は、さらに別の保健医療提供者、医療費給付提供者または患者に送付され得る。同様に、I型IFN GSスコアの測定/判定、型IFN GSスコア間の比較は、I型IFN GSスコアの評価であり得て、治療法の決定は、1つまたは複数の保健医療提供者、医療費給付提供者および/または臨床検査室によって実施され得る。
【0143】
本明細書の用法では、「保健医療提供者」という用語は、例えばヒト患者などの生きている対象と相互に連絡を取りあい管理する、個人または機関を指す。保健医療提供者の非限定的例としては、一般医学的、専門医学的、外科的、および/またはあらゆるその他のタイプの治療、評価、維持、治療法、薬剤および/または助言をはじめとするが、これに限定されるものではない患者の健康状態の全てまたは任意の部分に関する、一般および/または専門療法、評価、維持、治療法、薬剤、および/または助言を提供する、医師、看護師、技術者、技術者、薬剤師、カウンセラー、代替医療施術者、医学的設備、医院、病院、救急処置室、診療所、応急処置センター、代替医療診療所/設備、およびあらゆるその他の事業体が挙げられる。
【0144】
本明細書の用法では、「臨床検査室」という用語は、例えばヒトなどの生きている対象に由来する物質を検査または処理する設備を指す。処理の非限定的例としては、例えばヒトなどの生きている対象のあらゆる疾患または障害の診断、予防、または治療のための情報、または健康評価を提供するために、人体に由来する物質の生物学的、生化学的、血清学的、化学的、免疫血液学、血液学的、生物物理学的、細胞学的、病理学的、遺伝的、またはその他を検査することが挙げられる。これらの検査はまた、サンプルを採取し、または別の方法で得て、調製し、例えばヒトなどの生きている対象の体内で、または例えばヒトなどの生きている対象の身体から得られるサンプル中で、様々な物質の存在または不在を判定し、測定し、または別の方法で説明する手順も含み得る。
【0145】
本明細書の用法では、「医療費給付提供者」という用語は、全体または一部の支払いを提供し、提示し、提案し、または別の方法で、患者に、1つまたは複数の医療費給付、福利厚生計画、健康保健、および/または保健医療費アカウントプログラムへのアクセスを与えることに関与する、個々の団体、組織、またはグループを包含する。
【0146】
いくつかの態様では、保健医療提供者は、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片を投与し得て、または投与するように別の保健医療提供者に指示し得る。保健医療提供者は、以下の措置を実行し得て、または別の保健医療提供者または患者に実行するように指示し得る:サンプルを入手する、サンプルを処理する、サンプルを提出する、サンプルを受領する、サンプルを移送する、サンプルを分析または測定する、サンプルを定量化する、サンプルの分析/測定/定量後に得られた結果を提供する、サンプルの分析/測定/定量後に得られた結果を受領する、1つまたは複数のサンプルの分析/測定/定量後に得られた結果を比較/格付けする、1つまたは複数のサンプルからの比較/スコアを提供する、1つまたは複数のサンプルからの比較/スコアを入手する、治療薬を投与する(例えばI型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片)、治療薬の投与を開始する、治療薬の投与を休止する、治療薬の投与を継続する、治療薬の投与を一時的に中断する、投与される治療薬の量を増大させる、投与される治療薬の量を低下させる、一定量の治療薬の投与を継続する、治療薬の投与頻度を増大させる、治療薬の投与頻度を低下させる、治療薬の投与頻度を同一に維持する、治療薬を少なくとも別の治療薬で置き換える、治療薬を少なくとも別の治療または追加的な治療薬と組み合わせる。
【0147】
いくつかの態様では、医療費給付提供者は、例えば、サンプルの採取、サンプルの処理、サンプルの提出、サンプルの受領、サンプルの移送、サンプルの分析または測定、サンプルの定量化、サンプルの分析/測定/定量後に得られた結果の提供、サンプルの分析/測定/定量後に得られた結果の移送、1つまたは複数のサンプルを分析/測定/定量した後に得られた結果の比較/格付け、1つまたは複数のサンプルからの比較/スコアの移送、治療薬の投与、治療薬の投与の開始、治療薬の投与の休止、治療薬の投与の継続、治療薬の投与の一時的な中断、投与される治療薬の量の増大、投与される治療薬の量の低下、一定量の治療薬の投与の継続、治療薬の投与頻度の増大、治療薬の投与頻度の低下、治療薬の同一投与頻度の維持、治療薬を少なくとも別の治療薬で置き換えること、または治療薬を少なくとも別の治療または追加的な治療薬と組み合わせることを許可または拒否し得る。さらに、医療費給付提供者は、例えば、治療法の処方を許可または拒否し、治療への保健適用を許可または拒否し、治療費の払い戻しを許可または拒否し、治療適格性を決定または拒否し得る。
【0148】
いくつかの態様では、臨床検査室は、例えば、サンプルを採取または入手し、サンプルを処理し、サンプルを提し、サンプルを受領し、サンプルを移送し、サンプルを分析または測定し、サンプルを定量化し、サンプルの分析/測定/定量後に得られた結果を提供し、サンプルの分析/測定/定量後に得られた結果を受領し、1つまたは複数のサンプルの分析/測定/定量後に得られた結果を比較/格付し、1つまたは複数のサンプルからの比較/スコアを提供し、1つまたは複数のサンプルからの比較/スコアを入手し得る。
【0149】
上に列挙した措置は、コンピュータにより実現される方法を使用して(例えばウェブサービスまたは独立型コンピュータシステムによって)、自動的に、保健医療提供者、医療費給付提供者、または患者によって実施され得る。
【0150】
患者サンプルとしては、全血、血清、筋肉、唾液などのあらゆる生体液または組織が挙げられる。サンプルとしては、全血、血清、筋肉、唾液、尿、滑液、骨髄、脳脊髄液、経鼻分泌物、痰、羊水、気管支肺胞洗浄液、末梢血単核細胞、全白血球細胞、リンパ節細胞、脾臓細胞、扁桃細胞、または皮膚などのあらゆる生体液または組織が挙げられる。いくつかの特定の態様では、患者サンプルは、血液またはその一部、筋肉、皮膚、またはそれらの組み合わせである。患者サンプルは、当該技術分野で公知の任意の手段によって得られ得る。
【0151】
したがって、本開示は、ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者から採取されたサンプル中のIFN GSスコアを測定するステップと;患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップとを含んでなり、固定用量の抗体またはその断片が疾患または障害を効果的に治療する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法を提供する。I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者に投与するステップと;ベースラインIFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアを測定するステップと;患者のIFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップとを含んでなり、患者のI型IFN GSの抑制が治効を示唆する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法もまた、提供される。
【0152】
いくつかの態様では、本開示は、I型IFN媒介疾患または障害がある患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定にかけるステップと;ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを測定結果から判定するステップと;患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップとを含んでなり、固定用量の抗体またはその断片が疾患または障害を効果的に治療する、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法を提供する。
【0153】
その他の態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法は、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者に投与するステップと;患者から採取されたサンプルをIFN GSスコアの測定にかけるステップと;ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを測定結果から判定するステップと;患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップとを含んでなり、患者のI型IFN GSの抑制は治効を示唆する。
【0154】
いくつかの態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法は、I型IFN媒介疾患または障害がある患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定およびベースラインIFN GSスコアとの比較にかけるステップと;患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップとを含んでなり、固定用量の抗体またはその断片は、疾患または障害を効果的に治療する。別の態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法は、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者に投与するステップと;患者から採取されたサンプルをI型IFN GSスコアの測定およびベースラインI型IFN GSスコアとの比較にかけるステップと;患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるステップとを含んでなり、患者のI型IFN GSの抑制は治効を示唆する。
【0155】
いくつかの態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法は、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者から採取されたサンプルから、I型IFN GSスコアを測定するステップと;ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを判定するステップと;患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を投与するように、保健医療提供者に指示するステップとを含んでなり、固定用量の抗体またはその断片は、疾患または障害を効果的に治療する。いくつかの態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者を治療する方法は、固定用量のI型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片を投与されている、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者からサンプルを得るステップと;サンプルからI型IFN GSスコアを測定するステップと;ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のI型IFN GSスコアが上昇しているかどうかを判定するステップと;患者のI型IFN GSスコアが上昇していれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大させるように、保健医療提供者に指示するステップとを含んでなり、患者のI型IFN GSの抑制は治効を示唆する。
【0156】
I型IFN媒介疾患または障害を有する患者の疾患進行をモニターまたは予後診断する方法では、治療薬の投与前または後に、サンプルを患者から得てもよい。場合によっては、治療薬は、異なる抗体またはその他の生物製剤(例えば融合タンパク質または抱合体)または小分子であり得る。この点において、本開示で提供される方法は、第1の治療法を受ける患者に適用し得て、I型IFN GSスコアを判定し、I型IFN GSスコアによって、第1の治療法を継続または中断するかどうかを決定する。本開示で提供される方法は、第1の治療法を受ける患者に適用し得て、I型IFN GSスコアを判定し、I型IFN GSスコアによって、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片または小分子投与で第1の治療法を置き換え、またはそれと組み合わせるかどうかを決定する。
【0157】
患者から得られるサンプルは、例えばI型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片または小分子などの第1の治療薬の投与に先だって得られてもよい。この状況では、患者は、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片に未感作である。代案としては、患者から得られるサンプルは、治療過程で、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与後に生じ得る。例えば治療薬は、モニタープロトコルの開始に先だって投与し得る。I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与に続いて、追加的なサンプルを患者から得て、I型IFN GS測定を比較し得る。サンプルは、同じタイプまたは異なるタイプであり得る。例えば得られる各サンプルは血液サンプルであり得て、または得られる各サンプルは皮膚または筋肉サンプルであり得る。各サンプル中で検出されるI型IFN GSは、同一であり得て、実質的に重複し得て、または類似し得る。
【0158】
サンプルは、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与の前または後のあらゆる時点で得られ得る。I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与後に得られるサンプルは、投与の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、または少なくとも14日後に得られ得る。
【0159】
I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与後に得られるサンプルは、投与の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、または少なくとも8週間後に得られ得る。I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与後に得られるサンプルは、投与に続いて、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、または少なくとも6ヶ月目に得られ得る。
【0160】
追加的なサンプルは、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与に続いて、患者から得られ得る。少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25個のサンプルを患者から得て、I型IFN媒介疾患または障害の進行または後退を経時的にモニターし得る。I型IFN媒介疾患または障害の進行は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4年間、少なくとも5年間、少なくとも10年間にわたり、または患者寿命にわたってモニターし得る。
【0161】
追加的なサンプルが、毎月、月2回、四半期毎、年2回、または毎年の間隔などで、定期的に患者から得られ得る。定期的に、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与に続いて、サンプルが患者から得られ得る。例えばI型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の各投与に続いて、1週間目、または2週間目、または3週間目、または1ヶ月目、または2ヶ月目に、サンプルが患者から得られ得る。代案としては、各投与に続いて、複数サンプルを患者から得てもよい。
【0162】
患者における疾患進行は、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与不在下で、同様にモニターし得る。サンプルは、疾患または障害を有する患者から定期的に得られ得る。より初期に得られたサンプルと比較して、後から得られたサンプル中でI型IFN GSスコアが増大した場合、疾患進行を同定し得る。I型IFN GSスコアは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10増大し得る。疾患進行は、型IFN GSスコアが少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%増大すれば、同定し得る。疾患進行は、I型IFN GS中のあらゆる所与のPDマーカーのレベルが、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%増大すれば、同定してもよい。I型IFN GS中のレベルが増大した上方制御されたPDマーカーの数は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、または少なくとも20であってもよい。I型IFN GS中の上方制御されたものの増大した数および増大したレベルの任意の組み合わせは、疾患進行を示し得る。
【0163】
疾患退縮はまた、治療薬で治療されない疾患または障害を有する患者においても同定し得る。この場合、退縮は、後に得られたサンプル中のI型IFN GSスコアが、より初期の得られたサンプルと比較して低下すれば、同定し得る。疾患退縮は、I型IFN GS中のあらゆる所与の上方制御されたPDマーカーのレベルが、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%低下すれば、同定し得る。I型IFN GS中のレベルが低下した上方制御されたPDマーカーの数は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、または少なくとも20であってもよい。疾患進行または疾患退縮は、任意の間隔で任意の期間にわたってサンプルを得ることで、モニターし得る。
【0164】
疾患進行または疾患退縮は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4年間、少なくとも5年間、少なくとも10年間、または患者の寿命にわたってサンプルを得ることでモニターし得る。疾患進行または疾患退縮は、少なくとも毎月、月2回、四半期毎、年2回、または毎年サンプルを得ることでモニターし得る。サンプルは、厳密な間隔で得られなくてもよい。
【0165】
I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与後のサンプル間のI型IFN GSスコアの不一致は、I型IFN媒介疾患または障害の治療ストラテジーの指針となり得る。治療ストラテジーは、例えば特定治療薬の用量の増大または低下、特定治療薬の投与頻度の増大または低下、患者に投与される特定治療薬の廃止または追加、治療の開始または中止などであり得る。したがって本開示は、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者において、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片の治療効果をモニターする特定の方法を提供する。いくつかの態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者において、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の治療効果をモニターする方法は、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者から採取されたサンプル中の第1のI型IFN GSスコアを測定するステップと;I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップと;抗体投与に続いて患者から採取されたサンプル中の第2のI型IFN GSスコアを測定するステップと;第2のI型IFN GSスコアを第1のI型IFN GSスコアと比較するステップとを含んでなり、第1および第2のI型IFN GSスコアの間の低下は、効能または優れた予後を示唆する。
【0166】
一態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者において、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の治療効果をモニターする方法は、I型IFN媒介疾患または障害がある患者から採取されたサンプルを第1のI型IFN GSスコアの測定にかけるステップと;I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を患者に投与するステップと;I型IFN媒介疾患または障害がある患者から採取されたサンプルを第2のI型IFN GSスコアの測定にかけるステップと;第2のI型IFN GSスコアを第1のI型IFN GSスコアと比較するステップとを含んでなり、第1および第2のIFN GSスコアの間の低下は、効能または優れた予後を示唆する。別の態様では、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者において、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の治療効果をモニターする方法は、I型IFN媒介疾患または障害を有する患者から採取されたサンプルから第1のI型IFN GSスコアを測定するステップと;I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片を投与するように、保健医療提供者に指示するステップと;抗体投与に続いて患者から採取されたサンプル中の第2のI型IFN GSスコアを測定するステップと;第2のI型IFN GSスコアを第1のI型IFN GSスコアと比較するステップとを含んでなり、第1および第2のI型IFN GSスコアの間の低下は、効能または優れた予後を示唆する。
【0167】
いくつかの特定の態様では、治療効果をモニターする方法は、例えば、
(a)固定用量投与後に、ベースラインIFN GSスコアと比較して、患者のより初期のIFN GSスコアと比較して、または双方と比較して、患者のI型IFN GSスコアを測定するステップと;
(b)引き続く固定用量投与後に、ベースラインIFN GSスコアと比較して、患者のより初期のI型IFN GSスコアと比較して、または双方と比較して、患者のI型IFN GSスコアを測定するステップと;
(c)固定用量投与後に、ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のより初期のI型IFN GSスコアと比較して、または双方と比較して、患者からのサンプルを患者のI型IFN GSスコアの測定にかけるステップと;
(d)引き続く固定用量投与後に、ベースラインI型IFN GSスコアと比較して、患者のより初期のI型IFN GSスコアと比較して、または双方と比較して、患者からのサンプルを患者のI型IFN GSスコアの測定にかけるステップと;
(e)上の2つ以上の手順の組み合わせ
をさらに含んでなる。
【0168】
その他の態様では、治療効果をモニターする方法は、例えば、
(a)患者のIFN GSスコアが上昇したままであれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大/低下させるステップと;
(b)患者のIFN GSスコアが上昇したままであれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大/低下させるステップと;
(c)患者のIFN GSスコアが上昇したままであれば、引き続く固定用量の量または頻度を増大/低下させるステップと;
(d)上の2つ以上の手順の組み合わせ
をさらに含んでなる。
【0169】
キット
本開示ではまた、発病がI型IFNによって媒介される、2つの疾患に共通のI型IFN遺伝子シグネチャ(IFN GS)を検出するキットも提供される。キットは、本明細書で開示されるPDマーカーをコードする核酸(例えばmRNA)またはその断片とハイブリダイズできる核酸プローブ(例えばオリゴヌクレオチド)が充填された容器を含んでなり得る。具体的には本開示は、患者サンプル中において、差次的に調節される薬力学(PD)マーカー遺伝子を測定できる診断アッセイのセットを含んでなる、例えばSScおよびSLEなどのその発病がI型IFNによって媒介される2つの疾患に共通するI型IFN遺伝子シグネチャ(I型IFN GS)を検出するキットであって、I型IFN活性を調節する固定用量の抗体またはその抗原結合断片の投与によってI型IFN GSが抑制されるキットもまた提供する。
【0170】
いくつかの態様では、キットは、IFI6、RSAD2、IFI44、IFI44L、IFI27、MX1、IFIT1、HERC5、ISG15、LAMP3、OAS3、OAS1、EPST1、IFIT3、LY6E、OAS2、PLSCR1、SIGLEC1、USP18、RTP4、およびDNAPTP6からなる群から選択される、少なくとも1つのPDマーカー遺伝子のためのオリゴヌクレオチドプローブを含んでなる。その他の態様では、キットは、上述のPDマーカー遺伝子を検出できる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21個のオリゴヌクレオチドプローブを含んでなり得る。いくつかの態様では、PDマーカー遺伝子は、2つ以上のオリゴヌクレオチドプローブによって検出し得る。オリゴヌクレオチドプローブは、例えば蛍光性のまたは放射性の標識を使用するなど、当該技術分野で公知のあらゆる方法によってラベルし得る。キット中のオリゴヌクレオチドプローブは、未標識であり得る。いくつかの態様では、キットはまた、対照および/または較正基準も含有する。
【0171】
その他の態様では、キットは、例えばIFI27、IFI44、IFI44L、およびRSAD2などの少なくとも5個のPDマーカー遺伝子のためのオリゴヌクレオチドプローブを含んでなる。いくつかの態様では、キットは、IFI6のためのオリゴヌクレオチドプローブもまた含んでなる。
【0172】
いくつかの態様では、血液またはその一部、筋肉、皮膚、またはそれらの組み合わせなどの患者サンプルの診断または研究目的のために、キットを使用し得る。キットは、DNAおよび/またはRNAとハイブリダイズできる、オリゴヌクレオチドを含んでなり得る。このようなDNAおよび/またはRNAは、完全な遺伝子核酸、または対応する断片または分解産物であり得る。いくつかの態様では、キットは、好ましくは、精製形態において、本明細書で開示されるPDマーカーまたはその断片について使用し得る。
【0173】
キットの容器には、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する行政機関によって規定される形式の注意書きが任意選択的に付随し得て、その注意書きは、機関による、ヒト投与のための製造、使用または販売の認可を反映する。
【0174】
コンピュータ実装方法およびコンピュータ可読媒体
本開示は、コンピュータにより実現される、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による最適投薬計画を予測する方法、I型IFN媒介疾患または障害を治療する治療薬候補として、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片を同定する方法、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による治療法の候補として、患者を同定する方法、およびI型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による、I型IFN媒介疾患または障害を治療するための個別化治療法をデザインする方法もまた提供する。
【0175】
これらの方法では、第2のI型IFN媒介疾患または障害からのPK/PDデータを、第1のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータに基づく薬物動態-薬力学(PK/PD)確率モデルを含んでなるコンピュータシステムに入力し、入力された第2のI型IFN媒介疾患または障害からのPK/PDデータを使用して、PK/PD確率モデルを補正する。補正PK/PD確率モデルは、入力された第2のI型IFN媒介疾患または障害からのPK/PDデータに適用し得る。入力された第2のI型IFN媒介疾患または障害からのPK/PDデータへの補正PK/PD確率モデルの適用に基づいて、最適投薬計画、候補治療薬、治療法の候補患者、または個別化治療法を同定し得る。
【0176】
本開示は、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による最適投薬計画を予測するプログラム命令、I型IFN媒介疾患または障害を治療するための治療薬候補として、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片を同定するプログラム命令、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による治療法の候補として患者を同定する命令、およびI型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片によって、I型IFN媒介疾患または障害を治療するための、個別化治療法をデザインする命令を含む、コンピュータ可読媒体もまた提供する。コンピュータシステムの1つまたは複数のプロセッサによるプログラム命令の実行は、1つまたは複数のプロセッサに、(a)第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPK/PDデータをプロセッシングするステップと;(b)第2のI型IFN媒介疾患または障害からのプロセシングされたPK/PDデータによって、第1のI型IFN媒介疾患または障害に対応するPK/PDデータに基づくPK/PD確率モデルを補正するステップと;(c)確率論的シミュレーションを実行して、第2のI型IFN媒介疾患または障害からの入力されたPK/PDデータに、補正PK/PD確率モデルを適用するステップとを実行させる。シミュレーション結果は、例えば、第2のI型IFN媒介疾患または障害におけるI型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片の最適用量、第2のI型IFN媒介疾患または障害を治療するための治療薬候補として、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片、I型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片による治療法の候補としての、第2のI型IFN媒介疾患がある患者、またはI型IFN活性を調節する抗体またはその抗原結合断片によって第2のI型IFN媒介疾患または障害を治療するための個別化治療法を同定する。
【0177】
本明細書で開示されるコンピュータ実装方法およびコンピュータ可読媒体は、独立型ツールとしてまたはサーバーを介してのいずれかで、保健医療提供者が使用するためのツールとして実装し得る。ツールは、コンピュータ可読の構成要素、入力/出力系、および1つまたは複数のプロセッシングユニットを含み得る。入力/出力系は、データおよびその他の情報を入力および出するための、そして1つまたは複数のプロセッシングユニットによる実施可能な相互作用のための、ユーザーとコンピュータシステム間のあらゆる適切なインターフェースであり得る。一態様では、ツールに入力されるデータは、試験管内または生体内起源に由来し得る。いくつかの態様では、ユーザーは、システムパラメータの定数の1つまたは複数を変更することで、代案を評価し得る。順方向操作では、ユーザーは、比較的少数の入力変数から、化合物の吸収、個々の吸収パラメータ、ならびに1つまたは複数のその他の生物学的利用能パラメータを予測し得る。さらにユーザーは、システムのパラメータおよび定数のいずれかを変化させて、全てのその他のパラメータに対する、1つまたは複数のパラメータの変化の波及効果を観察することで、代案を評価し得る。例えばユーザーは、任意のシステムパラメータで「What if」分析を使用して、代案の吸収プロファイルを評価し得る。
【0178】
逆方向操作では、ユーザーは、興味深い調合物の1つまたは複数の目的パラメータを指定して、本開示のツールおよび方法が、目的を満たす代案を作成し得る。ユーザーはまた、「What if」分析のために、入力用量および調合物パラメータを変動させ得る。次に適切な製剤および/または投薬計画を作成するために、シミュレートされた吸収プロファイルを利用し得る。溶解度、透過度、生物学的利用能、用量などもまた、逆方向操作で推定してもよい。
【0179】
いくつかの態様では、入力/出力系が、直接入力形態測定機器を提供してもよい。入力/出力系は、好ましくは、データプロセッサ、記憶、およびディスプレイを有する、独立型コンピュータまたは統合マルチコンポーネントコンピュータシステムのためのインターフェースを提供する。データは、数学的表現として、または生理学的または薬物動態パラメータを表すグラフとして、数値的に入力されてもよい。
【0180】
本明細書で言及される全ての特許および刊行物は、その内容全体を明示的に参照によって援用する。
【実施例
【0181】
材料と方法
患者集団および研究デザイン
Declaration of Helsinki(1996)、International Conference on Harmonisation Guidelines for Good Clinical Practice(Topic E6)、Institutional Review Boards(21 CFR Part 56)、およびInvestigational New Drug Application(21 CFR Part 312)に従って、びまん性強皮症(SSc)がある成人患者における非盲検コホート用量漸増第I相試験(ClinicalTrials.gov identifier NCT00930683)を実施して、I型インターフェロン受容体のサブユニット1に対する完全ヒトモノクローナル抗体であるMEDI-546の単回および複数静脈内投与の安全、耐容性、薬物動態(PK)、免疫原性、および薬物動力学(PD)を評価した。プロトコルは、試験開始に先だって、施設内審査委員会または各参加センターの独立した倫理委員会によってレビューされ、認可された。あらゆるプロトコル固有行動の実施または研究参加前に、書面によるインフォームドコンセントが、各参加者から得られた。
【0182】
反復生検に適した領域に皮膚肥厚を有する、合計34人の成人びまん性SSc患者が登録されて、少なくとも30分間にわたる静脈内(IV)点と賭して投与される、MEDI-546の単回(0.1、0.3、1.0、3.0、10.0、または20.0mg/kg)、または複数回投与(0.3、1.0、または5.0mg/kg毎週×4)を受けた。0.1mg/kgの開始用量は、霊長類薬理学的活性用量(PAD)のヒト相当用量(HED)と、橋渡しシミュレーションからのヒトにおけるMEDI-546のIFNAR占有の短い予測持続時間とに基づいた。コホート名称、患者統計、およびベースラインI型IFN GS状態は、表4に要約される。
【0183】
【表4】
【0184】
PK試料採取および生物分析アッセイ
メソスケールディスカバリー(MSD)プラットフォーム上の検証済み電気化学発光(ECL)アッセイを使用したMEDI-546濃度の測定のために、投与前と、84日目まで(単回投与コホート)または105日目まで(複数回投与コホート)の所定の時点で、全ての患者から血清PKサンプルを得た。手短に述べると、MEDI-546は、ストレプトアビジン被覆MSDプレートに結合した、ビオチン化可溶性インターフェロンα受容体(sIFNAR1)によって捕捉された。捕捉MEDI-546は、変異して抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)が排除された、MEDI-546のFc領域内の特徴的なアミノ酸を特異的に標的にする、スルホTAG標識モノクローナル抗体によって検出された。ECLシグナルの生成と測定のために、MSD読み取り緩衝液を添加して、MSD Sector(商標)画像装置モデル6000読み取り装置上に載せた。アッセイは、ヒト血清中で、20~1,280ng/mLのMEDI-546測定範囲を有した。
【0185】
全RNA抽出物およびマイクロアレイ処理
スクリーニング時および所定のPK来院時に、全血サンプルを全ての患者から採取して、I型IFN誘導遺伝子のmRNAレベルを測定した。皮膚生検もまた、投与前(0日目)および7日目(単回投与)または28日目(複数回投与)に採取した。ヒトゲノムU133 Plus 2.0アレイプラットフォーム(Affymetrix,Santa Clara,CA)を使用して、皮膚生検サンプルを採取した、マッチさせたSSc患者標本からの全血中および病変皮膚中のMEDI-546の効果を評価した。サンプル処理の一般手順およびマイクロアレイ試験のデータ解析については、先に記載されている(Yao et al.,Hum.Genomics Proteomics 2009:374312(2009);Yao et al.,PLoS One 3:e2737(2008))。
【0186】
I型インターフェロン(IFN)遺伝子シグネチャ(GS)の計算
個人に存在するI型IFN活性の量を発現するために使用された量である、I型IFN GSスコアは、全血または皮膚中で測定された。I型IFN GSスコアは、各対象毎に、5個の遺伝子(IFI27、IFI44、IFI44L、RSAD2、およびIFI6)の組を使用して計算された。24個の正常対照サンプルの組の中の各遺伝子について、log2スケール上で算術平均を計算し、個々の疾患対象と、正常対照サンプルの平均ベクターの間で、各遺伝子の差を計算した。
【0187】
5個のI型IFN誘導遺伝子を使用して、上で計算された倍数変化(FC)データマトリックスのサブセットを作成した(寸法=X*n、式中、nは全対象サンプル数である)。各対象の5個の遺伝子の中央値をFCスコアとして計算した。次に式2FCを使用して、FC値を均等目盛に転置し、I型IFN GSスコアと命名した。各対象について、ベースラインおよび投与後の各時点の双方で、I型IFN GSスコアを計算した。次に各用量コホートのI型IFN GSスコア中央値を経時的にプロットし、異なる用量レベルにおけるI型IFN活性の抑制度を示した。
【0188】
次に標的調節を 投与後I型IFN GSスコア(GS)と、投与前I型IFN GSスコアの比率として計算した。この量は百分率として表され、各使用量コホートについて、GS値に調整した。次にこの量を100%から差し引いて、0日目における(投与前)全ての患者が100%標的調節から開始するように、I型IFN GSの残りの百分率を示した。
【0189】
ベースラインで好ましいI型IFN GSスコアがある患者のみについて、上述の方法の双方を使用してPDデータが計算された。ベースラインにおけるI型IFN GSスコアの分布は、異なる疾患適応症および標本起源で異なった。例えばSLE患者血液標本のベースラインI型IFN GSスコア中央値は、SSc患者のものよりも高かった(図1)。この同一パターンは、これらの2つの疾患の皮膚標本中で強化された。SLE患者では、皮膚中のベースラインI型IFN GSスコア中央値は、血液標本中よりもわずかに高かった。SSc患者では、血中のI型IFN GSスコア中央値は、皮膚標本のものよりも高かった。正常な健常対照と比較して、I型IFN GSスコアは、疾患および標本起源分布の双方でより高かった。
【0190】
受容体内部移行動態
IFNAR1の結合時のMEDI-546の内部移行は、生きた細胞の共焦点蛍光性画像診断技術を使用して評価された。MEDI-546およびアイソタイプ対照IgGは、Invitrogen(Life Technologies Corp,Carlsbad,CA)からの染料コンジュゲーションキット(A-20186)を使用して、Alexa647で蛍光標識された。反応混合物は、キットで提供されるサイズ排除ミニカラムを使用して、組み込まれていない蛍光性の分子から精製した。10%FBSを含有するRPMI増殖培地を使用して、IFNAR1を発現するTHP-1細胞を懸濁状態で維持し、実験に先だって一晩、新鮮増殖培地中に2×105細胞/mLで播種した。実験日にはTHP-1細胞を洗浄し、3×10細胞/mLの濃度に再懸濁した。
【0191】
細胞懸濁液を最初に、37℃のCOインキュベーター内で、Invitrogen(Life Technologies Corp,Carlsbad,CA)からの細胞質ゾル染料CFSEで10~20分間染色した。1×PBSで2回洗浄して、過剰なCFSEを除去した。次に細胞を予冷し、FcRブロッカーでブロックしてFcR媒介結合を阻止し、1μg/mLのMEDI-546-Alexa647またはIgG-Alexa647により、氷上で1~2時間染色した。遠心分離による組み込まれていない抗体の除去に続いて、細胞を最初の容積に再懸濁し、384ウェルイメージング用プレート内に分注した。
【0192】
次に細胞を共焦点蛍光画像装置Opera(Perkin Elmer,Waltham,MA)の環境調節チャンバー(37℃、5%CO2および70%湿度)に移し、開口数が0.9の40倍対物レンズを使用して所定の時点で蛍光画像を撮影し、MEDI-546-Alexa647の内部移行の動態をモニターした。得られた動態画像は、細胞の膜および原形質コンパートメント中の蛍光強度を定量化する、社内開発されたアルゴリズムを使用して分析した。細胞質領域内のMEDI-546-Alexa647蛍光の経時的蓄積は、全蛍光(膜と細胞質)によって正規化し、内部移行速度の評価のために、正規化データを使用した。
【0193】
PK-PDモデル構造
並列一次およびIFNAR媒介排出経路がある2コンパートメントPKモデルを開発して、SSc患者において観察された、MEDI-546の血清濃度プロファイルを説明した(図4)。一次排出経路は、内在性IgGの場合と同じように、細網内皮系(CLres)によるMEDI-546のクリアランスに相当する。非線形排出経路は、おそらくIFNAR媒介クリアランス(抗原シンク効果)と関連する。Rは標的受容体(IFNAR1)を表し、AbRは抗体-受容体複合体である。
【0194】
MEDI-546は、受容体(kon、koff)に結合し、引き続いて抗体-受容体複合体が内部に取り入れられ、細胞内で分解される(kint)。パラメータksynおよびkdegは、それぞれIFNAR1の内在性生成および分解に相当する。
【0195】
準定常状態近似である、一次排出および標的媒介薬物処理がある2コンパートメントPKモデルは、以下の微分方程式の組によって記述された:
【数1】
式中、
Tissue=末梢組織コンパートメント内のMEDI-546の量;
C=中心コンパートメント内の遊離(非結合MEDI-546)の濃度;
tot=中心コンパートメント内の全(遊離および結合)MEDI-546;
RC=薬物-受容体複合体(Ab・R)の濃度;
tot=全(遊離および結合)受容体濃度、R+Ab・R;
el=一次排出定数;
int=内部移行(複合体排出)速度定数;
deg=分解(遊離受容体排出)速度定数;
syn=受容体生成速度;
on=結合速度定数;
off=解離速度定数;
=定常状態速度定数;
SerumTissue、kTissueSerum=中心血清コンパートメントと末梢組織コンパートメント間のコンパートメント間移送の速度定数;
入力=静脈内輸液速度;および
V=MEDI-546の中心分布容積。
【0196】
中心および末梢コンパートメント内の遊離薬物濃度の経時的変化は、方程式6および7によって表された。式8は、遊離薬物およびRtotに関して、全受容体濃度の経時的変化を表した。
【0197】
モデルの過剰なパラメータ化を回避するために、速度定数kdegおよびkintは、同一であり、共焦点画像診断によって実験的に測定される値に固定していると仮定した。
【0198】
各コンパートメントの初期状態は、次のとおりであった:
C(0)=D/V;
Tissue(0)=0
RC(C)=0
R(0)=ksyn/kdeg;および
GS(0)=kin/kout
【0199】
橋渡しシミュレーションの目的で、皮膚組織を表す追加的なコンパートメントをPK-PDモデルに含めた(図4)。MEDI-546の皮膚コンパートメントへの分配は、以下の式によって記載される。
【数2】
【0200】
中心コンパートメントから皮膚へのMEDI-546の分配は、0.27d-1の皮膚から血液への速度定数(ksb)によって特徴付けられ、それは、健康なボランティアにおけるIL-13に対するモノクローナル抗体であるCAT-354の推定吸収速度(Oh et al.,Br.J.Clin.Pharmacol.69:645-655(2010))、および0.25・ksbの分布速度定数(血液から皮膚への、kbs)に対応する。kbs速度定数は、平衡状態における0.25の皮膚:血清MEDI-546濃度比を反映するようにスケールされる。このモデルでは、皮膚へのMEDI-546分配のために、中心コンパートメント内の質量は失われないと仮定される。
【0201】
MEDI-546は、インターフェロンとIFNAR1との相互作用をブロックし、以下の式に従って、I型IFN遺伝子の生成を阻害した(kin):
【数3】
式中、
GS=I型IFN遺伝子シグネチャスコア;
max=最大阻害割合;
IC50=効力、GS生成の最大阻害半量に相当するMEDI-546濃度;
in=内在性GS生成速度;および
out=GS排出速度定数。
【0202】
PDコンパートメント(末梢血中GS)の0時における初期条件は、次のとおりであった:
GS(0)=kin/kout
【0203】
皮膚組織中でI型IFN GS応答をシミュレートするために、I型IFN遺伝子が局所的に生成されて、MEDI-546によって同様に抑制されると仮定した。皮膚IFN遺伝子シグネチャ(kinskin)の生成速度は、全血中のI型IFN GS以下の基線値を反映するように補正した。
【0204】
SSc患者におけるMEDI-546の母集団PK-PDモデル化
薬物統計学ソフトウェアパッケージNONMEM(バージョン7.1、ICON Development Solutions,Elliott City,Maryland)を使用して、データ解析を実施した。モデル開発は、NONMEM目的関数値(可能性の対数の-2倍)および重み付き残差の偶発性に基づいた。モデル開発のために、相互作用(FOCEI)法による一次条件付き評価を使用した。
【0205】
対象の体重ベース用量(mg/kg)および記録体重によって、各対象が投与された(mg)総用量を計算した。個人間の変動は、乗法変量効果としてモデル化した:θ・exp(η)、式中、θは、構造パラメータの基準値に相当し、ηは個体特異的正規分布変量効果であった。残差変動性は、以下のようにモデル化される:
Y=F+F*εproportional+εadditive
式中、YはPKまたはPD観察値であり、Fは対応するモデル予測値であった。
【0206】
残差εは正規分布し、平均が0で、推定される未知の分散があると仮定された。予備的共変量解析を実施して、CLresおよびVに対する体重の効果を評価した。双方のパラメータは、典型的な体重である70kgに相対的にスケールし、(体重/70)θ、式中、θは、出力係数を表した。
【0207】
PsN-Toolkit(Lindbom et al.,Comput Methods Programs Biomed.79:241-257(2005))を使用して、視覚予測検査手順(Holford,in 14th meeting of the Population Approach Group in Europe.(Pamplona,Spain,2005))、およびブートストラップ再サンプリング法(Ette,J.Clin.Pharmacol.37:486-495(1997))によって、モデル安定性および性能を評価した。VPCでは、シミュレーションテンプレートとしてのオリジナルデータセットと共に、最終固定効果およびランダム効果モデルパラメータを使用して、90%間隔の1,000個のシミュレートされたプロファイルを作成した。各時点でシミュレートされた濃度の中央値、5位、10位、90位、および95位パーセンタイル値を計算してプロットした。
【0208】
シミュレートされたプロファイルに由来する、観察されたデータおよび予測間隔の間でグラフの比較をした。ブートストラップ再サンプリング法を使用して、パラメータ推定値を検証した。このモデル評価は、データセットの1,000個のブートストラップ複製に、モデルを繰り返し適合させることからなった。オリジナルデータセット中の患者の総数まで復元抽出して、患者データを無作為にサンプリングすることで、データセットを複製した。1,000個のパラメータ推定値の中央値を、オリジナルデータセットによって得られた推定値と比較した。各パラメータの95%信頼区間(CI)は、ブートストラップパラメータ推定値の2.5~97.5パーセンタイル値範囲と計算された。
【0209】
SLE患者におけるMEDI-546の確率シミュレーション
SScのPK-PDモデル開発を引き続いて使用して、複数のMEDI-546投与時のSLE患者におけるI型IFN GSおよび標的調節プロファイルをシミュレートした。皮膚組織を表す追加的なコンパートメントを、PK-PDモデルに追加した。SLE患者におけるMEDI-546のPKは、SSc患者と同一であると仮定された。SSc患者よりも高い基線値を反映して、IFN関連GSスコアの生成速度(kin)は、SLE患者で増大した。先行する抗IFNαmAb臨床試験に登録されたSLE患者の、再サンプリングされた実測ベースラインGSスコアと体重を使用して、確率シミュレーションを実施した(Higgs et al.,Ann.Rheum.Dis.70:2029-2036(2011);Yao et al.,Arthritis Rheum.60:1785-1796(2009);Yao et al.,PLoS One 3:e2737(2008);Yao et al.,Hum.Genomics Proteomics 2009:374312(2009);Yao et al.,Arthritis Res.Ther.12(Suppl 1):S6(2010);Merrill et al.,Ann.Rheum.Dis.70:1905-1913(2011))。皮膚組織GSスコアをシミュレートするために、血清から組織へのMEDI-546の分配は25%と仮定された(Paquet et al.,Exp.Dermatol.15:381-386(2006))。
【0210】
[実施例1]
PDマーカーとしてのI型IFNシグネチャ
SLEおよびSScにより共有される、5個の遺伝子I型IFN GSを使用して、血中および疾患組織(皮膚)中の双方で、複合PD生物マーカーを開発した。5個の遺伝子I型IFN GSは、血液中のI型IFN活性の信頼できるサロゲートであり、ならびにSLEおよびSScのベースライン疾患活動性と相関する。SLEまたはSSc患者からの血液および皮膚標本間のこのGSスコアはまた、強力に一致して(Higgs et al.,Ann.Rheum.Dis.70:2029-2036(2011)、MEDI-546の薬理学的効果を測定するためのPD生物マーカーとして、血中のこのI型IFNシグネチャを使用できるようにする。
【0211】
MEDI-546のPDを測定するために使用された5個のI型IFN-誘導性遺伝子(IFI27、IFI44、IFI44L、RSAD2、およびIFI6)は、既述のSLEにおける抗IFN-αmAb療法であるシファリムマブのためのPDマーカーとして使用される21個の遺伝子の一部である(Yao et al.,Arthritis Rheum.60:1785-1796(2009);Yao et al.,Hum.Genomics Proteomics 2009:374312(2009);Yao et al.,Arthritis Res.Ther.12(Suppl 1):S6(2010))。これらの21個の遺伝子は:IFI6(インターフェロン、アルファ誘導タンパク質6)、RSAD2(遊離基S-アデノシルメチオニンドメインを含有する2)、IFI44(インターフェロン誘導性タンパク質44)、IFI44L(インターフェロン誘導タンパク質44、like)、IFI27(インターフェロンα誘導性タンパク質27)、MX1(ミクソウイルス(インフルエンザウイルス)耐性1、インターフェロン誘導性タンパク質p78)、IFIT1(テトラトリコペプチド反復があるインターフェロン誘導性タンパク質1)、HERC5(hectドメインおよびRLD5)、ISG15(ISG15ユビキチン様修飾剤)、LAMP3(リソソーム結合膜タンパク質3)、OAS3(2’-5’-オリゴアデニル酸シンセターゼ3、100kDa)、OAS1(2’-5’-オリゴアデニル酸シンセターゼ1、40/60kDa)、EPST1(上皮間質相互作用1(乳房))、IFIT3(インターフェロン誘導性タンパク質withテトラトリコペプチド反復3)、LY6E(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座E)、OAS2(2’-5’-オリゴアデニル酸シンセターゼ2、69/71kDa)、PLSCR1(リン脂質スクランブラーゼ1)、SIGLEC1(シアル酸結合Ig様レクチン1、シアロアドヘシン)、USP18(ユビキチン特異的ペプチダーゼ18)、RTP4(受容体(化学感覚)輸送体タンパク質4)、およびDNAPTP6(DNAポリメラーゼ-トランス活性化タンパク質6)である(その内容全体を参照によって本明細書に援用する、国際公開第2008/070137号パンフレットを参照されたい)。
【0212】
21個のI型IFN遺伝子シグネチャ(GS)は、第Ia相臨床試験で、軽度から中等度のSLE患者において、シファリムマブでの治療に続いて、用量依存的様式で中和されることが示された(Yao et al.,Arthritis Rheum.60:1785-1796(2009);Merrill et al.,Ann.Rheum.Dis.70:1905-1913(2011))。SLEにおいて、5および21個の遺伝子I型IFN遺伝子シグネチャの間には、強力な相関があった(Higgs et al.,Ann.Rheum.Dis.70:2029-2036(2011))。SLEでは、双方のI型IFN遺伝子シグネチャがMEDI-546の適切なPDマーカーであったが、SScにおけるMEDI-546治験では、5個の遺伝子PDマーカーを使用した。
【0213】
簡単に述べると、I型IFN GS中の5個の遺伝子は、3つの主要基準に基づいて選択された:
(1)健常対照と比較した、SScおよびSLE患者における過剰発現の蔓延および規模;
(2)生体外において健康なドナーからの全血中で、I型IFNによって誘導される能力;および
(3)生体外において健康なドナー末梢血単核細胞中で、SLE血清による刺激後に、MEDI-546によって実質的に抑制される能力(Yao et al.,Hum.Genomics Proteomics 2009:374312(2009))。
【0214】
SLEおよびSSc患者の血液および病変皮膚中における、I型IFN GSスコアの過剰発現は、記載される5個の遺伝子の発現レベルによって計算された(全例で統計学的に有意)(図1)。I型IFN GSスコアのベースラインレベルは、SScおよびSLE患者の双方において、血液および病変皮膚間で一致した(例えばHiggs et al.,Ann.Rheum.Dis.70:2029-2036(2011)を参照されたい)。
【0215】
[実施例2]
MEDI-546はSSc患者中においてI型IFNシグネチャを用量依存的様式で完全に抑制した
SScにおけるMEDI-546のFTIH試験で、上述のI型IFN GSを使用した。投薬依存的PD効果の観察に加えて、この研究は、I型IFNシグナル伝達経路を標的とする抗が、I型IFNが病因において役割を果たしているかもしれない疾患において、血液および疾患組織の双方で、I型IFNシグネチャを正常化する能力を有することを初めて示した。さらに、SLEにおけるのと同レベルのI型IFNシグネチャを有する幾人かのSSc患者では、MEDI-546治療に続いて、I型IFNシグネチャのほぼ完全な抑制が観察された(抑制持続期間は用量の違いに応じて変動した)。
【0216】
前出の表4は、MEDI-546治療を受ける前に、FTIH試験(MI-CP180)に登録したSSc患者について、ベースライン統計と、I型IFN GSスコア測定によるI型IFN GS状態の要約を示す(GS;ベースライン;治療前)。SSc患者の血液および皮膚中のI型IFN GS陽性のカットオフは、それぞれGS>2.9andGS>1.8であった。これらのI型IFN GS閾値は、54人および30人の健康なドナーの血液および皮膚中のI型IFN GSの分布の平均±2標準偏差の上方限界に相当した(血中1.2±1.7、皮膚中1.0±0.8;図1)。血液および皮膚の双方においてベースラインでI型IFN GSスコアについて陽性だった全てのSSc患者について、各単回または複数回投与コホートのI型IFN GSスコアの観察された中央値を計算し、経時的にプロットした(図2)。研究期間中に、I型IFN GSが、健康なドナーにおける血液および皮膚の各平均値未満に調節された、これらの用量コホートは、I型IFN GSの完全な抑制を達成した。
【0217】
SSc患者におけるI型IFN GSの持続性およびほぼ完全な調節は、20.0mg/kgの単回投与、1.0mg/kgおよび5.0mg/kgの複数回投与の3つの高度曝露コホートの血中で観察された。皮膚中のI型IFN GSの完全な抑制は、20.0mg/kgの単回投与および1.0mg/kgの複数回投与の2つのコホートで観察された。5.0mg/kgの複数回投与コホートは、1人のGS陽性患者のみを含んだ。このコホートの小規模なサンプルサイズは、おそらくPD効果の正確な評価を提供できなかったが、この患者について図2Dに示されるI型IFN GS抑制の百分率は、全体的傾向に一致した。
【0218】
破線(図2Aおよび2B)として示される、この健常対照プール中の最低I型IFN GSスコアは、健常対照集団中のI型IFN GS値の最低限界を示し、MEDI-546治療コホート中のI型IFN GS陽性患者は、いずれもそれを下回らなかった。全体的には、SSc患者におけるMEDI-546によるI型IFN GSの用量依存的標的調節(前出の方法を参照されたい)(すなわちPD効果)は、全血および皮膚の双方で観察された。
【0219】
0.3mg/kg(単回および複数回投与の双方)コホートを除いて、全てのその他のコホートの血中で、I型IFN GSの正常化が最高2週間まで観察された。上述したように、3つの最大曝露用量コホートが、より持続性のあるPD効果を提供した。治験中の幾人かのSSc患者は、SLE患者と同等の高いI型IFN GSベースラインを有したことに留意すべきである。MEDI-546治療に続くほぼ完全な標的調節は、これらの患者で最初の投薬に続いて観察され、応答持続期間は投薬スケジュールに基づいて変動した(図7)。
【0220】
[実施例3]
受容体内部移行動態
生きた細胞の共焦点蛍光イメージング技術を使用して、IFNAR1を発現するTHP-1細胞中のMEDI-546内部移行の動態を定量的に評価した(図3)。蛍光標識MEDI-546(MEDI-546-Alexa647)がTHP-1細胞に結合した一方で、MEDI-546のアイソタイプ対照であるIgG-Alexa647の結合は観察されなかった。この結果は、MEDI-546によるTHP-1細胞の特異的結合を実証した(図8)。共焦点蛍光画像装置を使用して、細胞表面から細胞質へのMEDI-546-Alexa647の移行を経時的にモニターした。MEDI-546-Alexa647の内部移行の前と後における、細胞質(CFSE)および抗体(Alexa647)シグナルの蛍光画像の重ね合わせは、それぞれ図3Aおよび3Bに示される。
【0221】
最初は、MEDI-546関連蛍光の大部分が細胞表面に局在化した一方で(図3A)、40分目には、MEDI-546-Alexa647シグナルは、細胞質中に位置する断続スポットに見られた(図3B)。経時的に記録された動態画像は、定量的アルゴリズムを使用して解析した。MEDI-546-Alexa647の細胞質への内部移行の経時変化は、4つの独立した実験から得られるデータから構築された(図3C)。内部移行半減期は、12.9±1.2(標準偏差)分間と推定された。
【0222】
[実施例4]
SSc患者におけるMEDI-546の母集団PK-PDモデル化
SLE中で抗IFN-αmAbを評価する先の臨床試験(Yao et al.,Arthritis Rheum.60:1785-1796(2009); Merrill et al.,Ann.Rheum.Dis.70:1905-1913(2011))からの以前の知識と共に、共焦点画像診断から判定されたPD生物マーカーデータおよび標的受容体内部移行動態を、MEDI-546SScデータの母集団解析と、SLEの確率シミュレーションのためのPK-PDモデルに組み込んだ。
【0223】
MEDI-546のための機構的PK-PDモデルを作成した(図4を参照されたい)。このモデルによると、静脈内(IV)投与に続いて、IFNAR1(R)に結合したMEDI-546(Ab)および抗体-受容体複合体は、引き続いて細胞内部に取り込まれて分解された(kint)。MEDI-546(I型IFN GSスコア)のPDは、その中でI型IFN誘導性遺伝子生成がMEDI-546によって阻害される、間接的応答モデルによって最も良く説明される。MEDI-546投与された全ての34人の患者からの合計202の数量化可能PK観察、および22人のI型IFN GS陽性患者からの末梢血中で観察された147のI型IFN GSスコアが、モデル化データセットに含まれた。モデル開発中に同定された、体重残差値が誇張されている(5を超える絶対値)、異なる患者からの4つの外れ値PD観察は、最後の解析から除外された。
【0224】
推定PK-PD構造および分散パラメータは、表5に要約される。
【0225】
【表5】
【0226】
表に含まれるパラメータは、次のとおり:CLRES=一次排出経路に対応するMEDI-546クリアランス;V=中心分布容積;Q=中心血清コンパートメントと末梢組織コンパートメントの間のマブリリムマブ移送に対応するコンパートメント間クリアランス;V=末梢分布容積;Kss=定常状態定数、見かけの平衡解離定数;R=ベースラインIFNAR1レベル;kint=内部移行速度定数;Imax=最大阻害割合;IC50=効力、GS生成の最大阻害半量に対応するMEDI-546濃度;GS=ベースラインI型IFN GS;kGS=GS排出(分解)速度定数;およびGSFLOOR=GS測定値の理論的下限。
【0227】
一次クリアランス(CLRES,0.198L/d)は、抗原シンク効果の対象でない内在性IgGに近かった。中心分布容積(V、3.46L)がヒトにおける血清容積よりもわずかに大きかった一方で、より小さな末梢分布容積(V、2.52L)は、モノクローナル抗体について予測されたように、MEDI-546の限定的な血液外分布を示唆した。MEDI-546/IFNAR1複合体(kint)の内部移行速度は、試験管内共焦点イメージング実験から判定された値に固定した。末梢血中の母集団ベースラインI型IFN GS、GSは7.30であり、IC50 (効力)は0.978nMであった。I型IFN GSスコアの排出定数(kout)は1.92d-1であり、全血中のIFNAR結合mRNAの8.7時間の半減期に対応した。最低パラメータfGS (0.764)は、PDアッセイの下方限界の理論的解析下方限界に相当する。
【0228】
IV投与に続いて、個人間のPK変動性は、SSc患者では中等度であった。CLRESおよびVのどちらも体重と共に増大した。薬物統計学評価から、PKに対する体重の共変量効果は、IgGの基準値と有意に異ならず、したがって最終PKモデル中では、体重効果に対応する指数は、0.75(CLRES)および1.0(V)のデフォルト値に固定された。体重効果が組み込まれた場合、個人間の変動性は、CLRESでは54.1%から29.1%に、Vでは35.1%から19.6%に低下した。MEDI-546濃度に関する比例的誤差の推定分散は、0.0242であり、それは15.6%CVのアッセイ精度に相当する。相加的残差成分の推定標準誤差は0.0263μg/mLであり、アッセイ定量下限(0.02μg/mL)に近い。
【0229】
MEDI-546PKと比較して、I型IFN GSデータはより変動する。個人間の変動性(%CV)は、IC50では93.8%であり、ベースラインGSスコアでは55.8%である。PDアッセイの推定比例的残差は、40.5%CVであった。
【0230】
4人の典型的な患者(単回投与コホートから2人および複数回投与コホートから2人)からのPKおよびPDプロファイルは、図5に提示される。黒丸が、末梢血中で観察されたPKまたはI型IFN GSスコアを表す一方、実線は、それぞれ母集団(灰色の線)および個人(黒色の線)モデル予測を表す。全ての観察されたおよびモデル予測された、個々のPKおよびPDプロファイルは、図9A、9B、10A、および10Bに示される。標的調節はモデル予測されたI型IFN GSスコアから計算され、観察値と比較された(図11Aおよび11B)。1.0mg/kg以上の用量は、SSc患者において完全な標的調節を達成した。標的調節応答の持続期間は、用量依存的であり:より高い用量は、完全な標的調節の持続期間を長期化した。
【0231】
PK-PDモデルの性能は、その中で観察が、1,000個の複製からのシミュレートされたプロファイルと重ね合わされる、視覚予測検査によって評価した(図12および13)。ほとんどの観測は、シミュレートされたプロファイルの中央値に集中し、5位と95位のパーセンタイル値内にカプセル化されて、薬物統計学モデルが、MEDI-546のPKおよびPDの特性と、個体間変動性を十分に捉えていることを実証した。
【0232】
MI-CP180臨床試験では、皮膚生検は、投与前と、投与後の1時点(単回投与コホートでは7日目、複数回投与コホートでは28日目)のでのみ採取した。皮膚中のI型IFNシグネチャの情報が限定的であることを考慮して、SSc患者におけるこの第I相試験では、GSスコアをモデル化しなかった。これらのデータを使用して、MEDI-546治療後の皮膚組織中のGS応答の予測における、PK-PDモデルの効用を評価した。皮膚GS予測は、IgGの組織:血清分布比(Paquet et al.,Exp.Dermatol.15:381-386(2006))、25%と、皮下投与されたIgGの投薬部位からの吸収に典型的な皮膚から血液への速度定数、0.27d-1(Oh et al.,Br.J.Clin.Pharmacol.69:645-655(2010))を仮定して行った。
【0233】
中毒性表皮壊死症がある患者では、皮膚水疱液中のIgG濃度中央値は、血清の約24%であった(Paquet et al.,Exp.Dermatol.15:381-386(2006))。IgGの皮下吸収速度は、徹底的なPKサンプリングスケジュールを伴う、健常ボランティアにおける第I相試験でよく特徴付けられている(Oh et al.,Br.J.Clin.Pharmacol.69:645-655(2010))。双方の仮定を機構的モデルに組み込んだ場合、MEDI-546投与後にSSc患者で観察された皮膚GS応答の傾向および規模は、モデルによって適切に捉えられている。
【0234】
回帰または曲線適合は実施せず、主要な関心は、PK-PDモデルが、皮膚組織中のI型GS応答の傾向および範囲を十分に捉えているかどうかを評価することであった(図14)。
【0235】
ベースライン皮膚GSデータは、MEDI-546治療に続いて極めて変わりやすいが、皮膚中のシミュレートされたI型GSは、特にSSc患者に対する投入量≧1mg/kgで、実際の観察に近かった。コホート2(0.3mg/kg、SID=2)中の1人の対象は、末梢血中に比較的高いベースラインI型IFN GSを有し、この対象におけるより高い予想皮膚I型IFN GSスコアがもたらされた。MEDI-546投与に続く、SSc患者における皮膚I型IFN GS応答の傾向および程度は、PK-PDモデルによって、特に投入量≧1mg/kg(SID/≧6)で、適切に推定された。これは、複数MEDI-546投与に際する、SLE患者における皮膚IFN GS応答をシミュレートおよび予測するための、PK-PDモデルの適用性の追加的な証拠を提供した。したがって薬物統計学モデルを引き続き使用して、SLEにおけるMEDI-546のPKおよびPDプロファイルをシミュレートした。健康なドナー(n=30)では、I型IFN GSの観察された上方限界(平均+2標準偏差)は、皮膚中で1.8であった。
【0236】
MEDI-546の抗原は細胞-膜結合受容体(IFNAR1)であり、それはほとんどの有核細胞で幅広く発現する。試験管内共焦点画像診断から、抗体-受容体複合体は、IFNAR1へのMEDI-546結合時に、12.9分間の典型的な半減期で、迅速に内部に取り入れられる(図3)。したがってMEDI-546のPKは、標的-受容体媒介性クリアランス、または抗原-シンク効果(より低い濃度レベルでのより迅速な薬物クリアランス)の対象となった。推定分布容積および細網内皮系による一次クリアランスは、抗原シンク効果の対象とならないIgGに典型的であった(Oh et al.,Br.J.Clin.Pharmacol.69:645-655(2010);Tabrizi et al.,Inflamm.Allergy Drug Targets 9:229-237(2010))。
【0237】
この第I相試験の小さなサンプルサイズにもかかわらず、CLRESおよびVcのどちらも、その他のIgGで観察されたように、体重と共に増大することが分かった。SSc患者におけるIFNAR1の全身性の発現レベルは、88pMであった。PKパラメータ推定値は、表5に示されるブートストラップ複製の中央値に近かったので、全体的にはモデルは堅固なようであった。
【0238】
[実施例5]
SLE患者の確率シミュレーション
SSc患者におけるFTIH試験から、SLEにおける概念実証(PoC)試験へのプログラム移行をサポートするために、我々は、SLEにおける追加的な第I相試験に代えて橋渡しシミュレーションを使用し、2つの患者集団を橋渡しした。シファリムマブ臨床試験からの、記録されたSLE患者の体重およびベースラインI型IFN GSを、仮想SLE患者における複数MEDI-546投与時のI型IFN GS応答シミュレーションの基準として使用した。
【0239】
調剤を容易にして、SLE患者におけるPoC研究の理論的な投薬誤差を低下させるために、橋渡しシミュレーションに基づいて、MEDI-546投薬を体重ベース(mg/kg)から固定用量(mg)に切り替えた。確率シミュレーションから、毎月300mgの固定用量が、典型的なSLE対象において、末梢血液GSの正常レベル(≦2.9)への抑制を維持し得たが(図6A、中央値)、PoC治験では、特にベースラインでI型IFN GSが実質的に上昇しているSLE患者において、皮膚中の適切な薬物曝露とGS抑制を確実にするために、より高い用量(1000mg)もまた推奨された。
【0240】
さらに1000mgの用量は、SLEシミュレーション仮定の可能な多様性(例えばSLEにおけるMEDI-546の効力および効能がSScと異なる)に対する保証を提供した。臨床上の便益を観察するにはかなりの標的調節が必須であると仮定すれば、300mgよりも低い最適以下の用量は、SLE患者が多大なMEDI-546治療の恩恵を被ることはありそうにないので、PoC治験では推奨されなかった。他方、1000mgを超える用量では、効能の改善が漸増的であることが予測された。上記考察に基づいて、SLEにおけるPoC治験では、毎月300および1000mgの双方の用量が推奨された。
【0241】
したがって全血(図6A)および皮膚組織(図6B)中のI型IFN GSの調節は、300または1,000mg固定用量レベルでのMEDI-546の4週間毎の反復IV投与に続いて、仮想SLE患者(各使用量についてn=1,200)においてシミュレートされた。
【0242】
仮想SLE患者は、抗IFNαmAbであるシファリムマブの試験に以前登録した、SLE患者のベースラインで記録されたI型IFN GSおよび体重からの反復サンプリングによって作成された。ベースライン全血GSスコア中央値は、SLE患者では37であった(GS範囲:3~86;図1)。SLE患者の体重中央値は74kgであり、範囲は39.4~141kgであった。図6Aおよび6Bは、これらの患者における、シミュレートされたI型IFN GS応答の中央値(実線)、下位および上位四分位点(点線)を示す。
【0243】
シミュレーションによると、SLE患者における全血I型IFN GSスコアは、毎月のMEDI-546投薬によって、1~5(中央値2~3)の範囲に中和し得た。これは、I型IFNシグネチャの、MEDI-546治療の定常状態における基線レベルからのおよそ94%の抑制に相当した。より高い用量(1,000mg)は、MEDI-546組織曝露を増大させ、皮膚組織中でより低い用量(300mg)よりもさらに高いI型IFN GS抑制をもたらす。さらに全血および皮膚組織双方の中のシミュレートされたI型IFN GS応答は、毎月300mgの投与量では変動した一方で、1000mg用量では、治療期間中、比較的平坦なままであった。
【0244】
MEDI-546治療の6ヶ月後における全体的な標的調節を計算するために、より多くのSLE患者をシミュレートした(各用量レベルにつきn=12,000人)。末梢血中では、1000mgを投与されたシミュレートされたSLE患者の68%(300mgレベルでは53%)において、I型IFN GSを健康な正常な患者のレベル(≦2.9、上述した54人の正常対照からの平均±2標準偏差の上方限界)に抑制した。皮膚組織中では、90%超えるIFN GS抑制があるSLE患者の推定百分率は、300および1000mgの用量レベルでそれぞれ20%および30%であった。
【0245】
[実施例6]
橋渡しシミュレーションを使用して決定された固定投薬計画によるSLE、筋炎、および狼瘡性腎炎患者の治療
橋渡しシミュレーショを使用して、SSc臨床データに基づいて有効投与量を同定し、SLE、筋炎または狼瘡性腎炎患者を治療する投薬計画をデザインする。SScおよびSLE、SScおよび筋炎、またはSScおよび狼瘡性腎炎に共通する、I型IFN GSシグネチャを同定する。上述されたSScデータに基づくPK/PDモデルを作成して、SLE、筋炎、または狼瘡性腎炎に対応するPK/PDデータに基づいて補正する。仮想患者における確率シミュレーションを実施して、SSc/SLE、SSc/筋炎、またはSSc/狼瘡性腎炎PK/PDモデルを補正する。
【0246】
シミュレーションを通じて、仮想患者においてI型IFN GSを抑制すると予測される固定用量を同定する。シミュレーションで同定された固定用量の治療薬を、実際のSLE、筋炎、または狼瘡性腎炎患者に投与する。固定用量の治療薬の投与は、実際の患者におけるI型IFN GSを効果的に抑制して、SLE、筋炎、または狼瘡性腎炎を効果的に治療する。
【0247】
前述の特定の態様の説明は、本開示の一般的性質を完全に明らかにするので、他の人々も当該技術分野の技術範囲内も知識を適用することで、過度の実験を実施することなく、提供される一般概念から逸脱することなく、このような特定の態様を様々な用途のために容易に改変および/または適応させ得る。したがってこのような適応形態および修飾形態は、本明細書で提示される教示および指標に基づいて、開示された態様の均等物の意味および範囲内であることが意図される。本明細書の専門語または用語法は、説明を目的とし、教示および指標に照らして、当業者によって、本明細書の用語法または専門語が解釈されることを制限しないものと理解される。
【0248】
本開示の広さおよび範囲は、上記の例示的な態様のいずれによっても限定されるべきではなく、特許請求の範囲およびそれらの均等物によってのみ定義されるべきである。
図1
図2A-2B】
図2C-2D】
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
【配列表】
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